本発明の様々な実施形態の目的は、製品をフリーズドライ処理するための信頼性を有する方法と、係る方法を実施する装置と、を提供することである。
本発明の特定の実施形態の目的は、改善された処理制御を支援する方法および装置を提供することである。
本明細書の特定の実施形態の目的は、個々の製品品質を保証しつつ処理能力の増強を可能にする方法および装置を提供することである。
本発明の特定の実施形態の目的は、増強された品質制御および/または品質保証を可能にするかまたは提供する方法および装置を提供することである。
これらの目的は、本発明の様々な実施形態に係る方法ならびに装置、および容器ならびの部品のキットにより達成される。
良好な処理効率および/または良好な製品品質(例えば製品の良好な均一性)の達成が可能であることは、本発明の様々な実施形態の利点である。
第1の態様では、本発明では、容器に格納された冷凍製品を乾燥する方法が提供される。なお、この容器は前述の製品を保持するためのキャビティを画成する容器壁部を有する。この方法は、昇華により乾燥する方法、または脱離により乾燥する方法である。この方法は、a)少なくとも1つの熱IRカメラを使用して容器壁部の少なくとも1部分の熱IR画像を捕捉するステップと、b)画像処理モジュールを使用して、容器壁部の外側表面上に配置された複数の地点に関連付けられた複数の温度値を決定することにより熱IR画像を処理するステップと、c)熱フローのモデル化および乾燥処理の進行のモデル化を実行する数理モデルを使用して、容器内の製品の最高温度を計算するステップと、e)計算された最高製品温度と温度安全マージンに基づいて、容器の少なくとも一部分に供給されるパワー量を制御するステップと、f)少なくとも1度ステップa)〜ステップc)およびステップe)を反復するステップとを含む。
パワー量は、少なくとも1つの加熱器に供給されるパワー、容器に対する少なくとも1つの加熱器の位置、容器に対する少なくとも1つの加熱器の方向、および、前述の加熱器に対する容器の曝露時間、からなる群より選択される少なくとも1つのパラメータを制御することにより、容器に供給され得る。
温度安全マージンは、臨界製品温度と製品温度自体との間の温度差を示す(特定の製品に応じて)事前定義された定数であってもよく、または、(特定の製品に、および、モデルから取得された進行に、応じて)動的に計算されてもよい。
熱IRカメラの使用により、製品に対して物理的に接触することなく温度を決定することが可能となり、(カメラの解像度に応じて、単一画像において)一度に大量の温度を捕捉することが可能となるため、および、測定が略瞬時であるため、および、例えば製品に挿入されるプローブの使用とは対照的に熱IRカメラの使用により汚染のリスクが低減されるため、熱IRカメラの使用は有益である。
例えば製品自体の温度を捕捉するために画像が製品上方の位置から取得され、容器の温度が無視される先行技術に係る方法とは対照的に、本発明では、容器壁部の温度が測定され、このデータが何らかの方法で前述の特定容器における前述の特定製品の昇華過程をモデル化する数理モデルに提供される。その結果、製品を有する各個別の容器の昇華面における温度が既知となる。なお、これは先行技術では達成不可能である。
この方法は、実質的に容器の内側壁部に当接する薄層の形状を有する冷凍製品を含む円筒形容器に適用され得る。その場合、少なくとも1つの熱IRカメラは、好適には、容器の円筒形壁部の大部分を捕捉するよう適応される。
容器壁部の当該部分は、外側壁部表面と容器の長手方向軸を通る仮想平面との交差部分により画成される線分を含み得る。
容器壁部の当該部分は、外側壁部表面と容器の長手方向軸に対して垂直な仮想平面との交差部分により画成される曲線部分を含み得る。
容器壁部の当該部分は、容器の長手方向軸に対して垂直である第1平面および第2平面(例えば直立姿勢で懸下された円筒形容器の場合には、第1平面および第2平面は水平面である)であって、互いから第1距離だけ離間された第1平面と第2平面との間に、および、容器の長手方向軸(例えば前述の事例では垂直平面)を含む第3平面と第4平面との間に、配置された表面部分を含み得る。
一実施形態では、この方法は、ステップe)の前に、前述の計算された進行に基づいて、製品の温度と、製品に対する事前定義された臨界温度と、の間の温度差として温度安全マージンを決定するステップd)をさらに含む。
固定された安全マージンが使用される先行技術に係る方法とは対照的に、安全マージンが動的に計算されることが、この方法の主要な利点である。安全マージンを動的に調整することにより、製品を過熱するリスクが比較的低い乾燥処理のいくつかの部分(例えば昇華過程の開始時、および脱離過程の終了時)の間に安全マージンを小さくし、その一方で、製品を過熱するリスクが比較的大きい乾燥処理の他の部分(例えば脱離過程の開始時および昇華過程の終了時)の間に安全マージンを大きくすることが可能である。安全マージンを動的に調整することにより、乾燥処理の全過程は、より速く、しかも、製品の品質を損なうことなく完全な信頼性を保ったままで、進行することが可能となる。
簡略には(図12(b)示されているように)、温度安全マージンの値は、例えば、昇華または脱離の進行が既知である場合、決定され得る。
容器は、好適には、直立姿勢で配置される。この直立姿勢とは、その長手方向軸が「垂直線」に対して(すなわち重力の方向)45度未満の、好適には25度未満の、好適には10度未満の、角度を形成することを意味する。
少なくとも1つの加熱器は好適には少なくとも1つのIR放熱器である。
少なくとも1つの加熱器は、好適には、物質がまったく配置されない容器の上方部分を除いて、および好適には、(例えば、上方からの直接的放熱により)容器内部の製品を直接的に加熱することがないよう、物質が配置されている高さの位置の上方において容器の側面壁部を加熱するよう好適には構成される。
好適な実施形態では、製品は、医薬組成物物質および水性溶媒を含むが、本発明は医療製品に限定されず、他の製品(例えば生物学的組成物、化粧品組成物、医療栄養製品、およびアルコールなどの非水性溶媒)に対しても使用可能である。
好適な実施形態では、容器は底壁部分および側壁部分を有する。好適には、底部壁部は、実質的に平板状もしくは平坦であり、または、容器が脱落することなく水平表面上に配置可能となるような形状を少なくとも有する。好適には、側壁部分は、側壁部分と、容器の長手方向軸に対して垂直な平面と、の交差部分が円形となるような形状を有する。好適には、側壁部分の壁部厚さは容器の高さ上で実質的に一定である。
一実施形態では、ステップd)は、前述の製品の事前決定された含有量と、ステップb)において計算された温度値の少なくとも1つの部分集合と、容器に提供された、または容器により吸収された熱エネルギーの推定または計算される累積量と、のうちの少なくとも1つを考慮に入れることにより、数理モデルを使用して温度安全マージンを計算することを含む。
「事前決定された含有量」は、事前決定された量および事前決定された組成物を含む。この量は通常、0.1ml〜100.0mlの範囲内の量である。
温度値の部分集合は、容器壁部の外側表面上の、上述した「線分」または「曲線部分」または「表面部分」上に配置された対応個数の地点に対応する、少なくとも2つ、または少なくとも3つ、または4つ以上の温度値を含み得る。
容器により吸収される熱エネルギーの累積量は、例えば、少なくとも1つの加熱器に供給されるエネルギーの量に基づいて、および加熱器から容器に伝達されたエネルギーの量を計算または推定することにより、および、容器により放出または反射されたエネルギーの量を計算または推定することにより、計算され得る。
一実施形態では、容器は、長手方向軸を有し、その長手方向軸を中心に回転され、前述の長手方向軸に対して垂直な平面において実質的に円形の断面を有し、数理モデルは、容器壁部の外側から、容器壁部を通り、依然として氷結晶を含む製品の部分を通る、熱伝達に主に基づく。
この実施形態の基底をなす概念は、容器壁部の外側上で測定される温度に基づいて、および、容器壁部の物質上で計算される第1温度差に基づいて、および、依然として氷結晶を含む冷凍製品の「外側部分」上での計算される第2温度差に基づいて、容器により吸収される熱エネルギーの累積量を正確に決定(例えば推定または計算)することが可能であるということである。
乾燥処理の実行中に容器を回転させることは有利である。なぜなら、容器を回転させることにより、容器に供給されるエネルギーの量が、容器の周円上で実質的に均一に分配されることが保証され得るためである(しかし高さ方向においては必ずしも均一に分配されるものではない)。このことにより、比較的簡単な数理モデルの使用が可能となる。
一実施形態では、乾燥の方法は昇華の方法であり、数理モデルは以下のモデルのうちの1つに基づく。
A)a)容器物質により形成された外側円筒、b)外側円筒に物理的に接触し、かつ、依然として氷結晶を含む冷凍製品を含む中間円筒、c)氷結晶を実質的に含まない冷凍製品を含む内側円筒を含む3つの同心円筒形状を含む本体に熱エネルギーを供給するモデル、または、
B)少なくとも2つの複数のディスクを含む本体であって、各ディスクは、a)容器物質により形成された外側リング、b)外側リングに物理的に接触し、かつ、依然として氷結晶を含む冷凍製品を含む中間リング、c)氷結晶を実質的に含まない冷凍製品を含む内側リングを含む3つの同心環状リングを含む本体に熱エネルギーを供給することに基づくモデル。
両方のモデルでは、外側円筒に供給されたエネルギーが氷結晶を昇華させるために完全に使用されるものと仮定される。
モデル(A)の利点はその簡単さにある。このモデルは、容器中の製品の厚さが高さ方向において実質的に変化しない場合に特に好適である。
モデル(B)の利点は、容器内の製品の厚さ変動を考慮に入れることが可能であり、それにより、例えば、加熱器を移動させて、故意に容器を非均一的に加熱することにより、または2つ以上の加熱器を制御することにより、加熱を制御することが可能であることである。
一実施形態では、乾燥の方法は、脱離の方法であるか、または脱離の方法をさらに含み、数理モデルは、以下のモデルのうちの1つに基づく。
A)a)容器物質により形成された外側円筒、b)外側円筒に物理的に接触し、かつ、氷結晶も水分含量も実質的に含まない製品を含む中間円筒、c)氷結晶は実質的に含まないが依然として水分含量を含む製品を含む内側円筒を含む3つの同心円筒形状を含む本体に熱エネルギーを供給するモデル、または、
B)少なくとも2つの複数のディスクを含む本体であって、各ディスクは、a)容器物質により形成された外側リング、b)外側リングに物理的に接触し、かつ、氷結晶も水分含量も実質的に含まない製品を含む中間リング、c)氷結晶は実質的に含まないが依然として水分含量を含む製品を含む内側リングを含む3つの同心環状リングを含む本体に熱エネルギーを供給するモデル。
両方のモデルでは、容器に供給されるエネルギーが、製品を暖めるために、および水分含量を蒸発させるために、使用されるものと仮定される。
一実施形態では、容器は、容器の高さの少なくとも1部分にわたり円筒形状、または円錐形状、または切頭状円錐形状、または放物面形状、または切頭状放物面形状を有する側壁部分を有する。
好適には、容器の側壁部分は径方向に実質的に一定の厚さを有する。
容器高さの少なくとも1部分(例えば前述の高さの少なくとも1/4、好適には前述の高さの少なくとも50%、またはさらに好適には前述の高さの少なくとも75%)にわたり上記で指定した形状のうちの任意の形状を有する容器を使用することは有利である。なぜなら、この容器がその長手方向軸を中心に回転されるとき、近傍の熱源により提供される熱(例えばIR熱源により放射される)が円周方向において実質的に均等に分散されることが可能であるため、換言すると、容器が(特に容器の円周方向における)局所的温度変動の防止または低減を支援するためである。
一実施形態では、ステップe)は、以下の動作、すなわち、i)少なくとも1つの加熱器に供給されるパワーの量を制御すること、ii)少なくとも1つの加熱器と円筒との間の距離を制御すること、iii)少なくとも1つの加熱器と円筒との間の方向を制御すること、容器に対する少なくとも1つの加熱器の曝露時間、vi)少なくとも1つの加熱器の前方に位置する容器の曝露時間を制御すること、のうちの1つまたは複数を含む。
好適な実施形態では、少なくとも1つの加熱器に供給されるパワーの量の少なくとも1部分は(所望により、距離、方向、または曝露時間も)、例えば、容器に対して加熱器を移動させる事により、または加熱器に対して容器を移動させることにより、または、その両方により、制御される。
好適な実施形態では、少なくとも1つの加熱器に供給されるパワーの量の少なくとも1部分は(所望により、距離、方向、または曝露時間も)、例えば、容器に対して加熱器を移動させる事により、または加熱器に対して容器を移動させることにより、または、その両方により、制御される。
一実施形態では、ステップe)は、少なくとも、第1加熱器に提供されるパワーの第1量を制御することにより、および、少なくとも、第2加熱器(容器に対して異なる位置に配置されている)に提供されるパワーの第2量を制御することにより、容器に供給されるパワーの量を制御することを含む。
異なる量の熱エネルギーを例えば、冷凍製品の層が冷凍製品の上方部分よりもより大きい厚さを有し得る容器の底部分に提供することが可能であることは、2つの別個の加熱器を使用することの利点である。
2つの加熱器を適切に制御することにより、(昇華過程の間に)昇華面が容器壁部の内部に到達する時間が影響され得る。理想的には、昇華面は高さ位置に対して独立的に同時に到達するであろう。
一実施形態では、少なくとも1つの加熱器が容器に対して移動可能である。
移動は、並進、または回転、または傾斜、またはこれらの組み合わせを意味し得る。
加熱器のパワー、および/または距離、および/または方向のうちの少なくとも1つを制御することにより、例えばパワーおよび距離の両方を制御することにより、または例えばパワーおよび方向の両方を制御することにより、昇華面SFが容器壁部の内部に到達する時間が影響され得る。
一実施形態では、ステップe)は、中間円筒にまたは中間リングに配置された製品の少なくとも1つの地点の少なくとも1つの温度を数理モデルを使用して推定または計算することを含み、少なくとも1つの加熱器を制御することは、製品温度が、臨界温度から安全マージンを引いた値以下となるよう、前述の加熱器を制御することを含む。
上述のように、製品温度は、臨界温度Tcritを決して越えてはならない。さもなければ製品は失われてしまう。しかし処理の高速化を図るため、制御ループは、処理の間、結果的に生じた製品温度が可能な限りTcrit−Tsmに近づくような様式で、理想的には、計算上の(最高)製品温度Tprod_maxが(Tcrit−Tsm)と等しくなるよう、加熱しようとするであろう。
好適な制御アルゴリズム、例えばいわゆる「比例」制御、または任意の他の好適な制御が、少なくとも1つの加熱器を制御するために使用され得る。
一実施形態では、少なくとも1つの加熱器に供給されるパワーの量は、計算による製品温度が、臨界温度から安全マージンを引いた値よりも低い場合、増加され、少なくとも1つの加熱器に供給されるパワーの量は、計算による製品温度が、臨界温度から安全マージンを引いた値よりも高い場合、低減される。
第2の態様の態様によれば、本発明は、液体製品をフリーズドライする方法を提供し、この方法は、g)容器を提供することと、h)前述の容器に液体製品を挿入することと、k)事前定義された速さで容器をその長手方向軸を中心に回転させている間に前述の容器内の製品を冷凍することと、第1の態様に係る方法を使用して、製品から氷結晶を除去するための第1乾燥ステップを適用すること、または、第1の態様に係る方法を使用して、製品から水分含量を除去するための第2乾燥ステップを適用すること、または、その両方と、を含む。
一実施形態では、ステップg)は、実質的に一定の厚さを有し、かつ、容器の高さの少なくとも1/4にわたり実質的に放物面形状または切頭状放物面形状を有する、側壁部分を含む容器を提供することを含み、ステップk)は、製品が側面壁部に当接する実質的に一定の厚さの層を形成するよう、放物線形状の曲率に対応する選択された事前定義された速さで容器をその長手方向軸を中心に回転させている間に前述の容器内の製品を冷凍することを含む。
液体製品は医療製品であり得る。
少なくとも1つの加熱器は、容器の側面部分を均一に加熱するために、より正確には、特に製品が配置されている高さの部分の上方で前述の容器に熱を提供するために、配置され得る。
適度な速度で回転しているときでさえも容器の側面壁部に対して配置された冷凍製品を容器に提供することが可能であることは、実質的に放物面形状、または切頭状放物面形状、および例えば底部における平板状部分を有する容器の利点である。このことは特に、高速回転に起因する高い遠心力が許容されないいくつかの医療製品に対して有益である。
さらに、その後、容器内の製品の昇華および/または脱離の処理がより良好に制御され、モデルの確度がさらに改善され得る。これは、処理効率に対して有益であり得るが、特に乾燥される製品の品質に対して有益であり得る。実際に、製品層が実質的に一定の厚さを有するため、(高さ方向における)温度変動が低減され、昇華面(SF)は製品全体に対して略同時に容器壁部に到達するであろう。したがって氷結晶は、同時にすべての場所において除去され、昇華過程と脱離過程と間のいくらか恣意的な遷移期間が、製品の全体を通して同時に発生する。
冷凍の間の回転速度が、昇華の間または脱離の間の回転速度から独立的に選択され得ることに注意すべきである。冷凍後、冷凍製品の形状が固定されるため、冷凍の間の速度のみが放物面形状の曲率に関連する。
流体を含む円筒形容器が回転すると、重力および遠心力の組み合わせにより流体表面が放物線形状を有することとなることは周知であるが、相補的な放物線形状を有する容器を提供することにより、係る容器内の製品の厚さが、一定の厚さを有する放物面形状となり、係る放物面形状は、一般にフリーズドライ処理の第1ステップにおいて実行されるように容器を回転させつつ製品を冷凍することにより、固定され得ることは、発明者らが知る限りでは、当該技術分野で知られていないか、または少なくとも十分に認識されていない。
そのことは、係る容器を使用することの主要な利点である。なぜなら、1つの容器あたり複数の加熱器を使用しない場合でさえも、または、1つもしくは複数の加熱器を移動させなくても、昇華面が製品の上方部分におよび製品の下方部分に到達する時間が、定義により、略同時であるためである。これにより、昇華面の下方部分がまだ到達していない一方で昇華面の上方部分がすでに容器壁部に到達したときに、製品の上方側面上において臨界温度を「通過」するリスクも低減される。
好適には、底側面は、平板状部分を含むか、または実質的に平板状部分である。なぜなら、それにより、容器が転倒することなく直立姿勢で平板状表面上に配置されることが可能となるためである。これは、容器が含むべき製品の量の関数として容器の適切な直径および高さを選択することにより、容易に達成され得る。
少なくとも1つの容器は、実質的に均一な加熱を前述の容器に提供するために、放物面反射器またはミラーを有し得る。しかし2つ以上の加熱器が使用されてもよい。1つまたは複数の加熱器は、固定的に取り付けられてもよく、または移動可能(例えば取り替え可能または回転可能)であってもよい。
第3の態様では、本発明は、容器内に格納された冷凍製品を乾燥させるためのフリーズドライ装置も提供する。なおこの容器は前述の製品を保持するためのキャビティを画成する容器壁部を有する。この装置は、昇華により、および/または脱離により、前述の製品を乾燥させるよう、適応されており、この装置は、a)容器壁部の少なくとも1部分の熱IR画像を捕捉するための熱IRカメラと、b)容器壁部の外側表面上に配置された複数の地点に関連付けられた複数の温度値を計算することにより熱IR画像を処理するよう適応された画像処理モジュールと、c)容器壁部の外側表面の少なくとも1部分を加熱するための少なくとも1つの加熱器と、以下の構成要素、すなわち、少なくとも1つの加熱器にパワーを供給するための手段、少なくとも1つの加熱器を移動させるための手段、容器を移動させるための手段、のうちの少なくとも1つと、d)繰り返し、
*熱フローをモデル化し、および、乾燥処理の進行をモデル化する数理モデルを使用して容器内の製品の温度を計算すること、
*熱フローおよび前述のコンテナ内の前述の製品の乾燥処理の進行をモデル化する数理モデルを使用して、温度安全マージンを計算すること、
*製品の温度と製品に関する事前定義された臨界温度との間の温度安全マージンを計算すること、
*パワーを供給するための手段、少なくとも1つの加熱器を移動させるための手段、および容器を移動させるための手段のうちの少なくとも1つを制御することにより、容器の少なくとも一部分に供給されるパワーの量を制御すること、を実行するよう適応された制御器と、を含む。
第4の態様では、本発明は、第1もしくは第2の態様に係る方法における使用に対して、または第3の態様に係るフリーズドライ装置における使用に対して、好適な容器も提供する。この装置は、長手方向軸を有し、フリーズドライされる製品を保持するためのキャビティを画成する容器壁部を含み、容器壁部は、底部分、少なくとも下方側面部分、および、所望により上方側面部分を有し、下方側面部分は、その高さの少なくとも1部分にわたり実質的に一定の厚さを有し、長手方向軸を含む平面における下方側面部分の断面は、少なくとも1つの実質的に放物線形状または切頭状放物線形状を画成し、長手方向軸に対して垂直な平面における下方側面部分の断面は実質的に円形の形状を有する。
好適には、下方側面部分は、その高さの少なくとも50%にわたり、その高さの少なくとも60%にわたり、またはその高さの少なくとも70%にわたり、またはその高さの少なくとも80%にわたり、一定の厚さを有する。放物面形状が高さ方向において延長する範囲は、実際、容器内に格納される製品の最大量に依存し、その範囲に対しては一定の層厚さが望まれる。高さ全体が放物線状である場合、上方側面部分は存在せず、下方側面部分のみが存在する。
一実施形態では、第4の態様の容器は、前述の側面部分の内側表面に配置された、冷凍医薬組成物、または冷凍生物学的組成物、または冷凍化粧品組成物、または冷凍医療栄養製品を含む。
一実施形態では、第4の態様の容器は、前述の側壁部分の内側表面に配置された、フリーズドライ済み医薬組成物、またはフリーズドライ済み生物学的組成物、またはフリーズドライ済み化粧品組成物、またはフリーズドライ済み医療栄養製品を含む。
一実施形態では、第4の態様の容器は、第1の態様または第2の態様に係る方法で生産された、乾燥済み医薬組成物、または乾燥済み生物学的組成物、または乾燥済み化粧品組成物、または乾燥済み医療栄養製品を含む。
第5の態様では、本発明は、好適には本発明の第4の態様の実施形態に係るフリーズドライ装置と、好適には本発明の第4の態様の実施形態に係る容器と、を含む、部品のキットも提供する。
本発明の特定の好適な態様は、添付のおよび従属請求項独立請求項において説明される。従属請求項の特徴は、請求項において明示的に説明されるものに限らず、独立請求項の特徴と、および他の従属請求項の特徴と、適宜組み合わせられ得る。
本発明の上記の態様および他の態様は、以下に説明する実施形態(単数または複数)から明らかとなり、以下に説明する実施形態(単数または複数)を用いて説明する。
これらの図面は単に概略的であり、限定的ではない。これらの図面では、これらの要素のうちのいつくかの要素の寸法は例示目的のために誇張され、寸法通りでない場合もある。請求項における任意の参照符号は範囲を限定するものと解釈されるべきでない。異なる図面において、同一の参照符号は同一または類似の要素を指す。
本発明について、特定の実施形態に関して、および、特定の図面を参照して、説明するが、本発明はこれらには限定されず、請求項のみにより限定される。説明される図面は単に概略的であり、限定的ではない。これらの図面では、これらの要素のうちのいつくかの要素の寸法は例示目的のために誇張され、寸法通りでない場合もある。これらの寸法および相対的寸法は本発明を実施するにあたっては実際の縮小に対応しない。
さらに、本明細書および請求項における第1、第2、その他の用語は、同様の要素間を区別するために使用され、必ずしも、時間的な順序、空間的な順序、等級的な順序、またはいかなる他の様式における順序を説明するために使用されるものではない。そのように使用される用語が適切な状況下で相互交換可能であること、および、本明細書で説明される本発明の様々な実施形態が本明細書で記載の順序とは異なる他の順序でも実施可能であることは、理解されるべきである。
さらに、本明細書および請求項における上部、下方、その他の用語は、説明目的のために使用され、必ずしも相対位置を説明するために使用されるものではない。そのように使用される用語が適切な状況下で相互交換可能であること、および、本明細書で説明される本発明の様々な実施形態が本明細書で記載の方向とは異なる他の方向でも実施可能であることは、理解されるべきである。
請求項で使用される「〜を含む」という用語は、当該用語の後方に記載される手段に限定されないと解釈されるべきであり、他の要素またはステップを除外しない。したがって、この用語は、記載される特徴、整数、ステップ、または参照される構成要素の存在を指定するものと解釈されるべきであるが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、もしくは構成要素、またはこれらの群の存在または追加を除外しない。したがって「手段AおよびBを含む装置」という表現の範囲は、構成要素AおよびBのみからなる装置に限定されるべきではない。この表現は、本発明に関しては、当該装置の関連構成要素がAおよびBであることのみを意味する。
本明細書の全体を通して「1つの実施形態」または「一実施形態」を参照することは、当該の実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通じて様々な場所でみられる表現「1つの実施形態」または「一実施形態」は、必ずしも全て同じ実施形態を指すものではない。さらに本開示から当業者には明らかであるように特定の特徴、構造、または特性は、任意の好適な様式で1つまたは複数の実施形態に組み合わされ得る。
同様に、本発明の例示的な実施形態に関する説明では、本開示を簡略化し、本発明の様々な態様のうちの1つまたは複数の態様の理解を支援する目的のために、本発明の様々な特徴が、単一の実施形態、図面、またはその説明にまとめられる場合もあることが理解されるべきである。しかし開示のこの方法は、請求される発明が各請求項で明示的に記載されるよりも多数の特徴を要求するという意図を反映するものと解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、本発明の態様は、単一の上記で開示された実施形態の全部の特徴よりも少ない特徴の中に存在する。したがって詳細な説明の後に添付される請求項は、各請求項が本発明の別個の実施形態としてそれ自体が存在する状態で、この詳細な説明に明示的に組み込まれる。
さらに、本明細書で記載のいくつかの実施形態が他の実施形態に含まれるいくつかの特徴を含むが他の特徴を含まない一方で、異なる実施形態の特徴の組み合わせは、当業者により理解されるであるように、本発明の範囲に含まれ、異なる実施形態を形成することが意図される。例えば、以下の請求項では、請求される実施形態のうちの任意の実施形態が任意の組み合わせにおいて使用され得る。
本明細書で提供される説明では、多数の固有の詳細が説明される。しかし、本発明の様々な実施形態がこれらの固有の詳細なしに実施され得ることが理解されるべきである。換言すると、周知の方法、構造、および技術については、本明細書の理解が不明瞭化されることを避けるために、詳細には示されていない。
本明細書では、「乾燥」という用語は、「昇華」(「第1乾燥ステップ」とも呼ばれる)または「脱離」(「第2乾燥ステップ」とも呼ばれる)を指すために使用される。文脈に応じて、これらのステップの一方のみ、または両方のステップが、参照される。
「加熱器および容器の相対位置」または「カメラおよび容器の相対位置」が参照される場合、その長手方向軸を中心とする容器の角度位置は考慮されないことに注意すべきである。当該の表現の実際の意味は「容器の回転軸に対する、および、容器の底面に接する平面に対する、加熱器の相対位置」であるが、説明を簡素化を図るために、前述の表現が使用されるであろう。
本明細書では、「局所的加熱器」という用語は、少なくとも一時的に近傍の容器に関連付けられた加熱器であって、駆動されたときに、好適には他の容器に熱エネルギーを提供することなく、または他の容器には低減された量の熱エネルギーのみを提供する、主に前述の関連付けられた容器に熱を供給する加熱器を示すために使用される。
「容器壁部の温度を測定する」が参照された場合、それは、熱IR画像が容器壁部から取得され、熱IR画像から温度情報が抽出されることを意味する。
本発明は、フリーズドライの処理に関し、および、フリーズドライ装置に関し、および、フリーズドライ処理ならびに装置における使用に対して好適である特定の容器に、関する。本発明に関する詳細について説明する前に、フリーズドライの処理について、図1を参照して簡潔に説明する。
図1では、当該技術分野で周知のフリーズドライ処理の主要なステップが示されている。フリーズドライの方法は様々な製品(例えば食品製品)に適用可能であるが、本発明は個々の容器(例えば1つまたは複数のバイアル)中に格納された医薬組成物溶液をフリーズドライすることに関して説明する。しかし本発明はこれに限定されず、他の製品(例えば生物学的組成物、化粧品組成物、または医療栄養製品)を、または他の容器中に格納された製品を、フリーズドライするためにも使用され得る。
図1を参照すると、フリーズドライされる製品を提供するステップ(例えば水溶液を準備することが一例として挙げられ得るが、これに限定されない)は、フリーズドライ自体の方法の一部とはみなされない。フリーズドライされる冷凍製品を含む少なくとも1つの容器が提供されることが考えられる。特記なき限り、「製品」または「物質」または「組成物」という語は、フリーズドライされる素材を示すための同義語として使用される。
第1のステップ101では、製品を保持する容器が従来の様式で冷凍される。このステップは通常、大気圧下にあるチャンバ内に容器(例えばバイアル)を配置し、容器を包囲する温度を低下させることを含む。図22(C)で説明されるように特殊な容器を使用した場合に有利な効果の取得が可能であるが、このステップは本発明の主要な焦点ではない。
一般に「第1乾燥ステップ」または「昇華ステップ」として知らされる第2のステップ102では、氷結晶が昇華により冷凍製品から除去される。このステップは通常、真空条件下で実施される。
一般に「第2乾燥ステップ」または「脱離ステップ」として知られる第3ステップ103では、残存する湿気が容器中の製品から除去される。
2つの乾燥ステップは通常、フリーズドライされた製品の特性、容器寸法、および適用される処理条件に応じて、完了にあたり20〜60時間を要する。本発明の主要な焦点は、第1乾燥ステップ102および/または第2乾燥ステップ103に関する。
図2では、当該技術分野で周知の容器内の物質を冷凍させる2つの方法が示されている。
図2(a)では、冷凍された物質21を含む容器20の1例が示されている。なおここでは、物質21は、容器20が立位で静止状態に保たれている間に冷凍されたものである。この場合、冷凍製品は容器の底側面に配置されるであろう。
図2(b)では、冷凍された物質21を含む容器20の1例が示されている。なおここでは物質21は、容器20が容器20の長手方向軸を中心に回転され、それにより物質21が、遠心力のために、容器の周辺壁部の内側表面において層(例えば、比較的薄い層、または展開された層)を形成している間に、冷凍されたものである。先行技術では通常、4000RPMの回転速度が、一定の厚さを有する層を取得するために使用される。しかし係る高速は必ずしもすべての製品に対して好適であるわけではない。例えば、特定のタンパク質を含むいくつかの医薬組成物は係る高い遠心力に曝露されるべきではない。したがって係る製品に対しては、製品は静止姿勢で冷凍される(図2A参照)か、またはスピン冷凍が低速で適用され、それにより、非均一な厚さ(図2B参照)が生成されなければならない。しかし、これは、後続の乾燥ステップに対する結果を有する。
図3では、時間の関数としての、図2(A)の容器中の物質に対する第1乾燥ステップ(昇華)の通常の進行が示されている。この方式の乾燥は通常、「バッチ式フリーズドライ」と呼ばれ、この方式では通常、数百、または、ときには数千のバイアルが同時にフリーズドライされる。容器30は通常、棚(図示せず)上に格納され、昇華過程は通常、チャンバ圧力および棚温度を一定に保つことにより実施される。いわゆる「昇華面」32は徐々に下方に移動する。昇華面32は、氷結晶を有さない物質33(比較的乾燥している)と、依然として氷結晶を有する冷凍物質31と、の間に位置している。昇華過程の間、容器30は通常、低圧下(真空に近い)のチャンバ内に配置される。参照番号34は、物質から脱した水蒸気を含む大気を示し、凝縮器(図示せず)により収集される。
発明者らが知る限り、この処理の製品品質は、低速処理および比較的大きい安全マージンを選択することにより保証されると考えられる。係る選択は本質的に処理能力を低下させる。発明者らが知る限り、測定データは各個別の容器に対して提供されない。
図4(A)〜図4(C)では、冷凍製品が容器壁部の内側表面に当接する一定の厚さの分散液または溶液の層を形成し、容器が均一に加熱されるものと仮定して、スピン冷凍容器内の物質に対する第1乾燥ステップ(昇華)の進行が時間の関数として示されている。
図4(A)で示されているように昇華過程の開始時において、冷凍物質41の全体が氷結晶を含む。熱エネルギーが周辺容器壁部に対して均一に提供されると、熱が容器壁部を通って、および容器内部の物質を通って、中心に向かって径方向内向きに伝導される。氷結晶は、外側ゾーン41(依然として氷結晶を含む)と内側ゾーン43との間に位置するいわゆる「昇華面」42において昇華される。水蒸気44(水溶液の場合)は内側ゾーン43の乾燥済み物質の細孔から容器40の外部に流出する。当該技術分野で周知のように、内側ゾーン43は実際にはいくからの水分含量(例えば物質中に存在する未冷凍状態の水または例えばイオン結合された水の形態で)を依然として含み、この水分含量は第2乾燥ステップ(脱離)の間に実質的に除去されるであろう。好適には、容器は、均一な加熱を提供するために、その長手方向軸を中心に回転される(矢印により示されるように)。
図4(B)では、しばらく後の図4(A)の容器40が示されている。図示のように、昇華面42は径方向外向きに移動している。昇華面42は、依然として氷結晶を含む外側ゾーン41を、氷結晶を実質的に含まない内側ゾーン43から分離する。この処理は、昇華面42が図4(C)に示すように容器壁部45に到達するまで継続する。理想的には昇華面42は製品の全体を通して略同時に容器壁部45に到達する。しかし実際上、特に層の厚さが一定でない場合には、これは成立しない場合もある。
図5では、熱IRカメラ51が容器壁部の外側表面の温度を「測定」するために使用され得ることが示されている。実際には、このカメラは温度自体を検出するものではないが、IR放射を検出し、このIR放射が画像処理モジュールを使用して温度情報に変換され得る。可視光を捕捉する通常のカメラとは異なり、容器がガラス製である場合でさえも熱IRカメラは実際に容器50の「内部を見る」ものではなく、したがって昇華面が移動するにしたがって昇華面の位置を「実際に見る」ことは不可能である。この点に関しては、例えばホウケイ酸ガラスを通るIR透過が必ずしも正確にゼロではなく、有効な透過が通常は10%より低いことについて留意すべきである。本発明では、熱IRカメラ50が容器50の外側表面における温度を測定するものと仮定される。
実際、熱IRカメラが、容器自体の内部の製品に向けられるよりもむしろ、周辺容器壁部54の外側表面の熱IR画像を取得するよう構成されるため、これが、容器内部の製品の温度を判定するために熱IRカメラを使用することが率直ではないことの理由の1つである。これは、いくつかの先行技術に係る方法(この方法でも、熱IRカメラが温度情報を取得するために使用されるが、熱IRカメラは容器の外側壁部54に向けられるよりもむしろ製品自体に向けられている)との重要な差異である。換言すると、本発明の様々な実施形態では、容器内部の製品はカメラの視野域52の内部にあることは要求されない。事実、本明細書で記載の方法は通常、図13について論じる際にさらに説明するように、係るデータを無視するであろう。
本発明の基底をなすを概念によれば、熱IRカメラにより捕捉された熱画像は、または、むしろ前述の熱画像から抽出された熱情報は、昇華の進行をリアルタイムで「監視」するために数理モデルと併せて使用される。さらに、何が起きているかを単に観察するよりもむしろ、数理モデルは、より効率的に、しかも、さらに明らかにされるように、製品の品質を損なうことなく、昇華過程を動的に制御するためにも使用され得る。
当該技術分野では、例えば[Emteborg]から、熱カメラから得られた画像データが正確な温度情報に変換され得ることが知られている。したがって、これについては本明細書ではさらに詳細な説明を加える必要はない。敢えて述べるならば、これは、例えば適切な較正により、および/または、熱画像データを既知の温度情報(例えば、Pt100プローブおよび/または熱電対などの他の手段、または他の温度検出手段を用いて取得された温度情報)に関連付けることにより、達成され得る。この計算は通常、熱係数(たば物質およびその表面の反射係数および/または放出計数など)を考慮に入れることを含む。
図6は図5の構成の変化例であり、図6では、熱IRカメラ61が傾斜姿勢でも取り付けられ得、容器60に対してより高い位置、またはより低い位置にも取り付けられ得ることが示されている。しかしもちろん、これは単なる一例であり、明示的に図示されている姿勢の他の姿勢も可能である。例えば熱IRカメラは、上部および底部に関するデータが通常は廃棄されるにもかかわらず、実際的な理由(例えば装置の空間的制約)のために、熱画像が容器の上部の一部または底部の一部を含むよう、取り付けられ得る。係る取り付けは、例えば、加熱器がカメラの視野域62内に配置されることを避けるために、または望ましくない反射を避けるために、または任意の他の理由のために、1つまたは複数のIR放熱器(図6では図示しない)により熱が容器に供給される構成において使用され得る。
カメラ61は固定的に取り付けられてもよく、または着脱可能に取り付けられてもよい。後者の場合、この装置またはシステムはカメラ61を移動させるための手段(図示せず)をさらに含み、この手段は、カメラを、容器60の長手方向軸に対して実質的に平行な方向に、もしくは回転軸に対して実質的に垂直な平面において、上/下に移動させるよう適応されてもよく、または、カメラを、容器の長手方向軸に対して垂直な軸を中心に回転させるよう、適応されてもよく、または、これらの組み合わせであってもよい。係る取り付け手段は当該技術分野で周知であり、したがって詳細に説明を加える必要はない。カメラを移動させることは、単一のカメラにより、複数の少なくとも2つの、または少なくとも3つの容器を、さらにはさらに多数の容器さえも、監視するために使用され得る。可能であれば、カメラは、少なくとも2つの容器、または少なくとも3つの容器の熱IR画像を同時に捕捉することが可能となるよう、十分に大きい距離において取り付けられ得る。係る取り付けは、例えば、カメラ61を取り付けるにあたり制限された空間しか有さないチャンバにおいて使用され得る。
図23について論じる際には3つの熱IRカメラC1、C2、C3を含むフリーズドライシステムまたは装置2300の1例についてさらに説明するが、もちろん本発明は、説明または図示される具体例に限定されない。
図7では、本発明の様々な実施形態に係る「乾燥方法」を実施するために使用され得る代表的なフリーズドライシステムまたは装置700が示されている。装置700は一度に1つの容器703のみをフリーズドライするよう、または同時に複数の容器703をフリーズドライするよう、適応され得る。図7では1つのみの容器703が示されている。容器703は、例えば、医薬組成物を保持するバイアルまたはシリンジであり得るが、回転軸に対して垂直な平面において円形断面を有する他の本体が使用されてもよい。
説明を容易にするため、装置700およびその構成要素およびその機能性は、単一の容器703により保持される内容物を昇華もしくは脱離することに関して、または昇華および脱離の両方に関して、説明されるが、しかし本発明はこれに限定されず、当該技術分野における通常の知識を有する読者は、複数の容器を乾燥させるための装置に本明細書の教示を容易に適用し得る。
装置700は、容器703をその長手方向軸を中心に回転させるための移動機構704を有する。上記のように回転されることにより、容器の側表面は、その高さ全体にわたり、または、物質が配置されている高さの少なくとも1部分にわたり、実質的に均一に加熱器705(例えば局所的IR加熱器)に曝露されること、および、少なくとも1つの熱IRカメラ701により閲覧されること、が可能となる。移動機構704は、容器を並進させるようにも適応され得る(連続的なフリーズドライシステム2300を示す図23も参照のこと)。1つまたは複数の容器703を回転および/または並進させる能力を有する係る移動機構704は当該技術分野で周知であり、したがって本明細書でさらに詳細に説明する必要はない。しかし、並進が本発明では必ずしも要求されない点、および乾燥の間の容器の回転速度がより低い値(例えば冷凍の間に言及された4000RPMよりもはるかに低い)であり得る点、は留意すべきである。約10〜1200RPMの範囲内、または約30〜600RPMの範囲内、特に約30〜100RPMの範囲内の回転速度が乾燥の間に良好な結果をもたらすであろう。
装置700は少なくとも1つの熱IRカメラ701を含む。図7で示される代表的なフリーズドライ装置700は、回転する容器703から距離「dc」に固定的に取り付けられた単一の熱IRカメラ701を有し、回転軸に対して事前決定された90度の角度で向けられているが、しかし上記で説明したように(図5および図6)、カメラは移動可能に取り付けられ(例えば並進、または傾斜、または回転)、および/または容器703を異なる角度(例えば20度〜160度の範囲の角度、または例えば45度〜135度の範囲の角度)で閲覧し得る。
図7では単一の熱IRカメラ701が示されるのみであるが、本発明に係るフリーズドライ装置は2つ以上の熱IRカメラ(例えば少なくとも2つ、または少なくとも3つの熱IRカメラ)を含み得る。係るカメラは、少なくとも1つの容器703(少なくとも2つまたは少なくとも3つの容器)を同時に、または異なる時間的瞬間に、監視するよう構成され得る。
特定の実施形態では、各容器703は少なくとも2つの異なるカメラにより監視される。1つのカメラが冗長となったとしても、これにより、処理の信頼性の向上が可能となり、偏移または誤差を検出することが可能となるが、処理中に1つのカメラが故障しロギングデータが利用可能ではなくなった場合に容器内の内容物を「保存」することも可能となる。
比較的高いサンプルレート(例えば少なくとも5Hz)で画像を捕捉することは技術的に可能であるが、熱定数が関与することを考慮して(真空における温度の上昇および下降が同時に発生しないことを意味する)、5Hz未満のサンプル周波数も使用され得る。しかし、処理に対して影響を及ぼすことなく、または処理を制御することなく、熱IRカメラが処理を監視するためにのみ使用されるいくつかの先行技術に係る方法とは対照的に、例えば120秒あたりわずか1画像のサンプルレートは、さらに説明する制御アルゴリズムに対しては不十分であろう。約0.1Hz〜約10Hzの、または約0.5Hz〜約10Hzの、または約1Hz〜約10Hzのオーダーのサンプルレートが使用されると考えられる。
カメラは、真空チャンバの内部に、またはチャンバの外部に物理的に配置され得る。後者の場合、カメラは、例えば、想定される波長範囲(0.1〜25μm)のIR放射に対して実質的に透明である窓の前方に配置され得る。熱IRカメラ701は熱画像を画像処理モジュール702に提供する。この画像処理モジュール702は、スタンドアロン型のユニットであってもよく、またはより大きいシステムの一部であってもよい。画像処理ユニットまたはモジュール702は、図13でさらに説明されるように、ピクセルデータを温度データに変換する。熱IRカメラ701により捕捉される熱IRデータ自体が、容器の内側に格納された製品または物質自体よりもむしろ、容器壁部の外側表面の温度に緊密に関連する情報を含むことを理解することは、重要である。
いくつかの実施形態では、想定される容器の容器壁部は実質的にIR放射に対して不透明であり、例えば、IRカメラが反応する周波数範囲において最大で20%、好適には最大で15%、または最大で10%の透過係数を有し、さらには最大で5%の透過係数さえも有する。
容器壁部がIR放射に対する透明性がより大きい(例えば、いくつかのセラミック物質に対する場合におけるように20%を越える透過係数を有する)他の実施形態では、捕捉されたIRデータは、容器の外側表面の温度を表さないが、容器壁部の外側表面における第1温度と製品に接触する容器壁部の内側表面における第2温度との間の平均または加重平均を表し、さらに説明する同一の技術が依然として使用され得る。
通常は行列形式で配置される温度データは、画像処理モジュール702により、制御器706(例えばプログラム可能な制御器またはデジタルコンピュータ713)に提供される。実際的な実現形態では、画像処理ブロックまたはモジュール702は、画像処理ソフトウェアモジュールとして、ソフトウェアにおいて実装され得、熱IRカメラ701は、好適なポート(例えばUSBポート)へのケーブルを介してコンピュータ713に直接的に接続され得が、しかし本発明はこれに限定されず、他の装置および/またはインターフェースも、十分な高速性を有する限り、使用され得る。
制御器706は制御アルゴリズムを実行する。これについては、さらに詳細に説明する。図7のシステム700の働きを理解するにあたっては、制御器706が、その環境(特に真空チャンバおよびその局所的加熱器705の近傍)における容器703およびその内容物の数理モデルを使用することを理解すれば現段階では十分である。この数理モデルの基底をなす基本的な式は、エネルギーの保存則および質量の保存則に基づくが、1組の2次元または3次元における異なる方程式によりこのモデルを記述し、この1組の方程式を有限要素を使用して数値的に解く(このことは強力なコンピュータを要求し、(少なくとも極度に高額な機材を用いない限り)リアルタイムでは実行不可能である)よりもむしろ、発明者らは非常に実践的なアプローチを採用した。
本発明により提示される特定のモデル(単数または複数)をより詳細に説明する前に、図7のシステムに関与する要素は、閉ループシステムとして機能するものとして認識されるべきである。
簡略に述べると、熱IRカメラ701は容器壁部703の外側表面の熱IR画像を(例えば時間T1、時間T2、その他において)捕捉し、このデータは、温度情報に変換され、画像処理モジュール702により処理(例えば、フィルタ処理、平均処理、その他)され、制御器706に提供される。制御器706は加熱器705を駆動し、かくして、加熱器に提供されるエネルギーを認識する。制御器706は容器703の、および容器703内の製品または物質の、および環境(例えば、容器703に対する加熱器705の空間的配置、チャンバ内の圧力、その他)の、数理モデルを有し、吸収されることが期待されるエネルギーの量、および、製品に対する熱吸収の影響、および、容器の外側表面上の温度に対するその影響、を判定、または推定、または計算することが可能である。容器壁部の外側における実際の温度と、モデルにより予測される温度と、を比較することにより、制御器は、加熱器により提供されることが意図されたよりも多くのエネルギーが吸収された(例えば時間T2における壁部の温度が期待または予測されるよりも低い場合)ことを、または、加熱器により提供されることが意図されたよりも少ないエネルギーが吸収された(例えば時間T2における壁部の温度が期待または予測されるよりも高い場合)ことを、判定(例えば推定、または計算)することが可能である。次に制御器は通常、「測定温度データ」(または、より正確には、捕捉されたIR画像から抽出された温度データ)および提供されたエネルギーの量を考慮に入れることにより、モデルの変数(例えば昇華面の位置)を訂正し、乾燥の進行を制御するために、加熱器705へのパワーを調整するであろう。以上の内容が、本発明の基底をなす原則を、その全般的な形態において、極めて簡単に説明する。このアルゴリズムに関するさらなる詳細については、さらに説明する(主に図10〜図20)。
図7の説明に戻ると、システム(例えばフリーズドライ装置700)は、事前定義された一定の、または調整可能である、容器703からの距離「dh」に配置され、かつ、容器703の回転軸に対して事前定義された角度に向けられた、少なくとも1つの加熱器705(例えば局所的赤外線放射器705)を含む。図7の事例では、加熱器705は、容器の側面壁部を均一に加熱するために、据置型であり、90度の角度に向けられ、容器703と実質的に同じ高さに配置されている。しかし本発明はこの特定の構成に限定されず、加熱器705は移動可能であり得、その場合、システムまたはフリーズドライ装置700は、加熱器705を並進、および/または、回転、および/または傾斜させるための移動手段715(図7では図示せず。図8および図21を参照のこと)をさらに含むであろう。移動手段715が存在する場合、移動手段715は、信号815により制御器706によっても制御される(図8および図21参照)。図7ではただ1つの加熱器705が示されているが、フリーズドライ装置700は、2つ以上の加熱器(例えば少なくとも2つのIR加熱器705)を、または複数のフィラメントを有する加熱器(例えば、2つの個別に制御可能な加熱フィラメント1803、1804を有する加熱器に関しては図18を参照のこと)を、含み得る。
完全性のために、フリーズドライ装置700が通常は真空ポンプ707、チャンバ(特にチャンバの壁部)を加熱または冷却するための全般的加熱・冷却手段708、および、重要には、1次(昇華)および/または2次(脱離)乾燥ステップの間に容器703から流出する水蒸気を捕捉するための凝縮器709も含むであろうことが述べられる。好適には制御器706は、これらの装置707〜709を制御するようさらに適応される。「全般的加熱または冷却手段」という用語が、全般的なチャンバの温度制御(チャンバに格納された2つ以上の全容器に関する)と、「局所的加熱器」(特定の容器703に提供される熱の量を制御するよう特に適応される)と、を区別するために使用されることに留意すべきである。図23で示されるように、複数容器が同一のチャンバ内で同時にフリーズドライされる場合、それぞれ個々の容器は、好適には、永久的にまたは一時的に、それ自体の1つの局所的加熱器を、またはそれ自体の複数の局所的加熱器(例えば互いの上部に積み重ねられた2つの加熱器(図23で図示せず))を、有するであろう。
図7に戻って参照すると、フリーズドライ装置700は通常、1つまたは複数の圧力センサ710と、熱IRカメラ701以外の1つまたは複数の温度センサ711(例えば1つまたは複数のPt100プローブ、および/または1つまたは複数の熱電対を含む)と、1つまたは複数の湿度センサ712と、も含む。存在する場合、制御器706は、これらの装置のうちの1つまたは複数の装置から入力を受け取るようさらに適応され得る。1つまたは複数の温度センサ711から受け取られるかまたは取得されるデータは、例えば、当該技術分野で本来周知の手法で、熱IRカメラ701を較正するために使用され得る。1つまたは複数の圧力センサ710から、および/または1つまたは複数の湿度センサ712から、受け取られるかまたは取得されるデータは、特に、昇華段階の終止点を検出するために、数理モデルにより使用されてもよい。昇華段階の終止点は、時間において重要な瞬間である。なぜならその瞬間以降、製品の温度が次第に大きくなることが可能となるためである。
フリーズドライ装置700自体の一部ではないが、容器703は、この処理において重要な構成要素であり、したがって少々説明を加える必要がある。本発明に係る方法は(特記なき限り)特定形状を有する容器に限定されないが、容器が底部分55(例えば図5参照)と、側面部分54と、上部部分53と、を有することが一般に述べられ得る。容器が棚上に格納されるいくつかの先行技術に係るフリーズドライ処理とは対照的に、底部分55の形状は、実際的な理由により、容器50が平板状表面上に立位で立つことが可能となるような形状を底部分55が有すると有利であるが、本発明にはあまり関連しない。上部部分53の形状も、本発明にはあまり関与しない。なぜなら数理モデルは、主に容器の周辺側面壁部の温度情報に基づくためである。実際上の理由のために、容器の上部は好適には、容易に閉止されることが可能な形状を有する。また上部の形状は、把持手段(図示せず)により容器が保持されるよう、およびその長手方向軸を中心に容器が回転されるよう、選択され得る。しかし熱力学的観点からは、底部分55および上部部分53は、上部部分53の開口部が十分に大きく、それにより、昇華または脱離ステップの間に生成される水蒸気が、いわゆる「チョーク流れ」状態を回避するために十分に低い圧力低下で流出することが可能である限り、顕著な影響は及ぼさない。好適な形状は当技術分野で周知である。
一方、側面部分54の形状は乾燥処理に対して顕著な影響を及ぼす。図7の事例において、本明細書では容器の「周辺壁部部分」とも呼ばれる「側面壁部」は、本発明が機能するためには円筒形が必ずしも要求されるものではなく、他の好適な形状(例えば切頭状円錐形状)も使用され得るが、実質的に円筒形である。しかし、容器が実質的な円形の断面(例えば、製品が配置されている容器高さ「h」(図5参照)の少なくとも1部分にわたりその長手方向軸に対して垂直な平面における円形断面)であることは重要である。なぜなら、これにより、容器が回転されるときに熱吸収が実質的に均一となるという利点が提供されるためである。
しかし、円筒形状を有する容器を使用することは、製品が、スピン冷凍を使用すると内側壁部表面において比較的薄い層に配置され得るという利点、および、容器の外部表面から容器の内部への、および製品への熱伝達がより均一となり、その結果として数理モデルが簡素化されるという利点が提供される。
1つの特定の実施形態では、容器は、図22(C)で論じるように、実質的に放物面または切頭状放物面部分を有する。この形状が、円筒形状よりも、さらに他の利点を提供することが、さらに明らかとなるであろう。
図8では、本発明に係る方法において使用が可能である代表的なデータフロー図が示されている。読者は、図7で示される構成要素に対する対応をただちに認識するであろう。図8の中央に、数理モデルを有するコンピュータ713の1例がさらに詳細に示されている。
制御器(例えばコンピュータ713)は以下の入力を信号またはデータとして受け取る。
i)容器壁部の外部表面上に配置された地点における温度を示す熱IR画像801、
ii)容器703に関する情報(例えば、容器の幾何学的配置、形状、およびサイズならびに物質)および容器内の物質の内容に関する情報(特に物質の量および組成)。
物質に関する重要なパラメータは昇華の間の最高許容製品温度であり、最高許容製品温度は本明細書では臨界温度「Tcrit_sub」と呼ばれ、フリーズドライされる製品に応じた一定温度であると考えられる。Tcrit_subは、物質がその構造を失う(崩壊する)温度として選択され得る。係る崩壊は、移動性が増加すること(ガラス相に対する崩壊温度(Tcol))により、または、結晶構造が失われること(Teutecticを越える温度)により、生じさせられ得る。この両者の結果として、許容不能な視覚的な製品固体様相(cake aspect)、および、乾燥後の最終的残留水分が過剰となり得ること、が生じ、および/または、復元の間の分解のための許容不能な時間が生じ得る。
物質に関する他の重要なパラメータは、脱離の間の最高許容製品温度である。これは一定の温度値ではなく、残留水分含量「Tcrit_des[moisture]」の関数として、または2次乾燥時間「Tcrit_des[Time]」の関数として、変動する温度である。「Tcrit_des」のデータは、一覧、または曲線、または表面の形態で、または数学的関数として、または任意の他の好適な様式で、提供され得る。装置または方法によりステップのうちのいずれが実行されるかに応じて、値「Tcrit_sub」および「Tcrit_des[.]」の一方または両方が、例えば、データもしくは信号814の一部としてアルゴリズムに提供され、または、予め制御器内に、例えば不揮発性メモリに、またはハードディスク上に、格納され、そこから取得されてもよい。
本発明の様々な実施形態では、容器703内の物質はスピン冷凍され、したがって、容器703の側面壁部の内側表面に、主にまたは排他的に配置されると考えられる。以下の3つの特殊なケースが考えられる。
(a)例えば図4〜図6および図10〜図11で示されるように、物質を一定厚さの懸架層に保持する円筒形容器、
(b)例えば図15〜図18で示されるように、物質を一定でない厚さを有する懸架層に保持する円筒形容器、
(c)図22(C)で示されるように、比較的低速でスピン冷凍されるときでさえも物質を一定厚さの懸架層に保持する、高さ全体または側面部分の高さの一部にわたり放物面または切頭状放物面部分を有する容器発明者らが知る限りでは、フリーズドライの目的のために、さらに詳細には、医療製品を保持するための目的のために、特に適応された、係る形状を有する容器は、未だに存在しない。
すべての場合において、容器壁部は、製造時の誤差は無視するものとして、一定厚さを有するものと考えられる。
所望により制御器713(例えばコンピュータ)は、次の3つの情報を追加的入力としてさらに受け取り得る。
iii)チャンバ内の圧力を示すか、または、水の水蒸気分圧を示すか、またはその両方を示す、圧力信号810、
iv)例えば容器により受け取られる熱エネルギーを計算するときに考慮されるチャンバ壁部の温度を、および/または、較正目的のために使用され得る局所的プローブ(例えばPt100プローブなど)の温度を、示す、温度信号811、
v)製品品質および処理の準備度に関する独立的監視としてNIRセンサにより決定される容器内の製品の湿度([Van Bockstal]参照)を示す、湿度信号812。
本発明の一態様によれば、制御器713は容器703中の物質の乾燥処理を制御する。この目的のために、本発明は(i)フリーズドライ処理の第1乾燥ステップにおいて使用が可能である容器703中の冷凍製品を昇華する方法を提供する。本発明は(ii)容器703中の冷凍製品を脱離する方法も提供する。この方法は、フリーズドライ処理の第2乾燥ステップの間に使用され得る。先行技術に係る脱離方法と併せて(i)本発明に係る昇華の方法のみを使用すること、または、(ii)本発明に係る脱離の方法と併せて先行技術に係る昇華方法を使用すること、または、(i)本発明に係る昇華の方法、および(ii)本発明に係る脱離の方法の両方を使用すること、が可能である。
本発明の基底をなす原理によれば、制御器713は、個々の容器703により吸収される熱を制御することにより、特に、以下の項目のうちの少なくとも1つの項目を制御すること、または係る少なくとも1つの項目に影響を及ぼすことにより、個々の容器703中の製品の乾燥処理を制御する。
i)少なくとも1つの局所的加熱器705に供給されるパワー(例えば電力)。
ii)少なくとも1つの局所的加熱器705および関連する容器703の相対位置。この相対位置は、例えば、局所的加熱器705を容器703に対して離間する方向または近接する方向に移動させることにより、または容器703を局所的加熱器705に対して近接する方向にまたは離間する方向に移動させることにより、および/または、局所的加熱器705を容器の長手方向軸に対して平行な方向に移動させることにより、影響され得る。
iii)例えば、容器703の長手方向軸に対する加熱器705の主要ビームの角度位置を制御することによる、少なくとも1つの加熱器705および容器703の相対方向。
iv)例えば、連続的な生産処理(例えば図23で示される)において、より高速またはより低速で加熱器を通過するように容器を移動させることによる、加熱器により提供される熱に対する容器703の曝露時間。
またはこれらの任意の組み合わせ。
本発明の特定の実施形態では、局所的加熱器705に提供されるパワーのみが制御され、相対位置および方向は固定される。この場合、加熱器705に提供される制御信号805は、単一のパワー信号であるか、または単一のパワー信号を含み(例えば単一の加熱要素を有する加熱器の場合)、または複数のパワー信号を含む(複数の局所的加熱器の場合、または個別にパワー供給され得る複数の加熱要素を含む単一の加熱器の場合)。これらの実施形態については、本発明の原理を示すために、より詳細に説明されるであろう。しかし本発明はこれらの事例に限定されず、同じ効果が、パワー制御に代わって、またはパワー制御と併せて、1つまたは複数の加熱器の移動を制御することによっても、得られ得る。
本発明の他の特定の実施形態では、加熱器(単数または複数)705に提供されるパワー、および、加熱器(単数または複数)705に対する容器703の曝露時間の両方が制御される。この場合、制御器713は、加熱器(単数または複数)705にパワー制御信号805を、および容器(単数または複数)703を移動させる移動機構704に移動制御信号804を、および/または、加熱器を移動させる移動機構715に制御信号815を、提供するであろう。
完全性のために、制御器713がもちろん、真空ポンプ707に圧力制御信号807も、および/または、チャンバの全般的加熱または冷却ユニット708に加熱または冷却制御信号808も、および/または、凝縮器ユニット709に凝縮器制御信号809も、その他も、先行技術において周知の様式で提供し得ることが述べられる。
本発明の特定の制御方法を説明する前に、本発明の差異および利点をより良好に理解するために、先行技術で典型的に使用される制御方法について最初に説明する。図3では、乾燥処理が、棚上に格納された複数の容器のうちの1つの容器である1つの容器30に対してどのように進行するかが示されている。図9では、実際の製品温度を知ることなく棚温度を調節する、先行技術に係る制御方法の1例が示されている。水平軸上に、処理の異なるステップまたは段階、すなわちa)冷凍段階、b)昇華ステップまたは「第1乾燥」ステップ、およびc)脱離ステップまたは「第2乾燥ステップ」が示される。
冷凍ステップの間、チャンバの温度、および、さらに詳細には、棚の温度、およびしたがって間接的に前述の棚上に格納された容器の、および容器中に格納された製品の温度も、製品に応じて、例えば−20℃に、または他の好適な温度に低下され、チャンバ内の圧力なども低下される。容器は棚上に、上向きかつ静止状態の姿勢で格納される。以前に述べたように、第1ステップは、特記なき限り、本発明の主要な焦点ではない。
昇華ステップの間、先行技術に係る処理の作業課題は、製品温度が臨界温度「Tcrit」を越えないことを保証すること、および、昇華の発生を可能にするために棚に熱エネルギーを(したがって間接的に容器に、および製品に)提供することである。この目的のために、熱エネルギーは棚に提供される必要があるが、過剰な熱は提供されてはならない。さもなければ製品温度が局所的に臨界温度を越えて上昇し得る。係る温度上昇は許可されない。先行技術では、これは通常、臨界温度の下に、比較的大きい安全マージン「Tsm_pa」(ここで「sm」は安全マージンを(safety margin)、「pa」は先行技術(prior art)を、意味する)を設定することにより達成される。通常、温度Tsetは、次のように定義される。
Tset=Tcrit_shelf−Tsm_pa [1]
式中、Tcrit_shelfは、製品の臨界温度に対応する、棚の臨界温度であり、先行技術の制御器は、棚に接続された管を流れる冷却液体の温度および/または流速を増減させることにより、棚温度をこの設定温度「Tset」に可能な限り等しい値に保つためのアルゴリズム(制御ループ)を実行する。係る制御処理の効果が図9に示されている。制御処理に対しては通常、設定温度値の周りに小さい波形または変動が常に存在する。製品温度自体は知られていないが、Tcritよりある程度低い値であると考えられる。この仮定は、「昇華面」が図3で示されるように移動するよう、熱エネルギーが容器の底部を介して非常に低い速度で加えられる限り、正当化される。
図3(E)および図3(F)から理解され得るように、昇華過程の終止点に近づいたとき(すなわち、すべての氷結晶が製品から除去されたとき)、容器の底部に接触する製品のいくつかの部分は、もはや氷結晶を含まず、したがって昇華面により消費される潜在エネルギーにより「冷却」されず、しかし、物質が実質的に乾燥状態にあるため熱を良好に伝導することもないであろう。製品を「加熱」する(すなわちTproduct>Tcritとなる)リスクは大きいが、しかしこのリスクは先行技術では実質的にすべての氷結晶が除去されるまで比較的大きい安全マージン(Tsm_pa)を維持することにより「解決済み」である。
図9に戻って参照すると、第1乾燥ステップが完了すると、2次乾燥ステップが開始し得る。実際には第1乾燥ステップと2次乾燥ステップとの間に「明確な境界」が存在しないことに注意すべきである。正確な瞬間が未知であるため、先行技術では通常、凝縮器から得られる情報に、および/または水蒸気分圧に基づいてこの瞬間を検出するための努力もなされてきたように見受けられるが、昇華過程の期間も安全性のために延長される。これらの方法は、複数の容器の累積的条件に関し、したがって個々の容器の正確な情報に欠ける。これは、むしろ大きい安全マージンを使用することに関する別の議論である。もちろん棚温度がすべての場所において同一ではないが、これは比較的高い安全マージンに対するさらに他の理由である。
2次乾燥ステップ(脱離)では、臨界温度Tcrit_des(すなわち、脱離の間の製品の最高許容温度)は、製品の水分含量が減少するにつれて増加し、したがって時間とともに増加する。このステップでも、先行技術に係る方法は、次の式に基づいて制御アルゴリズムを使用する。
Tset=Tcrit_shelf−Tsm_pa [2]
実際に製品温度を知ることなく、最高許容温度(Tcrit)からの安全な距離に棚温度を維持するために、実際には、製品の水分含量を直接的に測定することが容易ではなく、またはさらには不可能であることに注意すべきである。再び、この点は、通常、低速処理を使用することにより、および、十分な安全マージンを取ることにより、および、臨界温度が水分含量よりもむしろ時間の関数として表現されるデータまたは公式を使用することにより、先行技術において解決されている。
(安全マージンが十分に大きく選択され、処理が十分に低速で実施される限り)先行技術に係るアプローチが安全なアプローチであることが理解され得る。しかし安全マージンを大きく取り、処理が十分に低速で実施されることは、処理能力時間の観点では最も効果的なアプローチではない。
先行技術の方法の効率を改善し、および/または、製品の品質を改善または保証することを希望して、発明者らは次のステップ:
a)少なくとも1つの熱IRカメラ701を使用して容器壁部の少なくとも1部分の熱IR画像を捕捉するステップ、
b)画像処理ユニットまたはモジュール702を使用して、容器壁部の外側表面上に配置された複数の地点に関連付けられた複数の温度値を決定(例えば計算または推定)することにより熱IR画像を処理するステップ、
c)熱フローをモデル化し、その特定の容器中で発生中のそれぞれの乾燥処理(昇華または脱離)の進行をモデル化する数理モデルを使用して容器中に格納された製品の1つの温度(Tprod)を決定(例えば計算または推定)するステップ、
d)製品の温度Tprodと、特定の容器内容物に関する事前定義された臨界温度Tcritと、の間の温度安全マージン「Tsm」を決定(例えば計算または推定)するステップ、
e)少なくとも1つの局所的加熱器705に供給されるパワー、容器に対する少なくとも1つの局所的加熱器の位置、容器に対する少なくとも1つの局所的加熱器の方向、および、前述の局所的加熱器に対する容器の曝露時間、からなる群より選択される少なくとも1つのパラメータを制御することにより、容器703、特に容器703の周辺側面壁部の少なくとも1部分に、供給されるパワーの量を制御するステップ
を有する方法を提案する。
ステップc)において、製品の「一定」の温度ではなく、「1つ」の温度が決定されることに注意すべきである。なぜなら、製品の温度は、容器の位置に応じて変動し得るものであり、通常に変化するであろう。昇華過程の間は、しかし脱離過程の間も、好適には、容器壁部の内側表面付近の位置における製品の温度が決定される。なぜなら、この位置において、製品温度が最高であると期待されるためである。
図10(a)は、[Van Bockstal]からの図1の複製であり、熱がIR放射の形態で、回転する容器に供給されることが示されている(しかし、Van Bockstalでは、氷結晶により選択的に反射される放射を測定するためにNIRスペクトロスコピーが使用され、それにより氷および水分含量に関連する情報が提供され、その一方で、本発明では、容器壁部の外側表面上の温度を検出するために熱IRカメラが使用され、これらが完全に異なることに注意すべきである)。
図10(b)および図10(c)では、円筒形容器中のスピン冷凍された製品の昇華をモデル化するために本発明の様々な実施形態において使用され得る第1数理モデルが示されている。なお、この製品は、容器の周辺壁部105の内側表面に配置された一定の厚さの層の形態にある。
この数理モデルは、3つの同心円筒形状を含む本体(図10(b)に断面が示されている)に熱エネルギーを供給することに基づく。この本体は、以下の3つを含む。
a)容器物質により形成された外側円筒105、
b)外側円筒105に物理的に接触し、かつ、依然として氷結晶を含む冷凍製品を含む、中間円筒101(「ゾーン1」とも呼ばれる)、
c)氷結晶を実質的に含まない冷凍製品を含む内側円筒103(「ゾーン2」とも呼ばれる)。
3次元形状が提示されるが、対称的な理由により、この本体は、1次元モデルとして説明され得る。この1次元モデルは、図10(c)で示される線形温度勾配により近似され得る。換言すると、数理モデルは、例えば、以下の5つの変数またはパラメータのなどのいくつかのパラメータのみにより説明され得る。
−容器壁部の外側における温度を表すTcw、
−依然として氷結晶を含む第1製品ゾーン「ゾーン1」の外径における温度に等しいと考えられる容器壁部の内側における温度を表すT1out、
−昇華面の温度に等しいと考えられる第1製品ゾーン「ゾーン1」の内径における温度を表すT1in、
−円筒壁部の半径(または厚さ)を表すRcw、
−昇華面の位置に等しいと考えられる第1ゾーンの内径を表すRz1、しかし他のパラメータも使用され得る。
このモデルは、エネルギーの保存則および質量の保存則にさらに基づく。係るモデルの代表的な詳細にわたる説明は、付録において紹介されているが本発明はこれに限定されない。このモデルでは、氷結晶を昇華させるために、エネルギーが、外側円筒105を通って本体に進入し、中間円筒101を通過し、中間円筒101と内側円筒103との間の「昇華面」SFとして知られる境界面に吸収されるものと仮定される。氷結晶が除去されるにつれて、昇華面は次第に外向きに(図10(b)の左側に)移動する。換言すると、中間円筒101の厚さが減少し、その一方で、内側円筒103の厚さが増加する。蒸発は潜在熱エネルギーを使用するため、昇華面SFの両側での温度は、実質的に一定であると考えられ、したがって、外側円筒105に進入し中間層101を通過する全エネルギーは氷内容物を蒸発させるために使用されるものと考えられる。製品内容物(量および特性、その他)が既知であり、容器に進入するエネルギーの量が(とりわけ熱IR画像データに基づいて)決定可能であるため、上記に変換される氷結晶の量は計算可能であり、したがって昇華面の進行は計算可能である。
次に水蒸気は、内側ゾーンであるゾーン2(参照番号103)の細孔を通過することにより、製品から出る。第2ゾーンに直接的に提供される熱の量が実質的にゼロであると仮定すると、昇華は潜熱を消費するため、第2ゾーンであるゾーン2の温度は実質的に一定であると考えられる。図10(b)では、容器の左半体のみが示されているが、同様の状況が反対側にも存在する(もちろんのこと鏡面反射後の反対側のことではあるが)ことは当業者には明らかである。したがって、容器の左半体の実質的に乾燥した内側ゾーン103は、容器の右半体上の実質的に乾燥した内側ゾーン103に対向し、容器のこの部分に対して直接的に供給される熱エネルギーはまったくなく、少なくとも意図的な形で供給されることはない。もちろん、チャンバの壁部からの放射はつねにいくらかは存在するが、この熱の量は1次近似において無視可能であると考えられる。
さらにこのモデルでは、容器に供給される熱エネルギーが実質的に均一(容器が回転されるため)であり、容器の外側表面の温度が(周方向および高さ方向の両方において)実質的に一定であり、単一の温度値Tcwにより表され得るものと考えられる。熱IR画像は、この単一の温度値を「測定」するために使用され、熱エネルギーの均一な量(容器の高さ方向において均一)が、熱を容器に供給するために、制御される。この熱は、例えば、単一の加熱器により、または、同様の様式で制御される複数の加熱要素を有する加熱器により、または、同一の様式で制御される複数の加熱器により、提供され得る。
通常のオーダーの規模の効果を得るために、本発明をこの事例に限定することなく、冷凍製品の厚さは通常、約0.1mm〜3.0mm(例えばabout0.5mm〜2.5mm)であり、容器の外径は通常、約10.0〜250.0mm(例えば、約1cm〜10cm)であり、容器壁部の厚さは通常、約1.0〜3.0mmであり、昇華面SFの厚さは、わずか数分の1ミリメートルである(図面では、昇華面は、例示目的のためのみに、故意に比較的厚い層として示される場合もある)。
図10(c)ではこのモデルの通常の温度プロファイルが示されている。最低温度「T1in」は、氷結晶が昇華されている位置(すなわち、中間ゾーン「ゾーン1」と内側ゾーン「ゾーン2」との間の境界面に配置された昇華面SF)に見られる。第1温度降下が容器壁部105の上方に存在し、第2温度降下が第1製品ゾーン「ゾーン1」の上方に存在する。これらの温度降下は、それぞれの第1傾斜(第1温度勾配ともよばれる)および第2傾斜(第2温度勾配ともよばれる)を有する線形関数により1次近似され得る。
したがって、円筒壁部105の外側における温度Tcwを(熱IRデータに基づいて)決定することにより、および、第1温度勾配および第2温度勾配を決定(例えば計算または推定)することにより、製品の温度プロファイル全体が既知となる。見られ得るように、最高製品温度「Tout1」はゾーン1の左側で発生する。
製品の温度が製品のあらゆる位置で臨界温度Tcritより低い値となることを保証するために、制御アルゴリズムの主要な作業課題は、結果的に生成される温度T1outが昇華ステップの全体を通して事前定義された臨界温度「Tcrit」よりも低い値となるよう、1つまたは複数の局所的加熱器705を制御することである。T1outが直接的に影響または測定されることが不可能であるという事実にも関わらず、数理モデルはT1outを決定することを可能にする。常に波形および測定誤差が存在するため、本発明に係る方法も、何らかの安全マージンを考慮に入れるであろうが、しかし先行技術とは対照的に、この安全マージンは、より小さく選択することが可能であり、昇華が進行するにつれて、例えばモデルにより決定または予測される進行を考慮に入れることにより、調整され得る。昇華の進行(このモデルでは、昇華面が径方向外向きに移動することと同一視され得る)は、例えば、容器の外側における温度Tcwを考慮に入れることにより、および、例えば局所的IR加熱器により供給された熱、加熱器と容器との間の距離、チャンバ壁部により放射された熱、その他を考慮に入れることにより求められる、昇華が開始した以降に容器に提供された熱の累積量により、計算されることが可能である。
したがって、昇華面の瞬間位置をかなり正確に予測することが可能であり、係る予測位置に基づいて第1および第2のゾーンであるゾーン1およびゾーン2の熱的特性を予測することが可能である。第1ゾーン101は熱を昇華面に伝導する必要がある。第2ゾーン103は水蒸気を除去する必要がある。いつ昇華面が容器壁部に到達するかは推定が可能である。本発明の重要な原理によれば、加熱器に供給される熱がそれに応じて調整され、好適には、安全マージンもこの進行を考慮に入れて動的に調整される。
本発明に係る方法の重要な利点は、製品温度と臨界温度との間の温度差として次の式で定義される温度安全マージンTsmを、
Tsm=Tprod−Tcrit [3]
いかなる瞬間的時間においても製品の品質を損なうことなく、安全に減少させることが可能である。実際、この数理モデルは、製品中に依然として存在する氷結晶の量を比較的正確に予測することが可能であり、したがって、特に開始点または第1部分(例えば昇華過程の第1四半期または第1半期)において、安全マージンを相当に減少させることが可能である。なぜなら、昇華が依然として第1ゾーン101において生じていること、および水蒸気が、製品の第2ゾーン103における細孔を介して流出するにあたり依然としてさほど困難に遭遇しないこと、が確実であるためである。
加えて、容器壁部の外側表面における温度を監視することにより、製品が依然としてこの数理モデルにしたがって挙動し、それに応じて数理モデルが調整され得ることが確認され得る。したがって、昇華過程のスピードのみが本発明により改善され得るが、監視能力も改善され得る。昇華に関するかなりの時間(したがってコスト)を考慮に入れると、たとえ処理能力がわずかに改善されるだけでも、コストが、および、装置またはシステムの生産能力は、顕著に影響されることが理解され得る。さらに、研究室規模においても、監視能力の向上と組み合わされた「処理能力向上」または処理時間の全体的短縮化の利点は過小評価することができない。
図11では、容器に供給される熱の量が(a)最適である、または(b)最適値よりも高い、または(c)最適値よりも低い場合に生じる現象を示すために、図10(c)の温度プロファイルと同様の3つの温度プロファイルが示されている。
図11(a)では、最適加熱の場合の温度プロファイルが示されている。この場合、加熱器により供給されるパワーと昇華により使用されるパワーとの間に平衡が存在し(Pr加熱器=P昇華)、容器壁部105の外側上の温度Tcwは時間の経過において実質的に一定である。この場合、昇華面112は径方向外向きに「可能な限り速く」移動し、したがって昇華過程は可能な限り速く進行する。
図11(b)では過剰な加熱力が容器に供給された場合における温度プロファイルが示されている。この場合、P加熱器>P昇華が成り立ち、昇華面は「追随不可能」である。平衡は存在せず、その結果として、容器壁部の外側上の温度Tcwは時間の経過とともに上昇する。これは望ましくない。なぜなら、この結果として最高製品温度T1outも上昇するためである。制御器は温度Tcwが時間とともに増加することを容易に検出可能であり、このことを解決するために、加熱器(単数または複数)のパワーを低下させるであろう。
図11(c)では、より多くの加熱力が容器に供給され得た場合における温度プロファイルが示されている。この場合、平衡が存在し(P加熱器=P昇華)、しかし昇華面はより速く移動することが可能であるが、十分なパワーを得ないため(これは全昇華過程の間に先行技術に発生する状況と同じである)、昇華面は速く移動することができない。見られ得るように、容器壁部115上および第1ゾーン111上での温度勾配は、この場合では、それぞれ小さい。この方法の加熱は、昇華過程の少なくとも第1四半期または第1半期の間は望ましくないが、昇華ステップの終止点付近で(特に昇華面112が容器壁部115にまさに到達しようとする時点では)望ましい。
図12では、例として、本発明に係る方法がいかにして作用するかが示され、および本方法が、昇華の間の製品温度が常に臨界温度よりも低く、その一方で同時に処理が加速化され得ることを保証し得ることが示されている。
図9で示されたものと同一である、冷凍、昇華、および脱離の3ステップがここでも示されているが、遷移ゾーンが追加され得る。垂直軸上に、先行技術の棚温度Tset_paならびに臨界温度Tcritが示されている。臨界温度Tcritは、同一の製品が乾燥される場合、もちろん先行技術の場合と同じである。
図10(b)に示されたように、容器壁部105の外側上の温度Tcwは、製品の最高温度に等しい容器壁部の内部上の温度T1outよりも高い。制御方法の作業課題は、製品の任意の場所における製品温度が臨界温度Tcritよりも常に低く、すなわち、T1outが製品内部の最高温度であるため、T1outが常にTcritよりも低いことを保証することである。数理モデルを使用すると、容器壁部105上での温度差ΔTcw(=Tcw−T1out)が計算され得、したがって、製品温度Tprodが決定または推定され得る。
この方法は棚温度を盲目的に制御しない(容器が懸架される場合、棚が存在し得ない)が、製品温度を「知」っているため、より高い量(好適には、図11(a)で示されるように昇華面が依然として「追随」することが可能である最大量)の熱エネルギーを容器に加えることが可能である。熱エネルギーの量が増加されることは、氷結晶がより速く昇華されることを、換言すると、処理能力が向上すること、または昇華ステップの時間が短縮化されることを、意味する。換言すると、本発明では安全マージンTsmも使用されるが、安全マージンの値が一定に保たれる先行技術とは対照的に、その値は不必要に大きい値である必要がなく、時間の経過とともに調整され得る。
図示の事例では、加熱器は、容器壁部の外側上での温度Tcwが、昇華ステップの開始時に臨界温度Tcritにかなり近接するようアプローチすることが可能となるよう、さらには、望まれる場合にはTcritよりもわずかに大きくなることさえあり得るよう、制御される。昇華が進行するにつれて、臨界温度Tcritと容器壁部の外側温度Tcwと間の温度差が次第に増加し、それによりTcritとT1outとの間に何らかの余分なマージンが作られることとなる。製品の典型的な温度プロファイルも示されている(曲線(Tiout))。見られ得るように、この温度も通常、小さい波形を示す。
図12(b)で示されているように、当業者は、昇華の開始点では比較的小さく(例えば少なくとも1℃または少なくとも2℃)、昇華の終止点では比較的大きい(例えば約5℃)、好適な安全マージン曲線を選択することができる。しかし、もちろん他の値も選択され得る。これらの値の間で、任意の好適な曲線、例えば直線1201、または区分的な線形曲線(図示せず)、または階段関数1202、または2次関数1203、または指数関数(図示せず)、または任意の他の好適な曲線(好適には単調増加曲線)が使用され得る。
特定の実施形態では、一定曲線1204が安全マージンとして選択されるが、しかしその場合でも、本発明の方法は先行技術とはまったく異なる様式で作用する。なぜなら、アルゴリズムが依然として製品温度を決定(例えば計算)し、容器の外側壁部における温度Tcwが、昇華の間の選択された安全マージン値「Tsm_sub」に実質的に等しくなるよう選択/設定/調節された、製品温度と臨界温度との間の温度差「Tcrit−Tprod」を生じさせるよう、加熱を調整するためである。その一方で先行技術では、棚温度と臨界温度との間の温度差「Tshelf−Tcrit」は安全マージン値Tsmに実質的に等しくなるよう選択/設定/調節されるであろう。もちろん曲線1024は最適なスピードを提供しないであろうが、しかし本発明の安全マージンが昇華の間一定となるよう(一定となることは好適ではないが)選択され得ることを示す。
図12(a)に戻って参照すると、昇華が進行し氷結晶の量が減少するにつれて、安全マージンΔTsm_subは、昇華面が容器壁部に到達し熱がもはや氷結晶の昇華により吸収されない昇華ステップの終止点において、製品の温度が突然上昇し(図12(a)における点「A」)、それにより温度Tcwが上昇するよう、十分に高い値となる必要がある。これは、1つまたは複数の加熱器に供給されるエネルギーに基づいて、一方の容器の外側表面上の温度を測定/監視することにより、しかし特に、容器の外側上の温度が期待されるより速く上昇することを認識することにより、制御システムにより検出される。これは検出するべき重要な点である。ひとたび検出されると、加熱器に供給された熱エネルギーは、好適には急激に低下される。図12(a)で示されているように、昇華過程の終止点における、または係る終止点付近の安全マージンTsm_subは、最高製品温度Tprod_maxと臨界温度Tcritとの間にマージン「M」が依然として存在するよう、十分に高く選択されるべきである。このマージン「M」が、例えば温度プロファイルTcwを、特に地点Aに接近したとき(例えば、(予測にしたがって)係る接近の数分間)に低下させることにより、必要に応じて増加され得ることが理解されるであろう。
全体的に、本発明に係る方法を使用することにより、昇華ステップの期間が、品質を損なうことなく、少なくともいくつかの医療製品に対して、少なくとも5%〜10%だけ、短縮され得ることが期待される。これはかなりの改善である。
上記で説明したように、昇華ステップと脱離ステップとの間の遷移は漸次的である。先行技術で成り立つように、この遷移の間に供給される熱は、製品を加熱することを避けるため、適度でなければならない。この遷移期間の間、先行技術において使用されたものと同一の処理がここでも使用され得る。単なる例として、1つまたは複数の加熱器(単数または複数)は、容器壁部の外側上の温度Tcwが一定の事前定義された温度に維持されるよう、制御され得る。なおこの事前定義された温度の値は製品に依存する。
昇華ステップに関しては、さほど詳細には示さないが、上記と同様の方法も図12(a)の右部分で示されるように脱離ステップに対して使用され得ることが理解されるであろう。
第1乾燥ステップ後の製品の脱離に対する数理モデルは、この場合では、開始物質が、氷結晶を含む冷凍製品ではなく、氷結晶を有さず、かつ、除去されるべきいくらかの水分含量を依然として含む多孔性構造を有する比較的乾燥した製品である点を除き、上記で説明した簡単な昇華モデルの数理モデルと主として同一または同様であり得る。図10(b)で示される3つの同心円筒を有するモデルがここでも使用され得るが、ここでは第1ゾーン101は湿気が大量に除去されたゾーン(すなわち乾燥ゾーン)であり、第2ゾーン103は、実質的に除去されるべき湿気を依然として含み、脱離の間、第1ゾーン101と第2ゾーン103との間に昇華面が存在しない。
また、製品の最も乾燥した部分がここでは、容器の中心に対向するよりもむしろ、容器壁部105に近接して配置されるため、第1ゾーン101の、および第2ゾーン103の、熱特性は劇的に異なる。脱離の間、第1ゾーン101の厚さ(または範囲)は次第に増加し、その一方で第2ゾーン103の厚さは次第に減少する。脱離の進行は、第1ゾーンと第2ゾーンとの間の仮想的境界面の位置により表され得、径方向内向きに移動する。
熱が十分に低速で供給される場合、温度勾配は、Tcw>T1out>T1inとなるという点で、図10(c)で示される温度勾配に類似するが、しかし、傾斜が異なり得、エネルギーは昇華によるよりもむしろ蒸発により吸収されるが、数学的には同一のモデルが使用され得る。さらに、臨界温度は、一定の温度であるが、しかし製品の水分含量に依存し、これは、時間の関数として事前定義された曲線(例えば線形曲線)により近似され得る。代替的に水分含量は、例えば、NIRセンサおよび適切な較正を使用して決定され得る。既知の製品特性(すなわちTcritと水分含量との間の関係)を用いて、加熱器(単数または複数)の設定はそれに応じて調整され得る。
パラメータ値が異なる一方で、熱赤外線カメラ701、画像処理ユニットまたはモジュール702、および制御器713(例えば、製品における温度または温度プロファイルを計算するために数理モデルを使用し、かつ、少なくとも1つの加熱器705を駆動するよう適応された、コンピュータ)を使用する、図7と同じハードウェア設定が再び使用され得る。
脱離方法の主要な作業課題は、製品の温度「Tprod」が事前定義された(しかし一定ではない)臨界温度(しばしば当該技術分野では「ガラス温度」Tgと呼ばれる)より常に低い値となることが保証されるよう、少なくとも1つの加熱器705を制御することである。ガラス温度Tgは、特定の製品に依存するが、その水分含量にも依存する、最高許容温度であるが、本発明では単に臨界温度と呼ばれる。水分含量が低下するにつれて、臨界温度は既知の関係にしたがって上昇する。
本発明に係る昇華方法に対して上述したものと同じ特長が本発明に係る脱離方法にも適用可能である。とりわけ、棚の温度を制御し、過度に安全マージンに依存し、そのために、処理が低速化されることよりもむしろ、本発明に係る方法は、進行をモデル化し、それにより、処理をより正確に制御することが可能である数理モデルを考慮に入れ、真の製品温度を計算または推定することにより、および、臨界温度と製品温度との間の安全マージンを考慮に入れることにより、製品品質を損なうことなく処理を高速化し得る。なおこの安全マージンは一定であってもよく、または進行の間に適応されてもよい。
上記で説明したように、数理モデルを使用することにより、プロセッサまたはコンピュータ、その他は、直接的に測定することが不可能である製品のパラメータを計算することが可能であり、製品の熱挙動を予測することが可能である。さらに脱離の進行は、処理の間、例えばリアルタイムで、例え間接的であったとしても、とりわけ容器に供給された熱の累積量に基づいて、容器703の外側表面上の温度の測定値を取ることにより、および、これらの値を期待される温度値に相互に関連付けることにより、確認され得る。
昇華方法との他の差異は、脱離過程の開始点においてマージンがほとんどなく、しかし時間の経過とともに、マージンのための余地が生じるにつれて、数理モデルは、過度に広いマージンを使用するよりもむしろ、マージンの利点を利用することを支援する点である。
図13では、例として、容器壁部の外側表面上の1つまたは複数の地点における温度が、熱IRカメラにより捕捉された熱IR画像1300を介して、および好適な処理により、取得され得ることが示されている。画像処理技術は当該技術分野で周知であり、したがって本明細書では詳細な説明を加える必要はない。
本発明に関して、画像処理モジュール702(図7参照)は、容器の位置を特定(またはより正確には、容器に関連付けられた画像ピクセルを特定)し、複数の容器が存在する場合には、各容器のそれぞれの位置を特定するであろう。または、画像処理モジュールは通常、容器の境界上に位置するピクセルは無視するであろう。なぜなら、これらのピクセルは背景に関する情報も提供するためである。
図13で示される事例では、縦列X=3〜5、および横列Y=3〜10に位置するピクセル(すなわち、合計で、3×8=24のピクセル)は、容器壁部の外側表面の温度Tcwを決定するために使用され得るが、もちろん本発明はこの具体例に限定されない。
どの数理モデルが使用されるかに応じて、これらの24個のピクセルの部分集合が使用され得る。例えば、容器および製品が3つの同心円筒により表される上記で説明したモデルでは、容器壁部の外側表面全体が単一の温度Tcwを有すると考えられる。このモデルでは、外側表面の温度は例えば、上記の24個のピクセルの平均として計算され得るが、他の区域も機能するであろう。例えば、縦列X=4上に位置する8個のピクセルの平均も、容器壁部の外側表面上の温度を示す良好な温度値をもたらすであろう。
いくつかの実施形態では、カメラ701(例えば図7、または図8、または図23参照)は、視野域を遮蔽または阻止するための、特に、容器の背後に配置された加熱器705からの放射を受容することを回避するための、さらなる手段を含み得る。係る実施形態では、画像処理ユニット702は、画像の「垂直」線上に配置されたピクセル(図13の事例では、例えばX=3、およびY=3〜Y=10に配置されたピクセル)の平均を計算し、他のすべての情報を無視するよう適応され得る。容器がその長手方向軸を中心に回転されるため、この回転により、容器表面全体の温度に関する情報が依然として提供される。カメラのサンプリング周波数は、各IR画像が容器壁部の異なる位置に関係するよう選択されるべきである。
しかし異なる数理モデルが使用される場合(例えば、製品が、製品の高さ全体にわたる3つの同心円状円筒により表されるよりもむしろ、互いの上部上に積み重ねられた複数の少なくとも2つのディスクであって、各ディスクが3つの環状リングにより表される、モデル)、平均値が、各ディスク上の物理的位置に対応するピクセル位置に対して計算され得る。例えば、第1平均が、上方ディスクの表面温度を示すY=7〜10およびX=3〜5に位置する12個のピクセルに対して計算され得、第2平均が、下方ディスクの表面温度を示す、Y=3〜6、およびX=3〜5に位置する12個のピクセルに対して計算され得る。しかしもちろん、これは単なる例であり、当業者は他の好適なピクセルの部分集合を容易に見出し得る。
製品の「最高」温度(すなわち図10(c)における温度T1out)が好適にはピクセル値の部分集合の「平均」温度(容器の外部表面上に配置された異なる位置のTcw値の平均に対応する)から導出されることが指摘される。しかしピクセル値の「最高」または「中央値」温度を計算することから温度T1outを導出することも可能であり得る。
図14では、図7の制御器706、または図8のコンピュータ713、または図23のコンピュータ2313により実行され得る、本発明の一実施形態に係る方法1400の簡略化されたフローチャートが示されている。基底をなす数理モデルのパラメータおよび関連する臨界温度が異なるが、この方法は、第1乾燥ステップ(昇華)のために使用され得るが、第2乾燥ステップ(脱離)のためにも使用され得る。
ステップ1401では熱IR画像が熱IRカメラ701を使用して捕捉される。カメラは事前定義されたフレームレートで熱画像を取得し、この熱画像を制御器706(例えばコンピュータ713)に提供する。
ステップ1402では、画像処理モジュール702は前述の熱画像から、所望により他の温度情報(例えばPt100プローブからの温度情報)も考慮に入れて、温度情報を抽出する。
ステップ1403では、最高製品温度「Tprod_max」が数理モデルを使用して計算される。このモデルに対して、および図10(b)で示される状況では、最高温度はT1outである。
ステップ1404では、温度安全マージン「Tsm」は、昇華の進行に基づいて、計算される。図12に関して論じられるように、製品温度Tprodと臨界温度Tcritとの間の安全マージンの値は、昇華ステップの開始点では比較的小さく選択される(温度TcwがTcritよりもさらに高い値であり得ることを意味する)が、昇華ステップの終止点付近では十分に高く選択されなければならない(例えば、少なくとも5℃のオーダー)。
ステップ1405では、最高製品温度「Tprod_max」がTcritとTsmとの間の差異によりも大きいかどうかが試され、その結果が真である場合にはステップ1406が実行され、その結果が偽である場合にはステップ1407が実行される。
ステップ1406では、容器に供給される熱エネルギーは、例えば局所的加熱器705に供給されるパワーを減少させることにより、および/または局所的加熱器705と容器との間の距離を増加させることにより、および/または加熱器の方向を変化させることにより、および/または、局所的加熱器に対する容器の曝露時間を減少させることにより、減少される。
ステップ1407では、容器に供給される熱エネルギーは、例えば局所的加熱器に供給されるパワーを増加させることにより、および/または加熱器と容器との間の距離を減少させることにより、および/または加熱器の方向を変化させることにより、および/または、局所的加熱器に対する容器の曝露時間を増加させることにより、増加される。
先行技術の安全マージンが通常は、棚と容器との間の熱相互作用が仮定され、それにより、変動性を組み込むための、棚の臨界温度と、それに引き続き、安全マージンと、が導き出されることに基づき、その一方で本発明では、安全マージンが、製品温度と臨界温度との間の温度差として定義され、これらは完全に異なることに注意することが重要である。
図10(a)では、製品が容器壁部に当接する一定厚さの層を形成するものと仮定された。スピードが十分に高くないため、実際には、このことは完全に正しいわけではない。スピン冷凍の間のスピードが依然として非常に高い(例えば3000RPMもしくは4000RPM、またはそれ以上)場合、製品層は実際に容器壁部に配置されるであろうが、一定でない厚さを有し、図15で示されるような形状を有するであろう。スピン冷凍の間に容器が回転されるスピードに応じて、厚さ変動がより顕著となるであろう(実際には製品の内側表面は放物面形状を有するが、円錐形状として近似され、図15の断面図における直線により表される)
図16(a)〜図16(c)では、均一な加熱が図15の容器壁部に適用された場合の昇華過程の進行の様子が示されている。上部における昇華面112(ここでは製品層はより薄い)は、図16(c)で示されるように底部における昇華面よりも早く容器壁部115に到達するであろう。昇華が時間「t3」ではまだ完了していないため(製品中に依然として氷結晶が存在する)、熱エネルギーが依然として昇華過程に供給されることが必要であるが、製品の上部がすでに比較的乾燥された状態にあるため、製品の当該部分が加熱されないよう、注意が必要である。明らかに、図10および図11の3つの同心円筒を有する簡単な数理モデルは、この状況に対しては好適ではない。
本発明の特定の実施形態によれば、この状況は、第2の、ある程度より高度な数理モデルによりモデル化され得る。この数理モデルでは、要求中の物質は、互いの上部上に積み重ねられた複数のN個の少なくとも2つのディスク176、177により表される。しかしもちろん、より多くのディスク(例えば少なくとも3つ、または少なくとも4つ、または少なくとも5つのディスク)も使用され得る。図17では、2つのディスク(上方ディスクおよび下方ディスク)のみを有する、係るモデルの1例が示されている。このモデルは、両方のディスクを別々に取り扱うことが可能であり、各ディスクは、それ自身の量の熱を受容するものと考えられ、各ディスクは、それ自身の外側温度(例えばTcw1、Tcw2)を有する。モデルの簡素化のために、ディスク間で熱は交換されないものと仮定する。
図10(b)の3円筒モデルと同様に、各ディスクは3つの環状リング(すなわち、容器壁部の物質を含む外側リング175、氷結晶を有する物質を含む中間リング171または第1ゾーン、および、氷結晶を有さない物質を含む内側リング173または第2ゾーン)からなる。第1ゾーン171および第2ゾーン173は「昇華面」172として知らされる境界面により隔てられる。昇華面の厚さは図面では誇張されている。
少なくとも2つのディスクを有するこの数理モデルを使用して、単一の加熱器を使用する図14の制御アルゴリズムが依然として使用され得るが、この数理モデルは、2つの製品温度(上方ディスクに対する第1温度Tcw1および下方ディスクに対する第2温度Tcw2)と、2つのディスクの昇華の進行に応じて、2つの安全マージン(上方ディスクのための1の安全マージン、および下方ディスクのための1つの安全マージン)と、を計算するであろう。単一の加熱器のみが存在するため、2つの安全マージンのうちの厳しいほうの安全マージンが適用される。全体として、これにより図12の昇華過程と同様の昇華過程が、少なくとも当初は、もたらされるであろう。しかし「遷移期間」が遅かれ早かれ、すなわち、上方ディスクの昇華面172が容器壁部175に到達したとき、開始するであろう。しかし単一の加熱器のみにより加熱される場合であったとしても、複数の少なくとも2つのディスクを用いる数理モデルを使用する本発明に係る方法は、先行技術に対してスピードの改善を依然として提供し得る。本発明に係る方法は、数理モデルを使用して、ディスク176、177の各ディスク内部の製品温度を計算することにより、および、対応する安全マージンを計算することにより、および、最も厳しい要件を使用して加熱器を駆動することにより、いかなる瞬間においても製品品質を損なうことなく、スピードの改善を図る。
しかし本発明の様々な実施形態では、異なる量のエネルギーが容器の異なる部分に故意に提供される。これは、例えば、別々にパワー供給される、少なくとも2つの別個のIR加熱器により、または、区分化された放熱器1805を使用することにより、実装され得る。この区分化された放熱器は、図18で示されるように別々にパワー供給されることが可能である複数の加熱要素1803、1804(例えばフィラメント)を有する単一の放熱器(例えば、2つの区画を有する加熱器1805)を意味する。しかしもちろん、本発明はこれらの事例に限定されず、3つ以上の加熱要素も使用され得る。
本開示の利益を有する当業者は、図18の複数の加熱器または複数フィラメント型加熱器と組み合わされた図17の複数ディスクモデルの使用を理解するであろう。製品温度と臨界温度との間の事前定義された安全マージンが得られるよう各加熱器が制御される、上記で説明した制御アルゴリズムは、さらに良好に、図15の容器および製品の昇華過程を制御することを可能にする。
明示的には示されないが、図18で示される2つの加熱器1803、1804、または2つの区域1803、1804を有する加熱器1805(図面は2つの方法で解釈され得る)は、例えば、上方加熱器区域1803からの放射が主に上方ディスク(単数または複数)を加熱し、下方ディスク(単数または複数)はほとんど加熱しないよう、および、下方加熱区域からの放射が主に下方ディスク(単数または複数)を加熱し、上方ディスク(単数または複数)はほとんど加熱しないよう、反射手段または収束手段(例えば、放射を特定方向に誘導するためのミラーまたは湾曲金属表面)をさらに含み得る。
図19では、容器の上部または底部における昇華面(図16参照)が容器の高さ全体にわたり略同時に到着するよう、複数の少なくとも2つの加熱器1803、1804を、または、単一の加熱器1805の少なくとも2つのフィラメントを、駆動するための本発明の一実施形態に係る他の方法1900が示されている。このアルゴリズムの背後にある概念は、「底部ディスク」の昇華面が上記で説明した様式で駆動され(したがって、昇華ステップの開始点では「最大スピード」で、しかし、容器壁部に接近すると次第に低速化される)、他のすべての加熱器は、他のディスクの相対スピードが底部ディスクの相対速度と実質的に同一となるよう、その設定点を調節するということである。「相対スピード」とは、製品層の平均厚さに対するスピードを意味する。例えば2つのディスクの場合、上方ディスクの平均厚さが下方ディスクの平均厚さより20%小さい場合、上方加熱器は、昇華面が下方ディスクの昇華スピードよりも約20%低速で移動するよう、駆動されるであろう。
したがって、ステップ1901〜1907は、最高製品温度が底部ディスクの製品に対してのみ計算され(ステップ1903)、ステップ1906および1907に関与する加熱器が底部加熱器である点を除き、図14のステップ1401〜1407と同一である。
ステップ1908では、底部ディスクの昇華面の相対スピード「rel_speed_B」が計算される。
所望によるステップ1909では、最高製品温度「Tprod_max_i」が、ディスク番号「i」に対して計算される(iは2から始まる整数値であり、底部加熱器は加熱器#iとみなされる)。
所望によるステップ1910では、ディスク「i」に対する安全マージン「Tsmi」が、ディスク「i」の昇華面の進行に基づいて、計算される。
ステップ1911では、ディスク「i」に対する昇華面の相対スピード「rel_speed_i」が計算される。
所望によるステップ1909および1910が存在しない場合、ディスク番号「i」の相対スピードは、底部における相対スピードの一部分であると推定され得る。なおこの「一部分」は製品層の厚さに比例する。
ステップ1912では、ディスク「i」の昇華面の相対スピードは、底部ディスクの昇華面の相対スピードと比較され、局所的加熱器「i」のパワーは、ディスク「i」の相対スピードが底部ディスクの相対スピードよりも高い場合には減少され(ステップ1913)、または、ディスク「i」の相対スピードが底部ディスクの相対スピードよりも低い場合には増加され(ステップ1914)される。
この方法は、容器の上部における昇華面が「可能な限り早く」移動することを意味しないが、この手法は(とりわけ)、上方部分における製品を過熱するリスクが低減され、昇華が実質的にすべての位置において同時に終了し、脱離が実質的にすべでの位置において同時に開始するという特長を提供する。
図20では、本発明の一実施形態に係る、脱離ステップの間に1つの局所的加熱器を制御するための方法2000を示すフローチャートが示されている。この方法の特殊のケースが図14に示されていることが見られ得る。
製品を監視するステップ、および加熱器を制御するステップは、上記で説明したステップと同様であり、したがって簡単な説明を加えるに止める。
ステップ2001では、第1熱IR画像が捕捉される。
ステップ2002では温度情報が抽出される。
ステップ2003では、最高製品温度Tprod_max1は、例えば、ピクセル値に対応する温度値の部分集合の平均値、もしくは中間値、もしくは最大値、もしくは中央値を、および容器により吸収された熱エネルギー、および/または、加熱器により供給された熱エネルギーを、計算することにより、数理モデルを使用し、第1熱IR画像のデータを考慮に入れることにより計算される。
ステップ2004では、乾燥物質が熱エネルギーを伝導するためには時間がかかるため、事前定義された時間的期間delta_Tが待機される。
ステップ2005では、第1熱IR画像が捕捉される。
ステップ2006では、温度情報が第2IR画像から抽出される。
ステップ2007では、第2最高製品温度Tprod_max2が第2熱IR画像に基づいて計算される。
ステップ2008では、温度差delta_TempがTprod_max1とTprod_max2との間の差異として計算される。
ステップ2009では、温度差delta_Tempが、製品に対して特徴的である事前定義された設定点よりも小さいかどうかが試される。この試験の結果が真である場合、容器に供給される熱はステップ2010において増加される。この試験の結果が偽である場合、容器に供給される熱はステップ2011において減少される。上記で説明したように、「容器への熱を増加すること」はいくつかの方法で、例えば、加熱器のパワーを増加すること、加熱器と容器との間の距離を減少させること、容器に対する加熱器の方向に変化させること、または曝露時間を増加すること、その他により、具体化され得る。
当業者は、この制御ループが実際に脱離の間の温度の傾斜を追跡することを理解するであろう。したがって、この場合、信号814(図8参照)は、水分含量の関数としての臨界温度Tcrit[mc]または時間の関数としてTcrit[時間]は含まないが、大なり小なり等しい臨界曲線の傾斜ΔTcrit/Δtを含む(増分制御対絶対制御)。
脱離は主に温度制御された処理である。一見すると方法2000は先行技術で使用された方法と同じに見え得るが、しかし、先行技術では、棚温度が事前定義された曲線に追随するよう加熱/冷却手段が調整され、その一方で、本発明では、最高製品温度(数理モデルにより提供される)が事前定義された温度プロファイルに追随するよう局所的加熱手段が制御されるため、方法2000は先行技術と同じではない。この点が根本的に異なる。
代替的な実施形態では、ステップ2003における最高製品温度Tprod_max1は、前述の製品の温度と残留水分のレベルとの間の事前定義された関係に基づいて決定される。このレベルはNIRスペクトロスコピーセンサを使用して測定され得る。この場合では、制御ループは容器中の製品の状態に関する知識により決定される。
本開示の利点を有する当業者は他の変化例を容易に想起し得る。
戻って参照すると図15では、一定でない厚さの氷層の形態にある製品を保持する円筒形部分を有する容器1500が示されている。図17では、この製品の挙動が、複数の少なくとも2つのディスクを含む数理モデルを使用して説明され得ることが示されている。図18のハードウェアおよび図19の方法は、(第1乾燥ステップの間の)製品の「昇華面」が製品の高さ全体にわたり略同時に容器壁部に到達するよう、容器を非均一的に加熱するための第1の解決策を説明する。
図21では非均一的厚さの問題を解決するための第2の解決策が示されており、この解決策では、容器2103の円周部分の表面を故意に非均一的に加熱するための単一の移動可能な加熱器2105が提供されている。図8で検討したように、この場合では制御器2113は加熱器2105のパワーを制御するのみではなく、この加熱器の位置および/または方向も制御するであろう。このシステム(ハードウェアおよびソフトウェア)は、製品層の厚さが実質的に一定である容器に対しても使用され得る。その場合、このシステムは、乾燥処理がより良好に制御されるよう、より大きい自由度を有し、それにより、容器底部の存在に起因する、容器上部の存在に起因する、またはチャンバ内の反射に起因する、またはその他に起因する、誤差を考慮に入れることができる。好適には、この場合、加熱器は容器の一部のみを加熱するために指向性ビームまたは非均一ビームを有する。
図22(c)では、問題の根本的原因を解決することにより、一定でない厚さを有する製品層の問題を解決するための第3の解決策が示されている。実際、液体製品を有する円筒形容器を回転させると、製品は、重力および遠心力により、図22(a)で示される放物面表面を有する形状を取るであろう。液体の量、および/または容器の内径、および/または回転スピードに応じて、容器の底部は中心部に液体を含む場合もあり、または含まない場合もあり、その場合には図22(b)で示される切頭状放物面表面が生じることとなる。いずれの場合にも液体は一定でない厚さを有する。
先行技術では、非均一的な厚さの問題は、おそらくは、フリーズドライの伝統的な方法では大きい安全マージンが取られ、製品温度が直接的に測定されないため、そのように認識されていないように見受けられる。しかし本発明の発明者らは、製品温度が、容器の円周における温度を「測定」し、数理モデルに基づいて、間接的に決定され得るという洞察に至り、発明者らはさらに、一定でない層の厚さが、この方法をさらに最適化するための追加的な問題を作ることを認識し、この問題を解決するために第3の概念に着装した。
図22(c)では、放物面形状または切頭状放物面形状を有する壁部部分を有する、本発明の特定の実施形態に係る容器が示されている。好適には、この放物面形状は、容器がその長手方向軸を中心に4000RPMより低い事前定義された角速度で回転されたときに一定の厚さを有する製品層がこの放物面形状に作られるような寸法を有する。なお角速度は放物面形状の特定の寸法および/または曲率に対応する。
容器は、ガラスまたはセラミック物質製であると好適であるが、他の物質(例えば、アルミニウムまたは鉄鋼、特にステンレス鋼)から作られた容器も使用され得る。
実際的な理由のために、容器は好適には、平板状底部分、または、容器が立位の姿勢を取ることが可能となるような他の底部分(例えば、底部の中心に配置された上向きドームの形状、または任意の他の好適な形状)を有するが、底部分の正確な形状は本発明に対して重要ではない。
好適には、放物面形状は容器の高さ全体にわたり延長するが、このことは必ずしも絶対的に要求されるものではなく、容器の側面壁部2200の下方部分2201が放物面形状を有するだけで十分である。上方部分2202は例えば円筒形状または円錐形状または任意の他の形状を有し得る。
好適には容器はその上部に開口部を有する。
好適には、容器は1000mlより小さい(例えば200mlより小さい、好適には100mlより小さい、または20mlより地裁)キャビティを有する。特定の実施形態では、キャビティは医療製品に対する約1.0ml〜約30.0mlの範囲の体積を有する。
ガラス容器の内径の誤差が通常は0.10mmであるため、本発明のいくつかの実施形態では、容器の放物面部分の第1位置における第1内径「D1」と容器の放物面部分の第2位置における第2内径「D2」との間の差異は、少なくとも0.20mm、または少なくとも0.30mm、または少なくとも0.50mm、または少なくとも1.0mmである。
本発明は、係る容器内に格納された製品(特に医薬組成物、または生物学的組成物、または化粧品組成物、または医療栄養製品)をフリーズドライするために係る容器を使用することにも関する。
本発明は放物面側壁部分を有する容器にも関する。この容器は、例えば図22(c)で示されるように、前述の側壁部分の内側表面に配置された冷凍済みの医薬組成物、または生物学的組成物、または化粧品組成物、または栄養組成物を含む。
本発明は、放物線状側壁部分を有する容器にも関する。この容器は、例えば図22(c)で示されるように、前述の側壁部分の内側表面に配置されたフリーズドライ済みの医薬組成物、または生物学的組成物、または化粧品組成物、または栄養組成物を含む。
本発明は放物面側壁部分を有する容器にも関する。この容器は、本発明に係る方法を用いて生産されたフリーズドライ済みの医薬組成物、または生物学的組成物、または化粧品組成物、または栄養組成物を含む。
本発明は、放物面形状または切頭状放物面形状を有する壁部部分2201を有する容器に格納された製品をスピン冷凍する方法にも関する。
この容器内部に格納された製品をフリーズドライするために、製品厚さが実質的に一定であるため、図10の簡単な数理的3円筒モデルが使用され得る。
製品の形状が正確に円筒形ではないという事実にも関わらず、層が実質的に一定の厚さを有し、容器が、容器の側面壁部(または、むしろ製品が配置された部分)を実質的に均一に放射するよう適応された単一の加熱器により加熱され得るため、3つの同心円筒の簡単な数理モデルが使用され得る。
代替的に、図17で示される、わずかにより高度な複数ディスク・3環状リング・モデルも使用され得る。このモデルは、これらの「ディスク」の直径が一定ではないため、さらに良好な結果をもたらし得る。この方法は、上記で説明したように、単一の据置型加熱器、または複数の加熱器、または複数のフィラメントを有する加熱器、または可動型加熱器、を使用し得る。
図22(c)で示される放物面形状を有する容器と併せて本発明に係る方法を使用することの主要な特長は以下の2点である。
(i)すべでの製品(例えばすべてのタンパク質)が高回転速度を耐える能力を有するとは限らないという事実、
(ii)乾燥のスピード(特に昇華のスピード)が品質を損なうことなく(図19のアルゴリズムと比較して)向上し得ること。
これまでのところでは、単一の容器のみが、その局所的加熱器と併せて、考えられた。図23では、複数の容器中に格納された特定の製品が、好適には、複数のチャンバ、ドアロック、その他を有する「連続的システム」において同時にフリーズドライされる、本発明の一実施形態に係るシステム2300が示されている。複数のチャンバおよびドアロックを有するシステムについては、例えばW096/29556A1で説明されている。W096/29556A1は参照することによりその全体が本願に援用される。係る連続的システムおよび関連する連続的方法の明確な事例がさらに以下で提供される。
図23は、反復的(例えば周期的)に熱IR画像を捕捉するよう適応された、3つの熱IRカメラC1、C2、C3を含む例示的なシステム2300の概略的表現である。第1カメラC1および第2カメラC2は可動型(例えば回転可能)であり、その一方で第3カメラC3は固定的に取り付けられている。各容器がフリーズドライされる製品(好適には同一量の同一の製品)を含む7つの容器が、それぞれの長手方向を中心に回転される。この事例では、第1カメラC1は第1容器、第2容器、および第3容器の画像を捕捉するよう適応され、第2カメラC2は第4容器、第5容器、および第6容器の画像を捕捉するよう適応され、第3カメラC3は第7容器の画像を捕捉するよう適応される。各容器は、それぞれの局所的加熱器H1〜H7を有する。コンピュータ2313は、各容器に対して本発明に係る方法を実行する。
昇華の間、各局所的加熱器H1〜H7は独立的に制御され得る。脱離の間、各局所的加熱器も独立的に制御され得るが、共通の処理がチャンバの温度および圧力を追加的に制御するであろう。カメラおよび加熱器は好適には、加熱器がカメラの視野域内に配置されないよう、取り付けられる。カメラの視野域を制限するための省略可能な手段がカメラに追加されてもよく、または、例えば垂直スリットを有する遮蔽体が、容器の側面壁部の一部がカメラにより閲覧されると同時に加熱器とカメラとの間の直接的な見通し線がブロックされることが可能となるよう、容器とカメラとの間に取り付けられてもよい。当業者は好適な構成を良いに見出すことが可能である。
単一の局所的加熱器が各容器に対して示されているが、もちろん各容器は2つ以上の局所的加熱器を有してもよく、または局所的加熱器が図18で説明されたように複数の区域を有してもよい。図23で示されるシステムでは正確に1つのカメラにより各容器を監視することが(例えフルタイムでないにせよ)可能である一方で、各容器が冗長性の理由のために2つの異なるカメラにより(少なくとも全時間の一部にわたり)監視されることも、または、各容器がそれ自身のカメラを有することも、可能であろう。代替的に十分な空間が利用可能である場合、単一のカメラが同時に全容器を監視するために使用され得る。当業者は、システムの特定の要件に応じて(例えばコスト、複雑性、信頼性、その他に関して)、好適な交換条件を作ることが可能である。
他の態様では、本発明は、本発明の様々な実施形態に係るフリーズドライ装置、および、本発明の様々な実施形態に係る容器と、を含む部品のキットにも関する。
本発明が上記で図示および説明した例示的な実施形態に限定されるものではないこと、および添付の請求項の範囲では、本開示を読んだ後、当業者には自明となるであろう多数の変化例が可能であること、は明らかであろう。
さらに以下で説明される本発明の様々な実施形態を説明するための事例では、単位用量を連続的にフリーズドライするための直列型処理が提示される。本発明の様々な実施形態はこれらの事例に必ずしも限定されない。しかし、この事例は、当業者が本発明を理解し、本発明を実施することを支援するために、本発明の様々な実施形態の特徴を支持および/または説明する働きを有し得る。
生物薬剤学的治療は多くの場合、水溶液中での安定性が制限されているため、フリーズドライ(例えば凍結乾燥)を通して乾燥済み製品として公式化される。従来の医薬組成物フリーズドライは、ロット生産モードで操作され得る。すべてのバイアルは連続的に充填され、乾燥チャンバにおける棚に積載される。これらのバイアルが1回のロットを形成し、これらのバイアルが、最終的な乾燥製品が得られるまで、一連の連続的な処理ステップ(例えば冷凍、初期乾燥、および2次的乾燥)を通して処理される。このロット方式手法は本質的に不利である制御不能な最終製品変動性を有し得る。この事例では、この短所は、それぞれの単一処理ステップが連続的な生産フローに統合化される連続的フリーズドライ概念を単位用量に適用することにより克服され得る。
典型的な連続的フリーズドライ処理の開始点において、殺菌済みガラス製バイアルは無菌状態で水性薬剤調合物が充填された後、冷凍ユニットに転送される。ここで、これらのバイアルが例えばおよそ毎分4000回転(rpm)で長手方向軸に沿って高速回転(例えば、円筒形壁部において把持されて高速回転)されると、内側バイアル壁部の全体にわたり拡がった製品の薄い層が形成される。次に、低温、不活性の殺菌済みガスの流れが溶液を冷却し、それにより次第に氷核形成が誘導され得る(例えばスピン冷凍)。さらに冷却が進むと、形成された氷結晶が成長し始め、溶質濃度が次第に高くなる。飽和溶液が到達される共融温度Teにおいて、いくつかの化合物(例えば、マンニトール、塩化ナトリウム、またはグリシン)は結晶化する傾向を有する。結晶化しない物質は冷凍凝縮が継続して、過飽和され、その結果、粘度が増加する。ガラス遷移温度Tg’において、粘度は、それを越えるとさらなる氷結晶化が阻害されるレベルまで上昇し、最大冷凍凝縮が到達されるTg’における結晶成長の阻害のために、未冷凍状態の水のわずかな残留が非晶質固体中に存在する。
スピン冷凍バイアルは、標準状態(例えば事前決定された環境状態)の下における溶液のさらなる結晶化および凝固のために、温度制御された焼鈍チャンバ内の連続的に長いベルトに転送される。望ましい形態学的構造が得られたとき、バイアルは初期乾燥ユニットにさらに処理される。初期乾燥ユニットは一定圧力(例えば10〜30Paの範囲内)下に維持される。両方のこれらのユニットは、各チャンバにおける圧力および温度の特定状態を混乱させることなくバイアル転送を支援するために、適切なロードロックシステムにより分離され得る。スピン冷凍バイアルの連続的初期乾燥は、効率的かつ均一な氷昇華挙動が確実に行われるよう、バイアル壁部全体に向かって適切かつ均一なエネルギー伝達を要求し得る。このエネルギーを提供する1つの方法は、スピン冷凍バイアルを、個々の、ぴったり合った、温度制御されたポケットに配置することにより、伝導を介することである。しかし非接触型IR放射は、スピン冷凍バイアルの乾燥に要求されるエネルギーを供給するにあたり非常に適した方法であることが示されてきた。各バイアルは、個々の温度制御されたIR加熱器の前で、その長手方向軸に沿って低速回転(例えば、およそ20rpm)される。初期乾燥の間のバイアルの回転は、均一な熱伝達を保証し得る。スピン冷凍バイアルのベルトが離散的ステップ状で移動すると、各バイアルは単一のIR加熱器の前の既知の位置に配置され得る。個々のIR加熱器は、各スピン冷凍バイアルに対して乾燥軌道が個別化および最適化されることを可能にする。非接触型IR放射は、好適なエネルギー伝達方法としての伝導と比較して、いくつかの利点を提供する。異なる寸法を有する全範囲のバイアル種類は、加熱可能なポケットのカスタマイズを必要とすることなく、処理され得る。加えて、乾燥挙動の監視および制御は非包囲バイアルにおいて支援される。最後に、加熱可能ポケットの熱慣性は、IR加熱器と比較すると、より高く、そのため、入力パラメータを変化させることに対してより早い反応が可能である。残留する未冷凍状態の水は、所望の水分含量が達成されるまで、二次乾燥段階の間、脱離により除去される。2次乾燥が初期乾燥とは異なる圧力レベルで行われなければならない場合、また適切なロードロックにより分離された2次連続乾燥ユニットが提供され得る。連続フリーズドライ処理の終止点において、バイアルは、殺菌済み窒素状態下で処理済みバイアルにストッパーおよびキャップを装着のために、他のロードロックシステムを介して乾燥モジュールから取り出され最終ユニットに転送され得る。
製品の外観はフリーズドライされた薬剤製品の重要品質特性(CQA:Critical Quality Attribute)である。固体構造(cake structure)の損失(すなわち、崩壊)は、審美的目的のために、および、乾燥済み製品の迅速な復元を保証するために、回避されるべきである。したがって、昇華境界面における製品温度Tiは初期乾燥処理の全体の間、臨界製品温度Ti,critより低く保たれるべきである。Ti,critは、それぞれ結晶質製品および非晶質製品に対してTeまたは崩壊温度Tcとして定義される。全般に、Tg’付近のガラスの高粘度が分子運動を制限するため、Tcはガラス遷移温度Tg’の数度上にある。以前の研究では、優れた製品外観を保ちつつ初期乾燥の効率を最大化するために、IR加熱器の最適な動的温度プロファイルの計算を可能にする機械論的モデルが開発された。特定の調合に対する最適なIR加熱器プロファイルの開発はTiの信頼性の高い測定を要求する。従来のロット型フリーズドライでは、Tiは一般に抵抗温度検出器(RTD)を使用して、または好適には熱電対を使用して、測定される。RTDは、初期乾燥処理の大部分の間、乾燥済み物質と部分的に接触する検出要素の完全領域に対する平均表示値を提供し、そのため信頼性の低いデータがもたらされてしまう。異なる物質から作られた2つの薄いワイヤが接続される地点において温度が測定されるため、熱電対は好適であり、そのため熱電対はTiの測定においてRTDと比較して信頼性がより高い。RTDおよび熱電対の侵襲的特性のために、冷凍および凝固(過冷却の程度)ならびに乾燥(熱伝達における差異)の間の処理条件はこれらのセンサを有さない状況とは異なり得る。したがって、熱電対を含むバイアルは、ロット処理の残りに対して典型的ではあり得ない。または、冷凍製品の温度勾配のために熱電対の応答は氷におけるその位置に大いに依存する。その位置における逸脱はTiの「正確」な値の測定に対する高い不確実性を増加させる。全般に、熱電対は手動によりバイアルに挿入される。そのため生産エリアにおいて、要求される殺菌状態を損なうリスクが大きくなってしまう。最後に、熱電対は連続的初期乾燥の間にTiを測定するにあたり好適ではない。ガラス製バイアルがスピン回転するため、連続的冷凍ステップの間に冷凍製品層に熱電対を挿入することは不可能である。ガラス壁部の温度を測定することを通して製品温度を評価しようとすることは、バイアルの回転に起因する接触不良のために、損なわれてしまう。
IRサーモグラフィにより、物体により放出されたIR放射を検出し、検出されたIR放射を熱画像に変換し、それにより空間的温度分布を表示することに基づいて、非接触型温度測定が可能である。ロット処理型フリーズドライの間に連続的温度監視を行うために、IRカメラがフリーズドライヤの上部上に実装され得る。係る実装は、上部棚上のバイアルを可視化するために放射遮蔽体を一部を取り外すことによる設備のカスタマイズを要求した。この位置に対して、固体(cake)の上部のみが可視化される。初期乾燥の間、昇華面が次第に下方に移動するにつれて、大部分の時間にわたり乾燥済み製品の温度が測定され、この値はTiに対する代表値にはなり得ない。連続フリーズドライでは、バイアルは棚上で梱包されず、個々のIR加熱器の前で自由に回転し得る。このようにしてバイアルの長いラインが形成される。製品はスピン冷凍バイアルの壁部全体にわたり拡げられ、それによりIRカメラによる完全な可視化が可能となる。昇華面は、連続的初期乾燥ステップの間、バイアルの中心からガラス壁部に向って移動する。したがって、ガラス壁部および氷層にわたる温度勾配に対する補正の後、Tiは初期乾燥ステップのまさに開始点から終止点まで、連続的に監視され得る。この事例は、連続的フリーズドライ概念と組み合わされたIRサーモグラフィの実現可能性を示す。第1のステップでは、IRカメラの実装はモデルに基づくアプローチを介して説明される。第2に、バイアルの薄いガラス壁部および氷層にわたる温度勾配が、昇華境界面における温度Tiを正確に測定するために計算される。最終的に、IRサーモグラフィの使用は、2つの異なる用途に対して評価され、これら2つの用途とは、初期乾燥の終点の決定、および乾燥済み製品質量移動抵抗Rpの計算である。
タンパク質治療薬のフリーズドライは、非経口薬剤製品の無菌性生産に関する医薬品適正製造基準(GMP)を満足する必要がある。これは、全生産接触エリアが、定置洗浄(CIP:Cleaning−in−Place)手続き、および定置滅菌(SIP:Sterilization−in−Place)手続きを使用して、消毒および滅菌される必要があることを含意する。IRカメラは全般に係る処理に関して適合性を有さないため、このカメラは図24で示されるように処理チャンバの外部に配置されなければならない。したがって、スピン冷凍バイアルの温度は、これらのバイアルにより放出される電磁放射に対して高い透過性を示す物質からなる窓を通して監視された。物体の放射スペクトルはその温度に大いに依存する。この関係はプランクの法則を介して説明される。この法則は、スペクトル放射Βλ(W/(sr m
3))を、波長(m)および絶対温度T(K)の関数において次の式のように計算する。
式中hはプランク定数(6.63×10
34Js)、cは高速(3.00×10
8m/s)、およびk
Bはボルツマン定数(1.38×10
23J/K)である。温度が初期乾燥段階および二次乾燥段階の両方の間、監視されるべきであるため、B
λは、およそ−50℃〜50℃の範囲で変化し得るバイアル温度に対して計算された。この区間における各温度に対して、B
λは、図25で示されるように、1.0×10
−6m〜25.0×10
−6mの領域における関数でプロットされる。これらのスペクトルは、最小損失の情報のために、異なる窓物質の透過特性と比較された。他の特性(例えば、乾燥チャンバにおる真空に対する窓物質の機械的抵抗)を考慮に入れて、対象となるスペクトル領域における良好な透過特性のために、ゲルマニウムが選択された。3mmの厚さおよび反射防止コーティングを有するゲルマニウムディスクが、プラスチック境界面およびゴムリングを介して乾燥チャンバのポリカルボナート扉に実装され、最終的に、30mmの直径を有するIR透明窓が作られた。
本発明の様々な実施形態に係る代表的なフリーズドライ構成では、10mLのI型ガラス製バイアル(ドイツ国ミュルハイムのSchott社)は、3.9mLの水性の3mg/mlスクロース(米国ミズーリ州セントルイスのSigma−Aldrich社)溶液が充填され、以前に上記で説明したようにスピン凍結が施された。ガラス製バイアルはバイアル保持器に配置され、およそ2900rpmでその長手方向軸に沿って垂直に回転された。回転するバイアルが40±5秒にわたり液体窒素に浸漬される前に、溶液はバイアル壁部全体にわたり均一に拡げられ、その後、製品は完全な凝固に達した。スピン冷凍後の15±5秒内に、調合物がTg’を越えることを回避するために、バイアルは液体窒素から、Amsco FIN N−AQUA GT4フリーズドライヤ(ドイツ国ケルンのGEA社)の乾燥チャンバに転送された。乾燥チャンバ内の棚は、乾燥の間のスピン冷凍バイアルに対するその放射の寄与を最小化するために、−10℃の一定温度で冷却された。バイアルは、棚と接触することなく、バイアルの中心からIR加熱器の加熱されたラメントまで測定された4cmの距離に、1つのIR加熱器(ベルギー国ゼリックのWeiss Technik社)の前方に懸下された。均一な放射エネルギー伝達を達成するために、スピン冷凍バイアルは5rpmで連続回転された。バイアルがバイアル中に配置されたとき、圧力は直ちに13.3Paに低下された。5分以内に、圧力は水の三重点より低くなった。17分後、望ましい圧力が到達され、IR加熱器が活性化された。初期乾燥は、IR加熱器に対してVoltcraft PPS−11360電源(ドイツ国ヒルシャウのConrad Electronic社)により供給された7Wの一定パワー入力で行われた。初期圧力低下の間(すなわち、真空ポンプおよびIR加熱器の作動間の17分間継続する期間)に昇華された氷の量は重力測定法により3回決定された。
スピン冷凍バイアルの温度は、45°レンズおよび検出器としての非冷却マイクロボロメータが装備されたFLIR A655scIRカメラ(ベルギー国ラヴェルスのThermal Focus社)を使用して連続的に開始された。IRカメラは、ポリカルボナート扉の前方に配置され、図24で示されているように、乾燥チャンバ内のゲルマニウム窓を通して測定した。スピン冷凍バイアルはカメラの350+/−10mmの距離において低速回転された。被写界深度の合焦した最も近い限界および合焦した最も遠い限界は、それぞれおよそ380mmおよび320mmであった。したがってこれらの限界の範囲内に配置された各物体は合焦範囲内にあった。IR加熱器は90°の角度で配置された。熱画像は、640×480IRピクセルの画像サイズで記録された。特定の測定距離において、バイアルの幅(24mm)はおよそ80ピクセルを占め、空間解像度は0.30mmとなった。スピン冷凍バイアルの上部および底部の小さい部分はIR窓境界面の背後に隠された。IRカメラの熱解像度は30mKの雑音等価温度差(NETD:Noise Equivalent Temperature Difference)であった。毎分、熱画像はFLIR ResearchIR MAXソフトウェア(ベルギー国ラヴェルスのThermal Focus社)を介して記録された。データ処理は同じソフトウェアを使用し行われた。ゲルマニウム窓は、対象となる波長領域において85%の透過率を有し、その一方で、ガラス製バイアルの放射率は0.92であった。
IRカメラはバイアル壁部の外側の温度を測定する。初期乾燥の間、昇華境界面における温度Tiの正確な測定は、互いに対して緊密に近接するガラス壁部および氷層にわたる温度勾配に対する適切な補償を要求する。処理の吸熱性のために、初期乾燥の間に提供される放射エネルギーは氷の昇華のために完全に消化され、Tiは略一定に保たれる。したがって、このシステムは定常状態にあると考えられ得る。したがって温度勾配は、熱伝導に関するフーリエの法則により、定量化され得る。なおフーリエの法則は、単位面積あたりで熱が流れる割合が温度勾配に疲労することを記述するものである。特定の円筒形幾何学的形状(図26参照)に対してガラス製バイアルの外径rv,oから内径rv,iまで積分した後、バイアルのガラス壁部にわたる1次元熱伝導は次の式により与えられる。
式中、P
totはスピン冷凍バイアルに提供された全パワー(W)、k
glassはガラスの熱伝導率(1.05W/(m K))、hはスピン冷凍製品の高さ(m)、T
v,oはバイアル壁部の外側側面において測定された温度(K)、T
v,lはバイアル壁部の内側側面における温度(K)、r
v,iはガラス製バイアルの内径(m)、およびr
v,oはガラス製バイアルの外径(m)である。薄い氷層にわたる温度勾配も、上記の方程式を介して計算される。なおこの計算では、T
v,oおよびT
v,iはT
v,iおよびTi(K)に、r
v,oおよびr
v,iは、r
v,iおよびバイアルの中心からスピン冷凍層r
p,iまでの半径(m)と乾燥済み製品層Iの厚さ(m)との合計に、それぞれ置き換えられる(図26参照)。また氷の熱伝導率k
ice(2.18W/(m K))もk
glassに代わって考慮に入れられる。氷層とバイアル壁部との間の緊密な接触のため、ガラスと氷との間の接触熱抵抗も虫不可能であると考えられる。
初期乾燥の間にIR加熱器によりスピン冷凍バイアルに提供されるパワーは、次のシュテファン・ボルツマンの法則を介して計算され得る。
式中、A
radはIR加熱器の表面積であり(m
2)、Fは形態係数(−)、σはシュテファン・ボルツマン定数(5.67×10
−8W/(m
2K
4))、εはIR加熱器の放射係数(−)、T
radはIR加熱器の温度(K)、およびαはガラス製バイアルの吸収率(−)である。一般に、αは所与の表面(この場合、ガラス製バイアル)に対する値として推定される。FはIR加熱器の表面から出てターゲット表面(すなわちスピン冷凍バイアル)に直接的に入る全放射のパーセンテージとして定義される。ここで、IR加熱器は拡散放出器とみなされた。これは、表面が前方向に均一に放射を放出することを意味する。したがってFは、スピン冷凍バイアル(円筒として表される)に対する放射するIR加熱器表面(平坦プレートとして表される)の相対的な幾何学的向きのみに依存する。FはMortierらにより説明されたモンテカルロ法に基づいて計算される。このモンテカルロ法は、定義された個数の光線がランダムに選択される角度で放出表面のランダムな位置から伝搬される、シミュレーション手法である。生成された各光線に対して、各光線がターゲット表面に直接的に当たったかどうかが評価される。Fは、ターゲット表面を打撃した光線の個数と放出された光線の総数との比により推定される。最終的に、包囲する表面(例えばチャンバ壁部および扉)によりスピン冷凍バイアルに提供される放射エネルギーP
surは実験的に決定される。したがってP
totは、この追加的エネルギー寄与に対して補償された。
P
tot=P
rad+P
sur
初期乾燥の間、昇華面は、バイアルの中心からガラス壁部に向って徐々に移動して、(接続された)多孔性製品基質を出る(図26参照)。この昇華境界面において生成される水蒸気はこの多孔性構造体から脱出した後、次第に凝縮器に到達する。細孔を通過する水蒸気の流束は乾燥済み製品質量移動抵抗Rpにより制限される。これを越えると、質量ow限界は、細孔の飽和のために、昇華境界面における蒸気圧P
w,iにおける局所的増加に関連付けられる。TiがP
w,iと平衡状態にあるためTiも増加するであろう。しかし、Tiは、製品の崩壊を回避するために初期乾燥ステップ全体の間はT
i.critより下に維持されるべきである。したがって、Rpの決定は、特定の調合物に対する最適なフリーズドライサイクル(例えば、最適な動的IR加熱器温度プロファイル)の開発のために重要であり得、それにより、満足のいく固体様相(cake aspect)をもたらしながら最大初期乾燥効率が可能となる。
乾燥済み製品質量移動抵抗R
p(m/s)は、次の方程式による、蒸気圧力勾配と質量流速との比に関連する。
式中、A
pは昇華に対して利用可能な製品表面積(m
2)、P
w,iは昇華境界面における氷の蒸気圧力(Pa)、P
w,cは乾燥ユニットにおける水の分圧(Pa)、および、
は初期乾燥の間の昇華速度である(kg/s)。ロット式フリーズドライと同様に初期乾燥ユニットにおけるガス組成がほとんど全体的に水蒸気からなるため、P
w,cは乾燥ユニットにおける総圧力P
cに等しいと考えられる。このこのシステムは定常状態にあると考えられ、したがってm
subは直接的にP
totにリンクされる。この関係は次の式により与えられる。
式中、Mは水の分子量(0.018kg/mol)、ΔH
Sは氷昇華の潜熱(51139J/mol)である。P
totは、P
surに対する補償を含むIRカメラを使用してT
v,oの測定に基づいてシュテファン・ボルツマンの法則を介して決定される。代替的に、
も、一連の実験を容器希有する重量測定手順を介して決定され得る。P
w,iはTiに対して平衡状態にあり、次の経験的方程式により計算される。
式中T
iは、ガラス壁部および氷層にわたる温度勾配を考慮に入れてT
v,oの測定値に基づいて決定される。スピン冷凍層のA
pは次の式により計算される。
A
p=2π(r
p,i+l)h
式中、r
p,iは次の式により与えられる。
式中、Vは充填体積である(m
3)。固体の円筒形状のために、Apは、昇華境界面がバイアルの内部かからバイアル壁部に向って徐々に移動するにつれて増加する(図26参照)。
R
pは調合物特有の値であり、冷凍手順と、この冷凍ステップの間の過冷却の度合いと、により主に決定される、乾燥済み製品層における細孔のサイズにより強く影響される。加えて、昇華面から始まって乾燥済み製品層の細孔を通って流れる水蒸気の経路が初期乾燥の進行とともに延長するにつれて、R
pは全般にlにおける対応する増加とともに増加する。この関係は次の経験的方程式により与えられる。
式中、R
p,o(m/s)、A
Rp(1/S)、およびB
Rp(1/m)は、乾燥済み製品層の厚さlの関数においてR
pを説明する定数である。R
pは、上記の方程式を解して特定の時間間隔Δt(例えば60秒)に対する乾燥時間tの乾燥において計算される。
乾燥済み層厚さにおける増加Δl(m)は次の式により同一のΔTに対して計算される。
ρ
iceは氷の密度(kg/m
3)、φは氷の体積率(−)である。この方程式は、非線形回帰を介してlの関数において実験的R
pデータに当てはめられると、R
p定数が求められる。
拡散反射NIRスペクトルが継続的および連続的に、クオーツハロゲンランプ、マイケルソン干渉計、およびInGaAs検出器が装備されたAntarisTM IIフーリエ変換NIRスペクトロメータ(ベルギー国エーレムボーデゲムのThermo Fisher Scientific社)を用いて収集された。光ファイバプローブが、バイアルの回転に阻害または混乱を生じさせることなく、バイアルの中央付近の0.5+/−0.1mmの距離において実装された乾燥がバイアルの中心から内側バイアル壁部に進行するにつれて、連続的NIRスペクトロスコピーは完全な氷の除去(すなわち、初期乾燥の終点)を検出することを可能にした。20秒毎に、NIRスペクトルが16cm−1の解像度で4500〜10000cm−1領域において収集され、4回のスキャンにわたり平均された。NIRプローブを用いて得られた照射スポットサイズはおよそ28mm2であった。測定の間のバイアルの回転のために、各スペクトルは特定の高さ上の固体の異なる位置において収集された。この監視対象部分が固体全体を表すものと仮定された。
検証行程の間に収集されたNIRスペクトルは多変量データ解析ソフトウェアSIMCA(スウェーデン国ウメオのUmetrics社、バージョン14.0.0)の支援により解析された。加熱器の作動前に収集されたNIRスペクトルは各データセットから除去された。Savitzky−Golayフィルタはスペクトルの平滑化のために適用され、それぞれが15のデータポイントを含むサブモデルを移動させために2次多項式関数が当てはめられた。加えて、標準正規変量(SNV)前処理が、NIRプローブと回転するガラス製バイアルとの間の距離および製品密度における可能な差異により生じ得るスペクトルにおける付加的基線オフセット変動(additive baseline offset variation)および乗法的スケール効果(multiplicative scaling effect)を排除するために適用された。次に主成分解析(PCA)が、前処理および平均センタリングが施されたNIRスペクトルの解析のために使用された。
PCAは、データセットにおける変動を抽出および表示する、教師なし多変量投影法である。本源的変数(例えばNIRスペクトルの個々の波数)は、主成分(PC:principal component)と呼ばれる新しいセットの潜在変数により置き換えられる。これらのPCはデータ行列の直交、双1次分解により順次得られる。各成分は、データにおける残存する変動性の大部分を説明する。PCはスコアベクトルおよび負荷ベクトルからなる。スコアベクトルは、各スペクトルに対するスコア値を含み、他のスペクトルに対するその量的関係を説明する。負荷ベクトルは、本源的観察において存在するどのスペクトル特徴が、対応する成分により捕捉されるかについての定性的情報を提供する。
3mg/mLスクロース調合物のガラス遷移温度(Tg’)は示差走査熱量計Q2000(ベルギー国ゼリックのTA instruments社)を使用して変調型示差走査熱量測定を介して決定された。気密閉止されたアルミニウムパン(ベルギー国ゼリックのTA instruments社)がおよそ12mgの調合物で充填された。DSCセルは常時、50ml/分の速度で乾燥窒素でパージされた。試料は当初−90℃まで冷却された。この温度は5分間維持された。引き続き温度は、2℃/分の加熱速度で0℃まで線形に増加された。変調振幅および期間はそれぞれ、0.212℃および40秒に設定された。解析は二重で実施された。サーモグラムは、TA Instruments社のUniversal Analysis 2000バージョン4.7A(ベルギー国ゼリックのTA instruments社)を使用して解析された。
(回転式)スピン冷凍バイアルの初期乾燥の間の異なる時間点において取得された熱画像が図27〜図29で示されている。IR窓およびガラス製バイアルは、周囲の境界面から明らかに区別され得、15℃より高い温度を有した。境界面から取得されたピクセルは有用な情報を全く含まないため、熱画像から部分的に除去された。このようにして、本源的画像のサイズは、200×200IRピクセルに減少され、ゲルマニウム窓の中心に配置されたバイアルが強調表示された。
図27における熱画像では、IR加熱器の作動直前における一定真空(13.3Pa)の下にあるスピン冷凍バイアルが示されている。全般に、測定された温度Tは、方程式を介して計算された時点におけるPcに対する平衡温度よりもわずかに高いおよそ−37℃であったが、氷昇華は、周囲から提供される熱入力によりすでに進行中であった。加えてTv,oはガラス壁部および氷層にわたる温度勾配に対して補償される必要がある。バイアルの中央および縁部において、ガラス表面の残りの部分から逸脱する温度値を有する薄いバンドが存在する。これらのバンドはスピン冷凍バイアルが回転するにも関わらず同一位置に留まった。このことは、これらのバンドが監視されるバイアル自体の特性に起因するものではなく、外部要因に起因するものであることを示している。バイアルの中央におけるバンドは、実験構成に対して本質的である販社に起因して生じたものであり、その一方で、縁部におけるピクセルもTv,oに対するより高い値の結果として生じたものである。これらの観察内容は乾燥処理全体の間に記録された各熱画像に存在した。これらの点における温度データは製品情報に関しては該当せず、これらの領域はさらなる解析から除外された。
図28におけるサーモグラムはIR加熱器の作動後の20分に捕捉された。増加されたエネルギー入力は、Pw,iの局所的増加に、さらにその結果として生じたTiの局所的増加に関連付けられた、より高い昇華速度を生じさせたため、Tv,oは図27における熱画像と比較して上昇した。放出された放射エネルギーはIR加熱器に対向するバイアル側面上で反射し、そのため、その位置では信頼性のないTv,oデータがもたらされた。以前の発見と組み合わせてTv,oの正確かつ信頼性が高い測定のための対象となる領域は、バイアルの縁部および中央において観察されたように、いかなる反射が影響力を有することも回避するための安全マージンを用いて、IR加熱器から離間する方向に対面するバイアル側面上に配置された。
図29における第3熱画像は100分の初期乾燥後に取得された。提供される放射エネルギーがもはや氷の昇華のために消費されないため、T
v,oにおける急激な増加は完全な氷の除去を示す。代わって、エネルギーは、T
v,oに対するより高い値に関連付けられた、ガラス製バイアルおよびその内容部の加熱のために使用される。図29におけるサーモグラムは、底部部分に比較してスピン冷凍層の上部において初期乾燥がより早期に終了したことを示す。この観察内容は、スピン冷凍ステップから生じる、固体の上部と底部との間の製品層の厚さにおける差異により説明される。バイアルの高速回転は、放物線形状の液体表面を有する薄い層を生じさせる。バイアルの上部と底部との間の層厚さにおける本質的な偏差は次の式により計算される。
式中ΔL
totはスピン冷凍層の平均厚さに対する偏差(m)、gは重力加速度(9.81m/s
2)、およびωは角速度(ラジアン秒)である。現在の実験構成の最大回転速度(2900rpm)に対して、上部の固体とバイアルの底部との間の層厚さにおける相対偏差は8.96%である。回転速度を4000rpmに増加させることにより、この相対偏差は4.72%まで低減させることが可能である。この回転速度は、およそ6000rpmの最大値までさらに増加する能力を有し、生物薬剤に対して有害となることがない、連続的フリーズドライシステムに対する標準値として意図される。
ガラス製バイアルの平均温度Tv,oが図30において、乾燥時間tの関数においてプロットされる。Tv,oの平均値は、周囲またはIR加熱器からの反射寄与を全く有さない領域に対して計算された。この領域は、x軸上のピクセル75〜90およびy軸上のピクセル110〜130の範囲内のバイアルのおよそ中央部に位置した(図27〜図29参照)。この位置において、層厚さは、スピン冷凍製品層の平均理論値に近づく。Tv,oにおけるわずかな変動はバイアルの回転から生じる。
当初、Tv,oは、およそ25分後に高平部値が到達されるまで、数度増加する。この漸進的温度上昇は、さらに以下で説明されるように、Rpにおける増加に起因する。100分後にのみTv,oは再び上昇を始め、124分後に急激な上昇が生じる。図29で観察されるように、Tv,oにおける急激な上昇は、提供されるエネルギーがもはや昇華のためには消費されず、ガラス製バイアルを加熱するために使用されるため、氷の量が減少しつつあることを示す。確認として、初期乾燥の終点は、NIRスペクトロスコピー法を介して決定された。NIRスペクトロスコピー法については文典で幅広く説明されている。この方法は、乾燥段階の間に連続的に収集されたNIRスペクトルを解析するためのPCAに基づく。このようにして、初期乾燥の終点は、128分後に到達したと推定された。この値は、IRカメラにより取得されたデータにしたがうものであり、初期乾燥の終点を決定するためのIRサーモグラフィの適用可能性を確認する。
IRサーモグラフィが、追加的な空間情報を有する2次元画像を提供する一方で、NIRスペクトロスコピーを介して初期乾燥の進行は回転するバイアルの1つの特定高さにおいて監視される。したがってIRサーモグラフィは、スピン冷凍層全体に対する乾燥挙動の監視を可能にする。連続ベルトの複数のバイアルさえも1度に監視され得、単一プローブを活用してNIRスペクトロスコピーに巨大な利点が提供される。NIR化学画像が完全バイアルを撮像するために適用され得る一方で、多点NIRスペクトロスコピーは複数のバイアルの監視に対して代替物を提供し得る。NIRスペクトロスコピーは残留水分含量、タンパク質確認、または異なる成分(例えばマンニトール)の固体状態としていくつかのCQAに関する詳細な連続的情報を提供し得、その一方で、IRサーモグラフィは、Tiを監視することによる製品外観に関する主要なツールであるため、NIRスペクトロスコピーおよびIRサーモグラフィは、高度に相補的である。最終的に、IRサーモグラフィおよびNIRスペクトロスコピーの両方の組み合わせは、最適なリアルタイム処理監視および制御のために連続的フリーズドライ機器において具体化されるであろう。
昇華面における温度Tiは、フーリエの法則を介して、外側バイアル壁部における測定温度Tv,oに基づいて計算される。Tv,oおよびTiは図31において時間tの関数においてプロットされている。初期乾燥の間、最低温度は昇華が生じる境界面に配置されている。したがってTiはTv,oよりも常に低く、エネルギーが外側ガラス壁部から昇華面に向かって転送される。初期乾燥の進行とともに、氷層の厚さは次第に減少する。エネルギー束が一定である限り、Tv,oとTiとの間の絶対温度差も減少する。初期乾燥ステップの開始点において温度勾配は0.88℃であった。終止点に近づくとガラス壁部にわたる温度差は0.47℃まで低下した。
急激な温度上昇が初期乾燥の終点を示す前に、Tv,oは、100分後急激に上昇を始め、その一方で、NIRデータは氷の痕跡が依然として製品中に存在することを示している。可能性としては、残留量(低量)の氷は、ガラス製バイアルを十分に冷却し得ず、それにより初期乾燥の終点に近づくに連れた観察されたTv,oにおける漸進的上昇が発生し得た。この点から始まって、計算されたTiは、初期乾燥段階の最後の数分に対しては信頼性が低いものとなり得る。
Tiの測定に基づいて、乾燥済み製品質量移動抵抗Rpは計算され、図32において乾燥済み層厚さIにおける関数としてプロットされる。RpプロファイルはTi曲線と同様の形状を有する。初期圧力低下の間の氷の昇華のために、Rpは0.0001mの乾燥済み層厚さから始まってプロットされる。およそ0.0014mの乾燥済み層厚さにおける一見は急激に見えるRpにおける増加は、初期乾燥の終点の付近における温度上昇と異常な関連付けがなされる(図31)。初期乾燥のまさに最終部分に対しTiは信頼性が低く、Rpに対する過大評価を生じさせてしまうと考えられるため、Rpプロファイルの最後の部分は、計算されるデータに当てはめられる方程式に対して含まれない。
非線形回帰を介して、Rp,o=−9.22×103m/s(95%信頼区間[−2.10×104m/s,2.60×103m/s])、ARp=4.22×1081/s([2.79×1081/s,5.65×1081/s])、およびBRp=3.48×1031/m([2.50×1031/m,4.46×1031/m])が計算された。Rp,oに対する95%信頼区間はゼロを含んだ。このことは、初期乾燥の開始点において(I=0)、質量の流れを制限するための細孔が存在しなかったため、Rpが最小であったことを示す。昇華の開始時はあらゆる製品抵抗が理論的に不在であるため、多くの場合、Rp,oはゼロとみなされる。この点が実験領域外部に配置されたため、この条件は回帰分析に対しては課されなかった。しかしRp,o係数はこの理論を確認するように見受けられる。
Iにおける増加とともに、Rpは高平部値に向かって増加した。それにより適合パラメータBRpはゼロからは顕著に異なる値となった。この挙動は、純粋なスクロース調合物に関する以前の事例において観察され、係る調合物の非常に低いTg’(−32.5℃)に起因するマイクロ崩壊の到来に帰着される。
算出されたRpプロファイルは、類似の調合物に対して報告されたものと大きさと同じオーダーである。しかし、製品の形状、およびRp決定のための処理設定が異なるものであったため、取得された結果はこれらの文献によるデータと直接的に比較されない。
結果は、IRサーモグラフィが、スピン冷凍バイアルに対してIの関数においてRpを決定するための好適な技術であることを示す。これは、広範囲の製品の連続的フリーズドライのための初期乾燥処理条件(例えば動的IR加熱器プロファイル)の開発および最適化における重要な結果である。加えて、提案される手続きは、異なる処理および調合パラメータのRpに対する影響を評価することを可能にし、実施するべき本発明の様々な実施形態に係る連続的フリーズドライ方法体系を低減させることにおいて容易に適用され得る。
非侵襲的IRサーモグラフィがこの事例では、連続的フリーズドライ外本の乾燥ステップの間の連続的温度監視に対して特に好適であることが示された。IRカメラは、NIRスペクトロスコピーにより確認されるスピン冷凍バイアルの初期乾燥の終点を検出することを可能にした。これらの両方の相補的PATツールの実装は、連続的フリーズドライの間の最適処理監視およびいくつかのCQAの監視を提供する。スピン冷凍バイアルにおける昇華面がIRカメラの方向に移動するにつれて、この技術は、乾燥済み層厚さIの関数において乾燥済み製品質量移動抵抗Rpの測定を可能にした。ガラス壁部および氷層にわたる温度勾配は、昇華面の温度Tiを計算するために熱伝導に関するフーリエの法則を介して補償された。さらに、温度測定値がシステム(バイアル+製品)における最高温度を有するエリアから取られるため、係る温度測定値は、製品のあらゆる位置において過度に高い温度に到達するための予防措置を提供し得る。本明細書で記載の方法は、特定製品の連続的フリーズドライの間の動的IR加熱器プロファイルの最適化に対して有用であり、Rpに対するいくつかの処理パラメータの影響を評価することを可能にするであろう。
付録:より詳細な数理モデルの事例
この付録における情報が単なる事例であり、本発明がこれに限定されないことに注意されたい。「〜なければならない」等の語句が使用される場合、これらの語句は付録で説明される事例に限定される。
昇華面における温度および動的安瀬マージンの決定
この代表的な計算方式は、容器に放射熱を供給する加熱器の応用を仮定する。
放射熱は放射表面により供給される。放熱器から容器までのエネルギー伝達(単位:J/秒)はシュテファン・ボルツマンの法則を使用して計算される。
シュテファン・ボルツマン:QR=eσAF(T4 r−T4 c) [1]
式中eは放熱器の放射係数[−]であり、σはボルツマン定数(5.6703×10−8W/(m2.K4))であり、Aは放射面積[m2]である。Fは容器により捕捉された放射と放出された全放射との比である形態係数[−]である。Tr[K]およびTc[K]はそれぞれ放熱器および受容表面の絶対温度である。Q[J/秒]は伝達されたパワーである。形態係数は放熱器および容器の両方の幾何学的形状に依存する。簡単な幾何学において形態係数は解析的に決定され得るが、形態係数はレイトレーシングまたはモンテカルロ・シミュレーションを用いたシミュレーションによっても導出され得る。最適確度のために、効果的な放射熱は、放熱器の既知の設定を使用し、時間の経過とともに昇華する既知の温度を有する純粋な氷の量を測定することにより、較正されるべきである。このようにして式[1]における定数の集合、すなわちe、σ、A、およびFの決定が可能である。
容器壁部の温度を測定し、この温度を放熱器の既知の設定と組み合わせることにより、放射熱伝達が決定される。この熱は、容器中の製品の氷結晶の昇華を駆動する潜熱に変換される。初期層厚さが既知であるため、累計熱伝達は乾燥済み層(すなわち氷結晶を奪われた層)の成長に変換され得る。氷結晶を含む層の厚さは、本源的層厚さから乾燥済み層厚さを引くことにより、等しく既知である。境界面の温度を決定し、最終気に昇華面における温度を知るために、1次元の形態におけるフーリエの法則が使用される。
フーリエの法則:Q
C=−kAΔT/L, [2]
式中k[W/(m.K]は熱伝導スラブの物質の熱伝導率であり、A[m
2]は熱伝導スラブの面積であり、ΔT[K]はスラブの両端間の温度差であり、L[m]はスラブの長さである。負号は熱が高温から低温に流れることを示す。容器物質の熱伝導率および氷の熱伝導率が既知であるため、昇華面における氷の温度は、放射熱伝達が伝導性熱伝達に等しいという事実(Q
R=Q
C)を使用して決定され得る。代表的な理由のために、k
gの熱伝導率、d
gの厚さ、および露出表面積A
gを有するガラス容器に対する計算が示される。
− T
in,g=T
out,g−Q
C×d
g/k
gA
g, [3]
− Q
C=Q
Rとして、T
in,g=T
out,g−Q
R×d
g/k
gA
g, [4]
式中、T
out,g[K]およびT
in,g[K]はガラス容器の外側温度および内側温度を示す。
− T
in,g=T
out,ice [5]
式中、H
sublimation[J/kg]は氷の昇華の潜熱、ρ
iceは氷の密度[kg/m
3]、A
iceは氷の表面積[m
2]、d
ice(t)は時間t[秒]における氷の厚さ[m]である。
− 次に、T
昇華面(t)=T
out,ice−Q
R×d
ice(t)/(k
iceA
ice) [7]
このようにして昇華面における温度が常時、既知となる。これは、昇華過程の開始時に特に重要である。昇華面における温度は、以下の式を通して、この昇華面における水蒸気の圧力に関する情報を提供する。
Torrでのp
昇華面をPaに変換するために、以下の関係が使用され得る。
p
昇華面とチャンバ中の水蒸気分圧との間の圧力差は、容器から出る方向に駆動される水蒸気の流れを決定する。この流れは、容器の開口部を通過するであろう。水蒸気の速さは、音速に到達することにより最大化される(チョーク流れ)。この状況では、容器中の圧力は上昇し、その結果として、昇華面における氷の温度が制御不能に上昇し、したがってガラス壁部付近の温度も上昇する。氷の融解は、望ましくない状況である当該位置において発生し得る。
この事例から、冷凍製品の最高温度がTout,iceとして決定され、ガラス容器および氷の境界面において発生することも、明らかである。特定時間の後、氷結晶をもはや含まない層は、蒸気が物質から流出にあたって抵抗として作用するであろう。放射熱の量が昇華の開始と同一である場合、昇華面における圧力は、増加する抵抗に対して補償するために上昇しなければならないであろう。その結果、これは、昇華面における温度上昇ももたらした後、ガラス−氷境界面における温度上昇をもたらすであろう。崩壊と呼ばれる構造の損失が発生するであろう。したがって放射熱の量は昇華が進行するにつれて低下しなければならない。
昇華の開始時に、チョーク流れ状態は回避されなければならないが、この状況は容易には発生せず、したがって処理設定に対する小さい安全マージンは許容される。それにも関わらず、氷−ガラス共鳴間における温度はT
critを越え得るこの状況では、加熱器のパワーを制御してT
out,g=T
critを達成すると全般に安全である。最大乾燥層厚さにおいて、崩壊を回避することが勧告され、したがって物質の全部に対してT
critの下5℃に留まることが必要である。この事例では、われわれは乾燥層厚さと安全マージン(SM)との間の線形関係を提案する。しかし他の関数が、特定の物質に応じて実装され得る。したがって次の式が成り立つ。
昇華の開始時には、ガラスの外側温度がT
critを越えない限り、安全マージンは不必要である。昇華の終止点付近では、安全マージンは5Kに到達する。初期乾燥の終止点における残留水分の相対レベルは20%のオーダーである。
脱離の間の安全マージンの決定
脱離は、残留水分レベルを1〜3%に減少させるために使用される。脱離の間、熱は、現時点で氷結晶を含まない物質に供給される。したがって温度は氷の通常の融点を越えて上昇する。脱離の間、製品のガラス状組成における未冷凍状態の水および賦形剤は追い出され、現時点の多孔性構造(氷結晶が存在した箇所にキャビティが存在する)から流出する蒸気に変換される。この過程の正確な詳細はまだ理解されていないが、この過程が温度が高いほど最も速いことが知られている。したがって、脱離では、水分子は主に、温度が最高となるガラス/製品境界面付近から流出するであろう。この境界面における温度は、上述したように昇華過程と同様に決定される。文献(参照文献1)では、脱離の間、T
critが残留水分レベルの低下とともに上昇することが記載されている。このことの結果は、当初はガラス壁部の温度は乾燥済み物質のT
critの十分に下であるべきであるが、次第にこの安全マージンは、残留水分に応じて減少され得ると言うことである。この残留水分(RM)レベルは文献(参照文献2)で説明されているようにNIRシステムにより決定される。次に安全マージンの決定は以下の式により説明され得る。
式中、RM
actualおよびRM
finalはそれぞれ脱離過程の間の残留水分[%]および脱離過程の終止点における残留水分を定める。T
s[K]は脱離過程の終止点における許容される温度マージンであるこの温度は長期中の製品に依存する。
式[11]は実際の残留水分レベル間の線形関係を示すが、改善が、他の関係(例えば2次の指数など)を適用することにより、達成され得る。
参考文献
[参照文献1]:“Moisture desorption isotherms and glass transition temperatures of osmo−dehydrated apple and pear”, Nadia Djendoubi Mrad, et.al, IChemE J. (Foods and Bioproducts Processing), April 2013, Volume 91, Issue 2, Pages 121−128.
[参照文献2]:“Noncontact Infrared−Mediated Heat Transfer During Continuous Freeze−Drying of Unit Doses”, P.J. Van Bockstal et.al, J Pharm Sci. 2016 Jun 16. pii: S0022−3549( 16)41414−0. doi: 10.1016/j.xphs.2016.05.003.