以下、添付図面を用いて本出願の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の実施例を説明する前に、本発明を為すに至った経緯について、従来の電気柵を例にとって説明する。なお、以下に示す実施例では、動物用恒久柵に使用するコーナーポストとして、電気柵に使用するコーナーポストを説明するが、本発明のコーナーポストは、電気柵以外の単にワイヤを張り巡らす簡易的な動物用簡易柵のコーナーポストにも適用できる。
図1(a)は恒久的に設置する電気柵10の構成を示すものである。電気柵10は、例えば、耕作地Cの周囲に太く丈夫なポスト1を設置し、ポスト1に複数本の導電性のワイヤ2を平行に張り巡らし、各ワイヤ2に高電圧を発生する電源9から高い電圧を印加して、ワイヤ2に触れた野生動物を電気ショックで追い払い、動物の通行を阻止するものである。この例の電気柵10は平面視矩形状をしており、4つのコーナー部に4本の牧柵用のポスト1が設けられているが、実際の恒久的な電気柵10は耕作地Cの形状に合わせて設置され、ポスト1の間が長い場合には途中に中間ポストが設けられる。ワイヤ2は強靭な金属製の線であり、1本当たり50〜150kgf程度の張力で張設されている。
図1(a)に示した恒久的な電気柵10では、ワイヤ2は架線具6によってポスト1の内側に張設されているたが、ワイヤ2は絶縁型の架線具6によってポスト1の内側に張設される形態ばかりではない。図1(b)は、ワイヤ2がポスト1の外側に保持された恒久的な電気柵10Aを示している。図1(b)にはワイヤ2がポスト1の外側に直接係止されているように描かれているが、実際には、ポスト1とワイヤ2との間にはコーナーポストの外側に絶縁型の架線具6が設けられている。
電気柵10、10Aでは、通常は野生動物がワイヤ2に触れると電気ショックを受けるので、ワイヤ2には野生動物による荷重が加わり難い。しかし、何らかの原因でワイヤ2に野生動物が突っ込み、図2(a)に示す電気柵10Aの例のように、ワイヤ2が耕作地C側に矢印Fで示すように引っ張られると、ポスト1に加わるワイヤ2からの引っ張り荷重で、コーナーに設置された太く丈夫なポスト1でも破線で示すように倒れ、ポスト間のワイヤ2が緩み、フェンスとして機能しなくなる問題があった。
そこで、図2(b)に示す電気柵10Bのように、電気柵10Bのコーナーに設置するポスト1の耕作地C側に、ポスト1を耕作地C側から支える補助ポスト3を斜めに設けて補強することが行われる。ポスト1の長手方向にはワイヤ2を架線するための架線具6が所定間隔で設けられている。
一方、図3(a)は簡易的に設置するポスト1に設けられた架線具6にワイヤ2が架け渡された動物用簡易柵の一般的なコーナーポストCPの側面図である。図3(a)に示したコーナーポストCPは、恒久的な柵のコーナーポストに比べてポスト1が細く、物理的にも強度の劣る材料で形成されているので、例えば肉厚0.5〜0.75mmの樹脂被覆鋼管等のワイヤ2が動物によって引っ張られた時の応力でポスト1が地面の近くで座屈して倒壊する場合がある(図3(b)参照)。これに対して、図4(a)に示すコーナーポストCPのように、簡易柵用のポスト1に、簡易柵用の補助ポスト3を耕作地Cから斜めに取り付け、補助ポスト3の先端部をバインド線等の連結部材4によって完全に固定することが行われる。しかし、図4(a)に示す構造でも、ワイヤ2が動物によって引っ張られた時の応力がかなり大きい場合には、図4(b)に示すように、ポスト1と補助ポスト3の両方が座屈し、柵の機能が失われる場合がある。このように、ポスト1を補助ポスト3で補強してもコーナーポストCPが折れ曲がる一因として、補助ポスト3の先端部が連結部材4によってポスト1に強固に固定されて自由度がないことが考えられる。
一方、本発明者らは、図5(a)に示した4つのコーナーポストCPにワイヤ2が張り巡らされた矩形の動物用恒久柵5に、図5(b)に示したように動物Aが侵入して後ろ脚でワイヤ2を引掛け、図5(c)に示すように、かなり奥まで動物Aが侵入した場合の動物用恒久柵5の変形について検証した。コーナーポストCPは屋外の地面に立て、検証における動物用恒久柵5のコーナーポストCPの間の距離は50mとし、ワイヤ2はコーナーポストに固定せず移動可能とした。この状況で、ワイヤ2が引っ張られた場合のワイヤ2の移動及びコーナーポストCPの撓みについて検証した。
この結果、動物Aの侵入距離に比べて、ワイヤ2をコーナーポストCPに固定せず、移動可能にすると、ワイヤ2が切れないために必要とされる長さは意外に小さいことが判明した。そして、ワイヤ2に一瞬の荷重が印加された場合、コーナーポストCPが一瞬倒れ込むと共にワイヤ2が移動し、荷重が無くなった時点でコーナーポストCPとワイヤ2が元の位置に戻れるならば、ワイヤ2の伸び代を確保でき、コーナーポストCPの倒壊とワイヤ2の切断を防止できることを見出した。
具体的に説明すると、例えば、図6(a)に示す一辺50mの矩形状の動物用恒久柵5において、図6(b)に示すように、動物が侵入して内側にワイヤ2を4m引っ張った場合を考える。この場合、引っ張られたワイヤ2の両側に位置するコーナーポストCPが矢印で示すように、コーナーポストCPに張設されたワイヤ2がなす内角の範囲内で元の位置から離れる方向、即ち内側に約20cm程度倒れ込んだとすると、ワイヤ2は破線で示すように移動し、ワイヤ2の伸び代が確保できることが分った。実際には、動物がワイヤ2を引張った場合は、ワイヤ2が内側に4m引っ張られる前に動物は体をかわし、動物がワイヤ2から外れるので、コーナーポストCPが倒壊することは殆どない。
ここで、図6(b)、(c)に示したように、ワイヤ2が引っ張られた時に、ワイヤ2を移動させることができる本発明の動物用柵のコーナーポストCPの動作を確認するために、本発明者らはCADを用いて2通りのシミュレーションを行い、その結果を図7及び図8に示した。図7は、一辺が50mの矩形状の動物用柵において、4つのコーナーポストの内の1つのコーナーポストに取り付けられた架線具を動物用柵の内側に移動可能にした時の、架線具の移動量S1を計算したものである。この計算の結果、ワイヤが内側に4m引っ張られた場合は、移動可能な1つの架線具の移動量S1は42.1cmとなった。
また、図8は、一辺が50mの矩形状の動物用柵において、4つのコーナーポストの内の2つのコーナーポストに取り付けられた架線具を動物用柵の内側に移動可能にした時の、架線具の移動量S1を計算したものである。この計算の結果、ワイヤが内側に4m引っ張られた場合は、移動可能な2つの架線具の移動量S1は21.4cmとなった。同様に、図示は省略するが、4つのコーナーポストの内の4つのコーナーポストに取り付けられた架線具を動物用柵の内側に移動可能にした場合は、4つの架線具の移動量S1は11.0cmで済むことが分った。
この状況は、一辺50mの矩形状の動物用恒久柵5の内部にいる動物が、図6(c)に示すように外側にワイヤ2を4m引っ張った場合も同様である。この場合も、引っ張られたワイヤ2の両側に位置するコーナーポストCPが矢印で示すように内側に約20cm程度倒れ込むことになり、ワイヤ2は破線で示すように移動し、ワイヤ2の伸び代が確保できる。
上述の例では、2箇所のコーナーポストCPとワイヤ2が共に架線具の移動によって、ワイヤ2の伸び代が確保されるが、ワイヤ2を移動できるコーナーポストCPの数は何か所でも効果がある。前述の検証と同じ条件で、ワイヤ2が外側に引っ張られた場合も、移動するコーナーポストCPの数が1箇所の場合はコーナーポストCPの移動量が42.1cm、2箇所の場合は21.4cm、4箇所全てに移動できるコーナーポストCPを設置した場合は11.0cmであった。このように、移動するコーナーポストCPの数が多くなるほど、1箇所あたりのコーナーポストCPが内側に移動する距離は短くて済む。なお、上述の例では一辺50mの矩形状の動物用恒久柵5の場合を説明しているが、動物用恒久柵5の形状は矩形状に限られるものではない。
ここで、図6(b)、(c)に示したように、ワイヤ2が引っ張られた時に、ワイヤ2を移動させることができる本発明の動物用恒久柵のコーナーポストCPを、いくつかの実施例に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施例のコーナーポストCPは、全て剛性を備えて曲がり難く、地面Gに埋め込まれて固定される支柱7と、ワイヤ2を移動可能に保持することができる架線具8とを備えるものとする。
図9(a)は本発明のコーナーポストCPの第1の実施例の一部分を示すものである。第1の実施例のコーナーポストCPでは、支柱7に架線具8として、ワイヤ2が掛け渡されるプーリー11の位置を移動させることができる、伸縮可能なワイヤ保持器20が取り付けられている。支柱7は図示を省略した地面に埋め込まれ、ワイヤ保持器20は支柱7に対してワイヤ2の段数と同じ数が取り付けられるが、図9(a)には1つのワイヤ保持器20のみを示してある。他のワイヤ保持器20の構造は図9(a)に示すワイヤ保持器20と同じである。
ワイヤ保持器20は、支柱7に固定されるブラケット21、ブラケット21に対して回転軸22で取り付けられて上下方向に回動できる第1アーム23、第1アーム23の先端部に回転軸24で取り付けられて上下方向に回動できる第2アーム25を備える。また、第2アーム25の先端部には回転軸26で取り付けられて上下方向に回動できるループ状の留め具27が取り付けられており、留め具27の先端部には留め具27の一端を回転軸として水平方向に回転できるプーリー11が設けられている。そして、プーリー11にワイヤ2が掛け渡されており、プーリー11は水平方向に回転できることから、ワイヤ2はプーリー11を回転させながら水平方向に移動することが可能である。更に、第1アーム23と第2アーム25の間には、第2アーム25を第1アーム23側に引き寄せるバネ28が取り付けられている。
以上のような構造を備えるワイヤ保持器20が設置されたコーナーポストCPでは、図5(c)に示したように、動物Aによってワイヤ2が引っ張られると、プーリー11が支柱7から離れる方向に引っ張られる。すると、図9(a)に示した構造を備えるワイヤ保持器20は、図9(b)に示すように、バネ28に抗して第2アーム25が第1アーム23から離れる方向に回転し、同時に第1アーム23も回転軸22を中心にして上側に回転する。この結果、ワイヤ2を保持するプーリー11が支柱7に対して離れる方向に移動すると共に、回転してワイヤ2を移動させることができる。
前述のように、一般に50m程度の動物用柵に第1実施例のコーナーポストCPを使用する場合は、ワイヤ2が引っ張られた時に、プーリー11が支柱7に対して約20cm程度移動できるように、第1アーム23、第2アーム25及び留め具27の大きさを定めれば良い。動物がワイヤ2から外れ、荷重が解除されてワイヤ2が引っ張られなくなると、第1実施例のコーナーポストCPでは、ワイヤ保持器20にあるバネ28の収縮力で、留め具20が図9(a)に示した状態に戻る。
なお、図9(a)に示した実施例では、留め具27は、回転軸26によって上下方向にのみ回動できるようになっている。一方、図9(c)に示すように、留め具27と第2アーム25との連結部をユニバーサルジョイント29とすれば、留め具27は第2アーム25の先端部に対して自由な方向に回動することができる。また、図9(d)に示すように、留め具27を別の留め具27Aによって第2アーム25と搖動可能に連結することもできる。図9(c)、(d)に示した実施例では、ワイヤ2に引っ張り力が印加された場合に、プーリー11が水平方向に移動することができる。更に、ブラケット21は、図9(e)に示すように支柱7に回転機構7Rを取り付けておけば、水平方向に回転できるようにすることもできる。
図10(a)は本発明のコーナーポストCPの第2の実施例の構造を示すものである。第2の実施例のコーナーポストCPでは、支柱7に架線具8として、支柱7に対してプーリー11を移動可能なワイヤ保持器30が取り付けられている。支柱7は地面Gに埋め込まれ、ワイヤ保持器30は支柱7に対してワイヤ2の段数(3段)と同じ数(3個)が取り付けられている。
第2の実施例のワイヤ保持器30は、支柱7を水平方向に貫通する円柱のガイド孔31と、ガイド孔31を挿通するロッド32及びワイヤ2に荷重がかからない状態で支柱7に対するロッド32の位置を定めるバネ36とを備える。ガイド孔31は、支柱7を貫通する孔だけでも良いが、ガイド孔31内を摺動するロッド32の滑りを良くするために、孔の内側にスリーブが挿入されても良い。ガイド孔31を挿通するロッド32の、ガイド孔31から突出する部分の一方には鉤状部33があり、鉤状部33にプーリー11が回転可能に取り付けられている。なお、スリーブの断面形状とロッド32の断面形状を合せることにより、ワイヤ保持器30の鉤状部33が下を向かないようにできる。ロッド32の、ガイド孔31から突出する部分の他方の先端部にはバネ受34がナット35で固定されており、バネ受34と支柱7の外周面との間にはバネ36が挿入されている。
バネ36は圧縮バネ(スプリング)であり、負荷がない状態では伸びた状態になっており、プーリー11の支柱7からの距離を定めている。第2の実施例のバネ36のストロークは前述の条件(コーナーポスト間の距離50m)の時に、約20cm程度にすれば良い。第1の実施例と同様に、図示を省略したワイヤ2が引っ張られると、ロッド32がバネ36を圧縮しながら移動し、プーリー11が支柱7から最も遠い位置まで移動すると共に、回転してワイヤ2を移動させる。図10(b)に、プーリー11が支柱7から最も遠い位置まで移動した状態が示されている。この状態はバネ36が最も縮んだ状態である。
ワイヤ2が引っ張られなくなると、第2実施例のコーナーポストCPでは、バネ36が伸長し、ワイヤ保持器30は図10(a)に示した状態に戻る。バネ36は図10(a)に示したコイルスプリングの他に、図10(c)に示すリーフスプリング37や図10(d)に示すゴム体38を使用することが可能である。ゴム体38は中空でも良い。更に、ワイヤ2をコーナーポストCPの外側に掛け渡す場合には、プーリー11が支柱7の外側にある図10(e)に示す変形例のワイヤ保持器30Aが可能である。ワイヤ保持器30Aの構成部材はワイヤ保持器30と同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
図11は本発明のコーナーポストCPの第3の実施例を示すものである。第3の実施例のコーナーポストCPでは、支柱7に架線具8として、支柱7に対してプーリー11を移動可能なワイヤ保持器40が取り付けられている。支柱7は地面Gに埋め込まれ、ワイヤ保持器40は支柱7に対してワイヤ2の段数(3段)と同じ数(3個)が取り付けられている。
第3の実施例のワイヤ保持器40は、支柱7を水平方向に貫通する円柱のガイド孔41と、ガイド孔41を挿通するケーブル42、ケーブル42の一端に連結された第1の実施例の留め具27、ケーブル42を回転保持するプーリー43、プーリー取付部材44、及びケーブル42の他端に取り付けられたおもり45とを備える。ケーブル42はガイド孔41に対して摺動可能に挿通され、ガイド孔41の一方の開口から突出する端部に、第1の実施例で説明した留め具27が取り付けられている。前述のように、留め具27にはプーリー11が回転保持されており、プーリー11にワイヤ2が掛け渡されている。
支柱7に設けられたガイド孔41の下方には、プーリー取付部材44が設けられており、留め具27と反対側のプーリー取付部材44には回転軸46でプーリー43が回転可能に取り付けられている。ガイド孔41の他方の開口から突出するケーブル42の他端にはおもり45が取り付けられており、ガイド孔41の他方の開口から突出するケーブル42はおもり45によって支柱7に沿って垂れ下がる。プーリー取付部材44に回転軸46で軸支されたプーリー43は、ガイド孔41の他方の開口から突出するケーブル42を回転保持してその方向を下側に向ける。なお、プーリー43のように回転する部材の代わりに、ワイヤ2が滑り易い部材を支柱7に取り付けて置いても良い。
前述の実施例と同様に、動物によってワイヤ2が引っ張られると、ワイヤ2が留め具27を引っ張り、留め具27のプーリー11を回転させながら移動する。また、留め具27が引っ張られると、留め具27に連結されたケーブル42が、他端に取り付けられたおもり45を引き上げながらガイド孔41内を移動する。この時、ケーブル42はプーリー43を回転させながらおもり45を引き上げ、留め具27が破線で示す位置まで移動した時に、おもり45が破線で示す位置まで引き上げられる。
ワイヤ2が引っ張られなくなると、第3実施例のコーナーポストCPでは、おもり45の重量でケーブル42が引き下げられ、ワイヤ保持器40は図11に実線で示した初期状態に戻る。第3の実施例のケーブル42が移動できる長さは、前述の条件(コーナーポスト間の距離50m)の時に、約20cm程度にすれば良い。また、ガイド孔41は、支柱7を貫通する孔だけでも良いが、ガイド孔41内を移動するケーブル42の滑りを良くするために、ガイド孔41の内側にスリーブが挿入されても良い。
図12は本発明のコーナーポストCPの第4の実施例を示すものである。第4の実施例のコーナーポストCPでは、支柱7に架線具8として支柱7に対してプーリー11を移動可能なワイヤ保持器50が取り付けられている。ワイヤ保持器50は、支柱7に固定されるブラケット51、ブラケット51に連結される第1アーム53、第1アーム53に連結される第2アーム55、第1と第2アーム53、55の連結部に取り付けられるおもり57及び第1の実施例と同様の留め具27を備える。ワイヤ保持器50は、支柱7に架け渡されるワイヤ2の段数に合わせて3つが支柱7に固定されている。
第1アーム53は、その一端が回転軸52でブラケット51に対して上下方向に回動可能に取り付けられている。第2アーム55は、第1アーム53の先端部に、回転軸54によって上下方向に回動可能に取り付けられている。また、第2アーム55の自由端部には、第1の実施例と同じ留め具27が回転軸56によって上下方向に回転可能に取り付けられている。更に、第1と第2アーム53、55を連結する連結部である回転軸54には、連結部を地面方向に移動させる力を与えるおもり57が取り付けられている。留め具27は第1の実施例と同様に第2アーム55の先端部に取り付けられている。
以上のような構造を備えるワイヤ保持器50が設置されたコーナーポストCPでは、動物によってワイヤ2が引っ張られると、プーリー11が支柱7から離れる方向に引っ張られる。すると、図12に示した支柱7の真ん中に取り付けられたワイヤ保持器50のように、回転軸54を中心にして、第2アーム55が第1アーム53から離れる方向に回転し、同時に第1アーム53も回転軸52を中心にして上側に回転する。この結果、ワイヤ2を保持するプーリー11が支柱7に対して離れる方向に移動すると共に、回転してワイヤ2を移動させることができる。
前述のように、一般が50m程度の動物用柵に第1実施例のコーナーポストCPを使用する場合は、ワイヤ2が引っ張られた時に、プーリー11がポストに対して約20cm程度移動できるように、第1アーム53、第2アーム55及び留め具27の大きさを定めれば良い。ワイヤ2が引っ張られなくなると、第4実施例のコーナーポストCPでは、回転軸54に取り付けられたおもり57が回転軸54を地面方向に移動させる力を与える。この結果、第2アーム55が第1アーム53に近づくように回転して、元の状態に戻る。第4の実施例でも、留め具27と第2アーム55との連結部を、図9(c)に示したユニバーサルジョイント29や図9(d)に示した機構とすれば、留め具27は第2アーム55の先端部に対して自由な方向に回動することができる。
図13(a)は本発明のコーナーポストCPの第5の実施例を示すものである。第5の実施例のコーナーポストCPでは、支柱7に架線具8として支柱7に対してプーリー11を移動可能なワイヤ保持器60が取り付けられている。支柱7は一端から所定長さが地面Gに埋め込まれ、地面に対して垂直方向に立設されており、補強部材13によって倒れ難くなっている。第5の実施例のワイヤ保持器60は、支柱7にネジ12で固定されるブラケット61、ブラケット61に対して中央部がネジ12で固定された弾性部材から形成されたアーム62、及びアーム62の両端部に回転可能に取り付けられたプーリー11を備える。プーリー11はアーム62の両端部に係止部材63で係止されて回転可能になっている。なお、プーリー11に掛け渡されるワイヤの図示は省略してある。
以上のような構造を備えるワイヤ保持器60が設置されたコーナーポストCPでは、動物によってワイヤが引っ張られると、プーリー11が支柱7から離れる方向に引っ張られる。すると、図13(a)に示した構造を備えるワイヤ保持器60は、図13(b)に示すように、弾性部材から形成されたアーム62が撓み、ワイヤを保持するプーリー11が支柱7に対して離れる方向に移動すると共に、回転してワイヤを移動させることができる。
前述のように、一般が50m程度の動物用柵に第5実施例のコーナーポストCPを使用する場合は、ワイヤが引っ張られた時に、プーリー11がポストに対して約20cm程度移動できるように、アーム62の長さ、材質、直径を定めれば良い。ワイヤが引っ張られなくなると、第5実施例のコーナーポストCPでは、弾性部材から形成されたアーム62の復元力で、アーム62が図13(a)に示した状態に戻る。第5の実施例でも、図示は省略するが、プーリー11をアーム62に対して水平方向に回転させる機構(図17で後述)を追加し、ワイヤを常に水平方向に保持することは可能である。
図14(a)は本発明のコーナーポストCPの第6の実施例を示すものである。第6の実施例のコーナーポストCPでは、支柱7に架線具8として支柱7に対してプーリー11を移動可能なワイヤ保持器70が取り付けられている。第5の実施例のワイヤ保持器70では、支柱7に2段にワイヤを張設することが可能であったが、第6の実施例のワイヤ保持器70では、支柱7に3段にワイヤを張設することが可能である。第6の実施例のワイヤ保持器70において使用される第5の実施例のワイヤ保持器60と同じ部材には、同じ符号を付して説明する。支柱7は一端から所定長さが地面Gに埋め込まれ、地面に対して垂直方向に立設されており、補強部材13によって倒れ難くなっている。
第6の実施例のワイヤ保持器70では、支柱7にネジ12で固定されるブラケット61、ブラケット61に対して中央部がネジ12で固定された弾性部材から形成されたアーム62、及びアーム62の両端部に回転可能に取り付けられたプーリー11に加えて、アーム62に取り付けられる増設アーム72を備える。増設アーム72の長さはアーム62よりも短く、増設アーム72の基部は連結部材71によって、ブラケット61の下側に延伸されるアーム62のプーリー11より上側の端部に取り付けられている。増設アーム72は、連結部材71でアーム62に取り付けられた状態で、その先端部がアーム62から離間しており、この先端部にアーム62と干渉しない状態でプーリー11が、係止部材63によって回転可能に取り付けられている。なお、アーム62の両端部及び増設アーム72の先端部にあるプーリー11に掛け渡されるワイヤの図示は省略してある。
以上のような構造を備えるワイヤ保持器70が設置されたコーナーポストCPでは、動物によってワイヤが引っ張られると、プーリー11が支柱7から離れる方向に引っ張られる。すると、図14(a)に示した構造を備えるワイヤ保持器70は、図14(b)に示すように、弾性部材から形成されたアーム62及び増設アーム72が撓み、ワイヤを保持するプーリー11が支柱7に対して離れる方向に移動すると共に、回転してワイヤを移動させることができる。
前述のように、一般に50m程度の動物用柵に第6実施例のコーナーポストCPを使用する場合は、ワイヤが引っ張られた時に、プーリー11がポストに対して約20cm程度移動できるように、アーム62及び増設アーム72の長さ、材質、直径を定めれば良い。ワイヤが引っ張られなくなると、第6の実施例のコーナーポストCPでは、弾性部材から形成されたアーム62及び増設アーム72の復元力で、アーム62及び増設アーム72が図14(a)に示した状態に戻る。第6の実施例でも、図示は省略するが、プーリー11をアーム62及び増設アーム72に対して水平方向に回転させる機構(図17で後述)を追加し、ワイヤを常に水平方向に保持することは可能である。
図15(a)、(b)は本発明のコーナーポストCPの第7の実施例を示すものである。第7の実施例のコーナーポストCPでは、支柱7に架線具8として支柱7に対してプーリー11を移動可能なワイヤ保持器80が取り付けられている。第7の実施例のコーナーポストCPに用いるワイヤ保持器80には、コイルバネ81を使用する。コイルバネ81としては、その2本の脚82、83がなす角度が90度のものを使用する。コイルバネ81の、一方の脚82には係止部材63を用いてプーリー11を回転可能に取り付け、他方の脚83は先端を先細に形成すると共にネジ部84を形成する。
以上のような構造を備える第7の実施例のコーナーポストCPに用いるワイヤ保持器80は、図15(c)に示すように、地面Gに立設された支柱7の、ワイヤを張設する部位の側面に、ネジ部84を水平方向にねじ込んで取り付ける。本図にもワイヤの図示は省略してある。ワイヤ保持器80が設置されたコーナーポストCPでは、動物によってワイヤが引っ張られると、プーリー11が支柱7から離れる方向に引っ張られる。すると、図15(a)〜(c)に示した構造を備えるワイヤ保持器80は、図15(d)に示すように、コイルバネ81が捩れ、脚83に対して脚82が開き、ワイヤを保持するプーリー11が支柱7に対して離れる方向に移動すると共に、回転してワイヤを移動させることができる。
前述のように、一般が50m程度の動物用柵に第7実施例のコーナーポストCPを使用する場合は、ワイヤが引っ張られた時に、プーリー11がポストに対して約20cm程度移動できるように、脚82の長さ、材質、直径を定めれば良い。ワイヤが引っ張られなくなると、第7の実施例のコーナーポストCPでは、コイルバネ81の捩れが戻り、ワイヤ保持器80が図15(c)に示した状態に戻る。第7の実施例でも、図示は省略するが、プーリー11を脚82に対して水平方向に回転させる機構を追加し、ワイヤを常に水平方向に保持することは可能である。
図16(a)は本発明のコーナーポストCPの第8の実施例を示すものである。第8の実施例のコーナーポストCPでは、支柱7に架線具8として支柱7に対してプーリー11を移動可能なワイヤ保持器90が取り付けられている。コーナーポストCPの第8の実施例に使用するワイヤ保持器90は、支柱7に水平方向に設けられた第1ガイド孔91及び第2ガイド孔92、複数個のプーリーを保持するプーリー軸93、プーリー軸93の下端を回転可能に保持するロッド94、ロッド94に取り付けられる付勢部材(圧縮バネ)95、プーリー軸93の上端に接続するケーブル96及びケーブル96を引っ張るおもり97を備える。
第1ガイド孔91は、支柱7の地面Gに近い部位で、支柱7を水平方向に貫通しており、その内部をロッド94が移動可能に挿入される。第2ガイド孔92は、支柱7の先端部近傍に支柱7を水平方向に貫通しており、内部にケーブル96が移動可能に挿入される。プーリー軸93は複数個のプーリー11を串刺し状態で回転可能に保持するものであり、各プーリー11の間のプーリー軸93には、プーリー11とプーリー11の間に間隔を設けるためのリング状のスペーサ14が挿入されても良い。プーリー軸93の下端部近傍には複数のプーリー11とスペーサ14を係止するフランジ93Fがある。
ロッド94は第1ガイド孔91に対して移動可能に挿通され、第1ガイド孔91の一方の開口から突出する端部にプーリー軸93の下端を回転保持するプーリー軸回転保持部98を備え、第1ガイド孔91の他方の開口から突出する端部にナット94Nで固定されたバネ受94Fを備える。バネ受け94Fと支柱7との間のロッド94には付勢部材95として圧縮バネ95が挿通されている。
ケーブル96は第2ガイド孔92に対して移動可能に挿通され、第2ガイド孔92の一方の開口から露出する端部にプーリー軸93と係合するフック部96Hを備え、第2ガイド孔92の他方の開口から露出する端部にはおもり97が取り付けられている。おもり97によって第2ガイド孔92の他方の開口から露出するケーブル96は支柱7に沿って垂れ下がるので、第2ガイド孔92の下方の支柱7の側面には、ケーブル96を回転保持してケーブル96の方向を変更するプーリー99が設けられている。また、フック部96Hにはストッパ96Sが設けられているので、ケーブル96がおもり97で引っ張られても、フック部96Hはストッパ96Sが支柱7に係止された状態で留まる。
フック部96Hがストッパ96Sで支柱7に係止され、付勢部材95が伸びきった状態でロッド94が位置決めされた状態では、プーリー軸93は支柱7にほぼ平行になるようにフック部96Hの大きさ及び付勢部材95の長さが設定されている。ワイヤはプーリー軸93に回転可能に取り付けられた複数のプーリー11の何れかに、支柱7に張設するワイヤの高さと数に応じて掛け渡せば良い。
第8実施例のコーナーポストCPに使用される第8の実施例のワイヤ保持器90は、動物によってワイヤに引張力が作用すると、付勢部材95を圧縮しながらプーリー軸93の下端を移動させると共に、おもり97を引き上げながらケーブル96を移動させることにより、ワイヤを保持するプーリー11が支柱7に対して離れる方向に移動すると共に、回転してワイヤを移動させることができる。
前述のように、一般が50m程度の動物用柵に第5実施例のコーナーポストCPを使用する場合は、ワイヤが引っ張られた時に、プーリー11がポストに対して約20cm程度移動できるように、付勢部材95のストロークとケーブル96の長さを定めれば良い。ワイヤが引っ張られなくなると、第8の実施例のコーナーポストCPでは、付勢部材95が伸長し、ケーブル96がおもり97に引っ張られてフック部96Hのストッパ96Sが支柱7に当接するまで移動するので、ワイヤ保持器90が図16(a)に示した状態に戻る。
以上説明したように、本発明の動物用柵のコーナーポストは、動物がワイヤを引っ張ってワイヤが掛け渡されたプーリーを移動させると、ワイヤ保持器がプーリーを支柱から離す方向に移動させ、ワイヤもプーリーを回転させて移動するので、ワイヤに大きな負荷が加わらずワイヤの切断が防止される。また、ワイヤへの動物による荷重が解放された後にはワイヤ保持器の復元力により、ワイヤを元の張設状態に戻すことが出来る。本発明の動物用柵のコーナーポストに使用できるワイヤ保持器は、ワイヤが引っ張られた時にプーリーを移動させると共にワイヤを移動させる構造のものであれば、以上説明した実施例に限定されるものではない。
ここで、図17(a)から(e)を用いて本発明のコーナーポストCPに使用できるプーリー11の構造を、幾つかの例を用いて説明する。コーナーポストCPとしては、例えば、図13に示したコーナーポストCPを例に取り、そのワイヤ保持器60に取り付けることができるプーリー11を説明する。
図17(a)に示す例では、プーリー11がアーム62から外れないようにプーリー11の両側を係止する係止部材63の一方が、プーリー11の溝11Mを横切るように延長された延長部63Eを備え、この延長部63Eがワイヤ外れ止めになっている。図17(b)に示す例では、アーム62が傾いてプーリー11が傾いても、プーリー11の溝11Mに保持されたワイヤが溝11Mから外れないように、溝11Mの断面形状がV字状になっている。図17(c)に示す例では、図17(a)に示したワイヤ外れ止め付プーリー11が、回動軸64が設けられたアーム62の回動軸64より先端側に取り付けられており、搖動可能になっている。
図17(d)に示す例では、ワイヤ保持器60のアーム62に取り付けられたプーリー11の構造に変わりがないが、プーリー11巻き付けるワイヤ2が、プーリー11に対して2回巻きの状態で取り付けられている。プーリー11に対してワイヤ2を2回巻き付けると、プーリー11が傾いても、プーリー11からワイヤが外れ難い。図17(e)に示す例では、アーム62の側面に突設された板状の突起65に回転軸66でプーリー保持板67が回動自在に取り付けられている。そして、プーリー保持板67の自由端部に設けられた筒状部68に、リング状のプーリーの留め具69の直線部が回転可能に保持されている。この構造により、プーリー11はアーム62に対して3次元方向に移動が可能することができる。
図9(e)において、ブラケット21と支柱7との間に取り付けた回転機構7Rにより、ブラケット21が水平方向に回転できるようにした実施例を説明した。この実施例の応用として、回転機構7Rを支柱7の回りを回転できるスリーブ7R1とした、第9の実施例が可能である。これを図18及び図19を用いて説明する。
図18は、コーナーポストCPの第9の実施例の組み立てを説明するものである。第9の実施例のコーナーポストCPは、前述の伸縮可能なワイヤ保持器20をスリーブ7R1に固定し、このスリーブ7R1を複数個、支柱7に挿通させることによって組み立てられる。支柱7に挿通したスリーブ7R1は、支柱7に対して回転可能な回転機構である。ワイヤ保持器20が固定された複数個のスリーブ7R1を支柱7に挿通した後は、スリーブ7R1が支柱7から外れないように、支柱7の先端部にキャップ15を取り付ける。
図19は、耕作地Cに突設された支柱7に、ワイヤ保持器20がそれぞれ固定された3個のスリーブ7R1が挿通されて形成された第9の実施例のコーナーポストCPの構造を示すものである。支柱7に挿通された3個のスリーブ7R1は、それぞれ独立に支柱7の回りを回転することができる。よって、第9の実施例のコーナーポストCPでは、ワイヤ2の何れかが引っ張られた場合でも、引っ張られたワイヤ2に対応するスリーブ7R1が回転することによって、ワイヤ2の変形を吸収することができる。
第9の実施例のコーナーポストCPは、耕作地Cに突設された支柱7に、ワイヤ保持器20が固定されたスリーブ7R1を必要な数だけ取り付けるだけで済むので、設置及び撤去の時間及び労力が大幅に削減できる。また、スリーブ7R1が回転することにより、ワイヤ2にかかる応力を分散でき、ワイヤ2が引っ張られても支柱7に加わる力を低減でき、コーナーポストの倒壊を防止できる。そして、スリーブ7R1を絶縁体で形成すれば、コーナーポストCPとワイヤ2の間の漏電を防止することができる。なお、スリーブ7R1の内周面に、スリーブ7R1の抜け防止用の爪を少なくとも1箇所に設けておけば、スリーブ7R1を支柱7から抜け難くすることができる。爪の形状、設置個数は特に限定されるものではない。
第9の実施例のコーナーポストCPに設けた回転機構であるスリーブ7R1は、伸縮しないワイヤ保持器を取り付けて、以上説明した実施例のコーナーポストCPと共に用いる中間ポストに使用すると効果的である。よって、ここで、スリーブ7R1を用いた中間ポストの実施例を幾つか説明する。
図20(a)は、コーナーポストCPと共に用いる中間ポストMPの回転機構であるスリーブ7R1の第1の実施例の組み立てを示すものであり、図20(b)は図20(a)の組み立て方法により組み立てられた中間ポストMPの部分斜視図である。支柱7が挿通するスリーブ7R1の第1の実施例は、スリーブ7R1の側面に2つのワイヤ保持突起16が突設されて形成される。ワイヤ保持突起16の先端部にはピン孔16Hが設けられており、ピン孔16Hにピン17が挿通されたスリーブ7R1を複数個支柱7に取り付け、先端部にキャップ15をとりつけると、図20(b)に示すような中間ポストMPが形成される。ワイヤは2つのワイヤ保持突起16とピン17で囲まれる空間に挿通することができる。
図21は、図20(b)に示した中間ポストMPの変形例を示す部分斜視図である。この変形例では、2つのスリーブ7R1の間にスペーサ14が挿入されている。スリーブ7R1の、支柱7に挿通する方向の長さを一定に形成した場合でも、スペーサ14の長さを変更することにより、2つのスリーブ7R1の間に掛け渡すワイヤの間隔を調整することができる。
図22(a)は、コーナーポストと共に用いる中間ポストの回転機構であるスリーブ7R1の第2の実施例を示す斜視図である。支柱7が挿通されるスリーブ7R1の第2の実施例は、スリーブ7R1の側面に、略L字状の2つのアーム18が突設されて形成されている。2つのアーム18の、スリーブ7R1に接続する側からスリーブ7R1に沿って伸びる方向は互いに逆方向であり、2つのアーム18の間には、ワイヤが挿通できる隙間がある。
第2の実施例のスリーブ7R1に設けられた2つのアーム18に、ワイヤ2を保持させる時は、図22(b)に示すように、2つのアーム18の間にある隙間にワイヤ2を通した後に、ワイヤ2を両側に引っ張れば良い。図22(c)は、図22(b)に示した方法によってスリーブ7R1にワイヤ2が保持された状態を示すものである。
図23は、コーナーポストと共に用いる中間ポストの回転機構であるスリーブ7R1の第3の実施例を示す斜視図である。第3の実施例のスリーブ7R1の外周部には、複数のフランジ19が設けられている。複数のフランジ19は、等間隔で形成することができる。そして、複数のフランジ19の外周部近傍の、スリーブ7R1に平行な同じ位置には、ピンを挿通するためのピン孔が設けられており、これらのピン孔にピン17を挿通することにより、1つのスリーブ7R1に複数のワイヤ保持部が形成される。よって、第3の実施例の中間ポストMPでは、ワイヤ2の張設高さに応じて使用するワイヤ保持部を決めることができる。
図24(a)は、コーナーポストと共に用いる中間ポストの回転機構であるスリーブ7R1の第4の実施例の組み立てを示す組立斜視図であり、図24(b)は図24(a)の組み立て方法により組み立てられたスリーブ7R1の斜視図である。第4の実施例のスリーブ7R1には、ワイヤ保持器100が取り付けられる。ワイヤ保持器100は、第1アーム101及び第2アーム102が設けられた本体103が、スリーブ7R1の外周面に取り付けられ、抑えバネ105によって固定される。第1アーム101と第2アーム102の間にはギャップ104があり、本体103はこのギャップ104の間隔を大きくすることができるバネ性を備えた柔軟な部材、例えば合成樹脂またはバネ性を備える金属から形成されている。
スリーブ7R1にワイヤ保持器100を取り付ける場合は、本体103を撓ませることによって、第1アーム101と第2アーム102の間のギャップ104を開いて、スリーブ7R1を挟み込む。スリーブ7R1を挟み込んだ本体103は、バネ性により元の形状に戻る。本体103のバネ性はそれほど強くないので、本体103のギャップ104の反対側から抑えバネ105を嵌め込んで、本体103がスリーブ7R1から外れないようにする。また、第1と第2のアーム101、102は、スリーブ7R1に接続する側からスリーブ7R1に沿って伸びる方向は互いに逆方向であるので、ギャップ104を通して第1と第2のアーム101、102の間にワイヤを挿通できる。
図25(a)、(b)は、コーナーポストと共に用いる中間ポストMPの回転機構の第5の実施例を示すものであるが、第1から第4の実施例のスリーブ7R1が外周部に溝を備えるフレックス管で形成されたスリーブ7R2に変更になっている。図25(a)、(b)に示したスリーブ7R2には螺旋状の溝が設けられている。第5の実施例のスリーブ7R2には、ワイヤ保持器110が取り付けられる。ワイヤ保持器110は、バネ性のあるワイヤで形成することができる。ワイヤ保持器110は、その環状部をスリーブ7R2の螺旋状の溝に合せて回転させ、スリーブ7R2の溝に沿って中央部に移動させることにより、スリーブ7R2に取り付けることができる。
図26は、コーナーポストと共に用いる中間ポストの回転機構の第6の実施例を示すスリーブ7R2の斜視図である。第5の実施例のスリーブ7R2は、螺旋状の溝を備えるフレックス管で形成されていたが、第6の実施例のスリーブ7R2は、平行溝を備えるフレックス管で形成されている。このため、スリーブ7R2に取り付けるワイヤ保持器120は、フック部の係合を外し、ワイヤ2を通す部分を支点にして左右に開き、スリーブ7R2を挟んだ後に、フック部を再び係合させることによって、スリーブ7R2に取り付けることができる。
図27(a)は、コーナーポストと共に用いる中間ポストの回転機構の第7の実施例を示すものであり、スリーブ7R3及びスリーブ7R3の側面を移動できるワイヤ保持器130が示されている。第1から第4の実施例のスリーブ7R1は円筒状であったが、第7の実施例のスリーブ7R3は、その側面にスライドガイド131が設けられており、樹脂で成形されたものである。スライドガイド131には、2つの側壁132に挟まれたスライド溝133があり、スライド溝33の底面には、図27(b)に示すような係止突起134が設けられている。
一方、スライドガイド131に設けられたスライド溝133をスライドするワイヤ保持器130は、フランジ135を備えるスライダ136と、スライダ136の外面に設けられた2本のアーム137を備える。2本のアーム137は、図22(a)に示したアーム18と同じ構造を備える。また、スライダ136の底面には、図27(c)に示すように、スライド溝133の名面に設けられた係止突起134に係合する突起138が設けられている。ワイヤ保持器130、は図27(a)に示すように、スリーブ7R3の下側から、フランジ135をスライド溝133に嵌め込みながらスライドガイド131に取り付けられる。このとき、スライダ136の底面に設けられた突起138が、スライド溝133の底面に設けられた係止突起134の何れかに係合するので、一旦スライド溝133に嵌め込んだスライダ136は、上側には移動できるが、下側には移動できない。
図27(d)は、第7の実施例の回転機構が取り付けられた中間ポストMPの使用状況を示す斜視図である。中間ポストMPは、支柱7で、ワイヤ保持器130が取り付けられた複数のスリーブ7R3を挿通することによって形成される。ワイヤ保持器130のスライダ136に設けられたアーム137へのワイヤ2の取り付けは、図22(b)、(c)で説明したように行えば良い。
図28(a)は、コーナーポストと共に用いる中間ポストの回転機構の第8の実施例を示すものであり、スリーブ7R4及びスリーブ7R4の側面に設けられたワイヤ保持器140が示されている。第8の実施例のワイヤ保持器140は、スリーブ7R4の側面に突設された2つのレール141と、レール141を走行できるスライダ142を備えている。レール141の先端部には外側に突出するフランジ143があり、フランジ143の底面には、図28(b)に示すような凹凸部144が設けられている。更に、レール141には、フランジ143側からスリーブ7R4側に向かう斜めのワイヤ受入溝145が2組設けられている。
一方、レール141を走行できるスライダ142には、フランジ143に嵌め込まれるスライド溝146と、スライド溝146の両側からフランジ143を挟み込む側壁147がある。側壁147の内面には、フランジ143に設けられた凹凸部144に係合する凹凸部148が形成されている。スライダ142の側壁147は撓むことができるので、スライダ142は、凹凸部144に凹凸部148を係合させることにより、レール141の所定の位置で止めることができる。
図28(c)は、第8の実施例の回転機構が取り付けられた中間ポストMPの使用状況を示す側面図である。中間ポストMPは、支柱7で、ワイヤ保持器140が設けられた複数のスリーブ7R4を挿通することによって形成される。ワイヤ保持器140にスライダ142が取り付けられている状態で、ワイヤ保持器140にワイヤ2を保持させる場合は、ワイヤ2を保持させるワイヤ受入溝145の上からスライダ142をずらしてワイヤ受入溝145を開口させる。この状態で、ワイヤ受入溝145にワイヤ2を挿入し、スライダ142を移動させてワイヤ2が挿入されたワイヤ受入溝145の上で止めれば、ワイヤ2がワイヤ受入溝145から外れず、ワイヤ2がワイヤ保持器140に保持される。