以下に図面を用いて本開示に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、デマンドレスポンス制御システムとして、地下1階、地上4階のビルにおける複数の設備における消費電力抑制のためのシステムを述べるが、これは説明のための例示であって、ビルの階数がこれ以外であっても構わない。また、デマンドレスポンス制御システムとして、3つのビルをビル群として、ビル群消費電力抑制のためのシステムを述べるが、これは説明のための例示であって、ビルの数がこれ以外であっても構わない。
以下で述べるコントローラの数、PLCの数、入出力デバイスの種別、入出力信号の数、契約電力、削減要請電力、消費電力、設備台数、蓄電装置の容量等は、説明のための例示であって、デマンドレスポンス制御システムの仕様等に合わせ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、デマンドレスポンス制御システム10の全体構成を示す図である。以下では、特に断らない限り、デマンドレスポンス制御システム10を、システム10と呼ぶ。図1には、システム10の構成要素ではないが、システム10に電力を供給するとともに、必要に応じ、システム10に対するデマンドレスポンス要請を行う電力会社8を示す。
ビル12は地下1階、地上4階建てのオフィスビルで、BFと示す地下1階に、配電盤、冷却塔等の設備14が配置され、1F〜3Fと示す1階〜3階はオフィス階で、オフィス用の設備14が配置され、4Fと示す4階に厨房を備える社員食堂が設けられる。ビル12の延べ床面積は、約6,000m2、電力が供給される設備14の総数は約400、電力会社8との契約電力は、300kwである。
システム10は、ビル12における複数の設備14を全体として管理するために設けられるビル管理装置16と1台のマスタ制御盤18と5台の各階用の制御盤20とを含むビル管理システムを利用する電力抑制システムである。ビル管理装置16は、複数の設備14の動作等をビル12の全体について統合的に管理するビル管理と共に、複数の設備14に対して電力会社8からの供給電力を抑制する。ビル管理装置16は、ビル12の複数の設備14に対する電力会社8からの供給電力を抑制するため、電力会社8からデマンドレスポンス要請を受けたときはデマンドレスポンス制御を行い、デマンドレスポンス要請の予定がない日には、消費電力平準化制御を行う。ビル管理装置16の構成及び作用効果の詳細については後述する。
システム10において、地下1階にビル管理装置16が配置される。さらに、ビル12の中間階にマスタ制御盤18が配置される。また、地下1階から4階までの各階にそれぞれ各階用の制御盤20が配置される。マスタ制御盤18は、マスタコントローラ22を収納する筐体であり、各階用の制御盤20は、マスタコントローラ22以外のコントローラ24を収納する筐体である。マスタ制御盤18と各階用の制御盤20は、いずれも内部にコントローラが収納される制御盤であるが、ビル管理装置16から見ると遠隔位置に配置される制御盤であるので、これらを区別して、RS番号を付して示す。RSは、Remote Station の略語である。RS0はマスタ制御盤18であり、RS1はBFに配置されるBF階制御盤20aであり。RS2は1Fに配置される1階制御盤20bである。以下同様に、RS3は2Fに配置される2階制御盤20cであり、RS4は3Fに配置される3階制御盤20dであり、RS5は4Fに配置される4階制御盤盤20eである。
マスタ制御盤18にはマスタコントローラ22が配置され、各階用の制御盤20には、各階の消費電力に応じた複数のコントローラ24が配置される。図1では、マスタコントローラ22とそれ以外のコントローラ24とを区別して、CNT番号を示す。マスタ制御盤18には、1台のマスタコントローラCNT00が配置される。消費電力の多いBF階制御盤20aには、CNT11,CNT12,CNT13の3台のコントローラ24が配置される。オフィス階の1階制御盤20b、2階制御盤20c、3階制御盤20dには、それぞれ2台のコントローラ24が配置される。1階制御盤20bには、CNT21,CNT22の2台が配置され、2階制御盤20cには、CNT31,CNT32の2台が配置され、3階制御盤20dには、CNT41,CNT42の2台が配置される。消費電力の多い社員食堂のある4階制御盤20eには、CNT51,CNT52,CNT53の3台のコントローラ24が配置される。
ビル管理装置16とマスタ制御盤18に配置されるマスタコントローラCNT00との間は、ネットワーク配線で接続される。これを第1系統の基幹ネットワーク26と呼ぶ。マスタコントローラCNT00と、各階用の制御盤20に配置される合計で12台のコントローラ24との間は、第1系統の基幹ネットワーク26とはべつのネットワーク配線で接続される。これを第2系統の基幹ネットワーク28と呼ぶ。第2系統の基幹ネットワーク28は、マスタコントローラCNT00と、これとは別のコントローラ24との間の通信ネットワークであるので、CCLと呼ぶが、CCL1系統当りの通信容量として、1台のマスタコントローラCNT00は、最大26のコントローラ24まで接続が可能である。図1のシステム10では、1台のマスタコントローラCNT00に12台のコントローラCNT11,CNT12,CNT13,CNT21,CNT22,CNT31,CNT32,CNT41,CNT42,CNT51,CNT52,CNT53が接続される。したがって、第2系統の基幹ネットワーク28は、12本の通信線を1系統とするネットワークである。
システム10において、第1系統の基幹ネットワーク26と第2系統の基幹ネットワーク28とは通信線であるが、これと共に、システム10には、2系統の電力供給線が設けられる。1つは、電力会社8からシステム10に供給される電力供給線30である。もう1つは、AC/DC電力変換装置32を介して蓄電装置34から12台のコントローラCNT11,CNT12,CNT13,CNT21,CNT22,CNT31,CNT32,CNT41,CNT42,CNT51,CNT52,CNT53とを結ぶ電力供給線36である。通信線と電力供給線とを区別して、図1では、通信線を細線で示し、電力供給線を太線で示す。
AC/DC電力変換装置32は、交流電力と直流電力との間で、双方向の電力変換が可能な電力変換器である。AC/DC電力変換装置32は、電力会社8の電力供給を受け取る電力供給口と蓄電装置34の間に配置され、ビル管理装置16の充放電指令に基づいて動作する電力変換器である。ビル管理装置16の指令が充電指令である場合は、図示しない電力供給口から商用交流電力を受け取り、これを蓄電装置34の仕様に適合する直流電力に変換する。変換後の直流電力は蓄電装置34に送電され、蓄電装置34が充電される。ビル管理装置16の指令が放電指令である場合は、蓄電装置34に蓄電されている直流電力を商用交流電力と同じ周波数と電圧振幅とを有する交流電力に変換する。変換後の交流電力は、電力供給線36に供給される。
蓄電装置34は、電力会社8から供給される電力で充電され、電力供給線36を介して放電する二次電池である。二次電池としては、リチウムイオン電池が用いられる。以下では、蓄電装置34は、電力会社8からのデマンドレスポンス要請に対応するためと、デマンドレスポンス要請の予定のない日におけるビル12の消費電力平準化のためとに用いる。その上でなお蓄電余力があり、さらに電力会社8から売電の要請がある場合等においては、売電目的にも用いることができる。、
各階には、それぞれ複数の設備14が配置される。設備14は、動作を制御する制御要素としての入力端子と、動作状態を監視するための監視要素としての出力端子とを有する。例えば、設備14が空調設備の場合、室温を可変制御する信号を受け取る入力端子と、温度センサ検出データを送り出す出力端子とを有する。設備14が照明装置の場合、点灯消灯を制御するオンオフ信号を受け取る入力端子と、消費電力データを送り出す出力端子とを有する。各階において、複数の設備14に関する複数の制御要素と監視要素を配線盤38としてまとめることが便利である。各階に配置される配線盤38は、以下のように区別される。BFには、冷却塔等の設備14や各種配電盤に関する監視要素と制御要素とをまとめたBF盤38aが配置される。1Fには、照明装置や空調設備等のオフィス用の設備14に関する監視要素と制御要素とをまとめたオフィス1F盤38bが配置される。同様に、2Fには、オフィス2F盤38cが配置され、3Fには、オフィス3F盤38dが配置される。4Fには、換気扇やダクト、加熱器等の設備14に関する食堂階盤38eが配置される。
ビル12には、廊下や洗面所における空調設備、照明装置、複数の階に跨って設けられるエスカレータやエレベータ、ビル12の外構設備等の各種の共用設備が設けられる。これらについては、各階専用のものは、それぞれの階の配線盤38に属し、それ以外の外構設備、エレベータ等は、BF盤38aに属する。
BF盤38aにまとめられた各設備14の制御要素と監視要素は、BF階制御盤20aに配置される3台のコントローラ24であるCNT11,CNT12,CNT13のいずれかと通信線40で接続される。通信線40としては、RS232等の一般的な信号線が用いられる。BF盤38aにまとめられた各設備14の電源供給端子は、BF階制御盤20aに配置される3台のコントローラ24であるCNT11,CNT12,CNT13のいずれかと電力供給線42で接続される。
3台のコントローラ24のそれぞれが管轄する設備14は予め定めてあるので、CNT11は、CNT11が管轄する設備14について、CNT11用の通信線40及びCNT11用の電力供給線42で接続される。CNT12、CNT13についても同様に、それぞれ専用の通信線40及び専用の電力供給線42によって管轄する設備14と接続される。以下の各コントローラ24についても同様である。
オフィス1F盤38bにまとめられた各設備14の制御要素と監視要素は、1Fの制御盤20bに配置される2台のコントローラ24であるCNT21,CNT22のいずれかと通信線40で接続される。オフィス1F盤38bにまとめられた各設備14の電源供給端子は、1Fの制御盤20bに配置される2台のコントローラ24であるCNT21,CNT22のいずれかと電力供給線42で接続される。
同様に、オフィス2F盤38cにまとめられた各設備14の制御要素と監視要素は、2Fの制御盤20cに配置される2台のコントローラ24であるCNT31,CNT32のいずれかと通信線40で接続される。オフィス2F盤38cにまとめられた各設備14の電源供給端子は、2Fの制御盤20cに配置される2台のコントローラ24であるCNT31,CNT32のいずれかと電力供給線42で接続される。
また、オフィス3F盤38dにまとめられた各設備14の制御要素と監視要素は、3Fの制御盤20dに配置される2台のコントローラ24であるCNT41,CNT42のいずれかと通信線40で接続される。オフィス3F盤38dにまとめられた各設備14の電源供給端子は、3Fの制御盤20dに配置される2台のコントローラ24であるCNT41,CNT42のいずれかと電力供給線42で接続される。
食堂階盤38eにまとめられた各設備14の制御要素と監視要素は、4Fの制御盤20eに配置される3台のコントローラ24であるCNT51,CNT52,CNT53のいずれかと通信線40で接続される。食堂階盤38eにまとめられた各設備14の電源供給端子は、4Fの制御盤20eに配置される3台のコントローラ24であるCNT51,CNT52,CNT53のいずれかと電力供給線42で接続される。
記憶装置44は、ビル管理装置16と接続され、ビル管理装置16が実行する消費電力抑制制御プログラム等のソフトウェアや、制御処理の処理過程におけるデータを一時的に格納するメモリである。ここでは、特に、複数のコントローラ24の実消費電力APに関する時系列実消費電力データファイル50と、複数のコントローラ24が管轄する複数の設備14に関するベースライン消費電力一覧表52とを記憶する。
図2は、ビル管理装置16と、記憶装置44の構成図である。ビル管理装置16は、各設備14の動作等のビル12全体としての管理の他に、電力会社8からの供給電力削減のためのデマンドレスポンス制御部46と、消費電力平準化制御部48とを含む。かかるビル管理装置16としては、PLC60の制御に適したコンピュータで構成される。ビル管理装置16の各機能は、ビル管理装置16がソフトウェアを実行することで実現される。特に、電力会社8からの供給電力削減の機能は、消費電力抑制制御プログラムをビル管理装置16が実行することで実現される。一部の機能の実現をソフトウェアに代えてハードウェアで行ってもよい。
記憶装置44には、特に、時系列実消費電力データファイル50と、ベースライン消費電力一覧表52が格納される。時系列実消費電力データファイル50は、予め定められた制御周期T毎に取得される各コントローラ24の実消費電力APが、取得された時間と、コントローラ24の識別番号とを検索キーとして記憶されたファイルである。ベースライン消費電力一覧表52は、設備14に対応付けてベースライン消費電力を並べた一覧表54と、ベースライン消費電力の多い順に設備14を並べた一覧表56とを含む。一覧表54,56の一例については後述する。
図3は、コントローラ24の構成図である。コントローラ24は、PLC60と、電源切替部62とを配置する筐体である。なお、CNT00と呼ぶマスタコントローラ22にはマスタPLCと呼ばれるPLC60が配置されるが、電源切替部62は配置されない。
ビル管理装置16と、CNT11からCNT53までの12台のコントローラ24とを第2系統の基幹ネットワーク28を用いて直接的に接続せず、中間にマスタコントローラ22であるCNT00を設けるのは以下の理由による。筐体であるRS盤は複数のコントローラ24を収納できるので、1台のRS盤に12台のコントローラ24を収納することは可能であり、全部のコントローラ24を収納したRS盤をビル管理装置16が配置されるBFにRS0として配置すれば、ネットワーク配線が最短とできる。その代り、例えば5Fに配置される制御要素や監視要素からの信号線は、5FからBFまでの長さとなる。信号線の数は、少なくとも、全部の設備14についての制御要素や監視要素の数であるので、ビル12の設備14の全台数が約400の場合、合計で少なくとも800本の信号線がビル12の内部に敷設される。800本の信号線の敷設と、12本の通信線からなる第2系統の基幹ネットワーク28の敷設とを比較すると、後者の方がコスト的にも信号伝送の点からも格段に好ましい。したがって、RS盤を1つにせず、ビル12内に分散することが好ましい。このことから、システム10では、RS盤を各階に配置し、各RS盤に2つまたは3台のコントローラ24を配置して、これらをマスタコントローラ22であるCNT00に接続する構成を有する。
PLC60は、複数のスロットを有するラックと、それぞれのスロットに配置されるPLC制御基板等で構成される制御装置である。図3では、8つのスロットの例を示す。これは説明のための例示であって、必要に応じ、16スロット構成としてもよい。図4に、8つのスロットの内容を示す。スロット番号0のスロットには、CPU基板が配置される。スロット番号1のスロットには、通信基板が配置される。通信基板は、マスタコントローラ22であるCNT00と第2系統の基幹ネットワーク28を介して接続される。スロット番号2,3,4,5は、コントローラ24が管轄する設備14の制御要素と監視要素に関する制御基板が配置される。スロット番号2,3,4,5に配置される制御基板は、通信線40を介して、コントローラ24に対応する配線盤38にまとめられている設備14の制御要素と監視要素とに接続される。
スロット番号2に配置される制御基板は、信号種別が「BO:個別発停」である制御を行う基板である。「BO:個別発停」は、制御要素に対し、バイナリのデジタル信号を出力する。BO=1は、対象の制御要素の動作を発動させる信号で、BO=0は、対象の制御要素の動作を停止させる信号である。「BO:個別発停」の信号の例としては、ヒータのオンオフ、照明のオンオフ、空調のオンオフ、電源のオンオフ等の設備のオンオフ制御信号である。スロット番号2のチャネル数は、16であるので、16の設備のオンオフを制御することができる。チャネル数は、説明のための例示であって、コントローラ24が管轄する設備14の内容によって変更が可能である。スロット番号3〜5の制御基板のチャネル数についても同様である。
スロット番号3に配置される制御基板は、信号種別が「AO:アナログ出力」である制御を行う基板である。「AO:アナログ出力」は、制御要素に対し、アナログ信号を出力する。「AO:アナログ出力」の例としては、弁の連続可変開閉信号、照明の調光信号、空調の温度指令信号等である。
スロット番号2に配置された制御基板には、BOを出力する制御端子が設けられ、スロット番号3に配置された制御基板には、AOを出力する制御端子が設けられ、それぞれ通信線40を介して、対応する設備14に制御信号が伝送される。
スロット番号4に配置される制御基板は、信号種別が「BI:デジタル監視」である制御を行う基板である。「BI」は、監視要素の状態を示し、BI=1は、監視要素が動作中の状態のときを示し、BI=0は、監視要素の動作が停止しているときを示す。「BI」はパルス信号であるが、そのパルス信号を計数することで「計量」する監視要素がある。例えば、電力計、水量計、ガスメータ等である。これらは、円板やリングが回転することで、その量を計測する。1回転に付き1パルスを出力することで、パルス数を計数することで、これらの消費量が「計量」できる。換言すれば、電力計、水量計、ガスメータ等は、アナログ信号で監視するのでなく、バイナリの「BI」において、そのパルス信号のパルス数で計量監視する。スロット番号4のチャネル数は16であるので、16の監視要素についてデジタル監視が行われる。そのなかで、電力消費を示すデジタルデータは、スロット番号7にも伝送され、コントローラ24が管轄する全部の設備14についての消費電力の合計の演算に用いられる。
スロット番号5に配置される制御基板は、信号種別が「AI:アナログ監視」である制御を行う基板である。アナログの「AI」は、電圧信号または電流信号であるが、温度計測については、抵抗の計測によって行う。
スロット番号4に配置された制御基板には、BIが入力される監視端子が設けられ、スロット番号5に配置された制御基板には、AIが入力される監視端子が設けられ、それぞれ通信線40を介して、対応する設備14から監視信号が伝送される。
スロット番号6に配置される制御基板は、信号種別が「BO:電源切替」である制御を行う制御基板である。BO=1は、電源切替部62において、コントローラ24が管轄する全部の設備14に対する電源供給元を、電力会社8からの電力とする制御信号である。BO=0は、電源切替部62において、コントローラ24が管轄する全部の設備14に対する電源供給元を、蓄電装置34からAC/DC電力変換装置32を経由した交流電力とする制御信号である。制御信号BOは、スロット番号6に配置される制御基板の電源切替端子から引き出される信号線によって電源切替部62に伝送される。
スロット番号7に配置される制御基板は、コントローラ24が管轄するすべての設備14の実消費電力を合計する演算回路が配置される。演算は、通信線40を介して伝送されてくる複数の消費電力監視データに基づいて行われる。以下では、特に断らない限り、コントローラ24が管轄する設備14の全部についてそれらの実消費電力を合計したデータを、コントローラ24の実消費電力と呼ぶ。演算されたコントローラ24の実消費電力のデータは、スロット番号7に配置される制御基板の消費電力端子からPLC60の内部の信号線を介してスロット番号1のスロットに配置される通信基板に伝送される。伝送されたコントローラ24の実消費電力のデータは、通信基板を経由して、第2系統の基幹ネットワーク28を介してCNT00に伝送される。CNT00に伝送されたコントローラ24の実消費電力のデータは、第1の基幹ネットワーク26を介してビル管理装置16に伝送され、デマンドレスポンス制御に用いられる。
電源切替部62は、コントローラ24が管轄する設備14に対する電源供給元を切り替える電力スイッチ盤である。電源切替部62における電源供給先の切替は、PLC60におけるスロット番号6に配置される電源切替制御基板からの切替信号によって行われる。切替信号がBO=1の場合は、電力供給線42は、電力会社8からの電力が供給される電力供給線30に接続され、設備14に対する電源供給元は、電力会社8となる。切替信号がBO=0の場合は、電力供給線42は、蓄電装置34からAC/DC電力変換装置32を経由した交流電力が供給される電力供給線36に接続され、設備14に対する電源供給元は、蓄電装置34となる。BO=0においては、電力供給線42は、電力供給線30から遮断されるので、電力会社8からの電力供給に代えて、蓄電装置34からの電力供給に切り替わることになる。
次に、ビル管理装置16の作用等について述べる。図5は、ビル管理装置16が行う電力会社8からの電力供給の抑制に関する2つの作用の切替手順を示すフローチャートである。各手順は、消費電力抑制制御プログラムの処理手順に対応する。
ビル管理装置16において、初期化の後に消費電力抑制制御プログラムが立ち上がると、その日が、電力会社8からデマンドレスポンス要請の予定がある日か否かが判定される(S10)。図5では、デマンドレスポンスを「DR」として示す。以下の図でも同様である。S10が肯定される場合は、電力会社8からデマンドレスポンス要請を受ける予定のある日であるので、ビル管理装置16はデマンドレスポンス制御を行う(S12)。この手順は、ビル管理装置16のデマンドレスポンス制御部46の機能によって実行される。S10が否定される場合は、デマンドレスポンス要請の予定がない日であるので、ビル管理装置16は、消費電力平準化制御を行う。(S14)。この手順は、ビル管理装置16の消費電力平準化制御部48の機能によって実行される。そこで、まず、デマンドレスポンス制御の内容について述べ、その後に、消費電力平準化制御の内容を述べる。
デマンドレスポンス制御は、電力会社8と合意したデマンドレスポンス契約の内容を実行するために行われる。電力会社8は、発電所の供給電力と各需要家の需要電力とのバランスが難しくなる局面で、デマンドレスポンス要請を出す。デマンドレスポンス要請は、「電力P0の削減を期間H0で実行してほしい」という内容である。
電力P0の削減とは、デマンドレスポンス制御を実施しなかった場合の仮想の消費電力であるベースライン消費電力からP0の電力を削減することである。ベースライン消費電力の算出方法は、我国では資源エネルギー庁のガイドラインに示される。以下では、10分前予告の場合の算出方法とされている「予告時間の30分前から予告時間までの平均消費電力」を用いてベースライン消費電力を算出する。
実際に削減された電力については、電力会社8からインセンティブが支払われる。インセンティブは、デマンドレスポンス契約で予め「電力P0×期間H0」と定めたとして、(実際の削減電力(kw)/契約削減電力P0(kw))に基づく基本報酬に、{実際に削減された電力量(kwh)}に基づく従量報酬が加えられる。基本報酬及び従量報酬の単価は、デマンドレスポンス契約の内容によって異なる。以下では、目標とするインセンティブを得るための許容範囲として、電力P0に対し±ΔP0とし、(P0±ΔP0)をH0の全期間に亘って達成した場合に目標とするインセンティブが得られるとする。これは説明のための例示であって、これ以外の許容範囲を定めてもよい。
図6は、例えば、夏の暑い日に空調等の消費電力が日中にピークとなるので、電力会社8からデマンドレスポンス要請を受けた場合のビル12に関する電力推移を示す図である。横軸は時間、縦軸は電力である。ビル12の消費電力の推移を、実線の実消費電力推移線70及び太い破線のベースライン消費電力推移線72で示す。デマンドレスポンス要請は、「電力P0の削減をH0の期間で実行してほしい」という内容であり、期間としては、電力削減開始時間と、電力削減終了時間が示される。デマンドレスポンス要請は、電力削減開始時間からあらかじめ定めた余裕時間を遡った時間に予告される。ビル管理装置16は、デマンドレスポンス要請を予告時間に受け取ると、余裕時間をおいて、指定された電力削減開始時間にデマンドレスポンス制御を開始する。そして、H0の期間中は、一定の電力P0を削減し、電力削減終了時間にデマンドレスポンス制御を終了する。図4において、斜線を付した領域74は、デマンドレスポンス制御を行って削減された「電力P0×期間H0」の電力量(kwh)である。
H0の期間中に電力P0を削減するためには、ビル12の複数の設備14について、動作を停止するか、供給電力を低下させることになるが、例えば、空調があまり効かなくなり、あるいは照明が暗くなり、ユーザの利便性が低下する。そこで、ビル管理装置16は、ビル12の全体の消費電力が少なくなる夜間等に蓄電装置34に対して充電指令を出し、電力会社8からの電力供給口からの商用交流電力をAC/DC電力変換装置32を介して蓄電装置34を予め充電しておく。そして、H0のデマンドレスポンス制御の期間において、放電指令を出し、デマンドレスポンス制御を受ける設備14に、削減電力P0と同じ大きさの電力をAC/DC電力変換装置32を介し蓄電装置34から供給する。これによって、ユーザの利便性を確保しながら、デマンドレスポンス要請を満たすように電力P0の削減を行うことができる。図6において、二点鎖線で囲み斜線を付した領域76は、デマンドレスポンス制御を行って削減された「電力P0×期間H0」の電力量(kwh)と同じ大きさで蓄電装置34が放電した電力量である。
図7から図13を用いて、ビル管理装置16が実行するデマンドレスポンス制御の手順を説明する。図7は、デマンドレスポンス制御の全体手順を示すフローチャートである。図8は、ベースライン消費電力一覧表52を示す図である。図9から図11は、図7のフローチャートの手順の内、第1コントローラに対し追加または置き換える別のコントローラ24の選択の手順を示すフローチャートである。図12と図13は、それぞれ図10と図11におけるコントローラ24の選択の具体例を示す図である。
図7は、図5のS10の判定が肯定されてデマンドレスポンス制御を実行するS12の手順を示すフローチャートである。デマンドレスポンス要請を受ける予定の日においては、「電力P0の削減を電力削減開始時間からH0の期間で実行する」旨のデマンドレスポンス要請(S20)が電力削減開始時間からあらかじめ定めた余裕時間を遡った予告時間に予告される。
ビル管理装置16は、予告時間をデマンドレスポンス制御開始時間とする(S22)。ビル管理装置16は、予告時間から電力削減開始時間までの余裕時間において、各コントローラ24のベースライン消費電力BPを算出して、ベースライン消費電力一覧表52を作成し、記憶装置44に記憶する。今の場合、予告時間から30分遡って、予告前30分から予告時間までの各コントローラ24の実消費電力APについて、記憶装置44に記憶されている時系列実消費電力データファイル50を検索して取得する。そして、予告前30分から予告時間までの各コントローラ24の実消費電力APの平均値を求め、これを各コントローラ24のベースライン消費電力BPとする。
図8に、ベースライン消費電力一覧表52を構成する2種類の一覧表54,56の例を示す。一覧表54は、各コントローラ24のベースライン消費電力BPを並べた一覧表であり、一覧表56は、ベースライン消費電力BPの多い順にコントローラ24の配列順を並び替えた一覧表である。
図7に戻り、指定された電力削減開始時間になる前に、ベースライン消費電力一覧表52を検索し(S24)、ベースライン消費電力一覧表52からP0に対応するベースライン消費電力BP1を有する第1コントローラを選択する(S26)。
そして、予め定めた所定の制御周期Tで、各コントローラ24の実消費電力APを取得する(S28)。ここで述べる制御周期Tは、電力抑制制御における制御周期であり、ビル管理のために用いる制御周期T0と同じであることが好ましいが、異なっても構わない。制御周期Tとは、実消費電力APを取得する周期であり、一制御周期の間で、目標とするインセンティブを得るためにビル12全体のベースライン消費電力から(P0±ΔP0)の電力を削減するための適切なコントローラ24を選択する周期でもある。
S28の処理を行う時間が、システム10における最初の一制御周期の開始時間である。デマンドレスポンス制御開始時間であるS22からS28までの時間は、S24とS26の処理を行う制御初期設定期間である。
各コントローラ24の実消費電力APは、期間H0の間で刻々変動するので、その変動に対応して(P0±ΔP0)の電力を削減するための適切なコントローラ24を変更する必要がある。期間H0に亘って削減電力を(P0±ΔP0)内に収めるには、期間H0の間に複数の制御周期を設ける。一例を挙げると、H0の数分の一から数十分の一の範囲を一制御周期Tとする。例えば、H0を1時間として、一制御周期Tは10分から1分の範囲とすることがよい。以下では、一制御周期T=5分とする。これは説明のための例示であって、これ以外の制御周期であってもよい。
S28では全部のコントローラ24について実消費電力APを取得するので、その内で、第1コントローラの実消費電力AP1を参照する(S30)。そして、第1コントローラについて、(実消費電力AP1)と、(ベースライン消費電力BP1であるP0)との差を第1コントローラの乖離消費電力ΔP1として求める。今の場合、ΔP1=(AP1−BP1)=(AP1−P0)である。
そして、ΔP1≠0か否かが判定される(S32)。S32の判定が否定される場合は、ΔP1=0であり、P0の電力削減が実現されているので、第1コントローラが制御対象コントローラとして設定される(S40)。制御対象コントローラとは、電力会社8からの電力供給が停止され、代わって蓄電装置34から必要な電力が供給される制御を受けるコントローラ24である。制御対象コントローラにおいては、ビル管理装置16からの制御によって、PLC60から電源切替信号としてBO=0が電源切替部62に出力され、設定された制御コントローラに属する各設備14の電源供給元が電力会社8から蓄電装置34に切り替えられる。
S32が肯定されると、次に、ΔP1がデマンドレスポンス制御における制御許容範囲内か否かが判定される(S34)。電力会社8からの要請は、削減電力P0に対し期間H0に亘って(±ΔP0)の許容範囲であるが、期間H0の間においても、期間H0を複数に分けた一制御周期Tの間においても、各コントローラ24の実消費電力APは変動する。この変動を考慮して、デマンドレスポンス制御における制御許容範囲は、(±ΔP0)よりも小さく設定することが好ましい。一例を挙げると、(±ΔP0)の半分の{±(1/2)ΔP0}をデマンドレスポンス制御における制御許容範囲(±Δs)とする。したがって、S34の判定は、{−Δs≦(AP1−P0)≦+Δs}か否かである。S34の判定が肯定される場合は、ΔP1≠0であるが、制御許容範囲内であるので、ビル消費電力KPに対し(P0±ΔP0)が実現されており、第1コントローラが制御対象コントローラとして設定される(S40)。
S34が否定される場合は、第1コントローラの実消費電力AP1がP0から乖離し、且つ、第1コントローラの乖離消費電力ΔP1がデマンドレスポンス要請の制御許容範囲である(±Δs)を超える場合である。この場合は、第1コントローラでは、(P0±ΔP0)が実現されないので、第1コントローラに対し、追加または置き換える別のコントローラ24を選択する(S36)。
第1コントローラの乖離消費電力ΔP1が負の値であって、AP1<P0であれば、ΔP1に対応するベースライン消費電力BPを有する別のコントローラ24を追加して、コントローラの組合せ体とすればよい。第1コントローラの乖離消費電力ΔP1が正の値であって、AP1>P0である場合は、別のコントローラ24を追加しても乖離消費電力ΔP1が増大するだけであるので、第1コントローラよりもベースライン消費電力BPの少ない別のコントローラ24を組み合わせた組合せ体に置き換える。このように、S36は、第1コントローラの1台では(P0±ΔP0)が実現されない場合に、2台またはそれ以上のコントローラ24の組合せ体で、(P0±ΔP0)を実現しようとする工程である。
S36において、第1コントローラに対し別のコントローラを追加または置き換えてできた組合せ体について、組合せ体の実消費電力APが制御許容範囲内か否かが判定される(S38)。S38が否定されるとS36に戻り、さらに追加または置き換える別のコントローラ24を選択し、S38が肯定されるまでこれを繰り返す。
S38が肯定されると、(P0±ΔP0)の電力削減を実現するコントローラ24が確定するので、確定したコントローラ24を制御対象コントローラに設定する(S40)。制御対象コントローラは、第1コントローラの1台の場合と、組組合せ体を構成する複数のコントローラの場合とがある。そして、制御対象コントローラにおいて電源切替を行い、電力会社8からの電力供給を停止し代わって蓄電装置34から電力供給を行う(S42)。
これで一制御周期における手順が終わるので、デマンドレスポンス制御終了時間に到達したか否かが判定される(S44)。デマンドレスポンス制御終了時間は、デマンドレスポンス要請における電力削減終了時間で、期間H0の終期である。S44の判定が否定される場合は、S28に戻り、次の制御周期において上記の手順を繰り返す。S44の判定が終了すると、デマンドレスポンス制御の全部の手順が終了する。
上記のS36及びS38における別のコントローラ24の追加または置き換えの内容について、図9から図11を用いて説明する。図9は、追加または置き換えを区別する手順を示すフローチャートである。、図7においてS34が否定されると、第1コントローラの乖離消費電力ΔP1=(AP1−BP1)=(AP1−P0)が負の値であるか否かが判定される(S46)。S46の判定が肯定される場合は、AP1<P0であり、第1コントローラのみではP0に不足するので、第1コントローラに対し別のコントローラ24を追加する追加制御を行う(S48)。S46の判定が否定される場合は、P1>P0であり、第1コントローラではP0を超えてしまうので、第1コントローラのベースライン消費電力BP1よりも少ないベースライン消費電力を有する別のコントローラ24に置き換える置き換え制御を行う(S50)。追加制御の場合は、1つの別のコントローラ24を追加することで足りるが、置き換え制御の場合は1つの別のコントローラ24ではベースライン消費電力BPがP0に満たないので、2つの別のコントローラ24の組合せ体に置き換える。
図10は、追加制御の手順を示すフローチャートである。追加制御を行うのは、ΔP1=(AP1−P0)<0の場合であるので、第1コントローラの実消費電力AP1がP0未満に乖離している。そこで、第1コントローラの乖離消費電力ΔP1に対応するベースライン消費電力BP2を有する第2コントローラを選択して第1コントローラに追加し(S52)、(第1コントローラ+第2コントローラ)の組合せ体とする(S54)。この組合せ体を追加制御における第1組合せ体と呼ぶ。そして、S28で取得した各コントローラ24の実消費電力APの内で、第2コントローラの実消費電力AP2を参照する(S56)。その結果、第1組合せ体の実消費電力は、(AP1+AP2)であることが分かる(S58)。そこで、{(第1組合せ体の実消費電力)−P0}が制御許容範囲内か否かが判定される。すなわち[−Δs≦(AP1+AP2)−P0≦+ΔS]か否かが判定される(S60)。判定が肯定であれば、それ以降の処理を止める。これは図7のS38の判定が肯定されたことに相当するので追加制御が終了し、図7に戻り、S40に進む。
S60が否定されると、第2コントローラの乖離消費電力ΔP2を求める。ΔP2=(AP2−BP2)=(AP2−ΔP1)である。そこで、S46と同様に、ΔP2が負の値であるか否かが判定される(S62)。判定が否定されると、S50の置き換え制御に移り、第2コントローラが別の2つのコントローラの組合せ体に置き換え処理される。判定が肯定されると、S52〜S60と同様の処理を繰り返す。すなわち、第2コントローラの乖離消費電力ΔP2に対応するベースライン消費電力BP2を有する第3コントローラを選択して、第1組合せ体に追加し(S64)、(第1コントローラ+第2コントローラ+第3コントローラ)の組合せ体とする(S66)。この組合せ体を追加制御における第2組合せ体と呼ぶ。そして、第3コントローラの実消費電力AP3を参照する(S68)。第2組合せ体の実消費電力は、(AP1+AP2+AP3)であることが分かる(S70)。そして、{(第3組合せ体の実消費電力)−P0}が制御許容範囲内か否かが判定される。すなわち[−Δs≦(AP1+AP2+AP3)−P0≦+ΔS]か否かが判定される(S72)。判定が肯定であれば、それ以降の処理を止める。これは図7のS38の判定が肯定されたことに相当するので追加制御が終了し、図7に戻り、S40に進む。
S72が否定される場合は、上記のS62〜S72に対応する処理を繰り返す(S74)。そして、追加制御の組合せ体において、[−Δs≦(組合せ体の実消費電力)−P0≦+ΔS]となれば、それ以降の処理を止める。これは図7のS38の判定が肯定されたことに相当するので追加制御が終了し、図7に戻り、S40に進む。
図11は、置き換え制御の手順を示すフローチャートである。置き換え制御を行うのは、ΔP1=(AP1−P0)>0の場合であるので、第1コントローラの実消費電力AP1がP0を超えて乖離している。そこで、第1コントローラのベースライン消費電力BP1よりも少ないベースライン消費電力BPを有する2つのコントローラ24を組合せ体として、第1コントローラに対し置き換える。一つは、第1コントローラのベースライン消費電力BP1から第1コントローラの乖離消費電力ΔP1を差し引いた消費電力(BP1−ΔP1)に対応するベースライン消費電力BP2を有する第2コントローラである。もう一つは、第1コントローラの乖離消費電力ΔP1に対応するベースライン消費電力BP3を有する第3コントローラである(S76)。そして(第2コントローラ+第3コントローラ)の組合せ体とする(S78)。この組合せ体を置き換え制御における第1組合せ体と呼ぶ。そして、S28で取得した各コントローラ24の実消費電力APの内で、第2コントローラの実消費電力AP2と、第3コントローラの実消費電力AP3を参照する(S80)。その結果、第1組合せ体の実消費電力は、(AP2+AP3)であることが分かる(S82)。そこで、{(第1組合せ体の実消費電力)−P0}が制御許容範囲内か否かが判定される。すなわち[−Δs≦(AP2+AP3)−P0≦+ΔS]か否かが判定される(S84)。判定が肯定であれば、それ以降の処理を止める。これは図7のS38の判定が肯定されたことに相当するので追加制御が終了し、図7に戻り、S40に進む。
S84が否定されると、第2コントローラの乖離消費電力ΔP2を求める。ΔP2=(AP2−BP2)={AP2−(BP1−ΔP1)}である。そこで、S46と同様に、ΔP2が負の値であるか否かが判定される(S86)。判定が肯定されると、S48の追加制御に移り、第2コントローラに別のコントローラが追加処理される。判定が否定されると、第3コントローラのベースライン消費電力BP3から第2コントローラの乖離消費電力ΔP2を差し引いた消費電力(BP3−ΔP2)に対応するベースライン消費電力BP4を有する第4コントローラを選択する。そして第4コントローラを第3コントローラに置き換え(S88)、(第2コントローラ+第4コントローラ)の組合せ体とする(S90)。この組合せ体を置き換え制御における第2組合せ体と呼ぶ。そして、第4コントローラの実消費電力AP4を参照する(S92)。第2組合せ体の実消費電力は、(AP2+AP4)である(S94)であることが分かる。そこで、{(第2組合せ体の実消費電力)−P0}が制御許容範囲内か否かが判定される。すなわち[−Δs≦(AP2+AP4)−P0≦+ΔS]か否かが判定される(S96)。判定が肯定であれば、それ以降の処理を止める。これは図7のS38の判定が肯定されたことに相当するので置き換え制御が終了し、図7に戻り、S40に進む。
S76〜S96が置き換え制御の1つの単位であるので、S96が否定される場合は、上記のS76〜S96に対応する処理を繰り返す(S98)。そして、組合せ体において、[−Δs≦(組合せ体の実消費電力)−P0≦+ΔS]となれば、それ以降の処理を止める。これは図7のS38の判定が肯定されたことに相当するので置き換え制御が終了し、図7に戻り、S40に進む。
次に、図12、図13を用いて、図10、図11における各手順について数値例を用いて具体的に示す。以下で用いる数値は、すべて説明のための例示であって、デマンドレスポンス制御システム10の仕様等によって適宜変更が可能である。
ビル12の契約電力は300kwであるので、電力会社8との間のデマンドレスポンス契約としては、削減電力P0は、契約電力の10%の30kwとし、電力削減の期間H0は1時間とする。これに対応して、AC/DC電力変換装置32と蓄電装置34の充放電容量は、(30kw×1時間)=30kwhより大きめの50kwhとする。デマンドレスポンス要請の予告時間は、電力削減開始時間の10分前とする。目的のインセンティブを得るためのP0の許容範囲(±ΔP0)は、P0の±5%である±1.5kwとする。デマンドレスポンス制御における制御許容範囲(±Δs)は、(±ΔP0)の(1/2)である±0.75kwとする。
一制御周期Tは、H0の数分の一から数十分の一の範囲が好ましいので、一制御周期=5分とする。この場合、各コントローラ24の実消費電力APは、5分ごと取得される。このように、制御周期は、実消費電力取得周期である。
削減電力をP0に対し制御許容範囲(±Δs)とするためには、図10、図11で述べたように、適切なコントローラ24の選択が1回で済まずに複数回の選択処理を繰り返す場合がある。選択処理の結果について削減電力が(P0±Δs)内となるか否かを判定するには、選択処理の都度、S28で取得した各コントローラ24の実消費電力APの中から、選択されたコントローラ24の実消費電力APを参照する必要がある。そこで、一制御周期を複数のサブ制御周期に分け、各サブ制御周期において、選択されたコントローラ24の実消費電力APを、S28で取得した各コントローラ24の実消費電力APの中から参照する。ここでは、一制御周期T=5分であるので、これを5から10のサブ制御周期に分けることがよい。ここでは、一サブ制御周期t0=1分とする。この場合、各コントローラ24の実消費電力APの参照は、1分ごとに行われる。サブ制御周期とは、選択されたコントローラ24の実消費電力APを参照する実消費電力参照周期である
選択処理の結果について削減電力が(P0±Δs)から外れる場合は、各コントローラ24の実消費電力APがベースライン消費電力BPから大きく変動する場合である。コントローラ24の実消費電力APの変動は、そのコントローラ24のベースライン消費電力BPが多いほど大きいと考えられる。ここでは、ベースライン消費電力BPの±50%以内とする。選択されたコントローラ24の実消費電力の変動の大きさが、そのコントローラ24のベースライン消費電力BPの50%を超える場合は、選択されたコントローラに対し図11で述べた置き換え制御を行う。以下の数値例では、選択されたコントローラ24の実消費電力の変動は、そのコントローラ24のベースライン消費電力BPに対し{±(1/3)BP}とする。
図12は、図10の追加制御について、選択される各コントローラ24のベースライン消費電力BPと実消費電力AP等について、具体的な数値を用いて説明する図である。以下で述べるS番号は、図7、図9、図10の処理手順のステップ番号である。図12の横軸は時間tである。デマンドレスポンス制御開始のS22の時間から、制御初期設定期間が始まり、システム10において最初にS28の処理が行われる時間t=0から最初の一制御周期Tが開始する。縦軸は電力で、ビル12の全体の実消費電力をビル消費電力KPとして、ビル消費電力KPから電力P0が削減された(KP−P0)の消費電力レベルが太線で示される。制御許容範囲(±Δs)は、(KP−P0)の消費電流レベルに対して設定される。図12の最下欄に、各サブ制御周期で設定される制御対象コントローラを示す。ここで、最下欄における1stCNTは、第1コントローラを意味し、2ndCNTは、第2コントローラを意味し、以下、3rdCNT,4thCNT・・・と続く。
制御初期設定期間においては、S26の第1コントローラの選択が行われる。第1コントローラのベースライン消費電力BPはP0=30kwであるので、ベースライン消費電力一覧表52を検索し、S26において、ベースライン消費電力BP=30kwを有するCNT52が第1コントローラに選択される。
第1コントローラの選定が行われて、S28の実消費電力取得が行われるときをt=0として、ここからシステム10における最初の一制御周期Tが開始する。
t=0は、最初のサブ制御周期の開始時間でもあり、S30において、第1コントローラの実消費電力AP1が参照される。参照の結果、第1コントローラの実消費電力AP1が(P0±Δs)内であれば、S40に進んで、第1コントローラが制御対象コントローラに設定される。図12の最下欄の時間t=0において、1stCNTとあるのは、そのことを示す。
図12では、さらに、S30における第1コントローラの実消費電力の参照の結果、第1コントローラの実消費電力AP1が(P0±Δs)を外れる場合について示す。図12は、追加制御の場合であるので、第1コントローラの{(乖離消費電力ΔP1)=(AP1−P0)}が負の値で、制御許容範囲である(−0.75kw)を超えて少ない場合である。ここでは、乖離消費電力ΔP1として、第1コントローラのベースライン消費電力BP1=P0の(−33.3%)の場合が示される。この場合、第1コントローラの実消費電力AP1は、(BP1=PO=30kw)×(100%−33.3%)=20kwであり、第1コントローラの乖離消費電力ΔP1は、(AP1−P0)=(−10kw)である。すなわち、ビル消費電力KPに対する削減電力がP0よりも10kw少ない。図12では、t=0において、この不足電力である(ΔP1=−10kw)を斜線で示す。この不足電力(ΔP1=−10kw)は、制御許容範囲である{±(1/2)s}=(±0.75kw)を超えているので、同じサブ制御周期の中で、さらにS52に進む。S52において、ベースライン消費電力一覧表52を検索し、ベースライン消費電力BPが(ΔP1=−10kw)の絶対値である10kwのベースライン消費電力を有するCNT31を第2コントローラに選定し、(第1コントローラ+第2コントローラ)を第1組合せ体とする(S54)。ここまでが、最初のサブ制御周期において行われる処理である。
そして、時間t=t0になると、二番目のサブ制御周期に入り、S56において、第2コントローラの実消費電力AP2が参照される。参照の結果、第1組合せ体の実消費電力(AP1+AP2)が制御許容範囲{±(1/2)s}内か否かが判定される(S60)。判定が肯定されるとS38が肯定されることに相当するので以後の処理を止め、第1組合せ体を構成する第1コントローラと第2コントローラとを制御対象コントローラに設定する(S40)。図12の最下欄の時間t=t0において、(1stCNT+2ndCNT)とあるのは、そのことを示す。
図12では、さらに、S60における判定が否定された場合について示す。図12は、追加制御の場合であるので、第2コントローラの{(乖離消費電力ΔP2)=(AP2−BP2)={AP2−(ΔP1の絶対値)}が負の値である。ここでは、乖離消費電力ΔP2として、BP2の(−33.3%)の場合が示される。この場合、第2コントローラの実消費電力AP2は、(10kw)×(100%−33.3%)=6.66kwであり、第2コントローラの乖離消費電力ΔP2={AP2−(ΔP1の絶対値)}=(−3.33kw)である。すなわち、ビル消費電力KPに対する削減電力がP0よりも3.33kw少ない。図12では、t=t0において、この削減不足電力である(ΔP2=−3.33kw)を斜線で示す。この削減不足電力(ΔP2=−3.33kw)は、制御許容範囲である(±0.75kw)を超えているので、同じサブ制御周期の中で、さらにS64に進む。S64において、ベースライン消費電力一覧表52を検索し、ベースライン消費電力BPが(ΔP2=−3.33kw)の絶対値である3.33kwに対応するベースライン消費電力BPを有するコントローラ24を探す。3.33kwのベースライン消費電力BPを有するコントローラ24はベースライン消費電力一覧表52にないが、近いベースライン消費電力BPを有するのは、CNT22,CNT53,CNT32,CNT42である。図12は追加制御であり、コントローラ24の実消費電力APはそのコントローラのベースライン消費電力BPよりも少なめであるので、ここでは、3.33kwよりも多い4kwのベースライン消費電力を有するCNT32またはCNT42のいずれかを第3コントローラに選択し、第1組合せ体に追加する。第3コントローラのベースライン消費電力BP3=4kwである。そして、第1組合せ体に第3コントローラを追加した(第1コントローラ+第2コントローラ+第3コントローラ)を第2組合せ体とする(S66)。ここまでが、二番目のサブ制御周期で行われる処理である。
そして、時間t=2t0になると、三番目のサブ制御周期に入り、S68において、第3コントローラの実消費電力AP3が参照される。参照の結果、第2組合せ体の実消費電力(AP1+AP2+AP3)が制御許容範囲{±(1/2)s}内か否かが判定される(S72)。
今の場合、(AP1+AP2)=(20kw+6.66kw)は分っている。そして第3コントローラとして選択されたCNT32またはCNT42のいずれもベースライン消費電力BP3=4kwである。第3コントローラの実消費電力AP3とベースライン消費電力BP3との差である第3コントローラの乖離消費電力ΔP3がゼロであれば、第3コントローラの実消費電力AP3=4kwである。したがって、第2組合せ体の実消費電力(AP1+AP2+AP3)=(20kw+6.66kw+4kw)=30.66kwとなり、制御許容範囲の(±0.75kw)内であり、S72の判定が肯定される。
図12では、さらに、第3コントローラの実消費電力AP3がベースライン消費電力BP3から乖離する場合が示される。図12は、追加制御の場合であるので、第3コントローラの{(乖離消費電力ΔP3)=(AP3−BP3)={AP3−(ΔP2の絶対値)}が負の値である。ここでは、乖離消費電力ΔP3として、BP3の(−33.3%)の場合が示される。この場合、第3コントローラの実消費電力AP3は、(4kw)×(100%−33.3%)=3kwとなる。この場合、第2組合せ体の実消費電力は、(AP1+AP2+AP3)=(20kw+6.66kw+3kw)=29.66kwとなり、P0との差は、0.33kwで、制御許容範囲(±0.75kw)内に入っている。つまり、第3コントローラの実消費電力AP3がベースライン消費電力BP3から(−33.3%)乖離した場合でも、S72は肯定される。このように、制御許容範囲(±Δs)を考慮しながら第3コントローラの選択を適切に行うことで、第3コントローラの実消費電力AP3がベースライン消費電力BP3から乖離しても、S72の判定について肯定が可能になる。S72の判定が肯定されるとS38が肯定されることに相当するので以後の処理を止め、第2組合せ体を構成する第1コントローラと第2コントローラと第3コントローラを制御対象コントローラに設定する(S40)。図12の最下欄の時間t=2t0において、(1stCNT+2ndCNT+3rdCNT)とあるのは、そのことを示す。
図13は、図11の置き換え制御について、選択される各コントローラ24のベースライン消費電力BPと実消費電力AP等について、具体的な数値を用いて説明する図である。図13は、追加制御における図12に対応する図で、横軸、縦軸、KP,P0、(±Δs)の内容等は、図12と同様であるので、詳細な説明を省略する。
制御初期設定期間においても図12と同様に、S26において、ベースライン消費電力BP=30kwを有するCNT52が第1コントローラに選択される。第1コントローラの選定が行われて、S28の実消費電力取得が行われるときをt=0として、ここからシステム10における最初の一制御周期Tが開始する。t=0は、最初のサブ制御周期の開始時間でもあり、S30において、第1コントローラの実消費電力AP1が参照される。参照の結果、第1コントローラの実消費電力AP1が(P0±Δs)内であれば、S40に進んで、第1コントローラが制御対象コントローラに設定される。図12の最下欄の時間t=0において、1stCNTとあるのは、そのことを示す。
図13では、さらに、S30における第1コントローラの実消費電力の参照の結果、第1コントローラの実消費電力AP1が(P0±Δs)を外れる場合について示す。図13は、置き換え制御の場合であるので、第1コントローラの{(乖離消費電力ΔP1)=(AP1−P0)}が正の値で、制御許容範囲である(+0.75kw)を超えて多い場合が示される。ここでは、乖離消費電力ΔP1として、第1コントローラのベースライン消費電力BP1=P0の(+33.3%)の場合が示される。この場合、第1コントローラの実消費電力AP1は、(BP1=PO=30kw)×(100%+33.3%)=40kwであり、第1コントローラの乖離消費電力ΔP1は、(AP1−P0)=(+10kw)である。すなわち、ビル消費電力KPに対する削減電力がP0よりも10kw多い。図13では、t=0において、この削減過剰電力である(ΔP1=+10kw)を斜線で示す。この削減過剰電力(ΔP1=+10kw)は、制御許容範囲である{±(1/2)s}=(±0.75kw)を超えているので、同じサブ制御周期の中で、さらにS76に進む。S76においては、第1コントローラのベースライン消費電力BP1よりも少ないベースライン消費電力BPを有する2つのコントローラを一組として、第1コントローラに対し置き換える(S76)。2つのコントローラの内の1つは、第1コントローラのベースライン消費電力BP1から第1コントローラの乖離消費電力ΔP1を差し引いた消費電力(BP1−ΔP1)に対応するベースライン消費電力BP2を有する第2コントローラである。もう1つは、第1コントローラの乖離消費電力ΔP1に対応するベースライン消費電力BP3を有する第3コントローラである。第2コントローラと第3コントローラを一組として第1組合せ体とする(S78)。ここまでが、最初のサブ制御周期において行われる処理である。
そして、時間t=t0になると、二番目のサブ制御周期に入り、S80において、第2コントローラの実消費電力AP2と第3コントローラの実消費電力AP3が参照される。参照の結果、第1組合せ体の実消費電力(AP2+AP3)が制御許容範囲{±(1/2)s}内か否かが判定される(S84)。判定が肯定されるとS38が肯定されることに相当するので以後の処理を止め、第1組合せ体を構成する第2コントローラと第3コントローラとを制御対象コントローラに設定する(S40)。図13の最下欄の時間t=t0において、(2ndCNT+3rdCNT)とあるのは、そのことを示す。
図13では、さらに、S84における判定が否定された場合について示す。図13は、置き換え制御の場合であるので、第2コントローラの{(乖離消費電力ΔP2)=(AP2−BP2)={AP2−ΔP1)}が正の値である。ここでは、乖離消費電力ΔP2として、BP2の(+33.3%)の場合が示される。ΔP2=(20kw)×(33.3%)=6.6kwである。このままでは第1組合せ体において、{(第2コントローラの実消費電力)+(第3コントローラのベースライン消費電力BP3)}=(20kw+6.6kw)+10kw}=36.6kwとなり、P0=30kwをΔP2だけ超える。そこで、(第3コントローラのベースライン消費電力BP3)から第2コントローラの乖離消費電力ΔP2を差し引いた消費電力(BP3−ΔP2)=(10kw−6.66kw)=3.33kwに対応するベースライン消費電力BPを有するコントローラ24を探す。3.33kwのベースライン消費電力BPを有するコントローラ24はベースライン消費電力一覧表52にないが、近いベースライン消費電力BPを有するのは、CNT22,CNT53,CNT32,CNT42である。図12は置き換え制御であり、コントローラ24の実消費電力APはそのコントローラのベースライン消費電力BPよりも多めであるので、ここでは、3.33kwよりも少ない3kwのベースライン消費電力BP4を有するCNT22またはCNT53のいずれかを第4コントローラに選択する(S88)。そして、(第2コントローラ+第4コントローラ)を第2組合せ体として、第1組合せ体に対し置き換える(S90)。ここまでが、二番目のサブ制御周期で行われる処理である。
そして、時間t=2t0になると、三番目のサブ制御周期に入り、S92において、第4コントローラの実消費電力AP4が参照される。参照の結果、第2組合せ体の実消費電力(AP2+AP4)が制御許容範囲{±(1/2)s}内か否かが判定される(S96)。
今の場合、AP2=26.66kwは分っている。そして第4コントローラとして選択されたCNT22またはCNT53のいずれもベースライン消費電力BP4=3kwである。第4コントローラの実消費電力AP4とベースライン消費電力BP4との差である第4コントローラの乖離消費電力ΔP4がゼロであれば、第4コントローラの実消費電力AP4=3kwである。したがって、第2組合せ体の実消費電力(AP2+AP4)=(26.66kw+3kw)=29.66kwとなり、制御許容範囲の(±0.75kw)内であり、S96の判定が肯定される。
図13では、さらに、第4コントローラの実消費電力AP4がベースライン消費電力BP4から乖離する場合が示される。図13は、置き換え制御の場合であるので、第4コントローラの{(乖離消費電力ΔP4)=(AP4−BP4)は正の値である。ここでは、乖離消費電力ΔP4として、BP4の(+33.3%)の場合が示される。この場合、第4コントローラの実消費電力AP4は、(3kw)×(100%+33.3%)=4kwとなる。この場合、第2組合せ体の実消費電力は、(AP2+AP4)=(26.66kw+4kw)=30.66kwとなり、P0との差は、0.66kwで、制御許容範囲(±0.75kw)内に入っている。つまり、第4コントローラの実消費電力AP4がベースライン消費電力BP4から(+33.3%)乖離した場合でも、S96は肯定される。このように、制御許容範囲(±Δs)を考慮しながら第4コントローラの選択を適切に行うことで、第4コントローラの実消費電力AP4がベースライン消費電力BP4から乖離しても、S96の判定について肯定が可能になる。S96の判定が肯定されるとS38が肯定されることに相当するので以後の処理を止め、第2組合せ体を構成する第2コントローラと第4コントローラを制御対象コントローラに設定する(S40)。図13の最下欄の時間t=2t0において、(2ndCNT+4thCNT)とあるのは、そのことを示す。
以上で、デマンドレスポンス制御の説明が終わったので、次に、消費電力平準化制御の内容を説明する。デマンドレスポンス要請が行われるのは、1年の内で、電力需要が多くなる夏季の日中が主であり、デマンド要請の予定がない日の方が多い。デマンドレスポンス要請の予定のない日に、消費電力平準化制御を行うことができる。
図14は、春や秋において、ビル12の消費電力もあまり多くなく、電力会社8からデマンドレスポンス要請の予定がない日におけるビル12の実消費電力推移線78を示す図である。参考として、一点鎖線で、図4における実消費電力推移線70も示す。ビル管理装置16は、消費電力平準化レベル80を予め定め、消費電力平準化レベル80を実消費電力推移線78が超える部分について、電力会社8から供給される電力を削減する消費電力平準化制御を行う。図14において、斜線を付した領域82の面積は、消費電力平準化制御によって削減された電力量(kwh)である。この場合もユーザの利便性を低下させないように、消費電力平準化制御を受ける設備14に対して、削減した電力量と同じ大きさの電力量を蓄電装置34から供給する。二点鎖線で囲み斜線を付した領域84は、消費電力平準化制御を行って削減された電力量(kWh)と同じ大きさで蓄電装置34が放電した電力量である。
図15を用いて、ビル管理装置16が実行するビル消費電力平準化制御の手順を説明する。各手順は、消費電力抑制制御プログラムの処理手順に対応する。
初めに、ビル消費電力平準化レベルFLPを設定する(S110)。図14に示すように、ビル消費電力平準化レベルFLPは、ビル12の一日の24時間に亘って一定の消費電力レベルである。これに対しビル12の実消費電力であるビル消費電力KPは、季節、その日の天候、気温等によって毎日変動する。
ビル消費電力平準化レベルFLPの設定は以下の手順で行う。まず、消費電力平準化制御の実行日の前の数日間について、各コントローラ24の実消費電力APの一日の推移線を取得し、一日の各時間ごとにその平均値を求め、これを各コントローラ24の各時間ごとのベースライン消費電力BPとする。ベースライン消費電力一覧表52は、各コントローラ24のベースライン消費電力BPを並べた一覧表で、各時間ごとに作成される。作成されたベースライン消費電力一覧表52は、記憶装置44に記憶される。ベースライン消費電力一覧表52の検索キーは、時間、及び、コントローラ24の識別番号である。
次に、各コントローラ24のベースライン消費電力を全てのコントローラ24について加算し、これを、各時間ごとのビル消費電力KPとする。そして、各時間ごとのビル消費電力KPを一日に亘って繋いで、ビル消費電力KPの一日の推移線を作成する。この推移線は、消費電力平準化制御の実行日の前の数日間についてのビル消費電力平均推移線に相当する。
このようにして作成したビル消費電力平均推移線に基づいてビル消費電力平準化レベルFLPを設定する。設定に当たっては、ビル消費電力平均推移線とビル消費電力平準化レベルFLPとの差であるビル乖離消費電力ΔKPを一日に亘って積分して乖離電力量(kwh)を求め、乖離電力量<(蓄電装置34の容量)を満たすようにする。一例を挙げると、蓄電装置34の容量を50kwhとして、乖離電力量が30kwh程度になるように、ビル消費電力平準化レベルFLPを設定する。
デマンドレスポンス要請の予定のない日を消費電力平準化制御を実行する日として、予めビル消費電力平準化レベルFLPが設定されると、次に、消費電力平準化制御の実行日に、予め定めた時間間隔をおいて設定された制御時間ごとに、実際のビル消費電力KPを算出する(S112)。例えば、時間間隔が1時間の場合、午前0時から午後11時まで1時間おきに制御時間が設定されるので、各制御時間におけるビル消費電力KPを算出する。ビル消費電力KPは、その制御時間における各コントローラ24の実消費電力APを全てのコントローラ24について加算して算出される。
そして、一日の時間経過とともに、制御時間ごとに、ビル消費電力KPとビル消費電力平準化レベルFLPとの差であるビル乖離消費電力ΔKPを求める。ΔKP=(KP−FLP)である。次に、ΔKP>0か否かが判定される(S114)。S114の判定が否定される場合は、S112へ戻る。
そして、ベースライン消費電力一覧表52を検索し(S116)、ベースライン消費電力一覧表52からΔKPに対応するベースライン消費電力BP1を有する第1コントローラを選択する(S118)。そして、各制御時間ごとに、各コントローラ24の実消費電力APを取得する(S120)。図7の各手順と比較すると、S116は、図7のS24と同じで、S118は、図7のP0がΔKPに置き換わり、S120は、図7の制御周期Tが制御時間に置き換わる。図7のP0は、期間H0について一定値であるが、ΔKPは制御時間ごとに変動することが相違する。
図15のS122からS134までは、上記のように、図7のP0をΔKPに置き換えたことが相違するが、処理の内容は、図7において対応するS30からS42の各手順の内容と同じであるので、詳細な説明を省略する。
図15のS134において、ある制御期間について制御対象コントローラの電源切替が行われると、次にS136に進み、消費電力平準化制御終了時間か否かが判定される。消費電力平準化制御終了時間とは、例えば、1時間おきに制御時間が設定されたとして、一日の午前0時から消費電力平準化制御が開始した場合には、午後11時である。すなわち、一日に亘って、全ての処理が終了した時間が、消費電力平準化制御終了時間である。S136の判定が否定されると、S120に戻り、次の制御時間において、各コントローラ24の実消費電力APが取得され、上記の処理が繰り返される。S136の判定が肯定されると、消費電力平準化制御が終了する。
以上で、1つのビル12におけるデマンドレスポンス制御システム10の説明を終わる。図16は、3つのビル11,12,13を1つのビル群88にまとめた場合に、ビル群88についてのデマンドレスポンス制御システム90の構成を示す図である。3つのビル11,12,13のそれぞれは、図1で述べたビル12と同じ構成を有する。3つのビルを区別して、第1ビル11、第2ビル12、第3ビル13と呼ぶ。デマンドレスポンス制御システム90は、第1ビル11、第2ビル12、第3ビル13におけるデマンドレスポンス制御を統合的に管理するビル群管理装置92を備える。ビル群管理装置92は電力会社8と接続され、電力会社8との間のデマンドレスポンス契約は、「3P0の電力を期間H0で削減する」という内容である。P0は、図1で述べたデマンドレスポンス制御システム10における削減電力である。したがって、デマンドレスポンス制御システム90は、図1のデマンドレスポンス制御システム10と比較して、3倍の大きさの電力削減を期間H0で行う。
第1ビル11には、第1ビル管理装置94が配置され、第2ビル12には、第2ビル管理装置96が配置され、第3ビル13には、第3ビル管理装置98が配置され、それぞれネットワーク配線でビル群管理装置92に接続される。第1ビル11の蓄電装置34と、第2ビル12の蓄電装置34と、第3ビル13の蓄電装置34とは、それぞれのAC/DC電力変換装置32を介して、共通電力供給線100に接続される。
ビル群管理装置92は、電力会社8から「3P0×H0」のデマンドレスポンス要請を受けた場合に、3つのビル11,12,13の内の1つをメインビルに指定する。ここでは、第2ビル12をメインビルとする。そして、メインビルである第2ビル12のビル管理装置96に対し、図7で述べたデマンドレスポンス制御を実行させる。すなわち、「3P0×H0」の電力削減の実行は、第2ビル12の第2ビル管理装置96が行い、第1ビル11の第1ビル管理装置94と第3ビル13の第3ビル管理装置98は行わない。P0が30kwの場合は、第2ビル12の第2ビル管理装置96は、3P0に対応するベースライン消費電力BPを有する第2ビル12のコントローラ24を、第1コントローラに選択する。図8のベースライン消費電力一覧表52を検索すると、CNT11が90kwのベースライン消費電力BPを有するので、CNT11が第1コントローラに選択される。
電源切替を行う際に、第2ビル12が備える蓄電装置34の容量は50kwであるので、3P0=90kwには不足する。そこで、ビル群管理装置92は、第1ビル11の第1ビル管理装置94に対し、第1ビル11の蓄電装置34からの供給電力を、第1ビル11の電力供給線36でなく、共通電力供給線100に流す指示を行う。また、第3ビル13の第3ビル管理装置98に対し、第3ビル13の蓄電装置34からの供給電力を、第3ビル13の電力供給線36でなく、共通電力供給線100に流す指示を行う。メインビルである第2ビルの第2ビル管理装置96に対しては、共通電力供給線100からの供給電力と、第2ビル12の蓄電装置34からの供給電力とを合わせて、第2ビル12の電力供給線36に流す指示を行う。これによって、第2ビル12の第2ビル管理装置96は、第1ビル11の各設備14に必要な電力を3つのビル11,12,13が備える3つの蓄電装置34から供給することができ、90kwの電力削減に対し、電力会社8からの電力供給から蓄電装置34からの電力供給に電源切替することができる。
第2ビル12のビル管理装置96が行うデマンドレスポンス制御は、図7で説明した手順で、ベースライン消費電力BLがそれぞれ3倍になることを除けば同じ内容であるので、詳細な説明を省略する。
図17は、図6に対応する図である。ビル群88の消費電力電力の推移は、実線の実消費電力推移線110及び太い破線のベースライン消費電力推移線112で示す。斜線を付した領域114は、デマンドレスポンス制御を行って削減された「電力3P0×期間H0」の電力量(kwh)である。二点鎖線で囲み斜線を付した領域116は、デマンドレスポンス制御を行って削減された「電力3P0×期間H0」の電力量(kwh)と同じ大きさで複数の蓄電装置34が放電した電力量である。これらの波形等は、図6と同様の形状を有しているが、電力を示す縦軸の尺度が(1/3)となっていることが相違する。
ビル群88のデマンドレスポンス制御システム90においても、電力会社8からデマンドレスポンス要請の予定のない日にはビル群消費電力平準化制御を行うことができる。その手順は、1つのビル12に対する図15で説明した内容において、3つのビル11,12,13をまとめたビル群88と読み替えればよいので、詳細な説明を省略する。
図18は、図14に対する図である。ビル群管理装置92は、ビル群消費電力平準化レベル120を予め定め、ビル群消費電力平準化レベル120をビル群消費電力推移線118が超える部分について、電力会社8から供給される電力を削減する消費電力平準化制御を行う。斜線を付した領域122の面積は、ビル群消費電力平準化制御によって削減された電力量(kwh)である。この場合もユーザの利便性を低下させないように、ビル群消費電力平準化制御を受ける設備に対して、削減した電力量と同じ大きさの電力量を複数の蓄電装置34から供給する。二点鎖線で囲み斜線を付した領域124は、消費電力平準化制御を行って削減されたの電力量(kWh)と同じ大きさで複数の蓄電装置34が放電した電力量である。これらの波形等は、図14と同様の形状を有しているが、電力を示す縦軸の尺度が(1/3)となっていることが相違する。例えば、ビル群消費電力平準化レベル120は、図14のFLPに対し、図18では(3FLP)と示される。
上記では、ビル群88として、同じ構成の3つのビル11,12,13から構成される場合を述べたが、これは説明のための例示であり、異なる構成を有する複数のビルをまとめて1つのビル群88としてよい。
ビルによっては、日中の消費電力レベルが夜間の消費電力レベルよりも高い日中電力消費型ビルや、これと反対に夜間の消費電力レベルが日中の消費電力レベルよりも高い夜間電力消費型ビルがある。日中電力消費型ビルとしては、事務業務を行うオフィスビル、医療業務を行う病院ビル等があり、夜間電力消費型ビルとしては、共働きの家庭が多い住宅マンション、高齢者が多い高齢者住宅、老人ホーム等がある。
日中電力消費型ビルと夜間電力消費型ビルとは、一日の消費電力推移線が互いに相補関係にあるので、この二種類のビルをまとめてビル群88として、ビル群管理装置92でビル群消費電力平準化制御を行うと、ビル群消費電力平準化レベルが取りやすい。図19に1つの日中電力消費型ビルと1つの夜間電力消費型ビルをまとめてビル群88とする例について、一日の消費電力推移線等を示す。
図19の横軸は、一日についての時間であり、縦軸は電力である。日中電力消費型ビルの実消費電力推移線130は、例えば病院ビルの場合、外来患者が午前中から午後にかけて増えて正午前後でピークになる。一方、夜間電力消費型ビルの実消費電力推移線132は、例えば、共働き家庭の多い住宅マンションでは、午前の7時頃に1回目のピークがあり正午前後に減少し夕食後あたりに2回目のピークがある。この2つのビルをまとめたビル群88としての実消費電力推移線134は、極端なピークがなくなり、かなり平準化された特性を示す。図19では、この実消費電力推移線134に対するビル群消費電力平準化制御におけるビル群消費電力平準化レベル136と、ビル群消費電力平準化制御によって削減された電力量(kwh)を示す領域138を示す。二点鎖線で囲み斜線を付した領域140は、ビル群消費電力平準化制御を行って削減された電力量(kWh)と同じ大きさで蓄電装置34が放電した電力量である。
このように、複数のビルをまとめてビル群88とした場合に、各ビルの消費電力推移特性を生かすことで、デマンドレスポンス要請に対応しながら、ユーザの不利益を抑制し、発電所からの電力削減が効果的に実行できる。