JP6930597B2 - インクおよび発光素子 - Google Patents
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Description
特許文献1では、分散液を安定的に吐出することを目的に、用いる分散媒について検討されているが、発光層の発光効率について検討がなされておらず、さらなる改良の余地がある。
(1) 液滴吐出法により吐出されるインクであって、
発光性を有する半導体ナノ結晶と、該半導体ナノ結晶に担持された分散剤とから構成された粒子と、
大気圧下における沸点が180〜340℃である分散媒とを含有し、
前記分散媒の25℃における粘度をV1[mPa・s]とし、当該インクの25℃における粘度をV2[mPa・s]としたとき、V2/V1が1.3以下であることを特徴とするインク。
該一対の電極間に設けられ、上記(1)から(3)のいずれかに記載のインクの乾燥物で構成された発光層と、
該発光層と、前記一対の電極の少なくとも一方の電極との間に設けられた電荷輸送層とを備えることを特徴とする発光素子。
<インク>
本発明のインクは、ピエゾ方式またはサーマル方式の液滴吐出法(インクジェット印刷法)によりノズル孔から液滴として吐出されるインクである。このインクは、発光性を有する半導体ナノ結晶と、この半導体ナノ結晶に担持された分散剤とから構成された粒子と、この粒子を分散する主分散媒および副分散媒とを含む分散媒とを含有する。
なお、本発明のインクは、必要に応じて、例えば、電荷輸送材料、界面活性剤等を含有してもよい。
粒子は、半導体ナノ結晶と、この半導体ナノ結晶に担持された分散剤とから構成されている。半導体ナノ結晶(以下、単に「ナノ結晶」と言うこともある。)は、励起光を吸収して蛍光または燐光を発光するナノサイズの結晶体(ナノ結晶粒子)であり、例えば、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡によって測定される最大粒子径が100nm以下である結晶体である。
ナノ結晶は、例えば、所定の波長の光エネルギーや電気エネルギーにより励起され、蛍光または燐光を発することができる。
なお、ナノ結晶の発光ピークの波長は、例えば、紫外可視分光光度計を用いて測定される蛍光スペクトルまたは燐光スペクトルにおいて確認することできる。
これらの上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。なお、以下の同様の記載においても、個別に記載した上限値および下限値は任意に組み合わせ可能である。
さらに、コアおよびシェルのそれぞれは、2種以上の半導体材料を含む混晶(例えば、CdSe+CdS、CIS+ZnS等)で構成されてもよい。
これらの半導体材料で構成されるナノ結晶は、発光スペクトルの制御が容易であり、信頼性を確保しつつ、生産コストを低減し、量産性を向上させることができる。
また、ナノ結晶は、それ自体として、人体等に対する悪影響が極力低いことが好ましい。したがって、カドミウム、セレン等が極力含まれないナノ結晶を選択して単独で用いるか、上記元素(カドミウム、セレン等)を含有するナノ結晶を用いる場合には、上記元素が極力少なくなるようにその他のナノ結晶と組み合わせて用いることが好ましい。
また、ナノ結晶の平均粒子径(体積平均径)は、1nm以上であることが好ましく、1.5nm以上であることがより好ましく、2nm以上であることがさらに好ましい。かかる平均粒子径を有するナノ結晶は、所望の波長の光を発し易いのみならず、インクへの分散性および保存安定性を向上させ得ることからも好ましい。
なお、ナノ結晶の平均粒子径(体積平均径)は、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡により測定し、体積平均径を算出することにより得られる。
ナノ結晶は、量子サイズ効果によって発光を生じる。このため、ナノ結晶は、凝集すると消光現象が生じ、蛍光量子収率の低下を招き、輝度および色再現性が低下する。すなわち、本発明のようなナノ結晶を分散媒に分散してなるインクは、有機発光材料を溶媒に溶解してなるインクと異なり、凝集による発光特性の低下を生じ易い。このため、本発明のインクでは、ナノ結晶の分散安定性を確保する観点からの調製が重要となる。
このようなことから、本発明では、ナノ結晶の表面に分散媒と相溶性のある分散剤(有機リガンド)が担持(保持)されて、換言すれば、ナノ結晶の表面が分散剤によって不活性化されている。この分散剤の存在により、ナノ結晶のインク中での分散安定性を向上させることができる。
なお、分散剤は、ナノ結晶の表面に、例えば、共有結合、配位結合、イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合等により担持されている。本明細書中において、「担持」とは、分散剤がナノ結晶の表面に吸着、付着または結合された状態を総称する用語である。また、分散剤は、ナノ結晶の表面から脱離することができ、ナノ結晶による担持とナノ結晶からの脱離とが平衡状態となり、これらを繰り返すことができる。
なお、本明細書中において、「重量平均分子量(Mw)」は、ポリスチレンを標準物質としたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)を用いて測定された値を採用するものとする。
このような官能基としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、リン酸基、リン酸エステル基、ホスホン酸基、ホスホン酸エステル基、ホスフィン酸基、ホスフィン酸エステル基、チオール基、チオエーテル基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、カルボン酸基、カルボン酸エステル基、ヒドロキシル基、エーテル基、イミダゾリル基、トリアジニル基、ピロリドニル基、イソシアヌル酸基、ホウ酸エステル基、ボロン酸基等が挙げられる。
さらに、インク中で適切にナノ結晶への高い担持能力を有する点から、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、リン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基がより好ましい。
2級アミノ基を有する高分子分散剤としては、例えば、多数の2級アミノ基を有する直鎖型ポリエチレンイミン骨格を含む主鎖と、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリウレタン等の側鎖とを有する櫛型ブロックコポリマー等が挙げられる。
また、1級アミノ基、2級アミノ基および3級アミノ基を有する高分子分散剤としては、例えば、特開2008−037884号公報、特開2008−037949号公報、特開2008−03818号公報、特開2010−007124号公報に記載された直鎖型または多分岐型ポリエチレンイミンブロックとポリエチレングリコールブロックとを有する高分子化合物等が挙げられる。
なお、リン酸基を有する高分子分散剤は、アルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物を反応させることで塩を形成させ、pHを調整することも可能である。
なお、ホスホン酸基を有する高分子分散剤は、アルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物を反応させることで塩を形成させ、pHを調整することも可能である。
チオエーテル基を有する高分子分散剤としては、例えば、特開2013−60637号公報に記載されたメルカプトプロピオン酸とグリシジル変性ポリアルキレングリコールとを反応させて得られるポリアルキレングリコールチオエーテル等が挙げられる。
なお、スルホン酸基を有する高分子分散剤は、アルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物を反応させることで塩を形成させ、pHを調整することも可能である。
なお、カルボン酸基を有する高分子分散剤は、アルカリ金属水酸化物やアルカリ土類金属水酸化物を反応させることで塩を形成させ、pHを調整することも可能である。
ピロリドニル基を有する高分子分散剤としては、例えば、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
市販品としては、例えば、ビックケミー社製のDISPERBYKシリーズに含まれるDISPERBYK−102、DISPERBYK−103、DISPERBYK−108、DISPERBYK−109、DISPERBYK−110、DISPERBYK−111、DISPERBYK−118、DISPERBYK−140、DISPERBYK−145、DISPERBYK−161、DISPERBYK−164、DISPERBYK−168、DISPERBYK−168、DISPERBYK−180、DISPERBYK−182、DISPERBYK−184、DISPERBYK−185、DISPERBYK−190、DISPERBYK−191、DISPERBYK−2000、DISPERBYK−2001、DISPERBYK−2008、DISPERBYK−2009、DISPERBYK−2010、DISPERBYK−2012、DISPERBYK−2013、DISPERBYK−2022、DISPERBYK−2025、DISPERBYK−2050、DISPERBYK−2060、DISPERBYK−9070、DISPERBYK−9077;エボニック社製のTEGO Dispersシリーズに含まれるTEGO Dispers 610、TEGO Dispers 630、TEGO Dispers 650、TEGO Dispers 651、TEGO Dispers 652、TEGO Dispers 655、TEGO Dispers 660C、TEGO Dispers 662C、TEGO Dispers 670、TEGO Dispers 685、TEGO Dispers 700、TEGO Dispers 710、TEGO Dispers 715W、TEGO Dispers 740W、TEGO Dispers 750W、TEGO Dispers 752W、TEGO Dispers 755W、TEGO Dispers 760W;BASF社製のEFKAシリーズに含まれるEFKA−44、EFKA−46、EFKA−47、EFKA−48、EFKA−4010、EFKA−4050、EFKA−4055、EFKA−4020、EFKA−4015、EFKA−4060、EFKA−4300、EFKA−4330、EFKA−4400、EFKA−4406、EFKA−4510、EFKA−4800;日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSEシリーズに含まれるSOLSPERS−3000、SOLSPERS−9000、SOLSPERS−16000、SOLSPERS−17000、SOLSPERS−18000、SOLSPERS−13940、SOLSPERS−20000、SOLSPERS−24000、SOLSPERS−32550、SOLSPERS−71000;味の素ファインテクノ社製のアジスパーシリーズに含まれるアジスパー(AJISPUR)PB−821、アジスパーPB−822、アジスパーPB−823;楠本化成製のDISPARLONシリーズに含まれるDISPARLON DA325、DISPARLON DA375、DISPARLON DA1800、DISPARLON DA7301;共栄社化学社製のフローレンシリーズに含まれるフローレン(FLORENE)DOPA−17HF、フローレンDOPA−15BHF、フローレンDOPA−33、フローレンDOPA−44等が挙げられる。
なお、これら高分子分散剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
かかる観点から、分散剤の重量平均分子量(Mw)は、50,000以下であることが好ましく、100〜50,000程度であることがより好ましい。なお、低分子分散剤のうち重合体でない化合物の質量を表す場合には、「重量平均分子量」に代えて「分子量」を用いる。
一方、ナノ結晶に対する分散剤の量は、ナノ結晶100質量%に対して1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上であることがさらに好ましい。これにより、インク中におけるナノ結晶の十分な分散安定性を保持することができる。
電荷輸送材料は、通常、発光層に注入された正孔および電子を輸送する機能を有する。
電荷輸送材料は、正孔および電子を輸送する機能を有するものであれば、特に限定されない。電荷輸送材料は、高分子電荷輸送材料と低分子電荷輸送材料とに分類される。
界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、炭化水素系界面活性剤等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、電荷をトラップし難いことから、シリコーン系界面活性剤および/または炭化水素系界面活性剤が好ましい。
これらの具体例としては、例えば、ビックケミー社製のBYKシリーズ、日信化学工業株式会社製のサーフィノール等が挙げられる。これらの中でも、インクを塗布した際に平滑性の高い塗膜が得られることから、有機変性シロキサンからなるシリコーン系界面活性剤を好適に用いることができる。
このような分散剤を担持したナノ結晶からなる粒子が分散媒に分散されている。
分散媒としては、特に限定されないが、例えば、芳香族炭化水素化合物、芳香族エステル化合物、芳香族エーテル化合物、芳香族ケトン化合物、脂肪族炭化水素化合物、脂肪族エステル化合物、脂肪族エーテル化合物、脂肪族ケトン化合物、アルコール化合物、アミド化合物、他の化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
脂肪族炭化水素化合物としては、ペンタン、ヘキサン、オクタン、シクロヘキサン等が挙げられる。
アルコール化合物としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1−ヘプタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、プロピレングリコ−ル、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチル 3−ヒドロキシヘキサネート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、シクロヘキサノール等が挙げられる。
他の化合物としては、水、ジメチルスルホキシド、アセトン、クロロホルム、塩化メチレン等が挙げられる。
なお、インク中の溶存酸素や水分は、200ppm以下にすることが好ましく、100ppm以下にすることがより好ましく、10ppm以下にすることがさらに好ましい。
ここで、粒子の質量は、ナノ結晶の質量とこのナノ結晶に担持された分散剤の質量との合計値を指す。
分散媒の沸点は、180〜340℃であればよいが、200〜330℃程度であることが好ましく、210〜320℃程度であることがより好ましい。これにより、インクが液滴吐出ヘッドのノズル孔で乾燥することをより確実に防止することができる。
また、インクの25℃における粘度の具体的な値は、特に限定されないが、1.1〜25mPa・s程度であることが好ましく、1.6〜18mPa・s程度であることがより好ましく、2.2〜13mPa・s程度であることがさらに好ましい。
本発明の発光素子は、陽極および陰極(一対の電極)と、これらの間に設けられ、本発明のインクの乾燥物で構成された発光層と、発光層と陽極および陰極の少なくとも一方の電極との間に設けられた電荷輸送層とを備えている。
なお、電荷輸送層は、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および電子注入層からなる群より選択される少なくとも1層を含むことが好ましい。また、本発明の発光素子は、さらに、封止部材等を備えてもよい。
なお、図1では、便宜上、各部の寸法およびそれらの比率を誇張して示し、実際とは異なる場合がある。また、以下に示す材料、寸法等は一例であって、本発明は、それらに限定されず、その要旨を変更しない範囲で適宜変更することが可能である。
以下では、説明の都合上、図1の上側を「上側」または「上方」と、上側を「下側」または「下方」と言う。また、図1では、図面が煩雑になることを避けるため、断面を示すハッチングの記載を省略している。
以下、各層について順次説明する。
陽極2は、外部電源から発光層6に向かって正孔を供給する機能を有する。
陽極2の構成材料(陽極材料)としては、特に限定されないが、例えば、金(Au)のような金属、ヨウ化銅(CuI)のようなハロゲン化金属、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)のような金属酸化物等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
陽極2は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法のような乾式成膜法により形成することができる。この際、フォトリソグラフィー法やマスクを用いた方法により、所定のパターンを有する陽極2を形成してもよい。
陰極3は、外部電源から発光層6に向かって電子を供給する機能を有する。
陰極3の構成材料(陰極材料)としては、特に限定されないが、例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、銀、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、希土類金属等が挙げられる。これらは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
陰極3は、例えば、蒸着法やスパッタリング法のような乾式成膜法により形成することができる。
正孔注入層4は、陽極2から供給された正孔を受け取り、正孔輸送層5に注入する機能を有する。なお、正孔注入層4は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
また、上述の正孔注入材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正孔注入層4は、単層構成であっても、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
このような正孔注入層4は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。
一方、正孔注入層4を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等を好適に用いることができる。
正孔輸送層5は、正孔注入層4から正孔を受け取り、発光層6まで効率的に輸送する機能を有する。また、正孔輸送層4は、電子の輸送を防止する機能を有していてもよい。なお、正孔輸送層5は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
また、上述の正孔輸送材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
正孔輸送層5は、単層構成であっても、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
このような正孔輸送層5は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。
一方、正孔輸送層5を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等を好適に用いることができる。
電子注入層8は、陰極3から供給された電子を受け取り、電子輸送層7に注入する機能を有する。なお、電子注入層8は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
また、上述の電子注入材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電子注入層8は、単層構成であっても、2層以上が積層された積層構成であってもよい。
このような電子注入層8は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。
一方、電子注入層8を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用され得る。
電子輸送層7は、電子注入層8から電子を受け取り、発光層6まで効率的に輸送する機能を有する。また、電子輸送層7は、正孔の輸送を防止する機能を有していてもよい。なお、電子輸送層7は、必要に応じて設けるようにすればよく、省略することもできる。
また、上述の電子輸送材料は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
電子輸送層7の厚さは、特に限定されないが、5〜500nm程度であることが好ましく、5〜200nm程度であることがより好ましい。
電子輸送層7は、単層であっても、2以上が積層されたものであってもよい。
このような電子輸送層7は、湿式成膜法または乾式成膜法により形成することができる。
一方、電子輸送層7を乾式成膜法で形成する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用されうる。
発光層6は、発光層6に注入された正孔および電子の再結合により生じるエネルギーを利用して発光を生じさせる機能を有する。
発光層6は、本発明のインクの乾燥物で構成される。したがって、発光層6中には、ナノ結晶が均一に分散して存在するため、発光層6は、優れた発光効率を有する。
発光層8は、湿式成膜法により形成することができ、本発明のインクを、液滴吐出法を用いて供給し、得られた塗膜を乾燥する。
バンクの高さは、特に限定されないが、0.1〜5μm程度であることが好ましく、0.2〜4μm程度であることがより好ましく、0.2〜3μm程度であることがさらに好ましい。
バンクの開口の長さは、10〜400μm程度であることが好ましく、20〜200μm程度であることがより好ましく、50〜200μm程度であることがさらに好ましい。
また、バンクの傾斜角度は、10〜100°程度であることが好ましく、10〜90°程度であることがより好ましく、10〜80°程度であることがさらに好ましい。
発光素子の製造方法は、前述したようなインクを支持体上に、液滴吐出法(インクジェット法)を用いて供給して塗膜を形成し、塗膜を乾燥することにより発光層を形成する工程(以下、「発光層形成工程」とも称する)を有している。
支持体は、図1に示す構成では、正孔輸送層5または電子輸送層7であるが、製造目的の発光素子によって異なる。
このように、支持体としては、陽極、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層または陰極であり得る。なお、支持体は、好ましくは陽極、正孔注入層または正孔輸送層であり、より好ましくは正孔注入層または正孔輸送層であり、さらに好ましくは正孔輸送層である。
液滴吐出法では、本発明のインクを液滴吐出ヘッドのノズル孔から間欠的に支持体上に所定のパターンで吐出する。液滴吐出法によれば、高い自由度で描画パターニングを行うことができる。中でも、ピエゾ方式の液滴吐出法によれば、分散媒の選択性を高めることができるとともに、インクに対する熱負荷を低減することができる。
また、ノズル孔の開口径は、5〜50μm程度であることが好ましく、10〜30μm程度であることがより好ましい。これにより、ノズル孔の目詰まりを防止しつつ、吐出精度を高めることができる。
相対湿度が前記下限値以上であると、塗膜を形成する際の条件の制御が容易となることから好ましい。一方、相対湿度が前記上限値以下であると、得られる発光層6に悪影響を及ぼし得る塗膜に吸着する水分量を低減することができることから好ましい。
乾燥は、室温(25℃)で放置して行っても、加熱することにより行ってもよい。乾燥を加熱により行う場合、乾燥温度は、特に限定されないが、40〜150℃程度であることが好ましく、40〜120℃程度であることがより好ましい。
さらに、乾燥時間は、1〜90分であることが好ましく、1〜30分であることがより好ましい。
例えば、本発明のインクおよび発光素子は、それぞれ、前述した実施形態に構成において、他の任意の構成を追加して有していてもよいし、同様の機能を発揮する任意の構成と置換されていてよい。
また、本発明のインクは、ノズルプリント印刷法によりノズル孔から液柱としてストライプ状に塗布するインクとしても好適に用いることができる。
1.ナノ結晶の製造
1−1.コアの製造
1000mLのフラスコに、酢酸インジウム17.48gと、トリオクチルホスフィンオキサイド25.0gと、ラウリン酸35.98gとを仕込み、混合液を得た。この混合液を、窒素ガスでバブリングしながら160℃で40分撹拌した。
さらに、混合液を250℃で20分間撹拌した後、300℃まで加熱して、この温度で撹拌を続けた。
さらに、窒素雰囲気下でトリス(トリメチルシリル)ホスフィン7.5gをトリオクチルホスフィン30.0gに溶解させ、溶解液を得た後、この溶解液5mLを上記反応液に12分間かけ滴下し、その後、使い切るまで15分間隔で5mLずつ反応液に加えた。
さらに、混合液を250℃で20分間撹拌、300℃まで加熱した後、70℃まで冷却し、冷却された混合液を前記反応液に加えた。
反応液の攪拌を1時間維持し、室温まで冷却した後、反応液にトルエン100mLとエタノール400mLとを加えて、微粒子を凝集させた。
まず、1000mLのフラスコに、得られたコアを含むトリオクチルホスフィン分散液がコア3.6g、トリオクチルホスフィン90gになるよう調整した。その後、分散液に窒素雰囲気下、トリオクチルホスフィンオキシド90gと、ラウリン酸30gとを加え、80℃まで過熱攪拌した。
別途、窒素雰囲気下で1Mのジエチル亜鉛のヘキサン溶液42.9mLと、9.09質量%のビストリメチルシリルスルフィドのトリオクチルホスフィン溶液92.49gとを、トリオクチルホスフィン162gに混合して、混合液を作製した。
反応終了後、反応液を常温まで冷却させ、トルエン500mLとエタノール2000mLとを反応液に加えて、シェルでコアを被覆してなるナノ結晶を沈殿させた。
(QD−Aの作製)
まず、オレイルアミン(分子量:267)をトルエンに溶解させ、オレイルアミンのトルエン溶液を得た。
オレイルアミンをグルタチオン酸(分子量:307)に変更したこと以外は、前記QD−Aの作製と同様にして、グルタチオン酸が担持されたナノ結晶(QD−B)を得た。
オレイルアミンを分散剤L1(分子量:864)に変更したこと以外は、前記QD−Aの作製と同様にして、分散剤L1が担持されたナノ結晶(QD−C)を得た。
オレイルアミンを分散剤L2(重量平均分子量:5,000)に変更したこと以外は、前記QD−Aの作製と同様にして、分散剤L2が担持されたナノ結晶(QD−D)を得た。
オレイルアミンを分散剤L3(重量平均分子量:10,000)に変更したこと以外は、前記QD−Aの作製と同様にして、分散剤L3が担持されたナノ結晶(QD−E)を得た。
オレイルアミンを分散剤L4(重量平均分子量:50,000)に変更したこと以外は、前記QD−Aの作製と同様にして、分散剤L4が担持されたナノ結晶(QD−F)を得た。
(実施例1)
1.0質量%になるように、上記QD−Aを安息香酸ブチルに分散させることにより、インクを調製した。
(実施例2)
安息香酸ブチルを1−メトシキナフタレンに変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、インクを調製した。
安息香酸ブチルをジエチレングリコールジブチルエーテルに変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、インクを調製した。
(実施例4)
安息香酸ブチルをシクロヘキシルベンゼンに変更したこと以外は、前記実施例1と同様にして、インクを調製した。
QD−Aを上記QD−Bに変更したこと以外は、前記実施例1〜4と同様にして、インクを調製した。
(実施例7〜9、比較例3)
QD−Aを上記QD−Cに変更したこと以外は、前記実施例1〜4と同様にして、インクを調製した。
QD−Aを上記QD−Dに変更したこと以外は、前記実施例1〜4と同様にして、インクを調製した。
(実施例14、15、比較例4、5)
QD−Aを上記QD−Eに変更したこと以外は、前記実施例1〜4と同様にして、インクを調製した。
QD−Aを上記QD−Fに変更したこと以外は、前記実施例1〜4と同様にして、インクを調製した。
なお、分散媒および得られたインクの粘度(25℃)は、粘度測定装置(MCR102、AntonPaar社製)を用いて測定した。
各実施例および各比較例で得られたインクについて、以下の評価を行った。
4−1.吐出安定性の評価
まず、ITOがストライプ状にパターニングされたガラス基板(40mm×70mm)上に、フッ素界面活性剤を添加したポジ型フォトレジストをスピンコートした。その後、ポジ型フォトレジストに対して、フォトリソグラフィーによるパターニングにより、縦300μm、横100μm(縦ピッチ350μm、横ピッチ150μm)のピクセルを区画するバンクを形成した。これにより、バンク付き支持体を得た。
なお、バンクの厚さを光干渉表面形状計測装置(株式会社菱化システム製)を用いて測定し、厚さ2.0μmのバンクが形成されていることを確認した。
○:正常に液滴が吐出されているピクセルの数が800以上、900未満である。
△:正常に液滴が吐出されているピクセルの数が700以上、800未満である。
×:正常に液滴が吐出されているピクセルの数が700である。
この評価結果を表1および表2に示す。
まず、前記と同じインクジェットプリンターを用いて、前記と同様にして作製したバンク付き支持体のピクセル内に、45nmの正孔注入層と、30nmの正孔輸送層と、30nmの発光層とを順次を形成した。
なお、正孔注入層は、PEDOT/PSS(CLEVIOUS P JET)を、正孔輸送層は、1.0質量%のTFBのテトラリン溶液を、発光層は、上記で得られたインクをそれぞれ用いて形成した。
また、発光層を形成する際に、塗膜(インクのパターン)を、0.003Paの減圧下に25℃で30分間乾燥させた。
なお、電子輸送層は、TPBIを、電子注入層は、フッ化リチウムを、陰極は、アルミニウムをそれぞれ用いて形成した。
さらに、陰極まで形成された支持体をグローブボックスに搬送し、エポキシ樹脂を塗布した封止ガラスを支持体に貼りあわせた。これにより、発光素子を作製した。
○:発光効率が1.5cd/A以上、2.0cd/A未満である。
△:発光効率が1.0cd/A以上、1.5cd/A未満である。
×:発光効率が1.0cd/A未満である。
この評価結果を表1および表2に示す。
これに対して、各比較例で得られたインクでは、十分な吐出安定性および高い発光効率を実現することができなかった。
2 陽極
3 陰極
4 正孔注入層
5 正孔輸送層
6 発光層
7 電子輸送層
8 電子注入層
Claims (3)
- 液滴吐出法により吐出されるインクであって、
発光性を有する半導体ナノ結晶と、該半導体ナノ結晶に担持された分散剤とから構成された粒子と、
大気圧下における沸点が180〜340℃である分散媒とを含有し、
前記分散媒は、芳香族炭化水素化合物及び芳香族エーテル化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記分散媒の25℃における粘度をV1[mPa・s]とし、当該インクの25℃における粘度をV2[mPa・s]としたとき、V2/V1が1.1以下であることを特徴とするインク。 - 前記分散剤の重量平均分子量は、250〜10,000である請求項1に記載のインク。
- 前記分散媒の沸点が210〜320℃である請求項1又は2に記載のインク。
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