<第一実施形態>
以下、本発明の第一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は本実施形態に係る椅子の斜視図、図2は同正面図、図3は同右側面図、図4は同斜め下方斜視図である。また、図5は本実施形態に係る椅子を座から上の要素部品を取り除いた状態で示す斜視図、図6は同正面図、図7は同右側面図、図8は同平面図である。図9は図5の一部分解斜視図、図10は図9の更なる分解斜視図である。図11及び図12は椅子全体の動作説明図である。
これらの図面に示されるように、この椅子は、床面から立設される脚1と、この脚1の上方に配された座2および背3と、座2を昇降かつ回転自在に支持するために脚1に取付けられた脚支柱13と、脚支柱13の上端に固定され、脚支柱13と一体的に水平回転はするが座2の動作に追従して前後左右には動作しないように構成された支持基部4と、この支持基部4と座2との間に介在して座2を前後方向及び左右方向に動作可能に支持する動作機構5と、支持基部4に支持された肘取付部6と、動作機構5をカバーするための可動のカバー部材7とを具備する。
座2及び背3はこの実施形態では一体をなすもので、図5に示すように背座一体形のアウターシェル20の座対応部22に座構成要素2aが取り付けられ、背対応部23に背構成要素3aが取り付けられている。勿論、背3の前後傾動動作に対して座2が一定の比率で同方向に連動する背座シンクロロッキング構造のものであっても、座2の支持に本実施形態の支持機構5が適用できることは言うまでもない。
脚1は、キャスタ11に支持された脚羽根12を有し、その中心孔に脚支柱13をはめ込んだもので、この脚支柱13は下部外筒に対して上部支柱が相対回転可能に構成されているもので、図10等に示すように支持基部4が回転可能な上部支柱に取り付けられている。脚支柱13は昇降機構を構成する昇降機構本体であるガススプリング14であり、支持基部4を貫通した位置にガススプリング14の操作端14aが配置されている。
支持基部4は、底壁41、一対の前後壁42、一対の側壁43を舟形状をなすように一体的に設けた強度部材よりなるもので、底壁41が脚支柱に取り付けられている。
動作機構5は、座2および背3を一定範囲内で一定の軌跡に沿って各々複数の方向に移動可能に支持するもので、具体的には、前後方向及び左右方向に移動させることが可能な前後方向の動作部分5A及び左右方向の動作部分5Bからなる。動作機構5は単に座2および背3を移動させるだけでなく、座2を前後および左右に移動させながら荷重を支持する支持機構でもあり、以下、動作機構5は必要に応じて支持機構5とも称する。
支持機構5は、座2を左右方向に動作可能に支持する左右支持部51及び座2を前後方向に支持する前後支持部52を有する。
左右支持部51は、支持部材である支持基部4から下方に被支持部材である左右支持部分すなわち一対の軸51aを左右支持部材であるリンク部材51bを介して懸吊支持させたもので、一対の軸51aは左右方向へ揺動可能に支持される。この軸51aは支持基部4の下方に配置されている。すなわち、左右支持部分である一対の軸51aは左右支持部材であるリンク部材51bと連動し得るように接続している。
前後支持部52は、左右支持部分である一対の軸51aに接続部材53を介して取り付けられている。接続部材53は、前記一対の軸51aを取り付けた前後対をなすブラケット53aと、このブラケット53aの上方に支持基部4にオーバーハングするように取り付けた下向きに開口する箱体状の揺動体53bとを備える。そして、この揺動体53bの前端部に前後支持部材であるカム面52aとカムフォロア52bを介して前後支持部分である座支持壁52cの前端部が支持され、後端部が前後支持部材であるリンク部材52dを介して前後支持部分である座支持壁52cの後端部が支持されている。すなわち、前後支持部分である座支持壁52cは支持基部4の上方に配置されている。また本実施形態では揺動体53bにカムフォロア52bを間接的に設ける一例として、揺動体53bの前端に固定された前側のブラケット53aの上端部分の板金素材を前方へ屈曲させ、当該屈曲部分にカムフォロア52bを軸着する態様を適用している。すなわち、前後支持部分である座支持壁52cは前後支持部材であるカム面52a、カムフォロア52b及びリンク部材52dと連動するように接続している。
そして、この座支持壁52cの上端に座2を取り付けている。
左右支持部51のリンク部材51bは、基準位置で上方に向けて拡開した形状をなしていることにより、基準位置から左右支持部分である軸51aが揺動するに伴って図6に基づいて後述するカバー部材72の中で図中矢印で示すように移動方向先端を下向きに傾斜させ、且つ、基準位置から変位するにつれて軸51a、51aの間の中心位置が高くなるように移動する。
また、前後支持部分である座支持壁52cは、基準位置で前下方に傾斜するカム面52aの中間位置をカムフォロア52bに前端部が支持され、基準位置で前下方に垂下するリンク部材52dに後端部が支持されるように設定されている。このため、図7に基づいて後述する前後カバー部材72の中で、基準位置から前後支持部分である座支持壁52cが前方に移動すると前端が下がって後端が上がり、後方に移動すると前端が上がって後端が下がり、且つ、基準位置から変位するにつれて座支持壁52cの中心位置が高くなるように移動する。
これにより、座2は前後方向に移動しながら左右方向にも移動でき、移動先端側から下方に傾斜し、基準位置から変位するにつれて座2の中心位置が高くなるように支持される。
肘取付部6は、支持基部4に一体に設けられたもので、先端6aを左右側方に引き出されている。
具体的には、脚支柱13の上部に取り付けられた支持基部4の上部より前後支持部52が位置し、支持基部4の上部より下方に左右支持部51が配置されているので、前後支持部52と左右支持部51の間には肘取付部6を引き出す空間が存在している。このため、肘取付部6は、前後支持部52及び左右支持部51と干渉しない状態で側方に引き出すことが可能となっている。
より具体的には、支持基部4に左右一対の支持部材であるリンク部材51bが垂下するように枢着され、このリンク部材51bに支持される左右支持部分である軸51aからブラケット53aを介して前後一対の支持部材であるカム面52a、カムフォロア52bおよびリンク軸52eが配置されている。そしてこれらカム面52a、カムフォロア52bおよびリンク部材52dに前後支持部分である座支持壁52cが取り付けられている。更にこの座支持壁52cには座2が取り付けてある。すなわち、リンク部材51bが支持基部4から垂下されることによってリンク部材51bの下端に位置付けられる左右支持部分である軸51aは支持基部4から下方に離れた位置に配置される。加えて、カム面52a、カムフォロア52bおよびリンク部材52dにより座支持壁52cは前後方向の動作時に揺動しながら略水平方向に動くことにより大きく上下動を行わないため、肘取付部6を引き出す空間と、座2を取り付けるための取付場所とが適切に確保されたものとなっている。
支持基部4には、固定カバー44が取り付けてある。この固定カバー44は、左右の固定側壁44aと、固定前壁44bと、固定後壁44cとを平面視枠体状に一体化して設けるとともに、固定側壁44a及び固定前壁44bの交差部と、固定側壁44a及び固定後壁44cの交差部とに亘って、側方に延出するように肘固定部44dが一体的に設けてある。具体的な取付手順は種々とり得るが、支持基部4が前固定カバー44の前記枠体状の空間内に配置され、肘取付部6が固定カバー44の側壁44aに設けた開口44a1を介して側方、かつ肘固定部44dの下方に密接する位置に突出して設けられる。
そして、この肘固定部44dの下面側に、前記ガススプリング14の操作端14aを操作するための図2に示す操作レバー14bが配してある。
そして、図6並びに図11に示すように、この肘取付部6に肘掛け8を着脱可能に取り付け得るようにしている。なお、肘掛け8は、肘取付部6の下方又は側方からボルト等の締結部材により固定される。
一方、可動のカバー部材7は、図10に示すように左右支持部51に取り付けられた左右カバー部材71と、前後支持部52に取り付けられた前後カバー部材72と、これら左右カバー部材71及び前後カバー部材72間に介在する補間カバー部材74とを有するものであり、これら前後カバー部材72、左右カバー部材71及び補間カバー部材74の組み合わせによって構成されている。そして、カバー部材71、72の各々が前記複数の動作部分5A、5Bの動作に応じて一定範囲内で互いに一定の軌跡に沿って相対的に異なる方向に移動する。
具体的には、左右カバー部材71は、略L字型をなす左右一対の起立壁71aを備えるもので、カバー取付部材73に取り付けられている。このカバー取付部材73は、前後一対の支持板73aと、支持板73a、73a間を接続する蓋板73bとを備え、支持板73aが前記左右支持部分たる軸51aとともにリンク部材51bの揺動端に揺動可能に取り付けられている。取付状態において、前後支持部分である座支持壁52cは前後カバー部材72の内側に配置され、座支持壁52cは前後カバー部材72とともに左右に揺動動作を行う。
そして図11に示すように、座支持壁52cの左右方向の揺動動作に伴い座支持壁52cに固定されている座2は背3とともに左右に揺動動作を行う。図11では座2が同図左側へ揺動動作を行った動作を図示しているが、同様に同図右側へも座2が動作し得ることはいうまでもない。
ここで、支持基部4に設けられた肘取付部6に着脱可能に取り付けられた肘掛け8は、座2の揺動動作に応じて動作することはない。また肘掛け8は、座2の左右方向への揺動動作の動作端においても座2に接触することがない形状に設定されている。
一方、前後カバー部材72は、起立する左右の側壁72aと、前壁72bと、後方に傾斜する後壁72cとを平面枠体状に接続した構造のもので、内側に左右カバー部材71を収容し得る空間を有している。この前後カバー部材72は、前記前後支持部分である座支持壁52cに取り付けられ、座支持壁52cとともに左右揺動および前後揺動を行いつつ、側壁72a及び前壁72bで前後支持部材であるカム面52a及びカムフォロア52bを目隠しし、側壁72a及び後壁72cで前後支持部材であるリンク部材52dを目隠しする。このために、側壁72aは逆L字形をなしている。そして図4に示すように、前壁72bの下端部分には、略水平に配された前底壁72b1が設けられている。この前底壁72b1が、常に補間カバー部材74の一部に接し得る。
他方、補間カバー部材74は、左右カバー部材71及び前後カバー部材72の間に介在するものである。具体的に説明すると、補間カバー部材74は、前側のカバー取付部材73の上端部に軸74aによって回転可能に係合することにより、前後方向に回動可能に取り付けられるものである。
左右カバー部材71の対向する側壁71a、71a間の開口及び前後カバー部材72の対向する側壁72a、72a間の開口が連なるところは、左右支持部51と前後支持部52を接続するための既述の接続部材53を配置する空間となっている。
図5及び図8において、前後カバー部材72の側壁72aは左右カバー部材71の側壁71aに近接しているが、前後カバー部材72は左右カバー部材71とともに左右に揺動するため、この隙間は維持される。一方、左右カバー部材71は前後揺動せず、前後カバー部材72が前後揺動するため、前後カバー部材72の前壁72bと左右カバー部材71の側壁71aの前端との間、及び、前後カバー部材72の後壁72cと左右カバー部材71の側壁71aの後端との間には、それぞれ相対動作によって干渉しない程度の隙間が設けてある。
これによりカバー部材7は、左右カバー部材71及び前後カバー部材72が互いに隙間を介して近接しながら相対動作する。
このように、カバー部材71、72は座2の動作に追従して動作しつつ、支持機構5をカバーすることができる。すなわち、座2の左右方向の移動に対しては、支持機構5を構成する左右支持部51が左右方向に揺動するに伴い、カバー部材71、72が図6に矢印で示すように同じく左右方向に揺動しながら、支持機構5をカバーする。このとき、前後カバー部材72は、側壁72aの下方に凹部72a1が設けてあり、前後カバー部材72が左右に揺動しても支持基部4の構成要素との干渉が回避されている。また、図10に示すように、左右カバー部材71を取り付けたカバー取付部材73の蓋板73bにはスリット73b1が設けてあり、揺動時にこのスリット73b1内に支持基部4の前後壁42を受け入れることで、カバー取付部材73を支持基部4に密接に配置しても両者の干渉を回避しつつ、支持基部4と左右支持部52の間の隙間に常に挿入されている当該隙間を閉止する隙間挿入板の役割を果たしている。
ここで、図12に示すように、前後支持部分である座支持壁52cは前後支持部材であるカム面52a、カムフォロア52b及びリンク部材52dと連動するように接続しているため、座支持壁52cに固定された座2は前後方向へ揺動する。同図では座2が後方すなわち図示右側へ揺動動作したときを図示しているが勿論、座2は図3に示した状態よりも前方へも揺動し得るものとなっている。
このような座2の前後方向の移動に対しては、支持機構5を構成する前後支持部52が前後方向に揺動するに伴い、前後カバー部材72は図7に示すように同じく前後方向に揺動するが、左右支持部51は前後方向へは揺動しない。したがって、左右カバー部材71の側壁71aの逆L字をなす下方突出部分71z、及び、前後カバー部材72の側壁72aの逆L字をなす下方突出部分72zが、リンク部材52dの動作範囲を共同して目隠し、左右カバー部材71は前後カバー部材72の前記凹部72a1と支持基部4との隙間を閉止するものとなっている。
したがって、カバー部材71、72同士が複雑な動きをしてもカバー部材71、72間や支持基部4とカバー部材71、72との間に異物が挟みこまれるおそれが解消される。
他方図12に示すような座2の前後方向の揺動動作時においても、支持基部4に設けられた肘取付部6に着脱可能に取り付けられた肘掛け8は、座2の揺動動作に応じて動作することはない。また、図11に示すように肘掛け8は、座2の左右方向への前後動作の動作端においても座2に接触することがない。
併せて座2の前後方向の移動の際、カバー取付部材73の前端に回動可能に取り付けられている補間カバー部材74は、前後カバー部材72の内部において左右カバー部材に対し軸74aを中心とする回動動作を行う。換言すれば、補間カバー部材74は基端側の軸74aを中心としつつ先端側において前後カバー部材72の前底壁72b1に凭れるように接しながら回動動作を行う。これにより、左右カバー部材71の前端部分と前後カバー部材72との間に隙間が出来ることが有効に回避されている。
また本実施形態では、何れのカバー部材71、72にも、丸孔からなる貫通孔7xが設けられている。貫通孔7xは、本実施形態では両カバー部材71、72にそれぞれ設けられた貫通孔71x、72xからなる。これらの貫通孔71x、72xは、縦横に等間隔で複数個、さらに言えば前後左右に略等ピッチで、各面の全体に配されている。カバー部材の縁部付近では孔径を小さくしている。また、一の前記貫通孔71x、72xを外面側から見たときに他の前記貫通孔71x、72xを内面側から視認可能なように、貫通孔71x、72xは動作機構5を囲む面に配されている。貫通孔71x、72xが、カバー部材71、72の対向2面、または隣接2面に設けられている箇所では、特に一の貫通孔を外面側から見たときに他の前記貫通孔を内面側から視認し易い状態となり、投光性が確保され易い。さらには、貫通孔71x、72xが立面の全面に配されていることから、何れの方向に対しても投光性が確保されたものとなっている。この実施形態の貫通孔は、直径8mmの円柱を挿通し得ない大きさ及び形状をなす。このような貫通孔71x、72xの開口率は、当該貫通孔71x、72xを有する各面において10%以上、更に好ましくは15%以上であることが望ましい。なお、貫通孔7xの形状は円形に限らず、スリット状の貫通孔や十字型の貫通孔等、種々の形状が採用される。また貫通孔7xは両カバー部材71、72ともに設けられる態様に限られることはなく、何れか一方のカバー部材71(72)のみに配される態様としてもよい。
<第二実施形態>
以下、本発明の第二実施形態について図面を参照して説明する。同実施形態において上記実施形態における構成要素に相当するものに対しては同じ符号を付すとともに、その詳細な説明を省略する。
図13は本実施形態に係る椅子の斜視図、図14は同正面図、図15は同右側面図、図16は同斜め下方斜視図である。また、図17は本実施形態に係る椅子を座から上の要素部品を取り除いた分解斜視図である。図18〜図20は椅子全体の動作説明図である。
これらの図面に示されるように、この椅子は上記第一実施形態同様、床面から立設される脚1と、この脚1の上方に配された座2および背3と、座2を昇降かつ回転自在に支持するために脚1に取付けられた脚支柱13と、脚支柱13の上端に設けられ、脚支柱13と一体的に水平回転はするが座2の動作に追従して前後左右には動作しないように構成された支持基部4と、この支持基部4と座2との間に介在して座2を前後方向及び左右方向に動作可能に支持する動作機構5と、支持基部4に支持された肘取付部6と、動作機構5をカバーするための可動のカバー部材7とを具備する。
ここで本実施形態では、肘取付部6に肘掛け8を取り付けた状態を図示しているとともに、可動のカバー部材7として、形状を上記実施形態とは異ならせたものを適用している。本実施形態に係る可動のカバー部材7は、上記実施形態のものに比べ、特に後方部分をよりコンパクトな形状としている。
以下、本実施形態について、可動のカバー部材7の形状並びに椅子の揺動動作に伴う可動のカバー部材7の挙動を主に説明していく。なお本実施形態においても、何れのカバー部材71、72にも、上記実施形態同様の丸孔からなる貫通孔7xである貫通孔71x、72xが設けられているが、本実施形態では当該貫通孔7xの図示を省略している。
可動のカバー部材7は、図17に示すように左右支持部51に取り付けられた左右カバー部材71と、前後支持部52に取り付けられた前後カバー部材72と、これら左右カバー部材71の前端側及び前後カバー部材72間に介在する補間カバー部材74と、左右カバー部材71の後端側及び前後カバー部材72間に介在する上記実施形態では設けられていなかった後カバー部材75とを有するものである。つまり可動のカバー部材7は、前後カバー部材72、左右カバー部材71、補間カバー部材74及び後カバー部材75の組み合わせによって構成されている。そして、カバー部材71、72の各々が前記複数の動作部分5A、5Bの動作に応じて一定範囲内で互いに一定の軌跡に沿って相対的に異なる方向に移動する。
具体的には、左右カバー部材71は、本実施形態では略L字型をなす左右一対の起立壁71aを備えるもので、カバー取付部材73に取り付けられている。このカバー取付部材73は、前後一対の支持板73aと、支持板73a、73a間を接続する接続板73cとを備え、支持板73aが前記左右支持部分たる軸51aとともにリンク部材51bの揺動端に揺動可能に取り付けられている。
ここで本実施形態では、左右カバー部材71側に、肘取付部6を挿通させ得る肘挿通孔76が形成されている。具体的にこの肘挿通孔76は、左右一対の起立壁71aと接続板73cとの間に設けられた概略矩形状をなす開口であり、斜め上方に面するように形成されている。
そして図18に示すように、座支持壁52cの左右方向の揺動動作に伴い座支持壁52cに固定されている座2は背3とともに左右に揺動動作を行う。図18では座2が同図左側へ揺動動作を行った動作を図示しているが、同様に同図右側へも座2が動作し得ることはいうまでもない。
ここで、支持基部4に設けられた肘取付部6に着脱可能に取り付けられた肘掛け8は、座2の揺動動作に応じて動作することはなく、左右カバー部材71は左右支持部51の動作とともに左右に揺動動作を行うが、上述した肘挿通孔76が設けられることにより、左右カバー部材71と肘取付部6とは不要に大きな隙間も形成されず且つ接触しないようになっている。
前後カバー部材72は、起立する左右の側壁72aと、前壁72bと、後方に起立する後壁72cとを平面枠体状に接続した構造のもので、内側に左右カバー部材71を収容し得る空間を有している。この前後カバー部材72は、座支持壁52cに取り付けられ、座支持壁52とともに左右揺動および前後揺動を行いつつ、側壁72a及び前壁72bで前後支持部材であるカム面52a及びカムフォロア52bを目隠しする。そして図16、図19及び図20に示すように、前壁72bの下端部分には、略水平に配された前底壁72b1が設けられている。この前底壁72b1が、常に補間カバー部材74の一部に接し得る。
本実施形態ではこの左右の側壁72aの形状が上記実施形態のような逆L字形をなしておらず、略矩形状をなしているため、後壁72cと左右カバー部材71との間には若干の隙間が形成されることとなる。
補間カバー部材74は、左右カバー部材71及び前後カバー部材72の間に介在するものである。具体的に説明すると、補間カバー部材74は図16、図19及び図20に示すように、前側のカバー取付部材73の上端部に軸74aによって回転可能に係合することにより、前後方向に回動可能に取り付けられるものである。
そして本実施形態では、前後カバー部材72の後端部分に湾曲形状をなした板状の後カバー部材75が取り付けられる。この後カバー部材75が、後壁72cと左右カバー部材71との間に形成される隙間を埋める役割を果たしている。
左右カバー部材71は前後揺動せず、前後カバー部材72が前後揺動するため、前後カバー部材72の前壁72bと左右カバー部材71の側壁71aの前端との間、及び、前後カバー部材72の後壁72c近傍に設けられた後カバー部材75と左右カバー部材71の側壁71a及び後壁71cの後端との間には、それぞれ相対動作によって干渉しない程度の隙間が設けてある。
これによりカバー部材7は、左右カバー部材71及び前後カバー部材72が互いに隙間を介して近接しながら相対動作する。
このように、カバー部材71、72は座2の動作に追従して動作しつつ、支持機構5をカバーすることができる。
ここで、図19及び図20に示すように、上記実施形態同様に座2は前後方向へ揺動する。このような座2の前後方向の移動に対しては、支持機構5を構成する前後支持部52が前後方向に揺動するに伴い、前後カバー部材72は図7に示すように同じく前後方向に揺動するが、左右カバー部材71は前後方向へは揺動しない。しかしながら本実施形態では、左右カバー部材71の前端側には上記実施形態同様の補間カバー部材74が設けられ、後端側には後カバー部材75が設けられている。これにより、左右カバー部材71の前端部分並びに後端部分と前後カバー部材72との間に大きく隙間が出来ることが有効に回避されている。
併せて座2の前後方向の移動の際、カバー取付部材73の前端に回動可能に取り付けられている補間カバー部材74は、前後カバー部材72の内部において左右カバー部材に対し軸74aを中心とする回動動作を行う。換言すれば、補間カバー部材74は基端側の軸74aを中心としつつ先端側において前後カバー部材72の前底壁72b1に凭れるように接しながら回動動作を行う。これにより、左右カバー部材71の前端部分と前後カバー部材72との間に隙間が出来ることが有効に回避されている。
特に本実施形態では図17では実線で、図19及び図20にて破線で示すように、前後カバー部材72の内部後端付近において後カバー部材75が前後カバー部材72に固定されている。そして座2の前後方向での揺動の際、後カバー部材75は左右カバー部材71の後壁71cの上端部分に対し僅かながらの隙間を確保しつつ前後カバー部材72とともに揺動動作を行い得るようになっている。
したがって、カバー部材71、72同士が複雑な動きをしてもカバー部材71、72間や支持基部4とカバー部材71、72との間に異物が挟みこまれるおそれが解消される。
以上のように、本実施形態の椅子は、床面に配置される脚1と、脚1から立設される脚支柱13と、脚支柱13の上端に設けられた支持基部4を有し、支持基部4と座2の間で
座2を一定範囲内で一定の軌跡に沿って前後及び左右方向に移動させることが可能な複数の動作部分5A、5Bからなる動作機構5を座2の下方に有するものであり、動作機構5は座2を前後および左右に移動可能に支持する支持機構であって、複数の動作部分5A、5Bに対応して配される複数のカバー部材71、72を有し、複数のカバー部材71、72の各々が複数の動作部分5A、5Bの動作に応じて相対的に移動することで支持機構5をカバーするものである。
このように構成すれば、座2及び背3を移動させる動作機構5が複数の動作部分5A、5Bを有することで個々の動作軌跡を含む全体としての動作範囲が広くなっても、各々のカバー部材71、72を複数の動作部分5A、5Bの動作に応じて相対的に移動させるようにすることで、個々のカバー部材71、72をコンパクトに構成しつつ動作部分5A、5Bを確実に隠蔽して、着座者との干渉を抑えるとともに外観も良好に保つことが可能となる。
特に、動作機構5が座2の移動のみならず座2の支持も兼ねていることで、動作機構5にカバー部材71、72を取り付ければ、座2の支持部分も同時にカバーできることになる。
また、動作機構5を覆う複数のカバー部材71、72が、一方向である左右方向に移動する左右カバー部材71と前後方向に移動する前後カバー部材72を組み合わせて構成されている。
座2を2次元平面内で移動させる動作機構5の場合、複数のカバー部材71、72を直交2方向に相対動作するように組み合わせておけば、おおよそ動作機構と干渉しない構成がカバー部材71、72を極端に大きくせずに実現容易となる。
また、動作機構5が座2を左右方向に動作可能に支持する左右支持部51及び座2を前後方向に支持する前後支持部52を有するものであり、複数のカバー部材71、72が、左右支持部51に取付けられた左右カバー部材71及び前後支持部52に取付けられた前後カバー部材72を有し、これら左右カバー部材71及び前後カバー部材72が互いに隙間を介して近接しながら相対動作するように構成されている。
このように、動作機構5を前後支持部52と左右支持部51から構成し、各々の支持部51、52に左右カバー部材71および前後カバー部材72を取り付ければ、カバー部材71、72が動作部分5A、5Bにより適合したコンパクトなものなるとともに、カバー部材71、72間に前後左右に隙間を確保するだけで干渉回避を実現でき、その隙間を適切な寸法とすることで、カバー部材71、72間の隙間に異物が進入することを的確に防止することができる。
また、左右カバー部材71及び前後カバー部材72が近接する対向面に、左右動作部51と前後動作部52を相対的に動作可能に接続する接続部材53を挿通するための開口部が設けられている。
このようにすれば、開口部において下側の左右動作機構と上側の前後動作機構を接続部材で接続することができるとともに、それら左右カバー部材と前後カバー部材が接続部材と干渉することも適切に防止することができる。
また、支持基部4をカバーし座2の動作に応じて動作し得ないように構成された固定カバー部材44を更に有している。
このように、前後左右に動かない支持基部などは固定カバー部材44でカバーする構成、すなわち可動のカバー部材7と固定カバー部材44を併用する構成にすれば、各カバー部材の機能を適切に分担することができる。
支持基部4自身を固定カバー部材44を含む形状に成型することも考えられ、こうすれば固定カバー部材44を省略することができる。
そして、このような椅子を構成するカバー部材71、72を用意するだけで、椅子の安全性の確保と良好な外観を効果的に実現することができる。
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では左右カバー部材71及び前後カバー部材72の間に介在する前後方向に介在する補間カバー部材74、後カバー部材75を配したが勿論、左右カバー部材の左右方向に前後カバー部材72との間に介在する別異のカバー部材を更に有するものとしてもよい。
背座を前後左右に移動させる場合、左右よりも前後の方が移動量や傾動が大きい。このため、左右支持部の上に前後支持部を設け、左右カバー部材の上方に前後カバー部材を設ける構成とすることで、安定した2階建て構造をとることができるとともに、相対的に大きくなる前後カバー部材を座の下面に極力近づけて配することができる。また、補間カバー部材を設けることで、左右カバー部材と前後カバー部材との隙間が変化してもその隙間を閉止し易くなる。
更に補間カバー部材を弾性変形可能なものとし、左右カバー部材または前後カバー部材の一方又は両方に、他方に接し弾性変形しながら摺動するように取付ければ、左右カバー部材と前後カバー部材との隙間をゼロにすることも可能になる。
また、補間カバー部材が、左右カバー部材及び前後カバー部材の相対動作に応じてこれら左右カバー部材及び前後カバー部材の動作とは異なる方向の相対動作を行うように構成してもよい。
このようにすれば、左右カバー部材と前後カバー部材の動作方向が異なることで両カバー部材間の隙間が複雑に変化しても、補間カバー部材によってその隙間を適切に閉止することができる。
また、座の動作に応じて弾性変形し得る弾性カバー部材を有していてもよい。
このように座の動作を踏まえて弾性カバー部材を用いれば、カバー部材の構成や取り付けが極めて簡素なものとなる。