JP2013185822A - 高分子材料の解析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】粗視化粒子の粒子間の相互作用を高精度で求めることができる高分子材料の解析方法を提供する。
【解決手段】粗視化粒子の粒子間の相互作用を求める高分子材料の解析方法では、粒子間の相互作用を、χij=0.2382×(εij−εkk)+1.5882、又は、(εij−εkk)=2.6858χijを用いて求める。
【選択図】図1

Description

本発明は、粗視化粒子の粒子間の相互作用を求める高分子材料の解析方法に関する。
電池では、高分子中のイオンの輸送現象が電池性能を決定する要因となる。例えば、燃料電池における高分子膜中の水素イオンの輸送や、触媒層高分子電解質中の水素イオンの輸送、リチウムポリマー電池における高分子膜中のリチウムイオンの輸送が上記の現象に該当し、いずれも数nm〜数μmのスケールで生じる。このよう数nm〜数μmの現象について、それを直接計測して解析することは困難である。
そこで、スケールの非常に小さい現象の解析には、複数の原子を一つの粒子として扱う粗視化という方法が用いられている。この粗視化による解析方法では、粗視化粒子の粒子間の相互作用を求めることが必要とされる。この相互作用を求める方法としては、例えば2成分からなる混合溶液を生成し、その生成時の溶解性から相互作用を求める方法が知られている(例えば、下記非特許文献1参照)。
Gary S.Grest at al.、「Efficient continuum model for simulating polymer blends andcopolymers」、J. Chem. Phys., Vol. 105, No.23、15 December 1996、pp10583-10594
しかしながら、上記非特許文献1に記載の方法では、2成分からなる混合溶液を生成し、そのときの溶解性に基づいて粒子間の相互作用を求めているため、混ざり易い成分同士であれば短時間で相互作用を求めることができるが、混ざり難い成分同士についてはどうしても誤差が大きくなるといった問題がある。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、粗視化粒子の粒子間の相互作用を高精度で求めることができる高分子材料の解析方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明に係る高分子材料の解析方法は、粗視化粒子の粒子間の相互作用を求める高分子材料の解析方法であって、粒子間の相互作用を、
χij=0.2382×(εij−εkk)+1.5882
を用いて求めることを特徴とする。
この高分子材料の解析方法では、
χij=0.2382×(εij−εkk)+1.5882
を用いて、粗視化粒子の粒子間の相互作用を求めている。これにより、高分子などの混ざり難いχパラメータを有するものであっても、求められる相互作用の誤差を小さくすることができる。したがって、粗視化粒子の粒子間の相互作用を高精度で求めることができる。
本発明に係る高分子材料の解析方法は、粗視化粒子の粒子間の相互作用を求める高分子材料の解析方法であって、粒子間の相互作用を、
(εij−εkk)=2.6858χij
を用いて求めることを特徴とする。
この高分子材料の解析方法では、
(εij−εkk)=2.6858χij
を用いて、粗視化粒子の粒子間の相互作用を求めている。これにより、高分子などの混ざり難いχパラメータを有するものであっても、求められる相互作用の誤差を小さくすることができる。したがって、粗視化粒子の粒子間の相互作用を高精度で求めることができる。
本発明によれば、粗視化粒子の粒子間の相互作用を高精度で求めることができる。
高分子材料の解析方法を示すフローチャートである。 ポリクロロトリフルオロエチレンを粗視化した粒子の一例を示す図である。 χパラメータと相互作用パラメータεとの関係を示すグラフである。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る高分子材料の解析方法を示すフローチャートである。以下、図1を参照しながら、高分子材料の解析方法について説明する。本実施形態の高分子材料の解析方法では、高分子の原子を複数含んだ粗視化粒子の相互作用を、フローリー・ハギンズ(Flory-Huggins)理論においてパラメータが2以上である領域で定めたχパラメータと相互作用パラメータεとの間の単調関数(1価関数)により求める。
図1に示すように、まず高分子を複数の原子を含むユニットに分け、ユニット毎に粗視化粒子を作成する(ステップS01)。図2は、ポリクロロトリフルオロエチレンを粗視化した粒子の一例を示す図である。図2に示す例では、破線で囲んだ部分を1つのユニットUとしている(図2では、3つのユニットUを示している)。
図1に戻って、次に、χパラメータを算出する(ステップS02)。χパラメータは、各ユニットUの溶解度パラメータδから算出する。溶解度パラメータδには、実験値、推算値及び計算値などを用いることができる。なお、実験値は高分子ハンドブック、推算値は原子団寄与法、計算値は分子動力学法などにより設定できる。χパラメータは、溶解度パラメータδの差の二乗に比例するように設定する。具体的には、χパラメータは、以下の式(1)から求める。
Figure 2013185822

上記式(1)において、δ:溶解度パラメータ、V:モル体積、k:ボルツマン係数、T:絶対温度である。χパラメータは、式(1)に上記の溶解度パラメータδの値を代入して求める。
続いて、粗視化粒子の粒子間の相互作用を導出する(ステップS03)。粗視化粒子の粒子間の相互作用は、χパラメータと相互作用パラメータεとの間の単調関数に基づいて求める。図3は、χパラメータと相互作用パラメータεとの関係を示すグラフである。図3では、実線はχパラメータが2以上の領域で定めた場合を示し、破線はχパラメータが2以下の領域で定めた場合を示している。本実施形態では、フローリー・ハギンズ理論においてパラメータが2以上の領域で定めたχパラメータを用いる。
レナード-ジョーンズ・ポテンシャル(Lennard-Jonespotential)の相互作用パラメータεには、下記式(2)を用いる。
χij=0.2382×(εij−εkk)+1.5882 …(2)
上記式(2)において、「i」及び「j」は、それぞれ原子の種類を示している。このようにして、粗視化粒子の粒子間の相互作用を導出する
以上説明したように、本実施形態では、
χij=0.2382×(εij−εkk)+1.5882
を用いて、粗視化粒子の粒子間の相互作用を求めている。これにより、高分子などの混ざり難いχパラメータを有するものであっても、求められる相互作用の誤差を小さくすることができる。すなわち、図3に示すχパラメータが2以下の領域で定めた関数を用いることにより、混合溶液が混ざり易いχパラメータが2以下で定められる関数により相互作用パラメータεを設定した場合に比べて、電池などで多く使用される混合溶液が混ざり難い場合において誤差を小さくできる。
詳細には、例えば、燃料電池の高分子膜における水素イオンの輸送経路である水形状について、従来の解析方法(非特許文献1に記載の方法)と本実施形態の解析方法とで比較した結果、従来の解析方法では実験誤差が71%であるのに対し、本実施形態では実験誤差が11%と大幅に誤差が低減した。
[第2実施形態]
続いて、第2実施形態について説明する。第2実施形態に係る高分子材料の解析方法は、相互作用の導出方法が第1実施形態と異なっている。本実施形態の高分子材料の解析方法では、2成分系の自由エネルギー密度の式と相互作用の式とから設定したχパラメータと相互作用パラメータεの間の単調関数により求める。
本実施形態の高分子材料の解析方法では、第1実施形態と同様に、図1に示すように、まず高分子を複数の原子を含むユニットUに分け、ユニットU毎に粗視化粒子を作成する(ステップS01)。
続いて、χパラメータを算出し(ステップS02)、その後に、粗視化粒子の粒子間の相互作用を導出する(ステップS03)。粗視化粒子の粒子間の相互作用は、自由エネルギーの式と相互作用の式とから求める。
自由エネルギー密度の式は、下記式(3)により表される。
Figure 2013185822

上記式(3)において、ρ:密度である。
また、2成分系であることから、aAA=aBB,ρ+ρ≒const.と条件を設定すると、χパラメータは、以下の式(4)で表される。
Figure 2013185822

上記式(4)において、σ=const.の条件とし、式(4)を以下の式(5)に変換する。
Figure 2013185822

上記式(5)において、σ:排除体積である。そして、「A」は以下の式(6)で表される。
Figure 2013185822

上記式(6)において、rcut:カットオフ(原子間)距離である。また、上記式(5)において、Δε=εij−εkkである。
上記のように、χパラメータと相互作用パラメータεとの間の単調関数(1価関数)から相互作用パラメータεを設定するときの単調関数を、2成分系の自由エネルギー密度の式(3)と相互作用の式(5)とから求める。レナード-ジョーンズ・ポテンシャル(Lennard-Jones potential)の相互作用パラメータεには、下記式(7)を用いる。
(εij−εkk)=2.6858χij …(7)
以上により、粗視化粒子の粒子間の相互作用を導出する。
以上説明したように、本実施形態では、
(εij−εkk)=2.6858χij
により、粒子間の相互作用を求めている。これにより、高分子などの混ざり難いχパラメータをもつものであっても、相互作用の誤差を小さくすることができる。したがって、粗視化粒子の粒子間の相互作用を高精度で求めることができる。すなわち、混合溶液においてχパラメータが混ざり難い場合に、混ざり難いといった条件下で得られる理論式から設定した関数を用いることにより、高分子材料を粗視化した粒子間の相互作用を精度よく求めることができる。
詳細には、例えば、燃料電池の高分子膜における水素イオンの輸送経路である水形状について、従来の解析方法(非特許文献1に記載の方法)と本実施形態の解析方法とで比較した結果、従来の解析方法では実験誤差が74%であるのに対し、本実施形態では実験誤差が29%と大幅に誤差が低減した。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態に加えて、粗視化した粒子間の相互作用を求めるときに、上記の式(2)及び式(7)の両方を用いてもよい。

Claims (2)

  1. 粗視化粒子の粒子間の相互作用を求める高分子材料の解析方法であって、
    前記粒子間の相互作用を、
    χij=0.2382×(εij−εkk)+1.5882
    を用いて求めることを特徴とする高分子材料の解析方法。
  2. 粗視化粒子の粒子間の相互作用を求める高分子材料の解析方法であって、
    前記粒子間の相互作用を、
    (εij−εkk)=2.6858χij
    を用いて求めることを特徴とする高分子材料の解析方法。
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