(本発明に至る経緯)
まず、本発明者が本発明を想起するに至った経緯について説明する。従来から、中空糸膜モジュールを用いた膜濾過を行う場合、濾過工程時の膜間差圧を監視し、その挙動変化に基づいて中空糸膜モジュールの詰まり(ファウリング)の程度を評価していた。膜間差圧とは、中空糸膜の表面よりも外側(原水側)の圧力である所謂一次側の圧力と、中空糸膜の表面よりも内側(濾過水側)の圧力である所謂二次側の圧力と、の差分を示す。
図14は、濾過工程時の膜間差圧の監視結果の一例を示す図である。具体的には、図14には、中空糸膜モジュールを用いた膜濾過の運転を約1か月程行い、濾過工程時の膜間差圧を連続して監視した結果を示している。図14の横軸は、膜濾過の運転日数を示し、縦軸は、膜間差圧を示している。従来は、例えば図14に示す監視結果が得られた場合、運転日数が15日を超えるまでは、膜間差圧の上昇程度が小さいため、ファウリングの程度は少なく、安定的に濾過運転を行えていると評価していた。そして、運転日数が15日を超えた時点で、膜間差圧の上昇程度が大きいことに気づき、ファウリングの程度が大きく、安定的に濾過運転を行えない虞があると評価していた。
このように、従来の監視方法では、ある程度運転日数が経過してからでしか、ファウリングの進行に気づくことができなかった。また、ファウリングの程度しか把握できないため、ファウリングの原因が、中空糸膜の表面にSSが大量に蓄積していることであるのか、中空糸膜の細孔が閉塞していることであるのか、または、周辺装置の異常によって、中空糸膜が十分に洗浄できなくなっているのかなど、ファウリングの原因を判別することができなかった。尚、周辺装置の異常には、例えば、一次側および二次側の気体供給配管の閉塞によって気体が適切に供給できなくなることや、一次側の排水用配管の閉塞によって十分な排水ができないこと等が含まれる。
このため、ファウリングの原因を究明するには、中空糸膜モジュールの設置場所に出向いて、中空糸膜モジュールを分解する、または、周辺装置を点検する必要があった。また、上述のように、特許文献1の開示技術においても、分離膜モジュールの詰まり箇所の特定しかできないため、当該詰まりが生じた原因を究明するためには、分離膜モジュールの設置場所まで出向き、分離膜モジュールを分解する、または、周辺装置を点検する必要があった。
特に、ファウリングの原因が中空糸膜の表面にSSが大量に蓄積していたことであった場合、SSが圧密化して物理洗浄や薬品洗浄での除去が困難になる。図15は、中空糸膜の洗浄結果の一例を示す図である。中空糸膜の表面にSSが大量に蓄積すると、SSが圧密化して揺動しなくなる。この場合、物理洗浄が効かなくなり、物理洗浄を強化してもその効果が得られなくなる。さらに、SSが圧密化した場合、圧密したSSに薬液が浸透しないため、薬品洗浄も効かなくなる。
図15に例示するように、実際には、一回の薬品洗浄で4kg程度のSSしか除去できない。このため、中空糸膜の表面にSSが14kg付着していた場合、この付着したSSを除去するためには、集中的な物理洗浄と3回の薬品洗浄を繰り返す必要がある。これにより、洗浄を行っている間、水処理装置の運転を停止し、濾過水の供給が不可能になるため、水インフラとしての性質上大きな問題となることがある。したがって、膜濾過を安定的且つ長期的に連続して行うために、中空糸膜の表面にSSが大量に蓄積されている状態及び周辺装置の異常は、早期に予兆を見つけ、適切に対処する必要があった。
これらのことから、本発明者は、手間をかけずに中空糸膜モジュール内部の状態及び周辺装置の異常を適切に把握する方法について鋭意検討を重ねた結果、本発明を想起した。
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。
(実施形態1)
[水処理装置、中空糸膜モジュール]
まず、本発明の実施形態1に係る中空糸膜モジュール10を備えた水処理装置1の構成について、図1及び図2を参照して説明する。図1は、水処理装置1の構成を示す概略図である。図2は、中空糸膜モジュール10の構成を示す概略図である。
水処理装置1は、中空糸膜の外表面側に原水を供給し、内表面側から濾過水を取り出す外圧濾過式の装置である。水処理装置1は、外圧濾過式の中空糸膜モジュール10と、送液ポンプ20と、エアーコンプレッサー30(周辺装置)と、これらを接続する配管及び当該配管に設けられた開閉バルブと、圧力センサ91、92と、制御装置40と、を有する。
図2に示すように、中空糸膜モジュール10は、複数の中空糸膜14が上端14Bにおいて固定部材3により束状に固定された中空糸膜束15と、中空糸膜束15が収容される内部空間S1が形成されたハウジング13と、を有する。中空糸膜モジュール10は、更に、ハウジング13内に原水を導入するための導水管5と、ハウジング13内に供給された気体を分散させるための散気部材4と、を有する。
中空糸膜束15は、複数の中空糸膜14の上端14Bが開口した状態で固定部材3により固定され、下端14Aが1本ずつ固定されない状態で封止された片端フリータイプである。固定部材3は、複数の中空糸膜14の上端14Bを収束固定する。固定部材3は、中空糸膜14を濾過膜として機能させるため、ハウジング13内の空間を原水側(以降、一次側)の内部空間S1と濾過水側(以降、二次側)の空間S2とに液密に仕切る。固定部材3には、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂が使用される。中空糸膜束15と固定部材3との接着方法としては、遠心接着法、静置接着法などがある。
中空糸膜モジュール10は、外圧濾過式のものであり、膜分離処理の条件や要求される性能に応じて外圧全量濾過式又は外圧循環濾過式であってもよい。膜寿命の点では、濾過膜の表面洗浄を同時に行うことができる外圧循環濾過式が好ましく、設備の単純さ、設置コスト、運転コストの点では外圧全量濾過式が好ましい。
ハウジング13は、上面13A及び下面13Cと、これらを接続する側面13Bと、を有する筒形状からなる。ハウジング13は、中空糸膜束15が収容される内部空間S1を有する。内部空間S1は、中空糸膜14の長手方向の中央よりも上側部分が位置する上部内部空間S11と、中空糸膜14の長手方向の中央よりも下側部分が位置する下部内部空間S12と、に分けられる。
ハウジング13の上面13Aには、濾過水を取り出すための濾過水配管51が接続され、当該濾過水配管51には濾過水出口52及び濾過水側気体入口53が設けられている。濾過水配管51には、濾過水配管51内の圧力(以降、二次側の圧力)を検知する圧力センサ92が設けられている。尚、圧力センサ92の設置位置は、二次側の圧力が検知できるところであればよく、特に限定されない。
側面13Bにおいて固定部材3の直下には、内部空間S1内の気体を系外に排出するための気体抜き口11が設けられている。気体抜き口11は、上部内部空間S11の開口部である。気体抜き口11の直径は、ハウジング13の断面の直径(以降、ハウジング径)よりも十分に小さいものとなっている。側面13Bにおいて下面13Cの真上には、内部空間S1内の液体を系外に排出するためのドレン抜き口12が設けられている。下面13Cの中央近傍には、内部空間S1内に気体を供給するための散気用気体入口7が設けられている。
気体抜き口11には気体抜き配管61が接続され、これを介してハウジング13内の気体が系外に排出される。気体抜き配管61には気体排出口バルブ62が設けられ、これを開くことでハウジング13内から気体が抜かれる。また、ドレン抜き口12にはドレン配管41が接続され、これを介してハウジング13内の液体が外に排出される。ドレン配管41には原水排出口バルブ42が設けられ、これを開くことでハウジング13から液体が排出される。
導水管5は、ハウジング13の下面13C中央を貫通すると共に上面13Aに向かって延びる姿勢で配置され、上端が固定部材3に接続されている。導水管5は、下端側に原水入口9が設けられ、かつ側面に導水管用気体入口8が設けられている。導水管5によれば、原水入口9から導入された濾過前の原水のみをハウジング13内に供給することができ、また導水管用気体入口8から導入された気体のみをハウジング13内に供給することができ、また原水及び気体の両方をハウジング13内に供給することができる。導水管5には、原水の供給口である導水管5内の圧力(以降、一次側の圧力)を検知する圧力センサ91が設けられている。尚、圧力センサ91の設置位置は、一次側の圧力が検知できるところであればよく、特に限定されない。
散気部材4は、散気用気体入口7からハウジング13内に供給された気体を、中空糸膜束15の径方向に広がるように分散させるための部材である。散気部材4は、下部内部空間S12よりも下側の位置に配置されており、中央部に導水管5が貫通している。導水管5及び散気部材4の詳細な構造については後述する。
送液ポンプ20は、原水導入配管21を介して導水管5の原水入口9に接続されている。原水導入配管21には、配管内における原水の流通及び遮断を切り替える原水導入バルブ22が設けられている。送液ポンプ20は、原水導入配管21を介して導水管5内に原水を供給する。
エアーコンプレッサー30は、第1気体導入配管31を介して濾過水側気体入口53に接続され、第2気体導入配管32を介して散気用気体入口7に接続され、第3気体導入配管33を介して導水管用気体入口8に接続されている。第1気体導入配管31には配管内における気体の流通及び遮断を切り替える第1気体導入バルブ34が設けられ、第2及び第3気体導入配管32,33にも同様に第2及び第3気体導入バルブ35,36が設けられている。
制御装置40は、送液ポンプ20及びエアーコンプレッサー30の駆動を制御し、かつ各バルブの開閉動作を制御する。制御装置40は、例えばパーソナルコンピュータ(コンピュータ)などによって構成されている。制御装置40は、図1の実線部に示すように、記憶部401と、制御部402と、測定部403と、推定部404と、を有する。
記憶部401は、例えばHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等の記憶装置によって構成されている。記憶部401には、中空糸膜モジュール10を用いて原水を膜濾過するプロセス(以降、濾過プロセス)を構成する各工程(充水工程、濾過工程、逆洗工程、バブリング工程、排水工程等)の実行順を定めたシーケンス情報が格納されている。また、記憶部401には、各工程で行う周辺装置の駆動制御及びバルブの開閉制御の内容を定めた工程情報が格納されている。
制御部402は、CPU、RAM及びROM等を備えたマイクロコンピュータによって構成されている。制御部402は、濾過プロセスの実行を制御する。具体的には、制御部402は、記憶部401に格納されたシーケンス情報にしたがって、濾過プロセスを構成する各工程を順次実行する。制御部402は、各工程の実行を開始すると、記憶部401に格納された工程情報にしたがって、実行する工程に応じた周辺装置の駆動制御及びバルブの開閉制御を行う。
測定部403は、CPU、RAM及びROM等を備えたマイクロコンピュータによって構成されている。測定部403は、濾過プロセスにおいて順次実行される各工程において、好ましくは3秒以下、さらに好ましくは1秒以下、最も好ましくは0.1秒以下の微小時間毎に、圧力センサ91に一次側の圧力を測定させ、圧力センサ92に二次側の圧力を測定させる。測定部403は、当該測定された一次側の圧力及び二次側の圧力を示す圧力ロギングデータを記憶部401に順次格納する。尚、測定部403は、濾過工程においては、分単位(例えば10分)で、圧力センサ91に一次側の圧力を測定させ、圧力センサ92に二次側の圧力を測定させてもよい。
推定部404は、CPU、RAM及びROM等を備えたマイクロコンピュータによって構成されている。推定部404は、記憶部401に記憶されている圧力ロギングデータが示す、一次側の圧力及び二次側の圧力のうちの少なくとも一方の圧力の時間的推移に基づき、中空糸膜モジュール10の内部の状態を推定する。推定部404による推定の詳細については後述する。
尚、制御部402、測定部403及び推定部404のうちの二以上が、同一のマイクロコンピュータによって構成されいてもよいし、制御部402、測定部403及び推定部404が、それぞれ個別のマイクロコンピュータによって構成されていてもよい。
[散気部材、導水管]
次に、散気部材4及び導水管5の詳細な構造について、図2〜図5を参照して説明する。図3は、散気部材4の平面構造を示す図である。図4は、図3中の線分IV−IVに沿った散気部材4の断面構造を示す図である。図5は、図2中の線分V−Vに沿った導水管5の断面構造を示す図である。上記中空糸膜モジュール10は、ハウジング13の内部空間S1に中空糸膜14の洗浄用の気体(例えば空気)を分散させる気体供給部2を有し、当該気体供給部2は、散気部材4と、導水管5と、を有する。
散気部材4は、中空糸膜14の下端14Aよりも下側に配置されている。散気部材4は、中空糸膜束15の径方向に広がった形状を有し、周縁部が中空糸膜束15よりも径方向外側に位置している。散気部材4には、ハウジング13内に気体を分散させるための複数の散気用通気孔43が径方向に間隔を空けて形成されている。
散気部材4は、中空糸膜束15の径方向に広がった形状を有し、複数の散気用通気孔43が形成された円板状の本体部44と、本体部44の周縁部に接続された周壁部47と、本体部44の下面に接続された円筒状の気体受け部45と、を有し、これらが一体に形成されている。
散気用通気孔43は、本体部44を厚み方向に貫通するように形成されている。散気用通気孔43は、本体部44の径方向及び周方向に互いに間隔を空けて形成されており、その一部は中空糸膜束15よりも径方向外側に位置している。これにより、中空糸膜束15に対して径方向に広い範囲で気体を分散させることができる。また本体部44には、導水管5が貫通する貫通孔44Aが中央に形成されている。尚、本体部44は、図3に示すような円板状のものに限定されず、種々の形状のものであってもよい。
気体受け部45は、散気用気体入口7からハウジング13内に供給された気体を一時的に収容するための部分である。気体受け部45は、筒形状を有し、上端(一方端)が本体部44の下面に接続されると共に、下端(他方端)側に気体の受け口45Aが形成されている。本実施形態では、気体受け部45は、上端から下端に向かって内径が略一定となるように構成されている。気体受け部45は、導水管5の外径よりも内径が大きく、導水管5の外周面との間の隙間において気体を収容する。
気体受け部45は、散気用気体入口7よりも径方向外側に位置し、これにより散気用気体入口7からハウジング13内に供給された気体を筒内に収容することができる。また図2に示すように、気体受け部45の下端とハウジング13の下壁との間には隙間が形成されており、ハウジング13内の液体が当該隙間を流通することができる。これにより、ハウジング13の下部における液溜まりを防ぐことができる。
気体受け部45の上端側の部位には、複数の分散孔46が周方向に間隔を空けて形成されている。分散孔46は、気体受け部45を貫通するように形成されている。分散孔46により、気体受け部45に収容された気体を当該気体受け部45よりも径方向外側へ逃がし、散気用通気孔43へ導くことができる。分散孔46は、周方向に等間隔で形成されていてもよいし、異なる間隔で形成されていてもよい。
周壁部47は、本体部44の周縁部から下方に延びる筒形状を有する。周壁部47により、分散孔46から気体受け部45の外側に放出された気体が、本体部44よりも外側に広がることを抑制できる。これにより、散気用通気孔43から気体が分散される前において、本体部44の下面に気体を留めることができる。
散気部材4によれば、バブリング工程において、散気用気体入口7からハウジング13内に供給された気体を気体受け部45により一時的に収容した後、分散孔46から外側へ逃がし、その後散気用通気孔43から下部内部空間S12に分散させることができる。
導水管5は、中空糸膜束15の中心を上下方向に延びるように配置されている。導水管5は、円筒形状からなるが、特に限定されない。導水管5は、図2に示すように、散気部材4(本体部44)を貫通し、下端が任意のシール部材(図示しない)を介して原水導入配管21(図1)に固定されている。また導水管5の固定方法はこれに限られず、本体部44の上面よりも上方に突出する別配管が設けられ、当該突出部分が導水管5の内側に位置するように導水管5が本体部44の上面に載せられてもよい。
導水管5において本体部44の上面よりも上側に突出した部位には、長手方向全体に亘って複数の管用通気孔54が間隔を空けて形成されている。より具体的には、導水管5において上部内部空間S11に位置する部位に複数の管用通気孔54が互いに間隔を空けて形成され、下部内部空間S12に位置する部位にも複数の管用通気孔54が互いに間隔を空けて形成されている。
これらの管用通気孔54によって、バブリング用の気体をハウジング13内に供給することができ、また中空糸膜14により濾過される原水をハウジング13内に供給することができる。尚、管用通気孔54は、長手方向に等間隔で形成されていてもよいし、異なる間隔で形成されていてもよい。また管用通気孔54は、円形状からなるが、特に限定されない。
複数の管用通気孔54は、導水管5の長手方向においてそれぞれ同じ大きさで形成されている。管用通気孔54の内径は、バブリングの効果を高めるために30mm以下に設計されることが好ましい。また管用通気孔54の内径は、通水時の圧力損失を小さくするため、各孔からの原水の吐出流速の合計が4m/s以下となるように設計されることが好ましく、3m/s以下となるように設計されることがより好ましい。
図2に示すように、導水管5の最上部に形成された管用通気孔54Aは気体抜き口11の下面11Aよりも上側に位置しており、上から2番目の管用通気孔54Bは当該下面11Aよりも下側に位置している。つまり、導水管5には、気体抜き口11の下面11Aを上下方向に挟む位置に管用通気孔54A,54Bが形成されている。
図5に示すように、管用通気孔54は、導水管5の周方向において等間隔に4つ形成されている。本実施形態では、上部内部空間S11に位置する部位及び下部内部空間S12に位置する部位のいずれにおいても管用通気孔54が90°間隔で4つ形成されているが、その数や周方向の間隔は特に限定されない。また、上部内部空間S11に位置する部位と下部内部空間S12に位置する部位とで管用通気孔54の数や周方向の間隔が互いに異なっていてもよい。
図6は、図2中の領域VIにおける導水管5の拡大図である。導水管5における管用通気孔54の開孔率は、以下のように定義できる。図6の斜線部に示すように、最上部の管用通気孔54Aの中間高さ位置からその下の管用通気孔54Bの中間高さ位置までの範囲における導水管5の外周面の面積をS1とする。当該範囲の外周面に形成された全ての管用通気孔54A,54Bの合計の開孔面積をS2とする。このときに、管用通気孔の開孔率は、S2/S1×100、として定義できる。本実施形態では、当該開孔率が1%以上20%以下に設計されることが好ましい。
導水管5によれば、管用通気孔54からハウジング13内に原水を供給できると共に、導水管用気体入口8から導入された気体を浮力により上昇させ、上部内部空間S11に位置する管用通気孔54A,54Bからハウジング13内に分散させることができる。
ハウジング13内に挿入された導水管5の長さは、中空糸膜モジュール10を嵩張らせないようにするため、中空糸膜14の長さの1〜2倍であることが好ましく、1〜1.5倍であることがより好ましい。
導水管5の内径は、通水時の圧力損失を小さくするため、通水時の流束が4m/s以下となるように設計されることが好ましく、3m/s以下となるように設計されることがより好ましい。
[濾過プロセス]
次に、濾過プロセスについて、図7を参照して説明する。図7は、濾過プロセスで行われる各工程とバルブの開閉状態との関係を示す図である。図7中の丸印は、該当するバルブが開いていることを意味する。本実施形態では、図7に示すように、制御部402は、記憶部401に格納されたシーケンス情報にしたがって、濾過プロセスにおいて、充水工程、濾過工程、逆洗工程、充水工程(下側バブリング前)、下側バブリング工程、充水工程(上側バブリング前)、上側バブリング工程、排水工程の順で、各工程を実行する。尚、濾過プロセスにおいて行われる各工程及びその実行順序はこれに限らない。
はじめに、中空糸膜モジュール10内部に原水を満たす充水工程(濾過前)が実施される。この工程では、水処理装置1の全バルブが閉じた状態から制御部402によって原水導入バルブ22及び気体排出口バルブ62が開かれ、送液ポンプ20が作動する。これにより、送液ポンプ20から原水導入配管21を介して導水管5内に原水が導入され、管用通気孔54からハウジング13内に原水が供給される。これにより、ハウジング13の内部空間S1が充水される。
充水工程(濾過前)が開始されると、測定部403は、好ましくは3秒以下、さらに好ましくは1秒以下、最も好ましくは0.1秒以下の微小時間毎に、圧力センサ91及び圧力センサ92に一次側の圧力及び二次側の圧力を測定させ、圧力ロギングデータを記憶部401に順次格納する。
次に、濾過工程が実施される。この工程では、気体抜き口11から原水が溢れた後、制御部402によって濾過水出口バルブ71が開かれ、かつ気体排出口バルブ62が閉じられる。そして、内部空間S1に満たされた原水が中空糸膜14の外表面側から壁面を通過して内表面側へ浸透し、二次側の空間S2から濾過水(濾過水)として取り出される。
尚、濾過工程では、測定部403は、分単位(例えば10分)で、圧力センサ91及び圧力センサ92に測定させた一次側の圧力及び二次側の圧力を示す圧力ロギングデータを記憶部401に順次格納する。ただし、これに限らず、濾過工程においても、測定部403は、3秒以下、さらに好ましくは1秒以下、最も好ましくは0.1秒以下の微小時間毎に、圧力センサ91及び圧力センサ92に測定させた一次側の圧力及び二次側の圧力を示す圧力ロギングデータを記憶部401に順次格納してもよい。
濾過時間の経過に伴って中空糸膜14の外表面には原水中のSSが付着し、これにより濾過能力が低下する。そのため、一定時間濾過が実施された後、以下に説明するように、中空糸膜14の膜表面を物理洗浄するための各工程が行われる。
まず、逆洗工程が実施される。逆洗工程では、所定圧力の気体により、二次側の濾過水を一次側に押し出して、濾過工程で中空糸膜14の表面に蓄積したSSを剥離する。また、逆洗工程が開始されると、測定部403は、3秒以下、さらに好ましくは1秒以下、最も好ましくは0.1秒以下の微小時間毎に、圧力センサ91及び圧力センサ92に一次側の圧力及び二次側の圧力を測定させ、圧力ロギングデータを記憶部401に順次格納する。
具体的には、逆洗工程では、制御部402によって原水排出口バルブ42及び第1気体導入バルブ34(周辺装置)が開かれ、エアーコンプレッサー30(周辺装置)が作動される。これにより、濾過水側気体入口53からハウジング13の二次側の空間S2に、所定圧力の気体(例えば空気)が導入され、当該気体によって濾過水が加圧される。濾過水は、中空糸膜14の内表面側から外表面側に押し出され、その結果、内部空間S1の一次側の原水の一部がドレン抜き口12から系外に排出される。このようにして、中空糸膜14の逆洗が行われる。その後、濾過水側圧抜きバルブ81を開くことにより、二次側の空間S2の圧力を低下させる。
次に、充水工程(下側バブリング前)が実施される。この工程では、上記逆洗工程において低下した内部空間S1内の液面を上昇させるため、制御部402によって気体排出口バルブ62及び原水導入バルブ22が開かれ、送液ポンプ20を作動させる。これにより、内部空間S1内に液体が導入され、液面が上昇する。その後、送液ポンプ20を停止させ、原水導入バルブ22が閉じられ、液体の供給が停止される。
尚、充水工程(下側バブリング前)においても、測定部403は、3秒以下、さらに好ましくは1秒以下、最も好ましくは0.1秒以下の微小時間毎に、圧力センサ91及び圧力センサ92に一次側の圧力及び二次側の圧力を測定させ、圧力ロギングデータを記憶部401に順次格納する。
次に、下側バブリング工程が実施される。この工程では、内部空間S1が充水された状態において、制御部402によって第2気体導入バルブ35(周辺装置)が開かれ、エアーコンプレッサー30(周辺装置)が作動する。これにより、第2気体導入配管32を介して散気用気体入口7からハウジング13内に気体が供給される。
下側バブリング工程においても、測定部403は、3秒以下、さらに好ましくは1秒以下、最も好ましくは0.1秒以下の微小時間毎に、圧力センサ91及び圧力センサ92に一次側の圧力及び二次側の圧力を測定させ、圧力ロギングデータを記憶部401に順次格納する。
ハウジング13内に供給された気体は、気体受け部45に収容された後、散気用通気孔43から下部内部空間S12へ分散される。そして、中空糸膜14の下端14Aから上部内部空間S11まで上昇する気体によって中空糸膜14が揺らされ、その作用で膜表面に付着したSSが剥がれ落とされる。このように、下側バブリング工程では、下部内部空間S12よりも下側の位置でハウジング13内に気体を分散させ、当該気体を上部内部空間S11まで上昇させることにより、下部内部空間S12及び上部内部空間S11の下側部分に位置する中空糸膜14を洗浄する。
次に、充水工程(上側バブリング前)が実施される。この工程では、気体排出口バルブ62及び原水導入バルブ22が開かれ、送液ポンプ20を作動させることにより、再び内部空間S1に液体が満たされる。
尚、充水工程(上側バブリング前)においても、測定部403は、3秒以下、さらに好ましくは1秒以下、最も好ましくは0.1秒以下の微小時間毎に、圧力センサ91及び圧力センサ92に一次側の圧力及び二次側の圧力を測定させ、圧力ロギングデータを記憶部401に順次格納する。
次に、上側バブリング工程が実施される。この工程は、下側バブリング工程において洗浄が不十分であった中空糸膜14の上端14Bにおいて、膜表面に付着したSSをより確実に除去する目的で実施される。上側バブリング工程においても、測定部403は、3秒以下、さらに好ましくは1秒以下、最も好ましくは0.1秒以下の微小時間毎に、圧力センサ91及び圧力センサ92に一次側の圧力及び二次側の圧力を測定させ、圧力ロギングデータを記憶部401に順次格納する。
まず、制御部402によって原水導入バルブ22が閉じられると共に第3気体導入バルブ36(周辺装置)が開かれ、エアーコンプレッサー30(周辺装置)が作動される。これにより、第3気体導入配管33を介して導水管用気体入口8から導水管5内に気体が導入される。そして、当該気体は、管内において浮力により上昇し、上部内部空間S11に位置する管用通気孔54A,54Bからハウジング13内に分散される。これにより、中空糸膜14の上端14B近傍を中心にバブリング洗浄することができ、下側バブリング工程では十分に除去できなった上端14B周辺の膜表面に付着した浮遊汚濁物質をより確実に除去することができる。このように、上側バブリング工程では、上部内部空間S11の位置でハウジング13内に気体を分散させることにより、中空糸膜14が洗浄される。
また、上側バブリング工程の開始当初においては、内部空間S1全体が充水されているため、最上部の管用通気孔54A及びその下の管用通気孔54Bから吐出される気体によって、中空糸膜14をバブリング洗浄することができる。そして、上側バブリング工程の開始から一定時間経過すると、気体抜き口11から気体を含んだ液体が排出され、内部空間S1の液面が下面11Aまで低下する。
この状態においても、導水管5に供給される気体の浮力によって、導水管5内の水を気体抜き口11の下面11Aよりも上側の管用通気孔54Aから気体と共に噴出させ、ハウジング13内の水を気体抜き口11の下面11Aよりも下側の管用通気孔54Bから導水管5内に流入させることができる。これにより、液体と気体の混合流体を、気体抜き口11の下面11Aよりも上側の管用通気孔54Aから継続的に噴出させてバブリングすることができる。このため、中空糸膜14の上端14Bまで効果的に洗浄することができる。
尚、上側及び下側バブリング工程のいずれにおいても、気体の供給量は20000NL/h以下であることが好ましく、500〜10000NL/hの範囲内であることが好ましい。また下側バブリング工程では、気体の供給量が過剰になると中空糸膜14同士が絡まり合って膜表面が傷付いてしまうのに対し、上側バブリング工程ではこのような問題が生じ難い。そのため、上側バブリング工程では、下側バブリング工程よりも気体の供給量を高く設定することができる。
上側バブリング工程の次には、排水工程が実施される。この工程では、更に原水排出口バルブ42が開かれる。これにより、第3気体導入バルブ36を介して供給される気体の圧力によって、上側バブリング工程で膜表面から剥がれたSSを含む液体がドレン抜き口12から系外に排出される。
尚、排水工程では、第3気体導入バルブ36を開かずに、水頭圧を利用してSSを含む液体を排出しても良い。しかし、第3気体導入バルブ36を開き、気体の圧力によってSSを含む液体を排出する方が、当該液体の排出速度が早くなり、一次側の圧力の変化を検知しやすくなる。このため、後述するように、推定部404が、排水工程時の一次側の圧力の時間的推移に基づき、中空糸膜モジュール10内部の状態を推定するにあたっては、排水工程において第3気体導入バルブ36を開く方が好ましい。
この排水工程においても、測定部403は、3秒以下、さらに好ましくは1秒以下、最も好ましくは0.1秒以下の微小時間毎に、圧力センサ91及び圧力センサ92に一次側の圧力及び二次側の圧力を測定させ、圧力ロギングデータを記憶部401に順次格納する。
以上のようにして、中空糸膜14の洗浄が行われた後、膜濾過の運転が再開される。尚、測定部403が、各工程で圧力センサ91及び圧力センサ92に圧力を測定させる時間間隔は、同じであってもよいし、各工程で3秒以下、さらに好ましくは1秒以下、最も好ましくは0.1秒以下の時間間隔が個別に定められていてもよい。また、測定部403が、一部の工程においてだけ、圧力センサ91及び圧力センサ92に圧力を測定させるようにしてもよい。
[中空糸膜モジュール内部の状態の推定方法]
次に、推定部404が、記憶部401に格納された圧力ロギングデータに基づいて、中空糸膜モジュール10内部の状態又はエアーコンプレッサー30の異常を推定する方法について詳細に説明する。尚、推定部404は、例えば、任意のタイミングで、ユーザによる制御装置40の操作によって指示された工程時に記憶部401に記憶された圧力ロギングデータに基づき、中空糸膜モジュール10内部の状態又はエアーコンプレッサー30の異常を推定する。
[充水工程時の圧力ロギングデータに基づく推定]
まず、推定部404が、充水工程時に記憶部401に記憶された圧力ロギングデータに基づき、中空糸膜モジュール10内部の状態として、中空糸膜14の表面に蓄積したSSの量を推定する方法について説明する。
図8は、充水工程時の圧力ロギングデータの一例を示す図である。図8の横軸は、充水工程が開始されてからの経過時間(秒)を示し、縦軸は、圧力センサ91によって測定された一次側の圧力(KPa)を示す。例えば、図8のグラフG81に示すように、充水工程では、ハウジング13の内部空間S1に原水が供給されると一次側の圧力が、水頭圧によって次第に増大する。その後、ハウジング13の内部空間S1が満水状態になり、気体抜き口11に原水が流れ出すと(経過時間t12)、気体抜き口11の直径がハウジング径よりも十分に小さいために管路抵抗が発生し、一次側の圧力が急速に増大する。
しかし、中空糸膜14の表面にSSが蓄積していると、中空糸膜モジュール10内部の有効容積が小さくなる。この場合、例えば、図8のグラフG82に示すように、充水工程が開始されてから、ハウジング13の内部空間S1が満水状態になることによって、一次側の圧力が急速に増大するまでに要する時間(経過時間t11)が短くなる。
したがって、推定部404は、充水工程を開始してから一次側の圧力の増加の傾きが増大する変曲点になるまでに要する時間(t11、t12)が短いほど、中空糸膜モジュール10内部の有効容積が小さい状態、つまり、中空糸膜14の表面に蓄積しているSSが多い状態であると推定する。
これにより、中空糸膜モジュール10を分解せずに、中空糸膜14の表面に蓄積しているSSがどの程度多いのかを把握できる。このため、中空糸膜14の表面に蓄積しているSSが多い状態であると推定された際には、迅速に中空糸膜14の物理洗浄を強化する等して、早期に中空糸膜14の濾過能力を回復することができる。
尚、物理洗浄の強化は、ユーザによる制御装置40の操作及び/又は制御部402による自動操作によって、例えば、上側バブリング工程又は下側バブリング工程で、中空糸膜モジュール10に供給する気体の流量若しくは圧力を増大させる、又は、逆洗工程から排水工程までの工程を連続して複数回繰り返す等して行われる。また、これらの方法を二つ以上組み合わせて物理洗浄を強化してもよいし、これらの方法に限らず、他の方法で物理洗浄を強化してもよい。
更に、例えば実験値等に基づき、充水工程を開始してから中空糸膜モジュール10内部が満水状態になるまでの時間と、このときに中空糸膜14の表面に蓄積していたSSの量と、を対応付けたSS予測テーブルを記憶部401に予め記憶してもよい。これにより、推定部404が、記憶部401に記憶されているSS予測テーブルにおいて、充水工程を開始してから一次側の圧力が所定の増大率よりも大きい増大率で急速に増大するまでに要する時間と一致する時間に対応付けられているSSの量を参照するようにしてもよい。そして、推定部404が、当該参照したSSの量を中空糸膜14の表面に蓄積しているSSの量として推定するようにしてもよい。
図9は、中空糸膜14の表面に蓄積しているSSの量の推定値と実測値との関係の一例を示す図である。本発明者が、10月1日から10月15日までの15日間、水処理装置1において膜濾過の運転を連続して実行する試験を行った結果を図9に示す。図9の「差圧」は、当該運転中に測定部403が測定した圧力ロギングデータが示す一次側及び二次側の圧力差を示す。図9の「充水完了秒数」は、充水工程の開始から中空糸膜モジュール10内部が満水状態になるまでに要した時間を示す。図9の「濁質付着量(推定)」は、推定部404が上記SS予測テーブルを用いて推定したSSの量を示す。また、図9の「濁質付着量(実測)」は、10月7日と10月15日とにおいて、中空糸膜モジュール10を分解して測定した中空糸膜14の表面に蓄積したSSの量の実測値を示す。図9に示すように、推定部404による充水工程時の圧力ロギングデータに基づく、中空糸膜14の表面に蓄積したSSの量の推定値は、実測値に近しい値になることがわかった。
[逆洗工程時の圧力ロギングデータに基づく推定]
次に、推定部404が、逆洗工程時に記憶部401に記憶された圧力ロギングデータに基づき、中空糸膜モジュール10内部の状態を推定する方法について説明する。当該推定される中空糸膜モジュール10内部の状態には、一次側の排水用管路(ドレン配管41(図1))の管路抵抗、中空糸膜14の閉塞度合、中空糸膜14にリークが生じている状態及び逆洗工程に用いる気体の供給状態が含まれる。
図10は、逆洗工程時の圧力ロギングデータの一例を示す図である。図10の横軸は、逆洗工程が開始されてからの経過時間(秒)を示し、縦軸は、圧力センサ91及び圧力センサ92によって測定された一次側の圧力(一次圧)及び二次側の圧力(二次圧)(KPa)を示す。図10に示すように、逆洗工程の開始当初においては、内部空間S1の一次側の原水の一部がドレン抜き口12から系外に排出される際、ドレン抜き口12の直径がハウジング径よりも小さいことにより、管路抵抗が生じる。この管理抵抗により、圧力センサ91によって測定される一次側の圧力が瞬時的に増大する(経過時間t21)。また、このドレン抜き口12に接続されたドレン配管41内の汚れが大きいほど、一次側のドレン水が排水されるときの管路抵抗が大きく、一次側の圧力は増大する。
したがって、推定部404は、逆洗工程の開始当初に瞬時的に増大した一次側の圧力が大きいほど、一次側の排水用管路(ドレン配管41(図1))の管路抵抗が大きい状態であると推定する。
これにより、中空糸膜モジュール10を分解せずに、一次側の排水用管路(ドレン配管41(図1))の管路抵抗がどの程度多いのかを把握することで、一次側の排水用管路がどの程度汚れているのかを把握できる。このため、一次側の排水用管路(ドレン配管41(図1))の管路抵抗が大きい状態であると推定された際には、迅速に一次側の排水用管路を洗浄して、逆洗工程において中空糸膜モジュール10内部にドレン水が滞留することを抑制できる。その結果、逆洗工程による中空糸膜14の洗浄能力を迅速に回復することができる。
また、図10に示すように、逆洗工程の開始当初に一次側の圧力が瞬時的に増大した後(経過時間t21)、二次側の濾過水が一定の圧力で一次側に押し出される。このとき、中空糸膜14の閉塞度合が大きいほど一次側に濾過水が押し出される速度が遅くなり、二次側の濾過水の押し出しが終了するまでに要する時間が長くなる。つまり、一次側の圧力が、瞬時的に増大した後(経過時間t21)、二次側の濾過水の押し出しの終了を示す0KPa付近の所定圧力(終了圧力)になる(経過時間t22)までに要する時間が長くなる。
したがって、推定部404は、逆洗工程の開始当初に一次側の圧力が瞬時的に増大してから、一次側の圧力が、二次側の濾過水の押し出しの終了を示す0KPa付近の所定の終了圧力になるまでに要する時間が長いほど、中空糸膜14の閉塞度合が大きい状態であると推定する。
これにより、水処理装置1では、中空糸膜モジュール10を分解せずに、中空糸膜14の閉塞度合を把握できる。このため、中空糸膜14の閉塞度合が大きい状態であると推定された際には、迅速に中空糸膜14を薬品洗浄又は交換する等して、早期に逆洗工程に要する時間を短縮化し、また中空糸膜14による濾過能力を回復することができる。
尚、薬品洗浄とは、具体的には、ユーザによる制御装置40の操作及び/又は制御部402による自動操作によって、硫酸、塩酸、硝酸、シュウ酸、クエン酸などの酸類、苛性ソーダ、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ類、次亜塩素酸、オゾン、クロラミン、過酢酸などの酸化剤、その他、有機系薬剤、キレート剤、酵素剤、界面活性剤などの薬品類を中空糸膜モジュール10に浸漬、または循環するなどして、中空糸膜モジュール10を薬品で洗浄することを示す。これらの薬品類は、1種類でも良いし、2種類以上を用いて、1種類ずつ順番に、または、混合して使用しても良い。
また、図10に示すように、濾過水の一次側への押し出しが終了すると(経過時間t22)、水の流れがなくなり、一次側の圧力は、二次側の濾過水の押し出しの終了を示す所定の終了圧力に安定する(経過時間t23)。しかし、中空糸膜14にリークが生じている場合、濾過水の押し出しに用いた気体が当該リークの箇所から中空糸膜モジュール10内部の一次側に流出し、一次側の圧力が瞬時的に所定量以上変動する。
したがって、推定部404は、逆洗工程において、一次側の圧力が、二次側の濾過水の押し出しの終了を示す所定の終了圧力を示した後、瞬時的に所定量以上変動している場合、中空糸膜14にリークが生じている状態であると推定する。
これにより、水処理装置1では、中空糸膜モジュール10を分解せずに、中空糸膜14のリークの状態を把握できる。このため、過去に中空糸膜14にリークが生じた時の圧力ロギングデータを参照して、中空糸膜14にリークが発生する時期の予測に活用することができる。
また、上述のように、逆洗工程では、図1に示すように、原水排出口バルブ42及び第1気体導入バルブ34が開かれ、エアーコンプレッサー30が作動される。これにより、所定圧力の気体(例えば空気)が、第1気体導入配管31を介して濾過水側気体入口53からハウジング13の二次側の空間S2(図2)に供給され、当該気体によって二次側の濾過水が一次側に押し出される。
このように、逆洗工程において、第1気体導入バルブ34及びエアーコンプレッサー30が正常に作動し、二次側の濾過水を押し出すための気体が、ハウジング13の一次側の内部空間S1(図2)や第1気体導入配管31の外部等に漏れることなく、ハウジング13の二次側の空間S2(図2)に正常に供給されているとする。この場合、図10に示すように、二次側の濾過水の一次側への押し出しが終了すると(経過時間t22)、二次側の圧力は前記気体の圧力に安定する(経過時間t24)。
したがって、推定部404は、逆洗工程において二次側の圧力が安定した場合に(経過時間t24)、前記安定した二次側の圧力と前記気体の圧力とを対比して、第1気体導入バルブ34及びエアーコンプレッサー30が異常であるか否かを推定する。具体的には、推定部404は、前記安定した二次側の圧力と前記気体の圧力とが所定の誤差範囲内で一致するときは、前記気体が正常に供給されている状態であると推定されるので、第1気体導入バルブ34及びエアーコンプレッサー30が正常であると推定する。一方、推定部404は、前記安定した二次側の圧力と前記気体の圧力とが所定の誤差範囲内で一致しないときは、前記気体が正常に供給されている状態ではないと推定されるので、第1気体導入バルブ34及びエアーコンプレッサー30のうちの一以上の装置が異常であると推定する。
これにより、中空糸膜モジュール10の設置場所に出向かなくても、逆洗工程に用いる気体の供給状態及び当該気体を供給する装置の異常の有無を把握できる。このため、一般的に逆洗工程に用いる二次側の気体の圧力は人による目視で監視されるが、制御装置40において遠隔監視できる点で本構成は有用である。
[下側及び上側バブリング工程時の圧力ロギングデータに基づく推定]
次に、推定部404が、下側バブリング時に記憶部401に記憶された圧力ロギングデータに基づき、中空糸膜モジュール10内部の状態として、下側バブリング工程に用いる気体の流入量を推定する方法について説明する。また、推定部404が、上側バブリング時に記憶部401に記憶された圧力ロギングデータに基づき、中空糸膜モジュール10内部の状態として、上側バブリング工程に用いる気体の流入量を推定する方法について説明する。
図11は、下側バブリング工程時の圧力ロギングデータの一例を示す図である。図11の横軸は、下側バブリング工程の前の充水工程が開始されてからの経過時間(秒)を示し、縦軸は、圧力センサ91によって測定された一次側の圧力(KPa)を示す。例えば、図11に示すように、下側バブリング工程前の充水工程によって、ハウジング13の内部空間S1が満水状態になると(経過時間t31)、気体抜き口11に原水が流れ出し、気体抜き口11の直径がハウジング径よりも十分に小さいために管路抵抗が発生し、一次側の圧力が増大する。
そして、下側バブリング工程が開始されると、第2気体導入バルブ35が開かれ、エアーコンプレッサー30が作動される。これにより、下側バブリング工程の開始当初に気体が流入されると、流入した気体の量に相当する水が、ハウジング13(図2)よりも十分に細い気体抜き配管61(図1)に一気に流入する。このため、一次側の圧力が瞬時的に増大する(経過時間t32)。また、気体の流入量が多いほど、一次側の圧力が大きくなる。
したがって、推定部404は、下側バブリング工程の開始当初に瞬時的に増大した一次側の圧力と所定圧力との対比により、第2気体導入バルブ35及びエアーコンプレッサー30が異常であるか否かを推定する。
具体的には、当該所定圧力は、第2気体導入バルブ35及びエアーコンプレッサー30が正常に作動している場合に、下側バブリング工程の開始当初に瞬時的に増大する一次側の圧力に定められている。推定部404は、前記瞬時的に増大した一次側の圧力と前記所定圧力とが所定の誤差範囲内で一致するときは、下側バブリング工程に用いる気体の流入量が正常な状態であると推定されるので、第2気体導入バルブ35及びエアーコンプレッサー30が正常であると推定する。一方、推定部404は、前記瞬時的に増大した一次側の圧力と前記所定圧力とが所定の誤差範囲内で一致しないときは、下側バブリング工程に用いる気体の流入量が異常な状態であると推定されるので、第2気体導入バルブ35及びエアーコンプレッサー30のうちの一以上の装置が異常であると推定する。
図12は、上側バブリング工程時の圧力ロギングデータの一例を示す図である。図12の横軸は、上側バブリング工程の前の充水工程が開始されてからの経過時間(秒)を示し、縦軸は、圧力センサ91によって測定された一次側の圧力(KPa)を示す。例えば、図12に示すように、上側バブリング工程前の充水工程によって、ハウジング13の内部空間S1が満水状態になると(経過時間t41)、気体抜き口11に原水が流れ出し、気体抜き口11の直径がハウジング径よりも十分に小さいために管路抵抗が発生し、一次側の圧力が増大する。
そして、上側バブリング工程が開始されると、第3気体導入バルブ36が開かれ、エアーコンプレッサー30が作動される。これにより、上側バブリング工程の開始当初に気体が流入されると、流入した気体の量に相当する水が、ハウジング13(図2)よりも十分に細い気体抜き配管61(図1)に一気に流入する。このため、一次側の圧力が瞬時的に増大する(経過時間t42)。また、気体の流入量が多いほど、一次側の圧力が大きくなる。
したがって、推定部404は、上側バブリング工程の開始当初に瞬時的に増大した一次側の圧力と所定圧力との対比により、第3気体導入バルブ36及びエアーコンプレッサー30が異常であるか否かを推定する。
具体的には、当該所定圧力は、第3気体導入バルブ36及びエアーコンプレッサー30が正常に作動している場合に、上側バブリング工程の開始当初に瞬時的に増大する一次側の圧力に定められている。推定部404は、前記瞬時的に増大した一次側の圧力と前記所定圧力とが所定の誤差範囲内で一致するときは、上側バブリング工程に用いる気体の流入量が正常な状態であると推定されるので、第3気体導入バルブ36及びエアーコンプレッサー30が正常であると推定する。一方、推定部404は、前記瞬時的に増大した一次側の圧力と前記所定圧力とが所定の誤差範囲内で一致しないときは、上側バブリング工程に用いる気体の流入量が異常な状態であると推定されるので、第3気体導入バルブ36及びエアーコンプレッサー30のうちの一以上の装置が異常であると推定する。
下側バブリング工程及び上側バブリング工程において、ハウジング13の内部空間S1に流入させる気体の量が過剰に増大すると、中空糸膜14が絡み易くなり、中空糸膜14の破断や濾過能力の低下を招く虞がある。また、下側バブリング工程及び上側バブリング工程において用いる気体の流量も、一般的に人による目視で監視される。このため、下側バブリング工程及び上側バブリング工程に用いる気体の流量及び当該気体を供給する装置の異常の有無が、制御装置40において遠隔監視できる点で本構成は有用である。
[排水工程時の圧力ロギングデータに基づく推定]
次に、推定部404が、排水工程時に記憶部401に記憶された圧力ロギングデータに基づき、中空糸膜モジュール10内部の状態として、中空糸膜14の表面に蓄積したSSの量を推定する方法について説明する。
図13は、排水工程時の圧力ロギングデータの一例を示す図である。図13の横軸は、排水工程が開始されてからの経過時間(秒)を示し、縦軸は、圧力センサ91によって測定された一次側の圧力(KPa)を示す。例えば、図13に示すように、排水工程では、第3気体導入バルブ36を介して供給される気体の圧力によって、ハウジング13の内部空間S1のドレン水が排出されると、一次側の圧力が次第に減少する。その後、内部空間S1のドレン水の排出が終了すると(経過時間t51)、一次側の圧力は、開放系のため、ドレン水の排出の終了を示す0KPa付近の所定の排水終了圧力に安定する。尚、排水工程では、上述のように、前記気体の圧力によってドレン水を排出しても良いし、前記気体を供給せずに水頭圧を利用してドレン水を排出しても良い。
上述のように、中空糸膜14の表面にSSが蓄積している場合、中空糸膜モジュール10内部の有効容積は小さくなる。このため、中空糸膜14の表面にSSが蓄積している量が多い程、排水工程が開始されてから内部空間S1のドレン水の排水が終了し、一次側の圧力が排水終了圧力に安定するまでに要する時間が短くなる。
したがって、推定部404は、排水工程を開始してから一次側の圧力が安定するまでに要する時間が短いほど、中空糸膜14の表面に蓄積しているSSが多い状態であると推定する。
これにより、中空糸膜モジュール10を分解せずに、中空糸膜14の表面に蓄積しているSSがどの程度多いのかを把握できる。このため、中空糸膜14の表面に蓄積しているSSが多い状態であると推定された際には、迅速に中空糸膜14の物理洗浄を強化する等して、早期に中空糸膜14の濾過能力を回復することができる。
(その他実施形態)
ここで、本発明のその他実施形態について説明する。
(1)上記実施形態では、中空糸膜モジュール10を用いた膜濾過の運転において、図7に示す9個の工程を行う例について説明したが、膜濾過の運転において行う工程はこれに限らない。例えば、上側バブリング工程及び下側バブリング工程のうちの一方の工程を省略してもよい。
(2)上記実施形態では、測定部403が膜濾過の運転における全工程で、圧力センサ91、92に圧力を測定させ、圧力ロギングデータを記憶部401に記憶する例について説明した。しかし、これに代えて、測定部403が、膜濾過の運転における全工程のうち、濾過工程とは異なる一部の工程だけ、圧力センサ91、92に圧力を測定させ、圧力ロギングデータを記憶部401に記憶するようにしてもよい。
(3)上記実施形態では、洗浄用気体の一例として空気を説明したがこれに限定されず、中空糸膜14の洗浄に適した他の種類の気体、または液体が用いられてもよい。
(4)上記実施形態では、推定部404が任意のタイミングで推定を行う例について説明した。しかし、これに限らず、制御部402が、濾過プロセスの開始後、各工程の終了時に、測定部403が当該各工程で記憶部401に記憶した圧力ロギングデータが示す一次側及び二次側の圧力のうち、少なくとも一方の圧力の時間的推移に基づき、中空糸膜モジュール10内部の状態又はエアーコンプレッサー30が異常であるか否かを推定部404に推定させてもよい。尚、測定部403が当該各工程で記憶部401に記憶した圧力ロギングデータとは、測定部403が過去に当該各工程と同じ工程で記憶部401に記憶した圧力ロギングデータも含む。
これに合わせて、図1の破線部に示すように、推定部404によって中空糸膜モジュール10の内部の状態又はエアーコンプレッサー30が異常であることが推定された場合に、当該異常の内容を報知する報知部405を制御装置40に設けるようにしてもよい。そして、報知部405によって異常の内容が報知された場合、制御部402が、実行中の濾過プロセスを終了するようにしてもよい。
具体的には、報知部405は、液晶ディスプレイ等の表示装置によって構成すればよい。この場合、報知部405は、異常の内容を示すメッセージを当該表示装置に表示させることで、異常の内容を報知すればよい。
または、報知部405は、水処理装置1の管理者が所有する情報処理装置に電子メールを送信する通信装置によって構成してもよい。この場合、報知部405は、異常の内容を示す電子メールを当該通信装置によって水処理装置1の管理者が所有する情報処理装置に送信させることで、異常の内容を報知すればよい。
または、報知部405は、スピーカ等の音声出力装置によって構成してもよい。この場合、報知部405は、異常の内容を示す音性を当該音声出力装置によって出力させることで、異常の内容を報知すればよい。
または、これらの表示装置、通信装置及び音声出力装置を二以上組み合わせて報知部405を構成し、当該二以上の装置に異常の内容を報知させてもよい。
充水工程の終了時には、推定部404が、今回の充水工程を開始してから一次側の圧力の増加の傾きが増大する変曲点になるまでに要する時間が、前回の充水工程のときよりも短い場合に、中空糸膜14の表面に蓄積しているSSが増加傾向にあるため、中空糸膜モジュール10の内部の状態が異常であると推定するようにすればよい。
尚、これに限らず、推定部404が、充水工程の終了時に、今回の充水工程を開始してから一次側の圧力の増加の傾きが増大する変曲点になるまでに要する時間と、過去に充水工程を開始してから一次側の圧力の増加の傾きが増大する変曲点になるまでに要する時間と、を用いて、中空糸膜14の表面に蓄積しているSSが増加傾向にあると推定するようにしてもよい。そして、当該推定をした場合に、推定部404が、中空糸膜モジュール10の内部の状態が異常であると推定するようにしてもよい。
同様に、排水工程の終了時には、推定部404が、今回の排水工程を開始してから一次側の圧力が安定するまでに要する時間が、前回の排水工程のときよりも短い場合に、中空糸膜14の表面に蓄積しているSSが増加傾向にあるため、中空糸膜モジュール10の内部の状態が異常であると推定するようにすればよい。
尚、これに限らず、推定部404が、排水工程の終了時に、今回の排水工程を開始してから一次側の圧力が安定するまでに要する時間と、過去に排水工程を開始してから一次側の圧力が安定するまでに要する時間と、を用いて、中空糸膜14の表面に蓄積しているSSが増加傾向にあると推定するようにしてもよい。そして、当該推定をした場合に、推定部404が、中空糸膜モジュール10の内部の状態が異常であると推定するようにしてもよい。
これらの場合、報知部405は、異常の内容として、例えば、中空糸膜14の表面に蓄積しているSSが増加傾向にあることを示す情報を報知するようにすればよい。また、これらの場合、報知部405は、更に、物理洗浄の強化を行うことを促す情報を報知してもよい。または、これらの場合に、報知部405が異常の内容を報知した後、制御部402が、実行中の濾過プロセスを終了しないようにしてもよい。そして、制御部402が、自動的に中空糸膜モジュール10の物理洗浄を強化または薬品洗浄を行うようにしても良い。
また、推定部404が、充水工程の終了時に、今回の充水工程を開始してから一次側の圧力の増加の傾きが増大する変曲点になるまでに要する時間が、所定時間よりも短い場合に、中空糸膜14の表面に過剰な量のSSが蓄積していると推定するようにしてもよい。そして、当該推定をした場合に、推定部404が、中空糸膜モジュール10の内部の状態が異常であると推定するようにしてもよい。
同様に、推定部404が、排水工程の終了時に、今回の排水工程を開始してから一次側の圧力が安定するまでに要する時間が、所定時間よりも短い場合に、中空糸膜14の表面に過剰な量のSSが蓄積していると推定するようにしてもよい。そして、当該推定をした場合に、推定部404が、中空糸膜モジュール10の内部の状態が異常であると推定するようにしてもよい。
これらの場合、報知部405は、異常の内容として、例えば、中空糸膜14の表面に過剰な量のSSが蓄積していることを示す情報を報知するようにすればよい。また、これらの場合、報知部405は、更に、物理洗浄の強化を行うことを促す情報を報知してもよい。または、これらの場合に、報知部405が異常の内容を報知した後、制御部402が、実行中の濾過プロセスを終了しないようにしてもよい。そして、制御部402が、自動的に中空糸膜モジュール10の物理洗浄の強化または薬品洗浄を行うようにしても良い。
逆洗工程の終了時には、推定部404が、今回の逆洗工程の開始当初に一次側の圧力が瞬時的に増大してから、一次側の圧力が前記終了圧力になるまでに要する時間が、前回の逆洗工程のときよりも長かった場合に、中空糸膜14の閉塞度合が増加傾向にあるため、中空糸膜モジュール10の内部の状態が異常であると推定するようにすればよい。
尚、これに限らず、推定部404が、逆洗工程の終了時に、今回の逆洗工程の開始当初に一次側の圧力が瞬時的に増大してから、一次側の圧力が終了圧力になるまでに要する時間と、過去に逆洗工程の開始当初に一次側の圧力が瞬時的に増大してから、一次側の圧力が終了圧力になるまでに要する時間と、を用いて、中空糸膜14の閉塞度合が増加傾向にあると推定するようにしてもよい。そして、当該推定をした場合に、推定部404が、中空糸膜モジュール10の内部の状態が異常であると推定するようにしてもよい。
これらの場合、報知部405は、異常の内容として、例えば、中空糸膜14の閉塞度合が増加傾向にあることを示す情報を報知するようにすればよい。また、これらの場合、報知部405は、更に、薬品洗浄の強化を行うことを促す情報を報知してもよい。または、これらの場合に、報知部405が異常の内容を報知した後、制御部402が、実行中の濾過プロセスを終了しないようにしてもよい。そして、制御部402が、自動的に中空糸膜モジュール10の物理洗浄の強化または薬品洗浄を行うようにしても良い。
また、推定部404が、逆洗工程の終了時に、今回の逆洗工程の開始当初に一次側の圧力が瞬時的に増大してから、一次側の圧力が終了圧力になるまでに要する時間が、所定時間よりも長かった場合に、中空糸膜14の閉塞度合が異常であると推定するようにしてもよい。そして、当該推定をした場合に、推定部404が、中空糸膜モジュール10の内部の状態が異常であると推定するようにしてもよい。
この場合、報知部405は、異常の内容として、例えば、中空糸膜14の閉塞度合が異常であることを示す情報を報知するようにすればよい。また、この場合、報知部405は、更に、薬品洗浄の強化を行うことを促す情報を報知してもよい。または、これらの場合に、報知部405が異常の内容を報知した後、制御部402が、実行中の濾過プロセスを終了しないようにしてもよい。そして、制御部402が、自動的に中空糸膜モジュール10の物理洗浄の強化または薬品洗浄を行うようにしても良い。
また、逆洗工程の終了時には、推定部404が、今回の逆洗工程の開始当初に瞬時的に増大した一次側の圧力が、前回の逆洗工程のときよりも大きい場合に、一次側の排水用管路の管路抵抗が増加傾向にあり、ドレン配管41内の汚れが増加傾向にあるため、中空糸膜モジュール10の内部の状態が異常であると推定するようにすればよい。
尚、これに限らず、推定部404が、逆洗工程の終了時に、今回の逆洗工程の開始当初に瞬時的に増大した一次側の圧力と、過去に逆洗工程の開始当初に瞬時的に増大した一次側の圧力と、を用いて、一次側の排水用管路の管路抵抗が増加傾向にあり、ドレン配管41内の汚れが増加傾向にあると推定するようにしてもよい。そして、当該推定をした場合に、推定部404が、中空糸膜モジュール10の内部の状態が異常であると推定するようにしてもよい。
これらの場合、報知部405は、異常の内容として、例えば、ドレン配管41内の汚れが増加傾向にあることを示す情報を報知するようにすればよい。
また、推定部404が、逆洗工程の終了時に、今回の逆洗工程の開始当初に瞬時的に増大した一次側の圧力が、所定圧力よりも大きい場合に、一次側の排水用管路の管路抵抗が過剰に増大しており、ドレン配管41内が過剰に汚れていると推定するようにしてもよい。そして、当該推定をした場合に、推定部404が、中空糸膜モジュール10の内部の状態が異常であると推定するようにしてもよい。
この場合、報知部405は、異常の内容として、例えば、ドレン配管41内が過剰に汚れていることを示す情報を報知するようにすればよい。
また、逆洗工程の終了時には、推定部404が、今回の逆洗工程において一次側の圧力が前記終了圧力を示した後に瞬時的に所定量以上変動した場合に、その変動量が前回中空糸膜14にリークが生じている状態であると推定した場合よりも大きいときは、中空糸膜14に生じたリークが増加傾向にあるため、中空糸膜モジュール10の内部の状態が異常であると推定するようにすればよい。
尚、これに限らず、推定部404が、逆洗工程の終了時に、今回の逆洗工程で一次側の圧力が前記終了圧力を示した後に瞬時的に所定量以上変動した場合の変動量と、過去の逆洗工程で一次側の圧力が前記終了圧力を示した後に瞬時的に所定量以上変動した場合の変動量と、を用いて、中空糸膜14に生じたリークが増加傾向にあると推定するようにしてもよい。そして、当該推定をした場合に、推定部404が、中空糸膜モジュール10の内部の状態が異常であると推定するようにしてもよい。
これらの場合、報知部405は、異常の内容として、例えば、中空糸膜14に生じたリークが増加傾向にあることを示す情報を報知するようにすればよい。
また、推定部404が、逆洗工程の終了時に、今回の逆洗工程で一次側の圧力が前記終了圧力を示した後に瞬時的に所定量以上変動した場合に、中空糸膜14にリークが生じているため、中空糸膜モジュール10の内部の状態が異常であると推定するようにしてもよい。
この場合、報知部405は、異常の内容として、例えば、中空糸膜14にリークが生じていることを示す情報を報知するようにすればよい。
また、逆洗工程の終了時に、推定部404が、第1気体導入バルブ34及びエアーコンプレッサー30のうちの一以上の装置が異常であると推定した場合、報知部405は、異常の内容として、例えば、第1気体導入バルブ34及びエアーコンプレッサー30のうちの一以上の装置に異常が生じ、逆洗工程における二次側の圧力に異常が生じていることを示す情報を報知するようにすればよい。
また、下側バブリング工程の終了時に、推定部404が、第2気体導入バルブ35及びエアーコンプレッサー30のうちの一以上の装置が異常であると推定した場合、報知部405は、異常の内容として、例えば、第2気体導入バルブ35及びエアーコンプレッサー30のうちの一以上の装置に異常が生じ、下側バブリング工程における一次側の圧力に異常が生じていることを示す情報を報知するようにすればよい。
同様に、上側バブリング工程の終了時に、推定部404が、第3気体導入バルブ36及びエアーコンプレッサー30のうちの一以上の装置が異常であると推定した場合、報知部405は、異常の内容として、例えば、第3気体導入バルブ36及びエアーコンプレッサー30のうちの一以上の装置に異常が生じ、上側バブリング工程における一次側の圧力に異常が生じていることを示す情報を報知するようにすればよい。
(5)上記実施形態では、推定部404が記憶部401に記憶されている圧力ロギングデータに基づき、中空糸膜モジュール10内部の状態を推定する例について説明した。しかし、これに代えて、又は、これに加えて、図1の一点鎖線部に示すように、制御装置40に、記憶部401に記憶されている圧力ロギングデータを出力する出力部406を設けてもよい。具体的には、出力部406は、液晶ディスプレイ等の表示装置又はプリンター等の印刷装置によって構成すればよい。そして、ユーザが、制御装置40を操作して出力部406に出力させた圧力ロギングデータを参照して、推定部404と同様に、中空糸膜モジュール10内部の状態を推定するようにしてもよい。
今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと解されるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。