JP6917984B2 - 培地、アルブミン非含有培地用添加剤および多能性幹細胞の培養方法 - Google Patents

培地、アルブミン非含有培地用添加剤および多能性幹細胞の培養方法 Download PDF

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Description

本発明は、多能性幹細胞を無血清培養するための培地に関する。更に詳細には、本発明は、未分化性および多能性(以下、多分化能ともいう。)を維持しつつ増殖する多能性幹細胞を安定して無血清培養するための培地に関する。
また、本発明は、未分化性および多能性を維持しつつ増殖する多能性幹細胞を安定して無血清培養するためのアルブミン非含有培地用添加剤に関する。さらに、本発明は、多能性幹細胞の多能性を維持しながら増殖させる無血清培養方法に関する。
ヒト人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cells:iPS細胞)は、体細胞に3〜4因子の遺伝子等を導入することにより誘導できる細胞である。ヒトiPS細胞を含む多能性幹細胞は無限増殖の能力を有し、体内の殆ど全ての細胞に分化する能力(多能性)をもつ。この特性から、多能性幹細胞から生体組織を生体外で人工的に作製し、移植することにより、これまで治療が困難であった疾患に対する細胞治療、再生医療への応用が期待されている。また、入手困難なヒト細胞の代替として多能性幹細胞を使用できる可能性があり、新規薬剤のスクリーニング、薬効等の評価、化学物質等の毒性評価、発生機構解明または遺伝子変異と疾患との関連の解明などへの応用が期待されている。
多能性幹細胞の培養は、既知組成からなる無血清培地で培養することが望ましい。一般的に、多能性幹細胞の培養は、代替血清因子KSR(knockout−serum replacement)および線維芽細胞増殖因子−2(FGF−2)を添加した培地と、マウス胎児組織由来線維芽細胞等をフィーダー細胞として用いて行う。または、フィーダー細胞を用いず、マトリジェル、ビトロネクチン、ラミニン若しくはファイブロネクチンなどの細胞外マトリックスまたはその組換えタンパク質などをコーティングして、フィーダー細胞等の培養上清にFGF−2等を添加した培地で培養されている。これらの培養では、異種由来成分または異種細胞が混入し、未知成分が未知の濃度で混入してしまう。
KSRは無血清であると言われているが、ロット差のある動物由来成分を含み、その組成は公開されていない。さらに、フィーダー細胞やマトリジェルに関してもロット差があり、異種細胞が混入する可能性も懸念される。このように異種由来成分または異種細胞が混入すると、培養が不安定となる要因となり、さらに人畜共通のウイルスや病原体による感染や異種抗原となり得るため、培養中から除かれることが好ましい。
そのため、現在では、多能性幹細胞を安全に培養するために、ビトロネクチン、ラミニン若しくはファイブロネクチンなどの細胞外マトリックス成分またはその組換え体を足場材料として用い、培地として、その構成成分のすべてが既知である無血清培地chemically defined serum−free mediumが用いられている。当該培地としては、例えば、TeSR1培地、TeSR−E8培地、STEMPRO培地またはhESF−FX培地などが挙げられる。
これらの培地の主な組成は、高グルコース含有DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s medium)またはDMEM/F12(DMEMとF12培地を1:1で混合した培地)を基礎培地として、無機塩類、アミノ酸、ビタミン、糖類および微量成分を含み、さらにインシュリン、トランスフェリン、アルブミン、脂質群等、増殖因子等またはメルカプトエタノール等を加えたものとなっている。
これらの培地添加成分の中でも、アルブミン、特にヒト由来アルブミン、あるいはリコンビナントアルブミンは高価であり、メーカーや由来によって生物活性が異なり、培地が安定しない要因となりうる。また、ウシ由来アルブミンも、メーカーやロットにより生物活性が異なり、病原体の混入の可能性があり、医療応用する場合には、生物由来起源の確認が必要となるため高価となる。さらに、アルブミンは培地中の添加因子を抱合してその効果を減弱させる作用を有するため、アルブミンが培地に含まれていると、該添加因子の影響を高感度に検出しにくい。したがって、アルブミンを蛋白質以外の成分で代替するか、または培地から除去することが望ましい。
ほ乳動物由来細胞株を培養した例ではあるが、アルブミンを蛋白質以外の成分で代替した培地として以下のものが知られている。
特許文献1には、組換え蛋白質を持続的に産生するほ乳動物由来細胞株を培養するための培地であって、実質的にタンパク質成分を含まない培地が開示されている。特許文献1には、アルブミン代替物として、α−シクロデキストリンと不飽和脂肪酸、脂溶性ビタミンとの抱接化合物が例示されている。また、プルロニック系非イオン性界面活性剤であるPluronic(登録商標)F−68と脂溶性因子とのマイクロエマルジョンの添加によってもほ乳動物由来細胞株の培養が可能であることが開示されている。
特許文献2には、タンパク質を含まない培地中で動物細胞を培養し、組換えタンパク質を製造する方法が開示されており、該特許文献には、Pluronic(登録商標)F−68が補充された培地中で組換えタンパク質を生産する方法が開示されている。
特許文献3には、動物細胞または組織細胞を培養するための培地に、アルブミン代替物としてポリエチレングリコールを用いることが開示されている。
幹細胞を培養した例では、アルブミンを蛋白質以外の成分で代替した培地として、非特許文献1には、胚性幹細胞(embryonic stem cell:ES細胞)の培養用培地に、アルブミン代替物としてポリビニルアルコールを添加することが開示されている。
一方、非特許文献2には、Pluronic(登録商標)F−68は、間葉系幹細胞(Mesenchymal stem cell)の分化を促進することが開示されている。
日本国特許第2696001号公報 日本国特許第4257685号公報 日本国特開2004−135672号公報
Ludovic Vallier et. al., PLoS ONE, volume 4, e6082 (2009) Dogan et al., International Journal of Nanomedicine 2012:7 4849-4860
しかしながら、これらのいずれの文献においても、アルブミンを含有しない培地にプルロニック系非イオン性界面活性剤、動物系加水分解物および非動物系加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1つを添加することにより、多能性幹細胞を、その未分化性および多能性を維持しつつ培養し得ることについては記載も示唆もされていない。
また、従来の公知の培地では、多能性幹細胞をその未分化性および多能性を維持したまま培養できているものの、コストが高く、ロットが安定しない場合が多くある。特に、培地成分であるヒト由来やリコンビナントのアルブミン、生物由来起源が確認できるウシアルブミンは高価である。更にメーカー、由来、輸送経路によって生物活性が異なり、培地が安定しない要因となり得る。
したがって、本発明は、多能性幹細胞の未分化性および多能性を維持し得る、多能性幹細胞を安定且つ安価に無血清培養するためのアルブミン非含有培地を提供すること、多能性幹細胞を安定且つ安価に無血清培養するためのアルブミン非含有培地に対する添加剤を提供すること、および多能性幹細胞の未分化性および多能性を維持しながら安定且つ安価に増殖させる無血清培養方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、プルロニック系非イオン性界面活性剤、動物系加水分解物および非動物系加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1つを用いることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(10)に関する。
(1)プルロニック系非イオン性界面活性剤、動物系加水分解物および非動物系加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有し、且つアルブミンを含有しない、多能性幹細胞を無血清培養するための培地。
(2)さらに脂質混合物および水溶性オレイン酸の少なくとも一方を含有する(1)に記載の培地。
(3)プルロニック系非イオン性界面活性剤が、Pluronic(登録商標)F−68である(1)または(2)に記載の培地。
(4)非動物系加水分解物がEX−CELL(登録商標)CD HydrolysateFusion(シグマ−アルドリッチ社製)である(1)〜(3)のいずれか1に記載の培地。
(5)プルロニック系非イオン性界面活性剤、動物系加水分解物および非動物系加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有する、多能性幹細胞を無血清培養するためのアルブミン非含有培地用添加剤。
(6)さらに脂質混合物および水溶性オレイン酸の少なくとも一方を含有する(5)に記載のアルブミン非含有培地用添加剤。
(7)非動物系加水分解物がEX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusion(シグマ−アルドリッチ社製)である(5)または(6)に記載のアルブミン非含有培地用添加剤。
(8)プルロニック系非イオン性界面活性剤、動物系加水分解物および非動物系加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有し、且つアルブミンを含有しない無血清培地中で多能性幹細胞を培養することにより、多能性幹細胞の多能性を維持しながら多能性幹細胞を増殖させる、多能性幹細胞の培養方法。
(9)無血清培地が、さらに脂質混合物および水溶性オレイン酸の少なくとも一方を含有する培地である、(8)に記載の培養方法。
(10)非動物系加水分解物がEX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusion(シグマ−アルドリッチ社製)である(8)または(9)に記載の培養方法。
本発明の培地、アルブミン非含有培地用添加剤および培養方法によれば、プルロニック系非イオン性界面活性剤、動物系加水分解物および非動物系加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有することにより、培地に血清由来成分、アルブミンおよびその組換え体を添加することなく、多能性幹細胞を培養し、その未分化性および多能性を維持しつつ、安定且つ安価に増殖させることができる。
本発明の培地、アルブミン非含有培地用添加剤および培養方法によれば、既知組成からなる無血清培養による多能性幹細胞の増殖が可能であり、種々の研究または再生医療等において役立ち、血清等のほ乳動物由来成分を使用する際に生ずる需要者の不安を取り除き、安全性の高い医療を提供することが可能である。
また、上記したように、アルブミンには添加因子を抱合してその効果を減弱させる作用があるが、アルブミンを含有しない本発明の培地、およびアルブミン非含有培地用添加剤によれば、高感度な該添加因子の影響の検出が可能となる。したがって、本発明の培地およびアルブミン非含有培地用添加剤は、低分子化合物などの薬効、毒性評価またはスクリーニングなどにも有用である。
1.培地
本発明は、プルロニック系非イオン性界面活性剤、動物系加水分解物および非動物系加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有し、且つアルブミンを含有しない培地(以下、「本発明の培地」ともいう。)に関する。
本発明の培地は、多能性幹細胞を無血清培養するために用いられるものであり、本明細書において、「幹細胞」とは、自分と同じ細胞を作る自己複製能と、多分化能を有する細胞のことをいう。
幹細胞には階層(hierarchy)があり、上位の未分化の幹細胞は自己複製能が高く、さまざまな細胞系列に分化できる多能性も高いが、下位になるほど自己複製能は失われていき特定の細胞系列にしか分化できないようなることが知られている。
本発明の培地で主として培養しようとする細胞は、階層的には比較的上位に位置する細胞、すなわち、未分化状態であって、多能性が充分保持された自己複製可能な幹細胞(多能性幹細胞)である。多能性幹細胞の由来は、ヒト由来であっても非ヒト動物由来であってもよい。
多能性幹細胞とは、三胚葉(外胚葉、中胚葉および内胚葉)に属する分化細胞に分化する能力(多分化能、多能性ともいう)のある自己複製可能な幹細胞のことをいう。
多能性幹細胞としては、例えば、胚性生殖細胞(Embryonic Germ Cell:EG細胞)、胚性癌細胞(Embryonal Carcinoma Cell:EC細胞)、胚性幹細胞(Embryonic Stem Cell:ES細胞)、人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cell:iPS細胞)および成体多能性幹細胞(Adult Pluripotent Stem Cell:APS細胞)などが挙げられる。
本明細書において、「多能性」とは、多分化能とも言い換えることができるが、外胚葉、中胚葉および内胚葉に属するいずれの分化細胞にも分化しうる能力をいい、生殖細胞への分化能もここでは包含されうる。なお、分化細胞は、体内の組織や臓器を構成する多種類の細胞である。
本明細書中において、「無血清培養」とは、血清を用いない培養であることを意味する。したがって、本明細書において提供される培地は、血清を用いずとも、未分化の多能性幹細胞の未分化性と多能性とを維持しつつ、多能性幹細胞の増殖を可能とする培養であることを意味する。
本発明の培地に用いられるプルロニック系非イオン性界面活性剤とは、親水性のエチレンオキシド(EO)と疎水性のプロピレンオキシド(PO)とのトリブロック共重合型の非イオン界面活性剤を意味する。
プルロニック系非イオン性界面活性剤としては、例えば、Pluronic(登録商標)F−61、Pluronic(登録商標)F−68、Pluronic(登録商標)F−71およびPluronic(登録商標)F−108などが挙げられ、この中でも、Pluronic(登録商標)F−68が好ましい。
本発明の培地におけるプルロニック系界面活性剤の含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.005質量%以上であり、さらに好ましくは0.01質量%以上である。また、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
プルロニック系界面活性剤の含有量を前記範囲とすることにより、多能性幹細胞の未分化性および多能性を効率よく維持でき、未分化性および多能性を維持した多能性幹細胞の接着と増殖に有効である。また、細胞毒性がなく、未分化性および多能性を維持した多能性幹細胞数を増加させることができる。
本発明の培地に用いられる動物系加水分解物としては、例えば、ミート加水分解物、およびミルク由来などのほ乳類由来カゼイン加水分解物等が挙げられる。本発明の培地に用いられる非動物系加水分解物としては、例えば、ダイズ、コムギグルテン、イーストエキスまたは野菜由来加水分解物等が挙げられる。
動物系加水分解物または非動物系加水分解物は、その成分の全部または一部が、合成または発酵に由来するものに代替されていてもよい。
本発明の培地中で使用される、成分の一部が合成または発酵に由来するものに代替された動物系加水分解物としては、例えば、Casein Yeast Peptone(シグマ−アルドリッチ社製)が挙げられる。また、非動物系加水分解物としては、例えば、EX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusion(シグマ−アルドリッチ社製)が挙げられる。
本発明の培地における動物系加水分解物または非動物系加水分解物の含有量は、0.0001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.001質量%以上であり、さらに好ましくは0.005質量%以上である。また、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下である。
動物系加水分解物または非動物系加水分解物の含有量を前記範囲とすることにより、多能性幹細胞の未分化性および多能性を効率よく維持でき、未分化性および多能性を持った多能性幹細胞の接着と増殖に有効である。また、細胞毒性が減少し、未分化性および多能性を維持した多能性幹細胞数を増加させることができる。
本発明の培地においては、プルロニック系界面活性剤、動物系加水分解物および非動物系加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有し、これらのうち2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明の培地は、アルブミンを含有しないものである。アルブミンには天然由来のアルブミンおよびその組換え体も包含する。本明細書において、「含有しない」とは、「実質的に含有しない」ことであればよい。「実質的に含有しない」とは、悪影響を及ぼさない程度で含有することを包含する。
本発明の培地は、更に脂質混合物および水溶性オレイン酸の少なくとも一方を含有していてもよい。本明細書において、「脂質混合物」とは、多能性幹細胞を培養するのに必要とされる、規定された(例えば化学的に規定された)脂質組成物を意味する。脂質混合物は、通常、血清または血清代替物を含有しない培地に添加され、それにより、通常は血清または血清代替物の調合物に添加される脂質を代替するものである。
脂質混合物としては、例えば、Chemically Defined Lipid Concentrate(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、カタログ番号11905031)が挙げられる。
本発明の培地における脂質混合物の含有量は、0.00001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.00005質量%以上であり、さらに好ましくは0.0001質量%以上である。また、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。脂質混合物の含有量を前記範囲とすることにより、未分化性および多能性を維持した細胞数が増加し、その効果はアルブミン添加と同程度である。また、細胞毒性がなく未分化性および多能性を維持した細胞が増加する。
また、本発明の培地に水溶性オレイン酸を含有させる場合、その含有量は、0.01ng/ml以上であることが好ましく、より好ましくは0.1ng/ml以上であり、さらに好ましくは1ng/ml以上である。また、10μg/ml以下であることが好ましく、より好ましくは1μg/ml以下であり、さらに好ましくは100ng/ml以下である。水溶性オレイン酸の含有量を前記範囲とすることにより、未分化性および多能性を維持した細胞数が増加し、その効果はアルブミン添加と同程度である。また、水溶性オレイン酸の細胞毒性が消失し、未分化性および多能性を維持した細胞数が増加する。
本発明の培地には、更に培地基礎成分を含んでいてもよい。培地基礎成分とは、通常細胞が同化し得る炭素源、消化しうる窒素源および無機塩からなるものである。具体的には、例えば、無機塩類、アミノ酸、グルコースおよびビタミン類が挙げられる。また培地基礎成分には、必要に応じて微量栄養促進物質または前駆物質などの微量有効物質をさらに配合してもよい。
このような培地基礎成分としては、当業者に公知の基礎培地を使用することができ、例えば、MEM(Minimum Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)、EMEM(Eagle’s minimal essential medium)、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、GMEM(Glas−gow’s MEM)、F12(Ham’s F12 Medium)、DMEM/F12、RPMI1640、RD、BMOC−3(Brinster’s BMOC−3 Medium)、CMRL−1066、L−15培地(Leibovitz’s L−15 medium)、McCoy’s 5A、Media 199、MEM αMedia、MCDB105、MCDB131、MCDB153、MCDB201、Williams’ medium EおよびESFなどが挙げられる。
また、本発明の培地には、必要により、核酸、非必須アミノ酸または還元剤などを添加してもよい。さらに必要であれば、pH調整剤、緩衝剤成分、保湿剤、防腐剤または粘度調整剤等の任意成分を使用することもできる。
2.アルブミン非含有培地用添加剤
本発明は、プルロニック系非イオン性界面活性剤、動物系加水分解物および非動物系加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有することを特徴とする、多能性幹細胞を無血清培養するためのアルブミン非含有培地用添加剤(以下、「本発明の添加剤」ともいう。)に関する。
本発明の添加剤は、プルロニック系非イオン性界面活性剤、動物系加水分解物および非動物系加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有し、これらのうち2種類以上を組み合わせて用いることもできる。
本発明の添加剤は、従来公知の、アルブミンを含まない培地基礎成分に添加して、多能性幹細胞の未分化性および多能性を維持しつつ、多能性幹細胞を無血清培養するために使用することができる。
上述のように、本発明の添加剤は、従来公知の培地基礎成分に、プルロニック系非イオン性界面活性剤、動物系加水分解物および非動物系加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有させるものである。
プルロニック系非イオン性界面活性剤、動物系加水分解物および非動物系加水分解物については上述したものを使用することができる。
本発明の添加剤中の、上記プルロニック系非イオン性界面活性剤の含有量は、上記培地基礎成分に混合し、培地としたときの濃度が、0.001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.005質量%以上であり、さらに好ましくは0.01質量%以上である。また、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
本発明の添加剤中の、上記動物系加水分解物または非動物系加水分解物の含有量は、上記培地基礎成分に混合し、培地としたときの濃度が、0.0001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.001質量%以上であり、さらに好ましくは0.005質量%以上である。また、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下である。
本発明の添加剤には、更に脂質混合物および水溶性オレイン酸の少なくとも一方を含有させてもよい。脂質混合物としては上述したものを使用することができ、その含有量は、培地を作製した時に、0.00001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.00005質量%以上であり、さらに好ましくは0.0001質量%以上である。また、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。
また、本発明の添加剤に水溶性オレイン酸を含有させる場合、その含有量は、培地を作製した時に、0.01ng/ml以上であることが好ましく、より好ましくは0.1ng/ml以上であり、さらに好ましくは1ng/ml以上である。また、10μg/ml以下であることが好ましく、より好ましくは1μg/ml以下であり、さらに好ましくは100ng/ml以下である。
本発明の培地、または本発明の添加剤を用いて製造した培地により培養される細胞が未分化性および多能性を維持している細胞であるか否かを確認する方法としては、例えば、各種マーカー(タンパク質)に対する抗体を用いて、未分化マーカーの発現の検出および分化マーカーの発現の不検出の少なくとも一方により判定する方法、各種マーカー(遺伝子)の発現の検出により判定する方法、細胞の形態学的特徴を観察する方法、並びに特定の分化誘導因子の刺激により特定の細胞に分化する能力を発揮できるか否かを判定する方法が挙げられる。
前記マーカーを用いて判定する方法においては、NANOG、OCT3/4、SSEA−3、SSEA−4、TRA−2−54、TRA−1−60、TRA−1−80、CD90またはアルカリホスファターゼ等の未分化マーカーが発現している場合は、本発明の培地、または本発明の添加剤を用いて製造した培地により培養した細胞が未分化性および多能性を維持していると判断することができる。
前記未分化マーカーおよび分化マーカーの少なくとも一方の発現をタンパク質レベルで確認する場合には、例えば、各マーカーに対する特異抗体を用いて、フローサイトメトリー法、免疫染色法またはELISA等により確認することができる。前記マーカーの発現を遺伝子レベルで確認する場合には、例えば、各マーカー遺伝子に対する、特異的プライマー対を用いたRT−PCR若しくは特異的プローブを用いたノーザンブロッティングまたはトランスクリプト―ム解析等によって確認することができる。
前記フローサイトメトリー法によりマーカーの発現の有無を確認する方法としては、具体的には例えば、次の方法が挙げられる。本発明の培地、または本発明の添加剤を用いて製造した培地により培養した細胞を1mlの10%ヤギ血清中に30分間懸濁後遠心分離し、次に対象のマーカータンパク質に対するマウス抗体とともに30時間インキュベートし、その後当該培養細胞を、1%ヤギ血清を含有するPBSで3回洗浄し、蛍光標識(AlexaFluor)−結合化ヤギ抗マウスIgG抗体と30分間反応させ、1%ヤギ血清を含有するPBSで3回洗浄し、再懸濁した細胞を適切なフローサイトメトリー用機器を用いて判定することができる。
前記免疫染色法によりマーカーの発現の有無を確認する方法としては、具体的には例えば、次の方法が挙げられる。本発明の培地、または本発明の添加剤を用いて製造した培地により培養した細胞を、PBS中4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定後、複数回PBSにて洗浄後、10%ヤギ血清でブロッキングを行った後、対象マーカータンパク質に対するマウス抗体を用いて免疫染色し、蛍光標識(AlexaFluor)結合ヤギ抗マウスIgGと反応させ、蛍光顕微鏡観察により判定することができる。なお、マーカータンパク質が細胞質内にある場合には、トライトンXなどで培養した細胞の透過性を増加させて、抗体を用いて免疫染色を行う。
前記アルカリホスファターゼの発現の有無を確認する方法としては、具体的には例えば、次の方法が挙げられる。本発明の培地、または本発明の添加剤を用いて製造した培地により培養した細胞を、4.5mMクエン酸、2.25mMクエン酸ナトリウム、3mM塩化ナトリウム、65%メタノールおよび4%パラホルムアルデヒドで5分間固定し、蒸留水にて洗浄し、次にFastRed基質キット(シグマ社製)等の適当なキットを用い、アルカリホスファターゼを可視化する、いわゆるアルカリホスファターゼ染色することができる。
3.多能性幹細胞の培養方法
本発明は、プルロニック系非イオン性界面活性剤、動物系加水分解物および非動物系加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有し、且つアルブミンを含有しない無血清培地中で多能性幹細胞を培養することにより、多能性幹細胞の多能性を維持しながら多能性幹細胞を増殖させることを特徴とする、多能性幹細胞の培養方法(以下、「本発明の培養方法」ともいう。)に関する。
本発明の培養方法に用いられる培地としては、上記1の培地を使用することができる。上記1に記載のとおり、本発明の培養方法に用いられる培地には、プルロニック系非イオン性界面活性剤、動物系加水分解物および非動物系加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有し、且つアルブミンを含有しない。
本発明の培養方法に用いられる培地における、プルロニック系非イオン性界面活性剤の含有量は、0.001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.005質量%以上であり、さらに好ましくは0.01質量%以上である。また、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
本発明の培養方法に用いられる培地における、動物系加水分解物または非動物系加水分解物の含有量は、0.0001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.001質量%以上であり、さらに好ましくは0.005質量%以上である。また、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下である。
本発明の培養方法に用いられる培地には、更に脂質混合物および水溶性オレイン酸の少なくとも一方を含有させてもよい。脂質混合物としては上述したものを使用することができ、その含有量は、培地を作製した時に、0.00001質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.00005質量%以上であり、さらに好ましくは0.0001質量%以上である。また、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。
また、本発明の培養方法に用いられる培地に水溶性オレイン酸を含有させる場合、その含有量は、培地を作製した時に、0.01ng/ml以上であることが好ましく、より好ましくは0.1ng/ml以上であり、さらに好ましくは1ng/ml以上である。また、10μg/ml以下であることが好ましく、より好ましくは1μg/ml以下であり、さらに好ましくは100ng/ml以下である。
本発明の培養方法における培養は、通常33〜40℃、好ましくは34〜39℃、より好ましくは36〜37℃にて、通常1〜20%、好ましくは3〜15%、より好ましくは8〜10%の二酸化炭素の存在下で、通常75%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは100%の相対湿度下で行なうことが好ましい。
本発明の培養方法により培養した細胞が、未分化性および多能性を維持しているか否かを確認する方法としては、上記2に記載の方法を挙げることができる。
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
[実施例1]
公知の培地(mESF Basal Medium、和光社製)に、10μg/mlのインスリン(シグマ−アルドリッチ社製)、5μg/mlのアポ−トランスフェリン(シグマ−アルドリッチ社製)、0.01質量%のEX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusion(シグマ−アルドリッチ社製)を添加して、溶解させたものを培地として用いた。細胞としては、ヒトiPS細胞253G1株(京都大学iPS細胞研究所樹立、iPSアカデミアジャパンより入手)を用いた。
上記培地を、細胞培養用24穴プレート(住友ベークライト社製)に1mLずつ加え、上記細胞を、10%のCO存在下、37℃にて3日間培養した。培養した細胞について、4’,6−ジアミジノ−2−フェニリンドール(DAPI)で核を染色し、染色された細胞の数をIn cell analyzer(GEヘルスケア社製)を用いてカウントした。また、未分化マーカー遺伝子OCT3/4を発現している細胞のOCT3/4タンパク質を免疫染色し、同様にして、細胞数をカウントした。
その結果、0.01質量%のEX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusionを培地に添加した場合、添加しなかった場合に比べ、DAPIで染色された細胞数が1.28倍に、OCT3/4発現細胞数が1.33倍に増加していた。また、DAPIで染色された細胞数に対するOCT3/4発現細胞数の割合は、EX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusionを培地に添加しなかった試験区で74.4%、0.01質量%のEX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusionを培地に添加した試験区で77.2%であり、同等であった。
この結果から、非動物系加水分解物を含有し、且つアルブミンを含有しない無血清培地中で多能性幹細胞を培養することにより、多能性幹細胞の未分化性および多能性を維持しながら、多能性幹細胞を増殖できることがわかった。
[実施例2]
EX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusionに代え、0.05質量%のPluronic(登録商標)F−68(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いた以外、実施例1と同様にして、DAPIで染色された細胞数およびOCT3/4発現細胞数をカウントした。
その結果、0.05質量%のPluronic(登録商標)F−68を培地に添加した場合、添加しなかった場合に比べ、DAPIで染色された細胞数が1.22倍に、OCT3/4発現細胞数が1.20倍に増加していた。また、DAPIで染色された細胞数に対するOCT3/4発現細胞数の割合は、Pluronic(登録商標)F−68を培地に添加しなかった試験区で74.4%、0.05質量%のPluronic(登録商標)F−68を培地に添加した試験区で73.0%であり、同等であった。
上述したように、Pluronic(登録商標)F−68は、間葉系幹細胞の分化を促進するという報告(Dogan et al., International Journal of Nanomedicine 2012:7 4849-4860)がある。したがって、Pluronic(登録商標)F−68を含有し、且つアルブミンを含有しない無血清培地で多能性幹細胞であるiPS細胞を培養することにより、iPS細胞の分化が抑制されるという当該結果は、予期せぬものであった。
この結果から、プルロニック系非イオン性界面活性剤を含有し、且つアルブミンを含有しない無血清培地中で多能性幹細胞を培養することにより、多能性幹細胞の未分化性および多能性を維持しながら、多能性幹細胞を増殖できることがわかった。
[実施例3]
EX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusionに代え、0.2質量%の脂質混合物(Chemically Defined Lipid Concentrate、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、カタログ番号11905031)および0.05質量%のPluronic(登録商標)F−68(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を添加した培地を用いた以外は、実施例1と同様にして、DAPIで染色された細胞数およびOCT3/4発現細胞数をカウントした。
その結果、培地にPluronic(登録商標)F−68および脂質混合物を添加すると、Pluronic(登録商標)F−68のみを添加した場合と比べ、DAPIで染色された細胞数およびOCT3/4発現細胞数がともに1.09倍に増加していた。また、DAPIで染色された細胞数に対するOCT3/4発現細胞数の割合は、Pluronic(登録商標)F−68のみを添加した試験区で99.1%、Pluronic(登録商標)F−68および脂質混合物を添加した試験区で99.0%であり、同等であった。
この結果から、アルブミンを含有しない無血清培地に、プルロニック系非イオン性界面活性剤に加えてさらに脂質混合物を含有させた培地で多能性幹細胞を培養することにより、プルロニック系非イオン性界面活性剤を単独で該培地に含有させた場合と比較して、多能性幹細胞の未分化性および多能性を維持しながら、多能性幹細胞を増殖させる効果がより高まることがわかった。
[実施例4]
0.01質量%のEX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusionに代え、0.05質量%のPluronic(登録商標)F−68(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)および0.005質量%のEX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusion(シグマ−アルドリッチ社製)を添加した培地を用いた以外は、実施例1と同様にして、DAPIで染色された細胞数およびOCT3/4発現細胞数をカウントした。
その結果、培地にPluronic(登録商標)F−68およびEX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusionを添加すると、Pluronic(登録商標)F−68を単独で培地に添加した場合よりも、DAPIで染色された細胞数およびOCT3/4発現細胞数がともに1.09倍に増加していた。また、DAPIで染色された細胞数に対するOCT3/4発現細胞数の割合は、Pluronic(登録商標)F−68のみを添加した試験区、Pluronic(登録商標)F−68およびEX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusionを添加した試験区でともに99.1%であり、同等であった。
また、EX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusionを単独で培地に添加した試験区と比べた場合も、Pluronic(登録商標)F−68およびEX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusionを添加した試験区では、DAPIで染色された細胞数およびOCT3/4発現細胞数がともに増加していた。
この結果から、アルブミンを含有しない無血清培地に、プルロニック系非イオン性界面活性剤および非動物系加水分解物を含有させた培地で多能性幹細胞を培養することにより、プルロニック系非イオン性界面活性剤および非動物系加水分解物をそれぞれ単独で該培地に含有させた場合と比較して、多能性幹細胞の未分化性および多能性を維持しながら、多能性幹細胞を増殖させる効果がより高まることがわかった。
[実施例5]
EX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusionに代え、0.05質量%のPluronic(登録商標)F−68(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)および10ng/mLの水溶性オレイン酸を添加した培地を用いた以外は実施例1と同様にして、DAPIで染色された細胞数およびOCT3/4発現細胞数をカウントした。
その結果、培地にPluronic(登録商標)F−68および水溶性オレイン酸を添加すると、Pluronic(登録商標)F−68を単独で添加した場合よりも、DAPIで染色された細胞数およびOCT3/4発現細胞数がともに1.17倍に増加していた。また、DAPIで染色された細胞数に対するOCT3/4発現細胞数の割合は、Pluronic(登録商標)F−68のみを添加した試験区、Pluronic(登録商標)F−68および水溶性オレイン酸を添加した試験区でともに99.1%であり、同等であった。
この結果から、アルブミンを含有しない無血清培地に、プルロニック系非イオン性界面活性剤に加えて水溶性オレイン酸をさらに含有させた培地で多能性幹細胞を培養することにより、プルロニック系非イオン性界面活性剤を単独で該培地に含有させた場合と比較して、多能性幹細胞の未分化性および多能性を維持しながら、多能性幹細胞を増殖させる効果がより高まることがわかった。
上記の結果から、プルロニック系非イオン性界面活性剤、動物系加水分解物および非動物系加水分解物からなる群より選ばれる少なくとも1つを含有し、且つアルブミンを含有しない無血清培地で多能性幹細胞を培養することにより、多能性幹細胞の未分化性および多能性を維持しながら多能性幹細胞を増殖できることがわかった。また、該培地にさらに脂質混合物および水溶性オレイン酸の少なくとも一方を含有させることにより、多能性幹細胞の未分化性および多能性を維持しながら多能性幹細胞を増殖させる効果をより向上できることがわかった。
本発明を特定の態様を参照して詳細に説明したが、本発明の精神と範囲を離れることなく様々な変更および修正が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお、本出願は、2016年5月9日付けで出願された日本特許出願(特願2016−093922)に基づいており、その全体が引用により援用される。また、ここに引用されるすべての参照は全体として取り込まれる。

Claims (10)

  1. EX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusion(シグマ−アルドリッチ社製)を含有し、且つアルブミンを含有しない、多能性幹細胞を無血清培養するための培地。
  2. さらにプルロニック(登録商標)系非イオン性界面活性剤を含有する請求項1に記載の培地。
  3. さらに脂質混合物および水溶性オレイン酸の少なくとも一方を含有する請求項1または2に記載の培地。
  4. プルロニック(登録商標)系非イオン性界面活性剤が、Pluronic(登録商標)F−68である請求項2または3に記載の培地。
  5. EX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusion(シグマ−アルドリッチ社製)を含有する、多能性幹細胞を無血清培養するためのアルブミン非含有培地用添加剤。
  6. さらにプルロニック(登録商標)系非イオン性界面活性剤を含有する請求項5に記載のアルブミン非含有培地用添加剤。
  7. さらに脂質混合物および水溶性オレイン酸の少なくとも一方を含有する請求項5または6に記載のアルブミン非含有培地用添加剤。
  8. EX−CELL(登録商標)CD Hydrolysate Fusion(シグマ−アルドリッチ社製)を含有し、且つアルブミンを含有しない無血清培地中で多能性幹細胞を培養することにより、多能性幹細胞の多能性を維持しながら多能性幹細胞を増殖させる、多能性幹細胞の培養方法。
  9. 無血清培地が、さらにプルロニック(登録商標)系非イオン性界面活性剤を含有する培地である、請求項8に記載の培養方法。
  10. 無血清培地が、さらに脂質混合物および水溶性オレイン酸の少なくとも一方を含有する培地である、請求項8または9に記載の培養方法。
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