JP6891044B2 - 木造パネル - Google Patents

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本願発明は、木造建築物の構造壁等に使用される構造パネルに関するものであり、より具体的には、主に木製材によって形成される木造パネルに関するものである。
住宅をはじめ学校施設や店舗、倉庫といった建築物は、主に木造、鉄筋コンクリート造、鉄骨造に大別することができる。例えば、集合住宅やオフィスビルは鉄筋コンクリート造とされるのが一般的であり、倉庫の場合は鉄骨造とされることが多い。また戸建住宅の場合は、その半数以上が木造建築物といわれている。木材の持つ調湿効果に加え、自然物である木材に囲まれることで居住者が精神的に安定することがその理由として考えられる。
木造の建築物を構成する構造壁や、天井、床面等(以下、「構造壁等」という。)は、当然ながら木製の材料が主体で形成されるが、木製材料のみでは十分な強度が期待できないこともあり、その場合、強度を上げる(すなわち、壁倍率を高くする)目的で、筋違や専用金具、構造用合板を利用するのが主流となっている。
しかしながら、金属製の筋違やその他の専用金具を使用することによる問題点もいくつか指摘されている。例えば、地震時においては木材と金属材の挙動が著しく異なるため却って構造的に不利となるし、金属材が腐食すると木材にまで悪影響を及ぼすという不都合もある。また、文化財や歴史的建造物の構造壁等を補修するケースでは、原則として伝統構法が用いられるため、そもそも金属材を使用すること自体に抵抗がある。一方の構造用合板は、複数の単板どうしを接着剤で貼り合わせたものであるから一体としては相当の強度が期待できるものの、結局は接着剤の耐久性に依存しているため長期強度の点では信頼性に欠けるという問題がある。
上記した問題を回避すべく、筋違や専用金具、構造用合板を利用することなく、いわゆる伝統構法を採用して構造壁等を形成することも考えられるが、この場合もやはりいくつかの問題点がある。例えば、竹木舞や木摺下地に土材や漆喰を塗ることで形成される構造壁は、壁倍率が比較的低いうえに断熱性が高いとはいえない。また、このような構造壁を施工するには、土材の乾燥養生に相当の時間を要するため全体工期が長くなり、しかも伝統的技術を有する専門職が必要となるがその数は少なく現実的には適時に施工することが難しいといった問題もある。
そこで、伝統構法による構造壁等の問題を解決するため、これまでにも種々の技術が提案されている。例えば特許文献1では、簡易な施工で形成することができ、しかも高い断熱性を備えた建築用パネルを提案している。
特開2015−101874号公報
特許文献1に示される建築用パネルは、第1面材と第2面材との間に内部空間が形成されるため、従来に比してその断熱性は相当に向上する。この内部空間は、枠体の上下面に置かれた仕切り部材と仕切り部材、あるいは仕切り部材とシール部材によって形成されるため、内部空間の厚さは枠体の厚さと略等しくなる。通常、枠体は構造的強度が求められることから相当の厚さの材料が使用され、すなわち内部空間は相当な厚さとなる。ところが、空気層が厚くなると空気の対流が生じやすくなり、その結果断熱性が損なわれてしまう。
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち筋違や専用金具、構造用合板を利用することなく形成でき、しかも枠材の厚さに依存することなく所望の厚さの空気層を設けることができる木造パネルを提供することである。
本願発明は、格子枠材によって仕切られた複数の開口部に設置された2枚の紙製内面材によって薄い空気層を形成する、という点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われたものである。
本願発明の木造パネルは、木製の外面材、紙製の内面材、そして木製の枠材を備えたものである。枠材は、外周枠材と、横枠材・縦枠材からなる格子枠材を有するものであって、格子枠材によって(又はこの格子枠材と外周枠材によって)仕切られた複数の開口部が形成されたものである。それぞれの開口部には2枚の内面材が設置され、これら内面材の両外側にはそれぞれ外面材が設置される。そして、開口部に設置された2枚の内面材の間には空気層が形成される。
本願発明の木造パネルは、内面材と外面材の間に空気層が形成されたものとすることもできる。この場合の外周枠材と格子枠材には、開口部側にシャクリが形成される。また内面材は、中央部の「主面」と外周部に形成された「係止部」からなり、この係止部は、主面から略垂直(垂直含む)に立ち上がる「係止側面」とこの係止側面から略垂直(垂直含む)に外周側に張り出した「係止平面」で構成される。内面材は、係止平面を格子枠材等のシャクリに載置することで開口部に設置され、内面材の主面と外面材の間には空気層が形成される。さらに、隣接する係止側面どうしを連結することもできる。
本願発明の木造パネルは、外周枠材どうし、及び外周枠材と格子枠材が、ほぞ差し(「ほぞ」の漢字は、「木(きへん)」に「冂」と「入」」を重ねてなる)によって接合されたものとすることもできる。
本願発明の木造パネルは、横枠材と縦枠材の交差部が相欠きによって接合されたものとすることもできる。
本願発明の木造パネルには、次のような効果がある。
(1)主に自然素材(木製材と紙製材)を使用していることから、環境に対して悪影響を与えることがない。
(2)構造部材は木製材によって構成されるため、金属材による弊害(地震時における問題や腐食による問題)を回避することができる。
(3)伝統構法による土壁に比べ、壁倍率が高い構造壁等を構成することができる。
(4)薄い空気層を形成する結果、より高い断熱性を発揮することができる。
(5)筋違や構造用合板を使用しないことから、伝統構法を含む種々の構法で採用することができる。
(6)伝統構法による土壁に比べると工期が大幅に短縮され、また大工のみで組み立てられるため工種間(大工と左官など)のロスを生じることもない。
(a)は本願発明の木造パネルを示す正面図、(b)は本願発明の木造パネルを示す分解図。 1つの開口部に着目した木造パネルの分解図。 (a)は外周枠材のみを示す正面図、(b)は格子枠材のみを示す正面図、(c)は外周枠材と格子枠材を組み合わせた枠材を示す正面図。 (a)は外周枠材どうしのほぞ差しを説明する斜視図、(b)は外周枠材と格子枠材のほぞ差しを説明する斜視図。 横枠材と縦枠材の相欠きによる接合を説明する斜視図。 (a)は組み立てる前の箱状内面材を示す展開図、(b)は組み立てた後の箱状内面材を示す斜視図。 (a)は組み立てる前の連結材付きの箱状内面材を示す展開図、(b)は組み立てた後の連結材付きの箱状内面材を示す斜視図。 外面材と枠材が設置される前の開口部周辺を示す部分断面図。 外面材と枠材が設置された後の開口部周辺を示す部分断面図。
本願発明の木造パネルの実施形態の一例を、図に基づいて説明する。
(全体概要)
図1は、本願発明の木造パネル100を示す図であり、(a)は正面図、(b)は分解図である。図1(a)に示すように正面から見た木造パネル100は、外面材200と枠材300によって形成されている。この枠材300は外周枠材310と格子枠材320で形成されており、図1(b)に示すように外周枠材310で囲まれた全体領域が格子枠材320によって仕切られ(分割され)、外周枠材310や格子枠材320で囲まれた小領域(以下、「開口部400」という。)を形成している。
図2は、1つの開口部400に着目した木造パネル100の分解図である。この図に示すように開口部400には、両面から挟むように2枚1組の外面材200が設置される。したがって、外面材200は開口部400と略同様の形状とされ、開口部400の数(図1では16)の2倍(図1では32枚)の外面材200が用いられる。また、それぞれの外面材200の内側には、内面材500が設置される。したがって内面材500は、平面視で開口部400と略同様の形状とされ、外面材200と同数(図1では32枚)の内面材500が用いられる。
以下、本願発明の木造パネル100を構成する主な要素ごとに詳しく説明する。
(外面材)
木造パネル100を構成する部材の1つである外面材200は、木製材を用いて形成される板状材である。また既述のとおり開口部400と略同様の形状とされ、開口部400の両面を覆うように(塞ぐように)設置される。したがって外観に最も影響を与える部材であり、美観を考慮すると木無垢材を用いた外面材200とするのが望ましい。
(枠材)
図3は枠材300を示す正面図であり、(a)は外周枠材310のみを示す正面図、(b)は格子枠材320のみを示す正面図、(c)は外周枠材310と格子枠材320を組み合わせた枠材300を示す正面図である。
木造パネル100を構成する部材の1つである枠材300(外周枠材310と格子枠材320)は、木製材を用いて形成される棒状材である。外面材200と同様、枠材300も外観に影響を与える部材であることから、美観を考慮して木無垢材を用いたものとするのが望ましい。
図3(a)に示すように、複数(図では4本)の外周枠材310を組み立てることで、枠材300の外周部分が形成される。このとき外周枠材310どうしは、図4(a)に示すようにほぞ差しによって接合するとよい。具体的には、一方の外周枠材310の先端に嵌合突起310cを設け、他方の外周枠材310の所定位置に嵌合凹部310dを設け、嵌合突起310cを嵌合凹部310dに嵌め込むことで接合するわけである。
図3(b)に示すように格子枠材320は、複数の横枠材321と複数の縦枠材322によって構成され、横枠材321と縦枠材322を格子状に組み合わせることで形成される。横枠材321と縦枠材322が交差する箇所では双方にシャクリ(部分的に部材を切り欠いた構造)を設け、相欠きによって接合するとよい。具体的には図5に示すように、横枠材321のうち交差部に横枠材シャクリ321nを設け、縦枠材322のうち交差部に縦枠材シャクリ322nを設け、横枠材シャクリ321nと縦枠材シャクリ322nを噛み合わせることで相欠き接合するわけである。
図3(c)に示すように、外周枠材310と格子枠材320を組み合わせることで枠材300は形成される。格子枠材320を外周枠材310に固定するにあたっては、図4(b)に示すようにほぞ差しによって接合するとよい。具体的には、格子枠材320の先端に嵌合突起320cを設け、外周枠材310の所定位置に嵌合凹部310dを設け、格子枠材320の嵌合突起320cを外周枠材310の嵌合凹部310dに嵌め込むことで接合するわけである。このようにほぞ差しやシャクリを利用すれば、金属材を用いることなく外周枠材310や格子枠材320を接合することができるため、金属材による弊害を回避することができて好適となる。ただし、外周枠材310や格子枠材320の接合を固定するため(つまり、はずれ防止の目的で)、最小限の釘を打つこともできる。
(内面材)
木造パネル100を構成する部材の1つである内面材500は、段ボールや厚紙といった紙製の板状材を組み立てて形成される部材である。内面材500は、単に平面状(板状)の部材とすることもできるし、図6に示すように箱状の部材とすることもできる。図6は、箱状の内面材500を示す図であり、(a)は組み立てる前の展開図、(b)は組み立てた後の斜視図である。
図6(a)に示すように組み立てる前の箱状の内面材500は、主面510と、主面510の周囲に設けられる係止側面520と、係止側面520の外側に設けられる係止平面530によって形成される。そして図6(b)に示すように、係止側面520と係止平面530を折ることで箱状の内面材500は組み立てられる。より詳しくは、主面510の外周に設けられる係止側面520を、主面510から略垂直(垂直含む)に立ち上がるように折り、さらに係止側面520の外側に設けられる係止平面530を、係止側面520から略垂直(垂直含む)に(つまり、主面510と略平行となるように)外側に張り出すように折ることで組み立てられる。なおここでは、係止側面520と係止平面530からなる構造のことを便宜上「係止部」ということとする。
箱状の内面材500は、図6(b)に示すように隣接する係止側面520どうしを連結することなく組み立てることもできるし、図7(b)に示すように連結材540によって隣接する係止側面520どうしを連結したうえで組み立てることもできる。この連結材540は、図7(a)に示すように係止側面520を延長することで形成してもよいし、別体として用意してもよい。係止側面520を延長した連結材540を利用する場合は接着剤等を用いて係止側面520を連結し、別体とする場合はテープ等をそのまま連結材540とし係止側面520に貼付することで連結するとよい。
(空気層枠材)
図8は、外面材200と内面材500が設置される前の開口部400周辺を示す部分断面図であり、図9は、外面材200と内面材500が設置された後の開口部400周辺を示す部分断面図である。図8や図9に示すように、枠材300には枠材シャクリ300sが設けられる。この枠材シャクリ300sは、外面材200と内面材500を載置するためのものであるから、枠材300のうち開口部400に面する位置で枠材300の両側(図では上下)に設けられる。したがって格子枠材320の場合は、全てのものに4箇所(断面視で4隅)の枠材シャクリ300sが設けられるが、外周枠材310の場合は、外周辺を除く位置に(つまり、内側の2箇所に)枠材シャクリ300sが設けられる。また、枠材300と外面材200それぞれの表面を同一面(一連の平面)とするため、枠材シャクリ300sの寸法(厚さ)は、外面材200と内面材500を重ねた合計厚と略同等とするとよい。
開口部400を取り囲む枠材300に設けられた枠材シャクリ300sには、まず内面材500が設置される。例えば図8や図9では、箱状の内面材500がその係止部を利用して枠材300上に設置されている。具体的には、係止平面530を枠材シャクリ300s上に載置する(係止する)ことで、内面材500を枠材300上に設置している。内面材500が設置されると、さらにその上から周囲の枠材シャクリ300sに嵌め込むように外面材200が設置される。つまり、外面材200と枠材300(枠材シャクリ300s)で内面材500を挟み込むわけである。例えば図8や図9では、係止平面530が外面材200と枠材300によって挟み込まれている。
開口部400に外面材200と内面材500が設置されると、一方の内面材500と他方の内面材500との間に第1空気層610が形成される。これにより木造パネル100が断熱性を備えたものとなるわけである。また図9に示すように箱状の内面材500を用いると、その係止部(特に、係止側面520)の効果で、外面材200と内面材500の間にもそれぞれ第2空気層620が形成され、すなわち3層の空気層が形成されるためより断熱性が向上する。さらに、係止側面520によって内面材500(主面510)が内部側に配置されることから、2つの内面材500の間隔が狭くなる結果第1空気層610が薄くなり、これにより空気の対流を防ぐことができるため高い断熱性を発揮することができる。箱状の内面材500に形成される第1空気層610の層厚は、係止側面520の寸法を変えることによって所望の寸法(厚さ)で設計することができる。
本願発明の木造パネルは、戸建住宅をはじめとする様々な木造建築物に利用できる。特に、文化財や歴史的建造物など伝統構法が採用される建築物の補修や改築の際に、好適に利用することができる。本願発明が、文化財や歴史的建造物などの補修等に役立ち、すなわち我が国の古い文化芸術の次世代伝承に資することを考えれば、産業上利用できるばかりでなく文化発展にも大きな貢献を期待し得る発明である。
100 木造パネル
200 外面材
300 枠材
300s 枠材シャクリ
310 外周枠材
310c (外周枠材の)嵌合突起
310d (外周枠材の)嵌合凹部
320 格子枠材
320c (格子枠材の)嵌合突起
321 横枠材
321n 横枠材シャクリ
322 縦枠材
322n 縦枠材シャクリ
400 開口部
500 内面材
510 (内面材の)主面
520 (内面材の)係止側面
530 (内面材の)係止平面
540 連結材

Claims (4)

  1. 木製の枠材と、木製の外面材と、紙製の内面材と、を備え、
    前記枠材は、外周枠材と、横枠材及び縦枠材からなる格子枠材と、を有するとともに、該格子枠材によって又は該格子枠材と該外周枠材によって仕切られた複数の開口部が形成され、
    前記外周枠材と前記格子枠材は、前記開口部側にシャクリが形成され、
    前記内面材は、中央部の主面と、外周部に形成された係止部と、からなり、
    前記係止部は、前記主面から垂直又は略垂直に立ち上がる係止側面と、該係止側面から垂直又は略垂直に外周側に張り出した係止平面と、からなり、
    前記内面材の前記係止平面を、前記外周枠材又は前記格子枠材の前記シャクリに載置することで、前記内面材が前記開口部に設置され、
    それぞれの前記開口部には、2枚の前記内面材が設置されるとともに、該内面材の両外側にそれぞれ前記外面材が設置され、
    前記開口部に設置された2枚の前記内面材の間に空気層が形成されるとともに、該内面材の前記主面と前記外面材との間に空気層が形成された、
    ことを特徴とする木造パネル。
  2. 前記内面材は、隣接する前記係止側面どうしが連結された、
    ことを特徴とする請求項1記載の木造パネル。
  3. 前記外周枠材どうしがほぞ差しによって接合され、
    前記外周枠材と前記格子枠材がほぞ差しによって接合された、
    ことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の木造パネル。
  4. 前記横枠材と前記縦枠材の交差部が、相欠きによって接合された、
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の木造パネル。
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