JP6882117B2 - 励磁コイル、非破壊検査装置、及び非破壊検査方法 - Google Patents

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Description

本発明は、励磁コイル、非破壊検査装置、及び非破壊検査方法に関する。
工業製品の欠陥検査、劣化診断、地中埋設物の探査などに、磁気信号による検査技術が利用されている。磁気信号による検査方式には、大きく分けて、被検査物から自発的に発生する磁場を検出する方式と、外部から磁場を与えてその応答を検出する方式がある。外部磁場を与える方式の代表的な手法として、渦電流探傷法と磁場漏洩法が知られている。磁場漏洩法では直流または交流の磁場を試料に印加し、試験体の表面から漏れ出てくる磁場の変化を測ることで試験体の異常を検出する。渦電流探傷法では、導電性の試験体に対して外部から交流の励磁磁場を印加して試験体に渦電流(誘導電流)を発生させ、渦電流が作る二次磁場の変化を検出することで、亀裂などの欠陥を検出する。交流磁場を印加する磁場漏洩法では、渦電流による2次磁場も発生しており、漏洩した一次磁場と二次磁場の総和が検出される。
外部磁場を印加する方式では、励磁コイルと磁気センサーを組み合わせて磁気信号を検出する。励磁コイル、磁気センサーともに、様々な種類があり、検出磁場の方向も、励磁磁場と同じ方向での検出、励磁磁場に直交する成分の検出など、いろいろな方式がある。たとえば、検査体の上に置かれたパンケーキ状の励磁コイルで磁場を印加し、円形励磁コイルの内側に配置された一対の縦置き型検出コイルで誘導磁場を測定する構成が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、縦置き型の励磁コイルと縦置き型の検出コイルを、両コイルのコイル面が交差するように配置する構成が報告されている(例えば、特許文献2参照)。
通常、信号強度を稼ぐとともに、空間分解能を向上させるため、測定装置をできるだけ試験体に近づけて測定する。一方で、道路や橋梁の基礎に用いられている鋼板の劣化を舗装材の上から診断する、断熱材で覆われた配管の劣化を断熱材の外側から検査するなど、試験体から離れた位置からの測定に対する要望も高い。舗装材の上を移動可能な台車に、円環状の励磁コイルと、励磁コイルの環内に同軸に配置される検出コイルの組を複数個搭載する構成が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
生体の電気生理学的活動を模倣した、いわゆるファントム実験などに用いられる電流ダイポール模倣用電極装置が知られている(例えば、特許文献4参照)。
特開2003−240762号公報 特開2003−344362号公報 特開2012−107919号公報 特開平06−174669号公報
光と異なり、磁気信号は直進しないため、試験体からの距離が離れると急激に強度が減衰する。試験体からの距離が大きいと励磁磁場は試験体に届きにくくなり、試験体から発生する誘導磁場が小さくなる。誘導磁場が小さいと磁気信号の検出が困難になる。
本発明は、より遠くまで励磁磁場を印加することのできる励磁コイルと、これを用いた非破壊検査技術を提供することを課題とする。
一つの態様では、複数の巻回部を有する励磁コイルにおいて、
前記複数の巻回部は、集中して配置された密集部と、前記密集部から延びて前記密集部よりも疎である疎部と、を有する。
より遠くまで励磁磁場を印加することができる励磁コイルが実現される。
電流ダイポール型の励磁コイルの構成例の構造を表す図である。 電流ダイポール型の励磁コイルの別の構造を表した図である。 電流ダイポールと円形コイルが作る磁場の距離依存性を比較する図である。 電流ダイポールから発生する磁力線を、円形コイルから発生する磁力線と比較して示す模式図である。 実証実験で使用したテスト装置の構成図である。 実証実験で使用した電流ダイポール型の励磁コイルの模式図である。 励磁コイルを用いた非破壊検査装置の信号処理系を含む模式図である。 実証実験で使用した模擬鋼板試料の模式図である。 リフトオフ50mmで測定した模擬鋼板試料の測定結果である。 検出される信号パターンの模式図である。 リフトオフ50mmで測定した模擬鋼板試料の他の測定結果である。 リフトオフ75mmで測定した模擬鋼板試料の測定結果である。 別の実証実験で用いた模擬鋼板試料の模式図である。 図13の模擬鋼板試料の測定結果である。 非破壊検査装置の変形例である。 励磁コイルの変形例である。
図1は、実施形態の電流ダイポール型の励磁コイル20Aの模式図である。図1の例では、励磁コイル20Aは平面型の励磁コイルであり、支持プレート2の上に配置されている。励磁コイル20Aは、複数の巻回部201−1〜201−10(適宜「巻回部201」と総称する)を有する。巻回部201−1〜201−10は、巻回部201が集中する密集部203と、巻回部201−1〜201−10が密集部203よりも疎に配置されている疎部202とを有する。この例では、各巻回部201の一部分が、支持プレート2の中央に集中的に配置されて密集部203を形成し、密集部203以外の領域では、巻回部201−1〜201−10が互いに間隔をおいて配置され、疎部202を形成している。
たとえば、紙面の左側の領域に、ループサイズが異なる巻回部201−1〜201−5が配置され、右側の領域に、ループサイズが異なる巻回部201−6〜201−10が配置されている。巻回部201−1〜201−10は、中央の密集部203でほぼ同じ位置に揃っている。巻回部201−1〜201−5の疎部202と、巻回部201−6〜201−10の疎部202は、中央の密集部203に対して左右対称に配置されている。すべての巻回部201−1〜201−10は直列につながっており、両端はリード線204に接続されている。各巻回部201のコイル巻き数は1以上であり、巻回部201−1〜201−10のそれぞれで必ずしも同じ巻き数を有していなくてもよい。
図中の矢印は、ある瞬間の電流の方向を示している。紙面の左側の巻回部201−1〜201−5と、紙面の右側の巻回部201−6〜201−10とで、流れる電流の方向が逆向き(時計回りと反時計回り)になっている。密集部203では、電流は同じ方向に流れる。励磁コイル20Aに電流を流すと、密集部203に大きな電流(太い矢印で表示)が流れるが、疎部202では、電流の大きさと流れる方向が密集部203と異なる。電界の湧き出しと吸い込みを有する微小な長さの電流という意味で、密集部203に電流ダイポールが生成されていると考えることができる。
後述するように、励磁コイルの一部(図2の例では励磁コイル20Aの中心部)に電流を集中させ、それ以外の領域で電流分布を疎にすることで、電流ダイポールで大きな励磁磁界を生成して、より遠くの試験体に励磁磁界を印加することが可能になる。密集部203を除く領域(すなわち疎部202)での電流分布を疎にすることで、測定対象への干渉磁場を低減する。
電流が作る磁場はビオ・サバールの式で求めることができる。長さが2Lの有限長の直線電流(電流I)の中点から垂直に距離rだけ離れている地点の磁場の大きさHは、
H=[I/(2πr)]×L/(L2+r21/2 (1)
で与えられる。式(1)は、磁場の大きさは遠く離れると1/r2で減衰することを示している。
一方、半径aの円電流(電流I)の中心から距離z離れた中心軸上の地点の磁場の大きさH’は、
H’=Ia2/[2(a2+z23/2] (2)
で与えられる。式(2)は、磁場の大きさは遠く離れると1/z3で減衰することを示している。矩形コイルの場合も、距離が離れた場合の減衰は円形コイルと同様である。したがって、一般的な円形コイルよりも有限長の直線電流の方が、距離による減衰が小さいと考えられる。
図1の電流ダイポール型の励磁コイル20Aは上記の原理を利用するものであり、発明者らの認識では、非破壊検査の励磁コイルに電流ダイポールを利用した例はない。密集部203を試料または試験体の被測定面と平行に配置することで、電流ダイポールが形成する強い励磁磁場を試料に印加して、試料から生じる磁場の測定精度を高める。密集部203以外で各巻回部201は互いに離れて位置するため、単位平面あるいは単位空間当たりに流れる電流量が小さくなり、試料に対する磁場の干渉を低減することができる。
図2は、電流ダイポール型の励磁コイルの別の例として、立体型の励磁コイル20Bを示す。図2の例では、円筒形の支持体5の底面6に密集部203が配置され、密集部203の電流軸(長軸)の両側に、ループサイズが異なる複数の巻回部207が対称に配置されている。各巻回部207の疎部208の少なくとも一部は、支持体5の側面8に立ち上がって底面6から遠ざかる構成になっている。すべての巻回部207は直列で(一筆書きのように)接続されており、両端がリード線204に接続されている。
この例でも、底面6に配置される密集部203に電流ダイポールが生成される。密集部203(及び密集部203が配置された底面6)を試料または試験体の被測定面と平行に配置することで、電流ダイポールによって生成される強い励磁磁界を試料に印加することができる。各巻回部207の疎部208は側面8に立ち上がって試料から離れるため、疎部208からの干渉磁場の影響がさらに低減され、理想的な電流ダイポールに近い電流分布が得られる。
図1と図2において、密集部203で電流の方向が同じになればよいので、複数の巻回部201(または207)の直列接続の方法は、必ずしも対称となるループ同士を交互に接続しなくてもよい。図1及び図2の例では、電流ダイポールの両側に配置される巻回部201(または207)の数をトータル10個としたが、より多くの巻回部に分割してもよい。図1で、支持プレート2上に導電線を巻いて巻回部201−1〜201−10を配置する替わりに、多層プリント基板の特定の層に巻回部201の配線パターンを形成してもよい。
図2の例では、各巻回部207で密集部203を除く部分を底面6から離すことができればよいので、支持体5の形状は円筒形に限らず、四角柱、六角柱、八角柱などの多角柱、または多角形の筒(シェル)を用いてもよい。また、底面6を多角形の多層プリント基板として、各巻回部207のうち密集部203と、密集部203の近傍に位置する配線を多層プリント基板に形成してもよい。この場合、側面8に巻回部207の一部を形成する配線が間隔をおいて配置され、側面8と配線と多層プリント基板に形成された配線部分を接続端子で電気的に接続する構成としてもよい。
図1及び図2の構成により、従来構成と比較して効率よく励磁磁場を試料または測定対象物に印加できるため、アスファルト、断熱材など、比較的厚い層で覆われた試験体の検査が可能になる。密集部203を除く領域では、各巻回部201(または207)の疎部202(または208)から発生する磁場が弱いため、磁気センサーに対する励磁磁場の影響が少ないという効果もある。
後述するように、電流ダイポールを形成する密集部203の電流軸の方向を、励磁コイル20の移動方向に対して斜めに配置することで、欠陥から発生する信号を単一ピークとして検出することができ、欠陥の有無と位置の判定を容易にすることができる。
図3は、実施形態の電流ダイポール型の励磁コイルの磁場の強さを、一般的な円形コイルと比較する図である。長さ5cmの電流ダイポールが作る磁場と、直径5cmの円形コイルが作る磁場を、距離の関数として計算した結果を示す。電流ダイポールの場合、式(1)を用いて、電流ダイポールの中点から電流に対して垂直方向に離れた位置の磁場を計算する。円形コイルの場合、式(1)を用いて中心軸上の磁場を計算する。コイル電流はともに1アンペア(A)とする。ただし、磁場の方向は電流ダイポールでは接線方向を向いており、円形コイルでは中心軸の方向である。
図3の計算結果では、コイルからの距離が1〜5cmの範囲では、円形コイルの磁場が大きいが、さらに離れていくと電流ダイポールの磁場が大きいことがわかる。この結果から、離れた試験体に励磁磁場を印加する場合、電流ダイポールを模擬した実施形態の励磁コイルが有効であることがわかる。磁気測定装置の測定面と試験体(測定対象)の間の距離は「リフトオフ」と呼ばれている。車両用の道路や橋梁の鋼板は厚さ5cm以上のアスファルトに覆われており、路面と装置の測定面の間にもセンサーを走査するためのスペース(1〜数センチメートル)が必要である。したがって、リフトオフが7cmを超える場合がほとんどであり、実施形態の電流ダイポール型の励磁コイル20A,20Bは、道路、橋梁等の非破壊検査に有用である。
図4は、電流ダイポールから発生する磁力線を、円形コイルから発生する磁力線と比較して示す模式図である。図4(A)に示すように、電流ダイポール13の周りに生じる磁力線14は右ねじの方向に発生する。そのため試験体12に対して同じ方向の磁場が均等に印加されることになる。同じ方向に励磁磁場を印加することで発生する信号の解析が容易になり、検出精度の向上も期待できる。
これに対し、図4(B)に示す円形コイル10では、中心から外に向かって磁力線11が広がる。このため、試験体12に印加される励磁磁場は様々な方向を向き、試験体12の表面での磁束密度が不均一になる。特に、リフトオフが大きく検出コイル(磁場検出部)が試料から離れている場合、励磁コイルの直下だけでなく、広い範囲からの信号も相対的に強く検出される。このため、様々な方向の励磁磁場による信号の混入が顕著になる。
図4から、電流ダイポール型の励磁コイルは試験体12に均一な磁場を印加できるという効果を奏することがわかる。
<実証実験>
図5は、実施形態の電流ダイポール型の励磁コイルの効果を確認する実証実験に用いる試験装置の模式図である。図5の試験装置を用いて、模擬欠陥を有する鋼板試験体21の欠陥検出実験を渦電流探傷法により行う。鋼板試験体21は、水平な床22に設置した高さ60mmのスペーサ23の上に配置される。
試験装置は、台車26に固定されたセンサプローブ30を含む。センサプローブ30は励磁コイル20、検出コイル28、及び磁気センサーであるSQUID(Superconducting Quantum Interference Device:超伝導量子干渉計)27を有する。台車26は、レール24上を走行する移動機構25を有する。移動機構25には移動距離を測定可能なエンコーダ35が取り付けられている。鋼板試験体21の表面に垂直な方向をz方向、台車26すなわちセンサプローブ30の移動方向をx方向、x方向及びz方向と直交する方向をy方向とする。
検出コイル28とSQUID27は、センサプローブ30の円筒型のガラス製のクライオスタット31の内部に置かれ、液体窒素で冷却されている。SQUID27は磁気シールド32で覆われており、励磁磁場が直接SQUIDに印加されることを防止している。SQUID27は、フランジ33に固定されたSQUIDの制御回路34に接続されている。
励磁コイル20は、クライオスタット31の底面に固定されている。この試験装置の励磁コイル20は、図1の平面型の励磁コイル20Aを使用している。図2のような円筒形型の励磁コイル20Bを使用する場合は、円筒形の支持体5にクライオスタット31をはめ込んでもよい。センサプローブ30の底面の励磁コイル20と鋼板試験体21の間の距離が「リフトオフ」である。
励磁磁場の影響を避けるために、直接SQUID27で磁気信号を測定するのではなく検出コイル28を介して磁気信号を測定する。検出コイル28は、2個の超電導コイル29a、29bが作動接続された平面差分型の検出コイルである。超電導コイル29a及び29bは、外径68mm、内径50mmの20巻きのコイルであり、z方向に70mm離れて差動接続されている。検出コイル28は、銅線301によりSQUID27の入力コイルに接続されている。検出コイル28の感度方向、すなわちコイル面と垂直な検出軸方向をp方向とする。p方向を台車の移動方向であるx方向に合わせて配置した場合、検出される磁気信号はdBx/dz成分となる。
図6は、試験装置で用いる励磁コイル20の模式図である。励磁コイル20は、左右それぞれ5つのループからなる平面型の電流ダイポールコイルである。導体には直径0.5mmの銅線を使用し、各ループで8巻き、合計80巻きとなっている。ループの中心の密集部203の長さL1は50mmであり、80本の銅線が集中している。
励磁コイル20には、周波数20Hzで約1Aの交流電流を流す。電流ダイポールすなわち密集部203の電流が流れる方向をi方向とする。励磁コイル20から発生する磁場はi方向に直交する方向である。検出コイル28に鎖交する励磁磁場の影響を避けるために、検出コイル28の感度方向であるp方向をi方向と平行に設定する。したがって、電流ダイポールの方向を変える場合には、検出コイル28の方向も追随して変えることになる。
図5に戻って、励磁コイル20の表面と検出コイル28の下端との距離は約30mmである。鋼板試験体21の表面と励磁コイル20の間の距離、すなわちリフトオフは、スペーサ23の高さを調整することで変更可能である。後述するように、リフトオフを50mmと75mmに設定して、欠陥検査を行う。
図7は、励磁コイル20を用いた非破壊検査装置1の信号処理系60を含む模式図である。非破壊検査装置1は、センサプローブ30と、センサプローブ30に接続される信号処理系60を含む。センサプローブ30は、図5を参照して述べたように、励磁コイル20と、検出コイル28と、SQUID27と、FLL(Flux Locked Loop;磁束ロックループ)アンプ342を有する。FLLアンプ342は、SQUIDを制御するFLLの中のアンプ回路であり、図5の制御回路34の一例である。FLLの中の制御回路は、信号処理系60のFLL制御回路341に含まれる。
信号処理系60は、FLL制御回路341、ロックインアンプ(図中「LIA」と表記)63、ファンクションジェネレータ(図中「FG」と表記)64、及び電流アンプ(図中「AMP」と表記)65を含む。
ファンクションジェネレータ64は、所望の周波数の正弦波信号を発生させる。電流アンプ65は、ファンクションジェネレータ64で生成された信号に応じた交流電流を励磁コイル20に流す。ファンクションジェネレータ64と電流アンプ65で、励磁コイル20に励磁電流を供給する励磁電流源が形成される。励磁電流の印加により、励磁コイル20の密集部203(図6参照)に電流ダイポールIdipoleが生成される。励磁コイル20から発生する励磁磁場42は、鋼板試験体21に印加され、鋼板試験体21に誘導電流Iinducedが流れる。誘導電流Iinducedから発生する磁場44が検出コイル28で検出される。
SQUID27は、FLLアンプ342を介してFLL制御回路341に接続されている。FLL制御回路341はパーソナルコンピュータ(PC)62によりコントロールされており、SQUID27にバイアス電流をかけ、SQUID27で検出した磁場の変化に対応した電圧信号を出力する。磁束変化と出力電圧の関係は線形でないため、FLL制御回路341でSQUID27に負帰還を行って、FLL制御回路341の出力電圧を検知された信号磁束に比例したものとする。
FLL制御回路341の出力はロックインアンプ63の入力に接続されている。ロックインアンプ63は、ファンクションジェネレータ64のTTL出力を参照信号「Ref」として、交流の励磁磁場と同相の成分(Re成分)と、90°位相がずれた直交成分(Im成分)を測定する。台車26が2mm移動するごとに、エンコーダ(図中「EN」と表記)35からパルス信号が出力される。
データロガー66は、ロックインアンプ63で検出された同相(Re)成分と直交(Im)成分、及びエンコーダ35のパルス信号を所定のサンプリングレート、たとえば1kHzの速度で取り込んで、液晶モニター画面に時間波形を表示し、SDカードなどの記憶媒体にデータを記録する。
実証実験では、台車26を主走査方向のx方向に移動させて、センサプローブ30を鋼板試験体21の上方で移動させ、1走査が終了すると、鋼板試験体21の位置をy方向(副走査方向)に30mmmずらして走査を繰り返す。これにより2次元の磁気信号を測定し記録する。台車26の移動速度は50〜100mm/sである。台車26の移動方向(x方向)に対する検出コイル28の感度方向(p方向)、すなわち励磁コイル20の移動方向に対する電流ダイポールの方向を、平行、斜め、直交を変化させて測定を行う。測定後にエンコーダーパルスをトリガにして、データのリサンプリングを行い、台車26の移動距離と磁気信号のデータを抽出し、2次元マッピングを行う。
<実験1>
図8は、実験1で使用する鋼板試験体21Aの模式図である。板厚6mm、長辺1m、短辺0.7mの長方形の鋼板(SM940A)を使用する。鋼板試験体21Aの中心からy方向に50mm、−x方向に50mmの位置を中心として、長さ50mm、幅1mmのスリット状の欠陥50Aが機械加工により形成されている。欠陥50Aは、鋼板試験体21を貫通する貫通欠陥である。機械加工の後、ハンドヘルド型の消磁器で鋼板試験体21Aを消磁する。
消磁された鋼板試験体21Aの上方で、センサプローブ30をx方向に走査する。励磁コイル20に、20Hz、1Aの励磁電流を印加する。鋼板試験体21Aをy方向に30mm刻みでずらしながら、x方向の主走査を9回行う。x方向に延びる中心線から−y側に90mm、+y側に150mmの領域が、磁気信号を測定する測定領域51である。
励磁コイル20の電流ダイポールの方向(i方向)と、移動方向(x方向)のなす角度をα(度)と定義する。実証実験では、リフトオフを50mmと75mmの2通りに設定し、各設定値で、角度αを0°から90°の間で変化させて鋼板試験体21からの信号を測定する。
なお、図6に示す励磁コイル20で、電流ダイポールを形成する密集部203の長さL1は、欠陥50Aの長さ50mmと同程度になっているが、電流ダイポールの長さは必ずしも欠陥50Aの長さと同程度でなくてもよい。実際、道路や橋梁で非破壊検査を行う場合、どのようなサイズの欠陥が生じているかわからないので、必要な磁場強度、密集部203での銅線の数、空間分解能、センサプローブ30のサイズ等に基づいて、電流ダイポールの長さは適切に決定される。電流ダイポールが長いほど、大きな磁場が遠くまで届くが、広範囲に励磁磁場が印加されるため、空間分解能が低下する可能性がある。空間分解能や装置サイズの制約などを考慮して、可能な範囲で電流ダイポールを形成する密集部203を長くするのが望ましい。
図9は、リフトオフを50mmに設定したときの直交(Im)成分の測定結果である。図9(A)は、台車26または励磁コイル20の移動方向と電流ダイポールのなす角度αが0°、図9(B)はαが45°、図9(C)のαが90°のときの測定結果である。図9(A)〜図9(C)で、横軸は台車26のx方向の移動距離(mm)を表しており、1000mmから2000mmの間に鋼板試験体21Aが設置されている。縦軸はy方向の位置を表しており、鋼板試験体21Aの試料のy方向の中心を0として、−90mmから+150mmの範囲となっている。横軸1450mm、縦軸50mmの位置が欠陥50の中心位置に対応している。スリット形状の欠陥50Aは、便宜上、白抜きまたは黒のバーで表示されている。等磁位線の間隔は0.1Φ0であり、0.5Φ0毎に太い等磁位線が表示されている。なお、Φ0は磁束量子を表しており、1Φ0は2.07×10-15Wbの磁束に対応している。
各図の右側に、±2Φ0の範囲でグレースケールバーを表示しているが、実際に階調が変化している部分は±1Φ0の範囲となっている。図9(A)のα=0°では、スリット状の欠陥50Aに対して電流ダイポールが垂直になっている。図9(C)のα=90°では、スリット状の欠陥50Aと電流ダイポールは平行になっている。図9(B)のα=45°ではスリット状の欠陥50Aに対して電流ダイポールは斜めになっている。
電流ダイポールの向きがスリット状の欠陥50Aに対して垂直(α=0°)の場合(図9(A))と、平行(α=90°)の場合(図9(C))、欠陥50Aの周辺に特徴的な信号パターンが検出されている。すなわち、欠陥50Aの両端のそれぞれの側に、2つのプラス極(薄い色のピーク)と2つのマイナス極(濃い色のピーク)が生じている。このパターンを四重極パターンと呼ぶ。四重極パターンの極性は、α=0°とα=90°とで反転している。
図10は、図9(A)及び図9(C)で検出される信号パターンを模式的に示す。図9(A)と図9(C)のy方向の上端では、一部のピークが測定範囲から外れて検出されていないが、図10に示すように、スリット形状の欠陥50Aの両方の端部55と端部56に四重極パターンが現れる。この四重極パターンを抽出することで、欠陥を特定することが可能である。四重極パターンでは、欠陥50の中心に対して、y軸とx軸の2軸の方向で信号がゼロになっている。四重極パターンの中心に2軸の中心をおくと、第一象限、第三象限に同じ極性のピークが現れ、第二象限、第四象限に逆極性のピークが現れている。これは信号の対称性が高いためである。ただし、1つの欠陥50Aから複数のピークが発生することから、解析が難しくなる。
一方、図9(B)に示すように、電流ダイポールの向きを励磁コイル20の移動方向(x方向)または欠陥50Aの長軸方向(y方向)に対して斜めに配置した場合、欠陥50Aの中央に単一の大きなピークが現れることが確認される。電流ダイポールが欠陥50Aに対して斜めに位置することで、信号の対称性が崩れたためと考えられる。
電流ダイポールが欠陥50Aに対して斜めに位置する場合に単一の大きなピークが現れる理由を調べるため、角度αを6°、11°、22.5°に設定して、図9と同様の測定を行う。
図11は、斜め角度での測定結果を示す。図9と同様に、欠陥50Aの位置を便宜上、白抜きまたは黒のバーで示している。図11(A)のα=6°の測定データを見ると、欠陥の上端に生じた四重極パターンの左下のピーク(図10の「peak-a」)と、欠陥の下端に生じた四重極パターンの右上のピーク(図10の「peak-b」)が重なり始めていることがわかる。図11(B)のα=11°ではピークの重なりがさらに顕著になる。図11(C)のα=22.5°では、図9(B)α=45°と同程度の大きな単一のピークになっている。
これらの結果から、電流ダイポールの方向とスリット形状の欠陥50Aの方向が、平行または直交以外の方向にずれると、欠陥50Aの両端に生じる四重極パターンが回転し、同じ極性の信号が重なるところに大きな単一のピークが生じると考えられる。単一のピークを得るためには、電流ダイポールの向きを、スリット状の欠陥に対して直交あるいは平行になる方向から11°以上の角度に設定すればよい。電流ダイポールの向きを、スリット状の欠陥と直交または平行になる方向から22.5°以上傾けることで、より強い単一のピークが確実に得られる。
多くの亀裂欠陥検査では、亀裂が発生する方向はある程度推定できる。欠陥が走る方向に対して電流ダイポールが直交あるいは平行にならないように電流ダイポールの向きを設定することで、欠陥が存在する箇所から単一の強いピークを検出することができる。
図12は、リフトオフを75mmとした場合の直交(Im)成分の測定結果を示す。リフトオフの値の外は、リフトオフが50mmのときと同じ測定条件とする。基本的に図9と同様のパターンが検出されているが、リフトオフが大きくなったことで信号強度が低下する。そのため、等磁位線の間隔を0.05Φ0とし、0.25Φ0毎に太い等磁位線で表示している。また、±1Φ0のグレースケールバーを表示しているが、濃淡を強調するため実際に階調が変化している部分は±0.5Φ0の範囲となっている。
信号強度の減少により等磁位線の間隔を図9の半分にしても、リフトオフが50mmの場合よりも等磁位線の数が減少している。しかし、欠陥の信号は単一のピークとして明瞭に検出されており、鋼板試験体21から75mm離れた位置から欠陥の検出が可能なことが確認される。リフトオフが50mmのときと同様に、α=45°の条件で、欠陥50Aの存在箇所に相対的に大きな信号が現れており、信号の対称性をずらす効果が得られていることがわかる。
<実験2>
図13は、実験2で用いる鋼板試験体21の模式図である。図5の試験装置を用いて、異なる欠陥50Bが形成された鋼板試験体21Bで、渦電流探傷法による欠陥検査実験を行う。実験2では、欠陥50Bは台車26または励磁コイル20の移動方向(x方向)と平行な方向に形成されている。また、励磁周波数を640Hzとする。
鋼板試験体21Bの本体は、実験1と同じく、板厚6mm、長辺1m、短辺0.7mの長方形の鋼板(SM940A)である。鋼板試験体21Aの中心からy方向に50mmの位置に、x方向に延びる長さ200mm、幅0.3mmのスリット形状の欠陥50Bを機械加工で形成する。欠陥50Bは鋼板を貫く貫通欠陥であり、欠陥50Bのx方向の中心位置は鋼板試験体21Bのx方向の中心位置に揃っている。実験2は、道路や橋梁では一般的に車両の走行方向に沿って亀裂、欠陥が生じるという実情に鑑みている。加工後、ハンドヘルド型の消磁器で鋼板試験体21Bを消磁する。
消磁された鋼板試験体21Aの上方で、センサプローブ30をx方向に走査する。鋼板試験体21Aをy方向に30mm刻みでずらしながら、x方向の主走査を9回行う。x方向に延びる中心線から−y側に90mm、+y側に150mmの領域が、磁気信号を測定する測定領域51である。励磁周波数は、上述のように640Hz、励磁電流は実験1と同じく1Aである。
図14は、鋼板試験体21の表面と励磁コイル20の間の距離(リフトオフ)を75mmとしたときの直交(Im)成分の測定結果である。図14(A)は、励磁コイル20によって形成される電流ダイポールと移動方向(x方向)のなす角αが90°のときの測定結果、図14(B)はαが45°のときの測定結果である。図14(A)と図14(B)で、横軸は台車26のx方向の移動距離(mm)を表しており、1000mmから2000mmの間に鋼板試験体21Aが設置されている。縦軸は鋼板のy方向の位置を表している。鋼板試験体21Aの試料のy方向の中心を0として、−90mmから+150mmの範囲となっている。欠陥50Bは、便宜上、等磁位図の中央近傍の白抜きのバーで示されている。
図14(A)では、欠陥50Bの方向が実験1と比較して90°変化したため、欠陥50Bの長軸方向の信号がすべて測定範囲に入っている。図10で模式的に示した2つの四重極パターンが、欠陥の両端位置で明瞭に検出されている。欠陥50Bのサイズが大きくなったことと、励磁周波数を高めて誘導される渦電流を増大させたことにより、信号強度が大きくなっている。等磁位線の間隔は2Φ0であり、10Φ0毎に太い等磁位線が表示されている。 図14(B)では、欠陥50Bの位置に非常に大きなマイナス方向のピークが現れている。等磁位線の間隔は10Φ0であり、50Φ0毎に太い等磁位線が表示されている。実験1と比較して欠陥50Bの方向が90°回転したため、電流ダイポールの向きと欠陥50Bが平行になり、2つの四重極パターンのマイナスのピークが重なった結果である。この結果から、欠陥の方向が励磁コイル20あるいはセンサプローブ30の移動方向に対して平行か垂直かを容易に判断できる。
実証実験の結果から、90°異なった方向の欠陥に対しても、実施形態の電流ダイポール型の励磁コイル20を用いた非破壊検査が有効であることが確認される。また、励磁周波数を高くしても(たとえば640Hz)、測定結果にほとんど影響しないことが確認される。
<適用例>
図15は、実施形態の励磁コイル20を用いたセンサプローブ30を複数配置したマルチチャネルの非破壊検査装置101の概略図である。この例では、4つのセンサプローブ30をアレイ状に配置した4チャンネルの非破壊検査装置101としている。センサプローブ30の各々は、たとえば円筒形の形状をしており、励磁コイル20と、SQUID27等の磁気センサーとを有する(図5及び図7参照)。磁気センサーとしてSQUID27を用いる場合は、SQUID27を駆動制御するFLLアンプ342が各センサプローブ30に配置されている。
各センサプローブ30での励磁コイル20の電流ダイポールの向きは、太線の矢印で示されており、励磁コイル20の移動方向に対して斜めに配置されている。電流ダイポールの向きとしては、移動方向または移動方向と直交する方向から11°以上、より好ましくは22°以上とすることで、欠陥が存在する場合に、欠陥位置で単一のピークを検出することができる。
4つのセンサプローブ30は、パーソナルコンピュータ(PC)62、マルチチャネル信号処理部61、及びデータロガー66とともに、台車26に搭載されている。台車26は移動機構25によって移動可能である。移動機構25にエンコーダ35が取り付けられて移動情報がマルチチャネル信号処理部66に供給される。
マルチチャネル信号処理部66は、たとえば、マルチチャネルロックインアンプ、マルチチャネル・ファンクションジェネレータ、マルチチャネル電流アンプを有し、各センサプローブ30から出力される信号を処理する。マルチチャネル信号処理部66の各種パラメータは、パーソナルコンピュータ(PC)62から設定することができる。信号処理結果は、データロガー66に記録される。
この非破壊検査装置101を用いることで、道路、橋梁等で一度の走査で4チャネル分の検査データを二次元的に取得することができる。また、各チャネルで欠陥位置に単一のピークを検出することができるので、欠陥特定のための演算が容易になる。したがって、効率的な非破壊検査が実現する。また、各励磁コイル毎に異なる周波数の電流を流すことで隣接センサー間の干渉を抑制することもできる。
一般的な磁気センサアレイの場合、磁気センサー間の相互干渉の問題が生じる可能性があるが、電流ダイポール型の励磁コイル20は指向性があるため、センサプローブ30間の相互干渉の影響が少なくなるように、隣接するセンサプローブ30間で電流ダイポールの方向を調整することも可能である。指向性がない環状の励磁コイルなどでは、このような干渉低減のための調整はできないため、アレイ配置に適した構成であることも、電流ダイポール型の励磁コイルの効果の一つである。
<変形例>
図16は、励磁コイルのさらに別の変形例を示す。励磁コイル20は必ずしも密集部を中心とした対称形である必要はない。図16(A)は、非対称の平面型の励磁コイル20Cの模式図、図16(B)は非対称の立体型の励磁コイル20Dの模式図である。
励磁コイル20Cは、複数の巻回部201−1〜201−5が集中して配置される密集部203と、巻回部201−1〜201−5が疎に配置される疎部202を有する。複数の巻回部201は、直列に接続されている(両端に接続されるリード線は省略する)。励磁コイル20Cの密集部203を励磁コイル20C(またはセンサプローブ30)の移動方向に対して11°〜79°、より好ましくは22°〜68°の範囲で傾けて配置することで、試験体の欠陥を単一のピークとして検出することができる。
この平面型の励磁コイル20Cを、縦置きで使用してもよい。その場合は、密集部203が下側を向くように配置し、疎部202が密集部から垂直または垂直に近い角度で立ち上がるように配置して、密集部203に形成される電流ダイポールで励磁コイル20Cの下側に位置する試験体に磁界を印加する。
励磁コイル20Dは、底面に配置される密集部203と、疎に配置される複数の巻回部207−1〜207−6を有し、巻回部207の疎部208の少なくとも一部は、底面から立体的に立ち上げられている。この構成は、試験体に対する干渉磁場の影響を低減することができる。密集部203を励磁コイル20Dの移動方向に対して11°〜79°、より好ましくは22°〜68°の範囲で傾けて配置することで、試験体の欠陥を単一のピークとして検出することができる。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。当業者であれば、上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能である。そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
例えば、実施形態ではSQUIDを使用した磁気センサーを用いたが、試験体から発生する磁気信号を測定できる他の磁気センサーを使用してもよい。他の磁気センサーとしては、MR(Magneto-Resistance:磁気抵抗)センサー、MI(Magnetic Impedance:磁気インピーダンス)センサー、TMR(Tunnel-Magneto-Resistance:トンネル型磁気抵抗)センサー、誘導コイル、フラックスゲート磁力計など、様々な磁気センサーが考えられる。他の磁気センサーを使用した場合でも本発明の電流ダイポール型の励磁コイルの効果が有効であることは言うまでもない。
実施形態では、検出コイルとして縦に2つのコイルを配置した平面差分型の検出コイルを用いたが、必ずしもこの配置方向で磁気信号を測定する必要はない。試験体から発生する信号磁場は、試験体を起点とし閉ループを描く磁力線に沿ったベクトルで表される。このため、信号磁場はいろいろな方向の磁場や磁場偏差を含んでおり、欠陥による信号の変化もいろいろな方向の磁場や磁場偏差にも現れる。したがって、試験体に垂直方向の磁場(Bz)や磁場偏差(dBz/dzやdBz/dx)を測定することで検査することも可能である。他の磁場や磁場偏差を測定することも可能である。
通常は、検査対象である試験体の形状や欠陥の構造により、検査に適した信号成分に対応した検出コイルを選ぶことになる。検査に適した信号成分とは、例えば、信号の変化が大きな成分や信号強度が強い成分、励磁磁場との干渉が少なく微弱な変化を検知しやすい成分などである。いずれにしても、実施形態の電流ダイポール型の励磁コイルにより試験体に誘導電流(磁気信号の発生源)が生じている限り、どのような種類の磁気信号成分を検出する場合にも実施形態の励磁コイルの効果は有効である。
複数の巻回部は必ずしも直列接続されていなくてもよい。また、立体型の励磁コイルとする場合は、疎部は必ずしも密集部が配置される面から垂直に立ち上がっている必要はなく、円錐台、逆円錐台などのように、底面に対して斜め方向に立ち上がっていてもよい。励磁コイルを励磁する電流源は、ファンクションジェネレータに限定されず、発振器とオペレーションアンプの組み合わせ等、他の適切な交流電流源を用いてもよい。
図15のように、二次元的な測定を行う場合、励磁コイルの電流ダイポール部分を長く形成し、一個の長い電流ダイポール上に複数の磁気センサー(たとえば検出コイルとSQQUIDの組み合わせ)を配置する構成も可能である。
以上の説明に対して、以下の付記を呈示する。
(付記1)
複数の巻回部を有する励磁コイルにおいて、
前記複数の巻回部は、集中して配置された密集部と、前記密集部から延びて前記密集部よりも疎である疎部とを有する励磁コイル。
(付記2)
前記密集部において、前記複数の巻回部を流れる電流の方向は同一方向であることを特徴とする付記1に記載の励磁コイル。
(付記3)
前記密集部と、前記疎部は同一平面に配置されていることを特徴とする付記1または2に記載の励磁コイル。
(付記4)
前記疎部の少なくとも一部は、前記密集部が配置されている面から立体的に立ち上がっていることを特徴とする付記1または2に記載の励磁コイル。
(付記5)
前記疎部は、前記密集部の長軸を中心として対称に配置されていることを特徴とする付記1〜4のいずれかに記載の励磁コイル。
(付記6)
前記疎部は、前記密集部の長軸に対して非対称に配置されていることを特徴とする付記1〜4のいずれかに記載の励磁コイル。
(付記7)
前記疎部は、前記密集部の長軸の片側に配置されていることを特徴とする付記1〜4のいずれかに記載の励磁コイル。
(付記8)
前記旋回部を支持する立体状の支持体、
をさらに有し、
前記密集部は支持体の底面に配置され、前記疎部の少なくとも一部は、前記底面に接続される側面に配置されることを特徴とする付記4に記載の励磁コイル。
(付記9)
前記支持体は、円筒または多角形の筒であることを特徴とする付記8に記載の励磁コイル。
(付記10)
前記底面は、多層プリント基板であることを特徴とする付記8に記載の励磁コイル。
(付記11)
複数の巻回部を有する励磁コイルと、
前記励磁コイルに励磁電流を供給する励磁電流源と、
被検査体からの磁気信号を検出する磁気センサーと、
を有し、
前記複数の巻回部は、集中して配置された密集部と、前記密集部から延びて前記密集部よりも疎である疎部とを有する非破壊検査装置。
(付記12)
前記非破壊検査装置を移動させる移動機構、
をさらに有し、
前記励磁コイルの前記密集部において、前記複数の巻回部はほぼ同一の方向に伸び、前記密集部は前記非破壊検査装置の移動方向に対して平行または直交以外の角度で斜めに配置されることを特徴とする付記11に記載の非破壊検査装置。
(付記13)
前記励磁コイルの前記密集部は、前記移動方向に対して11°以上の角度で斜めに配置されることを特徴とする請求項付記12に記載の非破壊検査装置。
(付記14)
前記励磁コイルは、前記密集部と前記被検査体との距離が、前記疎部と前記被検査体との間の距離以下となるように配置されることを特徴とする付記11〜13のいずれかに記載の非破壊検査装置。
(付記15)
前記励磁コイルと前記磁気センサーで形成されるセンサプローブを複数有することを特徴とする付記11〜14のいずれかに記載の非破壊検査装置。
(付記16)
複数の巻回部を有する励磁コイルにおいて、前記複数の巻回部は集中して配置された密集部と前記密集部から延びて前記密集部よりも疎である疎部とを有する励磁コイルを、被検査体から所定の間隔を置いて走査し、
走査面内において、前記励磁コイルの前記密集部の向きを、走査方向に対して平行と直交以外の斜めの角度にして前記励磁コイルを走査する、
ことを特徴とする非破壊検査方法。
1、101 非破壊検査装置
2 支持プレート
5 支持体
6 底面
8 側面
13 電流ダイポール
20、20A、20B 励磁コイル
25 移動機構
26 台車
27 SQUID
28 検出コイル
30 センサプローブ
34 SQUIDの制御回路
35 エンコーダ
60 信号処理系
201、201−1〜201−10、207 巻回部
202,208 疎部
203 密集部
204 リード線

Claims (9)

  1. 複数の巻回部を有する励磁コイルにおいて、
    前記複数の巻回部は、集中して配置された密集部と、前記密集部から延びて前記密集部よりも疎である疎部とを有し、
    前記密集部は前記励磁コイルの中心部で一方向に配置され、前記疎部は、前記密集部から放射状に広がって左右対称に配置されている励磁コイル。
  2. 前記密集部において、前記複数の巻回部を流れる電流の方向は同一方向であることを特徴とする請求項1に記載の励磁コイル。
  3. 前記密集部と、前記疎部は同一平面に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の励磁コイル。
  4. 前記疎部の少なくとも一部は、前記密集部が配置されている面から立体的に立ち上がっていることを特徴とする請求項1または2に記載の励磁コイル。
  5. 複数の巻回部を有する励磁コイルと、
    前記励磁コイルに励磁電流を供給する励磁電流源と、
    被検査体からの磁気信号を検出する磁気センサーと、
    を有し、
    前記複数の巻回部は、集中して配置された密集部と、前記密集部から延びて前記密集部よりも疎である疎部とを有し、前記密集部は前記励磁コイルの中心部で一方向に配置され、前記疎部は、前記密集部から放射状に広がって左右対称に配置されている、
    非破壊検査装置。
  6. 複数の巻回部を有する励磁コイルと、
    前記励磁コイルに励磁電流を供給する励磁電流源と、
    被検査体からの磁気信号を検出する磁気センサーと、
    前記励磁コイル、前記励磁電流源、及び前記磁気センサーを移動させる移動機構
    を有し、
    前記複数の巻回部は、集中して配置された密集部と、前記密集部から延びて前記密集部よりも疎である疎部とを有し、前記励磁コイルの前記密集部において、前記複数の巻回部はほぼ同一の方向に伸び、前記密集部は前記移動機構による移動方向に対して平行または直交以外の角度で斜めに配置されている非破壊検査装置。
  7. 前記励磁コイルの前記密集部は、前記移動方向に対して11°以上の角度で斜めに配置されることを特徴とする請求項6に記載の非破壊検査装置。
  8. 前記励磁コイルは、前記密集部と前記被検査体との距離が、前記疎部と前記被検査体との間の距離以下となるように配置されることを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載の非破壊検査装置。
  9. 複数の巻回部を有する励磁コイルにおいて、前記複数の巻回部は集中して配置された密集部と前記密集部から延びて前記密集部よりも疎である疎部とを有する励磁コイルを、被検査体から所定の間隔を置いて走査し、
    走査面内において、前記励磁コイルの前記密集部の向きを、走査方向に対して平行と直交以外の斜めの角度にして前記励磁コイルを走査する、
    ことを特徴とする非破壊検査方法。
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