JP6897350B2 - 車両の制動制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車両の制動制御装置に関する。
特許文献1には、「無駄なエネルギ消費のないアキュムレータレス液圧ブレーキ装置を得る」ことを目的に、「低圧,高圧ポンプを含む動力液圧源とホイールシリンダとの間に増圧,減圧用の各電磁制御弁を設ける。通常制動時にはホイールシリンダをマスタシリンダから遮断し、ポンプを、目標ホイールシリンダ液圧を得るべく作動させ、全部の増圧用電磁制御弁を開いてホイールシリンダ液圧を増大させ、或いは、ポンプをフル作動状態とし、増圧用電磁制御弁の制御により増圧する。保持,減圧は増圧用電磁制御弁を閉じ、減圧用電磁制御弁の制御により行う。アンチロック制御時には増圧要求が最大の車輪のホイールシリンダ液圧を得るべくポンプを作動させ、その他の車輪のホイールシリンダ液圧は増圧用,減圧用電磁制御弁により制御する」旨が記載されている。
更に、特許文献1には、「ギヤポンプには、作動液の漏れを完全に防止することができず、また、温度の変化に伴う回転抵抗の変動が大きいという問題がある。作動液の温度が高くなれば粘度が低くなり、漏れ易くなって容積効率が低下する。また、作動液およびギヤポンプの温度が低くなれば、粘度が高くなるとともにギヤとケーシングとのクリアランスが小さくなり、ギヤの回転抵抗が増して機械効率が低下する。それに対して、ギヤポンプの温度とそのギヤポンプを通過する作動液の温度との少なくとも一方を検出し、その検出温度に基づいてポンプ駆動モータへの供給電流を制御するなどにより、ポンプの作動を制御すれば、影響を排除ないし軽減することができる。温度変化に伴う性能変化が大きいギヤポンプを使用しても高精度の液圧制御が可能になる」ことが記載されている。
ところで、制動制御装置では、作動液として、制動液(ブレーキフルード)が採用される。制動液には、「粘性が低く、温度による粘度変化が少ないこと」、「圧力による体積の変化が小さいこと」、「低温でも凍らず、高温でも沸騰しないこと」、「ゴム、金属を侵さないこと」等が求められている。制動液を作動液として採用した場合の流体ポンプの内部漏れには、温度の他にも考慮すべき要因が存在する。
図8は、流体ポンプが吐出する圧力(吐出液圧)に対する、内部漏れを計測した実験結果である。内部漏れの流量(体積流量であり、単位時間当りに移動する流体の体積)は、流体ポンプの吐出液圧に対して、上に凸の相関関係がある。
該知見に基づいて、出願人は、液圧応答性の向上を目的に、特許文献2に記載されるような制御装置を開発している。該装置では、差圧制御弁によって規定差圧を発生させつつ、各規定差圧に対応したポンプ漏れモータ回転数を求め、規定差圧に対するポンプ漏れモータ回転数特性を記憶する。この規定差圧に対するポンプ漏れモータ回転数特性を利用して、運動挙動制御によってモータを駆動するときには、ポンプ漏れを加味したモータ目標回転数にてモータを駆動する。
上記装置(「差圧調整」という)では、第1、第2差圧制御弁は、弁座と弁体との間のオリフィス効果によって差圧を発生させているため、第1、第2差圧制御弁に対して目標差圧に応じた指示電流を流すことで差圧状態とし、目標差圧を発生させようとしても、ある程度のモータ回転数(回転速度)に至らないと目標差圧を発生させられないという特性がある。このため、オリフィス効果によって、逸速く差圧が発生されるよう、ポンプ漏れが補償される。
出願人は、上記装置に加え、流体ポンプを駆動する電気モータの出力を制御することによって、ホイールシリンダを含む流体的に液密な閉回路内の制動液の量を調整し、制動液圧を直接的に制御するもの(「直接調整」という)を開発している。差圧調整では、一旦差圧が発生されれば、その調整は、差圧弁で制御される。従って、流体ポンプの漏れ補償は、差圧が十分に発生されるまでは必要であるが、一旦差圧が発生されれば、流体ポンプの吐出量は既に十分であるため、漏れ補償は不要となる。つまり、漏れ補償は、電気モータの回転の立ち上がり時(電気モータが停止している状態から回転を開始する時点)に必要となる。
一方、上記の直接調整では、リザーバからホイールシリンダ(上記閉回路の一部)に移動された制動液の体積が、制動液圧の調整に、常に必要になる。従って、電気モータ駆動の流体ポンプによって制動液圧が調整される車両の制動制御装置において、流体ポンプの内部漏れ補償による、液圧調整の応答性、及び、精度の向上が望まれている。
特開2000−159094号公報 特開2011−068166号公報
本発明の目的は、電気モータ駆動の流体ポンプによって制動液圧が増加調整される車両の制動制御装置において、制動液圧の調整が、高応答・高精度に達成され得るものを提供することである。
本発明に係る車両の制動制御装置は、車両のリザーバ(RV)と前記車両のホイールシリンダ(WC)との間で、電気モータ(MT)によって駆動される流体ポンプ(HP)を介して制動液(BF)を移動し、前記ホイールシリンダ(WC)の前記制動液(BF)の制動液圧(Pw)を調整するものであり、前記車両の制動操作部材(BP)の操作量(Ba)を検出する操作量センサ(BA)と、前記制動液圧(Pw)を液圧実際値(Pw)として検出する液圧センサ(PW)と、前記電気モータ(MT)の回転角実際値(Ma)を検出する回転角センサ(MA)と、前記操作量(Ba)、前記液圧実際値(Pw)、及び、前記回転角実際値(Ma)に基づいて演算された目標通電量(It)に応じて前記電気モータ(MT)を制御するコントローラ(ECU)と、を備える。
本発明に係る車両の制動制御装置では、前記コントローラ(ECU)は、前記液圧実際値(Pw)に基づいて前記流体ポンプ(HP)の内部漏れを補償する漏れ回転信号(Mm、Nm)を演算し、前記漏れ回転信号(Mm、Nm)に基づいて前記目標通電量(It)を演算するよう構成されている。例えば、前記コントローラ(ECU)は、前記操作量(Ba)に応じて決定された要求回転信号(Mr、Nr)、及び、前記漏れ回転信号(Mm、Nm)に基づいて目標回転信号(Mt、Nt)を演算し、前記回転角実際値(Ma)に応じて決定された実回転信号(Ma、Na)と前記目標回転信号(Mt、Nt)との偏差(hM、hN)に基づいて前記目標通電量(It)を演算する。
本発明に係る車両の制動制御装置では、消費液量が定まったホイールシリンダWC等で構成される液密閉回路において、流体ポンプHP/電気モータMTによって、閉回路の内部と外部(例えば、リザーバRV)との間で、制動液BFが移動(流入、又は、排出)され、閉回路内の制動液BFの量(体積)が調整され、液圧Pwが調整される。閉回路への制動液BFの流入量は、非制動時からの流体ポンプHPの総吐出量(つまり、「Ma=0」からの回転変位)であるため、流体ポンプHPの総吐出量と液圧Pwとは相関する。更に、流体ポンプHPの内部漏れ(吐出側から吸込み側に流れる制動液BFの体積)は、吐出側液圧と吸込み側液圧と間の液圧差に相関する。
上記構成によれば、該液圧差に相当する制動液圧Pwに基づいて、電気モータMTの漏れ回転信号Mm、Nmが演算される。そして、漏れ回転信号Mm、Nmに基づいて、目標通電量Itが決定される。流体ポンプHPの内部漏れが好適に補償され、流体ポンプHP/電気モータMTによる制動液圧Pwの調整精度が向上され得る。
更に、操作量Baに基づいて、要求回転信号Nr、Mrが演算されるとともに、液圧Pwに基づいて、漏れ回転信号Nm、Mmが演算され、要求回転信号Nr、Mrと漏れ回転信号Nm、Mmとが合算されて、最終的な目標回転信号Nt、Mtが決定される。そして、目標回転信号Nt、Mtと実回転信号Na、Maに基づいて、実回転信号Na、Maが、目標回転信号Nt、Mtに一致するよう、電気モータMTの回転数に係るフィードバック制御が実行される。液圧に係るフィードフォワード制御相当する電気モータMTの回転に係る制御が、単なるオープンループ制御ではなく、回転信号に係るフィードバック制御であるため、応答性のみならず、制御精度の向上が図られる。
本発明に係る車両の制動制御装置BSの第1の実施形態を説明するための全体構成図である。 第1の実施形態に対応した処理を説明するための制御フロー図である。 電気モータMTの第1の駆動処理例を説明するための機能ブロック図である。 電気モータMTの第2の駆動処理例を説明するための機能ブロック図である。 本発明に係る車両の制動制御装置BSの第2の実施形態を説明するための全体構成図である。 第2の実施形態に対応した処理を説明するための制御フロー図である。 減圧弁VDの駆動処理を説明するための機能ブロック図である。 流体ポンプの内部漏れ特性を説明するための実験結果である。
<構成部材等の記号、記号末尾の添字、及び、運動・移動方向>
以下の説明において、「ECU」等の如く、同一記号を付された構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値は、同一機能のものである。また、電気モータMT、及び、流体ポンプHPの回転方向において、「正転方向Hf」が、ホイールシリンダWCの液圧(制動液圧)Pwが上昇し、車輪WHの制動トルクが増加される方向に対応する。一方、「逆転方向Hr」は、ホイールシリンダWCの液圧Pwが下降し、車輪WHの制動トルクが減少される方向に相当する。更に、制動液BFの移動において、「増圧方向Hw」は、リザーバRVからホイールシリンダWCに向けた方向であり、「正転方向Hf」に対応する。一方、「減圧方向Hs」は、ホイールシリンダWCからリザーバRVに向けた方向であり、「逆転方向Hr」に対応する。
<本発明に係る車両の制動制御装置の第1の実施形態>
図2の全体構成図を参照して、本発明に係る第1の制動制御装置BSの実施形態について説明する。制動制御装置BSを備える車両は、制動操作部材BP、ホイールシリンダWC、リザーバRV、マスタシリンダMC、及び、車輪速度センサVWが設けられる。
制動操作部材(例えば、ブレーキペダル)BPは、運転者が車両を減速するために操作する部材である。制動操作部材BPが操作されることによって、車輪WHの制動トルクが調整され、車輪WHに制動力が発生される。具体的には、車両の車輪WHには、回転部材(例えば、ブレーキディスク)が固定される。そして、回転部材を挟み込むようにブレーキキャリパが配置される。
ブレーキキャリパには、ホイールシリンダWCが設けられている。ホイールシリンダWC内の制動液BFの圧力Pwが増加されることによって、摩擦部材(例えば、ブレーキパッド)が、回転部材に押し付けられる。回転部材と車輪WHとは、一体的に回転するよう固定されているため、このときに生じる摩擦力によって、車輪WHに制動トルク(制動力)が発生される。
リザーバRVは、作動液体用のタンクであり、制動液BFが貯蔵されている。リザーバRVは、大気開放され、リザーバRV内の制動液BFの圧力は、大気圧に維持されている(つまり、リザーバRVは、加圧密閉型のものではない)。リザーバRV内の制動液BFが、マスタシリンダMC、又は、制動制御装置BSによって、ホイールシリンダWCに向けて圧送され、ホイールシリンダWC内の制動液BFが加圧される。
マスタシリンダMCは、制動操作部材BPに、機械的に接続されている。制動操作部材BPが操作されていない場合には、マスタシリンダMCとリザーバRVとは連通状態にあり、マスタシリンダMC内の液圧Pmは、大気圧(即ち、「Pm=0」)である。制動操作部材BPが操作されると、マスタシリンダMC内のピストンPSが、ピストンロッドによって押される。マスタシリンダMCの内壁とピストンPSとによって加圧室Kaが形成されている。ピストンPSの前進によって、加圧室Kaは、リザーバRVから遮断され、制動操作部材BPの操作力が、制動液BFの圧力に変換される。ピストンPSの前進に伴って、加圧室Kaの体積は減少し、制動液BFは、マスタシリンダMC(特に、出口部Sk)から、後述のマスタシリンダ流体路HMを介して、ホイールシリンダWCに向けて圧送される。マスタシリンダMCによって、ホイールシリンダWCの制動液圧Pwが調整される場合が、「人力制動(マニュアル制動)」と称呼される。
ホイールシリンダWCは、マスタシリンダMCに代えて、制動制御装置BSの流体ポンプHPによって加圧される。制動制御装置BSは、所謂、ブレーキ・バイ・ワイヤの構成である。流体ポンプHPは、リザーバRVから、制動液BFを吸い込み、ホイールシリンダWCに向けて吐出する。つまり、ホイールシリンダWCは、マスタシリンダMC、及び、流体ポンプHPのうちの何れか1つによって加圧される。制動制御装置BSによって、ホイールシリンダWCの制動液圧Pwが調整される場合が、「制御制動」と称呼される。
マスタシリンダMC、ホイールシリンダWC、リザーバRV、及び、流体ポンプHPを、夫々、接続する各種流体路について説明する。流体路は、制動制御装置の作動液体である制動液BFを移動するための経路であり、制動配管、流体ユニットの流路、ホース等が該当する。なお、流体路において、マスタシリンダMC、又は、流体ポンプHPに近い側が、「上流側」と称呼され、ホイールシリンダWCに近い側が、「下流側」と称呼される。
マスタシリンダ流体路HMは、マスタシリンダMCとホイールシリンダWCとを接続する流体路である。ホイールシリンダ流体路HWは、流体ポンプHPとホイールシリンダWCとを接続する流体路である。吸い込み流体路HSは、リザーバRVと流体ポンプHPとを接続する流体路である。そして、マスタシリンダ流体路HMとホイールシリンダ流体路HWとが交わる部位が、「増圧接続部Sm」と称呼される。
各車輪WHには、車輪速度Vwを検出するよう、車輪速度センサVWが備えられる。車輪速度Vwの信号は、車輪WHのロック傾向を抑制するアンチスキッド制御等に採用される。車輪速度センサVWによって検出された各車輪速度Vwは、コントローラECUに入力される。
制動制御装置BSが適正に作動する通常状態では、ホイールシリンダWC内の制動液BFは、制動制御装置BSによって加圧される(制御制動)。一方、制動制御装置BSが不調状態に陥った場合には、ホイールシリンダWC内の制動液BFは、マスタシリンダMCによって加圧される(人力制動)。制動制御装置BSは、操作量センサBA、制動液圧センサPW、コントローラECU、電気モータMT、流体ポンプHP、ストロークシミュレータSM、シミュレータ電磁弁VS、及び、マスタシリンダ電磁弁VMにて構成される。
操作量センサBAは、制動操作部材BPに設けられる。操作量センサBAによって、運転者による制動操作部材BPの操作量(制動操作量)Baが検出される。具体的には、操作量センサBAとして、マスタシリンダMCの圧力Pmを検出する液圧センサPM、制動操作部材BPの操作変位Spを検出する操作変位センサ、及び、制動操作部材BPの操作力Fpを検出する操作力センサのうちの少なくとも1つが採用される。換言すれば、操作量センサBAは、マスタシリンダ液圧センサPM、操作変位センサ、及び、操作力センサについての総称である。従って、制動操作量Baは、マスタシリンダMCの液圧Pm、制動操作部材BPの操作変位Sp、及び、制動操作部材BPの操作力Fpのうちの少なくとも1つに基づいて決定される。操作量センサBAによって検出された操作量Baは、コントローラECUに入力される。
各ホイールシリンダWC内の制動液BFの圧力(制動液圧)Pwを検出するよう、ホイールシリンダ液圧センサ(「制動液圧センサ」ともいう)PWが設けられる。例えば、液圧センサPWは、流体ポンプHPと一体となった流体ユニットに内蔵される。制動液圧センサPWによって検出された各ホイールシリンダWCの制動液圧Pwは、コントローラECUに入力される。
電子制御ユニット(「コントローラ」ともいう)ECUは、マイクロプロセッサMP等が実装された電気回路基板と、マイクロプロセッサMPにプログラムされた制御アルゴリズムにて構成されている。コントローラECUによって、操作量Ba、及び、制動液圧Pwに基づいて、電気モータMT、及び、各種電磁弁VM、VSが制御される。具体的には、マイクロプロセッサMP内の制御アルゴリズムに基づいて、電気モータMT、及び、各種電磁弁VM、VSを制御するための駆動信号が演算される。そして、駆動信号に基づいて、コントローラECU内に形成された、駆動回路DRによって、電気モータMT、及び、各種電磁弁VM、VSが駆動される。
駆動回路DRには、電気モータMTを駆動するよう、スイッチング素子(MOS−FET、IGBT等のパワー半導体デバイス)によってブリッジ回路が形成される。駆動回路DRでは、電気モータMT用の駆動信号に基づいて、各スイッチング素子の通電状態が制御され、電気モータMTの出力、及び、回転方向が制御される。また、駆動回路DRでは、各種電磁弁VM、VSを駆動するよう、電磁弁用の駆動信号に基づいて、それらの励磁状態が制御される。なお、コントローラECUの駆動回路DRには、車載された、発電機AL、及び、蓄電池BTから電力が供給される。
流体ポンプHPを駆動するよう、制動制御装置BSには、電気モータMTが設けられる。電気モータMTは、ホイールシリンダWC内の制動液BFの圧力を増加するための動力源である。例えば、電気モータMTとして、3相ブラシレスモータが採用される。ブラシレスモータMTには、そのロータ位置(回転角)Maを検出する回転角センサMAが設けられる。回転角Maに基づいて、ブリッジ回路を構成するスイッチング素子が制御される。つまり、3つの各相(U相、V相、W相)のコイルの通電量の方向(即ち、励磁方向)が、順次切り替えられ、ブラシレスモータMTが回転駆動される。駆動回路DRには、電気モータMTの実際の通電量Ia(各相の総称)を検出する通電量センサIAが設けられる。例えば、通電量センサIAとして、電流センサが設けられ、実電流値Iaが検出される。検出された各相の通電量Iaは、コントローラECUに入力される。
流体ポンプHPによって、制動液BFが、吸い込み流体路HS、及び、ホイールシリンダ流体路HWを介して、ホイールシリンダWCに向けて移動され、ホイールシリンダWCの制動液圧Pwが増加される。制御制動時には、マスタシリンダ弁VMは閉位置にあるため、ホイールシリンダ流体路HWとホイールシリンダWCとによって、流体的に液密にされた閉回路が形成されている。電気モータMTによって、流体ポンプHPが、正転方向Hfに回転されると、閉回路の外部であるリザーバRVから汲み上げられた制動液BFが、該閉回路内(即ち、増圧方向Hw)に吐出される。これにより、閉回路内に存在する制動液BFの量(体積)が増加されるため、制動液圧Pwが上昇される。
一方、ホイールシリンダWCの制動液圧Pwが減少される場合には、電気モータMTによって、流体ポンプHPが、逆転方向Hrに回転され、制動液BFは、吸い込み流体路HS、及び、ホイールシリンダ流体路HWを介し、ホイールシリンダWCからリザーバRVに移動される(減圧方向Hsに吐出される)。つまり、ホイールシリンダ流体路HW、及び、ホイールシリンダWCにて構成された液密な閉回路内の制動液BFの量が減少されるため、制動液圧Pwは低下される。なお、液圧Pwの減少時においても、マスタシリンダ弁VMは、閉位置にされている。
ホイールシリンダWCの制動液圧Pwが保持される場合には、流体ポンプHP/電気モータMTは、回転停止される。つまり、流体ポンプHPからホイールシリンダWCに至る流体経路内において、液密状態が維持され、液圧Pwが一定に保持される。なお、流体ポンプHPの内部漏れが補償される場合には、流体ポンプHP/電気モータMTは、正転方向Hfに低速で回転される。
上述したように、制動制御装置BSでは、液圧Pwの調整が、電気モータMTの出力制御(トルク制御)によって行われる。制動制御装置BSは、ホイールシリンダWC内の制動液BFの量が、流体ポンプHP/電気モータMTによって、閉回路へ流入、又は、閉回路から排出されて、調整される。制動制御装置BSは、所謂、静的な調圧システムである。これに対して、差圧弁による差圧調整は、所謂、動的な調圧システムである。
ストロークシミュレータ(単に、「シミュレータ」ともいう)SMが、制動操作部材BPに操作力を発生させるために設けられる。シミュレータSMの内部には、ピストン、及び、弾性体(例えば、圧縮ばね)が備えられる。マスタシリンダMCから制動液BFがシミュレータSMに移動され、流入する制動液BFによりピストンが押される。ピストンには、弾性体によって制動液BFの流入を阻止する方向に力が加えられる。弾性体によって、制動操作部材BPが操作される場合の操作力が形成される。
マスタシリンダMC内の液圧室KaとシミュレータSMとの間には、シミュレータ電磁弁VSが設けられる。シミュレータ弁VSは、開位置(連通状態)と閉位置(遮断状態)とを有する2位置の電磁弁である。シミュレータ弁VSは、コントローラECUからの駆動信号によって制御される。非制動時、又は、制動制御装置BSの不調時には、シミュレータ弁VSが閉位置にされ、マスタシリンダMCとシミュレータSMとが遮断状態(非連通状態)となる。この場合、マスタシリンダMCからの制動液BFは、シミュレータSMに消費されない。制動時であり、制動制御装置BSの適正作動時には、シミュレータ弁VSが開位置にされ、マスタシリンダMCとシミュレータSMとは連通状態となる。この場合、制動操作部材BPの操作特性(操作変位Spと操作力Fpとの関係)は、シミュレータSMによって形成される。なお、シミュレータ弁VSとして、常閉型の電磁弁(NC弁)が採用され得る。
マスタシリンダMCとホイールシリンダWCとを流体接続するマスタシリンダ流体路HMの途中に、マスタシリンダ電磁弁VMが設けられる。マスタシリンダ弁VMは、開位置(連通状態)と閉位置(遮断状態)とを有する2位置の電磁弁である。マスタシリンダ弁VMは、コントローラECUからの駆動信号によって制御される。非制動時、又は、制動制御装置BSの不調時には、マスタシリンダ弁VMは開位置にされ、マスタシリンダMCとホイールシリンダWCとは連通状態となる。この場合、ホイールシリンダWCの制動液圧Pwは、マスタシリンダMCによって調整される。制動時、且つ、制動制御装置BSの適正作動時には、マスタシリンダ弁VMは閉位置にされ、マスタシリンダMCとホイールシリンダWCとは遮断状態(非連通状態)となる。この場合、制動液圧Pwは、制動制御装置BSによって制御される。なお、マスタシリンダ弁VMとして、常開型の電磁弁(NO弁)が採用され得る。
<コントローラECUでの処理例>
図2の制御フロー図を参照して、コントローラECUでの演算処理例について説明する。該演算処理では、制御制動の各モード(「制御モード」という)が決定され、モードに応じて、電気モータMTが制御される。制御モードには、制動液圧Pwを増加する「増圧モード」、制動液圧Pwを一定に維持する「保持モード」、及び、制動液圧Pwを減少する「減圧モード」が含まれている。なお、制御制動においては、シミュレータ電磁弁VSは開位置、マスタシリンダ電磁弁VMは閉位置にされ、マスタシリンダ流体路HMの非連通状態が維持される。
ステップS110にて、制動操作量Ba、及び、制動液圧Pwが読み込まれる。操作量Baは、操作量センサBA(例えば、流体ユニット内のマスタシリンダ液圧センサPM)によって検出される。制動液圧Pwは、流体ユニット内に設けられた、制動液圧センサPWによって検出される。
ステップS120にて、制動操作量Baに基づいて、「制動操作中であるか、否か」が判定される。例えば、操作量Baが、所定値bo以上である場合には、ステップS120は肯定され、処理は、ステップS130に進む。一方、「Ba<bo」である場合には、ステップS120は否定され、処理は、ステップS110に戻される。ここで、所定値boは、制動操作部材BPの遊びに相当する、予め設定された定数である。
ステップS130にて、操作量Baに基づいて、目標液圧Ptが演算される。操作量Baが増加するに伴い、目標液圧Ptが、「0」から単調増加するよう決定される。ステップS140にて、目標液圧Ptと実液圧Pwとの偏差hPが演算される。即ち、「hP=Pt−Pw」にて、液圧偏差hPが決定される。
ステップS150にて、液圧偏差hPに基づいて、「液圧偏差hPが所定値pz以上であるか、否か」が判定される。ここで、所定値(「増圧所定値」ともいう)pzは、判定用のしきい値であり、予め設定された、「0」より大きい定数である。「hP≧pz」であり、ステップS150が肯定される場合には、制御モードとして増圧モードが設定され、処理は、ステップS170に進む。一方、「hP<pz」であり、ステップS150が否定される場合には、処理は、ステップS160に進む。
ステップS160にて、液圧偏差hPに基づいて、「液圧偏差hPが所定値−pg以上であるか、否か」が判定される。ここで、所定値(「減圧所定値」ともいう)「−pg」は、判定用のしきい値であり、予め設定された、「0」未満の定数である。「hP≧−pg」であり、ステップS160が肯定される場合には、制御モードとして保持モードが設定され、処理は、ステップS180に進む。一方、「hP<−pg」であり、ステップS160が否定される場合には、制御モードとして減圧モードが設定され、処理は、ステップS190に進む。
ステップS170では、増圧モードの処理が実行される。ステップS170にて、目標通電量Itに基づいて、電気モータMTが正転方向Hfに駆動される。増圧モードでは、電気モータMTによって流体ポンプHPが駆動され、制動液BFが、リザーバRVからホイールシリンダWC内に移動される。つまり、ホイールシリンダWC内の制動液BFの量が増加されることによって、制動液圧Pwが増加調整される。
ステップS180では、保持モードの処理が実行される。ステップS180にて、目標通電量Itが、一定に維持され、液圧Pwによって生じる逆転方向Hrの力と電気モータMTによる正転方向Hfの力とが釣り合い、電気モータMTの回転が停止に向かう。そして、電気モータMTの回転停止状態が保持される。これにより、ホイールシリンダWC内の制動液BFの量が一定とされるため、制動液圧Pwは保持される。このとき、流体ポンプHPの内部漏れが、液圧Pwに基づいて補償される。漏れ補償が実行される場合には、電気モータMTは低速回転状態とされる。なお、流体ポンプHP/電気モータMTのヒステリシスが考慮されて、保持モードにおける目標通電量Itが、増加モードにおける目標通電量Itよりも小さくなるように演算され得る。
ステップS190では、減圧モードの処理が実行される。ステップS190にて、目標通電量Itが、「0」に向けて減少される。即ち、液圧Pwによって生じる逆転方向Hrの力と電気モータMTによる正転方向Hfの力とが釣り合い、目標液圧Ptが達成されるまで、電気モータMTへの供給電流が減少される。なお、流体ポンプHP/電気モータMTの摩擦抵抗等によって、目標液圧Ptが達成されない場合には、負符号の目標通電量Itが演算され、電気モータMTが、逆転方向Hrに駆動される。つまり、駆動回路DRにおいて、電気モータMTが正転方向Hfに駆動される場合とは逆方向に通電が行われる。
<電気モータMTの第1の駆動処理例>
図3の機能ブロック図を参照して、コントローラECUにおける電気モータMTの第1の駆動処理例について説明する。コントローラECUでは、駆動回路DRのスイッチング素子を駆動するための信号が演算され、該信号に基づいて電気モータMTが制御される。
電気モータMTの駆動信号演算は、目標液圧演算ブロックPT、要求通電量演算ブロックIR、液圧フィードバック制御ブロックPF、要求液量演算ブロックQR、要求回転数演算ブロックNR、漏れ補償回転数演算ブロックNM、回転数演算ブロックNA、回転数フィードバック制御ブロックNF、目標通電量演算ブロックIT、及び、スイッチング制御ブロックPHにて構成される。
目標液圧演算ブロックPTにて、制動操作量Ba、及び、演算マップZptに基づいて、目標液圧Ptが演算される。目標液圧Ptは、流体ポンプHPによって発生される液圧の目標値である。具体的には、演算マップZptに従って、制動操作量Baが「0(非制動時に対応)」以上から所定値bo未満の範囲では目標液圧Ptが「0」に演算される。操作量Baが所定値bo以上では、操作量Baの増加に従って、目標液圧Ptが「0」から単調増加するように演算される。ここで、所定値boは、制動操作部材BPの「遊び」に相当する、予め設定された定数である。
要求通電量演算ブロックIRにて、目標液圧Pt、及び、演算マップZirに基づいて、要求通電量Irが演算される。要求通電量Irは、電気モータMTへの通電量の目標値である。具体的には、演算マップZirに従って、要求通電量Irが、「0」から単調増加するように演算される。また、要求通電量Irは、目標液圧Ptが増加する場合は、目標液圧Ptが減少する場合に比較して、大きい値に演算される。これは、流体ポンプHP/電気モータMTのヒステリシス特性に因る。
ここで、「通電量」とは、電気モータMTの出力トルクを制御するための状態量(状態変数)である。電気モータMTは電流に概ね比例するトルクを出力するため、目標通電量(の物理量)として、電気モータMTの目標電流が採用される。また、電気モータMTへの供給電圧を増加すれば、結果として電流が増加されるため、目標通電量として供給電圧値が用いられ得る。更に、パルス幅変調におけるデューティ比によって供給電圧値が調整され得るため、デューティ比(一周期における通電時間の割合)が通電量として採用され得る。
液圧フィードバック制御ブロックPFにて、液圧の目標値(目標液圧)Pt、及び、液圧の実際値(液圧検出値)Pwを制御の状態変数として、電気モータMTの液圧通電量Ifが演算される。つまり、液圧フィードバック制御ブロックPFでは、目標液圧Ptと実液圧Pwとの比較結果hPに基づいて、実際値Pwが目標値Ptに一致するよう(即ち、偏差hPが「0」に近づくように補償されて)、所謂、液圧に基づくフィードバック制御が実行される。
液圧フィードバック制御ブロックPFでは、先ず、目標液圧Ptが、制動液圧センサPWの検出値Pwに比較される。例えば、目標液圧Ptと、実液圧Pwとの偏差hPが演算される。液圧偏差hPは、制御変数として、液圧通電量演算ブロックIFに入力される。
液圧通電量演算ブロックIFでは、次に、液圧偏差hP、及び、演算マップZifに基づいて、液圧通電量Ifが演算される。液圧通電量Ifは、電気モータMTの通電量の目標値である。具体的には、演算マップZifに従って、偏差hPが所定値−pg(負の値)未満では、液圧偏差hPの増加に従って、液圧通電量Ifが単調増加するように演算される。偏差hPが、所定値−pg以上、所定値pz(正の値)未満の範囲では、液圧通電量Ifは、「0」に決定される。液圧偏差hPが所定値pz以上では、液圧偏差hPの増加に従って、液圧通電量Ifが「0」から単調増加するように演算される。ここで、所定値(減圧所定値)−pg、及び、所定値(増圧所定値)pzは、予め設定された定数である。
要求液量演算ブロックQRにて、目標液圧Pt、及び、演算マップZqrに基づいて、各車輪の要求液量Qrが演算される。各車輪WHにおいて、要求液量Qrは、目標液圧Ptを達成するために、流体ポンプHPからホイールシリンダWCに移動すべき制動液BFの量(体積)の目標値である。流体ポンプHPの内部漏れを除けば、流体ポンプHPが吐出した制動液BFの量によって、ホイールシリンダWCの液圧Pwが増加される。吐出される制動液BPの量(体積)と、制動液圧Pwの増加量との関係は、車輪周りに配置された、キャリパ、液圧配管(流体路)、摩擦部材等の剛性に基づく。これらの部材の剛性(変形)によって消費される制動液BFの体積が、「消費液量」と称呼される、
一般的な車両では、前輪側の消費液量が相対的に大であり、後輪側の消費液量が相対的に小である、このため、演算マップZqrは、前輪用の演算マップと、後輪用の演算マップとが別個に設けられ得る。なお、演算マップZqrは、制動液BFの流入体積と液圧Pwとの関係を表しており、該特性は、実験的に求められる。要求液量演算ブロックQRでは、演算マップZqrに基づいて、目標液圧Ptの増加に従って、目標液圧Ptが、「上に凸」の特性で増加するように演算される。また、演算マップZqrが、前輪用と後輪用とが別々に設けられる場合には、後輪の目標液圧Ptの増加に従って、目標液圧Ptが、前輪のよりは小さい「上に凸」の特性で増加するように演算される。
要求回転数演算ブロックNRでは、先ず、各要求液量Qrに基づいて、要求回転数Nr(「要求回転信号」に相当)が演算される。要求回転数Nrは、電気モータMTの応答性、制御精度、円滑作動等を向上するための、電気モータMTの回転数(回転速度)の目標値である。具体的には、要求回転数演算ブロックNRでは、先ず、各車輪の要求液量Qrの全てが加算されて、目標吐出量(目標液量)Qtが演算される(つまり、「Qt=ΣQr」)。目標液量Qtは、各目標液圧Ptを達成するために必要な流体ポンプHPの吐出量の目標値である。流体ポンプHPの1回転当りの吐出量は既知であるため、目標液量Qtは、流体ポンプHPが何回転したかに相関する。
次に、要求回転数演算ブロックNRでは、目標液量(目標吐出量)Qtに基づいて、電気モータMTの要求回転数Nrが演算される。流体ポンプHPの1回転当りの吐出量は、流体ポンプHPの諸元で定まる。このため、目標液量Qtが時間微分されて、目標流量(単位時間当りの制動液BFの移動量)dQが演算される。そして、目標流量dQに基づいて、流体ポンプHP(即ち、電気モータMT)の回転速度(回転数)の目標値(要求回転数)Nrが演算される。
漏れ補償回転数演算ブロックNMにて、制動液圧Pw、及び、演算マップZnmに基づいて、漏れ補償回転数Nm(「漏れ回転信号」に相当)が演算される。漏れ補償回転数Nmは、流体ポンプHPの内部漏れを補償するための、電気モータMTの回転数の目標値である。図8を参照して説明したように、流体ポンプHPの内部にて単位時間当りに漏れる体積(即ち、吐出流体路HTから戻し流体路HRに移動する制動液BFの体積)は、流体ポンプHPの吐出液圧(即ち、液圧センサPWの検出値Pw)に相関する。単位時間当りの制動液BFの移動量は、電気モータMTの単位時間当りの回転数(即ち、回転速度)に対応するため、漏れ補償の状態量として、漏れ補償回転数Nmが採用される。
具体的には、漏れ補償回転数演算ブロックNMでは、演算マップZnmに従って、制動液圧Pwが、所定圧pm未満の場合には、漏れ補償回転数Nmは「0」に演算される。制動液圧Pwが所定圧pm以上では、制動液圧Pwの増加に従って、漏れ補償回転数Nmが「0」から上に凸の非線形特性にて単調増加するように演算される。ここで、演算マップZnmは、実験結果に基づいて設定される。また、所定圧pmは、該結果に基づいて、予め設定された定数である。
要求回転数Nr(要求回転信号)に、漏れ補償回転数Nm(漏れ回転信号)が加算されて、目標回転数Nt(目標回転信号)が演算される。目標回転数Nt(=Nr+Nm)は、電気モータMTの回転数(回転速度)の最終的な目標値である。目標液圧Ptを達成するための要求回転数Nrに、流体ポンプHPの内部漏れに相当する分が補償されて、目標回転数Ntが決定される。そして、目標回転数Ntが目標とされて、回転数フィードバック制御が実行される。
回転数演算ブロックNAにて、実回転角Maに基づいて、実回転数Na(「実回転信号」に相当)が演算される。具体的には、実回転角Maが、時間微分されて、実回転数Naが決定される。実回転数Naは、電気モータMTの回転速度(単位時間当りの回転数)の実際値(検出値)である。
回転数フィードバック制御ブロックNFにて、単位時間あたりのモータ回転数の目標値(目標回転数)Nt、及び、実際値(実際の回転数)Naを制御変数として、電気モータMTの回転数通電量Inが演算される。回転数フィードバック制御NFでは、回転数偏差hNを補償(低減)し、実回転数Naが、目標回転数Ntに一致するよう、所謂、回転数フィードバック制御が実行される。なお、電気モータの回転数フィードバック制御は、液圧制御におけるフィードフォワード制御に相当する。つまり、液圧制御は、フィードバック制御(液圧フィードバック制御ブロックPF)と、フィードフォワード制御(回転数フィードバック制御ブロックNF)とで構成される。
回転数フィードバック制御ブロックNFでは、先ず、目標回転数Nt(目標回転信号)が、実回転数Na(実回転信号)に比較される。例えば、目標回転数Ntと、実回転数Naとの偏差hNが演算される。回転数偏差hNは、制御変数として、回転数通電量演算ブロックINに入力される。
回転数通電量演算ブロックINでは、回転数偏差hNに基づいて、回転数通電量Inが演算される。回転数通電量Inは、電気モータMTの通電量の目標値である。具体的には、演算マップに基づいて、回転数偏差hNの増加に従って、回転数通電量Inが「0」から単調増加するように演算される。
目標通電量演算ブロックITにて、要求通電量Ir、液圧通電量If、及び、回転数通電量Inに基づいて、目標通電量Itが演算される。目標通電量Itは、電気モータMTの通電量の最終的な目標値である。目標通電量Itの大きさによって、電気モータMTの出力トルク(即ち、制動液圧Pwの増加量)が決定される。例えば、要求通電量Ir、液圧通電量If、及び、回転数通電量Inの総和によって、目標通電量It(=Ir+If+In)が決定される。ここで、電気モータMTへの供給電力において、夫々、要求通電量Irは、液圧フィードフォワード成分、液圧通電量Ifは、液圧フィードバック成分、回転数通電量Inは、「液圧フィードフォワード+漏れ補償成分」に相当する。
なお、制動操作部材BPが一定に保持され続けた場合(即ち、「hP=0、Nr=0」が達成された場合)には、漏れ補償回転数Nmによって流体ポンプHPの漏れを補償するよう、電気モータMTが一定の回転数で駆動される。目標通電量Itは、スイッチング制御ブロックPHに入力される。
スイッチング制御ブロックPHにて、目標通電量Itに基づいて、各スイッチング素子についてパルス幅変調を行うための駆動信号が演算される。目標通電量It、及び、回転角Maに基づいて、電気モータMTの各相(U相、V相、W相)のパルス幅のデューティ比(一周期に対するオン時間の割合)が決定される。そして、デューティ比(目標値)に基づいて、駆動回路DRの各スイッチング素子が駆動される。
駆動回路DRには、各相に通電量センサ(例えば、電流センサ)IAが備えられ、実際の通電量(電流値)Iaが検出される。各相の検出値Iaは、スイッチング制御ブロックPHに入力され、目標値Itと一致するよう、所謂、電流フィードバック制御が実行される。具体的には、通電量の実際値Iaと目標値Itとの偏差に基づいて、デューティ比が修正(微調整)される。
駆動回路DRにて、スイッチング制御ブロックPHからの駆動信号に基づいて、電気モータMTが駆動される。電気モータMTには、回転角Maを検出するよう、回転角センサMAが設けられる。電気モータMTに、ブラシレスモータが採用される場合には、実回転角Maに基づいて、駆動回路DRの3相(U相、V相、W相)が、順次切り替えられ、電気モータMTが駆動される。
コントローラECUでは、偏差hPに基づいて、実際の液圧Pwが、目標液圧Ptに近づくように、制動液圧のフィードバック制御が実行される。例えば、実液圧Pwは、アナログ信号として検出され、アナログ・デジタル変換処理(所謂、AD変換)を経て、コントローラECUに入力される。AD変換を介して、液圧Pwは、「1(単位)」LSB毎の階段状の値として検出される。ここで、LSBとは、最下位ビットであり、信号の分解能である。更に、アナログノイズを低減するため、液圧Pwには、フィルタ処理(例えば、ローパスフィルタ処理)が施される。しかし、AD変換、及び、フィルタ処理を経ると、検出値Pwが時間的に遅れ、相対的に速い制動操作への対応が困難となり得る。
コントローラECUでは、目標液圧Ptに基づき、目標回転数Nt(特に、要求回転数Nr)が決定され、目標回転数Nt、及び、実回転数Na(回転角センサMAによって検出された回転角Maの時間微分値)との偏差hNに基づいて、実回転数Naが、目標回転数Ntに近づくように、電気モータMTの回転数フィードバック制御が実行される。該回転数フィードバック制御は、液圧制御においては、フィードフォワード制御に相当する。回転角Maは、デジタル信号として検出され、AD変換されることなく、コントローラECUに入力されるため、アナログ信号に比較して、ノイズの影響が少ない。従って、フィルタ処理が不要である、又は、フィルタのカットオフ周波数が高く設定され得る。結果、検出値Maの時間遅れは相対的に小さい。回転数フィードバック制御によって、制動液圧Pwの遅れが補償され、相対的に速い制動操作に対して、十分な応答性を有する液圧制御が達成され得る。
更に、目標回転数Nt(特に、要求回転数Nr)は、目標液量(目標吐出量)Qtに基づいて演算されるが、その演算において、上記液圧フィードバック制御の直接の制御結果が含まれない。つまり、目標回転数Ntは、液圧フィードバック制御によっては直接の制御対象を含まないように決定される。液圧フィードバック制御と、回転数フィードバック制御(液圧フィードフォワード制御に相当)とが制御変数において分離されるため、2つの制御間での相互干渉が抑制され、制動液圧が振動的になることが回避され得る。
加えて、コントローラECUでは、目標回転数Nt(特に、漏れ補償回転数Nm)によって、流体ポンプHPの内部漏れが補償される。流体ポンプHPで生じる、吐出側から吸込み側への単位時間に漏れる制動液BFの体積は、吐出側の液圧と吸込み側の液圧との差に相関している。流体ポンプHPの吸込み側液圧(即ち、リザーバRVの液圧)は大気圧であるため、液圧センサPWの検出結果(実液圧)Pwに基づいて漏れ補償回転数Nmが決定される。そして、漏れ補償回転数Nmに基づいて、電気モータMTが制御されるため、流体ポンプHPの内部漏れが好適に補償され、流体ポンプHP/電気モータMTによる制動液圧Pwの調整精度が向上され得る。
漏れ補償は、特に、保持モードで効果が発揮される。例えば、漏れ補償回転数演算ブロックNMが設けられない場合、内部漏れによる液圧Pwの低下は、液圧フィードバック制御によって補償される。この場合、液圧偏差hPが増圧所定値pz以上になった時点(該当する演算周期)で漏れ補償が開始され、偏差hPが所定値pz未満になった時点で漏れ補償が終了される。従って、流体ポンプHP/電気モータMTの駆動において、回転・停止が繰り返され、制御が間欠的になり得る。しかし、漏れ補償回転数Nmに基づいて、内部漏れを補償するよう、電気モータMTが略一定の回転数で駆動されるため、電気モータMTの回転駆動が円滑化され得る。
更に、要求回転数Nrと漏れ補償回転数Nmとに基づいて、目標回転数Ntが決定され、回転数に係るフィードバック制御が実行される。電気モータMTの駆動制御において、制御変数が統合されるため、各種目的の制御が干渉することがない。つまり、応答性補償、及び、漏れ補償が、別々に存在するのではなく、統一して行われ得る。
<電気モータMTの第2の駆動処理例>
図4の機能ブロック図を参照して、コントローラECUにおける電気モータMTの第2の駆動処理例について説明する。第1の駆動処理例では、電気モータMTの単位時間当りの回転数Nt(目標値)、Na(実際値)に基づいて流体ポンプHPの漏れ補償が実行された。しかし、第2の駆動処理例では、電気モータMTの回転角Mt(目標値)、Ma(実際値)に基づいて流体ポンプHPの漏れ補償が実行される。即ち、第1例と第2例とでは、漏れ補償に採用される状態量(特に、物理量)が相違する。以下、相違する点を主に説明する。
目標液圧演算ブロックPTにて、制動操作量Baに基づいて、目標液圧Ptが演算される。液圧フィードバック制御ブロックPFにて、目標液圧Ptと実液圧Pwに基づいて、実際値Pwが目標値Ptに一致するよう、液圧フィードバック制御が実行され、液圧通電量Ifが演算される。また、要求通電量演算ブロックIRにて、目標液圧Ptに基づいて、要求通電量Irが演算される。要求液量演算ブロックQRにて、目標液圧Ptに基づいて、要求液量Qrが演算される。なお、要求液量Qrの演算マップは、制動装置(特に、ホイールシリンダWC等)の消費液量に基づいて設定される。
要求回転角演算ブロックMRにて、要求液量Qrに基づいて、要求回転角Mr(「要求回転信号」に相当)が演算される。具体的には、要求回転角Mrは、電気モータMTの応答性、制御精度、円滑作動等を向上するための、電気モータMTの回転角の目標値である。具体的には、要求回転角演算ブロックMRでは、先ず、各車輪の要求液量Qrの全てが加算されて、目標液量Qt(=ΣQr)が演算される。流体ポンプHPの1回転当りの吐出量は予め決まっているため、目標液量Qtは、流体ポンプHPが何回転したかに相関する。従って、要求回転数演算ブロックNRでは、目標液量(目標吐出量)Qtに基づいて、電気モータMTの要求回転角Mrが演算される。
液圧積分値演算ブロックAPにて、制動液圧Pwに基づいて、液圧積分値Apが演算される。具体的には、操作量Baが所定値bo以上になったことをトリガにして、制動液圧Pwが積分される。ここで、「Ba≧bo」が初めて満足された時点(演算周期)が、「時間T=0」に設定される。液圧積分値Apは、時間Tが「0」である時点から生じた内部漏れ全体の体積(単位時間当たりの体積ではないことに注意)に相当する値である。
漏れ補償回転角演算ブロックMMにて、液圧積分値Ap、及び、漏れ補償回転角Mm(「漏れ回転信号」に相当)が演算される。具体的には、演算マップZmmに従って、液圧積分値Apの増加に伴って、漏れ補償回転角Mmが増加するように決定される。漏れ補償回転角Mmは、流体ポンプHPの内部漏れを補償するための、電気モータMTの回転角の目標値である。ここで、演算マップZmmは、上記演算マップZnmと同様に、実験に基づいて設定される。
要求回転角Mr(要求回転信号)に、漏れ補償回転角Mm(内部漏れの相当分である漏れ回転信号)が加算されて、目標回転角Mt(目標回転信号)が演算される。目標回転角Mt(=Mr+Mm)は、電気モータMTの回転角の最終的な目標値である。目標回転角Mtが目標とされて、回転角フィードバック制御が実行される。
回転角フィードバック制御ブロックMFにて、モータ回転角の目標値(目標回転角)Mt、及び、実際値(検出値)Maを制御変数として、電気モータMTの回転角通電量Imが演算される。回転角フィードバック制御ブロックMFでは、目標回転角Mt(目標回転信号)が、実回転角Ma(実回転信号)に比較される。例えば、目標回転角Mtと、実回転角Maとの偏差hMが演算される。回転角偏差hMは、制御変数として、回転角通電量制御ブロックIMに入力される。
回転角通電量制御ブロックIMでは、回転角偏差hMに基づいて、回転角通電量Imが演算される。回転角通電量Imは、電気モータMTの通電量の目標値である。具体的には、回転角偏差hMの増加に従って、回転角通電量Imが「0」から単調増加するように演算される。回転角フィードバック制御ブロックMFでは、目標回転角Mtと実回転角Maとの比較結果hMに基づいて、実回転角Maが目標回転角Mtに一致するよう(即ち、偏差hMが「0」に近づくように補償されて)、所謂、回転角に基づくフィードバック制御(液圧フィードフォワード制御に相当)が実行される。
目標通電量演算ブロックITにて、要求通電量Ir、液圧通電量If、及び、回転角通電量Imに基づいて、目標通電量It(最終目標値)が演算される。目標通電量Itは、要求通電量Ir、液圧通電量If、及び、回転角通電量Imの総和によって演算され、電気モータMTの出力トルクが決定される。スイッチング制御ブロックPHにて、目標通電量Itに基づいて、各スイッチング素子についてパルス幅変調を行うための駆動信号が演算される。駆動回路DRでは、該駆動信号、及び、回転角センサMAの検出値Maに基づいて、電気モータMTが駆動される。
第2の処理例においても、第1の処理例と同様の効果を奏する。液圧偏差hPに基づくフィードバック制御では、制動液圧の応答遅れが生じるため、回転角フィードバック制御(つまり、液圧においてはフィードフォワード制御に相当)によって遅れ補償が達成される。このため、運転者の速い制動操作に対しても、十分な応答性が確保され得る。また、液圧フィードバック制御と、回転角フィードバック制御(液圧フィードフォワード制御に相当)とが制御変数において分離されているため、2つの制御間での相互干渉が抑制され、制動液圧が振動的になることが回避され得る。
加えて、制動液圧Pwに応じた漏れ補償回転角Mmに基づいて、流体ポンプHP/電気モータMTによる調圧精度が向上され得る。更に、要求回転角Mrと漏れ補償回転角Mmとに基づいて、目標回転角Mtが決定され、回転角に係るフィードバック制御が実行されるため、電気モータMTの駆動制御において、制御変数が統一的であり、各種目的の制御が干渉することが抑制され得る。
上記説明では、制動液圧Pwが時間積分されて液圧積分値Apが演算され、該液圧積分値Apに基づいて漏れ補償回転角Mmが演算された。これに代えて、漏れ補償回転数演算ブロックNM(図3を参照)にて、制動液圧Pwに基づいて漏れ補償回転数Nmが演算され、該漏れ補償回転数Nmが時間積分されて、漏れ補償回転角Mmが決定され得る。この場合でも、上記同様の効果を奏する。
<本発明に係る車両の制動制御装置の第2の実施形態>
図5の全体構成図を参照して、本発明に係る制動制御装置BSの第2の実施形態について説明する。上述したように、構成部材、演算処理、信号、特性、及び、値において、同一記号のものは、同一機能を有する。流体ポンプHP/電気モータMTの回転方向において、「正転方向Hf」が、ホイールシリンダWCの液圧(制動液圧)Pwが増加される方向である。一方、「逆転方向Hr」は、ホイールシリンダWCの液圧Pwが減少される方向である。制動液BFの移動において、「増圧方向Hw」は、リザーバRVからホイールシリンダWCに向けた方向であり、「正転方向Hf」に対応する。「減圧方向Hs」は、ホイールシリンダWCからリザーバRVに向けた方向であり、「逆転方向Hr」に対応する。また、各種流体路において、マスタシリンダMC、又は、流体ポンプHPに相対的に近い側が、「上流側」であり、ホイールシリンダWCに相対的に近い側が、「下流側」である。
第1の実施形態では、ホイールシリンダWCの制動液圧Pwの調整が、流体ポンプHP/電気モータMTの回転駆動によって達成された。つまり、第1の実施形態では、液圧Pwを増加するよう、流体ポンプHP/電気モータMTが正転方向Hfに駆動されるとともに、液圧Pwを減少するよう、流体ポンプHP/電気モータMTが逆転方向Hrに駆動された。また、液圧Pwを一定に維持するためには、流体ポンプHPの内部漏れが補償されつつ、流体ポンプHP/電気モータMTが、一定の低速(低い回転数)で、正転方向Hfに駆動された。
一方、第2の実施形態では、制動液圧Pwの増加は、流体ポンプHP/電気モータMTの正転方向Hfへの駆動によって、ホイールシリンダ流体路HWとホイールシリンダWCとで構成される液密な閉回路内の制動液BFの量(体積)が増加されて達成される。一方、制動液圧Pwの減少は、該液密閉回路内の液量の減少が、減圧弁VDを開位置にすることによって行われる。従って、流体ポンプHP/電気モータMTは、逆転方向Hrには駆動されない。以下、相違点を中心に説明する。第2の実施形態に係る制動制御装置BSでは、第1の実施形態の構成部材に加え、逆止弁CV、戻し流体路HR、減圧弁VD、及び、増圧弁VBが設けられる。
逆止弁CV(「チェック弁」ともいう)が、流体ポンプHPの吐出部に設けられる。換言すれば、流体ポンプHPとホイールシリンダWCとの間で、ホイールシリンダ流体路HWに逆止弁CVが介装される。ここで、流体ポンプHPから逆止弁CVまでのホイールシリンダ流体路HWが、「吐出流体路HT」と称呼される。つまり、ホイールシリンダ流体路HWは、吐出流体路HTを含んで構成されている。
逆止弁CVによって、制動液BFは、流体ポンプHPからホイールシリンダWCに向けては(増圧方向Hwには)移動可能であるが、ホイールシリンダWCから流体ポンプHPに向けては(減圧方向Hsには)移動が阻止される。即ち、第2の実施形態では、制動液BFの流れは、常に一方向(増圧方向Hw)に保たれている。つまり、電気モータMTは、正転方向Hfの一方向に限って回転され、正転方向Hfとは反対方向には回転されない。
戻し流体路HRが、リザーバRVとホイールシリンダWCとを接続する流体路として設けられる。即ち、戻し流体路HRは、制動液BFをホイールシリンダWCからリザーバRVに移動させるために設けられる。ここで、ホイールシリンダ流体路HWと戻し流体路HRとが交わる部位が、「減圧接続部Sd」と称呼される。
減圧用リニア電磁弁(単に、「減圧弁」ともいう)VDが、ホイールシリンダWCとリザーバRVとを流体接続する戻し流体路HRの途中に設けられる。減圧弁VDは、開位置(連通状態)と閉位置(遮断状態)とを有するリニア弁(単に、「リニア弁」ともいう)であり、通電状態によって、開位置が連続的(又は、段階的に)に制御される。減圧弁VDは、コントローラECUからの駆動信号によって制御される。ホイールシリンダ流体路HWには、逆止弁CVが介装されているため、制動制御装置BSでは、流体ポンプHP/電気モータMTの逆転駆動によっては、制動液圧Pwは減少されない。このため、戻し流体路HRに配置された減圧弁VDがリニア駆動(開弁量の線形制御)されることによって、制動液圧Pwの減圧調整が実行される。
増圧用リニア電磁弁(単に、「増圧弁」ともいう)VBが、ホイールシリンダWCと逆止弁CVとを流体接続するホイールシリンダ流体路HWの途中に設けられる。増圧弁VBは、開位置(連通状態)と閉位置(遮断状態)とを有するリニア電磁弁である。リニア弁では、開位置が、電磁弁への通電量(電流値)に基づいて、連続的(又は、段階的に)に制御される。増圧弁VBは、コントローラECUからの駆動信号によって制御される。各制動液圧Pwが独立して制御されない場合(所謂、通常制動時)には、ホイールシリンダWCの加圧は、流体ポンプHPによって行われる。しかし、アンチスキッド制御、車両安定性制御等によって、各制動液圧Pwの独立調圧が必要となった場合に、増圧弁VBが利用される。増圧弁VBとして、常開型リニア弁(NO弁)が採用される。
増圧弁VBは、増圧接続部Smの下流側に配置され得る。即ち、常開型の増圧弁VBは、ホイールシリンダ流体路HWにおいて、増圧接続部SmとホイールシリンダWCとの間に介装され得る。非制動時、又は、制動制御装置BSの不調時には、増圧弁VBが開位置(非通電状態)にされる。増圧弁VBは、常開型であり、流体ポンプHPへの制動液BFの移動は逆止弁CVによって遮断されているため、流体ポンプHP/電気モータMTが不調時に、増圧弁VBを介して、人力制動が可能とされる。この場合、ホイールシリンダWCは、マスタシリンダMCによって加圧されるが、増圧弁VBが適正に作用する場合には、必要であれば、アンチスキッド制御が実行され得る。制動時、且つ、制動制御装置BSの適正作動時には、増圧弁VBが開位置(非通電状態)にされ、流体ポンプHPとホイールシリンダWCとは連通状態となり、制御制動が行われる。従って、常開型増圧弁VBが採用される場合には、制動液圧Pwの個別調整(例えば、アンチスキッド制御)が実行される場合に限って、増圧弁VBへの通電が行われる。
以上で説明したように、第2の実施形態では、流体ポンプHP/電気モータMTによって上記閉回路(ホイールシリンダ流体路HW、ホイールシリンダWC)に制動液BFを流入させて加圧が行われる。一方、減圧弁VDによって、閉回路の制動液BFを、閉回路の外側に設けられたリザーバRVに移動させて減圧が行われる。第2の実施形態では、第1の実施形態の構成に対して、逆止弁CV、戻し流体路HR、増圧弁VB、及び、減圧弁VDが追加されるが、これらは、ホイールシリンダ流体路HWにおいて、上流側から、流体ポンプHP、逆止弁CV、増圧接続部Sm、増圧弁VB、減圧接続部Sd、及び、ホイールシリンダWCの順で配置されている。
第2の実施形態では、制動液圧Pwが、減少、又は、保持される場合には、電気モータMTへの供給電力が減少され、省電力化が図られる。例えば、制動液圧Pwが減少される場合には、逆止弁CVによって、制動液BFは、流体ポンプHPを介して、リザーバRVには戻されない。この場合、制動液BFは、電気モータMTへの通電は停止され、減圧弁VDが制御されて、戻し流体路HRを介して、リザーバRVに向けて移動される。つまり、減圧弁VDによって、制動液圧Pwの減少が調整される。
同様に、制動液圧Pwが維持される場合には、電気モータMTへの通電は減少される。電気モータMTの出力トルクが低下しても、制動液BFの減圧方向Hsへの移動(「逆流」という)は、逆止弁CVによって遮断されるため、制動液圧Pwは保持される。このとき、吐出流体路HTの液圧は、制動液圧センサPWによって検出される液圧Pwと一致し、高圧である。制動液BFは、流体ポンプHPの内部漏れによって、吐出流体路HT(流体ポンプHPと逆止弁CVとの間)から吸い込み流体路HSに逆流する。しかし、漏れ補償回転数Nm(又は、漏れ補償回転角Mm)によって、流体ポンプHPの漏れを補償するよう、流体ポンプHP/電気モータMTは、一定の低速度で、滑らかに駆動され続ける。結果、吐出流体路HT内の液圧は、制動液圧Pwに一致するように制御される。
<コントローラECUでの処理例>
図6の制御フロー図を参照して、第2の実施形態に対応したコントローラECUでの演算処理について説明する。該演算処理でも、各制御モードに応じて、電気モータMT、及び、リニア電磁弁VB、VDが制御される。
ステップS210〜ステップS260までの処理は、ステップS110〜ステップS160の処理と同様であるため、簡単に説明する。ステップS210にて、制動操作量Ba、及び、制動液圧Pwが読み込まれる。ステップS220にて、制動操作量Baに基づいて、「制動操作中であるか、否か」が判定される。ステップS220が肯定される場合には、処理は、ステップS230に進む。一方、ステップS220が否定される場合には、処理は、ステップS210に戻される。
ステップS230にて、操作量Baに基づいて、目標液圧Ptが演算される。ステップS240にて、目標液圧Ptと制動液圧Pwとの偏差hPが演算される。ステップS250にて、液圧偏差hPに基づいて、「液圧偏差hPが所定値pz以上であるか、否か」が判定される。ステップS250が肯定される場合には、制御モードとして増圧モードが設定され、処理は、ステップS270に進む。一方、ステップS250が否定される場合には、処理は、ステップS260に進む。ステップS260にて、液圧偏差hPに基づいて、「液圧偏差hPが所定値−pg以上であるか、否か」が判定される。ステップS260が肯定される場合には、制御モードとして保持モードが設定され、処理は、ステップS290に進む。一方、ステップS260が否定される場合には、制御モードとして減圧モードが設定され、処理は、ステップS310に進む。
ステップS270、及び、ステップS280では、増圧モードの処理が実行される。ステップS270にて、目標通電量Itに基づいて、電気モータMTが駆動される。ステップS280にて、常閉型の減圧弁VDが、閉位置のまま、維持される。なお、増圧弁VBは、常開型であるため、通電されず、開位置のままである。増圧モードでは、電気モータMTによって流体ポンプHPが駆動され、制動液BFがホイールシリンダWC内に移動されることによって、制動液圧Pwが増加調整される。
ステップS270の電気モータMTの増圧モード処理は、図3、又は、図4を用いて説明したものと同様である。以下、相違点について説明する。第1の実施形態では、液圧フィードバック制御ブロックPFの液圧通電量演算ブロックIFでは、「hP<−pg」にて、偏差hPが増加するに従って、液圧通電量Ifが増加するように決定されたが、第2の実施形態では、液圧通電量Ifは、「hP<pz」の場合、「0」に演算される。第2の実施形態では、減圧モードが減圧弁VDによって達成されることに因る。
また、第1の実施形態では、要求通電量Irを演算するよう、要求通電量演算ブロックIRが設けられたが、第2の実施形態では、要求通電量演算ブロックIRが省略され得る。これは、制動液圧Pwの保持が、逆止弁CVによって達成されることに因る。要求通電量演算ブロックIRが省略された場合には、目標通電量Itは、液圧通電量Ifに、回転数通電量In(又は、回転角通電量Im)が加算されることによって決定される。
ステップS290、及び、ステップS300では、保持モードの処理が実行される。ステップS290にて、目標通電量Itが、「0」を含む所定値に向けて減少され、電気モータMTへの通電量が減少され、電気モータMTの回転が停止に向かう。ステップS300にて、常閉型の減圧弁VDが、閉位置のまま、常開型の増圧弁VBが、開位置のままに維持される。増圧弁VBは開位置であるが、逆止弁CV、及び、減圧弁VDの閉位置によって、制動液圧Pwは保持される。
ステップS310、及び、ステップS320では、減圧モードの処理が実行される。ステップS310にて、目標通電量Itが、「0」を含む所定値に向けて減少される。保持モードの場合と同様に、電気モータMTへの通電量が減少され、電気モータMTの回転が停止に向かう。ステップS320にて、減圧弁VDがリニア制御されて、その開弁量(リフト量)が制御され、制動液圧Pwが減少調整される。逆止弁CVによって、制動液BFの逆流は防止されているため、この状況でも、増圧弁VBは、開位置の状態が維持にされる。
以上で説明したように、第2の実施形態に係る制動制御装置BSでは、逆止弁CVによって、制動液BFの逆流が防止されるため、通常の制動操作においては、常開型増圧弁VBには通電が行われず、開位置のままにされる。このため、制動制御装置BSの省電力化が図られる。制動制御装置で最も電力が消費されるのは、信号待ち等で、車両の停止状態を維持する状況である。例えば、オートマチックトランスミッションが搭載された車両では、アクセルペダルが操作されていなくても、エンジンのアイドリング状態によって、車両が前進しようとする(所謂、クリープ現象)。従って、車両の停止状態が維持されるためには、車輪WHに制動トルクが付与され続ける必要がある。
制動制御装置BSでは、制動操作中であっても、車両が停止している場合(即ち、車体速度Vxが「0」が満足される場合)には、電気モータMTの駆動処理において、漏れ補償が停止される。車両の停止中には急激な液圧上昇は不要であるため、回転数通電量In(又は、回転角通電量Im)が「0」に演算され(結果、目標通電量Itが「0」に演算され)、電力供給は停止され、電気モータMTの回転駆動されなくなる。これに伴い、吐出流体路HTの液圧は、低下し、最終的には「0」になるが、逆止弁CVによって制動液BFが封じ込められているため、制動液圧Pwは保持される。この状態では、マスタシリンダ電磁弁VM、及び、シミュレータ電磁弁VSに限って通電が行われ、省電力が達成される。なお、制動操作部材BPが踏み込まれて、操作量Baが増加された場合には、電気モータMTへの通電が再開され、制動液圧Pwが増加される。
<減圧用リニア電磁弁VDの駆動処理>
図7の機能ブロック図を参照して、減圧弁VDによる減圧モードでの処理について説明する。減圧モードでは、電気モータMTへの通電は「0」に向けて減少され、制動液BFの逆流は、逆止弁CV(又は、増圧弁VB)にて阻止されている。
減圧弁VD用の駆動信号演算は、維持通電量演算ブロックIH、及び、液圧フィードバック制御ブロックPFにて構成される。ここで、通電量は、電気モータMTの場合と同様に、電磁弁の開弁量(「リフト量」ともいう)を制御するための状態量(状態変数)である。目標通電量(の物理量)として、目標電流、供給電圧、及び、デューティ比の何れかが採用され得る。
維持通電量演算ブロックIHにて、制動液圧Pw、及び、演算マップZihに基づいて、維持通電量Ihが演算される。維持通電量Ihは、制動液圧Pwを維持するための、減圧弁VDへの通電量の目標値である。具体的には、演算マップZihに従って、制動液圧Pwが「0」の場合に、維持通電量Ihが、値ih(減圧弁VDの全開状態に対応)に演算される。制動液圧Pwが「0」から増加するに従って、維持通電量Ihが、値ihから単調減少するように演算される。そして、制動液圧Pwが、値poの場合に、維持通電量Ihが、「0(減圧弁VDの全閉状態に対応)」に決定される。
液圧フィードバック制御ブロックPFでは、電気モータMTの場合と同様に、目標液圧Ptと実液圧Pwとの比較結果(液圧偏差)hPに基づいて、実際値Pwが目標値Ptに一致するよう(即ち、偏差hPが「0」に近づくよう)、所謂、液圧に基づくフィードバック制御が実行される。液圧フィードバック制御ブロックPFでは、先ず、目標液圧Ptと実液圧Pwとの偏差hPが演算される。液圧偏差hPは、制御変数として、減圧通電量演算ブロックICに入力される。
次に、減圧通電量演算ブロックICでは、液圧偏差hP、及び、演算マップZicに基づいて、減圧通電量Icが演算される。減圧通電量Icは、減圧弁VDの通電量の目標値である。具体的には、演算マップZicに従って、液圧偏差hPが所定値−pg(負の値)未満の場合には、液圧偏差hPが小さいほど、減圧通電量Icが大きく演算される。換言すれば、「hP<−pg」では、液圧偏差hPが増加するに従って、減圧通電量Icが減少するように決定される。そして、液圧偏差hPが所定値−pg以上では、減圧通電量Icは、「0」に決定される。ここで、所定値(減圧所定値)−pgは、予め設定された定数である。
維持通電量Ihに、減圧通電量Icが加算されて、要求通電量Idが演算される。要求通電量Id(=Ih+Ic)は、減圧弁VD用の最終的な通電量の目標値である。要求通電量Idの大きさによって、減圧弁VDの開弁量(即ち、制動液圧Pwの減圧量)が決定される。要求通電量Idは、駆動回路DRに入力される。駆動回路DRによって、減圧弁VDが制御され、結果、制動液圧Pwの減圧状態が調整される。
<作用・効果>
本発明に係る制動制御装置BSの作用・効果について説明する。以下では、電気モータMTの回転信号として回転数(回転速度)に係る状態量が採用された場合について述べる。制動制御装置BSのコントローラECUでは、実液圧(検出値)Pwに基づいて流体ポンプHPの内部漏れを補償する漏れ補償回転数(目標値)Nm(漏れ回転信号)が演算される。漏れ回転信号Nmに基づいて、電気モータMTへの通電量を制御する目標通電量Itが演算される。流体ポンプHPの内部漏れと液圧Pwとは相関関係があるため、実際の液圧Pwに基づいて、目標通電量Itが調整されることによって、高精度な漏れ補償が達成される。
また、コントローラECUでは、操作量Baに応じて決定された要求回転数(目標値)Nr(要求回転信号)、及び、漏れ補償回転数(目標値)Nm(漏れ回転信号)に基づいて、目標回転数(最終目標値)Nt(目標回転信号)が演算される。また、実回転角Maに基づいて(例えば、実際の回転数Maが時間微分されて)、実際の回転数(実際値)Na(実回転信号)が決定される。目標回転信号Ntと、実回転信号Naとの偏差hNに基づいて、実回転信号Naが、目標回転信号Ntに一致するよう、目標通電量Itが決定される。
偏差hPに基づく液圧フィードバック制御では、制動操作部材BPが急操作された場合に、液圧Pwの立ち上がり(「0」からの増加)が緩慢となり得る。このため、液圧に係るフィードフォワード制御として、電気モータMTの回転信号が採用される。制動制御装置BSは、特許文献2に示すようなオリフィス効果によって液圧を調整するもの(上記の差圧調整)ではない。制動制御装置BSでは、消費液量が定まったホイールシリンダWC、流体路HW等で構成される閉回路に、流体ポンプHP/電気モータMTによって、閉回路の外部であるリザーバRVから制動液BFを流入させることによって加圧するもの(上記の直接調整)である。或いは、流体ポンプHP/電気モータMTによって、閉回路からその外部(リザーバRV)に制動液BFを排出させることによって減圧するものである。つまり、閉回路内の制動液BFの量(体積)が調整されることによって、液圧Pwが調整される。
上記閉回路への制動液BFの流入量は、非制動時からの流体ポンプHPの総吐出量(つまり、「Ma=0」からの回転変位)であるため、流体ポンプHPの総吐出量と液圧Pwとは相関する。更に、流体ポンプHPの内部漏れの量は、液圧Pwに依存する。以上の点を踏まえて、制動制御装置BSのコントローラECUでは、目標液圧Ptに基づいて、要求回転数Nrが演算されるとともに、制動液圧Pwに基づいて、漏れ補償回転数Nmが演算され、要求回転数Nrと漏れ補償回転数Nmとが合算されて、最終的な目標回転数Ntが決定される。そして、目標回転数Ntと実回転数Naに基づいて、実回転数Naが、目標回転数Ntに一致するよう、回転数に係るフィードバック制御が実行される。液圧に係るフィードフォワード制御が、単なるオープンループ制御ではなく、回転数フィードバック制御であるため、応答性の向上に加え、制御精度の向上が図られる。
また、回転数フィードバック制御には、液圧フィードバック制御の直接の制御対象が含まれない。つまり、液圧フィードバック制御と、回転数フィードバック制御とが制御変数において分離されるため、2つの制御間での相互干渉が抑制され、制動液圧が振動的になることが回避され得る。
更に、応答性向上のための要求回転数Nrと、漏れ補償のための漏れ補償回転数Nmとが、同一の物理量(電気モータMTの回転数)において統合されて、最終的な目標回転数Ntが決定される。回転数に係るフィードバック制御において、目的の異なる複数の制御の干渉が抑制され、円滑な電気モータMTの駆動が行われる。
回転信号の物理量として、「回転数」に代えて、「回転角」が採用され得る。即ち、要求回転数Nr、漏れ補償回転数Nm、目標回転数Nt、及び、実回転数Naが、要求回転角Mr、漏れ補償回転角Mm、目標回転角Mt、及び、実回転角Maに置換される。この場合でも、上記同様の効果を奏する。
<他の実施形態>
以下、他の実施形態について説明する。他の実施形態においても、上記同様の効果を奏する。ここでは、電気モータMTの回転信号として回転数に係る状態量が採用された場合について述べる。回転信号の物理量として、回転角に係る状態量が採用される場合には、要求回転数Nr、漏れ補償回転数Nm、目標回転数Nt、及び、実回転数Naが、要求回転角Mr、漏れ補償回転角Mm、目標回転角Mt、及び、実回転角Maに読み替えられる。
上記実施形態では、ディスク型制動装置(ディスクブレーキ)の構成が例示された。この場合、摩擦部材はブレーキパッドであり、回転部材はブレーキディスクである。ディスク型制動装置に代えて、ドラム型制動装置(ドラムブレーキ)が採用され得る。ドラムブレーキの場合、キャリパに代えて、ブレーキドラムが採用される。また、摩擦部材はブレーキシューであり、回転部材はブレーキドラムである。
上記実施形態では、流体ポンプHPの駆動源として、ブラシレスモータが採用された。電気モータMTとして、ブラシレスモータに代えて、ブラシ付モータ(単に、ブラシモータともいう)が採用され得る。この場合、ブリッジ回路として、4つのスイッチング素子(パワートランジスタ)にて形成されるHブリッジ回路が用いられる。ブラシレスモータの場合と同様に、電気モータMTには、回転角センサMAが設けられ、駆動回路DRには、通電量センサIAが設けられる。
上記実施形態では、車両の走行時、及び、車両の停止時の両方の場合に、流体ポンプHPの漏れ補償が実行された。漏れ補償は、車両が走行している場合に限って実行され得る。即ち、車両が停止している場合には、漏れ補償の実行が停止される。具体的には、車体速度Vxが取得(検出)され、「Vx>vo」では、漏れ補償回転数Nmが、制動液圧Pwに基づいて演算される。一方、「Vx≦vo」では、漏れ補償回転数Nmは、「0」に決定される。ここで、車体速度Vxは、車輪WHに設けられた車輪速度センサVWの検出結果(車輪速度)Vwに基づいて演算される。また、所定速度voは、車両の走行/停止の判定するためのしきい値(定数)であり、「0」を含む値として予め設定されている。
蓄電池BTの電力が、最も消費される状況は、車両の停止状態を維持する場合である。車体速度Vxに基づいて車両の停止状態が判定され、車両が停止していることが判定された場合には、漏れ補償の実行が停止(禁止)される。車両の停止中には、電気モータMTへの通電が停止され、電気モータMTは回転しないため、制動制御装置BSの省電力化が達成され得る。
上述したように、漏れ補償が停止されると、第1の実施形態に係る制動制御装置BSでは、電気モータMTの駆動が間欠的になり、該状況が車両減速度に影響を及ぼすことが懸念される。しかしながら、車両の停止中には、車両減速度の変動は課題とはなり得ないため、「Vx=0」の条件満足された時点で、「Nm=0」が演算され得る。
また、第2の実施形態に係る制動制御装置BSでは、流体ポンプHPの漏れ補償が実行されない場合には、流体ポンプHPの吐出側の液圧(流体ポンプHPと逆止弁CVとの間の液圧)は、内部漏れによって、最終的には、「0」にまで減少する。しかし、車両の停止中には、然程、液圧の応答性は必要とされないため、制動操作部材BPの操作が増加された場合には、電気モータMT自体によって、十分な応答性が確保され得る。
BP…制動操作部材、MC…マスタシリンダ、WC…ホイールシリンダ、MT…電気モータ、HP…流体ポンプ、ECU…コントローラ、BA…操作量センサ、PW…液圧センサ、MA…回転角センサ。


Claims (2)

  1. 車両のリザーバと前記車両のホイールシリンダとの間で、電気モータによって駆動される流体ポンプを介して制動液を移動し、前記ホイールシリンダの前記制動液の制動液圧を調整する車両の制動制御装置であって、
    前記車両の制動操作部材の操作量を検出する操作量センサと、
    前記制動液圧を液圧実際値として検出する液圧センサと、
    前記電気モータの回転角実際値を検出する回転角センサと、
    前記操作量、前記液圧実際値、及び、前記回転角実際値に基づいて演算された目標通電量に応じて前記電気モータを制御するコントローラと、
    を備え、
    前記コントローラは、
    前記液圧実際値に基づいて前記流体ポンプの内部漏れを補償する漏れ回転信号を演算し、
    前記漏れ回転信号に基づいて前記目標通電量を演算するよう構成された、車両の制動制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両の制動制御装置において、
    前記コントローラは、前記操作量に応じて決定された要求回転信号、及び、前記漏れ回転信号に基づいて目標回転信号を演算し、前記回転角実際値に応じて決定された実回転信号と前記目標回転信号との偏差に基づいて前記目標通電量を演算するよう構成された、車両の制動制御装置。
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