JP6928505B2 - 高分子と溶媒の相互作用パラメータを算出する方法、装置及びプログラム - Google Patents

高分子と溶媒の相互作用パラメータを算出する方法、装置及びプログラム Download PDF

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本発明は、高分子と溶媒の相互作用パラメータを算出する方法、装置及びプログラムに関する。
分子モデルを構成する各種パラメータを適切に設定すれば、分子動力学シミュレーションによって、物質の物性を算出できる。例えば、高分子を溶媒に溶かした高分子溶液の物性(例えば浸透圧、蒸気圧)や、ゴムなどの架橋された高分子の物性(例えばSS特性、粘弾性)を算出できる。
特許文献1には、高分子溶液の物性計算を行うために必要となるパラメータである、高分子と溶媒との間の相互作用パラメータを算出する方法について記載されている。
特開2017−40967号公報
特許文献1において、濃度が異なる複数の高分子溶媒モデルを用意し、各濃度について溶液状態の溶媒化学ポテンシャルを算出している。溶液状態の溶媒化学ポテンシャルを算出する方法として自由エネルギー摂動法を例示しているが、統計誤差が大きいためシステム全体の粒子数を多くする必要がある。自由エネルギー摂動法は、1つの濃度について高分子粒子と溶媒粒子の間のポテンシャルを変化させた複数通りの計算が必要となる。したがって、特許文献1の方法では、計算コストが大きくなる。なお、特許文献1以外には、高分子と溶媒との間の相互作用パラメータを決定する手法を開示する文献はない。
本開示は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、高分子と溶媒の相互作用パラメータを低計算コストで算出する方法、装置及びプログラムを提供することである。
本発明は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
すなわち、本発明の高分子と溶媒の相互作用パラメータを算出する方法は、
予め設定された高分子モデルデータ及び溶媒分子モデルデータを用い、前記高分子モデルと前記溶媒分子モデルとを混合させた高分子溶液モデルを、濃度を異ならせて複数設定するステップと、
前記高分子溶液モデルが存在し得る空間を、前記高分子モデルが配置される第1領域と、前記第1領域以外の領域である第2領域とに区画し、前記高分子モデルが前記第1領域から前記第2領域に移動することを禁止する条件を含む解析条件のもとで平衡状態における前記高分子溶液モデルの分子動力学計算の計算結果に基づき、前記第1領域と前記第2領域の圧力差である浸透圧を濃度毎に算出するステップと、
複数の濃度における浸透圧の算出結果と式(1)に対応する式とを用いて、近似法により式(1)における高分子と溶媒の相互作用パラメータχを決定するステップと、
を含む。
Figure 0006928505

ただし、Πは、浸透圧(第1領域の圧力−第2領域の圧力)を示し、Vは溶媒粒子の1粒子あたりの体積を示し、kはボルツマン定数を示し、Tは温度を示し、nは高分子鎖長を示し、φは高分子体積分率を示し、χは高分子と溶媒分子の相互作用パラメータを示す。
この方法によれば、浸透圧Πに基づきフローリー・ハギンズ式(4)で示されるΔμ(純溶媒状態の溶媒化学ポテンシャルと溶液状態の溶媒化学ポテンシャルの差)に関する項が算出できるので、近似法により高分子と溶媒の相互作用パラメータχを決定することが可能となる。
また、化学ポテンシャルを算出するための自由エネルギー摂動法では統計誤差を低減させるためにシステム全体の粒子数を多くしなければならず、更に、1つの濃度について異なる複数条件での計算が必要であるのに対し、浸透圧の算出ではシステム全体の粒子数を多くしなくても精度が得られ、更に、1つの濃度について1つの条件で算出が可能となる。
したがって、従来に比べて高分子と溶媒の相互作用パラメータを低計算コストで算出することが可能となる。
高分子と溶媒の相互作用パラメータを算出する装置を模式的に示すブロック図。 浸透現象を再現するために設定する条件に関する説明図。 近似に関する説明図。 上記装置が実行する処理ルーチンを示すフローチャート。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
[高分子と溶媒の相互作用パラメータを算出する装置]
本実施形態の装置1は、未架橋高分子モデルと溶媒分子モデルを用いた分子動力学計算によって、高分子と溶媒の間に働く相互作用パラメータを算出する装置である。
図1に示すように、装置1は、初期設定部10と、モデル設定部11と、分子動力学計算実行部12と、浸透条件設定部13と、浸透圧算出部14と、近似部15と、を有する。これら各部10〜15は、CPU、メモリ、各種インターフェイス等を備えたパソコン等の情報処理装置において予め記憶されている図示しない処理ルーチンをCPUが実行することによりソフトウェア及びハードウェアが協働して実現される。
図1に示す初期設定部10は、キーボードやマウス等の既知の操作部を介してユーザからの操作を受け付け、解析対象となる高分子モデル及び溶媒分子モデルに関するデータの設定、分子動力学計算に必要な解析条件などの各種設定を実行し、これら設定値をメモリに記憶する。図1に示すように、メモリには、高分子モデルデータM1、溶媒分子モデルデータM2が記憶されている。高分子モデルデータには、複数の粒子が連なった分子鎖の数、1分子鎖あたりの粒子の数、結合ポテンシャル及び非結合ポテンシャルなどが設定されている。本実施形態では、一例として、200ビーズからなるKremer-Grest分子鎖モデルが設定されており、濃度に応じてKremer-Grest分子鎖モデルの本数を1〜10本に変更している。結合ポテンシャルには、FENE−LJ(レナードジョーンズ)が設定され、非結合ポテンシャルには、WCA(斥力のみのLJポテンシャル)が設定されている。勿論、これは一例であって、その他の設定が可能である。溶媒分子モデルデータM2には、1つの分子で構成され、溶媒の既知の非結合ポテンシャルが設定されている。さらに、初期設定部10は、浸透現象を再現するための解析条件の入力を受け付けて、メモリに保存する。本実施形態では、浸透現象を再現するための浸透現象用の非結合ポテンシャルを設定している。
図1に示すモデル設定部11は、予め設定された高分子モデルデータM1及び溶媒分子モデルデータM2を用い、高分子モデルと溶媒分子モデルを混合させた高分子溶液モデルを設定する。モデル設定部11は、溶媒分子モデルに対して混合させる高分子モデルの量を変更することで、混合割合(濃度)が異なる複数の高分子溶液モデルを生成する。高分子溶液モデルデータM3は、メモリに記憶される。例えば、モデル設定部11は、所定量(例えば5000個)の溶媒モデルに対して1本の高分子モデルを添加して、第1濃度の高分子溶液モデルデータM3_1を生成する。モデル設定部11は、更に、1本の高分子モデルを添加して、第2濃度の高分子溶液モデルデータM3_2を生成する。これを繰り返し、k個の高分子溶液モデルデータM3_i(i=1〜k;kは自然数)を生成する。上限値kは、ユーザが初期設定部10を介して設定する。本実施形態では、高分子モデルが1〜10本とした10通りの溶液モデルを生成した。
図2に示すように、高分子溶液モデルM3には、高分子モデルM1と溶媒分子モデルM2とが含まれている。図1に示す浸透条件設定部13は、高分子溶液モデルM3が存在し得る空間を、高分子モデルM1が配置される第1領域Ar1と、第1領域Ar1以外の領域である第2領域Ar2とに区画し、高分子モデルM1が第1領域Ar1から第2領域Ar2に移動することを禁止する条件を設定する。溶媒分子モデルM2は、第1領域Ar1及び第2領域Ar2を自由に移動可能にしている。第2領域Ar2の外縁には、周期境界条件を設定している。周期境界条件は、コンピュータの演算能力が有限であることから、数十〜数百個程度の系からマクロな系の性質を計算するために用いる。周期境界条件では、モデルは、第2領域Ar2の外縁から力を受けることがなく、そのまま外に出てしまい、対面の壁の相対する位置から同じ速度で入ってくるとする境界条件である。
具体的には、高分子モデルM1が第1領域Ar1から第2領域Ar2に移動することを禁止する条件として、第1領域Ar1と第2領域Ar2の境界面C2との距離に応じた斥力ポテンシャルを高分子モデルM1に設定している。斥力ポテンシャルは、高分子モデルM1のみに設定される。このようにすれば、高分子モデルM1が第1領域Ar1と第2領域Ar2の境界面C2に近づけば、その距離に応じて高分子モデルM1に斥力(反発力)が作用することになり、高分子モデルM1が境界面C2を超えられない斥力ポテンシャルであれば、境界面C2に半透膜が配置されているような機能を実現できる。一方、溶媒分子モデルM2には斥力ポテンシャルが設定されていないので、溶媒分子モデルM2は第1領域Ar1及び第2領域Ar2を自由に往来できる。
高分子モデルM1が第1領域Ar1から第2領域Ar2に移動することを禁止する条件としては、上記に限定されない。例えば、第1領域Ar1と第2領域Ar2の境界面C2に、溶媒分子モデルM2よりも大きく、且つ、高分子モデルM1よりも小さい穴が複数形成された半透膜モデルを配置することも考えられる。
図1に示す分子動力学計算実行部12は、高分子溶液モデルデータM3を用いた分子動力学計算を実行する。分子動力学計算実行部12が行う処理としては、図2に示す斥力ポテンシャルが設定された状態での高分子溶液モデルの平衡化処理が挙げられる。平衡化処理では、高分子溶液モデルデータM3の体積がほぼ一定になる(体積変化が閾値以下になる)まで各分子の挙動を計算し、平衡状態での高分子体積分率φを算出する。高分子体積分率φは、高分子溶液モデルデータM3に記憶される。平衡化処理は、予め定めた温度及び圧力を含む解析条件のもとで実行される。本実施形態では、第2領域Ar2の圧力を設定して実行している。
図1に示す浸透圧算出部14は、浸透条件設定部13が設定した条件を含む解析条件のもとで平衡状態における高分子溶液モデルM3の分子動力学計算の計算結果に基づき、第1領域Ar1と第2領域Ar2の圧力差である浸透圧を濃度毎に算出する。具体的には、或る時点における粒子の位置、速度、体積に基づき式(2)を用いて微視的圧力を算出し、式(3)により微視的圧力の時間平均を圧力として算出している。浸透圧Π=第1領域Ar1の圧力−第2領域Ar2の圧力である。
Figure 0006928505

Pは圧力を示し、pは微視的圧力関数を示し、Vは体積を示し、NはVに含まれる粒子数を示し、mはh番目の粒子の質量を示し、vはh番目の粒子の速度ベクトルを示し、rhjはh番目とj番目の粒子間の距離を示し、φ(r)は距離r離れた粒子間に作用するポテンシャルエネルギーを示す。式(3)は、時間変化し得る微視的圧力関数の時間平均が圧力であることを示す。
浸透圧算出部14が算出した第1濃度〜第k濃度の浸透圧[Π_i]{i=1〜k}は、メモリに記憶される。
図1に示す近似部15は、複数の濃度(1〜k)における浸透圧の算出結果[Π_i]{i=1〜k}と式(1)に基づき式とを用いて、近似法により式(1)における高分子と溶媒の相互作用パラメータχを決定する。式(1)はフローリー・ハギンズ理論に基づく式である。
Figure 0006928505

ただし、Πは浸透圧[第1領域の圧力−第2領域の圧力]を示し、Vは溶媒粒子の1粒子あたりの体積を示し、kはボルツマン定数を示し、Tは温度を示し、nは高分子鎖長を示し、φは高分子体積分率を示し、χは高分子と溶媒分子の相互作用パラメータを示す。
純溶媒状態の溶媒化学ポテンシャルと溶液状態の溶媒化学ポテンシャルの差Δμは、フローリー・ハギンズ式(4)で表現できる。また、Δμは、式(5)に示すように、溶媒の1粒子あたりの体積及び浸透圧を用いて表現できる。したがって、溶媒の1粒子あたりの体積と浸透圧とからΔμを算出し、算出したΔμを式(4)で近似してもよい。式(1)は、式(4)及び式(5)を併せて浸透圧Πを左項とした式である。
Figure 0006928505
ここで、未知のパラメータは、χであり、その他のパラメータは予め設定されているか、分子動力学計算によって算出されて既知であるので、近似によって両パラメータを決定する。本実施形態では、図3に例示するように、近似部15は、最小二乗法を用いて、複数の濃度における浸透圧の算出結果に基づくΔμと、式(1)に対応する式(4)及び(5)を用いて、近似法によりχを決定する。具体的には、式(5)によりΔμを算出し、算出したΔμと、式(4)の算出結果との残差の二乗和が最小となるように、高分子と溶媒の相互作用パラメータχを決定する。勿論、最小二乗法以外の近似法を用いてもよい。また、浸透圧と、式(1)の算出結果との残差の二乗和が最小となるように、高分子と溶媒の相互作用パラメータχを決定してもよい。
本実施形態では、図3に示すように、異なる10つの濃度について計算を行っているが、少なくとも5つの濃度があれば、低計算コストで且つ或る程度の精度が得られる。5つの濃度の内訳は、低濃度が1つ、高濃度が1つ、中間濃度に3つあればよい。5点あれば、フローリー・ハギンズ式にフィティングしやすく、精度を確保しやすいからである。
[高分子と溶媒の間の相互作用パラメータを算出する方法]
図1に示す装置1を用いて、高分子と溶媒の相互作用パラメータを算出する方法について、図4を用いて説明する。
まず、ステップST1において、初期設定部10は、解析対象となる高分子モデルデータM1、溶媒分子モデルデータM2の設定、高分子溶液モデルデータM3を生成する必要となる濃度に関する情報、浸透現象を再現するための条件(斥力ポテンシャル等)、分子動力学計算に必要な解析条件(温度、圧力など)などの各種設定を行い、これらの設定値をメモリに記憶する。
ステップST2〜4は、所定回数繰り返す。本実施形態では、i=1〜kとし、k=10として、10つの異なる高分子溶液モデルM3を処理対象としている。
ステップST2において、モデル設定部11は、所定量の溶媒分子モデルM2に、1本の未架橋高分子モデルM1を加え、第i濃度の高分子溶液モデルを設定する。必要に応じてメモリに記憶する。すなわち、ステップST2が複数回実行されることで、モデル設定部11は、予め設定された高分子モデルM1及び溶媒分子モデルデータM2を用い、濃度を異ならせて複数(k個)の高分子溶液モデルM3_iを設定することになる。
ステップST3において、浸透条件設定部13は、高分子溶液モデルM3が存在し得る空間を、高分子モデルM1が配置される第1領域Ar1と、第1領域Ar1以外の領域である第2領域Ar2とに区画し、高分子モデルM1が第1領域Ar1から第2領域Ar2に移動することを禁止する条件を設定する。本実施形態においては、第1領域Ar1と第2領域Ar2の境界面C2との距離に応じた斥力ポテンシャルを高分子モデルM1に設定する。
ステップST4において、浸透現象を再現する解析条件のもとで平衡状態における高分子溶液モデルM3の分子動力学計算の計算結果に基づき、第1領域Ar1と第2領域Ar2の圧力差である浸透圧Πを濃度毎に算出する。
ステップST5において、ステップST4の算出結果と式(1)に対応する式を用いて、近似法によりχを決定する。
本開示の効果について説明する。
(1)高分子溶液モデルM3の粒子数
特許文献1に記載の方法では、溶媒状態の化学ポテンシャルを算出するために自由エネルギー摂動法を用いている。自由エネルギー摂動法は、統計誤差が比較的大きいために、統計誤差を小さくするために、システム系(高分子モデル全体)の粒子数を大きくする必要がある。そのため、精度を担保するためには、平均して1つの濃度について高分子溶液モデルM3が平均約30万粒子となる。平均としているのは、濃度の違いによる。
これに対して、本実施形態の方法では、自由エネルギー摂動法は用いておらず、高分子溶液モデルM3は平均約2万粒子あればよい。同様に、平均としているのは、濃度の違いによる。すなわち、本実施形態の方法によれば、従来に比べてシステム全体の粒子数を10分の1以下に低減させることができる。
(2)平衡化処理の反復数
許文献1に記載の方法では、溶液状態の溶媒化学ポテンシャルを算出するために、高分子モデルと溶媒分子モデルの間の非結合ポテンシャルを20通り変化させた。すなわち、異なる条件について20通りの平衡化処理を実行している。
これに対して、本実施形態の方法では、浸透現象を再現する条件を設定するだけであるので、1通りの平衡化処理を実行するだけでよい。すなわち、本実施形態の方法によれば、従来に比べて1濃度あたりの平衡化処理の回数を1回に低減させることができる。
(3)計算時間
200個の粒子から構成されるKremer-Grest分子鎖の高分子モデルM1と、1個の溶媒分子モデルM2とを混合した高分子溶液モデルM3について計算を行った。特許文献1に記載の方法と本実施形態の方法とで、χ=0.24前後のほぼ精度を保った値が得られている。計算時間について、特許文献1の方法では、1つの濃度について16CPUで14.4時間必要とした。これに対して、本実施形態の方法では、1つの濃度について8CPUで1時間必要とした。CPUの一つあたりの性能は同じである。よって、本実施形態の方法によれば、明らかに、精度を確保したまま計算コストを著しく低減できていることが理解できる。
以上のように、本実施形態の高分子と溶媒の相互作用パラメータを算出する方法は、
予め設定された高分子モデルデータM1及び溶媒分子モデルデータM2を用い、高分子モデルM1と溶媒分子モデルM2とを混合させた高分子溶液モデルM3を、濃度を異ならせて複数設定するステップ(ST2)と、
高分子溶液モデルM3が存在し得る空間を、高分子モデルM1が配置される第1領域Ar1と、第1領域Ar1以外の領域である第2領域Ar2とに区画し、高分子モデルM1が第1領域Ar1から第2領域Ar2に移動することを禁止する条件を含む解析条件のもとで平衡状態における高分子溶液モデルM3の分子動力学計算の計算結果に基づき、第1領域Ar1と第2領域Ar2の圧力差である浸透圧Πを濃度毎に算出するステップ(ST3、ST4)と、
複数の濃度における浸透圧の算出結果と式(1)に対応する式とを用いて、近似法により式(1)における高分子と溶媒の相互作用パラメータχを決定するステップ(ST5)と、
を含む。
本実施形態の高分子と溶媒の相互作用パラメータを算出する装置1は、
予め設定された高分子モデルデータM1及び溶媒分子モデルデータM2を用い、高分子モデルM1と溶媒分子モデルM2とを混合させた高分子溶液モデルM3を、濃度を異ならせて複数設定するモデル設定部11と、
高分子溶液モデルM3が存在し得る空間を、高分子モデルM1が配置される第1領域Ar1と、第1領域Ar1以外の領域である第2領域Ar2とに区画し、高分子モデルM1が第1領域Ar1から第2領域Ar2に移動することを禁止する条件を含む解析条件のもとで平衡状態における高分子溶液モデルM3の分子動力学計算の計算結果に基づき、第1領域Ar1と第2領域Ar2の圧力差である浸透圧Πを濃度毎に算出する浸透圧算出部14と、
複数の濃度における浸透圧の算出結果と式(1)に対応する式とを用いて、近似法により式(1)における高分子と溶媒の相互作用パラメータχを決定する近似部15と、
を備える。
この方法によれば、浸透圧Πに基づきフローリー・ハギンズ式(4)で示されるΔμ(純溶媒状態の溶媒化学ポテンシャルと溶液状態の溶媒化学ポテンシャルの差)に関する項が算出できるので、近似法により高分子と溶媒の相互作用パラメータχを決定することが可能となる。
また、化学ポテンシャルを算出するための自由エネルギー摂動法では統計誤差を低減させるためにシステム全体の粒子数を多くしなければならず、更に、1つの濃度について異なる複数条件での計算が必要であるのに対し、浸透圧の算出ではシステム全体の粒子数を多くしなくても精度が得られ、更に、1つの濃度について1つの条件で算出が可能となる。
したがって、従来に比べて高分子と溶媒の相互作用パラメータを低計算コストで算出することが可能となる。
本実施形態において、モデル設定部11は、少なくとも5つの濃度の異なる高分子溶液モデルを設定する(ステップST2)。
このように、少なくとも5点の計算結果があれば、フローリー・ハギンズ式にフィティングしやすく、精度を確保しやすくなる。
本実施形態において、浸透条件設定部13は、高分子モデルM1が第1領域Ar1から第2領域Ar2に移動することを禁止する条件として、第1領域Ar1と第2領域Ar2の境界面C2との距離に応じた斥力ポテンシャルを高分子モデルM1に設定する(ステップST3)。
このような条件であれば、浸透膜を再現する新たなモデルを生成しなくても、高分子モデルM1に作用する斥力ポテンシャルを設定するだけでよいので、実装が容易となる。
本実施形態において、最小二乗法を用いて、複数の濃度における浸透圧の算出結果と式(1)の算出結果との残差の二乗和が最小となるように、高分子と溶媒の相互作用パラメータχを決定する。この方法によれば、簡素な近似法でχを決定することが可能となる。
本実施形態に係るプログラムは、上記方法をコンピュータに実行させるプログラムである。このプログラムを実行することによっても、上記方法の奏する作用効果を得ることが可能となる。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
例えば、図1に示す各部10〜15は、所定プログラムをコンピュータのCPUで実行することで実現しているが、各部を専用回路で構成してもよい。

上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
11…モデル設定部
13…浸透条件設定部
14…浸透圧算出部
15…近似部

Claims (9)

  1. コンピュータが実行する方法であって、
    予め設定された高分子モデルデータ及び溶媒分子モデルデータを用い、前記高分子モデルと前記溶媒分子モデルとを混合させた高分子溶液モデルを、濃度を異ならせて複数設定するステップと、
    前記高分子溶液モデルが存在し得る空間を、前記高分子モデルが配置される第1領域と、前記第1領域以外の領域である第2領域とに区画し、前記高分子モデルが前記第1領域から前記第2領域に移動することを禁止する条件を含む解析条件のもとで平衡状態における前記高分子溶液モデルの分子動力学計算の計算結果に基づき、前記第1領域と前記第2領域の圧力差である浸透圧を濃度毎に算出するステップと、
    複数の濃度における浸透圧の算出結果と式(1)に対応する式とを用いて、近似法により式(1)における高分子と溶媒の相互作用パラメータχを決定するステップと、
    を含む、高分子と溶媒の相互作用パラメータを算出する方法。
    Figure 0006928505
    ただし、Πは浸透圧[第1領域の圧力−第2領域の圧力]を示し、Vは溶媒粒子の1粒子あたりの体積を示し、kはボルツマン定数を示し、Tは温度を示し、nは高分子鎖長を示し、φは高分子体積分率を示し、χは高分子と溶媒分子の相互作用パラメータを示す。
  2. 前記高分子溶液モデルを設定するステップは、少なくとも5つの濃度の異なる高分子溶液モデルを設定する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記高分子モデルが前記第1領域から前記第2領域に移動することを禁止する条件として、前記第1領域と前記第2領域の境界面との距離に応じた斥力ポテンシャルを前記高分子モデルに設定する、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記決定するステップは、最小二乗法を用いて、前記複数の濃度における浸透圧の算出結果と式(1)の算出結果との残差の二乗和が最小となるように、前記高分子と溶媒の相互作用パラメータχを決定する、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 予め設定された高分子モデルデータ及び溶媒分子モデルデータを用い、前記高分子モデルと前記溶媒分子モデルとを混合させた高分子溶液モデルを、濃度を異ならせて複数設定するモデル設定部と、
    前記高分子溶液モデルが存在し得る空間を、前記高分子モデルが配置される第1領域と、前記第1領域以外の領域である第2領域とに区画し、前記高分子モデルが前記第1領域から前記第2領域に移動することを禁止する条件を含む解析条件のもとで平衡状態における前記高分子溶液モデルの分子動力学計算の計算結果に基づき、前記第1領域と前記第2領域の圧力差である浸透圧を濃度毎に算出する浸透圧算出部と、
    複数の濃度における浸透圧の算出結果と式(1)に対応する式とを用いて、近似法により式(1)における高分子と溶媒の相互作用パラメータχを決定する近似部と、
    を備える、高分子と溶媒の相互作用パラメータを算出する装置。
    Figure 0006928505

    ただし、Πは浸透圧[第1領域の圧力−第2領域の圧力]を示し、Vは溶媒粒子の1粒子あたりの体積を示し、kはボルツマン定数を示し、Tは温度を示し、nは高分子鎖長を示し、φは高分子体積分率を示し、χは高分子と溶媒分子の相互作用パラメータを示す。
  6. 前記モデル設定部は、少なくとも5つの濃度の異なる高分子溶液モデルを設定する、請求項5に記載の装置。
  7. 前記高分子モデルが前記第1領域から前記第2領域に移動することを禁止する条件として、前記第1領域と前記第2領域の境界面との距離に応じた斥力ポテンシャルを前記高分子モデルに設定する、浸透条件設定部を備える、請求項5又は6に記載の装置。
  8. 前記近似部は、最小二乗法を用いて、前記複数の濃度における浸透圧の算出結果と式(1)の算出結果との残差の二乗和が最小となるように、前記高分子と溶媒の相互作用パラメータχを決定する、請求項5〜7のいずれかに記載の装置。
  9. 請求項1〜4のいずれかに記載の方法をコンピュータに実行させるプログラム。
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