図1は実施例1のセンサ再選択システム100の構成例を示す図である。
実施例1のセンサ再選択システム100は、機器や設備などの診断対象に設置されたセンサ群の中から診断対象の故障予兆を診断するための予兆診断モデルの構築に用いるセンサを再選択するコンピュータシステムである。ここでいう再選択は、良好な予兆診断モデルを構築するために、予兆診断モデルに用いるセンサを決定しなおす処理である。センサ再選択システム100は、センサ群の中から故障予兆を検知しているセンサ(注目センサ)を見つけ出し、注目センサの正常期間と異常期間の因子負荷量の差分を用いて故障予兆となっている主成分(注目主成分)を発見する。なお、正常期間とは、診断対象が正常状態の期間のみを含むように任意に設定された期間である。異常期間とは、診断対象の異常の予兆が存在する期間を含むように任意に設定された期間である。本実施例では、異常期間は正常期間と同じ期間長に設定される。本実施例では、正常期間および異常期間は予め定められた条件に基づいて自動的に決定される。そして、その注目主成分よりも上位の主成分の傾向が注目センサと一致するセンサ(診断用センサ)を選択し、診断用センサを予兆診断モデルの構築に用いる。これにより、故障予兆をより顕著に検出できる予兆診断モデルを作成することが可能となる。センサ再選択システム100はネットワーク140に接続され、ネットワーク140経由でクライアント端末150とデータ通信を行うことができる。
クライアント端末150は、キーボードやマウスなどの入力インタフェースとディスプレイなどの出力インタフェースを備え、診断対象の診断を行う分析者による操作に基づいて、センサ再選択システム100を動作させるコンピュータ端末である。クライアント端末150は、センサ再選択システム100にアクセスし、入力インタフェースにて分析者からの操作を受け付け、センサ再選択システム100を動作させ、センサ再選択システム100から得られた予兆診断結果やセンサ特徴を出力インタフェースにより表示する処理などの各種処理を行う。
図1には、センサ再選択システム100のハードウェア構成が示されている。センサ再選択システム100は、ハードウェア要素として、ハードディスクドライブなどの不揮発性記憶装置で構成されプログラムおよびデータを保持する記憶装置115と、RAMなどの揮発性記憶装置で構成されているメモリ113と、記憶装置115からプログラムをメモリ113に読み出して実行しセンサ再選択システム100自体の統括制御を行うと共に各種判定および演算といった予備制御処理を行うCPU114(演算装置)と、センサ再選択システム100をネットワーク140と接続し他の装置との通信処理を担う通信装置112と、データの入出力を行うI/O装置111と、を備える。
CPU114が記憶装置115からプログラムをメモリ113に読み込み実行することにより、センサ特徴算出再選択部121、センサ特徴表示部122、予兆診断部123、および予兆診断結果表示部124として動作する。記憶装置115には、プログラム他に、センシングデータ131、予兆診断結果132、センサ特徴算出結果133、およびセンサ再選択結果134が格納される。これらのデータはプログラムによって書き込みあるいは参照される。
センサ特徴算出再選択部121は、診断対象に設置されたセンサ群の中から診断対象の故障予兆を診断するための予兆診断モデルの構築に用いるセンサを再選択する。センサ特徴表示部122は、センサの特徴を示すデータなどセンサを再選択する過程で算出されるデータをGUI(Graphical User Interface)で表示する。
予兆診断部123は、センサ特徴算出再選択部121が指定したセンサ群に含まれるセンサのセンシングデータを用いて診断対象における故障の予兆の有無を診断する。診断結果のデータはセンサ特徴算出再選択部121によるセンサの再選択に利用される。予兆診断結果表示部124は、予兆診断部123による診断結果をGUIで表示する。
なお、本実施例では、分析者がクライアント端末150からセンサ再選択システム100にセンシングデータ131を入力し、センサ再選択システム100で得られた予兆診断結果132およびセンサ特徴算出結果133がクライアント端末150に出力され、クライアント端末150がそれらのデータを表示することを想定している。しかしながら、これに限定されることはない。他の例として、センサ再選択システム100が、入力インタフェースと出力インタフェースを備え、入力インタフェースによりセンシングデータ131を自身へ入力し、出力インタフェースにより自身で予兆診断結果132およびセンサ特徴算出結果133を表示するものであってもよい。また他の例として、複数のクライアント端末150がセンサ再選択システム100に接続可能であり、それらのクライアント端末150が同一の診断対象に関する処理、あるいはそれぞれ別個の診断対象に関する処理を行うものであってもよい。
続いて、本実施例のセンサ再選択システム100が用いるデータについて説明する。
図2は、センシングデータの構造を示す図である。センシングデータ131は、診断対象に取り付けられたセンサが一定間隔ごとに計測した値を蓄積したデータである。図2を参照すると、センシングデータ131の各レコード206〜208には、時刻201、センサ1 202、センサ2 203、…、センサN−1 204、およびセンサN 205というデータフィールドで構成される。時刻201は、計測が行われた時刻が入るフィールドである。センサ1 202、センサ2 203、…、センサN−1 204、センサN 205は、各センサで計測された値が入るフィールドである。
予兆診断結果132には、設備稼働情報(図3)、センサ群情報(図4)、および予兆診断結果情報(図5D)が含まれる。設備稼働情報は、診断対象の故障内容、診断対象が正常に稼働していた正常期間の開始日時および終了日時、診断対象に故障が発生した日時を記録したテーブルである。センサ群情報は、診断対象の故障を検知する予兆診断モデルを構築するのに適していると考えられる複数のセンサ群の情報を記録されたテーブルである。予兆診断結果情報は、各センサ群に対して構築された各予兆診断モデルによりセンシングデータが存在するすべての期間に対し予兆診断を行った結果が記録されたテーブルである。
図3は設備稼働情報のデータ構造を示す図である。稼働情報210の各レコード215は、故障モード211、正常期間開始212、正常期間終了213、および異常発生日時214というデータフィールドから構成されている。故障モード211は、診断対象の故障内容が入るフィールドである。正常期間開始212は、診断対象が正常に稼働していた正常期間の開始日時が入るフィールドである。正常期間終了213は、診断対象が正常に稼働していた正常期間の終了日時が入るフィールドである。異常発生日時214は、診断対象に故障が発生した日時が入るフィールドである。
図4はセンサ群情報のデータ構造を示す図である。センサ群情報220の各レコード223〜225は、センサ群番号221およびセンサ名222というデータフィールドから構成される。センサ群番号221は、予兆診断モデルを構築するのに適していると考えられる各センサ群の番号が入るフィールドである。センサ名222は、当該センサ群に含まれるセンサのセンサ名が入るフィールドである。
図5は予兆診断結果情報のデータ構造を示す図である。予兆診断結果情報230の各レコード2306〜2311は、時刻2301、異常度2302、異常寄与度(センサ1)2303、異常寄与度(センサ3)2304、および異常寄与度(センサ5)2305というデータフィールドから構成されている。時刻2301は対象日時が入るフィールドである。異常度2302は、対象日時の故障予兆の程度である異常度が入るフィールドである。異常寄与度(センサ1)2303は、対象日時の異常度に対してセンサ1のセンシングデータがどの程度相関するかを示す異常寄与度が入るフィールドである。異常寄与度(センサ3)2304は、対象日時の異常度に対してセンサ3のセンシングデータがどの程度相関するかを示す異常寄与度が入るフィールドである。異常寄与度(センサ5)2305は、対象日時の異常度に対してセンサ5のセンシングデータがどの程度相関するかを示す異常寄与度が入るフィールドである。
センサ特徴算出結果133は、センサで取得されたセンシングデータに対する主成分分析により得られた因子負荷量を示すセンサ特徴データが記録されたテーブルである。センサ特徴算出結果133には、複数の異なるデータのテーブルが含まれている。
具体的には、センサ特徴算出結果133には、全てのセンサの対象期間全体のセンシングデータに対する主成分分析により算出された各主成分の因子負荷量を示すセンサ特徴データが記録されたテーブル(図6)が含まれる。また、センサ特徴算出結果133には、予兆検知の可能性のあるセンサ群とその近傍に存在する複数のセンサのみの正常期間のセンシングデータに対する主成分分析により算出された各主成分の因子負荷量を示すセンサ特徴データが記録されたテーブル(図7)が含まれる。また、センサ特徴算出結果133には、予兆検知の可能性のあるセンサ群とその近傍に存在する複数のセンサのみの異常期間のセンシングデータに対する主成分分析により算出された各主成分の因子負荷量を示すセンサ特徴データが記録されたテーブル(図8)が含まれる。また、センサ特徴算出結果133には、予兆検知の可能性のあるセンサ群とその近傍に存在する複数のセンサのみの正常期間のセンシングデータに対する主成分分析により算出された各主成分の因子負荷量と、異常期間のセンシングデータに対する主成分分析により算出された各主成分の因子負荷量との差分を示すセンサ特徴差分データが記録されたテーブル(図9)が含まれる。また、センサ特徴算出結果133には、予兆検知の可能性のあるセンサ群とその近傍に存在する複数のセンサのみの正常期間のセンシングデータに対する主成分分析により算出された各主成分の因子負荷量と、因子負荷量のクラスタリングにより各因子負荷量に対するラベリングで付加されたラベルと、を示すラベリングデータが記録されたテーブル(図10)が含まれる。
図6は、全てのセンサの全体期間のセンシングデータに対する主成分分析により算出された各主成分の因子負荷量を示すセンサ特徴データのデータ構造を示す図である。センサ特徴データ240には、全てのセンサ(センサ1~N(Nは自然数))についてのレコードが記録されている。各レコード246〜249は、センサ名241、因子負荷量(第1主成分)242、因子負荷量(第2主成分)243、…、因子負荷量(第N−1主成分)244、および因子負荷量(第N主成分)245というデータフィールドから構成される。センサ名241は、対象とするセンサのセンサ名が入るフィールドである。因子負荷量(第1主成分)242、因子負荷量(第2主成分)243、…、因子負荷量(第N−1主成分)244、および因子負荷量(第N主成分)245は、各主成分の因子負荷量が入るフィールドである。
図7は、予兆検知の可能性のあるセンサ群とその近傍に存在する複数のセンサを含むセンサ群(対象センサ群)のみの正常期間のセンシングデータに対する主成分分析により算出された各主成分の因子負荷量を示すセンサ特徴データのデータ構造を示す図である。センサ特徴データ250には、対象センサ群の各センサ(センサ1,3、5、11、13)についてのレコードが記録されている。各レコード2509〜2513は、センサ名2501、FL(PC1)2502、FL(PC2)2503、FL(PC3)2504、FL(PC4)2505、FL(PC5)2506、異常寄与度最大値(学習期間)2507、および異常寄与度最大値(全期間)2508というデータフィールドから構成される。センサ名2501は、対象とするセンサのセンサ名が入るフィールドである。FL(PC1)2502、FL(PC2)2503、FL(PC3)2504、FL(PC4)2505、およびFL(PC5)2506は、各主成分(PC(Principal Component)1〜5)の因子負荷量(FL(Factor Loading))が入るフィールドである。異常寄与度最大値(学習期間)2507は、センシングデータを予兆診断モデルの機械学習に用いる期間(学習期間)における異常寄与度の最大値が入るフィールドである。異常寄与度最大値(全期間)2508は、全体期間における異常寄与度の最大値が入るフィールドである。
図8は、予兆検知の可能性のあるセンサ群とその近傍に存在する複数のセンサを含むセンサ群(対象センサ群)のみの異常期間のセンシングデータに対する主成分分析により算出された各主成分の因子負荷量を示すセンサ特徴データのデータ構造を示す図である。センサ特徴データ260には、対象センサ群の各センサ(センサ1,3、5、11、13)についてのレコードが記録されている。各レコード2609〜2613は、センサ名2601、FL(PC1)2602、FL(PC2)2603、FL(PC3)2604、FL(PC4)2605、FL(PC5)2606、異常寄与度最大値(学習期間)2607、および異常寄与度最大値(全期間)2608というデータフィールドから構成される。センサ名2601は、対象とするセンサのセンサ名が入るフィールドである。FL(PC1)2602、FL(PC2)2603、FL(PC3)2604、FL(PC4)2605、およびFL(PC5)2606は、各主成分(PC(Principal Component)1〜5)の因子負荷量(FL(Factor Loading))が入るフィールドである。異常寄与度最大値(学習期間)2607は、センシングデータを予兆診断モデルの機械学習に用いる期間(学習期間)における異常寄与度の最大値が入るフィールドである。異常寄与度最大値(全期間)2608は、全体期間における異常寄与度の最大値が入るフィールドである。
図9は、予兆検知の可能性のあるセンサ群とその近傍に存在する複数のセンサのみの正常期間のセンシングデータに対する主成分分析により算出された各主成分の因子負荷量と、異常期間のセンシングデータに対する主成分分析により算出された各主成分の因子負荷量との差分を示すセンサ特徴差分データのデータ構造を示す図である。特徴差分データ270には、対象センサ群の各センサ(センサ1、3、5、11、13)についてのレコードが記録されている。各レコード2709〜2713は、センサ名2701、FL差分(PC1)2702、FL差分(PC2)2703、FL差分(PC3)2704、FL差分(PC4)2705、FL差分(PC5)2706、異常寄与度最大値(学習期間)2707、および異常寄与度最大値(全期間)2708というデータフィールドから構成される。センサ名2701は、対象とするセンサのセンサ名が入るフィールドである。FL差分(PC1)2702、FL差分(PC2)2703、FL差分(PC3)2704、FL差分(PC4)2705、およびFL差分(PC5)2706は、正常期間と異常期間の各主成分(PC1〜5)の因子負荷量(FL)の差分(FL差分)が入るフィールドである。異常寄与度最大値(学習期間)2707は、センシングデータを予兆診断モデルの機械学習に用いる期間(学習期間)における異常寄与度の最大値が入るフィールドである。異常寄与度最大値(全期間)2708は、全体期間における異常寄与度の最大値が入るフィールドである。
図10は、予兆検知の可能性のあるセンサ群とその近傍に存在する複数のセンサを含むセンサ群(対象センサ群)のみの正常期間のセンシングデータに対する主成分分析により算出された各主成分の因子負荷量と、因子負荷量のクラスタリングにより各因子負荷量に対するラベリングで付加されたラベルと、を示すラベリングデータのデータ構造を示す図である。ラベリングデータ280には、対象センサ群の各センサ(センサ1,3、5、11、13)についてのレコードが記録されている。各レコード2812〜2816は、センサ名2801、FL(PC1)2802、ラベル(PC1)2803、FL(PC2)2804、ラベル(PC2)2805、FL(PC3)2806、ラベル(PC3)2807、FL(PC4)2808、ラベル(PC4)2809、FL(PC5)2810、およびラベル(PC5)2811というデータフィールドから構成される。センサ名2801は、対象とするセンサのセンサ名が入るフィールドである。FL(PC1)2802、FL(PC2)2804、FL(PC3)2806、FL(PC4)2808、およびFL(PC5)2810は、各主成分(PC1〜5)の因子負荷量(FL)が入るフィールドである。ラベル(PC1)2803、ラベル(PC2)2805、ラベル(PC3)2807、ラベル(PC4)2809、およびラベル(PC5)2811は、各主成分(PC1〜5)のラベルが入るフィールドである。ラベルは、各主成分における因子負荷量のクラスタリングにより生成された部分集合(クラスタ)に付与される。ラベリングデータ280において各センサの各主成分には、その因子負荷量が属するクラスタのラベルが設定される。
図11は、センサ再選択結果のデータ構造を示す図である。センサ再選択結果134には、選択されたセンサ(センサ3、5、13)についてのレコードが記録されている。各レコード297〜299は、センサ名291、FL(PC1)292、FL(PC2)293、FL(PC3)294、FL(PC4)295、およびFL(PC5)296というデータフィールドから構成される。センサ名291は、対象とするセンサのセンサ名が入るフィールドである。FL(PC1)292、FL(PC2)293、FL(PC3)294、FL(PC4)295、およびFL(PC5)296は、各主成分(PC1〜5)の因子負荷量(FL)が入るフィールドである。
次に、本実施例によるセンサ再選択の手順について説明する。
図12は、センサ特徴算出再選択部121が実行するセンサ再選択処理のフローチャートである。センサ特徴算出再選択部121は、まず、ステップ301で、予兆診断モデルの構築に使用するセンサ群の候補を複数作成し、予兆診断結果132のセンサ群情報220に格納する。このとき、分析者が故障との関連が強いと思われるセンサを予兆診断に用いるセンサ群の候補に選択してもよいし、任意の方法で機械的に予兆診断に用いるセンサ群の候補を選択してもよい。
次に、センサ特徴算出再選択部121は、ステップ302で、複数のセンサ群のセンシングデータを用い、所定の予兆診断アルゴリズムに基づいて予兆診断を実施し、診断結果を予兆診断結果132の予兆診断結果情報230に格納する。予兆診断はセンサ群ごとに実行し、各センサ群による診断結果を予兆診断結果情報230に格納する。
センサ特徴算出再選択部121は、ステップ301、302と並行して、ステップ311で、全てのセンサのセンシングデータが取得されている期間の中から、主成分の算出にデータを用いる期間を決定する。主成分の算出にデータを用いる期間は任意に決定してよい。例えば、センサ特徴算出再選択部121は、稼働情報210を参照し、正常期間開始212と正常期間終了213の間を、主成分の算出にデータを用いる期間として採用してもよい。
次に、センサ特徴算出再選択部121は、ステップ312で、診断対象に設置された全てのセンサに関して、ステップ311で決定した全体期間のセンシングデータを用いて各主成分の因子負荷量を算出する。そして、センサ特徴算出再選択部121は、全てのセンサについて各主成分の因子負荷量をセンサ特徴データ240に格納する。
次に、センサ特徴算出再選択部121は、ステップ303で、複数のセンサ群ごとの予兆診断の診断結果を参照し、複数のセンサ群の中に故障の予兆が現れている可能性のあるセンサ群(予兆現出センサ群)があるか否か判定する。
ステップ303にて予兆現出センサ群を発見できなかった、センサ特徴算出再選択部121は、ステップ301に戻りセンサ群の作成をやり直す。ステップ303にて予兆現出センサ群が発見できた場合、センサ特徴算出再選択部121は、ステップ304で、予兆現出センサ群に含まれるセンサの中から最も異常寄与度の高いセンサ(注目センサ)を見つける。またそれと並行して、センサ特徴算出再選択部121は、ステップ313で、予兆現出センサ群の各センサについて、ステップ312で算出した因子負荷量の空間における当該センサの近傍にあるセンサ(類似センサ)を抽出する。予兆現出センサ群に含まれるセンサと類似センサとを合わせて分析対象のセンサ群(対象センサ群)とする。
このとき、例えば、抽出する類似センサの個数を指定し、空間上における予兆現出センサ群のセンサとの距離が近いセンサから指定された個数までのセンサを類似センサとして抽出することにしてもよい。また、他の例として、抽出する類似センサの予兆現出センサ群のセンサとの距離を指定し、空間上での予兆現出センサ群のセンサとの距離が指定された距離以下のセンサを類似センサとして抽出することにしてもよい。
続いて、センサ特徴算出再選択部121は、ステップ314で、診断対象が正常な状態にあった期間(正常期間)と、診断対象が異常な状態にあった期間を含む期間(異常期間)とを決定する。このとき例えば、稼働情報210に記録されている正常期間開始212の時刻から正常期間終了213の時刻までを正常期間とし、稼働情報210において異常発生日時2154を終了日時とし、正常期間と同等の期間長の期間を異常期間とすればよい。
続いて、センサ特徴算出再選択部121は、ステップ315で、対象センサ群に含まれる複数のセンサについて、異常期間に取得されたセンシングデータを用いて因子負荷量を算出し、センサ特徴データ260に格納する。それと並行して、センサ特徴算出再選択部121は、ステップ321で、対象センサ群に含まれる複数のセンサについて、正常期間に取得されたセンシングデータを用いて因子負荷量を算出し、センサ特徴データ250に格納する。
その後、センサ特徴算出再選択部121は、ステップ316で、正常期間のセンサ特徴データ250と異常期間のセンサ特徴データ260の差分を算出し、センサ特徴差分データ270に格納する。
次に、センサ特徴算出再選択部121は、ステップ317で、センサ特徴差分データ270を参照し、ステップ304で決定した注目センサにおいて正常期間と異常期間とで最も値が大きく変化している主成分(X:注目主成分)を見つける。
更に、センサ特徴算出再選択部121は、ステップ322で、正常期間のセンサ特徴データ250における主成分毎に因子負荷量のクラスタリングを行い、得られた各クラスタにラベルを付加し、各主成分の各センサの因子負荷量とラベルとをラベリングデータ280に格納する。ここで用いるクラスタリングの方法は特に限定されない。例えば、x−means法によりクラスタ数を自動で決定するアルゴリズムを用いてもよいし、k−means法を用いて、主成分ごとにクラスタ数を与える方法を用いてもよい。あるいは、ステップ304で発つけた注目センサを基準として各主成分の因子負荷量ごとに閾値を設けても、閾値範囲内の因子負荷量をクラスタとしてもよい。
続いて、センサ特徴算出再選択部121は、ステップ323で、ステップ317で見つけた注目主成分(X)よりも上位の主成分(X−1)のラベル(例えば、ラベル(PC1)2803、ラベル(PC2)2805)が、ステップ304で発つけた注目センサのものと一致するセンサを抽出し、センサ再選択結果290に格納する。注目主成分よりも上位の主成分(傾向判定対象主成分)のラベルが注目センサのものと一致するということは、傾向判定対象主成分の傾向が注目センサと類似していることを意味する。つまり、注目センサと挙動が類似するセンサが抽出される。
図13は、センサ特徴算出再選択部121内のブロック図である。センサ特徴算出再選択部121は、入力部11、注目センサ決定部12、類似センサ抽出部13、主成分分析部14、正常異常差算出部15、注目主成分判定部16、クラスタリング部17、およびセンサ選択部18を有している。入力部11は、図12のステップ301,302,303,311,314の処理を行う。注目センサ決定部12は、図12のステップ304の処理を行う。類似センサ抽出部13は、図12のステップ313の処理を行う。主成分分析部14は、図12のステップ312,315,321の処理を行う。正常異常差算出部15は、図12のステップ316の処理を行う。注目主成分判定部16は、図12のステップ317の処理を行う。クラスタリング部17は、図12のステップ322の処理を行う。センサ選択部18は、図12のステップ323の処理を行う。
図14は、予兆診断結果表示部124で表示される全センサ群画面の一例を示す図である。図14の全センサ群画面には、各センサ群401、403、405、407と、各センサ群のそれぞれの予兆診断結果402、404、406、408とが表示されている。予兆診断結果402、404、406、408には、予兆診断結果情報230に記録されたデータがグラフとして表示される。診断対象の故障の予兆が現れているセンサ群は図14の画面にグラフで表示された異常度が変化する。ステップ303の処理では図14に表示される異常度の変化に基づいてセンサ群を選択することができる。
以上説明したように、本実施例によれば、センサ再選択システム100は、故障予兆の検知に利用可能な対象センサ群の各センサについて正常期間と異常期間の特徴の差分を正常異常差として算出する正常異常差算出部15と、対象センサ群に含まれる故障予兆が現れる注目センサと正常異常差の傾向が一致するセンサを選択するセンサ選択部18と、を有している。これにより、正常期間と異常期間の特徴の差分に基づいてセンサを選択するので、同一機種の機器で構築された予兆診断モデルを利用することなく、故障予兆を検知するためのセンサを選択することができる。なお、ここでいう特徴は一例として上記実施例の説明における因子負荷量に相当する。
また、本実施例によれば、センサ選択部18は、注目センサと正常異常差の傾向が一致するセンサを、予兆診断モデルの構築にセンシングデータを用いる診断用センサとして選択する。同一機種の機器で構築された予兆診断モデルを利用することなく、予兆診断モデルのセンサを選択することができる。
また、本実施例によれば、センサ再選択システム100は、対象センサ群の各センサについて、正常期間および異常期間を含む期間における主成分分析を行い、各主成分の因子負荷量を算出する主成分分析部14と、注目センサの正常期間の因子負荷量と異常期間の因子負荷量の差分が最も大きい主成分を注目主成分として選択する注目主成分判定部16と、を更に有し、正常異常差算出部15は、対象センサ群の各センサについて正常期間と異常期間の各主成分の因子負荷量の差分を正常異常差として算出し、センサ選択部18は、注目主成分より上位の主成分を傾向判定対象主成分とし、対象センサ群から傾向判定対象主成分の因子負荷量の傾向が注目センサと一致するセンサを診断用センサとして選択する。正常期間と異常期間の因子負荷量の差分が大きい主成分より上位の主成分の傾向に基づいてセンサを選択するので、予兆診断モデルのセンサを容易に選択することができる。
また、本実施例によれば、センサ再選択システム100は、対象センサ群の各センサと因子負荷量が互いに近傍に存在するセンサを類似センサとして抽出する類似センサ抽出部13を更に有し、主成分分析部14は、対象センサ群に含まれる各センサと類似センサについて主成分分析を行い、正常異常差算出部15は、対象センサ群に含まれる各センサと類似センサについて正常異常差を算出し、センサ選択部18は、対象センサ群に含まれる各センサと類似センサの中から傾向判定対象主成分の因子負荷量の傾向が注目センサと一致するセンサを診断用センサとして選択する。対象とするセンサの範囲を類似センサまで拡張するので、より特徴を表すセンサを確実に選択することが可能となる。
また、本実施例によれば、センサ再選択システム100は、対象センサ群に含まれる各センサと類似センサとについて各主成分の因子負荷量に基づいて主成分毎にクラスタリングを行い、各主成分の各クラスタにラベルを付加するクラスタリング部17を更に有し、センサ選択部18は、傾向判定対象主成分において注目センサと同一のクラスタに含まれるセンサを診断用センサとして選択する。正常異常差の傾向の一致をクラスタリングの結果を用いて判断するので、容易に傾向の一致を判断することができる。
また、本実施例によれば、センサ再選択システム100は、対象センサ群の中から異常寄与度が最も高いセンサを注目センサとする注目センサ決定部12を更に有する。異常寄与度により注目センサを決定するので、注目センサを機械的に容易に選択することができる。
以下に実施例2について図面を用いて詳細に説明する。
実施例1では、正常期間および異常期間は予め定められた条件に基づいて自動的に決定され、その正常期間と異常期間の因子負荷量の差分の傾向に基づいてセンサを選択した。これに対して、実施例2では、故障予兆の検知のために因子負荷量を比較する正常期間と異常期間を分析者が設定できるようにする。
これにより、診断対象の故障の予兆を良好に検知できるように正常期間と異常期間を柔軟に設定することができる。故障以外にセンシングデータの変動の要因がある場合に、その要因の影響を避けるように正常期間と異常期間を設定することができ、診断対象の故障の予兆を良好に検知可能にすることができる。例えば、季節的変動が特定の期間のセンシングデータにのみ含まれている場合に、分析者は、季節的変動がキャンセルされるように同じ季節に正常期間と異常期間を設定するといった柔軟な期間設定が可能である。
実施例2によるセンサ再選択システムの基本的な構成は図1に示した実施例1のものと同様である。また、実施例2によるセンサ再選択システムの基本的な動作は図12に示した実施例1のものと同様である。また、実施例2のセンサ特徴算出再選択部121の基本的な構成は図13に示した実施例1のものと同様である。ただし、センサ特徴算出再選択部121の入力部11は、ステップ314で、正常期間と異常期間とを決定するとき、分析者の操作入力に基づいてそれらの期間を決定することができる。
図15は、実施例2において、予兆診断結果表示部124で表示される個別センサ群画面の一例を示す図である。個別センサ群画面500は、例えば、図14に示した全センサ群画面400にて、いずれかのセンサ群(予兆現出センサ群:図15ではセンサ群#2)を選択することで表示される。個別センサ群画面500には、選択したセンサ群のセンサ群番号(センサ群#2)501と、主成分を計算した期間(正常期間)502と、予兆診断結果503と、選択したセンサ群に含まれるセンサ(センサ1、3、5)のそれぞれの特徴504と、が表示されている。選択したセンサ群に含まれるセンサのそれぞれの特徴504には、各センサの因子負荷量をヒートマップなどの手法を用いてグラフィカルに可視化した表示と、正常期間における各センサの異常寄与度の最大値および全体期間におけるセンサの異常寄与度の最大値の表示と、が含まれる。主成分を計算した期間502は、時間軸方向に操作が可能なバーにより表示されている。バーの長さおよび位置を時間軸に操作することにより、主成分を計算する期間を変更することができる。主成分を計算する期間502が変更されると、変更後の期間により主成分が計算し直され、計算結果は、選択したセンサ群に含まれるセンサのそれぞれの特徴504に反映される。
また、選択したセンサ群に含まれるセンサのそれぞれの特徴504には、当該センサ群に含まれるセンサの他に、当該センサ群に含まれるセンサの近傍に存在するセンサを追加することが可能である。
図16は、実施例2において、予兆診断結果表示部124に表示される個別センサ群画面の他の例を示す図である。図16の個別センサ群画面510には、選択したセンサ群のセンサ群番号(センサ群#2)511と、主成分を計算した期間(正常期間)512と、予兆診断結果513と、選択したセンサ群に含まれるセンサおよびその近傍のセンサ(センサ1、3、5、11、13)のそれぞれの特徴514と、が表示されている。選択したセンサ群に含まれるセンサおよびその近傍のセンサ(センサ1、3、5、11、13)のそれぞれの特徴514に表示される各因子負荷量は、選択したセンサ群のセンサおよび近傍のセンサによるセンシングデータを用いて再度計算された値である。
選択したセンサ群に含まれるセンサの近傍のセンサ(センサ11、13)は、新たに追加されたものであり未だ故障予兆の診断に使用されていないため、正常期間における各センサの異常寄与度の最大値および全体期間におけるセンサの異常寄与度の最大値の表示と、が記載されていない。選択したセンサ群の近傍のセンサは様々な抽出方法で抽出することができる。例えば、追加するセンサの個数を指定し距離の近いセンサから当該個数だけを抽出してもよい。また例えば、近傍に含まれる距離を指定し、その距離以内の全てのセンサを抽出してもよい。
図15、図16に示した個別センサ群画面には異常期間に関する情報も表示することができる。
図17は、実施例2において、予兆診断結果表示部124に表示される個別センサ群画面の更に他の例を示す図である。図17の個別センサ群画面520には異常期間の情報も表示されている。個別センサ群画面520には、選択したセンサ群のセンサ群番号(センサ群#2)521と、主成分を計算した期間(正常期間)522と、主成分を計算した期間(異常期間)524と、予兆診断結果523と、選択したセンサ群に含まれるセンサおよびその近傍のセンサ(センサ1、3、5、11、13)のそれぞれの正常期間における特徴525と、選択したセンサ群に含まれるセンサおよびその近傍のセンサ(センサ1、3、5、11、13)のそれぞれの異常期間における特徴526と、が表示されている。
選択したセンサ群に含まれるセンサおよびその近傍のセンサ(センサ1、3、5、11、13)のそれぞれの正常期間における特徴525には、正常期間522に取得されたセンシングデータを用いて算出した各センサの各主成分の因子負荷量がヒートマップでグラフィカルに可視化されている。同様に、選択したセンサ群に含まれるセンサおよびその近傍のセンサ(センサ1、3、5、11、13)のそれぞれの異常期間における特徴526には、異常期間524に取得されたセンシングデータを用いて算出した各センサの各主成分の因子負荷量がヒートマップでグラフィカルに可視化されている。
図18は、実施例2において、予兆診断結果表示部124で表示される個別センサ群画面の更に他の例を示す図である。図18の個別センサ群画面530には、選択したセンサ群のセンサ群番号(センサ群#2)531と、主成分を計算した期間(正常期間)532と、主成分を計算した期間(異常期間)534と、予兆診断結果533と、選択したセンサ群に含まれるセンサおよびその近傍のセンサ(センサ1、3、5、11、13)のそれぞれの特徴535と、が表示されている。
選択したセンサ群に含まれるセンサおよびその近傍のセンサ(センサ1、3、5、11、13)のそれぞれの特徴535には、正常期間522に取得されたセンシングデータを用いて算出した各センサの各主成分の因子負荷量と、異常期間524に取得されたセンシングデータを用いて算出した各センサの各主成分の因子負荷量との差分が、グラフィカルに可視化されている。
図19は、実施例2によるセンサ再選択結果表示画面の一例を示す図である。センサ再選択結果表示画面540には、選択したセンサ群のセンサ群番号(センサ群#2)541、正常期間542、予兆診断結果543、およびセンサ再選択結果544が表示されている。センサ再選択結果544には、センサ特徴算出再選択部121が、予兆診断モデルの構築にセンシングデータを用いる診断用センサとして再選択したセンサ(センサ3、5、13)と、それら各センサの各主成分の因子負荷量をグラフィカルに可視化した表示と、正常期間における各センサの異常寄与度の最大値および全体期間におけるセンサの異常寄与度の最大値の表示と、が含まれる。ここではセンサ3、5、13が診断用センサとして選択されている。
本実施例では、分析者は、図15〜図19の表示を見ながら、故障予兆の検知に適したセンサの再選択の作業を実施することができる。
以上説明したように、本実施例によれば、センサ再選択システム100のセンサ特徴算出再選択部121の入力部11は、操作入力に基づいて正常期間と異常期間を変更可能に決定する。そのため、正常期間と異常期間を分析者が任意に設定できるので、故障予兆をより良好に検知可能にすることができる。また、本実施例によれば、センサ特徴表示部122は、故障予兆の診断により得られた各センサの期間毎の異常寄与度と各センサの特徴とを関連付けて表示することができる。
なお、上述した各実施例によるセンサ再選択システム100は、センサ再選択システム100を構成する各部の処理手順を規定したソフトウェアプログラムをコンピュータに実行させることにより実現できることは言うまでもない。
以上、本発明の各実施例について述べてきたが、本発明は、これらの実施例だけに限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲内において、これらの実施例を組み合わせて使用したり、一部の構成を変更したりしてもよい。