以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。本実施の形態は、建設機械としてクローラ式の油圧ショベルに本発明を適用し、油圧ショベルのバケット先端にモニタポイントを設定した場合のものである。なお、各図中、同等の部材には同一の符号を付し、重複した説明は適宜省略する。
図1は、本実施の形態に係る油圧ショベルの外観を示す図である。
図1において、油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に設けられ、下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3と、上部旋回体3に設けられたキャブ4及びフロント作業機5とを備えている。フロント作業機5は、上部旋回体3に上下方向に回転可能に設けられたブーム6と、ブーム6の先端に上下方向に回転可能に設けられたアーム7と、アーム7の先端に上下方向に回転可能に設けられたバケット8とを有する。ブーム6、アーム7、バケット8は、それぞれ、ブームシリンダ9、アームシリンダ10、バケットシリンダ11を伸縮することにより駆動される。
また、油圧ショベル1には、上部旋回体3の前後方向の傾斜角(ピッチ角度)を検出する車体IMU21、上部旋回体3に対するブーム6の回転角(ブーム角度)を検出するブームIMU22、ブーム6に対するアーム7の回転角(アーム角度)を検出するアームIMU23、アーム7に対するバケット8の回転角(バケット角度)を検出するバケットIMU24が設けられている。
さらに、油圧ショベル1には、GNSS衛星からの信号を受信する2個のGNSSアンテナ31,32、基準局からのRTK補正データ(後述)を受信するためのRTK補正データ受信アンテナ34、位置等の車体データを送信する車体データ送信アンテナ36が設けられている。2個のGNSSアンテナ31,32は上部旋回体3の旋回中心から外れた旋回体後部の左右に設置されている。
図2は、油圧ショベル1に搭載された位置計測システムの装置構成を示すブロック図である。
位置計測システム200は、基準局からのRTK補正データ(後述)をアンテナ34を介して受信する無線機35、RTK補正データとGNSSアンテナ31,32により受信されるGNSS衛星からの信号とに基づいてGNSSアンテナ31の位置と、GNSSアンテナ31からGNSSアンテナ32へのベクトルをリアルタイムに計測するGNSS受信機33、GNSS受信機33からの位置及びベクトルデータとIMU21〜24からの角度データを入力して油圧ショベル1の位置及び姿勢やバケット8の先端(モニタポイント)の位置を演算するコントローラ38、コントローラ38の演算結果を表示する表示装置39、コントローラ38により演算された位置等の車体データをアンテナ36を介して送信する無線機37を備えている。
コントローラ38には、記憶スイッチ40及び手動合わせスイッチ41が接続されている。記憶スイッチ40は、コントローラ38で演算する油圧ショベル1の位置及び姿勢やバケット8の先端位置の精度に対して、再現性を維持して高精度の結果が必要である場合に、GNSSの衛星や車体の情報を記憶するように指示するためのスイッチである。手動合わせスイッチ41は、前述の記憶情報と照合して、位置計算に使用するためのGNSS衛星の組み合わせを変更するように指示するためのスイッチである。記憶スイッチ40及び手動合わせスイッチ41の詳細については後述する。
また、コントローラ38には、ICカード等の外部記録媒体42を接続することができる。外部記録媒体42には、後述するサーバコントローラ55(図3に示す)で計画された作業範囲の原地形データや目標地形データなどが記憶されており、オペレータはシステム起動時に外部記録媒体42をコントローラ38に接続してデータを入力する。そして、作業終了時には計測データを外部記録媒体42に記録し、サーバコントローラ55に接続して計測データを入力し、施工管理に使用する。
図3は、GNSS基準局としての役割を持つ事務所側システムの装置構成を示すブロック図である。
図3において、事務所機器50は、油圧ショベル1及びバケット8等の位置や作業の管理を行う機器であり、GNSS衛星からの信号を受信するGNSSアンテナ52、RTK補正データを油圧ショベル1に送信する無線アンテナ54、油圧ショベル1から上述した油圧ショベル1やバケット8の位置等の車体データを受信する無線アンテナ57、予め計測された3次元位置データとGNSSアンテナ52により受信されるGNSS衛星からの信号とに基づき、上述した油圧ショベル1のGNSS受信機33(図2に示す)でRTK(リアルタイムキネマティック)計測を行うためのRTK補正データを生成するGNSS基準局としてのGNSS受信機51、GNSS受信機51で生成されたRTK補正データをアンテナ54を介して送信する無線機53、アンテナ57を介して車体データを受信する無線機56、無線機56により受信した車体データに基づき油圧ショベル1やバケット8の位置を表示・管理するための演算及び表示を行うサーバコントローラ55を備えている。
また、サーバコントローラ55には、外部記録媒体42を接続することができる。サーバコントローラ55は、外部記録媒体42を介して、位置計測システム200(図2に示す)との間で、原地形データ、目標地形データ及び計測データの入出力を行う。
図4は、GNSS受信機33及びコントローラ38に備わる位置姿勢演算機能を示すブロック図である。
図4において、GNSS受信機33は、無線機35を介してGNSS受信機51(図3に示す)からのRTK補正データを受信するRTK補正データ受信部100と、GNSSアンテナ31,32からのGNSS信号を受信する衛星信号受信部101と、衛星信号強度や衛星配置等から位置演算に使用する衛星を選択する衛星選択部102と、GNSSアンテナ31の位置、及びGNSSアンテナ31から32へのベクトルを演算するGNSS位置及びベクトル演算部103とを有する。
コントローラ38は、記憶スイッチ40及び手動合わせスイッチ41の入力に基づいてGNSS及び車体情報を記憶する測位状態記憶部104と、車体IMU21の計測結果に基づいて油圧ショベル1の傾斜角度を演算する車体傾斜演算部105と、GNSS位置及びベクトル演算部103と車体傾斜演算部105の演算結果に基づいて油圧ショベル1の位置及び姿勢を演算する車体位置姿勢演算部106と、フロントIMU22〜24の計測結果に基づいてブーム6、アーム7及びバケット8の角度を演算するフロント角度演算部107と、車体位置姿勢演算部106とフロント角度演算部107の演算結果に基づいてモニタポイントの位置を演算するバケット先端位置演算部108とを有する。
次に、本実施の形態に係わる位置計測システム200(図2に示す)の動作の概要を説明する。
本実施の形態では高精度での位置計測を行うため、図2に示したGNSS受信機33でRTK計測を行う。このためには、まず、図3に示したRTK補正データを生成するGNSS基準局51が必要となる。GNSS基準局51は、上記のように予め3次元計測されたアンテナ52の位置データとアンテナ52により受信されるGNSS衛星からの信号とに基づいて、RTK計測のためのRTK補正データを生成する。生成されたRTK補正データは、無線機53によりアンテナ54を介して一定周期で送信される。
一方、図2及び図4に示した車載側のGNSS受信機33は、アンテナ34を介して無線機35により受信されるRTK補正データと、GNSSアンテナ31,32により受信されるGNSS衛星からの信号に基づき、アンテナ31の3次元位置とアンテナ31からアンテナ32へのベクトルをRTK計測する。このRTK計測によって、アンテナ31の3次元位置及びアンテナ31からアンテナ32へのベクトルが高精度で計測される。そして、計測された3次元位置データはコントローラ38に入力される。
また、車体IMU21によって油圧ショベル1のピッチ角度、フロントIMU22〜24によってそれぞれブーム6、アーム7及びバケット8の各角度が計測され、同様にコントローラ38に入力される。
コントローラ38は入力された各種データに基づき、一般的なベクトル演算と座標変換を行って、油圧ショベル1の位置及び姿勢と、バケット8の先端の3次元位置を演算する。また、これらの演算結果を、外部記録媒体42から入力した地形データと合わせて、表示装置39の上に表示してオペレータに作業状況を知らせると共に、無線機37によりアンテナ36を介して送信する。
送信された油圧ショベル1の位置及び姿勢とバケット8の先端の位置データは、アンテナ57を介して無線機56により受信され、サーバコントローラ55に入力される。サーバコントローラ55は入力された油圧ショベル1の位置及び姿勢とバケット8の先端の位置データを保存すると共に、モニタ上に表示する。これにより事務所において油圧ショベル1の作業状態を管理することができる。
次に、本発明が課題とする、位置計算の再現性の悪化について、図5〜図10を用いて説明する。
図5は、油圧ショベル1の掘削動作時の姿勢を模式的に示したものである。図5において、油圧ショベル1はいわゆる法面切り上げ作業を行っている。図5に示すイメージは、表示装置39に表示される情報に概略等しく、オペレータはこの情報に基づいて、現地形61が目標地形62に近づくように、油圧ショベル1の掘削操作を行う。
図6は、油圧ショベル1の旋回動作時の姿勢を模式的に示したものである。図6に示すように、通常、旋回動作は、掘削動作の終了後にブーム6を上げ、アーム7及びバケット8を巻き込み、バケット8と地面とのクリアランスを確保した状態で行う。そして、放土位置にてアーム7及びバケット8をダンプさせて、掘削土を所定位置に落とす。その後、掘削位置へ戻るための旋回動作を行い、掘削動作を繰り返す。
図7は、油圧ショベル1の掘削位置および放土位置、ならびにその時のGNSSアンテナ31,32の上空視界内にあるGNSS衛星81〜87の配置を模式的に示したものである。図7において、フロント作業機5が上側に向いた状態を掘削位置71、フロント作業機5が左側に向いた状態を放土位置72とし、掘削位置71から放土位置72への移動は左旋回で行い、放土位置72から掘削位置71への移動は右旋回で行うものとする。
GNSSによる位置計測において、GNSS受信機33は、GNSSアンテナ31,32で受信されるGNSS衛星からの測位信号の品質や、測位信号を受信しているGNSS衛星の配置等、種々の条件判定を行って位置計算に使用するGNSS衛星(測位信号)を選択している。
ここで、GNSS衛星の配置はDOP(Dilution of Precision)という数値で評価されており、例えばGNSS衛星が上空視界の一方向に偏って分布している場合などはDOPが悪く(数値が大きい)、結果として計算される位置精度が悪化する。これに対して、GNSS衛星が上空視界に偏りなく分布している場合はDOPが良く(数値が小さい)、計算される位置精度が向上する。これは、GNSSによる位置計測が、三角測量を応用した計測システムであることに起因する。
このため、捕捉可能なGNSS衛星81〜87が図7に示すような配置にある場合、掘削位置71では位置計算に使用するGNSS衛星として、例えば図8に塗りつぶしで示す衛星81,83,84,86が選択される。
しかし、油圧ショベル1が掘削動作が終了し、図6に示すような旋回姿勢を取って掘削位置71から放土位置72へと左旋回すると、GNSSアンテナ31,32とGNSS衛星81,86,87との間をフロント作業機5が通過することにより、GNSS衛星81,86,87の測位信号が遮られることになる。
この結果、放土位置72の位置計算時には、例えば図9に塗りつぶしで示すGNSS衛星82〜85が選択されることになり、図8の掘削位置71で選択された組み合わせから変化する。
さらに、油圧ショベル1は右旋回で掘削位置71へ戻り、掘削動作を繰り返すことになるが、放土位置72から掘削位置71へ右旋回する間はGNSS衛星82〜85の測位信号はフロント作業機5によって遮られないため、掘削位置71においても位置計算に使用するGNSS衛星の組み合わせが図10に示すようにGNSS衛星82〜85に保持され、前回の掘削動作時に選択されていたGNSS衛星81,83,84,86の組み合わせから変化したままになってしまう。
GNSSによる位置計測では、DOP以外にもGNSS衛星の時計誤差や軌道情報の誤差等、各GNSS衛星で微妙に異なる誤差要因があり、油圧ショベル1が同じ位置にあっても、位置計算に使用するGNSS衛星の組み合わせが異なると、位置計算結果にズレが生じ、位置計算の再現性が悪化するおそれがある。
このように、位置計算の再現性が悪化すると、表示装置39に表示されるバケット8と目標地形62との位置関係が掘削動作の前後で異なることになり、ひいては出来形が不連続になってしまうといった問題が生じる。
この問題を解決するため、本実施の形態では、図2に示す記憶スイッチ40を設け、記憶スイッチ40からの入力をトリガとして、その時の位置計算に使用されているGNSS衛星や車体位置及び姿勢などの情報を記憶し、手動合わせスイッチ41の入力信号や車体位置及び姿勢等の照合情報に基づいて、位置計算に使うGNSS衛星として、記憶されたGNSS衛星を優先的に選択することで、位置計算の再現性を向上させる。
次に、図11〜図17を用いて、油圧ショベル1の位置及び姿勢と、モニタポイントとしてのバケット8先端の位置計算手順ならびに、GNSS衛星の選択手順について説明する。
まず、ステップS101でスイッチ入力判定処理を実行する。スイッチ入力判定処理(ステップS101)の詳細を図12に示す。
図12において、まず、ステップS201で記憶スイッチ40がONされたか否かを判定する。判定結果がYESの場合はステップS202へ移行し、判定結果がNOの場合はステップS203へ移行する。
ステップS202で記憶フラグをONにする。
ステップS203で手動合わせスイッチ41がONされたか否かを判定する。判定結果がYESの場合はステップS204へ移行し、NOの場合はスイッチ入力判定処理(ステップS101)を終了する。
ステップS204で手動合わせフラグをONにし、スイッチ入力判定処理(ステップS101)を終了する。
図11に戻り、ステップS102でGNSS衛星を捕捉する。ここでいう捕捉とは、地球上を周回している多数のGNSS衛星の中から測位信号を受信できる衛星を選別することである。この時のGNSS衛星の配置は、例えば図7に示した通りである。
ステップS103で、ステップS102で捕捉したGNSS衛星から、位置計算に使用するGNSS衛星を選択する。この選択は、GNSSアンテナ31,32で受信されるGNSS衛星からの測位信号の品質や、測位信号を受信しているGNSS衛星の配置等、種々の条件判定に基づいて行われ、例えば図8に示す掘削位置71においては、GNSS衛星81,83,84,86が選択される。本実施例の記載においては、模式化のために仰角表現はせず、少ない衛星数で説明を行っているが、実運用時においても基本的な仕組みは同様である。
ステップS104でGNSS衛星情報記憶処理を実行する。GNSS衛星情報記憶処理(ステップS104)の詳細を図13に示す。
図13において、まず、ステップS301で記憶フラグがONか否かを判定する。判定結果がYESの場合はステップS302へ移行し、判定結果がNOの場合はGNSS衛星情報記憶処理(ステップS104)を終了する。
ステップS302で位置計算に使用するGNSS衛星情報を記憶し、GNSS衛星情報記憶処理(ステップS104)を終了する。ここで、記憶するGNSS衛星情報は例えば、衛星番号、S/N比、仰角及びDOP等である。
図11に戻り、ステップS105でGNSS衛星変更処理を実行する。ステップS105の処理内容の詳細については後述する。
ステップS106で、ステップS103で選択された(またはステップS105で変更された)GNSS衛星信号に基づくRTK測位により、GNSSアンテナ31の位置と、GNSSアンテナ31からGNSSアンテナ32へのベクトルを計算する。
ステップS107で、ステップS106の計算結果と、車体IMU21及びフロントIMU22〜24の計測結果に基づき、油圧ショベル1の位置及び姿勢と、バケット8先端の位置を計算する。
ステップS108で、車体位置姿勢情報記憶処理を実行する。車体位置姿勢情報記憶処理(ステップS108)の詳細を図14に示す。
図14において、まず、ステップS401で記憶フラグがONか否かを判定する。判定結果がYESの場合はステップS402へ移行し、判定結果がNOの場合は車体位置姿勢情報記憶処理(ステップS108)を終了する。
ステップS402で油圧ショベル1の位置及び姿勢を記憶する。ステップS402で記憶される姿勢は、例えば油圧ショベル1のフロント作業機5が向いている方向を示すヘディング角度であり、この値は、ステップS107で計算される。
ステップS403で記憶フラグをOFFにする。
ステップS404で変更情報格納フラグをONにし、車体位置姿勢情報記憶処理(ステップS108)を終了する。
次に、図15及び16を用いて位置計算の再現性を向上させるためのGNSS衛星変更処理(ステップS105)の詳細について説明する。ここで、図15は、油圧ショベル1のオペレータの指示に基づいて、位置計算に使用するGNSS衛星を人為的に指示する場合の例であり、図16は、油圧ショベル1の位置や姿勢などの車体情報に基づいて、位置計算に使用するGNSS衛星を自動的に変更する場合の例である。
図15に示す人為的変更の場合は、まず、ステップS501で手動合わせフラグと変更情報格納フラグが共にONか否かを判定する。判定結果がYESの場合はステップS502へ移行し、判定結果がNOの場合はGNSS衛星選択処理(ステップS105)を終了する。
ステップS502で、ステップS302で記憶したGNSS衛星とステップS103で選択したGNSS衛星とが一致するか否かを判定する。
ステップS502の判定結果がYESの場合はGNSS衛星選択処理(ステップS105)を終了する。これにより、位置計算に同じGNSS衛星が使用されることになるため、位置計算の再現性は良い状態に保たれる。
ステップS502の判定結果がNOの場合はステップS503へ移行し、ステップS302で記憶したGNSS衛星が、現在も位置計算に使用できる状態にあるか否かを判定する。具体的には、まず、ステップS102で捕捉されたGNSS衛星にステップS302で記憶したGNSS衛星が全て含まれているかを判定する。1個でも含まれていないGNSS衛星があれば、記憶時と同じGNSS衛星の組み合わせでの位置計算が不可能となるため、ステップS504へ移行し、表示装置39で位置計算の再現性が悪化している旨を表示してオペレータに注意を促す。表示方法の一例を図17に示す。図17において、表示装置39(図2に示す)に表示される画面39aの下段には、油圧ショベル1と目標地形62との位置関係を示す側面図が表示され、上段には上面図が表示される。オペレータはこの画面39aを見ながら施工する。位置計算の再現性が悪化している場合は、画面39a上のメッセージ表示領域39bを点灯表示させ、オペレータに注意を促す。
一方、ステップS102で捕捉されたGNSS衛星にステップS302で記憶したGNSS衛星が全て含まれていると判定した場合は、さらに、同一GNSS衛星において、記憶時のS/N比、仰角、DOPからの変化量がそれぞれ許容値内かを判定する。許容値内にある場合はステップS505へ移行し、そうでない場合はステップS504へ移行する。
ステップS505で、位置計算に使用するGNSS衛星をステップS302で記憶したものへと変更し、ステップS506で手動合わせフラグをOFFにし、GNSS衛星変更処理(ステップS105)を終了する。これにより、同一GNSS衛星を使った位置計算が可能となるため、位置計算の再現性を向上させることができる。
図16に示す自動的変更の場合は、まず、ステップS601で変更情報格納フラグがONか否かを判定する。判定結果がYESの場合はステップS602へと移行し、判定結果がNOの場合はGNSS衛星変更処理(ステップS105)を終了する。
ステップS602で、車体情報の変化が閾値以下か否かを判定する。具体的には、ステップS402で記憶した油圧ショベル1の位置及びヘディング角度に対して、現在の位置及びヘディング角度の変化量がそれぞれ閾値以下か否かを判定する。油圧ショベル1が位置計算の再現性を維持しつつ作業を行う状況は、例えば道路土工等の法面成型作業であり、この場合、油圧ショベル1のヘディング角度の変化は少なく、走行で横に少しずつ移動しながらの作業になることが多い。このため、本処理ステップでの判定を行うことで、位置計算の再現性を維持したい状況かどうかを自動的に判定することができる。判定結果がYESの場合はステップS603へ移行し、判定結果がNOの場合(再現性の維持が必要でない場合)は、GNSS衛星を変更することなく、GNSS衛星変更処理(ステップS105)を終了する。
ステップS603で、ステップS302で記憶したGNSS衛星とステップS103で選択したGNSS衛星とが一致するか否かを判定する。
ステップS603の判定結果がYESの場合は、GNSS衛星を変更することなく、GNSS衛星変更処理(ステップS105)を終了する。この場合、位置計算に同じGNSS衛星が使用されることになるため、位置計算の再現性は良い状態となる。
ステップS603の判定結果がNOの場合はステップS604へ移行する。
ステップS604で、ステップS302で記憶したGNSS衛星が、現在も位置計算に使用できる状態にあるか否かを判定する。この判定では、まず、ステップS102で捕捉したGNSS衛星にステップS302で記憶したGNSS衛星が全て含まれているかを調べる。1個でも含まれていないGNSS衛星がある場合は、記憶時と同じGNSS衛星の組み合わせを実現できなくなるため、ステップS605へ移行し、表示装置39へ位置計算の再現性が悪化していることを表示してオペレータに注意を促す。
一方、ステップS102で捕捉されたGNSS衛星にステップS302で記憶したGNSS衛星が全て含まれている場合は、さらに、同一GNSS衛星において、記憶時のS/N比、仰角、DOPからの変化量がそれぞれ許容値内かを調べ、すべて許容値内にある場合はステップS606へ移行し、位置計算に使用するGNSS衛星をステップS302で記憶したものへと変更する。これにより、同一GNSS衛星を使った位置計算が可能となるため、位置計算の再現性を向上させることができる。
本実施の形態では、下部走行体2と、下部走行体2に旋回可能に設けられ、下部走行体2と共に車体を構成する上部旋回体3と、上部旋回体に回動可能に設けられた作業装置5と、車体3に設けられた傾斜計測装置21と、作業装置5に設けられた角度計測装置22〜24と、衛星81〜87の測位信号に基づいて自身の3次元位置および方向を計算する3次元位置計測装置33と、傾斜計測装置21、角度計測装置22〜24、および3次元位置計測装置33からの情報に基づいて、車体3の3次元位置および姿勢、ならびに作業装置5に設定されたモニタポイントの3次元位置を計算するコントローラ38とを備えた作業機械1において、3次元位置計測装置33は、衛星81〜87の測位信号を受信し、測位信号を受信した衛星のうち、3次元位置計測装置33の3次元位置および方向の計算に使用する衛星を選択し、選択した衛星の測位信号に基づいて、3次元位置計測装置33の3次元位置および方向を計算し、作業機械1は、3次元位置計測装置33によって選択されている衛星の組み合わせを記憶するように指示するための記憶指示装置40を更に備え、コントローラ38は、記憶指示装置40を介して指示が入力されたときに、3次元位置計測装置33によって選択されている衛星の組み合わせを衛星選択情報として記憶し、所定の変更条件が成立したときに、前記衛星選択情報を3次元位置計測装置33に送信し、3次元位置計測装置33は、コントローラ38から前記衛星選択情報を受信した場合に、測位信号を受信した衛星のうち、前記衛星選択情報に含まれる衛星を優先的に選択する。
以上のように構成した本実施の形態によれば、オペレータが記憶指示装置40を介して指示を入力することにより、3次元位置計測装置33で選択されている衛星の組み合わせが衛星選択情報としてコントローラ38に記憶され、所定の変更条件が成立したときに、前記衛星選択情報に含まれる衛星が3次元位置計測装置33によって優先的に選択される。これにより、高い施工精度が求められる作業において、3次元位置計測装置33の位置計算に使用される衛星の組み合わせを極力統一することができるため、作業装置5の位置計算の再現性を向上し、ひいては作業効率を向上することが可能となる。
また、コントローラ38は、記憶指示装置40を介して指示が入力されたときに、前記衛星選択情報と共に、前記衛星選択情報に含まれる各衛星の方位角と仰角と測位信号のS/N比、および当該各衛星の配置を表すDOPを記憶し、前記所定の変更条件が成立し、かつ、前記衛星選択情報に含まれる各衛星の現在の配置、測位信号のS/N比、および仰角と、前記衛星選択情報を記憶した時点の配置、測位信号のS/N比、および仰角との差分がそれぞれ所定値以下である場合に、前記衛星選択情報を3次元位置計測装置33に送信する。これにより、作業装置5の位置計算に使用する衛星の組み合わせを変更する際に、各衛星の配置、測位信号のS/N比、および仰角の変化量がそれぞれ所定値以内に抑えることができるため、作業装置5の位置計算の再現性をさらに向上することが可能となる。
また、作業機械1は、作業機械1の位置および姿勢、ならびに現地形および目標地形の情報を表示する表示装置39を更に備え、コントローラ38は、前記所定の変更条件が成立し、かつ、前記衛星選択情報を3次元位置計測装置33に送信しなかった場合に、モニタポイントの位置計算の再現性が悪化している旨の情報を表示装置39に出力する。これにより、モニタポイントの位置計算の再現性が悪化していることをオペレータが把握することが可能となる。
また、作業機械1は、3次元位置計測装置33の位置および方向の演算に使用する衛星の組み合わせを変更するように指示するための変更指示装置41を更に備え、コントローラ38は、変更指示装置41を介して指示が入力されたときに、前記所定の変更条件が成立したと判定する。これにより、オペレータが変更指示装置41を介して指示を入力することにより、コントローラ38に記憶されている衛星選択情報に含まれる衛星が3次元位置計測装置33によって優先的に選択されるため、オペレータの判断により作業装置5の位置計算の再現性を向上することが可能となる。
また、コントローラ38は、車体3の現在の3次元位置および姿勢と前記衛星選択情報を記憶した時点の3次元位置および姿勢との差分がそれぞれ所定値以下となったときに、前記所定の変更条件が成立したと判定する。これにより、車体3の位置および姿勢が衛星選択情報を記憶した時点の位置および姿勢に近づいたときに、コントローラ38に記憶されている衛星選択情報に含まれる衛星が3次元位置計測装置33によって優先的に選択されるため、オペレータの判断によらず作業装置5の位置計算の再現性を向上することが可能となる。
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施の形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。