以下、本発明の実施の形態による液体燃料供給装置を、ガソリンに代表される燃料の計量機に適用した場合を例に挙げ、添付図面の図1ないし図4に従って詳細に説明する。
ここで、図1ないし図3は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、液体燃料供給装置としての計量機1は、例えばレギュラーガソリン、ハイオクガソリンまたは軽油等の給油作業を行う給油所の給油ブースに設置されている。計量機1は、略四角形状をなす筐体2を有し、この筐体2の正面側には、後述の表示器17および設定装置18等が配設されている。筐体2内には、後述の送液管路5、ポンプとしての給油ポンプ14、流量計15、制御弁16およびベーパの圧縮装置20等が設けられている。
給油所の地下には、燃料(例えば、レギュラーガソリン、ハイオクガソリンまたは軽油等)を貯留する貯留タンク3が埋設されている。貯留タンク3は、通常は複数個に分離または分画して設けられ、夫々のタンク毎に液種の異なる液体燃料(例えば、レギュラーガソリン、ハイオクガソリン、軽油等)が収容して貯留される。貯留タンク3内の液面4は、例えば専用の液面検出器(図示せず)を用いて検出され、これにより、貯留タンク3内の液体残量が監視されている。
図1、図2は計量機1の外殻を構成する筐体2の内部構造(即ち、送液管路5、給油ポンプ14、流量計15および制御弁16等の配管構造)を簡略化して示したものであり、実際には筐体2の左,右両側に、それぞれ後述の給油ホース7が設けられる。しかし、図1、図2中では、一の給油ホース7だけを示し、他の給油ホースは説明の簡略化のために省略している。
燃料供給経路を構成する送液管路5は、筐体2内から下向きに延びる一端(下端)側が貯留タンク3に接続されている。送液管路5の他端(先端)側は、例えば継手6を介して可撓性の給油ホース7に接続されている。可撓性の給油ホース7は、図1に示すように、例えば内部に後述のベーパ吸引チューブ10が挿通された2重管構造となっている。給油ホース7は、送液管路5と共に燃料供給経路を構成している。なお、給油ホース7とベーパ吸引チューブ10とは、必ずしも2重管構造とする必要はない。
給油ホース7の先端側には、被供給体(例えば、後述の燃料タンク101)に液体燃料を供給する供給ノズル8(以下、給油ノズル8という)が設けられている。この給油ノズル8は、給油作業の待機時に後述のノズル掛け13に掛止されている。例えば、給油所の操作者(セルフの給油者を含む)は、顧客の要求等に従って給油ノズル8をノズル掛け13から外し、この状態で、例えば車両100の燃料タンク101に対する給油作業を行う。
図1に示すように、車両100には、燃料タンク101に燃料を給油(補充)するための給油口102(供給口)が設けられている。給油ノズル8には、ノズル先端部としての吐出パイプ8Aが設けられ、この吐出パイプ8Aは、給油口102内に挿入された状態で燃料タンク101への給油を行う。また、給油ノズル8は、手動操作されるノズルレバー8Bと内蔵の弁8C(図2参照)とを有し、内蔵された弁8Cはノズルレバー8Bの操作位置によって弁開度が調整される。なお、給油ノズル8には、ノズルレバー8Bの先端を任意の操作位置に掛止する掛止部(図示せず)が設けられている。
給油ノズル8には、吐出パイプ8Aの付け根部分にベーパ回収用ノズルカバー9(以下、回収カバー9という)が追加して設けられている。この回収カバー9は、ゴム等の弾性材料から蛇腹状をなす可撓性の筒体として形成され、吐出パイプ8Aの外周側を取囲むように覆っている。車両100の燃料タンク101に給油ノズル8を用いて給油を行うときに、回収カバー9は車両100の給油口102周囲に押付けられる。このとき、回収カバー9は、燃料タンク101内の気化燃料(即ち、燃料蒸気としてのベーパ)が燃料タンク101の外部に漏れ出すのを防ぐように、給油口102の周囲を封止状態で覆う。
回収カバー9内は、給油ノズル8内に設けたベーパ回収弁8D(図2参照)を介してベーパ吸引チューブ10に連通している。このベーパ吸引チューブ10は、給油ホース7の内側に挿入されて2重管構造をなし、計量機1の筐体2内を継手6の位置まで延びている。計量機1の筐体2内には、継手6等を介してベーパ吸引チューブ10に接続されたベーパ導管11、吸引圧縮ポンプ12および後述の回収容器21等が設けられている。なお、ベーパ吸引チューブ10と給油ホース7とは、必ずしも2重管構造に形成する必要はない。
吸引圧縮ポンプ12は、後述の制御装置34により駆動制御され、燃料タンク101内のベーパを回収カバー9、ベーパ回収弁8D、ベーパ吸引チューブ10およびベーパ導管11を介して回収容器21内へと吸引するポンプである。また、吸引圧縮ポンプ12の2次側には、後述のチェック弁24と吸引圧縮ポンプ12の間でベーパ導管11の途中にベーパ冷却部11Aが設けられている。一例としてベーパ冷却部11Aは、十分な放熱面積を有した管路で自然空冷される。これにより、吸引圧縮ポンプ12で圧縮されたベーパは液化が促進される。または、ベーパ導管11を送液管路5と2重構造とすることで、ベーパ導管11内のベーパは、送液管路5を流れる液体燃料により冷却される。
図2に示すように、給油ノズル8の弁8Cは、ノズルレバー8Bの手動操作により閉弁位置(a)から開弁位置(b)に切換えられる。ベーパ回収弁8Dは、可撓性の回収カバー9が車両100の給油口102周囲に押付けられたときに、このときの押動力により閉弁位置(a)から開弁位置(b)に切換えられる。このように、給油ノズル8を用いた燃料タンク101への給油が開始されると、後述する流量計15の流量パルス発信器15Aから流量パルスが制御装置34に出力される。なお、給油ノズル8は、燃料タンク101内の液面を検知して自動閉弁動作する構成であってもよく、自動閉弁機構を有していない汎用ノズルであってもよい。給油ノズル8と一緒に回収カバー9を車両100の給油口102から離間させたときに、ベーパ回収弁8Dは開弁位置(b)から閉弁位置(a)に自動的に復帰する。
図1に示すように、筐体2の側面には、給油ノズル8が着脱可能に掛止めされるノズル収納部としてのノズル掛け13が設けられている。通常、給油ノズル8は、筐体2の側面に設けられたノズル掛け13に収納されており、例えば顧客の車両100が給油所に到着すると、給油ノズル8がノズル掛け13から外されて車両100の燃料タンク101の給油口102内に挿入される。また、ノズル掛け13にはノズルスイッチ13Aが付設されている。このノズルスイッチ13Aは、給油ノズル8がノズル掛け13に掛止されているか否かを検出し、その検出信号を後述の制御装置34に出力する。給油ノズル8がノズル掛け13に掛止されている間は、例えばノズルスイッチ13Aから制御装置34にOFF信号が出力される。図1に示す如く、給油ノズル8がノズル掛け13から外されている間は、ノズルスイッチ13Aから制御装置34にON信号が出力される。
送液管路5の途中には、筐体2内に位置して給油ポンプ14(ポンプ)、流量計15および制御弁16が配設されている。給油ポンプ14により吸い上げられた貯留タンク3内の液体燃料(例えば、ガソリン)は、送液管路5内を流通するときに、流量計15により流量が計測される。給油ポンプ14は、貯留タンク3内の燃料を給油ノズル8側に供給するため、ポンプモータ14Aにより回転駆動される。
流量計15は、給油ポンプ14により給油ノズル8に供給された液体燃料の給油量を、給油ノズル8毎に個別に計測する流量検出装置である。流量計15には流量パルス発信器15Aが付設されている。この流量パルス発信器15Aは、送液管路5内を流れる液体燃料の流量に応じた流量パルス信号を後述の制御装置34に出力する。
制御弁16は、その弁開度が可変に制御される電磁式流量制御弁により構成されている。制御弁16は、送液管路5から給油ホース7を介して給油ノズル8へと供給される液体燃料(例えば、ガソリン等の油液)の流量を調整するため、制御弁16の弁開度は、制御装置34から出力される制御信号の周波数およびデューティ比に応じて可変に制御される。
筐体2の正面側には、計量機1による燃料の給油量を表示する表示手段としての表示器17と、給油所の作業者(操作者)が手動操作することにより給油量に関する設定が行われる設定手段としての設定装置18とが設けられている。給油所の操作者(セルフの給油者を含む)は、設定装置18の各スイッチを操作することにより、例えば満タン給油を選択したり、任意のプリセット給油量を設定したりする操作を行う。
ベーパ排気孔19は、前記ベーパを筐体2の外部に排出するための排気口である。即ち、給油ノズル8を用いた燃料タンク101への液体燃料の供給時に、当該燃料タンク101内から給油ノズル8のベーパ回収用ノズルカバー(即ち、回収カバー9)内に燃料蒸気からなるベーパが放出される。このベーパは、図2に示すように、回収カバー9、ベーパ回収弁8D、ベーパ吸引チューブ10およびベーパ導管11を介して吸引圧縮ポンプ12により回収容器21内へと吸引され、その後はベーパ排気孔19から筐体2の外部に排出される。
筐体2内に設けられた圧縮装置20は、例えば吸引圧縮ポンプ12と回収容器21とを含んで構成されている。圧縮装置20の回収容器21内には、例えばメッシュ材料を用いて2重筒状に形成され、回収容器21内を上,下方向に延びた気液分離用のフィルタ筒22と、該フィルタ筒22の上端側を隙間をもって覆う上蓋体23とが設けられている。フィルタ筒22の下端は、回収容器21の底部21Aに固定されている。圧縮装置20の回収容器21内には、吸引圧縮ポンプ12により加圧(圧縮)されたベーパが液体燃料と一緒に収容されている。回収容器21内の液体燃料の液面Sは、フィルタ筒22の上端よりも低く、ベーパ導管11の導入管部11B先端(開口端)よりも高い位置に配置される。
フィルタ筒22の液中に放出されたベーパは、気泡が細分化され、回収容器21内の液体燃料との接触面積を増やすことができる。また、燃料液面より上へ放出されるときに発生する燃料ミストのうち、フィルタ筒22のメッシュ材料に接触したミストは、回収容器21の上部空間21Bへの侵入が防止される。さらに、フィルタ筒22は、回収容器21の液体燃料の液面側での波うち現象を抑制することができ、これにより、液面検出器28、29の測定精度を向上させるように補助する。フィルタ筒22には、液体燃料中において適所に穴が複数あって、フィルタ筒22内の回収液とフィルタ筒22外の液体燃料が置換される構成となっている。
ベーパ導管11の導入管部11Bは、吸引圧縮ポンプ12の流出側(2次側)でベーパ冷却部11Aの下流側に設けられている。この導入管部11Bは、吸引圧縮ポンプ12により燃料タンク101からベーパ導管11内へと吸引されたベーパを、ベーパ冷却部11Aにより冷却させた状態で回収容器21のフィルタ筒22内に流入させる。チェック弁24は、吸引圧縮ポンプ12(ベーパ冷却部11A)とフィルタ筒22との間に位置して導入管部11Bに設けられている。チェック弁24は、ベーパ導管11内のベーパが吸引圧縮ポンプ12からフィルタ筒22に向けて導入管部11B内を流通するのを許し、逆向きの流れを阻止する。吸引圧縮ポンプ12とチェック弁24とにより、回収容器21内はベーパ導管11の上流側よりも高い圧力状態(即ち、ベーパが圧縮された状態)に保持される。
このため、回収容器21内は、吸引圧縮ポンプ12で圧送されたベーパの圧力により容器内圧力が所定の圧力に維持されている。また、フィルタ筒22内に導入されたベーパは、当該フィルタ筒22内で液体燃料中に放出されることで、液化が促進されるように冷却され、液化したベーパの一部は液体燃料中に吸収される。これによって、フィルタ筒22内に導入されたベーパは液体燃料中に吸収され、液化した燃料はフィルタ筒22の内,外に流通可能となる。
一方、液化されないベーパ(主に燃料蒸気中に含まれた空気)は、フィルタ筒22内を上方へと浮遊し、フィルタ筒22の上端側と上蓋体23との隙間から回収容器21の上部空間21B内に滞留する。回収容器21の上端側には、回収容器21内の圧力を検出する圧力センサ25と、圧縮装置20の回収容器21とベーパ排気孔19とを接続させるベーパ流通路26と、該ベーパ流通路26の途中に位置するベーパ排出弁27とが設けられている。このベーパ排出弁27を開弁させることにより、回収容器21の上部空間21Bに滞留したベーパ(例えば、ガス濃度が低下した状態の空気)を、ベーパ排気孔19から筐体2の外部へとベーパ流通路26を介して排出することができる。
圧縮装置20の回収容器21には、例えば光学式の液面センサからなる第1,第2の液面検出器28,29が設けられている。第1の液面検出器28は、回収容器21内に補充された液体燃料の液面Sが、低液面SL(図5参照)以上か否かを検出する。第2の液面検出器29は、回収容器21内に補充された液体燃料の液面Sが、高液面Sh(図5参照)以上か否かを検出する。回収容器21内の液面Sは、後述の如く低液面SLよりも高く、高液面Shよりも低い液面となるように制御される。
回収容器21には液体燃料の補充管路30が設けられ、その途中には油液補充弁31が設けられている。補充管路30は、その基端側が給油ポンプ14と流量計15との間で送液管路5から分岐し、補充管路30の先端側は、回収容器21内で液体燃料中に浸漬状態で配置されている。給油ポンプ14を駆動している状態で油液補充弁31を開弁すると、補充管路30の先端側から回収容器21内に液体燃料が補充され、これにより、回収容器21内の液面Sは上昇する。一方、給油ポンプ14を停止させて油液補充弁31を閉弁すると、回収容器21内への液体燃料の補充は停止される。
回収容器21の底部21A側には、液体燃料の回収管路32が設けられ、回収管路32の途中には油液回収弁33が設けられている。回収管路32は、その基端側が回収容器21の底部21A側で液体燃料中に浸漬状態で配置され、回収管路32の先端側は、給油ポンプ14と地下の貯留タンク3との間で送液管路5に接続されている。このため、油液回収弁33を開弁すると、回収容器21内の液体燃料は回収管路32を介して液体燃料(給油ガソリン)と共に給油ポンプ14へ供給され、これにより、回収容器21内の液面Sは漸次低下する。一方、油液回収弁33を閉弁すると、回収容器21内から給油ポンプ14への液体燃料の供給は停止される。
換言すると、補充管路30と回収管路32は、燃料供給系統(送液管路5)と圧縮装置20の回収容器21との間に接続された補充回収経路を構成している。この補充回収経路(補充管路30と回収管路32)は、圧縮装置20の回収容器21への液体燃料の補充と、圧縮装置20の回収容器21から燃料供給系統(送液管路5)への液体燃料の回収とを行うものである。制御手段としての制御装置34は、前記補充回収経路による液体燃料の補充もしくは回収を切替え制御する機能を有している。
計量機1の筐体2内には、設定装置18により設定された前記給油量に基づいて給油に関する制御を行う制御手段としての制御装置34が設けられている。この制御装置34は、給油ノズル8による給油時に流量計15により計測された給油量を、表示器17により表示させる表示制御手段を構成している。この表示制御手段は、前記給油作業が終了したときに、その給油量を表示器17で表示させる構成となっている。また、制御装置34は、燃料タンク101内のベーパを回収すると共に、回収したベーパの一部を液体燃料に戻し、残余のベーパをベーパ排気孔19から筐体2の外部に排出するベーパ回収制御処理を行う機能を有している。
図1に示すように、制御装置34の入力側は、ノズル掛け13のノズルスイッチ13A、流量計15の流量パルス発信器15Aおよび設定装置18等に接続されている。制御装置34の出力側は、給油ポンプ14のポンプモータ14A、制御弁16および表示器17等に接続されている。制御装置34は、給油ノズル8がノズル掛け13から外されてノズルスイッチ13AからのON信号が入力されると、給油ポンプ14のポンプモータ14Aを起動する。このとき、給油ポンプ14は、制御装置34からの駆動信号により貯留タンク3内の燃料を送液管路5内に吸上げる。また、制御弁16は、制御装置34から所定周波数の駆動信号が出力されると共に、当該駆動信号のデューティ比を変更することにより、所定の弁開度を保つように制御される。
この状態で、給油ノズル8のノズルレバー8Bが操作されると、燃料タンク101への給油が開始され、流量計15の流量パルス発信器15Aから流量パルスが制御装置34に出力される。そして、制御装置34は、流量パルス発信器15Aから出力された流量パルスを積算して表示器17に給油量を表示させる。また、制御装置34は、例えば満タン給油制御あるいはプリセット給油制御等を設定装置18の操作に基づいて行う機能も有している。
さらに、図2に示すように、制御装置34の入力側は、流量計15、圧力センサ25および第1,第2の液面検出器28,29等に接続されている。制御装置34の出力側は、吸引圧縮ポンプ12、給油ポンプ14、ベーパ排出弁27、油液補充弁31および油液回収弁33等に接続されている。制御装置34には、例えばROM,RAMおよび/または不揮発性メモリ等からなるメモリ34Aが設けられている。
このメモリ34A内には、例えば図3に示すベーパ回収制御処理用のプログラム、回収容器21内の液面Sが高液面Sh以上か否か検出し監視するための液面検出フラグF、低液面SL以上か否かを判定する判定値、回収容器21内の圧力Pを判定するための高い所定圧値Pa、低い所定圧値Pbおよび回収量のカウントアップを行う時間カウンタ等が格納されている。
制御装置34は、回収容器21内の圧力Pを高い所定圧値Pa以下で、低い所定圧値Pbよりも高い圧力となるように制御する。これにより、回収容器21内のベーパ(燃料蒸気)を効率的に液化させ、液体燃料の回収効率を高めることができる。また、前記時間カウンタは、液体燃料の回収を効率的に行い得るように、油液回収弁33の開弁時間を所定の回収用時間として設定している。
次に、吸引圧縮ポンプ12および回収容器21等からなる圧縮装置20のベーパ回収動作について説明する。
吸引圧縮ポンプ12により燃料タンク101からベーパ導管11内へと吸引されるベーパは、例えばベーパ冷却部11A等で冷却されると、冷却後の温度での飽和蒸気量の蒸気と空気が残り、液化し易い状態となる。この状態でベーパは、回収容器21のフィルタ筒22内に導入管部11Bを介して導入される。フィルタ筒22内の液体燃料中にベーパを放出すると、圧縮冷却された液は液体燃料と混ざり、蒸気と空気の混合ガスは泡となってフィルタ筒22内の液体燃料中に放出される。このとき、蒸気と空気の泡は周囲の液体燃料を撹拌する。泡の中のベーパ(ガソリン蒸気)は、液体燃料に冷やされることで、さらに飽和蒸気量が低下すると共に、泡の表面張力による圧縮で、一部が液化して液体燃料中へ吸収され、泡の中のガソリン蒸気の量が減少することが期待できる。
フィルタ筒22内の泡は液体燃料の中を浮上し、フィルタ筒22の上端側と上蓋体23との隙間から回収容器21の上部空間21B内に滞留するように、蒸気と空気が放出される。これらの現象が連続的に発生することで、回収容器21(フィルタ筒22)内の圧力は上昇する。回収容器21(フィルタ筒22)内の飽和蒸気量は、この空間の温度に依存するため、温度を一定にすれば飽和蒸気量を超える蒸気は液化し、その温度での飽和蒸気量の蒸気と圧縮により押し込まれた空気が残る。
この結果、回収容器21の上部空間21Bは空気が支配的となる。回収容器21の圧力がある一定範囲となるように、ベーパ排出弁27を開閉して回収容器21の上部空間21Bから容器内のガスを排気する。このときの排出するガスに含まれるベーパの量は、給油時に燃料タンク101から吸引した量から本装置により液化回収(再生)した量をさし差し引いた量となる。回収容器21内で液化されたものは、回収容器21内で液体燃料に混ざることにより、ベーパは液化されて回収容器21内の液体燃料により希釈され、給油燃料と共に給油される。
第1の実施の形態による燃料供給装置としての計量機1は、上述の如き構成を有するもので、次に、車両100の燃料タンク101にガソリン等の燃料を供給する給油作業と、燃料タンク101内のベーパ回収制御処理とについて、図3を参照して説明する。
まず、制御装置34の制御処理が開始されると、ステップ1でノズル掛け13に付設されたノズルスイッチ13AがONとなったか否かを判定する。ステップ1で「NO」と判定する間は、ノズルスイッチ13AがOFFとなって、給油ノズル8がノズル掛け13に掛止めされた状態であり、給油作業が行われることはない。
そこで、この場合はステップ2に移って回収容器21内の液面Sが、低液面SL以上か否かを判定する。ステップ2で「NO」と判定する間は、次のステップ3で給油ポンプ14を駆動し、ベーパ排出弁27を開弁させると共に、油液補充弁31を開弁する。これにより、地下の貯留タンク3内から液体燃料が給油ポンプ14で吸上げられ、この液体燃料は送液管路5および補充管路30を介して回収容器21内に補充される。このため、回収容器21内の液面Sは、液体燃料の補充によって漸次上昇される。
次に、ステップ2で「YES」と判定したときには、回収容器21内の液面Sが低液面SL以上(即ち、第1の液面検出器28の高さ以上)となっている。そこで、次のステップ4では、給油ポンプ14の駆動を停止させ、ベーパ排出弁27を閉弁させると共に、油液補充弁31を閉弁させる。これにより、地下の貯留タンク3内から回収容器21に向けた液体燃料の補充は停止される。
次のステップ5では、回収容器21内の液面Sが高液面Sh以上(即ち、第2の液面検出器29の高さ以上)となっているか否かを判定する。ステップ5で「NO」と判定する間は、回収容器21内の液面Sが高液面Shよりも低いので、ステップ6に移ってリターンし、ステップ1以降の処理を続行させる。一方、ステップ5で「YES」と判定したときには、回収容器21内の液面Sが高液面Sh以上となっているので、次のステップ7で液面検出フラグを、「F=1」と設定する。その後は、ステップ6に移ってリターンし、ステップ1以降の処理を続行させる。
次に、ステップ1で「YES」と判定したときには、給油ノズル8がノズル掛け13から外されて、ノズルスイッチ13AがONとなっている。即ち、この場合は、例えば顧客の車両100が給油所に到着したので、給油ノズル8がノズル掛け13から外されて車両100の燃料タンク101の給油口102内に挿入される。このとき、給油ノズル8に付設した回収カバー9は、図1に示すように車両100の給油口102周囲に押付けられ、燃料タンク101内の燃料蒸気としてのベーパが燃料タンク101の外部に漏れ出すのを防ぐように、給油口102の周囲を封止状態で覆う。
次のステップ8では、給油ノズル8を用いて車両100の燃料タンク101に給油を行っているか否かを判定する。これは、例えば流量計15から流量パルス信号が出力されているか否かによって判定することができる。ステップ8で「NO」と判定する間は、燃料タンク101への給油作業は行われていないので、次のステップ9では、吸引圧縮ポンプ12をOFFとし、ベーパの吸引を停止させたままとする。そして、この場合は、ステップ6に移ってリターンし、ステップ1以降の処理を続行させる。
一方、ステップ8で「YES」と判定したときには、給油ノズル8を用いた燃料タンク101への給油が開始され、流量計15の流量パルス発信器15Aから流量パルスが制御装置34に出力されている。このとき、図2に示す如く、給油ノズル8の弁8Cは、ノズルレバー8Bの手動操作により閉弁位置(a)から開弁位置(b)に切換えられ、ベーパ回収弁8Dは可撓性の回収カバー9が車両100の給油口102周囲に押付けられたときの押動力により閉弁位置(a)から開弁位置(b)に切換えられている。
そこで、次のステップ10では吸引圧縮ポンプ12をONとする。これにより、吸引圧縮ポンプ12は駆動制御され、燃料タンク101内のベーパは、回収カバー9、ベーパ回収弁8D、ベーパ吸引チューブ10およびベーパ導管11を介して回収容器21内へと吸引される。ベーパ導管11の途中には、吸引圧縮ポンプ12の2次側にベーパ冷却部11A(図2参照)が設けられているので、ベーパ導管11内を流通するベーパを冷却し、このベーパ(燃料蒸気)が液化し易くなるようにできる。
次のステップ11では、液面検出フラグが「F=1」に設定されているか否かを判定する。ステップ11で「YES」と判定したときには、回収容器21内の液面Sが高液面Sh以上となっているので、次のステップ12で給油ノズル7による給油作業が行われているか否かを判定する。ステップ12で「NO」と判定するときは、燃料タンク101への給油中ではないので、ステップ6に移ってリターンし、ステップ1以降の処理を続行させる。
しかし、ステップ12で「YES」と判定したときは、回収容器21内の液面Sが高液面Sh以上となった状態で、ベーパ導管11側から回収容器21(フィルタ筒22)内にベーパが更に導入される。これにより、回収容器21内の液体燃料は、新たに導入されたベーパ(燃料蒸気)が液化するに伴って、液面Sが高液面Shよりも更に高くなる。
そこで、次のステップ13では油液回収弁33を開弁させ、回収容器21内の液体燃料を回収管路32を介して給油時に給油燃料と共に車両へ給油させる。次のステップ14では、回収量をカウントアップし、次のステップ15で予め決められた回収用時間が経過したか否かを判定する。このように、ステップ14,15の処理で排出時間をタイマー計時し所定排出時間になるのを監視する。
一方、ステップ15で「YES」と判定し、所定排出時間になったら、回収容器21内の液面Sが高液面Shまで低下しているので、油液回収弁33を閉弁させ、回収容器21内から給油ポンプ14経由で給油燃料と共に液体燃料の供給を停止する。これにより、回収容器21内の液面Sが更に下がるのを阻止することができる。次のステップ17では、液面検出フラグを「F=0」に設定する。そして、その後はステップ6に移ってリターンし、ステップ1以降の処理を続行させる。
次に、ステップ11で「NO」と判定したときには、例えば液面検出フラグが「F=0」に設定されているので、次のステップ18で回収容器21内の圧力Pが高い所定圧値Paよりも高いか否かを判定する。ステップ18で「YES」と判定したときには、回収容器21内の圧力Pが高い所定圧値Paを越えているので、次のステップ19でベーパ排出弁27を開弁させ、回収容器21内のベーパ(主に燃料蒸気中に含まれた空気)をベーパ流通路26を介してベーパ排気孔19から筐体2の外部に排出する。
次のステップ20では、回収容器21内の圧力Pが低い所定圧値Pb以下まで低下したか否かを判定する。ステップ20で「YES」と判定したときには、回収容器21内の圧力Pは低い所定圧値Pb以下まで下がっているので、次のステップ21でベーパ排出弁27を閉弁させ、回収容器21内のベーパ排出を停止させる。
その後は、ステップ6に移ってリターンし、ステップ1以降の処理を続行させる。また、前記ステップ18で「NO」と判定したときにも、ステップ21でベーパ排出弁27を閉弁したままとし、回収容器21内のベーパ排出を停止した状態に保つ。そして、回収容器21内の圧力Pを過剰圧よりも低い圧力に保った状態で、ステップ6に移ってリターンし、ステップ1以降の処理を続行させる。
かくして、第1の実施の形態によれば、計量機1の筐体2内に、吸引圧縮ポンプ12および回収容器21等からなる圧縮装置20と、ベーパ排気孔19と圧縮装置20とを接続させるベーパ流通路26とを設けている。圧縮装置20の回収容器21内には、上,下方向に延びた気液分離用のフィルタ筒22を設け、回収容器21(フィルタ筒22)内には、吸引圧縮ポンプ12により加圧(圧縮)されたベーパが液体燃料と一緒に収容される構成としている。
これにより、給油ノズル8により車両100の燃料タンク101に給油を行うときには、吸引圧縮ポンプ12を駆動して燃料タンク101内のベーパを、回収カバー9、ベーパ回収弁8D、ベーパ吸引チューブ10およびベーパ導管11を介して回収容器21内へと吸引することができる。そして、吸引圧縮ポンプ12の2次側にはベーパ冷却部11Aが設けられているので、ベーパ冷却部11Aは十分な放熱面積を持つ管路で自然空冷されることで圧縮されたベーパは液化が促進される。または、ベーパ導管11を送液管路5と2重構造とすることで、送液管路5を流れる液体燃料により冷却されることにより、ベーパ導管11内を流通するベーパを冷却し、ベーパ(燃料蒸気)の液化を促進することができる。
しかも、このように冷却された状態でベーパは、吸引圧縮ポンプ12により回収容器21のフィルタ筒22内に導入管部11Bを介して導入される。フィルタ筒22内の液体燃料中に導入されたベーパは、回収容器21内で圧縮され冷却された液体燃料と混ざり、一部が液化して液体燃料中へ吸収され、燃料蒸気の量を減少させることできる。回収容器21の圧力は、低い所定値Pbに近い一定の範囲となるように、ベーパ排出弁27を開閉して回収容器21の上部空間21Bから容器内のガス(主に燃料蒸気中に含まれた空気)を外部に排出することができる。
吸引圧縮ポンプ12により回収容器21のフィルタ筒22内に導入したベーパのうち、回収容器21内で液化されたものは、回収容器21内で液体燃料に混ざり、圧力を掛けた状態で保持するため再気化することはない。また、ベーパは液化された状態で液体燃料として回収するので、貯留タンク3内の液体燃料と比較しても品質の変化を最小限にすることができる。
従って、第1の実施の形態によれば、給油ノズル8を用いた燃料タンク101への液体燃料の供給時に、回収容器21内のベーパ(燃料蒸気)を効率的に液化させ、液体燃料の回収効率を高めることができる。また、計量機1の筐体2内には、吸引圧縮ポンプ12および回収容器21等からなる圧縮装置20と、ベーパ排気孔19と圧縮装置20とを接続させるベーパ流通路26とを設けるだけでよく、装置の簡素化を図ることができる。
次に、図4は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、1台の計量機に2つ以上の複数の供給(給油)ノズルを設ける構成としたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
ここで、送液管路41は、第1の実施の形態で述べた送液管路5と同様に燃料供給経路を構成している。しかし、この送液管路41は、筐体2内から下向きに延びる一端(下端)側が貯留タンク3に接続され、他端(上端)側は筐体2内で複数に分岐された分岐管部41A,41Bを含んで構成されている。これらの分岐管部41A,41Bにはそれぞれ流量計15が設けられ、各流量計15は、分岐管部41A,41B内を流通する液体燃料の流量を個別に検出する構成となっている。
各分岐管部41A,41Bの他端側は、それぞれ継手(例えば、図1に示す継手6)を介してそれぞれ給油ホース42に接続されている。図4中では、2本の給油ホース42を示している。しかし、送液管路41に3本以上の分岐管部41A,41B,…が設けられる場合には、これに対応して3本以上の給油ホース42を設ける構成とすればよい。各給油ホース42は、図1に例示した給油ホース7と同様に、内部にベーパ吸引チューブ43が夫々挿通された2重管構造とすることができる。なお、各給油ホース42とベーパ吸引チューブ43とは、必ずしも2重管構造に限らず、互いに並行して延びる構成としてもよい。
各給油ホース42の先端側には、被供給体(例えば、図1に示す燃料タンク101)に液体燃料を供給する給油ノズル8(即ち、供給ノズル)が夫々設けられている。これらの給油ノズル8は、給油作業の待機時に第1の実施の形態と同様にノズル掛け13にそれぞれ掛止されている。例えば、給油所の操作者(セルフの給油者を含む)は、顧客の要求等に従って各給油ノズル8をノズル掛け13から外し、この状態で、例えば車両100の燃料タンク101に対する給油作業を行う。
ここで、各ベーパ吸引チューブ43は、その長さ方向一側が各給油ノズル8の回収カバー9内に夫々ベーパ回収弁8Dを介して接続され、長さ方向他側はベーパ導管11を介して吸引圧縮ポンプ12の吸込側に接続されている。この場合でも、ベーパ導管11の途中には、第1の実施の形態とほぼ同様にベーパ冷却部11Aが設けられている。
複数(例えば2個)の吸引量調整弁44は、各ベーパ吸引チューブ43の途中に設けられ、制御装置45からの制御信号によりベーパ吸引チューブ43毎にベーパの吸引量(流量)を調整する。例えば、2個の給油ノズル8のうち一方の給油ノズル8を用いて給油作業が行われるときに、他方の給油ノズル8側では他方の吸引量調整弁44が閉弁され、一方の吸引量調整弁44のみが開弁される。これにより、吸引圧縮ポンプ12は、使用中の一方の給油ノズル8(回収カバー9)側から燃料タンク101内のベーパを吸引し、非使用中の他方の給油ノズル8(回収カバー9)側から外気が吸込まれるのを、吸引量調整弁44の開,閉により抑える構成となっている。なお、吸引量調整弁44は、流量の異なる2種類以上の分岐配管から構成し、適時管路を選択しベーパ流路を切り換える方式としても良い。
例えば、2個の給油ノズル8の両方を用いて給油作業が行われるときには、制御装置45からの制御信号により両方の吸引量調整弁44が開弁される。これにより、吸引圧縮ポンプ12は、使用中の両方の給油ノズル8(回収カバー9)側から燃料タンク101内のベーパを同時並行的に吸引し、例えば2台の車両100(燃料タンク101)から夫々吸込んだベーパ(例えば、2台分のベーパ)を圧縮装置20の回収容器21(即ち、フィルタ筒22)内に導入する。
制御装置45は第2の実施の形態で採用した制御手段である。この制御装置45は、第1の実施の形態で述べた制御装置34とほぼ同様に構成されている。しかし、この場合の制御装置45は、送液管路41の分岐管部41A,41B毎に設けた流量計15がそれぞれ給油量を検出するときに、個別の給油量に応じて各吸引量調整弁44の開度を調整し、ベーパ吸引チューブ43内にベーパ(燃料蒸気)以外の空気が吸込まれるのを抑えるように、ベーパの吸引制御処理を行う点で第1の実施の形態とは異なっている。
制御装置45の入力側は、各流量計15、圧力センサ25および第1,第2の液面検出器28,29等に接続されている。制御装置34の出力側は、吸引圧縮ポンプ12、給油ポンプ14、ベーパ排出弁27、油液補充弁31および油液回収弁33等に加えて、各吸引量調整弁44に接続されている。制御装置45には、例えばROM,RAMおよび/または不揮発性メモリ等からなるメモリ45Aが設けられている。
このメモリ45A内には、例えば図3に示すプログラムとほぼ同様なベーパ回収制御処理用のプログラム、回収容器21内の液面Sが高液面Sh以上か否か検出し監視するための液面検出フラグF、低液面SL以上か否かを判定する判定値、回収容器21内の圧力Pを判定するための高い所定圧値Pa、低い所定圧値Pbおよび回収量のカウントアップを行う時間カウンタ等が格納されている。
かくして、このように構成される第2の実施の形態でも、各給油ノズル8を用いた車両100(燃料タンク101)への液体燃料の供給時に、回収容器21内のベーパ(燃料蒸気)を効率的に液化させ、前記第1の実施の形態と同様に液体燃料の回収効率を高めることができる。
なお、前記各実施の形態では、液体燃料供給装置としてガソリン等の給油所に設ける計量機1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば車両の燃料タンク以外の被供給体に液体燃料を供給する液体燃料供給装置にも適用することができる。
また、前記各実施の形態では、圧縮装置20がフィルタ筒22を備える構成としている。しかし、本発明はこれに限らず、フィルタ筒22を備えず、圧縮、冷却されたベーパが回収容器21内の液体燃料内に放出されてもよいのは勿論である。
次に、上記の実施形態に含まれる発明について記載する。即ち、液体燃料供給装置は、燃料供給系統と圧縮装置に接続され、前記圧縮装置へ液体燃料を補充もしくは圧縮装置から液体燃料を回収する補充回収経路と、前記補充回収経路による液体燃料の補充もしくは回収を切り替え制御する制御手段とを備えている。これにより、圧縮装置の回収容器内に収容する液体燃料をベーパの回収(再生)に適した量に調整でき、液体燃料の回収効率を高めることができる。