JP6942063B2 - 内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置 - Google Patents

内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、内燃機関の制御方法及び内燃機関の制御装置に関する。
例えば、特許文献1には、所定の空燃比で運転する第1燃焼モードと、所定の空燃比よりも希薄側の空燃比で運転する第2燃焼モードと、を備えた内燃機関が開示されている。
特許文献1においては、第2燃焼モードのとき点火プラグの放電エネルギーを第1燃焼モードのときよりも増大させている。
また、この特許文献1においては、第2燃焼モードから第1燃焼モードへ切り替わるとき、第1燃焼モードから第2燃焼モードへ切り替わるときよりも、燃焼モードの切り替わるタイミングに対して点火プラグの放電エネルギーを切り替えるタイミングをディレイさせている。
このような特許文献1は、点火コイルの通電時間にディレイを持たせることのみで燃焼モードの切り替え時のロバスト性を向上させ、燃焼安定性を確保している。
特開2001−132599
しかしながら、燃焼は、燃料の混合気の状態にも影響を受ける。例えば、運転状態が低回転高負荷等の場合、機関回転数が低いことにより混合気の均一度が低く、かつ過給されていれば吸入空気量が多くなるので実圧縮比が高くなる。そのため、高負荷側では、点火しても混合気が着火しにくい状況となる。
つまり、空燃比が切り替えられる燃焼モードの切り替え時の制御には、燃焼安定性を向上させる上で、更なる改善の余地がある。
本発明の内燃機関は、所定の空燃比で運転する第1運転領域では、第1噴射モードで筒内に直接燃料を噴射するとともに、第1点火モードで筒内の混合気に点火し、上記所定の空燃比よりも希薄な空燃比で運転する第2運転領域では、上記第1噴射モードより混合気の均一度が高くなる第2噴射モードで筒内に直接燃料を噴射するとともに、上記第1点火モードよりも点火エネルギーが強化された第2点火モードで筒内の混合気を点火する。そして、上記第1運転領域から上記第2運転領域に運転状態が切り替わる際には、第1噴射モードを第2噴射モードに切り替え、かつ第1点火モードを第2点火モードに切り替えてから第1所定時間が経過した後に空燃比を上記希薄な空燃比へと切り替える。
本発明によれば、運転状態が切り替わる際に、確実に着火させることが可能となる。そのため、失火することなく機能信頼性を確保でき、排気性能及び燃費性能の改善を図ることができる。
本発明に係る内燃機関の概略構成を模式的に示した説明図。 空燃比の算出に使用するマップの概略を示す説明図。 内燃機関のトルク変動を模式的に示した説明図。 空燃比の切り替えを説明するタイミングチャート。 本発明に係る内燃機関の制御の流れを示すフローチャート。
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明に係る内燃機関1の概略構成を模式的に示した説明図である。
内燃機関1は、複リンク式のピストンクランク機構を利用した可変圧縮比機構2を備えた4ストロークサイクルの火花点火式機関であって、駆動源として自動車等の車両に搭載されるものである。
可変圧縮比機構2は、例えば特開2004−116434号公報等に記載された公知の複リンク式ピストンクランク機構を利用したものである。
内燃機関1は、駆動源として自動車等の車両に搭載されるものであって、吸気通路3と排気通路4とを有している。吸気通路3は、吸気弁5を介して燃焼室6に接続されている。排気通路4は、排気弁7を介して燃焼室6に接続されている。
また、内燃機関1は、燃焼室6内に燃料を直接噴射する第1燃料噴射弁8と、吸気弁5上流側の吸気通路3内に燃料を噴射する第2燃料噴射弁9と、を有している。
第1燃料噴射弁8は、1燃焼サイクル中に複数回の燃料噴射を行う多段噴射が実施可能なものである。
第2燃料噴射弁9は、本実施例では、例えば、後述する第1運転領域Aの中でも高回転高負荷の限られた運転領域において補助的に燃料を噴射するものである。
第1燃料噴射弁8及び第2燃料噴射弁9から噴射された燃料は、燃焼室6内で点火プラグ10により点火される。
また、内燃機関1は、駆動ユニットとしてのモータ11から駆動力の付与が可能な構成となっている。このモータ11は、モータ用バッテリ12の電力で駆動可能なものであり、発電が可能なものである。
内燃機関1に接続された吸気通路3には、吸気中の異物を捕集するエアクリーナ13と、吸入空気量を検出するエアフローメータ14と、電動の第1スロットル弁15と、第1スロットル弁15の上流側に位置する電動の第2スロットル弁16と、が設けられている。
エアフローメータ14は、第2スロットル弁16の上流側に配置されている。エアフローメータ14は、温度センサを内蔵したものであって、吸気導入口の吸気温度を検出可能となっている。
エアクリーナ13は、エアフローメータ14の上流側に配置されている。
第1スロットル弁15は、負荷に応じて内燃機関1の吸入空気量を制御する。第2スロットル弁16は、後述するコンプレッサ22の上流側における吸気圧力を制御する。
内燃機関1に接続された排気通路4には、三元触媒等の上流側排気触媒17と、三元触媒等の下流側排気触媒18と、三元触媒等の床下触媒19と、排気音を低減する消音用のマフラー20と、が設けられている。
下流側排気触媒18は、上流側排気触媒17の下流側となり、床下触媒19よりも上流側となる位置に配置されている。床下触媒19は、下流側排気触媒18の下流側に配置されている。マフラー20は、床下触媒19の下流側に配置されている。
また、この内燃機関1は、ターボ過給機21を有している。
ターボ過給機21は、吸気通路3に設けられたコンプレッサ22と、排気通路4に設けられたタービン23と、を有している。コンプレッサ22とタービン23は、同軸上に配置され、一体となって回転する。コンプレッサ22は、第1スロットル弁15の上流側となり、第2スロットル弁16よりも下流側となる位置に配置されている。タービン23は、上流側排気触媒17よりも上流側に配置されている。
吸気通路3には、第1スロットル弁15の下流側に、コンプレッサ22により圧縮(加圧)された吸気を冷却し、充填効率を良くするインタクーラ24が設けられている。
インタクーラ24は、インタクーラ用のラジエータ(インタクーラ用ラジエータ)25及び電動ポンプ26とともにインタクーラ用冷却経路(サブ冷却経路)27に配置されている。インタクーラ24には、ラジエータ25によって冷却された冷媒(冷却水)が供給可能となっている。
インタクーラ用冷却経路27は、経路内を冷媒が循環可能となるように構成されている。インタクーラ用冷却経路27は、内燃機関1のシリンダブロック28を冷却する冷却水が循環する図示しないメイン冷却経路とは独立した冷却経路である。
ラジエータ25は、インタクーラ用冷却経路27内の冷媒を外気との熱交換で冷却する。
電動ポンプ26は、駆動することによってラジエータ25とインタクーラ24との間で冷媒を矢印A方向に循環させるものである。
排気通路4には、タービン23を迂回してタービン23の上流側と下流側とを接続する排気バイパス通路31が接続されている。排気バイパス通路31の下流側端は、上流側排気触媒17よりも上流側の位置で排気通路4に接続されている。排気バイパス通路31には、排気バイパス通路31内の排気流量を制御する電動のウエストゲート弁32が配置されている。
また、内燃機関1は、排気通路4から排気ガスの一部をEGRガスとして吸気通路3へ導入(還流)する排気還流(EGR)が実施可能なものであって、排気通路4から分岐して吸気通路3に接続されたEGR通路33を有している。EGR通路33は、その一端が下流側排気触媒18と床下触媒19との間の位置で排気通路4に接続され、その他端が第2スロットル弁16の下流側となりコンプレッサ22の上流側となる位置で吸気通路3に接続されている。このEGR通路33には、EGR通路33内のEGRガス流量を調整(制御)する電動のEGR弁34と、EGRガスを冷却可能なEGRクーラ35と、が設けられている。
内燃機関1は、排気弁7の動弁機構として、排気弁7のバルブタイミング(開閉時期)を変更可能な排気側可変動弁機構39を有している。
なお、吸気弁側の動弁機構は、一般的な直動式の動弁機構であり、吸気弁5のリフト作動角やリフト中心角の位相は、常に一定である。
排気側可変動弁機構39は、例えば油圧駆動されるものであって、制御部としてのコントロールユニット40からの制御信号によって制御される。つまり、コントロールユニット40は、排気側可変動弁機構39を制御する排気側可変動弁機構制御部に相当するものである。そして、コントロールユニット40によって、排気弁7のバルブタイミングを可変制御することが可能となっている。
排気側可変動弁機構39は、排気弁7の開時期及び閉時期を個々に独立して変更できる形式のものでも、開時期及び閉時期が同時に遅進する形式のものでもよい。本実施例では、排気側カムシャフト42のクランクシャフト43に対する位相を遅進させる後者の形式のものが用いられている。また、排気側可変動弁機構39は、油圧駆動されるものに限定されるものではなく、モータ等による電動駆動のものであってもよい。
排気弁7のバルブタイミングは、排気側カムシャフトポジションセンサ45によって検出される。排気側カムシャフトポジションセンサ45は、排気側カムシャフト42のクランクシャフト43に対する位相を検出するものである。
ここで、コントロールユニット40は、CPU、ROM、RAM及び入出力インターフェースを備えた周知のデジタルコンピュータである。
コントロールユニット40には、上述したエアフローメータ14、排気側カムシャフトポジションセンサ45の検出信号(検出値)のほか、クランクシャフト43のクランク角度と共に機関回転数を検出可能なクランク角センサ46、内燃機関1の要求負荷状態を表すアクセルペダル踏み込み量(アクセル開度APO)を検出するアクセル開度センサ47、冷却水温度を検出する水温センサ48、エンジンオイルの油温を検出する油温センサ49、吸気の湿度を検出する湿度センサ50等のセンサ類の検出信号(検出値)が入力されている。
水温センサ48は、シリンダブロック28内のウォータジャケット61を流れる冷却水温度を検出可能なものである。
コントロールユニット40は、アクセル開度センサ47の検出値を用いて、内燃機関1の要求負荷(エンジン負荷)を算出する。
また、コントロールユニット40は、点火プラグ10に電力を供給する車載のバッテリ62の充電容量に対する充電残量の比率であるSOC(State Of Charge)を検出可能となっている。つまり、コントロールユニット40はバッテリSOC検出部に相当する。
そして、コントロールユニット40は、各種センサ類の検出信号に基づいて、第1燃料噴射弁8、第2燃料噴射弁9による燃料噴射量及び燃料噴射時期、点火プラグ10による点火時期、点火プラグ10の点火エネルギー、排気弁7のバルブタイミング、第1スロットル弁15の開度、第2スロットル弁16の開度、ウエストゲート弁32の開度、EGR弁34の開度、可変圧縮比機構2による内燃機関1の機械的圧縮比等を最適に制御している。
また、コントロールユニット40は、運転状態に応じて、内燃機関1の空燃比を制御している。詳述すると、図2に示すように、所定の第1運転領域Aでは空燃比が理論空燃比となるように制御し、低回転低負荷側の所定の第2運転領域Bでは、第1運転領域Aよりも希薄な空燃比となるよう制御する。
換言すると、内燃機関1の運転状態が低回転低負荷側の第2運転領域B以外の領域(第1運転領域)では、空気過剰率λがλ=1となるように目標空燃比を設定する。また、内燃機関1の運転状態が第2運転領域Bでは、空気過剰率λが例えばλ=2程度となるように目標空燃比を設定する。
図2は、コントロールユニット40に記憶された空燃比マップであって、エンジン負荷とエンジン回転数に応じて空燃比が割り付けられている。
このような空燃比制御を行う内燃機関1は、空燃比が希薄となるような運転領域において燃焼のロバスト性が弱く、環境変化、部品ばらつき、気筒間のばらつき等を考慮すると過渡時に厳密な燃焼制御が必要となる。
例えば、上述した特許文献1のように、空燃比の切り替え時に、点火プラグの点火エネルギーの切り替えにディレイを持たせて燃焼安定を図るような場合、運転状態が低回転高負荷であれば、機関回転数が低いことにより混合気の均一度が低くなる。さらに、過給されていれば、吸入空気量が多くなるので実圧縮比が高くなる。そのため、高負荷側では、点火しても混合気が着火しにくい状況となる。つまり、点火プラグの点火エネルギーの切り替えにディレイを持たせるだけでは、機関回転数と負荷により燃焼のロバスト性が制限を受けることになり、燃焼安定性を向上させる上で、更なる改善の余地がある。
また、上述した特許文献1のように、空燃比を切り替えるタイミングを基準にして放電エネルギーの切り替えを行う場合、空燃比を切り替える前に、空燃比を切り替えられる(移行できる)燃焼状態になっていないと、空燃比を切り替えた際に燃焼不安定となり、場合によっては失火する虞がある。
従って、点火エネルギーの切り替えのみで切り替え時の燃焼安定性を確保しようとすると、機関回転数や負荷といった運転状態による制約を受けることになり、結果的に、希薄燃焼で得られる燃費の低減効果を十分に得られない虞がある。
さらに、例えば、急激な吸気温度の低下や湿度の上昇等により、同じ機関回転数及び負荷にも関わらず希薄燃焼の許可条件が不成立(不許可)となり、空燃比が変更される場合、燃費が最適となるバルブタイミングによっては残ガス過多により失火する虞がある。
そこで、本実施例は、ストイキよりもリーンとなる空燃比で燃焼(希薄燃焼)を行う内燃機関1において、過渡時の燃焼不安定を抑制して排気性能の悪化を抑制するとともに、希薄燃焼による燃費低減の信頼性向上を図る。
第1運転領域(ストイキ運転領域)Aでは、所定の第1噴射モード(ストイキ用噴射モード)で第1燃料噴射弁8が筒内に直接燃料を噴射するとともに、所定の第1点火モード(ストイキ用点火モード)で点火プラグ10が筒内の混合気に点火する。換言すると、コントロールユニット40は、第1運転領域Aでは、第1燃料噴射弁8の噴射モードを第1噴射モードにするとともに、点火プラグ10の点火モードを第1点火モードにする。
第1噴射モードでは、1燃焼サイクル中に1回の燃料噴射を行う単段噴射を実施する。噴射時期としては、特許文献1のような吸入行程を例示できるが、これに限定されない。
排気弁7は、第1運転領域Aにおいて、排気弁閉時期が例えば上死点後10°CA程度となる第1バルブタイミング(ストイキ用バルブタイミング)に制御される。
第2運転領域(リーン運転領域)Bでは、第1噴射モードより混合気の均一度が高くなる所定の第2噴射モード(リーン用噴射モード)で第1燃料噴射弁8が筒内に直接燃料を噴射するとともに、第1点火モードよりも点火エネルギーが強化された所定の第2点火モード(リーン用点火モード)で点火プラグ10が筒内の混合気を点火する。換言すると、コントロールユニット40は、第2運転領域Bでは、第1燃料噴射弁8の噴射モードを第2噴射モードにするとともに、点火プラグ10の点火モードを第2点火モードにする。
第2噴射モードでは、1燃焼サイクル中に複数回の燃料噴射を行う多段噴射を実施する。噴射時期としては、特許文献1のような圧縮行程もしくは吸入行程を例示できるが、これらに限定されない。
第2点火モードでは、点火プラグ10に供給する電力が、第1点火モードのときよりも大きくなり、点火エネルギーが相対的に強化される。
排気弁7は、第2運転領域Bにおいて、内部EGR(残留ガス)が少なくなるように、排気弁閉時期が上死点となる第2バルブタイミング(リーン用バルブタイミング)に制御される。
第1運転領域Aから第2運転領域Bに運転状態が切り替わる場合には、第1噴射モードを第2噴射モードに切り替え、かつ第1点火モードを第2点火モードに切り替えてから第1所定時間T1が経過した後に空燃比を上記希薄な空燃比へと切り替える。
また、第1運転領域Aから第2運転領域Bに運転状態が切り替わるタイミングで、排気弁7を第2バルブタイミングに切り替える。
さらに、内燃機関1に駆動力を付与可能なモータ11がある場合には、第1運転領域Aから第2運転領域Bに運転状態が切り替わる際に、このモータ11の駆動によるトルクのアシスト(第1トルクアシスト)を実施してもよい。
また、内燃機関1により駆動中の補機がある場合には、第1運転領域Aから第2運転領域Bに運転状態が切り替わる際に、内燃機関1によるこの補機の駆動を停止し、補機負荷を低減させる第1補機アシストを実施してもよい。駆動を停止する補機としては、例えばエアコン用コンプレッサ等がある。
第1トルクアシスト及び第1補機アシストは、例えば、第1運転領域Aから第2運転領域Bに運転状態が切り替わるタイミングから空燃比の切り替えが終了するタイミングまで継続される。
第2運転領域Bから第1運転領域Aに運転状態が切り替わる場合には、空燃比をストイキとなるように切り替えてから第2所定時間T2が経過した後に、第2噴射モードを第1噴射モードに切り替え、かつ第2点火モードを第1点火モードに切り替えるとともに、排気弁7を第1バルブタイミングに切り替える。
さらに、内燃機関1に駆動力を付与可能なモータ11がある場合には、第2運転領域Bから第1運転領域Aに運転状態が切り替わる際に、このモータ11の駆動によるトルクのアシスト(第2トルクアシスト)を実施してもよい。
また、内燃機関1により駆動中の補機がある場合には、第2運転領域Bから第1運転領域Aに運転状態が切り替わる際に、内燃機関1によるこの補機の駆動を停止し、補機負荷を低減させる第2補機アシストを実施してもよい。
第2トルクアシスト及び第2補機アシストは、例えば、第2運転領域Bから第1運転領域Aに運転状態が切り替わるタイミングから第2所定時間T2が経過するまで継続される。
第1トルクアシスト、第2トルクアシスト、第1補機アシスト及び第2補機アシストは、内燃機関1のトルク変動の抑制に寄与するものであり、実施することで内燃機関1の燃焼安定性を向上させることができる。
なお、第1トルクアシスト及び第2トルクアシストを実施する場合には、図3に示すように、内燃機関1のトルク変動と逆位相となるようにモータ11によるトルクアシストを行うことで、内燃機関1のトルク変動が一層抑制され、燃焼安定性を一層向上させることができる。
なお、図3中の実線は内燃機関1の燃焼トルク、図3中の細線はモータ11のアシストトルクである。図3中の破線は、モータ11によりトルクをアシストされた内燃機関1の燃焼トルクであり、図3中の実線と細線を合成したものである。
第1所定時間T1は、運転状態が第1運転領域Aから第2運転領域Bに切り替わったタイミングで算出する。この第1所定時間T1は、例えば、運転状態が第1運転領域Aから第2運転領域Bに切り替わったタイミングにおける機関回転数と負荷に応じて決定される。
第2所定時間T2は、運転状態が第2運転領域Bから第1運転領域Aに切り替わったタイミングで算出する。この第2所定時間T2は、運転状態が第2運転領域Bから第1運転領域Aに切り替わったタイミングで算出される噴射モードの切り替えディレイ時間T2iと、点火モードの切り替えディレイ時間T2eと、バルブタイミングの切り替えディレイ時間T2vと、のうちの最も大きな値である。各ディレイ時間T2i、T2e、T2vは、それぞれ例えば、運転状態が第2運転領域Bから第1運転領域Aに切り替わったタイミングにおける機関回転数と負荷に応じて決定される。なお、ディレイ時間T2i、T2e、T2vは、運転状態が第2運転領域Bから第1運転領域Aに切り替わったタイミングから空燃比がストイキに切り替わるまでの時間よりも長くなっている。
図4は、空燃比の切り替えを説明するタイミングチャートである。図4は、第2運転領域Bから第1運転領域Aに運転状態が変化し、その後第1運転領域Aから第2運転領域Bに運転状態が変化した場合を示している。
時刻t1のタイミングで、内燃機関1の運転状態が第2運転領域Bから第1運転領域Aに切り替わっている。
空燃比の切り替え指令(空燃比モード指令)は、時刻t1のタイミングでリーンからストイキへの切り替え指令を出している。そのため、内燃機関1の空燃比は、時刻t1のタイミングで切り替えが開始される。時刻t2は、時刻t1のタイミングで切り替えが開始された空燃比の切り替えの終了したタイミングである。
第1燃料噴射弁8は、時刻t1のタイミングから第2所定時間T2が経過した時刻t3のタイミングで噴射モードが第2噴射モードから第1噴射モードに切り替えられる。
点火プラグ10は、時刻t1のタイミングから第2所定時間T2が経過した時刻t3のタイミングで点火モードが第2点火モードから第1点火モードに切り替えられる。
このように、空燃比がリーンからストイキに切り替わる際には、空燃比がストイキに切り替わるまで、混合気の均一度が相対的に高くなる第2噴射モードを維持するとともに、点火エネルギーが強化された第2点火モードを維持する。
これによって、内燃機関1の運転状態が切り替わり、空燃比がリーンからストイキに切り替わる場面において、確実に着火させることが可能となる。そのため、空燃比をリーンからストイキに切り替える際に、失火することなく機能信頼性を確保でき、排気性能及び燃費性能の改善を図ることができる。
また、排気弁7は、時刻t1のタイミングから第2所定時間T2が経過した時刻t3のタイミングでバルブタイミングが第2バルブタイミングから第1バルブタイミングに切り替えられる。
このように、空燃比がリーンからストイキに切り替わる際には、空燃比がストイキに切り替わるまで、内部EGR(残留ガス)が少ない第2バルブタイミングを維持する。
これによって、内燃機関1の運転状態が切り替わり、空燃比がリーンからストイキに切り替わる場面において、確実に着火させることが可能となる。そのため、空燃比をリーンからストイキに切り替える際に、失火することなく機能信頼性を確保でき、排気性能及び燃費性能の改善を図ることができる。
第2トルクアシストや第2補機アシストは、時刻t1のタイミングから時刻t3のタイミングまで実施する。図4中に実線で示す特性線L1は、モータ11により内燃機関1に付加されるトルクの変化を示している。図4中に破線で示す特性線L2は、内燃機関1から取り除かれる補機負荷(補機駆動用トルク)の変化を示している。
時刻t4のタイミングで、内燃機関1の運転状態が第1運転領域Aから第2運転領域Bに切り替わっている。
空燃比の切り替え指令(空燃比モード指令)は、時刻t4から第1所定時間T1が経過した時刻t5のタイミングでストイキからリーンへの切り替え指令を出している。そのため、内燃機関1の空燃比は、時刻t5のタイミングで切り替えが開始される。時刻t6は、時刻t5のタイミングで切り替えが開始された空燃比の切り替えの終了したタイミングである。
第1燃料噴射弁8は、時刻t4のタイミングで噴射モードが第1噴射モードから第2噴射モードに切り替えられる。
点火プラグ10は、時刻t4のタイミングで点火モードが第1点火モードから第2点火モードに切り替えられる。
このように、空燃比がストイキからリーンに切り替わる際には、空燃比の切り替えを開始する前に、噴射モードを混合気の均一度が相対的に高くなる第2噴射モードに切り替えるとともに、点火モードを点火エネルギーが強化された第2点火モードに切り替える。
これによって、内燃機関1の運転状態が切り替わり、空燃比がストイキからリーンに切り替わる場面において、確実に着火させることが可能となる。そのため、空燃比をストイキからリーンに切り替える際に、失火することなく機能信頼性を確保でき、排気性能及び燃費性能の改善を図ることができる。
また、排気弁7は、時刻t4のタイミングでバルブタイミングが第1バルブタイミングから第2バルブタイミングに切り替えられる。
このように、空燃比がストイキからリーンに切り替わる際には、空燃比の切り替えを開始する前に、バルブタイミングを内部EGR(残留ガス)が少ない第2バルブタイミングに切り替える。
これによって、内燃機関1の運転状態が切り替わり、空燃比がストイキからリーンに切り替わる場面において、確実に着火させることが可能となる。そのため、空燃比をストイキからリーンに切り替える際に、失火することなく機能信頼性を確保でき、排気性能及び燃費性能の改善を図ることができる。
第1トルクアシストや第1補機アシストは、時刻t4のタイミングから空燃比の切り替えが終了する時刻t6のタイミングまで実施する。
図5は、上述した内燃機関1の制御の流れを示すフローチャートである。
ステップS1では、希薄燃焼が実施可能であるか否かを判定する。例えば、吸気温度が所定温度以上、湿度が所定湿度以下、冷却水温度が所定温度以上、等であり、かつ可変動弁機構等のデバイスが正常に駆動できる状態であれば、希薄燃焼が実施可能な状態であると判定してS2へ進む。
ステップS1にて希薄燃焼が実施可能な状態ではないと判定されると、希薄燃焼を実施不可とし、今回のルーチンを終了する。ステップS1にて希薄燃焼が実施不可と判定されると、内燃機関1は、運転状態にかかわらず空燃比を理論空燃比とする運転を実施する。
ステップS2では、内燃機関1の運転状態が第1運転領域Aから第2運転領域Bに切り替わったか否かを判定する。ステップS2にて内燃機関1の運転状態が第1運転領域Aから第2運転領域Bに切り替わったと判定された場合には、ステップS3に進む。ステップS2にて内燃機関1の運転状態が第1運転領域Aから第2運転領域Bに切り替わっていないと判定された場合には、ステップS11に進む。
ステップS3では、運転状態が第1運転領域Aから第2運転領域Bに切り替わったタイミングで第1トルクアシストを開始する。
ステップS4では、運転状態が第1運転領域Aから第2運転領域Bに切り替わったタイミングで第1補機アシストを開始する。
ステップS5では、運転状態が第1運転領域Aから第2運転領域Bに切り替わったタイミングで噴射モード、点火モード及びバルブタイミングの変更を開始する。
ステップS6では、運転状態が第1運転領域Aから第2運転領域Bに切り替わったタイミングで第1所定時間T1を算出する。
ステップS7では、運転状態が第1運転領域Aから第2運転領域Bに切り替わってからステップS6で算出した第1所定時間T1が経過したか否かを判定する。
ステップS7にて運転状態が切り替わってから第1所定時間T1が経過したと判定されるとステップS8へ進む。
ステップS8では、空燃比のストイキからリーンに切り替える。
ステップS9では、空燃比の切り替えが終了したタイミングで、第1トルクアシストを終了する。
ステップS10では、空燃比の切り替えが終了したタイミングで、第1補機アシストを終了する。
ステップS11では、内燃機関1の運転状態が第2運転領域Bから第1運転領域Aに切り替わったか否かを判定する。ステップS11にて内燃機関1の運転状態が第2運転領域Bから第1運転領域Aに切り替わったと判定された場合には、ステップS12に進む。ステップS11にて内燃機関1の運転状態が第2運転領域Bから第1運転領域Aに切り替わっていないと判定された場合には、内燃機関1の運転状態に変化はないとして今回のルーチンを終了する。
ステップS12では、運転状態が第2運転領域Bから第1運転領域Aに切り替わったタイミングで空燃比の切り替えを開始する。
ステップS13では、運転状態が第2運転領域Bから第1運転領域Aに切り替わったタイミングで第2トルクアシストを開始する。
ステップS14では、運転状態が第2運転領域Bから第1運転領域Aに切り替わったタイミングで第2補機アシストを開始する。
ステップS15では、運転状態が第2運転領域Bから第1運転領域Aに切り替わったタイミングで、点火モードの切り替えディレイ時間T2eを算出する。
ステップS16では、運転状態が第2運転領域Bから第1運転領域Aに切り替わったタイミングで、噴射モードの切り替えディレイ時間T2iを算出する。
ステップS17では、運転状態が第2運転領域Bから第1運転領域Aに切り替わったタイミングで、バルブタイミングの切り替えディレイ時間T2vを算出する。
ステップS18では、点火モードの切り替えディレイ時間T2e、噴射モードの切り替えディレイ時間T2i及びバルブタイミングの切り替えディレイ時間T2vのうち最長のものを第2所定時間T2とする。
ステップS19にて運転状態が切り替わってから第2所定時間T2が経過したと判定されるとステップS20へ進む。
ステップS20では、運転状態が切り替わってから第2所定時間T2が経過したタイミングで、第2トルクアシストを終了する。
ステップS21では、運転状態が切り替わってから第2所定時間T2が経過したタイミングで、第2補機アシストを終了する。
ステップS22は、運転状態が切り替わってから第2所定時間T2が経過したタイミングで噴射モード、点火モード及びバルブタイミングの変更を開始する。
なお、上述した実施例においては、排気弁7の動弁機構のみがバルブタイミングを変更可能な可変動弁機構であったが、排気弁7に加え、吸気弁5の動弁機構もバルブタイミングを変更可能な可変動弁機構となったものにも、本願発明は適用可能である。また、吸気弁5の動弁機構のみが可変動弁機構になったものにも適用可能である。
吸気弁5及び排気弁7の動弁機構が双方とも可変動弁機構である場合や吸気弁5の動弁機構のみが可変動弁機構の場合も、第1運転領域Aのときよりも第2運転領域Bのときに内部EGR(残留ガス)が少なくなるよう機関弁のバルブタイミングを制御するとともに、内燃機関1の運転状態が第2運転領域Bから第1運転領域Aに切り替わる際には、空燃比が切り替わるタイミングから第2所定時間T2が経過するまで内部EGR(残留ガス)が少なくなるように上記機関弁のバルブタイミングをリーン用バルブタイミングに維持すればよい。
第2運転領域Bにおいて、多段噴射を行う際の演算負荷が大きい場合には、1燃焼サイクル中に1回の燃料噴射を行う単段噴射を実施するようにしてもよい。多段噴射を実施する場合、噴射回数、各回の噴射量、各回の噴射タイミング等を演算する必要がある。このとき、これらの演算を行うコントロールユニット40の処理能力が演算負荷を許容できない虞がある場合には、多段噴射を中止し、点火エネルギーの強化により燃焼安定性を図るようにしてもよい。
また、点火プラグ10に電力を供給するバッテリ62のSOCが所定値以下の場合には、第2運転領域Bにおいても空燃比をストイキとしてもよい。換言すれば、バッテリ62のSOCが所定値以下の場合には、希薄燃焼の実施が可能ではないと判定するようにしてもよい。
点火エネルギーの強化は、バッテリ62のSOCが十分確保されていないと実施できない。そこで、バッテリ62のSOCが所定値以下となり、点火エネルギーが強化された第2点火モードを実施できない虞がある状況では、空燃比を切り替える際の燃焼安定性が確保できない虞があるので、希薄燃焼を実施しないようにしてもよい。
これによって、空燃比の切り替えは、点火エネルギーが強化された第2点火モードが実施できる状態でのみ許可されることになる。そのため、空燃比が切り替わる際には、確実に点火エネルギーを強化することができる。
なお、上述した実施例は、内燃機関1の制御方法及び内燃機関1の制御装置に関するものである。
1…内燃機関
6…燃焼室
7…排気弁
8…第1燃料噴射弁
9…第2燃料噴射弁
10…点火プラグ
11…モータ
39…排気側可変動弁機構
40…コントロールユニット
52…バッテリ

Claims (10)

  1. 所定の空燃比で運転する第1運転領域では、所定の第1噴射モードで筒内に直接燃料を噴射するとともに、所定の第1点火モードで筒内の混合気に点火し、
    上記所定の空燃比よりも希薄な空燃比で運転する第2運転領域では、上記第1噴射モードより混合気の均一度が高くなる所定の第2噴射モードで筒内に直接燃料を噴射するとともに、上記第1点火モードよりも点火エネルギーが強化された所定の第2点火モードで筒内の混合気を点火し、
    上記第1運転領域から上記第2運転領域に運転状態が切り替わる際には、上記第1噴射モードを上記第2噴射モードに切り替え、かつ上記第1点火モードを上記第2点火モードに切り替えてから第1所定時間が経過した後に空燃比を上記希薄な空燃比へと切り替えることを特徴とする内燃機関の制御方法。
  2. 上記第2運転領域から上記第1運転領域に運転状態が切り替わる際には、空燃比を上記所定の空燃比に切り替えてから第2所定時間が経過した後に上記第2噴射モードを上記第1噴射モードに切り替え、かつ上記第2点火モードを上記第1点火モードに切り替えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御方法。
  3. 運転状態が切り替わる際には、上記第1運転領域における機関弁のバルブタイミングである第1バルブタイミングよりも内部EGRが少なくなる第2バルブタイミングに上記機関弁のバルブタイミングを維持、または変更した状態で、空燃比を切り替えることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の制御方法。
  4. 上記第1噴射モードでは、1燃焼サイクル中に1回の燃料噴射を行う単段噴射を実施することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の内燃機関の制御方法。
  5. 上記第2噴射モードでは、1燃焼サイクル中に複数回の燃料噴射を行う多段噴射を実施することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関の制御方法。
  6. 上記第2運転領域において、多段噴射を行う際の演算負荷が大きい場合には、1燃焼サイクル中に1回の燃料噴射を行う単段噴射を実施することを特徴とする請求項5に記載の内燃機関の制御方法。
  7. 運転状態が切り替わる際に、内燃機関に駆動力を付与可能な駆動ユニットを駆動することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の内燃機関の制御方法。
  8. 運転状態が切り替わる際に、内燃機関による補機の駆動を停止することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の内燃機関の制御方法。
  9. 点火プラグに電力を供給するバッテリのSOCが所定値以下の場合には、上記第2運転領域において、空燃比を上記所定の空燃比とすることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の内燃機関の制御方法。
  10. 筒内に直接燃料を噴射する多段噴射が可能な燃料噴射弁と、
    筒内の混合気に点火する点火プラグと、
    上記燃料噴射弁の噴射モードと、上記点火プラグの点火モードと、空燃比を運転状態に応じて切り替える制御部と、を有し、
    上記制御部は、
    所定の空燃比で運転する第1運転領域では、上記燃料噴射弁の噴射モードを所定の第1噴射モードにするとともに、上記点火プラグの点火モードを所定の第1点火モードにし、
    上記所定の空燃比よりも希薄な空燃比で運転する第2運転領域では、上記燃料噴射弁の噴射モードを上記第1噴射モードより混合気の均一度が高くなる所定の第2噴射モードにするとともに、上記点火プラグの点火モードを上記第1点火モードよりも点火エネルギーが強化された所定の第2点火モードにし、
    上記第1運転領域から上記第2運転領域に運転状態が切り替わる際には、上記第1噴射モードを上記第2噴射モードに切り替え、かつ上記第1点火モードを上記第2点火モードに切り替えてから第1所定時間が経過した後に空燃比を上記希薄な空燃比へと切り替えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
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