JP6918465B2 - 腸管内ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物 - Google Patents

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Description

発明の背景
技術分野
本発明は、抗菌薬を投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物に関する。
背景技術
感染症治療、細菌感染防止などの目的で抗菌薬は数多く使用されている。抗菌薬の使用による弊害として、抗菌薬の服用による腸内環境の悪化が挙げられる。これは、抗菌薬の服用により、病原微生物だけでなく、いわゆる善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌など有用な細菌も減少し、腸内フローラ(腸内細菌叢)、すなわち、腸内細菌の生態系が悪影響を受けるためといわれている。その結果、便秘、下痢、吐き気、頭痛などの症状が発生する。このような弊害の対策として、抗菌薬を摂取する際には、生きた善玉菌そのものを同時に摂取する(プロバイオティクス)および/または善玉菌を増やす成分を同時に摂取すること(プレバイオティクス)が推奨されている。プレバイオティクスの代表例としては、オリゴ糖や食物繊維などの腸管内善玉菌の増殖因子、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌自体をカプセルなどの形態によりサプリメントとしたものなどが挙げられる。
善玉菌のうちでも、乳酸菌の一種であるLactobacillus(ラクトバチルス属)の細菌は、それ自体プロバイオティクスの菌体として広く利用されている。しかしながら、ラクトバチルス属乳酸菌は、グラム陽性の桿菌であり、抗菌薬の感受性が高いことから、抗菌薬を投与すると著しく減少することが報告されている(例えば、非特許文献1)。したがって、抗菌薬を投与した対象において、腸管内ラクトバチルス属乳酸菌の減少を抑制することは重要な課題である。
一方、近年、新しいプレバイオティクスの成分として、ビフィズス菌増殖促進物質(BGS:Bifidogenic Growth Stimulator)の報告がある(非特許文献2)。具体的には、非特許文献2には、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ培養物の上清濾液が、ビフィズス菌を特異的に増殖したことが報告されている。しかしながら、ビフィズス菌増殖促進物質は、乳酸菌をはじめとするビフィズス菌以外の腸内細菌に対しては増殖促進作用を実質的に示さなかったことも報告されている(非特許文献2の表1参照)。また、ビフィズス菌増殖促進物質を含有する飼料組成物を用いた、仔畜における腸内菌叢改善作用が報告されている(特許文献1)。具体的には、特許文献1には、プロピオン酸菌による乳清発酵物であるProfec(商標)を仔畜に摂取させると、腸管内のビフィズス菌が有意に増加し、総菌数に対する占有率が著しく増加したことが報告されている。一方で、ラクトバチルス属乳酸菌については有意な増加は生じなかったことが示されている(特許文献1の実施例1の表1参照)。このように、腸管内ラクトバチルス属乳酸菌を有意に増殖させる成分についてはこれまで報告されていない。また、抗菌薬によるラクトバチルス属乳酸菌の減少を抑制するための試みや、その効果的な方法および組成物については、これまで報告されていない。
特許第4004763号公報
ヤクルト研究所研究報告集、第30号、1−6、2012 Bioscience Microflora Vol.18(2), 73-80, 1999
本発明は、抗菌薬を投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌の減少を抑制できる組成物およびその抑制方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、今般、ヒトの臨床試験において、プロピオン酸菌による乳清発酵物を、抗菌薬を投与する前または投与中の患者に摂取させたところ、プロピオン酸菌による乳清発酵物を摂取しなかった患者と比較して、腸管内のラクトバチルス属乳酸菌の減少を有意に抑制できることを見出した。本発明はかかる知見に基づくものである。
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)プロピオン酸菌による乳清発酵物を含んでなる、抗菌薬を投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物。
(2)前記プロピオン酸菌がプロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)である、(1)に記載の組成物。
(3)前記抗菌薬が、ペニシリン系抗菌薬、セフェム系抗菌薬、セファロスポリン系抗菌薬、カルバペネム系抗菌薬、β−ラクタマーゼ阻害剤、オキサゾリジノン系抗菌薬、ニューキロノン系抗菌薬、およびマクロライド系抗菌薬から選択される少なくとも1つのものである、(1)または(2)に記載の組成物。
(4)一日当たりの投与量が、プロピオン酸菌による乳清発酵物の乾燥質量換算として、0.15〜200mg/kg体重である、(1)〜(3)のいずれかに記載の組成物。
(5)食品組成物または医薬品組成物である、(1)〜(4)のいずれかに記載の組成物。
(6)粉末状、液状または錠剤状の形態である、(1)〜(5)のいずれかに記載の組成物。
本発明によれば、プロピオン酸菌による乳清発酵物を用いて、抗菌薬を投与される対象における腸管内のラクトバチルス属乳酸菌の減少を効果的に抑制することができる。
抗菌薬投与される経管栄養患者(対照群)の糞便中の総菌数とラクトバチルス属菌数の変化(対照群の試験)を示したグラフである。*;p<0.05(投与後0日目と比較)。 抗菌薬投与される経管栄養患者(組成物投与群)の糞便中の総菌数とラクトバチルス属菌数の変化(組成物投与群の試験)を示したグラフである。*;p<0.05(投与後0日目と比較)。 対照群および組成物投与群の糞便中の総菌数とラクトバチルス属菌数を比較したグラフである。*;p<0.05。 対照群および組成物投与群の糞便中のビフィズス菌数を比較したグラフである。
発明の具体的説明
ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物
本発明の組成物は、抗菌薬を投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物であって、プロピオン酸菌による乳清発酵物を含んでなる。プロピオン酸菌による乳清発酵物を有効成分として用いると、腸管内ビフィズス菌の減少を抑制しないにもかかわらず、抗菌薬を投与する前、投与中、あるいは投与後の対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌の減少を有意に抑制できたことは意外な事実である。
「抗菌薬を投与される対象」とは、抗菌薬を投与される予定(投与前)の対象、投与されている(投与中の)対象または投与された(投与後の)対象をいい、好ましくは、抗菌薬により腸管内のラクトバチルス属乳酸菌が減少される予定にある、減少しているまたは減少された対象をいう。対象には、好ましくはヒトであるが、ヒト以外(例えば、馬、牛などの家畜、齧歯類、犬、猫などの愛玩動物、動物園などで飼育されている鑑賞動物)であってもよく、本発明にはかかる態様も包含される。
本発明の抗菌薬は、ラクトバチルス属乳酸菌が感受性を示す抗菌薬であれば特に限定されないが、ラクトバチルス属乳酸菌が感受性を示す抗生物質が好ましい。より具体的な例としては、ペニシリン系抗菌薬(例えば、アモキシシリン(AMPC)、アンピシリン(ABPC)、セフェム系抗菌薬(例えば、セフピロム(CPR))、セファロスポリン系抗菌薬(例えば、セフラジジム(CAZ))、カルバペネム系抗菌薬(例えば、メルペネム(MEPM))、β−ラクタマーゼ阻害剤、オキサゾリジノン系抗菌薬(例えば、リネゾリド(LZD))、ニューキロノン系抗菌薬(例えば、レボフロキサシン(LVFX)、オアズフロキサシン(PZFX))、およびマクロライド系抗菌薬(例えば、アジスロマイシン(AZM))の他、リンコマイシン系抗菌薬、アミノグリコシド系抗菌薬、テトラサイクリン系抗菌薬、クロラムフェニコール系抗菌薬、ペプチド系抗菌薬、サルファ剤、抗結核薬、キノロン系抗菌薬、抗ウィルス薬、抗真菌薬が挙げられる。抗菌薬は好ましくは、ペニシリン系抗菌薬(例えば、アモキシシリン(AMPC)、アンピシリン(ABPC)、セフェム系抗菌薬(例えば、セフピロム(CPR))、セファロスポリン系抗菌薬(例えば、セフラジジム(CAZ))、カルバペネム系抗菌薬(例えば、メルペネム(MEPM))、β−ラクタマーゼ阻害剤、オキサゾリジノン系抗菌薬(例えば、リネゾリド(LZD))、ニューキロノン系抗菌薬(例えば、レボフロキサシン(LVFX)、オアズフロキサシン(PZFX))、およびマクロライド系抗菌薬(例えば、アジスロマイシン(AZM))である。
抗菌薬の投与方法は、腸管内ラクトバチルス属乳酸菌が感受性を示せば特に限定されず、例えば、経口摂取(あるいは経口投与)、経腸投与、胃ろう、皮下投与、経静脈投与などから、抗菌薬を投与される対象および用途(例えば、治療目的または予防目的)により、適宜選択することができる。抗菌薬の使用方法は、対象の有している疾患、状態、用途に応じて当業者であれば適宜選択でき、例えば、JAID/JAS感染症治療ガイド2014(JAID/JAS感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会編集)に記載の手法に従って、当業者であれば適宜選択できる。
ラクトバチルス属乳酸菌は、グラム陽性の桿菌であり、善玉菌の一種として知られている。好ましいラクトバチルス属乳酸菌の具体例としては、ヒト臨床試験の結果から、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・ジョンソニ(L. johnsonii)、ラクトバチルス・カゼイ(L. casei)、ラクトバチルス・パラカゼイ(L. paracasei)、ラクトバチルス・ガッセリ(L. gasseri)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(L. helveticus)、ラクトバチルス・ラムノサス(L. rhamnosus)、ラクトバチルス・アシドフィラス(L. acidophilus)、ラクトバチルス・サリバリウス(L. salivarius)、ラクトバチルス・ペントーサス(L. pentosus)、ラクトバチルス・プランタラム(L. plantarum)、ラクトバチルス・ブレビス(L. brevis)、ラクトバチルス・ロイテリ(L. reuteri)、ラクトバチルス・スポロゲネス(L. sporogenes)などが挙げられる。ラクトバチルス属乳酸菌は、例えば、整腸作用(例えば、下痢症、便秘、過敏性腸症候群に対する整腸作用)、免疫賦活作用、ピロリ菌の除菌作用、アトピー、花粉症、喘息などのアレルギー抑制作用、過敏性腸症候群(IBS)の改善作用、脂質代謝または内臓脂肪蓄積の改善作用、呼吸器疾患などの感染症リスク抑制作用、炎症性大腸炎の改善作用、子宮内膜症の改善作用、がん抑制作用、ストレスおよびQOLの改善作用、糖尿病改善作用、酸化ストレス改善作用などの生理活性を有することが知られている。ラクトバチルス属乳酸菌は、上記生理活性を有する点でその菌数が一定数腸管内に存在することが望ましい。
腸管内ラクトバチルス属乳酸菌は、腸内細菌叢に含まれるラクトバチルス属乳酸菌をいい、好ましくは、腸内環境を良好なバランスに保つ機能を有する乳酸菌である。腸管内ラクトバチルス属乳酸菌数は、ヒト糞便1g当たりLog10個以上存在することが好ましく、より好ましくはLog10個以上、さらに好ましくはLog10個以上、さらに好ましくはLog10個以上である。
本発明に用いられるプロピオン酸菌による乳清発酵物は、プロピオン酸菌を、乳清を含有する培地を用いて培養することにより得られる。
プロピオン酸菌とは、プロピオニバクテリウム属(Propionibacterium)に属するグラム陽性の嫌気性細菌で、糖類から無酸素的にプロピオン酸を生成する微生物をいい、古くからエメンタールチーズなどのスターターとして利用され、その安全性は確認されている。本発明に用いられるプロピオン酸菌は、例えば、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)、プロピオニバクテリウム・トエニー(P. thoenii)、プロピオニバクテリウム・アシディプロピオニシ(P. acidipropionici)、プロピオニバクテリウム・ジェンセニー(P. jensenii)、プロピオニバクテリウム・アビダム(P. avidum)、プロピオニバクテリウム・アクネス(P. acnes)、プロピオニバクテリウム・リンホフィラム(P. lymphophilum)、プロピオニバクテリウム・グラニュロサム(P. granulosam)が挙げられ、好ましくは、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒである。これらは1種を用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。プロピオン酸菌は、より好ましくは、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒに属するビフィズス菌増殖促進物質(BGS)産生菌であり、例えば、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ ET−3(寄託番号:FERM−BP−8115)、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ ATCC 6207、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ ATCC 8262、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ IFO 12424、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ IFO 12426、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ IFO 12391が挙げられ、さらに好ましくは、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ ET−3(寄託番号:FERM−BP−8115)である。
乳清とは、ホエイともよばれ、牛乳から、脂肪分、カゼイン、脂溶性ビタミンなどを除去した残りの透明な黄緑色の水溶性成分をいう。本発明に用いられる乳清として、例えば、ホエイの原液(甘性ホエイ、酸ホエイなど)、その濃縮物、その乾燥物(ホエイ粉)、その凍結物など、およびこれらの還元溶液、ならびに、脱塩ホエイ、ホエイタンパク質濃縮物(WPC)、ホエイタンパク質精製物(WPI)、α―ラクトアルブミン(α−La)、β−ラクトグロブリン(β−Lg)、免疫グロブリン、ラクトフェリンなど、および、これらの還元溶液、これらホエイタンパク質分解物が挙げられる。乳清は、好ましくは、ホエイの原液、ホエイ粉、WPC、WPIおよびこれらの還元溶液、ならびにこれらのプロテアーゼ分解物から選択される。これらは1種を用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
乳清は、培地に対して、タンパク質の量として、好ましくは1〜5質量%、より好ましくは1.5〜4.0質量%で含有される。また、糖質は、培地に対して、1〜4質量%、より好ましくは1.5〜3.0質量%で含有される。このような培地の組成になるように、乳清の添加量(配合量)を調節したものを用いることができる。糖質は、好ましくは、グルコースまたは乳糖をラクターゼで処理した単糖である。培地は、グラム陽性の嫌気性細菌を培養できる培地であれば、乳清以外の成分を含んでいてもよい。ここで、タンパク質の量は、ケルダール法やローリー法によって測定し算出することができる。ケルダール法の場合には、各種のタンパク質に含まれる窒素を測定し、その値に、窒素−タンパク質換算係数(通常 6.25)を乗じて算出することができる。
本発明に用いられる培地は、好ましくは、10質量%ホエイ粉還元液のプロテアーゼ分解物からなるpH5〜8(好適には、5.5〜7.5)の培地である。プロテアーゼは、ホエイタンパク質を適度に分解できれば特に限定されない。培地として、例えば、10質量%ホエイ粉還元液をプロテアーゼ アマノA(天野製薬株式会社)で50℃、pH7.0で分解したものを用いることができる。
プロピオン酸菌の培養は、乳清を含有する培地を用いる以外は、常法にしたがって、好気的または嫌気的(例えばNガス加圧下(0.5kg/cm))に培養できる。通常、培地の温度を20〜40℃に調製し、pH6〜8程度、生菌数が10〜10cfu/mLとなるように、スターターとしてのプロピオン酸菌を摂取して、3〜4日間、液体培養すればよい。このようにして得られた培養物に含有されるプロピオン酸菌の濃度はスターターの約5倍に達する。
本発明のプロピオン酸菌による乳清発酵物は、プロピオン酸菌の培養により得られた培養物、単離した細菌自体、培養液(培養上清)、またはこれらの混合物の少なくとも一つを用いることができ、プロピオン酸菌による乳清発酵物は、これらの抽出物、凍結乾燥物、または希釈物であってもよい。さらに、プロピオン酸菌による乳清発酵物は殺菌処理を施したものであってもよい。殺菌工程としては、例えば低温保持殺菌、高温保持殺菌、高温短時間殺菌、超高温瞬間殺菌が挙げられる。
本発明の一つの好ましい態様によれば、本発明のプロピオン酸菌による乳清発酵物として、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ ET−3(Propionibacterium freudenreichii ET-3)(寄託番号:FERM BP−8115)を、10質量%ホエイ粉還元液で培養して得られたプロピオン酸菌による乳清発酵物を用いることができ、より好ましくは、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ ET−3を、10質量%ホエイ粉還元液のプロテアーゼ アマノA(天野製薬株式会社)で50℃、pH7.0で分解した分解物からなる培地で、35℃、pH6.0で75時間培養して得られたプロピオン酸菌による乳清発酵物を用いることができる。このようなプロピオン酸菌による乳清発酵物は、合成してもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、原料としてプロフェック(「Profec」(商標)、株式会社 明治製)が挙げられ、これは、主に腸内細菌の中で特にビフィズス菌の増殖促進作用を持つ、特定保健用食品の関与成分として認可されている。
本発明の一つの態様によれば、本発明のプロピオン酸菌による乳清発酵物は、ビフィズス菌増殖促進物質(BGS)を含んでいてもよい。ビフィズス菌増殖促進物質として、例えば、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸(1,4-dihydroxy-2-naphthoic acid、DHNA)、2−アミノ−3−カルボキシ−1,4−ナフトキノン(2-amino-3-carboxy-1,4-naphthoquinone、ACNQ)およびこれらの類似体が挙げられ、該類似体には、1,4−ナフトキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、4−アミノ−2−メチル−1−ナフトールおよび2−アミノ−3−クロロ−1,4−ナフトキノンが含まれる。本発明の好ましい態様によれば、本発明のプロピオン酸菌による乳清発酵物には、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸が含まれる。
本発明に用いられるプロピオン酸菌による乳清発酵物は、これをそのまま、ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物とすることができる。
本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物は、プロピオン酸菌による乳清発酵物以外に、経口上許容可能な他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、賦形剤、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤等の添加剤等が挙げられる。本発明の好ましい態様によれば、本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物は、ラクトバチルス属乳酸菌のエサとなる機能性糖質(例えば、オリゴ糖や食物繊維)を含んでなる。ラクトバチルス属乳酸菌のエサとなる機能性糖質を含むことにより、腸管内に残るラクトバチルス属乳酸菌のエサとなり、増殖を促進することができる。
また、本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物の形態は、特に限定されず、固形状(粉末状、錠剤状等)、液状(ドリンク剤状等)、半液状のいずれであってもよいが、粉末状、錠剤状または液状が好ましい。このような形態の市販品としては、粉末状である明治B.G.S. POWDER(ビー・ジー・エス・パウダー)(株式会社明治製)、錠剤状であるおなか活力タブレット(株式会社明治製)、液状であるYHフローレ(株式会社明治製)等が挙げられる。
本発明の好ましい態様によれば、本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物には、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸、タンパク質、炭水化物(例えば、糖質、食物繊維)、場合によって、ビタミンおよび/またはミネラル(例えば、ナトリウム、カルシウム、リン、マグネシウム、カリウム)が含まれる。好ましい態様によれば、本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物1.5g中には、1,4−ジヒドロキシ−2−ナフトエ酸が0.01〜1000μg含まれ、より好ましくは0.1〜100μg、さらに好ましくは0.5〜50μg含まれる。
本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物を摂取すると、抗菌薬を投与される対象における腸管内のラクトバチルス属乳酸菌の減少を効果的に抑制することができる。腸管内ラクトバチルス属乳酸菌の減少抑制効果は、実施例の例1に記載のように、抗菌薬投与される対象における腸管内のラクトバチルス属菌数を定量し、本発明の組成物を摂取した群と摂取しない群での、菌数を指標とした比較試験により評価することができる。かかる比較試験では、摂取しない群と比較して本発明の組成物を摂取した群ではラクトバチルス属菌数が有意に高く、かつ、抗菌薬投与前よりラクトバチルス属菌数が増加している場合、本発明の組成物は、強いラクトバチルス属乳酸菌の減少抑制活性を有するものとされる。
また、本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物は、プロピオン酸菌による乳清発酵物を含むことから、さまざまな食材と相性がよく、安全に、かつ簡易に摂取することができる。
本発明の一つの態様によれば、本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物は、ラクトバチルス属の生きた菌と、同時または順次投与することが好ましい。本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物と、プロバイオティクスとしてラクトバチルス属の生きた菌とを同時または順次摂取すれば、抗菌薬を投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌の菌数を増加することができ、腸内細菌叢のバランスをより良好にすることができる。
本発明の一つの態様によれば、本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物は、プロピオン酸菌による乳清発酵物が抗菌薬を投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌の減少を抑制するための有効量となるように、1日の摂取量単位の形態から構成されることが好ましい。本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物における上記単位は、一日当たりの摂取量(投与量)が、プロピオン酸菌による乳清発酵物の乾燥質量換算として、0.15〜200mg/kg体重となるように摂取されることが望ましく、好ましくは0.65〜120mg/kg体重、より好ましくは1.15〜70mg/kg体重、さらに好ましくは1.5〜20mg/kg体重となるように摂取される。ここで、対象の代表的な体重は、60kgと見積もっている。
さらに、本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物は、1回の摂取量単位で包装された形態で提供することが好ましい。1回の摂取量当たりの単位包装形態としては、パック、容器等で一定量を規定する形態が挙げられ、それらの表面には1回の摂取量の成分表示、および、腸管内ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制等の用途表示を付していてもよい。かかる単位包装形態の好適な例としては、サプリメント、医薬製剤等が挙げられる。
本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物を対象に摂取させる方法(あるいは投与する方法)は、本発明の効果を妨げない限り特に限定されず、経口摂取(あるいは経口投与)、経管投与、経腸投与、胃ろうなどから、その対象および用途により、適宜選択することができる。
本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物は、抗菌薬を投与する前の対象に摂取させてもよいし、抗菌薬を投与中の対象に摂取させてもよいし、抗菌薬を投与後の対象に摂取させてもよい。好ましくは、本発明の組成物は、抗菌薬を投与する前の対象に摂取させる。抗菌薬を投与する前の期間は、本発明の組成物の摂取期間が長くなればなるほど、プロピオン酸菌による乳清発酵物によって腸内細菌叢のバランスが改良されることを考慮すれば、好ましくは投与前1日間、より好ましくは3日間、さらに好ましくは投与前5日間である。また、本発明の組成物を投与中の対象に摂取させる場合、本発明の組成物は、抗菌薬と同時に対象に摂取させてもよいし、好ましくは72時間以内、より好ましくは24時間以内に順次摂取させてもよい。
また、本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物の摂取計画は、特に限定されず、対象の年齢、性別、症状および状態に応じて当業者が適宜設定することができる。例えば、対象に対して、1回の経口摂取量単位を1日当たり1〜10回投与してもよいが、好ましくは1日当たり1〜3回、より好ましくは1回摂取させることが好ましい。また、本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物は、食事とともに摂取することができる。
本発明の一つの実施態様によれば、本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物は、そのまま単独で使用することができるが、抗菌薬を投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制機能が発揮される限りにおいて、食品や医薬品などの種々の経口摂取用(経口投与用)の組成物に対して、原料(素材)や添加剤などとして含ませることもでき、抗菌薬を投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制効果を有する組成物(例えば、医薬組成物や食品組成物)を得ることができる。本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物は、食事に添加しても味を損なわせるものではないため、通常の食事に添加したり、飲料に添加したりして、簡易に摂取することができる。
本発明の好ましい態様によれば、プロピオン酸菌による乳清発酵物を含んでなる、抗菌薬投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用食品が提供される。「食品」(食品組成物)の形態は、溶液、懸濁液、乳濁液、粉末、固体成形物など、経口摂取可能な形態であればよく、特に限定されない。具体的には、即席麺、レトルト食品、缶詰、電子レンジ食品、即席スープ・みそ汁類、フリーズドライ食品などの即席食品類;清涼飲料、果汁飲料、野菜飲料、豆乳飲料、コーヒー飲料、茶飲料、粉末飲料、濃縮飲料、アルコール飲料などの飲料類;パン、パスタ、麺、ケーキミックス、パン粉などの小麦粉製品;飴、キャラメル、チューイングガム、チョコレート、クッキー、ビスケット、ケーキ、パイ、スナック、クラッカー、和菓子、デザート菓子などの菓子類;ソース、トマト加工調味料、風味調味料、調理ミックス、たれ類、ドレッシング類、つゆ類、カレー・シチューの素類などの調味料;加工油脂、バター、マーガリン、マヨネーズなどの油脂類;乳飲料、発酵乳(ヨーグルトなど)、乳酸菌飲料、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ類、アイスクリーム類、クリーム類などの乳製品;農産缶詰、ジャム・マーマレード類、シリアルなどの農産加工品;冷凍食品、流動食などが挙げられる。
また、食品には、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品、病者用の食品、乳幼児用の調整粉乳、妊産婦用もしくは授乳婦用の粉乳、または抗菌薬を投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制のために用いられる物である旨の表示を付した食品のような分類のものも包含される。
本発明の別の態様によれば、プロピオン酸菌による乳清発酵物を含んでなる、抗菌薬投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用医薬品が提供される。「医薬品」(医薬組成物)とは、製剤化のために許容されうる添加剤を併用して、常法に従って、経口製剤または非経口製剤として調製したものである。医薬品が経口製剤の場合には、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、丸剤、徐放剤などの固形製剤、溶液、懸濁液、乳濁液などの液状製剤の形態をとることができる。また、医薬品が非経口製剤の場合には、注射剤や座剤の形態をとることができる。なお、患者への摂取(投与)の簡易性の点からは、医薬品では、経口製剤であることが好ましい。ここで、製剤化のために許容されうる添加剤には、例えば、賦形剤、安定剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤などが挙げられる。本発明の医薬品は、抗菌薬投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌の減少抑制を必要とする疾患、具体的には、抗菌薬の投与による便秘、下痢、吐き気、頭痛などの副作用の症状の治療または予防に用いることができる。
本発明のラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物は、プロピオン酸菌による乳清発酵物を、所望により経口上許容な他の成分と共に混合して簡易に製造することができる。したがって、本発明の別の態様によれば、プロピオン酸菌による乳清発酵物の有効量を組成物中に含有させることを特徴とする、抗菌薬投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物の製造方法が提供される。
また、本発明の別の態様によれば、抗菌薬を投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌の減少抑制方法であって、プロピオン酸菌による乳清発酵物の有効量を上記対象に摂取させることを含んでなる方法が提供される。ここで、本発明の別の好ましい態様によれば、腸管内ラクトバチルス属乳酸菌の減少抑制方法はヒトに対する医療行為を除くものとされる。ここで、「ヒトに対する医療行為」とは、医師等の処方を必要として、ヒトに対して医薬品を摂取させる(投与する)行為などを意味する。また、上記実施態様において、対象は好ましくは健常者である。
また、本発明の腸管内ラクトバチルス属乳酸菌の減少抑制方法は、抗菌薬を投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌の減少に関連した疾患または状態の改善に用いてもよい。従って、本発明の腸管内ラクトバチルス属乳酸菌の減少抑制方法は、抗菌薬投与により生じる腸管内ラクトバチルス属乳酸菌の減少に関連した疾患または状態の改善方法であり、より好ましくは便秘、下痢、吐き気およびそれに伴う頭痛の改善方法である。ここで、「改善」とは、確立された疾患または状態を治療することだけでなく、将来確立される可能性のある疾患または状態を予防することをも含む。
抑制方法において、プロピオン酸菌による乳清発酵物の有効量は、上述した組成物における1回の摂取量単位と同様とすることができる。
本発明の一つ実施態様によれば、抗菌薬を投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制のための、プロピオン酸菌による乳清発酵物の使用が提供される。本発明の一つの好ましい実施態様によれば、本発明の使用は、非治療的使用とされる。
本発明の一つの実施形態によれば、抗菌薬を投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物の製造のための、プロピオン酸菌による乳清発酵物の使用が提供される。本発明の一つの好ましい実施態様によれば、該使用は、ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用食品または医薬品の製造のための使用である。
本発明の一つの実施態様によれば、抗菌薬を投与される対象における腸管内ラクトバチルス属乳酸菌の減少を抑制するための、プロピオン酸菌による乳清発酵物が提供される。
本発明を以下の例によって詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
例1:組成物の調製(プロピオン酸による乳清発酵物の調製)
スターターとして、生菌数が10〜10cfu/mLとなるように、プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ ET−3(Propionibacterium freudenreichii ET-3)(寄託番号:FERM BP−8115)を、10質量%ホエイ粉還元液をプロテアーゼ アマノA(天野製薬株式会社)で50℃、pH7.0で分解して得られた分解物からなる培地に摂取し、35℃、pH6.0で、75時間培養した。得られた培養上清を、殺菌し、凍結乾燥した。凍結乾燥物0.2gに対して、ブドウ糖、食物繊維含有デキストリンを添加して、総量1.5gの調製物とした。該組成物には、タンパク質が0.03g、脂質が0g、炭水化物として糖質が0.6g、食物繊維が0.8g、ナトリウムが2.6mg、カルシウムが1.0mg、リンが1.3mg、マグネシウムが0.2mg、カリウムが15.8mg含まれていた。
得られた調製物を、本発明の組成物として用いた。調製物は、1.5g単位のアルミ個装とした。
例2:臨床試験
(1)試験対象
臨床試験は対照群と組成物投与群の2群に分けて実施した。両群の試験の被験者は、いずれも大阪府三島救命救急センターに搬入された重症患者(脳出血、外傷、脳梗塞の患者)である。被験者は原則、入院時に経管栄養で管理し、鼻腔よりチューブを挿入して胃に留置した。また、原則、抗菌薬は、試験開始後1週間以内に投与を開始した。なお、抗菌薬は、患者の有していた疾患、状態に応じて、JAID/JAS感染症治療ガイド2014(JAID/JAS感染症治療ガイド・ガイドライン作成委員会編集)に記載の手法に従い、下記表1に挙げられる抗菌薬から選択して投与した。
Figure 0006918465
対照群と組成物投与群
対象群では、流動食を2週間投与した。流動食としては、メイバランスHPまたはMEIN(株式会社明治)の2種類から選択される少なくとも1種類を用いた。これらには、腸管内細菌叢に対して影響を与える成分、特にラクトバチルス属乳酸菌を減少させる成分は含まれない。一方、組成物投与群では、流動食に例1で得られた組成物(2包/日(3g/日))を添加したものを2週間投与した。対照群は46名、組成物投与群は14名であった。なお、対照群の内1名は、2週間の試験期間中に抗菌薬非投与であったため、この1名を除外して解析を行った。従って、解析人数は、対照群が45名、組成物投与群が14名である。
解析した対照群と組成物投与群の患者背景および抗菌薬投与日数の結果を下記表2に示す。
Figure 0006918465
表2に示されるように、抗菌薬投与日数は対照群11.5±3.2日、組成物投与群11.8±2.9日と両群間でほとんど差はなかった。また、男女比とAPACHE IIもほとんど差が見られなかった。
(2)糞便中の菌叢の解析
糞便採取
対照群および組成物投与群では、それぞれ、試験開始(流動食投与)前(0日目)、試験開始後3日目、試験開始後7日目(1週間)、試験開始後14日目(2週間)に糞便採取を実施した。
糞便中の菌叢の解析
採取した糞便は、採取後速やかに−20℃以下に保存した。患者の糞便から糞便中の菌叢DNAを、Multi−Beads Shocker(安井機械株式会社)を用いてQIAamp DNA stool Mini Kit(QIAGEN社)の方法に準じて抽出した。また、リアルタイムPCRの反応は、QuantiTect SYBR Green RT−PCR(QIAGEN社)を用いて、下記表3に記載のプライマーを用いて、95℃、15秒間→(94℃、15秒間→各プライマーのアニーリング温度、30秒間→72℃、30秒間)×30〜55サイクルにて、ラクトバチルス属乳酸菌数、ビフィズス菌数および総菌数をABI 7300 Real Time PCR System(Applied Biosystems社)により定量した。菌数は糞便1g当りの菌数の対数値で表記した。
Figure 0006918465
各群内の前後比較は対応のあるt検定で解析した。また、対照群と組成物投与群の2群間の解析は、対照群と組成物投与群の試験結果を比較することで評価し、Students’ t test(等分散)またはWelch test(不等分散)により解析した。
結果を図1〜4に示す。
図1は、対照群の糞便中の総菌数とラクトバチルス属菌数の変化を示したグラフである。図1の対照群では、試験開始後3日目以降で総菌数とラクトバチルス属の菌数ともに試験開始時に比べて有意に減少した。
図2は、組成物投与群の糞便中の総菌数とラクトバチルス属菌数の変化を示している。図2の組成物投与群では、試験開始前に比べて試験期間中ラクトバチルス属菌数に有意な減少はみられなかった。一方、総菌数は、試験開始前に比べて試験開始後7日目で有意に減少したが、3日目と14日目では有意差はなかった。
図3では、対照群および組成物投与群の糞便中の総菌数とラクトバチルス属菌数を比較している。図3のラクトバチルス属菌数をみると、対照群および組成物投与は、試験開始時ではほとんど相違はなかったが、試験開始後3日目以降組成物投与群と比較して対照群の方が有意に減少している。一方、試験期間中の総菌数は両群間で有意な変化は見られなかった(図3)。このように、抗菌薬を投与すると腸管内のラクトバチルス属菌数が減少するが、抗菌薬投与前あるいは投与中に、本発明の組成物を投与すると、腸管内のラクトバチルス属菌数の減少が抑制されることが確認された。
図4は、対象群および組成物投与群の糞便中のビフィズス菌数を比較したグラフである。図4のビフィズス菌数は、対照群と組成物投与群ともに、試験開始後3日目以降、試験開始時に比べて有意に減少した。また、対照群と組成物投与群のビフィズス菌数を比較した結果、両群間で有意な変化は見られなかった。

Claims (9)

  1. プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)による乳清発酵物を含んでなる、
    抗菌薬を投与されている対象または抗菌薬を投与された対象における、腸管内ラクトバチルス属乳酸菌減少抑制用組成物。
  2. 前記対象が、ヒトである、請求項1に記載の組成物。
  3. 記プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)が、ビフィズス菌増殖促進物質産生菌である、請求項1または2に記載の組成物。
  4. 前記プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)がプロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ ET3(Propionibacterium freudenreichii ET3;寄託番号:FERM−BP−8115)である、請求項3に記載の組成物。
  5. 前記抗菌薬の投与による便秘、下痢、吐き気、もしくは頭痛からなる症状の治療用または予防用である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
  6. 前記抗菌薬が、ペニシリン系抗菌薬、セフェム系抗菌薬、セファロスポリン系抗菌薬、カルバペネム系抗菌薬、β−ラクタマーゼ阻害剤、オキサゾリジノン系抗菌薬、ニューキロノン系抗菌薬、およびマクロライド系抗菌薬から選択される少なくとも1つのものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
  7. 一日当たりの投与量が、前記プロピオニバクテリウム・フロイデンライヒ(Propionibacterium freudenreichii)による乳清発酵物の乾燥質量換算として、0.15〜200mg/kg体重である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
  8. 食品組成物または医薬品組成物である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
  9. 粉末状、液状、または錠剤状の形態である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
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