本発明は、FcRnに結合する抗体及びその抗原結合部分を提供する。こういった抗体は、IgGのFcドメインのための結合部位に重複するFcRnのエピトープに結合し、IgG及び免疫複合体としてのIgGに対するFcRnの結合を、低減または阻害する。
本明細書では、重鎖可変領域を含むFcRnに結合する抗体またはその抗原結合断片であって、重鎖可変領域がCDR1、CDR2及び、CDR3を含み、
CDR1の配列が配列番号2であり、
CDR2の配列が配列番号4であり、
CDR3の配列が配列番号78である、抗体またはその抗原結合断片が提供される。
一実施形態では、CDR3の配列は配列番号76である。別の実施形態では、CDR3の配列は配列番号74である。
別の実施形態では、CDR3の配列は、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号74、配列番号76、及び配列番号78からなる群から選択される。一実施形態では、CDR3の配列は、配列番号49または配列番号55である。
抗体または抗原結合断片の一部の実施形態では、重鎖可変領域のKabat103位のアミノ酸は、トリプトファンである。一部の実施形態では、重鎖可変領域のKabat103位のアミノ酸は、アルギニンである。
また、本明細書では、軽鎖可変領域を含むFcRnに結合する抗体またはその抗原結合断片であって、軽鎖可変領域がCDR1、CDR2及び、CDR3を含み、
CDR1の配列が配列番号6であり、
CDR2の配列が配列番号8であり、
CDR3の配列が、配列番号59、配列番号62、配列番号65、及び配列番号68からなる群から選択される、抗体またはその抗原結合断片も提供される。
また、本明細書では、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含むFcRnに結合する抗体またはその抗原結合断片であって、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域のそれぞれが、CDR1、CDR2及びCDR3を含み、
重鎖のCDR1の配列が配列番号2であり、
重鎖のCDR2の配列が配列番号4であり、
重鎖のCDR3の配列が、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、及び配列番号57からなる群から選択され、
軽鎖のCDR1の配列が配列番号6であり、
軽鎖のCDR2の配列が配列番号8であり、
軽鎖のCDR3の配列が、配列番号10、配列番号59、配列番号62、配列番号65、及び配列番号68からなる群から選択される、抗体またはその抗原結合断片も提供される。
一部の実施形態では、重鎖のCDR3の配列は配列番号49または配列番号55であり、軽鎖のCDR3の配列は配列番号10である。一部の実施形態では、重鎖のCDR3の配列は配列番号55であり、軽鎖のCDR3の配列は配列番号10である。
一部の実施形態では、本明細書における抗体または抗原結合断片は、キメラ型またはヒト化型の抗体または抗原結合断片である。
また、本明細書では、重鎖可変領域を含むFcRnに結合する抗体または抗原結合断片であって、重鎖可変領域の配列が、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、もしくは配列番号58である、または重鎖可変領域の配列が、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、もしくは配列番号58の重鎖可変領域アミノ酸配列に対し少なくとも95%同一である、抗体またはその抗原結合断片も提供される。
一部の実施形態では、当該抗体または抗原結合断片は、軽鎖可変領域をさらに含み、軽鎖可変領域の配列は配列番号20または配列番号22である。一部の実施形態では、重鎖可変領域の配列は、配列番号50または配列番号56である。一部の実施形態では、重鎖可変領域の配列は配列番号56であり、軽鎖可変領域の配列は配列番号22である。
一部の実施形態では、抗体または抗原結合断片は、軽鎖可変領域をさらに含み、軽鎖可変領域の配列は、配列番号61、配列番号64、配列番号67、もしくは配列番号70である、または軽鎖可変領域の配列は、配列番号61、配列番号64、配列番号67、もしくは配列番号70の軽鎖可変領域アミノ酸配列に対し少なくとも95%同一である。
一部の実施形態では、重鎖可変領域の配列は配列番号50または配列番号56であり、軽鎖可変領域の配列は配列番号20または配列番号22である。一部の実施形態では、重鎖可変領域の配列は配列番号56であり、軽鎖可変領域は、配列番号22の軽鎖可変領域アミノ酸配列のフレームワーク領域を含む。
また、FcRnに結合する抗体またはその抗原結合断片であって、軽鎖可変領域を含み、軽鎖可変領域の配列が、配列番号61、配列番号64、配列番号67、もしくは配列番号70である、または軽鎖可変領域の配列が、配列番号61、配列番号64、配列番号67、もしくは配列番号70の軽鎖可変領域アミノ酸配列に対し少なくとも95%同一である、抗体またはその抗原結合断片も提供される。一部の実施形態では、軽鎖可変領域の配列は配列番号67である。一部の実施形態では、軽鎖可変領域の配列は配列番号67であり、抗体または抗原結合断片は重鎖可変領域をさらに含み、重鎖可変領域は配列番号12のフレームワーク領域を含む。一部の実施形態では、軽鎖可変領域の配列は配列番号67であり、抗体または抗原結合断片は重鎖可変領域をさらに含み、重鎖可変領域配列は配列番号12の重鎖可変領域を含む。
また、本明細書では、FcRnに結合する抗体またはその抗原結合断片であって、重鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が、配列番号12、配列番号14、配列番号16、もしくは配列番号18の前記重鎖可変領域アミノ酸配列のフレームワーク領域を含む、または配列番号12、配列番号14、配列番号16、または配列番号18のフレームワーク領域に対し少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む、抗体またはその抗原結合断片も提供される。一部の実施形態では、重鎖可変領域は、配列番号12の重鎖可変領域アミノ酸配列のフレームワーク領域を含む、または配列番号12のフレームワーク領域に対し少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む。
また、FcRnに結合する抗体またはその抗原結合断片であって、軽鎖可変領域を含み、軽鎖可変領域が、配列番号20、配列番号22、配列番号24、もしくは配列番号26の軽鎖可変領域アミノ酸配列のフレームワーク領域を含む、または配列番号20、配列番号22、配列番号24、または配列番号26のフレームワーク領域に対し少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む、抗体またはその抗原結合断片も提供される。一部の実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号20もしくは配列番号22の軽鎖可変領域アミノ酸配列のフレームワーク領域を含む、または配列番号20もしくは配列番号22のフレームワーク領域に対し少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む。一部の実施形態では、軽鎖可変領域は、配列番号22の軽鎖可変領域アミノ酸配列のフレームワーク領域を含む、または配列番号22のフレームワーク領域に対し少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む。
また、本明細書では、FcRnに結合する抗体またはその抗原結合断片であって、重鎖可変領域を含み、重鎖可変領域が、配列番号12、配列番号14、配列番号16、もしくは配列番号18の前記重鎖可変領域アミノ酸配列のフレームワーク領域を含む、または、配列番号12、配列番号14、配列番号16、または配列番号18のフレームワーク領域に対し少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含み、かつ軽鎖可変領域をさらに含み、軽鎖可変領域が、配列番号20、配列番号22、配列番号24、もしくは配列番号26の軽鎖可変領域アミノ酸配列のフレームワーク領域を含む、または配列番号20、配列番号22、配列番号24、または配列番号26のフレームワーク領域に対し少なくとも95%同一であるフレームワーク領域を含む、抗体またはその抗原結合断片も提供される。
本明細書に記載される抗体の一部の実施形態では、当該抗体はアイソタイプのIgG4を有する。一部の実施形態では、当該抗体は、重鎖中にS241P修飾を含有する。一部の実施形態では、当該抗体は、重鎖中にC末端リジンが欠如している。一部の実施形態では、当該抗体は、重鎖中にS241P修飾を含有し、かつ重鎖中にC末端リジンが欠如している。
一部の実施形態では、当該抗体またはその抗原結合断片は、scFv、Fv、Fab’、Fab、F(ab’)2、または二重特異性抗体である。
また、本明細書では、本明細書に記載されるFcRnに結合する抗体またはその抗原結合断片に対して、競合または交差遮断する抗体も提供される。
また、本明細書では、本明細書に記載されるFcRn抗体または抗原結合断片をコードする単離核酸も提供される。また、本明細書では、本明細書に記載されるFcRn抗体または抗原結合断片をコードする単離核酸を含む、核酸ベクターも提供される。また、本明細書では、本明細書に記載されるFcRn抗体または抗原結合断片をコードする単離核酸を含む、原核宿主細胞または真核宿主細胞も提供される。また、本明細書では、本明細書に記載されるFcRn抗体または抗原結合断片と薬学的に許容される担体とを含む、組成物も提供される。
また、本明細書では、FcRnとIgG Fcとの間の相互作用を調節する方法であって、FcRnを、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片に接触させることを含む、方法も提供される。
また、本明細書では、細胞による抗体分解を促進する方法であって、FcRnを、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片に接触させることを含む、方法も提供される。
また、本明細書では、対象における抗体分解を促進する方法であって、対象に、有効量の、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片を投与することを含む、方法も提供される。一部の実施形態では、分解される抗体は、自己抗体である。一部の実施形態では、分解される抗体は、治療抗体である。
また、本明細書では、対象におけるIgG媒介疾患を緩和する方法であって、対象に、IgG媒介疾患の緩和に有効な量の、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片を投与することを含む、方法も提供される。
また、本明細書では、FcRnによる免疫複合体の結合を阻害する、またはFcRn−免疫複合体相互作用を阻害することにより免疫複合体の循環を減少させる方法であって、FcRnを、有効量の、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片に接触させることを含む、方法も提供される。
また、本明細書では、抗原提示細胞(APC)による免疫複合化抗原の提示を阻害する方法であって、APCを、抗原の提示の阻害に有効な量の、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片に接触させることを含む、方法も提供される。
また、本明細書では、抗原提示細胞(APC)による免疫複合化抗原の交差提示を阻害する方法であって、APCを、抗原の交差提示の阻害に有効な量の、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片に接触させることを含む、方法も提供される。
また、本明細書では、抗原提示細胞(APC)による炎症性サイトカインの分泌を阻害する方法であって、APCを、炎症性サイトカインの分泌の阻害に有効な量の、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片に接触させることを含む、方法も提供される。一部の実施形態では、炎症性サイトカインは、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−12(IL−12)、または腫瘍壊死因子−α(TNFα)である。
また、本明細書では、抗原提示細胞によるT細胞活性化を阻害する方法であって、抗原提示細胞を、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片に接触させることを含む、方法も提供される。
また、本明細書では、自己免疫性疾患の治療、阻害、またはその重症度の低減を、それを必要とする対象において行う方法であって、有効量の、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片を投与することを含む、方法も提供される。一部の実施形態では、自己免疫性疾患は、以下からなる群から選択される:尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、腫瘍随伴天疱瘡、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、クローン病、特発性血小板減少性紫斑(ITP)、ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、重症筋無力症(MG)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、多巣性運動ニューロパチー、視神経脊髄炎、自己免疫性血小板減少症、免疫性好中球減少症、抗血友病FVIIIインヒビター、抗リン脂質抗体症候群、川崎病、ANCA関連疾患、多発性筋炎、皮膚筋炎、水胞性類天疱瘡、多発性硬化症(MS)、ギラン・バレー症候群、慢性多発ニューロパチー、潰瘍性大腸炎、糖尿病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス眼症、自己免疫性蕁麻疹、血管炎、及びラスムッセン脳炎。
また、本明細書では、酸性pH及び生理的pHの両方でFcRnに結合する抗体を同定する方法であって、pH5.8〜6.4で行われる2つ以上のスクリーニングステップを含む、方法も提供される。一部の実施形態では、当該方法は、
(a)候補抗体の集合を、pH5.8〜6.4でFcRnまたはその一部に接触させ、FcRnまたはその一部に結合する抗体を単離することと、
(b)ステップ(a)の単離抗体を、pH5.8〜7.6でFcRnまたはその一部に接触させ、FcRnまたはその一部に結合する抗体を単離することと、
(c)ステップ(b)の単離抗体を、pH5.8〜6.4でFcRnまたはその一部に接触させ、FcRnまたはその一部に結合する抗体を単離することと、
を含む。
また、本明細書では、胎盤を介した病原性抗体の伝播を遮断する方法であって、治療有効量のFcRn抗体またはその抗原結合部分を、それを必要としている妊娠中の哺乳動物に投与することを含む、方法も提供される。
また、本明細書では、対象からのICのクリアランスを増加させる方法であって、FcRn抗体またはその抗原結合部分を、それを必要としている対象に投与することを含む、方法も提供される。一部の実施形態では、対象は、免疫複合体媒介血管炎を有する。
また、本明細書では、試験抗体またはその抗原結合断片が、FcRnと免疫複合体との間の相互作用を遮断するかどうか、または減らすかどうかを決定する方法であって、
(a)哺乳動物から全血を得ることと、
(b)免疫複合体を、全血の第1の部分に添加することと、
(c)免疫複合体の添加後に、全血中のサイトカインの量を測定して、第1の量のサイトカインを得ることと、
(d)試験抗体またはその抗原結合断片を、全血の第2の部分に添加することと、
(e)試験抗体またはその抗原結合断片の添加後にまたは添加と同時に、免疫複合体を、全血の第2の部分に添加することと、
(f)免疫複合体の添加後に、全血の第2の部分中のサイトカインの量を測定して、第2の量のサイトカインを得ることと、
を含む、方法も提供される。
一部の実施形態では、哺乳動物はヒトである。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化型、キメラ型、または非天然存在の完全ヒト型である。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、IgG、Fab、F(ab’)2、二重特異性抗体、FV、scFV、遮断ペプチド、またはこれらの抗原結合断片である。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号56を有する重鎖可変領域及び配列番号22を有する軽鎖可変領域を含む。
一部の実施形態では、サイトカインは、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−10)、またはインターロイキン−12(IL−12)である。一部の実施形態では、免疫複合体は人工免疫複合体であり、すなわち、哺乳動物中に天然に存在しない。一部の実施形態では、当該免疫複合体は、4−ヒドロキシ−5−ヨード−3−ニトロフェニルアセチル基(NIP)とニワトリオボアルブミン(OVA)と抗NIP抗体との多量体複合体を含む。
また、本明細書では、抗FcRn療法に対する患者の応答性の期待レベルを決定する方法であって、
(a)抗FcRn療法の開始前に、患者から全血を得ることと、
(b)免疫複合体を、全血の第1の部分に添加することと、
(c)免疫複合体の添加後に、全血中のサイトカインの量を測定して、第1の量のサイトカインを得ることと、
(d)FcRnと免疫複合体との間の相互作用を遮断するまたは減らすことが知られている抗体またはその抗原結合断片を、全血の第2の部分に添加することと、
(e)抗体またはその抗原結合断片の添加後にまたは添加と同時に、免疫複合体を、全血の第2の部分に添加することと、
(f)免疫複合体の添加後に、全血の第2の部分中のサイトカインの量を測定して、第2の量のサイトカインを得ることと、
(g)第1の量のサイトカインと第2の量のサイトカインとの間の差を決定することと、
を含む、方法も提供される。
一部の実施形態では、患者はヒトである。
一部の実施形態では、抗FcRn療法は、配列番号56の重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号22の軽鎖可変領域配列を含む抗体の投与である。
一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、IgG、Fab、F(ab’)2、二重特異性抗体、FV、scFV、遮断ペプチド、またはこれらの断片である。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、F(ab’)2である。一部の実施形態では、抗体またはその抗原結合断片は、配列番号56を有する重鎖可変領域及び配列番号22を有する軽鎖可変領域を含む。
一部の実施形態では、サイトカインは、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−10)、またはインターロイキン−12(IL−12)である。一部の実施形態では、免疫複合体は人工免疫複合体であり、すなわち、哺乳動物中に天然に存在しない。一部の実施形態では、当該免疫複合体は、4−ヒドロキシ−5−ヨード−3−ニトロフェニルアセチル基(NIP)とニワトリオボアルブミン(OVA)と抗NIP抗体との多量体複合体を含む。一部の実施形態では、ステップ(g)で決定される差は、対照値と比較される。一部の実施形態では、ステップ(g)で決定される差は、Fcドメイン中にFcRnへの結合を無効にする3点突然変異(I253A/H310A/H435A)を伴う抗体を含む免疫複合体を用いて当該方法が行われる場合に得られる差と比較される。
また、本明細書では、抗FcRn療法に対する患者の応答をモニターする方法であって、
(a)抗FcRn療法の開始前に、患者から全血を得ることと、
(b)免疫複合体を、全血に添加することと、
(c)免疫複合体の添加後に、全血中のサイトカインの量を測定して、第1の量のサイトカインを得ることと、
(d)抗FcRn療法の開始後に、患者から全血を得ることと、
(e)免疫複合体を、ステップ(d)の全血に添加することと、
(f)ステップ(e)の免疫複合体の添加後に、全血中のサイトカインの量を測定して、第2の量のサイトカインを得ることと、
(g)第1の量のサイトカインと第2の量のサイトカインとの間の差を決定することと、
を含む、方法も提供される。
一部の実施形態では、当該患者はヒトである。
一部の実施形態では、当該抗FcRn療法は、配列番号56の重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号22の軽鎖可変領域配列を含む抗体の投与である。一部の実施形態では、当該抗体は、IgG、Fab、F(ab’)2、二重特異性抗体、FV、scFV、遮断ペプチド、またはこれらの断片である。一部の実施形態では、当該抗体はF(ab’)2である。
一部の実施形態では、当該サイトカインは、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターフェロン−γ(IFN−γ)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−10)、またはインターロイキン−12(IL−12)である。一部の実施形態では、当該免疫複合体は、4−ヒドロキシ−5−ヨード−3−ニトロフェニルアセチル基(NIP)とニワトリオボアルブミン(NIP)と抗NIP抗体との多量体複合体を含む。一部の実施形態では、ステップ(g)で決定される差は、対照値と比較される。一部の実施形態では、ステップ(g)で決定される差は、Fcドメイン中にFcRnへの結合を無効にする3点突然変異(I253A/H310A/H435A)を伴う抗体を含む免疫複合体を用いて当該方法が行われる場合に得られる差と比較される。一部の実施形態では、抗FcRn療法は、ステップ(g)で決定される、第1の量のサイトカインと第2の量のサイトカインとの間の差に基づいて調整される。
また、本明細書では、治療抗体の投与前に内在性抗体の分解を促進する方法であって、治療抗体を投与する前に、FcRnのIgG結合部位に対し特異的な抗FcRn抗体またはその断片を、治療抗体を用いた処置を必要としている患者に投与することを含む、方法も提供される。
また、本明細書では、対象に投与された内在性治療抗体の分解を促進する方法であって、有効量の抗FcRn抗体またはその断片を前記対象に投与することを含む、方法も提供される。
一部の実施形態では、当該方法は、治療抗体を対象に投与するステップをさらに含む。一部の実施形態では、治療抗体の薬物動態または薬物力学が増強される。
また、本明細書では、対象における抗FcRn抗体の投与後の抗FcRn抗体のレベルを測定する方法であって、抗FcRn抗体が投与された後に、対象から単球を含む全血を得ることと、単球細胞表面のFcRn発現レベルを測定することと、を含む方法も、提供される。一部の実施形態では、当該対象は哺乳動物である。他の実施形態では、当該哺乳動物はヒトである。
本特許または出願ファイルには、カラーで制作された図面が少なくとも1点含まれている。カラー図面で発行された本特許または特許出願のコピーは、要請時及び必要料金の支払時に特許商標庁から提供されることになる。
一態様では、FcRnに結合する抗体及び結合タンパク質が本明細書で提供される。より詳細には、当該抗体は、抗体Fcのための結合部位に重複するFcRnのエピトープに結合する。結果として、当該抗体は、FcRnのIgG Fcへの結合、IgGの保護、及び免疫複合体(IC)の抗原提示などのFcRn媒介機能を調節する。別の態様では、FcRn抗体またはその抗原結合部分をコードする配列を含む単離核酸が提供される。別の態様では、対象への投与に好適な、FcRn抗体またはその抗原結合部分と薬学的に許容される担体とを含む組成物が提供される。
一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、ヒトIgGのヒトFcRnへの結合を阻害するが、ヒト血清アルブミンのヒトFcRnへの結合は阻害しない。一部の実施形態では、本明細書で開示される抗体は、ヒトIgGの血清半減期を減少させるが、ヒト血清アルブミンの血清半減期は減少させない。
別の態様では、治療の方法が提供される。例えば、IgG FcのFcRnへの結合を低減することにより、本明細書に記載の抗体及びその抗原結合部分は、循環IgGの半減期を低減するためと、抗体媒介自己免疫性障害を治療または防止するためとに使用することができる。同様に、本明細書に記載の抗体及びその抗原結合部分は、安定性のために、IgG Fc領域を含む治療IgG及び他の治療剤の半減期を低減するために使用することができる。このような方法は、FcRn媒介IgG保護の低減を必要としている個体に、FcRnのヒトIgGへの結合を阻害するのに十分な量のFcRn抗体を投与することを含む。
新生児Fc受容体としても知られるFcRnは、IgGに対する複合膜Fc受容体である。FcRnは、膜結合型アルファ−鎖(GenBankアクセッション番号NM004107)及び可溶性β2−ミクログロブリン(β2m)(GenBankアクセッション番号NM004048)のヘテロ二量体であり、構造上、MHCクラスI分子に関連する。FcRnは、貪食されたIgGに結合し、それをリソソーム区画における分解から保護し、そしてIgGを細胞表面に運搬して細胞外の中性pHにて放出することにより、血清IgG濃度を調節する。この機序を通して、FcRnは、IgGの血清半減期を長くする役割を担っている。したがって、FcRn−IgG相互作用の特異的な遮断を、病原性IgG抗体の分解を促進するために使用することができる。FcRnは、抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞(DC))内の多価性IgG免疫複合体(IC)とも結合し、抗原提示細胞は、T細胞に提示しT細胞媒介免疫応答を活性化させるため、結合したICを抗原処理経路に向ける。したがって、FcRn−IgG相互作用の特異的な遮断は、炎症性サイトカイン(例えば、IL−6、IL−12、IFNγ、またはTNFα)の産生を低減することを含めて、T細胞媒介免疫応答を阻害するために使用することができる。
FcRnに特異的に結合しFcRnのIgGへの結合を遮断するが、FcRnのアルブミン結合部位には実質的に結合しない、マウス抗体に由来する抗体が提供される。当該抗体は、pH7.4及びpH6.0におけるFcRnとの結合親和性が大幅に改善されており、したがって、生理的条件及び酸性条件下で、IgG FcのFcRnとの結合を遮断する。当該抗体は、自己免疫性疾患及び炎症性疾患の治療に有用である。当該抗体は、1つ以上の親和性成熟CDRを含む。親和性成熟の手順により、6.0〜7.4のクリティカルなpH範囲にわたり高い親和性でFcRnに結合する抗体が提供される。したがって、当該抗体は、一旦エンドソームの酸性環境内に内部移行されると、IgG Fcが結合するのを効果的に遮断する。
ある特定の実施形態によれば、この改善された抗体は、免疫原性低減のためのヒト化型フレームワークも特徴としている。ある特定の実施形態では、FcRn特異的抗体のCDRは、ヒト抗体から得られたフレームワーク中にある。他の実施形態では、FcRn特異的抗体のCDRは、2つ以上のヒト抗体の複合物であるフレームワーク中にある。他の実施形態では、FcRn特異的抗体の表面が露出したフレームワーク残基は、ヒト抗体のフレームワーク残基に置き換えられる。好ましい実施形態では、フレームワークは、広い個体群範囲にわたってT細胞エピトープであることが予測されるアミノ酸配列の存在を最小限にするように選択される。CDRは、ヒト定常領域に結合したマウスフレームワーク(すなわち、キメラ型抗体)中にあってもよい。
本明細書でさらに説明されるように、親和性成熟のため、重鎖及び軽鎖可変ドメインCDR3領域を変異させ、scFv形態においてpH6.0及びpH7.4でスクリーニングした。アミノ酸配列の変化を、配列KNCNNCNNCNNCSVCNWCYGG(配列番号71)を含むオリゴヌクレオチドを使用して、重鎖CDR3H領域のアミノ酸98〜103位(CDR3Hのアミノ酸98〜102及びFW4のアミノ酸103)に導入した。変化は、選択されたアミノ酸の各位置について以下のように提供した:アミノ酸98:A、C、D、F、G、S、V、Y;アミノ酸99:A、C、D、F、G、H、I、L、N、P、R、S、T、V、Y;アミノ酸100:A、C、D、F、G、H、I、L、N、P、R、S、T、V、Y;アミノ酸100a:A、C、D、F、G、H、I、L、N、P、R、S、T、V、Y;アミノ酸101:A、D、G、H、P、R;アミノ酸102:D、F、H、I、L、N、V、Y;アミノ酸103:R、W。アミノ酸配列の変化を、オリゴヌクレオチド配列TGTMRSVMGTVSKRSRRCWMCYYCBWCRYCTTC(配列番号72)を使用して、軽鎖CDR3L領域のアミノ酸89〜97位に導入した。変化は、選択されたアミノ酸の各位置について以下のように提供した:アミノ酸88:C;アミノ酸89:H、K、N、Q、R、S;アミノ酸90:A、E、K、P、Q、T;アミノ酸91:C、S、W、Y;アミノ酸92:C、D、E、G、W、Y;アミノ酸93:D、G、N、S;アミノ酸94:N、S、T、Y;アミノ酸95:F、L、P、S;アミノ酸96:D、F、H、L、V、Y;アミノ酸97:A、I、T、V。
後述の実施例に示すように、この操作により、FcRn結合親和性を大幅に改善するいくつかのCDR3H変異体がもたらされた。得られた変異体を、CDR3Hライブラリーに導入された変動性と比較して検査すると、比較的アミノ酸の変化が無いままであった特定の位置と、変化が導入され結合が改善されたと思われる他の位置とが示される。したがって、重鎖が、変更され得るある特定のアミノ酸を含むCDR3Hを含む、FcRnに結合する抗体及びその抗原結合部分が提供される。ある1つのそのような実施形態では、CDR3Hは、VX1PPX2X3(式中、X1はA、R、またはSであり、X2はG、またはRであり、X3はI、L、またはVである)(配列番号73)を含む。別のそのような実施形態では、重鎖CDR3Hは、STTVX1PPX2X3(式中、X1はA、R、またはSであり、X2はG、またはRであり、X3はI、L、またはVである)(配列番号74)である。別のそのような実施形態では、重鎖CDR3Hは、VX1PPX2X3(式中、X1はA、R、またはSであり、X2は、A、G、H、P、またはRであり、X3はH、I、L、またはVである)(配列番号75)を含む。別のそのような実施形態では、重鎖CDR3Hは、STTVX1PPX2X3(式中、X1はA、R、またはSであり、X2は、A、G、H、P、またはRであり、X3はH、I、L、またはVである)(配列番号76)である。別のそのような実施形態では、重鎖CDR3Hは、VX1X2X3X4X5(式中、X1はA、H、R、またはSであり、X2は、A、またはPであり、X3はA、D、またはPであり、X4はA、D、G、H、P、またはRであり、X5はF、H、I、L、N、またはVであり、X2及びX3のうちの少なくとも1つはPである)(配列番号77)を含む。別のそのような実施形態では、重鎖CDR3Hは、STTVX1X2X3X4X5(式中、X1はA、H、R、またはSであり、X2は、A、またはPであり、X3はA、D、またはPであり、X4はA、D、G、H、P、またはRであり、X5はF、H、I、L、N、またはVであり、X2及びX3のうちの少なくとも1つはPである)(配列番号78)である。
ある特定の実施形態では、CDR3Hは、STTVSPADF(配列番号27)、STTVSPPPI(配列番号29)、STTVSPPAH(配列番号31)、またはSTTVAPPRL(配列番号33)である。ある特定の実施形態では、CDR3Hは、STTVHPDRN(配列番号35)、STTVSPPAL(配列番号37)、またはSTTVHPDHN(配列番号39)、STTVSPPHL(配列番号41)である。ある特定の実施形態では、CDR3Hは、STTVAPPPL(配列番号43)、STTVSPPHL(配列番号45)、STTVAPPGH(配列番号47)、またはSTTVSPPRV(配列番号49)である。ある特定の実施形態では、CDR3Hは、STTVSPPPL(配列番号51)、STTVAPPAH(配列番号53)、STTVRPPGI(配列番号55)、またはSTTVSAPGV(配列番号57)である。これらのうちのある特定の実施形態では、重鎖可変ドメインの103位のアミノ酸は、トリプトファンである。これらのうちのある特定の実施形態では、重鎖可変ドメインの103位のアミノ酸は、アルギニンである。
CDR3Hが上記のようなある特定の実施形態では、CDR1Hが配列番号2により示され、CDR2Hが配列番号4により示される。
既知の抗体構造に鑑み、マウス抗体のフレームワーク配列を考慮に入れて、いくつかの重鎖及び軽鎖フレームワークを開発した。免疫原性T細胞エピトープを最小限にする目的で、ヒト可変ドメイン配列からヒト化型フレームワークを組み立てた。4つのそのようなヒト化型重鎖フレームワーク及び4つのそのような軽鎖ヒト化型フレームワークが以下のように例示される:VH1(配列番号12);VH2(配列番号14);VH3(配列番号16);VH4(配列番号18);Vκ1(配列番号20);Vκ2(配列番号22);Vκ3(配列番号24);及びVκ5(配列番号26)。これらの例示されたヒト化型フレームワークに対応するオリゴヌクレオチド配列は、以下によって記載される:配列番号11(VH1);配列番号13(VH2);配列番号15(VH3);配列番号17(VH4);配列番号19(Vκ1);配列番号21(Vκ2);配列番号23(Vκ3);及び配列番号25(Vκ5)。配列番号12、配列番号14、配列番号16、及び配列番号18で提供される重鎖可変ドメイン配列において、CDR1H、CDR2H、及びCDR3Hアミノ酸は「Xaa」として表される。CDR1H及びCDR2Hのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2及び配列番号4に記載される通りである。CDR1Hに対応するオリゴヌクレオチド配列は配列番号1によって記載され、CDR2Hに対応するオリゴヌクレオチド配列は配列番号3によって記載される。配列番号20、配列番号22、配列番号24、及び配列番号26で提供される軽鎖可変ドメイン配列において、全ての位置で特定のアミノ酸が指定される。CDR1Lのアミノ酸配列は配列番号6に記載される通りであり、CDR2Lは配列番号8に記載される通りであり、CDR3Lは配列番号10に記載される通りである。対応するオリゴヌクレオチド配列は、以下によって記載される通りである:配列番号5(CDR1L);配列番号7(CDR2L);及び配列番号9(CDR3L)。重鎖及び軽鎖におけるFW及びCDRの位置は、それぞれ図1及び図2からも明白となる。
表1では、親和性成熟ヒト化型FcRn結合抗体における重鎖及び軽鎖の可変ドメイン及びCDRについての非限定的な例が提供される。本明細書に記載されるように、可変ドメインは、pH6.0及びpH7.4で結合が改善するように選択されたものであり、親マウス抗体に対する実質的な結合の改善を示している。
親和性成熟重鎖CDR3は、重鎖CDR1(例えば、配列番号2を有するCDR1)及び/または重鎖CDR2(例えば、配列番号4を有するCDR2)と組み合わせることができる。親和性成熟軽鎖CDR3は、軽鎖CDR1(例えば、配列番号6を有するCDR1)及び/または軽鎖CDR2(例えば、配列番号8を有するCDR2)と組み合わせることができる。
後述の実施例で開示されるように、本明細書で例示される様々な抗体可変ドメインはマウス抗体に基づき、親和性成熟CDRを含有する。そして、ある特定の実施形態はヒト化型FWも特徴としている。表1で開示される重鎖及び軽鎖可変ドメインが、適合性であるように設計されていることは、明白となろう。したがって、表1で開示される重鎖可変ドメインは、任意の開示された軽鎖と共に共発現させて機能的抗FcRn抗体を作り出すことができる。さらに、親和性成熟重鎖可変ドメインは、本明細書で開示されるヒト化型非親和性成熟軽鎖可変ドメインと対をなすことができ、親和性成熟軽鎖可変ドメインは、ヒト化型非親和性成熟重鎖可変ドメインと対をなすことができる。好ましい実施形態では、親和性成熟重鎖可変ドメインは、ヒト化型軽鎖可変ドメインと対をなすことができる。また、表1は、VH1における重鎖CDRならびにVκ1及びVκ2における軽鎖CDRも示している。重鎖CDRは、例えば、本明細書で開示されるフレームワークVH2、VH3、及びVH4(図1参照)に対しても適合性である。軽鎖CDRは、例えば、本明細書で開示されるフレームワークVκ3及びVκ5n(図2参照)に対しても適合性である。本明細書で使用される場合、VH1、VH2、VH3、VH4、Vκ1、Vκ2、Vκ3、Vκ5という名称は、本明細書に開示される例示的なヒト化型フレームワークを指し、ヒトの生殖系遺伝子ファミリーに言及しているわけではない。本明細書で開示される任意の重鎖または軽鎖可変ドメインは、相補性可変ドメインのライブラリーと組み合わせることができ、そしてスクリーニングを行って、結合特性の改善及び変更を有する新たな抗体を同定できるということが明らかになる。
本明細書では、表1で開示されるものに類似するが、同一ではない抗体及び抗原結合部分が提供される。当該抗体は、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、挿入、及び/または追加を有することができる。ある特定の実施形態では、FcRn抗体は、表1に記載される重鎖可変ドメインに対し少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である重鎖可変ドメインを含む。ある特定の実施形態では、FcRn抗体は、表1に記載される軽鎖可変ドメインに対し少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%同一である軽鎖可変ドメインを含む。ある特定の実施形態では、抗体は、表1に記載される重鎖可変ドメイン、または、表1に記載される重鎖可変ドメインに対し少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%同一である重鎖可変ドメインと、表1に記載される軽鎖可変ドメイン、または、表1に記載される軽鎖可変ドメインに対し少なくとも85%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%同一である軽鎖可変ドメインと、を含む。
一実施形態では、FcRn抗体は、CDR配列、すなわち表1に記載されるCDR1H、CDR2H、及びCDR3H、を含む重鎖可変ドメインと、VH1、VH2、VH3、もしくはVH4のフレームワーク(すなわち、FW1、FW2、FW3、及びFW4)、または、VH1、VH2、VH3、もしくはVH4のフレームワークに対し少なくとも85%、90%、もしくは95%同一であるフレームワークと、を含有する。一実施形態では、FcRn抗体は、表1に記載されるCDR配列を含む重鎖可変ドメインと、当該重鎖可変ドメインが表1に記載される可変ドメインに対し少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるようなフレームワークと、を含有する。
一実施形態では、FcRn抗体は、CDR配列、すなわち表1に記載されるCDR1L、CDR2L、及びCDR3Lを含む軽鎖可変ドメインと、Vκ1、Vκ2、Vκ3、もしくはVκ5のフレームワーク(すなわち、FW1、FW2、FW3、及びFW4)、または、Vκ1、Vκ2、Vκ3、もしくはVκ5のフレームワークに対し少なくとも85%、90%、もしくは95%同一であるフレームワークと、を含有する。一実施形態では、FcRn抗体は、表1に記載されるCDR配列を含む軽鎖可変ドメインと、当該軽鎖可変ドメインが表1に記載される軽鎖可変ドメインに対し少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%同一であるようなフレームワークと、を含有する。
一実施形態では、FcRn抗体は、CDR配列、すなわち表1に記載されるCDR1H、CDR2H、及びCDR3H、を含む重鎖可変ドメインと、VH1、VH2、VH3、もしくはVH4のフレームワーク(すなわち、FW1、FW2、FW3、及びFW4)、または、VH1、VH2、VH3、もしくはVH4のフレームワークに対し少なくとも85%、90%、もしくは95%同一であるフレームワークと、Vκ1、Vκ2、Vκ3、もしくはVκ5を含む軽鎖可変ドメイン、または、Vκ1、Vκ2、Vκ3、もしくはVκ5に対し少なくとも85%、90%、もしくは95%同一である配列と、を含有する。
「同一性」とは、2つのアミノ酸または核酸の配列間で共有される、同一な位置の数またはパーセンテージを指し、2つの配列の最適な配列比較のために導入される必要のあるギャップの数及び各ギャップの長さを考慮に入れている。
アミノ酸配列が、別のアミノ酸配列に対し少なくとも85%、または少なくとも90%、または少なくとも95%同一であると記載される場合、これらのアミノ酸配列は保存的置換によって異なる(全ての置換が保存的置換である場合を含む)可能性がある。
一部の場合では、アミノ酸置換は、(a)置換エリアにおけるペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、または(c)側鎖のバルク、の維持に及ぼす影響が顕著に異ならない置換を選択することによって、行われ得る。例えば、天然に存在する残基は、側鎖の性質に基づいて以下の群に分類することができる;(1)疎水性アミノ酸(メチオニン、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシン);(2)中性親水性アミノ酸(システイン、セリン、及びトレオニン);(3)酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸);(4)塩基性アミノ酸(アスパラギン、グルタミン、ヒスチジン、リジン、及びアルギニン);(5)鎖配向に影響を及ぼすアミノ酸(グリシン及びプロリン);ならびに(6)芳香族アミノ酸(トリプトファン、チロシン、及びフェニルアラニン)。これらの群内でなされる置換は、保存的置換とみなすことができる。置換の例としては、限定するものではないが、以下の置換が挙げられる:アラニンに対するバリン、アルギニンに対するリジン、アスパラギンに対するグルタミン、アスパラギン酸に対するグルタミン酸、システインに対するセリン、グルタミンに対するアスパラギン、グルタミン酸に対するアスパラギン酸、グリシンに対するプロリン、ヒスチジンに対するアルギニン、イソロイシンに対するロイシン、ロイシンに対するイソロイシン、リジンに対するアルギニン、メチオニンに対するロイシン、フェニルアラニンに対するロイシン、プロリンに対するグリシン、セリンに対するトレオニン、トレオニンに対するセリン、トリプトファンに対するチロシン、チロシンに対するフェニルアラニン、及び/またはバリンに対するロイシン。
配列の類似性を決定するための方法及びコンピュータープログラムは公的に入手可能であり、以下に限定するものではないが、GCGプログラムパッケージ(Devereux et al.,Nucleic Acids Research 12:387,1984)、BLASTP、BLASTN、FASTA(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403(1990))、及びALIGNプログラム(バージョン2.0)が挙げられる。よく知られているスミス・ウォーターマンアルゴリズムも、類似性の決定に使用することができる。BLASTプログラムは、NCBI及び他のソース(BLAST Manual,Altschul,et al.,NCBI NLM NIH,Bethesda,Md.20894;BLAST2.0 http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/)から公的に入手可能である。配列比較の際には、これらの方法により、様々な置換、欠失、及び他の修飾が説明される。
本明細書で使用する「相補性決定領域」(CDR、すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)という用語は、抗原結合のために必要な存在である、抗体可変ドメインのアミノ酸残基を指す。各可変ドメインは、通常、CDR1、CDR2及びCDR3として識別される3つのCDR領域を有する。各相補性決定領域は、Kabatにより定義される「相補性決定領域」(すなわち、軽鎖可変ドメインにおける24〜34(L1)、50〜56(L2)及び89〜97(L3)ならびに重鎖可変ドメインにおける31〜35(H1)、50〜65(H2)及び95〜102(H3)について)からのアミノ酸残基を含むことができる。同様に、「フレームワーク」(FW)は、Kabat番号付け方式を考慮に入れて、軽鎖可変ドメインにおける1〜23(FW1)、35〜49(FW2)、57〜88(FW3)、及び98〜107(FW4)のアミノ酸ならびに重鎖可変ドメインにおける1〜30(FW1)、36〜49(FW2)、66〜94(FW3)、及び103〜113(FW4)のアミノ酸を含む(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1987,1991))。
Kabat残基の名称は、必ずしもアミノ酸残基の直線的番号付けに直接対応しているわけではない。実際の直線的アミノ酸配列は、基本的な可変ドメイン構造における構造的成分(フレームワークであっても、相補性決定領域(CDR)であっても)の短縮または挿入に対応して、厳密なKabat番号付けよりも少ないアミノ酸またはさらなるアミノ酸を含有する可能性がある。残基における正確なKabat番号付けは、抗体の配列中の相同的な残基と「標準的な」Kabat番号付け配列との配列比較により、所与の抗体に対して決定することができる。
本明細書で使用される「抗体可変ドメイン」とは、抗体分子の軽鎖及び重鎖の一部を指し、これには相補性決定領域(CDR;すなわち、CDR1、CDR2、及びCDR3)ならびにフレームワーク領域(FR)のアミノ酸配列が含まれる。VHは重鎖の可変ドメインを指す。VLは軽鎖の可変ドメインを指す。
抗体は、特定の抗原または物質を認識しそれに結合するタンパク質である。好ましい実施形態では、本明細書で記載される抗体または抗原結合部分は、少なくとも天然のリガンド(例えば、IgG Fc)と同じ強度でFcRnと結合する。親和性は、抗原と抗体との解離に関する平衡定数(Kd)によって表され、抗原決定基と抗体結合部位との間の結合強度を測定するものである。抗原に対する抗体の親和性は、好適な表面プラズモンエネルギー共鳴測定法によって決定することができる。そのような測定法は、国際特許出願公開第WO2005/012359号及び本明細書の他の箇所に記載されるBIACORE(登録商標)アッセイであり得る。親和性を決定する他の方法としては、酵素結合免疫吸着アッセイ、またはラジオイムノアッセイなどの競合アッセイが挙げられる。
結合活性は、抗体とその抗原との間の結合強度の尺度である。結合活性は、抗原決定基と抗体上の抗原結合部位との間の親和性ならびに、抗体当たりの結合部位の数(数価)の両方に関連する。例えば、一価の抗体(例えば、FabまたはscFv)は、特定のエピトープに対して1つの結合部位を有する。IgG抗体は、2つの抗原結合部位を有する。典型的なKの値(解離定数Kdの逆数)は、105〜1011リットル/molである。104リットル/molより小さい任意のKが、非特異的結合を示すものとみなされる。
ある特定の実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合部分は、105〜1012リットル/mol、106〜1012リットル/mol、107〜1012リットル/mol、108〜1012リットル/mol、109〜1012リットル/mol、1010〜1012リットル/mol、または1011〜1012リットル/molのKdで、ヒトFcRnのFc結合部分に結合する。他の実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合部分は、105〜1011リットル/mol、106〜1011リットル/mol、107〜1011リットル/mol、108〜1011リットル/mol、109〜1011リットル/mol、または1010〜1011リットル/molのKdで、ヒトFcRnのFc結合部分に結合する。他の実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合部分は、105〜1010リットル/mol、106〜1010リットル/mol、107〜1010リットル/mol、108〜1010リットル/mol、または109〜1010リットル/molのKdで、ヒトFcRnのFc結合部分に結合する。他の実施形態では、本明細書に記載される抗体またはその抗原結合部分は、105〜108リットル/mol、106〜108リットル/mol、または107〜108リットル/molのKdで、ヒトFcRnのFc結合部分に結合する。
ヒトに投与されたときに免疫原性を最小限にするために、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分は、ヒト定常領域を含むことが好ましい。したがって、抗体は任意のアイソタイプまたはサブタイプとすることができ、以下に限定するものではないが、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4、IgM、IgA、IgD、またはIgEが含まれる。抗体クラスは、エフェクター機能を最適化するように(例えば、補体依存性細胞傷害(CDC)または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を増加または低減するように)選択することができる。ある特定の実施形態では、定常領域(すなわち、CH1、CH2、CH3、及び/またはヒンジ領域)は、例えばFc受容体への結合を増加または減少させるために、修飾される。ある特定の実施形態では、定常領域は、重鎖−重鎖結合を促進または安定化させるために修飾される。ある特定の実施形態では、抗体はIgG4抗体であり、重鎖のヒンジ領域は、241位のセリンをプロリンに変更することによって修飾され、これにより血清半減期の延長がもたらされる(Angal et al.,1993,Mol.Immunol.30:105−108)。ある特定の実施形態では、抗体はIgG4抗体であり、重鎖の478位のC末端のリジンが欠失される。一部の実施形態では、当該IgG4抗体は両方のS241P修飾を有し、C末端リジンが欠如している。
ある特定の実施形態では、FcRn結合抗体断片が提供される。Fvは、6つの超可変ループ(CDR)を含めた完全な重鎖及び軽鎖可変ドメインを含有する最小の断片である。定常ドメインは欠如し、可変ドメインは非共有結合的に会合している。重鎖及び軽鎖は、VH及びVLドメインが会合して抗原結合部位を形成することを可能にするリンカーを使用して、単一のポリペプチド鎖(「単鎖Fv」または「scFv」)に接続することができる。例えば、Bird et al.,1988,Science 242:423及びHuston et al.,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879を参照。一実施形態では、当該リンカーは(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)3である。scFv断片は、全抗体の定常領域が欠如しているため、全抗体よりもかなり小さい。また、scFv断片は、通常の重鎖定常ドメインと他の生物学的分子との相互作用も有さず、ある特定の実施形態で望まれ得る。
本明細書で使用される「抗体」とは、単量体及び多量体を指す。インタクトな抗体(多量体を含む)、または抗体の抗原結合領域を有する抗体断片を使用することができる。抗原結合領域としては、以下に限定するものではないが、Fv、scFv、Fab、Fab’、及びF(ab’)2断片が挙げられる。抗体断片を調製する方法は、当技術分野で周知である。例えば、重鎖のヒンジ領域が欠如している一価のFab断片は、パパインを用いたタンパク質分解消化によって、全免疫グロブリンから調製することができる。重鎖のヒンジ領域を保持する二価のF(ab’)2断片は、ペプシンを用いたタンパク質分解消化によって調製することができる。
VH、VL、及び任意選択によりCL、CH1、または他の定常ドメインを含有する抗体の断片も、使用することができる。そのような断片を、組換えにより産生することもできる。多くの他の有用な抗原結合抗体断片が当技術分野で公知であり、以下に限定するものではないが、二重特異性抗体、三重特異性抗体、単一ドメイン抗体、ならびに他の一価及び多価の形態が挙げられる。
さらに、多価の抗原結合タンパク質(以下に限定するものではないが、抗体、その抗原結合断片、及び抗体の全てまたは一部の抗原結合部分を含むタンパク質の形態をとり得る)が提供される。多価の抗原結合タンパク質は、単一特異的、二重特異的、または多重特異的であり得る。特異性という用語は、特定の分子が結合することができる、異なるタイプの抗原決定基の数を指す。免疫グロブリン分子が1つのタイプの抗原決定基のみに結合する場合、この免疫グロブリン分子は単一特異的である。免疫グロブリン分子が異なるタイプの抗原決定基に結合する場合、この免疫グロブリン分子は多重特異的である。
一実施形態では、多価の単鎖抗体は、可変の重鎖断片に結合した可変の軽鎖断片(scfvに類似)を含み、これはさらに、別のペプチドリンカーにより、少なくとも1つの他の抗原結合ドメインに結合する。典型的には、このペプチドリンカーは、約15アミノ酸残基から構成される。好ましい実施形態では、VL及びVHドメインの数が等しい。例えば、二価の単鎖抗体は、以下のように表すことができる:VL−L1−VH−L2−VL−L3−VH、またはVL−L1−VH−L2−VH−L3−VL、またはVH−L1−VL−L2−VH−L3−VL、またはVH−Ll−VL−L2−VL−L3−VH。三価以上の多価の単鎖抗体は、追加のペプチドリンカーによって二価の単鎖抗体に連結された1つ以上の抗体断片を有する。三価の単鎖抗体の一例は、VL−L1−VH−L2−VL−LI−VH−L2−VL−LI−VHである。
2つの単鎖抗体は、組み合わせて二重特異性抗体(二価の二量体としても知られる)を形成することができる。例えば、欧州特許出願第0404097号またはHollinger et al.,1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444を参照。二重特異性抗体は、2つの鎖を有する。二重特異性抗体の各鎖は、約5〜10アミノ酸残基の短いリンカー(例えば、(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)、(Gly−Gly−Gly−Gly−Ser)2)によってVLドメインに接続したVHドメインを含む。そのようなリンカーは、同じ鎖のドメイン間における鎖内の対合を防止する程度に十分短いため、異なる鎖の相補ドメイン間における鎖間の対合を推進し、2つの抗原結合部位を再形成する。二重特異性抗体の構造はコンパクトであり、分子の両端に抗原結合部位を有する。
VH及びVLのフレームワーク配列変異体及び親和性成熟抗体は、前臨床エキソビボアッセイに供して潜在的免疫原性を評価することができる。このようなアッセイの1つにEPISCREEN(商標)があり、これは、タンパク質治療薬に対するT細胞応答を定量化することにより、T細胞の免疫原性を予測するための有効な技術をもたらすものである。当該アッセイは、世界的母集団において発現されるHLA−DRアロタイプの数及び頻度を最も良好に代表するように、MHCクラスIIハプロタイプに基づいて慎重に選択された血液ドナーのコホートを使用する。当該アッセイは、全タンパク質の免疫原性を、T細胞応答の大きさ及び頻度の両観点から評価し得る方法を提供する(Jones et al.,J Interferon Cytokine Res.2004 24(9):560−72;Jones et al.,J Thromb Haemost.2005 3(5):991−1000)。
本明細書で開示される抗体とFcRnとの結合に対し競合もしくは交差遮断する抗体、または本明細書で開示される抗体によって自らの結合が交差遮断される抗体は、本明細書で開示されるFcRn活性を遮断する方法で使用することができる。一部の場合では、これらの競合抗体、交差遮断抗体、または被交差遮断抗体は、本明細書に記載される抗体が結合するエピトープに隣接及び/または重複しているFcRnのエピトープに結合する。一部の場合では、これらの競合抗体、交差遮断抗体、または被交差遮断抗体は、本明細書に記載される抗体が結合するエピトープと同じFcRnのエピトープに結合する、キメラ型抗体、完全ヒト型抗体、またはヒト化型抗体である。
競合抗体、交差遮断抗体、及び被交差遮断抗体は、当技術分野で公知の任意の好適な方法を使用して同定することができ、この方法には、競合抗体または交差遮断抗体とヒトFcRnとの結合によって本明細書で開示される抗体の結合が防止される、またはその逆である、競合ELISAまたはBIACORE(登録商標)アッセイが含まれる。
ある特定の実施形態では、当該競合抗体または交差遮断抗体は、ヒトIgGのヒトFcRnへの結合を遮断する抗体であって、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、及び配列番号58からなる群から選択される重鎖配列と、配列番号20、配列番号22、配列番号61、配列番号64、配列番号67、及び配列番号70からなる群から選択される軽鎖配列とを有する抗体の結合に対し、競合またはクロス遮断する抗体である。一部の実施形態では、当該競合または交差遮断は、80%超、85%超、90%超、または95%超である。
一部の実施形態では、当該競合抗体または交差遮断抗体は、ヒトIgGのヒトFcRnへの結合を遮断する抗体であって、配列番号56の重鎖配列及び配列番号22の軽鎖配列を有する抗体の結合に対し、競合または交差遮断する抗体である。一部の実施形態では、当該競合または交差遮断は、80%超、85%超、90%超、または95%超である。
ある特定の実施形態では、当該競合抗体または被交差遮断抗体は、ヒトIgGのヒトFcRnへの結合を遮断する抗体であって、自らのFcRnへの結合が、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、及び配列番号58からなる群から選択される重鎖配列と、配列番号20、配列番号22、配列番号61、配列番号64、配列番号67、及び配列番号70からなる群から選択される軽鎖配列とを有する抗体によって、競合または交差遮断される抗体である。一部の実施形態では、当該競合または被交差遮断抗体は、80%超、85%超、90%超、または95%超で競合または交差遮断される。
一部の実施形態では、当該競合抗体または被交差遮断抗体は、ヒトIgGのヒトFcRnへの結合を遮断する抗体であって、自らのFcRnへの結合が、配列番号56の重鎖配列及び配列番号22の軽鎖配列を有する抗体の結合によって、競合または交差遮断される抗体である。一部の実施形態では、当該競合または被交差遮断抗体は、80%超、85%超、90%超、または95%超で競合または交差遮断される。
一部の実施形態では、当該競合抗体、交差遮断抗体、または被交差遮断抗体は、キメラ型、完全ヒト型、またはヒト化型である。一部の実施形態では、当該競合抗体、交差遮断抗体、または被交差遮断抗体は、105〜1011リットル/mol、106〜1011リットル/mol、107〜1011リットル/mol、108〜1011リットル/mol、109〜1011リットル/mol、または1010〜1011リットル/molの親和性で、ヒトFcRnのFc結合部位に結合する。
また、本明細書では、抗FcRn抗体及びその機能的断片をコードする核酸、ベクター、宿主細胞ならびに発現系が提供される。抗FcRn抗体及びその機能的断片をコードする核酸は、例えば、DNA、cDNA、RNA、合成的に産生されたDNAもしくはRNA、または、これらのポリヌクレオチドを単独でもしくは組み合わせで含む、組換えにより産生されたキメラ型核酸分子とすることができる。例えば、真核及び/または原核宿主細胞における発現に好適な発現制御配列に対し作用可能に結合した、本明細書に記載される抗FcRn抗体をコードするポリヌクレオチド配列を含有する発現ベクターが提供される。バクテリアなどの原核細胞及び真核系(限定するものではないが、酵母及び哺乳細胞培養系を含む)で抗体及び断片を効率的に合成するため、様々な発現ベクターが開発されている。ベクターは、染色体配列、非染色体配列及び合成DNA配列のセグメントを含むことができる。
任意の好適な発現ベクターを使用することができる。例えば、真核クローニングベクターには、E.coliからのプラスミド、例えば、colE1、pCR1、pBR322、pMB9、pUC、pKSM、及びRP4、が含まれる。真核ベクターには、ファージDNAの派生物、例えばM13及び他の糸状一本鎖DNAファージ、が含まれる。酵母に有用なベクターの例に、2μプラスミドがある。哺乳動物細胞における発現に好適なベクターとしては、よく知られているSV40、アデノウイルス、レトロウイルス由来のDNA配列の派生物、及び上述のような機能的哺乳動物ベクターの組み合わせに由来するシャトルベクター、及び機能的プラスミド、例えば、pLenti6.3/V5−DEST(登録商標)、T−Rex(商標)−DEST31(登録商標)、pGene/V5−HispGene/V5−His(登録商標)(Life Technologies,Norwalk,CT)、が挙げられる。
さらなる真核発現ベクターが当技術分野で知られている(例えば、P.J.Southern and P.Berg,J.Mol.Appl.Genet.,1,327−341(1982);Subramani et al.,Mol.Cell.Biol.,1:854−864(1981);Kaufmann and Sharp,” Amplification And Expression of Sequences Cotransfected with a Modular Dihydrofolate Reductase Complementary DNA Gene,” J.Mol.Biol.159,601−621(1982);Kaufmann and Sharp,Mol.Cell.Biol.159,601−664(1982);Scahill et al.,”Expression And Characterization Of The Product Of A Human Immune Interferon DNA Gene In Chinese Hamster Ovary Cells,” Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 80,4654−4659(1983);Urlaub and Chasin,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 77,4216−4220,(1980))。
発現ベクターは、発現されるDNA配列または断片に作動可能に結合した、少なくとも1つの発現制御配列を含有することができる。制御配列は、クローニングされたDNA配列の発現を制御及び調節するためにベクターに挿入される。有用な発現制御配列の例には、lac系、trp系、tac系、trc系、lambdaファージの主要オペレーター領域及びプロモーター領域、fdコートタンパク質の制御領域、酵母の解糖プロモーター(例えば、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ)、酵母の酸性ホスファターゼのプロモーター(例えば、Pho5)、酵母のアルファ接合因子、ならびにサイトメガロウイルス、ポリオーマ、アデノウイルス、レトロウイルス、及びサルウイルスに由来するプロモーター(例えば、SV40の初期プロモーター及び後期プロモーター)、ならびに原核細胞または真核細胞及びそのウイルスまたはその組み合わせの遺伝子発現を制御することが知られている他の配列、がある。使用することができる他の発現制御配列の例としては、チャイニーズハムスターの伸長因子1α(CHEF1)遺伝子からのDNA制御配列が挙げられる(Running Deer & Allison,2004,Biotechnol.Prog.20:880−889;米国特許第5,888,809号)。
また、先に説明した発現ベクターを含有する組換え型宿主細胞も提供される。本明細書に記載の抗体及びその抗原結合部分は、ハイブリドーマ以外の細胞株で発現することができる。本明細書に記載されるポリペプチドをコードする配列を含む核酸は、好適な哺乳動物宿主細胞の形質転換のために使用することができる。
特に好ましい細胞株は、高いレベルの発現、目的のプロテインの構成的発現及び宿主タンパク質からの最低限の混入、に基づいて選択される。発現の宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は、当技術分野で周知であり、多くの不死化細胞株、例えば、以下に限定するものではないが、NS0細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞及びその他多数が挙げられる。一部の実施形態では、当該細胞はミエローマ細胞、例えばSP2/0であり、これは、高濃度のIgGを腹水から回収することができるマウスの腹腔中にトランスフェクトし、培養下で増殖させることができる。好適なさらなる真核細胞としては、酵母及び他の真菌類が挙げられる。有用な原核宿主としては、例えば、E.coli(例えば、E.coli SG−936、E.coli HB 101、E.coli W3110、E.coli X1776、E.coli X2282、E.coli DHI、及びE.coli MRCl)、Pseudomonas、Bacillus(例えば、Bacillus subtilis)、及びStreptomycesが挙げられる。
これらの存在する組換え型宿主細胞は、抗体またはその抗原結合部分の産生に使用することができ、これは、抗体またはその断片の発現を可能にする条件下で細胞を培養し、抗体またはその断片を宿主細胞または宿主細胞の周囲の媒体から精製することによって行われる。したがって、一実施形態では、FcRnのFc結合領域と結合可能な抗体を産生するための方法であって、(a)上述のように宿主細胞を培養することと、(b)前記抗体を宿主細胞または宿主細胞の培地から単離することと、を含む、方法が提供される。
形質転換宿主は、当技術分野で公知の手法に従って、発酵槽で増殖させ、培養することができる。ひとたび抗体の発現が所望レベルに到達したら、硫酸アンモニウム沈殿法、親和性カラムでの精製、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動法などを含めた、当技術分野の標準的な手順に従って、抗体を精製することができる。本明細書に記載される治療方法における使用に関しては、抗体は、少なくとも90%、95%、98%、または99%の純度に精製されることが好ましい。
組換え型宿主細胞中で分泌するための発現抗体または断片の標的化は、目的の抗体コード遺伝子の5’末端に、シグナルまたは分泌リーダーペプチドコード配列を挿入することによって、容易に行うことができる(Shokri et al.,Appl Microbiol Biotechnol.60(6):654−64(2003),Nielsen et al.,Prot.Eng.10:1−6(1997)及びvon Heinje et al.,Nucl.AcidsRes.14:4683−4690(1986)を参照)。これらの分泌リーダーペプチド要素は、原核配列または真核配列のいずれかに由来し得る。したがって、分泌リーダーペプチドは、ポリペプチドのN末端に連結して、ポリペプチドの移動を宿主細胞サイトゾルの外に向け、分泌を培地内に向けさせるアミノ酸であり、好適に使用される。
当該抗体またはその抗原結合部分は、さらなるアミノ酸残基に対し融合していてもよい。このようなアミノ酸残基は、単離を容易にする可能性のあるペプチドタグであり得る。当該抗体が特定の臓器または組織にホーミングするための他のアミノ酸残基も企図される。
一部の実施形態では、当該抗体またはその抗原結合部分は1つ以上のエフェクター分子にコンジュゲートされており、これにより、何らかの所望の性質(例えば、血清半減期の増加)が当該抗体またはその抗原結合部分にもたらされる。特定の実施形態では、当該抗体またはその抗原結合部分は、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートされる。PEGは、任意のアミノ酸側鎖または末端アミノ酸官能基、例えば、遊離アミノ基、イミノ基、チオール基、ヒドロキシル基、またはカルボキシ基に付着していてもよい。PEGを抗体に付着させる方法は、当技術分野で公知であり、用いることができる。例えば、欧州特許出願第EP0948544号;欧州特許出願第EP1090037号;“Poly(ethyleneglycol) Chemistry,Biotechnical and Biomedical Applications,” 1992,J.Milton Harris(ed),Plenum Press,New York;“Poly(ethyleneglycol) Chemistry and Biological Applications,” 1997,J.Milton Harris & S.Zalipsky (eds),American Chemical Society,Washington DC;“Bioconjugation Protein Coupling Techniques for the Biomedical Sciences,” 1998,M.Aslam & A.Dent,Grove Publishers,New York;or Chapman,A.2002,Advanced Drug Delivery Reviews 2002,54:531−545を参照。
別の実施形態では、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分は、当該抗体をコードする核酸を遺伝子導入動物において発現させ、当該抗体を発現させ回収できるようにすることによって、作製される。例えば、当該抗体は、組織特異的に発現させることができ、これにより回収及び精製が容易になる。ある1つのこのような実施形態では、授乳中の哺乳動物の分泌腺で発現される抗体。遺伝子導入動物としては、以下に限定するものではないが、マウス、ヤギ、及びウサギが挙げられる。
本明細書では、酸性pH及び生理的pHの両方でFcRnと結合する抗体を同定する方法が提供される。当該方法は、酸性pH(例えば、pH5.0〜6.6、pH5.8〜6.4、pH6.0〜6.2、またはpH6.0)で行われる、2つ以上のスクリーニングステップを含む。この2つ以上の酸性スクリーニングステップは、生理的pH(例えば、pH6.8〜8.2、pH6.8〜7.6、pH7.2〜7.4、またはpH7.4)で行われるスクリーニングステップと交互に行われる。
例えば、このような方法の一実施形態は、
(a)候補抗体の集合を、pH5.8〜6.4でFcRnまたはその一部に接触させ、FcRnまたはその一部に結合する抗体を単離することと、
(b)ステップ(a)の単離抗体を、pH5.8〜7.6でFcRnまたはその一部に接触させ、FcRnまたはその一部に結合する抗体を単離することと、
(c)ステップ(b)の単離抗体を、pH5.8〜6.4でFcRnまたはその一部に接触させ、FcRnまたはその一部に結合する抗体を単離することと、
を含む。
別の実施形態は、
(a)FcRn結合抗体候補の集合を用意することと、
(b)FcRn結合抗体候補の集合を、FcRnまたはその一部に、pH6.0で、FcRnまたはその一部とFcRn結合抗体候補の少なくとも一部との間に複合体が形成されるような条件下で、接触させることと、
(c)複合体を単離することと、
(d)FcRn結合抗体候補を、単離複合体から分離することと、
(e)ステップ(d)からの、分離されたFcRn結合抗体候補を、FcRnまたはその一部に、pH7.4で、FcRnまたはその一部とFcRn結合抗体候補の少なくとも一部との間に複合体が形成されるような条件下で、接触させることと、
(f)ステップ(e)で形成された複合体を単離することと、
(g)FcRn結合抗体候補を、ステップ(f)の単離複合体から分離することと、
(h)ステップ(g)からの、分離されたFcRn結合抗体候補を、FcRnまたはその一部に、pH6.0で、FcRnまたはその一部とFcRn結合抗体候補の少なくとも一部との間に複合体が形成されるような条件下で、接触させることと、
(i)ステップ(h)で形成された複合体を単離することと、
(j)FcRn結合抗体候補を、ステップ(i)の単離抗体から分離して、酸性pH及び生理的pHの両方でFcRnに結合する抗体を得ることと、
を含む。
一部の実施形態では、当該FcRn結合抗体候補の集合は、抗体またはその一部のライブラリー(例えば、ファージに提示されるscFvのライブラリー)とすることができる。
一部の実施形態では、FcRnまたはその一部の濃度は、各接触ステップで減少する。例えば、ステップ(b)は25nMの濃度で行われ得、ステップ(e)は2.5nMの濃度で行われ得、ステップ(h)は0.25nMの濃度で行われ得る。
一部の実施形態では、当該FcRnまたはその一部は、固体支持体(例えば磁気ビーズ)に付着していてもよい。そのような実施形態では、単離ステップは単に、抗体と、固体支持体に付着したFcRnまたはその一部との結合であり得、例えば、固体支持体がクロマトグラフィーカラムである場合にそのような可能性がある。一部の実施形態では、FcRnまたはその一部は、FcRnまたはその一部と抗体との間の複合体の単離を容易にする部分に付着していてもよい。例えば、FcRnまたはその一部は、ビオチンに付着していてもよい。
本明細書に記載の、抗体またはその抗原結合部分の物理的性質及び機能的性質は、通例の手順によって決定することができる。例えば、抗体がFcRn活性を遮断する能力は、いくつかの方法によって評価することができる。1つのやり方は、FcRnのFc結合領域に結合することが知られている抗体との競合的結合を示すことである。もう1つのやり方は、異化作用からの血清Igの保護を示すことである。例えば、Akiles et al.,2007,J.Immunol.179:4580−88を参照。別のやり方は、試験薬剤の存在下で、FcRnにおける抗体を再利用または経細胞輸送する能力を測定することである。例えば、Claypool et al.,2002,J.Biol.Chem.277:28038−50では、ヒトFcRn及びβ2mを発現するようにトランスフェクトされたMadin−Darbyイヌ腎臓(MDCK)細胞を使用して、IgGの経細胞輸送を実証した。FcRnを内因的に発現する、他の好適な極性化上皮細胞株としては、ヒト腸上皮細胞株T84及びCaco−2が挙げられる。実施例では、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分における、FcRnに結合し、クラスII MHCによる抗原提示及びクラスI MHCによる交差提示を阻害する能力を決定するためのアッセイ法が提供される。
本明細書では、免疫複合体(IC)の処理を調節する抗FcRn抗体の能力を決定するための、全血ベースのアッセイが提供される。FcRnは、単量体IgGに結合し異化作用に向かわせないように機能し、このようにしてIgGの血清半減期が延びる。一方、多量体のIgGまたは抗原−抗体ICは、FcRnと相互作用してサイトカイン産生を活性化し、かつICを抗原提示経路に誘導する。FcRnの主な役割は、おそらくはIgG含有ICの摂取、処理、及び提示を介した、細胞性免疫機能の調節である。FcRn生物学におけるこの態様に関連したサイトカイン産生活性化により、抗FcRn抗体における、このFcRn−IgG相互作用を調節する(例えば、遮断するまたは減らす)能力を決定するための、全血ベースのアッセイの開発が可能になる。
一実施形態では、当該アッセイは、哺乳動物(例えば、ヒトまたは非ヒト霊長類)から全血を得、試験抗体またはその抗原結合断片の存在下または非存在下で、予め形成した免疫複合体を全血に添加してサイトカインの産生を刺激することと、好適なサイトカインの産生量を測定することと、を含む。試験抗体またはその抗原結合断片が、試験抗体またはその抗原結合断片の存在下または非存在下で測定されたサイトカイン量と比較して、測定されたサイトカイン量を遮断するまたは減らすことができる場合、この試験抗体またはその抗原結合断片は、FcRnとICとの相互作用を妨害可能であるとみなされる。測定されたサイトカインがFcRnとICとの相互作用の結果であることを保証するための対照として、当該アッセイは、IgGがFcRnと結合不可能なICを用いて実行してもよい。このようなIgGは公知である(例えば、Qiao et al.,2008,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:9337−9342を参照)。このようなIgGを用いて当該アッセイを実行すれば、サイトカイン産生はない、または非常に少ない結果になるはずである。
別の実施形態では、当該アッセイは、どの患者が抗FcRn抗体またはその抗原結合断片を用いた療法の利益を得る見込みがあるかを予測するために使用することもできる。このバージョンのアッセイでは、当該アッセイは、FcRnとICとの相互作用を遮断するまたは減らすのに有効であることが知られている、抗体またはその抗原結合断片を用いて実行される。既知の抗FcRn抗体またはその抗原結合断片の非存在下でアッセイを実行した場合との対比で、既知の抗FcRn抗体またはその抗原結合断片を用いたアッセイを実行した場合にサイトカイン産生量の顕著な低減を示す患者は、サイトカイン産生量のより少ない低減または皆無の低減を示す患者よりも、抗FcRn抗体またはその抗原結合断片を用いた療法から利益を得る見込みがより高いと考えられる。
上述の別バージョンのアッセイは、対象または患者に、全血アッセイで使用するために対象または患者の血液を得る前に、試験抗体もしくはその抗原結合断片、または既知の抗FcRn抗体もしくはその抗原結合断片を投与することを伴う。このバージョンのアッセイでは、試験抗体もしくはその抗原結合断片、または既知の抗FcRn抗体もしくはその抗原結合断片は、既に血液中に存在することになるため、試験抗体もしくはその抗原結合断片、または既知の抗FcRn抗体もしくはその抗原結合断片は、全血に添加されない。
全血ベースのアッセイの別の使用は、抗FcRn療法に対する患者の応答のモニターである。この実施形態では、当該アッセイは、抗FcRn抗体またはその抗原結合断片を所定の時間期間の間受けている患者の血液で実行される。予め形成したICを血液に添加し、産生されたサイトカインの量を測定する。この量を、抗FcRn抗体またはその抗原結合断片を用いた治療の開始前に得た、同じ患者の血液から産生された量と比較する。治療の開始前に実行される当該アッセイにおいて、産生されたサイトカインの量がより少ない場合、このことは患者が当該療法に応答していることを示す。治療の開始前に患者から採取した血液において、治療が所定の時間期間の間進行した後に採取した血液と比較して、皆無の差、または有意でない差が観察される場合、このことは患者が当該療法に対し有意に応答していないことを示す。何らかの差が観察される場合では、差の大きさは、応答の大きさの指標となり、差が大きいほど、患者は抗FcRn療法に大きく応答していることになる。このバージョンのアッセイは、血液に抗FcRn抗体またはその抗原結合断片を添加することを伴わないと考えられる。
本明細書では、試験抗体またはその抗原結合断片が、FcRnと免疫複合体との間の相互作用を遮断するかどうか、または減らすかどうかを決定する方法であって、
(a)哺乳動物から全血を得ることと、
(b)免疫複合体を、全血の第1の部分に添加することと、
(c)免疫複合体の添加後に、全血中のサイトカインの量を測定して、第1の量のサイトカインを得ることと、
(d)試験抗体またはその抗原結合断片を、全血の第2の部分に添加することと、
(e)試験抗体またはその抗原結合断片の添加後にまたは添加と同時に、免疫複合体を、全血の第2の部分に添加することと、
(f)免疫複合体の添加後に、全血の第2の部分中のサイトカインの量を測定して、第2の量のサイトカインを得ることと、
(g)第1の量のサイトカインと第2の量のサイトカインとの間の差を決定することと、
を含み、
第1の量のサイトカインが第2の量のサイトカインよりも大きい場合、試験抗体またはその抗原結合断片がFcRnと免疫複合体との相互作用を遮断しているまたは減らしている、方法が提供される。
本明細書では、抗FcRn療法に対する患者の応答性の期待レベルを決定する方法であって、
(a)抗FcRn療法の開始前に、患者から全血を得ることと、
(b)免疫複合体を、全血の第1の部分に添加することと、
(c)免疫複合体の添加後に、全血中のサイトカインの量を測定して、第1の量のサイトカインを得ることと、
(d)FcRnと免疫複合体との間の相互作用を遮断するまたは減らすことが知られている抗体またはその抗原結合断片を、全血の第2の部分に添加することと、
(e)抗体またはその抗原結合断片の添加後にまたは添加と同時に、免疫複合体を、全血の第2の部分に添加することと、
(f)免疫複合体の添加後に、全血の第2の部分中のサイトカインの量を測定して、第2の量のサイトカインを得ることと、
(g)第1の量のサイトカインと第2の量のサイトカインとの間の差を決定することと、
を含む、方法が提供される。
第1の量のサイトカインと第2の量のサイトカインとの間の差の大きさは、第1の量が第2の量よりも大きい場合、患者が抗FcRn療法に対して応答することが期待される程度を示す。この期待される応答の程度に応じて、患者は抗FcRn療法を受けるように選択され得る。
本明細書では、抗FcRn療法に対する患者の応答をモニターする方法であって、
(a)抗FcRn療法の開始前に、患者から全血を得ることと、
(b)免疫複合体を、全血に添加することと、
(c)免疫複合体の添加後に、全血中のサイトカインの量を測定して、第1の量のサイトカインを得ることと、
(d)抗FcRn療法の開始後に、患者から全血を得ることと、
(e)免疫複合体を、ステップ(d)の全血に添加することと、
(f)ステップ(e)の免疫複合体の添加後に、全血中のサイトカインの量を測定して、第2の量のサイトカインを得ることと、
(g)第1の量のサイトカインと第2の量のサイトカインとの間の差を決定することと、
を含む、方法が提供される。
第1の量のサイトカインと第2の量のサイトカインとの間の差の大きさは、第1の量が第2の量よりも大きい場合、患者が抗FcRn療法に対して応答している程度を示す。観察された応答性の程度に応じて、抗FcRn療法を調整することができる。例えば、第1の量が第2の量よりもわずかに大きいに過ぎない場合、抗FcRn療法を増加させることができる。抗FcRn療法が本明細書に記載される抗体である場合、抗体の投与頻度を増加させ、かつ/または投与用量を増加させることができる。療法の調整後に、アッセイを再び実行してもよい。このようにして、アッセイ、療法調整、アッセイ、療法調整等の反復プロセスを行って、療法の最適なレベルを決定することができる。
上述した方法における一部の実施形態では、第1の量のサイトカインと第2の量のサイトカインとの間の差は、対照の値と比較される。
上述した方法における一部の実施形態では、哺乳動物はヒトである。一部の実施形態では、ヒトは自己免疫性疾患にかかっている。一部の実施形態では、ヒトは、以下からなる群から選択される自己免疫性疾患にかかっている:尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡、腫瘍随伴天疱瘡、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、クローン病、特発性血小板減少性紫斑(ITP)、ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、重症筋無力症(MG)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、多巣性運動ニューロパチー、視神経脊髄炎、自己免疫性血小板減少症、免疫性好中球減少症、抗血友病FVIIIインヒビター、抗リン脂質抗体症候群、川崎病、ANCA関連疾患、多発性筋炎、皮膚筋炎、水胞性類天疱瘡、多発性硬化症(MS)、ギラン・バレー症候群、慢性多発ニューロパチー、潰瘍性大腸炎、糖尿病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス眼症、自己免疫性蕁麻疹、血管炎及びラスムッセン脳炎。
一部の実施形態では、免疫複合体は、抗原+抗原特異的抗体である。一部の実施形態では、免疫複合体は人工免疫複合体であり、すなわち、哺乳動物中に天然に存在しない。例えば、当該免疫複合体は、4−ヒドロキシ−5−ヨード−3−ニトロフェニル酢酸(NIP)とニワトリオボアルブミン(OVA)と抗NIP抗体との多量体複合体とすることができる。抗NIP抗体についての1つの可能性としては、4−ヒドロキシ−5−ヨード−3−ニトロフェニル酢酸に特異的なマウス可変領域と野生型ヒトIgC1からのFcドメインとを含有するキメラ型IgG抗体がある(Claypool,2004,Mol.Biol.Cell15:1746−1759)。別の実施形態では、抗NIP抗体は、Fcドメイン中にFcRnへの結合を無効にする3点突然変異(I253A/H310A/H435A)を伴うIgG抗体である。一部の実施形態では、免疫複合体は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、または15のNIP部分を含むNIP−OVA抗体複合体である。
本明細書に記載されるアッセイにおける免疫複合体の機能は、FcRnの多量体化である。したがって、当該アッセイは、この機能を行うことができる他の物質を用いて実行され得る。例えば、適切に間隔が置かれたFcドメインを有する物質を使用することができる。このような物質としては、FcRnが認識できるFcドメインを有する抗体でコーティングされたスチレンビーズ、または適切に間隔が置かれたFcドメインを含有するポリペプチドでコーティングされたスチレンビーズであり得る。抗体が当該ビーズに直接結合していてもよく、または、この抗体が認識する抗原が当該ビーズに直接結合し、抗体は、抗原を認識し抗原に結合することにより当該ビーズに付着していてもよい。
したがって、本明細書では、FcRnを多量体化する方法であって、
(a)哺乳動物から全血を得ることと、
(b)全血に、適切に間隔が置かれたFcドメインを有する物質を添加し、全血中のFcRnが多量体化されることと、
を含む、方法が提供される。
一部の実施形態では、抗FcRn抗体またはその抗原結合断片は、当該物質の前、または当該物質と同時に、全血に添加される。
一部の実施形態では、当該方法は、(c)全血中のサイトカインの量を測定すること、を含む。一部の実施形態では、サイトカインの量は、抗FcRn抗体または抗原結合断片の非存在下または存在下で測定され、測定された量の差が決定される。
上述した方法における一部の実施形態では、当該サイトカインは、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−10)、またはインターロイキン−12(IL−12)である。全血中のサイトカインの量は、当技術分野で公知の方法によって測定することができる。例えば、サイトカインタンパク質の量はサイトカインに特異的な抗体を用いて測定することができ、または全血中のサイトカインのmRNA転写物の量を測定することができる。
抗FcRn療法に対する患者の応答性の期待レベルの決定についての上に記載した方法における一部の実施形態では、応答性の期待レベルを特定するレポート、及び/または患者が抗FcRn療法を受けるように選択されたというレポートが生成され、このレポートは医療提供業者に伝えられ、抗FcRn療法が患者に投与される。一部の実施形態では、応答性の期待レベルを特定するレポート、及び/または患者が抗FcRn療法を受けるように選択されたというレポートが生成され、このレポートは医師に伝えられ、医師は抗FcRn療法を投与するか、または別の医療提供業者に抗FcRn療法を投与するように指示する。
上述されたアッセイ法における一部の実施形態では、当該抗体またはその抗原結合断片は、IgG、Fab、F(ab’)2、二重特異性抗体、FV、scFV、遮断ペプチド、またはこれらの断片である。一部の実施形態では、当該抗体またはその抗原結合断片は、F(ab’)2である。一部の実施形態では、当該抗体またはその抗原結合断片は、配列番号56を有する重鎖可変領域及び配列番号22を有する軽鎖可変領域を含む。
上述の患者の抗FcRn療法に対する応答をモニターするための方法における一部の実施形態では、当該抗FcRn療法は、FcRnのFc結合領域に結合し、IgGのFcRnへの結合を遮断するまたは減らす抗体を、患者に投与することである。一部の実施形態では、当該抗体は、H3Vκ2、H3E8、G9Vκ2、またはG9E8である。一部の実施形態では、当該抗体は、配列番号49または配列番号55の配列を有する重鎖CDR3を含む。一部の実施形態では、当該抗体は、配列番号50または配列番号56に記載の重鎖可変領域アミノ酸配列を含む。一部の実施形態、例えばG9Vκ2では、当該抗体は、配列番号50に記載の重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号22に記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。一部の実施形態、例えばH3Vκ2では、当該抗体は、配列番号56に記載の重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号22に記載の軽鎖可変領域アミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、当該抗体は、IgG、Fab、F(ab’)2、二重特異性抗体、FV、scFV、遮断ペプチド、またはこれらの断片である。一部の実施形態では、当該抗体またはその抗原結合断片は、F(ab’)2である。
一部の実施形態では、全血に添加される抗体の量は、様々な量を試験し用量−応答曲線を確立することによって決定される。一部の実施形態では、添加される抗体の量は、全血中の抗体濃度を1nM〜1μM、10nM〜750nM、または100nM〜500nMにする程度に十分な量である。
上述したアッセイ法における一部の実施形態では、当該抗体またはその抗原結合断片は、ヒト化型、キメラ型、または非天然存在の完全ヒト型である。
本明細書で開示される抗体が結合するヒトFcRnの特定の領域またはエピトープは、当技術分野で公知の、任意の好適なエピトープマッピング法によって同定することができる。そのような方法には、当該抗体がFcRnのどのアミノ酸に結合するかを決定するために、FcRnからの様々な長さのペプチドをスクリーニングして当該抗体に結合するものを探ることが含まれる。当該ペプチドは、FcRnのタンパク質分解消化または化学合成などの周知の方法によって産生することができる。質量分析などの手法を使用して、当該抗体に結合するペプチドを同定してもよい。代替的に、NMR分光法またはX線結晶学を使用することができる。結合ペプチドは、ひとたび同定されれば、FcRnの同じエピトープと結合するさらなる抗体を得るための免疫原として使用することができる。
本明細書に記載の抗FcRn抗体またはその抗原結合断片は、予防または治療の目的のために哺乳動物に使用される場合、薬学的に許容される担体を追加的に含む組成物の形態で投与されることになる。好適な薬学的に許容される担体としては、例えば、水、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、ブドウ糖、ヒスチジン、グルタミン酸塩、クエン酸塩、マンニトール、トレハロース、スクロース、アルギニン、酢酸塩、ポリソルベート80、ポロクサマー188などに加えて、これらの組み合わせが挙げられる。薬学的に許容される担体は、少量の補助物質、例えば湿潤剤または乳化剤、保存料または緩衝液をさらに含むことができ、これらは抗体の貯蔵寿命または有効性を増強する。
一部の実施形態では、抗体及び薬学的に許容される担体を含む当該組成物は、凍結乾燥される。
抗体及び薬学的に許容される担体を含む当該組成物は、本明細書に記載の抗FcRn抗体またはその抗原結合部分を様々な濃度で含むことができる。例えば、当該組成物は、抗体を10mg/ml〜200mg/ml、25mg/ml〜130mg/ml、50mg/ml〜125mg/ml、75mg/ml〜110mg/ml、または80mg/ml〜100mg/mlで含むことができる。また、当該組成物は、抗体を約10mg/ml、20mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、50mg/ml、60mg/ml、70mg/ml、80mg/ml、90mg/ml、100mg/ml、110mg/ml、120mg/ml、130mg/ml、140mg/ml、または150mg/mlで含むことができる。
本明細書に記載される方法では、治療有効量の、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分が、それを必要としている哺乳動物に投与される。本明細書で使用される「投与する」という用語は、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分を、哺乳動物に対し、求められる結果を達成し得る任意の方法によって送達させることを意味する。当該抗体またはその抗原結合部分は、例えば、皮下、静脈内、または筋肉内に投与することができる。本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分はヒトに対する投与に特に有用であるが、他の哺乳動物に投与することもできる。本明細書で使用される「哺乳動物」という用語には、以下に限定するものではないが、ヒト、実験動物、家庭用ペット及び家畜が含まれる。「治療有効量」とは、哺乳動物に投与された場合に所望の治療効果をもたらすために有効な、本明細書に記載の抗体またはその抗原結合部分の量を意味する。例えば、疾患に応じて、抗体に関しては、0.1、1.0、3.0、6.0、または10.0mg/Kgが必要とされ得る。150,000g/モルの分子量を有するIgG(2つの結合部位)に関しては、これらの用量は、5Lの血液量に対しおよそ18nM、180nM、540nM、1.08μM、及び1.8μMの結合部位に対応する。
ある特定の実施形態では、当該抗体またはその抗原結合部分は、静脈内注入により哺乳動物に投与され、すなわち、当該抗体またはその抗原結合部分は、ある特定の時間期間にわたり哺乳動物の静脈内に導入される。ある特定の実施形態では、当該時間期間は、約5分、約10分、約30分、約1時間、約2時間、約4時間、または約8時間である。
ある特定の実施形態では、当該抗体またはその抗原結合部分は、皮下送達により哺乳動物に投与され、すなわち、哺乳動物の皮膚の下に、一般的には皮膚をつまみ持ち上げて下部にある組織から離すことによって形成された皮膚の下の空間に、当該抗体またはその抗原結合部分を注入する。
ある特定の実施形態では、1回用量の化合物または組成物が、毎日、1日おき、2日に1回、3日に1回、週1回、週2回、週3回、または2週に1回、対象に投与される。他の実施形態では、2回、3回または4回用量の化合物または組成物が、毎日、2日に1回、3日に1回、週1回、または2週に1回、対象に投与される。一部の実施形態では、化合物または組成物の用量(複数可)が、2日間、3日間、5日間、7日間、14日間、または21日間、投与される。ある特定の実施形態では、化合物または組成物の1回用量が、1ヵ月、1.5ヵ月、2ヵ月、2.5ヵ月、3ヵ月、4ヵ月、5ヵ月、6ヵ月またはそれ以上、投与される。
投与方法には、以下に限定するものではないが、非経口、皮内、硝子体内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経口、舌下、鼻腔内、大脳内、膣内、経皮、経粘膜、直腸、吸入、または局所的(特に耳、鼻、目、または皮膚に対して)が含まれる。投与様式は、実施する者の自由裁量に委ねられる。ほとんどの場合、投与は結果的に化合物の血流内への放出となる。
特定の実施形態では、化合物を局在的に投与することが望ましい場合がある。これは、例えば、限定のためではないが、局在的注入、局所的適用、注射により、カテーテルを用いて、またはインプラントを用いて、達成することができ、前記インプラントは、シラスチック膜などの膜、または繊維を含めた、多孔質、非多孔質、またはゼラチン質の材料でできている。このような場合、投与は、かなりの程度の化合物を血流内に放出することなく、局在的組織を選択的に標的とすることができる。
肺への投与も、例えば吸入器またはネブライザーの使用により、エアロゾル化剤を用いた配合により、またはフルオロカーボンもしくは合成肺サーファクタントでの灌流を介して、用いることができる。ある特定の実施形態では、化合物は、従来の結合剤及びトリグリセリドなどのビヒクルを用いて、座薬として配合される。
別の実施形態では、化合物は小胞、特にリポソームで送達される(Langer,1990,Science 249:1527−1533;Treat et al.,Liposomes in the Therapy of Infectious Disease and Bacterial infection,Lopez−Berestein and Fidler (eds.),Liss,New York,pp.353−365(1989);Lopez Berestein,ibid.,pp.317−327を参照;全般的にはibid.参照)。
別の実施形態では、化合物は、徐放系で送達される(例えば、Goodson,Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115−138(1984)を参照)。徐放系の例は、Langer,1990,Science 249:1527−1533による概説で論じられており、これを使用することができる。一実施形態では、ポンプを使用することができる(Langer,supra;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201;Buchwald et al.,1980,Surgery 88:507;Saudek et al.,1989,N.Engl.J.Med.321:574を参照)。別の実施形態では、ポリマー材料を使用することができる(Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),CRC Pres.,Boca Raton,Florida(1974);Controlled Drug Bioavailability,Drug Product Design and Performance,Smolen and Ball(eds.),Wiley,New York(1984);Ranger and Peppas,1983,J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.23:61を参照;また、Levy et al.,1985,Science 228:190;During et al.,1989,Ann.Neurol.25:351;Howard et al.,1989,J.Neurosurg.71:105も参照)。
上述の投与スケジュールは、説明の目的で提供されるに過ぎず、限定的にみなすべきではない。当業者であれば、全ての用量が本発明の範囲内であることを容易に理解することになる。
「自己免疫性疾患」とは、対象自身の抗体が宿主組織に反応する、または免疫エフェクターのT細胞が内在性の自己ペプチドに自己反応性であり組織破壊を引き起こす、疾患のクラスを指す。したがって、免疫応答は、対象自身の抗原(自己抗原と呼ばれる)に対して開始される。本明細書で使用される「自己抗原」とは、正常な宿主組織の抗原を指す。正常な宿主組織は、腫瘍性細胞を含まない。
FcRnに結合する抗体及び抗原結合断片を、免疫応答を調節するために、または免疫障害などの障害を治療、防止、または診断するために、対象に投与することができる。「治療する」という用語は、障害もしくは疾患の改善もしくは寛解、または障害もしくは疾患の進行の低減もしくは防止に有効な療法を投与することを指す。有効量は、例えば状態または障害、個々の対象に応じて変動し得、対象に合わせて対応され得る。FcRnに結合する抗体及び抗原結合断片は、インビトロで使用することもできる。
一実施形態では、FcRnとIgG Fcとの間の相互作用を調節する方法であって、細胞中または対象中にあるFcRnを、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片に接触させることを含む、方法が提供される。一実施形態では、当該調節は、FcRnとIgG Fcとの相互作用を阻害する。したがって、細胞によるまたは対象における抗体分解を促進する方法が提供される。一実施形態では、当該抗体は自己抗体である。別の実施形態では、当該抗体は治療抗体である。
別の実施形態では、対象におけるIgG媒介疾患を治療または緩和する方法であって、対象に、本明細書で開示される抗体または抗原結合断片を、IgG媒介疾患の治療または緩和に有効な量で投与することを含む、方法が提供される。このようなIgG媒介疾患は、病原IgG抗体を単量体形態で、またはIgG含有免疫複合体(IC)として伴う疾患であり得、凝血異常、血管炎、コラーゲン障害、皮膚科系疾患、神経系疾患、炎症性腸疾患、及び臓器特異的障害が含まれ得る。
別の実施形態では、胎盤を介した病原性抗体の伝播を遮断する方法であって、治療有効量の、本明細書で開示されるFcRn抗体またはその抗原結合部分を、それを必要としている妊娠中の哺乳動物に投与することを含む、方法が提供される。
別の実施形態では、FcRnによる免疫複合体(IC)の結合を阻害する方法であって、細胞中または対象中にあるFcRnを、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片に接触させることを含む、方法が提供される。したがって、抗原提示細胞(APC)による免疫複合化抗原の提示を阻害する方法であって、APCを、ある量の抗体またはその抗原結合断片に接触させることを含む、方法も提供される。同様に、別の実施形態では、抗原提示細胞(APC)による免疫複合化抗原の交差提示を阻害する方法であって、APCを、ある量の抗体またはその抗原結合断片に接触させることを含む、方法が提供される。
別の実施形態では、対象からのICのクリアランスを増加させる方法であって、本明細書に記載されるFcRn抗体または抗原結合部分を、必要としている対象に投与することを含む、方法が提供される。このような方法は、IC媒介血管炎を治療するために使用することができる。
別の実施形態では、抗原提示細胞(APC)による炎症性サイトカインの分泌を阻害する方法であって、APCを、抗体またはその抗原結合断片に接触させることを含む、方法が提供される。炎症性サイトカインの非限定的な例としては、例えば、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−6(IL−6)及びインターフェロンγ(IFNγ)が挙げられる。
別の実施形態では、抗原提示細胞によるT細胞活性化を阻害する方法であって、抗原提示細胞を、本明細書に記載される抗体または抗原結合断片に接触させることを含む、方法が提供される。
本明細書では、自己免疫性疾患を治療する方法であって、有効量のFcRn抗体またはその抗原結合部分を、それを必要としている患者に投与することを含む、方法が提供される。治療することができる疾患の非限定的例としては、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡または腫瘍随伴天疱瘡)、クローン病、特発性血小板減少性紫斑(ITP)、ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)、重症筋無力症(MG)及び慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)が挙げられる。さらなる非限定的な自己免疫性疾患としては、以下のものが挙げられる:自己免疫性血小板減少症、免疫性好中球減少症、抗血友病FVIIIインヒビター、抗リン脂質抗体症候群、川崎病、ANCA−随伴性疾患、多発性筋炎、水疱性類天疱瘡、多発性硬化症(MS)、ギラン・バレー症候群、慢性多発ニューロパチー、潰瘍性大腸炎、糖尿病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス眼症、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、原発性硬化性胆管炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性脳脊髄炎、橋本甲状腺炎、グッドパスチャー症候群、自己免疫性溶血性貧血、抗コラーゲン抗体を伴う強皮症、混合性結合組織病、悪性貧血、特発性アジソン病、自己免疫随伴性不妊症、糸球体腎炎(例えば、半月体性糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎)、インシュリン抵抗性糖尿病、及び自己免疫性糖尿病(1型糖尿病;インシュリン依存性糖尿病)。自己免疫性疾患は、アテローム動脈硬化症及びアルツハイマー病も包含するものと認識されている。別の実施形態では、自己免疫性疾患として以下のものが挙げられる:肝炎、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ球増殖症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、自己免疫性血管性浮腫、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性高脂質血症、自己免疫性免疫不全症、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性蕁麻疹ニューロパチー、自己免疫性軸索ニューロパチー、Balo疾患、ベーチェット病、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性再発性多巣的骨髄炎(CRMO)、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、良性粘膜類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、コクサッキー心筋炎、CREST病、本態性混合型クリオグロブリン血症、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、拡張型心筋症、円板状ループス、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性血管中心性線維症、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、エヴァンス症候群、線維化肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、橋本脳炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性ヘルペス、特発性低補体血症性尿細管間質性腎炎、多発骨髄腫、多巣性運動ニューロパチー、NMDA受容体抗体脳炎、IgG4関連疾患、IgG4関連硬化性疾患、炎症性大動脈瘤、炎症性偽腫瘍、封入体筋炎、間質性膀胱炎、若年性関節炎、キュットナー腫瘍、ランバート・イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質性結膜炎、リニアIgA病(LAD)、ライム病、慢性、縦隔線維症、メニエール病、顕微鏡的多発性血管炎、ミクリッツ症候群、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーバーマン病、多巣的線維性硬化症、ナルコレプシー、視神経炎、オーモンド病(後腹膜線維症)、回帰性リウマチ、PANDAS(Streptococcusに関連する小児科自己免疫性神経精神医学的障害)、腫瘍随伴小脳変性症、異常タンパク性多発ニューロパチー、発作性夜間血色素尿(PNH)、パリーロンベルク症候群、パーソネージ・ターナー症候群、大動脈周囲炎、動脈周囲炎、末梢性ニューロパチー、静脈周囲脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、I型、II型、及びIII型自己免疫性多腺症候群、多発性筋痛リウマチ、心膜切開後症候群、プロゲステロン皮膚炎、原発性胆汁性肝硬変症、乾癬、乾癬性関節炎、特発性肺線維症、壊疽性膿皮症、赤芽球ろう、レーノー現象、反射性交感神経性ジストロフィー、ライテル症候群、再発性多発性軟骨炎、下肢静止不能症候群、リウマチ熱、リーデル甲状腺炎、類肉腫症、シュミット症候群、強膜炎、シェーグレン症候群、精液及び睾丸の自己免疫病、全身硬直症候群、細菌性亜急性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、交感性眼炎、高安動脈炎、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、未分化型葯隔組織疾患(UCTD)、小水疱性皮膚症、白斑、ラスムッセン脳炎、及びワルデンストレームマクログロブリン血症。
他の実施形態では、感染性疾患を治療する方法であって、有効量のFcRn抗体またはその抗原結合部分を、それを必要としている患者に投与することを含む、方法が提供される。
一部の実施形態では、Fcドメインを含有する治療タンパク質、例えば、Fcドメインを含む治療抗体または非抗体タンパク質の血清半減期を低減する方法が提供される。そのような方法は、このような治療タンパク質が望ましくない生理的影響を引き起こす場合に、この治療タンパク質の血流からの除去を増強することができる。この方法に好適であり得る治療タンパク質の例としては、TYSABRI(登録商標)(ナタリズマブ)及びAVASTIN(登録商標)(ベバシズマブ)が挙げられる。一部の実施形態では、当該方法により、治療タンパク質の半減期が約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%減る。
一部の実施形態では、IgGが結合した放射性トレーサーまたは他の抗体−薬物結合体を循環から除去することが望ましい場合に、これらを除去するための方法が提供される。一部の実施形態では、IgG低下剤を用いてFcRnをブロックすれば、内在性IgGレベルを減少させ、IgG含有治療剤の薬物動態及び薬物力学の増強を可能にすることにおいて、有益であると考えられる。この場合、そのような治療剤を投与する前に、IgG結合部位に特異的な抗FcRn抗体で前処理すれば、単量体形態の、またはIgG含有免疫複合体(IC)としての内在性IgG抗体に由来する競合を低下させ、投与するIgGベースの治療剤をいっそう保護することが可能になる。
本明細書では、本明細書に記載のFcRn抗体またはその抗原結合部分を使用する方法が提供される。したがって、免疫応答の調節に、または免疫障害などの障害の治療、防止、または診断に使用するための、本明細書に記載のFcRn抗体またはその抗原結合部分が提供される。また、FcRnとIgG Fcとの相互作用を調節して、細胞による、または対象における抗体分解の促進に使用するための、本明細書に記載のFcRn抗体またはその抗原結合部分が提供される。一部の実施形態では、当該抗体は、自己抗体または治療抗体である。また、対象におけるIgG媒介疾患の治療または緩和に使用するための、本明細書に記載のFcRn抗体またはその抗原結合部分も提供され、当該IgG媒介疾患は病原IgG抗体を伴う疾患であり得、凝血異常、血管炎、コラーゲン障害、皮膚科系疾患、神経系疾患、炎症性腸疾患、及び臓器特異的障害が含まれ得る。
本明細書では、FcRnによる免疫複合体(IC)の結合の阻害、抗原提示細胞(APC)による免疫複合化抗原の提示の阻害、または抗原提示細胞(APC)による免疫複合化抗原の交差提示の阻害に使用するための、本明細書に記載のFcRn抗体またはその抗原結合部分が提供される。また、抗原提示細胞(APC)による炎症性サイトカインの分泌の阻害に使用するための、本明細書に記載のFcRn抗体またはその抗原結合部分も提供され、当該炎症性サイトカインには、例えば、インターロイキン−12(IL−12)、インターロイキン−6(IL−6)及びインターフェロンγ(IFNγ)が含まれる。また、T細胞活性化の阻害に使用するための、本明細書に記載のFcRn抗体またはその抗原結合部分も提供される。
本明細書ではFcRn抗体またはその抗原結合部分が提供され、これらは本明細書で記載されるように、天疱瘡(尋常性天疱瘡、落葉状天疱瘡または腫瘍随伴性天疱瘡)、クローン病、特発性血小板減少性紫斑(ITP)、ヘパリン誘発性血小板減少症(HIT)、血栓性血小板減少性紫斑(TTP)、重症筋無力症(MG)及び慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)の処置に使用される。さらなる非限定的な自己免疫性疾患としては、以下のものが挙げられる:自己免疫性血小板減少症、免疫性好中球減少症、抗血友病FVIIIインヒビター、抗リン脂質抗体症候群、川崎病、ANCA−随伴性疾患、多発性筋炎、水疱性類天疱瘡、多発性硬化症(MS)、ギラン・バレー症候群、慢性多発ニューロパチー、潰瘍性大腸炎、糖尿病、自己免疫性甲状腺炎、グレーブス眼症、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、原発性硬化性胆管炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、自己免疫性脳脊髄炎、橋本甲状腺炎、グッドパスチャー症候群、自己免疫性溶血性貧血、抗コラーゲン抗体を伴う強皮症、混合性結合組織病、悪性貧血、特発性アジソン病、自己免疫随伴性不妊症、糸球体腎炎(例えば、半月体性糸球体腎炎、増殖性糸球体腎炎)、インシュリン抵抗性糖尿病、及び自己免疫性糖尿病(1型糖尿病;インシュリン依存性糖尿病)。自己免疫性疾患は、アテローム動脈硬化症及びアルツハイマー病も包含するものと認識されている。別の実施形態では、自己免疫性疾患として以下のものが挙げられる:肝炎、自己免疫性血友病、自己免疫性リンパ球増殖症候群(ALPS)、自己免疫性ブドウ膜網膜炎、糸球体腎炎、無ガンマグロブリン血症、円形脱毛症、アミロイドーシス、強直性脊椎炎、自己免疫性血管性浮腫、自己免疫性再生不良性貧血、自己免疫性自律神経障害、自己免疫性高脂質血症、自己免疫性免疫不全症、自己免疫性内耳疾患(AIED)、自己免疫性心筋炎、自己免疫性膵炎、自己免疫性網膜症、自己免疫性蕁麻疹、自己免疫性蕁麻疹ニューロパチー、自己免疫性軸索ニューロパチー、Balo疾患、ベーチェット病、キャッスルマン病、セリアック病、シャーガス病、慢性再発性多巣的骨髄炎(CRMO)、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、良性粘膜類天疱瘡、コーガン症候群、寒冷凝集素症、コクサッキー心筋炎、CREST病、本態性混合型クリオグロブリン血症、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、デビック病(視神経脊髄炎)、拡張型心筋症、円板状ループス、ドレスラー症候群、子宮内膜症、好酸球性血管中心性線維症、好酸球性筋膜炎、結節性紅斑、エヴァンス症候群、線維化肺胞炎、巨細胞性動脈炎(側頭動脈炎)、橋本脳炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、妊娠性ヘルペス、特発性低補体血症性尿細管間質性腎炎、多発骨髄腫、多巣性運動ニューロパチー、NMDA受容体抗体脳炎、IgG4関連疾患、IgG4関連硬化性疾患、炎症性大動脈瘤、炎症性偽腫瘍、封入体筋炎、間質性膀胱炎、若年性関節炎、キュットナー腫瘍、ランバート・イートン症候群、白血球破砕性血管炎、扁平苔癬、硬化性苔癬、木質性結膜炎、リニアIgA病(LAD)、ライム病、慢性、縦隔線維症、メニエール病、顕微鏡的多発性血管炎、ミクリッツ症候群、モーレン潰瘍、ムッハ・ハーバーマン病、多巣的線維性硬化症、ナルコレプシー、視神経炎、オーモンド病(後腹膜線維症)、回帰性リウマチ、PANDAS(Streptococcusに関連する小児科自己免疫性神経精神医学的障害)、腫瘍随伴小脳変性症、異常タンパク性多発ニューロパチー、発作性夜間血色素尿(PNH)、パリーロンベルク症候群、パーソネージ・ターナー症候群、大動脈周囲炎、動脈周囲炎、末梢性ニューロパチー、静脈周囲脳脊髄炎、POEMS症候群、結節性多発動脈炎、I型、II型、及びIII型自己免疫性多腺症候群、多発性筋痛リウマチ、心膜切開後症候群、プロゲステロン皮膚炎、原発性胆汁性肝硬変症、乾癬、乾癬性関節炎、特発性肺線維症、壊疽性膿皮症、赤芽球ろう、レーノー現象、反射性交感神経性ジストロフィー、ライテル症候群、再発性多発性軟骨炎、下肢静止不能症候群、リウマチ熱、リーデル甲状腺炎、類肉腫症、シュミット症候群、強膜炎、シェーグレン症候群、精液及び睾丸の自己免疫病、全身硬直症候群、細菌性亜急性心内膜炎(SBE)、スザック症候群、交感性眼炎、高安動脈炎、トロサ・ハント症候群、横断性脊髄炎、未分化型葯隔組織疾患(UCTD)、小水疱性皮膚症、白斑、ラスムッセン脳炎、またはワルデンストレームマクログロブリン血症。
本明細書に記載される方法では、本明細書に記載の治療有効量の抗体またはその抗原結合部分は、他の薬剤、薬物、またはホルモンと組み合わせて(例えば、同時に、順次に、または別個に)投与することができる。一部の実施形態では、当該他の薬剤、薬物、またはホルモンは、小分子、ペプチド、またはタンパク質(抗体または抗原結合断片を含む)とすることができる。一部の実施形態では、当該他の薬剤、薬物、またはホルモンは、同じ組成物で投与されても別個の組成物で投与されてもよい。一部の実施形態では、当該他の薬剤、薬物、またはホルモンは、本明細書に記載される障害、疾患、または状態を治療するための公知の薬剤、化合物、またはホルモンである。例えば、一部の実施形態では、当該他の薬剤は、免疫媒介疾患の処置のためのモノクローナル抗体療法とすることができる。他の実施形態では、当該他の薬剤は、補体系のインヒビターとすることができる。例えば、Fcガンマ受容体及びFcRnを対象とする組み合わせは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるWO2015/164605に記載されている。
一部の実施形態では、当該他の薬剤、薬物、またはホルモンは、免疫阻害剤、免疫賦活性剤、免疫調節物質、またはこれらの組み合わせである。一部の実施形態では、当該他の薬剤、薬物、またはホルモンは、Ig静注療法;非ステロイド性抗炎症性薬物(NSAID);コルチコステロイド;シクロスポリン、ラパマイシン、アスコマイシン、またはこれらの免疫阻害性アナログ、例えば、シクロスポリンA、シクロスポリンG、FK−506、ラパマイシン、40−0−(2−60ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン;シクロホスファミド;アザチオプリン;メトトレキセート;ミコフェノレート;ブレキナル;FTY720;レフルノミド;ミゾリビン;ミコフェノール酸;ミコフェノール酸モフェチル;15−デオキシスペルグアリン;免疫抑制性モノクローナル抗体、例えば、白血球受容体に対するモノクローナル抗体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD25、CD28、B7、CD45、もしくはCD58またはこれらのリガンド;他の免疫調節化合物、例えば、CTLA4Ig;他の接着分子インヒビター、例えば、mAbまたは、セレクチンアンタゴニスト及びVLA−4アンタゴニストを含めた低分子量インヒビター;免疫調節サイトカイン、例えば、アルファ−インターフェロン、ガンマ−インターフェロン、または腫瘍壊死因子−アルファ;あるいは免疫賦活性サイトカイン、例えば、インターロイキン−2。
本明細書では、対象における抗FcRn抗体の投与後の抗FcRn抗体のレベルを測定する方法であって、抗FcRn抗体の投与後に対象から単球を含む全血を得ることと、単球細胞表面のFcRn発現レベルを測定することと、を含む、方法が提供される。いかなる特定の理論にも限定されることなく、単球細胞表面FcRnレベルと抗FcRn抗体の存在との間に相関が存在することが示されている。単球細胞表面のFcRn発現レベルは、当技術分野で公知の任意の方法によって測定することができ、例えば、幾何平均蛍光強度を含むことができる。
当業者によって、本明細書で開示される本発明の原理における変形形態が考案され得ることは、理解されかつ予想されるべきであり、このような変更は本発明の範囲内に含まれるべきであることが意図されている。
本発明の全体にわたり、様々な刊行物が引用されている。こういった刊行物は、本発明が関係する最新技術を、より十分に説明するために、参照によりその全体が本明細書によって本出願に組み込まれる。以下の実施例は本発明をさらに例示するものであるが、いかなる形でも本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
実施例1
可変ドメインのヒト化
ヒト投与用に好適な重鎖及び軽鎖可変領域を、マウスモノクローナル抗体に基づいて設計した。マウスモノクローナル抗体の選択は、FcRnに結合する能力ならびにFcRn及びIgG Fcの結合を遮断する能力に関して行った。マウス抗体は、ヒト血清アルブミンに対し実質的に結合しない。既存の抗体構造に基づいたモノクローナル抗体のモデルを使用して、ヒト抗体用の可変領域フレームワークをヒトV領域のセグメントから設計した。潜在的免疫原性を最小限にするために、ヒトT細胞エピトープを除去するように設計されたある特定のフレームワーク位置で選択されるアミノ酸を用いて、いくつかの変異体を設計した。
重鎖及び軽鎖V領域遺伝子を、リガーゼ連鎖反応(LCR)を使用して全長遺伝子に組み立てられた重複オリゴヌクレオチドから構築し、次に増幅しクローニングに好適な制限部位を追加した。
ヒトIgG4定常領域を用いて4つの重鎖変異体を構築した。これらの変異体を、VH1、VH2、VH3、及びVH4と称する。これら重鎖変異体の可変ドメインのアミノ酸配列は、それぞれ配列番号12、14、16、及び18によって表される。これら重鎖変異体の可変ドメインのオリゴヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号11、13、15、及び17によって表される。図1は、4つの変異体の配列比較を示している。4つの軽鎖変異体を構築し、ヒトカッパ鎖として発現させた。これらの変異体を、Vκ1、Vκ2、Vκ3、及びVκ5と称する。これら軽鎖変異体のアミノ酸配列は、それぞれ配列番号20、22、24、及び26によって表される。これら軽鎖変異体の可変ドメインのオリゴヌクレオチド配列は、それぞれ配列番号19、21、23、及び25によって表される。図2は、4つの変異体の配列比較を示している。
上流のサイトメガロウイルス即時/初期プロモーター/エンハンサー、免疫グロブリンシグナル配列、及び免疫グロブリン定常領域を用いて、V領域遺伝子を哺乳動物発現ベクターにクローニングすることにより、抗体を全体のIgGとして発現させた。ベクターをHEK EBNA細胞にトランスフェクトし、発現を定量化し、抗体をプロテインAカラム上で精製した。
HEK EBNA細胞への一過性トランスフェクションにより、4つの重鎖変異体及び4つの軽鎖変異体に対する重鎖−軽鎖組み合わせ全16通りを発現させた。プロテインAセファロースカラム上で抗体を精製し、定量化した。上に示されたように、FcRnは、主として初期の酸性エンドソーム中に存在し、低pHでFc領域に結合することにより、貪食されたIgGを取り込む。貪食されたIgGのFcに対するFcRnの結合を遮断するために、FcRn抗体が、生理的pH(例えば、pH7.4)の細胞内環境に曝露されたFcRnに結合することも望ましい。そのため、精製抗体のFcRnとの結合を、pH6.0及びpH7.4における競合ELISAアッセイで評価した。
ELISAについては、Nunc Immuroマキシソープ96ウェル平底マイクロタイタープレートをpH7.4で終夜、Fc結合領域とは異なるアルブミン結合エピトープに特異的なFcRn抗体でプレコーティングした。翌日、pH7.4のPBSに希釈した1μg/mlの組換え型ヒトFcRn(Sino Biological Inc.Cat.No.CT009−H08H)をウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。一連の4倍希釈の25μg/ml〜0.0015μg/mlの対照または試験IgG4抗体を、一定の濃度のビオチン化親マウス抗体と予混合し、プレートに添加し37℃で1時間インキュベートした。ビオチン化mAbの結合を、ストレプトアビジン−HRP及びTMB基質で検出した。吸光度を450nmで読み取り、結合曲線をプロットした。16の組み合わせの結合をpH7.4及びpH6.0の両方で試験し、表2に示すように親マウス抗体との比較により定量化した。
実施例2
親和性成熟
酸性pH及び生理的pHにおける結合親和性を改善するため、重鎖及び軽鎖可変ドメインCDR3領域を変異させ、scFv形態においてpH6.0及びpH7.4でスクリーニングした。scFvを調製するため、重複PCRを使用して、VH及びVκをコードする遺伝子を15アミノ酸(G4S)3リンカーで組み立てた。scFv配列を遺伝子3融合タンパク質としてファージミドベクターにクローニングし、ベクターをE.coli(TG1)に形質転換させた。VH1及びVκ1変異体を使用して親和性成熟プロセスを行った。スクリーニングのため、VH1における重鎖CDR3のライブラリーをヒト化型親Vκ1軽鎖と合わせ、Vκ1における軽鎖CDR3のライブラリーをヒト化型親VH1重鎖と合わせた。
アミノ酸配列の変化を、オリゴヌクレオチド配列KNCNNCNNCNNCSVCNWCYGG(配列番号71)を使用して、重鎖CDR3H領域のアミノ酸98〜103位(CDR3Hのアミノ酸98〜102及びFW4のアミノ酸103)に導入した。変化は、選択されたアミノ酸の各位置について以下のように提供した:アミノ酸98:A、C、D、F、G、S、V、Y;アミノ酸99:A、C、D、F、G、H、I、L、N、P、R、S、T、V、Y;アミノ酸100:A、C、D、F、G、H、I、L、N、P、R、S、T、V、Y;アミノ酸100a:A、C、D、F、G、H、I、L、N、P、R、S、T、V、Y;アミノ酸101:A、D、G、H、P、R;アミノ酸102:D、F、H、I、L、N、V、Y;アミノ酸103:R、W。アミノ酸配列の変化を、オリゴヌクレオチド配列TGTMRSVMGTVSKRSRRCWMCYYCBWCRYCTTC(配列番号72)を使用して、軽鎖CDR3L領域のアミノ酸89〜97位に導入した。変化は、選択されたアミノ酸の各位置について以下のように提供した:アミノ酸88:C;アミノ酸89:H、K、N、Q、R、S;アミノ酸90:A、E、K、P、Q、T;アミノ酸91:C、S、W、Y;アミノ酸92:C、D、E、G、W、Y;アミノ酸93:D、G、N、S;アミノ酸94:N、S、T、Y;アミノ酸95:F、L、P、S;アミノ酸96:D、F、H、L、V、Y;アミノ酸97:A、I、T、V。
各CDRについて、およそ3〜6x106のDNA配列を含有する約5〜10x107ファージのライブラリー(すなわち、各DNA配列につき約10〜20のコピーが示された)を可溶性抗原との結合についてスクリーニングした。具体的には、ファージライブラリーを可溶性のビオチン化FcRnを用いて混合し、次にFcRn−抗体ファージ複合体をストレプトアビジンでコーティングしたビーズ上に捕捉した。酸性エンドソーム及び生理的pHにおいてFcRnに結合する抗体を得るため、交互のpHで連続的ラウンドのライブラリースクリーニングを行った。また、各連続的スクリーニングラウンドの厳密性を高めるため、FcRn抗原の濃度を低減した。最初の選択ラウンドは、25nMの抗原の目標濃度でpH6.0にて行った。第2のラウンドは、2.5nMの抗原の濃度でpH7.4にて行った。第3のラウンドは、0.25nMの抗原の濃度でpH6.0にて行った。
V
H CDR3及びV
L CDR3のライブラリーから、合計で約60のscFv抗体をさらなる試験用に選択した。scFv抗体は、バクテリアのペリプラズム抽出物から調製し、競合ELISAによりpH6.0及びpH7.4で試験した。競合ELISAでは、固定されたFcRnとの結合について、scFv抗体断片をビオチン化親マウス抗体と競合させた。ヒト化型変異体の試験に使用したELISAのように、96ウェル平底マイクロタイタープレートを、Fc結合領域とは異なるアルブミン結合エピトープに特異的なFcRn抗体1μg/mlでプレコーティングした。結合は、pH7.4及びpH6.0で決定した。図3は、ヒト化型親Vκ1軽鎖を有するscFvとして発現させた親和性成熟重鎖の3つ(H1、H3、E7)と、親V
H1重鎖を有するscFvとして発現させた親和性成熟軽鎖の1つ(E8)について、pH6.0及びpH7.4の両方で、結合親和性の増加を示している。表3は、15の重鎖及び2つの軽鎖で観察され、親マウス抗体との比較により定量化された、結合の改善を示している。
VH1フレームワーク中に親和性成熟重鎖CDR3を含有するscFvについて、結合の大幅な改善が測定された。そのため、これらの重鎖を改善された軽鎖と組み合わせて試験を進めた。上の実施例1で示したように、Vκ1及びVκ2軽鎖は、VH1(及び他のVH変異体)と対合させたときに類似した結合を示し、Vκ2フレームワークはVκ1よりも免疫原性が低いことが予測された。そのため、親和性成熟CDR3を含有するVκ1及びVκ2ベースの軽鎖を、改善された重鎖と組み合わせて試験を進めた。
実施例3
IgG抗体の開発
8つの親和性成熟重鎖(A8、C4、F7、G4、G7、G9、H1、及びH3)を選択し、E8のCDR3を含有するヒト化型軽鎖(Vκ1またはVκ2)と共に発現させた。HEK細胞の一過性トランスフェクションにより、16の組み合わせを二価のIgG4抗体として発現させ、次にこのIgG4抗体を精製した。親和性成熟重鎖をヒト化型であるが非親和性成熟軽鎖とも組み合わせて発現させ、ある特定の親和性成熟軽鎖をヒト化型であるが非親和性成熟重鎖と共に発現させた。
実施例4
ELISAによって決定されるIgG4抗体の抗原結合及びブロック特性
直接結合ELISAにより、親和性成熟IgGを、ヒト化型親VH1/Vκ1 IgGと比較した。Nunc Immuroマキシソープ96ウェル平底マイクロタイタープレートをpH7.4で終夜、Fc結合領域とは異なるアルブミン結合エピトープに特異的なFcRn抗体でプレコーティングした。翌日、pH7.4のPBSに希釈した1μg/mlの組換え型ヒトFcRn(Sino Biological Inc.Cat.No.CT009−H08H)をウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。次に、4%の乳汁/PBSで非特異的結合をブロックした。滴定したヒト化型親IgGまたはヒト化型親和性成熟IgGをウェルに添加し、次に抗ヒトカッパHRPを使用して結合抗体を検出した。図4は、H1VH1_E8Vκ1、H1VH1_E8Vκ2、G7VH1_E8Vκ1、及びG7VH1_E8Vκ2 IgGの固定されたFcRnとの結合が、ヒト化型親VH1Vκ1 IgGまたはキメラ型親マウス抗体と比較して増加したことを示している。
また、IgG4抗体は抗原結合の試験も、競合ELISAにおいてpH6.0及びpH7.4で行った。Nunc Immuroマキシソープ96ウェル平底マイクロタイタープレート(Fisher,cat.no.DIS−971−030J)をpH7.4で終夜、Fc結合領域とは異なるアルブミン結合エピトープに特異的なFcRn抗体1μg/mlでプレコーティングした。翌日、pH7.4のPBSに希釈した1μg/mlの組換え型ヒトFcRn(Sino Biological Inc.cat.no.CT009−H08H)をウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをpH7.4のPBSTで3回洗浄した後、プレートをpH7.4のPBSMで37℃にて1時間ブロックした。この時点以降、全ての洗浄及びインキュベートステップは、選択されたアッセイpH(pH6.0または7.4)で実施した。PBSTで3回洗浄した後、25μg/mlから最終濃度0.006gμ/mlまでの一連の試験抗体4倍希釈液を一定の濃度のビオチン化親マウス抗体(最終濃度0.4μg/ml)と予混合し、FcRnでコーティングしたプレートに添加し、37℃で1時間インキュベートした。PBST洗浄を3回行った後、ビオチン化mAbの結合をストレプトアビジン−HRP(Sigma,cat.no.S5512)及びTMB基質(Invitrogen,cat.no.00−2023)で検出した。3MのHClで反応を停止させ、Dynex Technologies MRX TC IIプレートリーダー上で450nmにおける吸光度を読み取り、結合曲線をプロットした。
図5において4つの抗体(H1VH1_E8Vκ1、H1VH1_E8Vκ2、F7VH1_E8Vκ1、VH1_E8Vκ2)について示されるように、親和性成熟IgGは、競合ELISAにおいて、キメラ型親マウス抗体及びヒト化型親VH1Vκ1抗体と同様の挙動をとった。
また、競合ELISAは、一価(scFv)または二価(IgG)の形態で発現させた親和性成熟重鎖及び軽鎖のある特定の組み合わせをヒト化型親VH1Vκ1と比較するためにも使用した。図6は、pH7.4及びpH6.0の両方におけるH3VH1_E8Vκ1 IgG、H3VH1_Vκ1 scFv、VH1Vκ1 IgG、及びVH1Vκ1 scFvの結合を比較するものである。scFv形態では、親和性成熟H3VH1_Vκ1 scFvは、VH1Vκ1 scFvの親と比較して、結合の顕著な改善を示した。また、このscFv形態と比較すると、二価のIgGとして発現させた場合、H3VH1_E8Vκ1 IgG及びVH1Vκ1の両方が結合の改善を示した。
さらなるヒト化型親和性成熟重鎖及びヒト化型親和性成熟軽鎖を競合ELISAで試験した。ヒト化型親和性成熟重鎖及びヒト化型非親和性成熟軽鎖の組み合わせも試験した。得られた結果を表4及び5に概括する。これらは、pH7.4及びpH6.0で実施した実験における平均相対IC
50値ならびに実験回数(n)を示すものである。これらの組み合わせにおけるIC
50値を、同じプレート上で試験したキメラ型親マウス抗体を基準に正規化した。
pH6.0における全ヒトIgGとの競合ELISAアッセイにおいて、ヒト化型親和性成熟抗体のFcRnへの結合をさらに評価した。Nunc Immuroマキシソープ96ウェル平底マイクロタイタープレート(Fisher,cat.no.DIS−971−030J)をpH7.4で終夜、FcRnのFc結合領域とは異なるアルブミン結合エピトープに特異的なFcRn抗体1μg/mlでプレコーティングした。翌日、pH7.4のPBSに希釈した0.5μg/mlの組換え型ヒトFcRn(Sino Biological Inc.cat.no.CT009−H08H)をウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートをpH7.4のPBSTで3回洗浄した後、プレートをpH7.4のPBSMで37℃にて1時間ブロックした。この時点以降、全ての洗浄及びインキュベートステップは、アッセイpH6.0で実施した。PBSTで3回洗浄した後、25μg/mlから最終濃度0.034gμ/mlまでの一連の試験抗体3倍希釈液を一定濃度のビオチン化ヒト血清IgG(Sigma,cat.no.I4506、最終濃度25μg/ml)と予混合し、プレートに添加し、37℃で1時間インキュベートした。PBST洗浄を3回行った後、ビオチン化IgGの結合をストレプトアビジン−HRP(Sigma,cat.no.S5512)及びTMB基質(Invitrogen,cat.no.00−2023)で検出した。3MのHClで反応を停止させ、Dynex Technologies MRX TC IIプレートリーダー上で450nmにおける吸光度を読み取り、結合曲線をプロットした。
ヒト血清IgGの存在下でのpH6.0におけるヒト化型親和性成熟重鎖及びヒト化型親和性成熟軽鎖の組み合わせのFcRnへの結合を、キメラ型親マウス抗体のFcRnへの結合と比較した。結果を表6に概括する。平均相対IC
50値を、同じプレート上で試験したキメラ型抗体を基準に正規化した。
ヒト血清IgGの存在下でのpH6.0におけるヒト化型親和性成熟重鎖及びヒト化型非親和性成熟軽鎖の組み合わせのFcRnへの結合を、親マウスFcRn抗体のFcRnへの結合と比較した。結果を表7に概括する。平均相対IC
50値を、同じプレート上で試験した親マウス抗体を基準に正規化した。
ヒト化型親和性成熟重鎖及び軽鎖のいくつかの組み合わせならびにヒト化型親和性成熟重鎖とヒト化型非親和性成熟軽鎖との対合のいくつかの組み合わせに関するさらなるデータを、次の表8に示す。
実施例5
表面プラズモン共鳴を使用したmAb結合動態の決定
抗体をpH4.5の10mM NaAcに希釈し、BIACORE(登録商標)CM5チップ上に固定し、およそ500〜1000のRUレベルにした。pH7.4またはpH6.0における1xPBS−P中12〜800nMの濃度のFcRnの注入により、分析を実施した。表9は、1:1ラングミュアモデルを使用して適合させた動態データを示すものである。
さらなる試験では、BIACORE(登録商標)により、親和性成熟重鎖及び軽鎖を含むIgGの親和性をヒト化型親V
H1/Vκ1抗体と比較した。プロテインA及びアナライト(FcRn)でコーティングしたCM5チップの表面に抗体を流し、抗体を捕捉した。次の表10に示すように、親和性成熟重鎖及び軽鎖を含む抗体は、ヒト化型親V
H1/Vκ1抗体に類似した親和性を示した。
ある親和性成熟重鎖(すなわち、G9VH1、H3VH1、またはH1VH1)を一定に保持する抗体間におけるVκ1を有する場合とVκ2を有する場合との対比較ならびに、Vκ2を一定に保持する抗体間におけるH3VH1を有する場合とG9VH1を有する場合との対比較を行った。標準的なアミンカップリング化学を使用して、series S CM5センサーチップ(GE Healthcare Cat.No.BR100530)表面のフローセル(Fc)1、2、3及び4にプロテインA(Sigma Cat.No.P6031)をコーティングした。pH5.0の10mMの酢酸緩衝液中20μg/mlのタンパク質濃度で固定化を行い、目標応答レベルを500レゾナンスユニット(RU)にした。10nMの抗体をFc2、3及び4上で10μl/minで捕捉して約172のRU(50〜150RUのアナライト結合レベル(Rmax))を得、表面を安定させた。
動態分析のため、50〜0.02nM FcRnの2倍希釈範囲を選択した。FcRnアナライトの会合フェーズを450秒間モニターし、解離を40μl/分で1500秒間測定した。F
c1は参照チャネルであり、他のフローセルからこれを減算して非特異的結合を補正した。動態値は、1:1結合モデルに基づいている(表11)。
さらなる試験では、製造業者による説明通りにアミンカップリング化学を使用してmAb(約500〜700レゾナンスユニット)とカップリングさせたCM5センサーチップと共に、Biacore3000装置(GE Healthcare)を使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)を行った。カップリングは、アミンカップリングキット(GE Healthcare)を使用して、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.5(GE Healthcare)に3μg/mlの各タンパク質を注入することによって実施した。HBS−P緩衝液pH7.4(0.01M HEPES、0.15M NaCl、0.005%のsurfactant P20)またはリン酸緩衝液pH6.0(67mMリン酸緩衝液、0.15M NaCl、0.005%のTween20)をランニング緩衝液及び希釈緩衝液として使用した。滴定量の単量体Hisタグ付きhFcRn(400.0〜12.5nM)を、pH7.4またはpH6.0の固定化した抗体に注入することにより、結合動態を決定した。全てのSPR実験を25℃、40μl/minの流量で行った。結合データをゼロ調整し、参照セル値を減算した。BIAevaluation software(バージョン4.1)が提供するラングミュア1:1リガンド結合モデルを使用して結合動態を決定した。適合度の近似は統計値χ2によって説明される。
図7は、表面プラズモン共鳴によって決定される、変異体軽鎖Vκ2または親和性成熟軽鎖E8と対合させた親和性成熟重鎖G9またはH3における結合の会合及び解離のプロットを示すものである。動態速度定数は、次の12で提供される。動態速度定数は、簡易的な一次(1:1)ラングミュア二分子相互作用を使用して得た。動態値は、二重反復試験の平均値を表す。χ
2(カイ2乗)値は、結合モデルに対する適合度を表す。
さらなる試験では、製造業者による説明通りにアミンカップリング化学を使用して抗体(約550レゾナンスユニット(RU))とカップリングさせたCM5センサーチップと共に、Biacore3000装置(GE Healthcare)を使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)を行った。カップリングは、アミンカップリングキット(GE Healthcare)を使用して、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.5(GE Healthcare)に2.5μg/mlの各タンパク質を注入することによって実施した。HBS−P緩衝液pH7.4(0.01M HEPES、0.15M NaCl、0.005%のsurfactant P20)またはリン酸緩衝液pH6.0(67mMリン酸緩衝液、0.15M NaCl、0.005%のTween20)をランニング緩衝液及び希釈緩衝液として使用した。滴定量(400.0−12.5nM)の単量体Hisタグ付きヒトFcRn(hFcRn)(JTA)を、pH7.4またはpH6.0の固定されたmAb H3Vk2に注入することにより、結合動態を決定した。ヒトIgG1(hIgG1)及びヒトIgG4(hIgG4)については、10.000〜325.0nMを注入した。全てのSPR実験を25℃、40μl/分の流量で行った。結合データをゼロ調整し、参照セル値を減算した。BIAevaluation software(バージョン4.1)が提供するラングミュア1:1リガンド結合モデルを使用して結合動態を決定した。適合度の近似は統計値χ2によって説明される。
図12は、hIgG1、hIgG4、及びH3Vk2についての結合の会合及び解離のプロットを示している。次の表13は、結果を表形式で示している。
予想されたように、hIgG1及びhIgG4は、厳密にpH依存的に結合することが示され、pH6.0ではおよそ1μMのKDであったが、中性pHでは(10.000nMの最高濃度の注入で)非常に弱い結合応答が得られるに過ぎなかった。
さらなる試験では、H3Vk2の、2社の異なる供給業者から得たカニクイザルFcRn及びヒトFcRnに対する結合を試験した。
製造業者による説明通りにアミンカップリング化学を使用してmAb H3Vk2(約550レゾナンスユニット(RU))とカップリングさせたCM5センサーチップと共に、Biacore3000装置(GE Healthcare)を使用して、表面プラズモン共鳴(SPR)を行った。カップリングは、アミンカップリングキット(GE Healthcare)を使用して、10mMの酢酸ナトリウム、pH4.5(GE Healthcare)に2.5μg/mlのH3Vk2を注入することによって実施した。HBS−P緩衝液pH7.4(0.01M HEPES、0.15M NaCl、0.005%のsurfactant P20)またはリン酸緩衝液pH6.0(67mMリン酸緩衝液、0.15M NaCl、0.005%のTween20)をランニング緩衝液及び希釈緩衝液として使用した。結合動態は、pH7.4またはpH6.0において、滴定量(400.0〜12.5nM)の受容体を固定されたAb(単量体Hisタグ付きヒトFcRn(hFcRn))(JTA)、またはSINO Biological Incから得たヒトFcRn及びカニクイザルFcRn(cFcRn)に注入することによって決定した。全てのSPR実験を25℃、40μl/minの流量で行った。結合データをゼロ調整し、参照セル値を減算した。BIAevaluation software(バージョン4.1)が提供するラングミュア1:1リガンド結合モデルを使用して結合動態を決定した。適合度の近似は統計値χ2によって説明される。
図13は、結合の会合及び解離のプロットを示している。次の表14は、結果を表形式で示している。
この実験セットアップでは、SINO Biological Inc.から得たH3Vk2のヒトFcRn及びカニクイザルFcRnに対する結合動態を決定した。比較として、自家で産生し、ある特定の過去の研究で使用した単量体ヒトFcRn(JTA)をpH7.4で本実験に含めた。SINO Biological Inc.による市販のヒト形態は、インハウスで産生したヒトバージョンに非常に類似した動態定数を示した。カニクイザルFcRnは、両方のpH条件で抗体に結合することが示されたが、pH7.4における親和性は、ヒト受容体よりも多少(およそ2倍)弱いものであった。
実施例6
抗原提示アッセイ
骨髄樹状細胞(BMDC)の調製 − 骨髄(BM)細胞を8匹のメスB6.Cg−Fcgrttm1Dcr Tg(FCGRT)32Dcr/DcrJマウス(Jackson Laboratoryストック番号014565)から採取した。これらのマウスは、FcRn α鎖のノックアウト対立遺伝子(Fcgrttm1Dcr)を有し、ヒトFcRnプロモーターの制御下でヒトFcRn α鎖(FCGRT)導入遺伝子を発現する。完全RPMI(C−RPMI)の入った約70の非TC処理ペトリ皿内に、BM細胞を2x106/10cm2でて蒔いた。3日目及び6日目にGM−CSF(20ng/ml)をBM細胞に補充し、BMDC培養の8〜12日目に使用のために採取(または凍結)した。
抗原提示アッセイでは、BMDCによるFcRn媒介抗原提示をT細胞活性化によって評価する。具体的には、BMDCを抗原+抗原特異的抗体(NIP−OVA+抗NIP−IgG)の免疫複合体と共にインキュベートした後、抗原特異的T細胞の活性化を決定する。(アイソタイプが一致する非特異的な対照抗体と比較して)抗FcRn抗体が(FcRnとICとの結合を遮断することにより)抗原提示を阻害し、それによりNIP−OVAの処理及びT細胞への提示を遮断する能力を、T細胞活性化の決定によって評価する。T細胞活性化は、ELISAを使用しIL2及びIFN−γの産生を定量化して評価する。非特異的抗原提示用の対照(すなわち、抗原提示のバックグラウンドレベルがFcRnの媒介を受けない)は、BMDCを試験抗体及び非複合化抗原(すなわち、抗NIP−IgGを伴わないNIP−OVA)と共にインキュベートすることにより用意する。
最初に、BMDCを試験抗体またはアイソタイプ対照と共にインキュベートする。具体的には、BMDCを96ウェルプレート内に5x104/100μl/ウェルにて播種し、37℃で30〜60分間インキュベートする。各ウェルに100μlの各試験抗体(またはアイソタイプ対照)を添加して、50、25、12.5、6.25、または3.125nMの抗体濃度を達成する。BMDC−抗体混合物を30〜60分間インキュベートしてから免疫複合体(IC)を添加する。十分な数のウェルを準備して、CD4+及びCD8+T細胞の活性化阻害に関して、そして三重反復における測定に関して、各抗体の希釈液一式を試験する。
免疫複合体(IC)形成
抗NIP−IgG(2倍濃度=200μg/ml)及びNIP−オボアルブミン(「NIP−OVA」)(2倍濃度=200μg/ml)各2.5mlを混合し、37℃で60分インキュベートして、200μg/mlの免疫複合体(IC)を形成する。100μg/mlのNIP−OVAの未処理(すなわち、非複合化)試料5mlを調製する。
BMDCへの添加用に、各試験抗体(またはアイソタイプ対照)及びICの混合物を調製する。バックグラウンド対照を提供するため、各試験抗体をNIP−OVAとも混合する。具体的には、試験抗体の段階希釈液(100、50、25、12.5、6.25nM)を調製し、各希釈液250μlをIC 250μl及び100μg/mlのNIP−OVA 250μlに添加して、50、25、12.5、6.25、及び3.125nMの濃度の試験抗体を含有する試験抗体+ICまたは試験抗体+NIP−OVA溶液を産生する。
試験抗体で処理済BDMCを含有する96ウェルプレートを遠心処理し、25μl/ウェルの培地以外を全て取り除き、試験抗体+ICまたは試験抗体+NIP−OVA溶液100μlをウェルに添加し、次に37℃で2〜3時間インキュベートする。
T細胞調製物
CD8+T細胞を得るため、メスのOTI、C57BL/6−Tg(TcraTcrb)1100Mjb/Jマウス(Jackson Laboratoryストック番号003831)の脾臓及びリンパ節から単細胞懸濁液を採取する。これらの遺伝子導入マウスは、H2Kbのコンテキストにおいてオボアルブミン残基257〜264を認識するように設計された遺伝子導入T細胞受容体を発現し、正の選択におけるペプチドの役割及びCD8+T細胞の抗原に対する応答を研究するために使用される。Miltenyiキットを使用して非CD8+T細胞を枯渇させる。
CD4+T細胞を得るため、メスのOTII、B6.Cg−Tg(TcraTcrb)425Cbn/Jマウス(Jackson Laboratoryストック番号004194)の脾臓及びリンパ節から単細胞懸濁液を採取する。これらの遺伝子導入マウスは、CD4共受容体と対合し、かつI−Abのコンテキストでニワトリオボアルブミン323〜339に特異的である、マウスアルファ鎖及びベータ鎖T細胞受容体を発現する。Miltenyiキットを使用して非CD4+T細胞を枯渇させる。
BDMC,試験抗体、及びIC(または非複合化NIP−OVA)を含有する96ウェルプレートを遠心処理し、25μl/ウェル以外を除去し、ウェルを予熱したC−RPMIで2回洗浄する。
1.5x105/200μl/ウェルの量のT細胞(CD4+またはCD8+のいずれか)を37℃で24時間インキュベートする。各ウェルから150μlを採取して、ELISAによりIL2を定量化する。150μl/ウェルのC−RPMIを各ウェルに戻し、次に37℃でさらに48時間(合計72時間)インキュベートする。この時点で各ウェルから150μlを採取して、ELISAによりIFN−ガンマを定量化する。
IL2及びIFN−ガンマの培養上清への分泌をELISAによって測定することにより、OTI(CD8+)及びOTII(CD4+)T細胞の各培養条件に対する応答を評価する。IL2は、24時間時における両方の培養液、OTIについては1から3に希釈したもの、OTIIについては1から20に希釈したものから測定する。IFN−γは、24時間時における1から3に希釈したOTI培養液及び、72時間時における1から20に希釈したOTII培養液から測定する。
実施例7
免疫原性試験
抗体を前臨床エキソビボT細胞アッセイ(EPISCREEN(登録商標)、Antitope Ltd.)に供する。EPISCREEN(登録商標)(Antitope Ltd.)アッセイは、世界的母集団において発現されるHLA−DRアロタイプの数及び頻度を代表するために選択されたコホートを使用して、タンパク質治療薬に対するT細胞応答を定量化することにより、T細胞免疫原性を有効に予測する。
実施例8
全血アッセイ
抗FcRn抗体が生理的に適切な環境においてサイトカイン産生を遮断する能力を試験するため、カニクイザルからの全血を使用したアッセイを開発した。全血に、0.1μg/mlのNIP−OVAまたは抗NIPヒトIgGが結合した0.1μg/mlのNIP−OVA、のいずれかを添加した。NIP−OVA−IgGは、当該アッセイにおいて代理的な免疫複合体として機能し、FcRnに結合し、サイトカイン産生などのFcRnのエフェクター機能を始動させる。NIP−OVA−IgGの添加により、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン−6(IL−6)、インターロイキン−10(IL−10)、及びインターロイキン−1β(IL−1β)といったサイトカインが大量に産生された(それぞれ図8、9、10、及び14の黒色のバーを参照)。これとは対照的に、NIP−OVAを単独で添加してもサイトカインは放出されなかった。NIP−OVA−IgGにおけるIgGをIHH(Fcドメイン中にFcRnへの結合を無効にする3点突然変異(I253A/H310A/H435A)を伴う抗NIPヒトIgG1(Qiao et al.,2008,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 105:9337−9342))に置き換えた場合、サイトカイン放出は観察されなかった。これは、当該アッセイで測定された効果がFcRn依存的であることを示すものである。
抗FcRn抗体H3Vκ2の存在下でNIP−OVA−IgGを添加したところ、サイトカイン産生量が著しく減少した(それぞれ図8、9、10、及び14の灰色のバーを参照)。これは、本明細書に記載される抗FcRn抗体がFcRnとICとの相互作用による効果の1つを遮断するのに有効であることを示すものである。注目すべき点は、本アッセイにおいて全てのサルが顕著な量のサイトカインを産生したわけではないことである。したがって、全てのサルがH3Vκ2によるサイトカイン産生の阻害を測定可能な程度に示したわけではない。顕著な量のサイトカインを産生しなかったサルは、抗FcRn抗体を用いた療法に適していないであろう。これとは逆に、顕著な量のサイトカイン産生を示し、H3Vκ2の存在下でサイトカイン産生の良好な阻害を示したサルは、抗FcRn抗体を用いた療法に適しているであろう。
図11は、H3Vκ2の量を増加させて添加した別の全血ベースのアッセイの結果を示している。グラフの右寄りにある3つのバーが示すように、H3Vκ2はサイトカイン産生量に用量依存的な阻害効果を及ぼすことが観察された。
上述の全血アッセイを、ヒトからの全血での使用に適応させた。ヒト対象からのヘパリン化全血に、1.0μg/ml〜100μg/mlの様々な濃度で予め形成したNIP−OVAの免疫複合体を、安定的濃度の、抗NIPヒトIgG、またはFcRnに結合しないように変異させた抗NIP−IHHのいずれかと共に添加した。全血試料を37℃でインキュベートし、24時間後または36時間後に、ELISAまたはビーズアレイのいずれかによりサイトカインレベルを測定した。図17に示すように、NIP−OVA−IgG免疫複合体は、複数の異なるサイトカインの放出を刺激したが、NIP−OVA−IHH免疫複合体からの応答の欠如は、当該アッセイで測定された効果がFcRn依存的であったことを示すものである。
図18は、IgG4形式の抗FcRn抗体であるH3E8及びH3Vκ2の存在下でNIP−OVA−IgGを添加したところ、サイトカイン産生量が減少したことを示している。当該アッセイを、H3Vκ2及びF(ab’)2形式の対照抗体を用いて再実施した。結果を図19に示す。この結果は、本明細書に記載される抗FcRn抗体が、ヒト全血において、FcRnとICとの相互作用による効果の1つを遮断するのに有効であることを示すものである。
実施例9
IgGクリアランス研究
抗FcRn抗体がヒトIgGクリアランスに及ぼす影響を検討するため、遺伝子導入マウスを使用したインビボ試験を行った。ヒトFCGRT導入遺伝子に対し半接合である20匹の14.9週±3日齢のhFcRn TGマウスを、それぞれが5匹のメス及び5匹のオスを含む1群及び2群に分けた。0日目に、全てのマウスに対し、245mg/kgのヒトIVIGを5mg/kgの鶏卵リゾチーム特異的ヒト化型IgG1 mAb、HuLys11と混合して合計250mg/kgにしたものを、静脈注入により予め投与した。IgG//HuLys11の静脈注入後48、56、72、80、96、120、及び144時間時に各マウスから血液試料を収集した。48時間時の採血の1時間後、20mg/kgのH3Vκ2またはPBSを静脈投与した。HuLys11の血漿濃度をELISAにより定量化した。20mg/kgのH3Vκ2を用いた処置により、HuLys11の血漿濃度において、PBS対照群に対して3倍の非常に顕著な低減(p=0.0001)がもたらされた。この結果は、H3Vκ2によるhFcRn遮断が、hIgGの循環からのクリアランスを促進することを示すものである。
図15は当該研究の結果を示しており、48時間時のマウス血漿中のHuLys11の量を基準とした残留HuLys11(ヒトIgG1)のパーセント(±標準誤差)としてプロットされている。20mg/kgのSYNT001注入は、この48時間時の採血の2時間後である。
実施例10
免疫複合体クリアランス研究
抗FcRn抗体が、Qiao SW,PNAS 2008に従ってインビトロで形成されhFcRn TGマウスに静脈内注入される、多量体免疫複合体に及ぼす影響を検討するため、遺伝子導入マウスを使用したインビボ試験を行った。ヒトFCGRT導入遺伝子に対し半接合である16匹の8.1週+/−3日齢のhFcRn Tgマウスから、8匹のマウス(オス4匹/メス4匹)を2群にランダム抽出した。750μg/mlのNIPhIgG抗NIPを75μg/mlのNIP結合オボアルブミン(OVA1つ当たり11のNIP分子)と共に、PBS中で室温で20分間インキュベートすることにより、多量体ICを形成した。0日目に、各グループの8匹のマウスに対し、NIPhIgG/NIP−OVA ICをそれぞれ7.5mg/kg及び0.75mg/kg、静脈注入により予め投与した。これは、20gの体重用量については150μgのNIPhIgG+15μgのNIP−OVAに相当する。免疫複合体の静脈注入後24、32、48、56、72、96、及び120時間時に血液試料を収集した。24時間時の採血の1時間後、20mg/kgのH3Vκ2またはPBSを静脈投与した。NIPhIgGの血漿濃度をELISAにより定量化した。このインビボ実験における結果は、実施例9の単量体IgGに見られたものと同様に、IgGと抗原との間で形成される免疫複合体の異化作用にFcRnがもたらす保護を、H3Vκ2が阻害することを確認するものである。
図16は当該試験の結果を示しており、示された時点における24時間ベースライン(±標準誤差)を基準とした残留ICの平均%としてプロットされている。
実施例11
単球のFcRn発現
抗FcRn抗体注入後の薬物動態性質及びさらなる薬物力学マーカーの応答を特徴づけるための、カニクイザル全血試料における単球のFcRn発現。カニクイザルに対し、週に1回、静脈注入を介して、ビヒクル(1群)、10mg/kg/用量のH3Vκ2(2群)、40mg/kg/用量のH3Vκ2(3群)、または40mg/kg/用量のH3E8(4群)のいずれかを4週間投与し、その後に4週間の回復期間を設けた。全血試料を静脈穿刺によりK2EDTA抗凝固剤を含有するチューブ内に収集し、分析時まで室温で保管した。抗FcRn抗体の初回注入前及び最初の注入から2時間後に2つの試料を採取し、その後後続の各注入の直前及び2時間後に採取した。血液のアリコートを使用して、ADVIAにより白血球数(合計、絶対及び差分%)を測定した。白血球数及び総リンパ球数(TLC)を全血のμL当たりのリンパ球(細胞/μL)として報告した。全血のμL当たりのリンパ球(細胞/μL)に加えて、単球の細胞数を相対百分率(%)として報告した。
細胞外及び細胞内単球のFcRn発現レベルを、フローサイトメトリーにより、FACSCantoTM IIフローサイトメーターをFACSDivaTMソフトウェアと共に使用して分析した。単球における細胞外及び細胞内のFcRn受容体発現については、CD45+CD14+FcRn+細胞におけるFcRn発現の幾何平均蛍光強度(GeoMFI)と、CD14+単球母集団からのFcRnを発現するCD14+単球の百分率の値を報告した。加えて、単球(CD45+/CD14+)の絶対数及び相対百分率を報告した。
投与した動物の大多数において、研究前の時点と比較した場合に、表15に示すように、各時点の投与後2時間のCD45+/CD14+FcRn+細胞における細胞外FcRn発現に関して、幾何平均蛍光強度(GeoMFI)の減少の傾向が得られた。これらの変化は、抗FcRn抗体のFcRn受容体への結合が増加した結果であるとみなされた。全般的に、geoMFI値は、各予定投与の前に研究前のレベルに戻っていた。このパターンは処置群全体に観察され、減少の大きさは、H3Vκ2を10mg/kg/用量受けた群と、H3Vκ2を40mg/kg/用量受けた群と、H3E8を40mg/kg/用量受けた群との間で類似していた。CD14+単球における細胞外FcRn発現に関しては、CD45+/CD14+/FcRn+の相対百分率に変化は観察されなかった。
各時点における全体的な変動性及び傾向の欠如を考慮すると、メイン期間及び回復期間中の全ての処置群における細胞内のFcRn発現に関するCD45+/CD14+/FcRn+の相対百分率及び幾何平均では、SYNT001−H3Vk2及びSYNT001−H3E8に関連した白血球数の変化はなかった。
これらのデータは、細胞表面単球のFcRn発現が、抗FcRn抗体薬物レベルの代理的なマーカーとして使用され得ることを示唆するものである。