JP6888778B2 - 陰イオン交換樹脂、電解質膜、電極触媒層形成用バインダー、電池電極触媒層および燃料電池 - Google Patents

陰イオン交換樹脂、電解質膜、電極触媒層形成用バインダー、電池電極触媒層および燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は陰イオン交換樹脂、電解質膜、電極触媒層形成用バインダー、電池電極触媒層および燃料電池に関する。
2価の飽和炭化水素基を介して互いに結合する複数の芳香環からなる2価の疎水性基と、単数の芳香環からなる、または、炭素−炭素結合を介して互いに結合する複数の芳香環からなる2価の結合性基と、2価の飽和炭化水素基を介して互いに結合する複数の芳香環を有し、飽和炭化水素基に陰イオン交換基を有する芳香環が炭素−炭素結合を介して結合されている2価の親水性基とからなり、疎水性基および結合性基がエーテル結合を介して繰り返される疎水ユニットと、親水性基およびx結合性基がエーテル結合を介して繰り返される親水ユニットとを有し、疎水ユニットと親水ユニットとがエーテル結合を介して結合されている陰イオン交換樹脂が知られている(特許文献1)。
単数の芳香環からなる、または、2価の炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価の窒素含有基、2価のリン含有基、2価の酸素含有基、2価の硫黄含有基、もしくは炭素−炭素結合を介して互いに結合する複数の芳香環からなる2価の疎水性基と、単数の芳香環からなる、または、2価の炭化水素基、2価のケイ素含有基、2価の窒素含有基、2価のリン含有基、2価の酸素含有基、2価の硫黄含有基、もしくは炭素−炭素結合を介して互いに結合する複数の芳香環からなり、芳香環のうち少なくとも1つが陰イオン交換基を有する2価の親水性基と、2価のフッ素含有基とからなり、疎水性基が、エーテル結合、チオエーテル結合、または炭素−炭素結合を介して繰り返される疎水ユニットと、親水性基が、炭素−炭素結合を介して繰り返される親水ユニットとを有し、疎水ユニットと親水ユニットとが、エーテル結合、チオエーテル結合、または炭素−炭素結合を介して結合しており、かつ、2価のフッ素含有基が、疎水ユニットの主鎖中に、エーテル結合、チオエーテル結合、炭素−ケイ素結合、または炭素−炭素結合を介して結合している、あるいは親水ユニットの主鎖中に、炭素−炭素結合を介して結合している陰イオン交換樹脂も知られている(特許文献2)。
特開2013−47309号公報 特許第5960763号公報
しかし、特許文献1に記載された陰イオン交換樹脂には、化学的安定性(耐久性、特に耐アルカリ性)が十分ではないという課題が存在した。特許文献1に記載された陰イオン交換樹脂に含まれる、陰イオン交換基周辺のエーテル結合を炭素−炭素結合に変更すれば、化学的安定性は改善されるが、エーテル結合の長所である機械的特性(特に柔軟性)が低下してしまう。特許文献1に記載された陰イオン交換樹脂に含まれる芳香環(特に疎水ユニットを構成する芳香環)を特許文献2に示されるパーフルオロアルキル基に変更すれば、化学的安定性を有したまま柔軟性は改善されるが、芳香環の長所である耐熱性の低下が懸念される。
そこで、本発明は、化学的安定性、柔軟性および耐熱性に優れる電解質膜、電極触媒層形成用バインダーおよび電池電極触媒層を製造できる陰イオン交換樹脂、その陰イオン交換樹脂から形成される電解質膜および電極触媒層形成用バインダー、その電極触媒層形成用バインダーから形成される電池電極触媒層、ならびにその電解質膜または電池電極触媒層を備える燃料電池を提供することを目的とする。
前記課題を解決するために、本発明の陰イオン交換樹脂は、
メチレン基の繰り返しからなる2価の疎水ユニットと、
下記式(2a’)で示される、陰イオン交換基を有する置換基で置換されているp−フェニレン基、および下記式(2b’)で示される、陰イオン交換基を有する置換基で置換されているジフェニルフルオレン残基の繰り返しからなる2価の親水ユニットと
を有し、
前記疎水ユニットと前記親水ユニットとが、直接結合を介して結合していることを特徴とする。
Figure 0006888778
(式中、Ionは、陰イオン交換基を有する置換基を示す。)
Figure 0006888778
(式中、Ionは、互いに同一または相異なって、陰イオン交換基を含む置換基または水素原子を示し、少なくとも1つは陰イオン交換基を含む置換基を示す。)
前記課題を解決するために、本発明の電解質膜は、上記の陰イオン交換樹脂を含むことを特徴とする。
前記課題を解決するために、本発明の電極触媒層形成用バインダーは、上記の陰イオン交換樹脂を含むことを特徴とする。
前記課題を解決するために、本発明の電池電極触媒層は、上記の電極触媒層形成用バインダーを含むことを特徴とする。
前記課題を解決するために、本発明の燃料電池は、
上記の陰イオン交換樹脂を含む電解質膜と、
前記電解質膜を挟んで対向配置され、含水素燃料が供給される燃料側電極、および、酸素または空気が供給される酸素側電極と、
を備えたことを特徴とする。
本発明の燃料電池では、前記含水素燃料が、水素、アルコール、またはヒドラジン類であることが好適である。
前記課題を解決するために、本発明の燃料電池は、
電解質膜と、
前記電解質膜を挟んで対向配置され、含水素燃料が供給される燃料側電極、および、酸素または空気が供給される酸素側電極と
を備え、
前記燃料側電極および/または前記酸素側電極が、上記の電池電極触媒層を含むことを特徴とする。
本発明の燃料電池では、前記含水素燃料が、水素、アルコール、またはヒドラジン類であることが好適である。
本発明によれば、化学的安定性、柔軟性および耐熱性に優れる電解質膜、電極触媒層形成用バインダーおよび電池電極触媒層を製造できる陰イオン交換樹脂、その陰イオン交換樹脂から形成される電解質膜および電極触媒層形成用バインダー、その電極触媒層形成用バインダーから形成される電池電極触媒層、ならびにその電解質膜または電池電極触媒層を備える燃料電池を提供できる。
燃料電池の一実施形態を示す概略構成図である。 陰イオン交換膜の引張試験結果を示す図である。 陰イオン交換膜の動的粘弾性試験結果を示す図である。
本発明の陰イオン交換樹脂は、2価の疎水ユニットと、2価の親水ユニットとからなる。
本発明の陰イオン交換樹脂において、2価の疎水ユニットは、下記式(1)で表される疎水性基からなる、または、下記式(1)で表される疎水性基の繰り返しからなる。
Figure 0006888778
(式中、Z〜Zは、互いに同一または相異なって、炭素原子またはケイ素原子を示し、R〜Rは、互いに同一または相異なって、ケイ素含有基、窒素含有基、リン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、または直接結合を示し、aは、1以上の整数を示し、b、c、d、e、f、g、hおよびiは、互いに同一または相異なって、0以上の整数を示す。)
上記式(1)において、Z〜Zは、互いに同一または相異なって、炭素原子またはケイ素原子を示し、好ましくは炭素原子を示す。
上記式(1)において、Rは、互いに同一または相異なって、ケイ素含有基、窒素含有基、リン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、または直接結合を示し、好ましくは直接結合又は酸素原子を示し、より好ましくは直接結合を示す。
上記式(1)において、aは、1以上の整数を示し、好ましくは2〜20の整数を示し、より好ましくは2〜12の整数を示す。
上記式(1)において、b、c、d、e、f、g、hおよびiは、互いに同一または相異なって、0以上の整数を示し、好ましくは0〜10の整数を示し、より好ましくは0〜3の整数を示し、さらに好ましくは0または1を示す。
上記式(1)で示される疎水性基は、複数種がランダム状、交互などの規則状、またはブロック状で互いに結合することで、2価の疎水ユニットを形成していてもよい。すなわち、本発明の陰イオン交換樹脂において、式(1)で示される疎水性基が炭素−炭素結合を介して互いに結合しつつ繰り返されることで、2価の疎水ユニットを形成していてもよい。
このような2価の疎水ユニットは、下記式(3)で示される。
Figure 0006888778
(式中、Z〜Z、R〜R、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは、上記式(1)のZ〜Z、R〜R、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiと同意義を示し、lは、繰り返し単位である各疎水性基のモル分率を示す。)
このような疎水性基として、好ましくは、以下の構造を有するものが挙げられる。
Figure 0006888778
上記式において、aおよびa’は、互いに同一または相異なって、1以上の整数を示し、好ましくは1〜10の整数を示し、より好ましくは1〜6の整数を示す。
上記式において、kは0以上の整数を示し、好ましくは0〜20の整数を示し、より好ましくは0〜3の整数を示し、さらに好ましくは0を示す。
このような疎水性基として、より好ましくは、2価の飽和炭化水素基が挙げられ、とりわけ好ましくは、下記式(1’’’)または下記(1’’’’)で示される炭化水素基が挙げられる。
Figure 0006888778
上記式において、aおよびa’は、互いに同一または相異なって、1以上の整数を示し、好ましくは1〜10の整数を示し、より好ましくは1〜6の整数を示す。
このような疎水ユニットを有することで、電解質膜として使用した際の実作動以上の温度領域(60℃以上)における膜の機械的特性(柔軟性および耐熱性)を改善することができる。
本発明の陰イオン交換樹脂において、2価の親水ユニットは、下記式(2a)で示される、陰イオン交換基を有する置換基で置換されているo−、m−もしくはp−フェニレン基、および/または下記式(2b)で示される、陰イオン交換基を有する置換基で置換されているジフェニル残基からなる親水性基、または、その親水性基の繰り返しからなる。
Figure 0006888778
(式中、Alkは、アルキル基を示し、Ionは、陰イオン交換基を有する置換基を示し、a’は、0〜4の整数を示し、sは、1〜4の整数を示す。)
Figure 0006888778
(式中、Rは、前記陰イオン交換基を有する置換基で置換されていてもよい、炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、リン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、芳香族基、または直接結合を示し、Alkは、互いに同一または相異なって、アルキル基を示し、Ionは、互いに同一または相異なって、陰イオン交換基を有する置換基を示し、a’およびb’は、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示し、s、tおよびuは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示すとともに、s、tおよびuの少なくとも一つが、1以上を示す。)
上記式(2a)中、Alkは、アルキル基を示す。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素数1〜20のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数1〜20のシクロアルキル基が挙げられる。
上記式(2a)中、Ionは、陰イオン交換基を有する置換基を示す。陰イオン交換基は、親水性基において主鎖または側鎖に導入され、具体的には、特に制限されず、四級アンモニウム基、三級アミノ基、二級アミノ基、一級アミノ基、ホスフィン、ホスファゼン、三級スルホニウム基、四級ボロニウム基、四級ホスホニウム基、グアニジウム基など、公知の陰イオン交換基をいずれも採用することができる。陰イオン伝導性の観点から、好ましくは、四級アンモニウム基が挙げられる。
陰イオン交換基として、好ましくは、−CH(CHOHが挙げられるが、その他にも、以下の構造を有するものが挙げられる。なお、以下の構造式において、*は置換基を含む芳香環に結合する部分(三級アミノアルキル基のアルキル基部分)を示し、アニオンは省略している。
Figure 0006888778
(図中、Alk、Alk’、Alk’’は、上記したアルキル基を示し、iPrはイソプロピル基を示す。)
上記式(2a)中、a’は、0〜4の整数を示す。なお、上記式(2a)において、a’が1〜4の範囲である場合におけるアルキル基の置換位置は、目的および用途に応じて、適宜設定される。a’が2〜4の範囲である場合のアルキル基は、目的および用途に応じて、互いに同一または相異なって選択される。
上記式(2a)中、sは、1〜4の整数を示す。なお、上記式(2a)において、陰イオン交換基を有する置換基の置換位置は、目的および用途に応じて、適宜設定される。sが2〜4の範囲である場合の陰イオン交換基を有する置換基は、目的および用途に応じて、互いに同一または相異なって選択される。
このような式(2a)で示される親水性基として、とりわけ好ましくは、下記式(2a’)で示される、陰イオン交換基を有する置換基で置換されているp−フェニレン基が挙げられる。
Figure 0006888778
(式中、Ionは、陰イオン交換基を含む置換基(好ましくは、−CH(CHOH)を示す。)
上記式(2b)中、Rは、炭化水素基、ケイ素含有基、窒素含有基、リン含有基、酸素含有基、硫黄含有基、芳香族基、または直接結合を示す。
炭化水素基としては、例えば、メチレン(−CH−)、エチレン、プロピレン、イソプロピレン(−C(CH−)、ブチレン、イソブチレン、sec−ブチレン、ペンチレン(ペンテン)、イソペンチレン、sec−ペンチレン、ヘキシレン(ヘキサメチレン)、3−メチルペンテン、ヘプチレン、オクチレン、2−エチルヘキシレン、ノニレン、デシレン、イソデシレン、ドデシレン、テトラデシレン、ヘキサデシレン、オクタデシレンなどの、炭素数1〜20の2価の飽和炭化水素基が挙げられる。炭化水素基として、好ましくは、炭素数1〜3の2価の飽和炭化水素基、具体的には、メチレン(−CH−)、エチレン、プロピレン、イソプロピレン(−C(CH−)が挙げられ、より好ましくは、メチレン(−CH−)、イソプロピレン(−C(CH−)が挙げられ、とりわけ好ましくは、イソプロピレン(−C(CH−)が挙げられる。2価の炭化水素基は1価の残基で置換されていてもよい。
芳香族基としては、芳香環を有する2価の残基が挙げられる。芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、インデン環、アズレン環、フルオレン環、アントラセン環、フェナントレン環などの、炭素数6〜14の単環または多環芳香族炭化水素、および、アゾール、オキソール、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、ピリジンなどの、複素環式化合物が挙げられる。芳香環として、好ましくは、炭素数6〜14の単環芳香族炭化水素が挙げられ、より好ましくは、ベンゼン環が挙げられる。また、芳香環は、必要により、ハロゲン原子、アルキル基、擬ハロゲン化物などの置換基に置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。擬ハロゲン化物としては、トリフルオロメチル基、−CN、−NC、−OCN、−NCO、−ONC、−SCN、−NCS、−SeCN、−NCSe、−TeCN、−NCTe、−Nが挙げられる。芳香環としては、好ましくは、p−フェニレン基およびフルオレニル基が挙げられる。
2価のケイ素含有基としては、例えば、ジメチルシラン、ジフェニルシラン、メトキシメチルシラン、ジメトキシシランなどが挙げられる。2価の窒素含有基としては、例えば、アミン、メチルアミン、フェニルアミンなどが挙げられる。2価のリン含有基としては、例えば、ホスフィンオキシド、ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。2価の酸素含有基としては、例えば、エーテル、ケトンなどが挙げられる。2価の硫黄含有基としては、例えば、スルフィド、ジスルフィド、スルホキシド、スルホンなどが挙げられる。なお、2価のケイ素含有基、2価の窒素含有基、2価のリン含有基および2価の酸素含有基または2価の硫黄含有基に水素がある場合、その水素は、ハロゲン原子または擬ハロゲン化物に置換されていてもよい。
上記式(2b)中、Alkは、互いに同一または相異なって、上記したアルキル基を示す。
上記式(2b)中、Ionは、互いに同一または相異なって、上記した陰イオン交換基を含む置換基を示し、好ましくは、上記した四級アンモニウム基を示す。
上記式(2b)中、a’およびb’は、0〜4の整数を示す。なお、上記式(2b)において、a’およびb’が1〜4の範囲である場合におけるアルキル基の置換位置は、目的および用途に応じて、適宜設定される。a’ およびb’が2〜4の範囲である場合のアルキル基は、目的および用途に応じて、互いに同一または相異なって選択される。
上記式(2b)中、s、t、およびuは、互いに同一または相異なって、0〜4の整数を示すとともに、s、t、およびuの少なくとも一つが、1以上を示す。なお、上記式(2b)において、陰イオン交換基を有する置換基の置換位置は、目的および用途に応じて、適宜設定される。s、t、またはuが2〜4の範囲である場合の陰イオン交換基を有する置換基は、目的および用途に応じて、互いに同一または相異なって選択される。
このような式(2b)で示される親水性基として、好ましくは、以下の構造を有するジフェニル残基が挙げられる。
Figure 0006888778
(式中、Ionは、互いに同一または相異なって、陰イオン交換基を含む置換基(好ましくは、−CH(CHOH)または水素原子を示し、少なくとも1つは陰イオン交換基を含む置換基である。)
式(2b)で示される親水性基として、とりわけ好ましくは、下記式(2b’)で示される、陰イオン交換基を有する置換基で置換されているジフェニルフルオレン残基が挙げられる。
Figure 0006888778
(式中、Ionは、互いに同一または相異なって、陰イオン交換基を含む置換基(好ましくは、−CH(CHOH)または水素原子を示し、少なくとも1つは陰イオン交換基を含む置換基である。)
本発明の陰イオン交換樹脂において、2価の親水ユニットは、式(2a)で示される親水性基および/または式(2b)で示される親水性基、または、その親水性基の繰り返しからなる。すなわち、本発明の陰イオン交換樹脂において、式(2a)で示される親水性基および/または式(2b)で示される親水性基の両方が炭素−炭素結合を介して互いに結合しつつ繰り返されることで、2価の親水ユニットを形成している。
式(2a)で示される親水性基および/または式(2b)で示される親水性基で示される親水性基は、ランダム状、交互などの規則状、またはブロック状で互いに結合することで、2価の親水ユニットを形成していてもよい。また、式(2a)で示される親水性基および/または式(2b)で示される親水性基がブロック状で互いに結合する場合、式(2a)で示される親水性基および/または式(2b)で示される親水性基は、それぞれ複数種がランダム状、交互などの規則状、またはブロック状で互いに結合していてもよい。
このような2価の親水ユニットは、下記式(4)で示される。
Figure 0006888778
(式中、R、Alk、Ion、a’、b’、s、tおよびuは、対応する式(2a)又は式(2b)のR、Alk、Ion、a’、b’、s、tおよびuと同意義を示し、mおよびnは、繰り返し単位である各親水性基のモル分率を示す。)
上記式(4)において、mおよびnは、互いに同一または相異なって、任意の値を示す。
本発明の陰イオン交換樹脂において、上記疎水ユニットと上記親水ユニットとが、直接結合を介して結合している。
このような陰イオン交換樹脂は、下記式(5)で示される。
Figure 0006888778
(式中、Z〜Z、R〜R、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは、上記式(1)のZ〜Z、R〜R、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiと同意義を示し、R、Alk、Ion、a’、b’、s、tおよびuは、対応する式(2a)又は式(2b)のR、Alk、Ion、a’、b’、s、tおよびuと同意義を示し、l、mおよびnは、各繰り返し単位のモル分率であり、任意の値を示す。)
このような陰イオン交換樹脂の数平均分子量は、例えば、10〜1000kDa、好ましくは、30〜500kDaである。
陰イオン交換樹脂を製造する方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。好ましくは、重縮合反応による方法が、採用される。
この方法により陰イオン交換樹脂を製造する場合には、例えば、まず、2価の疎水ユニットを形成するためのモノマー(ここでは「第1モノマー」と称する。)に1価の親水ユニットを形成するためのモノマー(ここでは「第2モノマー」と称する。)を、置換または付加により末端処理させた、疎水/親水ユニット前駆体コモノマー(ここでは「第1コモノマー」と称する。)を得る。得られた2価の第1コモノマーは、単独、若しくは、2価の親水ユニット(ここでは「第3モノマー」と称する。)と重縮合反応により重合させた後、得られる陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーに、陰イオン交換基を有する置換基を導入する。また、第1コモノマーではなく、第1モノマーを、第3モノマーと直接重縮合することもできる。ここで、疎水ユニットおよび親水ユニットは、上述の疎水ユニットおよび親水ユニットと同意義であり、第1モノマー、第2モノマー、および第3モノマーは、それぞれ複数種用いても良く、第2モノマーおよび第3モノマーの繰り返し単位は、互いに同一または相異なることができる。
重縮合反応については、従来公知の一般的な方法を採用することができる。好ましくは、炭素−炭素直接結合を形成する、ジハロゲン化物同士を反応させるクロスカップリングが採用される。
2価の疎水ユニットを形成するための第1モノマーは、上記式(1)に対応する、下記式(11)で示される化合物が挙げられる。
Figure 0006888778
(式中、Z〜Z、R〜R、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは、上記式(1)のZ〜Z、R〜R、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiと同意義を示し、XおよびX’は、互いに同一または相異なって、ハロゲン原子または擬ハロゲン化物を示す。)
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。擬ハロゲン化物としては、トリフルオロメチル基、−CN、−NC、−OCN、−NCO、−ONC、−SCN、−NCS、−SeCN、−NCSe、−TeCN、−NCTe、−Nが挙げられる。
2価の疎水/親水ユニット前駆体コモノマー(第1コモノマー)を形成するための1価の第2モノマーは、上記式(2a)に対応する、下記式(12a)で示される化合物、および上記式(2b)に対応する、下記式(12b)で示される化合物が挙げられる。
Figure 0006888778
(式中、Alkおよびa’は、上記式(2a)のAlkおよびa’と同意義を示し、XおよびX’は、互いに同一または相異なって、ハロゲン原子、擬ハロゲン化物、または水素を示す。)
Figure 0006888778
(式中、R、Alk、a’およびb’は、上記式(2b)のR、Alk、a’およびb’と同意義を示し、XおよびX’は、互いに同一または相異なって、ハロゲン原子、擬ハロゲン化物または水素を示す。)
2価の第1コモノマーは、上記式(1)および上記式(2a)に対応する、下記式(11a)で示される化合物、および上記式(1)および上記式(2b)に対応する、下記式(11b)で示される化合物が挙げられる。
Figure 0006888778
(式中、Z〜Z、R〜R、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは、上記式(1)のZ〜Z、R〜R、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiと同意義を示し、Alk、およびa’は、対応する式(2a)のAlk、およびa’と同意義を示し、XおよびX’は、上記式(12a)のXおよびX’と同意義を示す。)
Figure 0006888778
(式中、Z〜Z、R〜R、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは、上記式(1)のZ〜Z、R〜R、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiと同意義を示し、R、Alk、a’ およびb’は、対応する式(2b)のR、Alk、a’ およびb’と同意義を示し、XおよびX’は、上記式(12b)のXおよびX’と同意義を示す。)
2価の親水ユニットを形成するための第3モノマーは、上記式(2a)に対応する、下記式(12a’)で示される化合物、および上記式(2b)に対応する、下記式(12b’)で示される化合物が挙げられる。
Figure 0006888778
(式中、Alkおよびa’は、上記式(2a)のAlkおよびa’と同意義を示し、XおよびX’は、互いに同一または相異なって、ハロゲン原子または擬ハロゲン化物を示す。)
Figure 0006888778
(式中、R、Alk、a’およびb’は、上記式(2b)のR、Alk、a’およびb’と同意義を示し、XおよびX’は、互いに同一または相異なって、ハロゲン原子または擬ハロゲン化物を示す。)
第1モノマーおよび第2モノマーからなる第1コモノマーの合成方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。例えば、芳香族アルキル化反応、または、芳香族アシル化反応により、親水ユニットに疎水ユニットを導入した、2価の疎水/親水ユニット前駆体コモノマーを合成する。
第1コモノマー、単独、若しくは、第1コモノマーおよび第3モノマーとクロスカップリング反応により重合させる際において、第1モノマー、第2モノマー、および第3モノマーの配合量は、それぞれ、得られる陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーにおいて所望の疎水ユニットと親水ユニットの配合比になるように調整される。ここで、クロスカップリングによる重縮合反応おいて、第1コモノマーを用いることにより、モノマー同士の反応性の差が小さくなるため、より均一に重縮合反応が進行することが期待される。
第1モノマーおよび第2モノマーをクロスカップリング反応により重合させる際において、第1モノマーおよび第2モノマーの配合量は、それぞれ、得られる陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーにおいて所望の疎水ユニットと親水ユニットの配合比になるように調整される。
これらの方法では、第1コモノマーおよび/または、第1コモノマーおよび第3モノマー、若しくは、第1モノマーおよび第2モノマーとを、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの溶媒に溶解させ、ビス(シクロオクタ−1,5−ジエン)ニッケル(0)などを触媒として、重合する方法など、公知の方法を採用することができる。
クロスカップリング反応における反応温度は、例えば、−100〜300℃、好ましくは、−50〜200℃であり、反応時間は、例えば、1〜48時間、好ましくは、2〜5時間である。
これにより、下記式(15)、および、下記式(16)で示される陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーが得られる。
Figure 0006888778
(式中、Z〜Z、R〜R、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは、上記式(1)のZ〜Z、R〜R、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiと同意義を示し、R、Alk、a’およびb’は、対応する式(2a)又は式(2b)のR、Alk、a’およびb’と同意義を示し、l、mおよびnは、各繰り返し単位のモル分率であり、任意の値を示す。)
Figure 0006888778
(式中、Z〜Z、R〜R、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiは、上記式(1)のZ〜Z、R〜R、a、b、c、d、e、f、g、hおよびiと同意義を示し、R、Alk、a’およびb’は、対応する式(2a)又は式(2b)のR、Alk、a’およびb’と同意義を示し、l、mおよびnは、各繰り返し単位のモル分率であり、任意の値を示す。)
次いで、この方法では、陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーに、陰イオン交換基を含む置換基を導入する。
陰イオン交換基を含む置換基を導入する方法としては、特に制限されず、公知の方法を採用することができる。
例えば、クロロアルキル化反応により、陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーをクロロアルキル化した後、そのクロロアルキル化された陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーを、四級化反応(例えば、アンモニウム化反応)させることにより、陰イオン交換基を含む置換基を導入する。
クロロアルキル化反応としては、特に制限されず、例えば、陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーを、例えば、テトラクロロエタンなどの溶媒に溶解させ、塩化鉄、塩化亜鉛などのルイス酸を触媒として、クロロメチルメチルエーテル中に浸漬処理してクロロアルキル化する方法など、公知の方法を採用することができる。
クロロアルキル化反応における反応温度は、例えば、20〜120℃、好ましくは、35〜80℃であり、反応時間は、例えば、3〜168時間、好ましくは、6〜12時間である。
これにより、クロロアルキル化された陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーを得ることができる。
四級化反応では、クロロアルキル化された陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーを、必要により公知の方法で製膜し、例えば、アミン、ホスフィン、ホスファゼン、スルフィド、ボロン化合物などを、適宜の割合で添加し、クロロアルキル基の塩素原子をそれらで置換することにより、陰イオン交換基を含む置換基を導入する。
アミンとしては、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジアリルアミン、ジn−プロピルアミン、ジn−ブチルアミン、ジn−ペンチルアミンなどの2級アミン、例えば、トリメチルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエチルアミン、トリアリルアミン、トリn−プロピルアミン、トリn−ブチルアミン、トリn−ペンチルアミン、トリn−ヘキシルアミンなどの3級アミン、例えば、ピリジン、キノリン、イミダゾールなどの環状アミン、例えば、グアニジンなどが挙げられる。
これらアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。
四級化反応における反応温度は、例えば、0〜100℃、好ましくは、20〜80℃であり、反応時間は、例えば、24〜72時間、好ましくは、48〜72時間である。
なお、この方法では、陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーを製膜することなく、例えば、溶液状態において、四級化反応させることもできる。
また、この方法では、必要により、上記のアミン、ホスフィン、ホスファゼン、スルフィド、ボロン化合物などを、公知の方法により除去する。
これにより、上記陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーに、陰イオン交換基を含む置換基が導入され、上記式(5)で示される陰イオン交換樹脂が得られる。
また、陰イオン交換樹脂のイオン交換基容量(IEC)は、例えば、0.1〜4.0meq./g、好ましくは、0.6〜3.0meq./gである。
なお、イオン交換基容量は、下記式(24)により求めることができる。
[イオン交換基容量(meq./g)]=親水ユニット当たりの陰イオン交換基導入量×親水ユニットの繰り返し単位×1000/(疎水ユニットの分子量×疎水ユニットの繰り返し単位数+親水ユニットの分子量×親水ユニットの繰り返し単位数+イオン交換基の分子量×親水ユニットの繰り返し単位数) (24)
なお、イオン交換基導入量とは、単位親水性基あたりのイオン交換基の数と定義される。また、陰イオン交換基導入量は、親水性基において主鎖または側鎖に導入された上記陰イオン交換基のモル数(mol)である。
そして、このような陰イオン交換樹脂は、上記式(1)で表される疎水性基からなる、または上記式(1)で表される疎水性基の繰り返しからなる2価の疎水ユニットと、上記式(2a)で示される、陰イオン交換基を有する置換基で置換されているo−、m−もしくはp−フェニレン基、および/または上記式(2b)で示される、陰イオン交換基を有する置換基で置換されているジフェニル残基からなる親水性基、または、その親水性基の繰り返しからなる2価の親水ユニットとを有し、前記疎水ユニットと前記親水ユニットとが、直接結合を介して結合している。このような構造を有する陰イオン交換樹脂は、化学的安定性、柔軟性および耐熱性を兼ね備える優れたものとなる。
特に、疎水ユニットは、式(1)で表される疎水性基が炭素−炭素結合または炭素−ケイ素結合を介して繰り返されてなることから、耐熱性を有し、かつ、疎水ユニットには芳香環が含有されておらず、柔軟性に優れたものとなる。また、親水ユニットの一部には、式(2a)で表される疎水性基(フェニル基)が炭素−炭素結合を介して繰り返されてなる部分が存在することから、さらに耐熱性に優れたものとなる。さらに、親水ユニットは、式(2a)および/または式(2b)で表される親水性基が炭素−炭素結合を介して繰り返されてなることから、親水ユニットにはエーテル結合が含有されておらず、耐アルカリ性などの化学的耐久性に優れる。
なお、親水ユニットにエーテル結合が含有されていると、下記のように、水酸化物イオン(OH)による分解が起きる可能性があり、耐アルカリ性が十分でない場合があった。
Figure 0006888778
それに対し、親水性基が炭素−炭素結合を介して繰り返される親水ユニットを有する陰イオン交換樹脂の親水ユニットには、エーテル結合が含有されていないため、上記の機構による分解は起こらず、その結果として耐アルカリ性などの耐久性に優れたものとなる。
本発明は、このような陰イオン交換樹脂を用いて得られる電解質層(電解質膜)、さらには、その電解質膜を電解質層として備える燃料電池を、含んでいる。
図1は、本発明の燃料電池の一実施形態を示す概略構成図である。図1において、この燃料電池1は、燃料電池セルSを備えており、燃料電池セルSは、燃料側電極2、酸素側電極3および電解質膜4を備え、燃料側電極2および酸素側電極3が、それらの間に電解質膜4を挟んだ状態で、対向配置されている。
電解質膜4としては、上記した陰イオン交換樹脂を用いることができる(すなわち、電解質膜4は、上記した陰イオン交換樹脂を含んでいる。)。
なお、電解質膜4としては、例えば、多孔質基材などの公知の補強材により補強することができ、さらには、例えば、分子配向などを制御するための二軸延伸処理や、結晶化度や残存応力を制御するための熱処理などの各種処理することができる。また、電解質膜4には、その機械強度を上げるために、公知のフィラーを添加することができ、電解質膜4と、ガラス不織布などの補強剤とをプレスにより複合化させることもできる。
また、電解質膜4において、通常用いられる各種添加剤、例えば、相溶性を向上させるための相溶化剤、例えば、樹脂劣化を防止するための酸化防止剤、例えば、フィルムとしての成型加工における取扱性を向上するための帯電防止剤や滑剤などを、電解質膜4としての加工や性能に影響を及ぼさない範囲で、適宜含有させることができる。
電解質膜4の厚さは、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
電解質膜4の厚みは、例えば、1.2〜350μm、好ましくは、5〜200μmである。
燃料側電極2は、電解質膜4の一方の面に対向接触されている。この燃料側電極2は、例えば、多孔質担体に触媒が担持されている触媒層(電池電極触媒層)を含んでいる。
多孔質担体としては、特に限定されず、カーボンなどの、撥水性担体が挙げられる。
電極触媒としては、特に制限されず、例えば、白金族元素(Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt)、鉄族元素(Fe、Co、Ni)などの周期表第8〜10(IUPAC Periodic Table of the Elements(version date 19 February 2010)に従う。以下同じ。)族元素や、例えば、Cu、Ag、Auなどの周期表第11族元素など、さらにはこれらの組み合わせなどが挙げられ、好ましくは、Pt(白金)が挙げられる。
燃料側電極2は、例えば、上記多孔質単体および触媒を、公知の電解質溶液に分散させ、電極インクを調製する。次いで、必要により、電極インクの粘度を、アルコール類などの適量の有機溶媒を配合することにより調整し、その後、電極インクを、公知の方法(例えば、スプレー法、ダイコーター法など)により電解質膜4の一方面に塗布し、所定の温度で乾燥させることにより、薄膜状の電極膜として電解質膜4の一方面に接合される。
燃料側電極2における電極触媒の担持量は、特に限定されないが、例えば、0.1〜10.0mg/cm、好ましくは、0.5〜5.0mg/cmである。
燃料側電極2では、後述するように、供給される燃料と、電解質膜4を通過した水酸化物イオン(OH)とを反応させて、電子(e)および水(HO)を生成させる。なお、例えば、燃料が水素(H)である場合には、電子(e)および水(HO)のみを生成させ、燃料がアルコールである場合には、電子(e)および水(HO)、および二酸化炭素(CO)などを生成させ、燃料がヒドラジン(NHNH)である場合には、電子(e)、水(HO)および窒素(N)を生成させる。
酸素側電極3は、電解質膜4の他方の面に対向接触されている。この酸素側電極3は、例えば、多孔質担体に触媒が担持されている触媒層(電池電極触媒層)を含んでいる。
酸素側電極3は、例えば、上記多孔質単体および触媒を、公知の電解質溶液に分散させ、電極インクを調製する。次いで、必要により、電極インクの粘度を、アルコール類などの適量の有機溶媒を配合することにより調整し、その後、電極インクを、公知の方法(例えば、スプレー法、ダイコーター法など)により電解質膜4の他方面に塗布し、所定の温度で乾燥させることにより、薄膜状の電極膜として電解質膜4の他方面に接合される。
これにより、電解質膜4、燃料側電極2および酸素側電極3は、電解質膜4の一方面に薄膜状の燃料側電極2が接合され、電解質膜4の他方面に薄膜状の酸素側電極3が接合されてなる膜・電極接合体を形成している。
酸素側電極3における触媒の担持量は、特に限定されないが、例えば、0.1〜10.0mg/cm、好ましくは、0.5〜5.0mg/cmである。
酸素側電極3では、後述するように、供給される酸素(O)と、電解質膜4を通過した水(HO)と、外部回路13を通過した電子(e)とを反応させて、水酸化物イオン(OH)を生成させる。
燃料電池セルSは、さらに、燃料供給部材5および酸素供給部材6を備えている。燃料供給部材5は、ガス不透過性の導電性部材からなり、その一方の面が、燃料側電極2に対向接触されている。そして、この燃料供給部材5には、燃料側電極2の全体に燃料を接触させるための燃料側流路7が、一方の面から凹む葛折状の溝として形成されている。なお、この燃料側流路7には、その上流側端部および下流側端部に、燃料供給部材5を貫通する供給口8および排出口9がそれぞれ連続して形成されている。
また、酸素供給部材6も、燃料供給部材5と同様に、ガス不透過性の導電性部材からなり、その一方の面が、酸素側電極3に対向接触されている。そして、この酸素供給部材6にも、酸素側電極3の全体に酸素(空気)を接触させるための酸素側流路10が、一方の面から凹む葛折状の溝として形成されている。なお、この酸素側流路10にも、その上流側端部および下流側端部に、酸素供給部材6を貫通する供給口11および排出口12がそれぞれ連続して形成されている。
この燃料電池1は、実際には、上記した燃料電池セルSが、複数積層されるスタック構造として形成される。そのため、燃料供給部材5および酸素供給部材6は、実際には、両面に燃料側流路7および酸素側流路10が形成されるセパレータとして構成される。
なお、図示しないが、この燃料電池1には、導電性材料によって形成される集電板が備えられており、集電板に備えられた端子から燃料電池1で発生した起電力を外部に取り出すことができるように構成されている。
また、図1においては、この燃料電池セルSの燃料供給部材5と酸素供給部材6とを外部回路13によって接続し、その外部回路13に電圧計14を介在させて、発生する電圧を計測するようにしている。
この燃料電池1においては、燃料が、改質などを経由することなく直接に、または、改質などを経由した上で、燃料側電極2に供給される。
燃料としては、含水素燃料が挙げられる。
含水素燃料は、分子中に水素原子を含有する燃料であって、例えば、水素ガス、アルコール類、ヒドラジン類などが挙げられ、好ましくは、水素ガスまたはヒドラジン類が挙げられる。
ヒドラジン類として、具体的には、例えば、ヒドラジン(NHNH)、水加ヒドラジン(NHNH・HO)、炭酸ヒドラジン((NHNHCO)、塩酸ヒドラジン(NHNH・HCl)、硫酸ヒドラジン(NHNH・HSO)、モノメチルヒドラジン(CHNHNH)、ジメチルヒドラジン((CHNNH、CHNHNHCH)、カルボンヒドラジド((NHNHCO)などが挙げられる。上記例示の燃料は、単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
上記した燃料化合物のうち、炭素を含まない化合物、すなわち、ヒドラジン、水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジンなどは、COおよびCOの生成がなく、触媒の被毒が生じないことから、耐久性の向上を図ることができ、実質的なゼロエミッションを実現することができる。
また、上記例示の燃料としては、上記の燃料化合物をそのまま用いてもよいが、上記例示の燃料化合物を、例えば、水および/またはアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの低級アルコールなど)などの溶液として用いることができる。この場合、溶液中の燃料化合物の濃度は、燃料化合物の種類によっても異なるが、例えば、1〜90質量%、好ましくは、1〜30質量%である。上記例示の溶媒は、単独または2種類以上組み合わせて用いることができる。
さらに、燃料は、上記した燃料化合物をガス(例えば、蒸気)として用いることができる。
そして、酸素供給部材6の酸素側流路10に酸素(空気)を供給しつつ、燃料供給部材5の燃料側流路7に上記した燃料を供給すれば、酸素側電極3においては、次に述べるように、燃料側電極2で発生し、外部回路13を介して移動する電子(e)と、燃料側電極2で発生する水(HO)と、酸素(O)とが反応して、水酸化物イオン(OH)を生成する。生成した水酸化物イオン(OH)は、アニオン交換膜からなる電解質膜4を、酸素側電極3から燃料側電極2へ移動する。そして、燃料側電極2においては、電解質膜4を通過した水酸化物イオン(OH)と、燃料とが反応して、電子(e)と水(HO)とが生成する。生成した電子(e)は、燃料供給部材5から外部回路13を介して酸素供給部材6に移動され、酸素側電極3へ供給される。また、生成した水(HO)は、電解質膜4を燃料側電極2から酸素側電極3へ移動する。このような燃料側電極2および酸素側電極3における電気化学的反応によって、起電力が生じ、発電が行われる。
なお、この燃料電池1の運転条件は、特に限定されないが、例えば、燃料側電極2側の加圧が200kPa以下、好ましくは、100kPa以下であり、酸素側電極3側の加圧が200kPa以下、好ましくは、100kPa以下であり、燃料電池セルSの温度が0〜120℃、好ましくは、20〜80℃として設定される。
そして、このような燃料電池1においては、電解質膜4に、上記の耐久性に優れる陰イオン交換樹脂を含む電解質膜が、用いられている。
そのため、本発明の陰イオン交換樹脂を用いて得られる本発明の電解質膜、および、そのような電解質膜を備える燃料電池は、耐久性に優れる。
また、本発明は、上記した陰イオン交換樹脂を含む電極触媒層形成用バインダー、その電極触媒層形成用バインダーを含む電池電極触媒層、さらには、その電池電極触媒層を備える燃料電池を含んでいる。
すなわち、燃料電池1では、上記した燃料側電極2および/または酸素側電極3の形成時において、陰イオン交換樹脂を電極触媒層形成用バインダーに含有させることができる。
陰イオン交換樹脂を電極触媒層形成用バインダーに含有させる方法として、具体的には、例えば、陰イオン交換樹脂を細断し、アルコール類などの適量の有機溶媒に溶解させることにより、電極触媒層形成用バインダーを調製する。
電極触媒層形成用バインダーにおいて、陰イオン交換樹脂の含有割合は、電極触媒層形成用バインダー100質量部に対して、例えば、2〜10質量部、好ましくは、2〜5質量部である。
また、その電極触媒層形成用バインダーを、上記した燃料側電極2および/または酸素側電極3の触媒層(電池電極触媒層)の形成に用いることにより、陰イオン交換樹脂を、触媒層(電池電極触媒層)に含有させることができ、これにより、陰イオン交換樹脂を含む触媒層(電池電極触媒層)を備える燃料電池1を得ることができる。
そして、このような燃料電池1においては、電池電極触媒層の形成において、上記の耐久性に優れる陰イオン交換樹脂を含む電極触媒層形成用バインダーが、用いられている。
そのため、本発明の陰イオン交換樹脂を用いて得られる本発明の電極触媒層形成用バインダー、また、その電極触媒層形成用バインダーを用いて得られる電池電極触媒層は、耐久性に優れており、優れたアニオン導電性を確保することができる。
その結果、そのような電池電極触媒層を備える燃料電池は、耐久性に優れており、優れたアニオン導電性を確保することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の実施形態は、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜設計を変形することができる。
本発明の燃料電池の用途としては、例えば、自動車、船舶、航空機などにおける駆動用モータの電源や、携帯電話機などの通信端末における電源などが挙げられる。
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は下記の実施例によって限定されるものではない。
〔実施例1:陰イオン交換樹脂QPA(C3)の合成〕
<アルキルモノマーの合成>
窒素インレットおよび冷却管を備えた300mLの丸底三口フラスコに、4−クロロベンズアルデヒド(7.03g、50.0mmol)、エタノール(100mL)を加えて溶解し、3Mの水酸化ナトリウム(50mL、150mmol)および4’−クロロアセトフェノン(6.5mL、50.0mmol)を加えて室温で3h反応した。
反応後、析出した淡黄色の組成生物を濾別回収し、純水で洗浄し、濾別回収した後、60℃一晩真空乾燥させることで淡黄色の固体を回収した。これにより、中間生成物である4,4’−ジクロロカルコンを収率90%で得た。
窒素インレット、冷却管を備えた300mLの丸底三口フラスコに、4,4’−ジクロロカルコン(12.5g、45.1mmol)、ジクロロメタン(52mL)、トリエチルシラン(26mL、163mmol)およびトリフルオロ酢酸(26mL、340mmol)を加えて完全に溶解した後、50℃に昇温して45時間反応を行った。
反応後、反応溶液を炭酸水素ナトリウムで中和した後、分液ロートに移してジクロロメタンを加え、有機層を回収した。得られた有機層を、ジクロロメタンを取り除いた後、展開溶媒ヘキサンを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離した。ヘキサンを取り除き、得られた白色結晶を60℃で一晩真空乾燥させた。得られた固体を10%のエタノール溶液中に溶解し、少量のPd/C(約1wt%)を加えて水素雰囲気化で撹拌後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離し、エタノールを取り除き、得られた白色個体を60℃で一晩真空乾燥させた。
これにより、下記式で示される白色のアルキルモノマー(l=3)を、収率80%で得た。
Figure 0006888778
<陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーの合成>
窒素インレット、メカニカルスターラーおよび冷却管を備えた100mLの丸底三口フラスコに、上記アルキルオリゴマー(0.252g、0.65mmol)、9,9−ビス(4−(−クロロフェニル)フルオレン(0.500g、1.62mmol)、2,2’−ビピリジン(0.534g、3.41mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド(15mL)を加えた。この混合物を撹拌して、アルキルオリゴマー、9,9−ビス(4−(−クロロフェニル)フルオレンおよび2,2’−ビピリジンを溶解させた後に、ビス(シクロオクタ−1,5−ジエン)ニッケル(0)(0.940g、3.41mmol)を加え、80℃に加熱して3時間反応させた。
反応混合物をメタノール200mL中に滴下し反応を停止させ、粗生成物を析出させた。粗生成物を濾別回収し、濃塩酸100mL中で一晩撹拌した後、濾別回収し、純水、メタノールで数回洗浄後、60℃で一晩真空乾燥させた。
これにより、下記式で示される淡黄色の陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーPA(C3)(l=3、m=1、n=0.17)を収率86%で得た。
Figure 0006888778
<陰イオン交換基導入>
(クロロメチル化反応)
100mLのガラス反応容器に陰イオン交換樹脂前駆体ポリマー(0.31g)と1,1,2,2−テトラクロロエタン(21mL)を加えた。この混合物を撹拌して陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーを溶解させた後に、アルゴンで置換したグローブボックス中において、クロロメチルメチルエーテル(4mL)、塩化亜鉛(0.029g、0.21mmol)、塩化チオニル(0.3mL)を加えて、80℃で3時間反応させた。
反応混合物をメタノール中に滴下して反応を停止させ、生成物を析出させた。生成物を濾別回収し、メタノールで数回洗浄後、60℃で一晩真空乾燥させた。
これにより、下記式で示されるクロロメチル化された陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーを収率92%で得た。
Figure 0006888778
(式中、l=3、m=1、n=0.17、Rは、クロロメチル基または水素原子を示し、親水部芳香環あたりのクロロメチル基の導入量は、0.2個を示す。)
<製膜>
クロロメチル化された陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーを、溶液キャスト法により製膜した。
すなわち、クロロメチル化された陰イオン交換樹脂前駆体ポリマー(0.1g)を1,1,2,2−テトラクロロエタン(2mL)に溶解させ、綿を詰めたシリンジで濾過した。濾液をシリコンゴムで5×5cmに縁取りされたガラス板上に流し込み、水平に調節した50℃のホットプレート上で静置し、乾燥させることにより厚さ約25μmの透明な膜を得た。
(四級化反応)
クロロメチル化された陰イオン交換樹脂前駆体ポリマーの膜を、トリメチルアミン45質量%水溶液中に40℃で2日間浸漬させ、不均一系で反応させた。
なお、この膜はイオン交換基(アンモニオ基)の対イオンが塩化物イオンであるため、1mol/L水酸化カリウム水溶液中に2日間浸漬させ脱気した純水で洗浄することにより、水酸化物イオン型へ変換した。
以上のようにして、下記式で示される、陰イオン交換樹脂QPA(C3)(l=3、m=1、n=0.17、IEC=0.58meq./g)の膜を得た。
Figure 0006888778
(式中、l=3、m=1、n=0.17、Rは、−CH(CHまたは水素原子を示す。)
〔実施例2:陰イオン交換樹脂QPA(C6)の合成〕
<アルキルモノマーの合成>
窒素インレットおよび冷却管を備えた300mLの丸底三口フラスコに、モノクロロベンゼン(50mL)、塩化アルミニウム(III)(13.33g、100mmol)を加え、氷浴中で十分撹拌した後、アジポイルクロリド(7.32g、40.0mmol)を徐々に滴下した。30分間撹拌した後、60℃に昇温して24時間反応を行った。
反応後、反応溶液を0.2M塩酸水溶液100mL中に滴下し反応を停止させ、200mLの2−プロパノールを加え、生じた白色の沈殿を濾別回収した。得られた白色固体を100mLの2−プロパノールで洗浄し、濾別回収した後、60℃一晩真空乾燥させることで白色の固体を回収した。これにより、中間生成物であるアルキレン前駆モノマー1,6−ビス(クロロフェニル)ヘキサンジオンを収率65%で得た。
冷却管を備えた100mLのナスフラスコに、1,6−ビス(クロロフェニル)ヘキサンジオン(3.36g、10.0mmol)、トリエチルシラン(7.96mL、50.0mmol)およびトリフルオロ酢酸(15mL)を加え、40℃に昇温して20時間反応を行った。
反応後、反応溶液を炭酸水素ナトリウムで中和した後、分液ロートに移してジクロロメタンを加え、有機層を回収した。得られた有機層を、エバポレーターで余分なジクロロメタンを取り除いた後、展開溶媒ヘキサンを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離した。ヘキサンを取り除き、得られた白色結晶を60℃で一晩真空乾燥させた。
これにより、下記式で示される白色のアルキルモノマー(l=6)を、収率61%で得た。
Figure 0006888778
上記のアルキルオリゴマーを用いて、上記と同様の方法で、必要に応じて試薬の仕込み量を変更することにより、陰イオン交換樹脂QPA(C6)(l=6、m=1、n=0.44、IEC=0.87meq./g)の膜を得た。
〔実施例3:陰イオン交換樹脂QPA(C10)の合成〕
<アルキルモノマーの合成>
窒素インレットおよび冷却管を備えた300mLの丸底三口フラスコに、モノクロロベンゼン(50mL)、塩化アルミニウム(III)(13.33g、100mmol)を加え、氷浴中で十分撹拌した後、セバコイルクロリド(7.32g、40.0mmol)を徐々に滴下した。30分間撹拌した後、60℃に昇温して24時間反応を行った。
反応後、反応溶液を0.2M塩酸水溶液100mL中に滴下し反応を停止させ、200mLの2−プロパノールを加え、生じた白色の沈殿を濾別回収した。得られた白色固体を100mLの2−プロパノールで洗浄し、濾別回収した後、60℃一晩真空乾燥させることで白色の固体を回収した。これにより、中間生成物であるアルキレン前駆モノマー1,10−ビス(クロロフェニル)デカンジオンを収率78%で得た。
冷却管を備えた100mLのナスフラスコに、1,10−ビス(クロロフェニル)デカンジオン(3.36g、10.0mmol)、トリフルオロ酢酸(15mL)およびトリエチルシラン(7.96mL、50.0mmol)を加え、40℃に昇温して20時間反応を行った。
反応後、反応溶液を炭酸水素ナトリウムで中和した後、分液ロートに移してジクロロメタンを加え、有機層を回収した。得られた有機層を、エバポレーターで余分なジクロロメタンを取り除いた後、展開溶媒ヘキサンを用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで分離した。ヘキサンを取り除き、得られた白色結晶を60℃で一晩真空乾燥させた。
これにより、下記式で示される白色のアルキルモノマー(l=10)を、収率86%で得た。
Figure 0006888778
上記のアルキルオリゴマーを用いて、上記と同様の方法で、必要に応じて試薬の仕込み量を変更することにより、陰イオン交換樹脂QPA(C10)(l=10、m=1、n=0.51、IEC=2.10meq./g)の膜を得た。
〔評価〕
<耐久試験>
実施例1〜3で得た陰イオン交換樹脂の膜に対し、耐久試験を行った。具体的には、試験前の陰イオン交換樹脂の膜のIR測定と、1M KOH水溶液(60℃)に1000時間浸漬後の陰イオン交換樹脂の膜のIR測定を行った。
実施例1〜3で得た陰イオン交換樹脂の膜は、耐久試験後もポリマー主鎖の解裂を示唆するピーク(C−Hに基づくピーク)が観測されず、優れた化学的安定性を有していた。
<引張試験>
実施例1〜3で得た陰イオン交換樹脂の膜に対し、引張試験を行った。Toshin Kogyo temperature control unit Bethel−3を搭載したShimazu universal testing instrument Autogragh AGS−J500Nを用い、恒温、恒湿に制御されたチャンバー内で行った。測定は、12mm×2mm(サンプル全体の面積:35mm×6mm)のダンベル型サンプル(DIN−53504−S3)を80℃、60%RHの条件下に保持後、10mm/minの速度で引っ張ることで応力−歪み曲線を得た(図2)。測定条件において、温度および湿度の安定化待ち時間は3時間とした。なお、図2には、比較例として、特許文献2に記載された実施例に基づいて合成した陰イオン交換樹脂(IEC=1.26)の膜に対し引張試験を行った結果も併せて示した。
一般に、IECが高い(IEC>2meq./g)とイオン基が水を抱え込んで膜全体の柔軟性が低下する傾向が見られるが、図2より、実施例1〜3で得たイオン交換樹脂の膜は、広範囲のIECで高い最大応力を示し、優れた柔軟性を有していた。また、伸び率は、電池用途において十分なものであった。
<動的粘弾性試験>
実施例1〜3で得た陰イオン交換樹脂の膜に対し、動的粘弾性試験を行った。アイティー計測ITK DVA−225動的粘弾性アナライザーを用い、相対湿度60%、40℃から90℃における貯蔵弾性率(E’(Pa))、損失弾性率(E’’(Pa))およびtanδの温度依存性測定した。サンプルは5mm×30mm、約25μmに切り出して設置し、加湿速度1%/minおよび昇温速度1℃/min条件で行った。なお、図3には、比較例として、特許文献2に記載された実施例に基づいて合成した陰イオン交換樹脂(IEC=1.26)の膜に対し動的粘弾性試験を行った結果も併せて示した。
図3より、実施例1〜3で得た陰イオン交換樹脂の膜は、貯蔵弾性率および損失弾性率の温度依存性がなく、優れた耐熱性を有していた。
1 燃料電池
2 燃料側電極
3 酸素側電極
4 電解質膜
S 燃料電池セル

Claims (8)

  1. メチレン基の繰り返しからなる2価の疎水ユニットと、
    下記式(2a’)で示される、陰イオン交換基を有する置換基で置換されているp−フェニレン基、および下記式(2b’)で示される、陰イオン交換基を有する置換基で置換されているジフェニルフルオレン残基の繰り返しからなる2価の親水ユニットと
    を有し、
    前記疎水ユニットと前記親水ユニットとが、直接結合を介して結合していることを特徴とする、陰イオン交換樹脂。
    Figure 0006888778
    (式中、Ionは、陰イオン交換基を有する置換基を示す。)
    Figure 0006888778
    (式中、Ionは、互いに同一または相異なって、陰イオン交換基を含む置換基または水素原子を示し、少なくとも1つは陰イオン交換基を含む置換基を示す。)
  2. 請求項1に記載の陰イオン交換樹脂を含むことを特徴とする、電解質膜。
  3. 請求項1に記載の陰イオン交換樹脂を含むことを特徴とする、電極触媒層形成用バインダー。
  4. 請求項に記載の電極触媒層形成用バインダーを含むことを特徴とする、電池電極触媒層。
  5. 請求項1に記載の陰イオン交換樹脂を含む電解質膜と、
    前記電解質膜を挟んで対向配置され、含水素燃料が供給される燃料側電極、および、酸素または空気が供給される酸素側電極と、
    を備えたことを特徴とする、燃料電池。
  6. 前記含水素燃料が、水素、アルコール、またはヒドラジン類であることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池。
  7. 電解質膜と、
    前記電解質膜を挟んで対向配置され、含水素燃料が供給される燃料側電極、および、酸素または空気が供給される酸素側電極と
    を備え、
    前記燃料側電極および/または前記酸素側電極が、請求項に記載の電池電極触媒層を含むことを特徴とする、燃料電池。
  8. 前記含水素燃料が、水素、アルコール、またはヒドラジン類であることを特徴とする、請求項に記載の燃料電池。
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