JP6924437B2 - 粒子線を用いた測定方法および測定システム - Google Patents

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Description

本発明は、粒子線を用いた測定方法および測定システムに関する。
粒子線をもちいた散乱実験は、おもに材料科学分野を中心に、物質の微細構造を測定あるいは観測する手法として広く使われている。ここでいう粒子線とは、陽子線(α線)、電子線(β線)、ミューオン線、光子線(すなわち電磁波、γ線、X線、可視光、赤外線など)、中性子線、ニュートリノ線などをさす。これらの粒子線を金属等の試料に照射すると、試料による粒子線の反射、透過、散乱などの現象を観測することができる。
ここで、反射、透過、散乱された粒子線など(以下「測定対象粒子」ということがある。入射する粒子と異なる粒子が出力されることもある)の出力を電気的、化学的あるいは機械的な検出器によって計測し、その強度(たとえば計測される粒子数)の分布形状によって試料の微細構造を推定するのが粒子線実験である。これに類するものとしては、公知の走査型あるいは透過型電子顕微鏡で電子線を用いて同様の計測を行い、試料の微細構造を画像化することが行われている。
一方、近年、データ分析にかかる統計処理技術の発展に伴い、材料科学においてもデータ分析を行う需要が高まっている。例えば、粒子線実験の計測結果に統計処理的なデータ分析を適用することにより、新たな発見が期待されるが、それには少なくとも数十〜数百規模の多くのデータを得なければならない。しかし散乱実験では、ある程度以上鮮明な散乱結果像を得るために出力粒子の検知回数が十分多くなければならず、長い時間、粒子を照射し続けることが必要となる。結果的に統計処理にかけるほどの計測には、とても長い時間を要してしまう。
例えば一度あたり20分程度の計測時間を要する場合で100種類のデータを取得しようとすると、1日半ほど装置を占有しつづけなければならない。実験装置には高価なものも多く、それを長時間占有してしまうと高コストとなり、電力消費なども多くかかるという問題を生ずる。
国際公開WO2005/106440
統計処理的なデータ分析にかけられるほどのデータを得るためには、長時間の実験が必要となるが、コスト面を考慮すると粒子線照射時間を最小限に抑えることが望ましい。
特許文献1には、試料の測定条件の設定を行った後測定を開始し、試料に含まれている元素の測定濃度と測定精度の計算を行い、この測定精度が予め定めた測定条件を満たす値となったときに測定を終了し、そのときの濃度を出力するように構成されているX線照射装置が開示されている。この方法によれば、必要以上の計測時間をかけてしまうことを避けることができる。ただし、分野にもよるが、計測に必要な時間が経験的に知られている場合が多く、特許文献1の打ち切りで大きな時間短縮がされることは期待しがたい。
本発明の一側面は、試料に粒子線を照射し、照射により得られる測定対象粒子の数をカウントし、測定対象粒子の分布を用いて試料を評価する際に、測定対象粒子がスムーズな確率密度分布にしたがい現れると仮定して分布を求め、分布が真の確率密度分布と一致するという仮説について統計的な検定を行い、仮説が適合という結果ならば、粒子線の照射を終了する、ことを特徴とする粒子線を用いた測定方法である。ここで「スムーズ」とは、確率密度分布関数がその変数に対して微分可能で、微分関数が連続であることをいう。
本発明の他の一側面は、試料に対する粒子線の照射により得られる測定対象粒子の分布に関する実験データを受信して、粒子線の照射を制御する測定システムである。このシステムは記憶装置と、実験データに基づいた密度分布データを時系列的に記憶装置に格納する実験データ収集部と、密度分布データに基づいて、連続する確率密度分布を時系列的に推定する連続分布推定部と、確率密度分布それ自体、および、確率密度分布から求められる物理量の少なくとも一つを評価し、評価結果に基づいて粒子線の照射の継続または終了を判定する統計的検定判定部と、を備える。
本願発明によれば、短時間で実験を終了することができ、一つの実験設備でより多くの実験ができるようになる。
実施例1の構成概略を示すブロック図 実施例1の物理的実装の構成の一例を示すブロック図 粒子線の散乱実験の例を示す概念図 実施例1の動作全体の概念ブロック図 実施例1の散乱実験の検出結果の概念図 実施例1の検出結果のデータ構造の一例を示す表図 実施例1の実験データ蓄積部に蓄積されるデータ構造の一例を示す表図 実施例1の連続分布推定処理の一例を示すフロー図 実施例1の連続分布推定処理の結果を記録するデータ構造の一例を示す表図 実施例1の統計的判定手順の一例を示すフロー図 実施例1の統計的判定の意味の一例を説明するグラフ図 実施例1の連続分布の挙動を示す模式例を示すグラフ図 実施例2の統計的判定手順の一例を示すフロー図 実施例2の統計的判定手順で用いる物理量算定の例を示す概念図 実施例3の統計的判定手順の一例を示すフロー図 実施例3の用いる連続分布推定処理の例の概念的説明図 実施例4の連続分布推定処理の一例を示すフロー図 実施例4の統計的判定手順の一例を示すフロー図
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
同一あるいは同様な機能を有する要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
以下で詳細に説明する実施例の一例では、試料に粒子線を照射しこの照射により散乱した粒子数をカウントする実験装置において、散乱した粒子数の分布を、それがスムーズな分布であるという仮定を元に推定し、推定した分布の妥当性に統計的な検定を行い、検定が合格ならば、粒子線の照射を打ち切る。統計的な検定では、推定した分布が真の分布(無限大の照射時間により得られる分布)と実質的に等価と看做せるかどうかにより、妥当性を判定する。具体的には、推定した分布、あるいは推定した分布から導いたパラメータの、経時的な変化、変化率、ばらつき等を評価する。一般に、これらが所定閾値以下になるとき、分布の変動が収束して真の分布に近づいていると評価できる。この構成によると、粒子線散乱実験を行う装置において、短時間で実験を終了することができ、一つの実験設備でより多くの実験ができるようになる。以下では、分布の推定方法や、分布の判定方法についての具体的なバリエーションを含むいくつかの実施例を説明する。
図1に、本発明の第1の実施例である粒子線実験システムの構成概略を示す。本実施例の粒子線実験システムは、粒子線実験装置(101)と実験結果検証装置(102)を含むシステムである。
粒子線実験装置(101)は粒子線を試料に照射し散乱の結果を出力する機能を持った装置であり、実験結果検証装置(102)は主に粒子線実験装置(101)の出力を受けて統計処理を行い、実験の継続要否を判定する機能を持つ装置である。
粒子線実験装置(101)は少なくとも、粒子線の射出制御を行う実験制御部(111)、実際に粒子線を発生し散乱結果を検知する粒子線実験部(112)、粒子線実験部(112)の検知結果をデータとして整備出力する実験データ処理部(113)を持つ装置である。
実験結果検証装置(102)は、実験データ処理部(113)の出力を受け取る実験データ収集部(121)、その散乱実験の結果のデータから仮定される空間的に連続な分布(単に連続分布と表すことがある)を推定する連続分布推定部(122)、算定された連続分布の統計的妥当性を検証する統計的検定判定部(123)、また実験に関するデータを保存する実験データ蓄積部(124)を持つ装置である。なお、本明細書等で「連続」の語は、実空間における連続性を表現する際に用いられるとともに、パラメータ空間における連続性を表現する際にも用いられる。
図2に実施例1の物理的実装の構成の一例を示す。この構成は図1の構成に対応する物理的な構成を示すものである。
粒子線実験装置(101)は、演算性能を持ったプロセッサ(201)、高速に読み書きが可能な揮発性一時記憶領域であるDRAM(Dynamic Random Access Memory)などのメモリ(202)、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどを利用した永続的な記憶領域である記憶装置(203)、操作を行うためのマウスやキーボード、制御盤等の入力装置(204)、その結果や実験の状況等を実験者に見せるためのモニタ(205)、外部と通信を行うためのシリアルポート等の通信インタフェース(206)を備えている。これらの部分は、図1の実験制御部1(111)と実験データ処理部(113)に対応するが、一般的なコンピュータを用いて構成できる。
また、粒子線実験装置(101)は、粒子線の発生を行う粒子線発生源(207)、試料を据付け、粒子線が当たるようにする試料ホルダ(208)、散乱された結果を検知する粒子線検知器(209)を備えている。これらの部分は、図1の粒子線実験部(112)に対応する。
図1に示す粒子線実験装置(101)の実験制御部(111)および実験データ処理部(113)は、図2に示す記憶装置(203)に記録されたプログラムをプロセッサ(201)が実行することによって実現できる。
また、図1に示す粒子線実験部(112)は、図2に示す粒子線発生源(207)で発生した粒子線が試料ホルダ(208)にセットされた試料に当たるようにし、その散乱結果を粒子線検知器(209)によって計測するように設置することによって実装できる。粒子線発生源(207)で発生する粒子線は、既述のようにα線、β線、中性子線等各種がある。また、粒子線検知器(209)は、既述のように電気的、化学的あるいは機械的な原理を用いる各種の公知の構成を採用することができる。
また、この実施形態は一例であり、公知の電子顕微鏡等が有するような、粒子線の焦点を調整する機能や、試料ホルダ(208)や粒子線発生源(207)を動かして散乱の仕方を変更できる機能などを有していてもよい。
実験結果検証装置(102)は、一般的なコンピュータを用いて実装できる。すなわち、演算性能を持ったプロセッサ(211)、高速に読み書きが可能な揮発性一時記憶領域であるDRAMなどのメモリ(212)、HDDやフラッシュメモリなどを利用した永続的な記憶領域である記憶装置(213)、操作を行うためのマウスやキーボード等の入力装置(214)、動作を使用者に示すためのモニタ(215)、外部と通信を行うためのシリアルポート等の通信インタフェース(216)を含む装置である。
図1に示す実験データ収集部(121)、連続分布推定部(122)、統計的検定判定部(123)は、図2に示す記憶装置(213)に記録されたプログラムをプロセッサ(211)が実行することによって実現できる。図1に示す実験データ蓄積部(124)は、データの蓄積を記憶装置(213)に行うようなプログラムをプロセッサ(211)が実行することで実装できる。
図3に実施例1で想定される粒子線実験の概念図を示す。この図では、粒子線発生源(207)が備える線源(301)から発生した粒子線(302)が、試料ホルダ(208)にて固定された試料(303)に照射されるようになっている。その結果、試料(303)を通過した粒子線は、複数の粒子線検知器(209)を平面状に敷き詰めた板状の検知装置(304)によって検知される。
検知されるときには入射時の粒子線(302)は試料(303)との干渉により散らばり、検知装置(304)上にたとえば円状の散乱パターン(305)を作る。この散乱パターン(305)に当該試料の微細構造にかかる情報が含まれており、散乱パターン(305)に事後処理を加えることで試料の微細構造に関連する物理量(例えば合金内の金属原子の分布など)を算定することができる。
上記の測定技術は粒子線散乱実験として公知であり。種々の技術が知られている。例えば、物質を構成する粒子である中性子は、透過力にすぐれ、スピンの性質を持つので、原子の中心にある原子核やその周りにある電子のつくる磁場(磁気モーメント)と力を及ぼしあう。この性質を利用して中性子線を物質に当て、その散乱の仕方(方向・スピード・スピンの向きの変化)を測り、物質内での原子や磁気モーメントの配列や運動の様子を知る実験法が中性子散乱実験として知られている。
なお、実施例1では粒子線として主に中性子線を扱うが、照射される粒子線については光子(γ線、X線)、電子、陽子など任意の粒子線でよく、レーザ光のように位相が揃っているなど、特殊な性質を持つ場合であっても同様である。また、試料ホルダ(208)を動かして同様のパターンを取得できるようにしてもよい。なお、実施例1は散乱された粒子の強度の2次元空間のパターンを対象としたが、1次元ないし3次元的なパターン計測を行う装置であってもよいし、エネルギー等の分布を加えた計測手段を用意することにより、任意の次元に拡張することもできる。
図4に実施例1のシステム全体の動作を概略的に示す。この概略では、主に粒子線実験装置(101)が実験を行い、その結果を実験結果検証装置(102)が受けて散乱パターンの連続分布に関する検定を行い、粒子線実験装置(101)に対し実験継続要否を指示するという手順になっている。以降では具体的な動作を以下に述べる。
実験が開始されると、実験制御部(111)は粒子線の照射を粒子線実験部(112)に指示する(S401)。それをうけた粒子線実験部(112)は粒子線の照射と、粒子線検知器(209)での粒子数カウントを開始する(S402)。この実験は例えば1分など所定の十分短い時間で行われる。実験データ処理部(113)は実験時間が終了するとともに検出器の計測結果をデータ化する(S403)。
図5に粒子線実験部(112)で得られる計測結果の概念図を示す。図には矩形(501)が格子状に配置されているが、これらの矩形(501)は粒子線検知器(209)の一つ一つを意味しており、粒子線検知器(209)で構成される格子全体で検知装置(304)を構成している。矩形内の数値は当該粒子線検知器(209)での粒子のカウント数を意味している。
散乱パターン(305)はこの格子状の円(502)のようになり、当該円の中心付近はカウント数が多く、離れるほど低くなる傾向にある。このデータは一種の画像のように表現されるため、以降ではこのカウント数を画像になぞらえ輝度値ともよぶこととする。実験データ処理部(113)はこのカウント数を出力可能なデータに変換する。
図6に、実験データ処理部(113)が生成するデータの1レコードの形式を示す。実験ID(601)は複数回の実験が行われた場合のための識別子であり、実験開始の時刻等を用いて一意に採番される。たとえば、「2017年1月1日00時00分00秒」のようなものである。実験期間(602)は実験が行われた期間を指し、粒子線実験装置(101)内部の時計を用いて得られる絶対時刻や実験開始を0とした経過時間が記述される。たとえば、「00分00秒〜01分00秒」のようなものである。その上で、粒子線検知器(209)の検知器ID(603)とカウント数(604)が対応するように記録される。このデータを1レコードとして、すべての粒子線検知器(209)に関するレコードを集めた集合が実験の結果となる。
実験データ処理部(113)は図6のデータを通信I/F(206)を通じて粒子線実験装置(101)の外部に出力する。ここで図4に戻り、この出力後の手順について説明をつづける。実験データ処理部(113)の出力は、実験結果検証装置(102)の実験データ収集部(121)が受け取り、実験データとして実験データ蓄積部(124)に格納する(S404)。
図7に、実験データ蓄積部(124)に格納される実験データの1レコードの構成を示す。実験データ蓄積部(124)には散乱パターンが画像状のデータとして管理され、図6の構成のうち、実験ID(601)、カウント数(604)を実験ID(701)とカウント数(705)に引き継ぎつつ、実験期間(602)は画像の識別子であるデータID(702)となり、粒子線検知器(209)の検知器ID(603)はその設置座標を元にX、Y座標(703,704)に変換される。このデータを1レコードとして、すべての粒子線検知器(209)に関するレコードを集めた集合が1つの画像状のデータに相当する。
ふたたび図4に戻り、この後の手順について述べる。実験データ収集部(121)が実験データ蓄積部(124)に計測結果である図7のデータを格納したら(S404)、連続分布推定部(122)は、実験データ蓄積部(124)から同一の実験ID(701)をもつ過去のデータすべてを取得し、それにもとづき連続的な分布を推定するための連続分布推定処理を実行する(S405)。
図8に、連続分布推定処理(S405)の概要を示す。連続分布推定処理(S405)では、連続分布推定部(122)は、実験データ蓄積部(124)に蓄積されたデータを元に、X、Y座標(703,704)とカウント数(705)の関係について連続的な分布関数を求める処理を行う。
この処理ではまず、実験ID(701)をキーに、(x,y)とカウント値を対応付けて取得する。この際、複数のデータID(702)にまたがって同一の(x,y)をもつレコードについてはカウント値を和にするなどしてもよい。つまり、例えば実験ID(701)をexpid、データID(702)をdataid、X座標(703)、Y座標(704)をそれぞれx、y、カウント数(705)をcという名称とした表datatableによって管理するリレーショナルデータベースを想定すると、この集計は以下のSQL文で記述される。
select expid, x, y, sum(c) as c from datatable
where expid=[本実験のID] group by x,y
個々のデータID(702)に関するカウント数(705)は、所定の短い時間のものであるが、この計算によってこれまでの実験の累積値に相当するデータに変換される。これにより、読み取られた過去のデータが、(x,y,輝度)となるよう集約される(S801)。輝度はカウント数に相当する。これにより、データ数が少なくなるため計算に要する時間が短縮される。なお、ここで実験データ蓄積部(124)から取得するデータとして、記憶しておいた前回の連続分布推定部(122)の出力を取得して、前回の累積値を利用するようにしてもよい。すなわち、前回の累積値に最新のカウント値を加算して最新の累積値とするようにして計算量を削減してもよい。
次に連続分布推定部(122)は前記のデータを用いて連続分布関数(定義域のすべての点で連続している分布関数)の推定を行う(S802)。すなわち、図5で示したようなカウント値で示される散乱した粒子数が、スムーズな分布を持つと考えて連続分布関数の推定を行う。本実施例では、回帰分析により輝度=f(x,y)となる連続分布関数fを求める。
この推定では、公知の汎用的な非線形の連続的な関数を推定するための回帰分析手法を用いることができる。具体的な例としては、ガウシアンプロセス回帰、サポートベクタ回帰などが挙げられる。回帰分析は、説明変数と目的変数の関係を事例から学習する方式をとる。たとえば、説明変数と目的変数の間に「目的変数=f(説明変数)」となる連続分布関数fを仮定し、実データを用いて求まる誤差「実データの目的変数-f(実データの説明変数)」の総和が最小になるように連続分布関数fのパラメータを決定する。
実施例1では、X座標(703)、Y座標(704)を説明変数とし、カウント数(705)を目的変数とした回帰分析を行うことによって分布を定めることができる。この際、カウント数の総和で当該関数を割ることにより、実験における粒子線の照射時間の影響、すなわち実験の時間に比例して検知回数が増える、という傾向を相殺できる。なお、確率分布の変動が予測される場合は、それを加味した回帰分析を用いることで精度が向上できる。
結果的に、連続分布関数の推定の結果は、連続分布を決定付けるパラメータの組となる。連続分布推定部(122)はこれを実験データ蓄積部(124)に蓄積する。
図9に、蓄積されるデータの1レコードの構造を示す。このデータは図7の実験ID(701)から引き継いだ実験ID(901)、連続分布の推定に使用されたデータID(702)の数、すなわち計測時間長をあらわす分布計算回数(902)、パラメータ名(903)とパラメータ値(904)の組が格納される。このデータを1レコードとして、連続分布を表現するのに必要なすべてのパラメータ名(903)に関するレコードを集めた集合が連続分布と対応する。
例えば、公知のガウシアンプロセス回帰を用いた場合、二点間の相関を示す正定値カーネル関数k( (x1, y1), (x2, y2) )を用いて、連続分布関数はその重ね合わせで記述される。つまり、

f(x,y)=ΣGi×k( (x,y), (xi,yi))

と書ける。ここで、Giはi番目の座標(xi,yi)に関するパラメータであり、(xi,yi)は実データの説明変数、つまり格子状の検出器の位置を意味する。Giは計測されたカウント数から求まる数値であり、前記の回帰分析により求めた値である。このGiについてパラメータ名(903)とパラメータ値(904)の形で格納しておくことで、回帰分析によっても求まった連続分布が再現可能である。以上の処理で、測定対象となる散乱粒子がスムーズな確率密度分布にしたがい現れるという仮定を前提にして、散乱粒子の分布の推定が行われる。
再び図4にもどり、次の統計的検定判定部(123)での処理である連続分布信頼性評価(S406)について説明する。統計的検定判定部(123)では、実験データ蓄積部(124)に格納されている、連続分布推定部(122)の計算した連続分布のデータ(図9)すべてを用いて、当該実験の実験時間が、連続分布推定を前提として十分であるかを判定する。その判定には、連続分布の統計的信頼性、すなわち「実験を続けたとき、今後得られる連続分布に変化が起こりうる度合」を用いる。つまり、今後実験を継続しても、推定される連続分布に変化がなさそうであれば、これ以上実験を続ける必要はないといえるということである。その評価を行う処理が連続分布信頼性評価(S406)である。連続分布信頼性評価(S406)では、連続分布推定処理(S405)で推定した分布が、真の確率密度分布と一致するという仮説について統計的な検定を行う。
図10により、連続分布信頼性評価(S406)について説明する。実施例1の連続分布信頼性評価(S406)では、過去の推定結果について時系列的に評価することで実験結果の妥当性をを判定する。まず、実験データ蓄積部(124)から同一実験ID内の連続分布推定の結果を系列として取得することで、連続分布のパラメータを取得し、連続分布を再現する(S1001)。
次に、再現した各連続分布について、最新の分布と分布間の類似度を計算する(S1002)。この類似度としては、単純に格子点状の差の二乗和、つまり、

S=Σ[ (fm(x,y)- fn(x,y))2 ÷ σ(x,y)2]

を用いることができる。なお、fmは評価対象の連続分布、fnは最新の連続分布を意味する。ガウシアンプロセス回帰では各点(x,y)での分散、すなわち「現在の計測値から推定される真値の期待値とその統計的ゆらぎ」をガウス分布で表現できる。よって、正規分布における有意差検定を行うことができる。つまり、前記の式と関連して(fm(x,y)- fn(x,y))^2 < σ(x,y)^2であれば誤差1σの範囲に入っているということである。よって所定の有意水準(実験の求める精度による、たとえば3σ)にて統計的妥当性が評価できる。他にも、公知のカルバック・ライブラー情報量を用いるなど、直前の連続分布と最新の連続分布の同一性について統計学的に評価可能な方法であれば任意の方法を用いることができる。
次にこの類似度Sについて、変化の度合いを確認する(S1003)。もし、変化がなくなっている(あるいは直近の類似度の変化率が閾値以下になっている)のであれば、この実験は十分収束しているといえる(S1004)。まだ大きく変化しているようであれば、実験はまだ収束していないことになる(S1005)。したがって、それを元に現在のデータから計算された連続分布が信頼できるかを判定できる。この処理は、例えば閾値を設定しておいて、直近の類似度の変化率が閾値以下かどうかで判定することができる(S1003)。閾値の変化率が閾値以下であれば、現在の推定結果は信頼できるとして実験を終了する(S1004)。また、閾値以下でなければ、現在の推定結果は信頼できないとして実験を継続する(S1005)。
図11にその模式図を示す。図は連続分布の類似度に関する時間変化のグラフである。縦軸は連続分布の相対的な差の平均値、横軸は経過時間を指す。実験の初期区間(1101)では、実験の結果は安定しない。しかし、十分実験の時間が経過した後の区間(1102)であれば、分布の差は小さくなり変化が安定する。したがって、類似度の変化率を見ることで統計的妥当性を評価できる。
図12にこの変化の原理を説明するための分布の一例を示す。このグラフはカウント数の分布であり、本来x,yの2次元のものを簡単のため断面(1次元)で示している。上のグラフ(1201)は十分時間が経過する前のグラフである。時間が十分経過するまでは、各検出器が検出する粒子の数は、1、2、3、など少ない数になる。したがって、相対頻度も極端に大きいか小さいかの数段階しかない。そのため分布の凹凸が激しく、また統計的にも安定しない。連続分布推定処理(S405)においてそれに回帰分析をかけて連続分布を推定しても、図中破線のように激しい凹凸にあわせて線を引いてしまうため、実験するたびに大きく変動することになる。
他方十分時間が経過した場合のグラフが下のグラフ(1202)である。多くの粒子数がカウントされた後では、相対頻度は十分多くの段階を持つため、推定した連続分布の傾斜は滑らかに表現される。また、統計的にも安定性が増し、新しくデータを加算しても大きくは変化しなくなる。具体的には、今回の計測数÷これまでの計測数総和分しか増減しないため、これまでの計測数総和が増えるほど、相対頻度の分布は変化しなくなる。よって、この差をとって二乗和をとった結果について、徐々に値が小さくなっていく。まったく分布が一致する場合で0であるので、図11のようなグラフになり、結果的に傾斜が小さくなった期間(1102)では推定される連続分布には変化は生じなくなる。したがって、実験をこれ以上続けても結果に影響しないといえるため、実験を終了する信号を粒子線実験装置(101)に発信してもよいことになる。
実験データ蓄積部(124)には、連続分布推定部(122)によって実行される連続分布推定処理(S405)により、図12に示すような推定された連続分布が時系列的なデータとして格納されている。このデータから、実験開始後の各時点における粒子線カウントの累積値に対応する分布を再現することができる。統計的判定部(121)は、図10で説明したように、実験データ蓄積部(124)から当該データを呼び出し、時系列的に再現された分布間の類似度を計算、評価して、実験の終了あるいは継続の判断を行うことができる。
以上の実施例により、後に連続分布の推定を行い、その妥当性の評価を行う前提に立てば、精度を落とすことなく実験を早期に打ち切ることができる。この手法では、実質的に長時間の粒子線実験を行ったのと同様の、粒子線実験の測定結果(たとえば散乱した粒子の分布)を得ることができるため、長時間の実験を行ったのと同様の精度を担保することができる。ひいては高精度で多くの試料や条件での実験ができるようになり、新事実の早期発見に繋がることが期待できる。
実施例1では推定した連続分布の類似度を評価したが、推定した連続分布から試料の物理量を算出し、当該物理量のばらつきを評価して、実験の打ち切りを判断することもできる。
実施例2として、統計的検定判定部(123)が行う統計的検定に連続分布から求まる試料に関する物理量の安定性を用いる場合の例を示す。実施例2は実施例1に準じた実装であるが、その主な差異は統計的検定判定部(123)が行う連続分布信頼性評価(S406)の内容にある。
図13に実施例2における連続分布信頼性評価(S406A)の手順を示す。実施例2の連続分布信頼性評価では、実施例1と同様に、同一実験ID内の連続分布推定の結果を系列として取得することで、実験データ蓄積部(124)から推定した連続分布のパラメータを取得し、連続分布を再現する(S1001)。ただし、実施例1とは異なり過去数回の推定結果である連続分布から導出される試料に関する物理量の変動が小さくなったことをもって信頼性を評価する。これは、たとえ連続分布そのものには変動がまだ残っていたとしても、見るべき対象である物理量において変動が見られなくなったのであればあえて実験を継続する必要はないという観点にもとづくものであり、実施例1のような分布そのものを比較する場合と比べると、用いた物理量以外の物理量についての妥当性が保証されなくなる代わりに、より早く実験が打ち切れるという効果が期待できる。
このため、実施例2では推定した連続分布に基づいた物理量算出(S1301)と、算出された物理量のばらつきの閾値との比較(S1302)をおこなう。そして、物理量のばらつきが閾値以上でなければ推定結果が信頼できるとし(S1004)、物理量のばらつきが閾値以上であれば推定結果が信頼できないとする(S1005)。
図14に物理量算出(S1301)の例を示す。このグラフは、散乱パターン上で中心点(1405)から外側に向かった線(1401)に沿った確率密度分布の断面図について、縦軸を確率密度、横軸を中心点(1405)からの距離とした両対数グラフで表現したものである。実際には、散乱パターン上の中心付近から適当な距離の区画(1402)に見るべき物理量に依存する挙動が現れる。この例では、区画(1402)における接線(1403)の傾斜aにそれが現れているものとした。すると、物理量はこの傾斜aの関数f(a)として表現できる。なお、この傾斜は連続分布関数の微分によりもとめてもよいし、連続分布関数上から適当に点をとり最小二乗法などで計算してもよい。
実施例2ではこのf(a)の値が収束(分散が閾値以下となった)ことをもって実験打ち切りを判定する。この判定は図11で示した実施例1での判定基準において、相対的な差の二乗和を用いていた部分(縦軸)をf(a)に変更することをもって実装できる。前記の通り、散乱パターン上の中心から遠い区域(1404)は粒子の検知数が少なく、実施例1の方法では収束まで時間を要する傾向にある。それに対して実施例2の方式ではf(a)に寄与する範囲の収束のみで実験を打ち切ることができ、かつ、必要なf(a)の妥当性は担保できるようになる。
実施例3として、統計的検定判定部(123)が行う統計的検定として、公知のベイズ推定をもちいる例を示す。実施例3は実施例1に準じた実装である。その主な差異としては、連続分布推定部(122)が行う連続分布推定処理(S405)において、図8における回帰分析(S802)を、ベイズ統計にもとづく回帰分析とすることと、統計的検定判定部(123)が行う連続分布信頼性評価(S406)の内容として、前記ベイズ統計的な回帰分析を利用した散乱パターンの連続分布についてのばらつきを評価するようにした点がある。
図15に実施例3における連続分布信頼性評価(S406B)の手順を示す。前記の通り、実施例3の連続分布推定はベイズ統計にもとづく回帰分析を用いる。ここでベイズ統計にもとづく回帰分析とは、回帰曲線のパラメータに対しての確率分布を仮定し、当該確率分布を観測値にもとづき補正することで回帰曲線のパラメータの範囲を特定していく方法を指す。
図16にその一例を模式的に示す。この例では、回帰曲線として公知のBスプライン曲線を用いている。Bスプライン曲線では、定義域内を小さな区画にわけてあつかい、各区画内ではそれぞれの多項式(例えば、2次関数)を用いる。それらの多項式は各区画の境界では連続かつ滑らかになることを制約条件として、最も誤差が小さくなる曲線を求める。
Bスプライン曲線はこの多項式のパラメータの表現として、制御点とよばれる点の座標を用いる。本来の多項式はたとえばax2+bx+cのようにパラメータa,b,cをもって記述されるものであり、各区画の多項式同士が境界で滑らかにつながるという制約下で最も誤差を小さくするようにこれらのパラメータを定めることが必要になるが、Bスプライン曲線ではそれらを制御点の座標から導出するようになっており、その導出の計算方法は自然と区画境界が滑らかに接続されるようになっている。結果的に、制御点の位置を定めるだけでスムーズな連続分布を作ることが出来る。
本実施例では、散乱パターンをx座標、y座標、輝度の3次元空間とみなし、x座標とy座標で区画(1601)に分けて、各区画の中心に制御点を配置する。この制御点の高さ(輝度方向値)を変更することにより、Bスプライン曲線を変更することができる。1602には、簡単のためあるyでのx方向の断面図を示した。このグラフの縦軸はカウント数の相対頻度(輝度値)、横軸はx座標である。計測されたデータはこのグラフ上のヒストグラム(1603)となる。これに対し、Bスプライン曲線は、(1604)のような曲線として表現される(なお、本来はy方向も含めた曲面であるがここでは簡単のため曲線とした)。この曲線は制御点(1605)によって自動的に定まる。もし制御点を動かし(1606)の位置に移動すると、曲線は(1607)のように変化する。あるいは、制御点を(1608)に動かすと曲線も(1609)のように変化する。このように、制御点の位置を動かすことで曲線を変化することができ、これがヒストグラム(1603)と整合するように求めれば、回帰曲線が引けることとなる。
実施例3ではこの回帰曲線について、パラメータに対する確率分布を仮定する。すなわち、制御点の座標の確率分布を仮定することになる。まず制御点を定め、そこから連続な確率分布をつくると、その確率分布からヒストグラム(1603)の結果が得られる確率を計算することができる。具体的には、確率分布関数をヒストグラム(1603)区画内で積分しヒストグラム枠内の選択確率とすれば、公知の多項分布(ランダムな選択を繰り返し行うときのヒストグラムの確率分布)をもちいて容易に計算できる。
ベイズ統計では、これを逆に計算する、つまりヒストグラムの観測値が与えられたときの、多項分布のパラメータの確率分布を求めることができる。その確率分布を一般に事後確率分布と呼ぶ。多項分布のパラメータに対応する事後確率分布としては一般的に公知のディリクレ分布(以降Dir({μi})、μiは多項分布のパラメータ群)が用いられる。
実施例3では制御点を用いて得られる確率分布を積分した値が、多項分布のパラメータになっているため、前記ディリクレ分布の引数は制御点によって定まり、事後確率分布=Dir({μi(制御点座標)})のような関係になる。すると、この事後確率分布の最頻点ないし期待値をもちいて連続分布関数の推定値とすることできる。また、制御点の座標を変えながらこの事後確率を計算すれば、最新のパラメータ(すなわち現在の観測値)における事後確率分布のばらつきにともなう連続分布関数のばらつきが計算できる(S1501)。この計算において、他の実験や理論計算によって決定されたパラメータの候補を初期の事前分布として用いるようにすることでさらに予測の精度を高めることもできる。
実施例3の統計的検定判定部(123)では、この連続分布関数のばらつきを計算した上で(S1501)、評価して指標を求め(S1502)、それが所定の閾値よりも小さいとき、推定値が信頼できると出力する(S1503)。この評価の方法としては、単純に最頻点の確率値を用いる簡便な方法や、多項分布のパラメータの分散(公知の方法で求まる。事後確率×パラメータの積分値にて求まる期待値の二乗と、事後確率×パラメータの二乗の積分値との差に相当する)の平均値や最大値を求めて用いる方法などがある。
実施例3の方法によれば、時系列的な評価をすることなく結果の妥当性を評価できる。時系列的な評価では変化が十分小さくなった後に実験を打ち切ることができるが、実施例3の方法は変化が小さくなったと同時に実験の打ち切り判定ができるため、より早く実験打ち切りができると期待される。
実施例4として、統計的検定判定部(123)が行う統計的検定に交差検証法を用いる場合の例を説明する。実施例4も実施例1に準じた実装であり、その主な差異は連続分布推定部(122)が行う連続分布推定処理(S405)において、図8における分布の推定(S802)と、統計的検定判定部(123)が行う連続分布信頼性評価(S406)の内容である。
交差検証法とは、予測の精度等を評価するために用いられる公知の技法であり、与えられたデータをランダムに分割し、その一部を予測モデルの構築に、残りを精度の評価に用いるようにする方法である。実施例4では、この交差検証法にもとづき散乱パターンの連続分布の精度を評価し、所定の閾値以上の精度が得られたかを評価することをもって統計的検定とする。
図17に実施例4での連続分布を推定する手順(S802A)を示す。実施例4は交差検証を用いるため、過去の所定の間隔ごとに集計された散乱パターンデータについて、いくつかを評価用のデータ、残りを連続分布推定用のデータとして、各データが1度ずつ評価用に用いられるように組み合わせを作成する。これにより、過去のデータについて部分的なデータ集合の組み合わせA1,A2,…を網羅的に作る(S1701)。
たとえば、a1,a2,a3,a4の4回分のデータがあったときは、a1が評価用でa2,a3,a4が推定用という組み合わせと、a2が評価用でa1,a3,a4が推定用という組み合わせ、a3が評価用でa1,a2,a4が推定用という組み合わせ、a4が評価用でa1,a2,a3が推定用という組み合わせ、というように4通りの組ができる。図17ではこれらの組み合わせをA1,A2,...と呼称している。前記の例であればA1,A2,A3,A4の4通りである。
評価用のデータに用いる散乱パターンデータの数については、増やすほど計算時間が減り、かわりに検定の信頼性が低下するという関係にあり、計算時間と精度のバランスから所定の値として予め定めることができる。たとえば、散乱パターンデータの数を2とするとa1,a2が評価用でa3,a4が推定用という組み合わせと、a3,a4が評価用でa1,a2が推定用という組み合わせの2組になる。このとき、評価用の散乱パターン数が固定なので、計測時間が長くなるほど推定用のデータは増え、精度が向上する傾向にあると考えられる。
次に、各組み合わせA1,A2,..のAnごとに推定用のデータを(x,y,輝度)となるように集約して、それぞれ一つの散乱パターンとする(S1702)。輝度はカウント数に対応する。この方法は実施例1で述べた、x,yが等しいデータについてカウント数の和をとる方法を用いてよい。次に、この集約されたデータから、それぞれ連続分布を計算する(S1703)。実施例4では、連続分布の計算において、各集約結果に対し密度推定し輝度=f(x,y)となる連続分布関数fを求める方式を採用しており、この計算に公知のカーネル密度推定法を用いている。カーネル密度推定法は密度分布から得られた有限のサンプルから元の分布を推定する方法であり、所定のバンド関数をもって重みつき計算を行う。
例えば、ある点(x,y)の密度関数P(x,y)を

P(x,y)=Σ vi×R(d(x,y,xi,yi))

と計算する。ここで、i番目の点のカウントをvi、点の座標を(xi,yi)と書き、d(x,y,xi,yi)は座標(x,y)と(xi,yi)のユークリッド距離を求める関数である。また、R(r)は引数の距離にもとづき減衰する関数であり、ガウス関数等を用いることができる。この密度関数P(x,y)が推定された連続分布関数のデータfnとして、データ集合Anと対で、実験データ蓄積部(124)に格納される(S1704)。
以上のように、所定の時間間隔おきに推定される粒子の単位時間当たりの計測確率の連続的空間分布を、周囲の観測値の重みつき加算演算によって求めることができる。
図18にこの組み合わせA1,A2,...に対応する連続分布を用いた連続分布信頼性評価(S406C)の手順を示す。まず、同一実験ID内の分布推定の結果のうち最新のA1,A2,...の情報を取得し(S1801)、それぞれについて交差検証による分布の予測精度を計算する(S1802)。ここでいう精度としては、各点のカウント数を総数で割って計算できる観測確率と、前記連続分布P(x,y)の当該点の値の差を計算し、その二乗和を精度とみなすことができる。以降は実施例1と同様に、所定の閾値より誤差が大きいときは信頼できないとして実験を継続し、誤差が所定の閾値より小さければ実験を打ち切ることになる(S1803,S1004,S1005)。
この方法によれば、計算時間はかかるものの、より精密な実験継続要否の判定ができる。したがって、実験結果検証装置(102)のプロセッサ(211)が特に高性能な場合、実施例4の方法が効果的と考えられる。
以上説明したように、各実施例の実験結果検証装置(102)においては、試料に対する粒子線の照射により得られる測定対象粒子の分布に関する実験データを受信して、粒子線の照射を制御する測定システムにおいて、実験データに基づいた密度分布データを時系列的に記憶装置に格納する実験データ収集部(121)を備えている。そして、連続分布推定部(122)は、密度分布データに基づいて連続する確率密度分布を時系列的に推定する。確率密度分布の推定方法としては、粒子線の計数の累積値を曲線あるいは曲面にフィッティングするための、回帰分析など各種公知の手法を用いることができる。そして、統計的検定判定部(123)は、推定した確率密度分布や確率密度分布から求められるパラメータ等の、時系列的な変化、変化率、ばらつき等を評価し、評価結果に基づいて粒子線の照射の継続または終了を判定する。
以上のように、散乱された粒子が飛来する確率の分布はスムーズであるという仮定の元で確率密度分布を推定し、当該確率密度分布に関する統計的検定をもとに、粒子線の照射を打ち切るようにしている。
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の実施例の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
101 粒子線実験装置
102 実験結果検証装置
122 連続分布推定部
123 統計的検定判定部
S405 連続分布推定処理
S406 連続分布信頼性評価

Claims (13)

  1. 試料に粒子線を照射し、前記照射により得られる測定対象粒子の数をカウントし、
    前記測定対象粒子の分布を用いて前記試料を評価する際に、
    前記測定対象粒子がスムーズな確率密度分布にしたがい現れると仮定して前記分布を求め、
    前記分布が真の確率密度分布と一致するという仮説について統計的な検定を行い、
    前記仮説が適合という結果ならば、前記粒子線の前記照射を終了する、
    ことを特徴とする測定方法。
  2. 請求項1に記載の測定方法であって、
    前記統計的な検定として、所定の時間間隔おきに前記測定対象粒子の単位時間当たりの計測確率の連続的な空間分布を推定し、当該推定の結果たる空間分布の変動が十分小さくなったことをもって適合とする、
    測定方法。
  3. 請求項1に記載の測定方法であって、
    前記統計的な検定として、所定の時間間隔おきに得られた前記測定対象粒子の数のカウントの集合を第1のグループと第2のグループに分け、前記第1のグループで前記測定対象粒子の単位時間当たりの計測確率の連続的な空間分布を推定し、前記第2のグループで前記空間分布の精度を評価し、所定の精度基準を満たした時点で適合とする、
    測定方法。
  4. 請求項1に記載の測定方法であって、
    前記分布を求める際に、前記測定対象粒子の計測確率の連続的空間分布を、回帰分析によって推定する、
    測定方法。
  5. 請求項3に記載の測定方法であって、
    前記計測確率の連続的な空間分布を、周囲の観測値の重みつき加算演算によって求める、
    測定方法。
  6. 請求項1に記載の測定方法であって、
    前記統計的な検定として、所定の時間間隔おきに前記測定対象粒子の単位時間当たりの計測確率の連続的な空間分布を推定し、当該推定の結果たる空間分布から前記試料についての物理量を算出し、当該算出された物理量の変動が十分小さくなったことをもって適合とする、
    ことを特徴とする測定方法。
  7. 請求項1に記載の測定方法であって、
    前記統計的な検定として、前記測定対象粒子の単位時間当たりの計測確率の連続的な空間分布を決定づけるパラメータについての確率分布を推定し、当該確率分布の期待値をもって前記スムーズな確率密度分布とみなし、当該パラメータの確率分布のばらつきが十分小さくなったことをもって適合とする、
    ことを特徴とする測定方法。
  8. 試料に対する粒子線の照射により得られる測定対象粒子の分布に関する実験データを受信して、前記粒子線の照射を制御する測定システムであって、
    記憶装置と、
    前記実験データに基づいた密度分布データを時系列的に前記記憶装置に格納する実験データ収集部と、
    前記密度分布データに基づいて、連続する確率密度分布を時系列的に推定する連続分布推定部と、
    前記確率密度分布それ自体、および、前記確率密度分布から求められる物理量の少なくとも一つを評価し、評価結果に基づいて前記粒子線の照射の継続または終了を判定する統計的検定判定部と、
    を備える測定システム。
  9. 前記連続分布推定部は、
    時系列的な前記密度分布データを集約して、座標と当該座標における輝度の組からなる累積値データを生成し、
    前記累積値データを回帰分析することにより、前記連続する確率密度分布を推定する、
    請求項8記載の測定システム。
  10. 前記統計的検定判定部は、
    時系列的に推定された前記確率密度分布同士を比較し、その変化、変化率およびばらつきの少なくとも一つが所定閾値より小さい場合に前記粒子線の照射の終了を判定する、
    請求項8記載の測定システム。
  11. 前記統計的検定判定部は、
    時系列的に推定された前記確率密度分布から、時系列的に前記試料に関する物理量を計算し、
    時系列的に計算された前記物理量同士を比較し、その変化、変化率およびばらつきが所定閾値より小さい場合に前記粒子線の照射の終了を判定する、
    請求項8記載の測定システム。
  12. 前記連続分布推定部は、
    ベイズ統計にもとづく回帰分析により、前記測定対象粒子の単位時間当たりの計測確率の連続的な空間分布を決定づけるパラメータについての確率分布を推定し、当該確率分布の期待値をもって前記連続する確率密度分布とみなし、
    前記統計的検定判定部は、
    前記確率密度分布のばらつきを計算し、
    前記ばらつきから指標を求め、
    前記指標が所定条件を満足する場合に前記粒子線の照射の終了を判定する、
    請求項8記載の測定システム。
  13. 前記連続分布推定部は、
    時系列的な前記密度分布データについて、いくつかを評価用のデータ、残りを連続分布推定用のデータとして、各密度分布データが1度ずつ評価用のデータとして用いられるように組み合わせを作成し、
    前記連続分布推定用のデータにより前記確率密度分布を推定し、
    前記統計的検定判定部は、
    前記評価用のデータを用いて推定した前記確率密度分布の予測精度を計算し、
    前記予測精度が所定閾値より大きい場合に前記粒子線の照射の終了を判定する、
    請求項8記載の測定システム。
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