JP6924371B2 - 注射器用ガスケット及びそのガスケットを用いた注射器 - Google Patents
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Description
プレフィルド注射器は、従来の注射器、すなわち使用直前にバイアル等他の容器から薬液を吸い上げて使用する従来の注射器とは異なり、長期間薬液が接する容器としての性能が要求される。
注射器に使用されるガスケットは、一般に架橋ゴムで作られる。架橋ゴムには架橋用の様々な成分が添加されており、このような成分またはその熱分解物は、薬液と接触することで薬液中へと移行することが知られている。そして、一部の薬液に対してこれらの移行物は、薬液の効果や安定性に悪影響を与えることも知られている。
以上のような観点から、医療用注射器においては、ゴム製ガスケットの表面を摺動性の良いフィルムでラミネートしたラミネートガスケットと呼ばれる製品が使用されることが多くなっている。ラミネートガスケットは、ゴム製ガスケットの表面を摺動性の良いフィルムで覆うことにより、架橋ゴムの成分が薬液へ移行することを防ぎ、かつ、シリコーンオイルなしでも摺動性を確保することができる(特許文献1〜3を参照)。
特許文献2では、ガスケットの摺動面に外形が異なる複数個のリング状突起を形成したラミネートガスケットが提案されている。しかしながら、前記リング状突起の幅が広いため摺動性に問題がある。
第1の発明は、弾性材で形成された円柱形状の本体と、前記本体の表面にラミネートされた不活性樹脂フィルムとを含む注射器用ガスケットであって、前記ラミネートされた不活性樹脂フィルムは、内外2層の不活性樹脂フィルムを含み、前記内外2層の不活性樹脂フィルムは、外側フィルムがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成されていて、前記内外2層の不活性樹脂フィルムは、内側フィルムがポリエチレンテレフタレート(PET)で構成されていて、前記内側フィルムと前記本体との剥離力が10N以上であり、前記内側フィルムの引張強度EBが300%以上であることを特徴とする注射器用ガスケットである。
請求項4の発明は、上記いずれかの注射器用ガスケットと、その注射器用ガスケットが打栓されたシリンジバレルとを含む医療用注射器である。
注射器用ガスケット1は、弾性材で形成された本体2と、本体2の表面にラミネートされた樹脂フィルム3とを含む。
本体2は、弾性材で形成されておればよく、その素材に関しては特に限定されるものではない。例えば、本体2は、あらゆる種類の合成ゴム、熱可塑性エラストマ、またはこれらをブレンドした材料で形成されてもよい。耐熱性に優れることから、熱硬化性ゴムや、熱可塑性エラストマのうち架橋点を有する動的架橋型熱可塑性エラストマが好ましい。これらのポリマー成分も特に限定されるものではなく、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ネオプレンゴム、エチレンプロピレン系ゴム等を用いることができる。
(1)引張強度(破断伸び)EBが、例えば300%以上で、成形時にフィルムが破れずに伸びやすい性質を有すること、
(2)平均剥離力(ゴムとの接着力)が、10 N以上で、本体2(ゴム)から分離しにくい性質を有すること、
を意味している。
2層フィルムは、ガスケットの成形に先立ち、事前に製造して準備しておく必要がある。この実施形態で用いる2層フィルムの製造方法は、次の通りである。
(1)PTFEとPETの2層フィルム
PTFEフィルムとPETフィルムの間の接着は、化学蒸着法を用いてシリコン系材料をプラズマ化し、酸素との化学反応により基材表面に透明なシリカ蒸着膜を形成させ、接着させる。
(2)ETFEとPETの2層フィルム
ETFEフィルムとPETフィルムの間の接着は、化学蒸着法を用いてシリコン系材料をプラズマ化し、酸素との化学反応により、基材表面に透明シリカ蒸着膜を形成させ、接着させる。
再び、図1を参照して、ラミネートガスケット1にはシリンジバレルの内面と気密的・液密的に接する円周面部4a、4bが備えられている。そして、ガスケット1の前側の円周面部4aには、周方向に延びる円環状の凸部5が形成されている。
なお、凸部5の数としては、1つ以上であればよく、ガスケット1の軸方向に所定の間隔を開けて複数本設けてもよく、特に制限を設ける必要はない。
凸部5は、ガスケット1の円周面部4aを展開して考えた場合、局所的な方向性がなくなることから概略直線状の凸部5となることが好ましい。
凸部5の作成方法としては、ガスケット1を成形後に凸部5を形成することができる。
上記の熱を加える方法としては、例えばレーザー光の照射による方法が使用可能である。レーザー光の照射による加工は、微細な凸構造の成形が可能であり、成形部周辺への影響が少ないことから好ましい。
この実施形態に係るガスケット1は、以下の製造工程により製造される。
(1)ガスケット成形金型を準備する工程、
(2)金型内にて、表面に不活性樹脂フィルム3(2層フィルム3a、3b)がラミネートされたガスケットを成形する工程、
(3)金型からラミネートガスケットを取り出した後、円周面部に周方向に延びる円環状の凸部を形成する工程、
により製造される。
例えば、架橋材が混合された加硫前のゴムのシート等に不活性樹脂フィルムが重ね合わされ、成形金型により加硫成形されて、所定の形状のガスケットに加工される。
ガスケットを金型で成形した後、凸部5を形成することにより、封止性のより向上したガスケットを製造することができる。
不活性樹脂フィルムに、塩素化ブチルゴム製未加硫ゴムシート(JIS A 硬さ58度)を重ねて成形金型上に置き、真空プレスで175℃6分成形し、不活性樹脂シートの内面とゴムを加硫接着させて、ガスケット形状を加硫成形した。
使用した不活性樹脂フィルムは、次の通りである。
(1)実施例1は、PTFEとPETの2層フィルムを使用した。
(2)実施例2は、ETFEとPETの2層フィルムを使用した。
(3)比較例1は、PTFEスカイビング法フィルム:日本バルカー工業(株)製の商品名「バルフロン」(登録商標)を使用した。
(4)比較例2は、X社製のPTFEスカイビング法フィルムを使用した。
<成形性の観察>
成形後の製品を目視で検査を行い、フィルムの破れや浮きについて評価を行った。1製品につき1箇所でもフィルム破れや浮きが存在すれば不良としてカウントし記載した。
<剥離力の観察>
試験片幅1cm、長さ5cm程度のサンプルを作成後オートグラフにてフィルムとゴムの剥離を行った。
<引張強度の観察>
ダンベル6号を用い、オートグラフにて引張を行い、破断した伸びをEBとした。
[試験結果]
2 本体
3 2層の不活性樹脂フィルム
3a 外側(外層)フィルム
3b 内側(内層)フィルム
4a、4b 円周面部
5 円環状凸部
Claims (4)
- 弾性材で形成された円柱形状の本体と、前記本体の表面にラミネートされた不活性樹脂フィルムとを含む注射器用ガスケットであって、
前記ラミネートされた不活性樹脂フィルムは、内外2層の不活性樹脂フィルムを含み、
前記内外2層の不活性樹脂フィルムは、外側フィルムがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)で構成されていて、
前記内外2層の不活性樹脂フィルムは、内側フィルムがポリエチレンテレフタレート(PET)で構成されていて、
前記内側フィルムと前記本体との剥離力が10N以上であり、前記内側フィルムの引張強度EBが300%以上であることを特徴とする、注射器用ガスケット。 - 弾性材で形成された円柱形状の本体と、前記本体の表面にラミネートされた不活性樹脂フィルムとを含む注射器用ガスケットであって、
前記ラミネートされた不活性樹脂フィルムは、内外2層の不活性樹脂フィルムを含み、
前記内外2層の不活性樹脂フィルムは、外側フィルムがエチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)で構成されていて、
前記内外2層の不活性樹脂フィルムは、内側フィルムがポリエチレンテレフタレート(PET)で構成されていて、
前記内側フィルムと前記本体との剥離力が10N以上であり、前記内側フィルムの引張強度E B が300%以上であることを特徴とする、注射器用ガスケット。 - 前記円柱形状の本体は、円周面部を有し、当該円周面部の表面にラミネートされた前記内外2層の不活性樹脂フィルムの表面には、少なくとも1つの微小な環状凸部が形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の注射器用ガスケット。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の注射器用ガスケットと、前記注射器用ガスケットが打栓されたシリンジバレルとを含む、医療用注射器。
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