以下、添付の図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の実施の形態を説明するための各図面において、同一の機能もしくは形状を有する部材や構成部品等の構成要素については、判別が可能な限り同一符号を付すことにより一度説明した後ではその説明を省略する。
図1を用いて画像読取装置100のハードウェア構成について説明する。図1に示すように、画像読取装置100は、CPU(Central Processing Unit)1、ROM(Read Only Memory)2、RAM(Random Access Memory)3、HDD(Hard Disk Drive)4、操作部5、スキャン部6、画像処理部7を有している。さらにADF(Auto Document Feeder)8や外部接続I/F(Interface)9を有していても良い。これらはシステムバス10を介して相互に接続されている。
CPU1は、画像読取装置100の動作を制御する。すなわちCPU1は、RAM3をワークエリア(作業領域)としてROM2又はHDD4に格納されたプログラムを実行することで、画像読取装置100全体の動作を制御して、画像読取装置100の各種機能を実現する。またHDD4には、画像読取装置100が行った動作のログや、画像読取装置100が作成した読取画像を保存可能である。
操作部5は操作者の操作に応じた各種入力を受け付ける。操作者に対し動作状況や設定情報を表示する表示機能を有していても良い。
スキャン部6は、光を照射する照明部601と、反射光を読み取る読取部602を有する。照明部601は光を照射対象に照射し、読取部602は照射対象からの反射光を読み取る。
画像処理部7は画像処理回路などからなり、スキャン部6の出力結果である読取データに各種処理を施し、読取画像を生成する。読取データには、読取画像を生成するのに必要な、一例として画素の位置を算出するための情報、明るさを算出するための情報等、各種情報が含まれている。なお画像処理部7はCPU1、ROM2、RAM3とは独立したCPU,ROM,RAMを有することも可能である。
ADF8は、紙原稿をスキャン部6に自動搬送する。外部I/F9は生成した読取画像を外部へ送信するインターフェイスである。例えば生成した読取画像をプリンタに送信してプリンタで印刷することが可能である。
図2を用いて画像読取装置100の構成について説明する。スキャン部6はコンタクトガラス61を有する。操作者が画像を生成したい原稿などをコンタクトガラス61に置き、画像読取装置100の前面(矢印F側)に設けられた操作部5から読み取り実行を入力すると、画像読取装置100はスキャン部6の動作を開始する。コンタクトガラス61の下には光源を有し、光源62からコンタクトガラス61に光を照射する。光源から光を照射する構成は後述する。
スキャンを実行する際は、原稿などを白板からなる背景板11でコンタクトガラス61に押圧することで、背景としての白板が光を反射し、原稿などの背景を白くすることができる。光源62からの照射光はコンタクトガラス61を透過し、被写体である原稿など、および背景板11に照射される。つまり原稿などの被写体と背景板11の両方が光源62からの光を照射される対象(以下照射対象と呼ぶことがある)である。
また背景板11は原稿などをコンタクトガラス61に押圧する押圧板としての役割も有する。背景板11による押圧により、スキャンの間に原稿などが動いてスキャンが失敗することを防ぐことができる。
本実施形態では、一例としてADF8のコンタクトガラス61側に背景板11を設けている。ADF8の一部に把持部12を有し、操作者は、把持部12を持ってADF8ごと背景板11をコンタクトガラス61から離して原稿などを置き、原稿などの上から背景板11でコンタクトガラス61に押圧してスキャンを実行する。図2はスキャン部6とADF8とがヒンジHで接続され、背景板11とコンタクトガラス61とが離れている状態を示している。
次に、スキャナ部6のハードウェア構成を説明する。図3は、スキャナ部6を図2のF方向に透視した透視図である。スキャナ部6は、原稿などを置くコンタクトガラス61と原稿に光を照射するための光源62を有する。光源62からの光はコンタクトガラス61を透過してコンタクトガラス61上に置かれた原稿などを照射する。この時、反射板63がある場合は、光源62からの照射光のうち、直接コンタクトガラス61に向かわない光を反射板63で反射させて原稿などに照射できる。以降光源62と反射板63を、まとめて照明部601と呼ぶことがある。
スキャナ部6はさらに、ミラー641〜645と、レンズユニット65と、CCDやCMOSセンサーからなるイメージセンサー66と、読取制御基板67とを有する。原稿などからの反射光をミラー641〜645で反射させてレンズユニット65を通し、センサ66で読み取る。読取制御基板67は、これらの読み取り動作を制御し、スキャナ部6の出力結果を画像処理回路7へ送る。以降、ミラー641〜645をまとめてミラー64と呼ぶことがある。さらにミラー64と、レンズユニット65と、センサ66とをまとめて読取部602と呼ぶことがある。また、読取制御基板67を含めて読取部602としても良い。
本実施形態では、照射部601と読取部602が一体となり、図3中2点鎖線で示される光学センサ一体型モジュールM1を形成している。コンタクトガラス61上の原稿などに光源62からの光を照射するために、スキャナモータ68によって、駆動ベルト69に動力を伝達させることで光学センサ一体型モジュールM1全体が副走査方向Aに移動する。
また、ADF8による原稿読み取りは、光学センサ一体型モジュールM1がADF8の読み取り用スリット15の下へ移動した状態で、ADF8の原稿スタック部81に置かれた原稿Pをローラ82a、82b、82cによってBの方向へガイドすることで、ADF8読み取り位置Cに搬送され、読み取っていく。読取位置を通過した原稿Pは、排紙部83に排紙される。
図4は、画像読取装置100の機能ブロック図である。
画像形成装置100は、入力部110と、出力部120と、制御部130と、記憶部140と、操作受付部150とを備える。
入力部100は、スキャン部6やADF8の処理によって実現され、原稿などの被写体を光学的に読み取ったデータを入力する機能を実行する。
出力部120は外部I/F9の処理によって実現され、画像読取装置100で生成した読取画像を画像読取装置100の外部のプリンタなどに出力する機能を実行する。
制御部130は、CPU1がRAM3を作業領域としてROM2やHDD14に記憶されたプログラムを実行することによって実現され、画像読取装置100全体の制御を実行する。制御部130はさらに画像処理制御部131を有し、入力部から入力されたデータに対し、各種画像処理を施して、読取画像を生成する。画像処理制御部131はさらに変換処理部1311を有するが、詳細は後述する。
画像形成制御部131は、CPU10がHDD14に記憶されたプログラムを実行することによって実現され、コピー機能、スキャナ機能、FAX機能、プリンタ機能を実行する。
記憶部140は、ROM2やHDD14の処理によって実行され、プログラムや画像読取装置100の動作に必要な各種設定情報、画像読取装置100で生成した読取画像等を格納する機能を実行する。画像処理部7がROM等を有する場合は、ROM2やHDD14を合わせて画像処理部7が有するROMの処理によって実行されても良い。記憶部140は、変換係数記憶部141を有するが、詳細は後述する。
操作受付部150は操作部5の処理によって実現され、操作者の画像読取装置100に対する各種指示を受け付ける。
図5を用いて薄型の照明部について説明する。まず図5(a)(b)はともに、被写体として立体物(腕時計)を読み取る場合を表している。この時、操作者は、少量の紙原稿を読み取る場合とは異なり、立体物には高さがあるため、背景板11をコンタクトガラス61表面に密着させることができない。したがって図5(a)(b)のように背景板11はコンタクトガラス61から浮いた状態となっている。
一般的に照度は光源から離れるほど小さくなることは知られており、図5(a)(b)いずれにおいても、照明部601からの距離が離れるほど照度は低く、つまり暗くなっている。なお、反射光の光軸に合わせて反射光を読み取る読取部602a、602bが配置されているのを概念的に示している。
このような、照明部または照明部が有する光源からの距離に対する照度低下の割合、照度比率変化の特性を、照明深度特性と呼ぶことがある。
図5(a)と図5(b)を比較すると、図5(a)の照明部601aは、図5(b)の照明部601bより小型である。より具体的には照明部601aは、小型である光源62aを搭載すること、また小型化した分だけ光源62aをコンタクトガラス61aに近づけること等で、薄くなっている。したがって図5(a)の照明部601aを搭載した方が、スキャナ部6全体の薄型化が可能である。
この薄型化の結果、図5(a)と図5(b)でそれぞれの背景板11とコンタクトガラス61との間の照度分布に相違が生じている。より具体的には図5(a)の照明部601aの方が、背景部材である押圧板11aとコンタクトガラス61a表面からの距離が離れるにしたがって照度が低くなる割合が大きい。この相違点の主な要因は、薄型化によりコンタクトガラス61aへの光源62aからの照射光入射角が浅くなり、これによってコンタクトガラス61aへの照射光量が少なくなってしまうためである。
その結果、コンタクトガラス61a、61bそれぞれの表面上における原稿面照度が同等程度であれば、照明部601bから得られる照度と比較して、照明部601aから得られる照度は、それぞれのコンタクトガラス61b、61aからの距離に対して低くなる割合が大きい。言い換えると、照明部601bと比較して、照明部601aの方が、照明部からの距離が遠くなるにつれ、より照度が低くなり、つまり暗くなりやすい。
図6は上述の図5(a)(b)それぞれの照明系で読み取った読取画像の例である。図6(a)(b)はそれぞれ、図5(a)の照明部601aと、図5(b)の照明部601bによって、被写体として同じ時計をコンタクトガラス61面上に置いて読み取った結果の読取画像例である。図6(a)と図6(b)を比較すると、特に被写体の周囲の背景部分が、図6(b)と比較して図6(a)の方が暗くなっている。また被写体よりも背景部の方が光源62からより遠くなるため、読取画像のうち、背景部において、より照明部の違いによる明るさの相違が現れやすいことも示されている。
この現象、つまり暗さを回避する手段の1つとして、照射対象に向かう方向の照射光を増加させる方法が考えられる。そのためには、例えば光源素子がLED(Light Emitting Diode)で、チップLEDをアレイ状に並べる方式では、LEDの個数を増やし、かつその発光成分をより広い角度に拡散させる(高さ方向の照度特性を得る)ための大型の拡散板/導光体を導入する必要がある。あるいは、ハイパワー型LEDを導光体両端から入射させる方式が考えられるが、同様にLEDの発光量増加および大型の放熱部材が必要となる。いずれの場合であっても照明部の大型化およびコストアップは避けられず、したがって照射光量を増加させる以外の方法が望ましい。
そこで、第一の実施形態として、読取画像をより明るくするために、スキャナ部6から入力された読取データに制御部130により変換を行う。
この変換は、一例として操作者が、特に背景の明るさ・暗さに問題の生じやすい被写体である立体物の読み取りを行う場合などに、操作部5から通常モード(以降第一の読取モードと呼ぶ)とは異なるモード(以降第二の読取モードと呼ぶ)を選択した上で実行された読取の際、制御部130により実行される。また、背景板11の開閉の度合いを検知するセンサなどの検知結果に基づき自動で第二の読取モードに移行して変換を実行してもよい。第二の読取モードでは、第一の読取モードでは実行しない、上述の明るさに関する変換(以降明るさ変換と呼ぶことがある)を読取データに対して行う。
図7は、変換処理部1311の機能ブロックの第一の例である。画像処理制御部131は、入力部110から入力された読取データに各種画像処理を施し、読取画像を生成する。変換処理部1311は、各種画像処理の一部として、照射対象からの反射光に基づく読取データに対し明るさ変換を行う。ここで照射対象とは、前述の通り、照明部601からの光を照射される対象である。したがって操作者がコンタクトガラス61面上に置いた物体である被写体に限られない。被写体以外でも照明部601からの光を照射される物体、一例として押圧部材11を含む。なお、画像読取装置100で処理される「画像」とは、テキスト情報のみからなる画像も含むものとする。
距離情報検出部1311−1は、入力部110から入力されたある画素の読取データから、照明部601からの距離と相関のあるデータである距離情報の検出を行う。より暗いデータほど照明部601と照射対象とが遠い距離にあると判断し、その距離情報を変換係数取得部1311−2へ伝える。
照明部601からの距離と相関のあるデータである距離情報の具体例としては、照度、または読取センサの出力をデジタル変換したデータ(以降デジタル画像データと呼ぶことがある。)が挙げられる。
ここで、照度については一般的に、光源が照らすある面と光源との距離が離れると、その面の照度が低くなることが知られている。したがって、ある画素の照度の値から、その画素の照度を取得した時の照射対象との距離が推定できる。
また、デジタル画像データは、8bitデータで0〜255の値を取り、明るいほど大きな値となることが知られている。つまり照射対象自体が白に近ければ大きな値、黒に近ければ小さな値が得られる。一方で、例えば照射対象自体の明るさが同程度の場合は、照射対象が光源から離れて照射対象に届く光量が減り、暗くなるのを反映して、照射対象が遠いほど小さな値が得られる。したがって、ある画素のデジタル画像データの値から、その画素を取得した時の照射対象との距離が推定できる。
このように、ある画素の読取データから検出した照度やデジタル画像データに基づき、その画素が読み取られたときの照明部601と照射対象との距離が得られる。この照度やデジタル画像データ、または、それらに対応付けられて決定される距離を、距離情報と呼ぶ。距離情報は、距離と相関のあるデータであれば、照度、デジタル画像データに限られない。
図7を用いた説明を続ける。変換係数取得部1311−2は距離情報に基づき、読取データを変換するための変換係数Kを選択または生成し、データ変換部1311−3に伝える。データ変換部1311−3はこの変換係数によって入力された読取データを変換し、変換後読取データを算出する。ここで「変換係数」は、ある値を別な値に直接変換する式またはテーブルだけでなく、変換係数自体を求める変換係数算出式、変換係数参照テーブルも含む概念である。
変換係数は、後述する方法で決定され、あらかじめ変換係数記憶部141に記憶される。この変換係数による変換が、変換前の読取データから生成する読取画像よりも変換後の読取データから生成される読取画像の方をより明るくするための変換である。
次に、図8、図9を用いて変換係数記憶部141に記憶する変換係数の決定の例を説明する。
まず、照明部601から照射対象の距離が遠いほど暗く、近いほど明るくなることは図5(a)(b)で述べた通りである。そこで、照明部601で取得したある読取データを、照明部601自身もしくは照明部601と同じ照明特性を持つ照明部において照射対象と照明部601がより近くで取得した読取データへと変換すれば、変換後の読取データから生成される読取画像はより明るく変換されることになる。
図8は、距離情報による変換の例を示す。横軸は第二の読取モードで取得した読取データから検出した距離情報としての距離を示す。縦軸は、あらかじめ基準板を用いて取得した読取データ(以降基準読取データを呼ぶことがある)を取得した際の、基準板と、照明部601自身もしくは照明部601と同じ照明特性を持つ照明部との距離を示す。この基準読取データの取得方法は図9を用いて述べる。
図8の説明を続けると、第二の読取モードにおいてある距離Lで取得した読取データを、基準板と照明部601との距離がL/2で取得した基準読取データで変換することを示している。例えば第二の読取モードで取得したある画素の読取データから、距離情報として10mmの距離が得られた場合には、その読取データを、距離5mmで取得した基準読取データへ変換する。
図9は、第一の実施形態における基準読取データ取得の例を示す。まずコンタクトガラス61から、つまり照明部601からの異なる距離0〜3を設定する。この照明部601からの距離は、例えば図2、図3に記載した構成の画像読取装置100においては、照明部601の上に配置されたコンタクトガラス61の上に照射対象が配置されるため、照明部601からの高さと呼ぶこともできる。そこで図9では高さ0〜3と示している。
それぞれの高さに基準部材Tを設置した状態で基準部材を照射対象とした読取データ(以降基準読取データと呼ぶことがある。)を生成すれば、基準読取データと、その基準読取データを取得した際の基準部材との距離を取得することができる。高さは一例として0〜3の4段階としたが、適宜段階を増やすことで、より多くの距離と読取りデータの組み合わせを取得可能である。
このようにして取得した、距離に応じた基準読取データに基づき、一例として図8のように、第二の読取モードで検出された距離情報に対し、1/2の距離で取得した基準読取データで変換するように、変換係数を決定する。決定した変換係数をあらかじめ変換係数記憶部141に保存する。
図9の基準読取データを取得する照明部601は、実際の画像読取を行う照明部そのものでもよいし、照射対象との距離に対する照度低下の割合が、実際の画像読取を行う照明部と同等であれば基準読取データ取得のために準備された別の照明部でもよい。
実際に画像読取を行う際の照明部を第一の照明部とした場合、この基準読取データを取得するために画像読取を行う照明部を第二の照明部とする。また第一の照明部、第二の照明部それぞれから照射対象に照射された反射光を読み取る読取部を、第一の読取部、第二の読取部とする。
この時、第一の実施形態の場合、第二の照明部は、実際の画像読取を行う照明部そのものでもよいし、照射対象との距離に対する照度低下の割合が、実際の画像読取を行う照明部と同等であれば、基準読取データ取得のために準備された別の照明部でもよい。
図10は、明るさ変換を施した読取画像の第一の例である。図10の(a)(b)は同じ被写体を第一の読取モードで生成された読取画像と、第二の読取モードで第一の実施形態の明るさ変換を施した結果、生成された読取画像である。小型の照明部を用いた立体物読み取り時においても、図10(b)に示されるような読取画像の明るさレベルを維持できる。
また図10(a)(b)どちらも紙面右側に向かって暗くなっている。これは、背景部材がコンタクトガラス61に対して斜めになっていることによる。つまり、一般的にコンタクトガラス61上の被写体が立体物の場合、背景部材をコンタクトガラス61に均一に押圧することが難しくなる。その場合、一度の読取による読取画像の中で、照明部601と背景部材との距離が異なるため、読取画像の特に背景の明るさにばらつきが出る。例えば図3の矢印Fを図10中に示すと、画像読取装置100の前面F側に対応する背景が暗く、ヒンジHに近い方に対応する背景が明るくなる。本実施形態では読み取った読取データ毎、例えば画素毎に上述の明るさ変換を行っている為、一度の読取に含まれる各々の異なる高さにおいてもそれぞれの高さにおいて明るい方向へ変換することができる。
第二の実施形態について説明する。第一の実施形態ではある距離で取得した読取データを、同じ照明特性を有する照明部においてより近い距離で取得した基準読取データで変換するものであった。それに対し第二の実施形態は、ある距離で取得した読取データを、読取画像の明るさに関してより良い照明特性を有する照明部において同じ距離で取得した基準読取データで変換するものである。
図11は、距離情報による変換の別の例である。図11において、横軸は第二の読取モードで取得した読取データから検出した距離情報としての距離を示す。縦軸は、照明特性の良好な照明部と基準部材との距離を示す。第二の読取モードにおいてある距離Lで取得した読取データを、より良好な照明特性を有する照明部601と距離Lで取得した基準読取データで変換することを示している。基準読取データの取得方法は図12を用いて述べる。
図12は基準部材Tを用いた基準読取データ取得の別の例である。図12(b)は、図12(a)と比較して大型であるが、照明部601としての特性は良好、つまり照明部601と照射対象との距離が離れても比較的明るい照明部である。
図12(a)および図12(b)それぞれの照明部において基準部材Tを高さ0〜3の任意の高さに配置し、距離に応じた読取データ情報である基準読取データを取得しておく。なお、照明部601aは、実際の画像読取を行う照明部そのものでなくても、照射対象との距離に対する照度低下の割合が、実際の画像読取を行う照明部と同等であれば基準読取データ取得のために準備された照明部でもよい。
そして取得した距離に応じた基準読取データに基づき、一例として図11のように、第二の読取モードで検出された距離情報に対し、照明特性が良い照明系において同じ距離で取得した基準読取データで変換するように、変換係数を決定する。決定した変換係数をあらかじめ変換係数記憶部141に保存する。
第二の実施形態の明るさ変換によって、図10で示したのと同様に、小型の照明部を用いた立体物読み取り時においても、読取画像の明るさレベルを維持できる。また、一度の読取に含まれる各々の異なる高さにおいてもそれぞれの高さにおいて明るい方向へ変換することができる。
なお、第一の実施形態、第二の実施形態における基準部材Tには、画像読取装置100が有する押圧板11を用いることが可能である。押圧板11は通常、被写体の押圧・固定、背景画像の形成に用いられる。よって、画像読取装置100での読み取りにおける背景部材は、この押圧板11となることが多い。従って、基準部材Tとしてこの押圧板11を用いることで、実際の画像読み取りにより近い条件での高さに応じた情報を取得しておくことが可能となる。特に背景部について、より高精度かつ自然な画像の明るさ変換が可能となる。
また、第一の実施形態、第二の実施形態ともに、変換係数を決定する過程で、シミュレーションを利用してもよい。変換係数の保存タイミングの例としては、出荷前や、製品を納入後の初期設定時などでよい。
図13は基準読取データの第一の例である。図13の破線は図11(a)照明部601aの、実線は図11(b)照明部601bの基準読取データである。それぞれの照明部において、基準部材Tを高さ方向に移動させ読み取った読取データとして、デジタル画像データ、つまり8bitのデジタルデータの数値が縦軸に示される。
図13では、いずれの照明部であってもコンタクトガラス61の面上(高さ0mm)における読取データが255digit(8bit)であり、かつ高さが増すほど0digitに近付いていく。一方、照明部601aと比較して、照明部601bの方が、より遠い位置でも大きなデータレベルを示しており、照射対象との距離に対してより明るい照明特性であることがわかる。
この特性差を用い、照明部601aを搭載した画像読取装置100においては、照明部601aで読み取った読取データが照明部601bにおける同じ距離でのデジタル画像データとなるように変換係数があらかじめ設定される。
そして照明部601aを搭載した画像読取装置100の第二の読取モードにおいて、図7の距離情報検出部1311−1は、例えば読取データに含まれる8bitのデジタルデータから、被写体部及び背景部の距離(高さ)情報を検出する。より暗いデータほど距離が遠いと判断し、その距離情報を変換係数取得部1311−2へ伝える。変換係数取得部1311−2は、変換係数記憶部141から距離情報に応じた変換係数Kを取得し、データ変換部1311−3に入力する。そして、データ変換部1311−3が読取データへ変換係数Kを適用し、変換後読取データが生成される。一例として、第二のモードである画素のデジタル画像データが32bitであれば、15mmの高さであると判断し、その画素のデジタル画像データが110bit付近になるように、読取データを変換する。
図14は基準読取データの第二の例である。図14に示すような照度比率を用いることによっても、画像の明るさ変換効果を得ることが可能である。図14の破線は図11(a)601aの、実線は図11(b)601bの基準読取データである。それぞれのシステムにおいて基準部材Tを高さ方向に移動させたときの、基準読取データの一つとして照度比率を縦軸に示す。
照度比率はコンタクトガラス61の面上の照度を1とした時、ある距離での照度の割合を示している。いずれの照明部であってもコンタクトガラス61の面上(高さ0mm)から距離が増すほど照度比率が下がっていく。一方、照明部601aと比較して、照明部601bの方がより遠い位置でも大きなデータレベルを示しており、照明部601と照射対象との距離に対してより明るい照明特性であることがわかる。照明部601bと照明部601aは異なる構成の照明部であってもよいし、同じ構成の照明部で、異なる照度比率に設定したものでもよい。
この特性差を用い、照明部601aを搭載した画像読取装置100においては、照明部601aが読み取った読取データが、照明部601bにおける同じ距離での照度比率となるように変換係数をあらかじめ設定される。
そして照明部601aを搭載した画像読取装置100の第二の読取モードにおいては、図7の距離情報検出部1311−1が、読取データから距離情報の一例としてのデジタル画像データを検出し、より小さいデータ(暗いデータ)ほど距離が遠いことを示す情報として、距離情報を変換係数取得部1311−2へ伝える。変換係数取得部1311−2は、変換係数記憶部141から距離情報に応じた変換係数Kを取得し、データ変換部1311−3に入力する。そしてデータ変換部1311−3で、読取データの変換が行われる。一例として第二のモードにおいてある画素の照度が0.1付近であれば、15mmの高さであると判断し、その画素の照度が0.45付近となるように変換係数を選択する。
図13、図14いずれも距離情報としてデジタル画像データを用いた例であるが、読取データに含まれるその他のデータであってよい。
次に、照明部を搭載した画像読取装置の小型化について述べる。図15から図18は、照明部を搭載した構成の異なる4種類の画像読取装置例を示している。
図15は、照明部を搭載した画像読取装置の第一の構成例である。図5(b)の照明部601bおよび読取部602b(光源62、反射板63、ミラー64、レンズ65、読み取りセンサ66)を別構成で備えた差動ミラー方式である。
図16は、照明部を有する画像読取装置の第二の構成例である。薄型である図5(a)の照明部601a、および読取部602a(光源62、反射板63、ミラー64、レンズ65、読み取りセンサ66)を一体構成として備えた一体型方式である。一体構成である照明部を薄型とした分、画像読取装置全体も小型化できている。なお光源62は薄型照明部の具体例として、LED621と、LEDからの光をミラー63に導く導光体622を有している。
図17は、照明部を有する画像読取装置の第三の構成例である。照明部と読取部が一体構成であり、かつ被写体を等倍で読み取るCIS(Contact Image Sensor)を有するCIS方式である。
従来は、図15に示される方式、つまり照明部と読取部別体方式が主流であったが、画像読取装置の小型化の要請により、図16や図17に示される方式つまり照明部と読取部一体方式が多く開発されている。なお、図15差動ミラー方式と、図16,17一体型方式それぞれ照明部としては、図15の差動ミラー方式では、比較的照射角度を深く構成できるため図14実線のような比較的良い照明特性となる傾向がある。図16、図17の一体型方式では照射角度が浅いため、図14破線のような特性となる傾向がある。
図16、図17のような小型だが特に読取画像の背景が暗くなってしまう画像読取装置において、前述のような明るさ変換を適用することにより、図16、図17のような小型化を維持しつつ、図15の画像読取装置における良好な照明特性の照明部のような明るい読取画像を得ることができる。
このように、本発明によって、照明部のみならず、画像読取装置全体を小型化したシステムにおいても、装置全体の小型化を維持したまま、読取画像、特に背景部の暗さを軽減することができる。
図18は、照明部を有する画像読取装置の第四の構成例である。図18を用いて照明部を搭載した画像読取装置の小型化についてさらに述べる。
図18に示す画像読取装置は、図15と比較して照明部を小型・薄型化している。一方読取部は同じ程度の大きさを有しているため、画像読取装置を全体の小型化・薄型化はしていない。しかし照明部の小型化により画像読取装置としての軽量化、低コスト化は実現している。図18の場合も、照明部の小型化により、図16、図17と同様に、図15の照明部と比較して照明特性が劣化してしまう問題は避けられない。
図19は基準読取データの第三の例である。図19の実線が図15の画像読取装置に搭載された照明部、図19の破線は、図18の画像読取装置に搭載された薄型照明への置き換えたときの照度比率を示す。図18の薄型照明に置き換えた結果、照明深度特性が低下している。この問題も、上述した読取画像の明るさ変換を適用することにより破線から実線の照度比率に変換できる。その結果、図18の画像読取装置全体構成による軽量化、低コスト化を実現しつつ、読取画像の明るさを維持することが可能となる。
次に読取り変換データのより具体的な例を説明する。図20は読取データ変換前後のデータ対応の例である。読取データの変換として、デジタル画像データを変換した場合であり、横軸の値で示されるデジタル画像データを縦軸の値で示される変換後デジタル画像データに変換することを示している。
ここで図20において、最も暗い0digitについては明るさ変換を行っていない。言い換えると変換後データも0digitとしている。したがって黒の領域はほぼ変化なく維持される。
これは、画像の明るさ変換において、画像全体を明るくするために、例えば全読取データへの単純変換例えばデータへの一定値加算などの変換をすると、本来真っ黒(読取データレベル0digit)であるべき箇所もグレーなどの特定の明るさを持ってしまい、操作者の意図しない不自然な画像へと変換されることがあるためである。図20の変換により、最も暗い箇所について不要な明るさを持った読取画像となることを防いでいる。
また図20においてはさらに、0digit付近のデータの明るさ変換レベルをわずかとしながら、データの大きさに応じて徐々に変換レベル(変換の度合い)を上げていき、いわゆる中間調に向かって変換レベルが上がっている。
図21は、明るさ変換を施した読取画像の第二の例である。図21(a)は読取データに対し、明るさ変換を施していない画像である。図21(b)は、全読取データへの単純変換例えばデータへの一定値加算などを行った場合である。被写体である時計の文字盤の黒文字などがグレーとなっている。これは通常操作者の意図しない画像である。それに対し、図21(c)は図20に示す変換特性で明るさ変換を行った場合の読取画像である。真っ黒(0digit)は変換せず、この変換により、図21(c)のように黒い領域はほぼ変化なく維持されている。また、データの大きさに応じて徐々に変換レベル(変換係数など)を上げていくことにより、背景のより自然な明るさを持つ画像を得ることができている。
図22は、読取データ変換前後のデータ対応の別の例である。読取画像にて本来真っ黒や真っ白となるべき領域(8bit読取データの場合、それぞれ0digit、255digit)が多い場合、画像読取装置における電気的または光学的なノイズによって、0digit、255digitをベースにデータレベルの暴れが生じる場合がある。その状態、画像の明るさ変換を施すことによって、ノイズ成分が増幅されてしまい、結果として、画像としての品質の悪化を招く懸念がある。
そこで、図22のように、0digitおよび255digit付近(それぞれ領域1、領域2で示す)の読取データは、一律0digit、255digitへ変換し、それ以外の領域(領域3)のみを明るさ変換対象とする。また、データの大きさに応じて徐々に変換レベル(変換係数など)を上げているのは図20と同様である。
図23は、明るさ変換を施した読取画像の第三の例である。図23(a)は真っ黒、真っ白が多い読取データの読取画像である。例えば図23中矢印で示される領域は被写体がなく、操作者の意図としては背景が真っ黒として読み取られるべき領域である。しかし前述のノイズの影響で、目視できない程度のデータ暴れが発生する。図23(b)は、明るさ変換、例えば全画素のデジタル画像データへの一定値加算などを行った場合である。被写体部は明るくなっているが、データ暴れが増幅してしまい、さらなる読取画像の品質低下を招いている。データ暴れについては図24にて述べる。
図23(c)は、図22で示される明るさ変換を施した結果の読取画像である。白側/黒側のノイズが除去され、全体の画質レベルを維持しながらより自然な明るさを有する画像へ変換することができている。
図24は、画素毎の変換後データ例である。図24(a)(b)(c)はそれぞれ、図23(a)(b)(c)の矢印で示される方向を横軸に、縦軸にデジタル画像データを示している。この図23(a)(b)(c)の矢印で示される領域は、被写体は無く、操作者としては黒の読取画像を意図する領域である。
図24(a)にあるように、操作者の意図としては黒、つまりデジタル画像データとしては0digitが望ましい領域においても、ノイズを原因とする4〜6digitのデータ暴れが生じている。明るさ変換を行うとデジタル画像データにデータ加算を行うことになる。すると全体の値が大きくなり、さらに暴れは増幅される場合が多い。つまり図24(b)で示されるように、8〜12digitの暴れとなっている。
この8〜12digitのデータは、図22の領域1に含まれる。したがって図22の変換をすることで、この8〜12digitデジタル画像データについては0digitに変換され、図24(c)に示すようにデータ暴れを無くすことができ、したがって画像品質を維持できる。
図25は、変換処理部1311の機能ブロックの第二の例である。被写体を目で見た印象に近付けることなどを目的とするγ変換処理と呼ばれる画像処理が、従来から知られている。このγ変換に、明るさ変換機能も持たせることも可能である。この場合、距離情報に応じて、特性の異なるγ変換の変換関数や変換テーブルを、記憶部140にあらかじめ記憶しておけばよい。
距離情報検出部1311−1は、入力された読取データから距離情報を検出し、γ変換部1311−4へ入力する。γ変換部1311−4は、距離情報に応じてγ変換特性を切り替える。γ変換部への明るさ補正変換適用にあたっては、従来のγ変換がLUT(Lookup table)の場合は同様にLUTとし、変換関数の場合は同様に変換関数とする。LUTの一例を図26に示している。従来のγ変換部に明るさ変換の機能を持たせることにより装置としての追加機構を少なくすることができる。
図27は、変換処理部1311の機能ブロックの第三の例である。明るさ変換を背景にのみ適用する実施形態である。被写体に対向する背景部材が傾いていると、背景画像に背景部材の傾きに応じて操作者が望まないグラデーションパターンが形成してしまう場合がある。
そこで図27の変換処理部1311では、背景/被写体分離部1311−5と、データ合成部1311−6とを有する。背景/被写体分離部1311−5は、入力した読取データから背景画像と被写体画像を分離する。さらに背景/被写体分離部1311−5は分離した読取データのうち背景部に対応する読取データを距離情報検出部1311−1に入力する。また背景/被写体分離部1311−5は、分離した読取データのうち、被写体に対応する読取データをデータ合成部1311−6に入力する。
変換係数取得部1311−2、データ変換部1311−3の処理を経て明るさ変換された背景読取データは、データ合成部1311−6に入力される。データ合成部1311−6は、被写体読取データと、明るさ変換後の背景読取データとを合成して、変換後読取データを算出する。
図27の変換処理部1311においては、背景部に特化した変換係数を設定することが可能となる。その結果、背景に濃淡やパターンが発生している場合に明るさ変換とともに背景濃度の均一化を考慮した変換をすることも可能となる。
図28は、明るさ変換を施した読取画像の第四の例の説明図である。具体的には、図27の変換処理部1311による明るさ変換を施した読取画像である。
図28(a)は明るさ変換を行っていない読取画像であり、背景にグラデーションパターンが表れている。図27の図27の変換処理部1311による明るさ変換を施すことにより、図28(b)の読取画像が得られる。図28(b)は図28(a)と比較して背景が明るくなっており、かつグラデーションパターンもあらわれていない。被写体画像へ影響を与えることなく、背景部の濃度の均一化を行えている。
図29は、上述の画像読取装置100を、画像形成装置1に搭載した例である。画像形成装置1は、コピー機能、FAX機能、プリント機能、スキャナ機能、また、入力画像(スキャナ機能による読取原稿や、プリンタ機能あるいはFAX機能により入力された画像)を保存や配信する機能等を複合して有するMFP(Multi Functional Peripheral/Printer)と呼ばれる装置である。画像形成装置1は、画像読取装置100と、給紙部200と、画像形成部300とを備えている。
給紙部200は、用紙サイズの異なる記録紙を収納する給紙カセット221,222と、給紙カセット221,222に収納された記録紙を画像形成部300の画像形成位置まで搬送する各種ローラからなる給紙手段223とを有している。
画像形成部300は、露光装置331と、感光体ドラム332と、現像装置333と、転写ベルト334と、定着装置335とを備えている。画像形成部300は、画像読取装置100により読み取られた原稿などの読取データに基づいて、露光装置331により感光体ドラム332を露光して感光体ドラム332に潜像を形成し、現像装置333により感光体ドラム332に異なる色のトナーを供給して現像するようになっている。そして、画像形成部300は、転写ベルト334により感光体ドラム332に現像された像を給紙部200から供給された記録紙に転写した後、定着装置335により記録紙に転写されたトナー画像のトナーを溶融して、記録紙にカラー画像を定着するようになっている。画像形成部300における画像形成は上述の電子写真方式の他、インクジェット方式などを採用することができるが、これらに限られない。