第1の発明は、開口部を有する有底円筒状に形成され、前記開口部に円環形状に形成されたバランサ装置が配設された、衣類等の洗濯物を収容する回転槽と、前記回転槽を回転可能に内包する外槽と、前記外槽に配設され前記回転槽を回転駆動する駆動部と、前記外槽を防振支持する防振装置とを備え、前記バランサ装置は、中空円環形状に形成された外郭と、前記外郭内を前記回転槽の半径方向に複数の層に分割する少なくとも一つの円環状の壁部と、前記壁部によって分割された複数の層内に封入された流体とを有し、前記外郭と前記壁部とは別体で構成されるとともに、前記複数の層間の前記流体に対する水密性が保たれるように構成された脱水機である。
この構成によって、バランサ装置を一体成型でなく複数部品で製作でき、かつ、多層構造を実現できる。バランサ装置を複数部品で製作することで、従来に比べバランサ装置の各壁面形状を簡素化でき、内部構造の薄肉化を図ることができる。これによって、バランサ装置内に充填可能な流体量を増やすことができ、バランサ装置のアンバランス補正力の向上が図れる。また、水密性が確保される構成であるため、バランサ装置が複数の層に分割構成されていても、各層間の流体の移動を防止できる。
以上のように、本発明の脱水機は、バランサ装置のアンバランス補正力が維持されバランサ装置の信頼性向上が図れる。したがって、多層構造のバランサ装置を有しながらも、バランサ装置の各層間の水密性を維持しつつ、脱水振動を抑制させた脱水機を提供することができる。
また、圧環強度を低下させることなくバランサ装置の薄型化を図れるため、回転槽の開
口部を大きくすることができ、回転槽への洗濯物の出し入れの利便性を向上させた脱水機を提供することができる。
さらに、前記バランサ装置の前記壁部と前記外郭との間に、前記複数の層間の前記流体に対する水密性を保つ円環形状の防水部材が設けられたものである。この構成によって、複数部品で多層構造のバランサ装置を実現しながらも、高遠心力の作用により、流体が内周側の層から外周側の層へと移動してしまうことを防止できる。バランサ装置を水密性が確保された多層構造とすることができるため、アンバランス補正力を維持でき、バランサ装置の性能の信頼性を向上させることができる。
第2の発明は、特に、第1の発明において、前記バランサ装置の前記外郭と前記壁部とは、互いに異なる材料で構成されたものである。この構成によって、バランサ装置の外郭とバランサ装置内部の壁部のそれぞれに適正な材料を選定できる。そのため、従来の樹脂で一体成型されていた構成に比べ、耐久性やアンバランス補正力において、バランサ装置の性能向上を図ることができる。
第3の発明は、特に、第1または第2の発明において、前記バランサ装置の外郭は金属材料で形成され、前記壁部は樹脂材料で形成されたものである。この構成によって、バランサ装置の外郭の強度と内容積を保ったままバランサ装置を小型化することができる。これにより、回転槽の開口部を大きくすることができ、脱水機の使い勝手の向上を図ることができる。
また、外郭を樹脂と比べて比重の高い金属材料とすることによってバランサ装置の重量が増加し、その重量による振動抑制効果によって、回転槽の高速回転時の振動を抑制することができる。また、バランサ装置重量増加によるアンバランス補正力向上分を、バランサ装置の流体充填量削減かつ内容積削減に振り替えることで、さらなる小型化が可能となる。
また、縦型の全自動洗濯機においては、一般的に脱水槽は洗濯槽を兼ねている。この場合、洗濯時の洗剤や汚れが混在した洗濯水が跳ねてバランサ装置に付着し、汚れの原因となる。バランサ装置の外郭が樹脂材料で形成されている場合、この樹脂部品に付着した汚れは時間経過とともに取れづらくなっていくため、小まめな手入れが必要である。本発明の脱水機は、バランサ装置の外郭を金属材料で形成することによって、固着した汚れも比較的掃除しやすく、また、金属材料自体が清潔感を使用者に喚起させるものであるため、清潔な状態が維持されやすい。
第4の発明は、特に、第1または第2の発明において、前記バランサ装置の前記壁部は金属材料で形成され、前記外郭は樹脂材料で形成されたものである。この構成によって、バランサ装置内部構造の薄肉化を図ることができる。バランサ装置内部には、バランサ装置の不安定振動の発生を抑制するために、内部で流体が円周方向に移動するのを防止するリブが複数設けられている。本発明の脱水機は、バランサ装置の壁部に金属材料を用いることで、バランサ装置内部のリブ構造の薄肉化を図ることができる。
これによって、バランサ装置内に充填可能な流体量を増加させることができ、従来と同じ外形のバランサ装置であっても、脱水機の振動抑制効果を向上させることができる。また、従来と同じ流体充填量であっても、バランサ装置の外郭を小型化することができ、従来同様のアンバランス補正力を維持しながらも、回転槽の開口部を大きくすることができ、洗濯機の使い勝手を向上させることができる。
さらに、バランサ装置の外郭に樹脂材料を用いることで、使用者の手が触れやすく、使
用者の目にも留まりやすいバランサ装置の外郭の錆発生を確実に防止することができる。また、バランサ装置の外郭を樹脂材料で形成することにより、回転槽の高速回転時に、バランサ装置の外郭が外槽と接触しても、発生する騒音を小さく抑えることができる。
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記防水部材は、その重心位置が、前記防水部材と前記壁部との結合部より前記回転槽の回転中心側に存するように形成されたものである。この構成によって、脱水工程等の回転槽高速回転中において、バランサ装置の防水部材は、高遠心力を受けて、壁部と外郭の隙間を埋めるように壁部および外郭に貼り付く。これによって、バランサ装置の複数の層間の水密性をより確実なものとすることができ、バランサ装置のアンバランス補正力が維持され、バランサ装置の信頼性向上を図ることができる。
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記防水部材は、円環状に形成されたシール主部と、前記シール主部の内周側に全周にわたって延設させて形成された内縁部とで構成され、前記内縁部の内周面が、前記外郭側に向かって前記回転槽の回転中心側に傾斜しているように形成されたものである。この構成によって、回転槽が高速回転して、この傾斜部に流体から外向きの力が加わった時に、防水部材に外郭方向への分力を作用させることができる。したがって、防水部材と外郭との間の水密性をより強化することができる。また、延設された内縁部の端面によって、防水部材と外郭の内面との貼り付き面積を広く確保することができる。これによって、防水部材による流体移動防止効果をより大きいものとすることができる。これによって、バランサ装置の複数の層間の水密性をより確実なものとすることができ、バランサ装置のアンバランス補正力が維持され、バランサ装置の信頼性向上を図ることができる。
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明において、前記回転槽は、金属材料で構成されたものである。この構成によって、バランサ装置を含む回転槽全体が金属
部品で構成されることとなり、使用者は回転槽を掃除しやすくなる。それに伴い、美観が向上し、使用者の満足度が向上する。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、複数の実施の形態に記載された内容において、可能な範囲で組み合わされることは問題ない。
(実施の形態1)
本発明の脱水機について、回転槽を高速回転させて衣類の脱水を行う洗濯機を例示して説明する。図1は、本発明の実施の形態1における洗濯機の縦断面図である。
図1に示されるように、洗濯機本体31は、内部に洗濯水をためる外槽33と、洗濯物である衣類を収容する回転槽34とを有している。外槽33は、洗濯機本体31から防振装置である4本のサスペンション装置32(図示は1本)によって吊り下げられている。
サスペンション装置32は、ダンパ部321とバネ部322と棒材323で構成されている。ダンパ部321とバネ部322と棒材323の下端部とが連結一体化され、外装体324内に収納されている。棒材323は、外装体324の上部を突き抜けて上方に延設され、その上端部において洗濯機本体31と連結されている。外装体324は、外槽33の下部に連結されている。バネ部322は、棒材323の変位に対し引っ張りバネとして構成されている。
また、外槽33には、側面外側に垂直方向の複数本のリブ(図示せず)が設けられている。これによって、外槽33の剛性を向上させ、水平方向のたわみを抑制している。
回転槽34は、上部に開口部43を有し、有底円筒形状に金属材料のステンレス材で形成されている。回転槽34は、脱水槽と洗濯槽とを兼ねるものである。回転槽34は、外槽33内に回転自在に配設され、内底部に撹拌翼35が設けられている。モータ36が、外槽33の底面外側に設けられている。モータ36は、ブラシレス直流モータから成っており、インバータ制御され、回転速度が自在に変化されるようになっている。モータ36は、減速機構37を介して、撹拌翼35および回転槽34を、略鉛直な回転軸まわりに回転駆動させる駆動部である。
洗濯水供給部38は、回転槽34内に水道水を給水する。水位検知部39は、外槽33内の洗濯水の水位を検知する。排水部40は、外槽33内の洗濯水を排水する。
制御装置41が、洗濯機本体31の背面に設けられている。操作表示部42が、洗濯機本体31の上面に設けられている。制御装置41は、使用者によって操作表示部42から入力された設定内容に基づいて、モータ36 、洗濯水供給部38、排水部40などを制御して、洗い、すすぎ、脱水の各工程を逐次実行する。
回転槽34は、脱水工程において、濡れた衣類が収容された状態で高速回転される。衣類は回転槽34内に不均一に偏在した状態で収容されている。したがって、回転槽34が高速で回転されると、アンバランス状態となって、振動が発生する。この衣類のアンバランス状態を打ち消すためのバランサ装置44が、回転槽34の上部の開口部43に配設されている。バランサ装置44は、全体として円環形状に形成されている。バランサ装置44の内周部の径によって開口部43の開口径がほぼ規定されている。
バランサ装置44について、図を用いて説明する。図2は、本発明の実施の形態1における洗濯機のバランサ装置44の縦断面図である。図2に示されるように、バランサ装置44は、中空円環形状に形成された外郭443と、バランサ装置44すなわち外郭443内を半径方向に複数の層(本実施の形態においては2層)に分割する円環状の壁部444と、外郭443および壁部444によって形成される第1槽441(内層)および第2槽442(外層)と、内側の第1槽441内および外側の第2槽442内にそれぞれ封入された流体447にて構成されている。
バランサ装置44の多層構成を成す第1槽441(内層)および第2槽442(外層)は、ともに中空円環形状に形成されている。そして、縦断面形状は、ともに実質的に四角形である。
壁部444は外郭443とは別体で構成されている。壁部444と外郭443の天面Tおよび底面Bとの隙間には、それぞれ防水部材445が挿入されている。外郭443は金属材料で形成されている。壁部444は樹脂で成型されている。すなわち、外郭443と壁部444は異なる材料で形成されている。
なお、外郭443には、バランサ装置44内部に封入される流体447に対して耐食性を有する、ステンレス等の金属材料が使用されることが望ましい。外郭443を金属材料で構成することにより、腐食防止効果に加えて、樹脂材料に比べて薄く構成することが可能である。
また、外側の第2槽442内の外郭443部分には、流体447の周方向への移動を制限しアンバランス補正力を向上させる流体移動防止リブ446が設けられていてもよい。
また、防水部材445には、コストおよび信頼性を考慮すれば、OリングやU字パッキ
ンなどのゴムパッキン等が使用されることが望ましい。しかしながら、同様の防水効果を有するものであれば、オイルシールやメカニカルシールなどの回転機械用の防水部品が使用されてもよい。あるいは、外郭443と壁部444とが接着剤によって接合され、水密構成とされてもよい。
さらに、バランサ装置44は回転槽34の開口部43にだけ設置されてもよいし、回転槽34の開口部43と底部外側の両方に設置されていてもよい。
また、バランサ装置44内部に封入される流体447は、一般に塩化カルシウム水溶液が用いられるが、ボールなどの転動体や磁性流体などの機能性流体が封入されていてもよい。
以上のように構成された洗濯機について、以下その動作および作用を説明する。
まず、使用者は、回転槽34内に衣類と洗剤を投入する。その後、使用者は、操作表示部42を操作して洗濯運転コースを設定し、洗濯運転を開始する。これによって、制御装置41は、洗い工程を開始する。制御装置41は、洗濯水供給部38を動作させ、回転槽34内および外槽33内に洗濯水を供給する。水位検知部39によって外槽33内に規定量の洗濯水が供給されたことが検知されると、制御装置41は、洗濯水供給部38を制御して給水を停止する。
次に、制御装置41は、モータ36および減速機構37を制御し、撹拌翼35を回転させる。これによって、洗剤は洗濯水に溶かされ、洗濯液となって衣類に浸透する。制御装置41は、撹拌翼35を例えば130r/min程度の低速で回転させ、洗濯液中で衣類を撹拌する揉み洗いを規定時間行う。洗い工程が終了すると、制御装置41は、排水部40を動作させる。これによって、衣類から落とされた汚れが溶かし込まれた洗濯液は、外槽33の外に排出される。洗濯液の排出が終了すると、制御装置41は、回転槽34を高速で回転させて中間脱水を行う。その後、制御装置41は、洗い工程と同様にすすぎ工程を実行し、さらにその後、脱水工程を実行する。
制御装置41は、上記中間脱水および脱水工程において、モータ36および減速機構37を制御し、回転槽34を例えば約900r/minの高速で回転させる。このとき、回転槽34の回転に対して衣類のアンバランスが生じた場合、アンバランスによる遠心力によって、回転槽34および外槽33は大きく振れ回ろうとする。そこで、このアンバランスに対して、回転槽34に配設されたバランサ装置44によるアンバランス補正効果が発揮される。具体的には、バランサ装置44の第1槽441および外側の第2槽442の内部に封入された流体447が、回転中にアンバランス状態を検知すると、アンバランスに対向する位置に流動し、アンバランス状態を解消する。このようにして、回転槽34を含む外槽33全体の振動が抑制される。
本実施の形態における洗濯機のバランサ装置44の作用効果について、従来の脱水機と比較しながら説明する。
従来の脱水機においては、図5を用いて前述されたように、バランサ装置(流体バランサ16)は、多層構成のものにおいても樹脂で一体成型されていた。また、一般にバランサ装置においては、高速回転時の内部流体の周方向への移動に起因するスロッシングと呼ばれる振動が生じうる。これを防止するため、バランサ装置の内部には、断面に複数種類の流体移動防止リブ(図5には図示せず)が設けられる。流体移動防止リブを用いることで、周方向への流体の移動を抑制し、スロッシング振動を防止することができる。
多層構成のバランサ装置において、外郭、壁部および流体移動防止リブなどを従来のように樹脂で一体成型すると、成形加工時の樹脂の流動性の確保や成型後の強度の確保の必要上、各部の厚さがほぼ均一となり、部位によっては必要以上に厚くなってしまう。
また、従来の脱水機のバランサ装置(流体バランサ16)は、中空閉管路17を構成する複数のケースの主要部を樹脂材料を用いて構成し、それらを溶着することにより各層間の水密性が確保されていた。この場合、流体バランサ16の隔壁18や流体移動防止リブなどの内部リブ構造には、工法上や信頼性の面から、リブの厚みに制限があり、薄肉化が困難であった。
本実施の形態における洗濯機のバランサ装置44においては、図2に示されたように、外郭443と壁部444とが別体で構成されている。この構成によって、バランサ装置44を、一体成型でなく、複数部品に分けて製作できる。これによって、従来に比べ、バランサ装置44の各壁面形状を簡素化することができる。したがって、バランサ装置44の内部構造の薄肉化が図れ、バランサ装置44内に充填可能な流体量を増やすことができる。これによって、バランサ装置44のアンバランス補正力を向上させることができる。
また、バランサ装置44に壁部444を備えたことにより、バランサ装置44の流体封入部の多層構造を実現できる。これによって、バランサ装置44のアンバランス補正力の向上が図れる。
また、本実施の形態における洗濯機のバランサ装置44においては、壁部444と外郭443の天面Tおよび底面Bでの接合部の隙間には防水部材445が挿入されている。これによって、バランサ装置44が前述されたように複数部品で製作されていても、中間脱水および脱水工程等の回転槽34の高速回転時においても、遠心力によって内周側の第1槽441から外周側の第2槽442へと流体447が移動することを防止できる。これによって、バランサ装置44のアンバランス補正力を維持することができ、信頼性の高いバランサ装置44を備えた洗濯機を実現することができる。
さらに、本実施の形態における洗濯機のバランサ装置44は、外郭443と壁部444とを別体で構成したことによって、外郭443と壁部444とを互いに異なる材料を用いて構成することができる。具体的には、外郭443はステンレス等の金属材料で、壁部444は樹脂材料で構成されている。従来に比べ、外郭443は樹脂材料より強度が高い金属材料で構成することによって薄肉化でき、壁部444は単純な円環形状とすることによって薄肉化できる。したがって、バランサ装置44の外径を同じとすれば、内径を大きくすることができる。これによって、回転槽34の上部の開口部43の開口径を大きくすることができ、衣類の出し入れを行いやすくすることができる。
また、この構成によって、流体447を、より外側に位置させることができる。したがって、回転槽34の高速回転時に、より大きい遠心力を流体447に作用させることができ、アンバランス補正力を向上させることができる。アンバランス補正力を同じでよしとするならば、バランサ装置44の小型化、あるいは回転槽34の開口部43のさらなる大口径化が可能となる。
あるいは、バランサ装置44の外郭443を従来どおりの大きさの外形とするのであれば、バランサ装置44内部に封入できる流体447の量を増加させることができる。これによって、アンバランス補正力を向上させることもできる。
さらに、バランサ装置44の重量も振動抑制に効果的である。このため、外郭443が樹脂と比べて比重の大きい金属材料で構成されると重量が増加し、その分、振動の抑制効
果が向上する。これにより、その重量分をバランサ装置44の流体447の量削減かつ内容積削減に振り替えることで、さらなる小型化かつ薄型化が可能になる。
また、本実施の形態における洗濯機のバランサ装置44は、外郭443を金属材料で構成しているため、バランサ装置44自体の圧環強度を向上させることができる。これに伴って、バランサ装置44と固定され、一体化されている回転槽34の開口部43の圧環強度も向上させることができる。
また、回転槽34がステンレスなどの金属材料で構成されてもよい。この構成によれば、バランサ装置44を含む回転槽34全体が金属部品で構成されることとなり、使用者は回転槽34を掃除しやすくなる。それに伴い、美観および清潔感が向上し、使用者の満足度が向上する。さらに、洗濯機のデザイン性も向上させることができる。
なお、バランサ装置44および回転槽34に用いる金属材料は、ステンレスに限られない。耐食性が高いものが望ましく、チタン合金なども有用である。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2における洗濯機について、図を用いて説明する。洗濯機の基本的な構成は、図1を用いて説明された本発明の実施の形態1における洗濯機と同じであり、詳細な説明を省略する。
以下、上記実施の形態1の洗濯機とは構成が異なる、バランサ装置44について、図を用いて説明する。図3は、本発明の実施の形態2における洗濯機のバランサ装置44の縦断面図である。
バランサ装置44は、全体として円環形状に形成されている。バランサ装置44の内周部の径によって開口部43の開口径がほぼ規定されている。図3に示されるように、バランサ装置44は、外郭443と、バランサ装置44を半径方向に複数の層(本実施の形態においては2層)に分割する円環状の壁部444と、外郭443および壁部444によって形成される第1槽441(内層)および第2槽442(外層)と、内側の第1槽441内および外側の第2槽442内にそれぞれ封入された流体447にて構成されている。
バランサ装置44の多層構成を成す第1槽441(内層)および第2槽442(外層)は、ともに中空の円環形状に形成されている。そして、縦断面形状は、ともに実質的に四角形である。
壁部444は外郭443とは別体で構成されている。壁部444と外郭443天面Tおよび底面Bとの隙間には、それぞれ防水部材445が挿入されている。外郭443は樹脂材料で成型されており、壁部444は金属で形成されている。すなわち、外郭443と壁部444は異なる材料で形成されているが、実施の形態1とは使用材料が逆な組み合わせで構成されている。
本実施の形態におけるバランサ装置44は、上記のように、外郭443は樹脂材料で、壁部444は金属材料で構成されている。したがって、従来に比べ壁部444を薄肉化できる。これにより、バランサ装置44内に封入可能な流体447の量を増加させることができ、バランサ装置44のアンバランス補正力を向上させることができる。
また、バランサ装置44内部には、バランサ装置44の不安定振動の発生を抑制するために、内部で流体447が円周方向に移動するのを防止する流体移動防止リブ446等のリブが複数設けられている。本実施の形態におけるバランサ装置44は、壁部444に金
属材料を用いることで、バランサ装置44内部のリブ構造の薄肉化を図ることができる。
これによって、バランサ装置44内に充填可能な流体447の液量を増加させることができ、従来と同じ外形のバランサ装置であっても、振動抑制効果を向上させることができる。また、従来と同じ流体充填量であっても、バランサ装置44を小型化することができる。したがって、従来同様のアンバランス補正力を維持しながらも、回転槽34の開口部43を大きくすることができ、洗濯機の使い勝手を向上させることができる。
また、外郭443は樹脂材料を使用することによって、衣類との擦れや洗剤の影響によるバランサ装置44の外郭443の劣化も確実に防止できる。また、使用者の手が触れやすく、使用者の目にも留まりやすいバランサ装置44の外郭443の錆発生を確実に防止することができる。
さらに、回転槽34内の衣類のアンバランス量が大きく、高速回転時に外槽33、回転槽34および洗濯機本体31が接触してしまっても、この接触により発生する騒音を小さく抑えることができる。
なお、上記実施の形態1において説明されたその他の効果も、本実施の形態の洗濯機においても同様に得られるものであるが、説明を省略する。
(実施の形態3)
本発明の実施の形態3における洗濯機について、図を用いて説明する。洗濯機の基本的な構成は、図1を用いて説明された本発明の実施の形態1あるいは実施の形態2における洗濯機と同じであり、詳細な説明を省略する。
以下、上記実施の形態1の洗濯機とは構成が異なる、バランサ装置44について、図を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態3における洗濯機のバランサ装置44の要部断面図である。
本実施の形態におけるバランサ装置44は、防水部材445に特徴ある構成を有するものである。他の構成は、実施の形態1あるいは実施の形態2におけるバランサ装置44と同じであり、詳細な説明を省略する。なお、図4においては、バランサ装置44の基本的構成は、実施の形態1と同様の構成として表現されている。
図4(a)に示されるように、本実施の形態におけるバランサ装置44の防水部材445は、壁部444と外郭443の天面Tあるいは底面Bとの隙間に挿入された時に、その重心448(図4において、+で表示)が、壁部444より回転槽34の回転中心側で、2層に分割された内側の第1槽441の外郭443側に位置するよう構成されている。すなわち、防水部材445の重心448は、防水部材445と壁部444との結合部より回転槽34の回転半径の内側に位置させてある。
具体的には、防水部材445は、円環状に形成されたシール主部4451の内周側に、内縁部4452を全周にわたって延設させて構成されている。その延設は、回転槽34の回転半径の内側方向および外郭443の天面Tあるいは底面Bとは逆方向になされている。そして、防水部材445は、この内縁部4452の外周面44521を壁部444の内周面に接触または近接させて取り付けられている。また、内縁部4452の外郭443の天面Tあるいは底面Bと対向する端面44522は、外郭443の天面Tあるいは底面Bに接触または近接させて取り付けられている。
防水部材445の内縁部4452の断面は、外周面44521と端面44522と両者
を結ぶ傾斜させた内周面44523とによって略直角三角形に形成されている。そして、直角三角形の底辺側が、外郭443の天面Tおよび底面B側に位置するように形成されている。すなわち、防水部材445の内周面44523は、外郭443側に向かって回転槽34の回転中心側に傾斜しているように形成されている。
回転槽34が高速回転されると、流体447に遠心力が加わる。すると、防水部材445は、図4(b)に示されるように、流体447から外向きの力を受けて、壁部444と外郭443との間の隙間を埋めるように変形する。これによって、防水部材445の内縁部4452は壁部444の内周面および外郭443の内面(天面Tまたは底面B)に貼り付く。また、防水部材445のシール主部4451は外郭443の内面(天面Tまたは底面B)および壁部444の端面(上面または下面)に貼り付く。これによって、バランサ装置44が前述されたように複数部品で製作されていても、遠心力によって内周側の第1槽441から外周側の第2槽442へと流体447が移動することを防止できる。
この際、防水部材445は、シール主部4451に延設させて設けられた内縁部4452の内周面44523が、外郭443側に向かって回転槽34の回転中心側に傾斜しているように形成されている。この構成によって、回転槽34が高速回転して、この傾斜部に流体447から外向きの力が加わった時に、防水部材445に外郭443方向への分力を作用させることができる。したがって、防水部材445と外郭443との間の水密性をより強化することができる。
また、防水部材445の内縁部4452は、シール主部4451から回転槽34の回転半径の内側方向にも延設されている。したがって、防水部材445と外郭443の内面(天面Tまたは底面B)との貼り付き面積を広く確保することができる。これによって、防水部材445の流体移動防止効果をより大きいものとすることができる。
以上説明されたように、本実施の形態におけるバランサ装置44によれば、多層構造のバランサ装置を有しながらも、防水部材445の経年劣化により水密性が損なわれることがない。したがって、バランサ装置44の多層構造を維持することができる。さらに、バランサ装置44の外郭443と壁部444とが別体でかつ異なる材料で構成されていても、そのアンバランス補正力を維持でき、振動低減装置としての信頼性を向上させることができる。
また、アンバランス補正力の大きい多層構造のバランサ装置を有しながらも、回転槽34の開口部43を大きくすることができる。これによって、回転槽34への洗濯物の出し入れの利便性を向上させることができる。
なお、上記実施の形態1および実施の形態2において説明されたその他の効果も、本実施の形態の洗濯機においても同様に得られるものであるが、説明を省略する。
なお、上記のような内縁部4452を有する構成は、本実施の形態においては、壁部444と外郭443の天面Tおよび底面Bとの両方の隙間に挿入された防水部材445に設けられているが、いずれか一方の防水部材445に設けられていてもよい。
また、防水部材445の内縁部4452の断面形状は、底辺側が外郭443の天面Tあるいは底面B側に位置する略三角形に限定されるものではない。回転槽34の高速回転時に防水部材445に作用する分力による貼り付き効果を期待しないのであれば、例えば、逆の三角形であってもよいし、矩形であってもよいし、半円状であってもよい。内縁部4452の断面形状は、防水部材445の重心448を壁部444より回転槽34の回転半径の内側に位置させることができる形状であれば、いかなる形状であってもよい。