以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下で説明する図面において、同一又は相当する構成要素には、同一の符号を付して重複した説明を省略する。
まず、研磨装置の詳細について図面を参照しつつ説明する。図1は、研磨装置の一実施形態を示す図である。図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド19を支持する研磨テーブル18と、研磨対象物である基板の一例としてのウェハWを保持して研磨テーブル18上の研磨パッド19に押圧する基板保持装置1を備えている、以下の説明では、基板保持装置1を研磨ヘッド1と称する。
研磨テーブル18は、テーブル軸18aを介してその下方に配置されるテーブルモータ29に連結されており、そのテーブル軸18a周りに回転可能になっている。研磨パッド19は研磨テーブル18の上面に貼付されており、研磨パッド19の表面19aがウェハWを研磨する研磨面を構成している。研磨テーブル18の上方には研磨液供給ノズル25が設置されており、この研磨液供給ノズル25によって研磨テーブル18上の研磨パッド19上に研磨液Qが供給されるようになっている。
研磨ヘッド1は、ウェハWを研磨面19aに対して押圧するヘッド本体2と、ウェハWを保持してウェハWが研磨ヘッド1から飛び出さないようにするリテーナリング3とを備えている。研磨ヘッド1は、ヘッドシャフト27に接続されており、このヘッドシャフト27は、上下動機構81によりヘッドアーム64に対して上下動するようになっている。このヘッドシャフト27の上下動により、ヘッドアーム64に対して研磨ヘッド1の全体を昇降させ位置決めするようになっている。ヘッドシャフト27の上端にはロータリージョイント82が取り付けられている。
ヘッドシャフト27および研磨ヘッド1を上下動させる上下動機構81は、軸受83を介してヘッドシャフト27を回転可能に支持するブリッジ84と、ブリッジ84に取り付けられたボールねじ88と、支柱86により支持された支持台85と、支持台85上に設けられたサーボモータ90とを備えている。サーボモータ90を支持する支持台85は、支柱86を介してヘッドアーム64に固定されている。
ボールねじ88は、サーボモータ90に連結されたねじ軸88aと、このねじ軸88aが螺合するナット88bとを備えている。ヘッドシャフト27は、ブリッジ84と一体となって上下動するようになっている。したがって、サーボモータ90を駆動すると、ボールねじ88を介してブリッジ84が上下動し、これによりヘッドシャフト27および研磨ヘッド1が上下動する。
ヘッドシャフト27はキー(図示しない)を介して回転筒66に連結されている。この回転筒66はその外周部にタイミングプーリ67を備えている。ヘッドアーム64にはヘッドモータ68が固定されており、上記タイミングプーリ67は、タイミングベルト69を介してヘッドモータ68に設けられたタイミングプーリ91に接続されている。したがって、ヘッドモータ68を回転駆動することによってタイミングプーリ91、タイミングベルト69、およびタイミングプーリ67を介して回転筒66およびヘッドシャフト27が一体に回転し、研磨ヘッド1が回転する。ヘッドアーム64は、フレーム(図示しない)に回転可能に支持されたアームシャフト80によって支持されている。研磨装置は、ヘッドモータ68、サーボモータ90をはじめとする装置内の各機器を制御する制御装置40を備えている。
研磨ヘッド1は、その下面にウェハWを保持できるように構成されている。ヘッドアーム64はアームシャフト80を中心として旋回可能に構成されており、下面にウェハWを保持した研磨ヘッド1は、ヘッドアーム64の旋回によりウェハWの受取位置から研磨テーブル18の上方位置に移動される。
ウェハWの研磨は次のようにして行われる。研磨ヘッド1および研磨テーブル18をそれぞれ回転させ、研磨テーブル18の上方に設けられた研磨液供給ノズル25から研磨パッド19上に研磨液Qを供給する。この状態で、研磨ヘッド1を所定の位置(所定の高さ)まで下降させ、この所定の位置でウェハWを研磨パッド19の研磨面19aに押圧する。ウェハWは研磨パッド19の研磨面19aに摺接され、これによりウェハWの表面が研磨される。
次いで、研磨ヘッド1の詳細について図面を参照しつつ説明する。図2は、研磨ヘッド(基板保持装置)1の概略断面図である。図2に示すように、研磨ヘッド1は、ウェハWを研磨面19aに対して押圧するヘッド本体2と、ウェハWを囲むように配置されたリテーナリング3とを備えている。ヘッド本体2およびリテーナリング3は、ヘッドシャフト27の回転により一体に回転するように構成されている。リテーナリング3は、ヘッド本体2とは独立して上下動可能に構成されている。
ヘッド本体2は、円形のフランジ41と、フランジ41の下面に取り付けられたスペーサ42と、スペーサ42の下面に取り付けられたキャリア(ベースプレート)43とを備えている。フランジ41は、ヘッドシャフト27に連結されている。キャリア43は、スペーサ42を介してフランジ41に連結されており、フランジ41、スペーサ42、およびキャリア43は、一体に回転し、かつ上下動する。
フランジ41、スペーサ42、およびキャリア43を有するヘッド本体2は、エンジニアリングプラスティック(例えば、PEEK)などの樹脂により形成されている。なお、フランジ41をSUS、アルミニウムなどの金属で形成してもよい。
ヘッド本体2の下面には、ウェハWの裏面に当接する弾性膜10が連結されている。弾性膜10をヘッド本体2に連結する方法については後述する。弾性膜10の下面が基板保持面10aを構成する。弾性膜10は複数の(図2では、6つの)環状の周壁14a,14b,14c,14d,14e,14fを有しており、これら周壁14a〜14fは、同心状に配置されている。
これらの周壁14a〜14fにより、弾性膜10とヘッド本体2との間に6つの圧力室、すなわち、中央に位置する円形状の中央圧力室16a、最外周に位置する環状のエッジ圧力室16f、および中央圧力室16aとエッジ圧力室16fとの間に位置する中間圧力室16b,16c,16d,16eが形成されている。
これらの圧力室16a〜16fはロータリージョイント82を経由して圧力調整装置65に接続されており、圧力調整装置65から各圧力室16a〜16fにそれぞれ延びる流体ライン73を通って流体(例えば、空気)が供給されるようになっている。圧力調整装置65は、制御装置40に接続されており、これら6つの圧力室16a〜16f内の圧力を独立に調整できるようになっている。
さらに、圧力調整装置65は、圧力室16a〜16f内に負圧を形成することも可能となっている。このように、研磨ヘッド1においては、ヘッド本体2と弾性膜10との間に形成される各圧力室16a〜16fに供給する流体の圧力を調整することにより、ウェハWに加えられる押圧力をウェハWの領域毎に調整できる。
弾性膜10は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ポリウレタンゴム、シリコンゴム等の強度および耐久性に優れた柔軟なゴム材によって形成されている。各圧力室16a〜16fは大気開放機構(図示しない)にも接続されており、圧力室16a〜16fを大気開放することも可能である。
リテーナリング3は、ヘッド本体2のキャリア43および弾性膜10を囲むように配置されている。このリテーナリング3は、研磨パッド19の研磨面19aに接触するリング部材3aと、このリング部材3aの上部に固定されたドライブリング3bとを有している。リング部材3aは、図示しない複数のボルトによってドライブリング3bに結合されている。リング部材3aは、ウェハWの外周縁を囲むように配置されており、ウェハWの研磨中にウェハWが研磨ヘッド1から飛び出さないようにウェハWを保持している。
リテーナリング3の上部は、環状のリテーナリング押圧機構60に連結されており、このリテーナリング押圧機構60は、リテーナリング3の上面(より具体的には、ドライブリング3bの上面)の全体に均一な下向きの荷重を与え、これによりリテーナリング3の下面(すなわち、リング部材3aの下面)を研磨パッド19の研磨面19aに対して押圧する。
リテーナリング押圧機構60は、ドライブリング3bの上部に固定された環状のピストン61と、ピストン61の上面に接続された環状のローリングダイヤフラム62とを備えている。ローリングダイヤフラム62の内部にはリテーナリング圧力室63が形成されている。このリテーナリング圧力室63はロータリージョイント82を経由して圧力調整装置65に接続されており、圧力調整装置65からリテーナリング圧力室63に延びる流体ライン73を通って流体(例えば、空気)が供給されるようになっている。
この圧力調整装置65からリテーナリング圧力室63に流体(例えば、空気)を供給すると、ローリングダイヤフラム62がピストン61を下方に押し下げ、さらに、ピストン61はリテーナリング3の全体を下方に押し下げる。このようにして、リテーナリング押圧機構60は、リテーナリング3の下面を研磨パッド19の研磨面19aに対して押圧する。さらに、圧力調整装置65によりリテーナリング圧力室63内に負圧を形成することにより、リテーナリング3の全体を上昇させることができる。リテーナリング圧力室63は大気開放機構(図示しない)にも接続されており、リテーナリング圧力室63を大気開放することも可能である。
リテーナリング3は、リテーナリング押圧機構60に着脱可能に連結されている。より具体的には、ピストン61は金属などの磁性材から形成されており、ドライブリング3bの上部には複数の磁石99が配置されている。これら磁石99がピストン61を引き付けることにより、リテーナリング3がピストン61に磁力により固定される。ピストン61の磁性材としては、例えば、耐蝕性の磁性ステンレスが使用される。なお、ドライブリング3bを磁性材で形成し、ピストン61に磁石を配置してもよい。
リテーナリング3は、連結部材75を介して球面軸受85に連結されている。この球面軸受85は、リテーナリング3の半径方向内側に配置されている。連結部材75は、ヘッド本体2の中心部に配置された軸部76と、この軸部76に固定されたハブ77と、このハブ77からから放射状に延びる複数のスポーク78とを備えている。軸部76は球面軸受85内を縦方向に延びている。
スポーク78の一方の端部は、ハブ77に固定されており、スポーク78の他方の端部は、リテーナリング3のドライブリング3bに固定されている。ハブ77と、スポーク78と、ドライブリング3bとは一体に形成されている。キャリア43には、複数対の駆動ピン(図示しない)が固定されている。各対の駆動ピンは各スポーク78の両側に配置されており、キャリア43の回転は、駆動ピンを介してリテーナリング3に伝達され、これによりヘッド本体2とリテーナリング3とは一体に回転する。
連結部材75の軸部76は、ヘッド本体2の中央部に配置された球面軸受85に縦方向に移動自在に支持されている。このような構成により、連結部材75およびこれに固定されたリテーナリング3は、ヘッド本体2に対して縦方向に移動可能となっている。さらに、リテーナリング3は、球面軸受85により傾動可能に支持されている。
図3は、弾性膜10がヘッド本体2に連結されている状態を示す概略断面図であり、図4は、図3に示す弾性膜10の一部を示す拡大断面図である。弾性膜10は、ウェハWに接触する円形の当接部11と、当接部11に接続される複数の(図3では、6つの)周壁14a,14b,14c,14d,14e,14fを有している。
上述したように、これら6つの周壁14a〜14fによって、6つの圧力室(すなわち、中央圧力室16a、中間圧力室16b〜16e、およびエッジ圧力室16f)が形成される。当接部11はウェハWの裏面、すなわち研磨すべき表面とは反対側の面に接触し、ウェハWを研磨パッド19に対して押し付ける。周壁14a〜14fは、同心状に配置された環状の周壁である。
周壁14fは、最も外側の周壁であり、当接部11の周端部から上方に延びる。以下の説明では、周壁14fをエッジ周壁(または側壁)14fと称する。周壁14eはエッジ周壁14fの径方向内側に配置され、周壁14dは周壁14eの径方向内側に配置され、周壁14cは周壁14dの径方向内側に配置され、周壁14bは周壁14cの径方向内側に配置され、周壁14aは周壁14bの径方向内側に配置されている。
以下の説明では、周壁14aを第1内部周壁14aと称し、周壁14bを第2内部周壁14bと称し、周壁14cを第3内部周壁14cと称し、周壁14dを第4内部周壁14dと称し、周壁14eを第5内部周壁14eと称する。周壁14a〜14eは隔壁14a〜14eと称されてもよい。内部周壁14a〜14eは当接部11から上方に延びている。
当接部11は、第2内部周壁14bと第3内部周壁14cとの間に形成された圧力室16cに連通する複数の通孔17を有している。図3および図4では1つの通孔17のみを示す。当接部11にウェハWが接触した状態で中間圧力室16cに真空が形成されると、ウェハWが当接部11の下面に、すなわち研磨ヘッド1に真空吸引により保持される。
さらに、ウェハWが研磨パッド19から離れた状態で中間圧力室16cに流体を供給すると、ウェハWが研磨ヘッド1からリリースされる。通孔17は圧力室16cの代わりに他の圧力室に形成してもよい。その際にはウェハWの真空吸引および/またはリリースは通孔17を形成した圧力室の圧力を制御することにより行う。
本実施形態では、内部周壁14a〜14eは、径方向内側に傾斜した傾斜周壁として構成されており、同一の形状を有する。以下では、傾斜周壁として構成された内部周壁14bを説明する。
傾斜周壁である内部周壁14bは、当接部11から斜め上方に延びる周壁本体55と、該周壁本体55の先端に形成された環状のシール突起54とから構成される。本実施形態では、シール突起54は円状の断面形状を有しており、周壁本体55は、シール突起54の接線方向に延びている。内部周壁14bは、その下端から上端までの全体において径方向内側に所定の角度θで傾斜しつつ、上方に延びている。内部周壁14bの下端は当接部11に接続され、内部周壁14bの上端(すなわち、シール突起54)は、後述するヘッド本体2の連結リング(ホルダリング)23aに接続される。当接部11に対する内部周壁14bの傾斜角度θは、好ましくは、20°〜70°の範囲に設定される。
図4に示すように、傾斜周壁として構成された内部周壁14a〜14eは互いに同一の形状を有しているので、内部周壁14a〜14eは互いに平行に延びている。より具体的には、内部周壁14a〜14eの周壁本体55は互いに平行である。図3に示すように、第1内部周壁14aと第2内部周壁14bとの間に圧力室16bが形成され、第2内部周壁14bと第3内部周壁14cとの間に圧力室16cが形成され、第3内部周壁14cと第4内部周壁14dとの間に圧力室16dが形成され、第4内部周壁14dと第5内周壁14eとの間に圧力室16eが形成され、第5内部周壁14eとエッジ周壁14fとの間に圧力室16fが形成される。
さらに、図3および図4に示す弾性膜10において、傾斜周壁として構成された内部周壁14a〜14eは互いに平行に延びている。すなわち、内部周壁14a〜14eの周壁本体55の傾斜角度θは同一である。この場合、隣接する内部周壁14を極めて狭い間隔で配置することができるので、圧力室16の径方向の幅を極めて狭くすることができる。
本実施形態では、エッジ周壁14fは、当接部11に対して垂直に延びる垂直部22と該垂直部22に接続される傾斜部28とから構成されている。傾斜部28は、垂直部22から径方向内側に延びる。当接部11に対する傾斜部28の傾斜角度は、内部周壁14a〜14eの傾斜角度θと同一である。図示はしないが、エッジ周壁14fは、当接部11からヘッド本体2まで垂直に延びてもよい。
上述したように、各圧力室16a〜16fには、圧力調整装置65からロータリージョイント82を介して延びる流体ライン73(図1および図2参照)を通って流体がそれぞれ供給される。図3には、圧力調整装置65から圧力室16cに流体を供給するための流体ライン73の一部のみが示されている。
図3に示す流体ライン73の一部は、スペーサ42に形成された貫通孔73aと、キャリア43に形成され、貫通孔73aと連通する貫通孔73bと、後述する連結リング23に形成され、貫通孔73bに連通する貫通孔73cとによって構成される。これら貫通孔73a,73b,73cは、同一の直径を有している。
連結リング23に形成された貫通孔73cの上端には、環状の凹部が形成されており、この凹部に、連結リング23とキャリア43との間の隙間をシールするシール部材(例えば、O−リング)74が配置される。このシール部材74によって、貫通孔73b,73cを流れる流体が連結リング23とキャリア43との間の隙間から漏洩することが防止される。同様に、キャリア43に形成された貫通孔73bの上端には、環状の凹部が形成されており、この凹部に、キャリア43とスペーサ42との間の隙間をシールするシール部材(例えば、O−リング)44が配置されている。このシール部材44によって、貫通孔73a,73bを流れる流体がスペーサ42とキャリア43との間の隙間から漏洩することが防止される。
ヘッド本体2は、さらに、内部周壁14a〜14eおよびエッジ周壁14fが接続される複数の連結リング23a〜23eを有する。連結リング23aは第1内部周壁14aと第2内部周壁14bとの間に配置され、以下の説明では、第1連結リング23aと称する。連結リング23bは第2内部周壁14bと第3内部周壁14cとの間に配置され、以下の説明では、第2連結リング23bと称する。連結リング23cは第3内部周壁14cと第4内部周壁14dとの間に配置され、以下の説明では、第3連結リング23cと称する。連結リング23dは第4内部周壁14dと第5内部周壁14eとの間に配置され、以下の説明では、第4連結リング23dと称する。連結リング23eは第5内部周壁14eとエッジ周壁14fとの間に配置され、以下の説明では、第5連結リング23eと称する。
このように、各連結リング23a〜23eは、隣接する内部周壁14の間に配置される。本実施形態では、第1内部周壁14aも傾斜周壁として構成されているので、ヘッド本体2は、該内部周壁14aが連結される連結リング23fを有している。以下の説明では、連結リング23fを追加連結リング23fと称する。
第1連結リング23a、第3連結リング23cおよび第5連結リング23eは、後述する係合溝、段差部、および突出部以外は互いに同一の構成を有する。第2連結リング23bおよび第4連結リング23dは、互いに同一の構成を有する。さらに、第2連結リング23bおよび第4連結リング23dは、後述するリング垂直部が第1連結リング23a、第3連結リング23cおよび第5連結リング23eのリング垂直部よりも短い点と、係合溝がリング垂直部に形成されない点が第1連結リング23a、第3連結リング23cおよび第5連結リング23eと相違する。以下では、第3連結リング23cの構成を説明する。
図5(a)は、第3連結リング23cの断面図であり、図5(b)は、図5(a)のA線矢視図である。図5(a)では、上記シール部材74が仮想線(点線)で描かれている。第3連結リング23cは、ヘッド本体2のキャリア43に対して垂直に延びるリング垂直部50と、該リング垂直部50から径方向外側に延びつつ下方に傾斜するリング傾斜部51とを有する。
リング傾斜部51の外周面51bは、リング傾斜部51の内周面51aとリング傾斜部51の先端51cで接続される。したがって、リング傾斜部51は、リング傾斜部51の先端51cに向かって徐々に細くなる断面形状を有している。内周面51aと外周面51bとが接続されるリング傾斜部51の先端51cは、曲面からなる断面形状(例えば、半円状の断面形状)を有している。この曲面の半径は、好ましくは、径方向における内部周壁の厚さと等しい。さらに、第3連結部材23cは、第3連結部材23cのリング傾斜部51の内周面51aから外周面51bまで延びる貫通孔51dを有している。さらに、リング傾斜部51の外周面51bには、該外周面51bの全周にわたって延びる環状のシール溝51eが形成されている。
図5(b)に示すように、第3連結リング23cのリング傾斜部51の内周面51aには、該内周面51aの周方向に延びる複数の横溝63と、隣接する横溝63を互いに連通させる複数の縦溝64とが形成されている。本実施形態では、流体ライン73の貫通孔73cは、リング傾斜部51の内周面51aに形成された横溝63に開口しており、貫通孔51dは、流体ライン73が開口する横溝63とは異なる横溝63に開口している。
流体ライン73の貫通孔73cおよび貫通孔51dは、リング傾斜部51の内周面51aに形成された縦溝64にそれぞれ開口してもよい。図示はしないが、第3連結リング23cのリング傾斜部51の外周面51bには、該外周面51bの周方向に延びる複数の横溝と、隣接する横溝を互いに連通させる複数の縦溝とが形成されている。貫通孔51dは、リング傾斜部51の外周面51bに形成された横溝または縦溝に開口するのが好ましい。
図4に示す内部周壁14のシール突起54は、リング傾斜部51の外周面51bに形成されたシール溝51eに嵌め込まれる。弾性膜10をヘッド本体2に連結するときに、シール突起54は、該シール突起54の径方向外側に位置する連結リング23のリング傾斜部51の内周面51aによってシール溝51eの底面に押圧される。例えば、第2内部周壁14bの先端に形成されたシール突起54は、第1連結リング23aのリング傾斜部51の外周面51bに形成されたシール溝51eに嵌め込まれ、第2連結リング23bのリング傾斜部51の内周面51aによって、第1連結リング23aのシール溝51eの底面に押圧される。これにより、第2内部周壁14bと、第1連結リング23aのリング傾斜部51の外周面51bとの間の隙間、および第2内部周壁14bと、第2連結リング23bのリング傾斜部51の内周面51aとの間の隙間がシールされる。このような構成で、各圧力室16a〜16eに供給された流体が各圧力室16a〜16eから漏洩することが防止される。
図6は、連結リング23のリング傾斜部51の内周面51aに押圧突起51fが形成された一例を示す拡大断面図である。図6に示すように、連結リング23のリング傾斜部51の内周面51aに、シール溝51eに嵌め込まれたシール突起54に対向する環状の押圧突起51fを形成してもよい。押圧突起51fは、リング傾斜部51の内周面51aの全周にわたって延びる。押圧突起51fによって、シール突起54をシール溝51eの底面により強い押圧力で押圧することができる。その結果、各圧力室16a〜16eに供給された流体が各圧力室16a〜16eから漏洩することをより効果的に防止することができる。
図3に示すように、内部周壁14a〜14eは、それぞれ、連結リング23a〜23eとシール突起54でのみ接触する。すなわち、先端51cに向かって徐々に細くなる断面形状を有するリング傾斜部51と、シール突起54以外の内部周壁14との間には隙間が形成される。この隙間によって、各圧力室16a〜16fに加圧された流体を供給したときに、内部周壁14a〜14eが径方向に移動する(すなわち、シール突起54を支点として回動する)ことが許容される。その結果、各圧力室16a〜16fに供給される流体の圧力に応じて、弾性膜10を円滑に膨らませることができるので、研磨プロファイルを精密に調整することができる。
上述したように、各圧力室16a〜16fに加圧された流体を供給すると、弾性膜10が膨らみ、内部周壁14a〜14fと当接部11との接続部分も径方向に移動する。しかしながら、内部周壁14a〜14eのシール突起54以外の部分では、内部周壁14a〜14eと連結リング23a〜23eとの間には上記隙間が形成されているので、内部周壁14a〜14eの径方向におけるある程度の移動は連結リング23a〜23eによって妨害されない。したがって、各圧力室16a〜16fに供給される流体の圧力に応じて、弾性膜10を膨らませることができる。
隣接する圧力室16にそれぞれ供給される流体の圧力差がある場合は、これら圧力室16を区画する内部周壁14が径方向に変形しようとする。しかしながら、連結リング23のリング傾斜部51の内周面51aまたは外周面51bによって、内部周壁14の径方向の変形が制限されるので、内部周壁が当接部11と接触することが効果的に防止され、同時に、隣接する内部周壁が互いに接触することが効果的に防止される。本実施形態では、連結リング23のリング傾斜部51の先端51cは曲面からなる断面形状を有している。したがって、内部周壁14がリング傾斜部51の先端51cに接触したときに、内部周壁14の損傷を防止することができる。
上述したように、連結リング23は、リング傾斜部51の内周面51aおよび外周面51bに形成された横溝63と縦溝64と、内周面51aから外周面51bまで延び、かつ横溝63(または縦溝64)に開口する貫通孔51dとを有している。さらに、各圧力室16a〜16fに供給される流体が流れる流体ライン73の貫通孔73c(図4参照)は、横溝63に開口している。したがって、隣接する圧力室16にそれぞれ供給される流体の圧力差によって、内部周壁14が連結リング23のリング傾斜部51の内周面51aおよび/または外周面51bに接触しても、流体ライン73を流れる流体をリング傾斜部51に形成された横溝63と縦溝64、および貫通孔51dを介して圧力室16に素早くかつ円滑に供給することができる。その結果、内部周壁14が連結リング23のリング傾斜部51の内周面51aおよび/または外周面51bに接触している状態でも、流体ライン73から供給される流体の圧力を当接部11に速やかに作用させることができる。
本実施形態では、研磨ヘッド1は、傾斜周壁として形成された隣接する2つの内部周壁14を3つの連結リング23を介してヘッド本体2に同時に固定するための固定具70を有する。以下、この固定具70と、固定具70を用いて、弾性膜10が接続された連結リング23をヘッド本体2に固定する方法について説明する。
図7(a)は、固定具70の上面図であり、図7(b)は、図7(a)のB−B線断面図である。図7(a)および図7(b)に示すように、固定具70は、円柱状の固定具本体71と、固定具本体71の外周面から外側に突出し、楕円形状を有するつば72とを備える。つば72は、2つの傾斜面72a,72bを有しており、これら傾斜面72a,72bは、それぞれつば72の外周面まで延びている。
傾斜面72a,72bを除いたつば72の鉛直方向の厚みは、連結リング23のリング垂直部50に形成された係合溝(後述する)と同一である。固定具本体71の上面71aには、図示しない治具(例えば、マイナスドライバー)の先端が係合可能な溝71bが形成されている。溝71bに治具の先端を係合させ、さらに治具を回転させることにより、固定具70を回転させることができる。
次に、図7(a)および図7(b)に示す固定具70を用いて、3つの連結リング23を同時にヘッド本体2のキャリア43に固定する方法について説明する。3つの連結リング23をキャリア43に固定すると、2つの隣接する内部周壁14が同時にヘッド本体2に連結される。
以下の説明では、3つの連結リング23のうちの径方向内側に位置する連結リング23を内側連結リング23と称することがあり、3つの連結リング23のうちの径方向外側に位置する連結リング23を外側連結リング23と称することがあり、内側連結リング23と外側連結リング23との間に位置する連結リング23を中間連結リングと称することがある。また、傾斜周壁として構成された隣接する2つの内部周壁14のうちの径方向内側に位置する内部周壁14を内側傾斜周壁14と称することがあり、傾斜周壁として構成された隣接する2つの内部周壁14のうちの径方向外側に位置する内部周壁14を外側傾斜周壁14と称することがある。
図8乃至図11は、図4に示す弾性膜10をヘッド本体2に連結するために、図7(a)および図7(b)に示す固定具70を用いて3つの連結リング23をキャリア43に同時に固定する各工程を示した模式図である。
図4に示す弾性膜10では、第2内部周壁14bが内側傾斜周壁14であり、第3内部周壁14cが外側傾斜周壁14である。第2内部周壁14bと第3内部周壁14cに対して、第1連結リング23aは内側連結リング23であり、第2連結リング23bは中間連結リング23であり、第3連結リング23cは外側連結リング23である。
固定具70によって連結リング23a〜23cをキャリア43に固定することにより、第2内部周壁14bと第3内部周壁14cとがヘッド本体2に連結される。同様に、第4内部周壁14dは内側傾斜周壁14であり、第5内部周壁14eは外側傾斜周壁14である。第4内部周壁14dと第5内部周壁14eに対して、第3連結リング23cは内側連結リング23であり、第4連結リング23dは中間連結リング23であり、第5連結リング23eは外側連結リング23である。
固定具70によって連結リング23c〜23eをキャリア43に固定することにより、第4内部周壁14dと第5内部周壁14eとがヘッド本体2に連結される。このように、第3連結リング23cは、第2内部周壁14bと第3内部周壁14cに対しては外側連結リング23であり、第4内部周壁14dと第5内部周壁14eに対しては内側連結リング23である。
図8に示すように、ヘッド本体2のキャリア43の上面43cには、複数の固定具70がそれぞれ挿入される複数の第1凹部45が形成されている。各第1凹部45は、キャリア43の上面43cからキャリア43の下面43dに向かって延びている。第1凹部45は、該第1凹部45に挿入される固定具70のつば72が接触しないように、楕円形状の断面を有する。
さらに、キャリア43の下面43dには、内側連結リング23のリング垂直部50が挿入される環状の第2凹部46と、中間連結リング23のリング垂直部50が挿入される環状の第3凹部47と、外側連結リング23のリング垂直部50が挿入される第4凹部48が形成されている。第2凹部46、第3凹部47、および第4凹部48は、キャリア43の全周にわたって延びており、かつキャリア43の下面43dから上面43cに向かって延びている。
第1凹部45の径方向内側の内面には、内側開口96が形成されており、第1凹部45の径方向外側の内面には外側開口97が形成されている。第1凹部45は、内側開口96を介して第2凹部46と連通しており、かつ外側開口97を介して第4凹部48と連通している。第1凹部45に挿入された固定具70を回転させると、固定具70のつば72が内側開口96および外側開口97を通って、第2凹部46および第4凹部48の内部に突出する。
中間連結リング23は、内側連結リング23と外側連結リング23に挟まれることで、該内側連結リング23と外側連結リング23に保持される。例えば、中間連結リング23である第2連結リング23bは、内側連結リング23である第1連結リング23aと外側連結リング23である第3連結リング23cとに保持される。同様に、中間連結リング23である第4連結リング23dは、内側連結リング23である第3連結リング23cと外側連結リング23である第5連結リング23eとに保持される。
本実施形態では、中間連結リング23は、その外周面から外側に突出する環状の突出部30を有し、内側連結リング23は、突出部30が載置される環状の段差部31を有する。さらに、外側連結リング23は、その外周面から外側に突出する環状の突出部33を有し、中間連結リング23は、突出部33が載置される環状の段差部34を有する。第3連結リング23cは、第2内部周壁14bと第3内部周壁14cに対しては外側連結リング23として機能し、第4内部周壁14dと第5内部周壁14eに対しては内側連結リング23として機能するので、第3連結リング23cは、環状の突出部33と、環状の段差部31とを有している。
さらに、内側連結リング23のリング垂直部50には、固定具70のつば72が係合可能な内側係合溝36が形成されており、外側連結リング23のリング垂直部50には、固定具70のつば72が係合可能な外側係合溝37が形成されている。第3連結リング23cは、第2内部周壁14bと第3内部周壁14cに対しては外側連結リング23として機能し、第4内部周壁14dと第5内部周壁14eに対しては内側連結リング23として機能するので、第3連結リング23cは、内側係合溝36と外側係合溝37とを有している。
内側連結リング23(例えば、第1連結リング23a)のリング傾斜部51の外周面に形成されたシール溝51eに内側傾斜周壁14(例えば、第2内部周壁14b)の先端に形成されたシール突起54が嵌め込まれる。中間連結リング23(例えば、第2連結リング23b)のリング傾斜部51の外周面に形成されたシール溝51eに外側傾斜周壁14(例えば、第3内部周壁14c)の先端に形成されたシール突起54が嵌め込まれる。さらに、中間連結リング23の突出部30を内側連結リング23の段差部31に載置させ、外側連結リング23の突出部33を中間連結リング23の段差部34に載置させる。この状態が図8に示されている。
図8に示すように、弾性膜10の第1内部周壁14aも傾斜周壁として構成されている。第1内部周壁14aは、追加連結リング23fに接続され、該追加連結リング23fをキャリア43に固定することによりヘッド本体2に連結される。より具体的には、追加連結リング23fは傾斜面53を有しており、傾斜面53には第1内部周壁14aの先端に形成されたシール突起54が嵌め込まれるシール溝53aが形成されている。
第1内部周壁14aは、該第1内部周壁14aのシール突起54が追加連結リング23fのシール溝53aに嵌め込まれた状態で、第1連結リング23aと追加連結リング23fとに挟まれ、これにより、第1内部周壁14aが第1連結リング23aと追加連結リング23fとに保持される。
さらに、弾性膜10のエッジ周壁14fは傾斜部28を有している。この傾斜部28の先端には、シール突起54が形成されており、第5連結リング23eのリング傾斜部51の外周面51bには、このシール突起54が嵌め込まれるシール溝51eが形成されている。弾性膜10をヘッド本体2のキャリア43に連結する際は、弾性膜10の内部周壁14b〜14eおよびエッジ周壁14fを連結リング23a〜23eに予め保持させ、かつ内部周壁14aを追加連結リング23fに予め保持させる。
次いで、図9に示すように、弾性膜10、連結リング23a〜23e、および追加連結リング23fをキャリア43に向かって移動させ、各連結リング23a〜23eをキャリア43の下面43bに形成された凹部46,47,48(図8参照)に挿入する。図8に示すように、第3連結リング23cが挿入される凹部は、第2内部周壁14bおよび第3内部周壁14cに対しては第4凹部48である一方で、第4内部周壁14dおよび第5内部周壁14eに対しては第2凹部46である。
次いで、図10に示すように、キャリア43の上面43cに形成された第1凹部45に固定具70を挿入し、固定具70を治具(図示しない)によって回転させる。固定具70が回転すると、図11に示すように、固定具70のつば72が内側開口96および外側開口97を通って内側連結リング23のリング垂直部50に形成された内側係合溝36および外側連結リング23のリング垂直部50に形成された外側係合溝37にそれぞれ係合する。
図7(a)および図7(b)に示すように、固定具70のつば72には、2つの傾斜面72a,72bが形成されている。傾斜面72a,72bは、それぞれつば72の外周面まで延びている。この傾斜面72a,72bによって、つば72はスムーズに係合溝36,37に進入することができる。
傾斜面72a,72bを除いたつば72の厚みは係合溝36,37の厚みと同一であるため、スムーズに係合溝36,37に進入したつば72は、係合溝36,37と強固に係合する。その結果、内側連結リング(例えば、第1連結リング23a)、外側連結リング(例えば、第3連結リング23c)がキャリア43に強固に固定される。このとき、内側連結リング23と外側連結リング23とに保持される中間連結リング23(例えば、第2連結リング23b)も内側連結リング23と外側連結リング23とに強固に連結される。
同時に、内側傾斜周壁(例えば、第2内部周壁14b)のシール突起54が内側連結リング23のリング傾斜部51の外周面51bに形成されたシール溝51eに、中間連結リング23のリング傾斜部51の内周面51aによって押し付けられ、外側傾斜周壁(例えば、内部周壁14c)のシール突起54が中間連結リング23のリング傾斜部51の外周面51bに形成されたシール溝51eに、外側連結リング23のリング傾斜部51の内周面51aによって押し付けられる。
これにより、内側傾斜周壁14と内側連結リング23aとの間の隙間、および内側傾斜周壁14と中間連結リング23との間の隙間がシールされ、外側傾斜周壁14と中間連結リング23との間の隙間、および外側傾斜周壁14と外側連結リング23との間の隙間がシールされる。図6を参照して説明されたように、連結リング23のリング傾斜部51の内周面51aに、シール突起54をシール溝51eに押圧する押圧突起51fを形成してもよい。
エッジ周壁14fのシール突起54は、キャリア43の下面に形成された傾斜部43e(図8参照)によって第5連結リング23eのリング傾斜部51の外周面51bに形成されたシール溝51eに押し付けられ、これにより、エッジ周壁14fと第5連結リング23eとの間の隙間、およびエッジ周壁14fとキャリア43との間の隙間がシールされる。
本実施形態では、追加連結リング23fは、複数のねじ94によってキャリア43に固定される。キャリア43には、ねじ94が挿入される貫通孔43f(図8参照)が形成されており、追加連結リング23fには、その上面から下面に向かって延びるねじ孔56が形成されている。ねじ94を貫通孔43fに挿入して、ねじ94をねじ孔56に螺合させることにより、追加連結リング23fが強固にキャリア43に固定される。
以下に説明する実施形態では、複数の周壁14a〜14fを区別せずに単に複数の周壁14と称することがあり、複数の連結リング23a〜23fを区別せずに単に複数の連結リング23と称することがあり、複数の圧力室16a〜16fを区別せずに単に複数の圧力室16と称することがある。
次に、弾性膜10のヘッド本体2への組み付けの詳細について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態において、弾性膜10をヘッド本体2に組み付ける工程とは、弾性膜10を複数の連結リング23に接続し、この状態で、連結リング23をキャリア43に密着させる工程を意味する。
弾性膜10をヘッド本体2に組み付けるために、弾性膜10の周壁14に形成されたシール突起54を連結リング23に形成されたシール溝51eに嵌め込み、連結リング23をキャリア43に密着する。弾性膜10のヘッド本体2への組み付けによって、内部周壁(隔壁)14a〜14eおよびエッジ周壁(側壁)14fを含む弾性膜10の周壁14は、それぞれ独立した圧力室16を形成する。連結リング23a〜23fのキャリア43への密着によって、キャリア43に形成された流体ライン73と圧力室16とが貫通孔73b,73cを介して接続される。
連結リング23のキャリア43への固定には、固定具70が用いられる。複数の連結リング23は、各連結リング23とキャリア43との間に隙間が形成されるようにキャリア43に嵌合される。これら複数の連結リング23は、固定具70の回転によりキャリア43側に引き寄せられる。このようにして、固定具70は、その回転により複数の連結リング23を引き上げつつ、連結リング23をキャリア43に密着固定する。
しかしながら、連結リング23の引き上げによって連結リング23をキャリア43に密着固定すると、連結リング23には、固定具70による局所的な引き上げ力が作用する。したがって、連結リング23は、固定具70による局所的な引き上げ力に耐えられず、破損するおそれがある。また、連結リング23のみならず、固定具70も破損するおそれがある。
図12(a)乃至図12(c)は、大気圧状態において、ヘッド本体2に組み付けられた弾性膜10を示す断面図である。図12(a)は弾性膜10の任意断面Aを示しており、図12(b)は弾性膜10の任意断面Bを示しており、図12(c)は弾性膜10の任意断面Cを示している。これら任意断面A〜Cは弾性膜10の異なる断面を表している。
上述したように、弾性膜10は柔軟な材質で形成されているため、弾性膜10をヘッド本体2に組み付ける際に、弾性膜10の変形具合にはばらつきが生じることがある。図12(a)では、周壁14fの傾斜部28は連結リング23eに近接する方向に変形しており、周壁14eの傾斜部(周壁本体55)は連結リング23eに近接する方向に変形しており、周壁14dの傾斜部(周壁本体55)は連結リング23cに近接する方向に変形している。図12(b)では、周壁14fの傾斜部28はキャリア43に近接する方向に変形している。図12(c)では、周壁14fの傾斜部28は連結リング23eに近接する方向に変形しており、周壁14dの傾斜部(周壁本体55)は連結リング23cに近接する方向に変形している。
弾性膜10の変形具合のばらつき、すなわち、弾性膜10の変形の不均一性は、研磨レートの均一性に影響を及ぼすおそれがある。したがって、弾性膜10をヘッド本体2に組み付ける際に、弾性膜10の周壁14の変形を周方向で均一にすることが求められている。
そこで、以下の実施形態では、組み付けシステム200について説明する。組み付けシステム200は、弾性膜10の変形具合のばらつきを解消することができ、かつ連結リング23(および/または固定具70)を破損することなく、弾性膜10をヘッド本体2に組み付けることができる。
図13は、弾性膜10をヘッド本体2に組み付けるための組み付けシステム200を示す概略斜視図である。組み付けシステム200は、弾性膜10の各圧力室16を加圧または減圧する流体移送装置250と、連結リング23をキャリア43に密着させる組み付け治具201とを備えている。
組み付け治具201は、弾性膜10およびヘッド本体2が収容可能な大きさを有する収容凹部202aが形成された治具ベース202と、キャリア43が取り付け可能であり、かつ収容凹部202aを閉塞可能な円盤状の治具プレート203と、キャリア43と治具プレート203とを締結可能な締結具204と、複数の連結リング23とキャリア43との間に隙間が形成された状態で収容凹部202aに収容された複数の連結リング23とキャリア43とが互いに密着するまで、治具プレート203を治具ベース202に近接させるクランパ205とを備えている。
図13では、単一の締結具204が描かれているが、治具プレート203およびキャリア43は複数の(本実施形態では、2つの)締結具204により固定可能である。治具プレート203は、キャリア43が複数の締結具204によって治具プレート203に固定された状態で、治具ベース202にセットされる。これら複数の締結具204は、治具プレート203の円周方向に沿って等間隔に配置されている。
クランパ205は、治具プレート203を治具ベース202に連結することができ、各圧力室16の加圧に起因するキャリア43の浮き上がりを防止することができる。図13では、単一のクランパ205が描かれているが、治具プレート203および治具ベース202は複数の(本実施形態では、4つの)クランパ205により連結される。これら複数のクランパ205は、治具プレート203の円周方向に沿って等間隔に配置されている。
図14は、組み付けシステム200の部分断面図である。図14では、ヘッド本体2および組み付け治具201は断面で描かれており、シール部材44,74の図示は省略されている。円盤状の治具プレート203には、ヘッド本体2に形成され、かつ複数の圧力室16のそれぞれに連通する貫通孔73(より具体的には、貫通孔73b,73c)と連通可能な複数の連通孔203aが形成されている。連通孔203aの数は、圧力室16の数に対応している。
流体移送装置250は、各連通孔203aに接続可能な流体移送管251と、流体移送管251に接続された流体装置252とを備えている。流体装置252は、各圧力室16への加圧流体の供給によって各圧力室16を加圧する圧縮装置、または各圧力室16内の流体の吸引によって各圧力室16を減圧する真空装置である。
流体移送管251には、さらに、流体移送管251を通過する流体の圧力を計測する圧力計253と、流体移送管251を通過する流体の流量を計測する流量計254と、流体移送管251の流路を開閉する開閉バルブ255と、圧力レギュレータ256が接続されている。流体移送装置250は、これら圧力計253、流量計254、開閉バルブ255、および圧力レギュレータ256を備えている。
圧力レギュレータ256は流体装置252に隣接して配置されており、開閉バルブ255は圧力レギュレータ256に隣接して配置されている。流量計254は開閉バルブ255に隣接して配置されており、圧力計253は流量計254に隣接して配置されている。
流体移送管251は、その途中で分岐しており、継手210を介して各連通孔203aに接続されている。流体装置252が圧縮装置である場合、流体装置252を動作させると、加圧流体は流体移送管251を通じて各圧力室16に供給され、各圧力室16は加圧される。流体装置252が真空装置である場合、流体装置252を動作させると、各圧力室16の流体は吸引され、各圧力室16は減圧される。
図14に示すように、複数の連結リング23は、各連結リング23とキャリア43との間に隙間が形成されるように、キャリア43に嵌合されており、複数の連結リング23には弾性膜10が接続されている。治具プレート203が治具ベース202にセットされたとき、治具ベース202の収容凹部202aには、弾性膜10およびヘッド本体2(より具体的には、複数の連結リング23およびキャリア43)が収容され、治具プレート203は、治具ベース202の収容凹部202aを閉塞する。
治具ベース202は、エッジ周壁14fの径方向外側への膨らみを抑制するための周壁(内周壁)202bを備えている。治具プレート203は、弾性膜10および治具ベース202が同心状に配置されるように、すなわち、エッジ周壁14fの円心と治具ベース202の周壁202bの円心とが合うように、治具ベース202にセットされる。
弾性膜10は各圧力室16の加圧によって膨らみ、エッジ周壁14fの外面は治具ベース202の周壁202bに接触する。弾性膜10の膨らみはウェハWの研磨特性に影響を及ぼすため、治具ベース202の内径は、ウェハWの最適な研磨特性が得られるように決定される。言い換えれば、治具ベース202の周壁202bと、周壁202bに隣接するエッジ周壁14fの外面との間の隙間は、弾性膜10の変形量(膨張量)が所定の量になるように決定される。
加圧流体がエッジ圧力室16fに供給されると、弾性膜10のエッジ周壁14fは、外側に膨張する。特に、エッジ周壁14fが過剰に膨張すると、エッジ周壁14fのシール突起54がシール溝51eから外れ、外側に飛び出してしまうおそれがある。治具ベース202の周壁202bは、シール突起54の飛び出しの対策として有効に機能する。
一実施形態では、組み付け治具201は、周壁202bとエッジ周壁14fとの間に配置された環状のスペーサ(膨張調整部材)220を備えてもよい。図15はスペーサ220を示す断面図である。図15に示すように、スペーサ220を配置することにより、治具ベース202の内径を変更することなく、弾性膜10の変形量を決定することができる。組み付け治具201は、厚さの異なる複数のスペーサ220を備えてもよい。この場合、作業者は、複数のスペーサ220の中からウェハWの研磨条件に応じて、任意の厚さを有するスペーサ220を選択することができる。
図16は、弾性膜10をヘッド本体2に組み付ける工程を示す図である。図16の工程1に示すように、まず、弾性膜10を複数の連結リング23に接続する。弾性膜10は、シリコンゴムなどの弾性変形可能な弾性体から形成されている。したがって、弾性膜10を複数の連結リング23に取り付ける際には、作業者は、各連結リング23に対応する弾性膜10の周壁14を手で変形させて、弾性膜10を複数の連結リング23に接続する。
弾性膜10の複数の周壁14の端部のそれぞれには、全周に亘ってシール突起54が設けられている。作業者は、各周壁14のシール突起54を各連結リング23に設けられたシール溝51eに嵌合させる。シール突起54のシール溝51eへの組み付け性を向上させるため、シール溝51eはシール突起54よりも大きな大きさを有している。したがって、シール突起54がシール溝51eに嵌合された状態では、シール突起54は、シール溝51eに対して自由に回転することができる。
すべてのシール突起54がシール溝51eに嵌合されて、弾性膜10が複数の連結リング23に接続された後、作業者は、連結リング23をキャリア43に嵌合させる(図16の工程2参照)。このとき、複数の連結リング23とキャリア43との間には隙間が形成されている。
その後、複数の連結リング23が取り付けられたキャリア43を締結具204によって治具プレート203に固定する(図16の工程3参照)。キャリア43および治具プレート203には、それぞれ、締結具204が挿入可能な孔(ねじ孔または貫通孔)が形成されており、孔に挿入された締結具204を締め付けることにより、キャリア43は治具プレート203に固定される。キャリア43の治具プレート203への固定により、治具プレート203に形成された連通孔203aおよびヘッド本体2に形成された貫通孔73b,73cは連通する。このとき、各圧力室16は大気圧状態である。本実施形態では、締結具204は、ねじまたはボルトから構成された締め付け具である。
治具プレート203は、弾性膜10およびヘッド本体2が治具ベース202の収容凹部202aに配置されるように、治具ベース202にセットされる(図16の工程4参照)。その後、作業者は、治具プレート203を治具ベース202にクランパ205によって連結する。本実施形態では、クランパ205は、ねじまたはボルトから構成された締め付け具である。
図17は、クランパ205の他の実施形態を示す図である。クランパ205は、複数のエアシリンダ235と、これら複数のエアシリンダ235を保持する保持部材236とを備えてもよい。図17では、流体移送装置250の図示は省略されている。これら複数のエアシリンダ235は同一の構造を有しているため、以下、単一のエアシリンダ235について説明する。
図17に示すように、エアシリンダ235は、治具プレート203に接続されたピストンロッド235aと、シリンダ本体235bとを備えている。ピストンロッド235aの先端は治具プレート203に固定されている。シリンダ本体235bの内部空間は、ピストンロッド235aにより、2つの圧力室に分けられており、シリンダ本体235bには、図示しない気体移送ラインが接続されている。この気体移送ラインは、気体供給源(図示しない)に接続されている。ピストンロッド235aは、圧縮気体のピストン本体235bへの供給により、治具プレート203を下方向(治具ベース202に近接する方向)に付勢可能である。
ピストン本体235bは保持部材236に保持されており、保持部材236の両端は治具ベース202に固定されている。このような構造により、ピストンロッド235aは、圧縮気体の供給により治具プレート203を下方向に付勢することができ、治具プレート203を治具ベース202に近接させることができる。図17では、クランパ205は、複数の(本実施形態では、3つの)エアシリンダ235を備えているが、エアシリンダ235の数は本実施形態には限定されない。
気体移送ラインには、開閉バルブ(図示しない)が接続されてもよい。開閉バルブは、その開閉によってピストンロッド235aの付勢力を制御することができ、クランパ205のクランプ力(治具プレート203を治具ベース202に近接させる力)を容易に調整することができる。複数のシリンダ本体235bに共通の気体移送ラインおよび共通の開閉バルブを接続することにより、複数のクランパ205のクランプ力を共通化することができ、クランプ力を容易に管理することができる。
図示しないが、クランパ205は、メンテナンス性を考慮したワンタッチ式クランプ構造体であってもよい。例えば、クランパ205は、治具プレート203に取り付けられた引っ掛け部材と、治具ベース202に取り付けられ、かつ引っ掛け部材に連結可能なフック部材とを備えている。作業者は、引っ掛け部材をフック部材に引っ掛け、この状態で、引っ掛け部材を操作することにより、治具プレート203を治具ベース202に近接させることができる。
図14に戻り、治具プレート203および治具ベース202には、クランパ205が挿入可能な孔が形成されており、孔にクランパ205を挿入し、さらに必要に応じて仮締めすることにより、治具プレート203は治具ベース202に連結される。
図16の工程4の後、継手210を介して流体移送装置250の流体移送管251を治具プレート203に接続する(図16の工程5参照)。圧縮装置としての流体装置252は、その動作によって、流体移送管251、連通孔203a、および貫通孔73b,73cを通じて、加圧流体を各圧力室16に供給する。結果として、各圧力室16は加圧状態となる(図16の工程6参照)。各圧力室16に供給される加圧流体の圧力は、0.2〜7PSI(1.379〜48.265kPa)の範囲内で圧力レギュレータ256によって調整される。
このとき、複数の連結リング23は、各連結リング23とキャリア43との間に隙間が形成されるように、キャリア43に嵌合されている。言い換えれば、複数の連結リング23はキャリア43には密着していない。弾性膜10のシール突起54は、連結リング23およびキャリア43の少なくとも1つに接触しているので、加圧流体が各圧力室16に供給されても、加圧流体の漏れ量は非常に少ない。
弾性膜10は、加圧流体の各圧力室16への供給により外側(より具体的には、キャリア43から離間する方向)に膨らむ。治具ベース202と弾性膜10の下面との間に隙間が形成されていれば、弾性膜10は、その下方向にも膨らむ。弾性膜10の内部周壁14は、隣接する圧力室16に供給される加圧流体の圧力によって圧縮される。
複数の圧力室16を加圧した状態で、クランパ205を回転させて、治具プレート203を治具ベース202に近接させる。クランパ205は、その回転により、治具プレート203を介してキャリア43および連結リング23を治具ベース202の下面(すなわち、収容凹部202aの表面)に近接する方向に移動させる。結果として、クランパ205は、連結リング23の下端を、弾性膜10を介して治具ベース202の下面に押し付ける。連結リング23が治具ベース202の下面に押し付けられると、連結リング23とキャリア43との間の隙間がなくなる。結果として、連結リング23はキャリア43に密着される(図16の工程7参照)。
図14に示す実施形態では、連結リング23c,23dの下端、すなわち、リング傾斜部51の先端51c(図6参照)は、連結リング23eの下端よりも下方に位置しているため、連結リング23c,23dは、クランパ205によって弾性膜10を介して治具ベース202の下面に押し付けられる。連結リング23eの環状の突出部33(図8参照)は連結リング23dの環状の段差部34(図8参照)上に載置されており、連結リング23eは連結リング23c,23dに接続されている。したがって、連結リング23eも他の連結リング23c,23dとともにキャリア43に密着される。
図14に示すように、治具プレート203を治具ベース202にセットしたときの治具プレート203と治具ベース202との間の距離は、連結リング23とキャリア43との間に形成された隙間の距離よりも大きい。治具プレート203と治具ベース202との間の距離は、さらに、連結リング23c,23dの下端と治具ベース202の下面との間の距離よりも大きい。治具ベース202の下面(より具体的には、収容凹部202aの下面)と治具ベース202の上端との間の距離は、連結リング23がキャリア43に密着された状態における連結リング23の下端とキャリア43の上端との間の距離と同じか、または小さい。したがって、複数の連結リング23は、治具プレート203の治具ベース202への近接によって、治具ベース202の下面に押し付けられ、キャリア43に密着することができる。
キャリア43、複数の連結リング23、および弾性膜10は、治具プレート203と治具ベース202との間に挟まれ、複数の連結リング23は弾性膜10を介して治具ベース202の下面に押し付けられる。したがって、弾性膜10の損傷を確実に防止するために、組み付け治具201は、収容凹部202aに配置され、弾性膜10の下面に接触可能な緩衝部材(クッション)230をさらに備えてもよい(図18参照)。緩衝部材230は、ゴムなどの弾性部材から構成されており、緩衝部材230の硬度は、弾性膜10の硬度と同一であるか、または弾性膜10の硬度よりも低い。
本実施形態では、連結リング23eの下端は、他の連結リング23a〜23d,23fの下端よりも上方に位置している。図19は、緩衝段部230aを備えた緩衝部材230を示す図である。図19に示すように、緩衝部材230は、その上面に形成された環状の緩衝段部230aをさらに備えてもよい。このように、緩衝部材230は緩衝段部230aを備えているため、各連結リング23の下端と緩衝部材230との間の距離は同一である。したがって、クランパ205は、すべての連結リング23に対してクランプ力を均一に伝達することができる。
図20は圧力室16の加圧による弾性膜10の変形状態を示す図である。図20に示すように、各圧力室16に供給された加圧流体(図20の矢印参照)の圧力によって弾性膜10の形状的な不均一性が軽減される。より具体的には、弾性膜10の内部周壁14は、隣接する圧力室16に供給された加圧流体の圧力によって圧縮されるため、内部周壁14の姿勢は正され、内部周壁14の変形具合のばらつきが解消される。さらに、弾性膜10のエッジ周壁14fは、外側に向かって均一に変形し、エッジ周壁14fの変形具合のばらつきが解消される。このようにして、弾性膜10の周壁14全体の周方向における変形具合のばらつきは解消される。
複数の連結リング23は、各圧力室16に加圧流体が供給された状態で、すなわち、弾性膜10の周壁14全体の変形具合のばらつきが解消された状態でキャリア43に密着される。したがって、弾性膜10がウェハWを研磨する状態において最適な形状となるように、すなわち、弾性膜10の変形具合のばらつきが解消された状態で弾性膜10をヘッド本体2に組み付けることができる。
図21は、弾性膜10の変形具合のばらつきが解消された状態でヘッド本体2に組み付けられた弾性膜10を示す図である。本実施形態によれば、図21に示すように、弾性膜10の変形具合のばらつきを解消することができるため、ウェハWに対する押圧力を均一化することができ、結果として、研磨レートの均一性を向上することができる。
流体装置252は各圧力室16を減圧する真空装置であってもよい。真空装置としての流体装置252を動作させて、各圧力室16を減圧した状態で弾性膜10をヘッド本体2に組み付けても弾性膜10の変形具合のばらつきを解消することができる。
各圧力室16に供給される加圧流体の圧力は、圧力室16ごとに変化させてもよい。特に、各圧力室16に供給される加圧流体の圧力が同一である場合、内部周壁14は隣接する圧力室16に供給される加圧流体の同一の圧力を受けるため、内部周壁14の形状の変形具合の修正が行われにくい場合がある。そこで、圧力室16ごとに異なる圧力の加圧流体を供給する。
図22は、流体移送装置250の他の実施形態を示す図である。図22に示すように、流体移送装置250は複数の流体移送管251を備えており、これら複数の流体移送管251のそれぞれには、流体装置252、圧力計253、流量計254、開閉バルブ255、および圧力レギュレータ256が接続されている。このような構成により、各圧力室16に供給される加圧流体の圧力を圧力室16ごとに変化させることができる。
圧力室16ごとに加圧流体の圧力を変化させると、複数の圧力室16に供給される加圧流体の圧力に圧力差が生じる。図23は、圧力室16ごとに加圧流体の圧力を変化させたときの弾性膜10の変形状態を示す図である。図23において、圧力室16eに供給された加圧流体の圧力は圧力室16fに供給された加圧流体の圧力よりも大きい(図23の矢印参照)。
図23に示すように、圧力室16eと圧力室16fとを区画する弾性膜10の内部周壁14eは、低圧状態の圧力室16fに向かって変形するため、大気圧状態における弾性膜10の固有の曲がり(くせ)を除去することができる。
図24は、圧力室16ごとに加圧流体の圧力を変化させた状態でヘッド本体2に組み付けられた弾性膜10を示す図である。図24に示すように、複数の圧力室16に供給される加圧流体の圧力に圧力差が生じた状態で、連結リング23をキャリア43に密着させることにより、ヘッド本体2に組み付けられた弾性膜10の内部周壁14d,14eの形状に変化を生じさせることができる。
図22に示すように、流体移送装置250が複数の流体装置252を備えている場合、これら複数の流体装置252のいずれかを真空装置としてもよい。このような構成により、例えば、隣接する2つの圧力室16において、一方の圧力室16を加圧し、他方の圧力室16を減圧することができる。このようにして、隣接する圧力室16の圧力差を大きくすることができるため、隣接する圧力室16を区画する弾性膜10の内部周壁14の形状は大きく変形することができる。
一実施形態では、流体装置252と別個の流体装置が接続された分岐管を、切り替え弁を介して流体移送管251に接続してもよい。この場合、1つの流体移送管251には、2つの流体装置252、すなわち、圧縮装置および真空装置が接続される。
図25は、固定具70によって複数の連結リング23をキャリア43に固定する様子を示す図である。弾性膜10をヘッド本体2に組み付けた後、すなわち、図16の工程7の後、治具プレート203に形成され、かつ第1凹部45に連通する挿入孔203bを通じて固定具70を第1凹部45に挿入する。治具プレート203に形成された挿入孔203bは第1凹部45と同一形状を有している。複数の連結リング23は、固定具70の回転によって、キャリア43に強固に固定される(図16の工程8参照)。
図16の工程9に示すように、弾性膜10のシール突起54のシール性を確認するため、各圧力室16に加圧流体を供給し、各流体移送管251に設けられた各流量計254でリーク流量を確認してもよい。このようなリーク流量の確認により、弾性膜10のヘッド本体2への組み付け性の健全性を確認することができる。このリーク試験を実施す際には、作業者は、圧力室16ごとに加圧流体を供給して、加圧流体の流量が規定値以下であることを確認する。
複数の連結リング23は、治具プレート203の治具ベース202への近接により、キャリア43に密着する。したがって、複数のシール突起54は、それぞれ、複数の連結リング23およびキャリア43が固定具70で固定されていない状態において、複数のシール溝51eに押圧される。すなわち、シール突起54は、治具プレート203を治具ベース202に近接させるときのクランパ205のクランプ力により、シール溝51eに押圧される。
組み付け治具201は、複数の連結リング23をキャリア43に密着させることができるクランパ205を備えており、クランパ205は、治具プレート203の治具ベース202への近接により連結リング23をキャリア43に密着させることができる。本実施形態によれば、固定具70を用いることなく、複数の連結リング23をキャリア43に密着することができる。したがって、複数の連結リング23を固定具70の回転によってキャリア43側に引き寄せる必要はなく、固定具70は、容易に複数の連結リング23をキャリア43に固定することができる。
本実施形態によれば、組み付け治具201と流体移送装置250とを組み合わせることにより、弾性膜10のヘッド本体2への固定の最適化と連結リング23および/または固定具70の破損を防止する効果を得ることができる。
弾性膜10がヘッド本体2に組み付けられ、複数の連結リング23が固定具70によってキャリア43に固定された後、ヘッド本体2と、フランジ41、スペーサ42、およびリテーナリング3を含む研磨ヘッド1の構成要素とを組み立てることにより、研磨ヘッド1の全体が組み立てられる。
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。