以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる放射線治療装置及び患者位置決め装置を説明する。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る放射線治療装置1は、患者位置決め装置を搭載した放射線治療装置である。患者位置決め装置は、X線撮影系を利用した、治療直前期に行われる患者の位置決めのための装置である。患者位置決め装置は、放射線治療装置用シンクロナイザとも呼ばれる。
図1は、第1実施形態に係る放射線治療装置1の構成を示す図である。図1に示すように、放射線治療装置1は、X線撮影系10、ガントリ30、寝台50及びコンソール70を有する。
図2は、図1のX線撮影系10、ガントリ30及び寝台50の外観を示す図である。図1及び図2に示すように、ガントリ30は、固定部31と回転部32とを有している。固定部31は、床面に設置され、回転部32を回転軸回りに回転可能に支持している。回転部32の一部には照射ヘッド321が設けられ、照射ヘッド321には照射器33が内蔵されている。照射器33は、例えば、加速管により輸送された電子が衝突する金属ターゲットを搭載する。金属ターゲットに電子が衝突することにより、放射線であるX線が発生する。照射ヘッド321にはマルチリーフ・コリメータ(MLC:Multi Leaf Collimator)が設けられている。マルチリーフ・コリメータは、X線遮蔽物質により形成された複数のリーフを個別に移動可能に支持している。複数のリーフを移動させることにより任意の形状の照射野を形成することが可能である。照射器33から照射される放射線の中心軸と回転部32の回転軸とを結ぶ交点はアイソセンタISと呼ばれる。
照射系制御回路35は、コンソール70の治療系制御回路73による指令に従い照射器33に照射信号を供給する。照射信号の供給を受けた照射器33は、放射線を患者Pに照射する。また、照射系制御回路35は、治療系制御回路73による指令に従いマルチリーフ・コリメータに駆動信号を供給する。駆動信号の供給を受けたマルチリーフ・コリメータは、指定の放射線照射野を形成するために複数のリーフを移動する。
ガントリ駆動装置34は、例えば、固定部31に内蔵されている。ガントリ駆動装置34は、ガントリ制御回路36からの駆動信号の供給を受けて回転部32を回転する。ガントリ制御回路36は、コンソール70の治療系制御回路73による指令に従いガントリ駆動装置34に駆動信号を供給する。
X線撮影系10は、放射線治療対象の患者PをX線撮影するためのX線撮影機構を装備する。本実施形態に係るX線撮影系10は、第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12とからなる2系統のX線撮影系を装備する。X線撮影系10は、寝台50の天板52に載置された患者Pを、第1のX線撮影系11により第1の撮影方向でX線撮影し、第2のX線撮影系12により第2の撮影方向でX線撮影する。より詳細には、X線撮影系10は、第1のX線撮影系11、第1移動機構13、第1移動駆動装置15、第2のX線撮影系12、第2移動機構14及び第2移動駆動装置16を有する。
第1のX線撮影系11は、第1X線管111、第1X線絞り器112及び第1X線検出器113を有する。第1X線管111は、X線を発生する。第1X線絞り器112は、第1X線管111に取り付けられる開口可変のX線絞りである。第1X線検出器113は、第1X線管111から発生され患者Pを透過したX線を検出し、X線画像データを生成する。
第1移動機構13は、第1X線管111と第1X線検出器113とを対として、第1X線管111と第1X線検出器113との各々を所定の円弧上を移動可能に支持する。具体的には、第1移動機構13は、第1X線管111のための移動機構131と第1X線検出器113のための移動機構132とを有する。移動機構131は、例えば、治療室の床面100に埋設され、第1X線管111を所定の円弧上を移動可能に支持する直動ガイドやボールねじ等を有する。移動機構132は、例えば、治療室の天井200に取り付けられ、第1X線検出器113を所定の円弧上を移動可能に支持する直動ガイドやボールねじ等を有する。例えば、第1X線管111の焦点と第1X線検出器113の検出面中心とを結ぶ撮影軸A1が、アイソセンタISに交差するように、第1X線管111は移動機構131に、第1X線検出器113は移動機構132に支持される。
第1移動駆動装置15は、コンソール70のX線撮影系制御回路72による指令に従い両移動機構131,132を同期的に駆動して第1X線管111と第1X線検出器113とが常に正対するように移動する。なお、第1のX線撮影系11の撮影方向は、アイソセンタIS回りの撮影軸A1の角度に規定される。
第2のX線撮影系12は、第2X線管121、第2X線絞り器122及び第2X線検出器123を有する。第2X線管121は、X線を発生する。第2X線絞り器122は、第2X線管121に取り付けられる開口可変のX線絞りである。第2X線検出器123は、第2X線管121から発生され患者Pを透過したX線を検出し、X線画像データを生成する。
第2移動機構14は、第2X線管121と第2X線検出器123とを対として、所定の円弧上を移動可能に支持する。具体的には、第2移動機構14は、第2X線管121のための移動機構141と第2X線検出器123のための移動機構142とを有する。移動機構141は、例えば、治療室の床面100に埋設され、第2X線管121を所定の円弧上を移動可能に支持する直動ガイドやボールねじ等を有する。移動機構142は、例えば、治療室の天井200に取り付けられ、第2X線検出器123を所定の円弧上を移動可能に支持する直動ガイドやボールねじ等を有する。例えば、第2X線管121の焦点と第2X線検出器123の検出面中心とを結ぶ撮影軸A2が、アイソセンタISに交差するように、第2X線管121は移動機構141に、第2X線検出器123は移動機構142に支持される。
第2移動駆動装置16は、コンソール70のX線撮影系制御回路72による指令に従い両移動機構141,142を同期的に駆動して第2X線管121と第2X線検出器123とが常に正対するように移動する。なお、第2のX線撮影系12の撮影方向は、アイソセンタIS回りの撮影軸A2の角度に規定される。
第1X線管111及び第1X線検出器113の移動範囲と第2X線管121及び第2X線検出器123の移動範囲とは、通常、アイソセンタIS回りの全方位よりも狭い。従って、第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12との撮影方向に関する自由度は比較的制限されている。
寝台50は、基台51と天板52とを有する。基台51は、治療室の床面に設置され、天板52を移動自在に支持する。天板52は、略平面形状を有し、患者が載置される。
図1に示すように、コンソール70は、処理回路71、X線撮影系制御回路72、治療系制御回路73、記憶回路74、表示回路75、入力回路76及び通信回路77を有する。処理回路71、X線撮影系制御回路72、治療系制御回路73、記憶回路74、表示回路75、入力回路76及び通信回路77は、互いにバスを介して通信可能に接続されている。
処理回路71は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。具体的には、処理回路71は、DRR画像生成機能711、撮影マージン設定機能712、重要臓器設定機能713、絞り開口決定機能714、撮影方向決定機能715、表示制御機能716及び同期信号生成機能717を有する。なお、処理回路71は、上記機能を実現可能なASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、SPLD(Simple Programmable Logic Device)により実現されても良い。
DRR画像生成機能711において処理回路71は、3次元医用画像に基づいて複数の視線方向に関する複数のDRR画像を生成する。3次元医用画像は、被検体の3次元的な形態情報を表現する画像であり、例えば、治療計画のためにX線コンピュータ断層撮影装置により生成される。以下、3次元医用画像は、治療計画用3次元CT画像であるとする。DRR画像は、X線診断装置により撮影されるX線画像を模擬した2次元画像である。処理回路71は、第1のX線撮影系11により撮影可能な複数の撮影方向に関する複数のDRR画像と、第2のX線撮影系12により撮影可能な複数の撮影方向に関する複数のDRR画像とを生成する。
撮影マージン設定機能712において処理回路71は、DRR画像生成機能711により生成された各DRR画像について撮影マージンを設定する。撮影マージンは、治療部位を包含する放射線照射領域である。
重要臓器設定機能713において処理回路71は、DRR画像生成機能711により生成された各DRR画像について重要臓器領域を設定する。重要臓器領域は、放射線に対する感度が比較的高く、放射線照射を避けるべき臓器に対応する画像領域である。
絞り開口決定機能714において処理回路71は、第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12との各々について、3次元医用画像に基づいて患者Pを透過するX線の線量が予め設定された基準を満たすような絞りの開口を決定する。
撮影方向決定機能715において処理回路71は、第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12との各々について、患者Pを透過するX線の線量が予め設定された基準を満たすような撮影方向を3次元医用画像に基づいて決定する。決定された撮影方向は、患者位置決め用の撮影方向に設定される。具体的には、処理回路71は、X線撮影系11,12各々が配置可能な複数の撮影方向に関して複数の透過X線量を算出する。これら複数の透過X線量のうちの、予め設定された基準を満たす透過X線量に対応する撮影方向が患者位置決め用の撮影方向に決定される。予め設定された基準を満たす透過X線量は、例えば、複数の透過X線量のうちの最小の透過X線量である。なお、本実施形態に係る予め設定された基準を満たす透過X線量は、最小の透過X線量に限定されず、2番目に小さい透過X線量でも良いし、如何なる順位の透過X線量でも良い。また、本実施形態に係る予め設定された基準を満たす透過X線量は、順位のみに限定されず、撮影方向等が考慮されても良い。
表示制御機能716において処理回路71は、第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12との各々について、撮影方向決定機能715により決定された撮影方向を所定のレイアウトで表示する。
同期信号生成機能717において処理回路71は、第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12との各々により収集されたX線画像に基づいて、照射器33により放射線を照射するためのON信号と放射線の照射を停止するためのOFF信号を生成する。
X線撮影系制御回路72は、放射線治療直前期の患者位置決めのためにX線撮影系10を制御する。具体的には、X線撮影系制御回路72は、第1のX線撮影系11を所定の撮影方向に配置するために第1移動駆動装置15を制御する。X線撮影系制御回路72は、第1のX線撮影系11でX線撮影を行うために第1X線管111を制御する。X線撮影系制御回路72は、第1X線管111から照射されるX線の照射野を限定するために第1X線絞り器112を制御する。同様に、X線撮影系制御回路72は、第2のX線撮影系12を所定の撮影方向に配置するために第2移動駆動装置16を制御し、第2のX線撮影系12でX線撮影を行うために第2X線管121を制御し、第2X線管121から照射されるX線の照射野を限定するために第2X線絞り器122を制御する。
治療系制御回路73は、放射線治療時において患者Pに放射線を照射するために照射系制御回路35とガントリ制御回路36とを制御する。治療系制御回路73は、同期信号生成機能717によりON信号が生成された事を契機として放射線を照射するように照射系制御回路35を制御する。治療系制御回路73は、同期信号生成機能717によりOFF信号が生成された事を契機として放射線を停止するように照射系制御回路35を制御する。治療系制御回路73は、治療計画に従う照射方向に照射ヘッド321を配置するためにガントリ制御回路36を制御する。
記憶回路74は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。例えば、記憶回路74は、治療計画装置等から供給された治療計画や治療計画用3次元CT画像を記憶する。ハードウェアとして記憶回路74は、CD−ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。
表示回路75は、種々の情報を表示する。具体的には、表示回路75は、表示インタフェースと表示機器とを有する。表示インタフェースは、表示対象を表すデータを映像信号に変換する。映像信号は、表示機器に供給される。表示機器は、表示対象を表す映像信号を表示する。表示機器としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
入力回路76は、具体的には、入力機器と入力インタフェースとを有する。入力機器は、ユーザからの各種指令を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力インタフェースは、入力機器からの出力信号をバスを介して処理回路71に供給する。
通信回路77は、有線又は無線を介して図示しない治療計画装置や放射線治療情報システム(OIS:Oncology Information System)等の他装置との間でデータ通信を行う。
以下、第1実施形態に放射線治療装置1の動作例について説明する。
図3は、第1実施形態に係る放射線治療装置1の処理の典型的な流れを示す図である。図3に示すように、処理回路71は、まず、DRR画像生成機能711を実行する(ステップS1)。ステップS1において処理回路71は、第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12との各々について、治療計画用3次元CT画像に基づいて複数の撮影方向に関する複数のDRR画像を生成する。例えば、X線管111,121及びX線検出器113,123の移動範囲に亘り1°毎にDRR画像が生成される。
ステップS1が行われると処理回路71は、撮影マージン設定機能712を実行する(ステップS2)。ステップS2において処理回路71は、ステップS1において生成された各DRR画像に撮影マージンを設定する。
図4は、DRR画像I1への撮影マージンRMの設定例を示す図である、図4に示すように、DRR画像I1には治療部位RTが含まれる。ユーザは、治療部位RTを含むように入力回路76を介して撮影マージンRMの画像領域を指定する。処理回路71は、入力回路76を介してユーザにより指定された画像領域を撮影マージンRMに設定する。なお、処理回路71は、DRR画像I1に画像処理をして治療部位RTを認識し、当該治療部位RTを含むように自動的に撮影マージンRMを設定しても良い。
ステップS2が行われると処理回路71は、重要臓器設定機能713を実行する(ステップS3)。ステップS3において処理回路71は、ステップS1において生成された各DRR画像に重要臓器領域を設定する。
図5は、DRR画像I2への重要臓器領域RRの設定例を示す図である。図5に示すように、ユーザは、入力回路76を介して重要臓器RRの画像領域を指定する。処理回路71は、入力回路76を介してユーザにより指定された画像領域を重要臓器領域RRに設定する。なお、処理回路71は、DRR画像I2に画像処理をして重要臓器RRを認識し、当該重要臓器に対応する画像領域を自動的に重要臓器領域RRに設定しても良い。
ステップS3が行われると処理回路71は、絞り開口決定機能714を実行する(ステップS4)。ステップS4において処理回路71は、複数のDRR画像に対応する複数の撮影方向各々について第1X線絞り器113又は第2X線絞り器123の開口値を算出する。開口値は、X線絞り器113,123の開口を規定する各X線遮蔽板の位置により構成される。
図6は、X線絞り器113,123の開口値の算出例を示す図である。図6の上段に示すように、各DRR画像I3には撮影マージンRM3が設定されている。図6の下段に示すように、処理回路71は、X線絞り器113,123を構成する複数のX線遮蔽板81,83により規定されるX線照射範囲が撮影マージンRM3に限局するような開口値を算出する。なお、X線絞り器113,123は、例えば、互いに交差する2対のX線遮蔽板81,83を搭載する。1対のX線遮蔽板81は、撮影軸に直交する平面内の縦軸に沿ってスライド可能に設けられ、残りの1対のX線遮蔽板83は、当該平面内の横軸に沿ってスライド可能に設けられる。例えば、処理回路71は、複数のX線遮蔽板81,83により規定されるX線照射範囲に撮影マージンRMが内接するような各X線遮蔽板81,83の位置を算出する。算出された各X線遮蔽板81,83の位置の組合せが開口値に設定される。
図7は、撮影マージンRMに重要臓器領域RRが含まれる場合のX線絞り器112,122の開口値の算出例を示す図である。図7の上段に示すように、DRR画像I4において撮影マージンRM4にオーバラップするように重要臓器領域RR4が設定された場合、処理回路71は、重要臓器領域RR4を含まないX線照射範囲を実現する開口値を算出する。
具体的には、まず処理回路71は、DRR画像I4において重要臓器領域RR4が撮影マージンRM4にオーバラップしているか否かを画像処理により判定する。図6に示すように、重要臓器領域RR4が撮影マージンRM4にオーバラップしていない場合、処理回路71は、撮影マージンRM4に限局してX線を照射するようなX線絞り器113,123の開口値を算出する。図7の下段に示すように、重要臓器領域RR4が撮影マージンRM4にオーバラップしている場合、処理回路71は、当該重要臓器領域RR4にX線が照射されず且つ撮影マージンRM4にX線が照射されるような各X線遮蔽板81,83の位置を算出する。算出された各X線遮蔽板81,83の位置の組合せがX線絞り器113,123の開口値に設定される。
なお、X線絞り器113,123としてマルチリーフ・コリメータが使用されても良い。この場合、X線照射範囲の形状をより撮影マージンRMの形状に合致させることができる。開口値の算出方法は、通常のX線絞り器113,123を使用した上記方法と同様である。すなわち、処理回路71は、マルチリーフ・コリメータを構成する複数のリーフにより規定されるX線照射範囲が撮影マージンRMに内接するような各リーフの位置を算出する。算出された各リーフの位置の組合せが開口値に設定される。
ステップS4が行われると処理回路71は、撮影方向決定機能を実行する(ステップS5)。ステップS5において処理回路71は、複数のDRR画像に対応する複数の撮影方向各々について患者の透過X線量を算出する。
図8は、透過X線量の算出の詳細を示す図である。図8に示すように、処理回路71は、撮影マージンRMと患者体輪郭RPとに基づいて透過X線量を算出する。具体的には、処理回路71は、各撮影方向について、撮影マージンRMに限定して照射されるX線の外輪郭RXと患者体輪郭RPとを治療計画用3次元CT画像I5に設定する。なお、図8において治療計画用3次元CT画像I5は、2次元的に示しているが、実際には3次元である。
X線外輪郭RXと患者体輪郭RPとが設定されると処理回路71は、治療計画用3次元CT画像I5を構成する画素のうちの、X線外輪郭RXと患者体輪郭RPとに囲まれる画像領域RVを構成する画素の画素数(ボクセル数)を透過X線量と見做して計数する。なお、撮影マージンRMに重要臓器領域RRが含まれる場合、X線外輪郭RXと患者体輪郭RPとに囲まれる画像領域RVから重要臓器領域RRを除いた画像領域を構成する画素の画素数を透過X線量と見做して計数しても良い。
ステップS5が行われると処理回路71は、引き続き撮影方向決定機能715を実行する(ステップS6)。ステップS6において処理回路71は、第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12との各々について、ステップS5において算出された複数の撮影方向に関する複数の透過X線量の中から最小の透過X線量を特定し、最小の透過X線量に対応する撮影方向を、患者位置決め撮影用の撮影方向に決定する。また、絞り開口決定機能714により、ステップS4において算出された複数の撮影方向に関する複数の開口値のうちの、患者位置決め撮影用の撮影方向に関する開口値が患者位置決め撮影用の開口値に決定される。
ステップS6が行われると処理回路71は、表示制御機能716を実行する(ステップS7)。ステップS7において処理回路71は、ステップS6において決定された患者位置決め撮影用の撮影方向を表示回路75に表示する。
図9は、患者位置決め撮影用の撮影方向の表示画面I6を示す図である。図9に示すように、第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12との各々について患者位置決め撮影用の撮影方向が表示される。具体的には、表示画面I6は、第1のX線撮影系11に関する患者位置決め撮影用の撮影方向の表示欄R1と第2のX線撮影系12に関する患者位置決め撮影用の撮影方向の表示欄R2とを有する。例えば、表示欄R1には、第1のX線撮影系11に関する患者位置決め撮影用の撮影方向として「115°」。表示欄R2には、第2のX線撮影系12に関する患者位置決め撮影用の撮影方向として「236°」が表示される。患者位置決め撮影用の撮影方向は数字で表現されることに限定されず、当該患者位置決め撮影用の撮影方向における第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12と患者との位置関係が図式的に表示されても良い。また、処理回路71は、第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12との各々について、絞り開口決定機能714により決定された、患者位置決め撮影用の開口値を表示しても良い。
ステップS7が行われるとX線撮影系制御回路72は、患者位置決め用のX線撮影を行う(ステップS8)。ステップS8においてX線撮影系制御回路72は、第1移動駆動装置15と第2移動駆動装置16とを制御し、ステップS6において決定された患者位置決め撮影用の撮影方向に第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12との各々を配置する。また、X線撮影系制御回路72は、第1X線絞り器112と第2X線絞り器122とを制御し、第1X線絞り器112の開口値を、ステップS6において決定された患者位置決め撮影用の開口値に設定し、第2X線絞り器122の開口値を、ステップS6において決定された患者位置決め撮影用の開口値に設定する。そしてX線撮影系制御回路72は、第1X線管111と第2X線管112とを制御し、2方向からのX線撮影を行う。これにより、少ないX線被曝量で患者位置決め撮影を実行することができる。
ステップS8が行われると患者位置決めが行われる(ステップS9)。例えば、治療計画3次元CT画像との間で位置ずれ量が算出され、当該位置ずれ量が略ゼロになるように天板52上の患者Pを移動したり、天板52を移動したりする。
ステップS9が行われると治療系制御回路73は、放射線治療を行う(ステップS10)。ステップS10において治療系制御回路73は、治療計画に従い放射線治療を行うように照射系制御回路35とガントリ制御回路36とを同期的に制御する。これにより、正確な位置決めのもと患者Pに放射線照射を行うことができる。
以上により、第1実施形態に係る放射線治療装置1の処理の説明を終了する。
なお、上記の放射線治療装置1の処理の流れは一例であり、本実施形態はこれに限定されない。例えば、上記の処理の流れにおいては、患者位置決め撮影用の撮影方向及びX線絞りの開口値の両方が決定されるとしたが、X線撮影系10の移動自由度に応じて撮影方向及びX線絞りの開口値の何れか一方が決定されなくても良い。例えば、第1のX線撮影系11の第1X線管111及び第1X線検出器113と第2のX線撮影系12の第2X線管121及び第2X線検出器123との撮影方向が固定されている場合、患者位置決め撮影用の撮影方向は決定されなくても良い。この場合、固定された撮影方向におけるX線絞り器112,122の開口値のみが絞り開口決定機能714により決定される。なお、第1のX線撮影系11の第1X線管111及び第1X線検出器113と第2のX線撮影系12の第2X線管121及び第2X線検出器123との撮影方向が上記実施形態のように移動可能である場合、患者位置決め撮影用の撮影方向と開口値との両方が決定される。
また、上記の説明においては、ステップS4において各撮影方向について開口値を算出し終えた後、ステップS5において各撮影方向について透過X線量を算出するとした。しかしながら、各撮影方向について開口値と透過X線量とを並行して算出しても良い。
上記の通り、第1X線管111及び第1X線検出器113の移動範囲と第2X線管121及び第2X線検出器123の移動範囲とは、通常、アイソセンタIS回りの全方位よりも狭く、第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12との撮影方向に関しての自由度は比較的制限されている。従って従来装置においては、放射線治療直前期の位置決めのためのX線撮影を治療部位に限局して行うことは患者位置や治療部位位置によっては困難であった。このような場合、治療部位と共に正常部位もX線撮影することとなるが、正常部位への被曝は低減されるべきである。
上記の通り、第1実施形態に係る放射線治療装置1は、照射器33、寝台50、第1のX線撮影系11、第2のX線撮影系12、記憶回路74及び処理回路71を有する。照射器33は、放射線治療対象の患者Pに治療用放射線を照射する。寝台50は、患者Pが載置される天板を移動可能に支持する。第1のX線撮影系11は、天板52に載置された患者PをX線撮影するための第1X線管111と第1X線検出器113とを有する。第2のX線撮影系12は、天板52に載置された患者PをX線撮影するための第2X線管121と第2X線検出器123とを有する。記憶回路74は、患者Pに関する治療計画用3次元医用画像を記憶する。処理回路71は、第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12との各々について、治療計画用3次元医用画像に基づいて患者Pを透過するX線の線量が予め設定された基準を満たすような撮影方向と絞りの開口との少なくとも一方を決定する。
上記構成により、処理回路71は、第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12との各々について、透過X線量が少ない撮影方向と絞りの開口との少なくとも一方をシミュレーションにより決定することができる。よって、2方向からのX線撮影系による放射線治療直前期の患者位置決めにおいて患者Pの被曝線量を低減することができる。
(第2実施形態)
上記第1実施形態においては患者位置決め装置は、放射線治療装置1に組み込まれているとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。第2実施形態に係る患者位置決め装置は、放射線治療装置とは別体である。以下、第2実施形態に係る患者位置決め装置を説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図10は、第2実施形態に係る患者位置決め装置1’の構成を示す図である。図10に示すように、患者位置決め装置1’は、X線撮影系10及びコンソール70を有する。患者位置決め装置1’は、図示しない放射線治療装置とは通信可能に接続されている。なお、X線撮影系10と寝台50とは、放射線治療装置と同様、治療室に設置される。
上記の通り、第2実施形態に係る患者位置決め装置1’は、第1のX線撮影系11、第2のX線撮影系12、記憶回路74及び処理回路71を有する。第1のX線撮影系11は、天板に載置された患者PをX線撮影するための第1X線管111と第1X線検出器113とを有する。第2のX線撮影系12は、天板52に載置された患者PをX線撮影するための第2X線管121と第2X線検出器123とを有する。記憶回路74は、患者Pに関する治療計画用3次元医用画像を記憶する。処理回路71は、第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12との各々について、治療計画用3次元医用画像に基づいて患者Pを透過するX線の線量が予め設定された基準を満たすような撮影方向と絞りの開口との少なくとも一方を決定する。
よって、第2実施形態に係る患者位置決め装置1’は、第1実施形態に係る放射線治療装置1と同様、第1のX線撮影系11と第2のX線撮影系12との各々について、透過X線量が少ない撮影方向と絞りの開口との少なくとも一方をシミュレーションにより決定することができる。よって、2方向からのX線撮影系による放射線治療直前期の患者位置決めにおいて患者Pの被曝線量を低減することができる。
以上、上記述べた少なくとも1つの実施形態によれば、放射線治療直前期における患者位置決めのためのX線撮影による被曝線量を低減することが可能になる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。