以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。無線LANの規格として知られているIEEE Std 802.11−2012およびIEEE Std 802.11ac−2013、ならびに次世代無線LAN規格であるIEEE Std 802.11ax用の仕様フレームワーク文書(Specification Framework Document)であるIEEE 802.11−15/0132r15は、本明細書においてその全てが参照によって組み込まれる(incorporated by reference)ものとする。
(第1の実施形態)
図1に、第1の実施形態に係る無線通信装置の機能ブロック図を示す。この無線通信装置は、無線通信基地局(以下、基地局)、または無線通信基地局と通信する無線通信端末(以下、端末)に実装されることができる。基地局は、主に中継機能を有する点で端末とは異なり、その他は基本的に端末と同様の通信機能を有するため、端末の一形態であると考えることができる。以下の説明で端末と言うときは、特に両者を区別する必要がない限り、基地局を指してもよい。
本実施形態では、基地局が、連続した周波数領域内で1つまたは複数の連続するサブキャリアを一単位とするリソースブロック(サブチャネル、リソースユニット、周波数ブロックと呼んでも良い)を端末に各々割り当てて、複数端末宛て同時送信もしくは複数端末からの同時受信をする、リソースブロックベースのOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)通信を行う場合を想定する。基地局から複数の端末への送信は、ダウンリンクOFDMA送信、複数の端末から基地局への送信は、アップリンクOFDMA送信に相当する。
図2に、周波数領域に複数のチャネルが配置される様子を示す。チャネル間にはガードバンドが設けられている。1つのチャネルの帯域幅は、例えば20MHzである。そのうちの1つのチャネル(ここではチャネルM)の連続する帯域を用いてOFDMA通信を行うことを考える。チャネルMの連続する帯域(例えば20MHz幅帯域)には互いに直交する複数のサブキャリア(20MHz帯域の場合、例えば52本)が配置されており、これらのサブキャリアに基づき、1つまたは複数の連続するサブキャリアを一単位とするリソースブロックを端末1、端末2、・・・端末K(Kは2以上の整数)に割り当てる。リソースブロックごとの帯域幅(あるいはサブキャリア数)は各リソースブロックで共通とするが、リソースブロックごとに帯域幅(あるいはサブキャリア数)が異なることを許容してもよい。また、各端末に割り当てるリソースブロック数は、図2の例では端末1台あたり1つのリソースブロックであるが、1台に複数のリソースブロックを割り当ててもよいし、端末ごとに割り当てるリソースブロック数が異なってもよい。リソースブロックが複数のサブキャリアで構成される場合は、リソースブロックに含まれる各サブキャリアの配置が連続していても連続していなくてもよい。1台の無線端末に、リソースブロックとして、非連続に配置された複数のサブキャリアを割り当てることも可能である。
また、図2の例では、各端末に割り当てるリソースブロック間に少なくとも1つのサブキャリアが、ガードサブキャリアとして配置されている。リソースブロック間に配置するガードサブキャリアの個数は、事前にシステムまたは仕様で定められていてもよいし、任意に定めてもよい。また、リソースブロック間にガードサブキャリアを配置することは必須ではなく、リソースブロック間にガードサブキャリアを配置しないことを許容してもよい。
またOFDMA通信で使用するチャネル数は、1つに限定されず、2つ以上のチャネルを用いてOFDMA通信を行うことも可能である。この際、チャネルごとに独立して、上述のように各チャネル内でリソースブロックの割り当てを行っても良い。この際、1つの端末が異なるチャネルに属する複数のリソースブロックの割り当てを受けることを許容してもよい。またチャネルごとに独立してリソースブロックの割り当てを行うのではなく、複数のチャネルを結合した連続した周波数領域を定義し、当該結合後の周波数領域内でリソースブロックの割り当てを行っても良い。例えば周波数的に隣接する20MHz幅の2つのチャネルを結合して40MHzの周波数領域を定義し、当該40MHzの周波数領域内の互いに直交するサブキャリア群に基づきリソースブロックの割り当てを行ってもよい。同様に、20MHz幅の4つのチャネルを結合して80MHzの周波数領域、8つのチャネルを結合して160MHzの周波数領域を定義してもよい。この場合、それぞれの周波数領域内で互いに直交するサブキャリア群に基づき、リソースブロックの割り当てを行えばよい。
なお、本実施形態に係る端末は、少なくとも後方互換の対象となるレガシー端末での基本チャネル幅(IEEE802.11a/b/g/n/ac規格対応端末をレガシー端末とするなら20MHzチャネル幅)で物理パケットを受信・復号(誤り訂正符号の復号および復調等を含む)できる。この際、キャリアセンスに関してはチャネル単位で行うものとする。CCA(Clear Channel Assessment)のビジー/アイドルに関する物理的なキャリアセンス(Physical Carrier Sense)と、受信したフレームの中に記載されている媒体予約時間に基づく仮想的なキャリアセンス(Virtual Carrier Sense)との両方を包含してもよい。後者のように、仮想的に媒体をビジーであると判定する仕組み、或いは、仮想的に媒体をビジーであるとする期間は、NAV(Network Allocation Vector)と呼ばれる。チャネル単位で行ったCCAまたはNAVに基づくキャリアセンス情報は、チャネル内の全リソースブロックに共通に適用してもよい。例えばキャリアセンス情報がアイドルを示すチャネルに属するリソースブロックは、当該チャネルのキャリアセンス情報を共通に適用して、アイドルであるとして処理を行ってもよい。なお、本実施形態に係る端末はチャネル単位でキャリアセンスを行うことに限定されず、端末がリソースブロック単位でキャリアセンスを行う仕組みを実装しているのであれば、リソースブロック単位でキャリアセンス(物理的および仮想的の両方)を行うことを許容してもよい。
本実施形態では、上述のように基地局及び複数の端末間でリソースブロックベースのOFDMA通信を行うことを前提とするが、リソースブロックベースに限らず、チャネルベースでのOFDMA通信を許容してもよい。この場合のOFDMAを特にチャネルベースのOFDMAまたはMU−MC(Multi−User Multi−Channel)と呼ぶことがある。MU−MCでは、基地局が複数のチャネルを複数の端末に割り当て、当該複数のチャネルを同時に用いて、複数端末宛て同時送信もしくは複数端末からの同時受信を行う。以降に説明するリソースブロックベースのOFDMAに関する実施形態の説明において、適宜、リソースブロックをチャネルに読み替えるなど、チャネルベースのOFDMAに即して必要な読み替えを行うことで、チャネルベースのOFDMAの実施形態も実現可能である。
以下の説明において、リソースブロックベースのOFDMA通信を実施する能力を有する端末を、OFDMA対応端末、当該能力を有さない端末をレガシー端末と呼ぶことがある。OFDMA通信を実施する能力を有効(Enable)または無効(Disable)に切り替え可能な場合、当該能力が有効になっている端末をOFDMA対応端末として考えればよい。また、OFDMA対応端末のうち今回のOFDMA通信の対象として基地局に指定された端末は、OFDMAの対象端末に相当し、今回のOFDMA通信の対象として基地局に指定されなかった端末は、OFDMAの非対象端末と呼ぶことがある。
図1に示されるように、端末(非基地局の端末及び基地局)に搭載される無線通信装置は、上位処理部90、MAC処理部10、PHY(Physical:物理)処理部50、MAC/PHY管理部60、アナログ処理部70(アナログ処理部1〜N)及びアンテナ80(アンテナ1〜N)を含む。Nは1以上の整数である。図では、N個のアナログ処理部と、N個のアンテナが、一対ずつ接続されているが、必ずしもこの構成に限定されるものではない。例えばアナログ処理部の個数が1つで、2つ以上のアンテナがこのアナログ処理部に共通に接続されてもよい。
MAC処理部10、MAC/PHY管理部60、及びPHY処理部50は、他の端末(基地局を含む)との通信に関する処理を行う通信処理装置またはベースバンド集積回路の一形態に相当する。アナログ処理部70は、例えばアンテナ80を介して信号を送受信する無線通信部またはRF(Radio Frequency)集積回路の一形態に相当する。本実施形態に係る無線通信用集積回路は、当該ベースバンド集積回路(通信処理装置)およびRF集積回路の少なくとも前者を含んでもよい。通信処理装置またはベースバンド集積回路の機能は、CPU等のプロセッサで動作するソフトウェア(プログラム)によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。ソフトウェアはROM、RAM等のメモリ、ハードディスク、SSDなどの記憶媒体に格納してプロセッサにより読み出して実行してもよい。メモリはDRAM等の揮発性メモリでも、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
上位処理部90は、MAC(Medium Access Control:媒体アクセス制御)層に対して上位層のための処理を行う。上位処理部90は、MAC処理部10との間で信号をやり取りできる。上位層としては、代表的なものとしては、TCP/IPやUDP/IP、さらにその上層のアプリケーション層などが挙げられるが、本実施形態はこれに限定されない。上位処理部90は、MAC層と上位層との間でデータをやり取りするためのバッファを備えていてもよい。上位処理部90を介して有線インフラに接続するようになっていてもよい。バッファは、メモリでもよいし、SSD、ハードディスク等でもよい。バッファがメモリの場合、当該メモリはDRAM等の揮発性メモリでも、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
MAC処理部10は、MAC層のための処理を行う。前述のように、MAC処理部10は、上位処理部90との間で信号をやり取りできる。更に、MAC処理部10は、PHY処理部50との間で、信号をやり取りできる。MAC処理部10は、MAC共通処理部20と送信処理部30と受信処理部40を含む。
MAC共通処理部20は、MAC層での送受信に共通する処理を行う。MAC共通処理部20は、上位処理部90、送信処理部30、受信処理部40及びMAC/PHY管理部60と接続され、夫々との間で信号のやり取りをする。
送信処理部30及び受信処理部40は、相互に接続している。また、送信処理部30及び受信処理部40は、それぞれMAC共通処理部20及びPHY処理部50に接続している。送信処理部30は、MAC層での送信処理を行う。受信処理部40は、MAC層での受信処理を行う。
PHY処理部50は、物理層(PHY層)のための処理を行う。前述のように、PHY処理部50は、MAC処理部10との間で信号をやり取りできる。PHY処理部50は、アナログ処理部70を介してアンテナ80に接続されている。
MAC/PHY管理部60は、上位処理部90、MAC処理部10(より詳細には、MAC共通処理部20)及びPHY処理部50の夫々と接続されている。MAC/PHY管理部60は、無線通信装置におけるMAC動作及びPHY動作を管理する。
アナログ処理部70は、アナログ/デジタル及びデジタル/アナログ(AD/DA)変換器およびRF(Radio Frequency)回路を含み、PHY処理部50からのデジタル信号を所望の周波数のアナログ信号に変換してアンテナ80から送信、またアンテナ80から受信した高周波のアナログ信号をデジタル信号に変換する。なお、ここでは、AD/DA変換をアナログ処理部70で行っているが、PHY処理部50にAD/DA変換機能を持たせる構成も可能である。
本実施形態に係る無線通信装置は、1チップ内にアンテナ80を構成要素として含む(一体化する)ことで、このアンテナ80の実装面積を小さく抑えることができる。更に、本実施形態に係る無線通信装置は、図1に示されるように、送信処理部30及び受信処理部40が、N本のアンテナ80を共用している。送信処理部30及び受信処理部40がN本のアンテナ80を共用することにより、図1の無線通信装置を小型化できる。なお、本実施形態に係る無線通信装置は、図1に例示されたものと異なる構成を備えても勿論よい。
無線媒体からの信号受信に際して、アナログ処理部70は、アンテナ80が受信したアナログ信号を、PHY処理部50が処理可能な基底帯域(Baseband)の信号に変換し、さらにデジタル信号に変換する。PHY処理部50は、アナログ処理部70からデジタルの受信信号を受け取り、その受信レベルを検出する。検出した受信レベルを、キャリアセンスレベル(閾値)と比較し、受信レベルが、キャリアセンスレベル以上であれば、PHY処理部50は媒体(CCA:Clear Channel Assessment)がビジーであるということを示す信号を、MAC処理部10(より正確には、受信処理部40)へ出力する。受信レベルが、キャリアセンスレベル未満であれば、PHY処理部50は、媒体(CCA)がアイドルであるということを示す信号を、MAC処理部10(より正確には受信処理部40)へ出力する。
PHY処理部50は、受信信号に対し、復号(誤り訂正符号の復号および復調等を含む)処理、プリアンブル及びPHYヘッダを取り除く処理などを行って、ペイロードを抽出する。IEEE802.11規格ではこのペイロードをPHY側ではPSDU(physical layer convergence procedure (PLCP) service data unit)と呼んでいる。PHY処理部50は、抽出したペイロードを受信処理部40に渡し、受信処理部40はこれをMACフレームとして扱う。IEEE802.11規格では、このMACフレームを、MPDU(medium access control (MAC) protocol data unit)と呼んでいる。加えて、PHY処理部50は、受信信号を受信開始した際に、その旨を受信処理部40に通知し、また受信信号を受信終了した際に、その旨を受信処理部40に通知する。また、PHY処理部50は、受信信号が正常に物理パケット(PHYパケット)として復号できた場合(エラーを検出しなければ)、受信信号の受信終了を通知すると共に、媒体がアイドルであるということを示す信号を、受信処理部40に渡す。PHY処理部50は、受信信号にエラーを検出した場合には、エラー種別に即した適切なエラーコードをもって、受信処理部40にエラーを検出したことを通知する。また、PHY処理部50は、媒体がアイドルになったと判定した時点で、媒体がアイドルであることを示す信号を受信処理部40に通知する。
MAC共通処理部20は、上位処理部90から送信処理部30への送信データの受け渡し、及び受信処理部40から上位処理部90への受信データの受け渡しを、夫々仲介する。IEEE802.11規格では、このMACデータフレームの中のデータを、MSDU(medium access control (MAC) service data unit)と呼んでいる。また、MAC共通処理部20は、MAC/PHY管理部60からの指示を一旦受け取り、当該指示を送信処理部30及び受信処理部40に、それぞれ適したものに変換して出力する。
MAC/PHY管理部60は、例えばIEEE802.11規格におけるSME(Station Management Entity)に相当する。その場合、MAC/PHY管理部60とMAC共通処理部20との間のインタフェースは、IEEE802.11規格におけるMLME SAP(MAC subLayer Managament Entity Service Access Point)に相当し、MAC/PHY管理部60とPHY処理部50との間のインタフェースは、IEEE802.11無線LAN(Local Area Network)におけるPLME SAP(Physical Layer Management Entity Service Access Point)に相当する。
なお、図1において、MAC/PHY管理部60は、MAC管理のための機能部とPHY管理のための機能部とが一体であるかのように描かれているが、分けて実装されてもよい。
MAC/PHY管理部60は、管理情報ベース(Management Information Base:MIB)を保持する。MIBは、自端末の能力や各種機能が夫々有効か無効かなどの各種情報を保持する。例えば、自端末が、OFDMA対応端末であるか否か、また、OFDMA対応端末の場合にOFDMAを実施する能力の機能のオン/オフの情報も保持されていてもよい。MIBを保持・管理するためのメモリは、MAC/PHY管理部60に内包させてもよいし、MAC/PHY管理部60に内包せずに別に設けるようにしてもよい。MIBを保持・管理するためのメモリをMAC/PHY管理部60とは別に設ける場合に、MAC/PHY管理部60は、その別のメモリを参照でき、またメモリ内の書き換え可能なパラメータに関しては書き換えを行うことができる。メモリはDRAM等の揮発性メモリでも、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。また、メモリでなく、SSDやハードディスク等の記憶装置でもよい。基地局では、非基地局としての他の端末のこれらの情報も、当該端末からの通知により、取得することができる。その場合、MAC/PHY管理部60は、他の端末に関する情報を参照・書き換えが可能になっている。あるいはこれらの他の端末に関する情報を記憶するためのメモリは、MIBとは別に保持・管理するようにしてもよい。その場合、MAC/PHY管理部60あるいはMAC共通処理部20が、その別のメモリを参照・書き換えが可能なようにする。また基地局のMAC/PHY管理部60は、OFDMA通信にあたり、非基地局としての端末に関する各種の情報、または端末からの要求に基づき、OFDMA通信用のリソースブロックを同時に割り当てる端末を選定する(すなわち今回のOFDMAの対象となる端末を選定する)グルーピング機能も備えていてもよい。また、MAC/PHY管理部60またはMAC処理部10は、送信するMACフレームおよび物理ヘッダに適用する伝送レートを管理してもよい。また基地局のMAC/PHY管理部60は、基地局がサポートするレートセットであるサポートレートセットを定義してもよい。サポートレートセットは、自局に接続する端末がサポートすることが必須のレートと、オプションのレートを含んでも良い。
MAC処理部10は、データフレーム、制御フレーム及び管理フレームの3種類のMACフレームを扱い、MAC層において規定される各種処理を行う。ここで、3種類のMACフレームについて説明する。
管理フレームは、他の端末との間の通信リンクの管理のために用いられる。管理フレームとしては、例えば、IEEE802.11規格におけるBasic Service Set(BSS)である無線通信グループを形成するために、グループの属性及び同期情報を報知するビーコン(Beacon)フレームがある。また、認証のためにまたは通信リンク確立のために交換されるフレームなどもある。なお、ある端末が、もう一台の端末と互いに無線通信を実施するために必要な情報交換を済ませた状態を、通信リンクが確立していると、ここでは表現する。必要な情報交換として、例えば、自端末が対応する機能(例えばOFDMA方式に対応や後述する各種能力など)の通知や、方式の設定に関するネゴシエーションなどがある。管理フレームは、送信処理部30が、MAC/PHY管理部60からMAC共通処理部20を介して受けた指示に基づいて生成する。
管理フレームに関連して、送信処理部30は、他の端末に管理フレームを介して各種情報を通知する通知手段を有する。非基地局としての端末の通知手段は、OFDMA対応端末、IEEE802.11n対応端末、IEEE802.11ac対応端末のいずれに対応しているかの情報を、管理フレームに入れて送信することで、基地局に自端末の種別を通知してもよい。この管理フレームとしては、例えば端末が基地局との間で認証を行う手順の一つであるアソシエーションプロセスで用いられるAssociation Requestフレームや、あるいはリアエソシエーションプロセスで用いられるReassociation Requestフレームがある。基地局の通知手段は、非基地局の端末に、OFDMA通信への対応可否の情報を、管理フレームを介して通知してもよい。これに用いる管理フレームとしては、例えばBeaconフレームや、非基地局端末が送信したProbe Requestフレームに対する応答であるProbe Responseフレームがある。基地局は、自装置に接続している端末群をグループ化する機能を有していてもよい。基地局の上記の通知手段は、各端末にそれぞれ割り当てられたグループのグループIDを、管理フレームを介して通知してもよい。この管理フレームとしては、例えばGroup ID Managementフレームがある。グループIDは、例えばIEEE Std 802.11ac−2013で規定されたグループIDでもよい。また、基地局は、当該グループ単位でOFDMA通信をする場合に、当該グループに属する端末が使用するリソースブロックを特定するために必要な情報を、任意の管理フレームを介して通知してもよい。
受信処理部40は、他の端末から管理フレームを介して各種情報を受信する受信手段を有する。一例として、基地局の受信手段は、非基地局としての端末からOFDMA通信への対応可否の情報を受信してもよい。また、当該端末がレガシー端末(IEEE802.11n対応端末、IEEE802.11ac対応端末)の場合に対応可能なチャネル幅(利用可能な最大のチャネル幅)の情報を受信してもよい。端末の受信手段は、基地局からOFDMA通信への対応可否の情報を受信してもよい。
上述した管理フレームを介して送受信する情報の例は、ほんの一例であり、その他種々の情報を、管理フレームを介して、端末(基地局を含む)間で送受信することが可能である。例えばOFDMA対応端末は、自身がOFDMA通信で使用することを希望するリソースブロック、または、チャネル、またはこれらの両方を、キャリアセンスで非干渉のチャネル、または、非干渉のリソースブロック、またはこれらの両方から、選択してもよい。そして、選択したリソースブロックまたはチャネルまたはこれらの両方に関する情報を、基地局に通知してもよい。この場合、基地局は当該情報に基づき、OFDMA通信のためのリソースブロック割り当てを各OFDMA対応端末に対して行ってもよい。なお、OFDMA通信で利用するチャネルは、無線通信システムとして利用可能な全てのチャネルであっても、一部(1つまたは複数)のチャネルであってもよい。
データフレームは、他の端末との間で通信リンクが確立した状態で、データを当該他の端末に送信するために用いられる。例えばユーザのアプリケーション操作によって、端末においてデータが生成され、当該データがデータフレームによって搬送される。具体的には、生成されたデータは、上位処理部90からMAC共通処理部20を介して送信処理部30に渡され、送信処理部30でデータをフレームボディフィールドに入れ、MACヘッダを付加してデータフレームが生成される。そして、PHY処理部50でデータフレームに物理ヘッダを付加して物理パケットが生成され、物理パケットがアナログ処理部70及びアンテナ80を介して送信される。また、PHY処理部50で物理パケットを受信すると、物理ヘッダに基づき物理層の処理を行ってMACフレーム(ここではデータフレーム)を抽出し、データフレームを受信処理部40に渡す。受信処理部40は、データフレームを受けると(受信したMACフレームがデータフレームであると把握すると)、そのフレームボディフィールドの情報をデータとして抽出し、抽出したデータを、MAC共通処理部20を介して上位処理部90に渡す。この結果、データの書き込み、再生などのアプリケーション上の動作が生じる。
制御フレームは、管理フレーム及びデータフレームを、他の無線通信装置との間で送受信(交換)するときの制御のために用いられる。制御フレームとしては、例えば、管理フレーム及びデータフレームの交換を開始する前に、無線媒体を予約するために他の無線通信装置との間で交換するRTS(Request to Send)フレーム、CTS(Clear to Send)フレームなどがある。また、他の制御フレームとして、受信した管理フレーム及びデータフレームの送達確認のための送達確認応答フレームがある。送達確認応答フレームの例として、ACK(Acknowledgement)フレーム、BA(BlockACK)フレームなどがある。CTSフレームも、RTSフレームの応答として送信するため、送達確認応答を表すフレームであるとも言える。CF−Endフレームも、制御フレームの1つである。CF−Endフレームは、CFP(Contention Free Period)の終了をアナウンスするフレーム、つまり、無線媒体へのアクセスを許可するフレームである。これらの制御フレームは送信処理部30で生成される。受信したMACフレームへの応答として送信される制御フレーム(CTSフレームやACKフレーム、BAフレームなど)に関しては、受信処理部40で応答フレーム(制御フレーム)の送信の必要を判断して、フレーム生成に必要な情報(制御フレームの種別、RAフィールド等に設定する情報など)を送信指示とともに送信処理部30に出す。送信処理部30が、当該フレーム生成に必要な情報と送信指示に基づき、適切な制御フレームを生成する。
MAC処理部10は、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Carrier Avoidance)に基づきMACフレームを送信する場合、無線媒体上でのアクセス権(送信権)を獲得する必要がある。送信処理部30は、受信処理部40からのキャリアセンス情報に基づいて、送信タイミングを計る。送信処理部30は、係る送信タイミングに従って、PHY処理部50に送信指示を与えて、MACフレームを渡す。送信指示に加えて、送信処理部30は、送信に使用される変調方式及び符号化方式を合わせて指示してもよい。これらに加えて、送信処理部30は、送信電力を指示してもよい。MAC処理部10は、アクセス権(送信権)獲得後、媒体を占有可能な時間(Transmission Opportunity;TXOP)が得られると、QoS(Quality of Service)属性などの制限を伴うものの、他の無線通信装置との間でMACフレームを連続して交換できる。TXOPは、例えば、無線通信装置がCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Carrier Avoidance)に基づき所定のフレーム(例えばRTSフレーム)を送信し、他の無線通信装置から応答フレーム(例えばCTSフレーム)を正しく受信した場合に、獲得される。この所定のフレームが、当該他の無線通信装置によって受信されると、当該他の無線通信装置は、最小フレーム間隔(Short InterFrame Space;SIFS)後に、上記応答フレームを送信する。また、RTSフレームを用いないでTXOPを獲得する方法として、例えば直接ユニキャストで送達確認応答フレームの送信を要求するデータフレーム(後述のようにフレームが連接された形状のフレーム、またはペイロードが連接された形状のフレームであってもよい)あるいは管理フレームを送信し、それに対する送達確認応答フレーム(ACKフレームやBlockACKフレーム)を正しく受信する場合がある。あるいは、他の無線通信装置に送達確認応答フレームの送信を要求しないフレームであって、そのフレームのDuration/IDフィールド(以下、Durationフィールド)に当該フレームの送信に要する時間する以上の期間を設定したものを送信した場合には、当該フレームを送信した段階からDurationフィールドに記載された期間のTXOPを獲得したと解釈してもよい。
受信処理部40は、上述したキャリアセンス情報を管理する。キャリアセンス情報は、例えばチャネルごとに管理する。このキャリアセンス情報は、PHY処理部50から入力される媒体(CCA)のビジー/アイドルに関する物理的なキャリアセンス(Physical Carrier Sense)情報と、受信フレームの中に記載されている媒体予約時間に基づく仮想的なキャリアセンス(Virtual Carrier Sense)情報との両方を包含する。いずれか一方のキャリアセンス情報がビジーを示すならば、媒体がビジーであるとみなされ、その間送信は禁止される。なお、IEEE802.11規格において、媒体予約時間は、MACヘッダの中のDurationフィールドに記載される。MAC処理部10は、他の無線通信装置宛ての(自己宛てでない)MACフレームを受信した場合に、当該MACフレームを含む物理パケットの終わりから媒体予約時間に亘って、媒体が仮想的にビジーであると判定する。このような仮想的に媒体をビジーであると判定する仕組み、或いは、仮想的に媒体をビジーであるとする期間は、NAV(Network Allocation Vector)と呼ばれる。媒体予約時間は無線媒体へのアクセスの抑制を指示する期間の長さ、すなわち無線媒体へのアクセスを延期させる期間の長さを表しているといえる。
ここで、データフレームは、複数のMACフレームもしくは複数のMACフレームのペイロード部分を連接するようになっていてもよい。前者はIEEE802.11規格ではA(Aggregated)−MPDU、後者はA(Aggregated)−MSDU(MAC service data unit)と呼ばれる。A−MPDUの場合は、PSDUの中に複数のMPDUが連接されることになる。またデータフレームのみならず、管理フレームや制御フレームも連接対象となる。A−MSDUの場合には、1つのMPDUのフレームボディ中に、複数のデータペイロードであるMSDUが連接されることになる。A−MPDU、およびA−MSDUのいずれも、複数のMPDUの連接、および複数のMSDIの連接を、受信側端末で適切に分離できるように、データフレームに区切り情報(長さ情報など)が格納されている。A−MPDUおよびA−MSDUの両方を組み合わせて用いてもよい。またA−MPDUは、複数のMACフレームではなく、1つのMACフレームのみを対象としてもよく、この場合も区切り情報をデータフレームに格納する。また、データフレームがA−MPDUなどの場合は、複数のMACフレームに対する応答をまとめて送信する。この場合の応答には、ACKフレームではなく、BA(BlockACK)フレームが用いられる。以降の説明および図では、MPDUの表記を用いることがあるが、これは単一のMACフレームのみならず、上述したA−MPDUまたはA−MSDUの場合も含むものとする。
IEEE802.11規格では、基地局が中心となり構成するBSS(これをインフラストラクチャ(Infrastructure)BSSと呼ぶ)に、非基地局の端末が加入し、BSS内でデータフレームの交換ができるようになるために経る手順(procedure)が、段階的に複数規定されている。例えば、アソシエーション(association)という手順があり、非基地局の端末から、当該端末が接続を要求する基地局に対して、アソシエーション要求(Association Request)フレームを送信する。基地局は、アソシエーション要求フレームに対するACKフレームを送信後、アソシエーション要求フレームに対する応答であるアソシエーション応答(Association Response)フレームを送信する。
端末はアソシエーション要求フレームに自端末の能力(capability)を格納し、それを送信することで基地局に自端末の能力の通知をすることができる。例えば、端末はアソシエーション要求フレームの中に、自端末が対応可能なチャネルまたはリソースブロックまたはこれらの両方や、自端末が対応する規格を特定するための情報を入れて送信してもよい。他の基地局へ再接続するための再アソシエーション(reassociation)という手順で送信するフレームにも、この情報を入れるようにしてもよい。この手順では、端末から、再接続を要求する他の基地局に対して、再アソシエーション要求(Reassociation Request)フレームを送信する。当該他の基地局は、再アソシエーション要求フレームに対するACKフレームを送信後、再アソシエーション要求フレームに対する応答である再アソシエーション応答(Reassociation Response)フレームを送信する。
管理フレームとして、アソシエーション要求フレームおよび再アソシエーション要求フレーム以外にも、ビーコンフレーム、プローブ応答(Probe Response)フレームなどを用いてもよい。ビーコンフレームは基本的に基地局が送信するもので、BSSの属性を示すパラメータとともに、基地局自身の能力を通知するパラメータも格納できる。そこで、この基地局自身の能力を通知するパラメータとして、基地局がOFDMA通信への対応可否の情報を加えるようにしてもよい。また他のパラメータとして、基地局のサポートレート(Supported Rate)の情報を通知してもよい。サポートレートは、必須のレートとオプションのレートとを含んでもよい。プローブ応答フレームは、ビーコンフレームを送信する端末からプローブ要求(Probe Request)フレームを受信すると、それに応答して送信するフレームである。プローブ応答フレームは、基本的にはビーコンフレームと同一の内容を通知するものであるため、プローブ応答フレームを用いても基地局は、プローブ要求フレームを送信した端末に、自局の能力(OFDMA通信への対応可否、サポートレートなど)を通知することができる。OFDMA対応端末にこの通知を行うことで、端末は例えば自端末のOFDMA通信の機能を有効にするといったことも可能となる。
なお、端末は自端末の能力について基地局へ通知する情報として、基地局のサポートレートのうち自端末が実行可能なレートの情報を通知してもよい。ただし、サポートレートのうち必須のレートについては、基地局へ接続する端末はその必須のレートを実行する能力を有するものとする。なお、基地局がサポートレートを定めていない場合もあり得、その場合には、端末は物理層の種類に応じた必須のレートセットを実行できるものとする。
なお、上記で扱った情報のうち、他の情報を通知することで、その情報が必須となるものがあれば、通知を省略できる。例えば、ある新しい規格あるいは仕様に対応する能力を定義し、それに対応していれば自ずとOFDMA対応端末である、というのであれば、IFDMA対応端末であることの通知を明示的に行わなくてもよい。
図3に、本実施形態に従った無線通信システム。このシステムは、基地局(AP:Access Point)100と、複数の端末(STA:STAtion)1〜8とを備える。基地局100と、配下の端末1〜8により、BSS(Basic Service
Set)1が形成される。このシステムは、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Carrier Avoidance)を用いるIEEE802.11規格に準じた無線LANシステムである。OFDMA対応端末と、レガシー端末とが共存しており、一例として、端末1〜端末6がOFDMA対応端末、端末7および端末8がレガシー端末である。以下ではこれを想定して説明する。
図3のシステムにおいて、リソースブロックベースのOFDMA通信を実施する場合、OFDMAの非対象端末(今回のOFDMA通信を行う対象として指定されなかった端末)と、対象端末および基地局との間で、OFDMA通信後の媒体アクセスの機会の公平性を考慮する必要がある。非対象端末は、OFDMAで基地局または他の端末群から同時送信されるフレーム(より詳細にはフレームを含む物理パケット)を受信した場合、通常、その物理パケットのヘッダの共通プリアンブルまでしか復号を行わない場合が考えられる(例えばその共通プリアンブルの内容から物理パケットに自端末宛のフレームは含まれないと判断した場合)。この場合、物理層でエラーが検知され、SAP(Service Access Point)を介してMAC層へそのエラーが通知される。これに起因して、MAC層では、次回の媒体アクセス時に、バックオフ前に行うキャリアセンスの一定期間としてEIFS(extended interframe space)時間を起動する。EIFS時間は、通常の媒体アクセス時に行うキャリアセンスの一定期間(DIFS/AIFS[AC])より長いため、次のアクセス時に、EIFS時間を起動する非対象端末と、通常のDIFS/AIFS[AC]時間を起動する端末(OFDMAの対象端末および基地局など)との間で不公平が生じてしまう。
現行のEIFS時間の起動条件としては、PLCP(physical layer convergence procedure)の受信プロセスが正常に終了できなかった場合、およびMACフレームのFCS検査でエラーが検知された場合などがある。PLCPの受信プロセスが正常に終了できなかった場合には、PHY−RXEND.indicationでエラー通知がMAC層に行われ、MAC層でEIFS時間を起動するよう制御される。PLCPの受信プロセスが正常に終了できずにPHY−RXEND.indicationでのエラーが通知される例としては、物理ヘッダで通知されたMCS(Modulation and Coding Scheme)に非対応であること(Unsupported Rate)、フォーマット違反(Format Violation)、キャリアの見失い(Carrier Lost)などがある。前述したOFDMAの非対象端末が物理パケットのヘッダの途中までしか復号を行わない場合も、このPLCPの受信プロセスが正常に終了できなかった場合に相当し、PHY−RXEND.indicationでエラー通知がMAC層に行われると考えられる。
以下、図4を用いて、OFDMA通信後に、OFDMAの対象端末および基地局と、OFDMAの非対象端末との間で無線媒体へのアクセスの不公平が生じることについて具体的に説明する。図4に、基地局(AP)101と、端末(STA)1〜端末(STA)4とでOFDMA通信を行う場合の動作シーケンス例を示す。ただし、ここでは説明のため、端末1〜4および非対象端末5、6は、OFDMA通信を行う能力を有しておりかつその能力が有効になっているものの、本実施形態の特徴に関わる不公平を解消する機能は備えていないと仮定する。図4の下には、OFDMAの非対象端末である端末5、6の動作例も示されている。
このシーケンス例では、基地局101と端末1〜4が、1つのチャネルの20MHz幅の連続する周波数帯域を用いてOFDMA通信(ダウンリンク送信とアップリンク送信の双方)を行う。基地局では、当該20MHz幅帯域内で直交配置されているサブキャリア群に基づき、1つまたは複数の連続するサブキャリアをリソースブロックとして各端末に割り当てる。本例では、1つのチャネル内に4つのリソースブロック1、2、3、4が設定され、周波数の高い側から順にリソースブロック1〜4を、それぞれ端末1〜4に割り当てられているとする。先に図2に示した例に則して説明すれば、K=4として、端末1〜端末4に、チャネルM内に設定した4つのリソースブロックをそれぞれ周波数の高い側から順に割り当てる場合に相当する。
基地局101が、チャネル内のリソースブロック1〜4を用いて、端末1〜4に同時にMACフレームを送信(ダウンリンクOFDMA送信)する。より詳細には、事前に当該チャネルのキャリアセンスにより獲得した1フレーム分の媒体上のアクセス権に基づき、端末1〜4宛のフレームを含む物理パケットを、リソースブロック1〜4で送信する。図4の例では、物理パケットに含まれる各MACフレームのフレーム長は同じである。
図5(A)に、本実施形態に係る物理パケットの概略フォーマット例を示す。このフォーマットは物理ヘッダとデータフィールドとを含む。物理ヘッダの先頭側にはL−STF、L−LTF、L−SIGのフィールドが配置されており、その後ろに本実施形態に係るプリアンブル1およびプリアンブル2のフィールドが配置されている。プリアンブル1およびプリアンブル2は、新たに定義したフィールドでもよいし、既存の規格におけるL−STF、L−LTF、L−SIGより後ろのフィールドを拡張したものでもよい。例えば既存の規格としてIEEE802.11acの物理パケットフォーマットにおけるVHT−SIG−Aを拡張してプリアンブル1とし、VHT−SIG−Bを拡張してプリアンブル2としてもよい。プリアンブル1とプリアンブル2の間、プリアンブル1の前、およびプリアンブル2の後の少なくとも1つに、他のフィールドが存在してもよい。例えばプリアンブル1とプリアンブル2の間に、STFおよびLTFのフィールドをこの順で配置してもよい。STFおよびLTFのフィールドは、新たに定義したフィールドでもよいし、既存の規格のVHT−STFおよびVHT−LTFを拡張したものでもよいし、これらと同じフィールドでもよい。
L−STF、L−LTF、L−SIGは、IEEE802.11aなどのレガシー端末でも認識可能なフィールドであり(先頭の“L”はレガシーを表す)、信号検出、周波数補正、伝送速度(あるいはMCS)などの情報が格納されている。L−STF、L−LTF、L−SIGは、レガシー端末でも受信・復号できるように、チャネル幅の帯域(20MHz)で送信する必要がある。このため、1チャネル内の複数のリソースブロックで複数の端末にOFDMA送信する場合、各端末に送信される物理パケットのL−STF、L−LTF、L−SIGの内容は同一にする必要がある。これによりレガシー端末でもこれらの物理パケットに共通するL−STF、L−LTF、L−SIGを受信・復号できる。なお、L−STF、L−LTF、L−SIGをまとめて、レガシーフィールドと呼ぶこともある。図4ではレガシーフィールドがチャネル幅帯域(20MHz)で送信されることを表現するため、4つのリソースブロックをまたがった矩形でレガシーフィールドを記載している。
基地局が送信するプリアンブル1には、OFDMA対応端末が共通に理解できる情報が格納される。基地局から複数の端末にOFDMA送信する物理パケットのヘッダのプリアンブル1に設定する情報としては、例えばOFDMAでの送信対象となっている複数の端末(対象端末)を特定するための情報がある。複数の端末を特定するための情報は、これらの端末を個別に識別する情報(識別子)でもよいし、複数の端末が共通にするグループのグループIDでもよい。グループIDは、端末が基地局のBSSに加入する際(すなわちアソシエーションプロセス時)または加入後に、基地局から割り当てられ、端末に通知されている。基地局は、複数のグループを生成および管理でき、グループごとに属している端末群を把握している。同じ端末が複数のグループに属することもある。端末が属するグループが変更された場合は、変更後のグループIDが端末に通知される。個々の端末を識別する情報の例としては、基地局とのアソシエーション時に基地局から付与されるアソシエーションID(AID)、または端末のMACアドレス、またはこれらの両方などがある。端末を個別に識別する情報は、端末を識別可能な限り、ここに記述した例に限定されない。
また、当該プリアンブル1に設定する情報の他の例として、OFDMAの対象端末がそれぞれ使用するリソースブロックを特定するための情報がある。例えば端末1〜4を対象端末として指定した場合に、端末1〜4に対しそれぞれリソースブロック1〜4を指定する情報を設定してもよい。具体的に、リソースブロック数を指定する複数のフィールドを設け、自端末用の位置のフィールド(ユーザポジションと呼ぶこともある)で指定されたリソースブロック数から、使用するリソースブロックを特定してもよい。この場合、自端末用のフィールドの位置は、アソシエーション時またはその後の任意のタイミングで事前に通知されている。フィールド位置の優先順位の高い端末から、それぞれ割り当てられた数のリソースブロックを割り当てていけばよい。この際、複数のリソースブロックには割り当ての順序が定められており、この順序でリソースブロックを割り当てる。上記の例の場合は端末1〜4用のフィールドにそれぞれリソースブロック数として1を設定することになる。またこの場合、リソースブロック1〜4の順序で割り当てを行っていくことが事前に定められている。
またリソースブロックのそれぞれを個別に識別する識別子が定義されている場合は、プリアンブル1における端末毎のフィールドの位置(ユーザポジション)にリソースブロックの識別子を、使用するリソースブロック数分だけ配置してもよい。または、端末のAID等の識別子と、当該端末が使用するリソースブロックの識別子との対応情報をプリアンブル1に設定することも可能である。
また、プリアンブル1には プリアンブル2およびデータフィールドの少なくとも一方に用いられている誤り訂正符号の方式(LDPC(Low Density Parity Check)、畳み込みなど)に関する情報が含まれてもよい。
またプリアンブル1には、OFDMAで使用するリソースブロックの合計数が含まれていてもよい。例えば1チャネル幅帯域で使用するリソースブロックの合計数に応じて、チャネル内で使用するリソースブロックが特定される(例えば周波数の高い側または低い側から当該合計数分など)場合は、当該合計数からOFDMA通信で使用されているリソースブロックを特定できる。または当該合計数に応じてリソースブロックの配置(リソースブロックとサブキャリアとの対応)が変動する場合に、当該合計数からOFDMA通信で使用されているリソースブロックを特定することもあり得る。
また、プリアンブル1に、リソースブロック間の間隔(隣接するリソースブロック間に存在するサブキャリア数)に関する情報が含まれていても良い。例えば、チャネル内においてOFDMAで使用するリソースブロックの配置パターンが複数存在し、各配置パターンでリソースブロック間の間隔が異なる場合は、当該間隔に関する情報から、OFDMA通信で使用されているリソースブロックを特定することもあり得る。
なお、各端末では、複数のリソースブロックのそれぞれと、当該リソースブロックに属するサブキャリア群との対応を把握しておいてもよい。この対応は、システムまたは仕様で事前に定義されていてもよいし、基地局が当該対応を設定して、端末とのアソシエーション時やその他の任意のタイミングで、ビーコンフレームやアソシエーション応答フレーム、あるいは新規に定義したフレーム、任意の管理フレーム等で通知してもよい。なお、上述したように使用するリソースブロック数に応じて、リソースブロックとサブキャリアとの対応が変化する場合もあり得る。端末が使用するリソースブロックは事前に決定されていてもよく、この場合にプリアンブル1で、端末が使用するリソースブロックを特定するための情報の設定は省略してもよい。なお、端末から基地局にアップリンク送信するプリアンブル1には、基地局が理解できる情報(基地局を特定する情報など)が格納される。
プリアンブル1は、レガシーフィールドと同様に、チャネル幅帯域(20MHz)で送信する。このため、1チャネル内の複数のリソースブロックで複数の端末に物理パケットをOFDMA送信する場合、各端末に送信される物理パケットのプリンブル1の内容は同一にする必要がある。プリアンブル1を受信したOFDMA対応端末は、チャネル幅帯域の信号の受信および復号を行う。図4ではプリアンブル1がチャネル幅帯域(20MHz)で送信されることを表現するため、4つのリソースブロックをまたがった矩形でプリアンブル1を記載している。L−STF、L−LTF、L−SIGおよびプリアンブル1をまとめて共通プリアンブルと呼ぶこともある。
プリアンブル2には、該当するリソースブロックごとのデータフィールドの復号のために必要な情報が格納される。例えば当該リソースブロックで送信されるデータフィールド内のMACフレームの復号に必要な変調符号化方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)が格納されている。プリアンブル2は、1チャネル幅帯域ではなく、リソースブロックごとの帯域で対象端末毎に送信される。つまりプリアンブル2は周波数多重されている。OFDMAの対象端末は、プリアンブル1で自端末が指定されていると判断した後、プリアンブル1で指定または事前に指定されたリソースブロックでプリアンブル2を受信して、プリアンブル2を復号することで、データフィールド(MACフレーム)の復号に必要なMCS等の情報を取得する。プリアンブル2はリソースブロックごとの帯域で端末ごとに送信され、それぞれ異なる内容であり得る。ただし、各プリアンブル2の内容が同じあっても問題ない。プリアンブル2とデータフィールドはリソースブロック毎に送信されるという点で共通するため、プリアンブル2とデータフィールドとを含むフィールドが存在すると考えても良い。この場合、当該フィールドはプリアンブル2とデータフィールドとを含み、さらに同じリソースブロックで送信されるフィールドである限り、他のフィールドを含んでもよい。図4ではプリアンブル2がリソースブロックごとの帯域で送信されることを表現するため、リソースブロック間で分離された矩形でプリアンブル2を記載している。プリアンブル2を表す矩形内に記載された数字は、宛先となる端末の番号を便宜上、表している。例えば数字の1が記入された矩形のプリアンブル2は、端末1宛の情報が含まれていることを意味し、端末を特定する情報が含まれていることを意味するものではない(もちろん端末を特定する情報が含まれていてもかまわない)。
データフィールドにはMACフレームが格納される。MACフレームは、プリアンブル2と同様、リソースブロックごとの帯域で端末毎に送信される。つまりデータフィールドは周波数多重で送信される。各リソースブロックで送信されるMACフレームは、それぞれ対応する端末宛のフレームであり、それらのMACフレームの内容は異なってもよいし、同じであってもよい。各リソースブロックで送信するMACフレームは、データフレーム、管理フレームおよび制御フレームのいずれでもよいし、これらが組み合わさってもよい。またデータフレームは、単一のMACフレームのみならず、複数のMACフレームを集約したアグリゲーションフレーム(A−MPDU)等でもかまわない。図4の例では、基地局からダウンリンクOFDMA送信される物理パケットのデータフィールドにはデータフレームが設定されている。これを図では「MPDU(Data)」と記載している。前述したように、「MPDU」は単一のMACフレームのみならず、アグリゲーションフレーム(A−MPDU)等を指してもよい。本実施形態ではアグリゲーションフレームであることを想定する。図4ではMACフレーム(データフレーム)がリソースブロックごとの帯域で送信されることを表現するため、プリアンブル2と同様に、リソースブロック間で分離された矩形でMACフレームを記載している。各矩形内に記載された数字は、宛先となる端末の番号を便宜上、表している。例えば数字の1が記入された矩形のMACフレームは、端末1宛のフレームである(例えばRAが端末1のMACアドレスである)ことを意味する。
なお、物理ヘッダの各フィールドのフォーマットを、ダウンリンクOFDMA通信する場合を主として想定して説明したが、それ以外の通信を行う場合は、その通信の種類に応じてフィールド(プリアンブル1またはプリアンブル2またはこれらの両方など)のフォーマットが異なってもよい。
上述したように基地局からOFDMA送信する物理パケットは、レガシーフィールドおよびプリアンブル1がチャネル帯域幅で送信され、プリアンブル2およびデータフィールドがリソースブロックごとに送信される。つまり、この場合、基地局からOFDMA送信される物理パケットは、図5(B)に示すように、各対象端末に共通のレガシーフィールドおよびプリアンブル1と、端末ごとの複数のプリアンブル2および複数のデータフィールドとを含む。物理ヘッダは、各対象端末に共通のレガシーフィールドおよびプリアンブル1と、端末ごとの複数のプリアンブル2を含む。
図6は、MACフレームの基本的なフォーマット例を示す。データフレーム、管理フレームおよび制御フレームは、基本的にこのようなフレームフォーマットを備える。本フレームフォーマットは、MACヘッダ(MAC header)、フレームボディ(Frame body)及びFCSの各フィールドを含む。MACヘッダはFrame Control、Duration、Address1、Address2、Address3, Sequence Control、QoS Control及び HT(High Throughput) controlの各フィールドを含む。これらのフィールドは必ずしもすべて存在する必要はなく、一部のフィールドが存在しない場合もあり得る。
また図6には示されていない他のフィールドが存在してもよい。例えば、Address4フィールドがさらに存在してもよい。Address1のフィールドには宛先アドレス(Receiver Address;RA)が、Address2のフィールドには送信元アドレス(Transmitter Address;TA)が入り、Address 3のフィールドにはフレームの用途に応じてBSSの識別子であるBSSID(Basic Service Set IDentifier)(全てのビットに1を入れて全てのBSSIDを対象とするwildcard BSSID場合もある)か、あるいはTAが入る。
Frame Controlフィールドには、前述したようにType、Subtypeという2つのフィールドを設定する。データフレームか、管理フレームか、制御フレームかの大別はTypeフィールドで行われ、大別されたフレームの中での細かい種別、例えば管理フレームの中のBAフレーム、BARフレーム、Beaconフレームといった識別はSubtypeフィールドで行われる。
Durationフィールドは前述したように媒体予約時間を記載し、他の端末宛てのMACフレームを受信した場合に、当該MACフレームを含む物理パケットの終わりから媒体予約時間に亘って、媒体が仮想的にビジーであると判定する。このような仮想的に媒体をビジーであると判定する仕組み、或いは、仮想的に媒体をビジーであるとする期間は、前述したように、NAV(Network Allocation Vector)と呼ばれる。
QoSフィールドは、フレームの優先度を考慮して送信を行うQoS制御を行うために用いられる。HT Controlフィールドは、IEEE802.11nで導入されたフィールドであり、QoSデータフレームまたは管理フレームのときに、オーダーフィールドが1に設定されていると存在する。HT Controlフィールドは、IEEE802.11acのVHT (Very High Throughput)Controlフィールドにも、次世代無線LAN規格であるIEEE802.11axのHE(High Efficiency) Controlフィールドにも拡張可能であり、各々IEEE802.11n、IEEE802.11ac、あるいはIEEE802.11axの各種機能に応じた通知をすることができる。
管理フレームでは、固有のElement ID(IDentifier)が割り当てられた情報エレメント(Information element;IE)をFrame Bodyフィールドに設定し、1つまたは複数の情報エレメントを設定できる。情報エレメントは、Element IDで識別され、Element IDフィールド、Lengthフィールド、情報(Information)フィールドの各フィールドを有する。情報フィールドは、通知する情報の内容を格納し、Lengthフィールドは、情報フィールドの長さ情報を格納する。FCSフィールドには、受信側でフレームの誤り検出のため用いられるチェックサム符号としてFCS(Frame Check Sequence)情報が設定される。FCS情報の例としては、CRC(Cyclic Redundancy Code)などがある。
図4のシーケンスにおいて、基地局101から複数のリソースブロックで送信された物理パケットを端末1〜4は受信および復号して、自端末に割り当てられたリソースブロックのMACフレームを取得する。取得したMACフレームのFCSに基づきエラー検査を行い、エラーがなければ当該MACフレームのヘッダおよびフレームボディフィールド(データ本体)の処理を行う。例えば、データフレームであれば、フレームボディフィールドに格納されたデータを上位層に出力し、管理フレームまたは制御フレームであれば、フレームボディフィールドに格納された情報に応じた管理または制御のための動作を行う。ここではMACフレームが、複数のデータフレームを含むアグリゲーションフレームであるとする。
端末1〜4は、アグリゲーションフレーム内の各データフレームのエラー検査の結果に基づき各データフレームの受信に成功したか否かを表すビットマップ情報を含む送達確認応答フレームを生成する。そして、端末1〜4は、基地局からのフレーム受信完了からSIFS時間後に送達確認応答フレームであるBAフレーム(Block ACKフレーム)を含む物理パケットを、MACフレームを受信したのと同じリソースブロックで送信する。これにより端末1〜4から基地局101へのアップリンクOFDMA送信が行われる。各端末が送信するBAフレーム長は同じであるとする。なお、SIFS時間は一例であり、一定時間であれば、他の時間でもかまわない。以降の説明でSIFS時間というときは、すべてこれに倣うものとする。BAフレームを含む物理パケットのヘッダのレガシーフィールドおよびプリアンブル1については、基地局がOFDMA送信する物理パケットと同様に、チャネル幅帯域(20MHz幅帯域)で送信し、プリアンブル1より後のフィールドであるプリアンブル2とMACフレームとについては、それぞれのリソースブロックの帯域で送信する。これらのことを表現するため、図4では、各端末が送信する物理パケットのヘッダにおけるレガシーフィールドおよびプリアンブル1は、4つのリソースブロックをまたがった矩形で記載され、続くプリアンブル2およびMACフレームはそれぞれのリソースブロック内にのみ含まれる矩形で記載されている。MACフレームを表す矩形内に記載された「AP」は、MACフレームの宛先が基地局である(例えばRAが基地局のBSSIDまたはMACアドレスである)ことを意味する。
ここで基地局からリソースブロック1〜4でOFDMA送信される物理パケットは、基地局からの信号を受信可能な状態である端末であれば、端末1〜4以外の端末でも受信される。例えば、物理パケットが、非対象端末(ここでは端末5、6)でも受信される。このとき、非対象端末は、通常であれば(本実施形態の機能を有さない場合は)、物理パケットのヘッダのプリアンブル1を復号した結果、それより後のフィールドの復号は行わず、物理パケットを正常に受信できなかったとして、エラーを検知すると考えられる。この場合、非対象端末は、前述したように、次回のチャネルアクセス時のキャリアセンスでEIFS時間を起動する。例えば、図4の基地局からの物理パケットのダウンリンクOFDMA送信が完了した時点でCCAがアイドルとなり、OFDMAの非対象端末がチャネルアクセス権を獲得するためにキャリアセンスを行う場合、バックオフ前の一定時間のキャリアセンスとしてEIFS時間を起動する(図4の「EIFS起動1」参照)。同様に、複数の対象端末から基地局に複数の物理パケットがOFDMA送信される場合も、非対象端末は、物理パケットまたは当該物理パケット内のMACフレームを正常に受信できず、受信エラーとなる。例えばレガシーフィールドおよびプリアンブルP1を復号した結果、自端末と無関係な物理パケットと判断して、それより後のフィールドの復号を行わないとして、受信エラーを検知する。また仮にその後のフィールドのプリアンブル2またはMACフレームを受信したとしても、複数の端末の信号が重複した信号を復号しようとするため正常に復号できず、いずれにしても受信エラーを検知する。この結果、次回のチャネルアクセス時のキャリアセンスで、バックオフ前の一定時間のキャリアセンスとしてEIFS時間を起動する。例えば、図4に示すように、複数の対象端末からの物理パケットのアップリンクOFDMA送信が完了した時点でCCAがアイドルとなり、チャネルアクセス権を獲得するためにキャリアセンスを行う場合、バックオフ前の一定時間のキャリアセンスとしてEIFS時間を起動する(図4の「EIFS起動2」参照)。受信エラーに関しては、ここで述べた例に以外にも、前述した例、例えばMCS非対応(Unsupported Rate)や、キャリアの見失い(Carrier Lost)などもあり得る。
ここで、EIFS時間(EIFS period)について説明する。EIFS時間は、一例として、SIFS時間とACKフレーム時間長(ACKフレームの送信に要する時間の長さ)とDIFS/AIFS[AC]時間とを加算したものとして定義される。
すなわち、
EIFS時間=SIFS時間+ACKフレーム時間長+DIFS/AIFS[AC]時間
である。
AIFSは、DIFSにQoS(Quality of Service)の概念を加味して決めたIFSのことである。AIFS[AC]の“AC”は、アクセスカテゴリのことであり、送信するデータの種類等に応じて決まる優先度(アクセスカテゴリ)に従って、AIFSの値が設定される。優先度が高いほど、AIFSの値が小さくされる(バックオフ時間の設定も有利にされ得る)。
OFDMAの対象端末や基地局などは、OFDMA通信後にチャネルアクセス権を獲得するためにキャリアセンスを行う場合、受信エラー等があった等の特段の事情がない限り、バックオフ前に行う一定時間のキャリアセンスとして、通常の時間、すなわち、DIFS/AIFS[AC]時間を起動する。ここで、“DIFS/AIFS[AC]時間”は、DIFSおよびAIFS[AC]のいずれか一方の時間を意味する。データのQoSを考慮しない場合は、DIFS時間を指し、QoSを考慮する場合は、送信するデータの種類等に応じて決まるAIFS[AC]時間を指す。上記したEIFS時間の関係式から、EIFS時間は、DIFS/AIFS[AC]時間より大きく、したがって、受信エラーを検知した端末は、そうでない端末よりも、媒体上のアクセス権の獲得において不利になる。このことを模式的に図7に示す。図7(A)がEIFS時間を起動する場合のキャリアセンス時間(EIFS時間とバックオフ時間との加算)、図7(B)がDIFS/AIFS[AC]時間を起動する場合のキャリアセンス時間(DIFS/AIFS[AC]時間とバックオフ時間との加算)を模式的に示す。EIFS時間の方が、DIFS/AIFS[AC]時間よりも長いため、受信エラーを検知した端末は、アクセス権の獲得において、待機時間が長くなり、不利になることが分かる。なお、EIFS時間およびDIFS/AIFS[AC]時間に続くバックオフ時間の値はそれぞれランダムに決定され、バックオフ時間の間も続けてキャリアセンスが行われる(バックオフ)。なお、バックオフは、省略される場合もあり得る。
上述した不公平を解消するため、本実施形態に係るOFDMA対応端末は、以下の動作を行うことを特徴の1つとする。本実施形態に係るOFDMA対応端末は、基地局からダウンリンクOFDMA送信された物理パケットを受信した場合に、自端末がプリアンブル1でOFDMAの対象端末として指定されていない場合は、すなわち非対象端末の場合は、複数のリソースブロックのうちの少なくとも1つのリソースブロックを特定し、特定したリソースブロックのデータフィールドを復号してMACフレームを取得する。MACフレームを取得するために、当該MACフレームの前に配置されているプリアンブル2に設定された情報(MCS情報など)を用いて、データフィールドを復号してもよい。MACフレームを取得した非対象端末は、そのヘッダのDurationフィールドに設定された値(媒体へのアクセスを抑制する期間の長さに関する値)に基づき、当該MACフレームの受信完了からその値の長さだけNAVを設定する。つまり、当該非対象端末は、取得したMACフレームのRAが当該端末のMACアドレスではない、すなわち、自端末宛のMACフレームでないと判断することにより、Durationフィールドに設定された値の長さだけNAVを設定する。NAVを設定する対象となる帯域は、物理パケットが送信されたチャネル幅帯域である。以上の動作により、非対象端末は、自端末宛でないMACフレームを含む物理パケットを受信しても、当該パケットを正常に復号するため、上述したEIFSの起動条件は成立しない。また自端末宛でないMACフレームのヘッダに基づきNAVを設定することにより、他の端末の通信を妨げることもない。
ここで非対象端末が複数のリソースブロックのうちのどのリソースブロックを特定するかは、予め決めておいてもよい。例えば自端末がOFDMA通信の対象として指定された場合に使用するリソースブロックが事前に決められている場合は、そのリソースブロックを選択してもよい。または、複数のリソースブロックのいずれも受信および復号可能であるならば、任意のリソースブロックを選択してもよい。また、基地局がOFDMA送信で使用するリソースブロックが可変である場合、プリアンブル1を復号して、使用されているリソースブロックを把握し、当該把握したリソースブロックの中からリソースブロックを選択してもよい。また、BSS1内で使用され得る複数のMCSのうち対応可能なMCSが制限されている非対象端末の場合は、各リソースブロックのプリアンブル2を復号して自端末が対応可能なMCSのリソースブロックを特定し、特定したリソースブロックのデータフィールドを当該MCSで復号して、MACフレームを取得してもよい。
図8に非対象端末である端末5、6が、復号により取得したMACフレームのDurationフィールドに記載された値に基づき、NAVを設定する場合の動作シーケンス例を示す。端末5、6が基地局からダウンリンク送信される物理パケットを正常に復号してNAVを設定する動作、端末1〜4からアップリンク送信される物理パケットのうちの1つを正常に復号してNAVを設定(更新)する動作以外は、図4と同じである。ダウンリンクの各MACフレーム(データフレーム)の長さ(時間長)は同じであり、アップリンクの各MACフレーム(BAフレーム)の長さは同じであるとする。端末5、6は基地局101が送信するOFDMA送信する物理パケットにおいて複数のリソースブロックのうちの1つに含まれるプリアンブル2に基づきデータフィールドを復号して、MACフレームを取得する。そして、MACフレームのヘッダのDurationフィールドの値に基づき、当該MACフレームの末尾からNAVを設定する。Durationフィールドの値は、端末1〜4がアップリンクOFDMA送信するMACフレームの末尾(物理パケとの末尾に一致)に合わせて設定されている。図8の例では、アップリンクOFDMA送信するMACフレームの末尾の時刻は同じであるため、NAVの期間の末尾も同じとなる。なお、NAVの期間の末尾の時刻は、アップリンクのMACフレームの末尾より後の時刻、または手前の時刻にすることもあり得る。手前の時刻に設定する場合、少なくともアップリンク送信される物理パケットの受信(あるいはMACフレームの受信)であることを非対象端末が認識できずにビジーとのみ把握できるタイミング以降の時刻であることが望ましい。例えば少なくともレガシーフィールドの先頭より後の時刻を設定する。また、端末5、6は、端末1〜4からアップリンク送信される複数の物理パケットを受信し、これらのうちの1つを、基地局からのダウンリンク送信の場合と同様に復号する。これらの物理パケットのレガシーフィールドおよびプリアンブル1には各々端末1〜4で共通の値が設定されている。アップリンク送信の場合のプリアンブル1のフォーマットは、ダウンリンクのプリアンブル1のフォーマットと同じでも異なっても良く、端末1〜4では事前に定められたルールに基づき、同じ値がプリアンブル1に設定される。また、プリアンブル2のフォーマットは、ダウンリンクのプリアンブル2のフォーマットと同じでも異なっても良く、プリアンブル2には例えば、該当するリソースブロックごとのデータフィールドの復号のために必要な情報が格納される。端末5、6は、レガシーフィールドおよびプリアンブル1を復号し、さらに、複数のリソースブロックから選択したリソースブロックのプリアンブル2を復号し、さらに後続の同じリソースブロックのデータフィールドを復号して、MACフレームを取得する。そして、MACフレームのヘッダ内のDurationフィールドに基づきNAVを更新する。端末5、6は、復号するリソースブロックを、ダウンリンク送信の場合と同様に選択してもよい。または、ダウンリンク送信のときに選択したリソースブロックと同じリソースブロックを選択してもよい。以上の動作により、端末5、6は、端末1〜4からの基地局宛の物理パケットを受信しても、これらのうちの1つを正常に復号することで、EIFS起動の条件は成立しない。また、正常に復号したパケットに含まれるMACフレームのヘッダに基づきNAVを引き続き設定(この例ではアップリンク送信される物理パケットの末尾まで)することで、他の端末の通信を妨げることもない。
なお、端末1〜4からアップリンクマルチユーザ送信するパケットのヘッダは、レガシーフィールド、プリアンブル1およびプリアンブル2を含んでいたが、ヘッダの構成はこれに限定されない。例えばレガシーフィールドおよびプリアンブル1を含むが、プリアンブル2を含まない構成も可能である。この場合、基地局は、例えば、直前に復号成功したダウンリンクマルチユーザ送信と同様の復号情報(MCS等)を用いて、アップリンクマルチユーザ送信されたパケットのデータフィールドを復号するようにしてもよい。基地局は、直前のダウンリンクマルチユーザ送信からある固定時間、例えばSIFS+スロット時間(SIFSとスロット時間との合計時間)以内に受信を開始しかつ受信したパケットがアップリンクマルチユーザ送信されたパケットであるとの条件が満たされる場合は、前の復号情報を保持し、その条件が満たされない、もしくは、SIFS+スロット時間を経過した場合は、前の復号情報を消去するようにしてもよい。なお、データフィールドの復号のために必要な復号情報が、レガシーフィールドまたはプリアンブル1またはこれらの両方に含まれていても良い。
NAVの期間の経過後、端末5、6は媒体上のアクセス権の獲得のため、キャリアセンスを行うとする。アップリンクOFDMA通信の間、アップリンク送信される複数の物理パケットのうちの1つを選択して正常に復号するため、EIFS時間の起動は抑制される。よって、通常通り、DIFS/AIFS[AC]時間を起動する。一方、基地局101および端末1〜4が、媒体上のアクセス権の獲得のため、アップリンクOFDMA送信後にキャリアセンスを開始する場合も同様に、DIFS/AIFS[AC]時間を起動する。よって、対象端末および基地局と、非対象端末との間でのアクセス権の獲得の機会の不公平が解消される。端末5、6は、キャリアセンス結果がアイドルとなり、アクセス権を獲得したら、フレーム(より詳細には物理ヘッダを付加したパケット)を送信することができる。送信するパケットまたはフレームの例として、後述する第5の実施形態で説明するものを送信することもできる。
基地局からのダウンリンクの各MACフレームの長さが異なる場合は、短いMACフレームの末尾にパディングデータを付加して長さが同じになるように調整してもよい。または、応答となるアップリンクの各MACフレーム(BAフレーム)の長さが異なる場合を考慮するときは、以下のようにしてもよい。すなわち、基地局からダウンリンクOFDMA送信される各MACフレームについて、それぞれに対応して設定されるNAVの期間の末尾が同じ時刻になるように、NAVの期間の長さを設定する。これにより、例えば、応答となるアップリンクのMACフレーム(BAフレーム)の末尾が異なる場合にも、NAVの期間の末尾を揃えることで、少なくとも非対象端末間の公平性を維持できる。さらに、当該末尾の時刻を、アップリンクのMACフレームのうち最も長いMACフレームの末尾に一致させることで、非対象端末、対象端末および基地局を含む、すべての端末間で公平性を維持できる。
なお、基地局が複数の端末に複数のフレームを送信する場合(図8の例ではダウンリンクOFDMAで端末1〜4に複数のフレームを送信する場合)において、当該送信する複数のフレームは、同じものであっても異なるものであってもよい。一般的な表現として、基地局が複数のフレームまたは複数の第Xフレームを送信または受信すると表現する場合、これらのフレームまたは第Xフレームは同じものであっても異なるものであってもよい。Xには状況に応じて任意の値を入れることができる。
上述した動作シーケンス例において、OFDMAの非対象端末がパワーセーブモードの機能を搭載している場合は、パワーセーブ動作しているか否かに応じて動作を変えてもよい。例えばpower save mode activatedのパラメータを有し、このパラメータの値がtrue(1)ならばパワーセーブモード動作をしており、false(0)ならパワーセーブモード動作していない状態とする。このときパラメータがfalse(0)のときには、非対象端末は、少なくともいずれかのリソースブロックの特定およびMACフレームの復号を行ってNAVを設定し、trueならばリソースブロックの特定およびMACフレームの復号を行わないとしてもよい。パワーセーブモード動作しているときはパケットの受信動作を行わないため、当然EIFS起動の条件も成立しない。または、power management modeのパラメータを有し、パラメータの値がactive(1)ならばパワーセーブモードでなく、power save(2)ならば、パワーセーブモードであるとする。この場合、非対象端末は、パラメータの値がactive(1)のときに、少なくともいずれかのリソースブロックの特定およびMACフレームの復号を行ってNAVを設定し、power save(2)ならば、リソースブロックの特定およびMACフレームの復号を行わないとしてもよい。または、パワーセーブとは関係なく、端末は、本実施形態に関わる動作の実行有無に関するパラメータを有し、当該パラメータの値が実行有(1)を示しており、自端末がOFDMAの対象として指定されていない場合は、少なくともいずれかのリソースブロックの特定およびMACフレームの復号を行ってNAVを設定する。一方、実行無(0)を示しており、自端末がOFDMAの対象として指定されていない場合は、リソースブロックの特定およびMACフレームの復号を行わないとしてもよい。これにより消費電力を節約できる。この際、リソースブロックの特定およびMACフレームの復号を行わなくとも、物理層の受信エラーとして扱わず、内部的にEIFS時間の起動が生じないように制御してもよい。パラメータの値は、ユーザ入力で設定可能にしてもよいし、端末のバッテリー残量に応じて切り換えてもよい。例えばバッテリー残量が閾値以下など、省電力化が必要な状態の場合は、パラメータの値を実行無(0)にしてもよい。パラメータの値の切り替えはMAC/PHY管理部60またはMAC処理部10が行ってもよい。
なお、OFDMA通信の終了(各対象端末によるBAフレームの送信完了)後にEIFS時間の起動を防止するには、各対象端末からBAフレームをOFDMA送信ではなく、それぞれ順番にレガシーフォーマット(プリアンブル1およびプリアンブル2が存在しない既存の規格のフォーマット)でBAフレームを送信する構成も考えられる。この場合、非対象端末(およびレガシー端末も)は、BAフレームを正常に受信して(NAVを設定することも期待され)、EIFS時間の起動を防止できる。ただし、この構成では、BAフレームを同時送信できないため、効率が低下する。これに対して、本実施形態では、図8のようにBAフレームをOFDMA送信した場合でも、非対象端末のEIFS時間の起動を防止できるため、効率の低下も防止できる。
上述したように、本実施形態では、OFDMAの非対象端末も、少なくとも1つのリソースブロックのデータフィールドを復号して他端末宛または基地局宛のMACフレームを取得して、Durationフィールドを解釈することで、NAVを設定する。このような復号およびNAVを行う能力を有するか否かをCapabilityとして、本実施形態に係るOFDMA対応端末は基地局に通知してもよい。通知は、例えばアソシエーションプロセス時にアソシエーション要求フレーム等で行ってもよいし、アソシエーション後の任意のタイミングで、管理フレーム等による通知で行ってもよい。基地局は、通知されたCapabilityに基づきOFDMA通信の実行を制御してもよい。例えば、自局に接続している端末のうち、上記の能力を有する端末の台数の割合が閾値以下である場合は、OFDMA通信の実施をしない、または制限するなどの判断を行っても良い。あるいは、当該割合が閾値より大きい場合のみOFDMA通信を実行するなどの判断を行っても良い。ここで述べた以外の判断および制御を行ってもよい。
本実施形態では、受信した物理パケットにおいて、上述したように特定したリソースブロックのデータフィールドを復号してMACフレーム(自端末宛でないMACフレーム)を取得し、Durationフィールドに設定された値にしたがってNAVを設定する。これにより、EIFS時間の起動を阻止し、OFDMA通信後には、アクセス権の獲得の機会を、OFDAMの対象端末および基地局と同様の条件にできる。
上述したシーケンスでは基地局からOFDMA送信した各リソースブロックのデータフィールド長(MACフレーム長)は同じであった(各端末で送信するデータ長が異なる場合は、パディングデータで調整した)。別の例として、図9に示すように、各リソースブロックのデータフィールド長(PSDU長)が異なる場合も本実施形態は対応可能であり、この場合の方法の例を以下に3つ示す。
第1の方法として、各端末に対するNAVの終了が同じ時刻になるように、各NAVの値(Durationフィールドの値)を調整し、設定する。この場合、各リソースブロックのPSDU長(あるいはMPDU長)が異なれば、各MACフレームのDurationフィールド等に設定する値もそれに応じて異なることになる。これによりNAVの終了を一致させ、例えば各NAVの末尾を、アップリンクOFDMA送信される物理パケットの末尾に一致させることができる。これによっても図8のシーケンスと同様の効果を得ることができる。なお、OFDMAの対象端末は、異なるタイミングでMACフレームの受信が完了するが、キャリアセンスをチャネル幅で行ってアイドルとなった時点からSIFS時間を計測するか、あるいは、最も遅く受信が完了するMACフレームの末尾(より詳細には物理パケットの末尾)を任意の方法(例えば以下の第2の方法など)で算出し、その時点からSIFS時間を計測することで、各対象端末のアップリンク送信のタイミングを一致させることができる。
第2の方法として、ダウンリンクOFDMA送信する物理パケットの長さ(複数端末宛のPSDUをまとめて1つとして見たときに最も長いPSDUの末尾までの長さ)を算出するための情報を物理ヘッダのL−SIGフィールドまたは別のフィールドに設定する。非対象端末では、当該フィールドの情報から物理パケットの長さ(占有時間)を算出し、その占有時間後からNAVを設定する。物理パケットの長さ(占有時間)は、図9の例では、T2−T1の長さである。各MACフレームのDurationフィールドには共通のNAVの値を設定し、この際、NAVの末尾が、アップリンクOFDMA送信される各BAフレーム(より詳細には物理パケット)の末尾の時刻(図9のT3)に一致させるようにする。なお、OFDMAの対象端末は、上記の第1の方法と同様にして、アップリンク送信の際のタイミングを一致させることができる。ここで、物理パケットの長さ(占有時間)を算出するための情報の設定例として、L−SIGフィールドのRateフィールドおよびLengthフィールド(IEEE802.11規格で定義されている)を利用してもよい。例えば基地局は、複数端末宛の複数のPSDU(MACフレーム等)に基づいて物理パケット長(占有時間)、すなわち、当該物理パケットを実際のレートで受信した際に要する時間長(例えば72Mbps)を算出する。基地局は、Rateフィールド(レートフィールド)およびLengthフィールド(レングスフィールド)の値から、この物理パケット長が算出できるように、RateフィールドおよびLengthフィールドの値を決定する。例えばRateフィールドには、6Mbpsを表す値を設定する。Lengthフィールドには、6Mbpsで物理パケットを受信した場合に、上記で算出した物理パケット長に一致するようなデータ長(オクテット数でもよいし、その他の単位でもよい)を設定する。(なお、実際の受信のレートは、6Mbpsより高いため、Lengthフィールドの値は、実際のパケット長よりも短い値になると考えられる。実際のレートは、例えばプリアンブル2から特定する)。非対象端末は、L−SIGフィールドのRateフィールドとLengthフィールドの値から物理パケットの占有時間(PPDUの占有時間)を算出し、算出した占有時間の後から、いずれか1つのMACフレームから読み込んだDurationフィールドの値(各MACフレームのNAVの値は上述したように共通である)に従ってNAVを設定する。どのリソースブロックを復号しても、NAVの終わる時刻は同じになる。なお、Rateフィールドに設定する値は6Mbpsに限定されず、他の値でもよい。
第3の方法として、基地局がダウンリンクOFDMAを開始する前に、端末がダウンリンク送信用の物理パケット(PPDU)の終了時刻(つまりパケット長)として、常に最大時間長(T2−T1の長さ)を通知する場合を想定する。この場合、基地局はダウンリンク送信する各MACフレームに全て同じ値のNAVを設定する。これは、端末が、自端末用のリソースブロックするのではなく、PPDU全体を受信する構成を有する場合を想定している。つまり、端末は、自端末用のリソースブロックについてのみPSDUの末尾を判断するのではなく、PPDU全体として(つまりすべてのリソースブロックの個々について)受信処理を行う。この場合、最も長いPSDUの末尾を判断する。非対象端末がダウンリンク送信される物理パケットを受信した場合も、PPDU全体の受信処理を行い、PPDUの末尾(最も長いPSDUの末尾)を判断し、そこから、NAVを設定する。NAVの長さは、任意のリソースブロックのMACフレームのDurationフィールドから取得すればよい。
上述した第1〜第3の方法では、各対象端末から送信するBAフレームの長さは同じであるとしたが、BAフレームの長さが異なる場合(後述する図13参照)は、それに応じて適宜、NAVを調整してもよい。例えば最もBAフレームの送信完了が遅いBAフレームの末尾に各NAVの末尾が一致するように、第1〜第3の方法の枠組みの範囲で、各NAVの値を決定してもよい。また、後述する図16または図18で説明するように、基地局が、ダウンリンクOFDMA送信の後、BARフレームを送信し、その応答として、対象端末にアップリンクOFDMAでBAフレームを送信させてもよい。また、上述した図8および図9のシーケンスでは、基地局からのダウンリンクOFDMA送信と、対象端末からのアップリンクOFDMA送信との1回のフレーム交換(送受信)であったが、以降も継続して、同様のフレーム交換が1回または複数回、行われてもよい。この場合も、非対象端末は、上述と同様にしてダウンリンクされる他端末宛の物理パケットおよびアップリンクされる基地局宛の物理パケットを復号(EIFSの起動条件を成立させないように動作)すればよい。また、送受信するフレームの種類も、データフレームとBAフレームとの組み合わせに限定されない。
図10に、本実施形態に係る基地局の動作の一例のフローチャートを示す。基地局は、OFDMAの対象となる複数の端末を決定し、端末毎にNAVに関する期間の長さを決定する(S11)。具体的に、複数の端末に送信する複数のMACフレームのそれぞれの長さと、各端末から応答されるBAフレーム長(より詳細にはBAフレームを含む物理パケット長)から、各NAVの期間の末尾の時刻が同じになるように、それぞれのNAVの期間の長さを決定する。この際、例えば、NAVの期間の末尾の時刻は、各端末から応答されるBAフレームの末尾(各BAフレームの末尾が異なるときは、受信が最も遅いBAフレームの末尾)に合わせる。複数の端末に送信する複数のMACフレームのそれぞれの長さが異なるときは、短いMACフレームの末尾にパディングデータを付加して長さが同じになるように調整してもよい。基地局は、決定したNAVの期間の長さに関する値をそれぞれのDurationフィールドに設定したMACフレームを端末毎に生成する(S12)。基地局は、これらのMACフレームをそれぞれデータフィールドに格納するとともに、物理ヘッダを付加して物理パケットを生成する(同S12)。物理ヘッダは、レガシーフィールドと、複数の端末を特定するための情報(個々の端末の識別子、またはグループID、またはこれらの両方等)を含むプリアンブル1と、MACフレームが格納されているデータフィールドを復号するための情報を含む端末毎のプリアンブル2とを含む。
基地局は、物理パケットのレガシーフィールドとプリアンブル1をチャネル幅の帯域で送信し、続いてプリアンブル2およびデータフィールド(MACフレーム)をOFDMAで送信する(S13)。
基地局は、複数のMACフレームの送信からSIFS時間後に、MACフレームの受信の成否に関する情報を含む送達確認応答フレーム(BAフレーム)を含む物理パケットを、複数の端末からOFDMAで受信する(S14)。
図11は、本実施形態に係る端末(OFDM対応端末)が基地局からOFDMA送信された物理パケットを受信した場合の動作のフローチャートである。
物理パケットを受信した端末は、レガシーフィールドおよびプリアンブル1を復号し、自端末がOFDMAの対象端末として指定されているかを判断する(S101、S102)。プリアンブル1に自端末を特定するための情報、または自端末が属するグループのグループIDが設定されている場合は、指定されていると判断する。
端末は、自端末がOFDMAの対象として指定されていない場合は、複数のリソースブロックのうち少なくとも1つのリソースブロックを特定し、特定したリソースブロックのプリアンブル2とMACフレームを復号する(S103)。MACフレームのヘッダのDurationフィールドに設定されている値に基づき、物理パケットの受信完了(より詳細には特定したリソースブロックでのMACフレームの受信完了)からNAVを設定する(S104)。NAVの期間が経過した後、媒体上のアクセス権を獲得する場合は、バックオフ前の一定時間のキャリアセンスとして、通常の時間(DIFS/AIFS[AC]時間)を起動し、その間、キャリアセンスし、さらに引き続き、ランダムに決定したバックオフ時間の間キャリアセンスを行う。NAVの期間中に、アップリンク送信される物理パケット(送達確認応答フレームを含む物理パケット)を受信した場合、当該物理パケットを復号し、物理パケットに含まれるMACフレームのヘッダのDurationフィールドに基づきNAVを更新する。アップリンク送信される物理パケットは、複数の他の端末からアップリンクOFDMAされる複数の物理パケットでもよいし、他の端末がそれぞれ異なるタイミングで個別に送信(シングルユーザ送信)する物理パケットでもよい。
一方、端末は、自端末がOFDMAの対象として指定されている場合は、自端末用のリソースブロックを特定し、当該リソースブロックのデータフィールドを復号して、MACフレームを取得する(S105)。MACフレームのヘッダを解析し、解析結果に応じた動作を行う。MACフレームがデータフレーム(アグリゲーションフレームの場合も含む)であれば、例えばMACフレームの受信完了からSIFS時間後に、当該リソースブロックで送達確認応答フレーム(より詳細には送達確認応答を含む物理パケット)を送信する(S106)。この際、他にOFDMAの対象として指定された端末からも同時に送達確認応答フレームを含む物理パケットが送信されてもよい。この場合、アップリンクのOFDMAで複数の送達確認応答フレームの送信が行われる。
本実施形態ではOFDMAの非対象端末は複数のリソースブロックのうちの少なくとも1つのリソースブロックのデータフィールドを復号した。ここで2つ以上のリソースブロックのデータフィールドが復号可能な場合、すなわち2つ以上のリソースブロックのプリアンブル2に変調符号化方式に自端末が対応している場合は、所定の条件を満たす変調符号化方式のリソースブロックを選択してもよい。例えば、もっともロバストな変調符号化方式のリソースブロックを選択してもよい。もっともロバストな変調符号化方式とは、例えば伝送レートが最も低い変調符号化方式でもよいし、符号化率が最も低い変調符号化方式でもよい。他の条件として、一定の伝送レート以下または一定の符号化率以下の変調符号化方式のリソースブロックを選択してもよい。これらによりフレームのFCSでエラーが検出される可能性を低くし、よって正しく復号が行われる可能性が高くなる。
また、プリアンブル1に自端末が属するグループのグループIDが設定されている場合でも、自端末用のリソースブロックから取得したMACフレームを解析した結果、当該MACフレームが自端末宛でない場合もあり得る(RAが自端末のアドレスでないなど)。この場合も、当該取得したMACフレームのDurationフィールドに記載された値に基づいてNAVを設定すればよい。これにより正常な復号動作が行われ、EIFSの起動条件は成立しない。
また、上述した実施形態ではDurationフィールドの値に基づいてNAVを設定したが、NAVを設定する期間の長さの値を、物理ヘッダのプリアンブル1または複数のプリアンブル2またはこれらの両方に設定してもよい。この際、MACフレーム毎に、NAVの期間の末尾が同じ時刻になるように、NAVの期間の長さの値を決定してもよい。端末は、プリアンブル1および複数のプリアンブル2のうちの1つから当該値を抽出し、当該値に示される期間の間、該当するリソースブロックにおけるデータフィールドまたはMACフレームの末尾の時刻の後からNAVを設定すればよい。
以上、本実施形態によれば、OFDMAの対象として指定されていない端末(非対象端末)が基地局からOFDMA送信される物理パケット群を受信した場合に、複数のリソースブロックのうちの少なくとも1つのリソースブロックのMACフレーム(他端末宛のMACフレーム)を復号して、そのヘッダのDurationフィールドに設定された媒体予約時間に基づきNAVを設定する。これにより、他端末宛のMACフレームを正常に受信した場合と同様の復号動作が行われる。よって、非対象端末におけるPLCPの受信プロセスでのエラー、およびMACフレームの検査エラー(FCSエラー)の発生を防止して、その後のアクセス権獲得の際に行うキャリアセンスの際に、EIFS時間が起動されることを防止できる。
(第2の実施形態)
第1の実施形態では、OFDMAの非対象端末と、対象端末および基地局との間でアクセス権の獲得の機会の公平性を維持する形態を主に示したが、本実施形態では、OFDMAの非対象端末に加え、レガシー端末に対しても、アクセス権の獲得の機会の公平性を維持可能にする形態を示す。
図12に、第2の実施形態に係る動作シーケンスの第1の例を示す。第1の実施形態における図8の動作シーケンス例との差分を中心に説明する。第1の実施形態と同様、端末1〜6がOFDMA対応端末、これらのうち端末1〜4がOFDMAの対象端末、端末5、6がOFDMAの非対象端末とする。また、端末7、8はレガシー端末とする。
第1の実施形態と同様、基地局101が、チャネル内のリソースブロック1〜4を用いて、端末1〜4に同時に、端末1〜4宛のMACフレームを含む物理パケットを送信(ダウンリンクOFDMA送信)する。端末1〜4は、物理パケットの受信完了からSIFS時間後に、それぞれリソースブロック1〜4を用いて送達確認応答フレームを含む物理パケットを同時に送信(アップリンクOFDMA送信)する。より詳細には、レガシーフィールドおよびプリアンブル1はチャネル幅帯域で送信し、プリアンブル2およびデータフィールド(送達確認応答フレーム)は、リソースブロックで送信する。第1の実施形態の図8の動作シーケンスでは、OFDMAの非対象端末である端末5、6は、基地局からのダウンリンクOFDMA送信の際、レガシーフィールドおよびプリアンブル1の復号と、少なくとも1つの選択したリソースブロックにおける、プリアンブル2とMACフレームとを復号しMACフレームのヘッダのDurationフィールドに記載されている値に基づき、NAVを設定したが、本シーケンスではそのような動作は行わなくてよい。このため、端末5、6は、ダウンリンクOFDMA送信の終了時、アップリンクOFDMA送信の終了時またはこれらの両方の後にアクセス権を獲得しようとする場合は、EIFS時間を起動する(図12の下の「EIFS起動1」、「EIFS起動2」を参照)。レガシー端末である端末7、8も、同様の場合には、EIFS時間を起動する。ただし、端末5、6が第1の実施形態と同様に動作を行ってNAVを設定してもかまわない。
基地局101は、端末1〜4からアップリンクOFDMA送信されるBAフレームの受信完了からSIFS時間後に、CF−Endフレームを送信する。CF−Endフレームは、CFP(Contention Free Period)の終了をアナウンスするためのフレームである。つまり、無線媒体へのアクセスを許可するフレームである。本実施形態ではCFPの開始を行っていない状況でも、CF−Endフレームを送信する。CF−EndフレームのRAフィールドには、通常、ブロードキャストアドレスが設定される。図12の「bc」は、CF−Endフレームの宛先アドレスが、ブロードキャストアドレスであることを意味する。ただし、CF−Endフレームの宛先アドレスを、マルチキャストアドレスまたは複数のユニキャストアドレスとすることを許容してもよい。CF−EndフレームのヘッダのDurationフィールドには、媒体予約時間として0が設定されている。
CF−Endフレームを含む物理パケットのヘッダは、レガシーフィールドを含み、プリアンブル1およびプリアンブル2は含まない構成とする。CF−Endフレームを含む物理パケットは、1チャネル幅帯域で送信され、物理パケットは、端末1〜8によって正常に受信される。これにより端末5〜8におけるEIFS起動は解消される。端末1〜8は、CF−Endフレームの受信完了後から媒体へのアクセスが許容され、アクセス権を獲得しようとする場合は、通常のDIFS/AIFS[AC]時間を起動する(図12の下の「EIFS起動の解消」を参照)。
CF−Endフレームの送信は、一例であり、受信した端末に無線媒体へのアクセスを許可する機能を有するフレームであれば、他のフレームをレガシーフォーマットの物理パケットで送信してもよい。この際フレームには、Durationフィールド等に、無線媒体へのアクセスの抑制を指示する期間の長さに関する値を設定してもよい。当該期間の長さは、0を設定してもよいし、0より大きい値を設定してもよい。このようなフレームを送信した場合も、各端末は当該フレームを含む物理パケットを正常に受信するためEIFS時間の起動は阻止される。また上記期間の長さを0に設定することで、各端末は当該フレームの終了時刻経過時から媒体アクセスのための動作を開始することができる。0より大きい値を設定した場合は、当該フレームの受信完了から当該値が示す時間が経過した後に、端末1〜8は、媒体アクセスのための動作を開始することができる。
このように、CF−Endフレームまたは同様の機能を有するフレームによって、OFDMAの非対象端末5、6およびレガシー端末7、8によるEIFS時間の起動は阻止される。よって、端末1〜8および基地局のすべて間で、アクセス権を獲得する機会の公平性を維持できる。なお、前述したように、ダウンリンクOFDMA送信の終了時、またはアップリンクOFDMA送信の終了時またはこれらの両方の後では、端末5〜8はEIFS時間を起動し得るが、いずれにしても、これらの時点ではSIFS間隔で他の通信が継続しているため、そもそもアクセス権を獲得できず、不公平の問題は生じないと言える。
図13に、第2の実施形態に係る動作シーケンスの第2の例を示す。図12の動作シーケンス例との差分を中心に説明する。
図12の動作シーケンス例と異なり、端末1〜4からアップリンクOFDMA送信されるMACフレーム(ここではBAフレーム)長が異なっている。端末2、4が送信するMACフレーム長は、端末1、3よりも短くなっている。物理ヘッダ長は固定であるとする。これは、MACフレーム自体のサイズが各端末で同じでも、適用される伝送レートまたは変調符号化方式(MCS)によって、フレーム時間長(すなわちフレームの送信に要する時間)が異なるためである。端末1〜4からアップリンク送信するBAフレームの伝送レートまたはMCSを決定する方法として、基地局から端末に送信されたMACフレームの伝送レートまたはMCSに応じて、応答するフレーム(BAフレーム)の伝送レートまたはMCSを決定することがある。例えば自端末がサポートする伝送レートのうち、基地局から受信したMACフレームの伝送レート以下の伝送レートのうち、最大の伝送レートで応答する。このような場合、基地局から端末1〜4に送信するMACフレームの伝送レートまたはMCSに応じて、応答となるフレームの伝送レートまたはMCSも端末毎に異なることも起こり、結果として、アップリンクのMACフレーム時間長も端末毎に異なる。
このような場合、基地局101は、端末1〜4から受信した物理パケットのパケット長を比較し、最も大きい物理パケットの受信完了からSIFS時間後に、CF−Endフレームを送信する。PHYヘッダ長が固定の場合は、基地局101は、端末1〜4から受信した物理パケットに含まれるMACフレームのフレーム長を比較し、最も大きいMACフレームの受信完了からSIFS時間後に、CF−Endフレームを送信してもよい。物理パケットのパケット長またはMACフレーム長またはこれらの両方を端末1〜4がPHYヘッダ(レガシーフィールド)または他のフィールドに設定し、基地局101がそこに設定された値を読み取って比較することで、物理パケット長の最長値またはMACフレーム長の最長値またはこれらの両方を特定してもよい。
図13のシーケンス例では、ダウンリンクOFDMA送信とそれに対する応答であるアップリンクOFDMA送信を一回のみ行い、その後CF−Endフレームを送信しているが、CF−Endフレームの送信前に、同様のシーケンスを繰り返し行っても良い。この際も、基地局101は、アップリンクOFDMA送信された物理パケットの受信後にSIFS時間を計測する際の開始タイミングは、上記と同様に、パケット長が最長値の物理パケットの受信完了のタイミングとすればよい。当該シーケンスの繰り返しが終了する場合は、上記と同様にして決定したタイミングで、CF−Endフレームを送信すればよい。
なお、図13のシーケンス例において、基地局がOFDMA送信する物理パケットにおけるMACフレームのヘッダ内のQoSコントロールフィールドのAckポリシーサブフィールドの値は、「Nomal Ack」を示す値に設定しておく。これによりデータフレーム(アグリゲーションフレーム)を受信した端末1〜4は、基地局からBA要求(Block Ack Request)フレームを受信せずとも、当該データフレームの受信からSIFS時間後に、BAフレームを返すように動作する。この場合のAckポリシーは、特に“Implict Block Ack Request”と呼ばれている。
図14に、図13に示した動作シーケンス例に対応する基地局の動作のフローチャートを示す。基地局は、OFDMAの対象となる複数の端末を決定し、複数の端末に送信するための複数のMACフレームを生成する(S201)。基地局は、これらをそれぞれデータフィールドに格納するとともに、物理ヘッダを付加して物理パケットを生成する(同S201)。物理ヘッダは、レガシーフィールドと、複数の端末を特定するための情報を含むプリアンブル1と、MACフレームが格納されたデータフィールドを復号するための情報を含む端末毎のプリアンブル2とを含む。
基地局は、物理パケットのレガシーフィールドとプリアンブル1をチャネル幅の帯域で送信し、続いてプリアンブル2およびデータフィールド(MACフレーム)をOFDMAで送信する(S202)。
基地局は、複数のMACフレームの送信からSIFS時間後に、MACフレームの受信の成否に関する情報を含む送達確認応答フレームを含む物理パケットを、複数の端末からOFDMA受信する(S203)。
当該物理パケットのうち最も受信が遅く完了する物理パケットの受信完了からSIFS時間後に、送達確認応答の送信を要求しないフレームの一例であるCF−Endフレームを含む物理パケットを送信する(S204)。
前述したように、アップリンクOFDMA送信の際に、送信先の端末ごとに変調符号化方式(MCS)または伝送レートが異なる場合など、応答となる送達確認応答フレームまたはそれを含む物理パケットの長さ(時間長)が異なる場合がある。そのため、図13のシーケンス例では、基地局は端末毎の物理パケットのうちパケット長が最長の物理パケットを特定し、当該物理パケットの末尾を、CF−Endフレームの送信の前のSIFS時間の起点とした。
ここでは、第2の実施形態に係る動作シーケンスの第3の例として、各端末が送信する物理パケット長が等しくなるように、基地局がOFDMA送信する物理パケットで、応答の際に適用するMCSまたは伝送レートの情報を通知する。例えば、基地局は、プリアンブル1またはプリアンブル2またはレガシーフィールドに、応答の際に適用するMCSまたは伝送レートを指示する情報を設定する。または物理ヘッダにおいてリソースブロック毎に新たなフィールドを定義し、当該新たなフィールドにMCSまたは伝送レートの情報を設定してもよい。または、各MACフレームのヘッダの任意のフィールドの予約領域、またはMACフレームのヘッダに新たに定義したフィールドに、応答の際に適用するMCSまたは伝送レートの情報を設定してもよい。もちろん、ここで述べた以外の方法で、応答の際に適用するMCSまたは伝送レートの情報を指定してもよい。送達確認応答フレーム(BAフレームまたはACKフレームなど)のサイズが固定であれば、各端末に同一のMCSまたは伝送レートを指定することにより、応答フレーム(BAフレーム)またはそれを含む物理パケットの長さを同じにできる。したがって、基地局は、端末毎に受信した物理パケットからパケット長が最長の物理パケットを特定する処理を行う必要はない。
ここで、各端末に応答の際に使用するMACまたは伝送レートの情報を明示的に指定するのではなく、端末1〜4がBAフレームの送信に適用する伝送レートを暗に指定できる伝送レートで、基地局が各端末にMACフレームをダウンリンクOFDMA送信してもよい。すなわち、ダウンリンクOFDMA送信するMACフレームの伝送レートまたはMCSを制御することで、各端末から返信される応答フレーム(BAフレーム)の時間長を制御できる。上述したように、各端末は、基地局かOFDMA送信された自端末宛のMACフレームの伝送レートまたはMCSに応じて、応答フレーム(BAフレーム)の伝送レートまたはMCSを決定することがある。例えば自端末がサポートする伝送レートのうち、基地局から送信されたMACフレームの伝送レート以下の伝送レートのうち、最大の伝送レートで応答する。このルールの場合、基地局は、各端末から返信される応答フレームに適用される伝送レートが同じになるように、ダウンリンクOFDMA送信する各端末のMACフレームの伝送レートまたはMCSを決定する。
具体例として、基地局がサポートレート(Supported Rate)として定義して、各端末に通知しているレートを、仮にレート1〜10とする。レート1、2、3、・・・10の順に高くなっていき、レート1が最も低く、レート10が最も高いとする。端末1が、レート1〜10のうち、(レート1、レート4、レート7)、端末2が(レート1、レート4、レート8)、端末3が(レート1、レート4、レート9)、端末4が(レート1、レート4、レート8)をサポートしているとする。このとき、基地局が、各端末が共通にサポートしているレートを1つ特定し、特定したレート(共通レートと呼ぶ)以上でかつ、当該共通レートより大きいレートのうち最小のレートを端末ごとに特定する。そして、共通レート以上で当該最小のレート未満のレートを端末ごとに決定し、決定したレートを、端末に送信するMACフレームに適用する。
例えば、共通レートとしてレート4を特定する。端末1は、レート4より大きいレートのうち最小のレートはレート7である。よって基地局はレート4以上で、レート7未満のレート、すなわちレート4〜6から伝送レートを決定する。同様にして、基地局は、端末2に対しては、レート4〜7の中から伝送レートを決定し、端末3に対しては、レート4〜8の中から伝送レートを決定し、端末4に対しては、レート4〜7の中から伝送レートを決定する。このように決定した伝送レートを、各端末に送信するMACフレームに適用する。これにより、各端末の応答フレームの伝送レートをレート4に統一できる。基地局からダウンリンクOFDMA送信を早期に完了させる場合には、端末ごとに、それぞれの候補レートの中で、最も高い伝送レートを決定してもよい。
ここで、基地局は、各端末に送信するMACフレーム長を同一にするため(PHYヘッダ長は同じであるとする)、各端末に対して決定した伝送レートを考慮して、送信するMACフレームのサイズ(データフィールドのサイズ)を決定してもよい。変形例として、各端末で送信するMACフレームのサイズは同じとしつつ、伝送レートが異なることによるMACフレーム長(時間長)の差分は、最長のMACフレーム長より短いMACフレームについては最後にパディングデータを送信することで調整してもよい。これにより各端末への送信完了タイミングを揃えることができ、応答フレーム(BAフレーム)の送信開始タイミングも揃えることができる。
なお、基地局がサポートレートを明示的に定義していない場合もあり得る。その場合は、各端末が伝送レートを上記と同様のルールで選択して応答すると想定して、基地局が物理層に応じてサポートすることが必須になっているレートセットから、各端末に送信するMACフレーム(アグリゲーションフレーム)に適用する伝送レートまたはMCSを決定すればよい。
なお、物理パケットの物理ヘッダに適用される伝送レートまたはMCSは固定であることを前提としたが、各端末が物理ヘッダに異なる伝送レートまたはMCSを適用しうる状況を考慮する場合は以下のようにする。例えば、物理ヘッダに共通に適用する伝送レートまたはMCSの情報を、基地局が送信する物理パケットのPHYヘッダのプリアンブル1、プリアンブル2、レガシーフィールド、またはこれらのうちの任意の複数のフィールドに設定する。物理ヘッダ内の各フィールドのうち一部のフィールドの伝送レートまたはMCSが固定である場合は、残りのフィールドに対して決定すればよい。例えばリソースブロックごとに存在するプリアンブル2の伝送レートまたはMCSが事前に共通に定められている場合は、共通プリアンブル(プリアンブル1とレガシーフィールド)に対して伝送レートまたはMCSを各端末に対して同じ値に指定してもよい。
(第3の実施形態)
第2の実施形態の図12または図13に示したシーケンスでは、ダウンリンクOFDMA送信するMACフレーム長(より詳細にはプリアンブル2とMACフレームとの合計長)が同じであったため、各端末(端末1〜4)は、自端末用のリソースブロックの受信完了からSIFS時間後に応答の物理パケットを送信すれば、各端末の送信開始タイミングを同期させことができた。しかしながら、ダウンリンクOFDMA送信するMACフレーム長が異なる場合、この方法であると、端末ごとに応答の送信タイミングがずれる問題が生じ得る。送信タイミングがずれると、ずれ幅の大きさによっては基地局で各端末からチャネル幅帯域で受信する共通プリアンブル(レガシーフィールドおよびプリアンブル1)を正常に復号できなくなる可能性がある。そこで、本実施形態では、このような場合にも、各端末から送信する応答の物理パケットの送信タイミングを同期させつつ、アクセス権の獲得の機会の公平性を保つ。
図15に、第3の実施形態に係る動作シーケンスの第1の例を示す。第2の実施形態における図12の動作シーケンス例との差分を中心に説明する。
第2の実施形態における図12のシーケンスと同様、基地局101が、チャネル内のリソースブロック1〜4を用いて、端末1〜4宛のMACフレームを含む物理パケットを送信(ダウンリンクOFDMA送信)する。ただし、端末1〜4のMACフレームの長さ(時間長)は同じではない。図の例では、端末1と3が送信するMACフレーム長は同じであるが、端末4のMACフレーム長はこれらより短く、端末2のMACフレーム長はさらに短い。端末1〜4宛のMACフレームのヘッダにおけるQoSコントロールフィールドのAckポリシーフィールドは「Block Ack」を示す値を設定する。これにより、端末1〜4は物理パケットを受信しても、SIFS時間後に送達確認応答フレーム(BAフレーム)を返さないように動作する。
基地局は、端末1〜4に送信した物理パケットにおいて最も長いMACフレームの送信完了タイミングを特定し、そこからSIFS時間後にBAR(Block Ack Request)フレームを、チャネル幅帯域(例えば20MHz幅帯域)で送信する。BARフレームの物理ヘッダはレガシーフィールドを含み、プリアンブル1、2は含まない。BARフレームのRAは、端末1〜4が属するグループのマルチキャストアドレスである。図の「mc」は、BARフレームのRAがマルチキャストアドレスであることを意味している。マルチキャストアドレスではなく、ブロードキャストアドレスを設定することも考えられる。BARフレームは、OFDMAの非対象端末である端末5、6、およびレガシー端末である端末7、8も正常に受信できる。よって端末5〜8は、BARフレームを正常に受信することで、EIFS時間の起動は解消される(図15の「EIFS起動の解消1」参照)。
端末1〜4は、基地局からダウンリンクOFDMA送信されるBARフレームを含む物理パケットを受信すると、BARフレームのRAが、自端末が属するグループのマルチキャストアドレスであるから、SIFS時間経過後にそれぞれBAフレームを含む物理パケットを送信する。なおBARフレームは制御フレームであり、MACヘッダのタイプおよびサブタイプは、それぞれ「制御」および「BAR」を示す値に設定される。BAフレームの送信およびそれ以降のシーケンスは、図12と同様である。なお、BARフレームのRAをブロードキャストアドレスに設定する場合、直前のダウンリンクOFDMA送信でMACフレームを受信した端末が、BARフレームの対象になるとのルールにすればよい。
このように図15のシーケンス例では、基地局がダウンリンクOFDMA送信した物理パケットのうち最もパケット長の長い(時間長が長い)MACフレームの送信完了からSIFS時間後にBARフレームを含む物理パケットを送信する。これにより、各端末が送信するBAフレームの送信タイミングを同期させることができる。
図16に、図15に示した第3の実施形態に係る動作シーケンスの第1の例に対応する基地局の動作のフローチャートを示す。基地局は、OFDMAの対象となる複数の端末を決定し(S301)、複数の端末に送信するための複数のMACフレームを生成する。基地局は、これらをそれぞれデータフィールドに格納するとともに、物理ヘッダを付加して物理パケットを生成する(同S301)。物理ヘッダは、レガシーフィールドと、複数の端末を特定するための情報を含むプリアンブル1と、MACフレームが格納されているデータフィールドを復号するための情報を含む端末毎のプリアンブル2とを含む。
基地局は、物理パケットのレガシーフィールドとプリアンブル1をチャネル幅の帯域で送信し、続いてプリアンブル2およびデータフィールド(MACフレーム)をOFDMAで送信する(S302)。
基地局は、MACフレームの受信の成否に関する情報を含むフレームとしてBAフレームの送信を要求するBARフレームを生成し(S303)、BARフレームを含む物理パケットを、データフィールドのうち送信完了が最も遅いデータフィールドの送信完了時刻からSIFS時間後に送信する(同S303)。
基地局は、BARフレームの送信から一定時間後に、BAフレームを含む物理パケットを、複数の端末からOFDMAで受信する(S304)。基地局は、複数の端末から物理パケットの受信からSIFS等の一定時間後に、CF−Endフレームを含む物理パケットを送信する(S305)。
なお図15のシーケンス例では、基地局がダウンリンクOFDMA送信した各MACフレームの長さは同じでなかったが、第2の実施形態における図12のシーケンス例のようにこれらのフレーム長が同じである場合も、BARフレームの送信によりBAフレームの送信タイミングを同期させることが可能である。この場合のシーケンス例を、第3の実施形態に係る動作シーケンスの第2の例として、図17に示す。図17に示されるように端末1〜4に送信される物理パケットのデータフィールド長(MACフレーム長)は同じとなっている。図17の動作の説明は、図15および図12の説明から自明であるため、省略する。またこの場合の基地局の動作も、図16のステップ304を上記の違いに応じて読み替えるのみでよい。
図18に、第3の実施形態に係る動作シーケンスの第3の例を示す。図15または図17の動作シーケンス例との差分を中心に説明する。
前述した図15および図17のシーケンス例では、OFDMAの対象端末(端末1〜4)から基地局にBAフレーム(より詳細にはBAフレームを含む物理パケット)をOFDMA送信した。図18のシーケンス例では、端末1〜4がBAフレームを含む物理パケットを、OFDMA送信するのではなく、順番にSIFS時間ずつずらして、基地局に返信させる。BAフレームを含む物理パケットはレガシーフォーマットを有し(プリアンブル1、2等を有さない)、各端末は物理パケットを、チャネル帯域幅(例えば20MHz帯域幅)で送信する。
これを実現するため、基地局は、ダウンリンクOFDMA送信完了からSIFS時間後に送信するBARフレームに、OFDMAの対象端末にBAフレームを返信させるタイミングを特定するための情報と、BAフレームの送信に適用するMCS(または伝送レート)とを特定する情報とを含める。このために、既存の規格のBARフレームを拡張してもよい。このために、例えば既存のBARフレームのフォーマットのボディフィールド内、例えば、BAR Informationフィールド(BARフレームで要求する最初のMACフレームのシーケンス番号などを設定するフィールド)の後または前またはその他の箇所に、BAフレームの送信タイミングを特定するためのフィールド(送信タイミングフィールドと呼ぶ)と、BAフレームに適用するMCS(または伝送レート)を特定するためのフィールド(伝送レートフィールドと呼ぶ)とを追加してもよい。あるいは、これらのフィールドをBARフレームのヘッダ内に追加してもよい。非対象端末が、レガシーフォーマットを有する、BARフレームを含む物理パケットを受信することで、EIFS時間の起動問題は解消される。それ以降は、非対象端末は、各端末から順番に送信されるBAフレームを含む物理パケットも正常に受信でき(BAフレームを含む物理パケットはレガシーフォーマットを有するため、正常に受信される)、EIFS時間の起動問題は発生しない。よってBAフレームを最後に送信する端末からBAフレームが送信された後、無線媒体へのアクセス権を獲得しようとする際、端末間でアクセス権の獲得の機会の公平性は保持される。
送信タイミングフィールドと伝送レートフィールドとをBARフレームのボディフィールドに追加する以外の方法として、基地局がダウンリンクOFDMA送信する物理パケットのプリアンブル1にこれらのフィールドを追加してもよいし、ソースブロック毎のプリアンブル2に追加してもよい。または、これらのフィールドを、ダウンリンクOFDMA送信する物理パケット内の各MACフレームのヘッダまたはボディフィールドに追加してもよい。ここで述べた方法以外で、送信タイミングを特定するための情報、およびMCS(または)伝送レートを特定するための情報を通知してもよい。
上述したように、端末1〜4に指定する送信タイミングおよび伝送レートは、端末1〜4から送信される物理パケットの間隔が、SIFS間隔ずつ開くように設定する。例えば図18のように、端末1、端末2、端末3および端末4の順番で、BAフレームを含む物理パケットを送信させる場合、端末1には、BARフレームの送信完了からSIFS時間後のタイミングを指定する。端末2には、BARフレームの送信完了からSIFS時間と端末1のBAフレーム時間長(より正確にはBAフレームを含む物理パケットの時間長)とSIFS時間とを合計した時間後のタイミングを指定する(すなわち2×SIFS時間+端末1のBAフレーム時間長)。同様に端末3には、3×SIFS時間+端末1のBAフレーム時間長+端末2のBAフレーム時間長後のタイミングを指定する。端末4には、4×SIFS時間+端末1のBAフレーム時間長+端末2のBAフレーム時間長+端末3のBAフレーム時間長後のタイミングを指定する。
端末1〜3のBAフレーム時間長を算出するためには、端末1〜3がBAフレームの送信に適用する伝送レートが定まっている必要がある(BAフレームのサイズは同じであるとする)。このため、基地局は、端末1〜3に適用させる伝送レートを決定し、この伝送レートに基づきBAフレーム時間長を算出する。端末1〜3にはそれぞれ決定した伝送レートを上述した方法で指定する。なお、端末4より後にBAフレームを送信する端末は存在しないため、端末4には伝送レートの指定は必ずしも必要ではないが、ここでは端末4にも伝送レートを指定する場合を想定する。
端末1〜4は、基地局から送信されるBARフレームを含む物理パケットを受信すると、BAフレームの送信に適用する伝送レートと送信タイミングとを特定する情報を抽出する。抽出した伝送レートに従ってBAフレームを生成し、BAフレームを含む物理パケットを生成する。そして、抽出した送信タイミングに従って、物理パケットを送信する。端末1〜4から送信される物理パケットはそれぞれSIFS時間ずつずれて送信され、基地局で順番に受信される。
なお、物理パケットの物理ヘッダに適用される伝送レートまたはMCSは固定であることを前提としたが、各端末が異なる伝送レートまたはMCSを適用しうる状況を考慮する場合は以下のようにする。例えば、各端末が物理ヘッダに共通に適用する伝送レートまたはMCSの情報を、基地局が送信する物理パケットのPHYヘッダのプリアンブル1、プリアンブル2、レガシーフィールド、またはこれらのうちの任意の複数に設定する。物理ヘッダ内の各フィールドのうち一部のフィールドの伝送レートまたはMCSが固定である場合は、残りのフィールドに対して同様にして決定すればよい。例えばリソースブロックごとに存在するプリアンブル2の伝送レートまたはMCSが事前に共通に定められている場合は、共通プリアンブル(プリアンブル1とレガシーフィールド)に対して伝送レートまたはMCSを各端末に対して同じ値に指定してもよい。
上述した説明の例では、基地局は、端末1〜4に適用させる伝送レートを明示的に端末1〜4に通知したが、端末1〜4がBAフレームの送信に適用する伝送レートを暗に指定できる伝送レートで、BARフレームを送信してもよい。第2の実施形態の説明でも述べたように、各端末は、基地局かOFDMA送信された自端末宛のMACフレームの伝送レートまたはMCSに応じて、応答フレーム(BAフレーム)の伝送レートまたはMCSを決定することがある。例えば自端末がサポートするレートセットのうち、基地局から送信されたMACフレームの伝送レート以下のレートの中で、最大のレートで応答する。そこで、基地局は、各端末に送信するMACフレームに適用する伝送レートから各端末が応答に適用する伝送レートを特定できる。
なお、基地局がサポートレートを定義していない場合もあり得る。その場合は、基地局が物理層に応じてサポートすることが必須になっているレートセットから、各端末が伝送レートを上記と同様のルールで選択して応答すると想定してもよい。
各端末にBAフレームを応答させる順番は、図18の例では、端末1、端末2、端末3および端末4の順であったが、各端末に応答させる順序は、これに限定されない。基地局は、各端末の応答順序を、予め定めたルールに基づき決定してもよいし、任意に決定してもよい。例えば、割り当てられたリソースブロックの周波数が、低い順、高い順またはその他の基準に基づいた順に、各端末に応答させるとのルールに従って、各端末の応答順序を決定してもよい。周波数が高い順に応答させる場合、図18の例のように、端末1、端末2、端末3、端末4の順となり、周波数が低い順に応答させる場合、端末4、端末3、端末2、端末1の順となる。また各端末の応答の順序をアソシエーションID(AID)またはMACアドレスの大きい順、小さい順、またはその他の基準に基づいた順序に決めても良い。または、パワーセーブモードを備えている端末が存在する場合に、当該端末に優先的に応答させるようにしてもよい。
図19に、図18に示した第3の実施形態に係る動作シーケンスの第3の例に対応する基地局の動作のフローチャートを示す。基地局は、OFDMAの対象となる複数の端末を決定し、端末毎に基地局から送信するBARフレームに対する応答フレームであるBAフレームを含む物理パケットの送信タイミングを決定する(S401)。送信タイミングは、BAフレームを含む物理パケットが重複するタイミングで受信されないように決定する。一例として、物理パケットの受信間隔がSIFS時間ずつ開くように送信タイミングを決定する。基地局は、複数の端末に送信するための複数のMACフレームを生成する。基地局は、これらをそれぞれデータフィールドに格納するとともに、物理ヘッダを付加して物理パケットを生成する(S402)。物理ヘッダは、レガシーフィールドと、複数の端末を特定するための情報を含むプリアンブル1と、MACフレームが格納されたデータフィールドを復号するための情報を含む端末毎のプリアンブル2とを含む。また、プリアンブル1、プリアンブル2およびMACフレームの少なくとも1つは、端末毎に決定した送信タイミングを指定する情報を含む。
基地局は、物理パケットのレガシーフィールドとプリアンブル1をチャネル幅の帯域で送信し、続いてプリアンブル2およびデータフィールド(MACフレーム)をOFDMAで送信する(S403)。
基地局は、BAフレームの送信を要求するBARフレームを生成し(S404)、BARフレームを含む物理パケットを、データフィールドのうち送信完了が最も遅いデータフィールドの送信完了からSIFS時間後に送信する(同S404)。
基地局は、BARフレームの送信後、複数の端末からそれぞれ指定した送信タイミングで送信されるBAフレームを含む物理パケットを順次受信する(S405)。
上記のフローにおいて基地局は、各端末から受信するBARフレームの受信が重複しないように、複数の端末がBAフレームの送信に適用する変調符号化方式または伝送レートを決定してもよい。この場合、プリアンブル1、プリアンブル2およびMACフレームの少なくとも1つは、決定した変調符号化方式または伝送レートを指定する情報を含む。また、基地局は、複数の端末がBARフレームに適用されている変調符号化方式または伝送レートに応じてBAフレームに適用する変調符号化方式または伝送レートを決定するルールを採用しており、そのルールを認識している場合において、各端末から受信するBARフレームの受信が重複しないようにBARフレームに適用する変調符号化方式または伝送レートを決定してもよい。
(第4の実施形態)
第1〜第3の実施形態では、基地局から複数の端末にOFDMA送信する場合における端末間(すなわち、OFDMAの対象端末、OFDMAの非対象端末および基地局間)の媒体上のアクセス権の獲得の機会を公平に保つ仕組みを示した。一方、基地局から複数の端末にマルチユーザMIMO(Multi−User Multiple Input,Multiple Output:MU−MIMO)送信する場合も同様に、媒体上のアクセス権の獲得の機会に不公平が生じ得る。基地局から複数端末へのMU−MIMO送信を、特にダウンリンクMU−MIMO(ダウンリンクMU−MIMO)と呼ぶこともある。また、複数端末から基地局へのMU−MIMO送信を、アップリンクMU−MIMOと呼ぶこともある。本実施形態において、ダウンリンクMU−MIMOおよびアップリンクMU−MIMOのうち、少なくともダウンリンクMU−MIMO通信を実行する端末を、MU−MIMO対応端末と呼ぶ。
ダウンリンクMU−MIMO送信では、ビームフォーミングと呼ばれる技術を用いて、互いに干渉が最小もしくは小さくなるような指向性を有する電波(ビーム)を複数の端末との間で形成する。各端末と形成したビームを用いて各端末にそれぞれデータストリームを送信する。これにより、基地局から複数の端末に、同一の周波数帯域で同時送信、すなわち空間多重の送信が可能となる。第4の実施形態ではMU−MIMO通信に周波数帯域としてチャネル幅帯域(例えば20MHz幅帯域)を用いる場合を想定する。
第1〜第3の実施形態で示したアクセス権獲得の際の不公平を防止する仕組みは、基地局から複数の端末にMU−MIMO送信する場合にも同様に適用できる。これにより、MU−MIMO対応端末のうち、今回のMU−MIMO送信の対象として指定された端末(MU−MIMOの対象端末)および基地局と、今回のMU−MIMO送信の対象として指定されなかった端末(MU−MIMOの非対象端末)との間で、アクセス権の獲得の機会を公平にできる。さらにレガシー端末も含めてアクセス権の獲得の機会を公平にできる。
以下、第4の実施形態について詳細に説明する。第1〜第3の実施形態との差分を中心に説明し、第1〜第3の実施形態で説明した変形、拡張、置換、追加および例外等の各種の派生は、本実施形態についても同様に適用できるものとする。第1〜第3の実施形態の説明から自明な変形、拡張、置換、追加および例外等の例では、ここでは改めて述べない。また、本実施形態に係る基地局および端末にそれぞれ搭載される無線通信装置のブロック図は図1と同じであり、各ブロック部の機能の違いも、通信方式がOFDMAからMU−MIMOに変更されたことに伴う変更のみでよく、基本的にはOFDMAをMU−MIMO、リソースブロックをストリームと読み替えるなどすることでブロック図の説明も適用可能である。
図20を用いて、MU−MIMOの非対象端末と、MU−MIMO対象端末および基地局との間でアクセスの不公平が生じ得ることについて説明する。図20に、基地局(AP)101と、MU−MIMOの対象端末(STA)1〜4とで、MU−MIMO通信を行う場合の動作シーケンス例を示す。ただし、ここでは説明のため、端末1〜4および端末5、6は、MU−MIMO通信を行う能力を有しておりかつその能力が有効になっているものの、本実施形態の特徴に係る不公平を解消する機能は備えていないと仮定する。また図4の下には、MU−MIMOの非対象端末である端末5、6の動作例が示される。横軸は時間であり、縦軸は空間を表している。
このシーケンス例では、基地局101と端末1〜4が、1つのチャネルの20MHz幅帯域を用いて、MU−MIMO通信(ダウンリンク送信とアップリンク送信の双方)を行う。なお、基地局101は、事前に測定用のパケットまたは任意のパケットを各アンテナから各端末に送信して、各端末で推定された伝搬路情報を含むパケットを受信してもよい。これにより基地局101の複数のアンテナと、各端末の1つまたは複数のアンテナ間のダウンリンクの伝搬路情報を取得してもよい。ここで述べた以外の方法で伝搬路情報を取得してもよい。基地局101は、各端末宛のMACフレームを含む物理パケットを生成し、生成した物理パケットに基づき、端末毎のダウンリンクの伝搬路情報を用いて端末毎の1つまたは複数のストリームを生成し、端末1〜4にストリームを送信する。
本実施形態に係る物理パケットのフォーマット例は、第1〜第3の実施形態と同様に、物理ヘッダの先頭側にはレガシーフィールド(L−STF、L−LTF、L−SIG)が配置されており、その後ろに本実施形態に係るプリアンブル1およびプリアンブル2のフィールドが配置されている。物理ヘッダの後ろにデータフィールドが配置されている。プリアンブル1およびプリアンブル2は、第1〜3の実施形態と同じ名前を用いているが、それらに設定する内容は、OFDMAとMU−MIMOとの方式の違いに応じて異なる情報が設定される。OFDMA通信ではリソースブロックを端末に割り当てるが、MU−MIMOではリソースブロックがストリームに対応することになり、その違いに応じて異なる情報が設定される。
基地局が送信するMU−MIMO送信する物理パケットのプリアンブル1には、MU−MIMO対応端末が共通に理解できる情報が格納される。当該プリアンブル1に設定する情報の例としては、MU−MIMOでの送信対象となっている複数の端末(対象端末)を特定するための情報がある。複数の端末を特定するための情報は、これらの端末を個別に識別する情報でもよいし、複数の端末が共通にするグループのグループIDを設定してもよい。
また、当該プリアンブル1に設定する情報の他の例として、MU−MIMOの対象端末がそれぞれ受信するストリームを特定するための情報があり得る。例えば端末1〜4を対象端末として指定した場合に、端末1〜4に対しそれぞれが受信するストリーム数を指定する情報を設定してもよい。例えばストリーム数を指定する複数のフィールドを設け、自端末用の位置のフィールド(ユーザポジションと呼ぶこともある)で指定されたストリーム数から、自端末のストリームを特定してもよい。この場合、自端末用のフィールドの位置は、アソシエーション時またはその後の任意のタイミングで事前に通知されている。上記の例の場合は端末1〜4用のフィールドにそれぞれストリーム数として1を設定することになる。またプリアンブル1にMU−MIMO送信で使用しているストリーム合計数の情報を設定してもよい。ストリームの合計数から各端末が使用するストリームまたはストリーム数が特定可能な場合などは、この方法も可能である。
ストリームの復号では、ダウンリンクの伝搬路情報を用いて行ってもよい。MU−MIMO通信前に事前に取得した基地局とのダウンリンクの伝搬路情報を用いてもよいし、今回受信した物理パケットの物理ヘッダ部分(例えば推定用のLTFが存在する場合はそのフィールドなど)を利用して伝搬路情報を取得してもよい。後者の場合で端末に送信するストリームが複数のときは、例えば基地局側で推定用のLTF内の1つまたは複数のシンボルに、ストリーム毎に直行するパターンの符号(例えば1と0のビット列)をストリーム毎に与えて送信してもよい。この際、端末は事前に基地局から上記のフィールド位置に応じたパターンの割り当てをストリーム数分受けておく。端末は受信した信号と当該パターンとの演算から、自端末のパターンに一致する複数のストリームのLTF部分の信号を抽出して、ストリーム毎の伝搬路情報を推定してもよい。そして自端末のストリーム毎の伝搬路情報を利用して後続の該当するフィールドを分離(抽出)してもよい。なお、各端末から基地局にMU−MIMO送信するプリアンブル1には、基地局が理解できる情報が格納される。
レガシーフィールドおよびプリアンブル1とともに、チャネル幅帯域で(非MIMOで)送信する。図20ではレガシーフィールドおよびプリアンブル1が非MIMOで送信(すなわち、特定の方向に指向性を持たせないオムニ送信)されることを表現するため、それぞれ1つの矩形のブロックで記載している。L−STF、L−LTF、L−SIGおよびプリアンブル1をまとめて共通プリアンブルと呼ぶこともある。
プリアンブル2は、該当するストリームごとのMACフレームの復号に必要な情報(MCS等)が格納される。プリアンブル2は、空間多重で送信(MU−MIMO送信)される。MU−MIMOの対象端末は、自端末用のストリームに含まれるプリアンブル2(および後続のMACフレーム)を受信して、プリアンブル2を復号することで、MCS等の情報を取得し、MCS等に基づきデータフィールドを復号してMACフレームを取得する。図20ではプリアンブル2がMU−MIMO送信されることを表現するため、空間方向にストリームごとに分離された矩形でプリアンブル2を記載している。プリアンブル2を表す矩形内に記載された数字は、宛先となる端末の番号を便宜上、表している。
データフィールドにはMACフレームが格納されている。MACフレームは、空間多重で送信(MU−MIMO送信)される。MACフレームは、データフレーム、管理フレームまたは制御フレームである。またデータフレームは、単一のデータフレームのみならず、複数のデータフレームを集約したアグリゲーションフレーム(A−MPDU)でもかまわない。図20ではMACフレームがMU−MIMO送信されることを表現するため、ストリームごとに空間方向に分離された矩形でMACフレームを記載している。
端末1〜4は、基地局101から送信された物理パケットにおけるレガシーフィールド、プリアンブル1、自端末用のプリアンブル2およびデータフィールドを受信および復号し、さらに、自端末用のストリームを復号して、MACフレームを取得する。なお、第1〜第3の実施形態で説明したダウンリンクOFDMA送信と異なり、ダウンリンクMU−MIMO送信では各端末にビームフォーミングで送信が行われ、基本的に各端末には自端末用以外のストリーム(プリアンブル2、データフィールド)は受信しないと考えられる。
端末1〜4は、アグリゲーションフレーム内の各データフレームのエラー検査の結果に基づき、各データフレームの受信に成功したか否かを表すビットマップ情報を含む送達確認応答フレームを生成する。そして、端末1〜4は、基地局からの物理パケットの受信完了(MACフレーム受信完了)からSIFS時間後に、送達確認応答フレームであるBAフレーム(Block ACKフレーム)を含む物理パケットを、チャネル幅帯域で送信する。端末1〜4は、2ストリーム以上送信する場合は、BAフレームを含む物理パケットのヘッダのレガシーフィールドおよびプリアンブル1については通常に送信(オムニ送信)し、プリアンブル1より後のプリアンブル2およびMACフレームについては、予め取得した基地局に対するアップリンクの伝搬路情報(端末の複数のアンテナと、基地局の複数のアンテナとの間のアップリンクの伝搬路情報)に基づき指向性のビームを形成して、ストリーム送信してもよい。
ここでダウンリンクMU−MIMOで基地局から端末1〜4にビーム送信される物理パケットは、端末1〜4以外の端末でも受信される場合もあり得る。例えば、MU−MIMOの非対象端末(ここでは端末5、6)が、基地局との位置関係に応じて、端末1向けのビームを受信することがある。位置関係の例として、基地局と端末1との間にいる、あるいは端末1の近くにいるなどがある。このとき、関連技術では、MU−MIMOの非対象端末は、物理パケットのヘッダのプリアンブル1を復号し、その結果、自端末が指定されていないことを判断し、それ後の復号は行わず、受信エラーを検知する。この場合、非対象端末は、前述したように、次回のチャネルアクセス時のキャリアセンスでEIFS時間を起動する(図20の「EIFS起動1」参照)。複数の対象端末から基地局にMU−MIMO送信される物理パケットを受信した場合も、同様にして受信エラーを検知し、次回のチャネルアクセス時のキャリアセンスでEIFS時間を起動する(図20の「EIFS起動2」参照)。
上述した受信エラーを検知しない端末(対象端末や基地局など)では、通常通り、DIFS/AIFS[AC]時間を起動することから、非対象端末との間で不公平が生じる。
そこで、上述した不公平を解消するため、本実施形態に係るMU−MIMO対応端末は、以下の動作を行う。MU−MIMO対応端末は、基地局からMU−MIMO送信された物理パケットを受信した場合において、自端末がMU−MIMOの対象として指定されていない場合(非対象端末の場合)は、自端末で受信したストリームのデータフィールドを復号してMACフレームを取得する。MACフレームの復号のために、当該MACフレームの前に配置されているプリアンブル2に設定されたMCS等の情報を用いる。ここで、ダウンリンクMU−MIMO送信では、MU−MIMOの対象端末(端末1〜4)にビーム送信されるため、非対応端末が物理パケットのプリアンブル2以降を受信できるのは、基地局と端末1〜4との間、または端末1〜4の近くにいるなどの場合が考えられる。この場合も、受信した信号のSINRが閾値以上あるような受信環境あれば、信号を復号可能である。
データフィールドを復号してMACフレームを取得した端末は、そのヘッダのDurationフィールドに設定された値に基づき、当該MACフレームを受信完了からNAVを設定する。MACフレームのRAは、自端末のMACアドレスではないと判断することにより、NAVを設定する。非対象端末(端末5、6またはこれらの両方)がNAVを設定する場合の動作シーケンス例を、第4の実施形態に係る動作シーケンスの第1の例として図21に示す。非対象端末がNAVを設定する動作以外は、図20と同じである。非対象端末は基地局101が送信する物理パケットを受信し、ストリームにおけるMACフレームのヘッダのDurationフィールドの値に基づき、当該MACフレームの末尾からNAVを設定する。NAVの期間は、例えばアップリンクMU−MIMO送信完了までに設定される。端末5、6は、端末1〜4からアップリンクMU−MIMO送信される複数の物理パケットを受信し、これらのうちの1つを、復号する。これらの物理パケットのレガシーフィールドおよびプリアンブル1には共通の値が設定されている。これらの物理パケットのプリアンブル2の一部(またはプリアンブル1の一部でもよい)には端末1〜4の互いに直交するパターン信号が設定されている。端末5、6は、レガシーフィールドおよびプリアンブル1を復号し、さらに、予め把握しているパターン信号に基づき、該当するプリアンブル2を分離して伝搬路情報を取得する。端末5、6は、事前に端末1〜4の少なくとも1つが利用するパターン信号を把握しておき、これを用いる。例えば基地局が端末1〜6にそれぞれが使用するパターン信号を決定し、これらを含むリストを通知する際に、このリストを記憶しておけばよい。端末5、6は、取得した伝搬路情報を用いて、プリアンブル2の残り部分および後続するデータフィールドを復号し、MACフレームを取得する。そして、復号したMACフレームのヘッダ内のDurationフィールドに基づきNAVを更新する。以上の動作により、端末5、6は、端末1〜4からの基地局宛の物理パケットを受信しても、これらのうちの1つを正常に復号することで、EIFS起動の条件は成立しない。また、正常に復号したパケットに含まれるMACフレームのヘッダに基づきNAVを引き続き設定(この例ではアップリンク送信される物理パケットの末尾まで)することで、他の端末の通信を妨げることもない。NAVの期間の経過後、非対象端末5、6が媒体上のアクセス権の獲得のため、キャリアセンスを行う場合、通常通り、DIFS/AIFS[AC]時間を起動する。基地局101および端末1〜4も同様にアクセス権を獲得しようとする場合、DIFS/AIFS[AC]時間を起動する。よって、MU−MIMOの非対象端末と、対象端末および基地局との間でのアクセス権の獲得の機会の不公平は解消される。
なお、端末1〜4からアップリンクマルチユーザ送信するパケットのヘッダは、レガシーフィールド、プリアンブル1およびプリアンブル2を含んでいたが、ヘッダの構成はこれに限定されない。例えばレガシーフィールドおよびプリアンブル1を含むが、プリアンブル2を含まない構成も可能である。この場合、基地局は、例えば、直前に復号成功したダウンリンクマルチユーザ送信と同様の復号情報(MCS等)を用いて、アップリンクマルチユーザ送信されたパケットのデータフィールドを復号するようにしてもよい。基地局は、直前のダウンリンクマルチユーザ送信からある固定時間、例えばSIFS+スロット時間(SIFSとスロット時間との合計時間)以内に受信を開始しかつ受信したパケットがアップリンクマルチユーザ送信されたパケットであるとの条件が満たされる場合は、前の復号情報を保持し、その条件が満たされない、もしくは、SIFS+スロット時間を経過した場合は、前の復号情報を消去するようにしてもよい。なお、データフィールドの復号のために必要な復号情報が、レガシーフィールドまたはプリアンブル1またはこれらの両方に含まれていても良い。ヘッダがプリアンブル2を含まない場合、端末1〜4から受信するデータフィールドの分離は、予め端末1〜4ごとにサウンディングまたはその他の方法で伝搬路情報を取得しておき、この伝搬路情報を用いて行ってもよい。
なお、端末1〜4は、BAフレームをアップリンクMU−MIMO送信ではなく、それぞれ順番にレガシーフォーマット(プリアンブル1、2を含まない)で通常に送信(オムニ送信)してもよい。これによれば、非対象端末(およびレガシー端末も)は、アップリンク送信される物理パケットを正常に受信および復号して、NAVを設定するため、EIFS時間の起動を防止できる。ただし、BAフレームをアップリンクMU−MIMO送信する場合に比べて、BAフレームをすべて受信するまで多くの時間を要し、効率が低下する。なお、各端末が順番にBAフレームを送信させるには、前の実施形態で述べたように、各端末からBAフレームを含む物理パケットが、SIFS時間ずつずれて送信されるように制御することが望ましい。
なお、端末1〜4は、BAフレームをアップリンクMU−MIMO送信ではなく、それぞれ順番にレガシーフォーマット(プリアンブル1、2を含まない)で通常に送信(オムニ送信)してもよい。これによれば、非対象端末(およびレガシー端末も)は、アップリンク送信される物理パケットを正常に受信および復号して、NAVを設定するため、EIFS時間の起動を防止できる。ただし、BAフレームをアップリンクMU−MIMO送信する場合に比べて、BAフレームをすべて受信するまで多くの時間を要し、効率が低下する。なお、各端末が順番にBAフレームを送信させるには、前の実施形態で述べたように、各端末からBAフレームを含む物理パケットが、SIFS時間ずつずれて送信されるように制御することが望ましい。
図22に、第4の実施形態に係る動作シーケンスの第2の例を示す。この動作シーケンス例は、第2の実施形態の図12の動作シーケンス例に対応する。端末1〜6がMU−MIMO対応端末、これらのうち端末1〜4がMU−MIMOの対象端末、端末5、6がMU−MIMOの非対象端末とする。また、端末7、8はレガシー端末とする。
基地局101が、端末1〜4宛のMACフレームを含む物理パケットを空間多重で送信(ダウンリンクMU−MIMO送信)する。端末1〜4は、MACフレームの受信完了からSIFS時間後に、送達確認応答フレームを含む物理パケットを空間多重で送信(アップリンクMU−MIMO送信)する。端末5〜8は、その存在する位置に応じて、端末1〜4へ送信された物理パケット、または端末1〜4から基地局へ送信された物理パケットのいずれかを受信し得る。いずれかの物理パケットを受信した場合、例えば端末5、6は、プリアンブル1で自端末を特定する情報が含まれていないと判断して受信エラーを検知する。端末7、8は、プリアンブル1を解釈できないなどフォーマットエラーなどの理由で受信エラーを検知する。ダウンリンクMU−MIMO送信の終了時、またはアップリンクMU−MIMO送信の終了時またはこれらの両方の後にアクセス権を獲得しようとする場合は、EIFS時間を起動する(図22の下の「EIFS起動1」、「EIFS起動2」を参照)。
基地局101は、端末1〜4からアップリンクMU−MIMO送信されるBAフレームの受信完了からSIFS時間後に、CF−Endフレームを送信(オムニ送信)する。CF−Endフレームを含む物理パケットは、端末1〜8によって正常に受信される。よって、端末1〜8は、CF−Endフレームの受信完了後から媒体へのアクセスが許容され、アクセス権を獲得しようとする場合は、通常のDIFS/AIFS[AC]時間を起動する(図22の下の「EIFS起動の解消」を参照)。
このように、CF−Endフレームによって、端末5〜8におけるEIFS時間の起動は阻止される。よって、端末1〜8および基地局のすべて間で、アクセス権を獲得する機会の公平性を維持できる。なお、前述したようにCF−Endフレームの代わりに、送達確認応答の送信を要求しない他のフレームを送信してもよい。これは以下の説明でも同様である。
図23に、第4の実施形態に係る動作シーケンスの第3の例を示す。この動作シーケンス例は、第2の実施形態の図13の動作シーケンス例に対応する。
端末1〜4からアップリンクMU−MIMO送信されるMACフレーム(ここではBAフレーム)長が異なっている。端末2、4が送信するMACフレーム長は、端末1、3よりも短くなっている。基地局101は、端末1〜4から受信した物理パケットのパケット長が最も大きい物理パケットの受信完了からSIFS時間後に、CF−Endフレームを送信する。PHYヘッダ長が固定の場合は、MACフレームのフレーム長が最も大きいMACフレームの受信完了からSIFS時間後に、CF−Endフレームを送信してもよい。
第4の実施形態に係る動作シーケンスの第4の例として、各端末が送信する物理パケット長が等しくなるように、基地局がダウンリンクMU−MIMO送信する物理パケットで、応答の際に適用するMCSまたは伝送レートの情報を通知してもよい。これにより、基地局は、端末毎に物理パケットうち最長の物理パケットを特定する必要はなくなる。なお、前の実施形態で述べたように、各端末に応答の際に使用するMACまたは伝送レートの情報を明示的に指定するのではなく、端末1〜4がBAフレームの送信に適用する伝送レートを暗に指定できる伝送レートで、各端末にMACフレームをダウンリンクMU−MIMO送信してもよい。
図24に、第4の実施形態に係る動作シーケンスの第5の例を示す。この動作シーケンス例は、第3の実施形態における図15の動作シーケンス例に対応する。
基地局101が、端末1〜4宛のMACフレームを含む物理パケットを空間多重で送信(ダウンリンクMU−MIMO送信)する。ただし、端末1〜4に送信するMACフレーム長は同じではない。基地局は、端末1〜4に送信した物理パケットにおいて最も長いパケット長の時刻からSIFS時間後にBAR(Block Ack Request)フレームを、送信(オムニ送信)する。BARフレームはレガシーフォーマットである。BARフレームのRAは、端末1〜4が属するグループのマルチキャストアドレスである。マルチキャストアドレスではなく、ブロードキャストアドレスを設定することも考えられる。BARフレームは、端末1〜4に正常に受信されるのみならず、端末5〜8でも正常に受信される。よって端末5〜8は、BARフレームを含む物理パケットを正常に受信することで、EIFS時間の起動は解消される(図15の「EIFS起動の解消1」参照)。
端末1〜4は、基地局から送信されるBARフレームを受信すると、SIFS時間経過後に、それぞれBAフレームを含む物理パケットを空間多重で送信(アップリンクMU−MIMO送信)する。物理パケットの受信に端末5〜8が失敗した場合、ここで再度、EIFS時間の起動が発生する(図24の「EIFS起動2」)。ただし、この後、基地局からCF−Endフレームが送信され、これを正常に端末5〜8が受信することで、EIFS時間の起動は解消される。すなわち、この後、非対象端末、対象端末および基地局が無線媒体へアクセスしようとするときは、通常通り、DIFS/AIFC[AC]時間を起動する。
なお図24の動作シーケンス例では、基地局がダウンリンクMU−MIMO送信した物理パケットの端末毎のパケット長は同じでなかったが、これらのパケット長が同じである場合も同様に、BARフレームの送信により、BAフレームの送信タイミングを同期させることが可能である。この場合のシーケンス例を、第4の実施形態に係る動作シーケンスの第6の例として図25に示す。このシーケンス例は、第3の実施形態における図17の動作シーケンス例に対応する。
図26に、第4の実施形態に係る動作シーケンスの第7の例を示す。この動作シーケンス例は、第3の実施形態における図18の動作シーケンス例に対応する。
本シーケンス例では、端末1〜4が、基地局から受信したBARフレームに対して、BAフレームをアップリンクMU−MIMO送信するのではなく、それぞれBAフレームを含む物理パケットを順番にSIFS時間ずつずらして、基地局に送信(オムニ送信)する。BAフレームを含む物理パケットはレガシーフォーマットを有し(プリアンブル1、2等を有さない)する。
基地局は、ダウンリンクMU−MIMO送信完了から、SIFS時間後にBARフレームを送信(オムニ送信)する。BARフレームには、MU−MIMOの対象端末にBAフレームを返信させるタイミングを特定するための情報と、BAフレームの送信に適用するMCS(または伝送レート)とを特定するための情報とを含める。詳細は、前の実施形態に述べた通りである。端末5〜8が、BARフレームを含む物理パケットを正常に受信することにより(Durationフィールドの値に従ってNAVを設定することになる)、EIFS時間の起動問題は解消される。それ以降も、各端末から順番に送信されるBAフレームを含む物理パケットも正常に受信できるため、EIFS時間の起動原因となる事象も起こらない。よって、最後にBAフレームを送信する端末4が当該BAフレームを送信した後、各端末および基地局が無線媒体にアクセスしようとするときはそれぞれ通常通り、DIFS/AIFS[AC]時間を起動し、端末間の公平性は保持される。
端末1〜4に指定する送信タイミングおよび伝送レートは、前の実施形態に述べたのと同様にして、それぞれが送信する物理パケットの間隔がSIFS間隔ずつ開くように設定すればよい。基地局は、端末1〜4に適用させる伝送レートを明示的に端末1〜4に通知するのではなく、端末1〜4がBAフレームの送信に適用する伝送レートを暗に指定できる伝送レートで、BARフレームを送信してもよい。詳細は前の実施形態で述べた。各端末にBAフレームを応答させる順番は、図18の例では、端末1、端末2、端末3および端末4の順であったが、各端末に応答させる順序は、これに限定されない。
本実施形態では、基地局から複数の端末にダウンリンクマルチユーザMIMO(Multi−User Multiple Input,Multiple Output:MU−MIMO)送信する場合に、媒体上のアクセス権の獲得の機会を公平にする形態を示したが、OFDMAと、MU−MIMOとを組み合わせた通信方式(OFDMA&MU−MIMOと呼ぶ)に対しても、第1〜第4の実施形態と同様の形態が実施可能である。この通信方式では、複数のリソースブロックのそれぞれを、複数の端末に割り当て、複数のリソースブロックで同時に、リソースブロック単位でのダウンリンクMU−MIMO送信を行うことになる。第4の実施形態と、第1〜第3の実施形態のうちの任意の1つを組み合わせることで、この通信方式に対しても媒体上のアクセス権の獲得の機会を公平にする形態が実現できる。
(第5の実施形態)
図27は、第5の実施形態に係る基地局(アクセスポイント)400の機能ブロック図である。このアクセスポイントは、通信処理部401と、送信部402と、受信部403と、アンテナ42A、42B、42C、42Dと、ネットワーク処理部404と、有線I/F405と、メモリ406とを備えている。アクセスポイント400は、有線I/F405を介して、サーバ407と接続されている。通信処理部401は、第1の実施形態で説明したMAC処理部10およびMAC/PHY管理部60と同様な機能を有している。送信部402および受信部403は、第1の実施形態で説明したPHY処理部50およびアナログ処理部70と同様な機能を有している。ネットワーク処理部404は、第1の実施形態で説明した上位処理部90と同様な機能を有している。ここで、通信処理部401は、ネットワーク処理部404との間でデータを受け渡しするためのバッファを内部に保有してもよい。このバッファは、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
ネットワーク処理部404は、通信処理部401とのデータ交換、メモリ406とのデータ書き込み・読み出し、および、有線I/F405を介したサーバ407との通信を制御する。ネットワーク処理部404は、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理やアプリケーション層の処理を行ってもよい。ネットワーク処理部の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
一例として、通信処理部401は、ベースバンド集積回路に対応し、送信部402と受信部403は、フレームを送受信するRF集積回路に対応する。通信処理部401とネットワーク処理部404とが1つの集積回路(1チップ)で構成されてもよい。送信部402および受信部403のデジタル領域の処理を行う部分とアナログ領域の処理を行う部分とが異なるチップで構成されてもよい。また、通信処理部401が、TCP/IPやUDP/IPなど、MAC層の上位の通信処理を実行するようにしてもよい。また、アンテナの個数はここでは4つであるが、少なくとも1つのアンテナを備えていればよい。
メモリ406は、サーバ407から受信したデータや、受信部402で受信したデータの保存等を行う。メモリ406は、例えば、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。また、SSDやHDD、SDカード、eMMC等であってもよい。メモリ406が、基地局400の外部にあってもよい。
有線I/F405は、サーバ407とのデータの送受信を行う。本実施形態では、サーバ407との通信を有線で行っているが、サーバ407との通信を無線で実行するようにしてもよい。
サーバ407は、データの送信を要求するデータ転送要求を受けて、要求されたデータを含む応答を返す通信装置であり、例えばHTTPサーバ(Webサーバ)、FTPサーバ等が想定される。ただし、要求されたデータを返す機能を備えている限り、これに限定されるものではない。PCやスマートフォン等のユーザが操作する通信装置でもよい。また、基地局400と無線で通信してもよい。
基地局400のBSSに属するSTAが、サーバ407に対するデータの転送要求を発行した場合、このデータ転送要求に関するパケットが、基地局400に送信される。基地局400は、アンテナ42A〜42Dを介してこのパケットを受信し、受信部403で物理層の処理等を、通信処理部401でMAC層の処理等を実行する。
ネットワーク処理部404は、通信処理部401から受信したパケットの解析を行う。具体的には、宛先IPアドレス、宛先ポート番号等を確認する。パケットのデータがHTTP GETリクエストのようなデータ転送要求である場合、ネットワーク処理部404は、このデータ転送要求で要求されたデータ(例えば、HTTP GETリクエストで要求されたURLに存在するデータ)が、メモリ406にキャッシュ(記憶)されているかを確認する。メモリ406には、URL(またはその縮小表現、例えばハッシュ値や、代替となる識別子)とデータとを対応づけたテーブルが格納されている。ここで、データがメモリ406にキャッシュされていることを、メモリ406にキャッシュデータが存在すると表現する。
メモリ406にキャッシュデータが存在しない場合、ネットワーク処理部404は、有線I/Fを405介して、サーバ407に対してデータ転送要求を送信する。つまり、ネットワーク処理部404は、STAの代理として、サーバ407へデータ転送要求を送信する。具体的には、ネットワーク処理部404は、HTTPリクエストを生成し、TCP/IPヘッダの付加などのプロトコル処理を行い、パケットを有線I/F405へ渡す。有線I/F405は、受け取ったパケットをサーバ407へ送信する。
有線I/F405は、データ転送要求に対する応答であるパケットをサーバ407から受信する。ネットワーク処理部404は、有線I/F405を介して受信したパケットのIPヘッダから、STA宛のパケットであることを把握し、通信処理部401へパケットを渡す。通信処理部401はこのパケットに対するMAC層の処理等を、送信部402は物理層の処理等を実行し、STA宛のパケットをアンテナ42A〜42Dから送信する。ここで、ネットワーク処理部404は、サーバ407から受信したデータを、URL(またはその縮小表現)と対応づけて、メモリ406にキャッシュデータとして保存する。
メモリ406にキャッシュデータが存在する場合、ネットワーク処理部404は、データ転送要求で要求されたデータをメモリ406から読み出して、このデータを通信処理部401へ送信する。具体的には、メモリ406から読み出したデータにHTTPヘッダ等を付加して、TCP/IPヘッダの付加等のプロトコル処理を行い、通信処理部401へパケットを送信する。このとき、一例として、パケットの送信元IPアドレスは、サーバと同じIPアドレスに設定し、送信元ポート番号もサーバと同じポート番号(通信端末が送信するパケットの宛先ポート番号)に設定する。したがって、STAから見れば、あたかもサーバ407と通信をしているかのように見える。通信処理部401はこのパケットに対するMAC層の処理等を、送信部402は物理層の処理等を実行し、STA宛のパケットをアンテナ42A〜42Dから送信する。
このような動作により、頻繁にアクセスされるデータは、メモリ406に保存されたキャッシュデータに基づいて応答することになり、サーバ407と基地局400間のトラフィックを削減できる。なお、ネットワーク処理部404の動作は、本実施形態の動作に限定されるものではない。STAの代わりにサーバ407からデータを取得して、メモリ406にデータをキャッシュし、同一のデータに対するデータ転送要求に対しては、メモリ406のキャッシュデータから応答するような一般的なキャッシュプロキシであれば、別の動作でも問題はない。
本実施形態の基地局(アクセスポイント)を、第1〜第4の実施形態の基地局として適用することが可能である。例えば、基地局は、端末1〜4を含む複数の端末からデータ転送要求を事前に受信しており、データ転送要求で要求されたデータがキャッシュされている端末(ここでは端末1〜4)を特定する。基地局は、これらのデータをメモリ406から読み出し、読み出したデータを含むデータフレームをそれぞれ生成し、物理ヘッダ(レガシーフィールド、プリアンブル1、プリアンブル2)を付加して、OFDMAで端末1〜4宛にダウンリンク送信する。メモリ406にデータがキャッシュされていない端末に対しては、サーバ407からデータ転送要求で要求されたデータを取得し、メモリ407にキャッシュする動作を行う。この動作は、上記端末1〜4側の無線ネットワークの通信と独立して行ってもよい。ここでは、端末1〜4に送信するデータは、サーバ407から取得したデータであることを前提としたが、これに限定される必要はない。メモリ406に記憶されているデータを送信する限り、どのような方法で取得されたデータであってもよい。例えばサーバ407以外の外部装置から受信したデータでもよい。また、メモリ406にキャッシュされているデータを送信するのではなく、当該キャッシュされているデータに基づく情報をデータフレームまたは管理フレーム等を介して端末に送信することも可能である。例えば当該キャッシュされているデータのデータ量またはデータ種別などの情報でもよい。この情報を送信する場合、当該情報の送信要求を端末から取得し、この要求に応じて当該情報を送信してもよいし、基地局がそのような要求を受けることなく、当該情報を送信してもよい。
また、基地局は、メモリ406にキャッシュされている端末1〜4への送信用のデータ量に応じて、NAVの長さを変えてもよい。端末1〜4にこれらのデータをOFDMA送信する場合、データ量が多いほど、NAVを長くしてもよい。例えば最も大きいデータ量に応じて、NAVの値を決定してもよい。図8の例において、端末1〜4宛のそれぞれへのデータ量が多い場合、ダウンリンクのデータフレームのOFDMA送信と、アップリンクのBAフレームのOFDMA送信とを複数回繰り返し行うことが考えられる。このとき、最初にダウンリンクOFDMA送信するデータフレームの末尾(図8では端末1〜4のデータフレームの末尾は一致するものとする(パディングデータを付加する場合も含む))から、一連のフレーム交換の最後にアップリンク送信するBAフレームの末尾(図8では端末1〜4が送信するBAフレームの末尾は一致する)までの時間の長さに応じて、NAVを設定してもよい。ただし、TXOPリミットが存在する場合、TXOPリミット以内でNAVの値を設定するものとする。最も単純なケースでは、TXOPリミットは0(1フレームだけ送信可能)であり、この場合、最初に送信されるBAフレームの末尾までNAVの値を設定する。TXOPリミットが0でない場合は、データの種別(ACまたはTID)等に応じたリミット値以内でNAVの値を設定すればよい。なお、NAVの値は、MACフレームのヘッダのDurationフィールドに設定する以外に、物理ヘッダのプリアンブル1またはプリアンブル2またはこれらの両方に設定する構成もあり得る。
なお、本実施形態では、キャッシュ機能を備えた基地局について説明を行ったが、図27と同じブロック構成で、キャッシュ機能を備えた端末(STA)を実現することもできる。この場合、有線I/F405を省略してもよい。本実施形態の端末を、第1〜第4の実施形態の端末として適用可能である。例えば、端末5、6(図8等参照)は、無線媒体へのアクセスが抑制されていないときに(図8のNAVが解除された後など)、メモリ406にキャッシュされているデータを読み出し、読み出したデータを含むデータフレーム(より詳細には物理ヘッダを付加した物理パケット)を、基地局に送信する。当該データはサーバ407から取得したデータであっても、別の方法で取得したデータであってもよい。また、送達確認応答フレーム(BAフレーム、ACKフレーム等)の生成に必要なデータをメモリ406から読み出して、当該データに基づき送達確認応答フレームを生成してもよい。また、メモリ406にキャッシュされているデータを送信するのではなく、当該キャッシュされているデータに基づく情報をデータフレームまたは管理フレーム等を介して基地局に送信することも可能である。例えば当該キャッシュされているデータのデータ量またはデータ種別などの情報でもよい。この情報を送信する場合、当該情報の送信要求を基地局から取得し、この要求に応じて当該情報を送信してもよいし、そのような要求を受けることなく、当該情報を送信してもよい。基地局では、アップリンクのマルチユーザ通信(MU−MUMOまたはOFDMAなど)を行う場合は、この情報を利用して、アップリンクの対象端末を決定してもよい。または、基地局は、この情報を利用して、ダウンリンクのマルチユーザ通信の対象となる端末を決定してもよい。例えばデータ量を一定値以上有する端末、またはバッファサイズに対してデータ量が一定割合以上の端末は、バッファの空きが少ないと判断して、ダウンリンクの対象端末として選択しないことも考えられる。なお、マルチホップネットワークの場合、端末は、非基地局としての端末の役割と、基地局としての役割との両方を備える。端末が基地局として動作する場合は、前述した基地局の動作を行えばよい。
(第6の実施形態)
図28は、端末または基地局の全体構成例を示したものである。この構成例は一例であり、本実施形態はこれに限定されるものではない。端末または基地局は、1つまたは複数のアンテナ1〜n(nは1以上の整数)と、無線LANモジュール148と、ホストシステム149を備える。無線LANモジュール148は、第1の実施形態に係る無線通信装置に対応する。無線LANモジュール148は、ホスト・インターフェースを備え、ホスト・インターフェースで、ホストシステム149と接続される。接続ケーブルを介してホストシステム149と接続される他、ホストシステム149と直接接続されてもよい。また、無線LANモジュール148が基板にはんだ等で実装され、基板の配線を介してホストシステム149と接続される構成も可能である。ホストシステム149は、任意の通信プロトコルに従って、無線LANモジュール148およびアンテナ1〜nを用いて、外部の装置と通信を行う。通信プロトコルは、TCP/IPと、それより上位の層のプロトコルと、を含んでもよい。または、TCP/IPは無線LANモジュール148に搭載し、ホストシステム149は、それより上位層のプロトコルのみを実行してもよい。この場合、ホストシステム149の構成を簡単化できる。本端末は、例えば、移動体端末、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置等でもよい。
図29は、無線LANモジュールのハードウェア構成例を示す。この構成は、無線通信装置が非基地局の端末および基地局のいずれに搭載される場合にも適用可能である。つまり、図1に示した無線通信装置の具体的な構成の一例として適用できる。この構成例では、少なくとも1本のアンテナ247を備える。複数のアンテナを備える場合、各アンテナに対応して、送信系統(216、222〜225)、受信系統(232〜235)、PLL242、水晶発振器(基準信号源)243およびスイッチ245のセットが複数配置され、各セットがそれぞれ制御回路212に接続されてもよい。PLL242または水晶発振器243またはこれらの両方は、本実施形態に係る発振器に対応する。
無線LANモジュール(無線通信装置)は、ベースバンドIC(Integrated Circuit)211と、RF(Radio Frequency)IC221と、バラン225と、スイッチ245と、アンテナ247とを備える。
ベースバンドIC211は、ベースバンド回路(制御回路)212、メモリ213、ホスト・インターフェース214、CPU215、DAC(Digital to Analog Converter)216、およびADC(Analog to Digital Converter)217を備える。
ベースバンドIC211とRF IC221は同じ基板上に形成されてもよい。また、ベースバンドIC211とRF IC221は1チップで構成されてもよい。DAC216およびADC217の両方またはいずれか一方が、RF IC221に配置されてもよいし、別のICに配置されてもよい。またメモリ213およびCPU215の両方またはいずれか一方が、ベースバンドICとは別のICに配置されてもよい。
メモリ213は、ホストシステムとの間で受け渡しするデータを格納する。またメモリ213は、端末または基地局に通知する情報、または端末または基地局から通知された情報、またはこれらの両方を格納する。また、メモリ213は、CPU215の実行に必要なプログラムを記憶し、CPU215がプログラムを実行する際の作業領域として利用されてもよい。メモリ213はSRAM、DRAM等の揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発メモリでもよい。
ホスト・インターフェース214は、ホストシステムと接続するためのインターフェースである。インターフェースは、UART、SPI、SDIO、USB、PCI Expressなど何でも良い。
CPU215は、プログラムを実行することによりベースバンド回路212を制御するプロセッサである。ベースバンド回路212は、主にMAC層の処理および物理層の処理を行う。ベースバンド回路212、CPU215またはこれらの両方は、通信を制御する通信制御装置、または通信を制御する制御部に対応する。
ベースバンド回路212およびCPU215の少なくとも一方は、クロックを生成するクロック生成部を含み、当該クロック生成部で生成するクロックにより、内部時間を管理してもよい。
ベースバンド回路212は、送信するフレームに、物理層の処理として、物理ヘッダの付加、符号化、暗号化、変調処理など行い、例えば2種類のデジタルベースバンド信号(以下、デジタルI信号とデジタルQ信号)を生成する。
DAC216は、ベースバンド回路212から入力される信号をDA変換する。より詳細には、DAC216はデジタルI信号をアナログのI信号に変換し、デジタルQ信号をアナログのQ信号に変換する。なお、直交変調せずに一系統の信号のままで送信する場合もありうる。複数のアンテナを備え、一系統または複数系統の送信信号をアンテナの数だけ振り分けて送信する場合には、アンテナの数に応じた数のDAC等を設けてもよい。
RF IC221は、一例としてRFアナログICあるいは高周波IC、あるいはこれらの両方である。RF IC221は、フィルタ222、ミキサ223、プリアンプ(PA)224、PLL(Phase Locked Loop:位相同期回路)242、低雑音増幅器(LNA)、バラン235、ミキサ233、およびフィルタ232を備える。これらの要素のいくつかが、ベースバンドIC211または別のIC上に配置されてもよい。フィルタ222、232は、帯域通過フィルタでも、低域通過フィルタでもよい。RF IC221は、スイッチ245を介して、アンテナ247に結合されている。
フィルタ222は、DAC216から入力されるアナログI信号およびアナログQ信号のそれぞれから所望帯域の信号を抽出する。PLL242は、水晶発振器243から入力される発振信号を用い、発振信号を分周または逓倍またはこれらの両方を行うことで、入力信号の位相に同期した、一定周波数の信号を生成する。なお、PLL242は、VCO(Voltage Controlled Oscillator)を備え、水晶発振器243から入力される発振信号に基づき、VCOを利用してフィードバック制御を行うことで、当該一定周波数の信号を得る。生成した一定周波数の信号は、ミキサ223およびミキサ233に入力される。PLL242は、一定周波数の信号を生成する発振器の一例に相当する。
ミキサ223は、フィルタ222を通過したアナログI信号およびアナログQ信号を、PLL242から供給される一定周波数の信号を利用して、無線周波数にアップコンバートする。プリアンプ(PA)は、ミキサ223で生成された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号を、所望の出力電力まで増幅する。バラン225は、平衡信号(差動信号)を不平衡信号(シングルエンド信号)に変換するための変換器である。RF IC221では平衡信号が扱われるが、RF IC221の出力からアンテナ247までは不平衡信号が扱われるため、バラン225で、これらの信号変換を行う。
スイッチ245は、送信時は、送信側のバラン225に接続され、受信時は、受信側のバラン234またはRF IC221に接続される。スイッチ245の制御はベースバンドIC211またはRF IC221により行われてもよいし、スイッチ245を制御する別の回路が存在し、当該回路からスイッチ245の制御を行ってもよい。
プリアンプ224で増幅された無線周波数のアナログI信号およびアナログQ信号は、バラン225で平衡−不平衡変換された後、アンテナ247から空間に電波として放射される。
アンテナ247は、チップアンテナでもよいし、プリント基板上に配線により形成したアンテナでもよいし、線状の導体素子を利用して形成したアンテナでもよい。
RF IC221におけるLNA234は、アンテナ247からスイッチ245を介して受信した信号を、雑音を低く抑えたまま、復調可能なレベルまで増幅する。バラン235は、低雑音増幅器(LNA)234で増幅された信号を、不平衡−平衡変換する。ミキサ233は、バラン235で平衡信号に変換された受信信号を、PLL242から入力される一定周波数の信号を用いてベースバンドにダウンコンバートする。より詳細には、ミキサ233は、PLL242から入力される一定周波数の信号に基づき、互いに90°位相のずれた搬送波を生成する手段を有し、バラン235で変換された受信信号を、互いに90°位相のずれた搬送波により直交復調して、受信信号と同位相のI(In−phase)信号と、これより90°位相が遅れたQ(Quad−phase)信号とを生成する。フィルタ232は、これらI信号とQ信号から所望周波数成分の信号を抽出する。フィルタ232で抽出されたI信号およびQ信号は、ゲインが調整された後に、RF IC221から出力される。
ベースバンドIC211におけるADC217は、RF IC221からの入力信号をAD変換する。より詳細には、ADC217はI信号をデジタルI信号に変換し、Q信号をデジタルQ信号に変換する。なお、直交復調せずに一系統の信号だけを受信する場合もあり得る。
複数のアンテナが設けられる場合には、アンテナの数に応じた数のADCを設けてもよい。ベースバンド回路212は、デジタルI信号およびデジタルQ信号に基づき、復調処理、誤り訂正符号処理、物理ヘッダの処理など、物理層の処理等を行い、フレームを得る。ベースバンド回路212は、フレームに対してMAC層の処理を行う。なお、ベースバンド回路212は、TCP/IPを実装している場合は、TCP/IPの処理を行う構成も可能である。
(第7の実施形態)
図30(A)及び図30(B)は、それぞれ第7の実施形態に係る無線通信端末の斜視図である。図30(A)の無線通信端末はノートPC301であり、図30(B)の無線通信端末は移動体端末321である。それぞれ、端末(基地局を含む)の一形態に対応する。ノートPC301及び移動体端末321は、それぞれ無線通信装置305、315を搭載している。無線通信装置305、315として、これまで説明してきた端末(基地局を含む)に搭載されていた無線通信装置を用いることができる。無線通信装置を搭載する無線通信端末は、ノートPCや移動体端末に限定されない。例えば、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置等にも搭載可能である。
また、端末(基地局を含む)に搭載されていた無線通信装置は、メモリーカードにも搭載可能である。当該無線通信装置をメモリーカードに搭載した例を図31に示す。メモリーカード331は、無線通信装置355と、メモリーカード本体332とを含む。メモリーカード331は、外部の装置(無線通信端末または基地局、またはこれらの両方等)との無線通信のために無線通信装置335を利用する。なお、図31では、メモリーカード331内の他の要素(例えばメモリ等)の記載は省略している。
(第8の実施形態)
第8の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、バス、プロセッサ部、及び外部インタフェース部を備える。プロセッサ部及び外部インタフェース部は、バスを介してバッファと接続される。プロセッサ部ではファームウエアが動作する。このように、ファームウエアを無線通信装置に含める構成とすることにより、ファームウエアの書き換えによって無線通信装置の機能の変更を容易に行うことが可能となる。ファームウエアが動作するプロセッサ部は、本実施形態に係る通信処理装置または制御部の処理を行うプロセッサであってもよいし、当該処理の機能拡張または変更に係る処理を行う別のプロセッサであってもよい。ファームウエアが動作するプロセッサ部を、本実施形態に係る基地局あるいは無線通信ン端末あるいはこれらの両方が備えてもよい。または当該プロセッサ部を、基地局に搭載される無線通信装置内の集積回路、または無線通信端末に搭載される無線通信装置内の集積回路が備えてもよい。
(第9の実施形態)
第9の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、クロック生成部を備える。クロック生成部は、クロックを生成して出力端子より無線通信装置の外部にクロックを出力する。このように、無線通信装置内部で生成されたクロックを外部に出力し、外部に出力されたクロックによってホスト側を動作させることにより、ホスト側と無線通信装置側とを同期させて動作させることが可能となる。
(第10の実施形態)
第10の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、電源部、電源制御部、及び無線電力給電部を含む。電源制御部は、電源部と無線電力給電部とに接続され、無線通信装置に供給する電源を選択する制御を行う。このように、電源を無線通信装置に備える構成とすることにより、電源を制御した低消費電力化動作が可能となる。
(第11の実施形態)
第11の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、SIMカードを含む。SIMカードは、例えば、無線通信装置におけるMAC処理部10、MAC/PHY管理部60、または、制御部112と接続される。このように、SIMカードを無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となる。
(第12の実施形態)
第12の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、動画像圧縮/伸長部を含む。動画像圧縮/伸長部は、バスと接続される。このように、動画像圧縮/伸長部を無線通信装置に備える構成とすることにより、圧縮した動画像の伝送と受信した圧縮動画像の伸長とを容易に行うことが可能となる。
(第13の実施形態)
第13の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、LED部を含む。LED部は、例えば、MAC処理部10、MAC/PHY管理部60、送信処理回路113、受信処理回路114、制御部112の少なくとも1つと接続される。このように、LED部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態を、ユーザに容易に通知することが可能となる。
(第14の実施形態)
第14の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、バイブレータ部を含む。バイブレータ部は、例えば、MAC処理部10、MAC/PHY管理部60、送信処理回路113、受信処理回路114、制御部112の少なくとも1つと接続される。このように、バイブレータ部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態を、ユーザに容易に通知することが可能となる。
(第15の実施形態)
第15の実施形態では、上述した実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線通信端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、ディスプレイを含む。ディスプレイは、図示しないバスを介して、無線通信装置のMAC処理部に接続されてもよい。このようにディスプレイを備える構成とし、無線通信装置の動作状態をディスプレイに表示することで、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第16の実施形態)
本実施形態では、[1]無線通信システムにおけるフレーム種別、[2]無線通信装置間の接続切断の手法、[3]無線LANシステムのアクセス方式、[4]無線LANのフレーム間隔について説明する。
[1]通信システムにおけるフレーム種別
一般的に無線通信システムにおける無線アクセスプロトコル上で扱うフレームは、前述したように、大別してデータ(data)フレーム、管理(management)フレーム、制御(control)フレームの3種類に分けられる。これらの種別は、通常、フレーム間で共通に設けられるヘッダ部で示される。フレーム種別の表示方法としては、1つのフィールドで3種類を区別できるようにしてあってもよいし、2つのフィールドの組み合わせで区別できるようにしてあってもよい。IEEE802.11規格では、フレーム種別の識別は、MACフレームのフレームヘッダ部にあるFrame Controlフィールドの中のType、Subtypeという2つのフィールドで行う。データフレームか、管理フレームか、制御フレームかの大別はTypeフィールドで行われ、大別されたフレームの中での細かい種別、例えば管理フレームの中のBeaconフレームといった識別はSubtypeフィールドで行われる。
管理フレームは、他の無線通信装置との間の物理的な通信リンクの管理に用いるフレームである。例えば、他の無線通信装置との間の通信設定を行うために用いられるフレームや通信リンクをリリースする(つまり接続を切断する)ためのフレーム、無線通信装置でのパワーセーブ動作に係るフレームがある。
データフレームは、他の無線通信装置と物理的な通信リンクが確立した上で、無線通信装置の内部で生成されたデータを他の無線通信装置に送信するフレームである。データは本実施形態の上位層で生成され、例えばユーザの操作によって生成される。
制御フレームは、データフレームを他の無線通信装置との間で送受(交換)する際の制御に用いられるフレームである。無線通信装置がデータフレームや管理フレームを受信した場合にその送達確認のために送信される応答フレームは、制御フレームに属する。応答フレームは、例えばACKフレームやBlockACKフレームである。またRTSフレームやCTSフレームも制御フレームである。
これら3種類のフレームは、物理層で必要に応じた処理を経て物理パケットとしてアンテナを経由して送出される。なお、IEEE802.11規格(前述のIEEE Std
802.11ac−2013などの拡張規格を含む)では接続確立の手順の1つとしてアソシエーション(association)プロセスがあるが、その中で使われるAssociation RequestフレームとAssociation Responseフレームが管理フレームであり、Association RequestフレームやAssociation Responseフレームはユニキャストの管理フレームであることから、受信側無線通信端末に応答フレームであるACKフレームの送信を要求し、このACKフレームは上述のように制御フレームである。
[2]無線通信装置間の接続切断の手法
接続の切断(リリース)には、明示的な手法と暗示的な手法とがある。明示的な手法としては、接続を確立している無線通信装置間のいずれか一方が切断のためのフレームを送信する。IEEE802.11規格ではDeauthenticationフレームがこれに当たり、管理フレームに分類される。通常、接続を切断するフレームを送信する側の無線通信装置では当該フレームを送信した時点で、接続を切断するフレームを受信する側の無線通信装置では当該フレームを受信した時点で、接続の切断と判定する。その後、非基地局の無線通信端末であれば通信フェーズでの初期状態、例えば接続するBSS探索する状態に戻る。無線通信基地局がある無線通信端末との間の接続を切断した場合には、例えば無線通信基地局が自BSSに加入する無線通信端末を管理する接続管理テーブルを持っているならば当該接続管理テーブルから当該無線通信端末に係る情報を削除する。例えば、無線通信基地局が自BSSに加入する各無線通信端末に接続をアソシエーションプロセスで許可した段階で、AIDを割り当てる場合には、当該接続を切断した無線通信端末のAIDに関連づけられた保持情報を削除し、当該AIDに関してはリリースして他の新規加入する無線通信端末に割り当てられるようにしてもよい。
一方、暗示的な手法としては、接続を確立した接続相手の無線通信装置から一定期間フレーム送信(データフレーム及び管理フレームの送信、あるいは自装置が送信したフレームへの応答フレームの送信)を検知しなかった場合に、接続状態の切断の判定を行う。このような手法があるのは、上述のように接続の切断を判定するような状況では、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるなど物理的な無線リンクが確保できない状態が考えられるからである。すなわち、接続を切断するフレームの受信を期待できないからである。
暗示的な方法で接続の切断を判定する具体例としては、タイマを使用する。例えば、送達確認応答フレームを要求するデータフレームを送信する際、当該フレームの再送期間を制限する第1のタイマ(例えばデータフレーム用の再送タイマ)を起動し、第1のタイマが切れるまで(つまり所望の再送期間が経過するまで)当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行う。当該フレームへの送達確認応答フレームを受信すると第1のタイマは止められる。
一方、送達確認応答フレームを受信せず第1のタイマが切れると、例えば接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマ(例えば管理フレーム用の再送タイマ)を起動する。第1のタイマと同様、第2のタイマでも、第2のタイマが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマが切れると接続が切断されたと判定する。接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。
あるいは、接続相手の無線通信装置からフレームを受信すると第3のタイマを起動し、新たに接続相手の無線通信装置からフレームを受信するたびに第3のタイマを止め、再び初期値から起動する。第3のタイマが切れると前述と同様に接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマ(例えば管理フレーム用の再送タイマ)を起動する。この場合も、第2のタイマが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマが切れると接続が切断されたと判定する。この場合も、接続が切断されたと判定した段階で、前記接続を切断するフレームを送信するようにしてもよい。後者の、接続相手の無線通信装置がまだ存在するかを確認するための管理フレームは、前者の場合の管理フレームとは異なるものであってもよい。また後者の場合の管理フレームの再送を制限するためのタイマは、ここでは第2のタイマとして前者の場合と同じものを用いたが、異なるタイマを用いるようにしてもよい。
[3]無線LANシステムのアクセス方式
例えば、複数の無線通信装置と通信または競合することを想定した無線LANシステムがある。IEEE802.11無線LANではCSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Carrier Avoidance)をアクセス方式の基本としている。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了から固定時間を置いて送信を行う方式では、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置で同時に送信を行うことになり、その結果、無線信号が衝突してフレーム送信に失敗する。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了からランダム時間待つことで、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置での送信が確率的に分散することになる。よって、ランダム時間の中で最も早い時間を引いた無線通信装置が1つなら無線通信装置のフレーム送信は成功し、フレームの衝突を防ぐことができる。ランダム値に基づき送信権の獲得が複数の無線通信装置間で公平になることから、Carrier Avoidanceを採用した方式は、複数の無線通信装置間で無線媒体を共有するために適した方式であるということができる。
[4]無線LANのフレーム間隔
IEEE802.11無線LANのフレーム間隔について説明する。IEEE802.11無線LANで用いられるフレーム間隔は、distributed coordination function interframe space(DIFS)、arbitration interframe space(AIFS)、point coordination function interframe space(PIFS)、short interframe space(SIFS)、extended interframe space(EIFS)、reduced interframe space(RIFS)の6種類ある。
フレーム間隔の定義は、IEEE802.11無線LANでは送信前にキャリアセンスアイドルを確認して開けるべき連続期間として定義されており、厳密な前のフレームからの期間は議論しない。従ってここでのIEEE802.11無線LANシステムでの説明においてはその定義を踏襲する。IEEE802.11無線LANでは、CSMA/CAに基づくランダムアクセスの際に待つ時間を固定時間とランダム時間との和としており、固定時間を明確にするため、このような定義になっているといえる。
DIFSとAIFSとは、CSMA/CAに基づき他の無線通信装置と競合するコンテンション期間にフレーム交換開始を試みるときに用いるフレーム間隔である。DIFSは、トラヒック種別による優先権の区別がないとき、AIFSはトラヒック種別(Traffic Identifier:TID)による優先権が設けられている場合に用いる。
DIFSとAIFSとで係る動作としては類似しているため、以降では主にAIFSを用いて説明する。IEEE802.11無線LANでは、MAC層でフレーム交換の開始などを含むアクセス制御を行う。さらに、上位層からデータを渡される際にQoS(Quality of Service)対応する場合には、データとともにトラヒック種別が通知され、トラヒック種別に基づいてデータはアクセス時の優先度のクラス分けがされる。このアクセス時のクラスをアクセスカテゴリ(Access Category:AC)と呼ぶ。従って、アクセスカテゴリごとにAIFSの値が設けられることになる。
PIFSは、競合する他の無線通信装置よりも優先権を持つアクセスができるようにするためのフレーム間隔であり、DIFS及びAIFSのいずれの値よりも期間が短い。SIFSは、応答系の制御フレームの送信時あるいは一旦アクセス権を獲得した後にバーストでフレーム交換を継続する場合に用いることができるフレーム間隔である。EIFSはフレーム受信に失敗した(受信したフレームがエラーであると判定した)場合に起動されるフレーム間隔である。
RIFSは一旦アクセス権を獲得した後にバーストで同一無線通信装置に複数のフレームを連続して送信する場合に用いることができるフレーム間隔であり、RIFSを用いている間は送信相手の無線通信装置からの応答フレームを要求しない。
ここでIEEE802.11無線LANにおけるランダムアクセスに基づく競合期間のフレーム交換の一例を図32に示す。
ある無線通信装置においてデータフレーム(W_DATA1)の送信要求が発生した際に、キャリアセンスの結果、媒体がビジーである(busy medium)と認識する場合を想定する。この場合、キャリアセンスがアイドルになった時点から固定時間のAIFSを空け、その後ランダム時間(random backoff)空いたところで、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。なお、キャリアセンスの結果、媒体がビジーではない、つまり媒体がアイドル(idle)であると認識した場合には、キャリアセンスを開始した時点から固定時間のAIFSを空けて、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。
ランダム時間は0から整数で与えられるコンテンションウィンドウ(Contention Window:CW)の間の一様分布から導かれる擬似ランダム整数にスロット時間をかけたものである。ここで、CWにスロット時間をかけたものをCW時間幅と呼ぶ。CWの初期値はCWminで与えられ、再送するたびにCWの値はCWmaxになるまで増やされる。CWminとCWmaxとの両方とも、AIFSと同様アクセスカテゴリごとの値を持つ。W_DATA1の送信先の無線通信装置では、データフレームの受信に成功し、かつ当該データフレームが応答フレームの送信を要求するフレームであるとそのデータフレームを内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS時間後に応答フレーム(W_ACK1)を送信する。W_DATA1を送信した無線通信装置は、W_ACK1を受信すると送信バースト時間制限内であればまたW_ACK1を内包する物理パケットの無線媒体上での占有終了時点からSIFS時間後に次のフレーム(例えばW_DATA2)を送信することができる。
AIFS、DIFS、PIFS及びEIFSは、SIFSとスロット時間との関数になるが、SIFSとスロット時間とは物理層ごとに規定されている。また、AIFS、CWmin及びCWmaxなどアクセスカテゴリごとに値が設けられるパラメータは、通信グループ(IEEE802.11無線LANではBasic Service Set(BSS))ごとに設定可能であるが、デフォルト値が定められている。
例えば、802.11acの規格策定では、SIFSは16μs、スロット時間は9μsであるとして、それによってPIFSは25μs、DIFSは34μs、AIFSにおいてアクセスカテゴリがBACKGROUND(AC_BK)のフレーム間隔はデフォルト値が79μs、BEST EFFORT(AC_BE)のフレーム間隔はデフォルト値が43μs、VIDEO(AC_VI)とVOICE(AC_VO)のフレーム間隔はデフォルト値が34μs、CWminとCWmaxとのデフォルト値は、各々AC_BKとAC_BEとでは31と1023、AC_VIでは15と31、AC_VOでは7と15になるとする。なお、EIFSは、基本的にはSIFSとDIFSと最も低速な必須の物理レートで送信する場合の応答フレームの時間長の和である。なお効率的なEIFSの取り方ができる無線通信装置では、EIFSを起動した物理パケットへの応答フレームを運ぶ物理パケットの占有時間長を推定し、SIFSとDIFSとその推定時間の和とすることもできる。
本実施形態で用いられる用語は、広く解釈されるべきである。例えば用語“プロセッサ”は、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、コントローラ、マイクロコントローラ、状態マシンなどを包含してもよい。状況によって、“プロセッサ”は、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能論理回路(PLD)などを指してもよい。“プロセッサ”は、複数のマイクロプロセッサのような処理装置の組み合わせ、DSPおよびマイクロプロセッサの組み合わせ、DSPコアと協働する1つ以上のマイクロプロセッサを指してもよい。
別の例として、用語“メモリ”は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を包含してもよい。“メモリ”は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、フラッシュメモリ、磁気または光学データストレージを指してもよく、これらはプロセッサによって読み出し可能である。プロセッサがメモリに対して情報を読み出しまたは書き込みまたはこれらの両方を行うならば、メモリはプロセッサと電気的に通信すると言うことができる。メモリは、プロセッサに統合されてもよく、この場合も、メモリは、プロセッサと電気的に通信していると言うことができる。
なお、各実施形態で述べるフレームは、例えばIEEE802.11規格でフレームと呼ばれているもののみならず、Null Data Packetなど、パケットと呼ばれているものを指すこともあり得る。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。