以下に、本発明の実施の形態にかかる無線装置、無線装置集約局、マルチホップ無線通信システムおよび無線パラメータ決定方法を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態にかかるマルチホップ無線通信システムの構成例を示す図である。なお、以下の説明においては、マルチホップ無線通信システム30が、920MHz帯を用いたLPWA等の特定小電力無線通信方式を用いることを前提に説明するが、本発明のマルチホップ無線通信システムで用いられる無線周波数および無線通信方式はこれに限定されない。
図1に示すように、実施の形態のマルチホップ無線通信システム30は、無線装置集約局11と、無線装置10a,10b,10cとを備える。無線装置10a,10b,10cは、それぞれ制御対象装置12a,12b,12cに接続される。無線装置10a,10b,10cは、それぞれ接続される制御対象装置12a,12b,12cから情報を取得し、取得した情報を無線装置集約局11へ向けて送信する。詳細には、無線装置10aは、制御対象装置12aから取得した情報を、無線装置10cとの間の無線回線20aを介して無線装置10cへ送信する。無線装置10bは、制御対象装置12bから取得した情報を、無線装置10cとの間の無線回線20bを介して無線装置10cへ送信する。無線装置10cは、制御対象装置12cから取得した情報を、無線装置集約局11との間の無線回線20cを介して、無線装置集約局11へ送信する。また、無線装置10cは、無線装置10a,10bから受信した情報を、無線回線20cを介して、無線装置集約局11へ送信する。以下、各無線装置10a,10b,10cのそれぞれから無線装置集約局11へ向かう通信を上り通信とも呼ぶ。
無線装置10a,10b,10cの構成は同一である。以下、無線装置10a,10b,10cのそれぞれを、区別せずに示すときには無線装置10と記載する。同様に、制御対象装置12a,12b,12cのそれぞれを、区別せずに示すときには制御対象装置12と記載し、無線回線20a,20b,20cのそれぞれを区別せずに示すときは無線回線20と記載する。
図1では、無線装置10および制御対象装置12をそれぞれ3つ図示しているが、無線装置10および制御対象装置12の数は図1に示した例に限定されない。なお、図1に示した例では、無線装置10cは、無線装置10cが送信元となる通信を行うとともに、他の無線装置10a,10bの通信を中継する機能も有する。一般には、マルチホップ無線通信システム30は、多数の無線装置10を備えており、無線装置10a,10bも、無線装置10cと同様の機能を有し、図示しない無線装置10から受信した情報を無線装置集約局11へ向けて転送する。また、図1では、無線装置集約局11を1台図示しているが、無線装置集約局11の数も図1に示した例に限定されない。
無線装置集約局11は、マルチホップ無線通信システム30において無線装置10を集約する。無線装置集約局11は、広域通信網50に接続されており、広域通信網50を介して情報センター40と通信を行うことができる。無線装置集約局11は、無線装置10a,10b,10cのそれぞれ送信された情報を、広域通信網50を介して情報センター40へ送信する。情報センター40は、無線装置集約局11から受信した情報を蓄積する。情報センター40は、制御対象装置12a,12b,12cに対応する無線装置10a,10b,10cに制御信号を送信することで、制御対象装置12a,12b,12cに対する設定、制御などを行うことができる。情報センター40から送信された制御信号は、広域通信網50を介して無線装置集約局11に送信され、上り通信と逆の経路で、対応する無線装置10a,10b,10cへ転送される。なお、ここでは、上り通信と下り通信とで経路が同じ例を説明するが、上り通信と下り通信とで経路が異なる場合があってもよい。下り通信の経路を示す情報は、例えば、無線装置集約局11から無線装置10へ送信されるメッセージのヘッダなどに格納される。無線装置10a,10b,10cは、情報センター40から制御信号を受信すると、制御信号に基づいて、それぞれ接続される制御対象装置12a,12b,12cを制御する。
無線装置集約局11は、複数の無線装置10を終端するコンセントレータである。無線装置集約局11は、上位ネットワークである広域通信網50との間で通信を行うための通信手段も有し、マルチホップ無線通信システム30を構成する複数の無線装置10から受信した情報を、広域通信網50に転送する。無線装置集約局11と広域通信網50との間で用いられる通信手段としては、携帯電話で利用されるLTE(Long Term Evolution)をはじめとした移動体通信で使用される通信手段、光回線などの有線通信手段が例示される。本実施の形態では、無線装置集約局11と広域通信網50との間で用いられる通信プロトコルおよび通信手段は、通信プロトコルとしてIP(Internet Protocol)を用いる有線ネットワークを例に挙げて説明するが、無線装置集約局11と広域通信網50との間で用いられる通信プロトコルおよび通信手段はこれに限定されない。
情報センター40は、マルチホップ無線通信システム30から受信した情報、すなわち制御対象装置12a,12b,12cから送信された情報を収集して蓄積する装置である。収集の対象となる情報は、例えば、ガス、電力などの使用量、設備などの監視情報であるが、収集の対象となる情報はこれらに限定されない。上述したように、情報センター40は、マルチホップ無線通信システム30を介して制御対象装置12a,12b,12cの設定、制御などを行うことができる。情報センター40は、マルチホップ無線通信システム30を介して制御対象装置12a,12b,12cへ各制御対象装置12a,12b,12cの状態の取得を要求する制御信号を送ることで、制御対象装置12a,12b,12cの状態を収集することもできる。また、情報センター40は、各制御対象装置12a,12b,12cから送信された情報、制御対象装置12a,12b,12cの状態などを表示することによりオペレータに提示することもできる。なお、本実施の形態における情報センター40が、1つのマルチホップ無線通信システム30から情報を収集する例を説明するが、情報センター40が複数のマルチホップ無線通信システム30から情報を収集してもよい。
図2は、実施の形態にかかる無線装置10の構成例を示すブロック図である。無線装置10は、マルチホップ無線通信システム30を構成する。図2に示すように、無線装置10は、通信部100、アンテナ(以下、ANT(Antenna)と呼ぶ)部101、無線リソース管理部102、中継ノード選択部103、メモリ104、電源部105および外部I/F(Interface)部106を備える。ANT部101は、無線回線20を介して隣接する装置である無線装置10または無線装置集約局11から電波として無線信号を受信し、受信した無線信号を通信部100へ出力する。また、ANT部101は、通信部100から入力される無線信号を、無線回線20を介して隣接する装置である無線装置10または無線装置集約局11へ電波として送信する。
通信部100は、マルチホップ無線通信システム30内で無線通信を行う。具体的には、通信部100は、無線信号の送受信処理を行う無線I/Fの機能と、無線回線20を介して通信を行う隣接する装置である無線装置10または無線装置集約局11と無線接続のための無線接続処理を行うモデム機能とを有する。無線接続処理は、後述するスペクトラム拡散などの変調処理、スペクトラム拡散の逆拡散処理などの復調処理を含む。通信部100は、ANT部101から入力される無線信号に受信処理および無線接続処理を施し、処理後の信号を、信号の内容に応じて外部I/F部106、中継ノード選択部103および無線リソース管理部102へ出力する。また、通信部100は、制御対象装置12から、収集の対象となる情報および情報センター40からの制御信号に基づく応答を、外部I/F部106から受け取ると、受け取った情報を用いて無線接続処理および送信処理を行い、処理後の信号をANT部101へ出力する。なお、外部I/F部106が制御対象装置12から受け取った情報は、メモリ104に一時的に格納されて通信部100に渡されても良い。また、通信部100は、中継ノード選択部103から経路探索のためのメッセージを受け取ると、受け取ったメッセージを用いて無線接続処理および送信処理を行い、処理後の信号をANT部101へ出力する。
無線リソース管理部102は、通信部100を制御するための無線パラメータとして、無線通信に用いる送信電力、スペクトラム拡散用パラメータなどを生成して、通信部100へ設定することにより、通信部100を制御する。詳細には、無線リソース管理部102は、経路制御で用いる情報とマルチホップ無線通信システム30を構成する複数の無線装置のそれぞれを識別する装置識別情報とに基づいて、通信部100で用いられる無線パラメータを決定する。装置識別情報はユーザ識別子でもあり、装置識別情報の一例は後述するようにMAC(Media Access Control)アドレスである。スペクトラム拡散用パラメータは、スペクトラム拡散処理で用いる拡散コードの生成のために用いられる情報であり、無線パラメータの一例である。スペクトラム拡散処理で用いる拡散コード自体もスペクトラム拡散用パラメータの一例である。無線リソース管理部102は、後述するように、メモリ104に格納される無線装置10の情報、および中継ノード選択部103が生成した通信経路の情報を用いて、通信部100を制御するためのパラメータを生成する。
中継ノード選択部103は、マルチホップ無線通信システム30の経路制御を行う。具体的には、中継ノード選択部103は、RPL(IPv6(Internet Protocol Version 6) Routing Protocol for Low Power and Lossy Networks)をはじめとした通信経路を探索するプロトコルを用いたフラッディング処理を行うことで、通信経路候補の探索、ネットワークトポロジの構造を示す構造情報の生成などを実施する。本実施の形態では、経路探索プロトコルとしてRPLを用い、ネットワークトポロジの構造情報として、無線装置集約局11をコンセントレータとしてRPLにより決定される階層情報を用いる例を説明するが、経路探索プロトコルおよびネットワークトポロジの構造情報はこれに制限されない。
メモリ104は、無線パラメータなどの、無線装置10が動作するための設定情報を記憶する。メモリ104に記憶されている設定情報は、無線装置10の起動時に、対応する各機能部によって読み出される。また、メモリ104は、無線リソース管理部102および中継ノード選択部103が装置起動後に生成する各パラメータ、制御対象装置12と通信を行うための情報などを、一時的に保存するためにも使用される。例えば、無線リソース管理部102が使用する後述する無線装置管理情報、中継ノード選択部103が用いるユーザ識別子リストの一例である後述するMACアドレステーブル、などがメモリ104に格納される。
電源部105は、無線装置10内の各部に電源を供給する。電源部105は、系統電源に接続されていてもよいし、バッテリー、発電装置であってもよい。外部I/F部106は、制御対象装置12と通信を行う通信インタフェースである。無線装置10と制御対象装置12との間の接続形態は、有線接続であってもよいし無線接続であってもよく、接続形態に制約はない。外部I/F部106は、無線装置10と制御対象装置12との間の接続形態に応じた通信処理を実施することにより、制御対象装置12との間で情報の送受信を行う。
図3は、実施の形態にかかる無線装置集約局11の構成例を示すブロック図である。無線装置集約局11は、図3に示すように、通信部200、ANT部201、無線リソース管理部202、中継ノード選択部203、メモリ204、有線I/F部205および電源部206を備える。
ANT部201は、無線回線20を介して隣接する無線装置10から電波として無線信号を受信し、受信した無線信号を通信部200へ出力する。また、ANT部201は、通信部200から入力される無線信号を、無線回線20を介して隣接する無線装置10へ電波として送信する。
通信部200は、無線装置10の通信部100と同様に、無線信号の送受信処理を行う無線I/Fの機能と、無線回線20を介して通信を行う隣接する無線装置10と無線接続のための無線接続処理を行うモデム機能とを有する。通信部200は、ANT部201から入力される無線信号に受信処理および無線接続処理を施し、処理後の信号を、信号の内容に応じて無線リソース管理部202、中継ノード選択部203、有線I/F部205へ出力する。また、通信部200は、有線I/F部205から、情報センター40から送信された制御信号などを受け取ると、制御信号などを用いて無線接続処理および送信処理を行い、処理後の信号をANT部201へ出力する。また、通信部200は、中継ノード選択部203から経路探索のためのメッセージを受け取ると、受け取ったメッセージを用いて無線接続処理および送信処理を行い、処理後の信号をANT部201へ出力する。
無線リソース管理部202は、通信部200を制御するための無線パラメータとして、無線通信に用いる送信電力、スペクトラム拡散用パラメータなどを生成して、通信部200へ設定することにより、通信部200を制御する。無線リソース管理部202は、後述するように、メモリ204に格納される無線装置10の情報、および中継ノード選択部203が生成した通信経路の情報を用いて、通信部200を制御するためのパラメータを生成する。
中継ノード選択部203は、RPLにおけるボーダールータに必要な機能を有し、フラッディング処理の開始および更新を行う。また、情報センター40から制御対象装置12へ制御信号などを送信する場合は、当該制御対象装置12に対応する無線装置10までの通信経路の選択を行う。なお、本実施の形態のマルチホップ無線通信システム30における経路制御に関する動作については、RPLをはじめとした一般的な動作を適用することができるため、詳細な説明は省略する。
メモリ204は、無線パラメータなどの、無線装置集約局11が動作するための設定情報を記憶する。メモリ204に記憶されている設定情報は、無線装置集約局11の起動時に、対応する各機能部によって読み出される。また、メモリ204は、無線リソース管理部202および中継ノード選択部203が装置起動後に生成する各パラメータ、広域通信網50を介した通信を行うための情報などを、一時的に保存するためにも使用される。例えば、無線リソース管理部202が使用する後述する無線装置管理情報、中継ノード選択部203が用いるユーザ識別子リストの一例である後述するMACアドレステーブル、などがメモリ204に格納される。
有線I/F部205は、広域通信網50と接続するための通信インタフェースである。本実施の形態では、無線装置集約局11と広域通信網50とが、有線接続される例を説明するが、無線装置集約局11と広域通信網50とが無線接続されていてもよい。電源部206は、無線装置集約局11内の各部に電源を供給する。
なお、本実施の形態では、広域通信網50と通信を行う有線I/F部205を無線装置集約局11が内容する構成例を示すが、無線装置集約局11の外部に、広域通信網50と接続するための通信モデムなどを接続する構成としても良い。
図4は、実施の形態にかかる情報センター40の構成例を示すブロック図である。情報センター40は、図4に示すように、有線I/F部300、情報管理部301、表示部302、入力部303、制御部304、記憶装置305および電源部306を備える。
有線I/F部300は、広域通信網50と接続するための通信インタフェースである。有線I/F部300は、広域通信網50を介してマルチホップ無線通信システム30内の無線装置10から送信された情報、すなわち制御対象装置12から送信された収集対象の情報を受信すると、該情報を記憶装置305へ格納する。また、有線I/F部300は、マルチホップ無線通信システム30へ送信する制御信号などを情報管理部301、制御部304から受け取ると、受け取った制御信号などを、広域通信網50を介してマルチホップ無線通信システム30へ送信する。
情報管理部301は、制御対象装置12より収集する情報の管理を行い、当該情報を表示部302に表示する。表示部302は、ディスプレイ、液晶モニタなどにより実現される。入力部303は、運用者が、制御対象装置12の設定、制御などを行うために、運用者からの入力を受け付ける入力インタフェースを提供する。入力部303は、キーボード、マウスなどにより実現される。表示部302と入力部303が一体化され、タッチパネルとして実現されてもよい。制御部304は、入力部303によって受け付けられた入力情報に基づく制御対象装置12の制御、情報センター40の動作の制御などを行う。入力部303によって受け付けられた入力情報は、制御部304により制御対象装置12に対する設定、制御のためのコマンドに変換される。このコマンドは、有線I/F部300へ入力される。有線I/F部300は、入力されたコマンドを、広域通信網50を経由して制御対象装置12に対応する無線装置10へ向けて制御信号として送信する。
記憶装置305は、情報センター40の運用に必要な内部情報、制御対象装置12から収集された情報、および制御対象装置12の設定、制御に必要な情報などを記憶する。電源部306は、情報センター40の各部に電源を供給する。
情報センター40の情報管理部301、制御部304は、処理回路により実現される。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、CPU(Central Processing Unit)などのプロセッサを備える制御回路であってもよい。情報管理部301、制御部304がCPUを備える制御回路で実現される場合、この制御回路は図5に示す構成の制御回路400である。図5は、実施の形態の制御回路400の構成例を示す図である。情報管理部301、制御部304が図5に示す制御回路400により実現される場合、プロセッサ401がメモリ402に記憶された、情報管理部301、制御部304の処理に対応するプログラムを読み出して実行することにより情報管理部301、制御部304の機能が実現される。また、メモリ402は、プロセッサ401が実施する各処理における一時メモリとしても使用される。
情報センター40の記憶装置305は、メモリである。記憶装置305は、図5に示した制御回路400のメモリ402と一体であってもよいし、メモリ402とは別に設けられていてもよい。
無線装置10の無線リソース管理部102、中継ノード選択部103、無線装置集約局11の無線リソース管理部202、中継ノード選択部203も、処理回路に実現される。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいし、図5に示した制御回路400であってもよい。無線装置10の無線リソース管理部102、中継ノード選択部103、無線装置集約局11の無線リソース管理部202、中継ノード選択部203が図5に示す制御回路400により実現される場合、プロセッサ401がメモリ402に記憶された、各部の処理に対応するプログラムを読み出して実行することにより無線装置10の無線リソース管理部102、中継ノード選択部103、無線装置集約局11の無線リソース管理部202、中継ノード選択部203の機能が実現される。
次に、本実施の形態の動作について説明する。無線装置10および無線装置集約局11が起動した後に、RPLのフラッディング処理による通信経路構築を行い、スペクトラム拡散通信用パラメータを生成する手順、すなわち本実施の形態の無線パラメータ決定方法について説明する。図6は、無線装置10、無線装置集約局11によるスペクトラム拡散通信用パラメータ生成手順の一例を示すシーケンス図である。まず、無線装置集約局11、無線装置10a,10b,10cが起動する(ステップS100)。
無線装置集約局11が起動すると、無線装置集約局11の各部は、メモリ204より無線装置集約局11の動作に必要となる設定情報を読み出す。例えば、無線リソース管理部202は、メモリ204から、無線通信に用いる周波数帯域、チャネル数などの無線パラメータを読み出して、通信部200に設定する。これにより、通信部200はANT部201を用いて無線信号の送信を開始できるようになる。
また、無線装置10a,10b,10cも同様に、起動すると、無線装置10a,10b,10cの各部が、メモリ204より10a,10b,10cの動作に必要となる設定情報をそれぞれ読み出す。例えば、無線リソース管理部102は、メモリ104から、無線通信に用いる周波数帯域、チャネル数などの無線パラメータを読み出して、通信部100に設定する。これにより、通信部100はANT部101を用いて無線信号の送信を開始できるようになる。
無線装置集約局11の中継ノード選択部203は、通信経路確立を開始するため、RPLの制御メッセージであるDODAG(Destination Oriented Directed Acycle Graph) Information Object(以下、DIOと呼ぶ)メッセージをブロードキャストにより送信する(ステップS101)。DIOメッセージには、送信先のアドレスとしてブロードキャストアドレスが格納され、送信元のアドレスとして無線装置集約局11のアドレスが格納される。また、DIOメッセージには、階層を示す階層情報(ランク)も含まれる。階層情報は、ルートノードとなる無線装置集約局11では0である。無線装置集約局11は、DIOメッセージに階層情報として0を格納して送信する。
無線装置集約局11から送信されたDIOメッセージを受信した無線装置10cは、ユーザ識別子リストの一例であるMACアドレステーブルを、受信したDIOメッセージに基づいて更新する(ステップS102)。具体的には、無線装置10cの中継ノード選択部103が、ANT部101および通信部100を介してDIOメッセージを受信し、メモリ104のMACアドレステーブルに無線装置集約局11のユーザ識別子であるMACアドレスを登録することによりMACアドレステーブルを更新する。ユーザ識別子リストの一例であるMACアドレステーブルは、RPLの経路選択などに用いられる。なお、本実施の形態では、RPLを用いた手順に基づき説明するため、ユーザ識別子としてMACアドレスを用いるが、ユーザ識別子はMACアドレスに限定されず、各装置を一意に特定可能な識別情報であればよい。
図7は、無線装置10cが保持するMACアドレステーブルの一例を示す図である。MACアドレステーブルには、ユーザ識別子として、通信を行った相手先のMACアドレスと階層情報と、経路を識別する経路識別情報である経路ID(IDentifier)とが登録される。経路IDとしては、RPLにおけるインスタンスIDとなるRPLInstanceIDを用いることができる。なお、経路IDは、マルチホップ無線通信システム30内で共有される識別子、すなわち各無線装置10、無線装置集約局11で共有される識別子であればよく、RPLInstanceIDに限定されない。階層情報は、経路内の階層を示す情報である。図7に示す対象装置の欄は、どの装置に対応する情報であるかを識別するために便宜上設けているが、実際のMACアドレステーブルには対象装置の欄はなくてもよい。
図7では、3つの装置に対応する情報すなわち3つのレコードが登録されている。図6に示したステップS102が行われた後には、3つのレコードのうちの1番目のレコードのみがMACアドレステーブルに登録されている。
図6の説明に戻る。ステップS102の後、無線装置10cは、階層情報すなわちランクを決定する(ステップS103)。具体的には、無線装置10cの中継ノード選択部103は、受信したDIOメッセージ内の階層情報に1を加えた値を、無線装置10cの階層情報と決定する。また、中継ノード選択部103は、受信したDIOメッセージの送信元である上位の階層情報を持つ無線装置集約局11のユーザ識別子および階層情報を、無線リソース管理部102へ渡し、無線リソース管理部102は、メモリ104の無線装置管理情報に無線装置集約局11のユーザ識別子および階層情報を登録する。
図8は、無線装置10cが保持する無線装置管理情報の一例を示す図である。この時、無線リソース管理部102は、ユーザ識別子としてMACアドレスをそのまま登録するだけではなく、ユーザ識別子の秘匿性の観点からMACアドレスに基づいて新たに生成した拡張ユーザ識別子を使用してもよい。図8では、無線装置管理情報は、ユーザ識別子と拡張ユーザ識別子と階層情報と補正値と経路IDとCode Indexとを含む。なお、図8では、図7と同様に対象装置の欄が設けられているが、対象装置の欄は設けなくてもよい。図8に示すように、無線装置管理情報には、自装置の情報も格納される。また、送信先がブロードキャストアドレスである場合の階層情報は、例えば0といったようにマルチホップ無線通信システム30内で共通の値が設定される。なお、図8に示した例では、図1に示した構成を前提としているため、無線装置10cが送信する信号の宛先が最終的な信号の宛先と異なるものが含まれていないが、一般には、最終的な信号の宛先と無線装置10が信号を送信する送信先の無線装置10とは同一とは限らない。図8のユーザ識別子は直接的な送信先を示しているが、これとは別に信号の最終的な宛先を示す情報も管理されている。そして、経路制御プロトコルにより、信号の最終的な宛先に応じた直接的に送信先となる装置が定められている。ここでは、信号の最終的な宛先に応じた直接的に送信先の選択方法については説明を省略する。また、ユーザ識別子がブロードキャストアドレスである場合のレコードもあらかじめ格納される。以下の説明では、送信先とは直接的な送信先であるとして説明する。図8に示した項目のうち、ユーザ識別子、階層情報および経路IDは、上述したようにDIOメッセージに格納された情報であり、MACアドレステーブルに登録される情報と同様である。補正値およびCode Indexについては後述する。
本実施の形態では、拡張ユーザ識別子としてEUI(Extended Unique ID)−64を用いる例を説明するが、拡張ユーザ識別子はマルチホップ無線通信システム30内で一意に識別可能なものであればよく、この例に限定されない。図9は、拡張ユーザ識別子としてEUI−64を用いた場合の拡張ユーザ識別子の生成方法を示す図である。図9では、一例として、無線装置集約局11のユーザ識別子であるMACアドレス「00:11:22:33:44:55」を用いて拡張ユーザ識別子を生成する例を示している。図9に示すように、「22」と「33」の間に12ビットが挿入されている。なお、ビットが挿入される位置、挿入するビットの値はこの例に限定されない。
補正値は、後述するスペクトラム拡散用パラメータの重複の検出において重複が検出された場合に用いられる。補正値の初期値は0に設定される。補正値の更新については後述する。Code Indexは、スペクトラム拡散用コードを識別するためのインデックスである。後述するように、Code Indexは経路IDに基づいて決定される。図7に示したユーザ識別子リストであるMACアドレステーブルと、図8に示した無線装置管理情報とでは、一部の情報が重複している。前者は中継ノード選択部102がRPLによる通信経路の決定のために使用され、後者は無線リソース管理部102のスペクトラム拡散用パラメータなどの生成に使用されるため、ここでは2つに分けて管理する例を説明した。しかしながら、ユーザ識別子リストと無線装置管理情報とを統合して1つの管理情報としてメモリ104に格納し、重複する情報を省略するようにしてもよい。
図6の説明に戻る。ステップS103の後、無線装置10cは、スペクトラム拡散用パラメータであるスペクトラム拡散用の拡散コードを生成する(ステップS104)。具体的には、無線リソース管理部102は、無線装置管理情報を参照して、スペクトラム拡散用の拡散コードを生成する。
図10は、拡散コードを生成する拡散コード生成部の構成例を示す図である。拡散コード生成部700は、無線リソース管理部102内に設けられる。また、拡散コード生成部700は、無線装置集約局11の無線リソース管理部202内に設けられる。ここでは、無線リソース管理部102および無線リソース管理部202が、ユーザ識別子および経路制御で用いる情報を用いてハッシュ関数により計算されたハッシュ値を用いて前記無線パラメータの一例である拡散コードを決定する例を説明する。なお、拡散コード生成部700は、無線装置10内に無線リソース管理部102とは別に設けられてもよい。同様に、拡散コード生成部700は、無線装置集約局11内に無線リソース管理部202とは別に設けられてもよい。
図10に示すように拡散コード生成部700は、ハッシュ関数計算部701および選択部702を備える。ハッシュ関数計算部701は、ユーザ識別子、階層情報および補正値を用いてハッシュ関数によりハッシュ値を計算し、ハッシュ値をCode Indexとして選択部702へ出力する。選択部702は、拡散コードが格納された拡散コード表を複数保持している。複数の拡散コード表のそれぞれは、複数のCode Indexと各Code Indexに対応する拡散コードとを含む。図11は、拡散コード表の一例を示す図である。図11は、選択部702が保持する複数の拡散コード表のうちの1つの拡散コード表の一例を示している。図11のCode Indexと記載された列に記載されている値がCode Indexであり、各Code Indexに対応する拡散コードが横方向に並んで示されている。図11に示すように、拡散コード表は、Code Indexごとの拡散コードを含んでいる。なお、ここでは、拡散コードの一例としてGold符号を使用するが、拡散コードはこれに限定されない。複数の拡散コード表に含まれる拡散コードが、互いに異なるが、一部が重複していてもよい。複数の拡散コード表には、例えば、互いに拡散係数の異なる拡散コードが格納される。複数の拡散コード表には、それぞれインデックスで識別されるが、以下では、インデックス0に対応する拡散コード表を拡散コード表#0、インデックス1に対応する拡散コード表を拡散コード表#1といったように、インデックスiに対応する拡散コード表を拡散コード表#iと記載する。iは、0からnまでの整数であり、nは選択部702が保持する拡散コード表の数に1を加えた整数である。
選択部702は、経路IDをインデックスとして、複数の拡散コード表のなかから対応する拡散コード表を選択する。例えば、経路IDが1の場合には拡散コード表#1が選択される。図12は、経路IDと拡散コード表の対応の一例を示す図である。なお、経路IDとインデックスは一致していなくてもよく、拡散コード表のインデックスと経路IDが1対1に対応するように対応が定められていればよい。
選択部702は、選択した拡散コード表に基づいて、ハッシュ関数計算部701から入力されたCode Indexに対応する拡散コードを出力する。以上の処理により、拡散コード生成部700は、ユーザ識別子、階層情報、補正値および経路IDに基づいて、拡散コードを生成することができる。なお、ハッシュ関数計算部701にユーザ識別子のかわりに、拡張ユーザ識別子を入力してもよい。無線リソース管理部102は、生成された拡散コードを通信部100に設定するとともに、無線装置管理情報にハッシュ関数計算部701から入力されたCode Indexを登録する。これにより、無線装置集約局11に対応するスペクトラム拡散用パラメータである経路ID、ユーザ識別子、階層情報および補正値が確定する。すなわち、無線装置10cは、無線装置集約局11との通信時に使用するスペクトラム拡散用パラメータの生成を完了する。以降、無線装置10cは、無線装置集約局11との間の通信では、スペクトラム拡散用パラメータに基づいて拡散コードを生成し、生成した拡散コードを使用してスペクトラム拡散処理を行うことができる。なお、無線リソース管理部102は、Code Indexを無線装置管理情報に登録するたびに、スペクトラム拡散用パラメータの有無を確認する。スペクトラム拡散用パラメータが重複した時の動作は後述する。図6では、スペクトラム拡散用パラメータの重複の有無の確認において、重複が検出されなかった例を示している。
図6の説明に戻る。ステップS104の後、無線装置10cは、DIOメッセージの応答メッセージとなるDestination Advertisement Object(以下、DAOと呼ぶ)メッセージをユニキャストにより無線装置集約局11へ送信する(ステップS105)。なお、ブロードキャストで送信されたメッセージの応答では、ユニキャストであっても拡散コードの生成時には、無線装置管理情報内のユーザ識別子がブロードキャストに対応する情報を用いる。また、初期状態では、各無線装置10は、ブロードキャストに対応するスペクトラム拡散用パラメータを用いて生成された拡散コードを用いて受信処理を行っているとする。または、DIOメッセージ、DAOメッセージはスペクトラム拡散処理が施されずに送信されていてもよい。具体的には、中継ノード選択部103が、通信部100およびANT部101を介して、DAOメッセージを送信する。DAOメッセージには、送信先アドレスとして無線装置集約局11のアドレスが格納され、送信元アドレスとして無線装置10cのアドレスが格納される。DAOメッセージには、無線装置10cの階層情報も格納される。
無線装置集約局11は、受信したDAOメッセージに基づいてMACアドレステーブルに無線装置10cの情報を追加することによりMACアドレステーブルを更新し(ステップS106)、拡散コードを生成する(ステップS107)。このとき、ハッシュ関数計算部701に入力する情報は、DAOメッセージの送信元に対応する情報、すなわち無線装置10cに対応するユーザ識別子、階層情報、補正値および経路IDである。DAOメッセージには、送信元である無線装置10cの階層情報、補正値も格納されているとする。以降、無線装置集約局11は、無線装置10cへ信号を送信する際には、無線装置10cに対応する拡散コードを用いてスペクトル拡散処理を行う。
また、図8で説明したように、無線装置管理情報には、自装置の情報も格納されている。したがって、無線装置集約局11の無線装置管理情報に無線装置集約局11に関する情報も格納されている。無線装置集約局11は、無線装置集約局11のユーザ識別子、階層情報および補正値に基づいて、無線装置10cと同様にCode Indexを生成し、このCode Indexを無線装置管理情報に登録している。無線装置集約局11は、無線装置10から送信された信号の受信時には、無線装置集約局11に対応するスペクトラム拡散用パラメータを用いて生成される拡散コードを用いてスペクトル拡散の逆拡散処理を実施する。これにより、無線装置集約局11は、無線装置10cから信号を受信したときに、無線装置10cが無線装置集約局11への送信時に用いた拡散コードと同一の拡散コードを用いてスペクトル拡散の逆拡散処理を行うことができる。このように、本実施の形態では、無線装置集約局11および無線装置10は、送信時には、無線装置管理情報に格納されている送信先の装置に対応する情報を用いて拡散コードを生成し、受信時には、無線装置管理情報に格納されている自装置の情報を用いて拡散コードを生成する。
ステップS105の後、無線装置10cは、下位に接続される無線装置にDIOメッセージを転送するため、DIOメッセージをブロードキャストで送信する(ステップS108)。このDIOメッセージには、送信先のアドレスとしてブロードキャストアドレスが格納され、送信元のアドレスとして無線装置10cのアドレスが格納される。また、DIOメッセージには、無線装置10cの階層情報が格納される。
無線装置10aは、無線装置10cからDIOメッセージを受信すると、上述したステップS102〜ステップS105と同様に、MACアドレステーブルの更新、階層情報の決定および拡散コードの生成およびDAOメッセージの送信を行う(ステップS116〜S119)。同様に、無線装置10bは、無線装置10cからDIOメッセージを受信すると、上述したステップS102〜ステップS105と同様に、MACアドレステーブルの更新、階層情報の決定および拡散コードの生成およびDAOメッセージの送信を行う(ステップS109〜S112)。
無線装置10cは、DIOメッセージの送信後、無線装置10bからDAOメッセージを受信すると、ステップS106、S107と同様に、MACアドレステーブルの更新および拡散コードの生成を行う(ステップS113,S114)。無線装置10cは、無線装置10bから受信したDAOメッセージを無線装置集約局11へ転送する(ステップS115)。無線装置10cは、DIOメッセージの送信後、無線装置10aからDAOメッセージを受信すると、ステップS106、S107と同様に、MACアドレステーブルの更新および拡散コードの生成を行う(ステップS120,S121)。無線装置10cは、無線装置10aから受信したDAOメッセージを無線装置集約局11へ転送する(ステップS122)。
以上のように、本実施の形態の無線パラメータ決定方法は、無線装置10が、マルチホップ無線通信システム内で無線通信を行う通信ステップと、マルチホップ無線通信システムの経路制御を行う経路制御ステップと、を含む。本実施の形態の無線パラメータ決定方法は、さらに、経路制御で用いる情報とマルチホップ無線通信システム30を構成する複数の無線装置10、無線装置集約局11のそれぞれを識別する装置識別情報とに基づいて、通信ステップで用いられる無線パラメータを決定するパラメータ決定ステップと、を含む。以上の手順により、無線装置10および無線装置集約局11は、各装置間の通信に使用するスペクトラム拡散用パラメータを他装置より割り当てられることなく自装置内で生成することが可能となる。これにより、他装置との無線リソース割当手続きを必要とせずにスペクトラム拡散通信を行う無線パラメータの自動設定を実現できる。なお、本実施の形態の無線パラメータの設定に関する動作に関しては、無線装置集約局11の中継ノード選択部203、無線リソース管理部202は、無線装置10の中継ノード選択部103、無線リソース管理部102とそれぞれ同様の動作を行う。
図13は、本実施の形態にかかる無線装置10のデータ送信処理手順の一例を示すフローチャートである。図13では、図6に示す無線装置10cがブロードキャスト送信またはユニキャスト送信処理の動作を例に挙げて説明する。無線装置10cの中継ノード選択部103は、次にデータを転送する送信先ノードの選択を行う(ステップS200)。ノードとは、マルチホップ無線通信システム30内の無線装置10および無線装置集約局11である。RPLプロトコルを用いた場合、階層情報であるランクが下位の無線装置10からデータを受信した場合、同一経路IDを持ち、階層情報であるランクが上位となる無線装置10を、送信先ノードとしてユーザ識別子リストから選択する。一方で、階層情報であるランクが上位の無線装置10からデータを受信した場合、当該データのヘッダに含まれる次に転送する無線装置10のユーザ識別子に基づき送信先ノードの選択を行う。本実施の形態では、無線装置10cが送信先ノードとして無線装置10aを選択した例を説明する。なお、無線装置10および無線装置集約局11が送信する信号には、宛先のアドレス、送信元のアドレスおよび階層情報が含まれている。
送信先ノードを選択した無線装置10cの中継ノード選択部103は、次にデータを転送する際のスペクトラム拡散用パラメータを設定するため、無線リソース管理部102に送信先ノードとして選択した無線装置10aのユーザ識別子を通知する。次に通信を行う送信先ノードを無線装置10aであることを認識した無線装置10cの無線リソース管理部102は、無線装置管理情報より送信先ノード情報を検索する(ステップS201)。具体的には、無線リソース管理部102は、無線装置管理情報を参照して、無線装置管理情報に送信先ノードである無線装置10aの情報が有るか否かを確認するために、無線装置10aのユーザ識別子が無線装置管理情報に登録されているかを検索する。
無線装置管理情報の検索の結果、ユーザ識別子が登録されていた場合(ステップS202 Yes)、無線リソース管理部102は、無線装置管理情報の対応するレコードにCode Indexが登録されているか否かを確認する(ステップS203)。無線装置管理情報の対応するレコードにCode Indexが登録されている場合(ステップS203 Yes)、無線リソース管理部102は、登録されているCode Indexを用いてスペクトラム拡散用の拡散コードを生成して通信部100に設定する(ステップS205)。
ステップS205の後、中継ノード選択部103は通信部100、ANT部101を経由したデータ送信処理を行う(ステップS206)。具体的には、例えば、中継ノード選択部103は、上位のノードから受信した制御信号を通信部100、ANT部101を経由して送信する。送信先ノードである無線装置10aは、自装置すなわち無線装置10aのスペクトラム拡散用パラメータを用いて生成された拡散コードを用いて受信処理を行っているので、ステップS206で送信された信号のスペクトラム拡散処理で用いられて拡散コードと同じ拡散コードを用いて逆拡散処理を行うことになる。したがって、無線装置10aは、通信経路でエラーが発生しなければ、ステップS206で送信された信号を正しく復調することができ、確認応答を無線装置10cに送信する。
無線装置10cの中継ノード選択部103は、ステップS206の送信処理によって送信した信号の送達確認を行っている。具体的には、無線装置10cの中継ノード選択部103は、信号を送信してから一定時間以内に、該信号に対応する確認応答を受信したか否かを判定する。送達確認が有ったか場合、すなわちステップS206で送信した信号の確認応答を一定期間内に受信した場合(ステップS207 Yes)、中継ノード選択部103はデータ送信処理を終了する。送達確認が無い場合、すなわちステップS206で送信した信号の確認応答を一定期間内に受信しなかった場合(ステップS207 No)、再送回数が閾値を超過したか否かを判断する(ステップS208)。
再送回数が閾値を超過していない場合(ステップS208 No)、無線装置10cの中継ノード選択部103はステップS206からの処理を繰り返す。再送回数が閾値を超過した場合(ステップS208 Yes)、中継ノード選択部103はデータ送信処理を終了する。
一方、ステップS202でNoの場合、およびステップS203でNoの場合、無線装置10cの中継ノード選択部103は、送信先ノードとしてブロードキャストに設定し(ステップS204)、無線装置10cの無線リソース管理部102へ送信先ノードを通知する。その後、ステップS205以降の処理が実施される。送信先ノードとしてブロードキャストが設定された場合、無線リソース管理部102は、ステップS205では無線装置管理情報のユーザ識別子がブロードキャストアドレスに対応するレコードの情報に基づいて拡散コードを生成する。したがって、その後のステップS206では、ブロードキャストアドレスに対応するスペクトラム拡散用パラメータに基づいて生成された拡散コードが用いられる。無線装置10aでは、受信した信号の復調に一定回数以上失敗した場合などには、ブロードキャストアドレスに対応するスペクトラム拡散用パラメータに基づいて生成された拡散コードを用いて受信処理を行う。または、ブロードキャストアドレスで送信する際には、無線装置10はスペクトラム拡散処理を行わずに信号を送信するようにしてもよい。
なお、本実施の形態における送信先ノードの選択処理では、RPLに基づいた送信先ノードの選択方法の一例について説明しているが、上述したとおり経路制御プロトコルはこれに限定されず、使用する経路制御プロトコルにしたがって送信先ノードを選択すればよい。
次に、スペクトラム拡散用パラメータが重複した時、すなわち拡散コードが重複した時の動作について説明する。図14は、スペクトラム拡散用パラメータの重複が検出された時のスペクトラム拡散用パラメータの更新手順の一例を示すシーケンス図である。ここでは、無線装置10cが無線装置10aとの間の通信で用いるスペクトラム拡散用パラメータと、無線装置10cが無線装置10bとの間の通信で用いるスペクトラム拡散用パラメータとが重複した場合における動作例を説明する。
ステップS101〜S105までは、図6で説明した例と同様であるため説明を省略する。ステップS105の後、無線装置10cの中継ノード選択部103は、図6で説明した例と同様に、下位に接続される無線装置10に無線装置集約局11より受信したDIOメッセージを転送するため、DIOメッセージをブロードキャストにより送信する(ステップS300)。DIOメッセージを受信した無線装置10aの中継ノード選択部103は、ユーザ識別子リストであるMACアドレステーブルに、DIOメッセージ送信元の無線装置10cのユーザ識別子を登録することによりMACアドレステーブルを更新する(ステップS301)。DIOメッセージを受信した無線装置10bの動作および無線装置10bからの応答を受信した無線装置10cの動作は、図6のステップS109〜S115と同様であるため説明を省略する。
図15は、無線装置10aが保持するMACアドレステーブルの一例を示す図である。図15には、MACアドレステーブルに、ステップS301によって、無線装置10cのユーザ識別子が登録された状態を示している。
図14の説明に戻り、次に、無線装置10aの中継ノード選択部103は、受信したDIOメッセージに基づいて、マルチホップ無線通信システム30の自装置の階層情報であるランクを決定する(ステップS302)。ランクの決定方法は、上述した例と同様であり、中継ノード選択部103は、DIOメッセージに格納されている階層情報に1を加えることにより、自装置の階層情報を決定する。無線装置10aの無線リソース管理部102は、無線装置10cのユーザ識別子、拡張ユーザ識別子、階層情報、補正値、経路IDを無線装置管理情報に登録する。
図16は、無線装置10aが保持する無線装置管理情報の一例を示す図である。図16では、図8の例と同様に、自装置の情報およびブロードキャストアドレスに対応する情報が予め登録されている。これらに加えて、図16に示すように、無線装置10cの情報が追加される。
図14の説明に戻り、無線装置10aの無線リソース管理部102は、無線装置管理情報の無線装置10cに対応するレコードの情報に基づいて拡散コードを生成する(ステップS303)。具体的には、無線装置10aの拡散コード生成部700が、無線装置10cのユーザ識別子、階層情報、補正値および経路IDに基づいて拡散コードを生成する。また、無線装置10aの無線リソース管理部102は、ハッシュ関数計算部701によって計算されたCode Indexを無線装置管理情報に登録する。
無線装置10aの中継ノード選択部103は、DIOメッセージの応答となるDAOメッセージをユニキャストで送信する(ステップS304)。無線装置10aよりDAOメッセージを受信した無線装置10cの中継ノード選択部103は、DAOメッセージの送信元として設定された無線装置10aのMACアドレスをユーザ識別子リストに登録することによりMACアドレステーブルを更新する(ステップS305)。無線装置10cの無線リソース管理部102は、DAOメッセージに基づいて、無線装置10aのユーザ識別子、拡張ユーザ識別子、階層情報、補正値、経路IDを無線装置管理情報に登録する。
図17は、無線装置10cが保持する無線装置管理情報の一例を示す図である。図17に示した例では、図14のステップS305の後、無線装置管理情報の更新が行われた後の状態を示しているため、無線装置10cが保持する無線装置管理情報には、無線装置10bに関する情報と無線装置10aに関する情報が登録されている。
無線装置10cの無線リソース管理部102は、無線装置管理情報に無線装置10aに関する情報を追加することにより無線装置管理情報を更新すると、拡散コードを生成する(ステップS306)。また、無線リソース管理部102は、スペクトラム拡散用パラメータの重複の有無を確認する。ここでは、図17に示すように、無線装置管理情報の無線装置10aと無線装置10bとでスペクトラム拡散用パラメータが重複している。このため、無線リソース管理部102は、スペクトラム拡散用パラメータの重複を検出する(ステップS307)。
無線装置10cの無線リソース管理部102は、スペクトラム拡散用パラメータの重複を検出すると、無線装置10aの補正値を変更することで暫定的にスペクトラム拡散用パラメータを更新し、拡散コードの更新を要求するための拡散コード更新要求メッセージを無線装置10aへ送信する(ステップS308)。拡散コード更新要求メッセージには、更新後の補正値が格納され、送信先アドレスとして無線装置10aのアドレスが格納され、送信元アドレスとして無線装置10cのアドレスが格納される。なお、補正値の変更は例えば、登録されている補正値に一定値を加えることにより行われる。ここでは、この一定値を1とする。補正値の変更方法はこの例に限定されない。
無線装置10bは、無線装置10aと同じ拡散コードを用いて受信処理を開始しているため、ステップS308で送信された拡散コード変更要求メッセージを受信できるが、送信先アドレスより自装置宛でないことを認識して該メッセージを廃棄する。無線装置10cより拡散コード更新要求を受信した無線装置10aの無線リソース管理部102は、拡散コードを更新する(ステップS309)。詳細には、無線リソース管理部102は、無線装置管理情報内の自装置の補正値を更新する。無線リソース管理部102は、更新された補正値を用いて、Code Indexを算出し、算出したCode Indexで無線装置管理情報を更新する。これにより、スペクトラム拡散用パラメータが更新されることになり、拡散コードが更新される。
図18は、スペクトラム拡散用パラメータが更新された後の無線装置10aが保持する無線装置管理情報の一例を示す図である。図18では、図17の状態から無線装置10aの補正値とCode Indexが変更されている。
図14の説明に戻り、無線装置10aの無線リソース管理部102は、拡散コードの更新の後、拡散コード更新メッセージに対する応答である拡散コード更新応答メッセージを無線装置10cに送信する(ステップS310)。なお、ここでは、拡散コードの更新手順にユニキャスト通信を使用しているが、更新対象となる無線装置のユーザ識別子を認識可能な情報を含むブロードキャスト通信を用いても良い。また、拡散コード更新メッセージを個別に定義するのではなく、他のメッセージの拡張ヘッダとして拡散コードの更新を要求することを示す情報を付加しても良い。
無線装置10aより拡散コード更新応答メッセージを受信した無線装置10cの無線リソース管理部102は、拡散コードを更新する(ステップS311)。具体的には、無線装置10cの無線リソース管理部102は、暫定的に決定した無線装置10aに対応する補正値でCode Indexを計算し、この補正値とCode Indexを無線装置管理情報に反映させることにより無線装置管理情報を更新する。これにより、無線装置10cの無線リソース管理部102は、無線装置10aに対応する拡散コードを変更することができる。
図19は、ステップS311の更新後の無線装置10cが保持する無線装置管理情報の一例を示す図である。図19に示すように、無線装置10cが保持する無線装置管理情報は、無線装置10aに関する情報が図17に示した例から更新されている。無線装置10cの無線リソース管理部102は、更新した無線装置管理情報を参照してスペクトラム拡散用パラメータの重複の有無を判断する。ここでは、図19に示すように、スペクトラム拡散用パラメータの重複が無かったとする。無線リソース管理部102は、ステップS304で受信したDAOメッセージを無線装置集約局11へ転送する(ステップS312)。
以上の処理により、各装置間の通信に使用するスペクトラム拡散用パラメータが重複した場合においても、重複を解消するようにスペクトラム拡散用パラメータを更新することができる。すなわち、無線装置10および無線装置集約局11は、通信相手の装置ごとに無線パラメータを決定し、複数の通信相手の装置間で無線パラメータが重複した場合、重複を解消するよう無線パラメータを変更する。そして、無線装置10および無線装置集約局11は、変更した無線パラメータに対応する通信相手の装置へ無線パラメータの変更を要求する。これによって、拡散コードの重複を避けてスペクトラム拡散通信を行うマルチホップ無線通信システム30内の各装置の拡散コードの自動設定を実現できる。この時、無線装置10、無線装置集約局11の経路ID、ユーザ識別子および階層情報を用いることで、複数の通信経路を持つ無線装置10が存在する場合でも、ユニキャスト通信時に指定された通信経路上の無線装置10だけが信号を正しく復調できる。
なお、本実施の形態では、拡散コード表に登録する拡散コードの数すなわちCode Indexの数は、ある無線装置と通信可能な各装置間で拡散コードが重複しないように、適宜定めればよい。ある無線装置と通信可能な無線装置が多数ある場合には、拡散コード表に登録する拡散コードの数も多くしておけばよい。または、無線装置を設置するエリアごとに、用いる拡散コード表を定めるといったようにエリアごとに管理しても良い。エリアは、拡散コードが重複せずに無線通信を行うことができる範囲である。例えば、密に設置された無線装置が多数存在しても、本実施の形態では拡散コード表ごとにマルチホップ通信経路が確立されるため、複数の通信経路がオーバーレイするようなマルチホップ無線通信システムを構築することができる。つまり、エリアが異なるとは、電波が届かない場合だけでなく、電波が届いたとしても保持している拡散コード表が異なるために逆拡散できないといった場合も含まれる。拡散コード表の決定方法はこれらの方法に限定されない。また、本実施の形態では、送信先と通信を行うスペクトラム拡散用パラメータを決定する際に、無線装置10および無線装置集約局11は、無線装置管理情報内の送信先のユーザ識別子に対応する情報を用いた。これに限らず、無線装置10および無線装置集約局11が、本実施の形態の無線装置管理情報内の信号の送信元の装置に対応する情報を用いて拡散コードを生成するようにしてもよい。例えば、TDMA(Time Division Multiple Access)方式などのように通信を行う時間帯が各無線装置に割当てられているなどのルールが決まっている場合には、どの時間にどの無線装置から送信される可能性があるかがわかっている。したがって、無線装置10および無線装置集約局11は、メッセージの送信元のユーザ識別子を把握することができるので、送信元の装置に対応する情報を用いて拡散コードを生成することができる。
なお、本実施の形態では、ユーザ識別子、階層情報、補正値および経路IDに基づいて拡散コードを生成する例を説明したが、無線装置10および無線装置集約局11を一意に識別可能な識別情報と、マルチホップ無線通信システム30の経路制御で用いる情報とを用いて拡散コードを生成すればよく、使用する情報はユーザ識別子、階層情報、補正値および経路IDに限定されない。ただし、この経路制御で用いる情報は、行うマルチホップ無線通信システム30内で直接互いに送受信を行う装置間で共有できる情報である必要がある。共有できる情報の一例は、経路制御のためのメッセージに格納される情報である。なお、補正値については、例えば、重複が問題にならないような条件の時には用いる必要が無く、必須ではない。なお、無線装置集約局11は集約局としての機能を有しているが広義の無線装置に属する。したがって、無線装置集約局11は、マルチホップ無線通信システム30を構成する無線装置である。
また、上述した例では、マルチホップ無線通信システム30内の通信で用いる無線パラメータの一例としてスペクトラム拡散通信で用いられる拡散コード、すなわちスペクトラム拡散処理で用いる拡散コードを送信側の無線装置と受信側の無線装置とで一致させる例を説明した。これに限らず、無線通信に用いる変調方式、無線周波数、チャネル数、送信電力、帯域幅など、他の無線パラメータを送信側の無線装置と受信側の無線装置とで一致させる場合に、上述した方法を用いることもできる。
以上説明したように、本実施の形態によれば、マルチホップ無線通信システム30を構成する各装置が、ユーザ識別子およびマルチホップ通信経路に関連する情報から、無線パラメータの一例であるスペクトラム拡散用パラメータを自動生成することができる。これによって、無線装置の設置場所に応じたスペクトラム拡散用パラメータを事前設定しておく必要がなく、また他装置による拡散コードの割当て手順の実施も不要であるため無線リソースの消費を抑制することができる。これにより、本実施の形態では、メンテナンス性の向上を実現でき、無線リソースの消費を抑制することができる。また、受信側の装置が拡散コードを推定するための繰り返し演算などの処理も不要であるため、各無線装置10における処理遅延も抑制することができる。
以上の実施の形態に示した構成は、本発明の内容の一例を示すものであり、別の公知の技術と組み合わせることも可能であるし、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、構成の一部を省略、変更することも可能である。