以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。無線LAN(Local Area Network)の規格書として知られているIEEE Std 802.11TM−2012およびIEEE Std 802.11acTM−2013は、本明細書においてその全てが参照によって組み込まれる(incorporated by reference)ものとする。
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る無線通信システムを示す。
図1の無線通信システムは、基地局であるアクセスポイント(AP)11と、中継局21と、複数の無線端末(以下、端末と呼ぶ)1、2とを具備した無線LANである。アクセスポイント11および中継局21も、端末の一形態であるが、中継機能等を有する点で端末1および端末2と異なる。アクセスポイント11、中継局21、端末1および端末2は、IEEE802.11規格に従って通信を行うとするが、他の通信方式に従って通信を行う構成でも構わない。
アクセスポイント11は、1つまたは複数のアンテナを備える。アクセスポイント11は、アンテナを介してMACフレーム(以下、フレーム)を送受信する無線通信装置を搭載する。無線通信装置は、無線で信号を送受信する無線通信部と、無線通信部を介してフレームを送受信することで通信を制御する制御部または通信制御装置とを備える。アクセスポイントは、例えば、IEEE802.11規格におけるBasic Service Set(BSS)である無線通信グループを形成する。
端末1および端末2は、1つまたは複数のアンテナを備える。各端末は、アンテナを介してフレームを送受信する無線通信装置を搭載する。当該無線通信装置は、無線で信号を送受信する無線通信部と、無線通信部を介してフレームを送受信することで、通信を制御する制御部または通信制御装置とを備える。
中継局21は、1つまたは複数のアンテナを備える。中継局は、アンテナを介してフレームを送受信する無線通信装置を搭載する。当該無線通信装置は、無線で信号を送受信する無線通信部と、無線通信部を介してフレームを送受信することでアクセスポイント11および端末1および端末2との通信を制御する制御部または通信制御装置とを備える。
中継局21は、アクセスポイント11と、端末1および端末2との間の通信を中継する。具体的には、中継局21は、アクセスポイント11から受信するフレームを端末1および端末2の少なくとも一方に中継し、また、端末1および端末2の少なくとも一方から受信するフレームを、アクセスポイント11に中継する。なお、中継局21が、端末1および端末2間の通信を中継する場合もあり得る。中継局21は、受信した信号を復号(復調および誤り訂正符号の復号等を含む)してフレームを取得し、当該フレームのヘッダ解析等を行う。そして、解析結果に基づき送信用のヘッダを生成し、当該フレームのデータ部分(ボディフィールド)を付加して、送信(中継)用のフレームを生成する。ユニキャストフレームのみならず、ビーコンフレーム等のブロードキャストフレーム、およびマルチキャストフレームも中継してもよい。
中継局21の構成は、端末およびアクセスポイント間のフレーム中継を可能であれば、特定のものに限定されない。例えば、中継局21は、アクセスポイント11の配下の端末として、端末1および端末2とともに、アクセスポイントのBSSに属してもよい。または、中継局21がアクセスポイントの機能を有し、アクセスポイント11とは別にBSSを形成し、このBSSに端末1および端末2が属する形態でもよい。この場合、アクセスポイント11と中継局21とで同じ無線チャネルを利用してもよい。また、この際、アクセスポイントと中継局とで同じSSIDおよび暗号化設定を用い、端末1および端末2が、アクセスポイント11が送信するフレームを復号可能でもよい。ここで述べた以外にも、中継局が、端末およびアクセスポイント間のフレーム中継を可能な構成であれば、他の構成でもかまわない。
本実施形態では、通信としてフレームが送受信されるが、実際には、フレームに物理ヘッダ(PHYヘッダ)を付加した物理パケットが送受信されてもよい。以下の説明でフレームを送信または受信と表現するときは、実際にはフレームを含む物理パケットが送信または受信されてよい。また、以下の説明でフレームの長さあるいはフレーム長と表現する場合には、当該フレームを含む物理パケットの長さあるいはパケット長を指してもよい。
アクセスポイント11は、中継局21が属している無線ネットワークとは別のネットワークにさらに接続されていてもよい。当該別のネットワークは、有線ネットワークでもよいし、無線ネットワークでもよいし、これらのハイブリッドのネットワークでもよい。この場合、アクセスポイント11は、当該別のネットワークと上記中継局21が属している無線ネットワークとの間で通信を中継してもよい。なお、アクセスポイントの中継局21側の無線ネットワークに、図示しない他の端末または他の中継局がさらに存在してもよい。また端末1および端末2とアクセスポイント11との間には1つの中継局のみが存在するが、複数の中継局が存在して、フレームが多段で、アクセスポイント11と端末1、2との間で中継されてもよい。
中継局21は、本実施形態に係る全二重(Full Duplex)通信を実行可能な端末であり、1つまたは複数の端末(アクセスポイントを含む)と、複数のフレームの通信(送信または受信またはこれらの両方)を同一周波数(無線チャネル)にて同時に行うことができる。中継局21およびアクセスポイント11は、本実施形態の特徴となる機能を備える端末であり、以下、全二重対応端末と呼ぶことがある。なお、アクセスポイント11は、全二重通信を実行する構成の場合と、そうでない場合の双方の構成があり得るが、いずれの場合も本実施形態の特徴となる機能を備える。端末1および端末2は、既存の端末、いわゆるレガシー端末(全二重非対応端末と呼ぶ)でよい。ただし、端末1および端末2が、本実施形態の特徴となる機能を備えた全二重対応端末であってもかまわない。
以下、全二重通信のトラフィックパターンについて説明する。図2に全二重通信のトラフィックパターンの例を複数示す。本実施形態は、これらのいずれのパターンも対象とする。
図2(A)は、第1のトラフィックパターンを示す。中継局21が、端末(ここでは端末1)からのフレームの受信と、アクセスポイント11へのフレームの送信を同時に行う。このパターンの場合、アクセスポイント11は、全二重通信を実行する構成を有さなくてもよい。
図2(B)は、第2のトラフィックパターンを示す。中継局21が、アクセスポイント11からのフレームの受信と、端末1へのフレームの送信を同時に行う。このパターンの場合、アクセスポイント11は、全二重通信を実行する構成を有さなくてもよい。
図2(C)は、第3のトラフィックパターンを示す。中継局21が、アクセスポイント11からのフレームの受信と、アクセスポイントへのフレームの送信を同時に行う。このパターンでは、アクセスポイント11も、全二重通信を実行する。
図3に、本実施形態に係るフレームの基本的なフォーマット例を示す。図3のフレームフォーマットは、MACヘッダ(MAC header)、フレームボディ(Frame body)及びFCS(Frame Check Sequence)を含む。IEEE802.11規格では、フレームの種類として、大きく、データフレーム、管理フレームおよび制御フレームが存在するが、これらのいずれのフレームも基本的にこのフォーマットをベースとする。図3のフレームフォーマットから一部のフィールドが省略されたり、別のフィールドが追加されたりすることもある。
なお、全二重通信で送受信されるフレームの種類は、特定のものに限定される必要はなく、データフレーム、管理フレームおよび制御フレームのいずれも全二重通信の対象となり得る。例えば、複数のデータフレームが同時に送受信されることや、制御フレーム、データフレームおよび管理フレーム間の任意の組み合わせが同時に送受信されることも可能である。
図3に示すように、MACヘッダはフレームコントロール(Frame Control)、Duration/ID(以下、Duration(デュレーション)と記載する)、Address1、Address2、Address3、シーケンスコントロール(Sequence Control)、Address4、QoSコントロール(QoS Control)およびHTコントロール(High Throughput Control)の各フィールドを含む。
フレームコントロールフィールドは、フレームの種別などの情報が設定される。フレーム種別は、フレームコントロールフィールドの中のタイプ(Type)、サブタイプ(Subtype)という2つのフィールドで識別する。タイプで、制御フレーム、管理フレームおよびデータフレーム等の種別を特定する。サブタイプで、さらに該当タイプのフレームの種別をさらに細かく分離する。例えば、送信の許可を要求するRTS(Request to Send)フレーム、送信の許可を通知するCTS(Clear to Send)フレーム、および送達確認を表すACKフレームは、制御フレームであり、これらのフレームの種別は、サブタイプで行うことができる。なお、制御フレーム、管理フレームおよびデータフレームの詳細については、別の実施形態で説明する。
Durationフィールドには、無線媒体を占有する期間の長さを表す媒体予約時間を設定する。例えば自端末(端末、中継局、アクセスポイント)宛でないフレームを受信した場合に、当該フレームを含むPHYパケットの終わりから当該媒体予約時間に亘って、媒体が仮想的にビジーであると判定する。このような仮想的に媒体をビジーであると判定する仕組み、或いは、仮想的に媒体をビジーであるとする期間は、NAV(Network Allocation Vector)と呼ばれる。
Address1〜4フィールドには、MACアドレス(以下、アドレスと呼ぶ)または、アクセスポイントが形成するBSSの識別子であるBSSID(Basic Service Set IDentifier)が入る。Address1〜4フィールドのすべてが存在するとは限らず、例えばAddress4フィールドが存在しない構成や、Address2〜4が存在しない構成もあり得る。
Address1フィールドには、フレームの直接の受信先となるアドレス(Receiver Address(RA)アドレス)が格納される。Address2フィールドには、フレームの直接の送信元のアドレス(Transmitter Address(TA)アドレス)が格納される。Address3フィールドには、フレームの最終宛先となるアドレス(Destination Address(DA))、またはフレームの転送が開始される最初の送信元となる端末のアドレス(Source Address(SA))、またはBSSの識別子であるBSSIDが格納される。Address4フィールドには、SAまたはBSSIDが格納される。なお、Address1に関して、RAがDAに一致する場合、およびAddress2フィールドに関して、TAがSAに一致する場合もある。通常、アクセスポイントまたは中継局のアドレスは、当該アクセスポイントまたは中継局が形成するBSSのBSSIDに一致する。以下、フレームの送信形態に応じて、Address1〜4フィールドへの設定の具体例を示す。
一例として、ある端末から別の端末へ直接送信するフレームの場合、Address1フィールドには、受信先アドレス(RA)として、上記別の端末のアドレスが設定される。RAとして、端末のアドレス(ユニキャストアドレス)以外に、ブロードキャストアドレスまたはマルチキャストアドレスが設定される場合もありうる(以下、同様)。Address2フィールドには、送信元アドレス(TA)として、上記ある端末のアドレスが設定される。Address3フィールドには、BSSID(Basic Service Set IDentifier)(全てのビットに1を入れて全てのBSSIDを対象とするwildcard BSSIDの場合もある。以下同様)が設定される。Address4フィールドは、使用されなくてもよい。
中継局から、端末へ送信するフレームの場合、Address1フィールドには、RAとして、受信先である端末のアドレスが設定される。Address2フィールドには、TAとして、送信元である中継局のアドレスまたはBSSIDが設定される。Address3フィールドには、SAまたはBSSIDが設定される。Address4フィールドは、使用されなくてもよい。
端末から中継局に送信するフレームの場合、Address1フィールドには、RAとして、受信先である中継局のアドレスまたはBSSIDが設定される。Address2フィールドには、TAとして、当該端末のアドレスが設定される。Address3フィールドには、DAまたはBSSIDが設定される。Address4フィールドは、使用されなくてもよい。
アクセスポイントから中継局へ送信するフレームの場合、Address1フィールドには、RAとして、受信先である中継局のアドレスまたはBSSIDが設定される。Address2フィールドには、TAとして、送信元であるアクセスポイントのアドレスまたはBSSIDが設定される。Address3フィールドには、DAまたはBSSIDが設定される。Address4フィールドは、SAまたはBSSIDが設定される。中継局からアクセスポイントへ送信するフレームの場合も、中継局とアクセスポイント間でアドレスまたはBSSIDが入れ替わる以外は、同様である。
Address1〜4にどのアドレスまたはBSSIDを設定するかは特定の方法に限定されず、システムに参加するアクセスポイント、中継局、および端末間で共通に認識されている限り、別の方法を用いてもかまわない。
シーケンスコントロールフィールドには、フレームのシーケンス番号等が設定される。QoSフィールドは、フレームの優先度を考慮して送信を行うQoS制御を行うために用いられる。
フレームボディフィールドには、フレームのペイロードとして、最終的な宛先に送信するデータまたは情報を格納する。
FCSフィールドには、フレームのFCS情報が設定される。FCS情報として、例えば、CRC(Cyclic Redundancy Code)などがある。FCS情報は、受信側でフレームボディフィールドの誤り検出のため用いられる。
ここで、無線LANで全二重通信を行った場合に起こり得る送信権(またはアクセス権とも呼ばれる)の獲得の不公平について説明する。
図4は、アクセスポイントX、中継局Y、端末A、B間で行われる通信のシーケンス例を示す。図1に示した本実施形態に係るアクセスポイント、中継局および端末と区別するため、図1とは異なる参照符号を付している。中継局Yが、アクセスポイントXと端末Aと全二重通信を実行する場合に起こり得る問題点について説明する。なお、本実施形態において、あるフレームを、ある端末(中継局、アクセスポイントの場合を含む)から別の端末へ送信すると表現した場合、当該フレームのRAが当該別の端末のアドレスまたはBSSID、フレームのTAが当該ある端末のアドレスまたはBSSIDであることを意味する。
アクセスポイントXが、送信用のフレームを保持しており、CSMA/CAに従って、無線媒体への送信権を獲得したとする。すなわち、固定時間とランダムに決定したバックオフ時間とを合わせたキャリアセンス時間の間、キャリアセンスを行い、例えば受信信号レベル(CCA(Clear Channel Assessment)評価値)が閾値未満であれば、無線媒体はアイドルである判定して、送信権を獲得する。なお、CCA処理は、CSMA/CAを実現するための処理であり、送信前に無線媒体の空き状態を評価し、空いている(アイドルである)と判断した場合にのみ、送信を行うようにする処理である。アクセスポイントXは、獲得した送信権に基づくTXOPの間で、RTS(Request to Send)フレーム1021を中継局Yに送信する。RTSフレーム1021の送信元アドレス(TA)はアクセスポイントXのアドレス、受信先のアドレス(RA)は中継局Yである。アクセスポイントXでは、送信するRTSフレーム1021のDurationフィールドに媒体予約時間を設定する。アクセスポイントXは、例えばRTSフレームの送信の後に必要な通信の時間を計算し、その値もしくはそれより大きい値を媒体予約時間の値として設定することがある。
アクセスポイントXが送信したRTSフレーム1021は、中継局Yによって受信される。端末A、BにはRTSフレーム1021が遮蔽物または遠距離等の理由で届かないか、届いたとしてもフレーム受信を認識できない程度に微弱であるとする。
中継局Yは、RTSフレーム1021の受信からSIFS(Short InterFrame Space;SIFS)時間後に、CTS(Clear to Send)フレーム1022を送信する。なお、SIFS時間は一例であり、固定時間であれば、他の時間でもかまわない。以降の説明でSIFS時間というときは、すべてこれに倣うものとする。CTSフレーム1022の宛先アドレス(RA)は、アクセスポイントXである。送信元アドレスは存在しないのが一般的である。CTSフレーム1022のDurationフィールドには、一例として、RTSフレーム1021のDurationフィールドの値から、SIFS時間とCTSフレーム1022の送信に要する時間とを減算した値を設定する。CTSフレーム1022は、アクセスポイントXおよび端末A、Bに受信される。端末A、Bは、CTSフレーム1022は自端末宛のフレームでないため、CTSフレーム1022の受信完了からDurationフィールドに設定された値の期間の間、NAVを設定する。NAVを設定した端末は、設定している期間(送信抑制期間)の間、送信用のフレームを保持していたとしても、フレームの送信を抑制または待機する。
CTSフレーム1022を受信したアクセスポイントXは、受信完了からSIFS時間経過後に、フレーム(ここではデータフレーム)1023を送信する。これと同時に、中継局Yは、端末A宛に保持しているデータフレーム1024を送信する。すなわち、中継局Yは、CTSフレーム1022の送信完了からSIFS時間後にデータフレーム1024を送信する。よって、中継局Yは、アクセスポイントXからのデータフレーム1023の受信と、端末Aへのデータフレーム1024の送信とを同時に行う。すなわちデータフレーム1023、1024の全二重通信を行う。
ここで、アクセスポイントXから送信するデータフレーム1023の長さ(時間長)と、中継局Yから送信するデータフレーム1024の長さは同じである。これを実現するため、例えば中継局YとアクセスポイントX間で、事前にデータフレームの時間長を共通の値に決定しておいてもよい。例えば、アクセスポイントXおよび中継局Y間で、少なくともいずれか一方から管理フレームで当該データフレームの時間長に関する情報を通知してもよい。管理フレームではなく、制御フレームまたはデータフレームを利用して通知してもよい。あるいは、中継局Yが、RTSフレーム1021のDurationフィールドの値を用いて、アクセスポイントXが送信するデータフレーム長を推定し、推定した値の時間長を有するデータフレームを生成して、送信してもよい。あるいは、RTSフレーム1021に別途新たなフィールドを追加し、アクセスポイントXがRTSフレーム送信時に該フィールドを用いて送信するデータフレーム長を通知してもよい。なお、アクセスポイントXは、中継局Yが端末Aに送信するデータフレーム1024の信号を受信し得るが、この場合、受信したデータフレーム1024を廃棄するか、もしくは自局がフレーム送信中は信号受信を行わないように内部の受信回路を設定(例えばアンテナを受信回路から切り離すなど)してもよい。
中継局Yは、アクセスポイントXから送信されるデータフレーム1023を受信し、FCS検査でフレームエラーを検出せず、データフレーム1023を正しく受信できたと判定すると、受信からSIFS時間経過後に、アクセスポイントXに対し送達確認応答フレーム(ここではACKフレーム)1025を送信する。一方、端末Aは、中継局Yから送信されるデータフレーム1024を受信し、FCS検査でフレームエラーを検出せず、データフレーム1024を正しく受信できたと判定すると、受信からSIFS時間経過後に、中継局Yに対し送達確認応答フレーム(ここではACKフレーム)1026を送信する。ACKフレームの長さ(時間長)は固定長であるとする。よって、中継局Yは、アクセスポイントXへのACKフレーム1025の送信と、端末AからのACKフレーム1026の受信とを同時に行う。すなわち、ACKフレーム1025、1026の全二重通信が行われる。なお、端末Aは、中継局Yから送信されるACKフレーム1025を受信し得るが、この場合、受信したACKフレーム1025を廃棄するか、もしくは自端末がフレーム送信中は、信号受信を行わないように内部の受信回路の構成を設定(例えばアンテナを受信回路から切り離すなど)してもよい。一方、端末Bは、中継局Yが送信するACKフレーム1025と、端末Aが送信するACKフレーム1026を同時に受信するため、フレーム受信を正常に行うことができず、FCS検査でフレームエラーを検出する。
ここで、ACKフレーム1025、1026の送受信完了後、例えばアクセスポイントX、中継局Yおよび端末Aのうちの少なくとも1台と、端末Bとが、フレーム送信用の送信権を獲得するために、CSMA/CAに従って、キャリアセンスを行う状況を考える。ここでは、アクセスポイントXおよび端末Aと、端末Bとがキャリアセンスを行う状況を想定する。キャリアセンスの開始は、一例として、無線媒体のビジーが解消する、ACKフレーム1025、1026の送受信完了時から行う。キャリアセンスを行う時間長は、アクセスポイントX、および端末Aに関しては、DIFS時間と、ランダムに決めたバックオフ時間との合計時間である。なお、DIFS時間は一例であり、AIFS時間でもよい。または他の時間(IFS)でもよい。以下、DIFS時間というときは、これに倣うものとする。一方、端末Bに関しては、DIFS時間ではなく、DIFS時間より長いEIFS時間を用い、EIFS時間と、ランダムに決めたバックオフ時間との合計時間の間、キャリアセンスを行う。ここで、EIFS時間=SIFS時間+ACKフレーム長+DIFS時間、の関係がある。
端末Bでは、DIFS時間ではなく、EIFS時間を用いるのは、端末Bが、前述したようにACKフレーム1025とACKフレーム1026を同時に受信することにより、受信エラー(フレームエラー)を検出したためである。IEEE802.11規格では、チャネルの使用状況がビジーであり、かつ、ビジーの原因となったフレームで誤り(受信エラー)が検出された場合には、この後のCSMA/CAにおけるCCA処理の際に、DIFS時間の代わりに、EIFS時間を用いることが規定されている。EIFS時間を用いる理由は、以下の通りである。
1.誤りが検出されたフレームは、他の端末(中継局、アクセスポイントを含む)では正常に受信されている可能性がある。
2.他の端末で正常にフレームが受信されていれば、当該端末は、フレームの受信完了からSIFS時間経過後にACKフレームを送信する。
3.したがって、SIFS時間とACKフレーム長との合計時間の間は、当該チャネルはビジーであると想定することができる。このSIFS時間とACKフレーム長との合計時間は、フレームを送信した端末にとってACKタイムアウト時間に相当し、フレームの送信からSIFS時間後にACKフレームを受信できない場合、ACKタイムアウト時間経過後にフレームの再送を行う。
4.このため、受信エラーが検出された端末では、SIFS時間とACKフレーム長待機し、さらにこの後、通常のDIFS時間とバックオフ時間との間、キャリアセンスを行う。つまり、EIFS時間(SIFS時間と、ACKフレーム長と、DIFS時間との合計)と、バックオフ時間との間、キャリアセンスを行う。このことを図5(A)に模式的に示す。
図4の例では、端末Bは、2つのACKフレーム1025、1026を同時に受信して、フレーム誤りを検出する。つまり、ACKフレーム1025、1026を受信していることからチャネルの状態はビジーであり、かつ2つのACKフレームの信号が衝突して正常に復号できないため、フレーム誤りが検出される。図5(A)との関連では、図5(A)の「ビジー」が書かれた期間で、ACKフレーム1025、1026を受信し、これらのACKフレームの受信完了時が、当該ビジーの期間の終了時刻に対応する。端末Bは、チャネルのビジーが解消されたら、EIFS時間の間キャリアセンスを行い、さらに続けてバックオフ時間の間、キャリアセンスを行い、キャリアセンス結果(CCA評価値)がアイドルを示せば、送信権を獲得する。
一方、アクセスポイントXは、図5(B)に示すように、ACKフレーム1025の受信完了後、端末AはACKフレーム1026の送信完了後、DIFS時間とバックオフ時間との間キャリアセンスを行い、キャリアセンス結果(CCAの結果)がアイドルであれば、送信権を獲得する。
よって、全二重通信を行った中継局、および中継局と通信していた端末およびアクセスポイントは、次のCCA処理でバックオフ前に行うキャリアセンスの固定時間が、DIFS時間であるのに対して、それ以外の端末(端末B)は、EIFS時間である。このため、端末Bは、次の送信権獲得のための処理では、全二重通信を行っていた端末(ここでは中継局)、および当該端末と通信していた端末(ここではアクセスポイントX、端末A)に必ず負けてしまい、送信権を獲得できない。これにより、端末(中継局、アクセスポイントを含む)間で送受信の獲得機会に不公平が生じる。
本実施形態に係る中継局およびアクセスポイントは、この問題(EIFS発動問題)を解消するための仕組みとして、全二重通信された複数のフレームに対する複数のACKフレームの通信が同時に行われないように制御する仕組みを備えることを特徴の1つとする。
図6は、EIFS発動問題を解消するための、本実施形態に係る第1の通信シーケンスの例を示す。この例では、中継局21が、第2のトラフィックパターン(図3(B)参照)でデータフレームの全二重通信を行う場合を示す。つまり、中継局21が、アクセスポイント11からのデータフレーム523の受信と、端末(ここでは端末1)へのデータフレーム524の送信とを同時に行う。本シーケンスでは、中継局21が、アクセスポイント11からデータフレーム523の受信後に、SIFS時間の2倍とACKフレーム長とを合計した時間T101(すなわち、SIFS+ACKフレーム長+SIFS時間)経過後にACKフレーム525を返すことを特徴の1つとしている。また、アクセスポイント11が、中継局21に送信したデータフレーム523に対するACKフレームのタイムアウト時間を、通常ではSIFS時間とACKフレーム長との合計時間のところ、SIFS時間とACKフレーム長との合計時間の2倍の時間T102に拡張することを特徴の1つとしている。なお、端末1および端末2は、全二重非対応端末(例えば既存のIEEE802.11規格対応端末)であるとする。以下、本シーケンスについて詳細に説明する。
アクセスポイント11が、送信用のフレームを保持しており、CSMA/CAに従ってCCA処理を行い、無線媒体への送信権を獲得する。すなわち、固定時間(ここではDIFS時間)とランダムに決定したバックオフ時間との間、キャリアセンスを行い、例えば閾値以上のレベルの受信信号が検出されなければ、無線媒体(CCA)はアイドルと判定して、送信権を獲得する。アクセスポイント11は、獲得した送信権に基づくTXOPの間、RTSフレーム521を中継局21に送信する。RTSフレーム521の送信元アドレス(TA)はアクセスポイント11のアドレス、受信先アドレス(RA)は中継局21である。RTSフレーム521のDurationフィールドには、媒体予約時間を設定する。一例として、RTSフレームの送信完了後に必要な時間を計算し、その値以上を設定することがある。例えばRTSフレームの送信完了時刻から、データフレーム523の送信完了からSIFS時間とACKフレーム長が経過した後の時刻までの時間の値(つまりデータフレーム523の送信完了からSIFS時間後にACKフレームを受信すると仮定した場合)があり得る。
アクセスポイント11が送信したRTSフレーム521は、中継局21によって受信される。端末1および端末2にはRTSフレーム521が受信されない(端末1および端末2がアクセスポイント11の通信範囲外に存在する)状況を想定するが、受信されることを許容してもよい。
中継局21は、RTSフレーム521の受信完了からSIFS時間後に、CTSフレーム522を送信する。CTSフレーム522の受信先アドレス(RA)は、アクセスポイント11である。送信元アドレス(TA)は存在しないのが一般的である。CTSフレーム522のDurationフィールドには、例えば、RTSフレーム521のDurationフィールドの値から、SIFS時間とCTSフレーム522のフレーム長とを減算した値(期待値)よりも小さい値を表す情報を設定する。例えば、CTSフレーム522の送信完了から後述するデータフレーム524の送信完了までの時間を表す値を設定する(ここではこのように値を設定したとする。詳細および他の設定例は後述する)。中継局21から送信されたCTSフレーム522は、アクセスポイント11、端末1および端末2に受信される。端末1および端末2は、CTSフレーム522は自端末宛のフレームでないため、CTSフレーム522の受信完了からDurationフィールドに設定された期間の間、NAVを設定する。端末1および端末2は、NAVを設定している期間(送信抑制期間)の間、フレームの送信を抑制または待機する。
CTSフレーム522を受信したアクセスポイント11は、受信完了からSIFS時間経過後に、フレーム(ここではデータフレーム)523を送信する。これと同時に、中継局21は、端末1宛に保持しているデータフレーム524を送信する。すなわち、中継局21は、CTSフレーム522の送信完了からSIFS時間後にデータフレーム524を送信する。よって、中継局21は、アクセスポイント11からのデータフレーム523の受信と、端末1へのデータフレーム524の送信とを同時に行う。すなわち中継局21は、データフレームの全二重通信を行う。データフレーム523の受信先アドレス(RA)は中継局21であり、送信元アドレス(TA)はアクセスポイント11である。なお、データフレーム523の最終的な宛先が中継局21と異なる端末であれば、当該最終的な宛先となる端末のアドレスもデータフレームのヘッダ内の特定のAddressフィールドに設定する。一方、データフレーム524の受信先アドレス(RA)は端末1であり、送信元アドレス(TA)は中継局21である。
ここで、一例として、アクセスポイント11から送信するデータフレーム523の長さ(時間長)と、中継局21から送信するデータフレーム524の長さは同じである。これは、事前にデータフレームの時間長として、中継局21とアクセスポイント11間で共通の値を決定しておいてもよい。アクセスポイント11および中継局21間で管理フレームを通信することで決定してもよいし、システムとして予め決定しておいてもよい。あるいは、中継局21が、RTSフレーム521のDurationフィールドの値からアクセスポイント11が送信するデータフレーム長を推定し、推移した値の時間長のデータフレームを中継局21が送信してもよい。あるいは、RTSフレーム521に別途新たなフィールドを追加し、アクセスポイントXがRTSフレーム送信時に該フィールドを用いて送信するデータフレーム長を通知してもよい。なお、アクセスポイント11は、中継局21が送信する端末1宛のデータフレーム524も受信し得るが、当該データフレーム524は廃棄するか、もしくは自局がフレーム送信中は信号受信を行わないように内部の受信回路を設定してもよい。
中継局21から送信されるデータフレーム524を受信した端末1は、FCS検査でフレームエラーを検出せず、データフレーム524を正しく受信できたと判定すると、受信完了からSIFS時間経過後に、送達確認応答フレーム(ここではACKフレーム)526を送信する。CTSフレーム522のDuration値は、データフレーム524の送信完了までであるため、端末1はこの時点ではNAVが終了しており、ACKフレームを送信可能である。仮にCTSフレーム522のDuration値が前述した期待値に一致するときは、NAV期間に該当するため、端末1はACKフレーム526を送信できないことになる。一方、アクセスポイント11から送信されるデータフレーム523を受信した中継局21は、FCS検査でフレームエラーを検出せず、データフレーム523を正しく受信できたと判定すると、データフレーム523の受信完了から、SIFS時間の2倍とACKフレーム長とを合計した時間(すなわち、SIFS時間+ACKフレーム長+SIFS時間)T101の経過後に、ACKフレーム525を送信する。通常であれば、データフレーム523の受信完了からSIFS時間後のACKフレームを送信するところ、ACKフレームを送信するまでの待機時間を拡張して、データフレーム523の受信完了から拡張した待機時間T101後に、ACKフレームを送信する。なお、各端末(中継局を含む)が送信するACKフレーム長は一定であるとする。
このように、中継局21は、データフレーム523、524は全二重で送受信するものの、データフレーム523、524に対するACKフレーム525、526については、全二重ではなく、SIFS時間を空けて、順番に送受信する。つまり、中継局21は、自装置がACKフレーム525を送信するタイミングを、端末1がACKフレーム526を送信するタイミングから遅らせる。これにより、端末2では、2つのACKフレームを同時に受信することはなく、中継局21宛のACKフレーム526と、アクセスポイント11宛のACKフレーム525を正常に受信する。なお、ACKフレーム526、525は、端末2宛でないため、端末2ではこれらのACKフレームを廃棄すればよい。
また、中継局21がACKフレーム525を送信するタイミングを、データフレーム523の受信完了からSIFS時間後のタイミングから後ろにずらしたことにより、アクセスポイント11のACKタイムアウト時間T102を、SIFS時間とACKフレーム長とを合計した値の2倍に設定する。すなわち、2×(SIFS時間+ACKフレーム長)に設定する。つまり、一般的なACKタイムアウト時間である、SIFS時間とACKフレーム長との合計時間よりも、タイムアウト時間を長くする。このように長くしたACKタイムアウト時間T102を、拡張されたACKタイムアウト時間と呼ぶこともある。すなわち、アクセスポイント11は、RTSフレームを送信し、これに対するCTSフレームを受信した場合に、CTSフレームのDurationの値と期待値との関係に基づいて、ACKタイムアウト時間を制御する。Durationの値が期待値よりも短い場合に、中継局21が通常のフレーム送受信ではなく、Full Duplexを利用したフレーム送受信を実施すると認識し、ACKタイムアウト時間を拡張し、期待値に一致する場合(または期待値より大きい場合)はACKタイムアウト時間を変更しない。これによりアクセスポイント11は、Durationの値が期待値より小さい場合に、データフレーム523の送信からSIFS時間後にACKフレームを受信しなくても、この時点ではACKタイムアウトにならないように制御する。すなわち、データフレーム523の送信完了から、拡張されたACKタイムアウト時間T102が経過するまでは、ACKタイムアウトを検出しない。よって、データフレーム523の送信完了から時間T101(=SIFS+ACKフレーム長+SIFS時間)経過後に中継局21から送信されるACKフレーム525を正常に受信できる。
ここで、ACKタイムアウト時間T102を、2×(SIFS時間+ACKフレーム長)にするため、RTSフレーム521またはデータフレーム523のDurationフィールドに設定する値を、ACKタイムアウト時間T102に応じた値にしてもよい。例えばデータフレーム523のDurationフィールドには、CTSフレーム522のDurationフィールドの値を踏まえACKタイムアウト時間を拡張することになるため、データフレーム523の送信完了からACKフレーム525の受信完了までの時間に応じた値を設定してもよい。これにより、アクセスポイント11は、データフレーム523の送信完了から2×(SIFS時間+ACKフレーム長)の間、すなわち拡張されたACKタイムアウト時間T102の間に、アクセスポイント11の通信範囲内に存在する他の端末による送信を防止できる。
ここで、前述したように、中継局21が送信するCTSフレーム522のDurationフィールドの値は、CTSフレーム522の送信完了から、端末1がACKフレーム526を送信開始するまでの時間以下の値にする。例えば、SIFS時間、または、(SIFS時間+データフレーム長)、または(SIFS時間+データフレーム長+SIFS時間)の値に設定する。これにより、端末1が、データフレーム524の受信完了からSIFS時間後に、CTSフレーム522に応じて設定したNAVに起因してACKフレーム526を送信できなくなる状況を防止できる。仮にCTSフレーム522のDuration値の期間が、ACKフレーム526の送信時間帯と重なる場合、端末1は、NAV期間内であるとして、バーチャルキャリアセンスにより無線媒体がビジーと判断され、ACKフレーム526を送信できない可能性がある。そこで、このような状況の発生を防止するべく、CTSフレーム522のDurationフィールドには、ACKフレーム526の送信開始時刻よりも前にNAV期間が終了するように計算した値(媒体予約時間)を設定する。この場合、CTSフレーム522を受信したアクセスポイント11は、CTSフレーム522のDurationの値が期待値より小さいと判断できる。このように期待値より小さいと判断した場合に、ACKフレームのタイムアウト時間を拡張することを決定してもよい。Duration値が期待値に一致する、もしくは期待値より長い場合は、通常通り、データフレーム523の送信完了からSIFS時間とACKフレーム長を合わせた時間後をACKフレームのタイムアウト時間としてもよい。
ACKフレーム525、526の送受信完了後、例えばアクセスポイント11、中継局21、端末1および端末2が、無線媒体の送信権を獲得するために、CSMA/CAに従って、CCA処理を行う状況を考える。図6のシーケンス例では、アクセスポイント11、中継局21、端末1および端末2のいずれも、ACKフレーム525の送信完了に応じて無線媒体のビジーが解消されたと判断して、キャリアセンスを開始する。アクセスポイント11、中継局21、端末1および端末2は、DIFS時間T111、T112、T113、T114と、各々がランダムに決定したバックオフ時間との合計時間の間、キャリアセンスを行う。図4のシーケンス例と異なり、端末2(図4の端末Bに対応)も、バックオフ前の固定時間としてEIFS時間ではなく、DIFS時間を起動する。これは、中継局21がACKフレーム525を送信するタイミングを、端末1がACKフレーム526を送信するタイミングと重複しないように時間的に後にずらしたことにより、端末2では2つのACKフレームをそれぞれ正常に復号できる(フレームエラーを検出しない)ためである。アクセスポイント11、中継局21、端末1および端末2のうち、最も早くキャリアセンスが完了し、無線媒体がアイドルと判定した端末(中継局、アクセスポイントも含む)が送信権を獲得する。送信権を獲得した端末は、送信権に基づくTXOP期間で、フレームを送信する。
このように図6のシーケンス例によれば、中継局21がACKフレーム525を送信するタイミングを、端末1が送信するACKフレーム526と重複しないように時間的に後にずらしたことにより、端末2では2つのACKフレームの同時受信に起因するフレームエラーは検出しない。よって、端末2は、CCA処理において、端末1、アクセスポイント11および中継局21と同じ固定時間(DIFS時間)を用いることができ、送信権の獲得の機会に関して、端末2が不利になることを防止できる。
図7は、本実施形態に係る第2の通信シーケンスの例を示す。この例では、中継局21が、第1のトラフィックパターン(図3(A)参照)でデータフレームの全二重通信を行う場合を示す。つまり、中継局21が、端末(ここでは端末1)からのデータフレーム553の受信と、アクセスポイント11へのデータフレーム554の送信とを同時に行う。本シーケンスでは、アクセスポイント11が、中継局21から他端末宛のCTSフレームを受信し、そのSIFS時間後に、中継局21から自局宛てのデータフレーム554を受信した場合に、中継局21が通常のフレーム送受信ではなく、Full Duplexを利用したフレーム送受信を実施すると認識し、SIFS時間の2倍とACKフレーム長とを合計した時間T201(すなわち、SIFS+ACKフレーム長+SIFS時間)経過後に、中継局21にACKフレーム556を返すことを特徴の1つとしている。つまり、データフレーム554を受信完了後、ACKフレーム556を送信するまでに待機する時間を通常のSIFS時間から時間T201に拡張し、時間T201の経過後、ACKフレーム556を送信する。なお、端末1、端末2は、全二重非対応端末(例えば既存のIEEE802.11規格対応端末)である。以下、本シーケンスについて詳細に説明する。
端末1が、送信用のフレームを保持しており、CSMA/CAに従ってCCA処理を行い、無線媒体への送信権を獲得する。すなわち、固定時間(ここではDIFS時間)とランダムに決定したバックオフ時間との間、キャリアセンスを行い、例えば閾値以上のレベルの受信信号が検出されなければ、無線媒体(CCA)はアイドルとして、送信権を獲得する。端末1は、獲得した送信権に基づくTXOP期間で、RTSフレーム551を中継局21に送信する。RTSフレーム551の送信元アドレス(TA)は端末1のアドレス、受信先アドレス(RA)は中継局21である。RTSフレーム551のDurationフィールドには、この後の通信に必要な媒体予約時間を設定する。一例として、RTSフレームの送信完了後に必要な時間を計算し、その値以上を設定することがある。当該必要な時間として、例えばRTSフレームの送信完了から、中継局21からACKフレーム555の受信を完了するまでの時間がある。
端末1が送信したRTSフレーム551は、中継局21によって受信される。RTSフレーム551は、端末2によっても受信され得る。RTSフレーム511は、アクセスポイント11が通信範囲外に存在する状況を想定し、アクセスポイント11には受信されないとする。
中継局21は、RTSフレーム551の受信完了からSIFS時間後に、CTSフレーム552を送信する。CTSフレーム552の受信先アドレス(RA)は、端末1のアドレスである。送信元アドレス(TA)は存在しないのが一般的である。CTSフレーム552のDurationフィールドには、例えば、RTSフレーム551のDurationフィールドの値から、SIFS時間とCTSフレーム522のフレーム長とを減算した値を設定する。CTSフレーム552は、端末1で受信される。また、CTSフレーム552は、アクセスポイント11および端末2にも受信され得る。この場合、アクセスポイント11および端末2は、CTSフレーム522は自端末宛のフレームでないため、CTSフレーム552の受信完了からDurationフィールドに設定された期間の間、NAVを設定する。
CTSフレーム552を受信した端末1は、受信からSIFS時間経過後に、フレーム(ここではデータフレーム)553を送信する。これと同時に、中継局21は、データフレーム554をアクセスポイント11に送信する。すなわち、中継局21は、CTSフレーム552の送信完了からSIFS時間後にデータフレーム554を送信する。よって、中継局21は、端末1からのデータフレーム553の受信と、アクセスポイント11へのデータフレーム554の送信とを同時に行う。すなわちデータフレームの全二重通信を行う。なお端末1が送信したデータフレーム553は、アクセスポイント11が通信範囲外に存在する状況を想定するため、アクセスポイント11には受信されないとし、これによりアクセスポイント11はデータフレーム554を正常に受信できる。データフレーム553の送信元アドレス(TA)は端末1のアドレスであり、受信先のアドレス(RA)は中継局21である。なお、データフレーム553の最終的な宛先が中継局21と異なる端末であれば、当該端末のアドレスもデータフレームのヘッダ内の該当するAddressフィールドに設定してもよい。また、データフレーム554の送信元アドレス(TA)は中継局21のアドレスであり、受信先のアドレス(RA)はアクセスポイント1のアドレスまたはBSSIDである。なお、データフレーム554の最終的な宛先がアクセスポイント11と異なる端末であれば、当該端末のアドレスもデータフレームのヘッダ内の該当するAddressフィールドに設定してもよい。
ここで、端末1から送信するデータフレーム553の長さ(時間長)と、中継局21から送信するデータフレーム554の長さは、一例として同じである。これは、事前にデータフレームの時間長として、中継局21と端末1間で共通の値に決定しておいてもよい。共通の値を決定するため、事前に端末1および中継局21間で管理フレームを通信してもよいし、システムとして予め決定しておいてもよい。あるいは、RTSフレーム551のDurationフィールドの値(Duration値)から端末1が送信するデータフレーム長を推定し、推定した値の時間長のデータフレームを中継局21が生成および送信してもよい。あるいは、RTSフレーム551に別途新たなフィールドを追加し、端末1がRTSフレーム送信時に該フィールドを用いて送信するデータフレーム長を通知してもよい。なお、中継局21および端末1は、送信しようとするデータフレームのフレーム長が上記の共通の値に満たない場合は、パディングデータをフレームの末尾に付加してもよい。なお、端末1は、中継局21が送信するアクセスポイント11宛のデータフレーム554も受信し得るが、当該データフレーム554は廃棄するか、もしくは自局がフレーム送信中は受信を行わないように内部の受信回路を設定してもよい。
端末1から送信されるデータフレーム553を受信した中継局21は、FCS検査でフレームエラーを検出せず、データフレーム553を正しく受信できたと判定すると、受信完了からSIFS時間経過後に、送達確認応答フレーム(ここではACKフレーム)555を端末1に送信する。一方、中継局21から送信されるデータフレーム554を受信したアクセスポイント11は、FCS検査でフレームエラーを検出せず、データフレーム554を正しく受信できたと判定すると、データフレーム554の受信完了から、SIFS時間の2倍とACKフレーム長とを合計した時間(すなわち、SIFS+ACKフレーム長+SIFS時間)T201の経過後に、ACKフレーム556を中継局21に送信する。より詳細に、アクセスポイント11は、他端末宛のCTSフレーム552を受信し、そのSIFS時間後に自局宛てのデータフレーム554を受信した場合、SIFS時間後ではなく、SIFS時間を拡張した時間T201(SIFS+ACKフレーム長+SIFS時間)後に、ACKフレームを送信する。なお、ACKフレーム長は一定であるとする。時間T201は、データフレーム553の終端からACKフレーム555の始端までの時間よりも長い。
このように、中継局21は、データフレーム553、554は全二重で送受信するものの、データフレーム553、554に対するACKフレーム555、556については、全二重ではなく、各々SIFS時間を空けて、順番に送受信する。このため、アクセスポイント11は、自局がACKフレーム556を送信するタイミングを、中継局21がACKフレーム555を送信するタイミングより遅いタイミングとし、ACKフレーム555と時間帯が重複しないようにする。これにより、端末2では、アクセスポイント11からの信号が届く状況であっても、2つのACKフレームを同時に受信することによるエラーは発生しない。
また、アクセスポイント11がACKフレーム556を送信するタイミングを、データフレーム554の受信完了からSIFS時間後のタイミングから後ろにずらしたことにより、中継局21のACKタイムアウト時間T202を、SIFS時間とACKフレーム長とを合計した値の2倍に設定する。すなわち、2×(SIFS時間+ACKフレーム長)に設定する。つまり、一般的なACKタイムアウト時間である、SIFS時間とACKフレーム長との合計時間よりも長くなるように、タイムアウト時間を拡張する。このように長くしたACKタイムアウト時間T202を、拡張されたACKタイムアウト時間と呼ぶこともある。これにより中継局21は、データフレーム554の送信からSIFS時間後にACKフレームを受信しなくても、この時点ではACKタイムアウトにならず、データフレーム554の送信完了から、拡張されたACKタイムアウト時間T202が経過するまでは、ACKタイムアウトを検出しない。よって、データフレーム554の送信完了から時間T201(=SIFS+ACKフレーム長+SIFS時間)経過後にアクセスポイント11から送信されるACKフレーム556を正常に受信できる。
ここで、中継局21が送信するCTSフレーム552のDurationフィールドの値は、一例として、CTSフレーム552の送信完了から、アクセスポイント11がACKフレーム556を送信完了までの時間長もしくはそれ以下の値にする。具体例として、(SIFS時間+データフレーム長+SIFS時間+ACKフレーム長+SIFS時間+ACKフレーム長)に設定する。なお、アクセスポイント11は、データフレーム554の受信完了から時間T201後に、CTSフレーム552に応じて設定したNAVの期間内であっても、全二重対応端末であるため、ACKフレーム556を送信するよう動作可能であるものとする。またDurationフィールドの値を、CTSフレーム552の送信完了から、ACKフレーム556の送信完了までとすることで、ACKフレーム556の送信完了まで端末2の送信を抑制することもできる。
ACKフレーム555、556の送受信完了後、例えばアクセスポイント11、中継局21、および端末2が、無線媒体の送信権を獲得するために、CSMA/CAに従って、CCA処理を行う状況を考える。図7のシーケンス例では、アクセスポイント11、中継局21、および端末2のいずれも、ACKフレーム556の送信の完了に応じて無線媒体のビジーが解消されたと判断して、キャリアセンスを開始する。アクセスポイント11、中継局21、および端末2は、それぞれDIFS時間T211、T212、T214と、各々がランダムに決定したバックオフ時間との合計時間の間、キャリアセンスを行う。図4のシーケンス例と異なり、端末2(図4の端末Bに対応)も、バックオフ前の固定時間としてEIFS時間ではなく、DIFS時間を起動する。これは、アクセスポイント11がACKフレーム556を送信するタイミングを、中継局21がACKフレーム555を送信するタイミングと重複しないように時間的に後にずらしたことにより、端末2では2つのACKフレームを同時に受信することによるフレームエラーを検出しないためである。最も早くキャリアセンスが完了し、無線媒体がアイドルと判定した端末(中継局、アクセスポイントも含む)が送信権を獲得し、送信権に基づくTXOP期間で、フレームを送信する。なお、仮に端末1がACKフレーム555の受信後に送信権を獲得しようとする場合、ACKフレーム556を受信できない位置に存在する場合は、ACKフレーム555の受信完了後からCCA処理を行うことになる。
なお、端末2は、端末1から送信されるデータフレーム553と中継局21から送信されるデータフレーム554とを同時に受信した場合、フレームエラーを検出し、EIFS時間の起動条件が成立する。しかしながら、その後に、端末2は、ACKフレーム555またはACKフレーム556を正常に受信することで、EIFS時間の起動条件は解消される。
このように図7のシーケンス例によれば、アクセスポイント11がACKフレーム556を送信するタイミングを、中継局21がACKフレーム555を送信する時間帯と重複しないように時間的に後にずらしたことにより、端末2で2つのACKフレームを同時に受信することを防止できる。よって、端末2は、その後のCCA処理においても、EIFS時間を発動することなく、端末1、アクセスポイント11および中継局21と同じ固定時間(DIFS時間)を用いることができる。これにより、送信権の獲得の機会に関して端末2が不利になることを防止できる。
図8は、本実施形態に係る第3の通信シーケンスの例を示す。この例では、アクセスポイント11と中継局21が、第3のトラフィックパターン(図3(C)参照)でデータフレームの全二重通信を行う場合を示す。つまり、アクセスポイント11が、中継局21へのデータフレーム584の送信と、中継局21からのデータフレーム583の受信とを同時に行う。中継局21が、アクセスポイント11からのデータフレーム584の受信と、アクセスポイント11へのデータフレーム583の送信とを同時に行う。本シーケンスでは、中継局21が、アクセスポイント11からのデータフレーム584の受信完了から、SIFS時間の2倍とACKフレーム長とを合計した時間T301(すなわち、SIFS+ACKフレーム長+SIFS時間)経過後にACKフレーム586を返すことを特徴の1つとしている。また、アクセスポイント11が、データフレーム584に対するACKフレームのタイムアウト時間を、SIFS時間の2倍と、ACKフレーム長の2倍との合計時間に拡張することを特徴の1つとしている。なお、端末1および端末2は、全二重非対応端末(例えば既存のIEEE802.11規格対応端末)であるとする。以下、本シーケンスについて詳細に説明する。
中継局21が、送信用のフレームを保持しており、CSMA/CAに従ってCCA処理を行い、無線媒体への送信権を獲得する。すなわち、固定時間(ここではDIFS時間)とランダムに決定したバックオフ時間との間、キャリアセンスを行い、例えば閾値以上のレベルの受信信号が検出されなければ、無線媒体(CCA)はアイドルとして、送信権を獲得する。中継局21は、獲得した送信権に基づくTXOP期間で、RTSフレーム581をアクセスポイント11に送信する。RTSフレーム581の送信元アドレス(TA)は中継局21のアドレス、受信先アドレス(RA)はアクセスポイント11のアドレスまたはBBSIDである。RTSフレーム581のDurationフィールドには、媒体予約時間を設定する。一例として、RTSフレームの送信後の通信に必要な時間を計算し、その値を設定することがある。例えばRTSフレーム581の送信完了後、アクセスポイント11からACKフレーム585を受信完了するまでの時間、またはACKフレーム586をアクセスポイント11に送信完了するまでの時間などがある。
中継局21が送信したRTSフレーム581は、アクセスポイント11によって受信される。RTSフレーム581は、端末1および端末2にも受信される。端末1および端末2は、RTSフレーム581のDurationフィールドに基づき、NAVを設定する。なお、端末1および端末2がRTSフレーム581を受信しない場合であっても、本シーケンスは実施可能である。
アクセスポイント11は、RTSフレーム581の受信完了からSIFS時間後に、CTSフレーム582を送信する。CTSフレーム582の受信先アドレス(RA)は、中継局21のアドレスである。送信元アドレス(TA)は存在しないのが一般的である。CTSフレーム582のDurationフィールドには、例えば、RTSフレーム581のDurationフィールドの値から、SIFS時間とCTSフレーム582のフレーム長とを減算した値を設定する。CTSフレーム582は、中継局21で受信される。また、端末1および端末2の位置に応じて、CTSフレーム582は、端末1および端末2でも受信され得る。この場合、端末1および端末2は、CTSフレーム582のDurationフィールドに基づき、NAVを設定(更新)する。
CTSフレーム582を受信した中継局21は、CTSフレーム582の受信完了からSIFS時間経過後に、フレーム(ここではデータフレーム)583をアクセスポイント11に送信する。一方アクセスポイント11は、CTSフレーム582の送信完了からSIFS時間後に、データフレーム584を送信する。これにより、中継局21は、データフレーム583の送信とデータフレーム584の受信とを同時に行い、アクセスポイント11はデータフレーム584の送信とデータフレーム583の受信とを同時に行う。すなわちアクセスポイント11および中継局21は、それぞれデータフレームの全二重通信を行う。なお、データフレーム583の送信元アドレス(TA)は中継局21のアドレスであり、受信先のアドレス(RA)はアクセスポイント11である。なお、データフレーム583の最終的な宛先がアクセスポイント11と異なる端末であれば、当該端末のアドレスもデータフレームのヘッダ内の該当するAddressフィールドに設定してもよい。また、データフレーム584の送信元アドレス(TA)はアクセスポイント11のアドレスまたはBSSIDであり、受信先のアドレス(RA)は中継局21のアドレスである。なお、データフレーム584の最終的な宛先が中継局21と異なる端末であれば、当該端末のアドレスもデータフレームのヘッダ内の該当するAddressフィールドに設定してもよい。
ここで、中継局21から送信するデータフレーム583の長さ(時間長)と、アクセスポイント11から送信するデータフレーム584の長さは、一例として同じである。これは、事前にデータフレームの時間長として、中継局21とアクセスポイント11間で共通の値を決定しておいてもよい。共通の値を決定するため、事前にアクセスポイント11および中継局21間で管理フレームを通信してもよい。または共通の値は、システムとして予め決定されていてもよい。あるいは、アクセスポイント11が、RTSフレーム581のDurationフィールドの値から中継局21により送信されるデータフレーム長を計算し、計算した値の時間長のデータフレームをアクセスポイント11が生成および送信してもよい。あるいは、RTSフレーム581に別途新たなフィールドを追加し、中継局21がRTSフレーム送信時に該フィールドを用いて送信するデータフレーム長を通知してもよい。
中継局21から送信されるデータフレーム583を受信したアクセスポイント11は、FCS検査でフレームエラーを検出せず、データフレーム583を正しく受信できたと判定すると、受信完了からSIFS時間経過後に、送達確認応答フレーム(ACKフレーム)585を中継局21に送信する。一方、アクセスポイント11から送信されるデータフレーム584を受信した中継局21は、FCS検査でフレームエラーを検出せず、データフレーム584を正しく受信できたと判定すると、データフレーム584の受信完了から、SIFS時間の2倍とACKフレーム長とを合計した時間(すなわち、SIFS時間+ACKフレーム長+SIFS時間)T301の間、ACKフレームの送信を待機し、時間T301の経過後に、ACKフレーム586をアクセスポイント11に送信する。つまり、中継局21は、送信したRTSフレーム581に対してCTSフレーム582を受信し、そのSIFS時間後に自装置宛のデータフレーム584を受信した場合は、SIFS時間後ではなく、SIFS時間の2倍とACKフレーム長とを合計した時間T301後に、ACKフレーム586を送信する。なお、アクセスポイント11および中継局21が送信するACKフレーム長は一定であるとする。
このように、中継局21は、データフレーム583、584を全二重で送受信するものの、データフレーム583、584に対するACKフレーム586、585については、全二重ではなく、各々SIFS時間を空けて、順番に送受信する。つまり、中継局21は、自装置がACKフレーム586を送信するタイミングを、アクセスポイント11がACKフレーム585を送信するタイミングから遅らせ、ACKフレーム585と送信時間帯が重複しないようにする。これにより、端末1および端末2が、アクセスポイント11からの信号を受信可能な状況であっても、中継局21およびアクセスポイント11の双方からACKフレームを同時に受信することによるフレームエラーの発生は防止される。なお、ACKフレーム585、586は、端末1および端末2のいずれ宛でもないため、端末1および端末2ではこれらのACKフレームを受信した場合は、廃棄する。
また、中継局21がACKフレーム586を送信するタイミングを、データフレーム584の受信完了からSIFS時間後のタイミングより後ろにずらしたことにより、アクセスポイント11のACKタイムアウト時間T302を、SIFS時間とACKフレーム長とを合計した値の2倍に設定する。すなわち、2×(SIFS時間+ACKフレーム長)に設定する。つまり、一般的なACKタイムアウト時間である、SIFS時間とACKフレーム長との合計時間よりも、タイムアウト時間を長くする。このように長くしたACKタイムアウト時間を、拡張されたACKタイムアウト時間と呼ぶこともある。つまり、アクセスポイント11は、受信したRTSフレーム581に対するCTSフレーム582を送信し、そのSIFS時間後にCTSフレーム582と同じ受信先の端末(ここでは中継局)にデータフレーム584を送信した場合は、データフレーム584のACKタイムアウト時間を拡張する。これによりアクセスポイント11は、データフレーム584の送信からSIFS時間後にACKフレームを受信しなくても、この時点ではACKタイムアウトにならない。データフレーム584の送信完了から、拡張されたACKタイムアウト時間T302が経過するまでは、ACKタイムアウトを検出しない。よって、アクセスポイント11は、データフレーム584の送信完了から時間T301(=SIFS時間+ACKフレーム長+SIFS時間)経過後にアクセスポイント11から送信されるACKフレーム586を正常に受信できる。
ACKフレーム585、586の送受信完了後、例えばアクセスポイント11、中継局21、端末1および端末2が、無線媒体の送信権を獲得するために、CSMA/CAに従って、CCA処理を行う状況を考える。図8のシーケンス例では、アクセスポイント11、中継局21、端末1および端末2のいずれも、ACKフレーム586の送信の完了に応じて無線媒体のビジーが解消されたと判断して、キャリアセンスを開始したとする。アクセスポイント11、中継局21、端末1および端末2は、それぞれDIFS時間T311、T312、T313、T314と、各々がランダムに決定したバックオフ時間との合計時間(待機時間)の間、キャリアセンスを行う。全二重通信の対象とならなかった端末1および端末2も、バックオフ前の固定時間としてEIFS時間ではなく、DIFS時間を起動する。これは、中継局21がACKフレーム586を送信するタイミングを、アクセスポイント11がACKフレーム585を送信するタイミングと重複しないように時間的に後にずらしたことにより、端末1および端末2では、2つのACKフレームをそれぞれ正常に受信できる(フレームエラーを検出しない)ためである。最も早くキャリアセンスが完了し、無線媒体がアイドルと判定した端末(中継局、アクセスポイントも含む)が送信権を獲得し、送信権に基づくTXOP期間で、フレームを送信する。
なお、端末1および端末2は、アクセスポイント11から送信されるデータフレーム584と中継局21から送信されるデータフレーム583とを同時に受信した場合、フレームエラーを検出し、EIFS時間の起動条件が成立する。しかしながら、その後に、端末1および端末2は、ACKフレーム585またはACKフレーム586を正常に受信することで、EIFS時間の起動条件は解消される。
このように図8のシーケンス例によれば、中継局21がACKフレーム586を送信するタイミングを、アクセスポイント11がACKフレーム585を送信する時間帯と重複しないように時間的に後にずらしたことにより、端末1および端末2で2つのACKフレームを同時に受信することを防止できる。よって、端末1および端末2は、その後のCCA処理において、EIFS時間を発動することなく、キャリアセンスのバックオフ前の固定時間としてDIFS時間を用いることができる。これにより、送信権の獲得の機会に関して、全二重通信の対象でなかった端末1および端末2が不利になることを防止できる。
図8のシーケンスでは、中継局21がACKフレームを送信するタイミングを遅らせたが、中継局21は、データフレーム584の受信完了からSIFS時間後にACKフレームを送信し、アクセスポイント11がACKフレームを送信するタイミングを遅らせてもよい。すなわち、アクセスポイント11が、データフレーム584の送信完了から時間T301後に、ACKフレームを送信してもよい。この場合、中継局21は、データフレーム583に対するACKタイムアウト時間として、拡張されたACKタイムアウト時間を採用すればよい。また、図8のシーケンスでは、シーケンスの開始として、中継局21がRTSフレームを送信したが、アクセスポイントがRTSフレームを送信してもよい。
図6〜図8のシーケンス例では、複数のデータフレームを全二重で通信する例を示したが、個々のデータフレームは、複数のMACフレームもしくは複数のMACフレームのペイロード部分を連接するようになっていてもよい。前者はIEEE802.11規格ではA(Aggregated)−MPDU、後者はA(Aggregated)−MSDU(MAC service data unit)と呼ばれる。A−MPDUの場合、複数のMACフレームに対する応答をまとめて送信するため、送達確認応答フレームとして、ACKフレームの代わりに、BA(Block ACK)フレームが用いられる。なお連接の対象はデータフレームのみならず、管理フレームまたは制御フレームも連接の対象となる。
図9は、本実施形態に係る中継局21の動作の一例のフローチャートを示す。この中継局21の動作は、図6のシーケンス例の中継局21の動作に対応する。中継局21は、アクセスポイント11からRTSフレーム521を受信し(S101)、CTSフレーム522を応答する(S102)。CTSフレーム522のDurationフィールドの値を期待値(例えばRTSフレームのDurationフィールドの値から、SIFS時間と、CTSフレーム長とを減じた値)よりも小さい値に設定する。中継局21は、CTSフレーム522の送信完了からSIFS時間後にアクセスポイント11からデータフレーム523を受信すると同時に、データフレーム524を端末1に送信する(S103)。中継局21は、データフレーム524の送信完了からSIFS時間後に端末1からACKフレーム526を受信する(S104)。中継局21は、データフレーム523に対するACKフレームを送信するための待機時間を、SIFS時間から、SIFS時間の2倍と、ACKフレーム長との合計時間T101に拡張し、当該拡張した待機時間T101が経過したら、ACKフレーム525をアクセスポイント11に返す(S105)。
図10は、本実施形態に係るアクセスポイント11の動作の一例のフローチャートを示す。このアクセスポイント11の動作は、図6のシーケンス例のアクセスポイント11の動作に対応する。アクセスポイント11は、RTSフレーム521を送信し(S111)、CTSフレーム522を受信する(S112)。CTSフレーム522のDurationフィールドの値が期待値より小さいかを判断し(S113)、期待値より小さい場合は、データフレーム523の送信後、ACKフレームのタイムアウト時間を拡張する(S114)。例えば通常であればタイムアウト時間は、SIFS時間とACKフレーム長との合計時間であるが、当該合計時間の2倍の時間に拡張する。そして、アクセスポイント11は、当該拡張後の時間内で、中継局21からのACKフレーム525の受信を待機する。なお、CTSフレーム522のDurationフィールドの値が期待値に一致もしくは大きい場合は、データフレーム523の送信後、通常通り、SIFS時間とACKフレーム長との合計時間の間、中継局21からのACKフレームの受信を待機する。
図11は、本実施形態に係るアクセスポイント11の動作の一例のフローチャートを示す。このアクセスポイント11の動作は、図7のシーケンス例のアクセスポイント11の動作に対応する。アクセスポイント11は、中継局21から他端末宛のCTSフレーム552を受信し(S201)、そのSIFS時間後に自端末宛のデータフレーム554を受信したか判断する(S202)。自端末宛のデータフレーム554を受信した場合、データフレーム554に対するACKフレームを送信するための待機時間を、SIFS時間から、SIFS時間の2倍とACKフレーム長との合計時間T201に拡張し、当該拡張された待機時間T201だけ待機した後、ACKフレーム556を送信する(S203)。
図12は、本実施形態に係る中継局21の動作の一例のフローチャートを示す。この中継局21の動作は、図7のシーケンス例の中継局21の動作に対応する。中継局21は、受信したRTSフレーム551に対してCTSフレーム552を送信し(S211)、CTSフレーム552の送信完了からSIFS時間後にデータフレーム553を受信する。このとき、中継局21は、データフレーム553の受信と同時にデータフレーム554をアクセスポイント11に送信する場合、すなわち、CTSフレーム552の送信完了からSIFS時間後のデータフレーム554を送信する場合(S212のYES)、データフレーム554の送信後に待機するACKフレームのタイムアウト時間を拡張する(S213)。具体的に、通常であればタイムアウト時間は、SIFS時間とACKフレーム長との合計時間であるが、当該合計時間の2倍の時間に拡張する。中継局21は、データフレーム553の受信完了からSIFS時間後にACKフレーム555を送信する。また、中継局21は、データフレーム554の送信後、当該拡張されたタイムアウト時間内で、アクセスポイント11からのACKフレーム556の受信を待機する。
図13は、本実施形態に係る中継局21の動作の一例のフローチャートを示す。この中継局21の動作は、図8のシーケンス例の中継局21の動作に対応する。中継局21は、RTSフレーム581を送信し(S301)、それに対する応答としてCTSフレーム582を受信する(S302)。CTSフレーム582の受信完了からSIFS時間後に、データフレーム583を送信する。データフレーム583の送信と同時に、RTSフレーム581の受信先であるアクセスポイント11からデータフレーム584を受信したかを判断し(S303)、受信した場合は、ACKフレームを送信するための待機時間を、SIFS時間から、SIFS時間の2倍とACKフレーム長との合計時間T301に拡張する。中局21は、データフレーム583の送信完了からSIFS時間後にACKフレーム585を受信する。また中継局21は、データフレーム584の受信から当該拡張した待機時間T301だけ待機した後、ACKフレーム586を送信する(S304)。
図14は、本実施形態に係るアクセスポイント11の動作の一例のフローチャートを示す。このアクセスポイント11の動作は、図8のシーケンス例のアクセスポイント11の動作に対応する。アクセスポイント11は、受信したRTSフレーム581に対してCTSフレーム582を送信し(S311)、CTSフレーム582の送信完了からSIFS時間後にデータフレーム583を受信する(S312)。このとき、アクセスポイント11は、データフレーム583の受信と同時にデータフレーム584をアクセスポイント11に送信する場合、すなわちCTSフレーム582の送信完了からSIFS時間後に、CTSフレーム582の受信先と同じ端末(ここでは中継局)にデータフレーム584を送信する場合(S312のYES)、データフレーム584の送信後に待機するACKフレームのタイムアウト時間を拡張する(S313)。例えば、通常であれば待機時間はSIFS時間とACKフレーム長との合計時間であるが、当該合計時間の2倍の時間に待機時間を拡張する。アクセスポイント11は、データフレーム583の受信完了からSIFS時間後にACKフレーム585を送信する。また、アクセスポイント11は、データフレーム584の送信完了から当該拡張後の待機時間内で、中継局21からのACKフレーム586の受信を待機する。
図6〜図8のシーケンス例では、シーケンスの開始がRTSフレームおよびCTSフレームの送受信から開始されたが、これは一例であり、他の形態も可能である。例えば、図15に、図8のシーケンスの変形例を示す。アクセスポイント11が中継局21に、送信を許可するフレームの一例であるポールフレーム(Poll Frame)587を送信し、そのSIFS時間後に、中継局21がデータフレーム583をアクセスポイント11に送信する。この際、アクセスポイント11は、データフレーム583と同時にデータフレーム584を中継局21に送信してもよい。すなわち、ポールフレームの送信完了からSIFS時間後にデータフレーム584を送信してもよい。ポールフレームの種類は、IEEE802.11規格では複数規定されているが、フレーム送信を促す機能を有している限り、どの種類でもかまわない。なおポールフレームを送信する場合、CSMA/CAにおけるCCA処理では、バックオフ前の固定時間として、DIFS時間ではなく、PIFS(Point coordination function InterFrame Space)時間を用いてもよい。図15における以降のシーケンスは図8での説明と同様であり、これまで述べた各種の変更または拡張も図15のシーケンスに対して適用可能である。
本実施形態では、図1に示した無線LANの構成をベースとしたが、無線LANの構成は図1に示したものに限定されない。例えば図16に示すように、アクセスポイント11Aと、端末22と、端末1および端末2とを備えた無線LANでもよい。この場合、例えばアクセスポイント11Aが端末1と端末22間の通信を中継し、また端末2と端末22間の通信を中継する。アクセスポイント11Aは、図1の中継局21と同様にして、全二重通信を実行する。図6〜図8、図15と同様のシーケンスを、図16の構成でも、実行可能である。この場合、端末22が、図1のアクセスポイント11と同様にして通信すればよい。
また図16の構成の場合の別のシーケンス例を図17に示す。アクセスポイント11Aが端末22にポールフレーム(Poll Frame)527を送信し、そのSIFS時間後に、端末22がデータフレーム523をアクセスポイント11Aに送信する。この際、アクセスポイント11Aは、データフレーム523を受信するのと同時にデータフレーム524を端末1に送信してもよい。すなわち、ポールフレーム527の送信完了からSIFS時間後にデータフレーム524を端末1に送信してもよい。図17における以降のシーケンスは図6での説明と同様であり、これまで述べた各種の変更または拡張は、図17のシーケンスに対しても適用可能である。
図1および図16に示した構成以外にも、様々な無線LANの構成が可能であり、それに応じて、前述したシーケンス以外にも種々のシーケンスが可能である。
図18は、中継局21に搭載される無線通信装置の機能ブロック図である。この無線通信装置は、アクセスポイント11との間で事前にフレーム中継に関する設定がなされている。
図18の無線通信装置は、制御部401と、送信部402と、受信部403と、少なくとも1つのアンテナ14−1〜14−N(Nは1以上の整数)と、バッファ404とを備えている。各アンテナを、送信部301および受信部302間で切り換えるスイッチがそれぞれ設けられていてもよい。制御部401は、端末(アクセスポイントを含む)との通信を制御する制御部であり、ベースバンド集積回路、または無線通信用集積回路または、通信制御装置に対応する。送信部402と受信部403は、一例として、無線通信部を形成する。制御部401、ベースバンド集積回路、無線通信用集積回路、あるいは通信制御装置の処理は、CPU等のプロセッサで動作するソフトウェア(プログラム)によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、これらのソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
バッファ404は、上位層および制御部401間で、データを受け渡しするための記憶領域として用いられる。またバッファ404は、端末(アクセスポイントを含む)から受信したフレームに含まれるデータを、他の端末への中継のために一時的に格納してもよい。また自局宛のフレームを受信した場合に、当該フレーム内のデータを上位層へ渡すために一時的に格納してもよい。上位層は、TCP/IPまたはUDP/IPなど、制御部401で管理するMAC層より上位の通信プロトコルに関する処理を行う。また、上位層は、TCP/IPまたはUDP/IPに加え、アプリケーション層の処理を行ってもよい。上位層の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
制御部401は、主としてMAC層の処理、および物理層の処理の一部を行う。制御部401は、送信部402および受信部403を介して、フレームを送受信することで、端末(アクセスポイントを含む)との通信の制御を行う。制御部401は、クロックを生成するクロック生成部を含んでもよいし、外部からクロックが入力されるように構成されてもよい。制御部401は、クロック生成部で生成したクロックまたは外部から入力されたクロックを用いて、内部時間を管理してもよい。また、制御部401は、クロック生成部で作ったクロックを、外部に出力してもよい。また、制御部401は、MAC層およびPHY層の管理を行い、管理に必要な情報を制御部401の内部または外部のバッファに格納する。中継局の配下に存在する端末に関する情報および、アクセスポイントに関する情報もこのバッファで管理してもよい。このバッファはバッファ404と同じ記憶媒体でもよいし、別の記憶媒体でもよい。このバッファおよびバッファ404は、メモリでもよいし、SSDまたはハードディスク等の装置でもよい。メモリの場合、DRAM等の不揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発性メモリでもよい。
制御部401は、送信用のデータまたは情報を保持している場合、当該データまたは情報を含むフレームを生成し、使用する通信方式に従って、送信権を獲得して、送信部402を介して当該フレームを送信する。一例としてCSMA/CAに基づきキャリアセンスを行い、無線媒体がアイドルとして送信権を獲得できたら、送信権に基づくTXOPで、フレームを送信部402に出力する。
制御部401は、バッファ404を定期的に確認、またはバッファ404等の外部からのトリガにより確認し、送信用のデータが存在するかを確認してもよい。
送信部402は、制御部401から入力されたフレームに変調処理や物理ヘッダの付加など、所望の物理層の処理を行う。また、物理層の処理後のフレームに対して、DA変換、所望帯域成分を抽出するフィルタ処理、周波数変換(アップコンバート)等を行う。送信部402は、周波数変換後の信号を増幅して、アンテナから空間に電波として放射する。
アンテナで受信された信号は、受信部403に入力され、アナログ処理およびAD変換処理される。例えば、受信された信号を増幅して、周波数変換(ダウンコンバート)し、フィルタリング処理で所望帯域成分を抽出する。抽出された信号を、さらにAD変換によりデジタル信号に変換する。デジタル信号に基づき、復調等の物理層の処理を経た後、フレームを制御部401に出力する。
送信と受信を同時に行う場合、すなわち全二重通信を行う場合、複数のアンテナの一方を受信部に、他方を送信部に接続して、各アンテナを送信部と受信部間で分離してもよい。各アンテナを受信部および送信部間で切り換えるスイッチが存在しない場合、アンテナで受信した信号に送信信号が回り込むため混在して受信部403に入力され得る。このため、受信部403またはその前段に配置する回路で、当該混在した信号から送信信号を除去する(例えば送信部402から出力される送信信号を受信部403または全段の回路に入力する経路を設け、混在した信号から送信信号を減算する)ことで受信信号を取り出してもよい。ここで述べた以外の方法で、混在した信号から受信信号を取り出しても良い。
また、制御部401は、応答の必要なデータフレーム等のフレームを受信した場合、フレームの受信完了からSIFS時間等の一定時間後に、送達確認応答フレームを送信するよう制御する。例えば、制御部401は、受信したフレームのFCSフィールドに基づきCRC検査等を行い、検査結果が成功の場合にACKフレームを生成し、受信完了からSIFS時間後に送信部402を介して送信する。受信したフレームがA−MPDUの場合は、ACKフレームの代わりに、A−MPDU内の連接されたフレームごとにCRC検査等を行い、各検査結果に応じた値を含むBAフレームを生成する。またRTSフレームを受信した場合は、CTSフレームを送達確認応答フレームとして返す。ここで、予め定めた条件を満たす場合は、フレームを受信してからACKフレーム(A−MPDUの場合はBAフレーム)を送信するまでに待機する時間を拡張する。一例として、SIFS時間の2倍とACKフレーム長との合計時間を待機時間とする。予め定めた条件の例として、アクセスポイントから受信したRTSフレームに対してCTSフレームを返し、そのSIFS時間後に別の端末にフレームを送信する場合がある。この場合、CTSフレームに応じてアクセスポイントから受信するフレームの受信完了から、上記拡張した待機時間の経過後に、ACKフレームを送信する(図6のシーケンス例を参照)。また、別の例として、アクセスポイントに送信したRTSフレームに対してCTSフレームを受信し、CTSフレームの受信完了からSIFS時間後にアクセスポイントからデータフレームを受信した場合がある。この場合、当該データフレームの受信完了から、上記拡張した待機時間の経過後に、ACKフレームを送信する(図8のシーケンス例を参照)。ここで述べた以外の例も、前述した各種のシーケンス例から理解できるように可能である。
また、制御部401は、応答を要求するフレームを送信した場合は、送信完了後、応答フレームの受信を待機する。例えばデータフレームを送信した場合、SIFS時間後にACKフレームの受信を待機する。データフレームの送信完了後、SIFS時間およびACKフレーム長を合わせた待機時間の間にACKフレームを受信できない場合は、ACKフレームのタイムアウト時間が経過したとして、当該データフレームの再送を行うことを決定する。ただし、予め定めた条件を満たす場合は、ACKフレームのタイムアウト時間を拡張する。例えば、SIFS時間とACKフレーム長との加算時間を2倍した値に、タイムアウト時間を拡張する。予め定めた条件の例として、端末から受信したRTSフレームに対してCTSフレームを送信し、CTSフレームの送信完了からSIFS時間後にアクセスポイントにデータフレームを送信する場合がある(図7のシーケンスを参照)。この際、CTSフレームのDuration値を前述した期待値より小さい値を設定する。データフレームの送信完了から、上記拡張したタイムアウト時間をカウントし、ACKフレームの受信を待機する。
上述した制御部401と送信部402の処理の切り分けは一例であり、別の形態も可能である。例えばデジタル領域の処理までは制御部401で行い、DA変換以降の処理を送信部402で行うようにしてもよい。制御部401と受信部403の処理の切り分けについても同様に、AD変換までの処理を受信部403で行い、その後の物理層の処理を含むデジタル領域の処理を制御部401で行うようにしてもよい。ここで述べた以外の切り分けを行ってもよい。
図19は、アクセスポイントに搭載される無線通信装置の機能ブロック図である。
図19の無線通信装置は、制御部101と、送信部102と、受信部103と、少なくとも1つのアンテナ11−1〜11−N(Nは1以上の整数)と、バッファ104とを備えている。制御部101は、端末(中継局21を含む)との通信を制御する制御部であり、ベースバンド集積回路、または無線通信用集積回路または、通信制御装置に対応する。送信部102と受信部103は、一例として、無線通信部を形成する。制御部101、ベースバンド集積回路、無線通信用集積回路、あるいは通信制御装置の処理は、CPU等のプロセッサで動作するソフトウェア(プログラム)によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、これらのソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
バッファ104は、上位層と制御部101との間で、データを受け渡しするための記憶領域として用いられる。またバッファ104は、外部ネットワークから受信したフレームを中継局への中継のために格納してもよい。またバッファ104は、中継局から受信したフレームを、外部ネットワークに転送するために格納してもよい。上位層は、TCP/IPまたはUDP/IPなど、制御部101で管理されるMAC層より上位の通信プロトコルに関する処理を行う。また、上位層は、TCP/IPまたはUDP/IPに加え、アプリケーション層の処理を行ってもよい。上位層の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
制御部101は、主としてMAC層の処理、および物理層の処理の一部を行う。制御部101は、送信部102および受信部103を介して、フレームを送受信することで、端末(中継局を含む)との通信を制御する。また制御部101は定期的にビーコンフレームを送信するよう制御してもよい。制御部101は、クロックを生成するクロック生成部を含んでもよいし、外部からクロックが入力されるように構成されてもよい。制御部101は、クロック生成部で生成したクロックまたは外部から入力されたクロックを用いて、制御部101は内部時間を管理してもよい。また、制御部101は、クロック生成部で作ったクロックを、外部に出力してもよい。また、制御部101は、MAC層およびPHY層の管理を行い、管理に必要な情報を制御部101の内部または外部のバッファに格納する。制御部101は、BSSに属している端末(中継局を含む)の状態および能力等に関する情報も管理する。このバッファはバッファ104と同じ記憶媒体でもよいし、別の記憶媒体でもよい。バッファおよびバッファ104は、メモリでもよいし、SSDまたはハードディスク等の装置でもよい。メモリの場合、DRAM等の不揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発性メモリでもよい。なお、中継局21がアクセスポイントとしての機能を有する場合は、BSSの形成やビーコンフレームの送信など、アクセスポイント11と同様の機能を有するものとする。
制御部101は、送信用のデータまたは情報を保持している場合、当該データまたは情報を含むフレームを生成し、使用する通信方式に従って、送信権を獲得して、送信部102を介して当該フレームを送信する。一例としてCSMA/CAに基づきキャリアセンスを行い、無線媒体がアイドルとして送信権を獲得できたら、送信権に基づくTXOPで、フレームを送信部102に出力する。
制御部101は、バッファ104を定期的に確認、またはバッファ104等の外部からのトリガにより確認し、送信用のデータが存在するかを確認してもよい。
送信部102は、制御部101から入力されたフレームに変調処理や物理ヘッダの付加など、所望の物理層の処理を行う。また、物理層の処理後のフレームに対して、DA変換、所望帯域成分を抽出するフィルタ処理、周波数変換(アップコンバート)等を行う。送信部102は、周波数変換後の信号を増幅して、アンテナから空間に電波として放射する。
アンテナで受信された信号は、受信部103に入力され、アナログ処理およびAD変換処理される。例えば、受信された信号を増幅して、周波数変換(ダウンコンバート)し、フィルタリング処理で所望帯域成分を抽出する。抽出された信号を、さらにAD変換によりデジタル信号に変換する。デジタル信号に基づき、復調等の物理層の処理を経た後、フレームを制御部101に出力する。
また、制御部101は、応答の必要なデータフレーム等のフレームを受信した場合、フレームの受信完了からSIFS時間等の一定時間後に、送達確認応答フレームを送信するよう制御する。例えば、制御部101は、受信したフレームのFCSフィールドに基づきCRC検査等を行い、検査結果が成功の場合にACKフレームを生成し、受信完了からSIFS時間後に送信部102を介して送信する。受信したフレームがA−MPDUの場合は、ACKフレームの代わりに、A−MPDU内の連接されたフレームごとにCRC検査等を行い、各検査結果に応じた値を含むBAフレームを生成する。またRTSフレームを受信した場合は、CTSフレームを送達確認応答フレームとして返す。ここで、予め定めた条件を満たす場合は、ACKフレーム(A−MPDUの場合はBAフレーム)を送信するまでの待機時間を拡張する。一例として、SIFS時間の2倍とACKフレーム長との合計時間へ待機時間を拡張する。予め定めた条件の例として、他端末宛のCTSフレームを受信し、そのSIFS時間後に自端末宛のデータフレームを受信した場合、上記拡張した待機時間の経過後に、ACKフレームを送信する(図7のシーケンス例を参照)。
また、制御部101は、応答を要求するフレームを送信した場合は、送信完了後、応答フレームの受信を待機する。例えばデータフレームを送信した場合、SIFS時間後にACKフレームの受信を待機する。SIFS時間およびACKフレーム長を合計した待機時間の間にACKフレームを受信できない場合は、ACKフレームのタイムアウト時間が経過したとして、当該データフレームの再送を行うことを決定する。ここで、予め定めた条件を満たす場合は、ACKフレームのタイムアウト時間を拡張する。一例として、SIFS時間とACKフレーム長との加算時間を2倍した値に、タイムアウト時間を拡張する。予め定めた条件の例として、送信したRTSフレームに対してCTSフレームを受信し、CTSフレームのDuration値が期待値より小さい場合がある(図6のシーケンスを参照)。この場合、CTSフレームの受信完了からSIFS時間後に送信するデータフレームの送信完了から、当該拡張したタイムアウト時間をカウントし、ACKフレームの受信を待機する。
上述した制御部101と送信部102の処理の切り分けは一例であり、別の形態も可能である。例えばデジタル領域の処理までは制御部101で行い、DA変換以降の処理を送信部102で行うようにしてもよい。制御部101と受信部103の処理の切り分けについても同様に、AD変換までの処理を受信部103で行い、その後の物理層の処理を含むデジタル領域の処理を制御部101で行うようにしてもよい。ここで述べた以外の切り分けを行ってもよい。
なお、アクセスポイント11が全二重通信を実行する場合の構成は、前述した中継局21と同様にすればよい。
図20は、端末(非アクセスポイントおよび非中継局の端末)に搭載される無線通信装置の機能ブロック図である。
図20の無線通信装置は、制御部201と、送信部202と、受信部203と、少なくとも1つのアンテナ12−1〜12−N(Nは1以上の整数)と、バッファ204とを備えている。制御部201は、他の端末(中継局21、アクセスポイント11を含む)との通信を制御する制御部であり、ベースバンド集積回路、無線通信用集積回路、または通信制御装置に対応する。送信部202と受信部203は、一例として、無線通信部を形成する。制御部201、ベースバンド集積回路、無線通信用集積回路、あるいは通信制御装置の処理は、CPU等のプロセッサで動作するソフトウェア(プログラム)によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、これらのソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
バッファ204は、上位層と制御部201との間で、データを受け渡しするための記憶領域として用いられる。上位層は、TCP/IPまたはUDP/IPなど、制御部201で管理されるMAC層より上位の通信プロトコルに関する処理を行う。また、上位層は、TCP/IPまたはUDP/IPに加え、アプリケーション層の処理を行ってもよい。上位層の動作は、CPU等のプロセッサによるソフトウェア(プログラム)の処理によって行われてもよいし、ハードウェアによって行われてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの両方によって行われてもよい。
制御部201は、主としてMAC層の処理、および物理層の処理の一部を行う。制御部201は、送信部202および受信部203を介して、フレームを送受信することで、他の端末(中継局、アクセスポイントを含む)との通信を制御する。制御部201は、クロックを生成するクロック生成部を含んでもよいし、外部からクロックが入力されるように構成されてもよい。制御部201は、クロック生成部で生成したクロックまたは外部から入力されたクロックを用いて、制御部201は内部時間を管理してもよい。また、制御部201は、クロック生成部で作ったクロックを、外部に出力してもよい。また、制御部201は、MAC層およびPHY層の管理を行い、管理に必要な情報を制御部201の内部または外部のバッファに格納する。このバッファはバッファ204と同じ記憶媒体でもよいし、別の記憶媒体でもよい。このバッファおよびバッファ204は、メモリでもよいし、SSDまたはハードディスク等の装置でもよい。メモリの場合、DRAM等の不揮発性メモリでもよいし、NAND、MRAM等の不揮発性メモリでもよい。
制御部201は、アクセスポイント11にアソシエーション要求を行い、必要に応じて認証等のプロセスを経て、アクセスポイント11と無線リンクを確立する。無線リンクを確立することでアクセスポイント11が形成するBSSに属する。制御部201は、無線リンクを確立したアクセスポイント11の状態および能力等に関する情報を管理する。制御部201は、中継局21の状態および能力等に関する情報をさらに管理してもよい。なお、中継局21はアクセスポイント11と中継に関する設定を行い、端末に対して中継局として振る舞うために、アクセスポイント11のBSSに関する属性等に関する情報を取得していてもよい。中継局21がアクセスポイントとしての機能を有する場合は、制御部201は、中継局21に対して、アソシエーションプロセス等、アクセスポイントに対する動作を行うものとする。
制御部201は、送信用のデータまたは情報を保持している場合、当該データまたは情報を含むフレームを生成し、使用する通信方式に従って送信権を獲得した後、送信部202を介して当該フレームを送信する。一例としてCSMA/CAに基づきキャリアセンスを行い、無線媒体がアイドルとして送信権を獲得できたら、送信権に基づくTXOPで、フレームを送信部202に出力する。
制御部201は、バッファ204を定期的に確認、またはバッファ204等の外部からのトリガにより確認し、送信用のデータが存在するかを確認してもよい。
送信部202は、制御部201から入力されたフレームに変調処理や物理ヘッダの付加など、所望の物理層の処理を行う。また、物理層の処理後のフレームに対して、DA変換、所望帯域成分を抽出するフィルタ処理、周波数変換(アップコンバート)等を行う。送信部202は、周波数変換後の信号を増幅して、アンテナから空間に電波として放射する。
アンテナで受信された信号は、受信部203に入力され、アナログ処理およびAD変換処理される。例えば、受信された信号を増幅して、周波数変換(ダウンコンバート)し、フィルタリング処理で所望帯域成分を抽出する。抽出された信号を、さらにAD変換によりデジタル信号に変換する。デジタル信号に基づき、復調等の物理層の処理を経た後、フレームを制御部201に出力する。
また、制御部201は、応答の必要なデータフレーム等のフレームを受信した場合、フレームの受信完了からSIFS時間等の一定時間後に、送達確認応答フレームを送信するよう制御する。例えば、制御部201は、受信したフレームのFCSフィールドに基づきCRC検査等を行い、検査結果が成功の場合にACKフレームを生成し、受信完了からSIFS時間後に送信部202を介して送信する。受信したフレームがA−MPDUの場合は、ACKフレームの代わりに、A−MPDU内の連接されたフレームごとにCRC検査等を行い、各検査結果に応じた値を含むBAフレームを生成する。またRTSフレームを受信した場合は、CTSフレームを送達確認応答フレームとして返す。
また、制御部201は、応答を要求するフレームを送信した場合は、送信完了後、応答フレームの受信を待機する。例えばデータフレームを送信した場合、SIFS時間後にACKフレームの受信を待機する。SIFS時間およびACKフレーム長を合計した待機時間の間にACKフレームを受信できない場合は、ACKフレームのタイムアウト時間が経過したとして、当該データフレームの再送を行うことを決定する。
上述した制御部201と送信部202の処理の切り分けは一例であり、別の形態も可能である。例えばデジタル領域の処理までは制御部201で行い、DA変換以降の処理を送信部202で行うようにしてもよい。制御部201と受信部203の処理の切り分けについても同様に、AD変換までの処理を受信部203で行い、その後の物理層の処理を含むデジタル領域の処理を制御部201で行うようにしてもよい。ここで述べた以外の切り分けを行ってもよい。
なお、端末が、中継局21またはアクセスポイント11またはこれらの両方と同様に全二重方式に対応した構成を有していてもよい。また中継局21およびアクセスポイント11と同様に、ACKフレームのタイムアウト時間の拡張、およびACKフレームの待機時間の拡張等の機能を備えていてもよい。なお、端末が全二重方式に対応する場合は、前述した中継局21と同様にしてその構成を実現すればよい。
なお、本実施形態で述べるフレームは、例えばIEEE802.11規格でフレームと呼ばれているもののみならず、Null Data Packetなど、パケットと呼ばれているものを指してもよい。
(第2の実施形態)
図21は、中継局に搭載される無線通信装置のハードウェア構成例を示したものである。この構成例は一例であり、本実施形態はこれに限定されるものではない。図18に示した無線通信装置と基本的な動作は同じであるため、構成上の違いを中心に説明し、重複する説明は省略する。
本無線通信装置は、ベースバンド部411、RF部421と、1つまたは複数のアンテナ14−1〜14−N(Nは1以上の整数)とを備える。
ベースバンド部411は、制御回路(プロトコルスタック)412と、送信処理回路413と、受信処理回路414と、DA変換回路415、416と、AD変換回路417、418とを含む。RF部421とベースバンド部411は1チップのIC(Integrated Circuit:集積回路)で構成されてもよい。
ベースバンド部411は、一例としてベースバンドLSIまたはベースバンドIC、またはこれらの両方である。また、別の例として、ベースバンド部411がIC432とIC431とを備えてもよい。このとき、IC432が制御回路412と送信処理回路413と受信処理回路414とを含み、IC431が、DA変換回路415、416とAD変換回路417、418を含んでもよい。
制御回路412は、一例として、通信を制御する通信処理装置、または通信を制御する制御部に対応する。このとき無線通信部は、送信処理回路413と受信処理回路414を含んでもよい。さらに無線通信部は、送信処理回路413と受信処理回路414に加えて、DA変換回路415、416およびAD変換回路417、418を含んでもよい。さらに、無線通信部は、送信処理回路413、受信処理回路414、DA変換回路415、416およびAD変換回路417、418に加えて、送信回路422および受信回路423を含んでもよい。本実施形態に係る集積回路は、ベースバンド部411の全部または一部の処理、すなわち、制御回路412、送信処理回路413、受信処理回路414、DA変換回路415、416およびAD変換回路417、418の全部または一部の処理を行うプロセッサを備えていてもよい。
または、IC432が、通信を制御する通信処理装置に対応してもよい。このとき無線通信部は、送信回路422および受信回路423に対応してもよい。さらに無線通信部は、送信回路422および受信回路423に加え、DA変換回路415、416およびAD変換回路417、418を含んでもよい。
ベースバンド部411における制御回路412は、MAC層等の処理を行う。MACの上位層処理部の機能を、制御回路412に含めても構わない。制御回路412はクロック生成部(すなわち発振装置)を含んでもよい。送信処理回路413は、物理層の処理を行う部分に対応する。送信処理回路413は、変調処理や物理ヘッダの付加など、所望の物理層の処理を行い、例えば2種類のデジタルベースバンド信号(以下、デジタルI信号とデジタルQ信号)を生成する。DA変換回路415、416は、DA変換を行う部分に相当し、送信処理回路413から入力される信号をDA変換する。より詳細には、DA変換回路415はデジタルI信号をアナログのI信号に変換し、DA変換回路416はデジタルQ信号をアナログのQ信号に変換する。なお、直交変調せずに一系統の信号のままで送信する場合もありうる。この場合、DA変換回路は1つだけでもよい。また、一系統または複数系統の送信信号をアンテナの数だけ振り分けて送信する場合には、アンテナの数に応じた数のDA変換回路を設けてもよい。
RF部421は、本実施形態に係るRF集積回路に対応し、一例としてRFアナログICあるいは高周波ICあるいはこれらの両方である。RF部421における送信回路422は、DA変換より後の段階の送信時のアナログ処理を行う部分に相当する。送信回路422は、DA変換後のフレームの信号から所望帯域の信号を抽出する送信フィルタ、発振装置から供給される一定周波数の信号を利用して、フィルタリング後の信号を無線周波数にアップコンバートするミキサ、アップコンバート後の信号を増幅するプリアンプ(PA)等を含む。
RF部421における受信回路423は、AD変換より前の段階までの受信時のアナログ処理を行う部分に相当する。受信回路423は、アンテナで受信された信号を増幅するLNA(低雑音増幅器)、発振装置から供給される一定周波数の信号を利用して、増幅後の信号をベースバンドにダウンコンバートするミキサ、ダウンコーバート後の信号から所望帯域の信号を抽出する受信フィルタ等を含む。より詳細には、受信回路423は、不図示のLNAで低雑音増幅された受信信号を互いに90°位相のずれた搬送波により直交復調して、受信信号と同位相のI(In−phase)信号と、これより90°位相が遅れたQ(Quad−phase)信号とを生成する。これらI信号とQ信号は、振幅(ゲイン)が調整された後に、受信回路423から出力される。
ベースバンド部411におけるAD変換回路417、418は、AD変換を行う部分に相当する。受信回路423からの入力信号をAD変換する。より詳細には、AD変換回路417はI信号をデジタルI信号に変換し、AD変換回路418はQ信号をデジタルQ信号に変換する。なお、直交復調せずに一系統の信号だけを受信する場合もありうる。この場合、AD変換回路は1つだけでよい。また、複数のアンテナが設けられる場合には、アンテナの数に応じた数のAD変換回路を設けてもよい。受信処理回路414は、物理層の受信処理を行う部分に対応する。受信処理回路414は、復調等の物理層の処理を行う。制御回路412は、受信処理回路413で得られたフレームに対してMAC層等の処理を行う。また制御回路412は、MIMOに関する処理を行ってもよい。伝搬路推定の処理、送信ウェイト計算処理、ストリームの分離処理等の少なくとも1つまたは複数を行ってもよい。
制御回路412は、送信回路422の送信フィルタおよび受信回路423の受信フィルタの動作を、使用するチャネルの設定に応じて、当該チャネルがカバーする信号を抽出するように制御してもよい。送信回路422および受信回路423を制御する別の制御部が存在し、制御回路412がその制御部に指示を出すことで、同様の制御を行ってもよい。
なお、アンテナ14−1〜14−Nを、送信回路422および受信回路423のいずれか一方に切り換えるスイッチがRF部421に配置されてもよい。スイッチを制御することで、送信時にはアンテナ14−1〜14−Nを送信回路422に接続し、受信時には、アンテナ14−1〜14−Nを受信回路423に接続してもよい。
上述した各部の処理の詳細は、図18の説明から自明であるため、重複する説明は省略する。
図22は、基地局であるアクセスポイントに搭載される無線通信装置のハードウェア構成例を示したものである。この構成例は一例であり、本実施形態はこれに限定されるものではない。図19に示した無線通信装置と基本的な動作は同じであるため、構成上の違いを中心に説明し、重複する説明は省略する。
本無線通信装置は、ベースバンド部111、RF部121と、1つまたは複数のアンテナ11−1〜11−N(Nは1以上の整数)とを備える。
ベースバンド部111は、制御回路(プロトコルスタック)112と、送信処理回路113と、受信処理回路114と、DA変換回路115、116と、AD変換回路117、118とを含む。RF部121とベースバンド部111は1チップのIC(Integrated Circuit:集積回路)で構成されてもよい。
ベースバンド部111は、一例としてベースバンドLSIまたはベースバンドIC、またはこれらの両方である。また、別の例として、ベースバンド部111がIC132とIC131とを備えてもよい。このとき、IC132が制御回路112と送信処理回路113と受信処理回路114とを含み、IC131が、DA変換回路115、116とAD変換回路117、118を含んでもよい。
制御回路112は、一例として、通信を制御する通信処理装置、または通信を制御する制御部に対応する。このとき無線通信部は、送信処理回路113と受信処理回路114を含んでもよい。さらに無線通信部は、送信処理回路113と受信処理回路114に加えて、DA変換回路115、116およびAD変換回路117、118を含んでもよい。さらに、無線通信部は、送信処理回路113、受信処理回路114、DA変換回路115、116およびAD変換回路117、118に加えて、送信回路122および受信回路123を含んでもよい。本実施形態に係る集積回路は、ベースバンド部111の全部または一部の処理、すなわち、制御回路112、送信処理回路113、受信処理回路114、DA変換回路115、116およびAD変換回路117、118の全部または一部の処理を行うプロセッサを備えていてもよい。
または、IC132が、通信を制御する通信処理装置に対応してもよい。このとき無線通信部は、送信回路122および受信回路123に対応してもよい。さらに無線通信部は、送信回路122および受信回路123に加え、DA変換回路115、116およびAD変換回路117、118を含んでもよい。
ベースバンド部111における制御回路112は、MAC層等の処理を行う。MACの上位層処理部の機能を、制御回路112に含めても構わない。制御回路112はクロック生成部(すなわち発振装置)を含んでもよい。送信処理回路113は、物理層の処理を行う部分に対応する。送信処理回路113は、変調処理や物理ヘッダの付加など、所望の物理層の処理を行い、例えば2種類のデジタルベースバンド信号(以下、デジタルI信号とデジタルQ信号)を生成する。DA変換回路115、116は、DA変換を行う部分に相当し、送信処理回路113から入力される信号をDA変換する。より詳細には、DA変換回路115はデジタルI信号をアナログのI信号に変換し、DA変換回路116はデジタルQ信号をアナログのQ信号に変換する。なお、直交変調せずに一系統の信号のままで送信する場合もありうる。この場合、DA変換回路は1つだけでもよい。また、一系統または複数系統の送信信号をアンテナの数だけ振り分けて送信する場合には、アンテナの数に応じた数のDA変換回路を設けてもよい。
RF部121は、本実施形態に係るRF集積回路に対応し、一例としてRFアナログICあるいは高周波ICあるいはこれらの両方である。RF部121における送信回路122は、DA変換より後の段階の送信時のアナログ処理を行う部分に相当する。送信回路122は、DA変換後のフレームの信号から所望帯域の信号を抽出する送信フィルタ、発振装置から供給される一定周波数の信号を利用して、フィルタリング後の信号を無線周波数にアップコンバートするミキサ、アップコンバート後の信号を増幅するプリアンプ(PA)等を含む。
RF部121における受信回路123は、AD変換より前の段階までの受信時のアナログ処理を行う部分に相当する。受信回路123は、アンテナで受信された信号を増幅するLNA(低雑音増幅器)、発振装置から供給される一定周波数の信号を利用して、増幅後の信号をベースバンドにダウンコンバートするミキサ、ダウンコーバート後の信号から所望帯域の信号を抽出する受信フィルタ等を含む。より詳細には、受信回路123は、不図示のLNAで低雑音増幅された受信信号を互いに90°位相のずれた搬送波により直交復調して、受信信号と同位相のI(In−phase)信号と、これより90°位相が遅れたQ(Quad−phase)信号とを生成する。これらI信号とQ信号は、振幅(ゲイン)が調整された後に、受信回路123から出力される。
ベースバンド部111におけるAD変換回路117、118は、AD変換を行う部分に相当する。受信回路123からの入力信号をAD変換する。より詳細には、AD変換回路117はI信号をデジタルI信号に変換し、AD変換回路118はQ信号をデジタルQ信号に変換する。なお、直交復調せずに一系統の信号だけを受信する場合もありうる。この場合、AD変換回路は1つだけでよい。また、複数のアンテナが設けられる場合には、アンテナの数に応じた数のAD変換回路を設けてもよい。受信処理回路114は、物理層の受信処理を行う部分に対応する。受信処理回路114は、復調等の物理層の処理を行う。制御回路112は、受信処理回路113で得られたフレームに対してMAC層等の処理を行う。また制御回路112は、MIMOに関する処理を行ってもよい。伝搬路推定の処理、送信ウェイト計算処理、ストリームの分離処理等の少なくとも1つまたは複数を行ってもよい。
制御回路112は、送信回路122の送信フィルタおよび受信回路123の受信フィルタの動作を、使用するチャネルの設定に応じて、当該チャネルがカバーする信号を抽出するように制御してもよい。送信回路122および受信回路123を制御する別の制御部が存在し、制御回路112がその制御部に指示を出すことで、同様の制御を行ってもよい。
なお、アンテナ11−1〜11−Nを、送信回路122および受信回路123のいずれか一方に切り換えるスイッチがRF部121に配置されてもよい。スイッチを制御することで、送信時にはアンテナ11−1〜11−Nを送信回路122に接続し、受信時には、アンテナ11−〜11−Nを受信回路123に接続してもよい。
上述した各部の処理の詳細は、図19の説明から自明であるため、重複する説明は省略する。
図23は、無線端末に搭載される無線通信装置のハードウェア構成例を示したものである。この構成例は一例であり、本実施形態はこれに限定されるものではない。図20に示した無線通信装置と基本的な動作は同じであるため、構成上の違いを中心に説明し、重複する説明は省略する。
本無線通信装置は、ベースバンド部211、RF部221と、1つまたは複数のアンテナ12−1〜12−N(Nは1以上の整数)とを備える。RF部221とベースバンド部211は1チップのICで構成されてもよい。
ベースバンド部211は、制御回路(プロトコルスタック)212と、送信処理回路213と、受信処理回路214と、DA変換回路215、216と、AD変換回路217、218とを含む。
ベースバンド部211は、一例としてベースバンドLSIまたはベースバンドIC、またはこれらの両方である。また、別の例として、ベースバンド部211が、IC232とIC231とを備えてもよい。このとき、IC232が制御回路212と送信処理回路213と受信処理回路214とを含み、IC231が、DA変換回路215、216とAD変換回路217、218を含んでもよい。
制御回路212は、一例として、通信を制御する通信処理装置、または通信を制御する制御部に対応する。このとき無線通信部は、送信処理回路213と受信処理回路214を含んでもよい。さらに無線通信部は、送信処理回路213と受信処理回路214に加えて、DA変換回路215、216およびAD変換回路217、218を含んでもよい。さらに、無線通信部は、送信処理回路213、受信処理回路214、DA変換回路215、216およびAD変換回路217、218に加えて、送信回路222および受信回路223を含んでもよい。本実施形態に係る集積回路は、ベースバンド部211の全部または一部の処理、すなわち、制御回路212、送信処理回路213、受信処理回路214、DA変換回路215、216およびAD変換回路217、218の全部または一部の処理を行うプロセッサを備えていてもよい。
または、IC232が、通信を制御する通信処理装置に対応してもよい。このとき無線通信部は、送信回路222および受信回路223に対応してもよい。さらに無線通信部は、送信回路222および受信回路223に加え、DA変換回路215、216およびDA変換回路217、218を含んでもよい。
ベースバンド部211における制御回路212は、MACの上位層の機能を含んでも構わない。制御回路212はクロック生成部を含んでもよい。送信処理回路213は、物理層の処理を行う部分に対応する。送信処理回路213は、変調処理や物理ヘッダの付加など、所望の物理層の処理を行い、例えば2種類のデジタルベースバンド信号(以下、デジタルI信号とデジタルQ信号)を生成する。DA変換回路215、216は、DA変換を行う部分に相当する。DA変換回路215、216は、送信処理回路213から入力される信号をDA変換する。より詳細には、DA変換回路215はデジタルI信号をアナログのI信号に変換し、DA変換回路216はデジタルQ信号をアナログのQ信号に変換する。なお、直交変調せずに一系統の信号のままで送信する場合もありうる。この場合、DA変換回路は1つだけでもよい。また、一系統または複数系統の送信信号をアンテナの数だけ振り分けて送信する場合には、アンテナの数に応じた数のDA変換回路を設けてもよい。
RF部221は、本実施形態に係るRF集積回路に対応し、一例としてRFアナログICあるいは高周波ICあるいはこれらの両方である。RF部221における送信回路222は、DA変換より後の段階の送信時のアナログ処理を行う部分に相当する。送信回路222は、DA変換後のフレームの信号から所望帯域の信号を抽出する送信フィルタ、発振装置から供給される一定周波数の信号を利用して、フィルタリング後の信号を無線周波数にアップコンバートするミキサ、アップコンバート後の信号を増幅するプリアンプ(PA)等を含む。
受信回路223は、AD変換より前の段階までの受信時のアナログ処理を行う部分に相当する。受信回路223は、アンテナで受信された信号を増幅するLNA(低雑音増幅器)、発振装置から供給される一定周波数の信号を利用して、増幅後の信号をベースバンドにダウンコンバートするミキサ、ダウンコーバート後の信号から所望帯域の信号を抽出する受信フィルタ等を含む。より詳細には、受信回路223は、不図示のLNAで低雑音増幅された受信信号を互いに90°位相のずれた搬送波により直交復調して、受信信号と同位相のI(In−phase)信号と、これより90°位相が遅れたQ(Quad−phase)信号とを生成する。これらI信号とQ信号は、振幅(ゲイン)が調整された後に、受信回路223から出力される。
ベースバンド部211におけるAD変換回路217、218は、AD変換より前の段階までの受信時のアナログ処理を行う部分に相当する。AD変換回路217、218は、受信回路223からの入力信号をAD変換する。より詳細には、AD変換回路217はI信号をデジタルI信号に変換し、AD変換回路218はQ信号をデジタルQ信号に変換する。なお、直交復調せずに一系統の信号だけを受信する場合もありうる。この場合、AD変換回路は1つだけでよい。また、複数のアンテナが設けられる場合には、アンテナの数に応じた数のAD変換回路を設けてもよい。受信処理回路214は、物理層の受信処理を行う部分に対応する。受信処理回路214は、復調や、復号化、プリアンブルおよびPHYヘッダの解析などの処理など、物理層の処理を行う。制御回路212は、受信処理回路214で得られたフレームに対してMAC層等の処理を行う。
制御回路212は、送信回路222の送信フィルタおよび受信回路223の受信フィルタの動作を、使用するチャネルの設定に応じて、当該チャネルがカバーする信号を抽出するように制御してもよい。送信回路222および受信回路223を制御する別の制御部が存在し、制御回路212がその制御部に指示を出すことで、同様の制御を行ってもよい。
また無線端末がアンテナを複数備えて、MIMOに対応する場合には、制御回路212は、MIMOに関する処理も行ってよい。伝搬路推定の処理、送信ウェイト計算処理、ストリームの分離処理等のうちの1つまたは複数を行ってもよい。
なお、アンテナ12−1〜12−Nを、送信回路222および受信回路223のいずれか一方に切り換えるスイッチがRF部221に配置されてもよい。スイッチ制御により、送信時にはアンテナ12−1〜12−Nを送信回路222に接続し、受信時には、アンテナ12−1〜12−Nを受信回路223に接続する。
上述した各部の処理の詳細は、図20の説明から自明であるため、重複する説明は省略する。
(第3の実施形態)
図24(A)および図24(B)は、それぞれ第3の実施形態に係る無線端末の斜視図である。図24(A)の無線端末はノートPC301であり、図24(B)の無線端末は移動体無線端末321である。ノートPC301および移動体無線端末321は、それぞれ無線通信装置305、315を搭載している。無線通信装置305、315として、これまで説明してきた無線端末に搭載されていた無線通信装置(図7等)、または基地局に搭載されていた無線通信装置(図8等)、またはこれらの両方を用いることができる。無線通信装置を搭載する無線端末は、ノートPCや移動体無線端末に限定されない。例えば、TV、デジタルカメラ、ウェアラブルデバイス、タブレット、スマートフォン、ゲーム装置、ネットワークストレージ装置、モニタ、デジタルオーディオプレーヤ、Webカメラ、ビデオカメラ、プロジェクト、ナビゲーションシステム、外部アダプタ、内部アダプタ、セットトップボックス、ゲートウェイ、プリンタサーバ、モバイルアクセスポイント、ルータ、エンタープライズ/サービスプロバイダアクセスポイント、ポータブル装置、ハンドヘルド装置等にも搭載可能である。
また、無線端末または基地局、またはこれらの両方に搭載されていた無線通信装置は、メモリーカードにも搭載可能である。当該無線通信装置をメモリーカードに搭載した例を図25に示す。メモリーカード331は、無線通信装置355と、メモリーカード本体332とを含む。メモリーカード331は、外部の装置(無線端末または基地局、またはこれらの両方等)との無線通信のために無線通信装置335を利用する。なお、図25では、メモリーカード331内の他の要素(例えばメモリ等)の記載は省略している。
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、第1〜第3のいずれかの実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、バス、プロセッサ部、および外部インターフェース部を備える。プロセッサ部および外部インターフェース部は、バスを介して外部メモリ(バッファ)と接続される。プロセッサ部ではファームウエアが動作する。このように、ファームウエアを無線通信装置に含める構成とすることにより、ファームウエアの書き換えによって無線通信装置の機能の変更を容易に行うことが可能となる。ファームウエアが動作するプロセッサ部は、本実施形態に係る通信処理装置または制御部の処理を行うプロセッサであってもよいし、当該処理の機能拡張または変更に係る処理を行う別のプロセッサであってもよい。ファームウエアが動作するプロセッサ部を、本実施形態に係る基地局あるいは無線端末あるいはこれらの両方が備えてもよい。または当該プロセッサ部を、基地局に搭載される無線通信装置内の集積回路、または無線端末に搭載される無線通信装置内の集積回路が備えてもよい。
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、第1〜第3のいずれかの実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、クロック生成部を備える。クロック生成部は、クロックを生成して出力端子より無線通信装置の外部にクロックを出力する。このように、無線通信装置内部で生成されたクロックを外部に出力し、外部に出力されたクロックによってホスト側を動作させることにより、ホスト側と無線通信装置側とを同期させて動作させることが可能となる。
(第6の実施形態)
第6の実施形態では、第1〜第3のいずれかの実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置)の構成に加えて、電源部、電源制御部、および無線電力給電部を含む。電源制御部は、電源部と無線電力給電部とに接続され、無線通信装置に供給する電源を選択する制御を行う。このように、電源を無線通信装置に備える構成とすることにより、電源を制御した低消費電力化動作が可能となる。
(第7の実施形態)
第7の実施形態では、第6の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、SIMカードを含む。SIMカードは、無線通信装置における制御部あるいはその他の部またはこれらの両方と接続される。このように、SIMカードを無線通信装置に備える構成とすることにより、容易に認証処理を行うことが可能となる。
(第8の実施形態)
第8の実施形態では、第4の実施形態に係る無線通信装置の構成に加えて、動画像圧縮/伸長部を含む。動画像圧縮/伸長部は、バスと接続される。このように、動画像圧縮/伸長部を無線通信装置に備える構成とすることにより、圧縮した動画像の伝送と受信した圧縮動画像の伸長とを容易に行うことが可能となる。
(第9の実施形態)
第9の実施形態では、第1〜第3のいずれかの実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、LED部を含む。LED部は、無線通信装置における制御部あるいはその他の部またはこれらの両方と接続される。このように、LED部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第10の実施形態)
第10の実施形態では、第1〜第3のいずれかの実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、バイブレータ部を含む。バイブレータ部は、無線通信装置における制御部あるいはその他の部またはこれらの両方と接続される。このように、バイブレータ部を無線通信装置に備える構成とすることにより、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第11の実施形態)
第11の実施形態では、第1〜第3のいずれかの実施形態に係る無線通信装置(基地局の無線通信装置または無線端末の無線通信装置、またはこれらの両方)の構成に加えて、ディスプレイを含む。ディスプレイは、図示しないバスを介して、無線通信装置における制御部あるいはその他の部またはこれらの両方と接続されてもよい。このようにディスプレイを備える構成とし、無線通信装置の動作状態をディスプレイに表示することで、無線通信装置の動作状態をユーザに容易に通知することが可能となる。
(第12の実施形態)
本実施形態では、[1]無線通信システムにおけるフレーム種別、[2]無線通信装置間の接続切断の手法、[3]無線LANシステムのアクセス方式、[4]無線LANのフレーム間隔について説明する。
[1]通信システムにおけるフレーム種別
一般的に無線通信システムにおける無線アクセスプロトコル上で扱うフレームは、大別してデータ(data)フレーム、管理(management)フレーム、制御(control)フレームの3種類に分けられる。これらの種別は、通常、フレーム間で共通に設けられるヘッダ部で示される。フレーム種別の表示方法としては、1つのフィールドで3種類を区別できるようにしてあってもよいし、2つのフィールドの組み合わせで区別できるようにしてあってもよい。
管理フレームは、他の無線通信装置との間の物理的な通信リンクの管理に用いるフレームである。例えば、他の無線通信装置との間の通信設定を行うために用いられるフレームや通信リンクをリリースする(つまり接続を切断する)ためのフレーム、無線通信装置でのパワーセーブ動作に係るフレームがある。
データフレームは、他の無線通信装置と物理的な通信リンクが確立した上で、無線通信装置の内部で生成されたデータを他の無線通信装置に送信するフレームである。データは本実施形態の上位層で生成され、例えばユーザの操作によって生成される。
制御フレームは、データフレームを他の無線通信装置との間で送受(交換)する際の制御に用いられるフレームである。無線通信装置がデータフレームや管理フレームを受信した場合にその送達確認のために送信される応答フレームは、制御フレームに属する。
これら3種類のフレームは、物理層で必要に応じた処理を経て物理パケットとしてアンテナを経由して送出される。なお、接続確立の手順においては、接続要求フレームと接続受付フレームが管理フレームであり、接続受付フレームへの確認フレームは制御フレームの応答フレームを用いることができる。
[2]無線通信装置間の接続切断の手法
接続の切断には、明示的な手法と暗示的な手法とがある。明示的な手法としては、接続している無線通信装置のいずれか一方が切断のためのフレームを送信する。このフレームは管理フレームに分類される。切断のためのフレームは、例えば接続をリリースするという意味でリリースフレームと呼ぶことがある。通常、リリースフレームを送信する側の無線通信装置ではリリースフレームを送信した時点で、リリースフレームを受信する側の無線通信装置ではリリースフレームを受信した時点で、接続の切断と判定する。その後、通信フェーズでの初期状態、例えば通信相手の無線通信装置を探索する状態に戻る。これは、切断のためのフレームを送信する際には、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるといった、物理的な無線リンクが確保できないことがあるからである。
一方、暗示的な手法としては、一定期間接続を確立した接続相手の無線通信装置からフレーム送信(データフレームおよび管理フレームの送信、あるいは自端末が送信したフレームへの応答フレームの送信)を検知しなかった場合に、接続状態の切断の判定を行う。このような手法があるのは、上述のように接続の切断を判定するような状況では、接続先の無線通信装置と通信距離が離れて無線信号が受信不可あるいは復号不可になるなど物理的な無線リンクが確保できない状態が考えられるからである。すなわち、リリースフレームの受信を期待できないからである。
暗示的な方法で接続の切断を判定する具体例としては、タイマを使用する。例えば、送達確認応答フレームを要求するデータフレームを送信する際、当該フレームの再送期間を制限する第1のタイマ(例えばデータフレーム用の再送タイマ)を起動し、第1のタイマが切れるまで(つまり所望の再送期間が経過するまで)当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行う。当該フレームへの送達確認応答フレームを受信すると第1のタイマは止められる。
一方、送達確認応答フレームを受信せず第1のタイマが切れると、例えば接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマ(例えば管理フレーム用の再送タイマ)を起動する。第1のタイマと同様、第2のタイマでも、第2のタイマが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマが切れると接続が切断されたと判定する。
あるいは接続相手の無線通信装置からフレームを受信すると第3のタイマを起動し、新たに接続相手の無線通信装置からフレームを受信するたびに第3のタイマを止め、再び初期値から起動する。第3のタイマが切れると前述と同様に接続相手の無線通信装置がまだ(通信レンジ内に)存在するか(言い換えれば、無線リンクが確保できているか)を確認するための管理フレームを送信し、それと同時に当該フレームの再送期間を制限する第2のタイマ(例えば管理フレーム用の再送タイマ)を起動する。この場合も、第2のタイマが切れるまで当該フレームへの送達確認応答フレームを受信しないと再送を行い、第2のタイマが切れると接続が切断されたと判定する。後者の、接続相手の無線通信装置がまだ存在するかを確認するための管理フレームは、前者の場合の管理フレームとは異なるものであってもよい。また後者の場合の管理フレームの再送を制限するためのタイマはここでは第2のタイマとして前者の場合と同じものを用いたが、異なるタイマを用いるようにしてもよい。
[3]無線LANシステムのアクセス方式
例えば複数の無線通信装置と通信または競合することを想定した無線LANシステムがある。IEEE802.11(拡張規格なども含む)無線LANではCSMA/CAをアクセス方式の基本としている。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了から固定時間を置いて送信を行う方式では、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置で同時に送信を行うことになり、その結果、無線信号が衝突してフレーム送信に失敗する。ある無線通信装置の送信を把握し、その送信終了からランダム時間待つことで、その無線通信装置の送信を把握した複数の無線通信装置での送信が確率的に分散することになる。よって、ランダム時間の中で最も早い時間を引いた無線通信装置が1つなら無線通信装置のフレーム送信は成功し、フレームの衝突を防ぐことができる。ランダム値に基づき送信権の獲得が複数の無線通信装置間で公平になることから、Carrier Avoidanceを採用した方式は、複数の無線通信装置間で無線媒体を共有するために適した方式であるということができる。
[4]無線LANのフレーム間隔
IEEE802.11無線LANのフレーム間隔について説明する。IEEE802.11無線LANで用いられるフレーム間隔は、distributed coordination function interframe space(DIFS)、arbitration interframe space(AIFS)、point coordination function interframe space(PIFS)、short interframe space(SIFS)、extended interframe space(EIFS)、reduced interframe space(RIFS)の6種類ある。
フレーム間隔の定義は、IEEE802.11無線LANでは送信前にキャリアセンスアイドルを確認して開けるべき連続期間として定義されており、厳密な前のフレームからの期間は議論しない。従ってここでのIEEE802.11無線LANシステムでの説明においてはその定義を踏襲する。IEEE802.11無線LANでは、CSMA/CAに基づくランダムアクセスの際に待つ時間を固定時間とランダム時間との和としており、固定時間を明確にするためこのような定義になっているといえる。
DIFSとAIFSとは、CSMA/CAに基づき他の無線通信装置と競合するコンテンション期間にフレーム交換開始を試みるときに用いるフレーム間隔である。DIFSは、トラヒック種別による優先権の区別がないとき、AIFSはトラヒック種別(Traffic Identifier:TID)による優先権が設けられている場合に用いる。
DIFSとAIFSとで係る動作としては類似しているため、以降では主にAIFSを用いて説明する。IEEE802.11無線LANでは、MAC層でフレーム交換の開始などを含むアクセス制御を行う。さらに、上位層からデータを渡される際にQoS(Quality of Service)対応する場合には、データとともにトラヒック種別が通知され、トラヒック種別に基づいてデータはアクセス時の優先度のクラス分けがされる。このアクセス時のクラスをアクセスカテゴリ(Access Category;AC)と呼ぶ。従って、アクセスカテゴリごとにAIFSの値が設けられることになる。
PIFSは、競合する他の無線通信装置よりも優先権を持つアクセスができるようにするためのフレーム間隔であり、DIFSおよびAIFSのいずれの値よりも期間が短い。SIFSは、応答系の制御フレームの送信時あるいは一旦アクセス権を獲得した後にバーストでフレーム交換を継続する場合に用いることができるフレーム間隔である。EIFSはフレーム受信に失敗した場合に発動されるフレーム間隔である。
RIFSは一旦アクセス権を獲得した後にバーストで同一無線通信装置に複数のフレームを連続して送信する場合に用いることができるフレーム間隔であり、RIFSを用いている間は送信相手の無線通信装置からの応答フレームを要求しない。
ここでIEEE802.11無線LANにおけるランダムアクセスに基づく競合期間のフレーム交換の一例を図26に示す。
ある無線通信装置においてデータフレーム(W_DATA1)の送信要求が発生した際に、キャリアセンスの結果、媒体がビジーである(busy medium)と認識する場合を想定する。
この場合、キャリアセンスがアイドルになった時点から固定時間のAIFSを空け、その後ランダム時間(random backoff)空いたところで、データフレームW_DATA1を通信相手に送信する。
ランダム時間は0から整数で与えられるコンテンションウィンドウ(Contention Window:CW)の間の一様分布から導かれる擬似ランダム整数にスロット時間をかけたものである。ここで、CWにスロット時間をかけたものをCW時間幅と呼ぶ。CWの初期値はCWminで与えられ、再送するたびにCWの値はCWmaxになるまで増やされる。CWminとCWmaxの両方とも、AIFSと同様アクセスカテゴリごとの値を持つ。W_DATA1の送信先の無線通信装置では、データフレームの受信に成功するとその受信終了時点からSIFS後に応答フレーム(W_ACK1)を送信する。W_DATA1を送信した無線通信装置は、W_ACK1を受信すると送信バースト時間制限内であればまたSIFS後に次のフレーム(例えばW_DATA2)を送信することができる。
AIFS、DIFS、PIFSおよびEIFSは、SIFSとスロット時間との関数になるが、SIFSとスロット時間とは物理層ごとに規定されている。また、AIFS、CWminおよびCWmaxなどアクセスカテゴリごとに値が設けられるパラメータは、通信グループ(IEEE802.11無線LANではBasic Service Set(BSS))ごとに設定可能であるが、デフォルト値が定められている。
例えば、802.11acの規格策定では、SIFSは16μs、スロット時間は9μsであるとして、それによってPIFSは25μs、DIFSは34μs、AIFSにおいてアクセスカテゴリがBACKGROUND(AC_BK)のフレーム間隔はデフォルト値が79μs、BEST EFFORT(AC_BE)のフレーム間隔はデフォルト値が43μs、VIDEO(AC_VI)とVOICE(AC_VO)のフレーム間隔はデフォルト値が34μs、CWminとCWmaxとのデフォルト値は、各々AC_BKとAC_BEとでは31と1023、AC_VIでは15と31、AC_VOでは7と15になるとする。なお、EIFSは、SIFSとDIFSと最も低速な必須の物理レートで送信する場合の応答フレームの時間長の和である。
本実施形態で用いられる用語は、広く解釈されるべきである。例えば用語“プロセッサ”は、汎用目的プロセッサ、中央処理装置(CPU)、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、コントローラ、マイクロコントローラ、状態マシンなどを包含してもよい。状況によって、“プロセッサ”は、特定用途向け集積回路、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プログラム可能論理回路(PLD)などを指してもよい。“プロセッサ”は、複数のマイクロプロセッサのような処理装置の組み合わせ、DSPおよびマイクロプロセッサの組み合わせ、DSPコアと協働する1つ以上のマイクロプロセッサを指してもよい。
別の例として、用語“メモリ”は、電子情報を格納可能な任意の電子部品を包含してもよい。“メモリ”は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、フラッシュメモリ、磁気または光学データストレージを指してもよく、これらはプロセッサによって読み出し可能である。プロセッサがメモリに対して情報を読み出しまたは書き込みまたはこれらの両方を行うならば、メモリはプロセッサと電気的に通信すると言うことができる。メモリは、プロセッサに統合されてもよく、この場合も、メモリは、プロセッサと電気的に通信していると言うことができる。
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。