以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、熱交換システム100の概略構成を示す配管系統図である。
熱交換システム100は、温度の異なる熱媒体による熱交換を切り替えて行う。熱交換システム100は、熱媒体としての蒸気の供給源1と、対象物と熱交換を行う熱交換部2と、供給源1からの蒸気を熱交換部2に供給する供給管31と、熱交換部2からドレン又は蒸気を排出する排出管32と、熱交換部2からのドレン又は蒸気を回収する回収部4と、供給管31の温度を調節する温調部6と、制御部9とを備えている。例えば、熱交換システム100は、供給源1から供給される蒸気の温度を変更することによって、温度の異なる熱媒体による熱交換を切り替えて行う。
供給源1は、蒸気を貯留するボイラ11と、ボイラ11から供給される蒸気の圧力を調節する圧力制御弁12とを有している。圧力制御弁12は、ボイラ11から供給される蒸気の圧力を大気圧以下に減圧する。圧力制御弁12を通過する蒸気は、真空蒸気となる。つまり、圧力制御弁12は、真空蒸気の圧力、ひいては、温度を制御する。供給源1は、圧力制御弁12を調節することによって、所定の第1蒸気温度の高温蒸気と、第1蒸気温度よりも低い第1蒸気温度の低温蒸気とを切り替えて供給する。尚、蒸気の供給源は、ボイラ11に限定されず、蒸気ヘッダ等であってもよい。高温蒸気は、第1熱媒体の一例であり、低温蒸気は、第2熱媒体の一例である。
供給管31の上流端は、圧力制御弁12に接続されている。供給管31の下流端は、熱交換部2に接続されている。供給管31は、圧力制御弁12によって圧力が調節された真空蒸気を熱交換部2に供給する。供給管31には、供給管31を流通する蒸気の温度及び圧力を検出するセンサ34が設けられている。
熱交換部2は、対象物を収容する容器21と、容器21の外周面に設けられたジャケット部22とを有している。ジャケット部22には、供給管31が接続されている。ジャケット部22内に供給管31を介して供給された真空蒸気は、容器21内の対象物と熱交換を行う。真空蒸気の温度が対象物の温度よりも高い場合には、対象物が加熱される。一方、真空蒸気の温度が対象物の温度よりも低い場合には、対象物が冷却される。加熱の場合には、ジャケット部22に供給された蒸気の少なくとも一部は、凝縮してドレンとなる。冷却の場合には、ジャケット部22に供給された蒸気は、対象物から熱を受け取り、温度が上昇する。ジャケット部22には、排出管32が接続されている。ジャケット部22内のドレン又は蒸気は、排出管32を介して排出される。
回収部4は、水を貯留するタンク41と、タンク41から水を圧送するポンプ42と、タンク41からの水が駆動流体として供給される一方、排出管32が接続されて熱交換部2からドレン又は蒸気を吸引するエゼクタ5とを有している。回収部4は、エゼクタ5を介して熱交換部2からドレン又は蒸気をタンク41に回収する。
タンク41は、熱交換部2で発生するドレンよりも低温の水を貯留している。タンク41には、タンク41の水をエゼクタ5に供給するための供給管43と、エゼクタ5から排出される水がタンク41へ戻ってくるための排出管44とが接続されている。供給管43には、ポンプ42が設けられている。また、タンク41には、タンク41に水を補給するための補給管45が接続されている。補給管45には、補給管45を流通する水の流量を調節する調節弁45aが設けられている。
タンク41には、補給管45を介して水が補給される。タンク41には、タンク41内の水の温度を検出する温度センサ46が設けられている。タンク41の水温は、熱交換部2に供給される蒸気の温度に応じて調整される。具体的には、タンク41の水温は、熱交換部2に供給される真空蒸気の温度よりも所定温度だけ低い温度に調節される。例えば、タンク41の水温は、熱交換部2に高温蒸気が供給される場合には第1蒸気温度よりも所定温度だけ低い第1水温に調節される一方、熱交換部2に低温蒸気が供給される場合には第2蒸気温度よりも所定温度だけ低く且つ第1水温よりも低い第2水温に調節される。この所定温度は、エゼクタ5の設計に基づいて決められている。タンク41の水温が所望の水温よりも低い場合には、補給管45から水を補給することなく、熱交換部2から回収されるドレン又は蒸気によってタンク41の水温を上昇させる。一方、タンク41の水温が所望の水温よりも高い場合には、補給管45から水を補給することによってタンク41の水温を低減させる。このように、タンク41の水温は、熱交換部2から回収されるドレン又は蒸気と補給管45からの補給水とによって調節される。
エゼクタ5は、駆動流体を噴出するノズル51と、少なくともノズル51の先端を収容し、ノズル51からの駆動流体の噴出により生じる負圧によって吸引流体を吸引する吸引室52と、吸引室52から駆動流体及び吸引流体を混合して排出するディフューザ53とを有している。
ノズル51には、供給管43が接続されている。ノズル51には、タンク41の水が駆動流体としてポンプ42によって供給される。
吸引室52には、ノズル51の少なくとも噴出口が収容されている。吸引室52には、排出管32の一端(下流端)が接続されている。吸引室52は、熱交換部2(詳しくは、ジャケット部22)のドレン又は蒸気を吸引流体として吸引する。吸引室52では、水を噴出するノズル51のジェットポンプ効果によって生じる負圧により、熱交換部2からのドレン又は蒸気を吸引するための吸引力が発生する。吸引室52では、タンク41からの水と熱交換部2からのドレン又は蒸気が混合される。
ディフューザ53の上流端は、吸引室52に接続されている。ディフューザ53の流路断面積は、上流から下流に向かって、一旦縮小した後、最終的に拡大している。ディフューザ53を通過する流体は、最終的に減速すると共に昇圧する。ディフューザ53の下流端は、排出管44を介してタンク41に接続されている。つまり、ディフューザ53は、吸引室52で混合された水又は蒸気をタンク41へ還流させる。
温調部6は、供給管31の外周面に沿って螺旋状に設けられた第1トレース管61と、排出管32の外周面に沿って螺旋状に設けられた第2トレース管62と、供給管43から分岐して、第1トレース管61に接続される流入管63と、第1トレース管61と第2トレース管62とを接続する接続管64と、第2トレース管62から延びてタンク41へ接続される流出管65とを有している。
流入管63の上流端は供給管43に接続されているので、流入管63には、供給管43を流通する、タンク41の水の一部が流通する。
第1トレース管61は、供給管31の外周面に接触している。第1トレース管61には、タンク41の水が流入管63を介して流入し、該水が流通する。第1トレース管61を流通する水は、供給管31と熱交換することによって、供給管31の温度を調節する。
第2トレース管62は、排出管32の外周面に接触している。第2トレース管62には、第1トレース管61を流通した水(即ち、タンク41の水)が接続管64を介して流入し、該水が流通する。第2トレース管62を流通する水は、排出管32と熱交換することによって、排出管32の温度を調節する。第2トレース管62を流通した水は、流出管65を介してタンク41へ流入する。流出管65には、タンク41へ流入する方向の流れを許容し、タンク41から逆流する方向の流れを防止する逆止弁65aが設けられている。
このように、温調部6の第1トレース管61及び第2トレース管62にはタンク41の水が流通しており、この水によって供給管31及び排出管32の温度が調節される。例えば、温調部6は、供給源1から熱交換部2へ供給する蒸気を高温蒸気から低温蒸気に切り替えるときに供給管31及び排出管32を冷却する。また、温調部6は、高温蒸気が供給管31を流通しているときには供給管31を保温する。
制御部9は、プロセッサで形成されている。制御部9には、センサ34及び温度センサ46の検出結果が入力される。制御部9は、圧力制御弁12、ポンプ42及び調節弁45aを制御する。具体的には、制御部9は、センサ34の検出結果に基づいて、熱交換部2に供給される蒸気の温度及び圧力が所望の温度及び圧力となるように圧力制御弁12を調節する。また、制御部9は、温度センサ46の検出結果に基づいて、タンク41の水の温度が所望の水温となるように調節弁45aを調節する。
このように構成された熱交換システム100の動作について説明する。ここでは、熱交換システム100が高温蒸気による対象物の加熱と低温蒸気による対象物の冷却とを切り替えて行う場合について説明する。
まず、熱交換システム100が対象物を加熱する場合について説明する。制御部9は、圧力制御弁12を調節して所定の第1蒸気温度(例えば、80℃)の高温蒸気をジャケット部22に供給すると共に、ポンプ42を駆動させ回収部4を作動させる。ジャケット部22は、エゼクタ5によって減圧されて真空状態となる。高温蒸気は、ジャケット部22において容器21内の対象物と間接的に熱交換し、対象物を加熱する。高温蒸気は、対象物と熱交換して凝縮する。発生したドレンは、排出管32を介して回収部4に吸引される。このとき、タンク41の水温は、回収したドレンによって、ドレンよりも低いもののドレンに近い水温まで上昇する。制御部9は、タンク41の水の温度を高温蒸気よりも所定温度だけ低い第1水温に調節する。例えば、タンク41の水の温度が第1水温よりも高い場合には、制御部9は、調節弁45aを開いてタンク41に水を補給する。
このとき、温調部6の第1トレース管61にはタンク41の水が流通している。タンク41の水の温度は、熱交換システム100の雰囲気温度よりも高い。そのため、供給管31が第1トレース管61によって保温される。これにより、供給管31を流通して熱交換部2に到達するまでの蒸気の温度低下が抑制される。
同様に、第2トレース管62にもタンク41の水が流通している。そのため、排出管32が第2トレース管62によって保温され、排出管32を流通して回収部4に到達するまでのドレンの温度低下が抑制される。これにより、より多くの熱を回収部4に回収することができる。また、排出管32は、熱交換部2に物理的に接続され且つ熱交換部2には供給管31が物理的に接続されているので、排出管32を保温することには、熱交換部2及び供給管31の温度低下を抑制する効果もある。
続いて、熱交換システム100が対象物の加熱から対象物の冷却に動作を切り替える場合について説明する。図2は、加熱から冷却への切り替え時における供給部1からの蒸気の温度、タンク41の水温及び供給管31の温度のタイミングチャートである。
制御部9は、圧力制御弁12を調節して蒸気の温度を低下させ、所定の第2蒸気温度(例えば、40℃)の低温蒸気をジャケット部22に供給する(図2の上段の図を参照)。それに加えて、制御部9は、調節弁45aを制御してタンク41の水の温度を第2水温に調節する。直前まで対象物の加熱が行われていたので、加熱から冷却への切替直後においては、タンク41水の温度は、第1水温となっている。制御部9が調節弁45aを開いてタンク41に水を補給することによって、タンク41の水の温度は、第1水温から第2水温へ低下する(図2の中段の図を参照)。尚、制御部9は、ポンプ42の駆動を継続し、回収部4を作動させている。
供給管31には直前まで高温蒸気が流通していたので、供給管31は比較的高温となっている。ここで、第1トレース管61には、回収部4を循環する水の一部が流入している。タンク41の水は、前述の如く、第1水温から第2水温に低下するので、第1トレース管61に流入する水の温度も、第1水温から第2水温へしだいに低下する。第1トレース管61をタンク41の水が流通することによって、供給管31が冷却される。第1トレース管61による冷却が無ければ、供給管31の温度は、低温蒸気の流通によってしだいに低下していく(図2の下段の図の一点鎖線を参照)。この間は、低温蒸気の温度が供給管31を流通する間に上昇してしまうので、熱交換部2に所望の温度の蒸気を供給することができない。それに対し、第1トレース管61で供給管31を冷却することによって、供給管31が迅速に冷却される(図2の下段の図の実線を参照)。これにより、熱交換部2への適切な温度の蒸気の供給を早期に実現することができる。
同様に、排出管32には直前まで高温蒸気が凝縮したドレンが流通していたので、排出管32も比較的高温となっている。第2トレース管62をタンク4の水が流通することによって排出管32が冷却される。排出管32は、熱交換部2に物理的に接続され且つ熱交換部2には供給管31が物理的に接続されているので、排出管32を冷却することによって、熱交換部2及び供給管31の温度を迅速に低下させることができる。
こうして、対象物の加熱から対象物の冷却に切り替わる際には、第1トレース管61及び第2トレース管62が供給管31及び排出管32を冷却することによって、熱交換部2における適切な冷却を早期に実現することができる。
熱交換部2における対象物の加熱から対象物の冷却への切り替えが完了した後も(即ち、供給管31及び排出管32の温度が低下し、適温の蒸気を熱交換部2に供給できるようになった後も)、第1トレース管61及び第2トレース管62には、タンク4の水が流通している。タンク41の水の温度は、熱交換システム100の雰囲気温度よりも高い。そのため、供給管31が第1トレース管61によって保温される。これにより、供給管31を流通して熱交換部2に到達するまでの蒸気の温度低下が抑制される。
同様に、第2トレース管62にも第1トレース管61を介してタンク41の水が流通している。そのため、排出管32が第2トレース管62によって保温され、排出管32を流通して回収部4に到達するまでの蒸気の温度低下が抑制される。これにより、より多くの熱を回収部4に回収することができる。また、排出管32は、熱交換部2に物理的に接続され且つ熱交換部2には供給管31が物理的に接続されているので、排出管32を保温することには、熱交換部2及び供給管31の温度低下を抑制する効果もある。
次に、熱交換システム100が対象物の冷却から対象物の加熱に動作を切り替える場合について説明する。
制御部9は、圧力制御弁12を調節して蒸気の温度を上昇させ、第1蒸気温度の高温蒸気をジャケット部22に供給する。尚、制御部9は、ポンプ42の駆動を継続し、回収部4を作動させている。直前まで対象物の冷却が行われていたので、冷却から加熱への切替直後においては、タンク41水の温度は、第2水温となっている。高温蒸気がジャケット部22に供給されると、高温蒸気が凝縮してドレンとなり、高温のドレンが回収部4に回収される。回収された高温のドレンは、タンク41に貯留されていく。ドレンの回収をしばらく継続すると、タンク41の水の温度は、上昇して、第1水温となる。
一方、供給管31には直前まで低温蒸気が流通していたので、供給管31は比較的低温となっている。第1トレース管61には、回収部4を循環する水の一部が流入している。タンク41の水は、前述の如く、第2水温から第1水温に上昇するので、第1トレース管61に流入する水の温度も、第2水温から第1水温へしだいに上昇する。第1トレース管61をタンク41の水が流通することによって、供給管31が加熱される。第1トレース管61による加熱が無ければ、供給管31の温度は、高温蒸気の流通によってしだいに上昇していく。この間は、高温蒸気の温度が供給管31を流通する間に低下してしまうので、熱交換部2に所望の温度の蒸気を供給することができない。それに対し、第1トレース管61で供給管31を加熱することによって、供給管31が迅速に加熱される。これにより、熱交換部2への適切な温度の蒸気の供給を早期に実現することができる。
同様に、排出管32には直前まで低温蒸気が流通していたので、排出管32も比較的低温となっている。第2トレース管62をタンク4の水が流通することによって排出管32が加熱される。排出管32は、熱交換部2に物理的に接続され且つ熱交換部2には供給管31が物理的に接続されているので、排出管32を加熱することによって、熱交換部2及び供給管31の温度を迅速に上昇させることができる。
こうして、対象物の冷却から対象物の加熱に切り替わる際には、第1トレース管61及び第2トレース管62が供給管31及び排出管32を加熱することによって、熱交換部2における適切な加熱を早期に実現することができる。
以上のように、熱交換システム100は、対象物と熱交換を行う熱交換部2と、蒸気(熱媒体)の供給源1と、供給源1からの熱媒体を熱交換部2に供給する供給管31と、供給管31の温度を調節する温調部6とを備え、供給源1は、比較的高温の高温蒸気(第1熱媒体)と、高温蒸気よりも低温の低温蒸気(第2熱媒体)とを切り替えて供給し、温調部6は、供給源1から熱交換部2へ供給される蒸気が高温蒸気から低温蒸気に切り替えられるときに供給管31を冷却する。
この構成によれば、供給源1から熱交換部2へ供給する蒸気が高温蒸気から低温蒸気に切り替えられると、供給管31を流通する蒸気も高温蒸気から低温蒸気に切り替わる。供給管31を流通する蒸気が低温蒸気に切り替わる直前においては、供給管31の温度は高温蒸気と近い温度となっている。そのため、供給管31を流通する蒸気が低温蒸気に切り替わった直後においては、供給管31の温度は低温蒸気よりも高温となっている。仮に温調部6が無ければ、低温蒸気の流通がしばらく続くと、供給管31の温度が低下する。この間は、低温蒸気は、供給管31に加熱されることになるので、熱交換部2に到達した低温蒸気は、所定の第2蒸気温度よりも高温になっている。熱交換部2での熱交換を適切に行うには、低温蒸気を流通させながら、あるいは、低温蒸気の流通を止めて、供給管31の温度が成り行きで低温蒸気の温度近くまで低下するのを待つ必要がある。つまり、熱交換部2における適切な熱交換を実現するまでに時間を要してしまう。それに対し、温調部6が供給管31を冷却することによって、供給管31の温度を迅速に低減することができる。その結果、熱交換部2に適温の蒸気を早急に供給することができるようになり、ひいては、熱交換部2における適切な熱交換を早急に実現することができる。こうして、高温蒸気による熱交換から低温蒸気による熱交換への切替を迅速に行うことできる。
また、温調部6は、高温蒸気が供給管31を流通しているときには供給管31を保温する。
この構成によれば、高温蒸気は比較的高温なので、高温蒸気の熱は、供給管31を流通する間に供給管31を介して雰囲気中に放熱され得る。それに対し、温調部6が供給管31を保温することにより、雰囲気中への高温蒸気の放熱を低減することができる。
さらに、熱交換システム100は、熱交換部2からドレン又は蒸気を排出する排出管32と、排出管32を介してドレン又は蒸気を回収する回収部4とをさらに備え、回収部4は、排出管32が接続されたエゼクタ5と、エゼクタ4の駆動流体としての水を貯留するタンク41とを有し、温調部6は、タンク41の水が流通するように構成され、流通する水によって供給管31の温度を調節する。
この構成によれば、熱交換部2に供給され、対象物と熱交換を行った後のドレン又は蒸気は、回収部4に回収される。回収部4は、ドレン又は蒸気を吸引するエゼクタ5と、エゼクタ5の駆動流体としての水を貯留するタンク41とを有している。そして、タンク41の水は、供給管31の温度を調節するための温調部6の水に利用される。つまり、供給管31の温度を水によって調節する構成において、回収部4のタンク41の水を利用することによって、温調部6のための水の供給源を別途設ける必要がない。その結果、部品点数を削減することができる。
さらにまた、タンク41は、貯留する水の温度が調節されるように構成されており、タンク41の水の温度は、熱交換部2に高温蒸気が供給される場合には高温蒸気よりも低い第1水温に調節される一方、熱交換部2に低温蒸気が供給される場合には低温蒸気よりも低く且つ第1水温よりも低い第2水温に調節される。
この構成によれば、タンク41の水の温度は、熱交換部2に高温蒸気が供給される場合と熱交換部2に低温蒸気が供給される場合とで異なる温度に調節される。タンク41の水はエゼクタ5の駆動流体である。エゼクタ5の駆動流体の温度は、通常、エゼクタ5が吸引する流体の温度よりも低い。尚、エゼクタ5の駆動流体の温度がエゼクタ5の吸引流体の温度よりもどれくらい低いかは、エゼクタ5の設計に依存する。そのため、タンク41の水の温度は、熱交換部2に高温蒸気が供給される場合には高温蒸気よりも低温の第1水温に調整される一方、熱交換部2に低温蒸気が供給される場合には低温蒸気よりも低温の第2水温に調整される。つまり、熱交換部2に供給される蒸気が高温蒸気から低温蒸気へ切り替わる際には、温調部6には第1水温から第2水温へ温度が低下していく水が供給され、最終的には第2水温の水が供給される。これにより、供給管31を迅速に冷却することができる。一方、熱交換部2に供給される蒸気が低温蒸気から高温蒸気へ切り替わる際には、温調部6には第2水温から第1水温へ温度が上昇していく水が供給され、最終的には第1水温の水が供給される。これにより、供給管31を迅速に加熱することができる。このように、エゼクタ5の駆動のために温度が調整されるタンク41の水を利用して、供給管31を効果的に冷却又は加熱することができる。
〈変形例1〉
続いて、変形例1に係る温調部206について説明する。図3は、変形例1に係る温調部206を有する熱交換システム200の概略構成を示す配管系統図である。
温調部206は、前述の第1トレース管61、第2トレース管62、流入管63、接続管64及び流出管65に加えて、流入管63を流通する流体の流量を調節する調節弁263aと、第1トレース管61及び第2トレース管62に空気を導入するための導入管266と、導入管266を流通する空気の流量を調節する調節弁266aと、導入管266に空気を供給するコンプレッサ267とを有している。調節弁263a、調節弁266a及びコンプレッサ267は、制御部9によって制御される。
導入管266は、流入管63のうち調節弁263aよりも下流側に接続されている。コンプレッサ267は、導入管266を介して流入管63に空気を導入する。調節弁266aによって空気の導入量が調節される。流入管63に流入した空気は、第1トレース管61及び第2トレース管62に流入する。この空気の流入に伴って、第1トレース管61及び第2トレース管62内の水が排出され、タンク41へ戻っていく。
対象物の加熱から対象物の冷却へ切り替わるとき、又は、対象物の冷却から対象物の加熱へ切り替わるときには、制御部9は、調節弁263aを開くことによって、前述の如く、タンク41の水を第1トレース管61及び第2トレース管62に流通させて供給管31及び排出管32の冷却及び加熱を実行する。このとき、調節弁266aは閉じられ、コンプレッサ267は停止している。その後、制御部9は、適温の蒸気が熱交換部2に供給されるようになったこと(即ち、温度の異なる熱冷媒による熱交換の切替が完了したこと)をセンサ34の検出結果に基づいて確認すると、調節弁263aを閉じ、コンプレッサ267を作動させると共に調節弁266aを開く。これにより、導入管266を介して第1トレース管61及び第2トレース管62に空気が流入し、それに伴い、第1トレース管61及び第2トレース管62から水が押し出される。その後、第1トレース管61及び第2トレース管62から水が排出され、第1トレース管61及び第2トレース管62に空気が充填されたタイミングで、制御部9は、コンプレッサ267の作動を停止すると共に調節弁266aを閉じる。これにより、第1トレース管61及び第2トレース管62には空気が充填された状態が維持される。その結果、供給管31及び排出管32の周りに空気層が形成されることになるので、供給管31及び排出管32を流通する熱媒体の雰囲気中への放熱を低減することができる。
以上のように、変形例1に係る温調部206は、供給源1から熱交換部2へ供給する熱媒体の切替が完了した後は、タンク41の水に代えて空気が供給される。
〈変形例2〉
次に、変形例2に係る温調部306について説明する。図4は、変形例2に係る温調部306の縦断面図である。
温調部306は、図4に示すように、温調部6の第1トレース管61に代えて、供給管31の外周を覆う第1外管361を有している。さらに、温調部306は、図示を省略するが、第2トレース管62に代えて、排出管32の外周を覆う第2外管を有している。
詳しくは、第1外管361は、供給管31の全周を覆った状態で、供給管31に沿って延びている。つまり、第1外管361と供給管31とは、二重管を形成している。流入管63は、第1外管361に接続されている。同様に、第2外管は、排出管32の全周を覆った状態で、排出管32に沿って延びている。つまり、第2外管と排出管32とは、二重管を形成している。接続管64は、第1外管361と第2外管とを接続している。流出管65は、第2外管に接続されている。
第1外管361及び第2外管へは、流入管63を介してタンク41の水が供給され、該水が第1外管361及び第2外管を流通する。第1外管361及び第2外管は、それぞれ供給管31及び排出管32の全周を覆っているので、内部を流通する水と供給管31及び排出管32との接触面積が大きい。そのため、水と供給管31及び排出管32との間で熱交換が効率良く行われ、供給管31及び排出管32の冷却又は加熱を迅速に行うことができる。
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
例えば、熱交換システム100が熱交換に利用する熱冷媒は、蒸気に限らず、水等の他の冷媒であってもよい。
また、熱交換システム100は、高温蒸気によって対象物を加熱し、低温蒸気によって対象物を冷却しているが、これに限られるものではない。加熱か冷却かは、熱媒体と対象物との温度の大小関係によって決まる。例えば、熱交換システム100は、非常に高温の対象物を、高温蒸気によって冷却した後、低温蒸気でさらに冷却してもよい。あるいは、熱交換システム100は、非常に低温の対象物を、低温蒸気によって加熱した後、高温蒸気によってさらに加熱してもよい。要するに、温度が異なる熱媒体による熱交換を切り替えて行う限り、対象物の加熱であっても冷却であってもよい。
さらに、熱交換システム100が、一の熱媒体で熱交換する対象物と別の熱媒体で熱交換する対象物とは、同一でなくてもよい。例えば、熱交換システム100は、高温蒸気によって或る対象物を加熱した後、別の対象物を低温蒸気によって加熱してもよい。要するに、温度が異なる熱媒体による熱交換の対象物は、同一であっても別々であってもよい。
さらに、熱交換システム100の第1熱媒体と第2熱媒体は、蒸気と水であってもよい。つまり、熱交換システム100は、第1熱媒体の供給源と、第2熱媒体の供給源とを別々に備えていてもよい。例えば、熱交換システム100は、蒸気の供給源1に加えて、その蒸気よりも低温の水の供給源を備え、供給管31に供給される熱媒体が蒸気と水とで切り替えられるように構成されていてもよい。このような構成においては、供給管31は、蒸気と水とで共用される。そして、熱媒体を切り替える際に、供給管31は、切替前の熱媒体の温度に近い温度になっている。そのため、供給管31の温度を温調部6によって調節することによって、前述の如く、熱媒体の切り替えを迅速に実現することができる。
また、温調部6に供給する水は、回収部4のタンク41の水を利用しているが、これに限られるものではない。例えば、タンク41とは別に、温調部6に供給する水の供給源を別途設けてもよい。尚、温調部6に供給される熱媒体は、水に限定されない。
さらに、温調部6は、供給管31及び排出管32の温度を調節しているが、少なくとも供給管31の温度を調節すればよい。つまり、図1の構成においては、第2トレース管62を省略してもよい。あるいは、温調部6は、第1トレース管61に加えて、熱交換部2に沿って設けられたトレース管を有していてもよい。
第1トレース管61及び第2トレース管62は、それぞれ供給管31及び排出管32に沿って螺旋状に延びているが、これに限られるものではない。例えば、第1トレース管61及び第2トレース管62は、それぞれ供給管31及び排出管32に沿って平行に延びていてもよい。