以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態における複数の絶縁抵抗センサ6a及び6bを備える検出システム100の構成の一例を示す図である。
検出システム100は、筐体である車体200に配設された複数の電源の各々の絶縁状態を検出する絶縁検出システムである。本実施形態の検出システム100は、電動自動車に搭載されている。
車体200には、複数の電源として燃料電池1及びバッテリ2が備えられている。さらに車体200には、DC/DCコンバータ3、インバータ4、及びモータ5が備えられている。
燃料電池1及びバッテリ2の各々は、車体200に対して非接触となるように配置される。これに伴って、車体200と燃料電池1との間には絶縁抵抗Ri1が存在するとともに浮遊容量Cs1が寄生し、車体200とバッテリ2との間には絶縁抵抗Ri2が存在するとともに浮遊容量Cs2が寄生する。
なお、絶縁抵抗Ri1及びRi2と浮遊容量Cs1及びCs2は、便宜的に抵抗素子とコンデンサにより示されている。また、絶縁抵抗Ri1及び浮遊容量Cs1は車体200と燃料電池1の負極端子1nとの間に示されているが、絶縁抵抗Ri1及び浮遊容量Cs1には、燃料電池1の正極端子1pと負極端子1nの間の絶縁抵抗及び浮遊容量も加味されている。縁抵抗Ri2及び浮遊容量Cs2についても同様である。
燃料電池1及びバッテリ2は、直流電圧を負荷装置に供給する電源である。燃料電池1は第1の直流電源であり、バッテリ2は、第2の直流電源であり、例えばリチウムイオン電池により実現される。燃料電池1及びバッテリ2は、共に多数の電池セルを積層した積層電池であり、本実施形態では数百V(ボルト)の電圧を出力する、いわゆる強電系の電源である。この例では、モータ5に交流電力を供給するインバータ4に対して主に燃料電池1が直流電力を供給し、バッテリ2が燃料電池1の補助電源としてインバータ4に直流電力を供給する。
本実施形態において、燃料電池1の正極端子1pは、DC/DCコンバータ3の二次側正極端子とインバータ4の正極端子とに接続され、燃料電池1の負極端子1nは、DC/DCコンバータ3の二次側負極端子とインバータ4の負極端子とに接続される。そして、バッテリ2の正極端子2pは、DC/DCコンバータ3の一次側正極端子とインバータ4の正極端子とに接続され、燃料電池1の負極端子1nは、DC/DCコンバータ3の2次側負極端子とインバータ4の負極端子とに接続される。
DC/DCコンバータ3は、コントローラ7の操作に従ってバッテリ2の電圧を燃料電池1の電圧に対して昇圧又は降圧する。例えば、DC/DCコンバータ3は、モータ5の回生電力がインバータ4からバッテリ2へ充電されるようにバッテリ2の電圧を制御する。
検出システム100は、絶縁抵抗センサ6a、絶縁抵抗センサ6b、及びコントローラ7を備える。絶縁抵抗センサ6a及び6bの各々は、車体200に設けられた電源と車体200との間の絶縁状態を検出する絶縁検出装置である。絶縁抵抗センサ6a及び6bは、互いに同一の構成である。
絶縁抵抗センサ6aは、燃料電池1と車体200との間の絶縁状態を検出する。絶縁抵抗センサ6aは、電流印加部61と、直流遮断コンデンサ62と、電圧検出部63と、インダクタンス回路64と、コンデンサ65と、共振処理部66とを備える。
電流印加部61は、燃料電池1の負極端子1nと車体200との間に電気抵抗を検出するための交流信号を印加する印加手段を構成する。
本実施形態において電流印加部61は、電流信号線ln1を通じて、あらかじめ定められた周波数fmを有する交流電流を燃料電池1の負極端子1nに印加する。以下では電流印加部61から出力される交流電流の周波数を測定周波数fmという。
電流印加部61は、他の電流印加部61から出力される交流電流との干渉を回避するために、コントローラ7からの同期信号に従って交流電流を出力する。これにより、複数の電流印加部61から出力される交流電流の位相を互いに等しくすることができる。
さらに電流印加部61は、燃料電池1の負極端子1nに印加される交流電流の大きさを示す電流信号I1を共振処理部66に出力する。例えば、電流印加部61は、燃料電池1の負極端子1nに印加される交流電流の実効値又は平均値を電流信号I1として共振処理部66に出力する。
直流遮断コンデンサ62は、電流印加部61と燃料電池1の負極端子1nとの間に接続される。直流遮断コンデンサ62は、電流印加部61から出力される交流電流を燃料電池1の負極端子1nに通し、燃料電池1から電流印加部61に供給される直流信号を遮断する機能を有する。これにより、燃料電池1によって構成される強電系の回路から過大な電圧が電流印加部61に印加されるのを回避でき、電流印加部61の製品コストの増加を低減することができる。
電圧検出部63は、電流信号線ln2を通じて、燃料電池1の負極端子1nと車体200との間に生じる交流電圧を検出する検出手段を構成する。電圧検出部63は、検出した交流電圧の大きさを示す検出信号V1を共振処理部66に出力する。例えば、電圧検出部63は、交流電圧の実効値又は平均値を計測する交流電流計により実現され、計測した交流電圧の実効値又は平均値を検出信号V1として共振処理部66に出力する。
インダクタンス回路64は、インダクタンスL1を有する電気回路である。インダクタンス回路64は、インダクタンスL1の大きさを変更可能な可変回路により実現される。例えば、インダクタンス回路64は、互いに直列に接続された複数のインダクタンス素子と、複数のインダクタンス素子の接続位置を段階的に切り替える切替回路とを有する。
インダクタンス回路64は、燃料電池1の負極端子1nと車体200との間の浮遊容量Cs1及び絶縁抵抗Ri1に対して並列に接続される。インダクタンス回路64及び浮遊容量Cs1が互いに並列に接続されることで並列共振回路60aが形成される。
並列共振回路60aは、電流印加部61から絶縁抵抗Ri1に印加される交流電流の一部が浮遊容量Cs1に流れるのを抑制する機能を有する。すなわち、並列共振回路60aは、インダクタンスL1を用いて浮遊容量Cs1をキャンセルする機能を有する。
このように、並列共振回路60aは、燃料電池1の負極端子1nと車体200との間にインダクタンス回路64が接続されてインダクタンスL1及び浮遊容量Cs1により共振回路を形成する共振手段を構成する。
コンデンサ65は、燃料電池1の負極端子1aとインダクタンス回路64との間に接続される。コンデンサ65は、燃料電池1の負極端子1aと車体200との間にインダクタンス回路64を接続することに伴う燃料電池1と車体200との間の絶縁性の低下を抑制する機能を有する。
なお、コンデンサ65をインダクタンス回路64と車体200との間に接続するようにしてもよい。この場合であっても燃料電池1と車体200との間の絶縁性を確保することができる。
共振処理部66は、電流印加部61によるインダクタンス回路64の電流成分と浮遊容量Cs1の電流成分を互いに相殺するように並列共振回路60aの共振周波数を調整する調整手段である。
例えば、共振処理部66は、絶縁抵抗Ri1の計測に伴う浮遊容量Cs1の影響を打ち消すように並列共振回路60aの共振周波数を所定の値に調整する。本実施形態の共振処理部66は、並列共振回路60aの共振周波数が電流印加部61の測定周波数fmに収束するよう、インダクタンス回路64に生じるインダクタンスL1の大きさを変更する。
また、共振処理部66は、並列共振回路60aを介して燃料電池1と車体200との間の絶縁抵抗Ri1を検出する検出手段を構成する。
本実施形態において共振処理部66は、燃料電池1の負極端子1nに印加される交流電流の大きさを示す交流信号I1を電流印加部61から取得し、燃料電池1の負極端子1nと車体200との間の電圧の大きさを示す検出信号V1を電圧検出部63から取得する。共振処理部66は、取得した検出信号V1の振幅を交流信号I1の振幅により除して絶縁抵抗Ri1の大きさを算出する。共振処理部66は、算出した結果をコントローラ7に出力する。
このように、絶縁抵抗センサ6aは、燃料電池1の負極端子1nと車体200との間の絶縁抵抗Ri1を検出し、検出した絶縁抵抗Ri1の値をコントローラ7に出力する。
次に、検出システム100における絶縁抵抗センサ6bの構成について説明する。
絶縁抵抗センサ6bは、バッテリ2と車体200との間の絶縁状態を検出する絶縁検出装置を構成する。本実施形態の絶縁抵抗センサ6bは、バッテリ2の負極端子2nと車体200との間の絶縁抵抗Ri2を検出する。
絶縁抵抗センサ6bは、絶縁抵抗センサ6aと同様の構成であり、電流印加部61、直流遮断コンデンサ62、電圧検出部63、インダクタンス回路64、コンデンサ65、及び共振処理部66を備える。なお、絶縁抵抗センサ6aと同一の構成については同一符号を付してここでの説明を省略する。
絶縁抵抗センサ6bのインダクタンス回路64は、バッテリ2の負極端子2nと車体200との間の浮遊容量Cs2及び絶縁抵抗Ri2に対して並列に接続される。インダクタンス回路64及び浮遊容量Cs2が互いに並列に接続されることにより並列共振回路60bが形成される。
並列共振回路60bは、絶縁抵抗センサ6bの電流印加部61から絶縁抵抗Ri2に印加される交流電流の一部が浮遊容量Cs2に流れるのを抑制する機能を有する。すなわち、並列共振回路60bは、バッテリ2の負極端子2nと車体200との間にインダクタンス回路64が接続されて、インダクタンス回路64及び浮遊容量Cs2により共振回路を形成する共振手段を構成する。
絶縁抵抗センサ6bの共振処理部66は、電流印加部61によるインダクタンス回路64の電流成分及び浮遊容量Cs2の電流成分を互いに相殺するように並列共振回路60bの共振周波数を調整する調整手段を構成する。
本実施形態において共振処理部66は、インダクタンス回路64に生じるインダクタンスL2の大きさを変更することにより、並列共振回路60bの共振周波数をあらかじめ定められた周波数に調整する。
そして、共振処理部66は、並列共振回路60bを介してバッテリ2と車体200との間の絶縁抵抗Ri2を検出する検出手段を構成する。本実施形態において共振処理部66は、バッテリ2の負極端子2nに印加される交流電流の大きさを示す交流信号I2を電流印加部61から取得し、バッテリ2の負極端子2nと車体200との間の電圧の大きさを示す検出信号V2を電圧検出部63から取得する。共振処理部66は、取得した検出信号V2の振幅を交流信号I2の振幅により除して絶縁抵抗Ri2の大きさを算出してその結果をコントローラ7に出力する。
このように、絶縁抵抗センサ6bは、バッテリ2の負極端子2nと車体200との間の絶縁抵抗Ri2を検出し、検出した絶縁抵抗Ri2の値をコントローラ7に出力する。
コントローラ7は、絶縁抵抗センサ6a及び絶縁抵抗センサ6bからそれぞれ絶縁抵抗Ri1及びRi2の抵抗値を取得し、これらの抵抗値が所定の絶縁判定閾値を下回るか否かを判断する。そしてコントローラ7は、絶縁抵抗Ri1及びRi2の各抵抗値が絶縁判定閾値に対して大きい又は等しい場合には、車体200に対する燃料電池1及びバッテリ2の各絶縁状態が良好であると判断する。
一方、絶縁抵抗Ri1及びRi2の一方の抵抗値が上記の絶縁判定閾値を下回る場合には、コントローラ7は、車体200に対する燃料電池1及びバッテリ2のうちの電源の絶縁状態が不良であると判定する。コントローラ7は、電源の絶縁状態が不良であると判定した場合には、例えば、燃料電池1及びバッテリ2の接続を遮断するとともにDC/DCコンバータ3の操作を停止して燃料電池1の運転を停止する。
なお、本実施形態ではコントローラ7が各電流印加部61に同期信号を出力したが、電流印加部61同士を同期信号線により直接接続してもよい。同期信号としては、例えばCANバス通信プロトコルが用いられる。この例では、絶縁抵抗センサ6aの電流印加部61をマスタとし、絶縁抵抗センサ6bの電流印加部61をスレーブとしてスレーブ側の電流印加部61の位相を変更するようにしてもよい。
次に、絶縁抵抗Ri1の検出にあたり浮遊容量Cs1の影響を排除する並列共振回路60aの動作について説明する。
図2は、本実施形態の並列共振回路60aの機能を説明する図である。図2(a)は、並列共振回路60aの回路構成を等価的に示し、図2(b)は、電流印加部61から印加される交流電流Ie1の実軸成分及び虚軸成分を示す。
図2(a)では、便宜上、インダクタンスL1とコンデンサCdとの合成リアクタンスがインダクタンスLe1として示されている。インダクタンスLe1のリアクタンスXLe1(=ωLe1)は、インダクタンス回路64のリアクタンスXL1(=ωL1)とコンデンサ65のリアクタンスXCd(=1/(ωCd))とを合成したものである。
図2(b)に示すように、リアクタンスXLe1とリアクタンスXCs1が互いに等しくなる共振条件(XLe1=XCs1)においてインダクタンスLeに流れる交流電流の振幅と浮遊容量Cs1に流れる交流電流の振幅とが等しく、かつ、両者の位相差が180°である。このため、インダクタンスLeによって浮遊容量Cs1の信号成分が打ち消されて虚軸成分Imがゼロになる。
並列共振回路60aを構成するインダクタンスLe1と浮遊容量Cs1は電気エネルギーを蓄積する作用を有し、このインダクタンスLe1と浮遊容量Cs1が共振状態になると、互いに電流のやり取りが行われる。このため、外部の電流印加部61から印加される交流電流Ie1は理想的にはインダクタンスLe1と浮遊容量Cs1には流れなくなる。すなわち、インダクタンスLe1及び浮遊容量Cs1の等価的な電気抵抗Rrは理論的には無限大となる。
このように、並列共振回路60aが共振状態になると、浮遊容量Cs1は絶縁抵抗Ri1に比べて極めて高い値の電気抵抗Rrに変換されることになるので、交流電流Ie1は絶縁抵抗Ri1に集中的に流れることになる。これにより、絶縁抵抗Ri1の検出精度が向上する。
ここで、並列共振回路60aの共振条件は次式(1)のように表わされる。
式(1)を展開すると、並列共振回路60aが共振状態となる交流電流Ie1の角速度ω又は共振周波数fは、次式(2)のように表わされる。
式(2)の関係から、インダクタンスLe1の大きさを変更することで並列共振回路60aの共振周波数fが変化する。したがって、本実施形態の絶縁抵抗センサ6aは、並列共振回路60aの共振周波数fを交流電流Ie1の測定周波数fmと等しくなるようにインダクタンスLe1を調整する。これにより、浮遊容量Cs1の信号成分が除去されるので、絶縁抵抗Ri1の検出精度の低下を抑制するこができる。
本発明の第1実施形態によれば、筐体である車体200には、複数の電源を構成する燃料電池1及びバッテリ2が備えられており、複数の絶縁検出装置は、車体200と燃料電池1との間の絶縁状態を検出する絶縁抵抗センサ6a、及び、車体200と燃料電池1との間の絶縁状態を検出する絶縁抵抗センサ6bにより構成される。
絶縁抵抗センサ6aは、燃料電池1と車体200との間に電気抵抗を検出するための交流信号を印加する印加手段を構成する電流印加部61を備える。そして絶縁抵抗センサ6aは、燃料電池1と車体200との間にインダクタンスL1を有するインダクタンス回路64が接続されて燃料電池1と車体200との間に浮遊する浮遊容量Cs1及びインダクタンスL1により並列共振回路60aを形成する共振手段を構成する。さらに絶縁抵抗センサ6aは、インダクタンスL1により浮遊容量Cs1に印加される信号成分を打ち消すように並列共振回路60aの共振周波数を調整する調整手段を構成する共振処理部66を備える。そして共振処理部66は、並列共振回路60aを介して燃料電池1と車体200との間の絶縁抵抗Ri1の大きさを検出する検出手段を構成する。
これにより、浮遊容量Cs1に流れる信号成分が抑制されるように並列共振回路60aの共振周波数が調整されるので、交流信号の周波数に拘わらず、燃料電池1と車体200との間の絶縁抵抗を検出する精度を維持することができる。すなわち、電源と筐体との間に寄生する浮遊容量に起因して電源の絶縁状態の検出精度が低下するのを抑制することができる。
具体的には、インダクタンス回路64により浮遊容量Cs1の信号成分が相殺されて電流印加部61から絶縁抵抗Ri1に印加される交流電流が浮遊容量Cs1に漏れなくなるので、絶縁抵抗Ri1を検出する精度が低下するのを抑制することができる。
また、仮に浮遊容量Cs1が変動して並列共振回路60aの共振周波数が本来の値からずれたとしても、共振処理部66により浮遊容量Cs1の影響を取り除くように調整されるので、絶縁抵抗Ri1の検出精度を維持することができる。
さらに、電流印加部61の測定周波数fmを変更したとしても、測定周波数fmの変更に伴って共振周波数が調整されるので、絶縁抵抗Ri1の検出精度が高くなるような周波数領域に測定周波数fmを設定することが可能になる。
一般に、浮遊容量Cs1のリアクタンスXcsは測定周波数fmに反比例することから、測定周波数fmを大きくするほどリアクタンスXcsが小さくなる。一方、リアクタンスXcsが小さくなるほど、絶縁抵抗Ri1に印加される電流が浮遊容量Cs1に流れ易くなる。このため、測定周波数fmを所定の値、例えば100Hzよりも大きくすることは困難となる。
これに対して、測定周波数fmを小さくするほど、直流遮断コンデンサ62やコンデンサ65などの耐電圧及び電気容量を高めなければならなくなり、製品コストやサイズが増加する。これに加えて、燃料電池1の補機を構成するアクチュータや、インバータ4、モータ5などの動作ノイズを受け易くなってしまう。
本実施形態によれば、絶縁抵抗Ri1の検出に伴う浮遊容量Cs1の影響が排除されるように並列共振回路60aの共振周波数を調整することで、測定周波数fmを高くしたとしても浮遊容量Cs1に流れる信号成分を低減することができる。このため、モータ5などの作動ノイズを受け難く、かつ、直流遮断コンデンサ62の製品コスト及びサイズを抑制可能な周波数領域に測定周波数fmを設定することが可能になる。よって、絶縁抵抗センサ6aの製造コスト及びサイズを低減しつつ、絶縁抵抗Ri1の検出精度を向上させることができる。
また、本実施形態によれば、インダクタンス回路64は、インダクタンスL1の大きさが変化する可変回路である。そして共振処理部66は、インダクタンス回路64のインダクタンスL1を変更することにより、並列共振回路60aの共振周波数fを所定の値、例えば測定周波数fmの近傍に調整する。このように、インダクタンス回路64のインダクタンスL1を変更して並列共振回路60aの共振周波数を調整するので、簡易な構成により浮遊容量Cs1の信号成分を打ち消すことがdきる。
また、本実施形態によれば、並列共振回路60aは、燃料電池1とインダクタンス回路64との間又はインダクタンス回路64と車体200との間に接続されるコンデンサ65をさらに含む。これにより、インダクタンス回路64の接続に伴う燃料電池1と車体200との間の絶縁抵抗Ri1の低下を回避することができる。
また、本実施形態によれば、コンデンサ65は、電流印加部61と電圧検出部63との間に直列に接続されて絶縁抵抗Rs1とともにRCフィルタを形成する。そして電圧検出部63は、RCフィルタを介して燃料電池1の負極端子1nと車体200との間の電圧を検出する。これにより、絶縁抵抗Ri1の低下を回避しつつ電圧検出部63に混入するノイズを低減することができる。
また、本実施形態によれば、絶縁抵抗センサ6bは、絶縁抵抗センサ6aと同じ構成である。したがって、絶縁抵抗センサ6bは、バッテリ2と車体200との間の浮遊容量Cs2の影響を除去することができるので、バッテリ2と車体200との間の絶縁抵抗Ri2の検出精度を向上させることができる。
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態における共振処理部66の構成の一例を示すブロック図である。
共振処理部66は、絶縁抵抗演算部661と共振周波数調整部662とを含む。そして共振周波数調整部662は、共振周波数設定部662aと、減算器662bと、PI制御器662cとを含む。
この例において、電流印加部61は、交流電流の実効値を示す電流信号Iを共振処理部66に出力するとともに電圧検出部63は、交流電圧の実効値を示す検出信号Vを共振処理部66に出力する。
絶縁抵抗演算部661は、車体200と燃料電池1又はバッテリ2との間の絶縁抵抗Ri1又はRi2を、並列共振回路60a又は60bを介して検出する検出手段を構成する。
絶縁抵抗演算部661は、電流印加部61から電流信号Iを取得するとともに電圧検出部63から検出信号Vを取得する。絶縁抵抗演算部661は、取得した検出信号Vを電流信号Iにより除して絶縁抵抗Ri1又はRi2を算出する。そして絶縁抵抗演算部661は、算出した絶縁抵抗Ri1又はRi2の抵抗値をコントローラ7に出力する。
共振周波数調整部662は、インダクタンス回路64を用いて浮遊容量Cs1又はCs2に流れる電流成分を打ち消すように並列共振回路60a又は60bの共振周波数を調整する調整手段を構成する。
共振周波数設定部662aは、並列共振回路60a又は60bの共振周波数が電流印加部61の測定周波数fmに収束するようにあらかじめ定められた値を基準値Vbに設定する。共振周波数設定部662aは、設定された基準値Vbを減算器662bに出力する。
減算器662bは、電圧検出部63からの検出信号Vと共振周波数設定部662aからの基準値Vbとの偏差を算出する。例えば、減算器662bは、検出信号Vから基準値Vbを減じた偏差を算出し、算出した偏差をPI制御器662cに出力する。
PI制御器662cは、減算器662bから出力される偏差の大きさに応じて、インダクタンス回路64が有するインダクタンスL1又はL2の大きさを制御するPI制御を実行する。
例えば、PI制御器662cは、減算器662bから出力される偏差にフィードバックゲインを乗じた値を積分することにより、インダクタンスL1又はL2の大きさを示す指令値を算出する。そしてPI制御器662cは、算出した指令値をインダクタンス回路64に出力する。これにより、並列共振回路60a又は60bの共振周波数が所定の測定周波数fmに収束する。
このように、共振周波数調整部662は、フィードバック制御回路により実現され、フィードバック制御回路はアナログ回路やマイコンによる演算処理などにより構成される。
図4は、電流印加部61から並列共振回路60a又は60bに測定周波数fbを有する交流電流を印加したときの並列共振回路60a又は60bの振幅位相特性の一例を示す図である。
図4(a)は、並列共振回路60a又は60bの共振周波数に対する振幅特性を示す。図4(a)の縦軸は、車体200と燃料電池1又はバッテリ2との間に生じる交流電圧の振幅、すなわち電圧検出部63の検出信号Vを示し、横軸は周波数を示す。
図4(a)に示すように、並列共振回路60a又は60bの共振周波数が測定周波数fmと等しくなったときに検出信号Vが最も大きくなる。この理由は、インダクタンスL1又はL2と浮遊容量Cs1又はCs2の共振現象により、電流印加部61から浮遊容量Cs1又はCs2へ電流が流れなくなるからである。
並列共振回路60a又は60bの共振周波数が測定周波数fmから小さくなるほど、電流印加部61からコンデンサ65に電流が流れ易くなり、共振周波数が測定周波数fmから大きくなるほど浮遊容量Cs1又はCs2に流れ易くなる。その結果、絶縁抵抗Ri1又はRi2に流れる電流が小さくなるため、検出信号Vが低下する。
したがって、共振周波数設定部662aから出力される基準値Vbは、電流印加部61及び電圧検出部63の誤差等を考慮して検出信号Vの最大値付近の値に設定される。これにより、並列共振回路60a又は60bの共振周波数を測定周波数fmに調整することができる。
仮に絶縁抵抗Ri1又はRi2が既に分かっている場合には、理論上、検出信号Vの最大値は、電流印加部61の出力値に絶縁抵抗Ri1又はRi2を乗じた値になるので、この値から基準値Vbを決めてもよい。
図4(b)は、並列共振回路60a又は60bの周波数に対する位相特性を示す。図4(b)の縦軸は、電流信号Iに対する検出信号Vの位相θ、すなわち電流印加部61から出力される交流電流に対する交流電圧の位相のズレを示す。そして図4(b)の横軸は、図4(a)と共通の周波数軸である。
図4(b)に示すように、並列共振回路60a又は60bの共振周波数が測定周波数fmと等しくなったときに検出信号Vの位相θがゼロ(0)になる。この理由は、浮遊容量Cs1又はCs2に交流電流が流れなくなって絶縁抵抗Ri1又はRi2だけに交流電流が流れるようになると検出信号Vの虚軸成分Imがゼロになるからである。
したがって、検出信号Vの位相θがゼロになるように並列共振回路60a又は60bの共振周波数を調整することにより、浮遊容量Cs1又はCs2の影響を除去すること可能になる。
次に、検出信号Vの位相θを検出することにより並列共振回路60a又は60bの共振周波数を調整する実施形態について説明する。
図5は、本実施形態における共振周波数調整部662の他の構成例を示すブロック図である。
この例においては、共振周波数調整部662は、振幅制限器663aと、乗算器663bと、ローパスフィルタ663cと、共振周波数設定部663dと、減算器663eと、PI制御器663fとを含む。
図5では、電流印加部61は、時間とともに変化する交流電流の大きさを示す電流信号Iacを共振処理部66に出力し、電圧検出部63は、時間と共に変化する交流電圧の大きさを示す検出信号Vacを共振処理部66に出力する。
振幅制限器663aは、交流の検出信号Vacの振幅成分が除去されるように、交流の電流信号Iacの振幅を制限する。振幅制限器663aは、制限した電流信号Iacを乗算器663bに出力する。
乗算器663bは、交流の検出信号Vacに対して交流の電流信号Iacを乗算することにより、検出信号Vac及び電流信号Iacの位相の一致度合いに応じて波形が変化する整流信号を生成する。振幅制限器663aにより検出信号Vacの振幅成分が除去されているため、整流信号には、検出信号Vac及び電流信号Iacの位相差に関する情報のみが含まれている。
例えば、検出信号Vac及び電流信号Iacの位相が一致している場合には、乗算器663bから出力される整流信号の波形は全波整流波形となる。乗算器663bは、生成した整流信号をローパスフィルタ663cに出力する。
ローパスフィルタ663cは、乗算器663bから出力される整流信号の交流成分を除去して直流成分を通過させる機能を有する。例えば、ローパスフィルタ663cのカットオフ周波数は、測定周波数fmよりも小さい値に設定される。本実施形態では測定周波数fmに対して1/10の値に設定される。
ローパスフィルタ663cは、整流信号の直流成分の大きさに応じて、電流信号Iacに対する検出信号Vacの位相差に比例する位相信号θを生成する。
例えば、検出信号Vac及び電流信号Iacの位相の一致度合いが高くなるほど、ローパスフィルタ663cによって生成される位相信号θのレベルはゼロ(0)に近づき、一致度合いが低くなるほど、ゼロからの変化量が大きくなる。ローパスフィルタ663cは、生成した位相信号θを減算器663eに出力する。
共振周波数設定部663dは、並列共振回路60a又は60bの共振周波数が測定周波数fmに収束するように、インダクタンス回路64に発生させるインダクタンスL1又はL2の大きさを設定する。具体的には、共振周波数設定部663dは、図4(b)に示したように、並列共振回路60a又は60bの共振周波数が測定周波数fmとなるように位相信号θに関する基準値θbを設定する。
理想的には、基準値θbに設定される値はゼロ(0)である。実際には、基準値θbは、電流印加部61から電圧検出部63までの経路に配置された直流遮断コンデンサ62及びコンデンサ65などを考慮してあらかじめ定められる。
減算器663eは、ローパスフィルタ663cからの位相信号θと共振周波数設定部663dからの基準値θbとの偏差を算出する。例えば、減算器663eは、検出信号Vacから基準値θbを減じた偏差を算出し、算出した偏差をPI制御器663fに出力する。
PI制御器663fは、図3に示したPI制御器662cと同一の構成であり、減算器663eから出力される偏差の大きさに応じて、インダクタンス回路64に対する指令値に示されるインダクタンスL1又はL2の大きさを増減させる。これにより、並列共振回路60a又は60bの共振周波数が測定周波数fmに収束する。
このように、共振周波数調整部662は、ロックインアンプ又は同期検波回路を用いて電流信号Iacと検出信号Vacの位相差を検出し、検出した位相差に基づいて、並列共振回路60a又は60bの共振周波数を測定周波数fmに調整する。
本実施形態では、ロックインアンプ又は同期検波回路を用いることにより、ノイズの影響を抑えながら電流信号Iacと検出信号Vacの位相差が抽出されるので、並列共振回路60a又は60bの共振周波数を的確に調整することができる。
図6は、本実施形態におけるインダクタンス回路64の構成の一例を示す回路図である。この例では絶縁抵抗センサ6aのインダクタンス回路64について説明する。
本実施形態のインダクタンス回路64は、インダクタンスL1を発生させる回路であり、オペアンプ及びデジタルトリマにより構成されるインピーダンス変換回路(Generalized Impedance Converter)によって実現される。この例ではインダクタンス回路64の一端はコンデンサ65の一方の電極及び不図示の電圧検出部63の一端に接続され、他端は車体200に接続される。
インダクタンス回路64は、可変抵抗器R1と、抵抗素子R2及びR3と、容量素子C1と、オペアンプOP1乃至OP2とを含む。
可変抵抗器R1は、共振周波数調整部662から出力される指令値の大きさに応じて、自己の抵抗値が変化する抵抗回路である。
抵抗素子R2及びR3の各々は、インダクタンスL1の発生に必要となる抵抗値に適宜設定される。容量素子C1についても、インダクタンスL1の発生に必要となる容量に適宜設定される。
オペアンプOP1乃至OP2は一般的なオペアンプであり、この例においてオペアンプOP1乃至OP2の増幅率Aはともに無限大と仮定する。
インダクタンス回路64においては、可変抵抗器R1の一端がオペアンプOP2の非反転端子(+)に接続され、可変抵抗器R1の他端がオペアンプOP1の出力端子及び抵抗素子R2の一端に接続される。そして、抵抗素子R2の他端は、オペアンプOP1の反転入力端子(−)と抵抗素子R3の一端とオペアンプOP2の反転入力端子(−)とに接続され、抵抗素子R3の他端はオペアンプOP2の出力端子と容量素子C1の一方の電極に接続される。さらに、容量素子C1の他方の電極はオペアンプOP1の非反転入力端子(+)と抵抗素子R4の一端に接続され、抵抗素子R4の他端は車体200に接続される。
このインダクタンス回路64に生じるインダクタンスL1は、次式(3)により表わされる。
なお、角速度ωは、電流印加部61の測定周波数fmに2πを乗じたものである。
このように、インダクタンス回路64は多数の回路定数を有する回路であり、回路定数のうち可変抵抗器R1の抵抗値が変更されてインダクタンスL1が変化する。
したがって、共振周波数調整部662から出力される指令値に応じて可変抵抗器R1の抵抗値を変更することにより、インダクタンス回路64に生じるインダクタンスL1が所定の値に調整される。これにより、並列共振回路60aの共振周波数を測定周波数fmに調整することができる。
なお、本実施形態では可変抵抗器R1の抵抗値を変更する例について説明したが、抵抗素子R2乃至R4や容量素子C1の値を変更可能なインダクタンス回路を用いてもよい。この場合であっても、並列共振回路60aの共振周波数が測定周波数fmに収束するようにインダクタンスL1の大きさを制御することができる。
また、インダクタンス回路64は、電界効果トランジスタや、DAコンバータ、デジタルポテンショメータなどにより実現するようにしてもよい。
図7は、本実施形態における絶縁抵抗センサ6aの絶縁検出方法に関する処理手順例を示すフローチャートである。
ステップS1において絶縁抵抗センサ6aは、車体200と電源である燃料電池1との間に接続されたインダクタンス回路64及び浮遊容量Cs1により並列共振回路60aを形成する。
ステップS2において絶縁抵抗センサ6aは、燃料電池1の負極端子1nに所定の測定周波数fmを有する交流電流を印加する。
ステップS3において絶縁抵抗センサ6aは、インダクタンス回路64のインダクタンスL1を制御して、浮遊容量Cs1に流れる電流成分を打ち消すように、並列共振回路60aの共振周波数を所定の値に調整する。
例えば、絶縁抵抗センサ6aは、交流の電流信号Iacに対する検出信号Vacの位相が一致するようにインダクタンスL1を変化させる。あるいは、絶縁抵抗センサ6aは、並列共振回路60aの共振周波数が測定周波数fmとなるように、又は、検出信号Vのレベルが最大となるようにインダクタンスL1を変化させるものであってもよい。
ステップS4において絶縁抵抗センサ6aは、並列共振回路60aを介して車体200と燃料電池1の負極端子1nとの間の絶縁抵抗Ri1を検出する。具体的には、絶縁抵抗センサ6aは、並列共振回路60aに対して並列接続された電圧検出部63から出力される検出信号Vacと電流信号Iacとを用いて絶縁抵抗Ri1の抵抗値を算出する。
そしてステップS4の処理が終了すると、絶縁検出方法についての一連の処理S1乃至S4が終了する。
本発明の第2実施形態によれば、電流印加部61は、燃料電池1の負極端子1nに交流電流を印加する。電圧検出部63は、燃料電池1の負極端子1nと車体200との間の電圧を計測し、計測した電圧の大きさを示す検出信号(電圧信号)Vacに基づいて絶縁抵抗Ri1の大きさを検出する。そして調整手段を構成する共振周波数調整部662は、検出信号Vacに応じて並列共振回路60aの共振周波数を制御する。
このように、検出信号Vacに応じて並列共振回路60aの共振周波数をフィードバック制御することにより、継続して浮遊容量Cs1の影響が抑えられるので、絶縁抵抗Ri1の検出精度が低下するのを抑制することができる。
また、本実施形態によれば、図3に示した共振周波数調整部662は、検出信号Vacの実効値又は平均値を示す電圧信号Vのレベルが大きくなるように並列共振回路60aの共振周波数を所定の測定周波数fmに設定する。あるいは、図4(a)に示したように、共振周波数調整部662は、電圧信号Vのレベルが最も高くなるように共振周波数を調整するものであってもよい。
これにより、簡易な構成により、常に並列共振回路60aの共振周波数を電流印加部61の測定周波数fmに調整することができる。
特に本実施形態によれば、図5に示した共振周波数調整部662は、電流印加部61から燃料電池1の電極端子に印加される交流電流の大きさを示す電流信号Iacと検出信号Vacの位相差に応じて並列共振回路60aの共振周波数を制御する。
図4(b)に示したように、並列共振回路60aの共振周波数の近傍で検出信号Vacの位相差が急峻に変化することから、共振周波数の調整に検出信号Vacの位相差を用いることにより、的確に共振周波数を測定周波数fmに設定することができる。したがって、浮遊容量Cs1の信号成分を精度良く打ち消すことができる。
さらに本実施形態によれば、図5に示した共振周波数調整部662は、検出信号Vacに対して電流信号Iacを乗算することにより位相差θを検出する。そして共振周波数調整部662は、検出した位相差が基準値θbまで小さくなるよう並列共振回路60aの共振周波数を調整する。
これにより、検出信号Vacの位相差θを精度良く検出することができるので、共振周波数の調整精度を向上させることができる。さらに、仮に浮遊容量Cs1が変動したとしても、常に並列共振回路60aの共振周波数を測定周波数fmに維持することができる。したがって、継続して浮遊容量Cs1の信号成分を抑制できるので、絶縁抵抗Ri1の検出精度を維持することができる。
また、本実施形態によれば、インダクタンス回路64は、複数のオペアンプOP1及びOP2と複数の抵抗素子R1乃至R4とを含む。そして共振周波数調整部662は、インダクタンス回路64における回路定数、例えば抵抗素子R1の抵抗値を変更することによりインダクタンスL1の大きさを制御する。これにより、検出信号Vacの位相差θが小さくなるように並列共振回路60aの共振周波数を調整することが可能になる。
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態における検出システム101の構成の一例を示す図である。本実施形態の検出システム101は、第1実施形態の検出システム100の構成に対して、さらにスイッチ10及び20を備えている。他の構成については、検出システム100の構成と同一であるため同一符号を付して説明を省略する。
スイッチ10は、燃料電池1とインバータ4との間に接続される。スイッチ10は、コントローラ7の制御に従って、燃料電池1をインバータ4及びDC/DCコンバータ3に対して接続又は遮断する。すなわち、スイッチ10は、電気負荷であるモータ5に対して燃料電池1を電気的に接続したり、切り離したりする。
スイッチ20は、バッテリ2とDC/DCコンバータ3との間に接続される。スイッチ20は、コントローラ7の制御に従って、バッテリ2をDC/DCコンバータ3に対して接続又は遮断する。すなわち、スイッチ20は、電気負荷であるモータ5に対してバッテリ2を電気的に接続したり、切り離したりする。
コントローラ7は、例えば、車両のEVスイッチがOFFからONに切り替えられた場合には、スイッチ10及び20を接続状態に切り替えて、燃料電池1及びバッテリ2をモータ5に接続にする。
一方、コントローラ7は、EVスイッチがOFFに操作された場合や、モータ5の運転を停止する場合、インバータ4の動作不良を検出した場合などには、スイッチ10及び20を遮断状態に切り替えて、燃料電池1及びバッテリ2をモータ5から切り離す。
このように、スイッチ10及び20が遮断状態から接続状態に切り替えられると、燃料電池1の負極端子1nと車体200との間の浮遊容量Cs1に浮遊容量Cs2が合成されるとともに、インダクタンスL1にインダクタンスL2が合成される。その結果、スイッチ10及び20の切替え時には、燃料電池1の負極端子1nと車体200との間の浮遊容量及びインダクタンスが変わるため、インダクタンスL1及びL2の大きさを再び調整しなければならない場合がある。
図9は、スイッチ10及び20の接続(ON)時の共振周波数と遮断状態(OFF)時の共振周波数とが等しくなるようにインダクタンスL1及びL2を設定する手法を説明する等価回路図である。
図9(a)は、スイッチ10及び20が共に遮断状態に切り替えられたときの検出システム101の等価回路を示す。
インダクタンス回路64のインダクタンスL1は、次式(4)のように表わされる。
式(4)は、次式(5)及び(6)のように展開され、並列共振回路60aの共振周波数fmは、次式(7)のとおり表わされる。
なお、静電容量Cdは、コンデンサ65の静電容量である。
同様に、並列共振回路60bの共振周波数fmも次式(8)のとおり表わされる。
図9(b)は、スイッチ10及び20が共に接続状態に切り替えられたときの検出システム101の等価回路を示す。
まず、図9(b)に示された等価回路におけるリアクタンスの直列合成ωLe1は、次式(9)のように表わされ、次式(9)を展開すると合成インダクタンスLe1は次式(10)のように表わされる。
同様に、合成インダクタンスLe2は、次式(11)のように表わされる。
次に、浮遊容量Cs1及びCs2の合成容量CsとインダクタンスLe1とインダクタンスLe2とは並列回路を構成し、この並列回路の共振条件は、次式(12)のように表わされる。
式(12)を上述と同じように展開すると、共振周波数fmは、次式(13)のように表わされる。
なお、インダクタンスLeは、インダクタンスLe1とインダクタンスLe2との合成インダクタンスである。
ここで、式(7)、式(8)及び式(13)の共振周波数fmが互いに等しくなるようにインダクタンスL1及びL2を決めることにより、スイッチ10及び20の切替えに伴って共振周波数が変わることを回避することができる。
したがって、絶縁抵抗センサ6a及び6bは、それぞれ、スイッチ10及び20の切替え時に共振周波数fmが変化しないようにインダクタンスL1及びL2をあらかじめ定められた値に調整する。
また、本実施形態ではスイッチ10及び20が共に接続状態に切り替えられた場合に、コントローラ7は、絶縁抵抗センサ6a及び6bの各電流印加部61から出力される交流電流の位相が一致するように電流印加部61及び62の出力を制御する。
例えば、電流印加部61及び62のうちの少なくとも一方の出力側に移相器を設け、電流信号I1及びI2の位相差を求め、その位相差が小さくなるように移相器を調整する。あるいは、検出システム101は、一方の電流印加部61の出力を停止して他方の電流印加部61のみから交流電流を印加するものでもよい。これにより、各電流印加部61の位相ズレに伴う絶縁抵抗Ri1及びRi2の検出精度の低下を抑制することができる。
図10は、本実施形態における検出システム101の絶縁検出方法に関する処理手順例を示すフローチャートである。
ステップS11においてコントローラ7は、例えば、車両のEVキーがOFFからONに操作された場合に検出システム101を起動する。これとともにコントローラ7は、燃料電池1を起動する。
ステップS12において絶縁抵抗センサ6aは、燃料電池1の負極端子1nに測定周波数fmの交流電流を印加するとともに絶縁抵抗センサ6bは、バッテリ2の負極端子2nに測定周波数fmの交流電流を印加する。
ステップS13において絶縁抵抗センサ6aは、並列共振回路60aの共振周波数を測定周波数fmに調整するとともに絶縁抵抗センサ6bは、並列共振回路60bの共振周波数も測定周波数fmに調整する。
ステップS14において絶縁抵抗センサ6aは、並列共振回路60aを介して燃料電池1の負極端子1nと車体200との間の絶縁抵抗Ri1の抵抗値を算出してコントローラ7に出力する。これともに絶縁抵抗センサ6bは、並列共振回路60bを介してバッテリ2の負極端子2nと車体200との間の絶縁抵抗Ri2の抵抗値を算出してコントローラ7に出力する。
ステップS15においてコントローラ7は、絶縁抵抗Ri1が所定の閾値Th1よりも大きいか否かを判断する。
ステップS24において絶縁抵抗Ri1が所定の閾値Th1以下である場合には、コントローラ7は、車両の警告灯をONに設定する。
ステップS16においてコントローラ7は、絶縁抵抗Ri1が所定の閾値Th1よりも大きい場合には、絶縁抵抗Ri2が所定の閾値Th2よりも大きいか否かを判断する。そして絶縁抵抗Ri2が所定の閾値Th2以下である場合には、コントローラ7はステップS24の処理に進む。
ステップS17において絶縁抵抗Ri2が所定の閾値Th2よりも大きい場合には、コントローラ7は、燃料電池1がモータ5に電力を供給可能な出力許可状態になったか否かを判断する。コントローラ7は、所定の時間を経過しても燃料電池1が出力許可状態にならない場合には、ステップS24の処理に進む。
ステップS18においてコントローラ7は、スイッチ10及び20を遮断状態から接続状態に切り替える。これにより、燃料電池1及びバッテリ2から出力される電力がインバータ4を介してモータ5に供給される。
ステップS19においてコントローラ7は、ドライバの操作に従って車両を駆動するために、DC/DCコンバータを制御して少なくとも燃料電池1からモータ5に電力を供給する。
ステップS20においてコントローラ7は、絶縁抵抗Ri1が所定の閾値Th1よりも大きいか否かを判断する。
ステップS20において絶縁抵抗Ri1が所定の閾値Th1以下である場合には、コントローラ7はステップS24の処理に進む。
ステップS21においてコントローラ7は、絶縁抵抗Ri1が所定の閾値Th1よりも大きい場合には、絶縁抵抗Ri2が所定の閾値Th2よりも大きいか否かを判断する。そして絶縁抵抗Ri2が所定の閾値Th2以下である場合には、コントローラ7はステップS24の処理に進む。
ステップS22においてコントローラ7は、絶縁抵抗Ri2が所定の閾値Th2よりも大きい場合には、検出システム101を停止するか否かを判断する。例えば、コントローラ7は、EVキーがOFFに操作されたときに検出システム101を停止する。
そしてコントローラ7は、検出システム101を停止しない場合には、ステップS19の処理に戻り、検出システム101を停止するまでステップS19乃至S22の各処理を繰り返し行う。
ステップS23においてコントローラ7は、検出システム101を停止する場合には、スイッチ10及び20を接続状態から遮断状態に切り替える。これにより、燃料電池1及びバッテリ2はモータ5から切り離される。
ステップS23又はS24の処理が終了すると、コントローラ7による絶縁検出方法についての一連の処理手順S11乃至S14が終了する。
本発明の第3実施形態によれば、絶縁抵抗センサ6aにおける並列共振回路60aの共振周波数は、他の絶縁抵抗センサ6bにおける並列共振回路60bの共振周波数に対して等しくなるように設定される。すなわち、複数の絶縁抵抗センサ6a及び6bにおける並列共振回路60a及び60bの共振周波数は互いに等しくなるように設定される。
例えば、並列共振回路60a及び60bの共振周波数が互いに異なる値に設定されると、絶縁抵抗センサ6a及び6bにおける各電流印加部61の出力位相が互いに一致し難くなる。この対策として、並列共振回路60a及び60bの共振周波数を揃えることにより、各電流印加部61の交流電流の位相が一致し易くなり、その結果、交流電流の干渉が起こり難くなるので、絶縁抵抗Ri1及びRi2の検出精度を維持することができる。
また、本実施形態によれば、検出システム101は、燃料電池1及びバッテリ2同士を接続又は遮断するスイッチ10及び20を含む。そして、絶縁抵抗センサ6aの共振周波数調整部662は、スイッチ10及び20を遮断状態から接続状態に切り替えた場合には、電流印加部61により印加される交流電流Ie1と、他の絶縁抵抗センサ6bから出力される交流電流Ie2との位相が一致するように電流印加部61の出力を制御する。
これにより、複数の絶縁抵抗センサ6a及び6bから出力される交流電流Ie1及びIe2が互いに干渉し難くなるので、絶縁抵抗Ri1及びRi2の検出精度の低下を抑制することができる。
あるいは、共振周波数調整部662は、スイッチ10及び20を遮断状態から接続状態に切り替えた場合には、絶縁抵抗センサ6aの電流印加部61により交流信号Ie1を印加し、他の絶縁抵抗センサ6bから出力される交流電流Ie2を停止するようにしてもよい。
これにより、交流電流同士の干渉が起こり得なくなるので、絶縁抵抗Ri1及びRi2の検出精度の低下を抑制することができるとともに、他の絶縁抵抗センサ6bの消費電力を低減することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
例えば、上記実施形態の絶縁抵抗センサ6a及び6bは、電源の負極端子と車体200との間の絶縁抵抗を検出したが、電源の正極端子と車体200との間の絶縁抵抗を検出してもよい。この場合であっても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、上記実施形態では2つの絶縁抵抗センサ6a及び6bが車体200に備えられている例について説明したが、本実施形態を適用した3つ以上の絶縁抵抗センサが車体200に備えられてもよい。
さらに、上記実施形態では複数の電源を備える筐体として電動自動車の車体200を例にして説明したが、これに限られるものではなく、例えば、電車や飛行機などの移動体、又は、複数の強電回路を取り扱う電源設備に本実施形態を適用してもよい。
なお、上記実施形態は、適宜組み合わせ可能である。