JP6904987B2 - ステント - Google Patents
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このとき、前記全長Lが60mm±10mmであると好適である。
このとき、ステントが逆流防止弁を備えていないとよい。
このとき、ステントが胆管用であるとよい。
本実施形態に係るステント1は、図1に示すように、第一端部3と第二端部4の両端部が開口した円筒状のステント本体2を備えている。ここで、ステント本体2の第二端部4は、胆管や食道等の管状器官内や体内組織内などにステント1を留置したとき、管状器官内や体内組織内を流動する胆汁や飲食物等の流体が上流側から下流側へと流動する際の、下流側の端部である。ここで、本実施形態における流体とは、体内を流れる流体を意味し、例えば、胆汁、膵液等の体液のほか、食道等を流れる飲食物、血管を流れる血液等を含む。
ステント本体2は、図1に示すように、中心に軸心Cを有しており、テーパ部5以外の部位において一定の直径Dを有している。円筒状のステント本体2として、金属円筒を加工して、複数のメッシュ状の開口を形成したものを用いることが可能である。また、ステント本体2として、金属板を加工して、円筒状に屈曲させて形成したり、或いは、金属線材を織ったり組んだり絡ませたりするなどして編むことで、円筒状に形成してもよい。ステント本体2は、通常時は拡径した状態となる自己拡張型であるが、バルーンカテーテル等に装着しておき、ステントの内側に配置されたバルーンを膨らませることで、拡径させるバルーン拡径型とすることも可能である。
ステント本体2は、第二端部4側の先端部に、第二端部4に向けて徐々に縮径した円錐形状のテーパ部5を有している。ステント本体2の軸心Cに沿ったテーパ部5の長さであるテーパ長lは、5mm以上15mm以下であることが好ましく、7mm以上15mm以下であることがより好ましく、10mm±2mmであることが特に好ましい。また、テーパ部5の第二端部4における直径である先端径dは、3mm以上7mm以下であることが好ましく、3.5mm以上6.5mm以下であることがより好ましく、4.5±1.0mmであることが特に好ましい。
本実施形態に係るステント1は、従来のステントとは異なり、逆流防止弁を備えていない。ステント1は、逆流防止弁を備えていない代わりに、テーパ部5の形状によって逆流防止機能を生み出している。具体的には、実施例において実証するように、先端径dを直径Dで割ったd/Dの値が0.3以上0.7以下、より好ましくは0.35以上0.65以下、特に好ましくは0.45±0.1である。
ステント本体2の材質は、特に限定されるものではなく、例えば、ステンレス、Ta、Ti、Pt、Au、W等や、Ni−Ti系合金、Co−Cr系合金、Co−Cr−Ni系合金、Cu−Zn−X(X=Al,Fe等)合金、Ni−Ti−X(X=Fe,Cu,V,Co等)合金等の形状記憶合金などを用いることが好ましい。
本実施形態に係るステント1は、胆管用(換言すると、胆管狭窄部に対する胆管の拡張を目的)として用いることが可能である。本実施形態に係るステント1を胆管用として胆管内に配置して用いる場合、第一端部3が肝臓側(上流側)、第二端部4が十二指腸側(下流側)となる。
(1.1.目的)
図1に示すステント1において、テーパ部5の形状によって、閉塞防止機能を実現することを目的とした。逆流防止機能の向上及び順流抵抗低減の両立をもって閉塞防止性能と定義した。操作する形状寸法は、テーパ部の先端径dとし、テーパ長l及びステント本体2の直径D(ステント径D)については、それぞれ10mmとし、ステント1の全長L(ステント長L)は60mmとした。
先端径d=4.5mmのテーパ形状が閉塞防止機能の観点から好適であることがわかった。以下、根拠を示す。
(2.1.手法)
ステントの内部に流れが生じている時、内部におけるエネルギー損失に応じた圧力損失が生じる。ステント内部に一定流量を流している際の上流と下流の間における圧力差を用いて抵抗の評価を行った。多様な形状寸法における損失の評価を行うため、流体解析ソフトANSYS Fluentによる数値計算を用いた。図2に示すようなステント周辺の軸対象流れ場モデルを作成し、境界条件として一定流量を与え、計算を行った。
本項目では、シミュレーションにおいて用意したステント形状及び流量、モデルの設定について詳細を述べる。
(2.2.1ステント形状設定)
シミュレーションで用意した形状寸法は、以下の表1の通りである。
順方向流、逆方向流共に流量を同様に設定した。低流量域は0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5mL/minの8種とした。高流量域は20〜80mL/minを10mL/min刻みで7種設定を行なった。全ての流量に対して両方向のシミュレーションを行なったが、低流量域は主に順方向胆汁を、高流量域は主に逆流や実測値との比較を想定した流量値となっている。
流れ場のモデルとして、図2のような軸対象モデルを作成した。メッシュサイズは0.2mmとして設定した。境界条件は逆流条件の場合は十二指腸側を入口として、境界面と垂直に流れ込む体積流量を規定し、胆管側を圧力出口として規定した。順流条件の場合は上記の逆、つまり十二指腸側を出口として、胆管側を圧力入口として規定した。
(2.3.1.計算結果)
形状寸法と流量設定値、流れの方向から計算された差圧などのシミュレーションの結果をもとに、図3のグラフが得られた。
図3のプロットとして現れた流量、先端径、差圧の関係性についてより詳細に考察を行うため、近似曲線の当てはめを行った。
図3と同様に70,60,50mL/minとそれぞれの流量に対する差圧データをプロットしていくと、図5のようになった。凡例は流量を表している。
以上までに、一定流量における差圧(圧力損失)として図及び曲線を導いた。2.3.2.で近似式として得た式(4)をQについて解くことで、一定圧力を与えた際にどの程度流量が流れるかを逆算することができる。このことから、一定圧力(15Pa)において、逆流する流量がどのように変化するかを計算した結果を図6に示す。
ここまでの結果得られた図6から、テーパなし形状(入口径=10mm)と比較した時、テーパの先端径を細くするほど、同一圧力における逆流流量が小さくなることがわかった。なお、図6は15Paの際の曲線であるが、他の圧力に対してもほぼ同様の曲線が得られた。また、テーパの先端径の減少に伴い、順方向の流れがどの程度阻害されるかを確認した。順方向低速流(胆汁に相当する流れ)に対して、テーパ部の先端径dと差圧変化の関係を図7に示す。
以上までの議論は、流体シミュレーションの結果をもとに行われたものであるため、実測値や理論解との比較を行い、結果の妥当性を検討した。
図9に概略図を示す実験装置を用いて、ステント上下流の差圧測定を行なった。具体的には、第1水槽11と第2水槽12に仕切られた水槽10を用い、ステント1の第一端部3を第1水槽11に配置し、第二端部4を第2水槽12に配置した。そして、ポンプ13を用いて一定の流量をステント1内に流し続け、上下流の圧力差を差圧計14で計測した。図9に示すように、ステント1の第一端部3が上流側の端部であり、第二端部4が下流側の端部に相当する。
実験の結果から図10及び図11のグラフが得られた。図10及び図11は、流量を横軸に、差圧を縦軸にとったものである。実測値を図中丸印で表記し、エラーバーは標準誤差を用いた。シミュレーションによる計算値を図中星印で表した。曲線は理論曲線(下記3.3.参照)を示している。同条件である(値が同じとなるべき)曲線及びプロット点は同色で示されている。順流逆流共に概ねよく一致しており、シミュレーションの結果が妥当であることがわかった。
図10及び図11で用いた理論曲線は、ステントの内壁面での損失および助走区間における壁面せん断応力、出入口での損失を考慮して計算を行ったものである。これらの要因を考慮すると、直線形状の円管において圧力と損失の関係は、以下の式(5)で表すことができる(ρ:密度,v:平均流速,dP:差圧)。
2 ステント本体
3 第一端部
4 第二端部
C 軸心
5 テーパ部
D 直径
d 先端径
l テーパ長
L 全長
10 水槽
11 第1水槽
12 第2水槽
13 ポンプ
14 差圧計
Claims (5)
- ステントであって、
第一端部と第二端部を備えた筒状のステント本体を備え、
該ステント本体は、前記第二端部に向けて徐々に縮径したテーパ部を有し、
前記テーパ部の前記第二端部における先端径dを、前記第一端部における前記ステント本体の直径Dで割ったd/Dの値が0.45±0.1であり、
前記テーパ部の外表面は、前記ステント本体の直径Dである部分の外表面から連続しており、
前記テーパ部の長さであるテーパ長lが7mm以上15mm以下であり、
前記第一端部と前記第二端部との間の距離である前記ステントの全長Lが30mm以上80mm以下であり、
前記先端径dが4.5mm±1.0mmであり、
前記ステント本体の前記直径Dが10mm±0.5mmであり、
前記テーパ部の長さであるテーパ長lに対する、前記第一端部と前記第二端部との間の距離である前記ステントの全長Lの比がl:L=1:3〜8であり、
前記ステント本体の内側又は外側はカバーで被覆されていることを特徴とするステント。 - 前記テーパ長lが10mm±2mmであることを特徴とする請求項1に記載のステント。
- 前記全長Lが60mm±10mmであることを特徴とする請求項2に記載のステント。
- 逆流防止弁を備えていないことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のステント。
- 胆管用であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のステント。
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