JP6939230B2 - シール機構 - Google Patents

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Description

本発明は、シール機構に関し、特に、ハウジングと回転軸との隙間を封止するシール機構に関する。
一般的に、回転軸がハウジングの軸穴に回転可能に挿入されるような構造においては、ハウジング内からの潤滑油の漏出や、ハウジング内への異物の侵入を防止するシール機構が設けられている。
この種のシール機構の一例として、車両に搭載されるデファレンシャル装置のハウジング軸穴と、該軸穴に挿入される駆動軸との隙間を封止するオイルシールが広く用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特開2017−075619号公報 特開2016−194330号公報 特開2016−148410号公報
ところで、デファレンシャル装置等の減速機のハウジング内には、複数のギヤが収容されている。これらのギヤが噛合しながら動作すると、摩擦熱等によってハウジング内の内圧を上昇させる。このような内圧がオイルシールに作用すると、オイルシールがハウジングから抜け出てしまう可能性がある。
オイルシールの抜け出しを防止するには、ハウジングの軸穴周縁の外周側にオイルシールの移動を規制する係止板材を設けたり、或いは、スナップリング等によりオイルシールをハウジングに固定したりする必要がある。しかしながら、このような抜け出し防止構造は、部品点数や組付け工数の増加を招き、コストを上昇させるといった課題がある。
本開示の技術は、簡潔な構造で、シール部材の抜け出しを効果的に防止することができるシール機構を提供することを目的とする。
本開示の技術は、ハウジングに設けられて回転軸が挿入される軸穴部と、前記軸穴部内に、少なくともその外周面を該軸穴部の内周面と接して設けられ、前記軸穴部と前記回転軸との隙間を封止するシール部材と、前記軸穴部の内周面又は前記シール部材の外周面の少なくとも一方に凹設された螺旋溝と、を備えることを特徴とする。
また、前記螺旋溝が、その巻き方向を前記回転軸の回転方向と同方向に形成れてもよい。
また、前記螺旋溝が、ハウジング外側溝側面とハウジング内側溝側面とを有する断面V字状に形成されると共に、前記ハウジング外側溝側面の傾斜角度が前記ハウジング内側溝側面の傾斜角度よりも大きく設定されてもよい。
また、前記軸穴部が、ハウジング内側の第1穴部と、該第1穴部よりも拡径されたハウジング外側の第2穴部とを含み、前記シール部材が前記第2穴部に設けられ、前記螺旋溝が前記第2穴部の内周面に前記第1穴部から所定の間隔を隔てて形成されてもよい。
また、前記シール部材が、その外周面を前記軸穴部の内周面の少なくとも一部に接触させるシール本体と、該シール本体が被着された補強環と、前記シール本体の内周面を前記回転軸に圧接させるガータースプリングとを含むオイルシールであってもよい。
本開示の技術によれば、簡潔な構造で、シール部材の抜け出しを効果的に防止することができる。
本発明の一実施形態に係るデファレンシャル装置を示す模式的な断面図である。 本発明の一実施形態に係るシール機構において、(A)はオイルシールを装着する前の状態を示す模式的な断面図、(B)はオイルシールを装着した状態を示す模式的な断面図である。 他の実施形態に係るシール機構を示す模式的な断面図である。
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係るシール機構について説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
[デファレンシャル装置]
図1は、本実施形態に係るデファレンシャル装置10の模式的な断面図である。同図に示すように、デファレンシャル装置10は、潤滑油が封入されたハウジング11を備えている。ハウジング11には、ドライブピニオンシャフト22A及び、左右のドライブシャフト22B,22Cが回転可能に挿入されている。また、ハウジング11内には、ドライブピニオンギヤ23、リングギヤ24、デフケース25、複数(例えば、4個)のデフピニオンギヤ26、左右一対のサイドギヤ27,28が収容されている。なお、図中において、符号Lは左ドライブシャフト22Bに接続された左駆動輪、符号Rは右ドライブシャフト22Cに接続された右駆動輪Rをそれぞれ示している。
ハウジング11内には、ドライブピニオンシャフト22Aの出力側がベアリング21A,Bを介して回転可能に軸支されている。ドライブピニオンシャフト22Aの出力端には、ドライブピニオンギヤ23が一体回転可能に設けられている。ドライブピニオンギヤ23は、リングギヤ24と常時噛合する。
リングギヤ24は、図示しないボルトによりデフケース25に固定されている。デフケース25は、ハウジング11に回転可能に軸支されている。デフピニオンギヤ26は、デフケース25のスパイダ軸29に回転可能に軸支されている。デフピニオンギヤ26は、左右のサイドギヤ27,28と常時噛合する。各サイドギヤ27,28は、左右のドライブシャフト22B,Cにそれぞれスプライン嵌合されている。
ハウジング11の前端部には、ドライブピニオンシャフト22Aを挿入するための前側軸穴12Aが貫通形成されている。また、ハウジング11の左側部には、左ドライブシャフト22Bを挿入するための左側軸穴12Bが貫通形成されている。さらに、ハウジング11の右側部には、右ドライブシャフト22Cを挿入するための左側軸穴12Cが貫通形成されている。
本実施形態において、各シャフト22A〜Cと各軸穴12A〜Cとの間には、これらの隙間を封止するシール機構50A〜Cがそれぞれ装着されている。
以下、これらシール機構50A〜Cの詳細につい説明する。なお、各シール機構50A〜Cは、基本的に同様に構成されるため、以下の説明において、各シール機構50A〜Cを単にシール機構50、各シャフト22A〜Cを単にシャフト22、各軸穴12A〜Cを単に軸穴12と称して説明する。
[シール機構]
図2に示すように、シール機構50は、ハウジング11に設けられてシャフト22(回転軸の一例)を回転可能に挿通させる軸穴12と、軸穴12内に圧入装着されたオイルシール60(シール部材の一例)とを備えている。
軸穴12は、ハウジング内側の小径穴部13(第1穴部)と、ハウジング外側の大径穴部14(第2穴部)と、これら小径穴部13と大径穴部14との間に形成された円環状の側面部15とを有する段付き穴とされている。小径穴部13は、その穴径をシャフト22の外径よりも僅かに大きく形成されている。大径穴部14は、その穴径を小径穴部13の穴径よりも大きく、且つ、オイルシール60の外径と略同径に形成されている。
オイルシール60は、シール本体61と、補強環62と、ガータースプリング63とを備えている。
シール本体61は、例えば、ゴムやシリコン等の弾性材で形成されており、外側円環部61Aと、内側円環部61Bと、これらを繋ぐ中間円環部61Cとを一体に有する断面略C字状を呈している。内側円環部61Bの先端側穴径は、シャフト22の外径と略同径に形成されている。すなわち、内側円環部61Bの先端側内周面がシャフト22の外周面と接触ないし摺接するようになっている。外側円環部61Aの外径は、大径穴部14の穴径と略同径に形成されている。すなわち、外側円環部61Aの外周面を大径穴部14の内周面と圧入接触させることにより、オイルシール60全体が大径穴部14に保持されるようになっている。
補強環62は、例えば、金属材等で形成されており、円筒部62Aと、フランジ部62Bとを一体に有する断面略L字状を呈している。補強環62には、円筒部62A及びフランジ部62Bの全体を覆うようにシール本体61が被着されている。
ガータースプリング63は、リング状に形成されており、内側円環部61Bの先端側外周に取り付けられている。すなわち、ガータースプリング63の締め付け力によって、内側円環部61Bの先端側内周面がシャフト22の外周面に強制的に圧接されることにより、これらの隙間が封止されるように構成されている。
本実施形態において、大径穴部14の内周面には、該内周面を螺旋状に切り欠いて形成した螺旋溝17が凹設されている。螺旋溝17の溝形状は、ハウジング外側の溝側面17Aとハウジング内側の溝側面17Bとが略同角度で対称に傾斜する断面略V字状の雌ネジ谷状に形成されている。また、螺旋溝17の巻き方向は、シャフト22の回転方向(好ましくは、車両前進時の回転方向)と同方向とされている。さらに、螺旋溝17は、好ましくは、その螺旋軸方向長さL1が大径穴部14の穴軸方向長さL2よりも短く形成されると共に、そのハウジング内側の終端部17Cと側面部15(小径穴部13のハウジング外側の端部)との間に所定のクリアランスCが確保されるように、ハウジング外側にオフセットして設けられている。
以上のように構成された本実施形態のシール機構50によれば、オイルシール60が圧入されるハウジング11の大径穴部14の内周面に、シャフト22の回転方向と同方向に巻かれた螺旋溝17を設けたことで、オイルシール60がシャフト22と共回りすると、オイルシール60は螺旋巻き方向に回動しながらハウジング内側に変位されるようになる。これにより、ハウジング11内の圧力がギヤ噛合等による摩擦熱で上昇しても、オイルシール60が大径穴部14内に確実に保持されるようになり、オイルシール60の抜け出しを効果的に防止することができる。
また、軸穴12の形状をハウジング内側の小径穴部13とハウジング外側の大径穴部14とを有する段付き穴としたことで、オイルシール60のハウジング内側の端部(外側円環部61Aの端面)が側面部15に当接するように構成されている。これにより、オイルシール60がシャフト22と共回りしてハウジング内側に変位しても、オイルシール60の移動が側面部15によって規制(位置決め)されるようになり、オイルシール60のハウジング11内への引き込みを確実に防止することができる。
また、ハウジング11の大径穴部14の内周面に溝加工を施すのみでよく、従前の抜け出し防止用の係止板材やスナップリング等が不要となることで、部品点数や組付け工数の増加によるコスト上昇を効果的に抑えることができる。
また、螺旋溝17と小径穴部13との間にクリアランスCを確保したことにより、ハウジング11内の潤滑油が螺旋溝17を伝ってハウジング11の外部に漏れ出ることも効果的に防止することができる。
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
例えば、図3に示すように、螺旋溝17の溝形状を、ハウジング外側の溝側面17Aがハウジング内側の溝側面17Bよりも大きく傾斜(図示例では、溝側面17Aと大径穴部14の内周面とのなす角度が略直角)する非対称のV字状に形成してもよい。このように構成すれば、オイルシール60の抜け出し方向への抵抗が大きくなることで、オイルシール60の抜け出しをより効果的に防止することが可能になる。
また、螺旋溝17の巻き数(ピッチ数)は、図示例の三巻きに限定されず、一巻き以上あればよい。
また、シール部材は図示例のオイルシール60に限定されず、シャフト22(回転軸)とハウジング11との隙間を封止する他のシール部材であってもよい。
また、螺旋溝17は、軸穴12の大径穴部14の内周面に設けられるものとして説明したが、オイルシール60の外周面に設けられてもよい。
また、本実施形態の適用範囲は、デファレンシャル装置10に限定されず、トランスミッションやトランスファー等、回転軸がハウジングに回転可能に挿入される他の装置のシール機構にも広く適用することが可能である。
10 デファレンシャル装置
11 ハウジング
12 軸穴
13 小径穴部(第1穴部)
14 大径穴部(第2穴部)
15 側面部
17 螺旋溝
22 シャフト(駆動軸)
50 シール機構
60 オイルシール
61 シール本体
62 補強環
63 ガータースプリング

Claims (4)

  1. ハウジングに設けられて回転軸が挿入される軸穴部と、
    前記軸穴部内に、少なくともその外周面を該軸穴部の内周面と接して設けられ、前記軸穴部と前記回転軸との隙間を封止するシール部材と、
    前記軸穴部の前記シール部材の外周面が接する内周面又は前記シール部材の外周面の少なくとも一方に凹設された螺旋溝と、を備え、
    前記シール部材が、その外周面を前記軸穴部の内周面の少なくとも一部に接触させるシール本体と、該シール本体が被着された補強環と、前記シール本体の内周面を前記回転軸に圧接させるガータースプリングとを含むオイルシールである
    ことを特徴とするシール機構。
  2. 前記螺旋溝が、その巻き方向を前記回転軸の回転方向に対し、前記螺旋溝がハウジング内側に向かって進んでいく方向に形成された
    請求項1に記載のシール機構。
  3. 前記螺旋溝が、ハウジング外側溝側面とハウジング内側溝側面とを有する断面V字状に形成されると共に、前記ハウジング外側溝側面の傾斜角度が前記ハウジング内側溝側面の傾斜角度よりも大きく設定された
    請求項1又は2に記載のシール機構。
  4. 前記軸穴部が、ハウジング内側の第1穴部と、該第1穴部よりも拡径されたハウジング外側の第2穴部とを含み、前記シール部材が前記第2穴部に設けられ、前記螺旋溝が前記第2穴部の前記シール部材の外周面が接する内周面に前記第1穴部から所定の間隔を隔てて形成された
    請求項1から3の何れか一項に記載のシール機構。
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