JP6892695B2 - ヒトゲノムdna検出方法 - Google Patents
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- C12Q1/00—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions
- C12Q1/68—Measuring or testing processes involving enzymes, nucleic acids or microorganisms; Compositions therefor; Processes of preparing such compositions involving nucleic acids
Description
以上の結果から、本発明者らは、Aluを高感度に検出するためのプライマー・プローブを設計するためには、通常の設計プログラムでは不十分であると考え、独自のクライテリアを設定する必要があると考えた。当該技術分野においては、PCRプライマー及びプローブを設計するためのクライテリアは無数に報告されているが、本発明者らは自身のそれまでの経験に基づいて、以下のクライテリア1〜7をヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計のために、以下のクライテリア8〜15をヒトAlu検出用PCRプローブの設計のためにそれぞれ設けた。
[クライテリア1]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア2]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ20以上である;
[クライテリア3]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;
[クライテリア4]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;
[クライテリア5]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア6]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア7]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア8]プローブ中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア9]プローブのヌクレオチド長が20以上である;
[クライテリア10]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア11]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア12]フォワードプライマーとプローブ、又はリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア13]プローブの5’末端のヌクレオチドがGでない;
[クライテリア14]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間で、最も安定なダイマーを形成させた場合の自由エネルギーの変化が−7kcal/mol以上である;
[クライテリア15]ヌクレオチド長が最も短い;
[クライテリア1’]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア2’]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ18以上である;
[クライテリア3’]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;
[クライテリア4’]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;
[クライテリア5’]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア6’]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア7’]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア8’]プローブ中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア9’]プローブのヌクレオチド長が18以上である;
[クライテリア10’]フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア11’]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
(1)配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなるヒトAluモデル配列の一部又は全部の領域を増幅することができるフォワードプライマー群及びリバースプライマー群から、[クライテリア1’]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;[クライテリア2’]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ18以上である;[クライテリア3’]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;[クライテリア4’]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;[クライテリア5’]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;[クライテリア6’]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;[クライテリア7’]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;のクライテリア1’〜7’を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選択する工程A’を含む、ヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法や、
(2)[クライテリア1]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;[クライテリア2]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ20以上である;[クライテリア3]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;[クライテリア4]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;[クライテリア5]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;[クライテリア6]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;[クライテリア7]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;のクライテリア1〜7を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選択する工程Aを含む、ヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法や、
(3)ヒトAluモデル配列が配列番号5に示されるヌクレオチド配列からなる、上記(1)又は(2)記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法や、
(4)非ヒト生物がげっ歯類である上記(1)〜(3)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法や、
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法により設計されたヒトAlu検出用PCRプライマー対に関する。
(6)以下の(a)又は(a’)のフォワードプライマー及び(b)又は(b’)のリバースプライマーにより構成される、ヒトAlu検出用PCRプライマー対
(a)配列番号18に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号18に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるフォワードプライマー;
(a’)配列番号123に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号123に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号123に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるフォワードプライマー;
(b)配列番号19に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号19に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号19に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるリバースプライマー;
(b’)配列番号148に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号148に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号148に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるリバースプライマー;や、
(7)配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号19に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される、上記(6)記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対や、
(8)配列番号123に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号148に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される、上記(6)記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対や、
(9)被験試料より抽出されたDNAを鋳型として、上記(5)〜(8)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対を用いたPCRを行う工程を含む、前記被験試料中のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法や、
(10)被験試料が、非ヒト動物にヒト細胞を移植して作製された異種移植モデル動物由来の生体試料、又は古人骨由来の陳旧試料である、上記(9)記載の方法に関する。
(11)配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなるヒトAluモデル配列のうち、上記(5)〜(8)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対により増幅される領域にハイブリダイズすることができるプローブの群から、[クライテリア8’]プローブ中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;[クライテリア9’]プローブのヌクレオチド長が18以上である;[クライテリア10’]フォワードプライマーとプローブ及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;[クライテリア11’]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;のクライテリア8’〜11’を満たすプローブを選択する工程B’を含む、ヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法や、
(12)[クライテリア8]プローブ中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;[クライテリア9]プローブのヌクレオチド長が20以上である;[クライテリア10]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;[クライテリア11]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;のクライテリア8〜11を満たすプローブを選択する工程Bを含む、上記(11)記載のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法や、
(13)工程Bにより複数のプローブが選択されたとき、[クライテリア12]フォワードプライマーとプローブ、又はリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;[クライテリア13]プローブの5’末端のヌクレオチドがGでない;[クライテリア14]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間で、最も安定なダイマーを形成させた場合の自由エネルギーの変化が−7kcal/mol以上である;[クライテリア15]ヌクレオチド長が最も短い;のクライテリア12〜15の少なくとも1つ又は2つ以上を満たすプローブを選択する工程Cをさらに含む、上記(11)又は(12)記載のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法や、
(14)ヒトAluモデル配列が配列番号5に示されるヌクレオチド配列からなる、上記(11)〜(13)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法や、
(15)非ヒト生物がげっ歯類である、上記(11)〜(14)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法や、
(16)上記(11)〜(15)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法により設計された、ヒトAlu検出用PCRプローブに関する。
(17)配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるヒトAlu検出用PCRプローブや、
(18)配列番号42又は149に示されるヌクレオチド配列からなる、上記(17)記載のヒトAlu検出用PCRプローブや、
(19)プローブの5’末端が蛍光物質により、3’末端がクエンチャー物質によりそれぞれ標識されている、上記(16)〜(18)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブや、
(20)上記(5)〜(8)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対と、上記(16)〜(19)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブとを備えた、ヒトAlu検出用PCRプライマー・プローブセットや、
(21)上記(20)記載のヒトAlu検出用PCRプライマー・プローブセットを用いて被験試料中のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法であって、(I)前記被験試料より抽出されたDNAを鋳型として、前記プライマー・プローブセットを用いたリアルタイムPCRを行う工程;(II)既知量のヒトゲノムDNAを段階希釈して調製された標準試料を鋳型として、上記工程(I)と同様の条件においてリアルタイムPCRを行い、検量線を作成する工程;(III)前記検量線から、前記被験試料中のヒトゲノムDN
A量を算出する工程;の(I)〜(III)の工程を含む方法や、
(22)被験試料が、非ヒト動物にヒト細胞を移植して作製された異種移植モデル動物由来の生体試料、又は古人骨由来の陳旧試料である、上記(21)記載の方法や、
(23)上記(5)〜(8)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対及び/又は上記(16)〜(18)のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプローブを備えた、ヒトゲノムDNA検出及び/又は定量用キットに関する。
本発明の「ヒトAlu検出用PCRプライマー対の設計方法」(以下、単に「本発明のプライマー対設計方法」とも称する)としては、配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなるヒトAluモデル配列の一部又は全部の領域を増幅することができるフォワードプライマー群及びリバースプライマー群から、以下のクライテリア1’〜7’を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選択する工程A’を含むものであれば特に制限されない。
[クライテリア1’]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア2’]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ18以上である;
[クライテリア3’]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;
[クライテリア4’]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;
[クライテリア5’]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア6’]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア7’]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア1]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア2]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ20以上である;
[クライテリア3]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;
[クライテリア4]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;
[クライテリア5]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア6]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア7]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
また、上記「工程A」としては、上記「フォワードプライマー群」及び「リバースプライマー群」の中からクライテリア1〜7の全てを満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーを選定する工程であれば特に制限されず、上記「フォワードプライマー群」及び上記「リバースプライマー群」にクライテリア1〜7をどのような順序で適用させてもよいが、クライテリア1〜7を順次適用させて選定する工程であることが好ましい。具体的には、上記「工程A」の例としては、上記「フォワードプライマー群」及び上記「リバースプライマー群」を構成するそれぞれのプライマーがクライテリア1〜4を満たすか否かを判定し、クライテリア1〜4を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーがそれぞれ一つずつであった場合には、その1対の組合せについてクライテリア5〜7を満たすか否かを判定し、また、クライテリア1〜4を満たすフォワードプライマー及びリバースプライマーが複数であった場合には、全てのフォワードプライマー及びリバースプライマーの組合せについてクライテリア5〜7を満たすか否かを判定する工程を挙げることができる。
本発明の「ヒトAlu検出用PCRプライマー対」(以下、単に「本発明のプライマー対」とも称する)としては、上記本発明のプライマー対設計方法により設計されたものであれば特に制限されないが、具体的には、以下の(a)又は(a’)のフォワードプライマー及び(b)又は(b’)のリバースプライマーにより構成されるプライマー対を好適に例示することができる。
(a)配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー、又は配列番号18に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチド、好ましくは17ヌクレオチド、より好ましくは18ヌクレオチド、さらに好ましくは19ヌクレオチド、より好ましくは20ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号18に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個(例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個、より好ましくは1個)のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー;
(a’)配列番号123に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号123に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチド、好ましくは17ヌクレオチド、より好ましくは18ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号123に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個(例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個、より好ましくは1個)のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるフォワードプライマー;
(b)配列番号19に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマー、又は配列番号19に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチド、好ましくは17ヌクレオチド、より好ましくは18ヌクレオチド、さらに好ましくは19ヌクレオチド、より好ましくは20ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号19に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個のヌクレオチド(例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個、より好ましくは1個)が欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列からなるリバースプライマー;
(b’)配列番号148に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号148に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチド、好ましくは17ヌクレオチド、より好ましくは18ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号148に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個(例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個、より好ましくは1個)のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるリバースプライマー;
本発明の「ヒトAlu検出用PCRプローブの設計方法」(以下、単に「本発明のプローブ設計方法」とも称する)としては、配列番号4に示されるヌクレオチド配列からなるヒトAluモデル配列のうち、上記本発明のプライマー対により増幅される領域にハイブリダイズすることができるプローブの群から、以下のクライテリア8’〜11’を満たすプローブを選択する工程B’を含むものであれば特に制限されない。
[クライテリア8’]プローブ中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア9’]プローブのヌクレオチド長が18以上である;
[クライテリア10’]フォワードプライマーとプローブ及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア11’]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア8]プローブ中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア9]プローブのヌクレオチド長が20以上である;
[クライテリア10]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア11]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア12]フォワードプライマーとプローブ、又はリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア13]プローブの5’末端のヌクレオチドがGでない;
[クライテリア14]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間で、最も安定なダイマーを形成させた場合の自由エネルギーの変化が−7kcal/mol以上である;
[クライテリア15]ヌクレオチド長が最も短い;
本発明の「ヒトAlu検出用PCRプローブ」(以下、単に「本発明のプローブ」とも称する)としては、上記本発明のプローブ設計方法により設計されたものであれば特に制限されないが、具体的には、配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列からなるプローブ、又は配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチド好ましくは17ヌクレオチド、より好ましくは18ヌクレオチド、さらに好ましくは19ヌクレオチド、より好ましくは20ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列において1若しくは数個(例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、さらに好ましくは1〜2個、より好ましくは1個)のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列からなるプローブを好適に例示することができるが、なかでも、配列番号37、39、42、47若しくは149に示されるヌクレオチド配列からなるプローブであることが好ましく、配列番号42又は149に示されるヌクレオチド配列からなるプローブであることがさらに好ましい。
本発明の「ヒトAlu検出用PCRプライマー・プローブセット」(以下、単に「本発明のプライマー・プローブセット」とも称する)としては、上記本発明のプライマー対及び上記本発明のプローブを備えたものであれば特に制限されないが、(1)配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと配列番号19に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される本発明のプライマー対、及び配列番号37、39、42、又は47に示されるヌクレオチド配列からなる本発明のプローブを備えたもの;(2)配列番号123に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと配列番号148に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される本発明のプライマー対、及び配列番号149に示されるヌクレオチド配列からなる本発明のプローブを備えたもの;(3)配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと配列番号148に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される本発明のプライマー対、及び配列番号37、39、42、47、又は149に示されるヌクレオチド配列からなる本発明のプローブを備えたもの;
(1)〜(3)のいずれかであることが好ましく、なかでも、(4)配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号19に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される本発明のプライマー対、及び配列番号42に示されるヌクレオチド配列からなる本発明のプローブを備えたもの;又は、上記(2)であることがさらに好ましい。また、本発明のプライマー・プローブセットは、本発明のプライマー対と、2つ以上の本発明のプローブとを備えたものであってもよく、例としては、配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマーと配列番号19に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される本発明のプライマー対、及び配列番号37、39、42、及び47に示されるヌクレオチド配列からなる本発明のプローブ群のうちの2つ以上を備えたプライマー・プローブセットを挙げることができる。
本発明の「本発明のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法」(以下、単に「本発明の検出・定量方法」とも称する)としては、被験試料より抽出されたDNAを鋳型として、上記本発明のプライマー対を用いたPCRを行う工程を含む、前記被験試料中のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法であれば特に制限されないが、特に、上記本発明のプライマー・プローブセットを用いて被験試料中のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法であって、以下の(I)〜(III)の工程を含む方法であることが好ましい。
(I)前記被験試料より抽出されたDNAを鋳型として、前記プライマー・プローブセットを用いたリアルタイムPCRを行う工程;
(II)既知量のヒトゲノムDNAを段階希釈して調製された標準試料を鋳型として、上記工程(I)と同様の条件においてリアルタイムPCRを行い、検量線を作成する工程;
(III)前記検量線から、前記被験試料中のヒトゲノムDNA量を算出する工程;
本発明の「ヒトゲノムDNA検出及び/又は定量用キット」(以下、単に「本発明のキット」とも称する)としては、上記本発明のプライマー対及び/又は上記本発明のプローブを備えた、ヒトゲノムDNA検出及び/又は定量用キットであれば特に制限されない。本発明のキットには、一般にこの種の検出キットに用いられる成分(例えば、担体、pH緩衝剤、安定剤など)の他、取扱説明書等の添付文書を含んでいてもよい。また、本発明のキットには、標準試料として用いるためのヒトゲノムDNA、ネガティブコントロールとして用いるための非ヒト生物由来DNA(例えば、マウスゲノムDNA、ラットゲノムDNA、ギニアピッグゲノムDNA等)がさらに含まれていてもよい。
本発明者らは、以下の(1)〜(4)の計算に基づいて、Alu−qPCRにより理論的には0.06〜0.15fg程度のヒトゲノムDNAからAlu配列を検出することが可能であると算出した。
(1)ヒトゲノムDNAにおけるAlu配列の出現頻度
Alu配列はヒトゲノム全体に100万コピー以上存在している。ここで、ヒトゲノムDNAの全長は30億ヌクレオチド対であることから、以下の式1のように単純に出現頻度を計算すると、3000ヌクレオチド対の長さのヒトゲノムDNAに少なくとも1コピー以上のAlu配列が存在することになる。
[式1] 30億ヌクレオチド対/100万コピー=3000ヌクレオチド対
また、ヒト体細胞は2倍体であることを踏まえて、ヒトゲノムDNAにおけるAlu配列の出現頻度を重量に換算すると、1つのヒト体細胞に含まれるヒトゲノムDNA(30億ヌクレオチド対×2=60億ヌクレオチド対)の重量は6pgであり、1つのヒト体細胞に含まれるAlu配列は200万コピーであるから、Alu配列は0.003fgのヒトゲノムDNAに少なくとも1コピー以上存在することになる(式2)。
[式2] 6pg/200万コピー=0.003fg
上述の通り、1つのヒト体細胞に含まれるヒトゲノムDNAの全長は60億ヌクレオチド対であるが、通常の方法によってヒト細胞からゲノムDNAを抽出すると、物理的な力が加わることによりゲノムDNAはランダムに切断され、2〜5万ヌクレオチド対のDNA断片になることが知られている。すなわち、抽出工程後のヒトゲノムDNA断片は、それぞれが2〜5万ヌクレオチド対の長さの、12〜30万個のDNA断片に断片化される(式3)。
[式3] 60億ヌクレオチド対/2〜5万ヌクレオチド対=12〜30万断片
また、これを重量に換算すると、総重量6pgのヒトゲノムDNAが、12〜30万個に断片化される計算になるので、それぞれの断片の重量は0.02〜0.05fgとなる(式4)。
[式4] 6pg/12〜30万断片=0.02〜0.05fg
上記(1)で述べたように、Alu配列は3000ヌクレオチド対のヒトゲノムDNAに1コピー以上含まれると考えられる。一方、上記(2)で述べたように、抽出されたヒトゲノムDNA断片は2〜5万ヌクレオチド対の長さであるから、1つの断片には数個〜十数個のAlu配列が含まれると想定できる。このような計算に基づき、本発明者らは、Alu配列の分布に偏りがある可能性を考慮しても、1つの断片に少なくとも1コピーのAlu配列が含まれると仮定できると判断した。
通常のリアルタイムPCR法においては、テンプレート中に標的配列が3コピー以上存在していれば、該標的配列を増幅して検出することが可能であるとされている。一方、上記(3)で述べたように、抽出後のヒトゲノムDNAにおいては、1つのDNA断片に1コピー以上のAlu配列が含まれると考えられることから、理論的には3つ以上のDNA断片が試料中に含まれていれば、リアルタイムPCR法によりAlu配列を検出することが可能である。すなわち、重量に換算すると、0.06〜0.15fgのヒトゲノムDNAがテンプレート中に含まれていれば(式5)、リアルタイムPCR法によりAlu配列を検出することが可能である。以上のことから、理論的にはAlu−qPCRにより0.1fg程度のヒトゲノムDNAからAlu配列の検出が可能であると考えられる。
[式5] 0.02〜0.05fg×3=0.06〜0.15fg
次に、本発明者らは、Alu−qPCRのテンプレートとして用いるゲノムDNAの精製方法について検討した。細胞や組織から抽出したゲノムDNAには、RNAが混入することが知られている(Sambrook, J. and Russel, D.W. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor, Cold Spring Harbor, NY.)。一般的には、RNAの混入はPCR反応を阻害しないと考えられており、Molecular Cloning等に記載のプロトコールにおいても、PCR用のサンプル(テンプレート)に含まれるにどの程度RNAが混入しているかはあまり注意を払われていない。
しかし、微量のDNAを鋳型としてPCRを行う場合には、大量のRNAの混入が増幅効率に影響を及ぼす可能性が考えられる。なぜなら、DNA−RNAの結合のほうがDNA−DNAの結合よりも安定であることから、プライマー・プローブがRNAにトラップされてしまい、本来の標的であるDNAにハイブリダイズできない可能性があるからである。したがって、本発明のAlu−qPCRのように、微量のヒトゲノムDNAの定量を行う場合には、テンプレートへのRNAの混入を最小限に抑える必要がある。
そこで、本発明者らは、RNAの混入を最小限に抑えるためのゲノムDNA抽出条件を検討した。具体的には、培養したヒト線維芽細胞(NHDF細胞)をトリプシンで剥離させて回収し、遠心分離した(400xg、室温、5分間)。得られた細胞ペレットをTBSで懸濁し、細胞数をカウントした。LoBindチューブ(エッペンドルフ社製)に100万細胞ずつ分注した後に遠心分離した(1000xg、4℃、10分間)。上清を除去した後に、TE(50μL)を加えて細胞をよく懸濁し、さらに、RNase A(Nippon Gene社製)及び/又はRNase T1(Invitrogen社製)を含むLysisバッファー(450μL)を加え、37℃で1時間インキュベートした。次に、プロテイナーゼK溶液(和光純薬工業社製)を最終濃度が100μg/mLとなるよう加え、50℃で一晩インキュベートした後に、同量のフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール=25:24:1(ナカライテスク社製;以下「PCI」と称する場合がある)を加えてボルテックスで混和した。遠心分離(最大速度、4℃、15分間)して、水層(上層)を回収し、再度PCIを加えてボルテックスで混和して遠心分離(最大速度、4℃、15分間)した。水層を回収して、0.2倍量の10M酢酸アンモニウム(Nippon Gene社製)及び2.5倍量の100%EtOH(和光純薬社製)を加えて転倒混和した後に、遠心分離した(最大速度、4℃、15分間)。上清を完全に除去して70%EtOHで洗浄し、ペレットを10分乾燥させた後に、TEバッファー(pH8.0)を適量加えてペレットを溶解させた。得られたサンプル中に含まれる核酸濃度を、紫外線吸光度法及びPicoGreen DNA定量法により測定した。紫外線吸光度法では、NanoDropを用いてA260の吸光度を測定した。また、PicoGreen DNA定量法では、Quant−iT(登録商標) PicoGreen(登録商標)dsDNA Reagent and Kits(Invitrogen社製)を用いて、該キットに添付の説明書に従ってDNAの定量を行った。
紫外線吸光度法により得られた核酸濃度を全核酸量(ゲノムDNA及びRNA)とし、また、PicoGreenDNA定量法で得られた核酸濃度をゲノムDNA量として、各抽出サンプルにおいてどの程度の割合でRNAが混入しているかを調べた。結果を図1に示す。RNase A及びRNase T1のいずれも使用しない場合には、サンプル中の全核酸のうちRNAが占める割合は76.1%であった。また、RNase A(20又は200μg/mL)のみを使用した場合には、サンプル中の全核酸のうちゲノムDNAが占める割合は60.5〜43.3%であり、RNase T1(100U又は1000U)のみを使用した場合には、サンプル中の全核酸のうちRNAが占める割合は65.2〜43.3%であった。これに対して、RNase A(20μg/mL)及びRNase T1(100U)を組み合わせて使用した場合には、サンプル中の全核酸のうちRNAが占める割合は58.6%であり、さらに、RNase A(200μg/mL)及びRNase T1(1000U)を組み合わせて使用した場合には、RNAが占める割合は32.0%であった。
Molecular Cloningには、細胞・組織からのゲノムDNA抽出プロトコールが複数記載されているが、それらのプロトコールではRNaseは全く使用されないか、又は、RNase Aのみが使用されている。図1の結果から、このようなMolecular Cloningに記載の一般的なプロトコールに従って抽出されたゲノムDNAには、多量のRNAが混入することが明らかとなった。また、ゲノムDNA抽出の際に200μg/mLのRNase Aと1000UのRNase T1とを組み合わせて使用することにより、RNAの混入を大幅に抑えることが可能であることが明らかとなった。これらの結果に基づいて、以下の実験では、細胞又は組織からのゲノムDNAの抽出の際に200μg/mLのRNase A及び1000U/mLのRNase T1によるRNA分解処理を行い、また、サンプル中のDNA濃度の測定は全てPicoGreenDNA定量法により行った。
(1)既知のプライマー・プローブセット
本発明者らは、まず既に当該技術分野において使用されているプライマー・プローブセットの感度及び特異性を確認した。実験には、2003年にMcBrideらにより報告されたフォワードプライマー(CATGGTGAAACCCCGTCTCTA;配列番号1)、リバースプライマー(GCCTCAGCCTCCCGAGTAG;配列番号2)、及びプローブ(ATTAGCCGGGCGTGGTGGCG;配列番号3)を用いた(McBride et al., (2003) Quantifying levels of transplanted murine and human mesenchymal stem cells in vivo by real-time PCR. Cytotherapy, 5, 7-18.、Lee et al., (2009) Intravenous hMSCs improve myocardial infarction in mice because cells embolized in lung are activated to secrete the anti-inflammatory protein TSG-6. Cell Stem Cell, 5, 54-63.)。また、上記プローブの5’末端はFAMで、3’末端はTAMRAでそれぞれ標識した(以下、かかるプライマー・プローブセットを「McBrideのプライマー・プローブセット」と称する場合がある)。
PCRには、以下のテンプレート1〜4を用いた。(なお、テンプレート3の調製にはEASY Dilutionバッファーを、テンプレート2及び4の調製にはTEバッファーをそれぞれ用いた。)
テンプレート1:バッファーのみ(TEバッファー、又はEASY Dilutionバッファー)
テンプレート2:50ng/μLのマウスゲノムDNA
テンプレート3:0.0005fg/μLから5ng/μLまでの11段階の濃度のヒトゲノムDNAのみを含むスタンダードサンプル
テンプレート4:0.5fg/μLから5ng/μLまでの8段階の濃度のヒトゲノムDNAと、マウスゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製した混合スタンダードサンプル
上記テンプレート3及び4を用いたPCRでは、得られた増幅曲線の適切な位置に閾値(Threshold)を設定してCt値(Threshold Cycle)を算出し、ヒトゲノムDNAの各量におけるCt値をプロットすることにより検量線を作成する。この検量線の直線性が認められる範囲が、PCRによる検出が可能なヒトゲノムDNAの量である。すなわち、テンプレート3及び4を用いることにより、ヒトゲノムDNAのみを含むサンプル、又はヒト及びマウスゲノムDNAを含む混合物サンプルに対する検出限界値を決定することができる。一方、上記テンプレート1及び2はネガティブコントロールサンプルであり、テンプレート1及び2を用いたPCRにより検出されるシグナルは非特異的なものである。すなわち、テンプレート1及び2におけるCt値が低いほどPCRの特異性が低いことを意味する。
McBrideのプライマー・プローブセットと上記テンプレート1〜4とを用いて、論文(McBride et al., (2003) Quantifying levels of transplanted murine and human mesenchymal stem cells in vivo by real-time PCR. Cytotherapy, 5, 7-18.、Lee et al., (2009) Intravenous hMSCs improve myocardial infarction in mice because cells embolized in lung are activated to secrete the anti-inflammatory protein TSG-6. Cell Stem Cell, 5, 54-63.)に記載された条件と同様の条件でPCRを行った。
図2及び3に示すように、テンプレート1のCt値は30程度であり(図2及び3の「BUF.」)、テンプレート2のCt値も30程度であった(図3の「Mouse」)。また、図2に示すように、テンプレート3のPCRにより作成された検量線では、ヒトゲノムDNAの量が1fg〜1ngの間で直線性が認められた(図2)。これに対し、テンプレート4のPCRにより作成された検量線では、ヒトゲノムDNAの量が1pg〜10ngの間では直線性が認められたが、ヒトゲノムDNAの量が100fg以下では直線性は認められなかった(図3)。これらの結果から、McBrideのプライマー・プローブセットの検出限界値は、テンプレートがヒトゲノムDNAのみを含む場合には1fgであるが、テンプレートがヒトゲノムDNAとマウスゲノムDNAとを含む場合には1pgまで低下してしまうことが明らかとなった。これらの結果から、McBrideのプライマー・プローブセットは特異性が低く、微量のヒトゲノムDNAを検出・定量することはできないことが示された。
以上のように、実施例3の結果はMcBrideのプライマー・プローブセットの感度及び特異性が低いことを示している。この原因として、本発明者らは、a)McBrideのプライマー・プローブセットがヒトゲノム中のAlu配列を十分にカバーするように設計されていない可能性があること、また、b)プライマー及び/又はプローブ同士での非特異的結合と、マウスゲノムDNAに対する非特異的結合とによりバックグラウンドが上昇することの2点にあると考えた。
そこで本発明者らは、上記a)の問題を解決するために、Alu配列に関する最新のデータ(Wheeler et al., Nucleic Acids Res, 41, D70-82. 2013)に基づいて、46のAluサブファミリーのコンセンサス配列を代表する一つの「ヒトAluモデル配列」を同定し、このヒトAluモデル配列を用いてヒトゲノム中のAlu配列の最も多くカバーするプライマー・プローブセットの設計を試みた。
具体的には、Dfam1.3データベースに登録されている46のAluサブファミリーの全てのコンセンサス配列を基に、ClustalW2プログラムを用いてマルチプルアライメントを作成した。さらに、作成したマルチプルアライメント全体を確認して一部を手動で再アライメントした後に、かかるマルチプルアライメントの各ポジションにおけるA、T、G、及びCの出現頻度を、46のサブファミリーごとの構成因子数(ヒトゲノム中のコピー数)を重率として算出して位置特異的スコアマトリックスを作成した(図4−1〜図4−3)。本発明者らは、この位置特異的スコアマトリックスを使用して、ヒトゲノム中のAlu配列を最大数カバーする「ヒトAluモデル配列」の同定を試みた。
ヒトAluモデル配列の原型(配列番号4):
GGCCGGGCGCGGTGGCTCACGCCTGTAATCCCAGCACTTTGGGAGGCCGAGGCGGGYGGATCACYTGAGGYCAGGAGTTCGAGACCAGCCTGGCCAACATGGTGAAACCCCGTCTCTACTAAAAATACAAAAATTAGCCGGGCGTGGTGGCGSGYGCCTGTARTCCCAGCTACTCGGGAGGCTGAGGCAGGAGAATCGCTTGAACCCGGGAGGCGGAGGTTGCAGTGAGCCGAGATCGCGCCACTGCACTCCAGCCTGGGYGACAGAGYGAGACTCYGTCTCAAAAAAAAAAAAAAAAAA
ヒトAluモデル配列(配列番号5):
GGCCGGGCGCGGTGGCTCACGCCTGTAATCCCAGCACTTTGGGAGGCCGAGGCGGGCGGATCACTTGAGGTCAGGAGTTCGAGACCAGCCTGGCCAACATGGTGAAACCCCGTCTCTACTAAAAATACAAAAATTAGCCGGGCGTGGTGGCGCGTGCCTGTAATCCCAGCTACTCGGGAGGCTGAGGCAGGAGAATCGCTTGAACCCGGGAGGCGGAGGTTGCAGTGAGCCGAGATCGCGCCACTGCACTCCAGCCTGGGCGACAGAGCGAGACTCTGTCTCAAAAAAAAAAAAAAAAAA
次に、本発明者らは、プライマー設計プログラムPrimer3(Primer3web version 4.0.0)の初期設定を用いて、上記ヒトAluモデル配列の部分配列又はその相補配列からなる、フォワードプライマー、リバースプライマー、及びプローブの組合せを選定した。具体的には、Primer3において、以下のi)及びii)のパラメータのみ設定を変更し、それ以外は全てデフォルトの設定を用いて、ヒトAluモデル配列(ポジション#1〜#300)を入力した。
i)Mispriming Library (repeat library):RODENT_AND_SIMPLE
ii)Pick hybridization probe (internal oligo), or use oligo below:チェックする
そして、出力された中から「quality」が最も高い(すなわち、「objective functionの値」が最も低い)プライマー及びプローブの組合せを選定した。選出された組合せは、フォワードプライマー:CGGATCACTTGAGGTCAGGA(配列番号6;ヒトAluモデル配列のポジション#57〜#76)、リバースプライマー:GGTTCAAGCGATTCTCCTGC(配列番号7;ヒトAluモデル配列のポジション#206〜#187の相補配列)、プローブ:TGGTGAAACCCCGTCTCTAC(配列番号8;ヒトAluモデル配列のポジション#100〜#119)である(図6)。これらのプライマー及びプローブを合成し、さらに、プローブの5’末端をFAMで、3’末端をBHQ1でそれぞれ標識した(以下、かかるプライマー及びプローブの組合せを「Primer3のプライマー・プローブセット」と称する場合がある)。
(1)リアルタイムPCRの条件
実施例3に記載のテンプレート1、2、及び4と,実施例5に記載のPrimer3のプライマー・プローブセットとを用いて以下のようにPCRサンプルを調製した。
PCRサンプル調製:
テンプレート 2μL
TaqMan Universal Master MixII, no UNG
(Applied Biosystems社製) 10μL
フォワードプライマー(10μM) 0.4μL
リバースプライマー(10μM) 0.4μL
プローブ(12.5μM) 0.5μL
水 6.7μL
トータル 20μL
製)を用いて、以上のように調製したPCRサンプルのリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で15秒、60℃で1分のサイクルを50回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
図7に示すように、テンプレート1及び2のCt値は30〜35程度であった(図7の「Buf.」及び「mouse」)。これらの結果は、McBrideのプライマー・プローブセットと同様に、プライマー・プローブセットでもプライマー・プローブ同士、及びプライマー・プローブとマウスゲノムDNAとの非特異的結合が起こっていることを示唆するものである。
また、図7に示すように、テンプレート4のPCRにより作成された検量線では、ヒトゲノムDNAの量が100fg〜10ngの間では直線性が認められたが、それ以下では直線性は認められなかった。これらの結果から、Primer3のプライマー・プローブセットを用いたAlu−qPCRの検出限界値は100fgであることが明らかとなった。以上のことから、ヒトAluモデル配列に基づいてPrimer3(初期設定)でプライマー・プローブセットを選定しても、McBrideのプライマー・プローブセットと同様の、低感度のプライマー・プローブセットしか得られないことが明らかとなった。
(1)クライテリアの設定
上記実施例3及び6の結果から、McBrideのプライマー・プローブセット及びPrimer3のプライマー・プローブセットを用いたリアルタイムPCRでは、ヒトゲノムDNAを含まないネガティブコントロールサンプル(テンプレート1及びテンプレート2)においても非特異的なシグナルが検出されること、また、ヒトゲノムDNAとマウスゲノムDNAとを含むサンプル(テンプレート4)を用いた場合には、検出限界値が100fg〜1pg程度まで大幅に低下することが明らかとなった。
以上のことから、本発明者らは、ネガティブコントロールサンプルで見られたような非特異的なシグナルによるバックグラウンドの増大が、リアルタイムPCRの検出感度を低下させる最も大きな要因となっていると考えた。そして、本発明者らは、Alu−qPCRの感度を上げるためには、プライマー及びプローブ配列の選定過程において、プライマー・プローブ間での非特異的結合、及び、プライマー・プローブとマウスゲノムDNAとの非特異的結合が起こるような配列を避ける必要があると考え、そのために独自のプライマー及びプローブ選定クライテリアを設定した。具体的には、プライマー対の選定のために以下のクライテリア1〜7を設定し、さらに、プローブの選定のために以下のクライテリア8〜15を設定した。なお、以下、クライテリア1〜7を「プライマー用クライテリア」、クライテリア8〜11を「プローブ用必須クライテリア」、クライテリア12〜15を「プローブ用補足クライテリア」と称する場合がある。
[クライテリア1]フォワードプライマー及びリバースプライマー中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア2]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ20以上である;
[クライテリア3]少なくともプライマーの5’末端又は3’末端のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの5’末端がG又はCでない場合は、5’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCであり、プライマーの3’末端がG又はCでない場合は、3’末端から2番目のヌクレオチドがG又はCである;
[クライテリア4]プライマーの3’末端から3番目までのヌクレオチド(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド)のうちの、少なくとも1つがA又はTである;
[クライテリア5]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア6]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア7]フォワードプライマー同士、リバースプライマー同士、及びフォワードプライマーとリバースプライマーの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア8]プローブ中の連続した19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[クライテリア9]プローブのヌクレオチド長が20以上である;
[クライテリア10]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア11]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア12]フォワードプライマーとプローブ、又はリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[クライテリア13]プローブの5’末端のヌクレオチドがGでない;
[クライテリア14]プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間で、最も安定なダイマーを形成させた場合の自由エネルギーの変化が−7kcal/mol以上である;
[クライテリア15]ヌクレオチド長が最も短い;
クライテリア1について:
本発明者らは、ヒトゲノムDNAと他生物のゲノムDNAとが混在したサンプルをテンプレートとして使用する場合に、プライマーによる他生物ゲノムDNAの非特異的な増幅を防ぐために、クライテリア1を設けた。本発明者らは、異種移植モデル動物の臓器におけるヒト細胞の検出を想定して、本実施例においては、クライテリア1における「非ヒト生物」として、マウス、ラット、及びギニアビッグを設定して以下の実験をおこなった。
クライテリア1を満たすヌクレオチド配列を選定するために、ヒトAluモデル配列のポジション#1〜#282のヌクレオチド配列(ポジション#283〜#300のポリAを除いたヌクレオチド配列)を入力配列として、マウス、ラット、及びギニアピッグのゲノム全体のBLAST検索(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を行った。使用した検索データベースは、以下の通りである。
マウスゲノム:all assemblies top-level, Annotation Release 105
ラットゲノム:all assemblies, Annotation Release 105
ギニアピッグゲノム:Cavpor3.0 reference Annotation Release 102
探索パラメータは、以下を除いて初期パラメータで行った。
Program selection:Megablast
Short queries: off
Word size: 16;
Match/Mismatch Scores:1, -4
Gap Costs:5, 2
Filters and Masking:off
上記パラメータは、マウス、ラット、及びギニアピッグのゲノムにおける、ヒトAluモデル配列のポジション#1〜#282に含まれる19ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と100%マッチする領域を最大限抽出できるように設定したものである。BLAST検索の結果、ヒトAluモデル配列中の連続する19ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と100%マッチするヌクレオチド配列が、マウスでは6055か所、ラットでは2951か所、ギニアピッグでは13298か所存在することが分かった。続いて、これらのげっ歯類ゲノム中の相補配列の全てを抽出し、ヒトAluモデル配列上にマッピングした。さらに、各相補配列について、19ヌクレオチドの連続する部分配列が開始するヒトAluモデル配列中のポジションを特定した。
以上の結果を図8にまとめた。図8では、ヒトAluモデル配列のポジション#1〜#264について、それぞれのポジションを開始点とする19ヌクレオチドの連続配列がマウス、ラット、及びギニアピッグゲノム中にいくつ存在するか示されている。例えば、図8のポジション#1においては、マウス、ラット、及びギニアピッグの欄はいずれも「0」と記載されている。これはポジション#1から開始する19ヌクレオチドの連続配列(ポジション#1〜#19の配列)と同一のヌクレオチド配列が、マウス、ラット、及びギニアピッグのいずれのゲノムにも存在しないことを示している。また、図8のポジション#11においては、マウスの欄に「30」、ラットの欄に「24」、ギニアピッグの欄に「1162」とそれぞれ記載されている。これはポジション#11から開始する19ヌクレオチドの連続配列(ポジション#11〜#20の配列)と同一のヌクレオチド配列が、マウスゲノム中には30箇所、ラットゲノム中には24箇所、ギニアピッグゲノム中には1162箇所存在することを示している。
図8において、本発明者らは、クライテリア2の「フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さがそれぞれ20ヌクレオチド以上である」という条件も考慮して、ヒトAluモデル配列のポジション#1〜#282のうち、クライテリア1を満たすことができるポジションは白で、クライテリア1を満たすことができないポジションはグレーでそれぞれ示した。
さらに、参考として、McBrideのプライマー・プローブセット及びPrimer3のプライマー・プローブセットのヌクレオチド配列中に、げっ歯類ゲノムとの19ヌクレオチドの完全相補配列が存在するかを検証した結果、Primer3のフォワードプライマーは3個、McBrideのフォワードプライマーは7個、McBrideのリバースプライマーは79個、McBrideのプローブは186個の完全相補配列が存在することが分かった。特に、McBrideのリバースプライマーは全長が19ヌクレオチドであるため、プライマー全体がげっ歯類ゲノム配列と完全にマッチする。上述の通り、McBrideのプライマー・プローブセットは、テンプレート4(ヒト及びマウスゲノムの混合サンプル)を用いた場合に感度が著しく低下するが、これはMcBrideのプライマーがげっ歯類ゲノム配列を認識することが原因であると考えられる。
本発明者らのこれまでの経験から、プライマーに十分な特異性を持たせるためには、その長さが20ヌクレオチド以上であることが好ましいことが分かっている。このため、プライマー長を20ヌクレオチド以上とするクライテリア2を設定した。
クライテリア1及び2により、げっ歯類ゲノムと19ヌクレオチド以上の相補性を有するプライマーはほとんど除去されるが、げっ歯類ゲノムと18ヌクレオチド以下の相補性を有するプライマーが依然として残っている。このため、本発明者らは、プライマー全長(20ヌクレオチド以上)が鋳型となるヌクレオチド配列とマッチする場合(すなわち、Alu配列に対して特異的に結合する場合)と、プライマーの内の18ヌクレオチドしか鋳型となるヌクレオチド配列にマッチしない場合(すなわち、Alu配列以外の配列に非特異的に結合した場合)との間でTm値の違いが最大となるようにプライマーを設計することで、PCRによる非特異的な増幅を防ごうと考えた。
全長が20ヌクレオチドであって、そのうちの連続する18ヌクレオチドがげっ歯類ゲノムに交叉するプライマーを想定すると、該プライマーの両末端の2ヌクレオチドはげっ歯類ゲノムと相補的結合を形成しない可能性がある。最近接塩基対法によるTm値の予測によれば、プライマー末端のヌクレオチドがテンプレートと相補的結合を形成しない場合、その末端のヌクレオチドがG又はCであるときは、A又はTのときと比較して、Tm値が低下することが知られている。このため、プライマーが特異的に結合した場合と、非特異的に結合した場合のTm値の差が最も大きくするために、プライマーの5’又は3’両末端のうち、少なくとも一方の末端をG又はCとすること、また、末端のヌクレオチドがG又はCでない場合には、末端から2番目のヌクレオチドをG又はCとするという、クライテリア3を設けた。
プライマーと標的配列とが相補的に結合したときに、プライマーの3’末端側の結合の安定性が低くなるように(ギブスの自由エネルギーが高くなるように)設計した方が、プライマーの特異性が高いという報告がある(Rychlik, W. (1995) Selection of primers for polymerase chain reaction. Mol Biotechnol, 3, 129-134)。一方、クライテリア3は、プライマーの3’末端又は末端から2番目のヌクレオチドがG又はCとするように設定している。G又はCの自由エネルギーは、A又はTと比較して低いことから、クライテリア3によりプライマーの3’末端近傍の安定性が極端に高くなる可能性が考えられる。このような可能性を防ぐために、3’末端から1〜3番目のヌクレオチドのうちの少なくとも一つをA又はTとするクライテリア4を設定した。
プライマー同士での相補鎖の形成は、非特異的シグナル上昇や、増幅効率低下の原因となることが知られている。実際に、二次構造予測プログラムRNAstructure(RNAstructure version 5.6)を用いて確認したところ、Primer3のプライマー・プローブセットにおいては、フォワードプライマーの3’末端と、リバースプライマーとの間で連続5ヌクレオチドの相補鎖が形成されることが明らかとなった(図9)。本発明者らは、このようなプライマー間での相補鎖形成(ホモダイマー及び/又はヘテロダイマー形成)が、Primer3のプライマー・プローブセットによるAlu−qPCRのバックグラウンドの上昇と、それに伴う感度の低下の要因となっていると考えた。そこで、プライマー間での相補鎖形成が起きやすいヌクレオチド配列を排除するために、クライテリア5〜7を設定した。
クライテリア8について:
クライテリア1〜7を満たすプライマー対はヒトAlu配列に特異的なものであるが、非特異的なヌクレオチド配列の増幅が起こる可能性は0ではない。このため、非特異的な増幅産物にハイブリダイズしないプローブを用いることは、Alu−qPCRの特異性を高めるために重要である。したがって、非ヒト生物のゲノム配列を増幅しないようなヌクレオチド配列からなるプローブを選択するために、クライテリア8を設定した。
本発明者らのこれまでの経験から、プローブに十分な特異性を持たせるためには、その長さが20ヌクレオチド以上であることが好ましいことが分かっている。このため、20ヌクレオチド以上のプローブを選択するために、クライテリア9を設定した。
プライマーとプローブ、又はプローブ同士での相補鎖形成は、非特異的なヌクレオチド配列の増幅や、標的とするヌクレオチド配列の増幅効率低下の原因となることが知られている。実際に、RNAstructure(RNAstructure version 5.6)を用いて確認したところ、McBrideのプライマー・プローブセットにおいては、フォワードプライマーとプローブ、リバースプライマーとプローブ、及びプローブ同士の間で、G及びCのみからなる連続4ヌクレオチドの相補鎖が形成されることが明らかとなった(図10)。本発明者らは、このようなプライマー・プローブ間での相補鎖形成が、McBrideのプライマー・プローブセットによるAlu−qPCRのバックグラウンドの上昇と、それに伴う感度の低下の要因となっていると考えた。そこで、プライマーとプローブ、又はプローブ同士での相補鎖形成が起きやすいヌクレオチド配列を排除するために、クライテリア10及び11を設定した。
上記クライテリア8〜11により、Alu−qPCR用プライマーとして使用可能なプローブを選定することができる。しかし、上記クライテリア8〜11を満たすプローブが複数選定された場合には、クライテリア12〜15のうち1以上のクライテリアを用いて、より望ましい性質を持つプローブを選定することができる。
上述の通り、本発明者らは、McBrideのプライマー・プローブセットの感度が低下する原因の一つが、フォワードプライマーとプローブ、リバースプライマーとプローブ、及びプローブ同士の間で、G及びCのみからなる連続4ヌクレオチドの相補鎖が形成されることにあると考えた(図10)。そこで、このようなプライマー・プローブ間における相補鎖形成(ホモダイマー及び/又はヘテロダイマー形成)が起きやすいヌクレオチド配列を排除するために、クライテリア12を設定した。
種々の蛍光分子はグアニン塩基に近接することでクエンチングされることが知られている。このため、プローブの5’末端を蛍光物質により標識する場合には、該5’末端のヌクレオチドがGでないことが望ましい。このため、クライテリア13を設定した。
上記「クライテリア10及び11について」で述べたように、プローブ同士、フォワードプライマーとプローブ、又はリバースプライマーとプローブの二分子間における結合安定化エネルギーが高いと、非特異的なヌクレオチド配列の増幅や、標的とするヌクレオチド配列の増幅効率低下が起こる可能性がある。このことから、プライマー・プローブ間で最も安定なダイマーを形成させた場合の自由エネルギーの変化が−7kcal/mol以上となるプローブを選定するために、クライテリア14を設定した。
加水分解プローブ法では、5’末端を蛍光物質で、3’末端をクエンチャー物質でそれぞれ標識したプローブを用いる。このプローブは鋳型にハイブリダイズしてもクエンチャーによって蛍光を発することはない。しかし、伸長反応の際に、プライマーを起点としたDNAの伸張が起こり、それが鋳型にハイブリダイズしたプローブの5’末端まで達すると、ポリメラーゼによってプローブが加水分解され、プローブから蛍光色素が遊離して蛍光を発する。従って、加水分解プローブ法においては、ポリメラーゼによるプライマーの伸張反応がプローブのハイブリダイズする位置に達する前に、プローブが鋳型とハイブリダイズしている必要がある。プローブの鋳型へのハイブリダイズは、プローブの長さが短いほど速やかに起こることが知られている。そこで、ヌクレオチド長が最も短いプローブを選択するために、クライテリア15を設定した。
(1)プライマー候補の選定
プライマー設計プログラムPrimer3を用いてヒトAluモデル配列から、複数のプライマー候補配列を選定した。具体的には、Primer3において、以下のi)〜iii)のパラメータのみ設定を変更し、それ以外は全てデフォルトの設定を用いて、ヒトAluモデル配列(ポジション#1〜#300)を入力した。
i)Task値:pick_primer_list
ii)Numbers To Return値:150
iii)Mispriming Library (repeat library)値:RODENT_AND_SIMPLE
上記i)及びii)の設定は、設計できる全てのプライマー配列を得るためのものであり、上記iii)の設定はげっ歯類配列との交叉を避けるためのものである。この選定の結果、106個のフォワードプライマー候補、及び102個のリバースプライマー候補が得られた。
クライテリア1によるフォワードプライマーの選定は図8を用いて行った。具体的には、選定の対象となるプライマー候補の5’末端が図8の白で示されたポジション(ポジション#36、42〜56、63〜67、85、88〜95、99〜111、121〜127、137〜139、187〜238、244〜249、及び252〜260)である場合には該フォワードプライマーはクライテリア1を満たすと判断し、選定の対象となるフォワードプライマー候補の5’末端が図8のグレーで示されたポジション(ポジション#1〜35、37〜41、57〜62、68〜84、86、87、96〜98、112〜120、128〜136、140〜186、239〜243、250、251、及び261〜264)である場合には該フォワードプライマーはクライテリア1を満たさないと判断した。また、クライテリア1によるリバースプライマーの選定においては、選定の対象となるプライマー候補の3’末端が図8の白で示されたポジション(ポジション#36、42〜56、63〜67、85、88〜95、99〜111、121〜127、137〜139、187〜238、244〜249、及び252〜260)である場合には該フォワードプライマー候補はクライテリア1を満たすと判断し、選定の対象となるフォワードプライマー候補の3’末端が図8のグレーで示されたポジション(ポジション#1〜35、37〜41、57〜62、68〜84、86、87、96〜98、112〜120、128〜136、140〜186、239〜243、250、251、及び261〜264)である場合には該フォワードプライマー候補はクライテリア1を満たさないと判断した。この結果、上記106個のフォワードプライマー候補から、クライテリア1を満たすものとして49個の候補を選定し、また、上記102個のリバースプライマー候補から、クライテリア1を満たすものとして48個の候補を選定した。
さらに、以上のようにして選定されたプライマー候補のうち、ヒトAluモデル配列のポジション#187又は#193を開始点とする2つのフォワードプライマー候補は、対になるリバースプライマーが存在しないために除外し、また、ヒトAluモデル配列のポジション#83、84、又は85を開始点とする6つのリバースプライマーは、対となるフォワードプライマーが存在しないために除外した。以上の結果、クライテリア1〜4を満たすフォワードプライマー候補として表1に示す10個のヌクレオチド配列を、クライテリア1〜4を満たすリバースプライマー候補として表2に示す8個のヌクレオチド配列を選定した。
Rochester大学のMathews Lab(http://rna.urmc.rochester.edu/index.html)から提供される二次構造予測プログラムRNAstructure(RNAstructure version 5.6)を用いて、表1及び表2に示されるプライマー候補の中からクライテリア5〜7を満たす組合せを選定した。
具体的には、まず、表1及び表2に示されるプライマー候補のそれぞれについて、同一のヌクレオチド配列からなる2つの分子間で形成される二次構造をRNAstructureにより予測し、i)いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;ii)いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;iii)いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;というi)〜iii)の条件を満たすプライマー候補を選定した。その結果、表1に記載の10個のフォワードプライマー候補のうち、上記i)を満たすものは7個、上記ii)を満たすものは10個、上記iii)を満たすものは10個であり、上記i)〜iii)を全て満たすものは7個であった。また、表2に記載の8個のリバースプライマー候補のうち、上記i)を満たすものは8個、上記ii)を満たすものは6個、上記iii)を満たすものは5個であり、上記i)〜iii)を全て満たすものは5個であった。
以上の解析により、上記i)〜iii)を全て満たすと判断された7個のフォワードプライマー候補と、5個のリバースプライマー候補とを選定し、続いて、フォワード及びリバースプライマーの組合せの二次構造予測を行った。これらのフォワードプライマーとリバースプライマーの組合せとして考えられる35パターンについて、それぞれの二次構造をRNAstructureにより予測し、上記i)〜iii)の条件を全て満たす組合せを探した。その結果、フォワードプライマー候補F10とリバースプライマー候補R1との組合せのみが上記i)〜iii)を全て満たすことが分かった。以上の結果から、クライテリア1〜7を満たすプライマーとして、フォワードプライマーF10(GGTGAAACCCCGTCTCTACT;配列番号18)及びリバースプライマーR1(GGTTCAAGCGATTCTCCTGC;配列番号19)が選定された。
(1)プローブの必要性について
リアルタイムPCRにおいて蛍光を検出する方法としては、増幅産物に非特異的に結合する試薬を用いるインターカレーター法と、増幅産物に特異的なヌクレオチド配列に結合する試薬を用いるプローブ法の2種類がある。インターカレーター法では非特異的なヌクレオチド配列も検出されてしまうため、特異性の観点からプローブ法の方が優れていると一般的に考えられている。また、本発明では、リアルタイムPCRによりサンプルに含まれるAluのコピー数を測定することを目指しているが、ゲノム中ではAlu同士の距離が20ヌクレオチド以下となるような非常に近い位置に存在する場合も多いため(Stenger, J.E., Lobachev, K.S., Gordenin, D., Darden, T.A., Jurka, J. and Resnick, M.A. (2001) Biased distribution of inverted and direct Alus in the human genome: implications for insertion, exclusion, and genome stability. Genome Res, 11, 12-27.)、PCR酵素の伸張時間などによって単一のAluのみを増幅する条件を設定することはほとんど不可能である。このため、本発明者らは、リアルタイムPCRによるAlu定量のためにはプローブ法が適していると考え、実施例8で選定したフォワード及びリバースプライマー(F10及びR1)と組み合わせて使用するプローブの選定を行った。
プライマー設計プログラムPrimer3を用いて、フォワードプライマーF10及びリバースプライマーR1により増幅される領域におけるプローブ候補を選定した。具体的には、Primer3において、以下のi)〜vii)のパラメータのみ設定を変更し、それ以外は全てデフォルトの設定を用いて、ヒトAluモデル配列のポジション#120〜#186のヌクレオチド配列を入力した。
i)Pick left primer, or use left primer below値:チェックを外す
ii)Pick right primer, or use right primer below (5' to 3' on opposite strand)値:チェックを外す
iii)Pick hybridization probe (internal oligo), or use oligo below値:チェックする
iv)Task値:pick_primer_list
v)Numbers To Return値:100
vi)Internal Oligo Mishyb Library値:RODENT_AND_SIMPLE
vii)Internal Oligo TmのMax値:68℃
上記i)〜vii)の設定はプローブを設計するためのものであり、上記iv)及びv)の設定は設計できる全てのプライマー配列を得るためのものであり、上記vi)の設定はげっ歯類配列との交叉を避けるためのものである。また、上記vii)の設定は、プローブのTm値はプライマーのTmより10℃程度高いことが望ましいという報告に基づいたものである(Holland, P.M., Abramson, R.D., Watson, R. and Gelfand, D.H. (1991) Detection of specific polymerase chain reaction product by utilizing the 5'----3' exonuclease activity of Thermus aquaticus DNA polymerase. Proc Natl Acad Sci U S A, 88, 7276-7280.、Bustin, S.A. (2000) Absolute quantification of mRNA using real-time reverse transcription polymerase chain reaction assays. Journal of molecular endocrinology, 25, 169-193.)。この選定の結果、76個のプローブ候補が得られた。
クライテリア8によるプローブの選定は、クライテリア1と同様に、図8を用いて行った。具体的には、選定の対象となるプローブ候補の5’末端が図8の白で示されたポジション(ポジション#36、42〜56、63〜67、85、88〜95、99〜111、121〜127、137〜139、187〜238、244〜249、及び252〜260)である場合には該プローブ候補はクライテリア8を満たすと判断し、選定の対象となるプローブ候補の5’末端が図8のグレーで示されたポジション(ポジション#1〜35、37〜41、57〜62、68〜84、86、87、96〜98、112〜120、128〜136、140〜186、239〜243、250、251、及び261〜264)である場合には該プローブ候補はクライテリア8を満たさないと判断した。その結果、上記76個のプローブ候補のうち、25個がクライテリア8を満たすことが分かった。さらに、この25個のプローブ候補から、クライテリア9による選定を目視にて行い、20個のプローブ候補を選定した。
選定された20個のプローブ候補はいずれもヒトAluモデル配列のポジション#121〜#146の領域内のヌクレオチド配列であった。ここで、本発明者らは、ヒトAluモデル配列のポジション#121〜#146の領域中に、マウス、ラット、及びギニアピッグのゲノム中の19ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列と同一のヌクレオチド配列が含まれていないかを再度確認した。具体的には、ヒトAluモデル配列のポジション#121〜#146のヌクレオチド配列を入力配列として、マウス、ラット、及びギニアピッグのゲノム全体のBLAST検索(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi)を行った。使用した検索データベースは、以下の通りである。
マウスゲノム:all assemblies top-level, Annotation Release 105
ラットゲノム:all assemblies, Annotation Release 105
ギニアピッグゲノム:Cavpor3.0 reference Annotation Release 102
探索パラメータは、以下を除いて初期パラメータで行った。
Program selection:Megablast
Short queries: off
Word size: 16;
Match/Mismatch Scores:1, -4
Gap Costs:5, 2
Filters and Masking:off
このBLAST検索の結果、ヒトAluモデル配列のポジション#128を開始点とする19ヌクレオチドのヌクレオチド配列(ポジション#128〜#146)と100%マッチするヌクレオチド配列が、げっ歯類ゲノム中に存在することが新たに分かった。この結果を考慮すると、クライテリア8及び9の両方を満たすプローブ候補は以下の表3に示す13個に絞られた。また、プローブはセンス鎖・アンチセンス鎖のどちらであってもよいので、表3に示す13個のプローブ配列に加えて、表4に示すそれらの相補配列もプローブ候補として選定した。
Rochester大学のMathews Lab(http://rna.urmc.rochester.edu/index.html)から提供される二次構造予測プログラムRNAstructure(RNAstructure version 5.6)を用いて、表3及び4に示されるプローブ候補の中からクライテリア10及び11を満たすものを選定した。具体的には、まず、表3及び表4に示される26個のプローブ候補のそれぞれについて、同一のヌクレオチド配列からなる2つの分子間で形成される二次構造をRNAstructureにより予測し、i)いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;ii)いずれか一方の分子に含まれる連続する5ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;というi)及びii)の条件を満たすか否かを確認した。その結果、表3及び4に記載の26個のプローブ候補全てが、上記i)及びii)を満たすことが分かった。
次に、表3及び表4に示される26個のプローブ候補のそれぞれと、フォワードプライマーF10及びリバースプライマーR1との間で形成される二次構造をRNAstructureにより予測し、上記i)及びii)の条件を満たすか否かを確認した。その結果、表3及び4に記載の26個のプローブ候補全てが、上記i)及びii)を満たすことが分かった。以上のことから、表3及び4に記載の26個のプローブ候補はいずれも、クライテリア10及び11を満たすことが分かった。
また、本発明者らは、クライテリア8〜15を満たすP16は最もプローブに適していると考えられるが、クライテリア8〜11、13、及び15を満たすP11とP13、クライテリア8〜13、及び15を満たすP21も、P16と同程度のプローブとしての機能を果たすであろうと予測した。したがって、本発明者らは、P11、P13、P16、及びP21を本発明のプローブとして選択した。
以上のようにして、本発明のAlu−qPCRに用いるフォワードプライマーとしてF10(GGTGAAACCCCGTCTCTACT;配列番号18)が、リバースプライマーとしてR1(GGTTCAAGCGATTCTCCTGC;配列番号19)が、プローブとしてP11(ATACAAAAATTAGCCGGGCG;配列番号37)、P13(TACAAAAATTAGCCGGGCGT;配列番号39)、P16(CGCCCGGCTAATTTTTGTAT;配列番号42)、及びP21(ACGCCCGGCTAATTTTTGTA;配列番号47)が選定された。
以下、プローブP16、フォワードプライマーF10、及びリバースプライマーR1の組合せを「本発明のプライマー・プローブセットA」と、プローブP11、フォワードプライマーF10、及びリバースプライマーR1の組合せを「本発明のプライマー・プローブセットB」、プローブP13、フォワードプライマーF10、及びリバースプライマーR1の組合せを「本発明のプライマー・プローブセットC」と、プローブP21、フォワードプライマーF10、及びリバースプライマーR1の組合せを「本発明のプライマー・プローブセットD」と、それぞれ称する場合がある。さらに、上記本発明のプライマー・プローブセットA〜Dを総称して「本発明の20ntのプライマー・プローブセット」と称する場合がある。
(1)リアルタイムPCRの条件
フォワードプライマーF10、リバースプライマーR1、及びプローブP16を合成し、さらに、プローブは5’末端をFAMで、3’末端をBHQ1でそれぞれ標識した。また、実施例3に記載のテンプレート1〜4に加えて、以下のテンプレート5及び6を用いた(なお、テンプレート5及び6の調製にはTEバッファーを用いた)。
テンプレート5:50ng/μLのラットゲノムDNA
テンプレート6:0.5fg/μLから5ng/μLまでの8段階の濃度のヒトゲノムDNAと、ラットゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製した混合スタンダードサンプル
本発明のプライマー・プローブセットAと上記テンプレート1〜6とを用いて以下のようにPCRサンプルを調製した。
テンプレート 2μL
TaqMan Universal Master MixII, no UNG
(Applied Biosystems社製) 10μL
フォワードプライマー(10μM) 0.4μL
リバースプライマー(10μM) 0.4μL
プローブ(12.5μM) 0.5μL
水 6.7μL
トータル 20μL
7500 real−time PCR instrument(Applied Biosystems社製)を用いて、以上のように調製したPCRサンプルのリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で15秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを50回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
図13〜15に結果を示す。テンプレート1を用いたリアルタイムPCRの結果、Ct値は40程度か、又は、シグナルが全く検出されない場合もあった(図13及び14の「Buf.」)。これらの結果は、本発明のプライマー・プローブセットAにおいてはプライマー/プローブ間の非特異的な結合が殆ど形成されないことを示唆する。また、テンプレート2及び5を用いたリアルタイムPCRにおいても、Ct値は40以上であった(図14の「Mouse」、図15の「Rat」)。これらの結果は、本発明のプライマー・プローブセットAはマウス及びラットゲノムDNAのいずれにも非特異的に結合することがほとんどないことを示している。
さらに、テンプレート3のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成すると、ヒトゲノムDNAの量が0.1fg〜1ngの間で直線性が認められた(図13)。すなわち、テンプレートがヒトゲノムDNAのみを含む場合には、本発明のプライマー・プローブセットAにより0.1fgまでの検出が可能であることが明らかとなった。また、テンプレート4のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成すると、ヒトゲノムDNAの量が1fg〜10ngの間で直線性が認められた(図14)。さらに、テンプレート6のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成すると、ヒトゲノムDNAの量が1fg〜10ngの間で直線性が認められた(図15)。すなわち、ヒトゲノムDNAとマウス又はラットゲノムDNAとを含むサンプルをテンプレートとして用いた場合であっても、本発明のプライマー・プローブセットAにより1fgのヒトゲノムDNAを検出することが可能であることが明らかとなった。これらの結果から、本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu−qPCRにより、ほぼ理論的検出限界に近い感度でAluを検出・定量することが可能であることが示された。
フォワードプライマーF10、リバースプライマーR1、及びプローブP13を合成し、さらに、プローブは5’末端をFAMで、3’末端をBHQ1でそれぞれ標識した。また、本発明のプライマー・プローブセットCと、上記テンプレート1、3、5、及び6とを用いて実施例11と同様にPCRサンプルを調製し、7500 real−time PCR instrument(Applied Biosystems社製)を用いてリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で15秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを50回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
図16に結果を示す。テンプレート1を用いたリアルタイムPCRの結果、Ct値は50程度であった(図16の「Buf.」)。これの結果は、本発明のプライマー・プローブセットCにおいてはプライマー/プローブ間の非特異的な結合が殆ど形成されないことを示唆する。また、テンプレート5を用いたリアルタイムPCRにおいても、Ct値は40以上であった(図16の「Rat」)。これらの結果は、本発明のプライマー・プローブセットCはラットゲノムDNAに非特異的に結合することがほとんどないことを示している。
さらに、テンプレート6のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成すると、ヒトゲノムDNAの量が1fg〜10ngの間で直線性が認められた(図16)。すなわち、テンプレートがヒトゲノムDNAとラットゲノムDNAとを含む場合であっても、本発明のプライマー・プローブセットCにより1fgのヒトゲノムDNAを検出することが可能であることが明らかとなった。これらの結果から、本発明のプライマー・プローブセットCを用いたAlu−qPCRにより、ほぼ理論的検出限界に近い感度でAluを検出・定量することが可能であることが示された。
フォワードプライマーF10、リバースプライマーR1、及びプローブP21を合成し、さらに、プローブは5’末端をFAMで、3’末端をBHQ1でそれぞれ標識した。また、本発明のプライマー・プローブセットDと、上記テンプレート1、3、5、及び6とを用いて実施例11と同様にPCRサンプルを調製し、7500 real−time PCR instrument(Applied Biosystems社製)を用いてリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で15秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを50回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
図17に結果を示す。テンプレート1を用いたリアルタイムPCRの結果、Ct値は検出できなかった(図17の「Buf.」)。これの結果は、本発明のプライマー・プローブセットDにおいてはプライマー/プローブ間の非特異的な結合が殆ど形成されないことを示唆する。また、テンプレート5を用いたリアルタイムPCRにおいても、Ct値は40以上であった(図17の「Rat」)。これらの結果は、本発明のプライマー・プローブセットDはラットゲノムDNAに非特異的に結合することがほとんどないことを示している。
さらに、テンプレート6のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成すると、ヒトゲノムDNAの量が1fg〜10ngの間で直線性が認められた(図17)。すなわち、テンプレートがヒトゲノムDNAとラットゲノムDNAとを含む場合であっても、本発明のプライマー・プローブセットDにより1fgのヒトゲノムDNAを検出することが可能であることが明らかとなった。これらの結果から、本発明のプライマー・プローブセットDを用いたAlu−qPCRにより、ほぼ理論的検出限界に近い感度でAluを検出・定量することが可能であることが示された。
(1)異種移植モデルマウスの作製とDNAの抽出
NOD−scidマウス(7週齢、雄)の尾静脈に、50万細胞のヒト間葉系幹細胞(ヒトMSC)を注射投与して異種移植モデルマウスを作製した(計18例)。投与から1日、3日、及び1週間後にマウスを安楽死させて肺、腎臓、肝臓を摘出し(各6例ずつ)、すぐに液体窒素で凍結させて−80℃で保存した。各臓器を凍結粉砕して、200μg/mLのRNase A及び1000U/mLのRNase T1を含むLysisバッファーを加え、37℃で1時間インキュベートした。続いて、プロテイナーゼK溶液(和光純薬工業社製)を最終濃度が100μg/mLとなるよう加え、50℃で2晩インキュベートした後に、同量のPCI(ナカライテスク社製)を加えてボルテックスで混和した。遠心分離(最大速度、4℃、15分間)して、水層(上層)を回収し、再度PCIを加えてボルテックスで混和して遠心分離(最大速度、4℃、15分間)した。水層を回収して、0.2倍量の10M酢酸アンモニウム(Nippon Gene社製)及び2.5倍量の100%EtOH(和光純薬社製)を加えて転倒混和した後に、遠心分離した(最大速度、4℃、15分間)。上清を完全に除去して70%EtOHで洗浄し、ペレットを10分間風乾させた後に、TEバッファー(pH8.0)を適量加えてペレットを溶解させた。得られたサンプル中に含まれるDNA濃度をPicoGreen DNA定量法により測定した。また、ヒトMSCを投与していないコントロールマウス(計3例)からも肺、腎臓、及び肝臓を採取し、上記と同様の方法でゲノムDNAを抽出して定量した。
上記(1)により抽出したゲノムDNAを用いて、以下のようにテンプレート7〜15を調製した。なお、テンプレート9、12、及び15は定量対象サンプルであり、異種移植モデルマウスの各臓器から抽出したゲノムDNAを50ng/μLとなるように希釈して作製した。テンプレート7、10、及び13はそれぞれ、テンプレート9、12、及び15に対応するネガティブコントロールサンプルである。また、テンプレート8、11、及び14はそれぞれ、テンプレート9、12、及び15の定量のための検量線を作成するためのスタンダードサンプルサンプルである。なお、テンプレート7〜15の調製にはTEバッファーを用いた。
テンプレート7:
50ng/μLのコントロールマウスの肺由来のゲノムDNA
テンプレート8:
0.5fg/μLから5ng/μLまでの8段階の濃度のヒトゲノムDNAと、コントロールマウスの肺由来のゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製した混合スタンダードサンプル
テンプレート9:
ヒトMSC移植後1日、3日、又は1週間後の異種移植モデルマウスの肺由来のゲノムDNAを50ng/μLの濃度で含むサンプル
テンプレート10:
50ng/μLのコントロールマウスの腎臓由来のゲノムDNA
テンプレート11:
0.5fg/μLから5ng/μLまでの8段階の濃度のヒトゲノムDNAと、コントロールマウスの腎臓由来のゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製した混合スタンダードサンプル
テンプレート12:
ヒトMSC移植後1日、3日、又は1週間後の異種移植モデルマウスの腎臓由来のゲノムDNAを50ng/μLの濃度で含むサンプル
テンプレート13:
50ng/μLのコントロールマウスの肝臓由来のゲノムDNA
テンプレート14:
0.5fg/μLから5ng/μLまでの8段階の濃度のヒトゲノムDNAと、コントロールマウスの肝臓由来のゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製した混合スタンダードサンプル
テンプレート15:
ヒトMSC移植後1日、3日、又は1週間後の異種移植モデルマウスの肝臓由来のゲノムDNAを50ng/μLの濃度で含むサンプル
本発明のプライマー・プローブセットAと、上記テンプレート7〜15とを用いて実施例11と同様にPCRサンプルを調製し、7500 real−time PCR instrument(Applied Biosystems社製)を用いて、調製したサンプルのリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で15秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを50回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
テンプレート8により得られたCt値に基づいて検量線を作成したところ、ヒトゲノムDNAの量が10fg〜10ngの間で直線性が認められた(図18(a))。この検量線に基づいて、テンプレート9に含まれるヒトゲノムDNA量を算出した。その結果、MSC移植1日、3日、1週間後のサンプルには、それぞれ、平均24.775pg/μL、3.186pg/μL、及び0.232pg/μLのヒトゲノムDNAが含まれていることが明らかとなった。また、この数値に、テンプレート9を調製の際の希釈倍率と、肺から抽出したゲノムDNAの全容量(μL)とを乗じて、異種移植モデルマウスの肺全体に含まれるヒトゲノムDNA量を算出した。その結果、MSC移植1日、3日、1週間後の肺全体には、それぞれ、79345.527pg、8851.071pg、及び674.765pgのヒトゲノムDNAが含まれることが明らかとなった。さらに、1個のヒト細胞に含まれるゲノムDNAの重量を6pgとして、異種移植モデルマウスの肺全体に含まれるヒトMSCの数を算出した。その結果、ボックスプロットにおける中央値で、MSC移植1日後の肺には1万個以上のMSCが存在するが、3日後には1316個、1週間後には74個に減少することが分かった(図18(b))。
テンプレート11により得られたCt値に基づいて検量線を作成したところ、ヒトゲノムDNAの量が1fg〜10ngの間で直線性が認められた(図19(a))。この検量線に基づいて、テンプレート12に含まれるヒトゲノムDNA量を算出した。その結果、MSC移植1日、3日、1週間後のサンプルには、それぞれ、平均0.0782pg/μL、0.0095pg/μL、及び0.0014pg/μLのヒトゲノムDNAが含まれていることが明らかとなった(図19(a))。また、この数値に、テンプレート12を調製の際の希釈倍率と、腎臓から抽出したゲノムDNAの全容量(μL)とを乗じて、異種移植モデルマウスの腎臓全体に含まれるヒトゲノムDNA量を算出した。その結果、MSC移植1日、3日、1週間後の腎臓全体には、それぞれ、1260.5989pg、165.4567pg、及び25.8333pgのヒトゲノムDNAが含まれることが明らかとなった。さらに、1個のヒト細胞に含まれるゲノムDNAの重量を6pgとして、異種移植モデルマウスの腎臓全体に含まれるヒトMSCの数を算出した。その結果、ボックスプロットにおける中央値で、MSC移植1日後の腎臓には191個のMSCが存在しており、3日後には22個、1週間後には4個に減少することが分かった(図19(b))。以上のことから、異種移植モデルマウスにおいて、移植から1週間後でもMSCが腎臓に存在していることが明らかとなった。従来の報告では、尾静注によってヒト細胞を移植された異種移植モデルマウスにおいては、肺以外にはヒト細胞の生着は認められないとされていた。図19に示す結果は、移植されたヒトMSCが、マウス腎臓に生着することを示すはじめての結果である。
テンプレート14により得られたCt値に基づいて検量線を作成したところ、ヒトゲノムDNAの量が10fg〜10ngの間で直線性が認められた(図20(a))。この検量線に基づいて、テンプレート15に含まれるヒトゲノムDNA量を算出した。その結果、MSC移植1日後のサンプルには、平均0.023pg/μLのヒトゲノムDNAが含まれていることが明らかとなった(図20(a))。3日後、1週間後のサンプルは検出限界以下であった。また、この数値に、テンプレート15を調製の際の希釈倍率と、肝臓から抽出したゲノムDNAの全容量(μL)とを乗じて、異種移植モデルマウスの肝臓全体に含まれるヒトゲノムDNA量を算出した。その結果、MSC移植1日後の肝臓全体には、715.940pgのヒトゲノムDNAが含まれることが明らかとなった。さらに、1個のヒト細胞に含まれるゲノムDNAの重量を6pgとして、異種移植モデルマウスの肝臓全体に含まれるヒトMSCの数を算出した。その結果、ボックスプロットにおける中央値で、MSC移植1日後の肝臓には107個のMSCが存在していたが、3日後及び1週間後では検出限界以下となることが分かった(図20(b))。
(1)腎皮膜下移植モデルマウスの作製とDNAの抽出
培養したヒト線維芽細胞(NHDF細胞)をPBS中に懸濁して段階希釈することにより、1000細胞/50μL、100細胞/50μL、及び10細胞/50μLの細胞懸濁液を調製した。イソフルランを用いてマウスに麻酔をかけ、背部を切って腎臓を露出させた後、腎皮膜を破らないように注射針(30G)を刺し、上記細胞懸濁液(それぞれ50μL)を注射投与した。手術部位を縫合して12時間後にマウスを安楽死させ、腎臓を摘出し、すぐに液体窒素で凍結させて−80℃で保存した。実施例14と同様の方法により、腎臓からゲノムDNAを抽出して濃度を測定した。
上記(1)により抽出したゲノムDNAを用いて、以下のようにテンプレート16及び17を調製した。テンプレート17は定量対象サンプルであり、テンプレート16は検量線を作成するためのスタンダードサンプルサンプルである。これらのテンプレートと本発明のプライマー・プローブセットAとを用いて、実施例14と同様の条件でPCRを行った。なお、テンプレート16及び17の調製にはTEバッファーを用いた。
テンプレート16:
腎皮膜下移植モデルマウスの腎臓由来のゲノムDNAを50ng/μLの濃度で含むサンプル
テンプレート17:
0.5fg/μLから5ng/μLまでの8段階の濃度のヒトゲノムDNAと、コントロールマウスの腎臓由来のゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製した混合スタンダードサンプル
上記PCRによって、10、100、及び1000細胞のNHDF細胞が移植されたマウス腎臓におけるヒトゲノムDNA量を定量した。PCRの結果に基づいて、各マウス腎臓におけるヒト細胞の数を算出したところ、10細胞を移植した腎臓では3個程度の、100細胞を移植した腎臓では50個程度の、1000細胞を移植した腎臓では300個程度のヒト細胞が存在することが明らかとなった(図21)。
本発明のプライマー・プローブセットAが、様々な動物種ゲノムに対して交叉する可能性を調べた。具体的には、フォワードプライマーF10(GGTGAAACCCCGTCTCTACT;配列番号18)、リバースプライマーR1(GGTTCAAGCGATTCTCCTGC;配列番号19)、及びプローブP16(CGCCCGGCTAATTTTTGTAT;配列番号42)のそれぞれに含まれる16〜20ヌクレオチドの配列について、様々な生物種(マウス、ラット、ギニアピッグ、クマ、ウシ、ウサギ、ニワトリ、ブタ、及び微生物)のゲノム全体に対するBALST検索を行った。使用した検索データベースは、以下の通りである。
マウスゲノム:GPIPE/10090/105/all_top_level
ラットゲノム:GPIPE/10116/105/all_top_level
ギニアピッグゲノム:GPIPE/10141/102/ref_top_level
クマゲノム:GPIPE/29073/100/ref_top_level
ウシゲノム:GPIPE/9913/105/ref_top_level
ウサギ:GPIPE/9986/102/ref_top_level
ニワトリ:GPIPE/9031/103/ref_top_level
ブタ:GPIPE/9823/105/ref_top_level
微生物:prok_complete_genomes及びref_prok_rep_genomes
探索パラメータは、以下を除いて初期パラメータで行った。
Program selection:Megablast
Short queries: off
Word size: 16;
Match/Mismatch Scores:1, -4
Gap Costs:5, 2
Filters and Masking:off
(1)ヒトゲノムDNAの断片化
本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu−qPCRにより、断片化されたヒトゲノムDNAをどの程度の感度で定量することが可能かを調べた。具体的には、DNA Shearing システム M220(コバリス社製)を用いて、ヒトゲノムDNAを3つのサイズ(20kbp、1000bp、及び250bp)に断片化した。そして、LabChip GX Touchシステム(パーキンエルマー社製)を用いて、DNAが所望の長さに断片化されていることを確認した(図23〜25)。
(2)テンプレートの調製
次に、上記(1)により作製した断片化ヒトゲノムDNA(20kbp、1000bp、及び250bp)を、EASY Dilutionバッファーを用いて段階希釈し、以下のようにテンプレート18〜20を調製した。
テンプレート18:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度の、20kbpに断片化されたヒトゲノムDNAを含むサンプル
テンプレート19:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度の、1000bpに断片化されたヒトゲノムDNAを含むサンプル
テンプレート20:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度の、250bpに断片化されたヒトゲノムDNAを含むサンプル
(3)リアルタイムPCR
本発明のプライマー・プローブセットAと、上記テンプレート18〜20とを用いて実施例11と同様にPCRサンプルを調製し、LightCycler480リアルタイムPCRシステム(ロシュ・ライフサイエンス社製)用いてリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で30秒、56℃で4分30秒、及び72℃で30秒のサイクルを5回繰り返し、さらにその後、95℃で30秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを45回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
(4)断片化DNAに対する感度
上記(3)のリアルタイムPCRの結果を図26〜28に示す。テンプレート18〜20(20kbp、1000bp、及び250bpの長さの断片化DNAを用いたスタンダードサンプル)のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成したところ、いずれの場合でも10fg〜10ngの間で検量線の直線性が認められた(図26〜28)。これらの結果から、本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu−qPCRは、定量対象サンプルに含まれるDNAが高度に断片化されている場合であっても、その感度を維持できることが示された。
(1)ニワトリ、ブタ、ウシ、及びイヌゲノムDNAの抽出
家畜・ペット動物由来ゲノムDNAが混在したサンプルにおける、本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu−qPCRの定量限界を調べた。具体的には、市販の食用ニワトリ肉、ブタ肉、及びウシ肉を液体窒素で凍結し、実施例14と同様の方法によりそれぞれのゲノムDNAを抽出して濃度を測定した。また、イヌ(ビーグル)から採取した血液(1mL)から、QIAamp DNA Blood Midi Kit(QIAGEN社製)を用いてゲノムDNAを抽出し、実施例14と同様の方法で濃度を測定した。
(2)テンプレートの調製
上記(1)により抽出したニワトリ、ブタ、ウシ、及びイヌゲノムDNAを用いて、以下のようにテンプレート21〜28を調製した。テンプレート21、23、25、及び27はそれぞれ、テンプレート22、24、26、及び28に対応するネガティブコントロールサンプルである。
テンプレート21:
50ng/μLのニワトリゲノムDNA
テンプレート22:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度のヒトゲノムDNAと、ニワトリゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製したニワトリゲノム混合スタンダードサンプル
テンプレート23:
50ng/μLのブタゲノムDNA
テンプレート24:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度のヒトゲノムDNAと、ブタゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製したブタゲノム混合スタンダードサンプル
テンプレート25:
50ng/μLのウシゲノムDNA
テンプレート26:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度のヒトゲノムDNAと、ウシゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製したウシゲノム混合スタンダードサンプル
テンプレート27:
50ng/μLのイヌゲノムDNA
テンプレート28:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度のヒトゲノムDNAと、イヌゲノムDNAとをトータルで50ng/μLの濃度となるように調製したイヌゲノム混合スタンダードサンプル
本発明のプライマー・プローブセットAと、上記テンプレート21〜28とを用いて実施例11と同様にPCRサンプルを調製し、LightCycler480リアルタイムPCRシステム(ロシュ・ライフサイエンス社製)用いてリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で30秒、56℃で4分30秒、及び72℃で30秒のサイクルを5回繰り返し、さらにその後、95℃で30秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを45回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
(4)家畜・ペット動物由来ゲノムDNA混合サンプルにおける感度
上記(3)のリアルタイムPCRの結果を図29〜32に示す。テンプレート22(ニワトリゲノム混合スタンダードサンプル)及び26(ウシゲノム混合スタンダードサンプル)のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成したところ、ヒトゲノムDNAの量が1fg〜10ngの間で直線性が認められた(図29及び31)。また、テンプレート24(ブタゲノム混合スタンダードサンプル)及び28(イヌゲノム混合スタンダードサンプル)のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成したところ、ヒトゲノムDNAの量が10fg〜10ngの間で直線性が認められた(図30及び32)。これらの結果から、本発明のプライマー・プローブセットAを用いたAlu−qPCRによれば、ニワトリ、ブタ、ウシ、及びイヌゲノムDNAが多量に混在したサンプルからでも、微量のヒトゲノム(検出限界:1〜10fg)を特異的に検出・定量することが可能であることが示された。
(1)古人骨からのDNAの抽出
古人骨等の陳旧試料に含まれるヒトゲノムDNAは、微量かつ断片化が進んでいること、また、土壌中に存在する様々な他生物ゲノムDNAによって汚染されていることから、その定量は困難であることが知られている。本実験では、本発明のAlu−qPCRによって江戸時代(1600〜1800年ごろ)の古人骨由来のサンプル中に含まれるヒトゲノムDNAの定量を行った。具体的には、江戸時代古人骨(畑内遺跡から出土した3個体;以下それぞれ「畑内17号」、「畑内26号」、「畑内45号」と称する)からAdachi et al.(Phylogenetic analysis of the human ancient mitochondrial DNA. J. Archaeol. Sci., 31, 1339-1348. 2004)に記載の方法によって採取された試料を以下の実験に用いた。
(2)テンプレートの調製
上記(1)により抽出したゲノムDNAを用いて、以下のようにテンプレート29〜32を調製した。なお、テンプレート30〜32は定量対象サンプルであり、古人骨から抽出した1μLのゲノムDNAサンプルを用いた。また、テンプレート29は、テンプレート30〜32の定量のための検量線を作成するためのスタンダードサンプルサンプルである。
テンプレート29:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度の、1kbpに断片化されたヒトゲノムDNAを含むスタンダードサンプル
テンプレート30:
畑内17号由来のサンプル
テンプレート31:
畑内26号由来のサンプル
テンプレート32:
畑内45号由来のサンプル
本発明のプライマー・プローブセットAと、上記テンプレート29〜32とを用いて実施例11と同様にPCRサンプルを調製し、LightCycler480リアルタイムPCRシステム(ロシュ・ライフサイエンス社製)を用いてリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で30秒、56℃で4分30秒、及び72℃で30秒のサイクルを5回繰り返し、さらにその後、95℃で30秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを45回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
(4)古人骨由来サンプルの定量
テンプレート29〜32のリアルタイムPCRにより得られた増幅曲線を図33に、テンプレート29のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて作成した検量線を図34にそれぞれ示す。図33に示すように、古人骨由来サンプル(テンプレート30〜32)の増幅曲線はいずれも検量線が直線の範囲(10fg〜10ng)に入っており、本発明のAlu−qPCRによって正確に定量できることが明らかとなった。また、図34に示す検量線に基づいて、テンプレート30〜32に含まれるヒトゲノムDNA量を算出した結果、畑内17号、畑内26号、及び畑内45号由来のサンプルには、それぞれ2.19pg/μL、0.11pg/μL、及び0.61pg/μLのヒトゲノムDNAが含まれていることが明らかとなった(図35)。
(1)プローブ法による従来技術と本発明との比較
既知のプローブ法によるAlu−qPCR用PCRプライマー・プローブセット(以下の文献1〜5に記載されたプライマー・プローブセット)が、上記クライテリア1〜11を満たすか否かを確認した。その結果、図36に示すように、既知のプローブ法によるAlu−qPCR用PCRプライマー・プローブセットはいずれも、「本発明のプライマー対設計方法」及び「本発明のプローブ設計方法」を満たすものではないことが明らかとなった。
文献1:McBride, C., Gaupp, D. & Phinney, D. G. Quantifying levels of transplanted murine and human mesenchymal stem cells in vivo by real-time PCR. Cytotherapy 5, 7-18 (2003).
文献2:Nicklas, J. A. & Buel, E. Simultaneous determination of total human and male DNA using a duplex real-time PCR assay. J. Forensic Sci. 51, 1005-1015 (2006).
文献3:Preston Campbell, J. et al. TRIzol and Alu qPCR-based quantification of metastatic seeding within the skeleton. Sci. Rep. 5, 12635; 10.1038/srep12635 (2015).
文献4:Walker, J. A. et al. Multiplex polymerase chain reaction for simultaneous quantitation of human nuclear, mitochondrial, and male Y-chromosome DNA: application in human identification. Anal. Biochem. 337, 89-97 (2005).
文献5:Zhang, W. et al. Development and qualification of a high sensitivity, high throughput Q-PCR assay for quantitation of residual host cell DNA in purification process intermediate and drug substance samples. J. Pharm. Biomed. Anal. 100, 145-149 (2014).
既知のインターカレーター法によるAlu−qPCR用PCRプライマーセット(以下の文献6〜13に記載されたプライマーセット)が、上記クライテリア1〜7を満たすか否かを確認した。さらに、上記の既知プライマー・プローブセットのTm値を算出するとともに、各配列についてヒト及びげっ歯類ゲノムに対するBLAST検索した。
その結果、図38に示すように、既知のインターカレーター法によるAlu−qPCR用PCRプライマーセットはいずれも、「本発明のプライマー対設計方法」を満たすものではないことが明らかとなった。また、以下の文献6〜13のプライマーセットはいずれも、その中に含まれる連続する18塩基からなる配列と同一の配列が、マウス、ラット及び/又はギニアピッグのゲノム中に2ヶ所以上存在することが明らかとなった。
文献6:Mira, E., Lacalle, R. A., Gomez-Mouton, C., Leonardo, E. & Manes, S. Quantitative determination of tumor cell intravasation in a real-time polymerase chain reaction-based assay. Clin. Exp. Metastasis 19, 313-318 (2002).
文献7:Nehmann, N., Wicklein, D., Schumacher, U. & Muller, R. Comparison of two techniques for the screening of human tumor cells in mouse blood: quantitative real-time polymerase chain reaction (qRT-PCR) versus laser scanning cytometry (LSC). Acta Histochem. 112, 489-496 (2010).
文献8:Nicklas, J. A. & Buel, E. Development of an Alu-based, real-time PCR method for quantitation of human DNA in forensic samples. J. Forensic Sci. 48, 936-944 (2003).
文献9:Opel, K. L., Fleishaker, E. L., Nicklas, J. A., Buel, E. & McCord, B. R. Evaluation and quantification of nuclear DNA from human telogen hairs. J. Forensic Sci. 53, 853-857 (2008).
文献10:Schneider, T., Osl, F., Friess, T., Stockinger, H. & Scheuer, W. V. Quantification of human Alu sequences by real-time PCR--an improved method to measure therapeutic efficacy of anti-metastatic drugs in human xenotransplants. Clin. Exp. Metastasis 19, 571-582 (2002).
文献11:Umetani, N. et al. Increased integrity of free circulating DNA in sera of patients with colorectal or periampullary cancer: direct quantitative PCR for ALU repeats. Clin. Chem. 52, 1062-1069 (2006).
文献12:Walker, J. A. et al. Human DNA quantitation using Alu element-based polymerase chain reaction. Anal. Biochem. 315, 122-128 (2003).
文献13:Witt, N. et al. An assessment of air as a source of DNA contamination encountered when performing PCR. J. Biomol. Tech. 20, 236-240 (2009).
(1)クライテリアの改良
実施例17に記載のとおり、本発明の20ntのプライマー・プローブセットを用いたAlu−qPCRは、被験試料中のDNAが250bpの長さに断片化された場合であっても、高感度にヒトゲノムDNAを検出・定量できることが確認された。そこで本発明者らは、さらに小さなサイズ(100bp)に断片化されたヒトゲノムDNAを定量できるプライマー・プローブセットの設計を試みた。具体的には、本発明者らは、18ヌクレオチド長以上のプライマー及び/又はプローブを設計するために、上記クライテリア1、2、5、及び7〜10を改良して、以下の修正クライテリア1、2、5、及び7〜10を設定した(下線は変更箇所を示す)。
[修正クライテリア2]フォワードプライマー及びリバースプライマーのヌクレオチド長がそれぞれ18以上である;
[修正クライテリア5]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[修正クライテリア7]フォワードプライマー同士、及びリバースプライマー同士の二分子間において、いずれか一方の分子に含まれるG又はCからなる連続する4ヌクレオチド以上のヌクレオチド配列と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
[修正クライテリア8]プローブ中の連続した17以上のヌクレオチドからなるヌクレオチド配列が、非ヒト生物からなる群から選択される1種又は2種以上のゲノムDNAのヌクレオチド配列中に2ヶ所以上存在しない;
[修正クライテリア9]プローブのヌクレオチド長が18以上である;
[修正クライテリア10]フォワードプライマーとプローブ、及びリバースプライマーとプローブの二分子間において、いずれか一方の分子の3’末端から3番目までのヌクレオチド配列(3’末端から1〜3番目のヌクレオチド配列)と相補的なヌクレオチド配列を、もう一方の分子が含まない;
プライマー設計プログラムPrimer3web4.1.0を用いてヒトAluモデル配列から複数のプライマー候補を選定した。具体的には、Primer3の「Old Secondary Structure Alignments」を使用し、パラメータを以下のように設定した上で、ヒトAluモデル配列(ポジション#1〜#300)を入力した。
i)Max Self Complementarity:5.0
ii)Max 3’ Self Complementarity:4.0
iii)Max Pair Complementarity:5.0
iv)Max 3' Pair Complementarity:5.0
次に、Primerによって選定された候補の中から、図40を用いてクライテリア1’を満たす候補を選定した後に、さらに、クライテリア2’、5’、及び7’を満たすプライマー対を選定した。このようにして選定された39個のフォワードプライマー候補(F1’〜F39’)及び20個のリバースプライマー候補(R1’〜R20’)を、表5及び6にそれぞれ示す。表5及び6における「位置#」は、各プライマーの開始点となるヒトAluモデル配列のポジション#を示す。
(1)ヒトゲノムDNAの断片化
本発明のプライマー・プローブセットEを用いたAlu−qPCRにより、100bpに断片化されたヒトゲノムDNAをどの程度の感度で定量することが可能かを調べた。具体的には、DNA Shearing システム M220(コバリス社製)を用いて、ヒトゲノムDNAを100bpに断片化した。そして、LabChip GX Touchシステム(パーキンエルマー社製)を用いて、DNAが所望の長さに断片化されていることを確認した(図42)。
(2)テンプレートの調製
次に、上記(1)により作製した断片化ヒトゲノムDNAを、EASY Dilutionバッファーを用いて段階希釈し、以下のようにテンプレート33を調製した。
テンプレート33:
0.05fg/μLから50ngまでの10段階の濃度の、100bpに断片化されたヒトゲノムDNAを含むサンプル
(3)リアルタイムPCR
本発明のプライマー・プローブセットEと、上記テンプレート33とを用いて実施例11と同様にPCRサンプルを調製し、LightCycler480リアルタイムPCRシステム(ロシュ・ライフサイエンス社製)用いてリアルタイムPCRを行った。PCR反応は、95℃で10分間の熱変性の後、95℃で30秒、56℃で4分30秒、及び72℃で30秒のサイクルを5回繰り返し、さらにその後、95℃で30秒、56℃で30秒、及び72℃で30秒のサイクルを45回繰り返した。なお、テンプレート及びサンプルの調製は、微量のDNAが失われないように低吸着チューブ及びチップを用いて行った。
(4)断片化DNAに対する感度
上記(3)のリアルタイムPCRの結果を図43に示す。テンプレート33(100bp、の長さの断片化DNAを用いたスタンダードサンプル)のリアルタイムPCRにより得られたCt値に基づいて検量線を作成したところ、10fg〜10ngの間で検量線の直線性が認められた(図43)。この結果から、本発明のプライマー・プローブセットEを用いたAlu−qPCRは、100bp程度に高度に断片化されたヒトゲノムDNAも、高感度で検出・定量できることが明らかとなった。
Claims (11)
- 以下の(a)のフォワードプライマー及び(b)のリバースプライマーにより構成される、又は、以下の(a’)のフォワードプライマー及び(b’)のリバースプライマーにより構成される、ヒトAlu検出用PCRプライマー対。
(a)配列番号18に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号18に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号18に示されるヌクレオチド配列において1個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるフォワードプライマー;
(a’)配列番号123に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号123に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号123に示されるヌクレオチド配列において1個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるフォワードプライマー;
(b)配列番号19に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号19に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号19に示されるヌクレオチド配列において1個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるリバースプライマー;
(b’)配列番号148に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号148に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号148に示されるヌクレオチド配列において1個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるリバースプライマー; - 配列番号18に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号19に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される、請求項1に記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対。
- 配列番号123に示されるヌクレオチド配列からなるフォワードプライマー、及び配列番号148に示されるヌクレオチド配列からなるリバースプライマーにより構成される、請求項1に記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対。
- 被験試料より抽出されたDNAを鋳型として、請求項1〜3のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対を用いたPCRを行う工程を含む、前記被験試料中のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法。
- 被験試料が、非ヒト動物にヒト細胞を移植して作製された異種移植モデル動物由来の生体試料、又は古人骨由来の陳旧試料である、請求項4に記載の方法。
- 以下の(c)又は(c’)からなるヒトAlu検出用PCRプローブ。
(c)配列番号42に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号42に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号42に示されるヌクレオチド配列において1個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列;からなるプローブ;
(c’)配列番号149に示されるヌクレオチド配列;又は配列番号149に示されるヌクレオチド配列中の少なくとも連続する16ヌクレオチドからなるヌクレオチド配列を含み、且つ、配列番号149に示されるヌクレオチド配列において1個のヌクレオチドが欠失、置換、若しくは付加されたヌクレオチド配列; - プローブの5’末端が蛍光物質により、3’末端がクエンチャー物質によりそれぞれ標識されている、請求項6に記載のヒトAlu検出用PCRプローブ。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対と、請求項6又は7に記載のヒトAlu検出用PCRプローブとを備えた、ヒトAlu検出用PCRプライマー・プローブセット。
- 請求項8に記載のヒトAlu検出用PCRプライマー・プローブセットを用いて被験試料中のヒトゲノムDNAを検出及び/又は定量する方法であって、以下の(I)〜(III)の工程を含む、方法。
(I)前記被験試料より抽出されたDNAを鋳型として、前記プライマー・プローブセットを用いたリアルタイムPCRを行う工程;
(II)既知量のヒトゲノムDNAを段階希釈して調製された標準試料を鋳型として、上記工程(I)と同様の条件においてリアルタイムPCRを行い、検量線を作成する工程;(III)前記検量線から、前記被験試料中のヒトゲノムDNA量を算出する工程; - 被験試料が、非ヒト動物にヒト細胞を移植して作製された異種移植モデル動物由来の生体試料、又は古人骨由来の陳旧試料である、請求項9に記載の方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載のヒトAlu検出用PCRプライマー対及び/又は請求項6又は7に記載のヒトAlu検出用PCRプローブを備えた、ヒトゲノムDNA検出及び/又は定量用キット。
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