JP6895674B2 - マイクロチューブ、マイクロチューブの製造方法、及びマイクロチューブの製造装置 - Google Patents
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Description
また、特許文献2に記載の微小透析プローブでは、予め半透膜内に細胞が封入された形態は開示されていない。
[1]内部に細胞又は水溶性化学物質を含み、最外層に疎水性ポリマーを含む半透膜を備え、前記半透膜の内層がアルギン酸と前記疎水性ポリマーとからなる相互貫入高分子網目構造を有し、且つ、前記半透膜全体に前記疎水性ポリマーが分散して存在しており、内層から最外層にかけて前記アルギン酸の含有量が少なくなるように濃度勾配を形成して存在する構造であって、前記疎水性ポリマーがポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、及び硝酸セルロースからなる群より選ばれる1種以上である、マイクロチューブ。
[2]前記水溶性化学物質が、タンパク質、多糖、核酸、及び薬剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である[1]に記載のマイクロチューブ。
[3]前記疎水性ポリマーがセルロースアセテートである[1]又は[2]に記載のマイクロチューブ。
[4]マイクロチューブの内部に封入する細胞又は水溶性化学物質を含む第1の溶液を送液し、前記第1の溶液にアルギン酸と一価の金属イオンとの塩を含む第2の溶液を送液して合流させ、前記細胞又は前記水溶性化学物質を前記アルギン酸で被覆する工程1と、前記工程1の後に、前記第1の溶液と前記第2の溶液との混合溶液に疎水性ポリマーを含む第3の溶液を送液して合流させ、前記細胞又は前記水溶性化学物質を被覆した前記アルギン酸の表面に前記疎水性ポリマーを析出させて、疎水性ポリマーを含む半透膜の最外層を形成させる工程2と、前記工程2の後に、前記第1の溶液と前記第2の溶液と前記第3の溶液との混合溶液に二価の金属塩を含む第4の溶液を送液して合流させ、前記半透膜の内層に含まれる前記アルギン酸を不溶性ゲルに変化させてマイクロチューブを形成させる工程3と、を備え、前記疎水性ポリマーがポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、及び硝酸セルロースからなる群より選ばれる1種以上である、マイクロチューブの製造方法。
[5]さらに、前記工程3の後に、前記形成されたマイクロチューブにアルギン酸不溶性ゲルの可溶化剤を含む第5の溶液を添加し、前記マイクロチューブに含まれる前記アルギン酸を可溶化させて除去する工程4を備える[4]に記載のマイクロチューブの製造方法。
[6][5]に記載のマイクロチューブの製造方法により得られる、マイクロチューブ。
[7]マイクロチューブの内部に封入する細胞又は水溶性化学物質を含む第1の溶液を送液するための主流路と、前記主流路に接続されており、アルギン酸と一価の金属イオンとの塩を含む第2の溶液を送液するための第1の副流路と、前記第1の副流路よりも後方において前記主流路に接続されており、疎水性ポリマーを含む第3の溶液を送液するための第2の副流路と、前記第2の副流路よりも後方において前記主流路に接続されており、二価の金属塩を含む第4の溶液を送液するための第3の副流路と、を備えるマイクロ流体デバイスを含み、前記疎水性ポリマーがポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、及び硝酸セルロースからなる群より選ばれる1種以上である、マイクロチューブの製造装置。
[8]前記マイクロ流体デバイスが、さらに、前記第3の副流路よりも後方において前記主流路に接続されており、アルギン酸不溶性ゲルの可溶化剤を含む第5の溶液を送液するための第4の副流路を備える[7]に記載のマイクロチューブの製造装置。
一実施形態において、本発明は、内部に細胞又は水溶性化学物質を含み、最外層に疎水性ポリマーを含む半透膜を備えるマイクロチューブを提供する。
また、本実施形態のマイクロチューブにおいて、内部にグルコース結合タンパク質、又は酵素を含み、生体内に移植した場合、半透膜は前記グルコース結合タンパク質、又は酵素を通さず、グルコース等の基質を通すため、血糖値センサ、又は酵素センサに適用することができる。
また、本実施形態のマイクロチューブにおいて、内部に膵島細胞を含み、糖尿病患者の生体内に移植した場合、半透膜は膵島細胞を通さず、一方、前記膵島細胞から分泌されるインスリンを通すため、血糖値の上昇を抑えることができる。すなわち、糖尿病の治療に適用することができる。
また、本実施形態のマイクロチューブにおいて、各種疾患由来の細胞又は正常細胞を含むことで、例えば、疾患に対する薬剤のスクリーニング、薬剤の代謝物の確認、及び薬剤又はその代謝物の細胞毒性の確認等のインビトロ試験系に適用することができる。
次に、本実施形態のマイクロチューブの構成成分について、以下に詳細に説明する。
本実施形態のマイクロチューブは、最外層に疎水性ポリマーを含む半透膜を備える。
本明細書において、「半透膜」とは、一定の大きさ以下の分子又はイオンのみを透過させる膜を意味する。
前記半透膜において、半透膜の構成材料の配合比を適宜調整することで、透過可能な分子又はイオンの大きさを調整することができる。透過可能な分子又はイオンの大きさとしては、例えば1kDa以下であればよい。
また、半透膜は、使用時に破れる虞がなく、実用上大変優れるものである。特に医療用装置に用いる場合、半透膜の強度は、移植操作に耐え得る強度を有する。
半透膜の最外層に含まれる疎水性ポリマーとしては、特別な限定はなく、本実施形態のマイクロチューブを生体内に移植する場合、前記疎水性ポリマーは生体適合性を有するものであることが好ましい。
本明細書において、「生体適合性」とは、生体組織と材料との適合性を示す評価基準を意味し、「生体適合性を有する」とは、材料それ自体が毒性を有さず、内毒素等の微生物由来の成分を有さず、生体組織を物理的に刺激することなく、生体組織を構成するタンパク質や細胞等と相互作用しても拒絶されない状態を意味する。
半透膜における疎水性ポリマーの含有量が上記範囲であることにより、細胞又は水溶性化学物質を封入し、保持することが可能な強度とすることができる。
なお、「マイクロチューブの単位長さ1cmあたりの重量」とは、マイクロチューブの厚さを任意として、内径が上記範囲であるマイクロチューブ1cmあたりに含有される成分の重量を指す。
例えば、セルロースアセテートの場合、以下の方法を用いて合成することができる。
セルロースに酢酸、無水酢酸、及び濃硫酸を添加し、セルロース中の水酸基をアセチル化することで製造できる。
また、半透膜の内層は、アルギン酸からなっていてもよく、又はアルギン酸と前記疎水性ポリマーとからなる相互貫入高分子網目構造を有していてもよい。
すなわち、半透膜は、アルギン酸からなる内層と、疎水性ポリマーを含む最外層とからなる多層構造であってもよく、又は半透膜全体に疎水性ポリマーが分散して存在しており、内層から最外層にかけてアルギン酸の含有量が少なくなるように濃度勾配を形成して存在する構造であってもよい。
一般的に、「相互貫入高分子網目構造」とは、異種の架橋高分子が部分的又は全体的に相互に絡み合って形成された多重網目構造を意味する。
例えば、半透膜の内層がアルギン酸からなる、又はアルギン酸と前記疎水性ポリマーとが相互貫入高分子網目構造を形成しているマイクロチューブであって、薬剤等の水溶性化学物質が含むマイクロチューブを生体内に移植した場合、血液等の生体内に含まれるクエン酸により、半透膜に含まれるアルギン酸が徐々に可溶化する。経時的なアルギン酸の溶解に伴い、半透膜の分画分子量が変化(上昇)し、内部に含まれる水溶性化学物質が徐々に放出される。すなわち、本実施形態のマイクロチューブは、徐放性製剤として使用することができる。
本実施形態のマイクロチューブの内部に含まれる細胞としては、特別な限定はなく、用途に応じて、適宜選択することができる。
また、本明細書において、「癌」とは、診断名を表す際に用いられ、「がん」とは、悪性新生物の総称を表す際に用いられる。
本実施形態のマイクロチューブの内部に含まれる水溶性化学物質としては、特別な限定はなく、例えば、タンパク質(例えば、抗体、酵素等)、多糖、核酸、薬剤等が挙げられる。
前記酵素としては、市販のものを用いてもよく、当該酵素をコードする核酸を含む発現ベクターを用いて生成してもよい。
一実施形態において、本発明は、マイクロチューブの内部に封入する細胞又は水溶性化学物質を含む第1の溶液を送液し、前記第1の溶液にアルギン酸と一価の金属イオンとの塩を含む第2の溶液を送液して合流させ、前記細胞又は前記水溶性化学物質を前記アルギン酸で被覆する工程1と、前記工程1の後に、前記第1の溶液と前記第2の溶液との混合溶液に疎水性ポリマーを含む第3の溶液を送液して合流させ、前記細胞又は前記水溶性化学物質を被覆した前記アルギン酸の表面に前記疎水性ポリマーを析出させて、疎水性ポリマーを含む半透膜の最外層を形成させる工程2と、前記工程2の後に、前記第1の溶液と前記第2の溶液と前記第3の溶液との混合溶液に二価の金属塩を含む第4の溶液を送液して合流させ、前記半透膜の内層に含まれる前記アルギン酸を不溶性ゲルに変化させてマイクロチューブを形成させる工程3と、を備えるマイクロチューブの製造方法を提供する。
本実施形態の製造方法の各工程について、以下に詳細を説明する。
まず、細胞又は水溶性化学物質を含む第1の溶液を送液する。次いで、アルギン酸と一価の金属イオンとの塩を含む第2の溶液を送液し、第1の溶液に合流させる。
このとき、第1の溶液に含まれる細胞又は水溶性化学物質は、第2の溶液に含まれるアルギン酸で被覆される。
第1の溶液の流速は、1μL/分以上100μL/分以下であることが好ましく、5μL以上50μL以下であることがより好ましく、20μL/分以上30μL/分以下であることがさらに好ましい。
また、第2の溶液の流速は、3μL/分以上300μL/分以下であることが好ましく、15μL以上150μL以下であることがより好ましく、60μL/分以上90μL/分以下であることがさらに好ましい。
第1の溶液の流速に対する第2の溶液の流速が約3倍程度の速さであり、第1の溶液及び第2の溶液の流速が上記範囲であることにより、万遍なく細胞又は水溶性化学物質をアルギン酸で被覆することができる。
以下に、第1の溶液及び第2の溶液の構成成分について詳細に説明する。
第1の溶液に含まれる細胞又は水溶性化学物質としては、上述の<マイクロチューブ>の[細胞]又は[水溶性化学物質]に例示されたものと同様のものが挙げられる。
細胞を含む場合、第1の溶液は、細胞培養用の培地を含むことが好ましい。
前記培地としては、細胞の生存増殖に必要な成分(無機塩、炭水化物、ホルモン、必須アミノ酸、非必須アミノ酸、ビタミン)等を含む基本培地であればよい。
前記培地としては、例えば、DMEM、Minimum Essential Medium(MEM)、RPMI−1640、Basal Medium Eagle(BME)、Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium:Nutrient Mixture F−12(DMEM/F−12)、Glasgow Minimum Essential Medium(Glasgow MEM)等が挙げられ、これらに限定されない。
前記血清としては、例えば、FBS/FCS(Fetal Bovine/Calf Serum)、NCS(Newborn Calf serum)、CS(Calf Serum)、HS(Horse Serum)等が挙げられ、これらに限定されない。
培地に含まれる血清の濃度は、例えば2質量%以上10質量%以下であればよい。
前記成長因子としてより具体的には、例えば、上皮成長因子(Epidermal growth factor:EGF)、酸性繊維芽細胞成長因子(acidic fibroblast growth factor:aFGF)、塩基性繊維芽細胞成長因子(basic fibroblast growth factor:bFGF)、インスリン様成長因子−1(Insulin―like growth factor−1:IGF−1)、マクロファージ由来成長因子(Macrophage−derived growth factor:MDGF)、血小板由来成長因子(Platelet−derived growth factor:PDGF)、腫瘍血管新生因子(Tumor angiogenesis factor:TAF)等が挙げられる。これらの成長因子を単独で含んでいてもよく、複数組み合わせて含んでいてもよい。
培地に含まれる成長因子の濃度は、特別な限定はなく、例えば1ng/mL以上10μg/mL以下であればよい。
培地に含まれるホルモンの濃度は、特別な限定はなく、例えば1ng/mL以上10μg/mL以下であればよい。
培地に含まれる抗生物質の濃度は、特別な限定はなく、例えば0.1μg/mL以上100μg/mL以下であればよい。
また、水溶性化学物質を含む第1の溶液を用いる場合、当該水溶性化学物質の活性を保持可能な水系溶媒を用いることが好ましい。前記水系溶媒としては、例えば、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、クエン酸緩衝液、炭酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、コハク酸緩衝液、酢酸緩衝液等の当該分野において公知の緩衝液等が挙げられる。
前記緩衝液は、必要に応じて、NaCl、界面活性剤(例えば、Tween 20、Triton X−100等)、又は防腐剤(例えば、アジ化ナトリウム等)を含んでいてもよい。
緩衝液の具体例としては、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(Phosphate buffered saline;PBS)、PBS−T(PBS−Tween 20)、トリス緩衝生理食塩水(Tris Buffered Saline;TBS)、TBS−T(TBS−Tween 20)等が挙げられ、これらに限定されない。
第1の溶液に含まれるアルギン酸としては、上述の<マイクロチューブ>の[半透膜]の(アルギン酸)に例示されたものと同様のものが挙げられる。
また、アルギン酸と塩を形成する一価の金属イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、これらに限定されない。
アルギン酸と一価の金属イオンとの塩は、水に良く溶解し、粘性の液となる。
アルギン酸と一価の金属イオンとの塩を溶解する溶媒としては、例えば、水等が挙げられる。
次いで、疎水性ポリマーを含む第3の溶液を送液し、第1の溶液及び第2の溶液の混合溶液に合流させる。
このとき、細胞又は水溶性化学物質を被覆したアルギン酸の表面に、第2の溶液に含まれる疎水性ポリマーが析出し、半透膜の最外層が形成される。
第3の溶液の流速は、1μL/分以上100μL/分以下であることが好ましく、5μL以上50μL以下であることがより好ましく、20μL/分以上30μL/分以下であることがさらに好ましい。
第3の溶液の流速が上記範囲であることにより、適当な厚みを有する半透膜の最外層を形成することができる。
第3の溶液に含まれる疎水性ポリマーとしては、上述の<マイクロチューブ>の[半透膜]の(疎水性ポリマー)に例示されたものと同様のものが挙げられる。
疎水性ポリマーを溶解する溶媒としては、細胞の生存又は水溶性化学物質の活性に影響を与えず、アルギン酸と反応しない有機溶媒を用いればよい。前記有機溶媒としては、例えばアセトン、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran;THF)、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド(N,N−dimethylformamide;DMF)、ジメチルスルホキシド(dimethyl sulfoxide;DMSO)等の極性非プロトン性の有機溶媒;酢酸、ギ酸、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール等)等の極性プロトン性の有機溶媒等が挙げられ、これらに限定されない。
次いで、二価の金属塩を含む第4の溶液を送液し、第1の溶液、第2の溶液、及び第3の溶液の混合溶液に合流させる。
このとき、半透膜の内層に含まれるアルギン酸と第4の溶液に含まれる二価の金属イオンとが塩を形成して不溶性ゲルに変化することで、マイクロチューブが形成される。
第4の溶液の流速は、1.0mL/分以上10mL/分以下であることが好ましく、1.5mL以上8.5mL以下であることがより好ましく、2.0mL/分以上5.0mL/分以下であることがさらに好ましい。
第4の溶液の流速が上記範囲であることにより、半透膜に含まれるアルギン酸を万遍なく不溶性ゲルに変化させて、本実施形態のマイクロチューブを製造することができる。
また、マイクロチューブの長さは、製造時間を適宜調節することで、所望の長さとすることができる。又は、連続的に製造した後に、適宜必要な長さに切断して用いてもよい。
第4の溶液に含まれる二価の金属塩としては、特別な限定はなく、例えば、塩化バリウム、フッ化バリウム、臭化バリウム、水酸化バリウム、炭酸バリウム、リン酸バリウム等のバリウム塩;塩化カルシウム、フッ化カルシウム、臭化カルシウム、過酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム等のカルシウム塩;塩化マグネシウム、フッ化マグネシウム、臭化マグネシウム、過酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、リン酸マグネシウム等のマグネシウム塩等が挙げられ、これらに限定されない。
二価の金属塩を溶解する溶媒としては、例えば、水等が挙げられる。
本実施形態の製造方法において、さらに、工程3の後に、以下に示す工程4を備えていてもよい。
工程3の後に、形成されたマイクロチューブにアルギン酸不溶性ゲルの可溶化剤を含む第5の溶液を添加する。
このとき、前記可溶化剤により、アルギン酸と塩を形成していた二価の金属イオンが取り除かれる、又はアルギン酸自体が分解されることで、形成されたマイクロチューブ内に含まれるアルギン酸不溶性ゲルが可溶化し、除去することができる。
第5の溶液に含まれるアルギン酸不溶性ゲルの可溶化剤としては、アルギン酸と塩を形成していた二価の金属イオンが取り除く、又はアルギン酸自体を分解するものであればよく、例えば、クエン酸、エチレンジアミン(Ethylenediamine)、エチレンジアミン四酢酸(Ethylene Diamine Tetraacetic Acid;EDTA)、ニトリロ三酢酸(Nitrilo Triacetic Acid;NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(Diethylene Triamine Pentaacetic Acid;DTPA)、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン−N,N’,N’−三酢酸(Hydroxyethyl Ethylene Diamine Triacetic Acid;HEDTA)、グリコールエーテルジアミン四酢酸(Glycol Ether Diamine Tetraacetic Acid;GEDTA、EGTA)、トリエチレンテトラミン−N,N,N’,N’ ’,N’ ’ ’,N’ ’ ’−六酢酸(Triethylene Tetramine Hexaacetic Acid;TTHA)、N−(2−ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸(Hydroxyethyl Imino Diacetic Acid;HIDA)、N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)グリシン(Dihydroxyethyl Glycine;DHEG)等のキレート剤;アルギン酸リアーゼ等の酵素等が挙げられ、これらに限定されない。
また、前記クエン酸は、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム等のクエン酸塩の形であってもよい。
また、第5の溶液は、比重を大きくするために、例えば、スクロース、ラクトース、マルトース等の二糖類;フラクトオリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、マンナンオリゴ糖等のオリゴ糖;ペクチン、グアーガム、キサンタンガム、カラギナン等の増粘多糖類等を含んでいてもよい。
また、第5の溶液に含まれるアルギン酸不溶性ゲルの可溶化剤がEDTAである場合、該EDTAの濃度としては、例えば0.5mM以上100mM以下であればよい。
また、第5の溶液に含まれるアルギン酸不溶性ゲルの可溶化剤がアルギン酸リアーゼである場合、該アルギン酸リアーゼの濃度としては、例えば0.04mg/mL以上400mg/mL以下であればよい。
一実施形態において、本発明は、マイクロチューブの内部に封入する細胞又は水溶性化学物質を含む第1の溶液を送液するための主流路と、前記主流路に接続されており、アルギン酸と一価の金属イオンとの塩を含む第2の溶液を送液するための第1の副流路と、前記第1の副流路よりも後方において前記主流路に接続されており、疎水性ポリマーを含む第3の溶液を送液するための第2の副流路と、前記第2の副流路よりも後方において前記主流路に接続されており、二価の金属塩を含む第4の溶液を送液するための第3の副流路と、を備えるマイクロ流体デバイスを含むマイクロチューブの製造装置を提供する。
図1(A)は本実施形態のマイクロチューブの製造装置の一実施形態を模式的に示す断面図である。
ここに示すマイクロチューブの製造装置1Aは、内部に封入する水溶性化学物質を含む第1の溶液(1)を送液するための主流路1と、前記主流路1に接続されており、アルギン酸と一価の金属イオンとの塩を含む第2の溶液(2)を送液するための第1の副流路2aと、前記第1の副流路2aよりも後方において前記主流路1に接続されており、疎水性ポリマーを含む第3の溶液(3)を送液するための第2の副流路2bと、前記第2の副流路2bよりも後方において前記主流路1に接続されており、二価の金属塩を含む第4の溶液(4)を送液するための第3の副流路2cと、を備えるマイクロ流体デバイス10を含む。
マイクロチューブの製造装置1Aは、換言すると、主流路1に3つの副流路が接続された構成を有する。
また、各副流路の内部径は、例えば100μm以上1000μm以下であればよく、各副流路の長さは、例えば200μm以上800μm以下であればよい。
また、例えば、図1(A)及び図1(B)に示すマイクロチューブの製造装置においては、前記ポンプ及び/又は弁を制御し、各溶液の流速が上述の<マイクロチューブの製造方法>において記載の範囲となるように調節する制御装置を備えていてもよい。
また、例えば、図1(A)及び図1(B)に示すマイクロチューブの製造装置においては、主流路の出口に、形成されたマイクロチューブの貯留用容器を備えていてもよい。
また、例えば、図1(A)に示すマイクロチューブの製造装置においては、前記貯留用容器に前記第5の溶液を予め添加しておき、マイクロチューブに含まれるアルギン酸を除去してもよい。
本実施形態のマイクロチューブは、例えば、各種センサ、細胞製剤、徐放性製剤等に使用できる。
具体的には、マイクロチューブ内部にグルコース結合タンパク質を封入し、生体内に移植することで、生体内のグルコースと結合し、血糖値センサとして使用できる。
また、マイクロチューブ内部に各種酵素を封入し、生体内に移植することで、生体内の基質と反応し、酵素センサとして使用できる。
また、マイクロチューブ内部に膵島細胞を封入し、生体内に投与することで、膵島細胞が生体内にインスリンを分泌し、糖尿病患者の治療に用いる細胞製剤として使用できる。
また、アルギン酸を含むマイクロチューブ内部に薬剤を封入し、生体内に投与することで、生体内のクエン酸によりアルギン酸が経時的に除去されて薬剤が徐々に放出されるため、徐放性製剤として使用できる。
また、マイクロチューブ内部に各種疾患由来の細胞又は正常細胞を封入することで、例えば、疾患に対する薬剤のスクリーニング、薬剤の代謝物の確認、及び薬剤又はその代謝物の細胞毒性の確認等のインビトロ試験系として使用できる。
(1)各種溶液の調製
0.1質量%Fluorescein isothiocyanate−dextran(分子量:15万、励起波長:494nm、蛍光波長:520nm)(以下、「FITC−dex」と称する場合がある。)溶液、1.5質量%アルギン酸ナトリウム溶液、0.1質量%セルロースアセテート含有アセトン溶液、100mM塩化カルシウム溶液、3質量%スクロース溶液、及び55mMクエン酸溶液を調製した。
また、100mM塩化カルシウム溶液と3質量%スクロース溶液とを予め混合しておいた。
図1(A)に示すマイクロチューブの製造装置1Aを用いて、マイクロチューブを製造した。
まず、FITC−dex溶液を主流路1に流速25μL/分で送液した。次いで、副流路2aから1.5質量%アルギン酸ナトリウム溶液を流速75μL/分で送液した。次いで、副流路2bから0.1質量%セルロースアセテート含有アセトン溶液を流速25μL/分で送液した。最後に、副流路2cから100mM塩化カルシウム溶液及び3質量%スクロース溶液の混合溶液を流速.6mL/分で送液し、マイクロチューブを製造した。
製造されたマイクロチューブについて位相差顕微鏡を用いて観察した画像を図2(A)、蛍光顕微鏡(励起光:494nm)を用いて観察した画像を図2(C)に示す。
次いで、製造されたマイクロチューブのうち一部に55mMクエン酸溶液を添加し、室温で5分間静置した。クエン酸溶液添加から0、1、3、及び5分後のマイクロチューブについて位相差顕微鏡を用いて観察した画像を図3に示す。
また、クエン酸溶液を添加しアルギン酸を除去したマイクロチューブについて位相差顕微鏡を用いて観察した画像を図2(B)、蛍光顕微鏡を用いて観察した画像を図2(D)に示す。
また、図3から、クエン酸溶液を添加後から時間が経過しても、マイクロチューブの全体の構造は変化しないが、チューブの屈折率が変化していることが確かめられた。
また、図2(B)及び(D)から、マイクロチューブの全体の構造は変化せず、保持されており、さらにチューブ内部にFITC−dexが封入されたままの状態で保持されていることが確かめられた。
(1)各種溶液の調製
さらに、0.1質量%Hoechst(分子量:533.88、励起波長:352nm、蛍光波長:461nm)溶液を調製した以外は、実施例1の(1)と同様に各種溶液を調製した。また、0.1質量%FITC−dex溶液、及び0.1質量%Hoechst溶液を予め混合した。
次いで、0.1質量%FITC−dex溶液と0.1質量%Hoechst溶液との混合溶液を流速25μL/分で主流路に送液した以外は、実施例1の(2)と同様の方法を用いて、マイクロチューブを製造した。
次いで、製造されたマイクロチューブに55mMクエン酸溶液を添加し、室温で10分間静置した。クエン酸溶液添加から0及び10分後のマイクロチューブについて位相差顕微鏡を用いて観察した画像を図4(A)及び(D)に示す。
また、クエン酸溶液添加から0及び10分後のマイクロチューブについて蛍光顕微鏡(励起光:494nm)を用いて観察した画像を図4(B)及び(E)、蛍光顕微鏡(励起光:352nm)を用いて観察した画像を図4(C)及び(F)に示す。
このことから、FITC−dexは透過せず、Hoechstを透過するため、マイクロチューブは半透膜性を有することが示唆された。また、クエン酸の添加により、半透膜性を経時的に変化させることができることが示唆された。
(1)各種溶液の調製
さらに、0.5質量%及び1.0質量%セルロースアセテート含有アセトン溶液を調製した以外は実施例2の(1)と同様に各種溶液を調製した。
次いで、0.1質量%FITC−dex溶液と0.1質量%Hoechst溶液との混合溶液を流速25μL/分で主流路に送液し、さらに0.1質量%、0.5質量%、及び1.0質量%セルロースアセテート含有アセトン溶液をそれぞれ25μL/分で送液して3種類のマイクロチューブを製造した以外は、実施例1の(2)と同様の方法を用いて、マイクロチューブを製造した。
次いで、製造されたマイクロチューブに55mMクエン酸溶液を添加し、室温で10分間静置した。クエン酸溶液添加から10分後の0.5質量%及び1質量%セルロースアセテート含有アセトン溶液を用いたマイクロチューブについて、位相差顕微鏡を用いて観察した画像を図5(A)及び(D)に示す。
また、クエン酸溶液添加から10分後の0.5質量%及び1.0質量%セルロースアセテート含有アセトン溶液を用いたマイクロチューブについて蛍光顕微鏡(励起光:494nm)を用いて観察した画像を図4(B)及び(E)、蛍光顕微鏡(励起光:352nm)を用いて観察した画像を図4(C)及び(F)に示す。
一方、1.0質量%セルロースアセテート含有アセトン溶液を用いたマイクロチューブでは、FITC−dex及びHoechstいずれもチューブ内部に保持されていた。
このことから、セルロースアセテート濃度を適宜調整することで、チューブの半透膜性を調整できることが示唆された。
(1)各種溶液の調製
さらに、1.0質量%カタラーゼ溶液を調製した以外は実施例1の(1)と同様に各種溶液を調製した。また、0.1質量%FITC−dex溶液、及び1.0質量%カタラーゼ溶液を予め混合した。
次いで、0.1質量%FITC−dex溶液と1.0質量%カタラーゼ溶液との混合溶液を流速25μL/分で主流路に送液した以外は、実施例1の(2)と同様の方法を用いて、マイクロチューブを製造した。
次いで、製造されたマイクロチューブを200μM過酸化水素溶液に浸漬した。200μM過酸化水素溶液に浸漬したマイクロチューブについて、位相差顕微鏡を用いて観察した画像を図6(B)、蛍光顕微鏡を用いて観察した画像を図6(C)に示す。
このことから、チューブ内部のカタラーゼの活性は保たれており、図6(A)に示すように、過酸化水素がマイクロチューブ内に透過することで、カタラーゼにより過酸化水素が水と酸素とに分解され、酸素の気泡が生成されると推察された。
(1)各種溶液の調製
さらに、0.1質量%FITC−dex溶液の代わりに、1×105個/mLヒト皮膚線維芽細胞の懸濁液を調製した以外は実施例1の(1)と同様に各種溶液を調製した。
次いで、0.1質量%FITC−dex溶液の代わりに、1×105個/mLヒト皮膚線維芽細胞の懸濁液を流速25μL/分で主流路に送液した以外は、実施例1の(2)と同様の方法を用いて、マイクロチューブを製造した。
次いで、製造されたマイクロチューブに55mMクエン酸溶液を添加し、室温で10分間静置した。クエン酸溶液添加から0及び10分後のマイクロチューブの一部をLive/Dead Cell Staining Kit II(Thermo Fisher社製)(4mMカルセイン−AM:生細胞が持つ細胞内エステラーゼにより加水分解され緑色を発光、エチジウムホモダイマーIII:死細胞の核内DNAに入り込んで赤色を発光)を用いて、染色した。次いで、位相差顕微鏡、蛍光顕微鏡(励起光:490nm及び545nm)を用いて観察した画像を図7及び図8に示す。
図7及び図8において、左上は蛍光顕微鏡(励起光:490nm)を用いて観察した画像であり、右上は位相差顕微鏡を用いて観察した画像であり、左下は生細胞の緑色の蛍光のみ抜き出した画像であり、右下は蛍光顕微鏡(励起光:545nm)を用いて死細胞の赤色の蛍光を観察した画像である。
次いで、クエン酸溶液処理後のマイクロチューブについて10%ウシ胎児血清含有ダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco‘s Modified Eagle’s Medium;DMEM)を用いて1日培養した。培養後のマイクロチューブの一部をLive/Dead Cell Staining Kit II(Thermo Fisher社製)を用いて、染色した。次いで、位相差顕微鏡、蛍光顕微鏡(励起光:490nm及び545nm)を用いて観察した画像を図9に示す。
図9において、左上は蛍光顕微鏡(励起光:490nm)を用いて観察した画像であり、右上は位相差顕微鏡を用いて観察した画像であり、左下は生細胞の緑色の蛍光のみ抜き出した画像であり、右下は蛍光顕微鏡(励起光:545nm)を用いて死細胞の赤色の蛍光を観察した画像である。
このことから、細胞を生きたままマイクロチューブに封入し、保持できることが示された。
また、本発明のマイクロチューブにおいて、内部にグルコース結合タンパク質、又は酵素を封入し、生体内に移植した場合、半透膜は前記グルコース結合タンパク質、又は酵素を通さず、グルコース等の基質を通すため、血糖値センサ、又は酵素センサに適用することができる。
また、本発明のマイクロチューブにおいて、内部に膵島細胞を封入し、糖尿病患者の生体内に移植した場合、半透膜は膵島細胞を通さず、一方、前記膵島細胞から分泌されるインスリンを通すため、血糖値の上昇を抑えることができる。すなわち、糖尿病の治療に適用することができる。
また、本発明のマイクロチューブにおいて、各種疾患由来の細胞又は正常細胞を封入することで、例えば、疾患に対する薬剤のスクリーニング、薬剤の代謝物の確認、及び薬剤又はその代謝物の細胞毒性の確認等のインビトロ試験系に適用することができる。
Claims (8)
- 内部に細胞又は水溶性化学物質を含み、最外層に疎水性ポリマーを含む半透膜を備え、
前記半透膜の内層がアルギン酸と前記疎水性ポリマーとからなる相互貫入高分子網目構造を有し、且つ、前記半透膜全体に前記疎水性ポリマーが分散して存在しており、内層から最外層にかけて前記アルギン酸の含有量が少なくなるように濃度勾配を形成して存在する構造であって、
前記疎水性ポリマーがポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、及び硝酸セルロースからなる群より選ばれる1種以上である、マイクロチューブ。 - 前記水溶性化学物質が、タンパク質、多糖、核酸、及び薬剤からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載のマイクロチューブ。
- 前記疎水性ポリマーがセルロースアセテートである請求項1又は2に記載のマイクロチューブ。
- マイクロチューブの内部に封入する細胞又は水溶性化学物質を含む第1の溶液を送液し、前記第1の溶液にアルギン酸と一価の金属イオンとの塩を含む第2の溶液を送液して合流させ、前記細胞又は前記水溶性化学物質を前記アルギン酸で被覆する工程1と、
前記工程1の後に、前記第1の溶液と前記第2の溶液との混合溶液に疎水性ポリマーを含む第3の溶液を送液して合流させ、前記細胞又は前記水溶性化学物質を被覆した前記アルギン酸の表面に前記疎水性ポリマーを析出させて、疎水性ポリマーを含む半透膜の最外層を形成させる工程2と、
前記工程2の後に、前記第1の溶液と前記第2の溶液と前記第3の溶液との混合溶液に二価の金属塩を含む第4の溶液を送液して合流させ、前記半透膜の内層に含まれる前記アルギン酸を不溶性ゲルに変化させてマイクロチューブを形成させる工程3と、
を備え、
前記疎水性ポリマーがポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、及び硝酸セルロースからなる群より選ばれる1種以上である、マイクロチューブの製造方法。 - さらに、前記工程3の後に、前記形成されたマイクロチューブにアルギン酸不溶性ゲルの可溶化剤を含む第5の溶液を添加し、前記マイクロチューブに含まれる前記アルギン酸を可溶化させて除去する工程4を備える請求項4に記載のマイクロチューブの製造方法。
- 請求項5に記載のマイクロチューブの製造方法により得られる、マイクロチューブ。
- マイクロチューブの内部に封入する細胞又は水溶性化学物質を含む第1の溶液を送液するための主流路と、
前記主流路に接続されており、アルギン酸と一価の金属イオンとの塩を含む第2の溶液を送液するための第1の副流路と、
前記第1の副流路よりも後方において前記主流路に接続されており、疎水性ポリマーを含む第3の溶液を送液するための第2の副流路と、
前記第2の副流路よりも後方において前記主流路に接続されており、二価の金属塩を含む第4の溶液を送液するための第3の副流路と、
を備えるマイクロ流体デバイスを含み、
前記疎水性ポリマーがポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、セルロースアセテート、及び硝酸セルロースからなる群より選ばれる1種以上である、マイクロチューブの製造装置。 - 前記マイクロ流体デバイスが、さらに、前記第3の副流路よりも後方において前記主流路に接続されており、アルギン酸不溶性ゲルの可溶化剤を含む第5の溶液を送液するための第4の副流路を備える請求項7に記載のマイクロチューブの製造装置。
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