しかしながら、呼吸補助に用いられる呼吸補助装置は、気道閉塞を解消する機能を中心とした開発が、今日まで進められてきており、使用時の快適性を高めることにはあまり注意が払われていなかった。
例えばCPAPのための呼吸補助をおこなう呼吸補助装置で送気されるガスは、一般に一定の温度と湿度、すなわちガスの温度が摂氏37℃、湿度は相対湿度100%で提供されることも多い。これは気管挿管時において人工呼吸器から送気されるガスの温度と湿度を踏襲したものであり、使用者の快適性について十分に検討されていない。
図12は、非特許文献1として引用されている、内山らによる研究結果を模式的に表したグラフである。領域510に示されているのは、時刻と深部体温の関係を表すグラフである。領域520に示されているのは、時刻と手足の甲の身体に対する相対温度の関係を表すグラフである。領域530に示されているのは、時刻と眠りやすさの関係を表すグラフであり、縦軸の値が大きいほど眠りやすいことを示す。領域510と領域530を比較すると、身体の内部温度(深部体温)が低いときに、眠りやすさが強くなっていることがわかる。睡眠時には、覚醒時より深部体温が下降しており、特にL1〜L3で示す深部体温が低くなった時間に、眠りやすさ(領域530参照)がピークになっていることがわかる。人間の肺は、呼吸を通じて外部環境へ身体の内部の熱を放出するラジエータのような役割を担っていると考えられる。睡眠時に高い温度のガスを気道に送気することは、身体が体温を下げようとしているときにそれを妨げてしまっていることに他ならない。したがって従来の呼吸補助装置は、使用者が良い睡眠をとることを妨害している可能性が高い。呼吸補助のために呼吸補助装置を使用する人のうち約半分が、使用開始から1年以内に、呼吸補助装置の使用を中止しているのは、装置の騒音や使い勝手の悪さ以外に、深い睡眠の取りにくさも原因であると考えられる。
本発明は、斯かる実情に鑑み、睡眠時にも快適に呼吸補助を施すことができる呼吸補助装置を提供しようとするものである。
(1)本発明は、使用者に装着されて、ガスを受け渡す呼吸インターフェース装置と、前記ガスの温度であるガス温度を測定するガス温度測定部と、前記ガスを加温する加温部と、前記加温部を制御することで前記ガス温度を変動させる温度変動部を備えることを特徴とする呼吸補助装置を提供する。
上記(1)に記載する発明によれば、ガス温度を変動させる温度変動部を有するので、呼吸補助において、単に一定の温度のガスを送気するのではなく、使用者にとってその時々において、最適な温度にガス温度を変動させることができる。したがって本発明によれば使用者の快適性の向上という優れた効果を奏する。
(2)本発明は、当該呼吸補助装置の運転開始から所定の時間が経過すると、前記温度変動部は前記加温部の制御をおこなって、前記ガス温度を下降させることを特徴とする請上記(1)に記載の呼吸補助装置を提供する。
呼吸補助をおこなう場合、睡眠開始前後は、暖かいガスを送気する方が、使用者にとって快適であり、鼻腔の通り具合が良くなる場合が多い。しかし入眠すると深部体温が下降していくため、送気ガスの温度も下げていくことが望ましい。上記(2)に記載する発明によれば、呼吸補助装置の運転開始から所定時間の間、ガスを一定の温度に維持して鼻腔の通気を良好にするとともに、その後加温部を制御することでガス温度を下降させ、使用者における睡眠時の深部体温の下降を妨げないという優れた効果を奏する。
(3)本発明は、前記ガスを加湿する加湿装置を更に備えることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の呼吸補助装置を提供する。
上記(3)に記載する発明によれば、呼吸補助装置がガスを加湿する加湿装置を更に備えるので、気道や鼻腔を過度に乾燥させること無く、呼吸補助を行うことができるという優れた効果を奏する。
(4)本発明は、前記加湿装置が、加湿のための水を溜める貯水部と、貯水部の水が供給される多孔質の中空ファイバー部と、を備えることを特徴とする上記(3)に記載の呼吸補助装置を提供する。
従来の呼吸補助装置に備えられる加湿装置は、ヒーター加熱によって水を沸騰蒸発させ水蒸気を発生させる。そのため送気するガスの温度の制御を自在にすることが困難であるという課題がある。上記(4)に記載する加湿装置によれば、毛細管現象により中空ファイバーが貯水部から水を吸い上げることが可能であり、中空ファイバーの表面が多孔質であることから、微細な孔を通じて水が蒸散することで送気ガスを加湿することができる。このような加湿装置を呼吸補助装置が備えることで、ヒーター加熱を伴わない加湿が可能になるので、ガス温度の制御が容易になるという優れた効果を奏する。
(5)本発明は、前記ガスの湿度であるガス湿度を測定するガス湿度測定部と、前記加湿装置の制御をおこなって、前記ガス湿度を所定の湿度に変動させる湿度変動部を備えることを特徴とする上記(3)または(4)に記載の呼吸補助装置を提供する。
上記(5)に記載する発明によれば、呼吸補助装置がガスの湿度を測定するガス湿度測定部と、ガス湿度を所定の湿度に変動させる湿度変動部を備えるので、使用者にとって最適な湿度のガスを送気できるという著しく優れた効果を奏する。
(6)本発明は、前記湿度変動部が、前記ガス湿度と前記ガス温度の相関から所定の水蒸気供給量となるように前記加湿装置を制御することを特徴とする上記(5)に記載の呼吸補助装置を提供する。
空気中に含まれうる水蒸気量は、温度により決まっている。したがって呼吸補助装置が送気するガスの温度によって、使用者にとって最適な水蒸気量も変化する。上記(6)に記載する発明によれば、湿度変動部が、ガス湿度とガス温度の相関から所定の水蒸気供給量となるように加湿装置を制御することができるので、使用者の快適性向上という優れた効果を奏する。
(7)本発明は、前記湿度変動部が、時間経過に従って前記ガス湿度を制御するタイマー処理部を有することを特徴とする上記(5)又は(6)に記載の呼吸補助装置を提供する。
上記(7)に記載する発明によれば、湿度変動部が、時間経過に従ってガス湿度を制御するタイマー処理部を有するので、あらかじめ設定したタイマープログラムに従って、ガス湿度を制御することができ、容易に使用者の快適性向上という効果を奏する。
(8)本発明は、前記温度変動部が、時間経過に従って前記ガス温度を制御するタイマー処理部を有することを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか一項に記載の呼吸補助装置を提供する。
上記(8)に記載する発明によれば、温度変動部が、時間経過に従ってガス温度を制御するタイマー処理部を有するので、あらかじめ設定したタイマープログラムに従って、ガス温度を制御することができ、容易に使用者の快適性向上という効果を奏する。
(9)本発明は、前記使用者の生体情報を取得する生体情報取得部を備え、前記湿度変動部は、前記生体情報に基づいて、前記ガス湿度を変動させるように前記加湿装置の制御を行うことを特徴とする上記(5)乃至(7)のうちのいずれかに記載の呼吸補助装置を提供する。
上記(9)に記載する発明によれば、生体情報取得部で取得した生体情報に基づいて、使用者にとって最適な湿度のガスを送気することが可能になるので、使用者の快適性向上という優れた効果を奏する。
(10)本発明は、前記使用者の生体情報を取得する生体情報取得部を備え、前記温度変動部は、前記生体情報に基づいて、前記ガス温度を変動させるように前記加温部の制御をおこなうことを特徴とする上記(1)乃至(9)のうちのいずれか一項に記載の呼吸補助装置を提供する。
上記(10)に記載する発明によれば、使用者の生体情報を取得する生体情報取得部を更に備えて、その取得情報に基づいて送気するガスの温度を変動させることができるので、使用者にとって最適な温度のガスを送気可能であり、使用者の快適性向上という優れた効果を奏する。
(11)本発明は、前記生体情報取得部が、前記使用者の生体深部の温度である深部体温を測定する深部体温測定部を有することを特徴とする上記(9)または(10)のうちのいずれかに記載の呼吸補助装置を提供する。
上記(11)に記載する発明によれば、使用者の生体深部の温度である深部体温を測定することが可能なので、睡眠時の深部体温を測定して、その変化に合わせたガスの温度変動が可能になるという優れた効果を奏する。
(12)本発明は、前記温度変動部が、前記深部体温測定部により測定される前記深部体温が下降するときに、前記ガス温度を下降させるように前記加温部の制御をおこなうことを特徴とする上記(10)に記載の呼吸補助装置を提供する。
一般に、睡眠時には深部体温は下降することが知られており、また深部体温の下降を促すと、入眠しやすくなるという研究結果もある。上記(12)に記載する発明によれば、深部体温測定部により測定される深部体温が下降するときに、送気するガス温度を下降させるように加温部の制御をおこなうことができるので、呼吸補助を行う際に睡眠を妨げず、使用者の快適性向上という優れた効果を奏する。
(13)本発明は、前記温度変動部が、前記ガス温度を前記深部体温以下に制御することを特徴とする上記(11)または(12)に記載の呼吸補助装置を提供する。
上記(13)に記載する発明によれば、呼吸補助装置が送気するガスの温度を深部体温以下に制御することができるので、ガスによって深部体温の下降を促すことが可能であり、入眠を容易にするという優れた効果を奏する。
(14)本発明は、前記生体情報取得部が、前記使用者の体表面の温度である体表面温度を測定する体表面温度測定部を有することを特徴とする上記(9)乃至(13)のうちのいずれかに記載の呼吸補助装置を提供する。
ヒトは睡眠時において、深部体温が下降するのと同時に、体表面の温度である体表面温度は逆に上昇することが知られている。これは深部体温を下げるために、体表から熱を放出しているためであると考えられている。上記(14)に記載する発明によれば体表面温度を測定する手段を設け、その測定結果を送気するガスの温度に反映させることで、使用者の快適性向上と睡眠状態の改善が可能になるという優れた効果を奏する。
(15)本発明は、前記温度変動部が、前記体表面温度測定部により測定される前記体表面温度が上昇するときに、前記ガス温度を下降させるように前記加温部の制御をおこなうことを特徴とする上記(14)に記載の呼吸補助装置を提供する。
上述のように睡眠時においては深部体温が下降するのと同時に、体表面の温度である体表面温度は逆に上昇することが知られている。上記(15)に記載する発明によれば、体表面温度測定部により測定される使用者の体表面温度が上昇するときに、ガス温度を下降させるよう、温度変動部が加温部の制御をおこなうことで、使用者にとって治療効果が高く、且つ、快適な呼吸補助装置を実現できるという優れた効果を奏する。
(16)本発明は、前記使用者がいる場所の温度である外気温を測定する外気温測定部を更に備え、前記温度変動部は前記ガス温度を前記外気温に基づいてガス温度の制御をおこなうことを特徴とする上記(1)乃至(15)のうちのいずれかに記載の呼吸補助装置を提供する。
ヒトは睡眠中、そのヒトが睡眠をとっている場所の温度(外気温)で呼吸するとベストな睡眠環境となるように代謝活動その他を制御しているものと考えられる。呼吸補助装置に付属するヒーター加熱型の加湿装置で加温されたガスを、気道に送気している従来の呼吸補助においては、過剰な熱エネルギーを取り込みながら睡眠していることになり、睡眠に悪影響を与えている可能性が有る。上記(16)に記載する発明によれば、外気温を測定する外気温測定部を備え、温度変動部が送気するガスの温度を外気温に基づいて決定するので、睡眠時に最適な温度のガスを送気することができるという優れた効果を奏する。
(17)本発明は、前記外気温をTout(単位はセルシウス温度:℃)と定義するとき、前記温度変動部は、前記ガス温度を、(Tout−1)℃から(Tout−3)℃の間に制御することを特徴とする上記(16)に記載の呼吸補助装置を提供する。
鼻腔へ過度に低温のガスを送気すると、鼻閉をおこしてしまう可能性がある。上記(15)に記載する発明によれば、温度変動部が、送気するガスの温度を(Tout−1)℃から(Tout−3)℃の間に制御するので、適度に低い温度のガスを送気することが可能になり、使用者の快適性向上と治療の効果の両立が可能になるという優れた効果を奏する。
(18)本発明は、前記生体情報取得部が、前記使用者の体動を測定する体動測定部を有することを特徴とする上記(9)乃至(17)のうちのいずれかに記載の呼吸補助装置を提供する。
ヒトの睡眠状態は、深い眠りの「ノンレム睡眠」状態と、浅い眠りの「レム睡眠」状態に大きく分けられる。「ノンレム睡眠」状態において体動は少なくなり、「レム睡眠」状態においては体動が多くなることが知られており、加速度センサなどにより体動を検出することで、ヒトがどちらの睡眠状態にあるかを判別できる。上記(18)に記載する発明によれば、呼吸補助装置が体動測定部により体動を測定し、それぞれの睡眠状態に合わせた温度、湿度のガスを送気することができるので、使用者にとって快適な呼吸補助装置を実現できるという優れた効果を奏する。
(19)本発明は、前記体動測定部が測定した前記体動から、前記使用者の睡眠の深さを判定する睡眠深度判定部を備え、前記睡眠の深さが深まるときに前記ガス温度を下降させることを特徴とする上記(18)に記載の呼吸補助装置を提供する。
ヒトは、いわゆる深い眠りである「ノンレム睡眠」状態において、深部体温は下降し、呼吸も遅くなる。上記(19)に記載する発明によれば、呼吸補助装置が体動から使用者の睡眠の深さを判定する睡眠深度判定部を備えており、深い眠りである「ノンレム睡眠」状態へ移行する際に、深部体温を下降させるように、ガスの温度を下降させることが可能なので、使用者にとって快適な呼吸補助装置を実現できるという優れた効果を奏する。
(20)本発明は、使用者にガスを受け渡すガス交換ステップと、前記ガスの温度であるガス温度を測定するガス温度測定ステップと、前記ガスを加温する加温ステップと、前記加温部を制御することで前記ガス温度を変動させる温度変動ステップを備えることを特徴とする呼吸補助方法を提供する。
上記(20)に記載する方法の発明によれば、ガス温度を変動させる温度変動ステップを有するので、呼吸補助において、単に一定の温度のガスを送気するのではなく、使用者にとってその時々において、最適な温度にガス温度を変化させることができる。したがって本発明の方法によれば使用者の快適性の向上という優れた効果を奏する。
本発明によれば、呼吸補助装置が、ガス温度を変動させる温度変動部を有するので、呼吸補助において、単に一定の温度のガスを送気するのではなく、使用者にとってその時々において、最適な温度にガス温度を変化させることができ、使用者の快適性の向上という優れた効果を奏する。
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。図1〜図10は発明を実施する形態の一例であって、図中、同一の符号を付した部分は同一物を表わす。なお、各図において一部の構成を適宜省略して、図面を簡略化する。そして、部材の大きさ、形状、厚みなどを適宜誇張して表現する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る呼吸補助装置1を説明する説明図である。呼吸補助装置1は、本体5と、送気するガスを加湿する加湿装置50と、送気するガスを輸送するための導管を含む呼吸回路70と、呼吸回路内のガスを加温する加温部80と、使用者に装着されて、ガスを受け渡す呼吸インターフェース装置110と、使用者の生体深部の温度である深部体温を検出する深部体温測定センサ120を備える。呼吸インターフェース装置110は、鼻マスク、経鼻プロングが望ましい。なお呼気によって圧力が高まって息が吐きにくくなることを防ぐために、圧力が高まると大気へ開放状態となる、いわゆるリリーフ弁が呼吸インターフェース装置110又はその近傍に備えられることが望ましい。
本体5は、圧縮ガスを送気するブロワ(送風機)40と、送気されるガス流量を測定する流量測定装置20と、ガスの流量、圧力、温度を制御する制御装置10を有する。ブロワ(送風機)40は、吸気口30から外気を吸い込んで圧縮し、呼吸回路70に送り出す。このとき流量測定装置20により送気するガスの流量が測定され、医師が処方する処方圧になるよう制御装置10が制御を行う。なお送気するガスの圧力を測定する圧力計を備えることが望ましい。
呼吸回路70には呼吸インターフェース装置110が接続され、呼吸インターフェース装置110から、使用者100の鼻腔へ陽圧のガスが印加される。呼吸回路70または呼吸インターフェース装置110には、呼吸インターフェース装置110近傍におけるガスの温度であるガス温度を検出するガス温度センサ105が備えられる。また呼吸回路70の少なくとも一部には、加温部80が設けられ、ヒーター電源90を制御装置10が制御することで、ガス温度が制御される。
加湿装置50は、本体5又は呼吸回路70に接続され、使用者へ送気されるガスを加湿する。加湿装置50は、加湿のための水を溜める貯水部55と、貯水部の水が供給される多孔質の中空ファイバー部60を備える。多孔質の中空ファイバー部60は、呼吸回路70内に挿入され、呼吸回路70内のガスに水蒸気を蒸散させることで加湿をおこなう。
深部体温測定センサ120は、熱流補償式であっても、複数の熱流センサを備えた方式であっても良い。
図2に制御装置10の構成図を示す。制御装置10は、使用者の生体情報を取得する生体情報取得部140と、加温部80を制御することでガス温度を変動させる温度変動部130と、ガス温度を測定するガス温度測定部180を有する。生体情報取得部140は、深部体温を測定する深部体温測定部160を有する(図1参照)。温度変動部130はヒーター電源90に接続され、深部体温測定部160は深部体温測定センサ120に接続される(図1参照)。温度変動部130は、温度変動部130は、後述するように、生体情報である深部体温に基づいて、ガス温度を変動させるように加温部80の温度制御をおこなう。ガス温度測定部180は、ガス温度センサ105に接続されてガスの温度を測定する(図1参照)。このとき制御装置10は、ガス温度測定部180によって得られたガスの温度に基づいて加温部80のフィードバック制御(例えばPID制御など)をすることが望ましい。
なお制御装置10は、CPU、RAMおよびROMなどから構成され、各種制御を実行する。CPUはいわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて様々な機能を実現する。RAMはCPUの作業領域、記憶領域として使用され、ROMはCPUで実行されるオペレーティングシステムやプログラムを記憶する。
図3Aに、制御装置10がおこなうガス温度の温度制御についてのフローチャートを示す。
まず、呼吸補助装置1の電源をONにすると、ブロワ(送風機)40が運転を開始して呼吸補助を始める(図1参照)。なお、特に図示しないが、電源ONには、前回に電源をOFFにした直前の設定値(処方圧など)が自動反映されるようになっている。
運転開始時から運転時間を計測するタイマー機能(図示省略)が立ち上げられ、所定時間、例えば30分間は、ガス温度を所定の温度、例えば37℃に保つ(ステップS1−10)。入眠時には比較的暖かなガスを送気する方が、鼻腔の通りが良くなり使用者にとって快適であるためである。この所定時間と所定温度は、使用者が適宜変更できることが望ましい。
呼吸補助装置1の運転開始から所定時間の経過後、使用者が睡眠状態になると、深部体温測定センサ120で検出して深部体温測定部160で測定される、使用者の深部体温は、下降を始める。これに伴い、制御装置10の温度変動部130は、ヒーター電源90を制御して加温部80の温度を下げることで、ガス温度を所定の目標温度まで下降させる(ステップS1−20)。この目標温度は、深部体温より低く、望ましくは外気温と同じか、外気温より1℃から3℃低いことが望ましい。目標温度が外気温と略等しい場合には、温度変動部130はヒーター電源90に与える電力を降下させるか、又は、ゼロにすれば良い。
なおガスを外気温より低温にするためには、冷却機構を設けることが望ましい。冷却機構としては、一般にガス冷却に用いられるものであって良く、通常の冷蔵庫のように冷媒とコンプレッサーを使用してガスから気化熱を奪うことで冷却してもよく、ペルチェ素子を使ってもよい。加湿装置50自身を用いて冷却することも考えられる。
目標温度は、使用者が自ら運転中に変更可能であることが望ましい。
すなわち制御装置10は、深部体温という生体情報に基づいて、ガス温度を下降させるように加温部80の制御をおこなう。一般には、睡眠中、覚醒直前までヒトの深部体温は下降していくので、深部体温測定部160により測定される深部体温が下降するときに、ガス温度を下降するように制御装置10は加温部80の制御をおこなうことが望ましい。このとき、ガス温度センサ105で検出しガス温度測定部180で測定したガス温度を用いて、目標温度になるように制御装置10は加温部80のフィードバック制御をおこなうことが望ましい。
その後、使用者が覚醒状態になって呼吸補助装置1の電源をOFFにして運転を中止するまで、制御装置10はガス温度を目標温度に維持して呼吸補助を継続する(ステップS1−30のNOの場合)。呼吸補助装置1の電源をOFFにして運転を中止する場合には、同時にガス温度の制御も中止する(ステップS1−30のYESの場合)。
以上の動作により、呼吸補助装置1は、睡眠時における深部体温の下降を妨げることなく、送気するガス温度を下降させるように加温部80の制御をおこなうことができるので、呼吸補助を行う際に睡眠を妨げず、使用者の快適性向上という優れた効果を奏する。もちろん人工呼吸でも、睡眠の快適度が向上する。
図3Bは、ガス温度制御についての変形実施例を示すグラフである。
図3B(a)では、生体情報によらず、呼吸補助装置1が備えるタイマー(図示省略)に従って温度変動部130(図2参照)によってガス温度を変動させる例を示す。期間610で示す、運転開始から30分間は、ガス温度を例えば37℃に維持し、期間620ではガス温度を3℃下降させる。その後2時間30分はガス温度を34℃に維持する(期間630)。その後さらに3℃ガス温度を下降させ(期間640)、続けて2時間ガス温度を31度に維持する(期間650)。時間的に覚醒に向かう期間660では、温度を6℃上昇させて、その後37℃に維持する(期間670)。このようなタイマー動作をさせることで、容易に使用者にとっての睡眠時の快適性を実現できる。
図3B(b)では、深部体温を測定して、その下降に合わせて目標温度を下降させ、ガス温度を下降させる場合を示す。本変形実施例では、運転開始から30分間は、ガス温度を例えば37℃に維持し、その後、深部体温測定センサ120で検出し、深部体温測定部160で測定した深部体温の下降にあわせて、ガス温度を下降させている。
具体的には、深部体温を所定の時間間隔毎に測定し、それに合わせて、目標温度を随時決めていく動作をおこなう(図3A参照)。図3B(b)でいえば、例えば一般的なヒトの平均体温である36℃から2℃低い温度34℃を基準にして、深部体温の時間変化分に所定の係数、例えば2.0を掛けた温度分だけ目標温度を変化させていく。すなわち期間740の間、深部体温が1.5℃下がることに追従してガス温度を3℃降下させ、深部体温の変化の無い期間750の間は、ガス温度を31℃に維持するように目標温度を決める。また急激にガス温度の変動により鼻腔を刺激し、使用者の深い眠りを妨げることを防ぐために、ガス温度を滑らかに変化させるべく、深部体温と時間で決まる温度変化が小さく時間変化が滑らかな関数で目標温度を決定しても良い。もちろん温度変動部130に、深部体温と目標温度のルックアップテーブルを予め用意して、深部体温測定部160の測定した深部体温にあわせて目標温度を決定していっても良い。
なお、この変形実施例では覚醒時に生じることの多い深部体温の上昇については、ガス温度に反映させていない。
なお、上記した図3B(a)〜図3B(b)に挙げた変形実施例に係るガス温度制御は、他の実施形態においても適用可能であることは言うまでもない。
図4に、本発明の第二実施形態に係る呼吸補助装置1の説明図を示す。第一実施形態との違いは、ガスの湿度を検出するガス湿度センサ95と、加湿装置50から供給される水蒸気の量を調整して湿度を変動させる湿度調節部65である。
なお湿度を調整する湿度調節部65の具体的な機構としては、多孔質の中空ファイバー部60へ供給する水の量を電磁弁で調整しても良く、多孔質の中空ファイバー部60に加熱部を設けて、その加熱量を調節することにより、水蒸気の発生量を増減させても良い。
呼吸補助に用いる従来の呼吸補助装置は、相対湿度100%のガスが気道から送気されるが、このようなガスが使用者にとって快適かどうかは場合による。たとえば、CPAP療法を施される使用者は、自らガスに水分を与えることのできる鼻腔経由で送気されるのであり、自力で加湿する能力がある。したがって本発明の第二実施形態においては、送気するガスの湿度を目標湿度、例えば相対湿度60%から80%の間のいずれかの値に維持することで使用者にとって快適な睡眠を促す。使用者が呼吸補助装置1の運転中に目標湿度を変更することができることが望ましい。
図5に本発明の第二実施形態に係る呼吸補助装置1における制御装置10の構成図を示す。制御装置10は、第一実施形態の制御装置10に加えて、ガス湿度を所定の湿度に変動させる湿度変動部150とガスの湿度を測定するガス湿度測定部185を更に備える。
すなわち呼吸補助装置1には、呼吸回路70中に、ガスの湿度を検出するガス湿度センサ95が備えられ、制御装置10にはガスの湿度を測定するガス湿度測定部185が設けられる(図4参照)。制御装置10はさらにガス湿度を所定の湿度に変動させる湿度変動部150を備え、湿度変動部150は、湿度調節部65を制御する。ガス湿度センサ95はガス湿度測定部185に接続され、測定されたガス湿度に基づいて、湿度変動部150がガス湿度をフィードバック制御することが望ましい。
図6(a)に、制御装置10がおこなうガス温度とガス湿度の制御についてのフローチャートを示す。図3Aに示した第一実施形態との違いは、(ステップS2−20)において、制御装置10の湿度変動部150が、所定時間の経過後、深部体温の下降にあわせて、ガス温度を目標温度まで下降させる動作の後、(ステップS2−30)において、ガス湿度を所定の湿度に維持する動作をおこなう点である。この順番は逆であっても良く、また(ステップS2−30)が(ステップS2−10)と同時またはその前後に行われてもよい。
なおここでは、湿度を一定に維持する態様を説明したが、使用者の快適性向上のために、生体情報に基づいて、ガス湿度を変動させるように加湿装置50の制御を行っても良い。具体的には深部体温の変動に合わせて相対湿度を増減させても良い。例えば、深部体温が下降する時は、体表から熱を放出するために発汗が多くなっている可能性があるので、目標湿度を高く設定して、身体から水分が過度に失われることを防ぐ制御を湿度変動部150がおこなって良い(図6(b)参照)。また逆に深部体温が上昇したら、湿度を低くしても良い。
またガス湿度と前記ガス温度の相関から所定の水蒸気供給量となるように加湿装置50を制御してもよい。
図7に、本発明の第三実施形態に係る呼吸補助装置1の説明図を示す。第二実施形態との違いは、使用者がいる場所の温度である外気温Tout(単位はセルシウス温度:℃)を検出する外気温測定センサ45である。
図8(a)に第三実施形態に係る呼吸補助装置1における制御装置10の構成図を示す。制御装置10は、外気温測定センサ45に接続されて外気温を測定する外気温測定部170を更に備える。温度変動部130は、目標温度として(Tout−1)℃から(Tout−3)℃の間にガス温度を制御する。
前述のように呼吸補助に用いられている従来の呼吸補助装置は、送気されるガスの温度は37℃に維持される。入眠時には深部体温は下降し、逆に深部体温を低くすると入眠しやすいことから、使用者がより快適な睡眠を取るためには、呼吸補助装置1から送気されるガスのガス温度が外気温と同じ温度か、外気温Toutから例えば1℃から3℃程度低い温度であることが、好ましいと考えられるからである。
図8(b)に、深部体温を測定して、その変動に合わせて目標温度を変動させ、ガス温度を温度変動部130により変動させる温度制御をおこなう場合を示す。本変形実施例では、外気温より低い温度でガスを送気する。すなわち、例えば外気温測定部170で測定される外気温が、25℃で一定であるときを想定する。最初の30分間は、上記の変形実施例と同様ガス温度を37℃に維持する。続いて期間820においては、深部体温が下降するのに合わせてガス温度を下降させ、期間830においては、深部体温の変動が無いことに合わせて、ガス温度を維持する。その後、期間840のおいては、再び深部体温の下降にあわせて、ガス温度を下降させ、続く1時間は、深部体温が変動しないのに従ってガス温度を、外気温より2℃低い23℃に維持する(期間850)。続く期間860では、深部体温が上昇したのに合わせて、ガス温度を2℃上昇させ、以下同様に、深部体温の変動に合わせたガス温度の制御をおこなう。なお外気温が変動することも加味してガスの温度を決定しても良い。このようなガス温度の制御をおこなうことで、使用者にとって快適な呼吸補助が可能になる。
なおガスを外気温より低温にする冷却機構は、一般にガス冷却に用いられるものであって良く、通常の冷蔵庫のように冷媒とコンプレッサーを使用して、ガスから気化熱を奪うことで冷却してもよく、ペルチェ素子を使ってもよい。もちろん加湿装置50自身を用いて冷却することも考えられる。ガス温度は、深部体温の変化にあわせて、変動するように制御してもよい。
尚、本発明に係る呼吸補助装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
例えば、図9(a)に示すように、呼吸補助装置1の備える温度変動部130が、タイマー処理部190を有する変形実施例が考えられる。タイマー処理部190は、時間経過に従ってガス温度を制御する。
図9(b)にタイマー処理部190によってガス温度を変化させる例を示す。運転を開始して30分間の間、温度変動部130は、ガス温度を体温より少し高い37℃に保つ(期間930)。続いてタイマー処理部190は、30分間経過したことを認識して、温度変動部130に対して、30分間かけてガス温度を25℃まで降下させる(期間940)。そしてタイマー処理部190は、期間940が経過したことを認識して、続く1時間、ガス温度を25℃に維持するように加温部80を制御する(期間950)。以下同様にタイマー処理部190が動作することで、ガス温度は時間経過に従って温度制御され、使用者は快適、且つ、効果的にCPAP療法を受けられるという効果を奏する。
呼吸補助装置1は、例えば、上記のように時間経過に従ってガス温度を制御するタイマーモードと、生体情報に基づいてガス温度を変動させる生体情報モードといった複数の動作モードを有して、複数の動作モードの内、一の動作モードを使用者が選択できる選択処理機能を備えて良い。タイマーモードにはあらかじめ設定された複数のシーケンス、すなわち図9(b)で示したシーケンスの他に、例えば8時間にわたって一定の割合でガス温度を降下させるシーケンスなどが設けられて、使用者が選択可能であって良い。
また例えば、第二実施形態および第三実施形態において、湿度変動部150がタイマー処理部190を有する変形実施例も考えられる(図5及び図8参照)。タイマー処理部190は、時間経過に従ってガス湿度を制御する。
また例えば加湿装置としては、従来のタンク式加湿装置でもよく、また次の図10に示すような方式でも良い。図10は本発明の変形実施例に係る加湿装置210の断面図である。加湿装置210は、従来の加湿装置と同様に、使用者の呼吸器における換気を調節又は補助する呼吸補助装置の呼吸回路70に接続されて、送気されるガスに微粒子又は水蒸気の形で水分を与える。加湿装置210は、ブロワ(送風機)側配管290と、呼吸回路側配管295の間に配置され、少なくとも水を含む液体を収容する液体容器280と、当該液体の微小液滴である霧滴を発生する霧滴発生手段270と、前記霧滴の少なくとも一部を保持する保水部材220とを有する。霧滴発生手段270は、本変形実施例において、後述するように超音波振動により霧滴を発生させる。
霧滴発生手段270は、液体を加振することで霧滴を発生させる超音波発生手段を有する。すなわち本変形実施例に係る加湿装置において、霧滴発生手段270は、超音波振動子からの振動エネルギーにより液体表面に気泡を生じさせる、いわゆるキャビテーション効果を利用した超音波式霧滴発生手段であり、筐体255と、超音波振動子260と、超音波伝達物質250を備えている。超音波伝達物質250は例えば水である。筐体255が保持する超音波伝達物質250である水は、比熱が大きいため、筐体255と筐体225を通じて接触する水240も含めて温度が上がりにくく、加湿装置210全体として長時間の使用に好適である。霧滴発生手段270と液体容器280は、境界285に不揮発性のオイルなど超音波を伝達しやすい物質を挟んで密着している。
超音波振動子260は、制御装置10に含まれるコントローラ(図示省略)によって制御されている。コントローラは、加湿装置10全体の制御を行うためのCPU、RAM、ROMなどを備える。CPUはいわゆる中央演算処理装置であり、各種プログラムが実行されて様々な機能を実現する。RAMはCPUの作業領域、記憶領域として使用され、ROMはCPUで実行されるオペレーティングシステムやプログラムを記憶する。コントローラは、深部温度、ガス温度、気体の流量等をモニターして、霧滴加熱手段230のヒーター等のフィードバック制御(PID制御など)をおこない、所定の温度、湿度に調節する機能を持っていることが望ましい。また液体容器280内の水240が所定の水量以下になった場合には、警告を出すことが望ましい。
霧滴発生手段270による霧滴発生量は、コントローラによって制御される。例えば超音波振動子260に加える交流電圧の振幅を大きくすると、超音波振動子260の振動の振幅が大きくなり、霧滴発生量は増大する。液体容器280は、筐体225から取り外せることが望ましい。また霧滴発生手段270も液体容器280から取り外し可能であることが望ましい。
加湿装置210は、送気される気体が流れる流路を有し、該流路は保水部材220によって閉鎖され、ブロワ(送風機)40側であって液体容器280及び霧滴発生手段270が配設される上流側と、使用者側となる下流側に、保水部材220によって隔離されている。具体的には保水部材220は筒状であり、且つ、有底である。筒の開口側は、筐体225の内周面に端部が接合され、流路を遮断している。気体が保水部材220を通過する際の抵抗を下げるために、通気面積を大きくすることが望ましい。そのため筒状の保水部材220と筐体225の内周面との間には、スペーサーを設けて隙間を確保することが好ましい。スペーサーを設ける代わりに、保水部材220の筒の径を筐体225の内周径よりも十分小さくして隙間を確実に確保しても良い。保水部材220は吸水性を持つ不織布であり、交換可能であることが望ましい。保水部材220を構成する不織布の材質は、例えばポリプロピレンであり、親水化するために界面活性剤処理、フッ素ガス処理、スルホン化処理、アクリル酸グラフト処理、プラズマ放電処理などを施すことが望ましい。
保水部材220は、筐体225の中に設置され、保水部材220の内側、すなわち液体容器280側には、霧滴を加熱して水蒸気へと気化させる霧滴加熱手段230が設置される。霧滴加熱手段230は例えばニクロム線などで構成される抵抗加熱ヒーターであり、電源(図示省略)が接続され、ガス温度等に基づいて、コントローラによって電力を制御し温度や湿度のコントロールを行う。保水部材220は霧滴を遮断するが、水蒸気を含む気体は保水部材220を通過できる。
次に、上記した変形実施例に係る加湿装置の動作を同じく図10を用いて説明する。
ブロワ(送風機)側配管290から、乾燥したガスが、加湿装置210に供給される。このガスに対して、水分を付加するのが、加湿装置210の役割であるが、加湿は次のような2つの方法でおこなわれる。
(1)液体容器280の表面で生じる霧滴が、霧滴加熱手段230で気化されて水蒸気となる。超音波振動子260で発生した超音波の振動エネルギーが、液体容器280の水面に伝わり、水面の一部の表面張力が弱まることで微細な霧滴を生じる。霧滴は、微小液滴なので体積に比べて表面積が大きく、気化もし易い。また霧滴加熱手段230付近に霧滴が到達すると、温度が高く、飽和蒸気圧が大きくなるため、さらに気化し易くなる。気化して生じた水蒸気は、結果として乾燥したガスを加湿する。
(2)液体容器280の表面で生じる霧滴は保水部材220まで到達すると、保水部材220に付着する。保水部材220は吸水性を有するので、保水部材に付着した水分は液体の水として保持される。ブロワ(送風機)側配管290から送気された気体の水蒸気圧は、保水部材220の近傍を通過する際、保水部材220に保持された水分によって、さらに増大させられ、加湿される。
以上、説明した変形実施例に係る加湿装置210は、通常の沸騰による気化よりも小さなエネルギー量で水蒸気を発生させて加湿できる。また貯留された水240を沸騰させずに、多量の水蒸気を発生させることができるので、ガスの温度を過度に上昇させることなく温度と独立して湿度コントロールができるという優れた効果を奏する。また送気される気体が保水部材220によって濾過されるので、保水部材220が加湿と同時にバクテリアフィルタの役割も果たすという効果を奏する。
また別の変形実施例としては、深部体温に基づくガス温度の変動の代わりに、体表面温度に基づいてガス温度の変動させることも考えられる。図12Bは、時刻と「手足の甲の身体に対する相対温度」の関係を表すグラフである。「手足の甲の体に対する相対的温度」とは、手足の甲の皮膚温から、首のつけ根にある鎖骨の下の皮膚温(胴体ないし体幹の温度に近い)を引いたものと定義する。体表面温度として上記の「手足の甲の体に対する相対的温度」を代表させるとすると、図12Bと図12Cを比べれば、体表面温度と眠りやすさとの間に相関があることがわかる。すなわち体表面温度が上がると、眠りやすくなり、逆に体表面温度が下がると、眠りにくくなる。これはヒトの身体が、深部体温を下げるために、皮膚からの熱放出が大きくし、深部体温が上げるために、皮膚からの熱放出を抑えることを反映しているものと考えられる。したがってこのような態様で体表面温度を測定すれば、特別な深部体温センサを用意しなくても、深部体温の変動に基づくガス温度の制御が可能な呼吸補助装置を実現することができ、呼吸補助における、より快適な睡眠が可能になるという効果を奏する。
具体的には、図1において、深部体温センサ120を体表面温度センサと読み替え、図2において、深部体温測定部160を使用者の体表面の温度である体表面温度を測定する体表面温度測定部と読み替える構成が望ましい。すなわち生体情報取得部140が、使用者の体表面の温度である体表面温度を測定する体表面温度測定部を有し、温度変動部130が、体表面温度測定部により測定される体表面温度が上昇するときに、ガス温度を下降させるように加温部80の制御をおこなう。
また他の変形実施例として、使用者に使用者の体動を検出するための加速度センサを装着して体動を捉え、その情報に基づいてガス温度を変動させることも考えられる。
ヒトは睡眠中、体動が大きいときには、いわゆる浅い睡眠、すなわち「レム睡眠」状態、体動が小さいときには、いわゆる深い睡眠、すなわち「ノンレム睡眠」状態にある。呼吸補助装置1の制御装置10に、加速度センサが検出した体動の情報から、体動を測定する体動測定部と、体動測定部が測定した体動から使用者の睡眠の深さを判定する睡眠深度判定部を設ける。そして睡眠の深さが深まるときに、温度変動部130がガス温度を下降させることが考えられる。
上記の態様の呼吸補助装置1は、呼吸補助における、より快適な睡眠が可能にするという著しく優れた効果を奏する。
以上の変形実施例は、本明細書内に記載されたすべての実施形態、変形実施例にそれぞれ適用可能であることは言うまでもない。