JP6890818B2 - 静止期癌幹細胞の効率的分離方法 - Google Patents

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本発明は、静止期癌幹細胞の効率的分離方法に関する。
本発明はまた、上記方法により被験体の生体試料から静止期癌幹細胞を検出及び/又は分離し、癌の予後又は転移の可能性を判定支援する方法に関する。
本発明はさらに、上記の静止期癌幹細胞の分離方法を実施するための静止期癌幹細胞の分離及び解析システムに関する。
自己複製能をもつ癌幹細胞のなかで細胞周期が静止期にある少数細胞は転移や再発、治療抵抗性に関与し、腫瘍の悪性度とより深く関わっていると考えられている。これまで固形癌での静止期癌幹細胞同定法に関して、メラノーマにおける細胞表面マーカーJARID1B(非特許文献1)や乳癌における色素(PKH26)標識(非特許文献2)、膵癌における色素(DiI)標識(非特許文献3)が報告されている。これらの分離法では培養細胞を用いて細胞膜に脂溶性色素を取り込ませたのちに4週間の培養を行い、静止期細胞が細胞分裂による希釈を受けずに色素を保持することを利用して細胞を分離しており、生体試料から直接静止期癌幹細胞を検出することができない。
また食道癌においては培養細胞を用いた検討からCD90(非特許文献4)やCD44(非特許文献5)、ABCG2(非特許文献6)、ALDH-1(非特許文献7)などをマーカーとした癌幹細胞分離が報告されているが、どれも細胞周期を考慮した分離方法ではなく、また生体試料から直接癌幹細胞を検出していない。
一方、そのような研究に関連して本発明者はこれまでに培養細胞を用いた検討から、低親和性神経成長因子受容体(p75NTR(別称CD271))発現細胞がBmi1やNanogといった幹細胞関連分子を発現し、扁平上皮分化マーカーであるインボルクリンが最も低発現で、高いコロニー形成能やマウス皮下移植腫瘍形成能、薬剤耐性を示すことを報告してきた(非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10)。しかしながら、p75NTR発現細胞は高率に癌幹細胞を含んでいるものの、CD44やCD90などの細胞表面マーカー発現において不均一な細胞集団であることが示されている。さらにまた、本発明者による非特許文献10には、食道扁平上皮癌(ESCC)由来のp75NTR陽性細胞集団のなかに細胞周期が静止期にある癌幹細胞の存在の可能性が示唆されているが、実際、そのような細胞を生細胞として分離するにはかなりの試行錯誤を必要とするため当該文献ではそのような生細胞の分離は行われていないし、また、そのような細胞が癌幹細胞であるのであればいかなる幹細胞形質をもつかの検証にも至っていなかった。また、これに関連して非特許文献11には、CD271陽性ESCC細胞が高い自己複製能と薬剤耐性を示すことを確認したこと、そしてこの結果がCD271陽性ESCC細胞が幹細胞様性質をもつと記載されているが、そのような細胞が静止期癌幹細胞であるかは記載がなく不明であった。
癌幹細胞の検出・分離に関連した特許文献として、特許文献1には、生物学的試料中のCD166発現量を測定することにより脳癌幹細胞を検出する方法が開示されている。また特許文献2には、乳癌又は卵巣癌において細胞表面マーカーであるCD44高発現及びCD24低発現細胞を検出することによって未分化かつ自己複製能をもつ癌幹細胞を単離する方法が開示されている。
P75NTRマーカーによる幹細胞の分離について、特許文献3には、P75NTRをマーカータンパク質として脂肪、肝臓、膵臓および骨髄の正常組織における多能性幹細胞を同定分離する方法が開示されている。
特開2013-2831号公報 特表2004-527211号公報 特開2006-230235号公報
Roesch A, et al. Cell, 141:583-594, 2010 Pece S, et al. Cell, 140:62-73, 2010 Dembinski JL, et al. Clin Exp Metastasis, 26:611-623, 2009 Tang KH, Cancer Res, 73:2322-2332, 2013 Jiang-Sha Zhao PLOS ONE, 6(6):e21419, 2011 Zhang M, Cancer Res, 72(16):4178-4192, 2012 Zhao Y, Stem Cells Dev., 23(2):180-192, 2014 Okumura T, Oncogene, 22:4017-4026, 2003 Okumura T, Clinical Cancer Res, 12:5096-5103, 2006 Yamaguchi T, Okumura T, Int J Oncology, 48:1943-1954, 2016 Sulan L, Oncology Reports, 33:425-432, 2015
本発明は、食道癌などのp75NTR陽性癌から静止期癌幹細胞を効率的に検出し分離する方法、並びに当該方法を実施するための静止期癌幹細胞の分離・解析システムを提供することを目的とする。
本発明を、特許文献1及び特許文献2に記載される発明と対比すると、両者は対象となる臓器が異なる他、使用するマーカーが異なるし、また本発明では未分化かつ自己複製能をもつ癌幹細胞のなかでもより腫瘍悪性度と関わる静止期癌幹細胞を検出している点が大きく異なる。
また本発明を、特許文献3に記載される発明と対比すると、特許文献3は脂肪、肝臓、膵臓および骨髄の正常組織における多能性幹細胞を同定分離する方法を開示しているため、本発明とは対象となる臓器が異なるうえ、癌幹細胞を分離する方法である点が異なるし、また本発明ではp75NTRと細胞周期を組み合わせることで癌幹細胞のなかでもより腫瘍悪性度と関わる静止期癌幹細胞を検出している点が大きく異なる。
さらにまた、本発明を、非特許文献10に記載される発明と対比すると、非特許文献10には静止期癌幹細胞を生細胞として分離することは行われていないため、そのような細胞が癌幹細胞であるのであればいかなる幹細胞形質をもつかの検証にも至っていなかった。本発明者は、以下に記載するように、p75NTR遺伝子発現陽性の静止期癌幹細胞を生細胞として分離する手法を今回見出した。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意、検討を行ったところ、p75NTR遺伝子を発現すること及び細胞周期がG0-1(すなわちG0/G1期)であることを指標にして被験体の生体試料から静止期癌幹細胞を検出し、及び連続して生細胞として該細胞を分離することに成功し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の特徴を包含する。
(1)p75NTR遺伝子を発現すること及び細胞周期がG0-1であることの両方を指標にして被験体の生体試料から静止期癌幹細胞を検出し、及び連続して生細胞として該細胞を分離することを含む、生きた静止期癌幹細胞の分離方法。
(2)上記p75NTR遺伝子の発現を、抗p75NTR抗体を使用して測定することをさらに含む、(1)に記載の方法。
(3)上記細胞周期を、DNA選択的染色試薬を用いて測定することをさらに含む、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)上記被験体がヒトである、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)上記生体試料が、p75NTR遺伝子を発現する癌細胞を含む組織又は体液である、(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6)上記癌が、食道癌である、(5)に記載の方法。
(7)上記食道癌は、食道扁平上皮癌である、(6)に記載の方法。
(8)上記分離をフローサイトメトリーによって行う、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)上記生体試料中の癌細胞をサブコンフルエント状態まで培養することをさらに含む、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)上記静止期癌幹細胞の形質を測定することをさらに含む、(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11)上記静止期癌幹細胞の形質が、未分化かつ自己複製能、コロニー形成能、腫瘍形成能、転移能及び薬剤耐性からなる群から選択される少なくとも1つの性質を含む、(10)に記載の方法。
(12)上記未分化かつ自己複製能をNanog遺伝子及びBmi-1遺伝子の発現を指標にして測定することを含む、(11)に記載の方法。
(13)上記薬剤耐性をERCC1遺伝子発現及び/又は該薬剤の存在下の細胞生存率を指標にして測定することを含む、(11)に記載の方法。
(14)上記静止期癌幹細胞の遺伝子発現パターンを測定することをさらに含む、(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(15)(1)〜(14)のいずれかに記載の方法により被験体の生体試料から静止期癌幹細胞を検出及び/又は分離し、それにより上記被験体において癌の予後又は転移の可能性を判定支援することを含む、癌の予後判定支援方法。
(16)生体試料中の癌細胞を培養する手段、蛍光ラベル化手段、静止期癌幹細胞の分離手段、並びに静止期癌幹細胞の形質分析手段を含む、(1)〜(14)のいずれかに記載の方法を実施するための静止期癌幹細胞の分離及び解析システム。
本発明により、p75陽性癌(例えば食道癌)細胞を含む組織又は体液から静止期癌幹細胞を効率的に検出・分離することができるし、また例えばRNAを抽出して遺伝子発現を網羅的に解析するなどの分子生物学的解析によって診断・治療標的を探索することを可能にするし、さらにまた血液などの生体試料を用いた解析が可能であるため、静脈血液サンプルを用いて血中循環癌幹細胞を検出することを可能にする。
この図は、食道扁平上皮癌培養細胞(KYSE(具体的にはKYSE-30))からのフローサイトメトリー法によるp75NTR陽性(+)又は陰性(-)及び細胞周期G0-1又はS-G2-Mを指標とする細胞分離を示す。分画された細胞は、p75NTR+/G0-1、p75NTR+/S-G2-M、p75NTR-/G0-1及びp75NTR-/S-G2-Mである。 この図は、分離した各細胞フラクション、すなわちp75NTR+/G0-1、p75NTR+/S-G2-M、p75NTR-/G0-1及びp75NTR-/S-G2-Mにおける幹細胞マーカーNanog(A)、Bmi-1(B)及びp63(C)の相対発現量を示す。 この図は、分離した各細胞フラクション、すなわちp75NTR+/G0-1、p75NTR+/S-G2-M、p75NTR-/G0-1及びp75NTR-/S-G2-Mにおけるコロニー形成能を示す。(A)は各細胞フラクションの培養後のコロニーを示し、(B)はコロニー数を示す。 この図は、分離した各細胞フラクション、すなわちp75NTR+/G0-1、p75NTR+/S-G2-M、p75NTR-/G0-1及びp75NTR-/S-G2-Mにおける薬剤耐性を示す。(A)は各細胞フラクションにおけるERCC1の相対発現量を示し、(B)はシスプラチン(CDDP)に対するKYSE-30(食道扁平上皮癌培養細胞株)の耐性を細胞生存率(%)を指標として示す。 この図は、KYSE-30培養細胞から分離した各細胞フラクション、すなわちp75NTR+/G0-1、p75NTR+/S-G2-M、p75NTR-/G0-1及びp75NTR-/S-G2-Mのマウス皮下腫瘍形成能を示す。(A)はマウス個体における注入した細胞数と腫瘍発生数とを示す。 この図は、KYSE-30培養細胞から分離した各細胞フラクション、すなわちp75NTR+/G0-1、p75NTR+/S-G2-M、p75NTR-/G0-1及びp75NTR-/S-G2-Mのマウス皮下腫瘍形成能を示す。(B)はマウス個体における腫瘍の大きさを目視的に示す。 この図は、KYSE-30培養細胞から分離した各細胞フラクション、すなわちp75NTR+/G0-1、p75NTR+/S-G2-M、p75NTR-/G0-1及びp75NTR-/S-G2-Mのマウス皮下腫瘍形成能を示す。(C)はマウス個体における腫瘍重量を示す。
本発明をさらに具体的に説明する。
(1)静止期癌幹細胞の効率的分離方法
本発明は、第1の態様により、p75NTR遺伝子を発現すること及び細胞周期がG0-1であることの両方を指標にして被験体の生体試料から静止期癌幹細胞を検出し、及び連続して生細胞として該細胞を分離することを含む、生きた静止期癌幹細胞の分離方法を提供する。
<静止期癌幹細胞>
本明細書において使用する「静止期癌幹細胞」という用語は、細胞周期がG0-1期にある癌幹細胞を指す。この用語は、「静止期腫瘍幹細胞」と同義で使用される。本明細書で使用する「静止期癌幹細胞」の純度は、約90%以上、好ましくは約95%以上、さらに好ましくは約98%以上である。
癌幹細胞は、分裂期(S-G2-M)と静止期(G0-1)の表現型に分けることができる。分裂期癌幹細胞は、活発に細胞分裂し、いわゆる進行性である。これに対し、静止期癌幹細胞は、薬剤耐性を有し、薬剤により分裂期癌幹細胞が死滅したのち優勢な細胞集団となり、癌の転移や再発などの癌悪性度と深く関わっていると考えられている。静止期癌幹細胞は、癌組織において少数細胞であり、この癌幹細胞を分離することは容易ではない。
固形癌における癌幹細胞マーカーは、癌が生じた臓器や器官によって多様であり、例えばCD44、CD133、ALDH1、CD24などのマーカーは、乳癌、大腸癌、膵臓癌で検出されている(Medema JP et al. Nat Cell Biol, 15:338-344, 2013)。本発明における対象癌は、p75NTR遺伝子マーカーを発現する癌幹細胞を含む癌である。このような癌には、例えば食道癌(扁平上皮癌及び腺癌)、メラノーマ(悪性黒色腫)、頭頸部癌(扁平上皮癌)、下咽頭癌(扁平上皮癌)などが含まれるが、それらに限定されない。本発明方法によって分離される静止期癌幹細胞は生細胞であり、もし該細胞がダメージを受けた場合には、細胞数が少ないために細胞の分離が困難になるし、またその後の細胞の特徴付けができない。
<p75NTR>
本明細書において使用される「p75NTR」という用語は、神経栄養因子受容体(neurotrophin receptor)の一種であるタンパク質を指す。このタンパク質は、CD271、NGFR(p75)、p75NGFR、TNFRSF16などとも呼ばれている。このうちCD271は、腫瘍壊死因子受容体スーパーファミリーのメンバーであり、細胞の増殖、生存及びアポトーシスに関与することが知られている(非特許文献11)。CD271はまた、LNGFR(low-affinity nerve growth factor receptor)としても知られている。本明細書では、これらを総称して「p75NTR」という呼称を用いる。
ヒトp75NTRのアミノ酸配列及びヌクレオチド配列は、例えば米国NCBIに「NM_002507」のアクセッション番号で登録されており、後述の配列表中、アミノ酸配列を配列番号1に、ヌクレオチド配列を配列番号2にそれぞれ示している。
<被験体生体試料からの静止期癌幹細胞の検出>
本明細書において「被験体」は、ヒト、サル、チンパンジーなどの霊長類、イヌ、ネコなどのペット動物、動物園で飼育されている動物などの哺乳動物であり、好ましくはヒトである。
静止期癌幹細胞は、p75NTR遺伝子を発現すること及び細胞周期がG0-1であることの性質を有するため、これらを指標にして検出しうる。
(p75NTR遺伝子発現の測定)
p75NTR遺伝子の発現は、抗p75NTR抗体を使用して測定することができる。
抗p75NTR抗体は、p75NTRタンパク質と特異的に結合する抗体であればいずれの抗体であってもよく、またポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体のいずれであってもよく、さらにまたFab、F(ab’)2、Facb、単鎖抗体(single chain antibody)などの抗体フラグメントであってもよい。Fab、F(ab’)2、Facbは、抗体(IgG)をプロテアーゼであるそれぞれパパイン、ペプシン、プラスミンで分解して得られる限定分解フラグメントである。単鎖抗体は、抗原結合部位を含む抗体重鎖可変領域と抗体軽鎖可変領域とをリンカーを介して結合して作製された抗体であり、通常、遺伝子組換え技術を用いて合成しうる。
ポリクローナル抗体は、単クローン抗体の集合からなる抗体であり、抗原タンパク質を動物に免疫し、必要に応じてブーストし、約3週間〜数か月後に採血し、血液から抗血清を回収することによって作製可能である。さらに必要であれば、抗原タンパク質を結合した担体を充填したアフィニティカラムに上記抗血清をアプライし、親和的に結合した目的抗体をカラムから溶出することを含む方法によって抗体を精製することができる。
モノクローナル抗体は、単クローンからなる抗体である。一般に、この抗体は、抗原タンパク質で免疫した動物(通常、マウス、ラットなどのげっ歯類)の脾臓を摘出したのちB細胞(抗体産生細胞)を回収し、このB細胞とミエローマ細胞とを融合させて得られた融合細胞(ハイブリドーマ)のなかから目的抗体を産生する細胞を選抜することを含む方法によって作製可能である。このような抗体はまた、ファージディスプレイ法によっても作製可能である。この方法は、抗原が結合する抗体重鎖可変領域と抗体軽鎖可変領域とをリンカー(短鎖長ペプチド)で結合したタンパク質がファージ上に提示されたライブラリーを作製し、次いで目的抗体を選抜することを含む方法である。また抗体の精製には、IgG結合性ペプチド、或いは、プロテインA、プロテインBなどのIgG結合性タンパク質を結合したアフィニティカラム、標的抗原を結合したアフィニティカラムなどを使用することができる。
本発明においては、p75NTRタンパク質をDNA組換え技術などの公知の方法で合成・準備し、このタンパク質を抗原として用いて上記の方法により目的のモノクローナルp75NTR抗体を作製することができる。このような抗体として、市販されている抗体も使用可能である。市販抗体は、例えばhuman CD271 (LNGFR) monoclonal antibody ME20.4-1.H4 (isotype: mouse IgG1)(Miltenyl Biotec GmbH, Bergisch Gladbach, Germany)であり、この抗体にAllophycocyanin(APC)などの発色物質を結合させるときには、フローサイトメトリー分析に使用可能となる。
(細胞周期G0-1の測定)
次に、癌幹細胞の細胞周期がG0-1であることは、細胞周期をDNA選択的染色試薬を用いて測定することによって確定することができる。
具体的には、細胞内の核DNAを蛍光色素で染色し、蛍光強度(DNA量)から細胞周期を決定することができる。G0-1とG2-Mのピークが分解能が高い鋭いピークとなるとき解析誤差が最小となるため、蛍光分解能の高いフローサイトメーターを使用することがよい。
細胞周期解析用のDNA選択的染色試薬である蛍光色素としては、Hoechst33342(最大励起波長343nm、最大蛍光波長483nm)、DAPI(最大励起波長345nm、最大蛍光波長455nm)などが知られている。後述の実施例ではVybrant(R) DyeCycleTM Violet(最大励起波長369nm、最大蛍光波長437nm)を細胞周期解析に使用した。
<静止期癌幹細胞の検出・分離>
本明細書において使用される「生体試料」は、p75NTR遺伝子を発現する癌細胞を含む組織又は体液である。ここで癌細胞は、上記例示の食道癌(扁平上皮癌及び腺癌)、メラノーマ(悪性黒色腫)、頭頸部癌(扁平上皮癌)、下咽頭癌(扁平上皮癌)などのp75NTR遺伝子を発現する癌細胞、好ましくは食道癌細胞、例えば食道扁平上皮癌細胞である。このような癌細胞を含む組織及び体液としては、例えば上記癌組織や、血液、リンパ液、腹水などの体液を挙げることができる。針や内視鏡を使用して癌組織を採取する、いわゆる生検(バイオプシー)、外科手術などの手法を利用して癌組織を得ることができる。また血液、リンパ液などの体液には、循環癌幹細胞が存在することが知られており、この癌幹細胞は癌組織から浸潤し血液などの体液を介して遠隔転移し再発の原因となるため、体液もまた本発明の方法において生体試料となりうる。
生体試料に含まれる癌幹細胞は、血清含有又は非含有、好ましくは血清含有のDMEM、EMEM、Ham's F-12、RPMI-1640、それらの混合培地などの動物細胞培地を用いて培養することが好ましく、その場合、コンフルエントになる前のサブコンフルエントの状態(培養容器の約70%〜約90%の面積に相当する程度の細胞増殖状態)で細胞を回収して細胞の検出及び分離に掛けることがより好ましい。もしコンフルエントな状態まで細胞を培養するときには、幹細胞もその他の細胞もほぼすべてG0-1となるため、望ましい分離ができない。一方、サブコンフルエントな状態では全体によく分裂している細胞集団のなかでもG0-1に留まっている癌幹細胞を効率よく分離することができる。
本発明において生きた静止期癌幹細胞の検出及び分離は、p75NTR遺伝子を発現すること及び細胞周期がG0-1であることを指標にして行うことを特徴とする。好ましい方法は、フローサイトメトリー(Flow Cytometry)である。この方法は、浮遊させた癌細胞を含む試料を、シース流を用いて1個ずつセンシングゾーン(レーザー光照射)に導き、高速で蛍光と散乱光などを測定し、標的細胞を検出し分離することを含む。散乱光は、フローセル内を流れる細胞にレーザー光をあてたときに生じる細胞からの前方散乱光(FSC)及び側方散乱光(SSC)であり、前方散乱光は細胞の大きさを示し、側方散乱光は顆粒又は細胞内構造を示す。蛍光は、本発明では、p75NTRを検出するための抗p75NTR抗体を標識した蛍光色素、並びに細胞の細胞周期を解析するための核を標識したDNA選択的染色試薬(蛍光色素、例えばDyeCycleTM (ThermoFisher Scientific))からの蛍光を含む。ここで、一つの細胞に結合する蛍光標識抗体量は、その細胞の表面抗原の量と比例することから、蛍光強度と表面抗原量が比例する。また、DNAに特異的に結合する蛍光色素の蛍光量からDNA量が推定できる。本発明の方法において蛍光色素は、互いに異なる二色の色素を使用することが好ましく、公知の多数の蛍光色素から選択することができる。本発明では、細胞周期を解析するためのDNA選択的染色試薬を使用してフローサイトメトリーを行うことが好ましい。
フローサイトメトリーによる生きた静止期癌幹細胞の検出及び分離では、上記のサブコンフルエントの状態まで培養した癌細胞を抗p75NTR抗体、次いでDNA選択的染色色素で処理してラベル化したのち、この試料をフローサイトメーターにアプライし、先ずp75NTR陽性細胞を分離し、次いで連続的にG0-1期の細胞を分離することによってp75NTR+/G0-1細胞を回収する。この回収された細胞の特性を決定すると、下記の(2)に示す、未分化かつ自己複製能、コロニー形成能、腫瘍形成能、転移能、薬剤耐性などの性質を有することから、この細胞が静止期癌幹細胞であると同定されうる。フローサイトメトリーは、市販のフローサイトメーターを使用し、その使用説明書を参照することによって行うことができる。
このようにフローサイトメトリーなどの上記方法によって静止期癌幹細胞を検出し、分離することができる。
好適な実施形態によれば、本発明の方法では以下の(i)〜(iv)が重要である。
(i) 静止期癌幹細胞を生細胞として分離する。この目的細胞の分離・選抜をできるだけ短い時間で行うことによって細胞のダメージを低下することが好ましい。
(ii)癌幹細胞と抗p75NTR抗体の反応に続いてDNA染色を行い、フローサイトメトリーによりp75NTR+/G0-1細胞のソーティンングを行う。
(iii)対数増殖期のサブコンフルエント状態から癌幹細胞の分離を行う。
(iv)生細胞のまま癌幹細胞の細胞周期を解析するためにDNA選択的染色色素を組み合わせる。
(2)静止期癌幹細胞の形質評価
本発明においてはさらに、上記方法を用いて分離した癌幹細胞の形質を評価することができる。
検出された細胞が静止期癌幹細胞であることを同定するための該細胞の形質として、細胞が未分化かつ自己複製能、コロニー形成能、腫瘍形成能、転移能、及び薬剤耐性、並びに細胞周期が静止期にあることからなる群から選択される性質が挙げられる。したがって、これらの性質について測定することによって、検出された細胞が静止期癌幹細胞であるというさらなる確証を得るための評価をすることができる。
上記の未分化かつ自己複製能は、後述の実施例1にも示されるようにNanog遺伝子及びBmi-1遺伝子の発現を指標にして測定することができる(図2)。また、静止期癌幹細胞は、p63遺伝子の発現が他の細胞フラクションのいずれよりも高いという特徴も有している(図2C)。p63は、p53ファミリーのメンバーの1つであり、細胞増殖抑制能をもつ転写活性化因子であることが知られている。さらにまた、上記の薬剤耐性は、ERCC1遺伝子発現及び/又は該薬剤の存在下の細胞生存率を指標にして測定することができる。ERCC1は、薬剤等により損傷された細胞のDNAを修復する際に発現されることから、薬剤耐性の指標となる(図4)。
さらに実施例1で示されるように、静止期癌幹細胞は、コロニー形成能(図3)やマウス皮下移植による腫瘍形成能(図5)を有する。コロニー形成能が高い癌細胞や腫瘍形成能が高い癌細胞は、癌幹細胞であることの可能性が高いことが分かっている。したがって、上記の方法によって分離された癌細胞のコロニー形成能や腫瘍形成能をさらに測定することによって、この細胞が癌幹細胞であることの確証となる。
静止期癌幹細胞の形質としてさらに、細胞のサイズ、形態、色などの外観を評価してもよい。組織や体液内で静止期癌幹細胞は少数であるため、もし周囲の癌細胞や分裂期幹細胞と異なる外観(顕微鏡観察)が判明すれば、外観から静止期癌幹細胞の存在を推定できるかもしれない。
さらにまた、静止期癌幹細胞の遺伝子発現パターンについて測定することによって該細胞の遺伝子型(ジェノタイプ)の解析をすることができる。遺伝子発現パターンは、発現プロフィールを表し、遺伝子発現の全体像を捉えることを可能にする。このとき遺伝子発現パターンは、静止期癌幹細胞が存在する原発巣であるか或いは転移巣であるかに依存して変化することもありうる。
遺伝子発現パターンは、上記の方法で分離した静止期癌幹細胞からmRNAを抽出しcDNAを合成し、蛍光ラベル化したのち、例えば市販の網羅的遺伝子発現解析DNAチップ(東レ社3D-Gene(R)、Affymetrix社GeneChip(R)など)にアプライし解析することにより決定可能である。
さらに、静止期癌幹細胞のゲノムDNA中のDNAメチル化パターンを決定することも可能である。ゲノムDNAのCpGアイランド配列部分の炭素原子はメチル化されることがあり、メチル化パターンは細胞の種類によりおおよそ特徴的である。したがって、静止期癌幹細胞のDNAメチル化パターンを決定することによってエピジェネティクス解析に利用することができる。
さらにまた、例えばRNAを抽出し、マイクロアレイを用いてmRNA及びmiRNAの遺伝子発現を網羅的に解析するなどの分子生物学的解析によって診断・治療標的を探索することができる。また静止期癌幹細胞を検出するための単一マーカーを決定することができるし、或いは静止期癌幹細胞制御に関わる治療標的分子を見出すことができる。
(3)静止期癌幹細胞の検出・分離に基づく癌の予後、化学療法感受性、リンパ節転移及び血行性転移判定への利用
本発明は、第2の態様により、上記(1)に記載した方法により被験体の生体試料から静止期癌幹細胞を検出及び/又は分離し、上記被験体において癌の予後又は転移の可能性を判定支援することを含む、癌の予後判定支援方法を提供する。
ここで「被験体」、「生体試料」及び「静止期癌幹細胞」は、上記(1)に記載したとおりである。また、転移は、リンパ節転移及び/又は血行性転移を指す。
被験体の生体試料中に静止期癌幹細胞が検出されるか或いは分離されるときには、癌の浸潤・転移の可能性が非常に高いと予想されるため、本発明の上記方法により被験体の癌の予後又は転移の可能性を判定支援することができる。また本発明では、血液などの体液試料を用いた解析が可能であるため、静脈血液サンプルを例えばフローサイトメトリー法(Yamaguchi T, Okumura T et al., World J Surgical Oncology 2016, 14:40 doi: 10.1186/s12957-016-0793.9)で使用して血中循環癌幹細胞を検出することができる。血中循環静止期癌幹細胞の検出によって食道癌の予後予測や転移診断の精度をさらに高めることができる。
もし静止期癌幹細胞が検出されるか或いは分離されるときには、静止期癌幹細胞に対し治療有効性のある薬剤を投与するなどのオーダーメイド医療を実施することができる。
さらにまた、静止期癌幹細胞に対し治療有効性のある薬剤を見出すために、上記(1)で分離された静止期癌幹細胞の培養において種々の候補薬剤を投薬し、該癌幹細胞に対する細胞毒性、生存率、化学療法感受性などを測定し、目的の薬剤をスクリーニングすることができる。
(4)静止期癌幹細胞の分離及び解析システム
本発明はさらに、上記の(1)、(2)及び(3)で説明した静止期癌幹細胞の分離方法を実施するための静止期癌幹細胞の分離及び解析システムを提供する。
具体的には、上記システムは、生体試料中の癌細胞を培養する手段、蛍光ラベル化手段、静止期癌幹細胞の分離手段、並びに静止期癌幹細胞の形質分析手段を含む。
生体試料中の癌細胞を培養する手段は、癌細胞をサブコンフルエント状態まで増殖するためのものであり、培養容器と培養制御部を含む。培養制御部は、温度、pH、CO2濃度、培地濃度などの細胞培養の自動制御に必要なセンサーを備えている。
蛍光ラベル化手段は、蛍光標識された抗p75NTR抗体と、細胞の細胞周期を解析するためのDNA選択的染色色素とを用いて、培養された癌細胞集団を蛍光ラベルするための反応部であり、反応に必要な培地や、抗体、染色色素などの試薬を計量して反応器に注入するための計量・注入部を備えている。また、反応部は、温度制御手段も備えている。
静止期癌幹細胞の分離手段は、好ましくはフローサイトメーターを含み、静止期癌幹細胞を分離・回収して、静止期癌幹細胞の形質分析手段に送るための輸送ラインを含む。
静止期癌幹細胞の形質分析手段は、遺伝子発現パターンを解析するためのRNA抽出手段、マイクロアレイを用いてmRNAおよびmiRNAの遺伝子発現を網羅的に解析する手段、DNAメチル化パターンを決定する手段なの分子生物学的手段の少なくとも1つを含むことができる。また、該形質分析手段は、細胞形態を特徴付けるための解析に利用される手段も含みうる。
本発明のシステムは、自動化されていることが好ましく、システム内の各手段は、生体試料中の癌細胞を培養する手段、蛍光ラベル化手段、静止期癌幹細胞の分離手段、静止期癌幹細胞の形質分析手段の順番で輸送ラインを介して互いに連結されており細胞が自動的に輸送されることが好ましい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(1)p75NTRマーカーと細胞周期の両方による食道扁平上皮癌培養細胞(KYSE-30)からの静止期細胞及び分裂期細胞の分離
p75NTRに特異的親和性を有する抗p75NTR抗体(Allophycocyanin(APC)-conjugated human CD271 (LNGFR) monoclonal antibody ME20.4-1.H4 (isotype: mouse IgG1)(Miltenyl Biotec GmbH, Bergisch Gladbach, Germany))と、フローサイトメトリーによる生細胞における細胞周期解析のためのDNA選択的染色試薬(Vybrant(R) DyeCycleTM Violet stain (Invitrogen Molecular Probes(R), Eugene, OR, USA))の組み合わせに基づき、フローサイトメーター(装置:BD FACSAriaTMII; BD Biosciences, San Jose, CA, USA)を用いて食道扁平上皮癌培養細胞(KYSE)からp75NTR+/G0-1(静止期)細胞、p75NTR+/S-G2-M(分裂期)細胞、p75NTR-/G0-1(静止期)細胞、及びp75NTR-/S-G2-M(分裂期)細胞の4つのフラクションを分離した(図1)。KYSE-30の26.8%が陽性染色、すなわちp75NTR+細胞であった。またDNA含量に基づいたフローサイトメトリーによる細胞周期分析では、p75NTR陽性KYSE-30細胞の63.0%、p75NTR陰性KYSE-30細胞の79.4%がG0-1期にあった。さらに、KYSE-30の16.9%がp75NTR+/G0-1フラクションであった。p75NTR+/G0-1フラクションでは、G0-1期の細胞の割合は93.3%であった。
(2)分離した細胞フラクションにおける幹細胞マーカー発現
分離した4つの各細胞から常法(NucleoSpin(R) RNA (MACHEREY-NAGEL GmbH & Co. KG, Dueren, Germany))によりRNAを抽出し、幹細胞マーカー分子であるNanog、Bmi-1、p63発現を定量RT-PCR(下記のプライマー)を用いて検出した。
Nanog-F(5’-ATGCCTCACACGGAGACTGT-3’(配列番号3))
Nanog-R(5’-AAGTGGGTTGTTTGCCTTTG-3’ (配列番号4))
Bmi-1-F(5’-CCACCTGATGTGTGTGCTTTG-3’ (配列番号5))
Bmi-1-R(5’-TTCAGTAGTGGTCTGGTCTTGT-3’ (配列番号6))
p63-F(5’-CAGACTTGCCAGATCATCC-3’ (配列番号7))
p63-R(5’-CAGCATTGTCAGTTTCTTAGC-3’ (配列番号8))
その結果、p75NTR+/G0-1細胞において他の3つのフラクションよりも有意に強いNanog、Bmi-1、p63発現を認めた(p<0.01、図2)。
(3)分離した細胞フラクションにおけるコロニー形成能
分離した4つの各細胞(初期細胞数1,000個)を培地(DMEM/Ham's F-12 (Wako, Osaka, Japan), 5% fetal calf serum (FCS) (Gibco; Grad Island, NY, USA),及び1% Antibiotic-Antimycotic, 100X (Gibco; Thermo Fisher Scientific Inc., Yokohama, Japan))にて培養(温度37℃、時間14日間)し、形成されたコロニー数を測定した。
その結果、p75NTR+/G0-1細胞において他の3つのフラクションよりも有意に高いコロニー形成能を認めた(p<0.05、図3)。
(4)分離した細胞フラクションにおける薬剤耐性
分離した4つの各細胞(初期細胞数2,000個)を、シスプラチン(CDDR)(濃度25, 50, 100, 200μM)含有培地(DMEM/Ham's F-12, 5% FCS)にて培養(温度37℃、時間72時間)し、シスプラチン耐性遺伝子(ERCC1)発現量、並びにシスプラチン(CDDP)に対する薬剤耐性(細胞生存率(%))を測定した。
その結果、シスプラチン耐性遺伝子(ERCC1)発現が有意に高く(p<0.001、図4)、シスプラチン(CDDP)に対する有意な耐性を認めた(p<0.001、図4)。
(5)分離した細胞フラクションのマウス皮下腫瘍形成能
分離した4つの各細胞をそれぞれ100個、300個、1000個ずつ、免疫不全マウス(BALB/CAN. Cg-Foxnlnu/CrCrlj; Charles River Laboratories, Yokohama, Japan)の皮下へ6か所ずつ移植し、8週間後にマウスを犠死させ、形成された腫瘍の個数と重量を計測した。
その結果、p75NTR+/G0-1(静止期)細胞においてより多くの腫瘍が形成され(図5A)、各細胞をそれぞれ100個移植した結果、p75NTR+/G0-1(静止期)細胞が5/6か所、p75NTR+/S-G2-M(分裂期)細胞が2/6か所により大きな腫瘍を形成し、p75NTR-細胞からは腫瘍形成を認めなかった(図5B、5C)。
(6)上記結果のまとめ
上記の(2)、(3)、(4)及び(5)の結果より、次のことが明らかになった。
(a)p75NTR+/G0-1細胞が最も純度が高い癌幹細胞集団であり、生きた静止期癌幹細胞を高率に含むことがわかった。また、このp75NTR+/G0-1細胞は、未分化かつ自己複製能、コロニー形成能、腫瘍形成能、転移能、及び薬剤耐性(ERCC1発現)を有し、並びに細胞周期が静止期にあることが明らかになり、分離された細胞が静止期癌幹細胞であると決定された。
(b)p75NTR+/S-G2-M細胞は比較的未分化な分裂細胞である。
(c)p75NTR-/G0-1細胞は分化が進み細胞老化によって分裂が止まった細胞である。
(d)p75NTR-/S-G2-M細胞はより分化の進んだ分裂細胞である。
本発明により生体試料中の静止期癌幹細胞を効率的に分離することができるため、癌の予後予測や転移診断の精度を高めるために利用できる。
配列番号3〜8:プライマー

Claims (12)

  1. 被験体の生体試料からの生きた静止期癌幹細胞の効率的分離方法であって、生体試料中の癌細胞を培養容器の70%〜90%の面積に相当する程度の細胞増殖状態まで培養すること、培養した癌細胞中の癌幹細胞と、蛍光色素1標識抗p75NTR抗体との反応を行い、続いて、蛍光色素1と異なる蛍光色素2標識DNA選択的染色試薬を用いてDNA染色を行うこと、並びに、得られた細胞をフローサイトメーターにアプライし、蛍光強度もしくは蛍光量に基づいて、先ずp75NTR陽性細胞を分離し、次いで連続的にG0−1期の細胞を分離することを含み、それによって、p75NTR遺伝子を発現すること及び細胞周期がG0−1であることの両方を指標にして被験体の生体試料から静止期癌幹細胞を検出し、及び連続して腫瘍形成能を有する生細胞として90%以上の純度で静止期癌幹細胞を分離することを含む、前記方法。
  2. 前記被験体がヒトである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記生体試料が、p75NTR遺伝子を発現する癌細胞を含む組織又は体液である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記癌が、食道癌である、請求項に記載の方法。
  5. 前記食道癌は、食道扁平上皮癌である、請求項に記載の方法。
  6. 前記静止期癌幹細胞の形質を測定することをさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記静止期癌幹細胞の形質が、未分化かつ自己複製能、コロニー形成能、転移能及び薬剤耐性からなる群から選択される少なくとも1つの性質を含む、請求項に記載の方法。
  8. 前記未分化かつ自己複製能をNanog遺伝子及びBmi−1遺伝子の発現を指標にして測定することを含む、請求項に記載の方法。
  9. 前記薬剤耐性をERCC1遺伝子発現及び/又は該薬剤の存在下の細胞生存率を指標にして測定することを含む、請求項に記載の方法。
  10. 前記静止期癌幹細胞の遺伝子発現パターンを測定することをさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  11. 請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法により被験体の生体試料から静止期癌幹細胞を検出及び/又は分離し、それにより前記被験体において癌の予後又は転移の可能性を判定支援することを含む、癌の予後判定支援方法。
  12. 生体試料中の癌細胞を培養する手段、蛍光ラベル化手段、静止期癌幹細胞の分離手段、並びに静止期癌幹細胞の形質分析手段を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法を実施するための静止期癌幹細胞の分離及び解析システム。
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