JP6912369B2 - 耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼 - Google Patents

耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼 Download PDF

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Description

本発明は、大気環境に晒され耐銹性が要求される部材、例えば、自動車の排気系部材、厨房機器類、貯水タンク、外装部材に使用される、耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼に関する。
自動車の排気系には、エキゾーストマニホールド、触媒コンバータ、フレキシブルパイプ、センターパイプおよびマフラといった部品に加え、EGR(Exhaust Gas Recirculation)、DPF(Diesel Particulate Filter)、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムといった環境対応部品が装着されている。排気系のなかで、例えばエキゾーストマニホールド、触媒コンバータのようにエンジンから排出される高温の排ガスに曝される部品は、高温強度、熱疲労特性および耐酸化性といった耐熱性が重視され、一方、センターパイプおよびマフラのように排気系の後方に位置する部品には耐凝縮水腐食性や耐塩害腐食性といったいわゆる耐食性が重視される。これらの排気系部材にはフェライト系ステンレス鋼が多く使用されているが、近年外観の重要性が高まっている。これまでは、腐食や疲労等によって板厚を貫通するような損傷に対する抵抗性が重要視されてきたが、納車時や車検時に排気系部材の外観をみた際に、赤錆などによる色調の変化をユーザーが気にする事例が増えている。
家庭用や業務用の厨房機器類や建築用外装部材等にもステンレス鋼が多く使用されており、価格的に優位なフェライト系ステンレス鋼も適用が進んでいる。これらの部材は室内、屋外問わず使用されるが、外観が重視されて赤錆などによる色調の変化にユーザーが敏感な場合が多い。
赤錆の生成を抑制するためには耐銹性を向上させる必要がある、耐銹性を向上させるには、Cr量の増加やNi、Moの添加といった高合金化によるのが一般的である。このうち特にMoは高価な合金元素であり、高価格化を招く。そのため、Cr量の増加やNi、Moの添加に頼らずに安価に耐銹性を向上させる手段が求められていた。
特許文献1には、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Cr:8〜35%、Mn:1.5%以下、Si:0.8〜2.5%および/またはAl:0.6〜6.0%を含み、SiおよびAlの合計量が1.5%以上であることを特徴とする石油系燃料改質器用フェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献2には、C:0.03%以下、N:0.03%以下、Si:2.0%以下、Mn:1.5%以下、S:0.008%以下、Cr:11〜25%、Al:6.0%以下で、Cr+3Si+15Al>22を満足する鋼の表面に、スピネル系酸化物濃度が15%以下に抑制された厚さ0.01〜10μmの酸化皮膜を有する集熱用伝熱材が開示されている。
特許文献3には、C:0.02%以下、N:0.03%以下、Mn:1.5%以下、Cr:5〜16%、Ni:1.0%以下、Nb:0.4〜1.5%、Co:0.04〜0.5%、Si:2.0%以下、Al:0.1〜5.0%を含み、Si+Al:1.0〜5.0を満足する高温用高靭性フェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献4には、C:0.001〜0.015%、N:0.001〜0.015%、Si:0.50〜2.00%、Mn:0.01〜1.00%、P:0.010〜0.030%、S:0.003%以下、Cr:10〜14%、NbおよびTiのいずれか1種または2種:20(C+N)≦Nb+Ti≦0.6%からなる耐高温塩害腐食性に優れた自動車排気系機器用フェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献5には、C:0.001〜0.1%、Si:1.5超え〜4.0%、Mn:0.05〜4.0%、Cr:10.5〜30%、Ni:35%以下、Ti:0.002〜0.030%および/またはAl:0.002〜0.10%、N:0.001〜0.4%を含有し、Si/(Ti+Al)≧40を満足するろう付け性に優れるステンレス鋼が開示されている。
特許文献6には、C:0.05%以下、N:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Cr:10.0〜30.0%、Ni:1.0%以下、Al:0.2%以下を含み、鋼中の(O)、Al23,CaOは0.0005≦O−0.5Al23−0.3CaO≦0.012を満足することを特徴とする溶接溶け込み性に優れるフェライト系ステンレス鋼板が開示されている。
特許文献7には、介在物が0.1≦(4×[CaO]+2×[MgO]+3×[CaS]+0.4×[MnS])/([TiO2]+[Al23]+[SiO2])≦10を満足し、かつその大きさが平均円相当径で15μm以下であることを特徴とするCrを11%以上含有するフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献8には、C:0.02%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.05%以下、S:0.015%以下、Cr:5〜32%、N:0.02%以下、Al:0.005%以下、O:0.01%以下、Ti:0.08%以上かつ6×(C+N)以上、0.5%以下、Ca:0.0005〜0.0050%を含有し、酸化物系介在物の組成がTi酸化物:20〜90%、Al23:50%以下、CaO:5〜50%を満足することを特徴とする表面性状が良好で耐食性と成形加工性に優れたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特許文献9には、介在物がCaO−SiO2−MgO−Al23−MnO−Cr23で構成され、その平均組成がCr23:10.3〜55%、Al23:50%以下、MgO:15%以下であり、最大円相当径が20μm以下であることを特徴とするステンレス鋼が開示されている。
特許文献10には、C:0.070%以下、N:0.02%以下、Si:0.05〜0.60%以下、Mn:0.04〜0.50%、P:0.030%以下、S:0.0003〜0.0020%、Cr:16〜21%、Ni:0.60%以下、Al:0.002〜0.14%、Ti:0.35%以下を含み、最大径2μm以上の介在物組成が、[(CaO)+(MgO)]/[(Al23)+(SiO2)+(TiO2)]≦0.50、(FeO)≦1.5を満足することを特徴とする耐発銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼が開示されている。
特開2003−160840号公報 特開2008−101240号公報 特開平5−78791号公報 特開平6−248394号公報 国際公開第2016/152854号 特開平10−102212号公報 特開平10−237596号公報 特許第3661418号公報 特許第4285302号公報 特許第5744576号公報
特許文献1〜10に記載のステンレス鋼は、安価に耐銹性を向上させる手段としては、ある程度有効であるが、さらなる改善の余地があった。
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、耐銹性に優れ、かつ安価なフェライト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
上記課題を解決することを目的とした本発明の要旨は、以下のとおりである。
〔1〕質量%で、C:0.020%以下、Si:1.0超え〜3.5%、Mn:0.02〜0.80%、S:0.002%未満、Cr:10.5〜15.0%未満、Ti:0.03〜0.35%、Al:0.002%以上、0.5%未満、Ca:0.0005〜0.005%、N:0.025%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、かつCr+1.8Siで16.0%以上を満足し、さらにCaおよびAlを含む酸化物系介在物中のCaO/Al23の値が質量比で0.75以上であることを特徴とする耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
〔2〕さらに、質量%で、Nb、0.03〜0.60%、Ni:0.1〜1.2%、Mo:0.1〜2%、W:0.1〜1%、V:0.05〜0.5%、Cu:0.1〜1.2%、Co:0.01〜0.5%、Sn:0.001〜0.5%、Sb:0.001〜0.5%、Zr:0.001〜0.3%、Ga:0.0001〜0.01%、Ta:0.0001〜0.01%のうちいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする〔1〕記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
〔3〕さらに、質量%で、Mg:0.0002〜0.005%、REM:0.005〜0.1%、B:0.0002〜0.005%のうち、いずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
本発明によれば耐銹性に優れ、かつ安価なフェライト系ステンレス鋼を提供することができる。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
まず、本発明の概要の説明として、発明の創出にあたって特に検討した点および検討結果について説明する。
ステンレス鋼の表面には、Crに富む(Fe、Cr)酸化物皮膜が形成されており、これにより優れた耐食性を発現している。この皮膜は、何らかの要因で皮膜が破壊されたとしても元に戻す自己修復能を有しており、Crが高くMoを含有する材料ほど耐食性に優れる酸化皮膜が形成される。そのため高い耐食性が要求される部材では、Moを含有するSUS436LやSUS444といった材料が適用されるが、高価であるという問題がある。
こうした背景を鑑み、本発明者らは、Moに比べ安価でステンレス鋼の耐銹性を改善できる合金元素と、腐食の起点として知られる介在物の組成に着目して鋭意検討した。
その結果、ステンレス鋼に一定量以上のSiを含有させると共に、酸化物系介在物の組成制御が、耐銹性に有効であることを知見した。具体的には以下の通りである。
(1)鋼中に1.0%を超えるSiを含有させること。
(2)CaおよびAlを含む酸化物系介在物中のCaO/Al23の値が、0.75以上であること。
まず、知見(1)について、本発明者が耐銹性に及ぼすSiの影響について検討した結果を説明する。本発明で対象とする部材の外面側は塩害環境にさらされるが、少なくともSUS430LXレベルの耐銹性が必要と判断した。そこで、耐銹性の序列を簡易的に評価できる手法として孔食電位測定を採用し、Siの影響について検討した。測定はJISG0577に準拠して行い、電流値が100μA/cm2を超える最も貴な電位を孔食電位V‘c100と定義した。1%を超えるSiを含有する場合には、Cr含有量の増加はもとよりSi含有量の増加によっても孔食電位が向上し、その効果はCrの約1.8倍あることを知見した。30℃の3.5%NaCl溶液中における孔食電位において、SUS430LXレベルとするには、飽和KClを内部溶液とするAg/AgClを参照電極に用いた時に、150mVとした。Cr+1.8Siで16.0%以上とすればこの値を満足できる。望ましくは160mV以上、さらに望ましくは170mV以上である。
このようにSi含有量の増加によって孔食電位が向上した理由を検討するために、X線光電子分光法(XPS)により表面酸化皮膜を分析した。表面にはSiの濃化した酸化皮膜が形成されており、皮膜の保護性が向上した結果、孔食電位が向上したと考えられた。
次に、知見(2)について、本発明者が耐銹性に及ぼす介在物組成について検討した結果を説明する。介在物を起点として腐食が発生する場合には、一般にまず介在物が溶解してその後ステンレス鋼母材が溶解するといわれている。そのため、多くの場合、介在物を溶解しにくい成分とすることで腐食の発生を抑制する対策がとられる。しかしながら、耐食性以外の特性や製造性等の観点もあり、工業的にすべての介在物を溶解しにくい成分とすることは容易ではない。そこで、ステンレス鋼の美観を阻害するのは、ステンレス鋼が溶解することによって生じる赤錆なので、ステンレス鋼の腐食を抑制させる方向で検討することとした。
介在物周辺のステンレス鋼母材がいったん溶解すると、その部分のpHが低下してステンレス鋼母材の腐食がさらに進行してしまう。したがって、pHの低下を抑制することができれば、ステンレス鋼の腐食が進みにくくなると考えた。そこで、ある程度溶解しやすく、かつ溶解することでpHを上昇させることができる介在物について検討した。
介在物を形成しやすい酸化物系を選択し検討した結果、CaOを含む酸化物が溶解しやすく、かつ溶解した時に良好なpH上昇効果が得られた。CaOを含有する酸化物系介在物はAl23と混合酸化物を形成する場合が多いため、CaO/Al23の値を変化させて溶解時における混合酸化物のpH変化を測定した。その結果CaO/Al23の値が質量比で0.7以上の時に、良好なpH上昇効果が得られ、0.8以上でその効果は飽和することが判明した。そこで、CaO/Al23の値が異なる介在物を有する鋼材を作製して、短期間の乾湿繰り返し試験を実施したところ、CaO/Al23の値が質量比で0.75以上の時に明瞭に発銹が軽減されて、CaO/Al23の値の増加と共に耐銹性が向上した。この結果より、CaOを含む酸化物が溶解して周辺のpHを上昇させた結果、ステンレス鋼の溶解が抑制されて発銹が軽減されたと考えられた。耐銹性の向上効果を得るには、CaO/Al23の値が質量比で0.75以上である必要があり、0.8以上とすると好ましい。より好ましくは0.85以上である。pH上昇効果の観点からはCaO/Al23の値が高い方が好ましいが、凝固組織が粗大化してリジングなどの表面欠陥の原因となるため、CaO/Al23の値を2.0以下とするのが好ましい。より好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.6以下である。混合酸化物中のCaOとAl23の含有量は、CaO+Al23で、80質量%以上が好ましく、85質量%以上が、より好ましい。また、混合酸化物中に酸化物の溶解を抑制するSiO2が含まれると、pH上昇効果に悪影響を及ぼすので、混合酸化物中のSiO2は5%以下とするのが好ましい。同様にTi酸化物も溶解を抑制するので、混合酸化物中のTi酸化物(TiO2)は15%以下とするのが好ましい。
以上が、発明の創出にあたって特に検討した点および検討結果についての説明である。
次に、本発明の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼を構成する元素の各組成範囲、および範囲を限定した理由について説明する。なお、以下の説明では、特に断らない限り、各成分の%は、質量%を表すものとする。
(C:0.020%以下)
Cは、強度を確保するために有用な元素であるが、過剰の添加は耐粒界腐食性を低下させるため、Cの含有量を0.020%以下とする。好ましくは0.002%以上、0.018%以下である。
(Si:1.0超え〜3.5%)
Siは、本発明において最も重要な元素であり、耐孔食性を向上させる効果がある。耐酸化性にも効果があり、1.0%を超えて含有させることが必要である。好ましくは1.1%以上、より好ましくは1.2%以上である。しかしながら、過剰な添加は溶接性および加工性を低下させるため、Siの含有量を3.5%以下とする。好ましくは3.2%以下、より好ましくは2.9%以下である。
(Mn:0.02〜0.80%)
Mnは、脱酸元素として有用な元素であり、少なくとも0.02%以上含有させることが必要である。好ましくは、0.05%以上である。しかしながら、過剰に含有させると耐食性を劣化させるので、Mnの含有量を0.80%以下とする。好ましくは0.60%以下、より好ましくは0.40%以下である。
(S:0.002%未満)
SはMnやCaと結合して硫化物を形成して耐食性を劣化させるため、Sの含有量は0.002%未満に制限させる必要がある。特に、本発明で重要なCaO量の観点からもCa硫化物の生成を抑制させる必要がある。そのため、好ましいS含有量は0.0015%以下であり、より好ましくは0.001%以下である。
(Cr:10.5〜15.0%未満)
Crは、耐食性を確保する上で基本となる元素である。そのため、Crの含有量として少なくとも10.5%以上必要である。好ましくは11.0%以上、より好ましくは11.5%以上、さらに好ましくは12.5%以上である。Crの含有量を増加させるほど耐食性を向上させることができるが、加工性を低下させるため15.0%未満とした。好ましくは14.8%以下、より好ましくは14.5%以下である。
(Ti:0.03〜0.35%)
Tiは、CおよびNを固定し耐粒界腐食性を向上させると共に加工性に有用な元素であるため、0.03%以上含有させることが必要である。しかしながら、過剰に含有させると製造性を劣化させるので、Tiの含有量を0.35%以下とした。好ましくは8×(C+N)以上、0.32%以下、より好ましくは10×(C+N)%以上、0.28%以下である。
(Al:0.002%以上、0.5%未満)
Alは、脱酸効果等を有するので精練上有用な元素であると共に、耐食性にも有効に作用するため、0.002%以上含有させることが必要である。好ましくは0.01%以上である。しかしながら、過剰に含有させると靭性を劣化させるので、Alの含有量は0.5%未満とした。好ましくは0.4%以下である。
(Ca:0.0005〜0.005%)
Caは、脱酸効果等、精練上有用な元素であると共に、本発明における酸化物系介在物の組成に影響を与える重要な元素である。そのため、Caの含有量として少なくとも0.0005%以上必要である。好ましくは0.0006%以上、より好ましくは0.0008%以上である。しかしながら、過剰に含有させると硫化物を形成して耐食性に悪影響をおよぼすため、0.005%以下とした。好ましくは0.003%以下、より好ましくは0.002%以下である。
(N:0.025%以下)
Nは、強度および耐孔食性に有用な元素であるが、過剰の添加は、耐粒界腐食性を低下させるため、Nの含有量は0.025%以下とする。好ましくは0.002〜0.023%、より好ましくは0.003〜0.020%である。
さらに必要に応じて、以下の成分のうちいずれか1種または2種以上を含有すると好ましい。
(Nb:0.03〜0.60%)
Nbは、CおよびNを固定し、溶接部の耐粒界腐食性を向上させる共に、高温強度を向上させるので、必要に応じて0.03%以上含有させることができる。好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.07%以上である。また、Nb/C+Nで8以上含有させることが好ましく、Nb/C+Nで10以上含有させることがさらに好ましい。しかしながら、過剰の添加は、溶接性を低下させるため、Nbの含有量の上限を0.60%とした。好ましくは0.45%以下、より好ましくは0.35%以下である。
(Ni:0.1〜1.2%)
Niは、耐食性を向上させるうえで必要に応じて、0.1%以上含有させる。好ましくは、0.2%以上、より好ましくは0.25%以上である。過剰の添加はコストアップになるので、1.2%以下含有させるのが好ましい。より好ましくは1.1%以下、さらに好ましくは1.0%以下である。
(Mo:0.1〜2%)
Moは、強度および耐食性を向上させる上で、必要に応じて0.1%以上含有させる。好ましくは0.2%以上、より好ましくは0.3%以上である。過剰の添加はコストアップになるので、2%以下含有させるのが好ましい。より好ましくは1.5%以下、さらに好ましくは0.9%以下である。
(W:0.1〜1%)
Wは、強度および耐食性を向上させる上で、必要に応じて0.1%以上含有させる。好ましくは0.2%以上である。過剰の添加はコストアップになるので、1%以下含有させるのが好ましい。より好ましくは0.9%以下である。
(V:0.05〜0.5%)
Vは、耐食性を向上させる上で、必要に応じて0.05%以上含有させることができる。過剰の添加は、加工性を劣化させると共に、高価であるためコストアップにつながるので、0.5%以下含有させることが好ましい。
(Cu:0.1〜1.2%)
Cuは、耐食性を向上させる上で、必要に応じて0.1%以上、1.2%以下含有させることができる。過剰の添加は、加工性を劣化させる。好ましくは0.2%以上、0.9%以下である。
(Co:0.01〜0.5%)
Coは、耐食性を向上させる上で、必要に応じて0.01%以上含有させることができる。過剰の添加はコストアップにつながるため0.5%以下含有させるのが好ましい。好ましくは0.03%以上、0.4%以下である。
(Sn:0.001〜0.5%)
Snは、耐食性を向上させる上で、必要に応じて0.001%以上含有させることができる。しかしながら、過剰の添加は製造性や靭性を低下させるので、0.5%以下含有させるのが好ましい。より好ましくは0.01%以上、0.3%以下、さらに好ましくは0.05〜0.25%である。
(Sb:0.001〜0.5%)
Sbは、耐食性を向上させるうえで、0.001%以上を必要に応じて含有させることができる。しかしながら、過剰の添加は製造性や靭性を低下させるので0.5%以下含有させるのが好ましい。より好ましくは0.005%以上、0.4%以下である。
(Zr:0.001〜0.3%)
Zrは、耐食性を向上させるうえで、0.001%以上を必要に応じて含有させることができる。しかしながら、過剰の添加はコストアップにつながるため、0.3%以下含有させるのが好ましい。より好ましくは0.01%以上、0.2%以下である。
(Ga:0.0001〜0.01%)
Gaは、耐食性および耐水素脆化性を向上させる元素であるため、0.001%以上を必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ga含有量が0.01%を超えるとコストが増加する。そのため、Ga含有量は0.01%以下とする。より好ましいGa含有量は0.0005%以上、0.005%以下である。
(Ta:0.0001〜0.01%)
Taは、耐食性を向上させる元素であるため、0.001%以上を必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Ta含有量が0.01%を超えるとコストが増加する。そのため、Ta含有量は0.01%以下とする。より好ましいTa含有量は0.0005%以上、0.005%以下である。
(Mg:0.0002〜0.005%以下)
Mgは、脱酸効果等を有するので精練上有用な元素であることから、必要に応じて0.0002%以上、0.005%以下含有させることができる。好ましくは0.0004〜0.002%である。
(REM:0.005〜0.1%)
REMは、脱酸効果等を有するので精練上有用な元素であると共に、耐酸化性にも有用であるため、必要に応じて0.005%以上、0.1%以下含有させることができる。好ましくは0.008%以上、0.08%以下である。
(B:0.0002〜0.005%)
Bは、ろう付け性を向上させる上で、必要に応じて0.0002%以上含有させることができる。Bの添加は2次加工性の向上にも有効である。しかしながら、過剰の添加は耐粒界腐食性を低下させるので0.005%以下含有させるのが好ましい。より好ましくは0.0004〜0.004%である。
本発明のステンレス鋼は、上記した元素以外の残部はFeおよび不可避的不純物からなる。
なお、不可避不純物のうち、Pについては、溶接性の観点から0.05%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.04%以下である。
本発明のステンレス鋼は、基本的にはステンレス鋼を製造する一般的な工程をとって製造される。例えば、電気炉で上記の化学組成を有する溶鋼とし、AOD炉やVOD炉などで精練して、連続鋳造法または造塊法で鋼片とした後、熱間圧延−熱延板の焼鈍−酸洗−冷間圧延−仕上げ焼鈍−酸洗の工程を経て製造される。必要に応じて、熱延板の焼鈍を省略してもよいし、冷間圧延−仕上げ焼鈍−酸洗を繰り返し行ってもよい。本発明で重要な酸化物系介在物の組成については、精錬時の脱酸材およびその添加方法、さらにはフラックスの塩基度や添加条件を調節すること等によって制御することができる。
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
本発明の範囲内の鋼組成および介在物組成を有するステンレス鋼、および本発明の範囲外の鋼組成および/または介在物組成を有するステンレス鋼を製造し、耐銹性を評価した。具体的な手順は以下の通りである。
まず、表1に示す化学組成を有する鋼を、CaOとCaF2を含有するフラックスの量を1〜2kgの範囲で、フラックス添加後の処理時間を5〜30分の範囲で変更させながら、真空溶解炉にて溶製して17kg扁平鋼塊を作製した。その後、加熱温度1200℃にて厚さ4.5mmまで熱延、熱延板焼鈍、ショットを行い、板厚1mmまで冷延した。その後、材料の再結晶温度に応じて仕上焼鈍を行い、冷延焼鈍板を得た。
Figure 0006912369
[介在物組成]
熱延鋼板よりL断面観察用の試料を作成し、SEM−EDXを用いた組成分析を用いた。20個の酸化物系介在物の組成分析を行い、CaOとAl23をともに含む介在物を選択し、その平均を介在物の組成とした。なお、介在物中のTi酸化物についてはTiO2として求めた。
次に、得られたステンレス鋼の耐銹性を評価した。耐銹性は、以下に記載のように、孔食電位およびCCT(Cyclic Corrosion Test)で評価した。
[孔食電位]
冷延鋼板より幅15mm、長さ20mmの試験片を切り出し、エメリー紙にて#600まで湿式研磨した。板の中央部分10mm×10mmが露出するように、周囲を樹脂で被覆して、測定用の電極とした。これを、30℃の3.5%NaCl水溶液中でJIS G0577に準拠して孔食電位(V‘c100:電流値が100μA/cm2を超える最も貴な電位)を測定した。なお、参照電極には飽和KClを内部溶液とするAg/AgClを用い、電位の掃引速度は20mV/minとした。試験片数は5とし、得られた孔食電位の平均値で評価した。平均値が150mV以上を「良」とし、150mV未満を「不良」とした。
[CCT]
冷延鋼板より幅70mm、長さ150mmの試験片を3枚ずつ切り出し、エメリー紙を用いて#600まで湿式研磨を行った。アセトンを用いて脱脂後、裏面および端面をシールして複合サイクル試験機内に設置した。その後、人工海水噴霧(35℃、4h)−乾燥(60℃、2h)−湿潤(50℃、2h)からなるサイクルを3回実施した。試験片を試験機から取り出した後、表面の外観をJIS G0595に準拠してレイティングナンバー(以下、RN)を判定した。判定したRNが4以上を耐銹性良好、3以下を不良とした。
表2に、酸化物系介在物の組成、孔食電位およびRNを示す。
Figure 0006912369
No.1〜No.12は、鋼組成および介在物組成が本発明の範囲内にあり、孔食電位およびRNにおいて良好な特性を示していた。
一方、No.13〜No.19は、鋼組成または介在物組成の少なくとも一方が、本発明の範囲外であり、孔食電位またはRNの少なくとも一方が不良であった。
より詳細には、No.13は、フラックス添加後の処理時間が短いため、CaO/Al23が0.75未満となり、孔食電位とRNが不良であった。Siが本発明範囲の下限以下、Cr+1.8Siが16.0%未満であった。
No.14は、フラックス添加後の処理時間が短いため、CaO/Al23が0.75未満となり、孔食電位とRNが不良であった。Cr+1.8Siが16.0%未満であった。
No.15は、Cr+1.8Si≧16.0%を満足するが、フラックス添加後の処理時間が短いため、CaO/Al23が0.75未満であり、RNが不良であった。
No.16は、Cr+1.8Siが16.0%未満であり、孔食電位とRNが不良であった。
No.17は、Tiが本発明範囲の下限以下であり、孔食電位とRNが不良であった。
No.18は、Alが本発明範囲の下限以下であり、酸化物系介在物中のSiO2およびTiO2が増加して溶解が抑制されるため、RNが不良であった。
No.19は、Caが本発明範囲の下限以下であり、フラックス添加後の処理時間が短くはないが、CaO/Al23が0.75未満であり、RNが不良であった。
以上の結果から、鋼組成および介在物組成を本発明の範囲内に制御することで、安価で耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼が得られることが分かった。
本発明の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼は、自動車排気系部材や、家庭用や業務用の厨房機器類や、建築用外装部材の素材として好適である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.020%以下、Si:1.0超え〜3.5%、Mn:0.02〜0.80%、S:0.002%未満、Cr:10.5〜15.0%未満、Ti:0.03〜0.35%、Al:0.002%以上、0.5%未満、Ca:0.0005〜0.005%、N:0.025%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる化学組成を有し、かつCr+1.8Siで16.0%以上を満足し、さらにCaおよびAlを含む酸化物系介在物中のCaO/Al23の値が質量比で0.75以上であることを特徴とする耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
  2. さらに、質量%で、Nb、0.03〜0.60%、Ni:0.1〜1.2%、Mo:0.1〜2%、W:0.1〜1%、V:0.05〜0.5%、Cu:0.1〜1.2%、Co:0.01〜0.5%、Sn:0.001〜0.5%、Sb:0.001〜0.5%、Zr:0.001〜0.3%、Ga:0.0001〜0.01%、Ta:0.0001〜0.01%のうちいずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
  3. さらに、質量%で、Mg:0.0002〜0.005%、REM:0.005〜0.1%、B:0.0002〜0.005%のうち、いずれか1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の耐銹性に優れたフェライト系ステンレス鋼。
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