JP6933359B2 - 酸化物半導体単結晶及びその製造方法、透明導電性材料、並びに透明導電性基板 - Google Patents

酸化物半導体単結晶及びその製造方法、透明導電性材料、並びに透明導電性基板 Download PDF

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Description

本発明は、酸化物半導体単結晶及びその製造方法、透明導電性材料、並びに透明導電性基板に関する。
非晶質のIn−Ga−Zn−Oから構成される材料(IGZO)は、電気抵抗率が半導体的な値を示し、非晶質シリコン(a−Si)と同等以上の移動度を発現し得るものとして報告されており(例えば、非特許文献1参照)、従来から、いわゆるIGZO系の材料として注目を浴びている。
また、IGZO系酸化物材料の製造法のうち、単結晶を製造する方法としては、一般に、固相反応法をはじめ、フラックス法、ゾーンメルト法、引き上げ法、ガラスアニール法等を利用して製造する技術が広く知られている。例えば固相反応法を利用した単結晶の製造は、幾つか試みられた例がある(例えば、非特許文献2〜3参照)。
一方、集光式浮遊帯溶融法(フローティングゾーン法)によりCuAlO単結晶を製造することが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−91222号公報
Nature, 432(2004), p.488-492 M.Nespolo et.al. Cryst. Res. Technol. 35(2000) p.151-165 W. Assenmacher et. Al. J. Solid St. Chem. 215(2014) p.176-183
従来から、IGZO系酸化物材料の単結晶を製造する試みはなされているが、いずれもミクロンサイズの極微小な単結晶が育成した報告があるに留まり、物性測定が可能な程度のサイズのバルク状単結晶を育成するに至った報告例はない。
単結晶のサイズがあまり小さ過ぎると、結晶精度の信頼性が低いばかりか、物性測定が制限され、単結晶の応用が促されない課題がある。
本開示は、上記に鑑みてなされたものである。即ち、
本発明の一実施形態が解決しようとする課題は、従来のミクロンオーダーサイズの単結晶に比べて大サイズであり、1:1:1:4相の結晶(InGaZnO)の占有率の高い酸化物半導体単結晶及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の実施形態が解決しようとする課題は、良好な導電性を有する透明導電性材料及び透明導電性基板を提供することにある。
上記の課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を下記式1で表されるモル比で含む試料棒を、集光式浮遊帯溶融法(フローティングゾーン法)により1気圧を越える圧力下、酸素含有雰囲気中で加熱し、加熱により生成した融液を冷却することにより、下記式2で表される組成を有する酸化物半導体の単結晶を製造する工程を含む酸化物半導体単結晶の製造方法である。
In:Ga:Zn=1:1:a ・・・式1
(InGaO(ZnO) ・・・式2
式1において、aは、組成中に占めるZnのモル比を表し、a>1を満たす。式2中、m及びnは、整数を表し、m≧1及びn≧1を満たす。
<2> 前記圧力が、5気圧以上である前記<1>に記載の酸化物半導体単結晶の製造方法である。
<3> 前記aが、1.05以上である前記<1>又は前記<2>に記載の酸化物半導体単結晶の製造方法である。
<4> 前記式2で表される組成を有する酸化物半導体の単結晶が、InGaZnO単結晶である前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の酸化物半導体単結晶の製造方法である。
<5> 前記単結晶を製造する工程の後、更に、製造された前記単結晶を酸素含有雰囲気下、250℃以上の温度域で熱処理する工程を含む前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載の酸化物半導体単結晶の製造方法である。
<6> 前記熱処理する工程は、酸素含有雰囲気中の酸素濃度を、体積基準で21%〜100%の範囲で調節しながら熱処理する前記<1>〜前記<5>のいずれか1つに記載の酸化物半導体単結晶の製造方法である。
<7> 下記式2で表される組成を有し、かつ、a軸−b軸面方向の電気伝導度σabが50S/cm以上であり、c軸方向の電気伝導度σが0.1S/cm〜1.0S/cmである、酸化物半導体単結晶である。
(InGaO(ZnO) ・・・式2
式2において、m及びnは、整数を表し、m≧1及びn≧1を満たす。
<8> 前記式2中のm及びnが、m=n=1を満たす前記<7>に記載の酸化物半導体単結晶である。
<9> 前記<7>又は前記<8>に記載の酸化物半導体単結晶を含む透明導電性材料である。
<10> 前記<7>又は前記<8>に記載の酸化物半導体単結晶を含む透明導電性基板である。
本発明の一実施形態によれば、従来のミクロンオーダーサイズの単結晶に比べて大サイズであり、1:1:1:4相の結晶(InGaZnO)の占有率の高い酸化物半導体単結晶及びその製造方法が提供される。
本発明の他の実施形態によれば、良好な導電性を有する透明導電性材料及び透明導電性基板が提供される。
フローティングゾーン装置の一例の概略の構成を示す概略断面図である。 フローティングゾーン法により結晶を育成していく過程を説明するための説明図である。 結晶育成条件を説明するための説明図である。 フローティングゾーン法で結晶育成している過程の炉内の試料の様子を示す写真である。 圧力0.9MPa、出発物質の混合比(In:Ga:ZnO)1:1:2.2の条件で育成した単結晶のXRD強度比を示す図である。 アニール処理前の単結晶片の外観を示す写真である。 アニール処理後の単結晶片の外観を示す写真である。 アニール処理前後の透過率を対比して示すグラフである。 圧力0.8MPa、出発物質の混合比(In:Ga:ZnO)1:1:2.2の条件で育成した単結晶のXRD強度比を示す図である。 大気圧、出発物質の混合比(In:Ga:ZnO)1:1:2の条件で育成した結晶のXRD強度比を示す図である。 圧力0.9MPa、出発物質の混合比(In:Ga:ZnO)1:1:2の条件で育成した単結晶のXRD強度比を示す図である。
以下、本開示の酸化物半導体単結晶及びその製造方法について詳細に説明し、この説明を通じて、本開示の透明導電性材料及び透明導電性基板の詳細についても述べることとする。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
本明細書において、「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載された数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
<酸化物半導体単結晶の製造方法>
本開示の酸化物半導体単結晶の製造方法は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を下記式1で表されるモル比で含む試料棒を、フローティングゾーン法により1気圧を越える圧力下、酸素含有雰囲気中で加熱し、加熱により生成した融液を冷却することにより、下記式2で表される酸化物半導体の単結晶を製造する工程(以下、「単結晶製造工程」ともいう。)を含み、好ましくは製造された単結晶を熱処理する工程(以下、「熱処理工程」ともいう。)を含み、必要に応じて、更に他の工程を有していてもよい。
In:Ga:Zn=1:1:a (式1)
式1において、aは、組成中に占めるZnのモル比を表し、a>1を満たす。
(InGaO(ZnO) (式2)
式2において、m及びnは、それぞれ独立に整数を表し、m≧1及びn≧1を満たす。
従来から、固相反応法等の方法を利用してIGZO系酸化物材料の単結晶を製造する試みはなされているが、ミクロンサイズの極微小な単結晶が育成した報告があるに留まり、物性の測定が可能な程度のサイズのバルク状単結晶を育成し得る方法については、未だ報告された例はないのが実情である。
IGZO系酸化物は、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を含む酸化物であり、含有元素のうち、In及びZnの酸化物は、Gaの酸化物に比べて蒸気圧が大きく、結晶育成中にIn及びZnの酸化物が蒸発して所期の組成を保持することが難しいとされてきた。特に組成中のZn成分は、含有比が低くなる傾向がある。
そのため、フローティングゾーン法のように高温環境で結晶を育成する方法は、蒸気圧の高い成分の蒸発を招き、蒸気圧の大きいIn及びZnの酸化物を含む単結晶の製造には、例えば固相反応法などの他の方法が適用されるのが一般的であった。
上記の事情を踏まえ、本開示の酸化物半導体単結晶の製造方法では、結晶の育成環境を大気圧より高めたフローティングゾーン法を適用し、かつ、フローティングゾーン法で結晶育成する際に用いる試料の組成を、Znの含有比をIn及びGaより高めた組成として、IGZO系酸化物材料の単結晶を製造する。これにより、試料中の成分の蒸発が抑えられ、成分の蒸発に伴う特定元素(例えば酸化状態での蒸気圧が高いZn等)の含有比の著しい変化が抑制される。結果、(InGaO(ZnO)の組成を有する酸化物半導体の単結晶が形成されやすい。また、フローティングゾーン法により試料が液相化することにより、(InGaO(ZnO)の組成を有する単結晶を、ミクロンサイズの従来の単結晶よりサイズが大きく、かつ、厚みのあるバルク状の単結晶として製造することができる。
以下に、本開示の酸化物半導体単結晶の製造方法における各工程について詳述する。
−単結晶製造工程−
本開示における単結晶製造工程は、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、及びZn(亜鉛)を式1で表されるモル比で含む試料棒を、フローティングゾーン法により1気圧を越える圧力下、酸素含有雰囲気中で加熱し、加熱により生成した融液を冷却することにより、式2で表される酸化物半導体の単結晶を製造する。
In:Ga:Zn=1:1:a 式1
(InGaO(ZnO) 式2
なお、式1において、aは、組成中に占めるZnのモル比を表し、a>1を満たす。式2において、m及びnは、それぞれ独立に整数を表し、m≧1及びn≧1を満たす。
フローティングゾーン法(FZ法(Floating Zone法);集光式浮遊帯溶融法)は、銅酸化物超伝導材料を含む酸化物単結晶の製造に一般に用いられる手法であり、図1に示すように、ハロゲンランプ12からの光を回転楕円体ミラー14によって集光し、溶融場である石英管16内において多結晶からなるロッド状試料棒20の一部を高温にして融液(融解部分)を保持し、徐々にロッド状試料棒20を移動させて融解部分をゆっくり冷やしていくことで単結晶を得ることができる。ロッド状試料棒20の下部には、種結晶18を配置することができる。ロッド状試料棒20を高温で融かすため、試料中に蒸気圧の高い成分が含まれると組成に変化を来たし、所望とする組成の結晶が得られにくい。
IGZO系酸化物材料に含まれるIn及びZnの酸化物は、比較的蒸気圧が高く、蒸発しやすいため、通常はフローティングゾーン法による結晶化には適さない。
このような状況下、本開示の酸化物半導体単結晶の製造方法では、フローティングゾーン法を利用して結晶育成する際の石英管内の圧力を高め、単結晶の育成を行う。具体的には、1気圧を越える加圧雰囲気下で試料棒をフローティングゾーン法で加熱して融液にし、単結晶化を試みると、試料棒に含まれるIn及びZnの酸化物成分の蒸発が抑えられる。これにより、(InGaO(ZnO)で表され、かつ、バルク状の酸化物半導体の単結晶を製造することが可能になる。この際、単結晶の育成に用いる試料棒は、In及びGaに対してZnの含有濃度が高い組成を有していることが好ましい。
本工程では、式1で表されるモル比で含む試料棒が用いられる。
試料棒は、フローティングゾーン法で単結晶を育成する過程で形成する融液の原料となる試料であり、本開示における単結晶製造工程では、酸化状態で蒸発しやすいZn(下記の反応式参照)の試料棒中における含有比率を高める。
In+Ga+2ZnO → 2(InGaO)ZnO
→ (InGaOZnO+ZnO↑
これにより、単結晶の育成過程でZnが蒸発等で特異的に減少する等が原因で、In及びGaに対して相対的にZnが不足することによって他の組成(例えば2:2:1:7相の結晶(InGaZnO))が生成されやすくなることが抑制されるため、1:1:1:4相の結晶(InGaZnO)の生成を促進することができる。
具体的には、試料棒を、In:Ga:Zn(モル比)=1:1:a(a>1)の関係を満たす組成とする。
試料棒中のZnのモル比aは、1より大きい範囲であればバルク状の単結晶を得やすい。中でも、試料棒の組成中に占めるZnのモル比aとしては、1.05以上の範囲(In及びGaに対して5%以上多い範囲)が好ましく、1.10以上の範囲(In及びGaに対して10%以上多い範囲)がより好ましい。モル比aの上限は、特に制限されるものではなく、3.00以下としてもよい。
組成中のZnのモル比aが1.05以上の範囲であると、2:2:1:7相の結晶(InGaZnO)等の他の組成の生成がより抑えられ、1:1:1:4相の単結晶(InGaZnO結晶)がより安定的に得られやすくなる。
前記式2において、整数を表すm及びnは、m≧1及びn≧1を満たす。
mの範囲としては、1〜3であってもよく、1〜2であってもよい。
nの範囲としては、特に制限はなく、1〜5であってもよく、1〜3であってもよく、1〜2であってもよい。
m及びnの好ましい範囲は、mが1〜2であり、かつ、nが1〜2である範囲としてもよい。半導体材料として好適な組成の一つとして、m及びnは、m=n=1(即ち、1:1:1:4相の単結晶(InGaZnO結晶))であってもよい。
本工程では、上記の試料棒を用い、フローティングゾーン法により1気圧を越える加圧雰囲気下で試料棒を加熱する。これにより、融液を生成した際の含有成分の蒸発が抑えられ、(InGaO(ZnO)の組成を有するバルク状の酸化物半導体の単結晶が育成される。
加圧雰囲気下で融液を生成して単結晶化する際の圧力は、上記と同様の理由から、5気圧以上が好ましく、7気圧以上がより好ましい。圧力の上限は、装置の性能上の点で、9気圧以下とされてもよい。
融液が生成される空間(一般には石英管)内の圧力は、空間内に大気などの酸素含有ガスを一端から供給することによって雰囲気圧を制御することで調節することができる。
例えば石英管に大気を一端から供給する場合、管内の圧力は、装置に取り付けた圧力計によって把握することができる。
本工程では、上記の加圧環境下、フローティングゾーン法により試料棒を酸素含有雰囲気中で加熱する。酸素含有雰囲気中で加熱することにより、製造される単結晶中の酸素欠陥が少なく抑えられると考えられる。
融液を生成する管内の酸素含有雰囲気中の酸素含有量は、酸素欠陥の少ない単結晶を得る観点から、体積基準で21%〜100%の範囲が好ましい。
融液が生成される管内の酸素濃度は、原理的には酸素分圧依存性を持つジルコニア固体電解質を利用した素子を利用するジルコニア式酸素濃度計にて求められる値であり、例えば、横河電気株式会社の一体型ジルコニア酸素濃度計ZR202Gを用いて測定することができる。
試料棒を融かして融液部とする際の加熱温度は、試料棒から融液にすることができる温度であれば特に制限されるものではない。
加熱温度は、装置中のランプに供給する電力に相関するものであり、ランプ出力を変化させることにより加熱温度を調整することができる。ランプの電力は、400W〜800Wの範囲としてよい。
試料棒を部分的に加熱して融液部を形成して単結晶を育成する場合、例えば図1に示すように、ハロゲンランプ等の光源からの光を回転楕円体ミラーによって集光し、溶融場である石英管内において多結晶で作った試料棒の一部を融液の状態で保持することが好ましい。この際、試料棒の融液部の状態を適宜観察し、確認しながら、ランプの出力を調節することが好ましい。
ランプ出力が大きくなり過ぎないように調節することで、融液量が増え過ぎるのを回避し、融液が垂れることを防止することができる。また、ランプ出力が小さくなり過ぎないように調節することで、融液が不足しない範囲に保持でき、融液が少なくなり過ぎて上下軸が衝突して軸がぶれるのを回避することができる。
上記のように加熱によって生成された融液は冷却され、融液部をゆっくり冷やしていくことで単結晶が得られる。
フローティングゾーン法による場合、例えば図2Aに示すように、融液部を表面張力によって支えながら、試料棒を移動させて全体を下方に移動させることで融液部を冷却して単結晶を製造する。
フローティングゾーン法により単結晶を製造する方法を具体的に説明する。
まず初めに、試料棒を作製するためのInGaZnO多結晶を作製する。即ち、
出発物質を秤量し、秤量した出発物質に溶媒を加えて混合し、混合した溶媒は蒸発除去する。混合方法には、特に制限はなく、例えば、乳鉢を用い、乳棒を用いて混合してもよい。
混合は、溶媒を加えて行う湿式混合が好ましい。湿式混合によると、粉体をより均一に混合できる点で有利である。
混合時に用いる溶媒としては、出発物質との反応性が低い溶媒が好ましく、例えば、アルコール溶媒(例えばエタノール)、ケトン溶媒(例えばアセトン)等を用いることができる。中でも、混合時又は混合終了後に容易に蒸発する溶媒が好ましく、アルコール溶媒は好ましい。
また、混合時に用いる溶媒の混合量としては、出発物質の合計質量に対して、70質量%〜150質量%が好ましく、80質量%〜120質量%がより好ましい。
出発物質は、混合前にあらかじめ焼く作業を施し、含有される水分及び不純物を除去しておくことが好ましい。この場合の作業条件は、水分及び不純物の除去が可能な条件であればよく、例えば、以下に示す条件としてもよい。
到達温度:700℃〜900℃
到達温度での保持時間:20時間〜25時間(加熱温度に依存する)
昇温速度:300℃/h〜500℃/h
降温速度:炉冷(炉内放冷)
なお、本開示の酸化物半導体単結晶の製造方法に用いる試料棒は、In:Ga:Zn=1:1:a(a>1;モル比)の組成を有するものであり、出発物質として、In、Ga及びZnの各酸化物、具体的にはIn、Ga及びZnOが好適に用いられる。
試料棒におけるZnの配合比率は、In:Ga:ZnO=1:1:2(モル比)である正規組成比よりも多くなるように調整される。
試料棒としては、ロッド形状のロッド試料を用いることができる。
混合後、溶媒が蒸発除去された後に出発物質を擂潰する。
擂潰は、出発物質を混ぜることに加え、出発物質をなるべく細かく砕いて粒径を小さくすることを目的として行う。つまり、擂潰は、強い力で擂り潰しながら混ぜる作業である。この点、各出発物質を均一に混ぜることを目的とする混合とは区別される。擂潰により、出発物質の粒子が細かくなり、表面積が増えて反応性を高め、また、均一性を向上させることができる。
次に、擂潰後の各出発物質を電気炉にて焼成して多結晶を育成し、炉冷して多結晶試料を得る。焼成条件は、例えば、以下に示す条件としてもよい。
焼成温度:1000℃〜1300℃
焼成時間(到達温度での保持時間):45時間〜50時間(焼成温度に依存する)
昇温速度:600℃/h〜650℃/h
降温速度:炉冷(炉内放冷)
続いて、得られた多結晶試料に静水圧をかけ、静水圧によって全方向から均等に圧力をかけて所望形状に押し固めて成形する。
その後、成型された多結晶試料を電気炉で焼結し、炉冷して目的とする試料棒を得る。ここでの焼結は、上記の焼成と異なり、所望形状に固めることを目的として行うものである。なお、焼結条件は、例えば、上記の焼成条件と同様とすることができる。
そして、得られた試料棒を,フローティングゾーン法を利用して単結晶を育成する装置にセットし、1気圧を越える圧力下、酸素含有雰囲気中で加熱し、加熱により生成した融液を冷却することにより、酸化物半導体の単結晶を製造する。試料棒の一端に相手材として配置される種結晶は、設置されてもされていなくてもよい。種結晶を設置しない場合は多結晶棒を相手材として設置することが好ましい。
なお、InGaZnOは、下記式(a)で示す化学反応式にて生成される。
In+Ga+2ZnO → 2InGaZnO 式(a)
本工程では、(InGaO(ZnO)で表される酸化物半導体の単結晶が製造される。m及びnは、整数を表し、m≧1及びn≧1を満たす。
単結晶の組成は、m=1の組成であってもよい。具体的には下記で表される。
InGaO(ZnO) (n≧1)
また、単結晶の組成は、m=n=1であるInGaZnOであってもよい。
酸化物半導体の単結晶の結晶構造は、X線回折(X-ray Diffraction;XRD)法によって特定が可能である。また、酸化物半導体の単結晶の結晶組成は、蛍光X線元素分析(X-ray Fluorescence;XRF)法によって特定が可能である。
−熱処理工程−
本開示の酸化物半導体単結晶の製造方法では、上記の単結晶製造工程の後工程として、単結晶製造工程で製造された単結晶を熱処理する熱処理工程を更に設けてもよい。
単結晶製造工程で製造された単結晶を熱処理に供することによって、バルク状の単結晶の色味及び導電性の調整を行うことが可能である。
具体的には、単結晶製造工程の後に、製造されたバルク状の単結晶を酸素含有雰囲気下、250℃以上の温度域で熱処理することが好ましい。熱処理の温度範囲については、目的又は単結晶の用途等で適宜選択すればよい。
熱処理の温度が250℃以上であることで、導電性の程度を調整することが可能である。また、単結晶に酸素欠損がある場合は、結晶への酸素の導入で酸素欠損が補われ、単結晶の色相を調整(例えば着色のない結晶にする)ことができる。
上記のうち、熱処理の温度としては、酸素の導入による単結晶の色相及び電導性の調整が行いやすい理由から、250℃〜1000℃の範囲がより好ましく、250℃を超え500℃以下の範囲がより好ましい。
なお、熱処理の温度域が1000℃以下であると、加熱炉の温度上の制約の観点から有利である。
熱処理時間は、熱処理の温度にもよるが、被加熱体である単結晶の体積に応じて適宜選択することが好ましい。例えば、薄い試料又は小サイズの試料(例えば、1辺の長さが約3mm、厚さが約0.1mm程度の試料)の場合は、250℃〜1000℃にて72時間〜168時間とすることができる。
単結晶製造工程で製造されたバルク状の単結晶は、酸素欠損が生じて例えば青色系に着色された結晶として得られる場合がある。本開示の酸化物半導体単結晶は、酸素含有雰囲気で熱処理することで、無色透明性の単結晶としての使用が可能になる。
また、酸素含有雰囲気下での熱処理により、バルク状の単結晶の導電性の制御が可能である。即ち、熱処理時に単結晶が置かれる雰囲気中の酸素濃度を調整することによって単結晶の導電性を調整することができる。これにより、目的又は用途等に応じた導電性を有するバルク状の単結晶を提供することが可能になる。
熱処理工程において熱処理を行う場合、酸素含有雰囲気中の酸素濃度は、単結晶の着色度合い、所望とする色合い、導電性、又は熱処理諸条件により適宜選択すればよく、酸素濃度は、例えば体積基準で21%〜100%の範囲に調節されてもよい。酸素濃度が上記の範囲内であると、単結晶の酸素欠陥を修復することができ、単結晶の色相及び導電性の調整が容易に行える。
また、単結晶の導電性の調整は、熱処理時に単結晶が置かれる雰囲気を還元雰囲気に調整することによって行ってもよい。具体的には、熱処理時に単結晶が置かれる雰囲気中の水素濃度を調整することによって単結晶の導電性を調整してもよい。上記のように酸素含有雰囲気で単結晶中の酸素欠損を補うのとは逆に、単結晶に還元処理を施して酸素欠損の状態を制御してもよい。
<酸化物半導体単結晶>
本開示の酸化物半導体単結晶は、式2で表される組成を有し、かつ、a軸−b軸面方向の電気伝導度σが50S/cm以上であり、c軸方向の電気伝導度σが0.1S/cm〜1.0S/cmである。
(InGaO(ZnO) ・・・式2
式2において、m及びnは、それぞれ独立に整数を表し、m≧1及びn≧1を満たす。
本開示の酸化物半導体単結晶が、式2で表される組成を有する結晶である点、及び式2中のm及びnの好ましい範囲等の好ましい態様については、既述の通りである。
式2で表される組成を有する酸化物半導体単結晶の例としては、1:1:1:4相の結晶(InGaZnO)、2:2:1:7相の結晶(InGaZnO)、1:1:2:5相の結晶(InGaZn)等が含まれる。
酸化物半導体単結晶の中でも、1:1:1:4相の結晶(InGaZnO)は好適である。
また、本開示の酸化物半導体単結晶は、既述のように、ミクロンサイズの従来の単結晶よりサイズが大きく、かつ、厚みのあるバルク状の単結晶である。
従来から知られたIGZO系酸化物材料は、ミクロンサイズの単結晶が製造されるに留るものであり、従って単結晶のa軸−b軸面に直交するc軸方向の電気伝導性は測定がなされていない。これに対し、本開示の酸化物半導体単結晶は、c軸方向に0.1S/cm〜1.0S/cmの電気伝導度σを有している。即ち、本開示の酸化物半導体単結晶は、オーダーが異なるものの、a軸−b軸面方向とc軸方向とにおいて電気伝導性を示す。具体的には、本開示の酸化物半導体単結晶は、c軸方向に、a軸−b軸面方向の電気伝導性に対して数オーダー異なるが、0.1S/cm以上の電気伝導度を有している。
本開示の酸化物半導体単結晶は、従来のマイクロオーダーより大きいミリオーダーの辺長を有する単結晶であり、最大長さが1mm以上の単結晶であり、好ましくは最大長さが10mm以上の単結晶である。
単結晶の最大長さは、定規により測定することが可能である。
本開示の酸化物半導体単結晶では、a軸−b軸面方向の電気伝導度σabは、50S/cm以上であり、既述の熱処理の有無等によって異なるが、好ましくは、50S/cm〜600S/cmである。中でも、熱処理前における電気伝導度は、300S/cm〜600S/cmの範囲が好適であり、また、熱処理を施した後の電気伝導度は、50S/cm〜200S/cmの範囲が好適である。
また、c軸方向の電気伝導度σは、0.1S/cm〜1.0S/cmである。
熱処理前における電気伝導度としては、0.1S/cm〜1.0S/cmが好適である。また、熱処理を施した後の電気伝導度としては、0.01S/cm〜0.1S/cmの範囲が好適である。
なお、単結晶の電気伝導度は、4端子法を用いて室温(25℃)で測定される値である。測定には、一方向の長さが1mm〜3mmの単結晶を用いることで好適に行える。また、c軸方向の電気伝導度を測定する場合は、c軸と垂直な方向に結晶面を持つ板状試料の一方面に電圧と電流の端子を1つずつ互いに平行に配置し、他方面に残りの2つの端子を同様に互いに平行になるように配置し、さらに電流の端子間を結ぶ線と電圧の端子間を結ぶ線とが交差するように端子を配置して測定する。
本開示の酸化物半導体単結晶は、c軸方向に電気伝導度を有し、かつ、c軸方向の電気伝導度の測定が可能なバルク状の単結晶が得られる方法であれば、任意の製造方法を選択して製造してもよい。従来から知られた単結晶に比べて大サイズのバルク状単結晶を安定的に製造する観点から、本開示の酸化物半導体単結晶は、好ましくは、既述の本開示の酸化物半導体単結晶の製造方法により製造される。
<透明導電性材料>
本開示の透明導電性材料は、既述の本開示の酸化物半導体単結晶を含むものである。
既述の本開示の酸化物半導体単結晶が含まれることにより、本開示の透明導電性材料は(InGaO(ZnO)で表される組成の単結晶をバルク状結晶として含むので、所望とする導電性を得やすく、用途に応じた形状に加工しやすい。
なお、「透明」とは、光の透過率が30%以上であって、透過光を材料又は基板等の機能として利用することができる、あるいは材料又は基板等の性能の向上に利用することができる性状をいう。光の透過率は、40%以上であることが好ましい。
なお、光の透過率は、以下の方法で測定される値である。
厚さ0.195mm、a軸−b軸面方向の大きさが2mm×3mmの単結晶試料に対し、分光光度計U−3010(株式会社日立ハイテクサイエンス製、光源:D2ランプ(170nm〜400nm)及びWIランプ(370nm〜900nm))を用いて下記条件にて透過率を測定する。この際、光源のランプを低波長領域と高波長領域とに自動で切り替え、それぞれ2回ずつ測定を行った後、2つの測定値の平均値を透過率とする。
<条件>
スリット幅:1nm
スキャンスピード:300nm/min
測定波長:200nm〜850nm
光源の切り替え波長:330nm
<透明導電性基板>
本開示の透明導電性基板は、既述の本開示の酸化物半導体単結晶を含むものであり、本開示の酸化物半導体単結晶からなるものでもよい。なお、「透明」とは、既述した通りである。
本開示の透明導電性基板は、既述の本開示の酸化物半導体単結晶が含まれることにより、(InGaO(ZnO)で表される組成の単結晶をバルク状結晶として含む。これにより、所望とする導電性を得やすく、用途に応じた形状に加工しやすい。
透明導電性基板の厚みは、用途又は目的等により適宜選択することができる。
既述の酸化物半導体単結晶を透明導電性基板としてそのまま用いることも可能であり、この場合の透明導電性基板の厚みは、酸化物半導体単結晶の大きさに由来して数十ミリ〜数ミクロンの広範な範囲で任意に選択することができる。
以下、本発明の一実施形態を実施例により更に具体的に説明する。但し、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
本実施例では、フローティングゾーン法により、石英管内に配置した試料棒(ロッド状試料)を融かして融液とし、石英管内のガス圧を0.9MPaとして結晶育成した場合を示す。
原料となる試料棒には、正規組成比(In:Ga:Zn=1:1:1[モル比])よりもZnの混合比が10mol%多いロッド状試料(In:Ga:Zn=1:1:1.1[モル比])を用いた。
−1.InGaZnO多結晶の作製−
出発物質として、In(純度:99.99%、フルウチ化学株式会社)、Ga(純度:99.99%、フルウチ化学株式会社)、ZnO(純度:99.99%、株式会社高純度化学研究所)の粉末を用いた。
上記の出発物質を混合する前に、出発物質中の水分及び不純物を取り除くため、各出発物質をそれぞれアルミナ(Al)製のるつぼに入れ、電気炉中にて温度800℃で24時間加熱した。具体的には、2時間かけて800℃まで温度を上げ、800℃で24時間保った後、炉冷(ヒーターを切り、炉の中で自然に冷やすこと)し、約1日かけて室温(25℃)まで冷やした。
電気炉から取り出した各試料を電子天秤で秤量した。秤量した各試料の質量は、In:5.173g、Ga:3.492g、ZnO:3.335gであり、合計量を12gとした。
出発物質の混合比は、In:Ga:ZnO=1:1:2.2(mol比)であり、正規組成比(In:Ga:ZnO=1:1:2)よりもZnの配合比率を増やしてある。
続いて、秤量した各出発物質を、メノウ製の乳鉢に入れ、更にエタノール12g(出発物資の合計量に対して100質量%)を加え、乳棒を用いて約30分間湿式混合した。なお、エタノールは、各出発物質とは反応せず、混合中に直ぐに蒸発してしまうため、出発物質と混合したことで支障を来たすものではない。
エタノールが完全に蒸発した後、乳鉢内の出発物質をさらに2時間擂潰した。
擂潰後の各出発物質をアルミナ製のるつぼに入れ、電気炉にて1250℃で48時間焼成し、多結晶を育成した。この際、2時間かけて1250℃まで昇温し、1250℃で48時間保った後、炉冷で約1日かけて室温(25℃)まで冷やした。このようにして、多結晶試料を作製した。
得られた多結晶試料をメノウ製の乳鉢に入れて擂潰し、得られた粉末の一部を用いてX線回折(X-ray Diffraction;XRD)解析を行った。解析の結果、多結晶試料は、InGaZnOの多結晶であることを確認した。
XRD回折による解析は、砕いて粉末状になった試料をスライドガラスの上に載せ、これをXRD回折装置(Rigaku製、RINT2500V)にセットし、以下に示す条件にて測定した。
<測定条件>
測定モード:2θ/θ測定のFixed Time(FT)モード
0.01°ステップごとの計数時間:1秒
測定範囲:4°≦2θ≦90°
光源:CuKα線(λ=1.5418Å)
発散スリットの発散角:1°
散乱スリットの散乱角:1°
受光スリット:0.15mm
−2.ロッド状試料(試料棒)の作製−
フローティングゾーン(FZ)法による単結晶育成のため、上記の多結晶試料をロッド状に成形した。
まず、粉末状の多結晶試料を直径6mmのラテックスチューブに詰め、30分間真空引きを施した。真空引きが施されたチューブは、開口部を閉塞した後に15分間、18MPaの静水圧を加えた。具体的には、開口部が閉塞されたラテックスチューブを、水の入った筒の中に入れ、ピストンの要領で水に圧力をかけて加圧した。この際、多結晶試料は、静水圧によって全方向から均等に圧力がかけられるので、チューブの形状(ロッド状)に押し固められて成形される。
ロッド状に成形された多結晶試料をラテックスチューブから取り出し、アルミナ製の容器に入れて電気炉にて1250℃で1日間焼結した。この際、2時間かけて1250℃まで昇温し、1250℃で24時間保った後、炉冷で約1日かけて室温(25℃)まで冷やした。このようにして、ロッド状の試料棒(ロッド状試料;直径6mm、長さ90mm)を作製した。
そして、ロッド状試料を、図1に示す構造を有するフローティングゾーン装置の石英管内にセットした。
−3.FZ法による単結晶の育成−
フローティングゾーン装置の石英管内に、図1、図2A及び図2Bに示すように、上軸及び下軸の両方に試料棒として上記ロッド試料をセットし、石英管内に乾燥空気フローで0.9MPa(9気圧)のガス圧をかけて単結晶の育成を行った。
なお、単結晶の育成開始にあたり、ロッド試料のセット前に、まず光が試料棒の1点に集光するようにハロゲンランプの調節を行い、ロッド試料を石英管内にセットして軸を回転させながら上下軸の回転軸を一致させ、傾かないように調節した。
単結晶の育成条件は、以下に示す通りである。
なお、ロッド試料の融液部の組成比を均一化し、かつ、光の照射による温度分布を均一化する観点から、図2Bに示すように、上下軸を左右逆方向に回転させた。
<育成条件>
石英管内のガス圧:0.9MPa(9気圧)
ロッド試料の組成:mol比でIn:Ga:ZnO=1:1:2.2
上軸回転数:16.00rpm(rotation per minutes)
下軸回転数:14.00rpm
シャフトスピード:1.90mm/h
ギャップ調整速度:2.00mm/h
ランプ:1500Wのハロゲンランプ2個(左右に1つずつ)
上記のシャフトスピードは、図2Bに示すように、シャフト全体(上下軸全体)を下に下げていく速度のことであり、結晶が育成する速度は下軸を引き下げる速度に等しく、本実施例における結晶の育成速度は1.90mm/hである。また、ギャップ調整速度は、下軸に対する上軸の速度であり、上下軸間のギャップ間距離を縮める速度に等しい。
結晶育成中、試料の融液の状態を適宜確認しながら、ランプの出力を調節した。具体的には、図3に示すように(a)〜(e)の状態を確認して調節した。
(a)は、融液がまだ見られない時期の様子を示し、この時点ではランプ出力を605Wとした。
(b)は、ロッド試料の表面に融液が現れ始めた際の様子を示し、この時点ではランプ出力を743Wとした。
(c)は、上軸ロッドの下端部分が完全に融液となっている様子を示し、この時点ではランプ出力を781Wとした。
(d)は、上軸と下軸を結合して結晶育成を開始した際の様子を示し、この時点ではランプ出力を758Wとした。
(e)は、結晶の育成開始から12時間経過後、結晶が23mm成長した後の様子を示し、この時点ではランプ出力を745Wとした。
上記のように、結晶の育成開始から約3時間の間は、ランプ出力を700W〜750Wにて微調整を続けた後、745Wで一定に保ち、約15時間単結晶の育成を行った。結晶の育成時間は、合計で18時間である。なお、ランプは左右1つずつあるため、合計1490W(=745W×2)である。
以上のようにして単結晶を育成し、最大長さが約35mmの単結晶試料(IGZO系酸化物単結晶)を製造した(単結晶製造工程)。
次に、製造した単結晶試料を、雰囲気中の酸素濃度が100体積%である電気炉の中に入れ、1000℃で72時間アニール処理(熱処理)を施した(熱処理工程)。
−4.測定−
上記で得られた単結晶試料に対して、以下に示す測定を行った。
(1)XRD回折による解析
単結晶試料をメノウ製の乳鉢で細かく粉砕し、粉末状にした。粉末状にした単結晶試料をスライドガラスに載せ、XRD回折装置(Rigaku製、RINT2500V)にて解析を行った。測定は、2θ/θ測定のFixed Time(FT)モードで行った。
<測定条件>
0.01°ステップごとの計数時間:1秒
測定範囲:4°≦2θ≦90°
光源:CuKα線(λ=1.5418Å)
発散スリットの発散角:1°
散乱スリットの散乱角:1°
受光スリット:0.15mm
(2)電気伝導度
大きさ1mm〜3mmの単結晶試料に対し、4端子法を用いて室温(25℃)で伝導度を測定した。c軸方向の電気伝導度を測定する場合は、c軸と垂直な方向に結晶面を持つ板状試料の一方面に電圧と電流の端子を1つずつ互いに平行に配置し、他方面に残りの2つの端子を同様に互いに平行になるように配置し、さらに電流の端子間を結ぶ線と電圧の端子間を結ぶ線とが交差するように端子を配置して、測定を行った。
(3)透過率
厚さ0.195mm、a軸−b軸面方向の大きさが2mm×3mmの単結晶試料を用い、分光光度計U−3010(株式会社日立ハイテクサイエンス製、光源:D2ランプ(170nm〜400nm)及びWIランプ(370nm〜900nm))にて下記条件で光の透過率を測定した。この際、光源のランプを低波長領域と高波長領域とに自動で切り替え、それぞれ2回ずつ測定を行った後、2つの測定値の平均値を透過率とした。
<条件>
スリット幅:1nm
スキャンスピード:300nm/min
測定波長:200nm〜850nm
光源の切り替え波長:330nm
上記測定の結果を以下に説明する。
1)本実施例では、上記の通り、最大長さの辺長が約35mmである大サイズのバルク状単結晶試料(IGZO系酸化物単結晶)が得られた。
2)XRD回折の結果(粉末状にした単結晶試料の結果)を図4に示す。図4に示すように、(InGaOZnO相を含まないInGaZnO単結晶が得られていることが確認された。
なお、図4には、単結晶を粉砕して粉末状にして測定した上記結果との対比のため、単結晶を粉砕せずにバルク単結晶のままXRD測定を行った結果も示している。
バルク結晶のまま測定したXRD回折による解析では、c軸方向と垂直な結晶面が試料台と平行になるように試料を設置し、測定を行った。この場合、図4に示される通り、c軸方向と垂直な結晶面に由来する回折ピーク(00n(n:整数)で表されるピーク)しか現れていないということは、結晶全域にわたって結晶面が揃っていることを意味する。したがって、本実施例では、単結晶が得られていることが裏付けられた。
ここで、単結晶を粉砕せずにバルク単結晶のまま行ったXRD測定の詳細は、以下の通りである。
一辺の長さが2mm程の薄い板状の単結晶片をスライドガラスに載せ、上記と同じXRD回折装置にて解析を行った。測定は、2θ/θ測定の連続測定モードで行った。
<測定条件>
スキャンスピード:4°/分
測定範囲:6°≦2θ≦90°
光源:CuKα線(λ=1.5418Å)
発散スリットの発散角:0.5°
受光スリットの散乱角:0.5°
受光スリット:0.15 mm
3)単結晶試料の電気伝導度は、a軸−b軸面方向の電気伝導度σabが300S/cm〜600S/cmであり、c軸方向の電気伝導度σが0.1S/cm〜1.0S/cmであり、a軸−b軸面に垂直なc軸方向にも良好な電気伝導性が認められた。
また、単結晶試料にアニール処理を施した後の電気伝導度は、a軸−b軸面方向の電気伝導度σabが50S/cm〜200S/cmであり、c軸方向の電気伝導度σが0.1S/cmであり、アニール処理後も良好な電気伝導性を示した。
4)単結晶試料をアニール処理したところ、青味がかった透明な単結晶から無色透明な単結晶に変化した。これより、実施例1で製造された単結晶試料は、結晶中に酸素欠損があることが認められた。
5)単結晶試料は、図5Aに示すように、青味着色のある透明性であり、厚さ0.195mmの試料では透過率は50%であり、高い透明性を有する単結晶であることが確認された。
また、アニール処理を施した単結晶試料では、図5Bに示すように、青味がなくなって無色の透明性となり、透過率が85%である高い透明性を示した。
図6にアニール前後のそれぞれの透過率を示す。図6に顕著に現れるように、400nm〜850nm近傍の全域に渡って透過率の向上が認められた。特に、620nm〜780nm付近の吸収がアニール処理によって無くなり、可視光領域の全域で高い透過率を示した。
(実施例2)
実施例1において、石英管内のガス圧を0.9MPaから0.8MPaに変更したこと以外は、実施例1と同様にして単結晶を育成し、最大長さが約30mmの単結晶試料を製造した。
XRD回折による解析の結果を図7に示す。図7に示すように、(InGaOZnO相の結晶が僅かに認められたものの、InGaZnO単結晶が得られていることが確認された。
(比較例1)
実施例1において、出発物質の混合比(mol比)を、In:Ga:ZnO=1:1:2.2からIn:Ga:ZnO=1:1:2に変更し、かつ、石英管内のガス圧を0.9MPaから大気圧に変更したこと以外は、実施例1と同様にして結晶の育成を試み、IGZO系酸化物結晶を製造した。
XRD回折による解析の結果を図8に示す。図8に示すように、出発物質中のZn含有比を増やさず、かつ、大気圧で育成した結晶では、Znが不足し、(InGaOZnO相の結晶が多く認められた。
また、得られた酸化物結晶は、最大長さが約30mmの結晶物であり、実施例1のような単相からなる大きなバルク状の単結晶を得るまでには至らなかった。
(比較例2)
実施例1において、出発物質の混合比(mol比)を、In:Ga:ZnO=1:1:2.2からIn:Ga:ZnO=1:1:2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして単結晶の育成を試み、IGZO系酸化物結晶を製造した。
XRD回折による解析の結果を図9に示す。図9に示すように、出発物質中のZn含有比を増やさずに育成した結晶は、Znが不足し、(InGaOZnO相の結晶が多く認められた。
また、得られた酸化物結晶は、最大長さが約30mmの結晶物であり、実施例1のような単相からなる大きなバルク状の単結晶を得るまでには至らなかった。
12 ハロゲンランプ
14 回転楕円体ミラー
16 石英管
18 種結晶
20 ロッド状試料棒

Claims (9)

  1. インジウム(In)、ガリウム(Ga)、及び亜鉛(Zn)を下記式1で表されるモル比で含む試料棒を、フローティングゾーン法により1気圧を越える圧力下、酸素含有雰囲気中で加熱し、加熱により生成した融液を冷却することにより、InGaZnO 組成を有する酸化物半導体の単結晶を製造する工程を含む、酸化物半導体単結晶の製造方法。
    In:Ga:Zn=1:1:a ・・・式
    〔式1中、aは、組成中に占めるZnのモル比を表し、a>1を満たす。〕
  2. 前記圧力が、5気圧以上である請求項1に記載の酸化物半導体単結晶の製造方法。
  3. 前記aが、1.05以上である請求項1又は請求項2に記載の酸化物半導体単結晶の製造方法。
  4. 前記単結晶を製造する工程の後、更に、製造された前記単結晶を酸素含有雰囲気下、250℃以上の温度域で熱処理する工程を含む請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の酸化物半導体単結晶の製造方法。
  5. 前記熱処理する工程は、酸素含有雰囲気中の酸素濃度を、体積基準で21%〜100%の範囲で調節しながら熱処理する請求項4に記載の酸化物半導体単結晶の製造方法。
  6. 下記式2で表される組成を有し、かつ、a軸−b軸面方向の電気伝導度σabが50S/cm以上であり、c軸方向の電気伝導度σが0.1S/cm〜1.0S/cmである、酸化物半導体単結晶。
    (InGaO(ZnO) ・・・式2
    〔式2中、m及びnは、整数を表し、m≧1及びn≧1を満たす。〕
  7. 前記式2中のm及びnが、m=n=1を満たす請求項6に記載の酸化物半導体単結晶。
  8. 請求項6又は請求項7に記載の酸化物半導体単結晶を含む透明導電性材料。
  9. 請求項6又は請求項7に記載の酸化物半導体単結晶を含む透明導電性基板。
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