JP6931938B2 - 食品の常温乾燥装置 - Google Patents
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このような食品乾燥のための処理方法としては、様々な方法が知られているが、例えば、天日乾燥、高温加熱する場合にはマイクロ波や遠赤外線、熱風を利用した乾燥があり、また、減圧(真空)乾燥、凍結乾燥等もある。
また、高温加熱下での乾燥は、食材に含まれるビタミン類や蛋白質の破壊又は熱変性が生じ、また、食材の表面のみが急激に乾燥硬化しやすく、均質に乾燥されない場合もあり、栄養価の大幅な低減のみならず、色や香り、食味も損なわれる等の課題を有していた。
一方、減圧(真空)乾燥は、装置内の密閉性が要求され、使用する装置が高コストである。また、凍結乾燥は、上記のような高温加熱による栄養価の低減を抑制することができるものの、装置自体が高価であり、また、装置の稼働コストも高く、さらに、凍結による細胞組織の破壊により、香りや食味が損なわれるという課題を有していた。
また、本発明に係る食品の常温乾燥装置は、農産物又は海産物の食材を収容して乾燥する乾燥庫と、前記乾燥庫内又は前記乾燥庫外に設けられ、該乾燥庫内のガスを除湿し、除湿したガスを該乾燥庫内に送り出す除湿機と、前記乾燥庫内の側面に上下方向に設けられ、上端部が送風口、下端部が吸気口とされる、前記乾燥庫内のガスを循環させるためのダクトと、前記ダクトの上端部に設けられたファンと、を備え、乾燥庫内のガスを取り込む前記除湿機の取込み口、除湿したガスを該乾燥庫内に送り出す前記除湿機の送出し口が、前記ダクトの吸気口、送風口と異なる位置に設けられ、前記除湿機によって、除湿したガスを該乾燥庫内に送り出すと共に、更に、前記乾燥庫内の側面に上下方向に設けられたダクト下端部の吸気口から、ダクトの上端部に設けられたファンによって、該乾燥庫内の下部ガスを吸気し、ダクトの上端部の送風口から前記下部ガスを送風し、該乾燥庫内のガスを循環させ、乾燥庫内の農産物又は海産物の食材を大気圧下、温度60℃以下、相対湿度60%以下で除湿乾燥することを特徴とする。
このような雰囲気下での常温又は低温での乾燥によれば、食材本来の栄養価、色や香り、食味の変化及び雑菌の繁殖による食品の劣化を抑制して乾燥することができる。
前記乾燥庫内のガスをこのように循環させることにより、該乾燥庫内の上部と下部の温度及び湿度が均一になりやすく、食材を均質かつ短時間で乾燥させることができる。
また、前記常温乾燥装置においては、乾燥庫内の側面に上下方向に設けられたダクト下端部の吸気口から、ダクトの上端部に設けられたファンによって、該乾燥庫内の下部ガスを吸気し、ダクトの上端部の送風口から送風し、該乾燥庫内のガスを循環させている。
同様に、前記乾燥庫内のガスをこのように循環させた場合にも、該乾燥庫内の上部と下部の温度及び湿度が均一になりやすく、食材を均質かつ短時間で乾燥させることができる。
このような送風により、前記乾燥庫内の水平方向の温度及び湿度が均一になりやすく、食材をより短時間でかつ均質に乾燥させることができる。
前記窒素発生装置により、酸化抑制効果の観点から、前記乾燥庫内の酸素濃度を10%以下にすることが好ましい。
本発明に係る食品の常温乾燥装置は、農産物又は海産物の食材の乾燥品を得る乾燥装置であり、前記食材を収容して乾燥する乾燥庫内に配置し、前記乾燥庫内の側面に設けられたダクトファンにより前記乾燥庫内の上部と下部のガスを循環させて、大気圧下、温度60℃以下、相対湿度60%以下で除湿乾燥することを特徴とするものである。
食材を、常温で、このような雰囲気下で乾燥することにより、食材本来の栄養価の低減を抑制し、色や香り、食味が維持され、かつ、雑菌の繁殖による劣化も抑制された乾燥食品を得ることができる。
本発明でいう農産物としては、穀物、豆類、芋類、野菜、山菜、きのこ、種実類、果物、ハーブ等が挙げられ、また、海産物としては、海藻類、魚介類等が挙げられる。
なお、肉類等の畜産物は、動物性脂肪及び蛋白質が多く、乾燥工程において腐敗しやすいため、本発明に係る加工方法には適さない。
カットするサイズは、食材を満遍なく、均等に乾燥させるために、ほぼ同等のサイズに揃えるようにカットすることが好ましい。例えば、乾燥時間を短縮する観点から、また、取り扱い容易とするために、厚さ5mm以下のスライス又は細片とする。
常温乾燥によれば、食材に含まれる酵素等を失活させず、凍結乾燥のような高価な設備や稼働コストを要することなく、栄養価も凍結乾燥と同等程度に保持することができ、添加物を使用しなくても、生に近い色や香り、凝縮された味を有する乾燥食品を得ることができる。
そのためには、前記乾燥庫内の側面にダクトファンにより該乾燥庫内の上部と下部のガスを循環させることが好ましい。
このようなダクトファンを設けることにより、前記乾燥庫内のガス循環をより効果的に制御することができる。
なお、前記乾燥庫内の容積に応じて、効果的なガス循環の観点から、前記ダクトファンは、同一側面に複数設けてもよい。
なお、前記ランダム風は、上記特許文献2に記載されているような方法を用いて、一定時間間隔で発生させるようにすることが好ましい。具体的には、前記乾燥庫内の側面に、該乾燥庫内に水平方向にランダム風を発生させるファンを複数設けることが好ましい。
通常、乾燥庫内に送り込むガスは、空気を酸素濃度10%以下としたものが用いられ、外気よりも湿度の低い空気であることが好ましい。これにより、効率的に除湿乾燥することができる。
大気中(酸素濃度約20%)よりも、低酸素濃度の雰囲気下で除湿乾燥することにより、食材中の抗酸化作用を有する物質の減少が抑制され、また、活性酸素除去能力の低下を抑制することができる。このため、乾燥食品の酸化の抑制が図られる。
前記不活性ガスは、具体的には、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンであるが、コストの観点からは、窒素を用いることが好ましい。より好ましくは、純度90%以上の窒素が用いられる。
図1に示す食品の常温乾燥装置は、筐体1の中に、ダクトファン10及びランダム風を発生する複数のファン3を内部側面に備えた乾燥庫2と、乾燥庫2内に乾燥空気(除湿ガス)Dを送り込むとともに除湿するための除湿機4を備えている。
尚、前記したように、各図における矢印はガスの流れを示し、前記除湿機4において、除湿機4の内部に向く矢印側が乾燥庫内のガスを取り込む除湿機の取込み口であり、除湿機4から外部に向く矢印側が除湿したガスを該乾燥庫内に送り出す除湿機の送出し口である。
また、乾燥庫2内には、試料Sの乾燥の経過を測定するための計測器として、温湿度計5と、酸素濃度計6と、重量計7とが設けられている。
このような常温乾燥装置においては、乾燥させる試料Sを、乾燥庫2内に設置した重量計7に載せた後、筐体1を密閉し、不活性ガスIを注入することにより、内部の酸素濃度を調整する。
なお、乾燥庫2内は、60℃以下までであれば、乾燥庫2内にヒータ(図示せず)を設けて昇温してもよい。
このような装置で乾燥庫2内のガスを循環させることにより、試料S全体に当たる送風ガスの均一化が図られ、試料Sの配置による乾燥具合のムラを抑制することができ、乾燥時間の短縮化も図られる。
なお、ダクトファン10のファン11には、軸流ファン、クロスフローファン、シロッコファン、ターボファン等のいずれでも使用することができる。
図18に示す乾燥装置は、乾燥庫2内の空気Aを除湿機4で除湿した乾燥空気(除湿ガス)Dを乾燥庫3内に送り込み、除湿乾燥するものである。乾燥庫2内の側面に設けられたダクトファン10は、直管状であり、ダクト上部に吸気口及びファン11を備えている。
このような吸気口側にファン11が配置された従来型のダクトファン10では、乾燥庫2内のガスをムラなく効率的に循環させることができず、乾燥庫2内の上部と下部の温度及び湿度が均一になるように制御することは困難である。このため、試料Sの配置による乾燥具合のムラが生じやすく、また、試料S全体を乾燥する時間も、図1に示すような本発明に係る装置よりも長くかかる。
図2に示す食品の常温乾燥装置は、乾燥庫2内に除湿機4が設けられ、また、ダクト上部に吸気口、ダクト中央部にファン11を備え、かつ、屈曲したダクトの下部から乾燥庫2内に水平方向に送風する送風口を備えたダクトファン10が設けられている。
ダクトファン10内のファン11を、このようにダクト中央部、又は、図1に示したように送風口に配置することにより、図18に示す従来の装置のように吸気口に配置するよりも、乾燥庫2内のガスの循環を制御しやすく、より効率的に乾燥を行うことができる。
また、このような乾燥装置においては、除湿機4により、乾燥庫2内の除湿を行うとともに、その排熱を乾燥庫2内のガスの昇温に利用することができる。
同様に、図4に示す食品の常温乾燥装置のように、ダクトファン10のファン11がダ
クト中央部に配置されていてもよい。
乾燥庫2の規模が大きい場合、ダクトファン10をこのような構成にすることにより、
除湿機4から供給されるガスをダクトファン10内に誘導しやすく、効率的な乾燥を行うことができる。
同様に、図6に示す食品の常温乾燥装置のように、ダクトファン10のファン11がダクト中央部に配置されていてもよい。
同様に、図8に示す食品の常温乾燥装置のように、ダクトファン10のファン11がダクト中央部に配置されていてもよい。
このような乾燥装置では、除湿機4の排熱を乾燥庫2外の大気中に放出することができるため、乾燥庫2内のガスの昇温はヒータ8のみで行うため、温度調整管理を簡便に行うことができる。
このような乾燥装置では、乾燥庫2内にガス(空気)Aを導入すれば、窒素発生器10によって、乾燥庫2内の空気が、水分Wと酸素Oと不活性ガス(窒素)Iに分離される。そして、水分Wと酸素Oは、乾燥庫2外の大気中に放出され、窒素発生器9からは、不活性ガス(窒素)Iのみを乾燥庫2内に送り込むことができる。
なお、窒素発生器10は、膜分離方式やPSA(圧力変動吸着)方式等による公知の窒素発生器を用いることができる。
[実験1A]
図1に示すような食品乾燥装置を用いて、5mm角の人参1kgを、除湿しながら40℃で乾燥した。
実験1Aにおいて、除湿せずに、外部の空気の送入・排気を常時行うことにより、5mm角の人参1kgを40℃で乾燥した。
図19のグラフに示したように、人参の含水率は、除湿乾燥の場合(実験1A)、約8時間後に16%に低下して一定値を示した。これに対して、除湿しない従来の常温(恒温)乾燥の場合(実験1B)は、約13時間後に16%に低下して一定値を示した。
このように、除湿した場合の方が、除湿しない場合よりも、約40%早く乾燥させることができた。
また、図20のグラフに示したように、乾燥庫内の相対湿度は、除湿乾燥の場合(実験A)、乾燥開始後、約20〜25%で推移したが、除湿しない従来の常温(恒温)乾燥の場合(実験1B)は、乾燥開始直後は約60%であり、約13時間後に30%の一定値を示した。
[実験2A,2B](低酸素雰囲気)
試料としてケールを用い、前処理として茎部分を除去し、20mm×20mmの大きさにカットし、次亜塩素酸水溶液に10分間浸漬させて殺菌・消毒した後、水道水で洗い、付着した水分を拭き取った。
このケールを、図1に示すような食品乾燥装置を用いて乾燥した。乾燥庫2内には、除湿機4からの乾燥空気(除湿ガス)Dを送り込み、ダクトファン10により乾燥庫2内のガスを循環させ、また、複数のファン3により水平方向にランダム風を発生させた。
カットしたケール500gを200mm×200mm×高さ50mmのメッッシュトレー(網目5mm×5mm)3つに均等に分けて入れ、乾燥庫2内に設置した重量計7に重ねて載せた。
そして、筐体1を密閉し、不活性ガスIとして窒素ガスを注入して、内部の酸素濃度を調整した。
乾燥は、温度55℃で、乾燥庫2内の酸素濃度を0%(実験2A)、10%(実験2B)にそれぞれ設定し、常圧で20時間行った。
実験2Aにおいて、酸素濃度20.9%(大気下)として、それ以外は実験2Bと同様にして、乾燥を行った。
実験2Aと同様にしてカットしたケール450gを220mm×220mmのアルミ箔に150gずつ3層に分け、凍結乾燥機内に入れた。
−40℃で20時間の予備凍結を行った後、20分間の吸気過程を経て、2Pa程度まで減圧した。その後、−10℃で12時間の一次乾燥を行った後、20℃で12時間の二次乾燥を行った。
これらの分析結果を比較したグラフを、図21〜図24にそれぞれ示す。
乾燥ケールの成分分析においては、β−カロテン(図21参照)は、酸素濃度の違いによる大きな差は見られなかったが、凍結乾燥(実験2D)よりも減少が抑制された。総アスコルビン酸(図22参照)は、低酸素濃度であるほど減少が抑制され、凍結乾燥(実験2D)よりも減少が抑制された。総クロロフィル(図23参照)についても、総アスコルビン酸に比べて乾燥条件の違いによる差が小さいものの、凍結乾燥(実験2D)及び大気下の場合(実験2C)よりも減少が抑制された。また、スーパーオキシド消去活性(図24参照)については、低酸素雰囲気下で乾燥した場合(実験2A,2B)は、凍結乾燥(実験2D)にまでは及ばなかったものの、大気下の場合(実験2C)よりも減少が抑制された。
以上から、常温での除湿乾燥により、凍結乾燥よりも簡便な工程で、食品中の総アスコルビン酸の減少や活性酸素除去能力の低下を効果的に抑制することができることが認められた。
[実験3A](従来の乾燥装置)
図18に示すような従来の乾燥装置を用いて、試料Sとしてケールを実験2Aと同様に準備して乾燥した。
乾燥庫2内には、除湿機4からの乾燥空気(除湿ガス)Dを送り込み、吸気口側にファン11を備えたダクトファン10により、乾燥庫2内のガスを循環させ、温度55℃で、常圧で20時間乾燥した。
2 乾燥庫
3,11 ファン
4 除湿機
5 温湿度計
6 酸素濃度計
7 重量計
8 ヒータ
9 窒素発生器
10 ダクトファン
12 穴
A ガス(空気)
D 乾燥空気(除湿ガス)
I 不活性ガス(窒素)
S 試料
W 水分
O 酸素
Claims (6)
- 農産物又は海産物の食材を収容して乾燥する乾燥庫と、
前記乾燥庫内又は前記乾燥庫外に設けられ、該乾燥庫内のガスを除湿し、除湿したガスを該乾燥庫内に送り出す除湿機と、
前記乾燥庫内の側面に上下方向に設けられ、上端部が吸気口、下端部が送風口とされる、前記乾燥庫内のガスを循環させるためのダクトと、
前記ダクトの下端部に設けられたファンと、
を備え、
乾燥庫内のガスを取り込む前記除湿機の取込み口と、除湿したガスを該乾燥庫内に送り出す前記除湿機の送出し口が、前記ダクトの吸気口、送風口と異なる位置に設けられ、
前記除湿機によって、除湿したガスを該乾燥庫内に送り出すと共に、
更に、前記乾燥庫内の側面に上下方向に設けられたダクト上端部の吸気口から、ダクトの下端部に設けられたファンによって、該乾燥庫内の上部ガスを吸気し、ダクトの下端部の送風口から前記上部ガスを送風し、該乾燥庫内のガスを循環させ、
乾燥庫内の農産物又は海産物の食材を大気圧下、温度60℃以下、相対湿度60%以下で除湿乾燥することを特徴とする食品の常温乾燥装置。 - 農産物又は海産物の食材を収容して乾燥する乾燥庫と、
前記乾燥庫内又は前記乾燥庫外に設けられ、該乾燥庫内のガスを除湿し、除湿したガスを該乾燥庫内に送り出す除湿機と、
前記乾燥庫内の側面に上下方向に設けられ、上端部が送風口、下端部が吸気口とされる、前記乾燥庫内のガスを循環させるためのダクトと、
前記ダクトの上端部に設けられたファンと、
を備え、
乾燥庫内のガスを取り込む前記除湿機の取込み口、除湿したガスを該乾燥庫内に送り出す前記除湿機の送出し口が、前記ダクトの吸気口、送風口と異なる位置に設けられ、
前記除湿機によって、除湿したガスを該乾燥庫内に送り出すと共に、
更に、前記乾燥庫内の側面に上下方向に設けられたダクト下端部の吸気口から、ダクトの上端部に設けられたファンによって、該乾燥庫内の下部ガスを吸気し、ダクトの上端部の送風口から前記下部ガスを送風し、該乾燥庫内のガスを循環させ、
乾燥庫内の農産物又は海産物の食材を大気圧下、温度60℃以下、相対湿度60%以下で除湿乾燥することを特徴とする食品の常温乾燥装置。 - 前記乾燥庫内の側面に、該乾燥庫内に水平方向にランダム風を発生させるファンが複数設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の食品の常温乾燥装置。
- 前記乾燥庫外に、該乾燥庫内に送り込む純度90%以上の窒素を発生させる窒素発生装置が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の食品の常温乾燥装置。
- 前記ダクトの下端部の送風口から送風が、水平方向になされることを特徴とする請求項1に記載の食品の常温乾燥装置。
- 前記乾燥庫内の側面に上下方向に設けられたダクトが、前記乾燥庫の天面に沿って延伸し、天井位置のダクトに複数の穴が形成されていることを特徴とする請求項1記載の食品の常温乾燥装置。
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