JP6923204B2 - 積層化細胞シート組成物を製造する方法、それにより製造される積層化細胞シート組成物及びその製造装置 - Google Patents

積層化細胞シート組成物を製造する方法、それにより製造される積層化細胞シート組成物及びその製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、積層化細胞シート組成物を製造する方法及びその装置に関する。本出願は、2015年11月5日に提出された日本出願(特願2015−217784)を基礎とする優先権主張出願である。
近年、再生医療や薬物応答組織モデルへ利用することを目的として、細胞を用いた三次元的な組織、臓器を作製する技術が開発されている。従来、接着性細胞の多くは生体外では二次元的(平面)にしか培養できなかった。しかし、生体の多く組織は、細胞が三次元的に積みあがることで構築されたものであり、より生体内の状態に近づけるためには、細胞を三次元的に構築する技術が求められていた。
細胞を三次元的に構築する試みとしては、例えば、細胞をスキャフォールドと呼ばれる足場に播種して三次元的に組織を構築して移植する方法や、臓器・組織を脱細胞化し、残存したマトリックスを足場として細胞を播種して三次元化する方法、シート状に剥離した細胞シートを三次元的に積層して組織を構築する方法などが開発されている。これらはいずれも再生医療分野や創薬分野での応用が期待される技術であり、早期の実用化が待ち望まれている。
上述の細胞シートを作製するために、水に対する上限若しくは下限臨界溶解温度が0〜80℃であるポリマーを培養基材表面に被覆した細胞培養皿(温度応答性培養皿)が開発された(特許文献1)。当該細胞培養皿を用いて、培養皿表面に被覆されたポリマーの上限臨界溶解温度未満又は下限臨界溶解温度以上にて細胞培養し、細胞がコンフルエントになる状態まで培養した後に上限臨界溶解温度以下又は下限臨界溶解温度未満にすると、細胞をシート状かつ非侵襲的に回収することができる。
従来、接着性の細胞を培養皿から回収するためにはトリプシンやディスパーゼ等のタンパク質分解酵素を用いなければならず、細胞表面に発現しているマトリックスタンパク質や、細胞と細胞とを結合するギャップジャンクションを構成するタンパク質を分解しなければ回収することができなかった。こうした細胞の接着に必要なタンパク質を分解していたため、細胞がバラバラの状態で回収されることとなり、その結果、移植した場合は組織へ生着しにくい状態となっていた。一方、温度応答性培養皿により得られる細胞シートは、細胞表面のタンパク質がほとんど損傷を受けておらず、表面に残存した接着タンパク質の存在により、患部へ速やかに生着できるという従来には無い優れた特徴を有している。これにより細胞移植の効果を最大限高めることが可能となり、細胞移植技術を飛躍的に発展させた。
細胞シート工学が確立されたことにより、細胞治療の技術は劇的に変化を遂げたが、細胞移植では治療効果を示さないと考えられる重篤な患者に対しては、依然として臓器移植が有効な治療手段である。ところが、臓器移植を必要とする患者の数に対して、供給される臓器の数は圧倒的に少なく、臓器又は組織を構築し、供給する技術の開発が求められている状況である。こうした課題に対しても細胞シート工学の技術が応用されており、細胞シートを積層することで厚みをもった生体組織を構築する試みが行われている(特許文献2)。また、細胞シートを効率的に積層するための細胞移動治具(特許文献3)や、細胞シートを大量に作製するための細胞培養処理装置(特許文献4)も開発されている。
特開平02−211865号公報 国際公開第02/008387号 特開2005−176812号公報 国際公開第12/098931号
上述のように、細胞シートを効率的に積層するための方法や装置が開発されているが、細胞シートを1回積層するためには、少なくとも30分程度の時間を要し、ある程度の厚みをもった組織を作製するためには数回〜数十回積層を繰り返す必要があり、一つの組織を作製するのに多大なる時間を要するという問題があった。従って、本発明は、細胞シートを積層するために必要な時間を短縮し、効率的に積層化細胞シート組成物を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の角度から検討を加えて研究開発を行ってきた。その結果、驚くべきことに、細胞移動治具に接着させた細胞シートを、積層される細胞シートに接触させる前に、細胞接着性物質を塗布して接触させたところ、細胞シートを積層するために必要な時間が大幅に削減されることを見出した。また、細胞移動治具に接着させた細胞シートを、積層される細胞シートに接触させる前に、細胞接着性物質を塗布して、荷重をかけながら接触させたところ、細胞シートを積層するために必要な時間が大幅に削減されることを見出した。すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1] (1)刺激応答性培養基材上の第1シート状細胞群の上面に、培養細胞移動治具を接触させ、該刺激応答性培養基材上の第1シート状細胞群を剥離させる刺激を与えて、剥離した第1細胞シートを該培養細胞移動治具に付着させる工程、
(2)刺激応答性培養基材上の第2シート状細胞群の上面、及び/又は、該培養細胞移動治具に付着した該第1細胞シートの下面、に細胞接着性物質を塗布する工程、
(3)該培養細胞移動治具に付着した該第1細胞シートの下面を、該第2シート状細胞群の上面に接触させ、該第2シート状細胞群が該刺激応答性培養基材から剥離する刺激を与え、剥離した第2細胞シートを該第1細胞シートの下面に接着させる工程、を含む、積層化細胞シート組成物を製造する方法。
[2] 該工程(3)の該刺激を与える時に、さらに同時に荷重する、[1]に記載の方法。
[3] 該工程(3)で得られた、該培養細胞移動治具に付着した積層化細胞シート組成物に対し、さらに、
(4)刺激応答性培養基材上の第3シート状細胞群の上面、及び/又は、該工程(3)で得られた該培養細胞移動治具に付着した積層化細胞シート組成物の下面、に細胞接着性物質を塗布する工程、
(5)該培養細胞移動治具に付着した該積層化細胞シート組成物の下面を、該第3シート状細胞群の上面に接触させ、該第3シート状細胞群が該刺激応答性培養基材から剥離する刺激を与え、剥離した第3細胞シートを該積層化細胞シート組成物の下面に接着させる工程、
(6)該工程(4)〜(5)を任意の回数繰り返す工程、
を含む、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 該細胞接着性物質が、細胞接着性タンパク質、細胞接着性ペプチド及び/又は細胞接着性多糖類である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[5] 該細胞接着性物質が、ポリリジン、コラーゲン、ビトロネクチン、フィブリン、フィブリノーゲン及びトロンビンの混合物、フィブロネクチン、トロンボスポンジン、ゼラチン、ラミニン、キトサン系接着剤、アルギン酸系接着剤からなる群から選択される1又は2以上の物質である、[1]〜[3]のいずれか1項に記載の方法。
[6] 該工程(2)が、
刺激応答性培養基材上の第2シート状細胞群の上面、及び、該培養細胞移動治具に付着した該第1細胞シートの下面、に細胞接着性物質を塗布する工程であって、
該第2シート状細胞群の上面に塗布する細胞接着性物質がフィブリノーゲン、及び、該第1細胞シートの下面に塗布する細胞接着性物質がトロンビンである、或いは、
該第2シート状細胞群の上面に塗布する細胞接着性物質がトロンビン、及び、該第1細胞シートの下面に塗布する細胞接着性物質がフィブリノーゲンである、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の方法。
[7] 該工程(4)が、
刺激応答性培養基材上の第3シート状細胞群の上面、及び、該工程(3)で得られた該培養細胞移動治具に付着した積層化細胞シート組成物の下面、に細胞接着性物質を塗布する工程であって、
該第3シート状細胞群の上面に塗布する細胞接着性物質がフィブリノーゲン、及び、該積層化細胞シート組成物の下面に塗布する細胞接着性物質がトロンビンである、或いは、
該第3シート状細胞群の上面に塗布する細胞接着性物質がトロンビン、及び、該積層化細胞シート組成物の下面に塗布する細胞接着性物質がフィブリノーゲンである、[3]〜[6]のいずれか1項に記載の方法。
[8] 該刺激応答性培養基材が、温度応答性培養基材であって、該刺激が、下限臨界溶解温度以下又は上限臨界溶解温度以上の温度である、[1]〜[7]のいずれか1項に記載の方法。
[9] 該刺激応答性培養基材が、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドが少なくともその培養面の一部に被覆された培養基材である、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の方法。
[10] 該培養細胞移動治具が、細胞接着性タンパク質、細胞接着性ペプチド又は親水性ポリマーの1種又は2種以上からなる細胞付着部を有する培養細胞移動治具である、[1]〜[9]のいずれか1項に記載の方法。
[11] 該積層化細胞シート組成物が、心筋細胞、肝細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、膵細胞、腎細胞、血管内皮細胞、上皮細胞からなる群から選択される1又は2以上の細胞を含む、[1]〜[10]のいずれか1項に記載の方法。
[12] [1]〜[11]のいずれか1項に記載の方法により得られる積層化細胞シート組成物。
[13] 前記積層化細胞シート組成物の平均の厚さが、80μm以上である[12]に記載の積層化細胞シート組成物。
[14] [1]〜[11]のいずれか1項に記載の方法を実施するための積層化細胞シート組成物の製造装置。
[15] 刺激応答性培養基材に刺激を与え、該刺激応答性培養基材から細胞シートを剥離させるための刺激手段を具備した載置台と、
該細胞シートを付着させるための培養細胞移動治具と、
該培養細胞移動治具を取り付けて、該培養細胞移動治具に荷重をかけるためのアームと、
該刺激応答性培養基材上の該細胞シートに細胞接着性物質を塗布する細胞接着性物質塗布手段と、を備えた、積層化細胞シート組成物の製造装置。
[16] 該載置台に載置された刺激応答性培養基材上の第1シート状細胞群の上面に、該培養細胞移動治具を接触させ、該刺激手段によって該刺激応答性培養基材上の該第1シート状細胞群が剥離される刺激を与えて、得られる第1細胞シートを該培養細胞移動治具に付着させ、
該載置台に載置された第2シート状細胞群の上面、及び/又は、該第1細胞シートの下面に、該細胞接着性物質塗布手段によって供給される該細胞接着性物質を塗布し、
該培養細胞移動治具に付着した該第1細胞シートの下面を、該第2シート状細胞群の上面に接触させ、該刺激手段によって該刺激応答性培養基材上の該第2シート状細胞群が剥離される刺激を与えると同時に、該培養細胞移動治具に荷重をかけて、得られる第2細胞シートを該第1細胞シートに迅速に積層することを特徴とする、[15]に記載の積層化細胞シート組成物の製造装置。
本発明によれば、細胞シートを積層する時間が大幅に削減され、細胞シートを積層するときに受けていた細胞のダメージが軽減される。また、これまで積層することが難しかった細胞種を用いた場合でも、細胞シートを積層することができ、厚みをもった積層化細胞シート組成物を簡便かつ再現良く得ることが可能となる。さらに、本発明によれば、一度に大量の細胞を移植可能な積層化細胞シート組成物を提供可能となる。
図1は、本発明のスタンプ積層技術を示す模式図である。 図2は、本発明の細胞シート積層法を示す模式図である。 図3は、本発明の細胞シート積層法により作製した積層化細胞シートを示す図である。(A)積層化細胞シート(10枚)の外観写真である。(B)積層化細胞シートの断面を示す模式図である。(C)積層化細胞シート(10枚)をHE染色した図である。(D)積層化細胞シート(10枚)を免疫染色した図である。(E)積層化細胞シート(15枚)をHE染色した図である。(F)積層化細胞シート(15枚)を免疫染色した図である。(C〜F)青:核(DAPI)、緑:心筋細胞(cTnT)を示す。 図4、本発明の細胞シート積層法(左)と従来方法(右)で細胞シートを積層した時の細胞生存率を示す(n=3)。 図5は、本発明の細胞シート積層法により作製した積層化心筋シートの拍動の様子を示す図である。1〜5は時系列(約0.1秒間隔)の観察画像を示し、緑部分は心筋細胞が拍動している部分を示す。 図6は、本発明により得られた心筋細胞シートの拍動電位を示す図である。(A)本発明の心筋細胞シートと電位測定点A,Bの位置を示す。(B)電位測定点A(上段)、電位測定点B(下段)の拍動電位を示すグラフである。 図7は、本発明の細胞シート積層法により作製した積層化細胞シート内の血管網形態を示す図である。(A)以下B〜Dの写真の状態を示した模式図である。(B)培養皿上における細胞シート内の血管網を示す図である。(C)本発明の方法を用いて2枚積層した細胞シート内の血管網を示す図である。緑:CD31陽性細胞、青:核(DAPI)を示す。(D)本発明の方法を用いず、細胞シートを細胞培養皿より剥離した状態で観察した血管網を示す図である。血管網は緑(GFP)で表す。 図8は、本発明の方法又は従来方法で作製した心筋細胞シートをヌードラット背中の皮下に移植した様子を示す図である。(A)心筋細胞シートをヌードラットの背中の皮下に移植後、2週間後の様子を示す図である。点線部左の※Bは本発明の方法により作製した心筋細胞シート、点線部右の※Cは従来方法で作製した心筋細胞シートの移植部を示す。(B)(A)の※B部の拡大図である。(C)(A)の※C部の拡大部である。 図9は、本発明の方法で作製した心筋細胞シートが移植部位に定着しているか確認した図である。(A)従来方法で作製した心筋細胞シートを移植した部位のアザン染色の図である。(B)従来方法で作製した心筋細胞シートを移植した部位の細胞核(青、Hoechst)及び心筋トロポニンT(緑、cTnT)発現の位置を示す図である。(C)本発明の方法で作製した心筋細胞シートを移植した部位のアザン染色の図である。(D)本発明の方法で作製した心筋細胞シートを移植した部位の細胞核(青、Hoechst)及び心筋トロポニンT(緑、cTnT)発現の位置を示す図である。(E)移植組織の定着面積を定量化したグラフである。 図10は、本発明の方法又は従来方法で作製したGFP発現心筋細胞シートをヌードラット背中の皮下に移植した様子を示す図である。(A)本発明の方法で作製した細胞シートを移植した部分のGFP発現の様子(緑)である。(B)従来方法で作製した細胞シートを移植した部分のGFP発現の様子(緑)である。(C)(A)及び(B)のGFP発現領域を定量化した、移植後の定着面積(mm)を示すグラフである。 図11は、本発明の細胞シート積層法により作製した積層化肝細胞シート示す図である。(A、B)HepG2積層化細胞シート(10層)のHE染色した図を示す(A:低倍率、B:高倍率)。(C、D)HepG2積層化細胞シート(15層)のHE染色した図を示す(C:低倍率、D:高倍率)。 図12は、本発明の製造方法を実施可能な積層化細胞シート組成物の製造装置の一例を示す図である。 図13は、本発明の細胞シート積層法により作製した積層化細胞シート(10層)をラットへ移植して2週間後の組織像を示す図である。本発明の方法で作製した心筋細胞シートを移植した部位の細胞核(青、Hoechst)、心筋トロポニンT(緑、cTnT)及びCD31(赤)発現の位置を示す図である。CD31陽性細胞は血管内皮細胞を示す。
本発明は、積層化細胞シート組成物を製造する方法に関するものである。本発明における「細胞シート」とは、細胞培養基材上で培養し、細胞培養基材上から剥離することで得られる1層又は複数層の細胞群をいう。本明細書において、細胞培養基材上に接着した状態の細胞群を「シート状細胞群」、該シート状細胞群を細胞培養基材から剥離して得られる細胞群を「細胞シート」と区別する。積層化細胞シート組成物とは、複数の該細胞シートが積層されたものを含む。
本発明は、積層化細胞シート組成物の製造方法を提供し、一実施形態において、以下の工程を含んでいる:
(1)刺激応答性培養基材上の第1シート状細胞群の上面に、培養細胞移動治具を接触させ、該刺激応答性培養基材上の第1シート状細胞群を剥離させる刺激を与えて、剥離した第1細胞シートを該培養細胞移動治具に付着させる工程、
(2)刺激応答性培養基材上の第2シート状細胞群の上面、及び/又は、該培養細胞移動治具に付着した該第1細胞シートの下面、に細胞接着性物質を塗布する工程、
(3)該培養細胞移動治具に付着した該第1細胞シートの下面を、該第2シート状細胞群の上面に接触させ、該第2シート状細胞群が該刺激応答性培養基材から剥離する刺激を与え、剥離した第2細胞シートを該第1細胞シートの下面に接着させる工程。
本発明の方法によれば、積層化細胞シート組成物を製造する時間が大幅に削減され、かつ、積層化細胞シートを製造するときに受けていた細胞のダメージが軽減される。また、これまで積層することが難しかった細胞種を用いた場合でも、簡便かつ再現良く、積層化細胞シート組成物を製造することが可能となる。
また、本発明の方法は、上記の工程(3)の該刺激を与える時に、さらに同時に荷重する工程を有する。これにより、一度に大量の細胞を移植可能な積層化細胞シート組成物を製造することができる。
また、本発明の方法は、上記の工程(3)で得られた、該培養細胞移動治具に付着した積層化細胞シート組成物に対し、さらに、
(4)刺激応答性培養基材上の第3シート状細胞群の上面、及び/又は、該工程(3)で得られた該培養細胞移動治具に付着した積層化細胞シート組成物の下面、に細胞接着性物質を塗布する工程、
(5)該培養細胞移動治具に付着した該積層化細胞シート組成物の下面を、該第3シート状細胞群の上面に接触させ、該第3シート状細胞群が該刺激応答性培養基材から剥離する刺激を与え、剥離した第3細胞シートを該積層化細胞シート組成物の下面に接着させる工程、
(6)該工程(4)〜(5)を任意の回数繰り返す工程、
を含んでいる。
これにより、任意の枚数積層化された積層化細胞シート組成物を、簡便かつ再現良く得ることが可能となる。
本発明に用いられる細胞の動物種の由来は、特に制約されるものではないが、例えば、ヒト、ラット、マウス、モルモット、マーモセット、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、サル、チンパンジーあるいはそれらの免疫不全動物などの哺乳類動物、鳥類、爬虫類、両生類、両生類、魚類、昆虫等が挙げられる。本発明の組成物をヒトの治療に用いる場合はヒト、ブタの治療に用いる場合はブタ、サルの治療に用いる場合はサル、チンパンジーの治療に用いる場合はチンパンジー由来の細胞を用いる方が望ましい。また、治療を行うのがヒトである場合、患者本人から採取した細胞であってもよく(自家細胞)、他人の細胞から採取した細胞を用いてもよく(他家細胞)、市販の細胞株であってもよい。
本発明に用いる細胞種、細胞数、含まれる細胞の割合等については、用途に応じて適宜選択、又は調整すればよい。例えば、心筋組織の再生、又は心筋機能を評価する方法を目的とした場合、使用する細胞としては心筋細胞、心筋芽細胞、筋芽細胞、間葉系幹細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、線維芽細胞、骨髄由来細胞、脂肪由来細胞のいずれか1種、又は2種以上の細胞が混合したもの等が挙げられる。
肝組織の再生、肝組織を模擬した人工肝臓の作製、又は肝組織の機能を評価する方法等を目的とした場合、例えば、使用する細胞としては、肝実質細胞(肝細胞ともいう)、類洞内皮細胞、クッパー細胞、星細胞、ピット細胞、胆管上皮細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、線維芽細胞、骨髄由来細胞、脂肪由来細胞、間葉系幹細胞のいずれか1種、又は2種以上の細胞が混合したもの等が挙げられる。
腎組織の再生、腎組織を模擬した人工腎臓の作製、又は腎機能を評価する方法を目的とした場合、例えば、使用する細胞としては、腎細胞、顆粒細胞、集合管上皮細胞、壁側上皮細胞、足細胞、メサンギウム細胞、平滑筋細胞、尿細管細胞、間在細胞、糸球体細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、線維芽細胞、骨髄由来細胞、脂肪由来細胞、間葉系幹細胞のいずれか1種、又は2種以上の細胞が混合したもの等が挙げられる。
副腎組織の再生、副腎を模擬した人工副腎の作製、又は副腎機能を評価する方法を目的とした場合、例えば、使用する細胞としては、副腎髄質細胞、副腎皮質細胞、球状層細胞、束状層細胞、網上層細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、線維芽細胞、骨髄由来細胞、脂肪由来細胞、間葉系幹細胞のいずれか1種、又は2種以上の細胞が混合したもの等が挙げられる。
皮膚の再生、又は皮膚機能を評価する方法を目的とした場合、例えば、使用する細胞としては、表皮角化細胞、メラノサイト、立毛筋細胞、毛包細胞、血管内皮細胞、血管内皮前駆細胞、線維芽細胞、骨髄由来細胞、脂肪由来細胞、間葉系幹細胞のいずれか1種、又は2種以上の細胞が混合したもの等が挙げられる。
粘膜組織の再生、又は粘膜組織の機能を評価する方法を目的とした場合、例えば、使用する細胞としては、粘膜を構成する組織から採取される細胞を使用すればよい。粘膜の種類としては、頬側粘膜、胃粘膜、腸管粘膜、嗅上皮、口腔粘膜、子宮粘膜などが挙げられる。粘膜組織から採取される細胞のうち、いずれか1種、又は2種以上の細胞が混合したもの等が挙げられ、その種類については何ら制約されるものではない。
膵臓の再生、膵臓を模擬した人工膵臓の作製、糖尿病の治療又は膵臓の機能を評価する方法等を目的とした場合、使用する細胞としては、例えば、膵臓を構成するα細胞、β細胞、δ細胞、PP細胞、膵腺房細胞(総称して、膵細胞という)を使用すればよい。
また、これらの細胞はES細胞、iPS細胞、Muse細胞、間葉系幹細胞などから分化誘導された細胞であってもよい。
本発明において用いられる細胞は、生体組織をミンス(mince)することにより得られる細胞を用いることもできる。この場合、生体組織由来の細胞には、多種類の細胞が混在することになる。例えば、後述する本発明の実施例では、ラットの心臓組織をミンスし、そこに含まれる心筋細胞を用いて細胞シートを作製するが、当該細胞シートには、心筋細胞以外に心臓組織由来の線維芽細胞、壁細胞、血管内皮細胞等を含んでいる。そのため、目的に応じて不要な細胞を除くためにセルソーターや抗体を用いたり、逆に必要な細胞を加えることができる。本明細書の実施例中の「心筋細胞シート」は、上述の心筋細胞以外に線維芽細胞、壁細胞、血管内皮細胞等を含むものをいう。
細胞シートを得る方法としては、例えば、温度、pH、光等の刺激によって分子構造が変化する高分子を被覆した刺激応答性培養基材上で細胞を培養し、温度、pH、光等の刺激の条件を変えて刺激応答性培養基材表面を変化させることで、細胞同士の接着状態は維持しつつ、刺激応答性培養基材から細胞をシート状に剥離する方法や、任意の培養基材にて細胞を培養し、細胞培養基材の端部から物理的にピンセット等により剥離する方法等が挙げられる。好ましい形態としては、刺激応答性培養基材として、0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆した温度応答性培養基材を用いる方法である。温度応答性培養基材上で、ポリマーの水和力が弱い温度域で細胞を培養し、その後、培養液をポリマーの水和力が強い状態となる温度に変化させることで細胞を培養し、細胞をシート状に剥離して回収する方法である。その際、細胞は0〜80℃の温度範囲で水和力が変化するポリマーを表面に被覆した細胞培養基材上で、ポリマーの水和力の弱い温度域で培養される。その温度域とは通常、細胞を培養する温度、例えば33℃〜40℃であることが好ましい。本発明に用いる温度応答性高分子はホモポリマー、コポリマーのいずれであってもよい。このような高分子としては、例えば、特開平2−211865号公報に記載されているポリマーが挙げられる。
細胞の種類によっては、細胞培養基材上に接着しにくい細胞があり、そのような場合は、例えば、コラーゲン、ラミニン、ラミニン5、フィブロネクチン、マトリゲル等の細胞接着性タンパク質を単独又は2種以上の混合物を予め被覆した細胞培養基材上で細胞を培養することができる。これらの細胞接着性タンパク質の被覆方法は常法に従えば良く、例えば、細胞接着性タンパク質を含む水溶液を細胞培養基材表面に塗布し、その後その水溶液を除去し、リンスする方法等が挙げられる。
本発明において、細胞シートを作製するために播種する細胞数は動物種や細胞種によって異なるが、例えば、0.3×104〜10×106個/cm2であってもよく、0.5×104〜8×106個/cm2であってもよく、0.7×104〜5×106個/cm2であってもよい。本発明においては、細胞シートを温度応答性培養基材から剥離して回収するためには、細胞が付着し、コンフルエント又はサブコンフルエント状態となった培養基材の温度を、被覆ポリマーの上限臨界溶解温度以上若しくは下限臨界溶解温度以下にすることによって剥離させることで得られる。その際、細胞シートの作製は、培養液中において行うことも、その他の等張液中において行うことも可能であり、目的に合わせて選択することができる。細胞シートをより早く、高効率に剥離、回収するために、培養基材を軽くたたいたり揺らしたりする方法、ピペットを用いて培地を撹拌する方法、ピンセットを用いる方法等を単独又は併用して用いてもよい。温度以外の培養条件は常法に従えばよい。例えば、使用する培地については公知のウシ胎児血清(FBS)等の血清が添加されている培地でもよく、無血清培地を用いてもよい。本明細書において、細胞シートの「下面」とは、細胞シートとして剥離する前に刺激応答性培養基材に接していた側の面を意味する。本明細書において、細胞シートの「上面」とは、細胞シートとして剥離する前に刺激応答性培養基材に接していなかった側の面、つまり、細胞シートの下面の反対側の面を意味する。
刺激応答性高分子、特に温度応答性高分子としてポリ−N−イソプロピルアクリルアミド(PIPAAm)を用いた場合を例に説明する。ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドは31℃に下限臨界溶解温度を有するポリマーとして知られ、遊離状態であれば、水中で31℃以上の温度で脱水和を起こしポリマー鎖が凝集して白濁する。逆に31℃以下の温度ではポリマー鎖は水和し、水に溶解した状態となる。本発明では、このポリマーがシャーレなどの基材表面に被覆されて固定されたものである。したがって、31℃以上の温度であれば、培養基材表面のポリマーも同じように脱水和するが、ポリマー鎖が培養基材表面に固定されているため、培養基材表面が疎水性を示すようになる。逆に、31℃以下の温度では、培養基材表面のポリマーは水和するが、ポリマー鎖が培養基材表面に被覆されているため、培養基材表面が親水性を示すようになる。このときの疎水的な表面は細胞が付着し、増殖できる適度な表面であり、また、親水的な表面は細胞が付着できない表面となる。そのため、該基材を31℃以下に冷却すると、細胞が基材表面から剥離する。細胞が培養面一面にコンフルエントになるまで培養されていれば、該基材を31℃以下に冷却することによって細胞シートが回収できる。
本発明に用いられる細胞シート作製用の細胞培養基材の形状は、例えば、ディッシュ、マルチプレート、フラスコ、又は平膜状などの形状のものを用いることができる。細胞培養基材の材料としては、通常、細胞培養に用いられるガラス、改質ガラス、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート等の化合物や、一般に形態付与が可能である物質、例えば、上記以外の高分子化合物、セラミックス類などが挙げられる。
本発明に用いられる細胞シート作製用の細胞培養基材は、細胞が接着する領域と細胞が接着しない領域の両方とを同一培養面上に備えた細胞培養基材を用いてもよく、例えば、複数の円形の細胞接着領域と、それ以外の細胞を接着しない領域とを同一培養面に備えた細胞培養基材を用いることで一度に複数の細胞シートを作製することが可能である。この場合、細胞接着領域の形状は円形、正方形、三角形、長方形等、目的に応じて所望の形状であってよく、その大きさも適宜変更することができる。細胞が接着しない領域を設ける方法としては特に限定されないが、例えば細胞と親和性の低い細胞非付着性高分子である、ポリ−N−アクリロイルモルホリン、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、ポリエチレングリコール、セルロース等の親水性高分子、又はシリコーン高分子、フッ素高分子等の強疎水性高分子等を被覆する方法等が挙げられる。
本発明における細胞シートは、従来、接着性細胞を回収する際に用いられるディスパーゼ、トリプシン等のタンパク質分解酵素を用いないため、細胞表面に発現するタンパク質に損傷をほとんど受けていない。そのため、細胞培養基材から剥離された細胞シートの下面(細胞培養基材と接触していた側の面)は、損傷を受けていない接着性タンパク質を豊富に有しており、また、細胞−細胞間のデスモゾーム構造が保持されている。このような構造を有していることにより、細胞シートは生体患部に貼付したり、細胞シートを積層することに適している。タンパク質分解酵素であるディスパーゼは、細胞−細胞間のデスモソーム構造を10〜40%保持した状態で細胞を剥離させることができることで知られているが、細胞−培養基材間に存在する基底膜様タンパク質等も同時に破壊してしまう。これに対して、本発明に用いられる細胞シートは、デスモゾーム構造及び基底膜様タンパク質の両者を60%以上残存された状態で剥離・回収可能であり、上述したような種々の効果を得ることができる。
積層化細胞シートを製造する方法としてはピペット等によって培養液中に浮かんでいる細胞シートを培養液ごと吸い取り、別の培養皿の細胞シート上に放出し、液体培地の流れによって積層する方法、細胞移動治具を用いて積層する方法等が挙げられる。本発明の積層化細胞シート組成物を製造する方法では、細胞移動治具を用いる方法の方が、細胞シートを損傷させることなく積層することが可能となるため、好ましい。細胞移動治具は、細胞シートを捕捉できる機能を有するものであればよく、例えば、材料としては、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、ウレタン、セルロース及びその誘導体、キチン、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、フィブリンゲル等を用いることができる。細胞移動治具の形状としては、例えば、スタンプ型、膜状、多孔膜状、不織布状、織布状の形状で使用される。本発明の実施形態では、細胞移動治具は細胞シートを破損することなく回収し、別の細胞シートに積層する機能を有していればよく、細胞接着性タンパク質、細胞接着性ペプチド、又は親水性ポリマーの1種、若しくは2種以上からなる細胞付着部を有する培養細胞移動治具であることが好ましい。例えば、特開2005−176812号公報には細胞付着部を有したスタンプ型の培養細胞移動治具を開示している。該スタンプ型の培養細胞移動治具は、その細胞付着部によって細胞シートを破損することを防止したり、細胞シートが培養皿から剥離するときに起こる細胞シートの縮みを防止しながら回収を可能とする。該細胞移動治具により、細胞シートを別の細胞シート上に容易に移動させつつ、細胞シートを縮ませることなく積層することができる。細胞シートを縮ませずに積層することにより、細胞シート同士が隙間なく積層され、高密度な三次元構造を有する積層化細胞シートを得ることができる。
本発明に用いられる細胞接着性物質とは、細胞シートと細胞シートとを付着させる機能を有する物質であれば特に限定されず、例えば細胞接着性タンパク質、細胞接着性ペプチド又は細胞接着性多糖類、その他医療用接着剤等を含んでいる。例えば、細胞接着性タンパク質としてはコラーゲン、ビトロネクチン、フィブリン(フィブリノーゲン及びトロンビンの混合物を含む)、フィブロネクチン、トロンボスポンジン、ゼラチン、ラミニン等が挙げられる。細胞接着性ペプチドとしては、ポリリジン等が挙げられる。細胞接着性の多糖類としては、キトサン系接着剤、アルギン酸系接着剤(アルギン酸ナトリウム水溶液とMg2+又はCa2+との混合物を含む)等が挙げられる。その他医療用接着剤は、市販されているものが利用可能である。その中でも、フィブリンは、生体において血液の凝固に関わる繊維状のタンパク質であって、傷などが原因となって血小板と重合して血餅を形成して止血効果を生じるため、外科手術等においても傷を塞ぐためにしばしば用いられることが知られている。フィブリンは、その前駆物質であるフィビリノーゲンが、セリンプロテアーゼの一種であるトロンビンによってフィブリンへと変換されることで得られ、網目構造を有する細胞接着性タンパク質のゲルである。その他、ポリリジン、コラーゲン、ビトロネクチン、フィブロネクチン、トロンボスポンジン、ゼラチン又はラミニン、キトサン系接着剤、アルギン酸系接着剤、その他医療用接着剤として用いられる物質等も同様に細胞接着性作用を有する。これらの細胞接着性物質は、細胞シートと細胞シートとの間に塗布されることで、細胞シート同士が接着するまでの間、一時的に両者の付着を補助することができるようになる。
従来、細胞シートを別の細胞シートの上に積層し、2枚の細胞シートが剥離しないようになるまでには、30分以上の時間を要していた。このように時間を要するのは、上層の細胞シート下面の細胞外マトリックスが、下層の細胞シート上面と密着して、上層の細胞シート下面の細胞外マトリックスによって接着するまでに30分以上の時間が必要であるからと考えられている。そのため、細胞シートを1回積層するごとに30分以上の時間が必要となり、積層枚数が増えるほど、膨大な時間を要していた。これにより、積層化細胞シート組成物が得られるまでに時間がかかってしまい、細胞にストレスを与えていた。本発明の実施態様のように、細胞シートと細胞シートの間に細胞接着性物質を塗布することで、細胞シート同士が接着するまでに要する時間を大幅に短縮させることが可能となり、細胞に与えるストレスが小さくなった。細胞接着性物質は、細胞シートと細胞シートの間の接着性を増強させる効果があれば限定されないが、特にトロンビン及びフィブリノーゲンの両者を使用することが好ましい。トロンビン及びフィブリノーゲンは、それら自体は細胞接着性を有さないが、トロンビンとフィブリノーゲンが反応することで初めて細胞接着性が生じる。そのため、トロンビン及びフィブリノーゲンをそれぞれ別々の細胞シートの積層面に塗布することで、積層したときに初めてフィブリノーゲンがフィブリンゲルへと変換され、接着力を生じるようになり、操作性の点から好ましい。細胞シートに塗布する直前にトロンビンとフィブリノーゲンを混合した溶液を塗布してもよい。これによって、細胞シート間の一時的な接着性が向上し、大幅に細胞シートの積層に要する時間を短縮することが可能となる。塗布する量は、細胞接着性物質の種類、又は細胞の量若しくは種類等によって適宜調節すればよいが、細胞シート同士の密着性、機能性を阻害しない量にすることが好ましい。例えば、積層する細胞シートが心筋細胞を含む細胞シートである場合、上下の細胞シートが電気的な繋がりを損なわない程度の塗布量にとどめておくことが好ましい。塗布する方法は、細胞表面に細胞接着性物質が含まれる溶液を積層面全体に塗ってもよく、スプレー状に吹き付けてもよく、予めゲルを細胞接着性物質含む溶液に細胞シートを付着させた細胞移動治具を浸漬して塗布してもよい。
細胞シートと細胞シートの間に塗布する細胞接着性物質に、さらに血管新生を誘導する因子を添加してもよい。血管新生を誘導する因子としては、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、アンジオポエチン、血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、VE−カドヘリン、エフリン、プラスミノーゲンアクチベータ、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)、胎盤成長因子(PlGF)等である。これらが細胞シートと細胞シートの間に添加されることによって、積層化細胞シート組成物内での血管新生が促進される。また、移植部位における血管新生もより促進されることとなる。
細胞シートを積層する際、細胞シートに荷重をかけることによって積層した細胞シート同士を密着させることが好ましい。これにより、細胞シートと細胞シートとの間の隙間が減り、より細胞シートと細胞シートとの間の結合が密になる。また、荷重をかけることによって、細胞シートを積層するために必要とされる時間が短縮されるため、好ましい。荷重は、使用する細胞の種類や、使用する細胞接着性物質の種類等によって異なるが、例えば、1g/cm2以上、2g/cm2以上、3g/cm2以上、4g/cm2以上、5g/cm2以上、6g/cm2以上、7g/cm2以上、8g/cm2以上、9g/cm2以上、10g/cm2以上、11g/cm2以上、12g/cm2以上、13g/cm2以上、14g/cm2以上、15g/cm2以上で荷重することが好ましい。また、荷重の上限は、細胞へダメージ最小限にする、若しくは、細胞移動治具の細胞付着部にダメージを与えない範囲に留めておいた方がよく、その上限値は細胞の種類等によって異なるが、例えば、50g/cm2以下、45g/cm2以下、40g/cm2以下、39g/cm2以下、38g/cm2以下、37g/cm2以下、36g/cm2以下、35g/cm2以下、34g/cm2以下、33g/cm2以下、32g/cm2以下、31g/cm2以下、30g/cm2以下であることが好ましい。荷重が50g/cm2を超えると、細胞に負荷がかかりすぎてしまい、細胞がダメージを受けるために好ましくない。荷重をかける方法については、スタンプ型デバイスの自重によって荷重する方法であってもよく、機械的に荷重をかける機構によって荷重する方法であってもよい。
本発明の方法は、上述の細胞シートを積層化する方法を所望の回数繰り返すことにより、所望の厚さを有する積層化細胞シート組成物を得ることが可能となる。特に、本発明は従来の細胞シート積層化法と比較して、1回あたりの積層化時間を1/6程度に短縮することが可能であり、積層化する回数が増加すれば短縮効果がより顕著になる。積層化する回数は、目的に応じ適宜変更することができ、例えば、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、9回、10回、15回、20回、25回、30回、35回、40回、45回、50回、60回、70回、80回、90回、100回、またはそれ以上の回数を繰り返すことができる。また、1回の積層につき1層ずつ細胞シートを積層してもよく、1回につき2層以上積層してもよく、限定されない。1回につき2層以上の細胞シートを積層することにより、さらに積層する時間を短縮することが可能となる。
本発明は、細胞シートと細胞シートの間に細胞接着性物質を有することにより、従来の方法では得られない厚さを有する積層化細胞シート組成物を提供する。また、本発明は、各細胞シート層同士が密着した形態の積層化細胞シート組成物を提供する。従来の積層された細胞シートは、生体に移植する場合、その厚さが理由で、細胞シートの内部に栄養や酸素が到達できず、壊死することがあった。そのため、1度に移植できる細胞シートの厚さは、80μm未満であった。80μm以上の厚さの細胞シートを移植するためには、複数回の移植操作が必要であり、移植する度に手術が必要となり、被験体に負担を強いるものであった。一方、本発明の積層化細胞シートは、1度の移植で80μm以上の厚さを有する細胞シートを移植することが可能であり、被験体の負担を大幅に軽減することが出来る。
本発明において、積層化細胞シート組成物の厚さとは、平均の厚さを意味し、細胞シート積層化物の少なくとも2カ所の厚さを測定して得られる値である。本発明の積層化細胞シート組成物の厚さを測定する方法は特に限定されないが、例えば、積層化細胞シート組成物の切片標本を作製し、その顕微鏡画像から取得することが可能である。
本発明の積層化細胞シート組成物の平均の厚さは、80μm以上が好ましく、例えば、85μm以上、90μm以上、95μm以上、100μm以上、110μm以上、120μm以上、130μm以上、140μm以上、150μm以上、160μm以上、170μm以上、180μm以上、190μm以上、200μm以上、210μm以上、220μm以上、230μm以上、240μm以上、250μm以上、260μm以上、270μm以上、280μm以上、290μm以上、300μm以上、400μm以上、500μm以上、600μm以上、700μm以上、800μm以上、900μm以上、1000μm以上、又はそれ以上の厚さを有していても良い。上限については特に限定されない。
また、本発明の積層化細胞シート組成物の平均の厚さは、例えば、80μm〜1000μm、80μm〜800μm、80μm〜600μm、80μm〜500μm、80μm〜300μm、90μm〜1000μm、90μm〜800μm、90μm〜600μm、90μm〜500μm、90μm〜300μm、100μm〜1000μm、100μm〜800μm、100μm〜600μm、100μm〜500μm、100μm〜300μmであってもよく、これに限定されない。
本発明の方法は、積層化細胞シート組成物を自動で作製する装置によって具現化されるものであってもよい。刺激応答性培養基材が温度応答性培養基材である場合、温度応答性培養基材の細胞接着面上に形成した薄いシート状の細胞は、温度を変える(低下させる)ことによって該温度応答性培養基材から剥離する。そのため、該温度応答性培養基材の温度をクーラ(ペルチェ)等によって低下させて細胞シートを得て、これを、ロボットやアクチュエータによって複数枚を重ね合わせることで積層化細胞シート組成物を得ることができる。細胞シートを重ね合わせる際、当該細胞シートと細胞シートの間に、細胞接着性物質を塗布する手段をさらに有している。これにより、従来の細胞シート積層化装置に比べて迅速に細胞シートを積層化することができる。
このような装置の構成としては、例えば、
刺激応答性培養基材に刺激を与え、該刺激応答性培養基材から細胞シートを剥離させるための刺激手段を具備した載置台と、
該細胞シートを付着させるための培養細胞移動治具と、
該培養細胞移動治具を取り付けて、該培養細胞移植治具に荷重をかけるためのアームと、
該刺激応答性培養基材上の該細胞シートに細胞接着性物質を塗布する細胞接着性物質塗布手段と、を備え、
該載置台に載置された刺激応答性培養基材上の第1シート状細胞群の上面に、該培養細胞移動治具を接触させ、該刺激手段によって該刺激応答性培養基材上の該第1シート状細胞群が剥離される刺激を与えて、得られる第1細胞シートを該培養細胞移動治具に付着させ、
該載置台に載置された第2シート状細胞群の上面、及び/又は、該第1細胞シートの下面に、該細胞接着性物質塗布手段によって供給される該細胞接着性物質を塗布し、
該培養細胞移動治具に付着した該第1細胞シートの下面を、該第2シート状細胞群の上面に接触させ、該刺激手段によって該刺激応答性培養基材上の該第2シート状細胞群が剥離される刺激を与えると同時に、該細胞移動治具に荷重をかけて、得られる第2細胞シートを該第1の細胞シートに迅速に積層することを特徴とする積層化細胞シート組成物の製造装置、が挙げられる。
上記装置の構成は、本発明の一実施形態であって、本発明の方法が具現化され、同一の効果を有する構成であれば特に限定されない。
本発明の方法によって得られる積層化細胞シート組成物は、最終的には、細胞移動治具から分離される。細胞移植治具から分離する方法としては限定されないが、例えば、物理的に細胞移動治具から引き剥がす方法や、細胞付着部に含まれる物質を溶解又は融解することによって得る方法などがある。例えば、細胞付着部がゼラチンを含むゲルからなる場合は、37℃で保温することによって細胞付着部分が溶解し、積層化細胞シート組成物のみを回収することができる。
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。なお、本実施例における実験は、早稲田大学並びに東京女子医科大学の生物実験安全管理規程施行細則に従い、両大学に設置された動物実験審査委員会において承認された。
<使用した動物、細胞、試薬等>
本実施例において、別途特別に表記が無い限り、以下の動物、細胞、試薬等を使用した。
・ラット(生後1日、日本医科学動物資材研究所社、Hsd:Sprague Dawley SD(系統名))
・HepG2(ATCC社、HB−8065)
・温度応答性培養皿(UpCell(登録商標))(セルシード社)
・ラット心筋細胞培養液(medium199 40%+HANKS balanced salt Solution 54%+FBS6%+penicillin−streptomycin solution1%+166mmol/L NaCl、1.0 mmol/L NaHPO、0.8 mmol/L MgSO、26.2mmol/L NaHCO、0.9mmol/L CaCl、5mmol/L glucose)
・HepG2細胞培養液(DMEM+FBS10%+penicillin−streptomycin solution1%)
・FBS(ジャパンバイオシーラム社、S1650−500)
・ハンクス平衡塩溶液(ナカライテスク社、17460−15)
・DMEM(SIGMA、D6429)
・penicillin−streptomycin solution(Life Technologies、15140−122)
・4%パラホルムアルデヒド固定液(武藤化学社、3311−1)
・50%水酸化ナトリウム溶液(和光純薬工業社、197−12375)
・抗ラット心筋トロポニンT(サーモフィッシャーサイエンティフィック社、MS−295−P1)
・CD31抗体 mouse anti ratPECAM−1[CD31](ミリポア社、MAB1393)
・2次染色抗体 Alexa Fluor488 goat anti−mouse(Life technolodies、A11017)
・2次染色抗体 Alexa Fluor594 goat anti−rabbit(Life technolodies、A11037)
・核染色ProLong Gold antifade reagent with DAPI(Life technolodies、P36935)
・Anti−fibronectin抗体(abcam、ab2413)
・フィブリンゲル(フィブリノーゲン+トロンビン)(帝人ファーマ社、ボルヒール組織接着用)
・コラーゲン溶液(高研社、コラーゲン酸性溶液I−AC 5mg/mL)
・ゼラチン(SIGMA社、G1890−100G)
<使用した機器>
・スタンプデバイス(参考:Ngo T.X.et al.Endothelial cell behavior inside myoblast sheets with different thickness.Biotechnol Lett(2013) 35:1001-1008)
・顕微鏡(ニコン社、ECLIPSE,E800)
・共焦点顕微鏡(オリンパス社、FV1200)
・光干渉断層撮影装置(OCT、パナソニックヘルスケア社、参考:Kobayashi M.,et al.,Real−time,noninvasive optical coherence tomography of cross−sectional living cell−sheets in vitro and in vivo. JOURNAL OF BIOMEDICAL MATERIALS RESEARCH B: APPLIED BIOMATERIALS vol.103(6),1267−1273,Aug.2015)
<心筋細胞シートの作製方法>
心筋細胞シートは、Sakaguchiらの方法(Sakaguchi K.et al.,In Vitro Engineering of Vascularized Tissue Surrogates,Scientific Reports,3,1316,2013.)に従って作製した。具体的には、生後1日の仔ラットより回収した心臓をミンス(mince)して心筋細胞を回収した。回収した細胞をバッファー(HANKSとFBSを1:1で混合したもの)で洗浄し、ラット心筋培養液に懸濁した。心筋細胞は、温度応答性の24wellプレート培養皿(UpCell(登録商標)、セルシード社)に90万cells/wellの濃度で播種し、0.5mLのラット心筋培地中で4日間、5%CO2、飽和水蒸気下の37℃インキュベーターで培養した。その後、20℃で保温することとで、細胞シートとして回収した。
<細胞シートの積層方法(ピペッティング法)>
ピペッティング法による細胞シートの積層は、Haraguchiらの方法(Haraguchi Y.et al.,Fabrication of functional three−dimensional tissues by stacking cell sheets in vitro,Nature Protocol,7,850,2012.)に従って実施した。具体的には、培養液に浮遊させた細胞シートを、細胞培養液ごとピペットで吸引し、別の細胞シート上に吸引した培養液を排出することで細胞シートを積層した。
<細胞シートの積層方法(スタンプ法)>
スタンプ法による細胞シートの積層は、基本的にはHaraguchiらの方法(Haraguchi Y.et al.,Fabrication of functional three−dimensional tissues by stacking cell sheets in vitro,Nature Protocol,7,850,2012.)に従い、一部改変して行った(図1及び図2)。具体的には、粉末状のゼラチンを65mg/mlの濃度でハンクス平衡塩溶液に溶かし、pHを7.4付近になるように50%水酸化ナトリウム溶液を加えた。pH調整をしたゼラチン溶液をスタンプデバイスの型に気泡が入らないようにゆっくりと流し込み、4℃で30分間静置することでゼラチンゲル付きスタンプデバイスを完成させた。完成したスタンプデバイスを、培養液を抜いた24wellプレート培養皿上のシート状細胞群に乗せ、上からスタンプデバイスと合わせて合計30gの荷重がかかるようにおもりを乗せ、30分間氷上で静置した。1枚目のシート状細胞群とゼラチンを接着させたら、2枚目以降はゼラチンに付着した細胞シート側にトロンビン2μLを、24wellプレート培養皿上のシート状細胞群側にフィブリノーゲン2μLをピペットマンにより添加し、1枚目と同様に上から合計30gの荷重をかけて積層させた。目的の枚数まで積層が完了したら、スカルペルを使用してゼラチンゲルごとスタンプデバイスから細胞シートを切り出し、積層組織を回収した。
積層条件の検討方法として、荷重、フィブリンゲル量、接着時間、ゼラチン濃度の4つを検討項目として設定し、その条件を変えることでラット心筋細胞シート10枚を短時間に安定して積層可能な積層条件を探索した。なお、荷重とゼラチンゲル濃度に関しては、Kikuchiらの研究(Kikuchi T.et al.,Automatic fabrication of 3−dimensional tissues using cell sheet manipulator technique.Biomaterials.35(2014)2428−2435)を参考に、検討を行った。具体的な検討値は、荷重が10、20、30g、ゼラチン濃度が60、65又は75mg/mL、接着時間が3分又は5分、フィブリンゲル量が4μL又は6μLで行った。
<ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色、免疫染色>
回収した組織をパラフィン固定し5μmの厚さで薄切した後、HE染色や免疫染色をすることで積層組織の形態を評価した。
<HepG2細胞の積層化細胞シートの作製方法>
塩酸でpH3に調整した塩酸水を用いてコラーゲン溶液を10倍希釈した後、温度応答性24wellプレート培養皿に300μL加え30分間静置した。その後、コラーゲン溶液を除去して2時間風乾させ、コラーゲンコーティングを施した。その後、そこにHepG2細胞を20万cells/wellの濃度で播種して3日間37℃インキュベーターで培養する。なお培養液にはDMEM(1%penicillin−streptomycin solution、10%FBSを含む)を使用した。スタンプ積層に関しては前述の心筋細胞シートの積層と同様の方法で行った。
<実施例1>
(フィブリンゲルを用いたスタンプ積層条件の検討)
スタンプデバイスとフィブリンゲルを用いた細胞シート積層化方法の条件を検討した結果、検討したいずれの条件(荷重:10、20、30g、ゼラチン濃度:60、65又は75mg/mL、フィブリンゲル量:4μL又は6μL、接着時間:3分又は5分)においても、従来の方法では30分以上を必要としていた積層化時間を短縮することが可能であった。その中でも、表1に示した条件が最も再現よく心筋細胞シートを積層化することが可能であった。本発明によって、これまで、2層目以降の細胞シートの積層時間が30分以上必要であったが、5分以下に短縮可能となった。
本手法により構築した積層細胞組織から組織切片を作製した結果が図3(C)〜(F)である。図3(C)及び(E)から細胞が密な厚みのある細胞組織が構築できていることが分かる。また、図3(D)及び(E)の免疫染色の結果から心筋細胞の存在も確認できた。以上の結果から、本手法により細胞シート1枚あたりの積層時間を従来の1/6に短縮できるのみならず、かつ従来のスタンプ積層法では厚い積層が不可能であった心筋細胞シートの積層ができるようになった。
Figure 0006923204
<実施例2>
(細胞生存率の評価)
生後1日の仔ラットの心臓から回収した細胞を90万cells/wellの濃度で温度応答性培養皿(24well)に播種し、37℃ CO2インキュベーターで4日間培養した。その後、ゼラチンを形成したスタンプデバイスを、培養液を抜いた細胞の上に置き、30gの荷重をかけながら30分静置させ、1枚目の細胞をスタンプデバイスに接着させた。2枚目の積層は、従来の30分かけて積層する方法と、間にフィブリンゲルを加えることで接着時間を5分にする本発明の積層方法により、準備した。2つの方法で2層の積層が完了した後、ゼラチンごと2層の細胞シートを60mm dishに移動させ、5分 37℃インキュベーターで培養することでゼラチンゲルを溶解して取り除いた。2層の細胞シートを回収した後、トリプシン酵素処理を行って細胞シートを個々の細胞へとバラバラにし、トリパンブルー染色を使用して死細胞、生細胞をカウントした。コントロールには、積層前の細胞を準備し、同様の処理をした後に死細胞、生細胞をそれぞれカウントした。
細胞の生存率は、以下の式で算出した(図4)。
Figure 0006923204
Figure 0006923204
結果を図4に示す。この図からも明らかであるように、本発明の方法による細胞シートの積層法と従来の積層化法との間には、細胞の生存率に差が無いことが示唆された。
<実施例3>
(積層心筋組織の拍動同期評価)
心筋細胞シートは拍動していることが知られ、また積層させることで2枚の心筋細胞シートの拍動が同期することも確認されている。そこで、本手法により構築した立体心筋組織が拍動を行っているか、また拍動が同期するのかをOCTと明視野顕微鏡による観察により確かめた(図5)。
本発明により5枚の心筋細胞シートを積層した組織をφ60mmディッシュに接着させ、ゼラチンゲルを溶解させるため飽和水蒸気下の37℃インキュベーターで5分間静置した。その後、37℃に温めたラット心筋培地で1回洗浄後、培養液を抜いてOCTにより観察した。
本発明の方法で5枚スタンプ積層した組織を回収した後、OCT(光干渉断層撮影装置)により拍動を観察した結果が図5である。図5を見ると一カ所の発火点から拍動が組織全体に伝搬していることが分かる。このことから細胞シート間にフィブリンゲルを挟んでいても心筋細胞同士の拍動が同期し、心筋組織としての機能を有していることが示唆された。
<実施例4>
(積層心筋組織の拍動電位の同期評価)
フィブリンゲル用いて積層した心筋細胞シート間において、拍動電位が同期するかどうかを確認した。生後1日の仔ラットの心臓から回収した細胞を90万cells/wellの濃度で温度応答性培養皿(24well)に播種し、37℃ CO2インキュベーターで4日間培養した。その後、ゼラチンを形成したスタンプデバイスを、培養液を抜いた細胞の上に置き、30gの荷重をかけながら30分間静置させ、1枚目の細胞をスタンプデバイスに接着させた。この方法で2層の心筋細胞シートを積層させたものを2セット作製したら、1セット目を電位測定用の特殊な培養皿に接着させ、37℃ CO2インキュベーターで5分間培養し、ゼラチンを溶解させて取り除いた。次に2セット目の積層化細胞シートを1セット目の積層化細胞シートに一部が重なるように接着させた(図6(A))。なお、この際に2つの積層化細胞シートの間には4μLのフィブリンゲルを挟み込んだ。37℃ CO2インキュベーターで5分間培養し、ゼラチンを溶解させて取り除いた後、拍動電位の測定を行った。なお、電位測定はMatsuuraらの方法(Matsuura K.et al.,Creation of mouse embryonic stem cell−derived cardiac cell sheets,Biomaterials 32(2011)7355-7362.)と同様の方法で行った。
その結果、電位測定箇所の異なるA点とB点の2点の拍動電位が同期している様子が確認できた(図6(B))。このことから、フィブリンゲルの存在下であっても、心筋細胞シート間の電気的同期は問題なく維持されることが示唆された。
<実施例5>
(積層心筋組織内における血管網評価)
これまでの研究から立体細胞組織を生体外で培養するためには、血管網の構築が必要不可欠であることが分かっている。そこで本手法により構築した積層組織内における血管網の様子を血管内皮細胞特異的な抗原であるCD31を用いて抗体免疫染色することで確かめた。本発明により2枚スタンプ積層したラット心筋細胞シートを4%パラホルムアルデヒドで15分間固定した後、PBSで10%希釈したヤギ血清で2時間ブロッキングをした。その後PBSで100:1に希釈したCD31抗体で4℃オーバーナイトして反応させた後、PBSで100:1に希釈した2次染色抗体 Alexa Fluor488 goat anti−mouse(Life technolodies、A11017)を1時間、室温で反応させた。最後に細胞核をPBSで300:1に希釈したHoechst33258で15分間染色し、共焦点顕微鏡により観察した。
温度応答性培養皿で4日間培養したラット心臓由来細胞内における血管網と、新規スタンプ積層技術により2枚積層した積層化細胞シート内の血管網をCD31による免疫抗体染色により確認した結果が図7である。図7(C)の結果から2枚スタンプ積層した細胞シート内には積層直後なのにも関わらず血管網がそのまま維持された状態が確認できた。一方、スタンプを使用せずに剥離して作製された細胞シートは、血管内皮細胞のネットワークが維持されていなかった(図7(D))。これらの結果からピペッティング積層技術により積層したラット心筋細胞組織より、新規スタンプ積層技術により積層したラット心筋細胞組織の方が血管網の状態が良く、生体外における培養、または移植組織として利用した際には、より厚い組織が構築できる可能性が示唆された。
<実施例6>
(高速スタンプ積層組織の移植評価)
生後1日の仔ラットの心臓から回収した細胞を90万cells/wellの濃度で温度応答性培養皿(UpCell(登録商標)、24well)に播種し、37℃ CO2インキュベーターで4日間培養した。その後、ゼラチンを形成したスタンプデバイスを、培養液を抜いた細胞の上に置き、30gの荷重をかけながら30分間静置させ、1枚目の細胞をスタンプデバイスに接着させた。2枚目以降の積層からは、再び30分間かけて積層する方法と、細胞シートと細胞シートとの間にフィブリンゲルを加えることで接着時間を5分間にして積層する方法によって積層化細胞シートを準備した。2つの方法で5層まで積層を行った。なお、2つの方法で5層積層した細胞シートの完成時間が同時になるように、積層の始める時間を調整した。積層が完了したら、直ちに8〜12週齢の麻酔(イソフルラン)をかけたヌードラット(系統名:F344/NJcl−rnu/rnu、日本クレア社)の背中を開き、皮下側に2つの積層化細胞シートをゼラチンゲルごと切り離して置くようにして移植した。その後、移植した部位が特定できるように、移植した組織の上からシリコンシート(アズワン社、6−611−01)を被せ、開いた背中を閉じて2週間飼育した(図8、図9)。移植2週間後同様に背中を開き、移植した部位を回収し、4%パラホルムアルデヒドに24時間浸けて組織を固定した。組織を固定後、1×PBSで洗浄し最後にパラフィン置換してパラフィンブロックを作製した。パラフィンブロックを作製後、ミクロトームを用いて5μmの厚さで薄切し、組織切片を作製した。組織切片を作製したら慣例的な方法によりアザン染色をして形態評価を行った。また、組織切片をキシレンとエタノールを使って脱パラフィン処理を行い、賦活化(Target Retrieval Solution 10×concentrate(Dako、S1699))溶液にて処理を行った後、室温で1時間のNormal Goat Serum(アバカム社、ab7481)にてブロッキング処理、PBSで200倍に希釈した1次抗体(anti−cardiac ToroponinT)で4℃オーバーナイト、PBSで200倍に希釈した2次抗体(Alexafluor488)で2時間室温反応、Hoechst33258で15分室温反応させ封入剤で封入することで、抗体免疫染色切片を作製して共焦点顕微鏡により観察した。
また、移植組織の定着面積を抗体免疫染色画像から定量化した。1つの組織から300〜400μm間隔で4枚の切り口の切片を作製し、免疫染色後、心筋トロポニンT陽性になっている部分をimageJ(フリーソフト、参考:http://rsb.info.nih.gov/ij/index.html)を使って定量化した(図9(E))。
その結果、本発明の方法により作製した心筋細胞シートを移植した部位は、従来技術で作製した心筋細胞シートを移植した部位に比べて、より血管新生が誘導されている様子が確認された(図8)。このことは、本発明により作製された心筋細胞シートが、移植後の血管誘導効果を高め、治療効果が高いことを示唆するものである。また、本発明の方法で作製された細胞シートは、従来方法で作製された細胞シートと比較して、移植後により定着することも明らかとなった。
GFP陽性SDラット(SD−Tg(CAG−EGFP)(三共ラボサービス))を用いて、図8及び図9と同様、本発明の方法及び従来方法にて積層心筋細胞シートを作製し、ヌードラットへ移植する実験を行った(図10)。移植2週間後、ラットに正着している移植細胞シートの定着割合を、GFP陽性面積の割合から算出した(算出方法は図9で行った方法と同一)。図8及び図9で確認された結果と同様、本発明で作製した積層化細胞シートは、従来方法で作製した細胞シートと比較して、移植後の定着面積が大きく、また、より多くの血管が誘導されていることが確認された(図10)。
<実施例7>
(スタンプ積層技術によるHepG2細胞シートの積層化)
フィブリンゲルを用いた新規スタンプ積層技術の検討は全てラット心臓由来細胞シートを用いて行われた。そこで他細胞種の細胞シートにも本手法が適用可能かを検討するためHepG2細胞シート(ヒト肝癌由来細胞)を用いてラット心筋細胞シートと同様に積層実験を行い、組織切片を作製し形態を評価した。コラーゲンコーティングした温度応答性培養皿にHepG2細胞を播種して3日間培養することでHepG2細胞シートを作製し、新規スタンプ積層技術により積層した結果を図7に示した。図7の結果から厚みのあるHepG2細胞組織が構築されている様子が確認でき、他細胞種においても本発明の積層技術が適用できる可能性が示唆された。
<実施例8>
(積層化細胞シート組成物(10層)の移植評価)
実施例6と同様、フィブリンゲルを使用した方法によって、生後1日の仔ラットの心臓から回収した細胞を用いて10層の積層化細胞シートを作製した。また、得られた積層化細胞シートを実施例6と同様の方法でヌードラットへ移植した。移植2週間後の移植部位周辺より組織切片を作製し、免疫染色法によって心筋トロポニンT(緑、心筋細胞の位置を示す)及びCD31(赤、血管内皮細胞の位置を示す)を染色し、同時にHoechst33258にて細胞核を染色した。得られた組織切片を共焦点顕微鏡で観察した(図13)。
従来の方法によって作製された積層化細胞シートでは、一度に移植できる細胞シートの厚さが80μm未満であり、それを超えた厚さの積層化細胞シートを移植する場合は、複数回の移植操作を繰り返す必要があった。しかし、本発明の積層化細胞シートは、200μm以上の厚さを有する10層の積層化細胞シートであっても、壊死することなく生体内に生着することが可能であった。移植した積層化細胞シートには血管構造も認められた。すなわち、本発明の方法によって得られた積層化細胞シートは、80μmを超える厚さを有する細胞シートであっても、移植後に壊死することなく生着可能であるという優れた効果を発揮した。
<細胞シート積層化装置>
本発明の積層化細胞シート組成物を製造するための装置を例示する。図12は、本発明の細胞シート積層化装置1を示す斜視図である。10は、細胞シートを保持する培養細胞移動治具10である。この培養細胞移動治具10は、アーム11先端下部に着脱可能である。培養細胞移動治具10の細胞シートと接触する細胞付着には、細胞シートを捕捉できる機能を有するものであればよく、例えば、材料としては、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、シリコーン樹脂、ポリビニルアルコール、ウレタン、セルロース及びその誘導体、キチン、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、フィブリンゲル等を用いることができる。これにより、細胞シートを貼り付けて持ち上げることができる。アーム11は、(四角柱形状の)基部材の上部に垂直平面内で揺動可能に取り付けられている。アーム11の揺動回転軸12を挟んで図中左側には培養細胞移動治具10と、図中右側には押圧力(重さ)を計測する押圧力測定手段13を備える。基部材15の下部は蛇腹シール14でシールされている。その基部材の下部には、基部材15を水平面内のX方向及びY方向に移動可能にする(図示しない)駆動手段と基部材をZ方向に昇降動作させる昇降駆動手段を備える。
17は、細胞培養基材20上で培養されたシート状細胞群に細胞接着性物質を塗布する細胞接着性物質塗布手段である。この細胞接着性物質塗布手段17から細胞接着性物質を含む溶液が供給され、細胞培養基材20上の細胞の上面に塗布される。なお、細胞接着性物質塗布手段17は2以上設けられてもよく、この場合、細胞接着性物質塗布手段17からは、混合することでゲル状になる物質(例えば、トロンビンとフィブリノーゲン、アルギン酸ナトリウム溶液とカルシウムイオン溶液、等)を別々に供給するものであってもよく、束ねられて、塗布する直前で混合する構成であってもよい。塗布する手段としては、液体を滴下する手段であってもよく、スプレー状で塗布する手段であってもよい。
押圧力測定手段13によって押圧力を測定することにより、基部材15を昇降手段の作動により降下して、細胞培養基材20内の細胞シートに培養細胞移動治具10を押しあてる力を調節することが可能となる。そのとき、アーム11先端に取り付けられた培養細胞移動治具10(力点)が揺動回転軸(支点)を中心に揺動して、押圧力測定手段13(作用点)を押しつける。押圧力測定手段13は、たとえば、ロードセル等である。
16は、細胞培養基材20等を複数載置できる載置台である。この載置台16には、回転軸16aを備えている。この回転軸16aは、Oリング等でシールされており、基台30下部に回転駆動手段の作動により回転駆動することができる。また、載置台16の細胞培養基材20を載置する部位は、細胞培養基材20に刺激を与える刺激供与手段18を備えている。刺激供与手段18は、例えば、細胞培養基材20が温度応答性培養皿である場合は、温度を変化させる手段(クーラ等、例えば、ペルチェ)であり、細胞培養基材20が光応答性の培養皿である場合は、例えば光刺激を与える光源(例えばLED)等である。
本装置を用いることで本発明の細胞シート積層体の製造方法を実施し、効率的かつ再現よく積層化細胞シート組成物を作製することが可能となる。具体的な手順としては、昇降駆動手段によって基部材15を降下させ、基部材15と繋がっているアーム11及び培養細胞移動治具10を降下させ、予め培養液が吸引された細胞培養基材20上のシート状細胞群の上面に培養細胞移動治具10を接触させる。この状態で、載置台16の細胞培養基材20の下部に備えられた刺激供与手段によって刺激を与え、細胞培養基材20よりシート状細胞群を細胞シートとして剥離させ、培養細胞移動治具10に貼り付ける。その後、昇降駆動手段を上昇させ、細胞シートを付着した培養細胞移動治具10の直下に、別のシート状細胞群が培養された細胞培養基材20が位置するように載置台16を、回転軸16aを中心として回転させる。細胞接着性物質塗布手段17から細胞接着性物質を含む溶液が供給され、細胞培養基材20上の細胞の上面に塗布する。その後、昇降駆動手段によって基部材15を降下させて再び培養細胞移動治具10を降下させ、細胞培養基材20上のシート状細胞群の上面に培養細胞移動治具10を接触させる。この状態で、載置台16の細胞培養基材20の下部に備えられた刺激供与手段によって刺激を与え、細胞培養基材20よりシート状細胞群を細胞シートとして剥離させ、培養細胞移動治具10に貼り付ける。この作業を繰り返すことによって、積層化細胞シート組成物を作製することが可能となる。
なお、本実施態様は単なる例示であり、本発明の製造方法を実施できる構成であれば、いずれも適用可能であり、何ら構成を限定するものではない。また、国際公開第2012/098931号に開示される発明の全ての構成も本発明の範囲に取り入れられ、本明細書の一部を構成する。
本発明に示される製造方法であれば、厚みのある積層化細胞シート組成物を簡便かつ高速に作製することができるようになる。このような厚みのある細胞組成物は、生体様組織として、さまざまな組織・臓器の再生医療に有用なものであると同時に、治療を目的とする薬剤の効果を評価するモデルとしても有用である。
1 細胞シート積層化装置
10 培養細胞移動治具
11 アーム
12 揺動回転軸
13 横圧力測定手段
14 蛇腹シール
15 基部材
16 載置台
16a 回転軸
17 細胞接着性物質塗布手段
18 刺激供与手段
20 細胞培養基材
30 基台
31 搬出入口

Claims (9)

  1. (1)刺激応答性培養基材上の第1シート状細胞群の上面に、培養細胞移動治具を接触させ、前記刺激応答性培養基材上の第1シート状細胞群を剥離させる刺激を与えて、剥離した第1細胞シートを前記培養細胞移動治具に付着させる工程、
    (2)刺激応答性培養基材上の第2シート状細胞群の上面、及び、前記培養細胞移動治具に付着した前記第1細胞シートの下面、に細胞接着性物質を塗布する工程、
    (3)前記培養細胞移動治具に付着した前記第1細胞シートの下面を、前記第2シート状細胞群の上面に接触させ、前記第2シート状細胞群が前記刺激応答性培養基材から剥離する刺激を与えながら同時に1g〜30g/cmで荷重し、剥離した第2細胞シートを前記第1細胞シートの下面に接着させる工程、
    を含む、積層化細胞シート組成物を製造する方法であって、
    ここで、前記工程(2)において、
    前記第2シート状細胞群の上面に塗布する細胞接着性物質がフィブリノーゲンであり、前記第1細胞シートの下面に塗布する細胞接着性物質がトロンビンである、又は、
    前記第2シート状細胞群の上面に塗布する細胞接着性物質がトロンビンであり、前記第1細胞シートの下面に塗布する細胞接着性物質がフィブリノーゲンである、
    方法。
  2. 前記工程(3)の実施時間が、5分以内である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程(3)で得られた、前記培養細胞移動治具に付着した積層化細胞シート組成物に対し、
    さらに、
    (4)刺激応答性培養基材上の第3シート状細胞群の上面、及び、前記工程(3)で得られた前記培養細胞移動治具に付着した積層化細胞シート組成物の下面、に細胞接着性物質を塗布する工程、
    (5)前記培養細胞移動治具に付着した前記積層化細胞シート組成物の下面を、前記第3シート状細胞群の上面に接触させ、前記第3シート状細胞群が前記刺激応答性培養基材から剥離する刺激を与えながら同時に1g〜30g/cmで荷重し、剥離した第3細胞シートを前記積層化細胞シート組成物の下面に接着させる工程、
    (6)前記工程(4)〜(5)を任意の回数繰り返す工程、
    を含み、ここで、前記工程(4)において、
    前記第3シート状細胞群の上面に塗布する細胞接着性物質がフィブリノーゲンであり、及び、前記積層化細胞シート組成物の下面に塗布する細胞接着性物質がトロンビンである、又は、
    前記第3シート状細胞群の上面に塗布する細胞接着性物質がトロンビンであり、前記積層化細胞シート組成物の下面に塗布する細胞接着性物質がフィブリノーゲンである、
    請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記刺激応答性培養基材が、温度応答性培養基材であって、前記刺激が、下限臨界溶解温度以下又は上限臨界溶解温度以上の温度である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記刺激応答性培養基材が、ポリ−N−イソプロピルアクリルアミドが少なくともその培養面の一部に被覆された培養基材である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. 前記培養細胞移動治具が、細胞接着性タンパク質、細胞接着性ペプチド又は親水性ポリマーの1種又は2種以上からなる細胞付着部を有する培養細胞移動治具である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記積層化細胞シート組成物が、心筋細胞、肝細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、膵細胞、腎細胞、血管内皮細胞、上皮細胞からなる群から選択される1又は2以上の細胞を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. シート状細胞群が培養されている刺激応答性培養基材に刺激を与え、前記刺激応答性培養基材から細胞シートを剥離させるための刺激手段を具備した載置台と、
    前記細胞シートを付着させるための培養細胞移動治具と、
    前記培養細胞移動治具を取り付けて、前記培養細胞移動治具に1g〜30g/cmの荷重をかけるためのアームと、
    細胞シートにトロンビン又はフィブリノーゲンを塗布する第1細胞接着性物質塗布手段と、
    シート状細胞群にトロンビン又はフィブリノーゲンを塗布する第2細胞接着性物質塗布手段と、
    を備えた、積層化細胞シート組成物の製造装置。
  9. 前記載置台に載置された前記刺激応答性培養基材上の第1シート状細胞群の上面に、前記培養細胞移動治具を接触させ、前記刺激手段によって前記刺激応答性培養基材上の該第1シート状細胞群が剥離される刺激を与えて、得られる第1細胞シートを前記培養細胞移動治具に付着させ、
    前記載置台に載置された第2シート状細胞群の上面、及び、前記第1細胞シートの下面に、前記第1及び第2細胞接着性物質塗布手段によって供給されるトロンビン又はフィブリノーゲンを塗布し、
    前記培養細胞移動治具に付着した該第1細胞シートの下面を、前記第2シート状細胞群の上面に接触させ、前記刺激手段によって前記刺激応答性培養基材上の前記第2シート状細胞群が剥離される刺激を与えると同時に、前記培養細胞移動治具に1g〜30g/cmの荷重をかけて、得られる第2細胞シートを前記第1細胞シートに迅速に積層することを特徴とするものであって、
    ここで、前記第2シート状細胞群の上面には、フィブリノーゲンを塗布し、前記第1細胞シートの下面には、トロンビンを塗布する、又は、
    前記第2シート状細胞群の上面には、トロンビンを塗布し、前記第1細胞シートの下面には、フィブリノーゲンを塗布する、
    請求項8に記載の積層化細胞シート組成物の製造装置。
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