JP6882003B2 - Rc構造物の鋼材腐食抑制方法 - Google Patents

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Description

本発明は、RC構造物をできるだけ損傷させずに鋼材の腐食を抑制するRC構造物の鋼材腐食抑制方法に関するものである。
近年、RC構造物(鉄筋などの鋼材で内部補強されたコンクリート構造物、PC構造物:プレストレスコンクリート構造部を含む。)において、塩化物イオンの影響等によりコンクリート内に埋設されている鋼材が腐食膨張し、被りコンクリート等が剥落する事故が起きている。このため、RC構造物の剥落部分の周囲を斫って、腐食鋼材を露出させ、腐食鋼材の腐食部分を除去した上、斫った部分にコンクリートやモルタルを打設して補修する断面補修が行われている。
しかし、このような断面補修は、腐食劣化部分がRC構造物の表面から深い部分に存在する場合は、必然的に斫り範囲が大きななり、RC構造物に与える損傷が大きくなるという問題があった。特に、RC構造物がプレストレスの負荷されたPC構造物の場合、斫りによりプレストレスによるコンクリートの圧縮応力が抜けるため、構造物が崩壊しないように対策をとる必要があるという問題があった。
また、従来、RC構造物の腐食の進行と止める方策としては、犠牲陽極材として、RC構造物に埋設された鋼材よりも標準電極電位の低い金属を設置して電気的に接続することにより、RC構造物に埋設された鋼材の腐食を防止する電気化学的防食方法が知られている。
例えば、特許文献1には、亜鉛、アルミニウム、及びマグネシウムからなる群より選ばれた一種又は二種以上を含むブリスター状金属を犠牲陽極材とし、その犠牲陽極材に所定pHの電解質溶液を含有する多孔性材料を付設した防食用部材を、コンクリート内に設置する電気化学的防食方法が開示されている(特許文献1の特許請求の範囲の請求項1及び7、明細書の段落[0016]〜[0028]等参照)。
しかし、特許文献1に記載の電気化学的防食方法は、RC構造物の被りコンクリート部分が分厚く、例えば、200mmを超えるような場合は、鋼材の腐食の進行を防止する防食効果があまり期待できないという問題があった。
また、特許文献2には、コンクリート壁体の表面において、コンクリート壁体の表面に、水平方向に対し斜め下方向に15度〜45度傾斜した横目地状の切欠き溝を複数本設け、その切欠き溝に、ポリオキシエチレンアルキル(12〜14)と、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムと、グリセリンを重量比で4〜6:2〜4:1〜2に混合した水溶液用湿潤剤を溶質とし、亜硝酸カルシウムの5〜30%水溶液を溶媒とした、0.02〜0.5%の浸透型防錆剤を塗布した上、セメント系固化材で埋め戻す浸透型防錆剤の施工方法が開示されている(特許文献2の特許請求の範囲の請求項1及び3、明細書の段落[0011]、[0032]〜[0034]等参照)。
しかし、特許文献2に記載の浸透型防錆剤の施工方法では、コンクリート構造物にカッター等で斜めに溝を形成したうえ、モルタル等のセメント系固化材で埋め戻さなければならず、手間が掛かり施工費が嵩むというも問題があった。また、軽微とはいえ、コンクリート構造物に損傷を与えていることは、従来の断面補修と相違しない。その上、防錆剤の浸透性を高めるため、ノニオン系のポリオキシエチレンアルキル(12〜14)と、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムと、グリセリンの三種類を5:3:2(重量比)を中心にある範囲内(4〜6:2〜4:1〜2)で混合させた特殊な水溶液用湿潤剤を使用しなければならない。このため、浸透型防錆剤を生成する生成コストが嵩み、橋桁全体に使用するなど大量に必要となる場合には、適用することができないという問題がある。
さらに、特許文献3には、既設コンクリート構造物内部の鋼材の錆による劣化を抑制するためにコンクリート表面に塗布されて用いられる浸透性防錆剤であって、2,4,7,9‐テトラメチル‐5‐デシン‐4,7‐ジオールと、エーテル型ノニオン界面活性剤と、亜硝酸塩と、水とからなることを特徴とするコンクリート構造物用浸透性防錆剤が開示されている(特許文献3の特許請求の範囲の請求項1及び6、明細書の段落[0029]〜[0034]等参照)。
特開2009−97049号公報 特開2002−371388号公報 特開2008−196024号公報
そこで、本発明は、前述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、塩化物イオンを含んだRC構造物をできるだけ損傷させずに、安価で簡便な方法により埋設された鋼材の腐食を抑制するRC構造物の鋼材腐食抑制方法を提供することにある。
第1発明に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法は、塩化物イオンを含有するRC構造物に埋設された鋼材の腐食を抑制するRC構造物の鋼材腐食抑制方法であって、前記鋼材の腐食を抑制する腐食抑制剤を含有する液体を、吸引ポンプ又は加圧ポンプを用いて圧力差で前記RC構造物の表面から浸透させる圧力差浸透工程を有し、前記圧力差浸透工程時に前記液体で浸漬された状態の前記RC構造物の表面及び前記表面から削孔した孔を用いて前記鋼材の自然電位を継続的に測定し、当該鋼材の自然電位に変化が現れたときに前記液体が前記鋼材に到達したと判断する自然電位測定工程を行うことを特徴とする。
第2発明に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法は、第1発明において、前記圧力差浸透工程では、前記液体を供給する前記RC構造物の表面の反対側となる裏面から吸引ポンプを用いて減圧して前記液体を前記RC構造物に浸透させることを特徴とする。
発明に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法は、第1発明又は第2発明において、前記圧力差浸透工程では、前記腐食抑制剤として亜硝酸塩を含有する前記液体を圧力差で前記RC構造物の表面から浸透させることを特徴とする。
発明に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法は、第発明において、前記圧力差浸透工程では、前記腐食抑制剤としてさらにカルシウムアルミネートの1種であるCaO・2ALを含有する前記液体を圧力差で前記RC構造物の表面から浸透させることを特徴とする。
発明に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法は、第2発明ないし第発明のいずれかの発明において、前記RC構造物は、箱桁橋であり、前記圧力差浸透工程では、前記箱桁橋の箱桁の内部上面から前記液体を供給し、前記箱桁の底面から吸引ポンプを用いて減圧して前記液体を前記箱桁に浸透させることを特徴とする。
第1発明〜第発明によれば、腐食抑制剤を含有する液体を圧力差でRC構造物の表面から浸透させる圧力差浸透工程を有するので、塩化物イオンにより鋼材の不働態皮膜が破壊されたRC構造物であっても、RC構造物を損傷することなくRC構造物に埋設された鋼材の腐食を抑制することができる。このため、RC構造物の耐久年数を格段に向上させることができる。また、RC構造物を損傷することがないため、補強工事や迂回措置を取る必要がない。よって、RC構造物を使用(共用)しつつ、そこに埋設された鋼材の腐食を抑制することができ、従来の断面補修や電気化学的防食方法と比べて大幅なコストダウンを達成することができる。
また、第1発明〜第5発明によれば、鋼材の自然電位を測定し、当該鋼材に腐食抑制剤が添加された水溶液が到達したか否かを確認する自然電位測定工程を行うので、腐食抑制剤による鋼材の腐食抑制効果が発揮できるか否かの精度の高い確認ができる。
特に、第2発明によれば、RC構造物の裏面から吸引ポンプを用いて減圧して水溶液をRC構造物に浸透させるので、RC構造物へ与える負担をさらに低減することができる。
特に、第発明によれば、腐食抑制剤として亜硝酸リチウムを含有する水溶液を圧力差でRC構造物の表面から浸透させるので、RC構造物を損傷することなくRC構造物に埋設された鋼材の不働態皮膜を修復し、鋼材の腐食を抑制することができる。
特に、第発明によれば、腐食抑制剤としてカルシウムアルミネートの1種であるCaO・2AL2O3を含有する水溶液を圧力差でRC構造物の表面から浸透させるので、RC構造物中の可溶性の塩化物イオンがフリーデル氏塩として固定化され、水中に遊離し易い可溶性の塩化物イオンが減少し、塩化物イオンによる不動態皮膜の損傷を抑える効果を発揮する。このため、亜硝酸塩の防錆効果を幇助することとなり、防錆効果を長期的に発揮し続けることができる。
特に、第発明によれば、塩化カルシウムなどの融雪剤(凍結防止剤)の影響で塩化物イオンを含んだ水溶液が構造上溜まり易い箱桁橋の箱桁において、箱桁を損傷することなく、そこに埋設された鋼材の腐食を抑制することができる。
本発明を適用する箱桁橋を模式的に表した断面図である。 鋼材の腐食のメカニズムを模式的に表して説明する説明図である。 亜硝酸イオンによる不動態皮膜の再生メカニズムを模式的に表して説明する説明図である。 本発明の実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法の圧力差浸透工程を模式的に示す工程説明図である。 同上のRC構造物の鋼材腐食抑制方法の自然電位測定工程を模式的に示す工程説明図である。 透水試験の実験状況を示す模式図である。 水道水による透水試験の時間経過による透水量の累計の変化を示すグラフである。 水道水による透水試験の時間経過による透水速度の変化を示すグラフである。 水道水による透水試験の真空ありの場合の浸透状況を、供試体を縦に割裂して示す写真である。 水道水による透水試験の真空なしの場合の浸透状況を、供試体を縦に割裂して示す写真である。 水道水による透水試験の時間経過による透水量の累計の変化を示すグラフである。 水道水による透水試験の時間経過による透水速度の変化を示すグラフである。 水道水による透水試験の真空ありの場合の浸透状況を、供試体を縦に割裂して示す写真である。 水道水による透水試験の真空なしの場合の浸透状況を、供試体を縦に割裂して示す写真である。
以下、本発明に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法を実施するための一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
先ず、図1〜図5を用いて、本発明の実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法についてRC構造物として箱桁橋に適用する場合を例示して説明する。図1は、本発明を適用する箱桁橋を模式的に表した断面図である。
図1に示す箱桁橋1は、断面ロの字状の箱桁2と、この箱桁2の上に載置された床版3など、から構成された鉄筋コンクリート製の橋梁である。このような箱桁橋1は、箱桁2が断面ロの字状となって中空部4が形成されており、その中空部4の上に床版3が形成されている。
このため、箱桁橋1が床版3上を道路として使用する道路橋である場合、融雪剤や凍結防止剤として、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等が大量に床版3上に散布されることとなる。すると、雪や雨などの降水でこれらの薬剤が溶け出すこととなり、塩化物イオンが溶出した水溶液が床版3のひび割れ等から滴下して中空部4に大量に溜まってしまうという事態が生じ得る。
塩化物イオンが溶出した水溶液が箱桁2の底版20に浸透すると、塩化物イオンにより底版20に埋設された補強鋼材の不働態皮膜が破壊され、補強鋼材が錆びてしまうという問題があった。そこで、本発明の実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法を適用して、このような箱桁2の底版20に埋設された鋼材の腐食を抑制する。
(1)腐食抑制剤生成工程
本発明の実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法では、先ず、鋼材の腐食を抑制する腐食抑制剤の水溶液を生成する腐食抑制剤生成工程を行う(図示せず)。
本工程で用いる腐食抑制剤としては、亜硝酸リチウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩、カルシウムアルミネートの1種であるCaO・2Al23(以下CA2という)、亜硝酸型ハイドロカルマイト(3CaO・Al23・Ca(NO22・12H2O)、高炉セメントなど、が挙げられる。勿論、これらを2種以上組み合わせて混合して用いてもよいことはいうまでもない。また、腐食抑制剤を含有する水溶液のコンクリート構造物への浸透性を向上させるため、界面活性剤等を添加しても構わない。
<亜硝酸塩の防錆メカニズム>
ここで、図2、図3を用いて、亜硝酸塩の防錆メカニズムについて説明する。図2は、鋼材の腐食のメカニズムを模式的に表して説明する説明図である。通常、鋼材の表面には、不動態皮膜(酸化皮膜:Fe23)が形成されており、それ以上の酸化は進行しない。しかし、図2に示すように、鋼材の表面に傷等がありFeが露出している部分があると、酸素と水のある環境下では、酸化還元反応によりFe表面が電子を失ってイオン化し、遊離して行くことで錆びが進行する。また、一旦、鋼材表面に錆びが発生すると凹凸が大きくなり、反応面積が増大するため、加速度的に錆びが進行していくこととなる。
特に、塩化物イオンCl-が存在すると、Cl-が配位することで鉄イオンが安定化され、鉄の酸化還元電位がマイナス方向へ移動して酸化されやすくなる上、酸化鉄の水への溶解度が上がるために不動態皮膜が破壊されてしまい、錆びの進行がより促進される。
ここで、RC構造物の鋼材の周りに亜硝酸塩が存在すると、図3に示すように、亜硝酸イオンNO2-が、鉄イオンFe2+と反応してアノード部からの鉄イオンFe2+の溶出を防止し、次式に示すように、不動態皮膜(Fe23)として鉄筋表面に着床することによって腐食反応を抑制し、防錆効果を発揮する。
鉄イオン(2Fe2+)+水酸化物イオン(2OH-)+亜硝酸イオン(2NO2-)→一酸化窒素(2NO)+不動態皮膜(Fe23)+水(H2O)
以上のように、腐食抑制剤として亜硝酸塩を用いることで、腐食抑制効果を発揮することができるが、費用を考慮すると亜硝酸塩のうち、安価な亜硝酸リチウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸ナトリウムが好ましく、効果を考慮すると亜硝酸リチウムがさらに好ましい。
<CA2の塩化物イオン固定化メカニズム>
次に、CA2の腐食抑制効果である塩化物固定化メカニズムについて説明する。CA2(CaO・2Al23)を含有する粉末を混和することにより、次式に示す化学反応を起こし、ハイドロカルマイト(3CaO・Al23・Ca(OH)2・12H2O)が多量に生成される。
7Ca(OH)2+CaO・2Al23+19H2O→2(3CaO・Al23・Ca(OH)2・12H2O)
このハイドロカルマイトは、塩化物イオンCl-が水中に遊離している状態で、次式に示すように、塩化物イオンCl-をフリーデル氏塩(3CaO・Al23・CaCl2・11H2O)に固定化する。
3CaO・Al23・Ca(OH)2・12H2O+2Cl-→3CaO・Al23・CaCl2・11H2O+2OH-
このように、腐食抑制剤として亜硝酸塩に加え、CA2を添加することで、可溶性の塩化物イオンがフリーデル氏塩として固定化され、水中に遊離し易い可溶性の塩化物イオンが減少し、塩化物イオンによる不動態皮膜の損傷を抑える効果を発揮する。このため、亜硝酸塩の防錆効果を幇助することとなり、防錆効果を長期的に発揮し続けることができるようになると考えられる。
なお、本工程で用いる腐食抑制剤は、前記に列挙した物質以外でも、不動態皮膜(Fe23)を修復したり、塩化物イオンを固定化したりするなど、防錆効果を発揮して水溶液などの液体としてコンクリート構造物に浸透可能な物質であればよい。
本工程では、水道水などの常温の水に前記腐食抑制剤を添加してミキサー等で撹拌混合させて必要量の腐食抑制剤の水溶液を生成する。
(2)圧力差浸透工程
次に、図4に示すように、本実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法では、前工程で生成した腐食抑制剤の水溶液を、圧力差でRC構造物である箱桁2の底版20に浸透させる圧力差浸透工程を行う。図4は、本実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法の圧力差浸透工程を模式的に示す工程説明図である。
本工程では、先ず、前工程で生成した腐食抑制剤の水溶液Lが貯留されたチャンバーC等からポンプで圧送するか自然流下により、当該水溶液Lを箱桁2の中空部4へ供給する。中空部4への腐食抑制剤の供給は、底版20上に腐食抑制剤の水溶液Lの層が形成され、空気を遮断して吸引可能な所定深さとなるまで行う。
そして、次に、真空ポンプPを用いて、底版20の下面(裏面)から真空パッドP1を介して吸引して0.15Pa以下まで減圧し、圧力差で底版20の上面の被りコンクリート部分から鋼材が埋設されている付近まで腐食抑制剤の水溶液Lを浸透させる。ここで、真空ポンプPとは、例えば、SEEE式真空ポンプなどであり、短時間で所定の真空圧力まで減圧できる能力(例えば、1気圧(105Pa)を103〜104Pa程度に減圧する能力)を有する吸引ポンプを指している。
なお、本実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法では、真空ポンプPを使って吸引・減圧する場合を例示したが、中空部4側を加圧して外気との圧力差を利用して浸透させることも可能と考えられる。但し、吸引する方が、設備が簡易であり設置費用を低減できるだけでなく、施工性も向上させることができる。
(3)自然電位測定工程
次に、図5に示すように、本実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法では、底版20に埋設された鋼材の自然電位を測定し、鋼材に腐食抑制剤の水液体が到達したか否かを確認する自然電位測定工程を行う。図5は、本実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法の自然電位測定工程を模式的に示す工程説明図である。
具体的には、本工程では、前工程により電解質を含んだ腐食抑制剤の水溶液Lで浸漬された状態で底版20の表面及び鋼材Sに照合電極51、52、53を設置し、鉄筋コンクリート構造物の腐食診断等に用いられる電位測定装置5で自然電位を測定する。鋼材への照合電極52、53の設置は、鋼材Sへ到達する孔を底版20の表面から削孔してリード線で鋼材Sと電気的に通電可能に設置する。また、コンクリート表面に照合電極51を当てる場合は、コンクリート表面が湿潤状態で設置する必要があるため、塩ビ管などで土手を設け、照合電極51自体が水溶液Lに浸漬しないように設置する。
このように、電位測定装置5で継続的に自然電位を測定し、顕著な変化が現れたときに、鋼材に腐食抑制剤の水溶液Lが到達したものと判断する。勿論、ここで、鋼材の自然電位を削孔しないで測定可能であれば、削孔しないで底版20の表面から測定してもよいことは云うまでもない。
本工程により、腐食抑制剤による鋼材の腐食抑制効果が発揮できるか否かの精度の高い確認ができることとなる。
次に、前工程で鋼材への腐食抑制剤の水溶液Lの到達を確認した後、真空ポンプPや電位測定装置5等を撤去し、本実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法による箱桁橋1の箱桁2の底版20の鋼材腐食抑制作業が完了する。なお、本実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法の適用する対象として、箱桁橋1の底版20を例示して説明したが、箱桁橋1の箱桁2の側面版にも適用できることは云うまでもない。
本実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法によれば、箱桁橋1の箱桁2の底版20のような、融雪剤や凍結防止剤の散布により鋼材の不働態皮膜が破壊されたRC構造物であっても、構造上重要な箱桁2の底版20を損傷することなくその内部補強鋼材の腐食を抑制することができる。このため、箱桁橋1の耐久年数を格段に向上させることができる。また、構造物を損傷することがないため、箱桁橋1の補強工事や迂回措置を取る必要がない。よって、箱桁橋1を使用(共用)しつつ、そこに埋設された鋼材の腐食を抑制することができ、従来の断面補修や電気化学的防食方法と比べて大幅なコストダウンを達成することができる。
また、本実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法によれば、RC構造物である底版20の裏面から吸引ポンプを用いて減圧して水溶液をRC構造物に浸透させるので、底版20へ与える負担をさらに低減することができる。
その上、本実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法によれば、腐食抑制剤として亜硝酸リチウムなどの亜硝酸塩を含有する水溶液を圧力差で底版20に浸透させるので、底版20を損傷することなくそこに埋設された鋼材の不働態皮膜を修復し、鋼材の腐食を抑制することができる。
[透水試験]
次に、本発明の効果を確認するために行った透水試験について説明する。図6は、透水試験の実験状況を示す模式図である。図6に示すように、直径10cm×高さ20cmの円柱状のコンクリート供試体CKを複数作成し、側面方向から空気や水が漏れないように塗料、シート等で被覆する。
そして、コンクリート供試体CKの頂部に目盛り付きロートR1を逆さに設置し、そのロートR1に水又は水に染料(赤)を混ぜたものをそれぞれ注いで上端をゴム等で密封する。一方(真空あり)は、前述の真空ポンプPで下面を吸引して0.15Pa程度まで減圧し、他方(真空なし)は、自然流下で時間経過による透水量mL(累計)及び透水速度mL/hrの変化を測定した。なお、透水量mLは、ロートR1へ最初に注水した量から目盛りを読んで逆算して計測した。
また、図6の破線円に拡大して示すように、本試験における真空ポンプPの真空パッドP1は、鉄板の中心に直径12mmの孔が穿設された物を使用した。
図7〜図10は、ロートR1へ水道水を注水した場合の試験結果である。図7は、水道水による透水試験の時間経過による透水量の累計の変化を示すグラフである、図8は、水道水による透水試験の時間経過による透水速度の変化を示すグラフである。また、図9は、水道水による透水試験の真空ありの場合の浸透状況を、供試体を縦に割裂して示す写真であり、図10は、水道水による透水試験の真空なしの場合の浸透状況を、供試体を縦に割裂して示す写真である。なお、写真は、試験終了直後に供試体を軸方向に沿って縦に割裂して濡れている部分にマーキングしたものである。
図7に示すように、真空あり、真空なしのいずれの場合も、時間経過とともに透水量mL(累計)は増大するが、明らかに真空ありの方が透水量mL(累計)が多いことが分かる。また、図8に示すように、真空ポンプPを停止すると、明らかに透水速度mL/hrが落ち、真空ポンプPを再稼働すると透水速度mL/hrが大きくなることが分かる。
そして、図9、図10に示すように、水道水の場合は、浸透深さは、真空ありの場合が平均153mmであり、真空なしの場合が平均123mmであった。また、真空なしの場合は、周辺部の浸透が高い結果となり、真空ありの場合は、透水深さが均等(水平)になる傾向が見られた。これは、真空ありの場合、吸引力で水道水の浸透性が向上したからと推察される。
図11〜図14は、ロートR1へ水道水に染料(赤)を混ぜた物を注水した場合の試験結果である。図11は、水道水による透水試験の時間経過による透水量の累計の変化を示すグラフであり、図12は、水道水による透水試験の時間経過による透水速度の変化を示すグラフである。また、図13は、水道水による透水試験の真空ありの場合の浸透状況を、供試体を縦に割裂して示す写真であり、図14は、水道水による透水試験の真空なしの場合の浸透状況を、供試体を縦に割裂して示す写真である。なお、写真は、試験終了直後に供試体を軸方向に沿って縦に割裂して濡れている部分にマーキングしたものである。
図11に示すように、水道水と同様に、染料(赤)を混ぜた場合も同様に、真空あり、真空なしのいずれの場合も、時間経過とともに透水量mL(累計)は増大するが、真空ありの方が透水量mL(累計)が多いことが分かる。しかし、水道水だけの場合より差が縮まった結果となった。また、図12に示すように、真空ポンプPを停止すると、透水速度mL/hrが落ち、真空ポンプPを再稼働すると透水速度mL/hrが大きくなることが分かるが、その差は、水道水の場合と比べて変化量が小さくなった。
そして、図13、図14に示すように、水道水の場合は、浸透深さは、真空ありの場合が平均34mmであり、真空なしの場合が平均22mmであった。なお、赤い染料より濡れた部分をマーキングした線の方がはるかに下になっている。これは、水の分子より染料の分子が遙かに大きく、コンクリートの間隙に目詰まりしたものと推測される。
このように、真空ポンプPによる吸引は、浸透性に顕著に影響することが分かるが、腐食抑制剤の分子の大きさやコンクリートの緻密(密実)性等(一般的に高強度コンクリートの方が緻密性が高くなる)にも影響されることが推測される。よって、界面活性剤の添加などにより、コンクリートの間隙を摺り抜ける際の抵抗を低減すれば、浸透性が向上する可能性がある。
いずれにしろ、本透水試験により、真空ポンプの吸引により圧力差が生じ、水溶液の浸透性が向上することが確認できた。
以上、本発明の実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法について詳細に説明したが、前述した又は図示した実施形態は、いずれも本発明を実施するにあたって具体化した一実施形態を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。
特に、本発明の実施形態に係るRC構造物の鋼材腐食抑制方法を適用する対象として、箱桁橋1の底版20を上面から浸透させる場合を例示して説明したが、箱桁2の上床版(床版3)及び側版を含めRC構造物の表面から腐食抑制剤を含有する液体を浸透させて反対の裏面から吸引等する場合にも適用することができる。
1:箱桁橋
2:箱桁
20:底版
3:床版
4:中空部
5:電位測定装置
51、52、53:照合電極
P:真空ポンプ
P1:真空パッド
C:チャンバー
S:(内部補強)鋼材
R1:ロート
CK:コンクリート供試体

Claims (5)

  1. 塩化物イオンを含有するRC構造物に埋設された鋼材の腐食を抑制するRC構造物の鋼材腐食抑制方法であって、
    前記鋼材の腐食を抑制する腐食抑制剤を含有する液体を、吸引ポンプ又は加圧ポンプを用いて圧力差で前記RC構造物の表面から浸透させる圧力差浸透工程を有し、
    前記圧力差浸透工程時に前記液体で浸漬された状態の前記RC構造物の表面及び前記表面から削孔した孔を用いて前記鋼材の自然電位を継続的に測定し、当該鋼材の自然電位に変化が現れたときに前記液体が前記鋼材に到達したと判断する自然電位測定工程を行うこと
    を特徴とするRC構造物の鋼材腐食抑制方法。
  2. 前記圧力差浸透工程では、前記液体を供給する前記RC構造物の表面の反対側となる裏面から吸引ポンプを用いて減圧して前記液体を前記RC構造物に浸透させること
    を特徴とする請求項1に記載のRC構造物の鋼材腐食抑制方法。
  3. 前記圧力差浸透工程では、前記腐食抑制剤として亜硝酸塩を含有する前記液体を圧力差で前記RC構造物の表面から浸透させること
    を特徴とする請求項1又は2に記載のRC構造物の鋼材腐食抑制方法。
  4. 前記圧力差浸透工程では、前記腐食抑制剤としてさらにカルシウムアルミネートの1種であるCaO・2ALを含有する前記液体を圧力差で前記RC構造物の表面から浸透させること
    を特徴とする請求項に記載のRC構造物の鋼材腐食抑制方法。
  5. 前記RC構造物は、箱桁橋であり、
    前記圧力差浸透工程では、前記箱桁橋の箱桁の内部上面から前記液体を供給し、前記箱桁の底面から吸引ポンプを用いて減圧して前記液体を前記箱桁に浸透させること
    を特徴とする請求項2ないしのいずれかに記載のRC構造物の鋼材腐食抑制方法。
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