以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る診断支援システム、診断支援システムの作動方法、及びプログラムを説明する。各図面においては、同一または同等の部分に同一の符号を付している。
(実施の形態)
図1〜図11を参照して、本実施の形態に係る診断支援システム、診断支援システムの作動方法、及びプログラムについて説明する。本実施の形態に係る診断支援システムは、メンタル・ローテーション(Mental Rotation)課題を行っている最中の被験者の視線に関するデータに基づいて、被験者が軽度認知機能障害(Mild Cognitive Impairment:MCI)であるかどうかを判定することにより、医師による診断を支援するシステムである。
MCIとは、認知機能に問題が生じているが、日常生活には支障がない状態である。アルツハイマー病(Alzheimer's Disease:AD)等の認知症は、MCIを罹患した後に発症することが知られており、MCI患者のうち年間平均12%はADに移行する。MCIの段階で治療を開始することにより、認知機能の悪化を抑制でき、場合によっては認知症の発症自体を回避できる。
MCIを早期に発見するためには、認知症の症状のうち比較的早期に現れやすい非健忘症状に着目する必要がある。そこで、診断支援システムでは、非健忘症状の一つである視空間認知機能の障害を評価するために、メンタル・ローテーション課題を用いる。メンタル・ローテーション課題とは、視覚対象を頭の中でさまざまな方向に回転させる操作過程を行わせることにより、被験者の視空間認知機能の状態を評価する手法である。
図1は、本発明の実施の形態に係る診断支援システム1の構成を示すブロック図である。図1に示すように、診断支援システム1は、判定装置100、表示装置200、眼球運動解析装置300を備える。表示装置200、眼球運動解析装置300は、判定装置100と有線又は無線の通信回路(図示せず)を介して相互に通信可能に接続されている。
判定装置100は、眼球運動解析装置300で取得された被験者の視線データに基づいて、被験者がMCIであるかどうかを判定する判定手段の一例である。表示装置200は、判定装置100の指示に基づいて、メンタル・ローテーション課題で用いる課題画像を被験者に向け表示する表示手段の一例である。眼球運動解析装置300は、メンタル・ローテーション課題に取り組んでいる最中の被験者の眼球を撮影し、眼球の撮影データに基づいて被験者の視線の動きを解析する。眼球運動解析装置300は、メンタル・ローテーション課題を遂行している被験者の視線の動きを測定する測定手段の一例である。眼球運動解析装置300は、例えば、SR Research社製のEyeLink1000のような眼球運動解析装置である。
次に、診断支援システム1を使用して行われる認知症の診断支援手法について説明する。まず、判定装置100は、通信回路を介してメンタル・ローテーション課題で用いる課題画像に関する画像データを表示装置200に送信する。表示装置200は、受信した画像データに基づいて、メンタル・ローテーション課題で用いる課題画像を表示する。
図2は、表示装置200に表示される課題画像の例を示す。図2に示すように、課題画像の中央には参照画像が配置されている。また、課題画像の四隅には4つの選択肢画像1〜4が配置されている。選択肢画像1〜4は、参照画像を一定の角度(0°、90°、180°、270°)で回転させたものである。なお、図2の課題画像はあくまでも一例であって、選択肢画像の数や配置、それぞれの選択肢画像における参照画像の回転角度、左右反転等は任意であり、被験者の年齢、性別、検査の所要時間等に応じてユーザ(検査者)が適宜選択し得る。
メンタル・ローテーション課題は、同一課題及び回転課題を含んでいる。同一課題とは、参照画像と同一の画像を選択肢画像から選択する課題である。回転課題とは、参照画像を頭の中で指示された角度だけ時計回りに回転させ、回転させた参照画像と同一の画像を選択肢画像から選択する課題である。このため、課題画像には、被験者が時計回りに参照画像を回転させる角度に関する指示が載せられている。例えば、図2の場合、課題画像の上部に「時計回りに180°回転」との指示が載せられている。
図2の具体例において、同一課題すなわち回転課題0°が出題された場合、選択肢画像4が正解である。回転課題90°が出題された場合、選択肢画像2が正解である。回転課題180°が出題された場合、選択肢画像1が正解である。以下、理解を容易にするために、図2の具体例を被験者に出題する場合を例にして説明するが、診断支援システム1にて使用されるメンタル・ローテーション課題は、図2に示すものに限定されない。
図1に戻り、表示装置200に課題画像が表示された後、判定装置100は、被験者に対して課題に解答するように音声にて指示を出す。被験者は、参照画像を参照しながら複数の選択肢画像から正解と思われる画像を選択する。
被験者に対して課題が出題されたとき、眼球運動解析装置300は、被験者の眼球の撮影を開始する。眼球運動解析装置300は、撮影された視線に基づいて、時刻と、視線を示すベクトルの向きと、当該ベクトルの始点の位置(眼球の座標)と、を判別し、課題画像上の固視点(詳細は後述する)を検出する。そして、眼球運動解析装置300は、時刻、視線のベクトル、その始点の位置(眼球の座標)を含む各種の視線データと、固視点に関するデータと、を生成する。
次に、被験者は、出題された課題の解答を口頭で述べる。例えば、回転課題180°が出題された場合、被験者は、選択肢画像1が正解である旨を口頭で述べる。すると、判定装置100は、被験者の音声による解答を音声データとして受信する。判定装置100は、受信した音声データに音声認識処理を施して、被験者の解答が正解かどうかを判定する。また、被験者の解答に関する音声データを受信した場合、眼球運動解析装置300は、被験者の視線の動きに関する解析を停止する。なお、診断支援システム1では、検査者が被験者の音声による解答を認識し、被験者の解答が正解かどうかを判定し、その判定結果を判定装置100に記憶させるように構成してもよい。
次に、眼球運動解析装置300は、通信回路を介して測定した視線データと、固視点に関するデータと、を判定装置100に送信する。判定装置100は、受信した各種のデータを解析して、固視点の分布に基づいて被験者がMCIであるかどうかを判定する。
次に、図3〜図7を参照して、診断支援システム1の各構成について説明する。まず、図3を参照して、判定装置100の構成について説明する。図3は、判定装置100のハードウェア構成を示すブロック図である。
判定装置100は、指示受付部110、表示部120、集音部130、発音部140、通信部150、記憶部160、制御部170を備える。指示受付部110、表示部120、集音部130、発音部140、通信部150、記憶部160は、制御部170と有線又は無線の通信回路(図示せず)を介して相互に接続されている。
指示受付部110は、ユーザの指示を受け付け、受け付けた操作に対応する操作信号を制御部170に供給する。指示受付部110は、ボタン、キーボード、マウス、ジョイスティック等を含む。指示受付部110は、例えば、ユーザから課題の出題等に関する指示を受け付ける。
表示部120は、制御部170から供給される画像データに基づいて、ユーザに向けて各種の画像を表示する。表示部120は、例えば、表示パネルと表示パネル駆動回路とを備える。表示パネルは、液晶パネル、有機EL(Electro Luminescence)パネルによって実現される。表示パネル駆動回路は、制御部170から供給される画像データに基づいて表示パネルを駆動し、表示パネルに画像を表示させる。
なお、指示受付部110と表示部120とは、タッチパネルによって一体に構成されてもよい。タッチパネルは、所定の操作を受け付ける操作画面を表示する。また、タッチパネルは、操作画面においてユーザが接触操作を行った位置に対応する操作信号を制御部170に供給する。
集音部130は、音声を集音するマイク131を備える。集音部130は、制御部170の制御に従って、集音した音声を電気信号に変え、これをA/D(アナログ/デジタル)変換し、デジタル化された音声データを制御部170に供給する。
発音部140は、音声を放音するスピーカ141を備える。発音部140は、制御部170から供給された音声データをD/A(デジタル/アナログ)変換して、スピーカ141に供給する。これにより、音声データが音声に変換され、音声がスピーカ141から出力される。
通信部150は、インターネット等の通信ネットワークに接続することが可能なインターフェースである。通信部150は、後述の表示装置200の通信部、眼球運動解析装置300の通信部と通信ネットワークを介して通信する。また、通信部150は、外部端末、サーバ、メモリ等とも通信する。
記憶部160は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、ハードディスク装置等を備える。記憶部160は、制御部170により実行され、図9のテスト実施処理、図11のMCI判定処理を実行させるプログラム、各種の画像、データ、アプリケーションを記憶する。また、記憶部160は、制御部170が処理を実行するためのワークメモリとして機能する。
記憶部160は、課題データベース161、解答結果データベース162、課題画像領域データベース163、固視点データベース164、被験者データベース165と、を備えている。以下、図4、図5を参照して、各データベースについて説明する。
図4(a)は、課題データベース161のデータテーブルを示す。課題データベース161は、表示装置200に表示される課題画像ごとに、メンタル・ローテーション課題の種類(同一課題、回転課題90°、回転課題180°)、参照画像、正答選択肢画像に関する情報等を記憶する。課題画像には、データベース内での検索等の便宜のために番号(インデックス)1、2、…を付与している。例えば、メンタル・ローテーション課題が3種類で参照画像が16種類の場合、課題画像に付与される番号は合計で48個となる。なお、課題データベース161は、図4(a)の具体例に限られず、メンタル・ローテーション課題の種類、参照画像ごとに形成された課題画像を記憶するものであれば、いかなる構成であってもよい。
課題データベース161は、課題の出題順序、音声により被験者に課題への解答を指示するタイミング等に関する情報を記憶してもよい。例えば、複数の参照画像を用いてメンタル・ローテーション課題を出題する場合、課題の出題順序は、まず課題画像の番号順に同一課題を出題し、次いで、課題画像の番号順に回転課題90°を出題し、最後に課題画像の番号順に回転課題180°を出題する順序であってもよく、ユーザが任意の順序に設定してもよい。
図4(b)は、解答結果データベース162のデータテーブルを示す。解答結果データベース162は、被験者IDと共に、課題画像毎に被験者の解答が正解か否かに関する情報等を記憶する。
図4(c)は、課題画像領域データベース163のデータテーブルを示す。課題画像領域データベース163は、課題画像毎に表示装置200において参照画像及び各選択肢画像1〜4が表示されている領域の座標(位置)を記憶する。
図5(a)は、固視点データベース164のデータテーブルを示す。固視点データベース164は、被験者IDと共に、被験者の固視点に関するデータを記憶する。固視点とは、被験者の視線が一定時間以上動かない状態で、被験者が見つめ続けた点のことである。固視点データベース164は、固視点が存在した時刻t1、t2、…、固視点の位置(X1,Y1)、(X2,Y2)、…、固視点が位置する領域(参照画像上、選択肢画像1〜4上、それ以外の領域のいずれか)を対応付けて記憶する。
図5(b)は、被験者データベース165のデータテーブルを示す。被験者データベース165は、被験者ごとに算出された後述するRC比(Run Count Ratio)、RC比に基づく判定装置100の判定結果を記憶する。被験者が判定装置100によりMCIであると判定された場合、判定結果はYESであり、MCIでないと判定された場合、判定結果はNOである。
図3に戻り、制御部170は、CPU(Central Processing Unit)等を備え、判定装置100の各部の制御を行う。制御部170は、記憶部160に記憶されているプログラムを実行することにより、図9のテスト実施処理、図11のMCI判定処理を実行する。
制御部170は、機能的には、テスト実施部171、解答判定部172、固視点領域判定部173、第1の固視数検出部174、第2の固視数検出部175、RC比算出部176、RC比判定部177を備える。制御部170は、記憶部160に記憶されたプログラムに従って動作することにより、テスト実施部171、解答判定部172、固視点領域判定部173、第1の固視数検出部174、第2の固視数検出部175、RC比算出部176、RC比判定部177として機能する。また、制御部170は、眼球運動解析装置300から視線データを取得する取得手段としても機能する。
次に、判定装置100の制御部170の各構成について説明する。テスト実施部171は、メンタル・ローテーション課題に関する課題画像を表示装置200に表示させる。表示装置200に課題画像を表示した後、テスト実施部171は、マイク131を作動状態で待機させる。マイク131が音声を受け付けた場合、テスト実施部171は、受け付けた音声に音声認識処理を施す。テスト実施部171は、当該音声が解答に相当する音声であると判断した場合、音声認識したテキストを一旦記憶部160に記憶すると共に、音声を受け付けた時刻を記憶する。また、テスト実施部171は、音声により課題を出題したタイミングと、被験者の口頭による解答を検出したタイミングと、を検出する。
解答判定部172は、課題データベース161を参照して、音声認識したテキストが示す被験者の解答と、課題の正解に関する情報とを比較して、被験者による解答が正解かどうか判定する。例えば、図2の具体例にて回転課題180°を出題した場合、解答判定部172は、被験者が選択肢画像1を選択したとき、出題された課題に正解したと判定する。
固視点領域判定部173は、表示装置200に表示している課題画像を特定し、課題画像領域データベース163に記憶された参照画像、選択肢画像1〜4の領域の座標を参照して、固視点が属している領域(参照画像上か、選択肢画像1〜4上か、それ以外か)を特定する。また、固視点領域判定部173は、これらの情報を固視点データベース164に記憶する。
第1の固視数検出部174は、課題データベース161を参照して正答選択肢画像を把握した上で、固視点データベース164を参照して、正答選択肢画像上の固視数をカウントする。例えば、図2の具体例の場合において回転課題180°を出題したとき、第1の固視数検出部174は選択肢画像1上に分布する固視点をカウントする。
第2の固視数検出部175は、課題データベース161を参照して誤答選択肢画像を把握した上で、固視点データベース164を参照して、誤答選択肢画像上の固視数をカウントする。例えば、図2の具体例の場合において回転課題180°を出題したとき、第2の固視数検出部175は選択肢画像2〜4上に分布する固視点をカウントする。第1の固視数検出部174及び第2の固視数検出部175は、固視数を検出する固視数検出手段の一例である。
RC比算出部176は、正答選択肢画像上の固視数と誤答選択肢画像上の固視数とに基づいて、RC比を算出するRC比算出手段の一例である。RC比は、正答選択肢画像上の固視数に対する誤答選択肢画像上の固視数の比を示し、被験者の固視点の分布を定量的に評価する指標である。RC比の値が大きい場合、誤答選択肢画像上の固視数が相対的に多いため、視覚探索戦略の効率が悪い。RC比の値が小さい場合、誤答選択肢画像上の固視数が相対的に少ないため、視覚探索戦略の効率が良好である。
RC比は、正答選択肢画像は1つ、誤答選択肢画像がn個の場合、以下の式で表される。
RC比=(誤答選択肢画像上の固視数÷n)/正答選択肢画像上の固視数
例えば、図2の具体例の場合、正答選択肢画像は1つであり、誤答選択肢画像は3つであるため、RC比は、以下の式で表される。
RC比=(誤答選択肢画像上の固視数÷3)/正答選択肢画像上の固視数
RC比判定部177は、RC比算出部176により算出されたRC比が所定の比より大きいか否かを比較して、被験者がMCIであるかどうかを判定する判定手段の一例である。RC比が所定の比より大きい場合、RC比判定部177は、被験者がMCIであると判定する。RC比が所定の比より大きくない場合、RC比判定部177は、被験者がMCIでないと判定する。RC比判定部177は、性別・年齢等の他のパラメータも考慮して、被験者がMCIであるかどうかを判定してもよい。また、RC比判定部177は、判別指標として特に有用である参照画像を180°回転させるメンタル・ローテーション課題を出題した場合のRC比に基づいて、被験者がMCI患者であるかどうかを判定してもよい。
RC比の所定の比は、健常高齢者、MCI患者からなる母集団にメンタル・ローテーション課題を実行させ、各被験者の視線データを分析することにより、ユーザが任意の値に設定できる。このため、メンタル・ローテーション課題を実行した被験者に関する各種のデータを記憶部160に蓄積し、蓄積されたデータに基づいてRC比の所定の比を逐次更新してもよい。また、RC比の所定の比は、被験者の年齢、性別等を考慮して設定してもよい。
誤答選択肢画像の個数n=3の場合、RC比の所定の比は、好ましくは、約0.30〜約0.60の範囲内、さらに好ましくは、約0.40〜約0.50の範囲内に設定される。例えば、RC比の所定の比を0.47に設定した場合、健常高齢者とMCI患者とを感度80%、特異度80%の正診率で判別できる。
なお、感度とは、疾患に罹患した患者のうち検査結果が陽性である者の割合であり、特異度とは、疾患に罹患していない患者のうち検査結果が陰性である者の割合である。所定の比を0.47に設定した場合、感度、特異度のいずれも高い値となるため、被験者にメンタル・ローテーション課題を実行させるだけで、当該被験者がMCIであるかどうかを判定できる。
判定装置100は、専用のシステムで実現してもよく、小型汎用コンピュータを用いて実現してもよい。判定装置100が実行する処理は、例えば、上述の物理的な構成を備える装置が、記憶部160に記憶されたプログラムを実行することによって実現される。本発明は、プログラムとして実現されてもよく、そのプログラムが記録された記憶媒体として実現されてもよい。
次に、図6を参照して、表示装置200の構成について説明する。図6は、表示装置200のハードウェア構成を示すブロック図である。表示装置200は、表示部210、通信部220、記憶部230、制御部240を備える。表示部210、通信部220、記憶部230は、制御部240と有線又は無線の通信回路で相互に接続されている。
表示部210は、判定装置100の通信部150から送信された画像データに基づいて、被験者に向けてメンタル・ローテーション課題で用いる課題画像を表示する表示手段の一例である。表示部210は、例えば、図2に示すように参照画像が中央に配置され、4つの選択肢画像1〜4が四隅に配置された課題画像を表示する。
表示部210は、例えば、表示パネルと表示パネル駆動回路とを備える。表示パネルは、液晶パネル、有機ELパネルによって実現される。表示パネル駆動回路は、判定装置100の通信部150から供給される画像データに従って表示パネルを駆動し、表示パネルに課題画像を表示させる。
通信部220は、インターネット等の通信ネットワークに接続することが可能なインターフェースである。通信部220は、判定装置100の通信部150とネットワークを介して通信する。
記憶部230は、制御部240が動作するためのメインメモリ及びワークメモリとして機能する。記憶部230は、例えば、RAM、ROM、ハードディスク、フラッシュメモリ等のメモリ装置を含む。記憶部230は、各種の情報、データ、アプリケーション、制御部240によって実行されるプログラム等を記憶する。
制御部240は、例えば、CPU等を備え、表示装置200の各部の制御を行う。制御部240は、記憶部230に記憶されているプログラムを実行することにより、メンタル・ローテーション課題で用いる課題画像を表示させる処理を実行する。
次に、図7を参照して、眼球運動解析装置300の構成について説明する。図7は、眼球運動解析装置300のハードウェア構成を示すブロック図である。眼球運動解析装置300は、撮影部310、通信部320、記憶部330、制御部340を備える。撮影部310、通信部320、記憶部330は、制御部340と有線又は無線の通信回路で相互に接続されている。
撮影部310は、メンタル・ローテーション課題が遂行されている間の被験者の眼球を撮影する。撮影部310は、例えば、ビデオカメラ、CCD(Charge-Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等を備える。撮影部310のサンプリングレートは任意であるが、約500Hz〜約2000Hzであることが好ましく、約1000Hzであることがさらに好ましい。
図8は、被験者に回転課題180°を出題した場合に、撮影部310が撮影した被験者の眼球位置に基づいて解析した視線の動きを示す図であって、(a)は若年群の一例、(b)は健常高齢群の一例、(c)はMCI群の一例、(d)はAD群の一例を示す。図8の線は被験者が視線を動かした軌跡であり、点は固視点である。
図7に戻り、通信部320は、インターネット等の通信ネットワークに接続することが可能なインターフェースである。通信部320は、前述の判定装置100の通信部150とネットワークを介して通信する。例えば、通信部320は、通信部150から眼球の撮影開始又は撮影終了に関する指示を受け付け、撮影開始又は撮影終了の指示に関する情報を制御部340に送信する。
記憶部330は、RAM、ROM、フラッシュメモリ、ハードディスク等のメモリ装置を備え、制御部340により実行され、図10の視線データ生成処理を実行させるプログラムや各種の情報、データ、アプリケーションを記憶する。また、記憶部330は、制御部340が処理を実行するためのワークメモリとして機能する。
制御部340は、例えば、CPU等を備え、眼球運動解析装置300の各部の制御を行う。制御部340は、機能的には、視線検出部341、固視点検出部342を備える。制御部340は、記憶部330に記憶されているプログラムを実行することにより、撮影部310が取得した撮影データに基づいて、メンタル・ローテーション課題が遂行されている間の視線データ、固視点に関するデータを生成する視線データ生成処理を実行する。
視線検出部341は、撮影部310が撮影した被験者の眼球位置に関する撮影データに基づいて、被験者の視線の動きを検出する。より詳細に説明すると、視線検出部341は、例えば、被験者の眼球に関する撮影データに基づいて、時刻、視線を示すベクトルの向き、視線を示すベクトルの始点の位置(眼球の座標)を検出する。
固視点検出部342は、眼球運動解析装置300が検出した視線の動きに関するデータに基づいて、視線が一定時間以上動いていない点を固視点として検出する固視点検出手段の一例である。より詳細に説明すると、固視点検出部342は、被験者が解答を発声したタイミングを基準として、音声による課題の出題から被験者の解答の検出までの視線データの履歴を先頭から順番に確認し、一定時間以上、視線が動いていない点を固視点として検出し、固視点が発生した時刻と視線の方向を特定する。このとき、固視点検出部342は、視線の位置が基準領域内に留まっている場合に、視線が動いていないと判断する。
次に、図9のフローチャートを参照して、判定装置100が実行するテスト実施処理について説明する。判定装置100は、記憶部160に記憶されたプログラムの実行中にテスト実施処理を実行する。理解を容易にするために、図2の具体例を用いて被験者に課題を遂行させる場合を例にして説明する。
まず、通信部150は、課題データベース161からメンタル・ローテーション課題に用いる画像データを読み取り、表示装置200に送信する(ステップS101)。出題される複数の課題の順序は、ユーザにより予め決められており、通信部150は、出題順序が決められた一連の課題に関する画像データを送信する。表示装置200は、当該画像データを受信し、被験者に向けて画像データに基づく課題画像を表示する。表示装置200に表示される課題画像には、参照画像を時計回りに回転させる角度である回転角度(例えば、0°、90°、180°)に関する指示が含まれている。
次に、テスト実施部171は、眼球運動解析装置300に被験者の眼球の撮影開始を指示する(ステップS102)。判定装置100の通信部150は、眼球運動解析装置300の通信部320に上記の指示を通知し、眼球運動解析装置300の撮影部310は、被験者の眼球の撮影を開始する。以後、テスト実施部171は、マイク131から被験者の音声を取り込んで記憶部160に記憶させ、被験者の音声による解答を認識する音声認識処理を実行する。テスト実施部171による被験者の音声の取り込み、記憶、音声認識処理は、被験者の解答の検出又はタイムアウトまで繰り返し行なわれる。
次に、発音部140は、音声によりユーザに対して課題に解答するよう要求する(ステップS103)。例えば、スピーカ141は、「回転角度に関する指示を読み、選択肢画像1から4の中から適切な画像を選択して下さい」などと、音声により被験者に指示を与える。
課題を通知された被験者は、課題の意味を把握し、正解と思われる選択肢画像の番号を口頭で述べる。すると、集音部130は、被験者の音声を集音し、音声データを受信する(ステップS104)。
次に、テスト実施部171は、被験者の解答に相当する音声を認識したとき、眼球運動解析装置300に被験者の眼球の撮影終了を指示する(ステップS105)。判定装置100の通信部150は、眼球運動解析装置300の通信部320に上記の指示を通知し、眼球運動解析装置300の撮影部310は、被験者の眼球の撮影を終了する。
次に、解答判定部172は、集音部130が受信した音声データと、出題した課題に対応する正解に関する情報とを比較して、被験者の解答が正解かどうか判定する(ステップS106)。被験者の解答が正解の場合(ステップS106;YES)、被験者が課題に正解した旨を解答結果データベース162に記憶する(ステップS107)。被験者の解答が不正解の場合(ステップS106;NO)、被験者が課題に不正解であった旨を解答結果データベース162に記憶する(ステップS108)。
次に、出題した課題が最後の課題かどうかを判定する(ステップS109)。出題した課題が最後の課題の場合(ステップS109;YES)、処理を終了する。出題した課題が最後の課題でない場合(ステップS109;NO)、テスト実施部171は、設定された順序に基づいて新たな課題画像を表示するように表示装置200に指示し(ステップS110)、処理をステップS102に戻す。以上のステップにより、判定装置100が実行するテスト実施処理が終了する。
次に、図10を参照して、テスト実施処理が終了した後、眼球運動解析装置300の制御部340が実行する視線データ生成処理について説明する。眼球運動解析装置300は、記憶部330に記憶されたプログラムの実行中に視線データ生成処理を実行する。
まず、視線検出部341は、撮影部310の撮影データに基づいて、被験者の視線の動きを検出する(ステップS201)。より詳細に説明すると、視線検出部341は、時刻、視線のベクトル、その始点の位置(視線の座標)を含む視線データを生成し、視線データを記憶部330に記憶させる。
次に、固視点検出部342は、記憶部330に記憶された視線データと、表示装置200の画面の座標に関する情報とに基づいて、被験者が固視した固視点を検出する(ステップS202)。固視点の位置は、例えば、図5(a)に示すように二次元座標(X1,Y1)のように表現される。固視点検出部342は、固視点の位置に関するデータを記憶部330に記憶させる。
次に、通信部320は、記憶部330の各種の視線データ、固視点に関するデータを、ネットワークを介して判定装置100の通信部150に送信する(ステップS203)。制御部170は、通信部150から視線データを受け取り、記憶部160に記憶する。また、制御部170は、固視点に関するデータを時刻に関するデータと共に固視点データベース164に記憶する。固視点データベース164に記憶される時刻は実時間であって、いわゆる標準時を意味していない。以上のステップにより視線データ生成処理が終了する。
次に、図11のフローチャートを参照して、視線データ生成処理が終了した後、制御部170が実行するMCI判定処理について説明する。判定装置100は、記憶部160に記憶されたプログラムの実行中にMCI判定処理を実行する。
まず、固視点領域判定部173は、固視点に関するデータに基づいて各固視点の分布を検出する(ステップS301)。より詳細に説明すると、固視点領域判定部173は、課題データベース161から正解に関するデータを取得して、ステップS202で検出された各固視点が、正答選択肢画像を固視したときの固視点であるか、それとも誤答選択肢画像を固視したときの固視点であるか、を判定する。
より詳細に説明すると、固視点領域判定部173は、表示装置200に表示された課題画像を特定し、図4(c)に示す課題画像領域データベース163に記憶された参照画像、選択肢画像1〜4の領域の座標を参照する。また、課題データベース161に記憶されたデータに基づいて、表示装置200に表示された課題画像において、どの選択肢画像が正答選択肢画像で、どの選択肢画像が誤答選択肢画像であるかを判別する。次いで、固視点領域判定部173は、被験者の固視点の位置情報と、表示装置200に表示されている選択肢画像1〜4の位置情報と、を比較して、それぞれの固視点が正答選択肢画像を固視したときの固視点であるか、それとも誤答選択肢画像を固視したときの固視点であるか、を判定する。そして、固視点領域判定部173は、固視点の領域に関するデータを固視点データベース164に記憶させる。
次に、第1の固視数検出部174は、検出された固視点に基づいて、正答選択肢画像を固視した固視数を検出する(ステップS302)。例えば、図2の具体例の場合において回転課題180°を出題したとき、第1の固視数検出部174は選択肢画像1上に分布する固視点をカウントする。第1の固視数検出部174は、算出した正答選択肢画像上の固視数を被験者データベース165に記憶させる。
次に、第2の固視数検出部175は、検出された固視点に基づいて、誤答選択肢画像を固視した固視数を検出する(ステップS303)。例えば、図2の具体例の場合において回転課題180°を出題したとき、第2の固視数検出部175は選択肢画像2〜4上に分布する固視点をカウントする。第2の固視数検出部175は、算出した誤答選択肢画像上の固視数を被験者データベース165に記憶させる。
次に、RC比算出部176は、正答選択肢画像上の固視数、誤答選択肢画像上の固視数に基づいて、RC比を算出する(ステップS304)。RC比算出部176は、算出したRC比を被験者データベース165に記憶させる。
次に、RC比判定部177は、ステップS304で算出されたRC比が所定の比より大きいか否かを判定する(ステップS305)。RC比の所定の比は、健常高齢者とMCI患者とを識別可能な任意の値である。
RC比が所定の比より大きい場合(ステップS305;YES)、RC比判定部177は、被験者がMCIであると判定する(ステップS306)。そして、RC比判定部177は、被験者がMCIである旨を被験者データベース165に記憶させる。
RC比が所定の比より大きくない場合(ステップS305;NO)、RC比判定部177は、被験者がMCIでないと判定する(ステップS307)。そして、RC比判定部177は、被験者がMCIでない旨を被験者データベース165に記憶させる。以上のステップによりMCI判定処理が終了する。
医師等は、判定装置100の指示受付部110を操作して、被験者データベース165に記憶されたMCIの判定結果を表示部120に表示させる。次に、医師等は、表示部120に表示された判定結果、他の検査データ、被験者の所見等を総合的に考慮して、対象被験者がMCIであるか否かを最終的に診断する。そして、被験者がMCIであると最終的に診断された場合、医師等は、当該被験者に対して適切な投薬、認知行動療法を開始する。
(実施例)
次に、図8、図12〜図15を参照して、メンタル・ローテーション課題を遂行中の被験者の視線を解析して、RC比を用いたMCIの判定手法の有用性を検証した結果を示す。
本検証の対象者は、若年群、健常高齢群(75.3±6.8歳)、MCI群(76.5±5.4歳)、AD群(78.2±5.0歳)の各15例である。1つの参照画像と4つの選択肢画像とを含む課題画像を表示画面に表示させ、各被験者に前述のメンタル・ローテーション課題を行わせた。メンタル・ローテーション課題で用いる課題画像は、図2に示す形式である。各選択肢画像は、被験者が垂直方向18°、水平方向24°の視角で視認できる位置に配置されている。
図12は、本検証で使用した16種類の図形を示す。16種類の図形は、幾何学図形又はアルファベットである。図12に示す16種類の図形を用いて、図2に示す形式で1つの参照画像と4つの選択肢画像とを含む課題画像を生成した。各被験者には、16種類の課題画像を用いて、同一課題、回転課題90°、回転課題180°の3つの課題を出題した。つまり、各被験者には、合計48問の課題を出題した。
被験者が課題を遂行している間、被験者の反応時間、正答率を測定した。また、眼球運動解析装置(SR Research社製 EyeLink1000)を用いて視線データを測定した。眼球運動解析装置の撮像部のサンプリングレートは1000Hzであった。眼球運動解析装置が測定した視線データは、1問あたりの固視数、固視時間、サッケード(saccade)時間、サッケード振幅、固視点の位置を含む。
サッケード時間は、被験者が視線を連続的に、かつ衝動的に動かし続けた時間であり、言い換えると、ある固視点から他の固視点への視線の移動に要した時間である。サッケード振幅は、サッケード時間の間に移動させた視線の振幅である。視線の振幅は、ある固視点から他の固視点までに視線を移すために動かした眼球の角度変化で表現される。
以下、検証結果について説明する。図8は、本検証における各群の視線の動きの代表例を示す。図8の具体例は、図2の課題画像を用いて回転課題180°を出題した場合であり、正答選択肢画像は選択肢画像1である。図8に示すように、若年群の一例、健常高齢群の一例では、速やかに正答選択肢画像1へ視線が向いている。特に、若年群の一例は、他の群の例と比べてわずかな固視数であっても、正答選択肢画像1を視認できている。一方、MCI群の一例、AD群の一例では、正答選択肢画像1以外にも、誤答選択肢画像2〜4にも視線が向いている。特に、AD群では、中心の参照画像と周囲の選択肢画像を何度も往復している。
図13は、図8と同一のデータに基づいて、各群の代表例における固視点の分布をヒートマップで示した図である。図13では、固視点の多い領域(ずっと見ている領域)はグラデーションの領域が大きく、固視点の少ない領域(少しだけ見ている領域)はグラデーションの領域が小さく示されている。図13に示すように、若年群、健常高齢群では、中心の参照画像と正答選択肢画像1へ視線が向いており、誤答選択肢画像2〜4へ視線が向いていない。一方、MCI群、AD群では、正答選択肢画像1だけでなく、誤答選択肢画像2〜4にも同程度に視線が向いている。
図14は、図8と同一のデータに基づいて、各群における固視点の分布を表現したグラフである。各棒グラフは、参照画像に分布する固視点、1つの正答選択肢画像に分布する固視点、3つの誤答選択肢画像に分布する固視点、それ以外の空白部分に分布する固視点に分けられている。MCI群、AD群の正答選択肢固視割合は、健常高齢群の正答選択肢固視割合よりも有意に低かった。このことは、MCI群、AD群ともに健常高齢群よりも視線探索戦略の効率が悪いことを示している。
図15は、各群における参照画像の回転角度とRC比の平均値との関係を示すグラフである。回転課題90°、回転課題180°において、MCI群、AD群のRC比の平均値は、健常高齢群のRC比の平均値よりも有意に高かった。また、各群のRC比の平均値に対してROC(Receiver Operating Characteristic)解析を実行した結果、回転課題180°におけるRC比 のカットオフ値を0.47に設定した場合、感度80%、特異度80%という極めて良好な正診率でMCI患者と高齢健常者とを区別できることが判明した。このことは、回転課題180°のRC比がMCI患者を判別するための指標として特に有用であることを意味している。
AD群は、回転課題90°及び回転課題180°において健常高齢群よりも正答率が低く、全ての課題において健常高齢群よりも反応時間が長かった。また、AD群は、1つの課題あたりの固視数が健常高齢群よりも多く、反応時間と強い正の相関を示した。AD群は、健常高齢群よりもサッケード振幅が短縮したが、固視時間、サッケード時間は健常高齢群との間で有意な差を認めなかった。このことは、正答率、反応時間は、健常高齢者とAD患者とを区別するための指標として有用であることを意味している。
以上説明したとおり、実施の形態に係る診断支援システム1は、メンタル・ローテーション課題を遂行している被験者の固視点の分布に基づいて、被験者がMCIであるかどうかを判定する判定手段を備えている。このため、比較的早期に現れやすい非健忘症状の代表例である視空間認知機能の状態に基づいてMCIの判定を行っているため、認知症の兆候を早期に、高い精度で発見できる。
また、実施の形態に係る診断支援システム1は、正答選択肢画像上の固視数と誤答選択肢画像上の固視数とに基づいて、RC比を算出するRC比算出手段を備えている。このため、課題遂行中の被験者の視線の動きをRC比により定量的に評価できるため、MCI患者をさらに高い精度で発見できる。
そして、本発明はこれに限られず、以下に述べる変形も可能である。
(変形例)
上記実施の形態においては、判定装置100、表示装置200、眼球運動解析装置300が別々の装置であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、判定装置100、表示装置200、眼球運動解析装置300の全部又は一部を一体に構成してもよい。
上記実施の形態においては、課題画像の中央に参照画像、課題画像の四隅に4つの選択肢画像が配置されていたが、本発明はこれに限定されない。課題画像における参照画像及び選択肢画像の配置は任意であり、選択肢画像の数も任意である。例えば、課題画像の上部に参照画像、課題画像の下部に選択肢画像を配置してもよい。
上記実施の形態においては、表示装置200に被験者に指示する回転角度に関する情報を含む課題画像を表示させていたが、本発明はこれに限られない。例えば、被験者に指示する回転角度に関する情報は、発音部140のスピーカ141から発音させてもよい。例えば、スピーカ141に「参照画像を180°回転させ、一致する選択肢画像を選択して下さい」等の指示を発音させてもよい。
上記実施の形態においては、判定装置100が課題データベース161に基づいてメンタル・ローテーション課題を出題していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、医師、検査技師等のユーザが指示受付部110を操作してメンタル・ローテーション課題を出題してもよい。
上記実施の形態においては、眼球運動解析装置300がメンタル・ローテーション課題を行っている最中の被験者の視線の動き、固視点を検出していたが、本発明はこれに限られない。例えば、眼球運動解析装置300が撮影した被験者の眼球に関する撮影データを判定装置100に送信し、判定装置100が被験者の視線の動き、固視点、固視数を検出してもよい。また、外部のサーバ、コンピュータ等が被験者の視線の動き、固視点、固視数を検出してもよい。
上記実施の形態においては、判定装置100が正答選択肢画像上の固視点、誤答選択肢画像上の固視点を検出し、RC比を算出し、RC比と所定の比とを比較していたが、本発明はこれに限られない。例えば、眼球運動解析装置300、外部のサーバ、コンピュータ等が、正答選択肢画像上の固視点の検出、誤答選択肢画像上の固視点の検出、RC比の算出、RC比と所定の比との比較の全部又は一部を行ってもよい。また、これらの処理をユーザ自身が行ってもよい。
上記実施の形態においては、RC比に基づいて被験者がMCIであるかどうかを判定していたが、本発明はこれに限られない。正答選択肢画像上の固視数と誤答選択肢画像上の固視数とに基づいて、いかなる定量的な指標を用いるかは任意である。例えば、正答選択肢画像上の固視数と誤答選択肢画像上の固視数との差分を定量的な指標として用いてもよい。
上記実施の形態においては、判定装置100は記憶部160に記憶されたプログラムに基づいて動作していたが、本発明はこのようなものに限定されない。例えば、プログラムにより実現された機能的な構成をハードウェアにより実現してもよい。
上記実施の形態においては、課題データベース161、解答結果データベース162、課題画像領域データベース163、固視点データベース164、被験者データベース165は、判定装置100の内部に設けられた記憶部160に記憶されていたが、本発明はこのようなものに限定されない。例えば、課題データベース161、解答結果データベース162、課題画像領域データベース163、固視点データベース164、被験者データベース165は、その全部又は一部がLAN(Local Area Network)等を介して外部サーバ、コンピュータ等に記憶されてもよい。
上記実施の形態においては、診断支援システム1は被験者がMCIであるかどうかを判定する判定手段(MCI判定手段)を備えていたが、本発明はこれに限られない。例えば、被験者がMCIであると判定された場合に、当該被験者がADであるかどうかを判定するAD判定手段をさらに備えていてもよい。被験者が遂行したメンタル・ローテーション課題の正答率又は反応時間を記憶部160に記憶させ、正答率が所定の比より小さい場合、又は反応時間が閾値よりも大きい場合に、被験者がADであると判定するように構成してもよい。
上記の実施形態は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の趣旨を逸脱しない範囲でさまざまな実施の形態が可能である。各実施の形態や変形例で記載した構成要素は自由に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した発明と均等な発明も本発明に含まれる。