以下に、本願が開示する実施形態にかかる隔壁式熱交換器について、図面を参照して説明する。なお、以下の記載により本願が開示する技術が限定されるものではない。また、以下の記載においては、同一の構成要素に同一の符号を付与し、重複する説明を省略する。
図1は、実施例1の隔壁式熱交換器1を示す斜視図である。実施例1の隔壁式熱交換器1は、図1に示されているように、熱交換器本体2と第1流入管5と第1流出管6と第2流入管7と第2流出管8とを備えている。第1流入管5は、第1流体を熱交換器本体2に流入させる。第1流出管6は、熱交換器本体2で第2流体と熱交換された第1流体を熱交換器本体2から外部に流出させる。第2流入管7は、第2流体を熱交換器本体2に流入させる。第2流出管8は、熱交換器本体2で第1流体と熱交換された第2流体を熱交換器本体2から外部に流出させる。
図2は、熱交換器本体2を示す分解斜視図である。図2の熱交換器本体2は、図1の隔壁式熱交換器1を第2流入管7または第2流出管8の管軸を中心に、180度回転させた図である。熱交換器本体2は、図2に示されているように、積層体10と第1端板11と第2端板12とを備えている。積層体10は、柱体に形成されている。第1端板11は、柱体である積層体10の一方の底面S1を覆い、積層体10に固定されている。第2端板12は、柱体である積層体10の底面S1の反対側の他方の底面S2を覆い、積層体10に固定されている。
熱交換器本体2は、第1流入室14と第1流出室15と第2流入室16と第2流出室17とが形成されている。第1流入室14と第1流出室15と第2流入室16と第2流出室17とは、後述する積層体10の積層方向20に積層体10を貫通する4つの貫通孔の両端が第1端板11と第2端板12とによりそれぞれ閉塞されることにより、形成されている。
積層体10は、さらに、第1流出孔18と第2流出孔19とが形成されている。第1流出孔18は、積層体10の側面のうちの第1流出室15の近傍に形成され、第1流出室15と熱交換器本体2の外部とを接続している。このとき、第1流出管6は、一端が第1流出孔18に挿入されて第1流出室15に臨むように積層体10に固定され、他端が熱交換器本体2の外部に配置される。第2流出孔19は、積層体10の側面のうちの第2流出室17の近傍に形成され、第2流出室17の内部と熱交換器本体2の外部とを接続している。このとき、第2流出管8は、一端が第2流出孔19に挿入されて第2流出室17に臨むように積層体10に固定され、他端が熱交換器本体2の外部に配置される。
積層体10は、さらに、図示されていない第1流入孔と第2流入孔とが形成されている。第1流入孔は、積層体10の側面のうちの第1流入室14の近傍に形成され、第1流入室14の内部と熱交換器本体2の外部とを接続している。このとき、第1流入管5は、一端が第1流入孔に挿入されて第1流入室14に臨むように積層体10に固定され、他端が熱交換器本体2の外部に配置される。第2流入孔は、積層体10の側面のうちの第2流入室16の近傍に形成され、第2流入室16の内部と熱交換器本体2の外部とを接続している。このとき、第2流入管7は、一端が第2流入孔に挿入されて第2流入室16に臨むように積層体10に固定され、他端が熱交換器本体2の外部に配置される。
積層体10は、複数の熱交換器板を有する。複数の熱交換器板は、それぞれ、板状に形成されている。複数の熱交換器板は、積層方向20に垂直に配置され、互いに密着するように積層されている。複数の熱交換器板は、複数の第1熱交換器板と複数の第2熱交換器板とを有する。第1熱交換器板と第2熱交換器板は交互に積層される。
複数の第1熱交換器板は、互いに等しい形状に形成されている。図3は、複数の第1熱交換器板のうちの1つの第1熱交換器板21を示す平面図である。第1熱交換器板21は、図3に示されているように、第1流入室用孔22と第1流出室用孔23と第2流入室用孔24と第2流出室用孔25とが形成されている。第1流入室用孔22と第1流出室用孔23と第2流入室用孔24と第2流出室用孔25とは、それぞれ、第1熱交換器板21の一方の面S3から他方の面S4に貫通している。
第1熱交換器板21は、一方の面S3に第1熱交換流路用凹部26と第1流入流路用凹部27と第1流出流路用凹部28とがさらに形成されている。第1熱交換流路用凹部26は、第1熱交換器板21の概ね中央に形成されている。第1流入流路用凹部27は、第1熱交換流路用凹部26と第1流入室用孔22との間に形成され、第1流入室用孔22に繋がり、第1熱交換流路用凹部26のうちの第1流入室用孔22の側の縁V1に繋がっている。第1流出流路用凹部28は、第1熱交換流路用凹部26と第1流出室用孔23との間に形成され、第1流出室用孔23に繋がり、第1熱交換流路用凹部26のうちの第1流入流路用凹部27に繋がる縁V1に対して流れ方向29の反対側の縁V2に繋がっている。流れ方向29は、第1熱交換流路用凹部26を第1流体が全体として流れる方向(後述する正弦波状の流路に沿って流れる第1流体の進行方向)を表し、積層方向20に垂直であり、すなわち、第1熱交換器板21に平行である。
複数の第2熱交換器板は、互いに等しい形状に形成されている。図4は、複数の第2熱交換器板のうちの1つの第2熱交換器板31を示す平面図である。第2熱交換器板31は、図4に示されているように、第1流入室用孔32と第1流出室用孔33と第2流入室用孔34と第2流出室用孔35とが形成されている。第1流入室用孔32と第1流出室用孔33と第2流入室用孔34と第2流出室用孔35とは、それぞれ、第2熱交換器板31の一方の面S5から他方の面S6に貫通している。第1流入室用孔32は、複数の熱交換器板が適切に積層されたときに、第1熱交換器板21の第1流入室用孔22と繋がり第1流入室14を形成する。第1流出室用孔33は、複数の熱交換器板が適切に積層されたときに、第1熱交換器板21の第1流出室用孔23と繋がり第1流出室15を形成する。第2流入室用孔34は、複数の熱交換器板が適切に積層されたときに、第1熱交換器板21の第2流入室用孔24と繋がり第2流入室16を形成する。第2流出室用孔35は、複数の熱交換器板が適切に積層されたときに、第1熱交換器板21の第2流出室用孔25と繋がり第2流出室17を形成する。
第2熱交換器板31は、一方の面S5に第2熱交換流路用凹部36と第2流入流路用凹部37と第2流出流路用凹部38とがさらに形成されている。第2熱交換流路用凹部36は、複数の熱交換器板が適切に積層されたときに、第1熱交換器板21の第1熱交換流路用凹部26と積層方向20に重なるように、第2熱交換器板31の概ね中央に形成されている。第2流入流路用凹部37は、第2流入室用孔34と第2熱交換流路用凹部36との間に形成され、第2流入室用孔34に繋がり、第2熱交換流路用凹部36のうちの第1流出室用孔33の側の縁V3に繋がっている。第2流出流路用凹部38は、第2流出室用孔35と第2熱交換流路用凹部36との間に形成され、第2流出室用孔35に繋がり、第2熱交換流路用凹部36のうちの第2流入流路用凹部37に繋がる縁V3に対して流れ方向29の反対側の縁V4に繋がっている。流れ方向29は、図3の流れ方向29と同じ方向である。図4では、流れ方向29は、第2流体が全体として第2熱交換流路用凹部36を流れる方向(後述する正弦波状の流路に沿って流れる第2流体の進行方向)を表し、積層方向20に垂直であり、すなわち、第2熱交換器板31に平行である。なお、第1流体、第2流体の流れる方向は可逆的であるため、図3、図4において流れ方向29は両矢印で示している。
図5は、第1熱交換流路用凹部26を示す平面図である。第1熱交換器板21は、図5に示されているように、第1熱交換流路用凹部26が形成されることにより、第1側壁面41と第2側壁面42と底面43とが形成されている。第1側壁面41は、第1熱交換流路用凹部26のうちのスパン方向44の一方の縁に形成され、第1熱交換流路用凹部26の内壁面の一部を形成している。スパン方向44は、積層方向20に垂直であり、かつ、流れ方向29に垂直な方向である。また、スパン方向44は後述する正弦曲線51の振幅方向である。第1側壁面41は、第1熱交換器板21が平行な平面に概ね垂直であり、すなわち、積層方向20に概ね平行である。第1側壁面41は、第1熱交換器板21に平行な平面に描かれる正弦曲線に沿うように、形成されている。第1側壁面41が沿う正弦曲線は、正弦関数により示される波形に等しく、振幅が流れ方向29に周期的になめらかに変化する。すなわち、その正弦関数は、変数xと変数yと振幅Aと周期Tとを用いて、次式(1)により表現される。
y=Asin(2π/T・x)・・・(1)
ここで、変数xは、流れ方向29における位置を示している。変数yは、スパン方向44における位置を示している。振幅Aは、1.0mmより小さい値、たとえば、0.6mmが例示される。周期Tとしては、3mmが例示される。
第2側壁面42は、第1熱交換流路用凹部26のうちの第1側壁面41が形成される縁に対してスパン方向44の反対側の縁に形成され、第1熱交換流路用凹部26の内壁面の一部を形成している。第2側壁面42は、第1熱交換器板21が沿う平面に概ね垂直であり、すなわち、積層方向20に概ね平行である。第2側壁面42は、第1熱交換器板21が沿う平面に描かれる正弦曲線に沿うように、形成されている。第2側壁面42が沿う正弦曲線は、第1側壁面41が沿う正弦曲線と同じ正弦曲線である。すなわち、第2側壁面42が沿う正弦曲線の周期は、第1側壁面41が沿う正弦曲線の周期に等しく、かつ、第2側壁面42が沿う正弦曲線の振幅は、第1側壁面41が沿う正弦曲線の振幅に等しい。さらに、第2側壁面42が沿う正弦曲線のうちのある位相に対応する点の流れ方向29の位置は、第1側壁面41が沿う正弦曲線のうちのその位相に対応する点の流れ方向29の位置に等しい。
底面43は、第1熱交換流路用凹部26の内壁面の一部を形成し、第1熱交換流路用凹部26の内壁面のうちの第1側壁面41と第2側壁面42とに挟まれた面を形成している。底面43は、第1熱交換器板21が平行な平面と平行に、形成されている。
第1熱交換器板21は、第1隔壁45と第1側壁46と第2側壁47と複数の第1流路壁48−1〜48−n(nは正の整数。以下、他の実施例でもnは任意の正の整数を表す)とを備えている。第1隔壁45は、第1熱交換流路用凹部26の底部を形成し、すなわち、第1熱交換器板21のうちの底面43を形成する部分である。第1側壁46は、第1熱交換流路用凹部26の一方の側壁を形成し、すなわち、第1熱交換器板21のうちの第1側壁面41を形成する部分である。第2側壁47は、第1熱交換流路用凹部26の他方の側壁を形成し、すなわち、第1熱交換器板21のうちの第2側壁面42を形成する部分である。複数の第1流路壁48−1〜48−nは、それぞれ、第1熱交換流路用凹部26の内部に配置され、底面43から積層方向20に突出するように第1隔壁45に形成されている。
図6は、複数の第1流路壁48−1〜48−nのうちの隣り合う2つの流路壁を示す平面図である。複数の第1流路壁48−1〜48−nのうちの1つの第1流路壁48−1は、図6に示されているように、第1熱交換器板21に平行な平面に描かれた正弦曲線51に沿うように、形成されている。正弦曲線51は、式(1)で表現される第1側壁面41または第2側壁面42が沿う正弦曲線と同じ正弦曲線であり、振幅が流れ方向29に周期的になめらかに変化するように形成されている。すなわち、正弦曲線51の周期は、第1側壁面41または第2側壁面42が沿う正弦曲線の周期Tに等しく、正弦曲線51の振幅は、第1側壁面41または第2側壁面42が沿う正弦曲線の振幅Aに等しい。第1流路壁48−1は、第1側流路壁面52と第2側流路壁面53とを形成する。第1側流路壁面52は、第1流路壁48−1のうちの第1側壁46の側に形成されている。第1側流路壁面52は、第1熱交換器板21に平行な平面に描かれた正弦曲線(「第1正弦曲線」に対応)に沿うように、形成されている。第1側流路壁面52が沿う正弦曲線は、正弦曲線51と同じ正弦曲線であり、正弦曲線51をスパン方向(「正弦曲線51の振幅方向」に対応)44の第1側壁46の側にオフセット値y0だけ平行移動させて配置した正弦曲線に重なるように形成されている。オフセット値y0としては、0.1mmが例示される。
第2側流路壁面53は、第1流路壁48−1のうちの第2側壁47の側に形成されている。第2側流路壁面53は、正弦曲線51をスパン方向44の第2側壁47の側にオフセット値y0だけ平行移動させた正弦曲線(「第2正弦曲線」に対応)に重なるように形成されている。第1側流路壁面52と第2側流路壁面53は第1熱交換器板21が沿う平面に概ね垂直であり、すなわち、積層方向20に概ね平行である。第1流路壁48−1は、このように形成されることにより、第1流路壁48−1のうちの正弦曲線51の変曲点に重なる部分の幅w1(変曲点で正弦曲線51に直交する部分)が、第1流路壁48−1のうちの正弦曲線51の極大点または極小点に重なる部分の幅w2より狭い。式(1)で表現される正弦曲線51の変曲点は、整数i(以下、他の実施例でもiは任意の整数を表す)を用いて、次式(2)により表現される位相θを変曲点とする正弦関数のグラフの点に対応している。
θ=πi・・・(2)
また、正弦曲線51の極大点は、次式(3)により表現される位相θに対応する正弦関数のグラフの点に対応している。
θ=π/2+2πi・・・(3)
さらに、正弦曲線51の極小点は、次式(4)により表現される位相θに対応する正弦関数のグラフの点に対応している。
θ=3π/2+2πi・・・(4)
複数の第1流路壁48−1〜48−nのうちの第1流路壁48−1の第2側壁47の側に配置される隣の第1流路壁48−2は、第1流路壁48−1と同様に、形成されている。すなわち、第1流路壁48−2は、正弦曲線51に沿うように形成され、第1側流路壁面52と第2側流路壁面53とが形成されている。さらに、第1流路壁48−2は、第1流路壁48−2が沿う正弦曲線51が、第1流路壁48−1が沿う正弦曲線51がスパン方向44に所定のピッチPだけ平行移動した正弦曲線に重なるように、配置されている。ピッチPとしては0.75mmが例示される。複数の第1流路壁48−1〜48−nのうちの第1流路壁48−1と第1流路壁48−2とを除く他の第1流路壁に関しても、第1流路壁48−1と第1流路壁48−2と同様に、形成されている。すなわち、複数の第1流路壁48−1〜48−nは、ピッチPで等間隔にスパン方向44に並ぶように、形成されている。
第1熱交換器板21は、複数の第1流路壁48−1〜48−nが形成されることにより、複数の溝が形成されている。各々の溝57は、複数の第1流路壁48−1〜48−nのうちの隣り合う2つの第1流路壁の間に形成され、一方の第1流路壁の第1側流路壁面52と他方の第1流路壁の第2側流路壁面53との間に形成されている。溝57は、第1側流路壁面52と第2側流路壁面53とが同じ正弦曲線に沿っていることにより、正弦曲線51の変曲点に近い部分の幅w3が、正弦曲線51の極大点または極小点に近い部分の幅w4より狭くなるように、形成されている。
第2熱交換器板31の第2熱交換流路用凹部36は、第1熱交換器板21の第1熱交換流路用凹部26と同様に形成されている。図7は、図2のA−A断面拡大図である。第2熱交換器板31は、図7に示されているように、第2隔壁61と複数の第2流路壁62−1〜62−nとを備えている。第2隔壁61は、第1熱交換器板21の第1隔壁45と同様に、第2熱交換流路用凹部36の底部を形成し、すなわち、第2熱交換器板31に平行な底面63を形成する。複数の第2流路壁62−1〜62−nは、第1熱交換器板21の複数の第1流路壁48−1〜48−nと同様に、第2熱交換流路用凹部36の内部に配置され、底面63から積層方向20に突出するように第2隔壁61に形成されている。複数の第2流路壁62−1〜62−nは、さらに、第1熱交換器板21の複数の第1流路壁48−1〜48−nと形状が等しくなるように形成されている。第2熱交換器板31は、図示されていない2つの側壁をさらに備えている。2つの側壁は、第1熱交換器板21の第1側壁46と第2側壁47と同様に、第2熱交換流路用凹部36のうちのスパン方向44の両端にそれぞれ形成され、第2熱交換流路用凹部36の内壁面のうちの底面63を除いた2つの側壁面をそれぞれ形成している。
複数の熱交換器板は、第1熱交換器板21の一方の面S3が、第2熱交換器板31の他方の面S6に接合され、第2熱交換器板31の一方の面S5が、第1熱交換器板21の他方の面S4に接合されることにより、積層される。すなわち、積層体10は、このように第1熱交換器板21と第2熱交換器板31とが交互に積層されている状態で、複数の熱交換器板が互いに接合されることにより形成されている。複数の第2流路壁62−1〜62−nは、複数の熱交換器板が適切に積層されたときに、複数の第1流路壁48−1〜48−nに積層方向20に重なるように、形成されている。複数の第1流路壁48−1〜48−nの頭頂部S7は、第2隔壁61の他方の面S6に接合され、複数の第2流路壁62−1〜62−nの頭頂部S8は、第1隔壁45の他方の面S4に接合されている。また、第1熱交換器板21の第1側壁46と第2側壁47とは、図示されていないが、複数の熱交換器板が適切に積層されたときに、第2熱交換器板31の2つの側壁に積層方向20にそれぞれ重なるように、形成されている。
積層体10は、複数の熱交換器板が積層されることにより、複数の第1空間67と複数の第2空間68とが形成される。第1空間67は、第1熱交換器板21の第1熱交換流路用凹部26の内部であり、第1隔壁45と第2隔壁61との間に形成される空間である。複数の第1流路壁48−1〜48−nは、第1熱交換流路用凹部26の内部の第1空間67を複数の第1流路65に分割している。複数の第1流路65は、複数の第1流路壁48−1〜48−nと第1隔壁45と第2隔壁61とに囲まれている複数の流路を含んでいる。複数の第1流路65は、図示されていないが、さらに、第1側壁46と1つの流路壁48−1と第1隔壁45と第2隔壁61とに囲まれる流路と、第2側壁47と1つの流路壁48−nと第1隔壁45と第2隔壁61とに囲まれる流路とを含んでいる。
第2空間68は、第2熱交換器板31の第2熱交換流路用凹部36の内部であり、第1隔壁45と第2隔壁61との間に形成される空間である。複数の第2流路壁62−1〜62−nは、複数の第1流路壁48−1〜48−nと同様に、第2熱交換流路用凹部36の内部の第2空間68を複数の第2流路66に分割している。複数の第2流路66は、複数の第2流路壁62−1〜62−nと第1隔壁45と第2隔壁61とに囲まれている複数の流路を含んでいる。複数の第2流路66は、図示されていないが、さらに、2つの側壁の一方と複数の第2流路壁62−1〜62−nのうちの1つの流路壁と第1隔壁45と第2隔壁61とに囲まれる流路と、2つの側壁の他方と複数の第2流路壁62−1〜62−nのうちの1つの流路壁と第1隔壁45と第2隔壁61とに囲まれる流路とを含んでいる。第1流路65と第2流路66は、流体がスパン方向44に振動を繰り返しながら、流れ方向29を進行方向として流れる正弦波状の流路を形成する。
このとき、第1流路65は、第1側流路壁面52と第2側流路壁面53との間に形成される溝57の幅が流路に沿った位置によって異なっていることにより、断面積が流路に沿った位置によって異なっている。第2流路66に関しても、第1流路65と同様に、断面積が位置によって異なっている。第1流路65と第2流路66の断面積は、それぞれの流路に沿った位置によって周期的に拡大と縮小を繰り返す。
第1流路65は、最小第1流路幅Wc1と第1流路壁高さH1とを用いて、次式(5)が成立するように形成されている。
2.5<Wc1/H1<6・・・(5)
ここで、最小第1流路幅Wc1は、複数の第1流路壁48−1〜48−nの間隔の最小値であり、複数の第1流路壁48−1〜48−nのうちの隣り合う2つの流路壁間の距離の最小値を示し、すなわち、第1流路65の幅の最小値を示している。第1流路壁高さH1は、第1隔壁45と第2隔壁61との間隔を示し、第1熱交換流路用凹部26の深さを示し、複数の第1流路壁48−1〜48−nの高さを示し、すなわち、第1流路65の積層方向20の高さを示している。第2流路66は、最小第2流路幅Wc2と第2流路壁高さH2とを用いて、次式(6)が成立するように形成されている。
2.5<Wc2/H2<6・・・(6)
ここで、最小第2流路幅Wc2は、複数の第2流路壁62−1〜62−nの間隔の最小値であり、複数の第2流路壁62−1〜62−nのうちの隣り合う2つの流路壁間の距離の最小値を示し、すなわち、第2流路66の幅の最小値を示している。第2流路壁高さH2は、第1隔壁45と第2隔壁61との間隔を示し、第2熱交換流路用凹部36の深さを示し、複数の第2流路壁62−1〜62−nの高さを示し、すなわち、第2流路66の積層方向20の高さを示している。隔壁式熱交換器1は、Wc1/H1とWc2/H2とが6より小さいことにより流れる流体の圧力に対して十分な強度を確保し、複数の第1流路65に第1流体が流れ、複数の第2流路66に第2流体が流れるときに、第1隔壁45と第2隔壁61とが各々の流体の圧力により撓むことが防止される。隔壁式熱交換器1は、Wc1/H1とWc2/H2とが2.5より大きく、かつ、6より小さいことにより、第1流体および第2流体と第1隔壁45および第2隔壁61との間の熱伝達の伝熱性能の低下を抑制し、かつ、耐圧性能の低下を抑制することができる。作動流体の稼働条件に応じてこれらの設計パラメータをチューニングする。
隔壁式熱交換器1は、さらに、第1流路65の水力直径が0.3mm以下になるように、かつ、第2流路66の水力直径が0.3mm以下になるように、形成されている。さらに、このとき、第1側流路壁面52と第2側流路壁面53とが沿う正弦曲線の振幅Aは、1.0mmより小さい大きさを示し、たとえば、0.6mmが例示される。その正弦曲線の周期Tとしては、3mmが例示される。隔壁式熱交換器1は、このように形成されることにより、第1流体と第2流体との間で高い熱交換性能を得ることができる。このときの第1流体と第2流体は、たとえば一方が水、他方が冷媒(例示:R410A、R32、R290)である。
[実施例1の隔壁式熱交換器1の製造方法]
隔壁式熱交換器1が作製される前に、複数の第1流路65と複数の第2流路66との形状が異なる、隔壁式熱交換器1の複数の数学モデルが作成される。その複数の数学モデルは、コンピュータシミュレーションに利用され、複数の第1流路65と複数の第2流路66とを流れる流体の挙動や熱交換器の伝熱性能を算出することに利用される。隔壁式熱交換器1は、その算出された流体の挙動や熱交換器の伝熱性能に基づいて、複数の第1流路と複数の第2流路とが適切な形状に形成されるように、設計される。
隔壁式熱交換器1は、第1側流路壁面52と第2側流路壁面53とが単純な正弦曲線に沿っていることにより、少ないパラメータで複数の第1流路65と複数の第2流路66との形状を決定するためのコンピュータシミュレーションを行うことができる。そのパラメータとしては、周期T、振幅A、オフセット値y0、ピッチPが例示される。隔壁式熱交換器1は、複数の第1流路65と複数の第2流路66との形状を決定するパラメータの数が少ないことにより、コンピュータシミュレーションを実行するときのコンピュータの演算量を低減し、コンピュータシミュレーションに要する時間を短縮することができる。このため、隔壁式熱交換器1は、複数の第1流路壁48−1〜48−nと複数の第2流路壁62−1〜62−nとの形状をコンピュータシミュレーションにより最適化する作業を容易化することができる。
第1熱交換器板21と第2熱交換器板31とは、金属板がエッチングされることにより、作製される。この金属板の厚さとしては0.3mmが例示される。複数の熱交換器板は、第1端板11と第2端板12とともに、たとえば拡散接合により互いに接合される。このとき、第1熱交換器板21の第1流入室用孔22と第2熱交換器板31の第1流入室用孔32とは、第1端板11と第2端板12と複数の熱交換器板とが互いに接合されることにより、互いに接続され、第1流入室14を形成する。さらに、第1熱交換器板21の第1流出室用孔23と第2熱交換器板31の第1流出室用孔33とは、第1流出室15を形成する。第1熱交換器板21の第2流入室用孔24と第2熱交換器板31の第2流入室用孔34とは、第2流入室16を形成する。第1熱交換器板21の第2流出室用孔25と第2熱交換器板31の第2流出室用孔35とは、第2流出室17を形成する。
第1流出孔18と第2流出孔19と第1流入孔と第2流入孔とは、第1端板11と第2端板12と積層された複数の熱交換器板とが互いに接合された後に、機械加工により形成される。第1流入管5と第1流出管6と第2流入管7と第2流出管8とは、第1流入孔と第1流出孔18と第2流入孔と第2流出孔19とにそれぞれ挿入された後に、たとえば溶接により熱交換器本体2に固定される。
[実施例1の隔壁式熱交換器1の動作]
隔壁式熱交換器1は、第1流入管5を介して第1流体が第1流入室14に流入する。第1流体は、第1流入室14に流入した後に、複数の第1熱交換器板21にそれぞれ分配され、第1熱交換器板21に形成される第1流入流路用凹部27に流入する。第1流体は、第1流入流路用凹部27に流入した後に、第1流入流路用凹部27により流れの幅が第1流入室14の幅から第1熱交換流路用凹部26の幅に広げられ、第1熱交換流路用凹部26に形成された複数の第1流路65に流入する。第1流体は、複数の第1流路65を流れるときに、第1側流路壁面52と第2側流路壁面53とが正弦曲線に沿っていることにより、流れる方向が正弦波状に変化する。複数の第1流路壁48−1〜48−nのうちの正弦曲線の極大点、または、極小点と重なる部分は、第1流体が流れる方向が他の部分に比べて急激に変化することにより、第1流体からより大きい応力を受ける。複数の第1流路壁48−1〜48−nのうちの正弦曲線の極大点、または、極小点と重なる部分は、他の部分に比べて、流路壁の幅が大きく形成されている。これにより、第1流体から受ける応力に対する強度が他の部分より大きく、他の部分に比べて大きな応力に対して十分な強度を確保することができる。
第1流体は、複数の第1流路65を流れるときに、さらに、複数の第1流路65の断面積が流路に沿った流れ方向の位置によって異なっていることにより、流れる速さが変化する。第1流体は、複数の第1流路65を流れるときに、流れる方向が正弦波状に変化し、流れる速さが変化することにより、局所的に常時攪乱される。隔壁式熱交換器1は、第1流体が局所的に常時攪乱されることにより、第1流体と第1隔壁45との間の熱伝達の熱抵抗を低減し、第1流体と第2隔壁61との間の熱伝達の熱抵抗を低減することができる。
隔壁式熱交換器1は、さらに、第2流入管7を介して第2流体が第2流入室16に流入する。第2流体は、第2流入室16に流入した後に、複数の第2熱交換器板31にそれぞれ分配され、第2熱交換器板31に形成される第2流入流路用凹部37に流入する。第2流体は、第2流入流路用凹部37に流入した後に、第2流入流路用凹部37により流れの幅が第2流入室16の幅から第2熱交換流路用凹部36の幅に広げられ、第2熱交換流路用凹部36に形成された複数の第2流路66に流入する。このとき、第2流体は、第1流体が全体として流れ方向29を第1流入室14から第1流出室15に向かって流れることに対して、第1流体が流れる方向と反対方向に全体として流れ方向29を第1流出室15側から第1流入室14側に向かって流れる。すなわち、隔壁式熱交換器1は、いわゆる向流型熱交換器である。
第2流体は、複数の第2流路66を流れるときに、第1側流路壁面52と第2側流路壁面53とが正弦曲線に沿っていることにより、流れる方向が正弦波状に変化する。複数の第2流路壁62−1〜62−nのうちの正弦曲線の極大点、または、極小点と重なる部分は、第2流体が流れる方向が他の部分に比べて急激に変化することにより、第2流体からより大きい応力を受ける。複数の第2流路壁62−1〜62−nのうちの正弦曲線の極大点、または、極小点と重なる部分は、他の部分に比べて、流路壁幅が大きく形成されている。これにより、第2流体から受ける応力に対する強度が他の部分より大きく、他の部分に比べて大きな応力に対して十分な強度を確保することができる。
第2流体は、複数の第2流路66を流れるときに、さらに、複数の第2流路66の断面積が流路に沿った流れ方向の位置によって異なっていることにより、流れる速さが変化する。第2流体は、複数の第2流路66を流れるときに、流れる方向が正弦波状に変化し、流れる速さが変化することにより、局所的に常時攪乱される。隔壁式熱交換器1は、第2流体が局所的に常時攪乱されることにより、第2流体と第1隔壁45との間の熱伝達の熱抵抗を低減し、第2流体と第2隔壁61との間の熱伝達の熱抵抗を低減することができる。隔壁式熱交換器1は、第1流体および第2流体と第1隔壁45および第2隔壁61との間の熱伝達の熱抵抗が低減することにより、第1流体と第2流体との間で行われる熱交換の性能を向上させることができる。
第1流体は、複数の第1流路65を流れた後に、第1流出流路用凹部28に流入する。第1流体は、第1流出流路用凹部28に流入した後に、第1流出流路用凹部28により流れの幅が第1熱交換流路用凹部26の幅から第1流出室15の幅に狭められ、第1流出室15に流入する。第1流出室15は、第1流出流路用凹部28を介して複数の第1熱交換器板21から流入した第1流体を合流させる。第1流出室15で合流した第1流体は、第1流出管6を介して外部に流出する。第2流体は、複数の第2流路66を流れた後に、第2流出流路用凹部38に流入する。第2流体は、第2流出流路用凹部38に流入した後に、第2流出流路用凹部38により流れの幅が第2熱交換流路用凹部36の幅から第2流出室17の幅に狭められ、第2流出室17に流入する。第2流出室17は、第2流出流路用凹部38を介して複数の第2熱交換器板31から供給された第2流体を合流させる。第2流出室17で合流した第2流体は、第2流出管8を介して外部に流出する。
[実施例1の隔壁式熱交換器1の効果]
実施例1の隔壁式熱交換器1は、第1隔壁45(「第1隔壁」に対応)と、第2隔壁61(「第2隔壁」に対応)と、複数の第1流路壁48−1〜48−nとを備えている。複数の第1流路壁48−1〜48−nは、第1隔壁45と第2隔壁61との間に形成される第1熱交換流路用凹部26の内部の第1空間67を複数の第1流路65に分割する。このとき、第1隔壁45と第2隔壁61とは、複数の第1流路65を流れる第1流体と異なる第2流体が流れる複数の第2流路66から複数の第1流路65を隔てている。複数の第1流路壁48−1〜48−nは、それぞれが正弦曲線に沿って形成される。また、複数の第1流路壁48−1〜48−nは、それぞれが互いに異なる正弦曲線に沿う複数の第1側流路壁面52と複数の第2側流路壁面53とを形成する。
このような隔壁式熱交換器1は、正弦曲線に沿う複数の第1側流路壁面52と複数の第2側流路壁面53とが形成されていることにより、複数の第1流路65を流れる第1流体が流れる方向を正弦波状に変化させることができる。隔壁式熱交換器1は、正弦曲線に沿う複数の第1側流路壁面52と複数の第2側流路壁面53とが形成されていることにより、さらに、複数の第1流路65の幅を第1流体が流れる方向に沿って変化させることができる。隔壁式熱交換器1は、複数の第1流路65の幅が変化することにより、複数の第1流路65の断面積を変化させることができ、複数の第1流路65を流れる第1流体の速さを変化させることができる。隔壁式熱交換器1は、第1流体が流れる方向が変化することにより、また、第1流体の速さが変化することにより、複数の第1流路65を流れる第1流体を局所的に常時攪乱することができる。隔壁式熱交換器1は、複数の第1流路65を流れる第1流体が局所的に常時攪乱されることにより、第1流体と第1隔壁45との熱伝達の熱抵抗を低減することができ、第1流体と第2隔壁61との熱伝達の熱抵抗を低減することができる。隔壁式熱交換器1は、熱抵抗が低減されることにより、第1流体と、複数の第2流路66を流れる第2流体との間で熱交換を行うときの伝熱性能を向上させることができる。隔壁式熱交換器1は、複数の第1側流路壁面52と複数の第2側流路壁面53とが単純な正弦曲線にそれぞれ沿うことにより、第1流体の挙動をコンピュータシミュレーションするときに、複数の第1流路65の形状の入力・変更を容易化し、また、コンピュータの演算負荷を低減することができる。その結果、隔壁式熱交換器1は、複数の第1流路壁48−1〜48−nの形状を最適化する作業を容易化することができる。
また、実施例1の隔壁式熱交換器1は、第1熱交換流路用凹部26の内部の第1空間67の端に形成される第1側壁面41が形成される第1側壁46をさらに備えている。このとき、第1側壁面41は、複数の第1側流路壁面52と複数の第2側流路壁面53とが沿う正弦曲線と同じ正弦曲線に沿うように形成されている。すなわち、第1側壁面41が沿う正弦曲線の周期は、複数の第1側流路壁面52と複数の第2側流路壁面53とが沿う正弦曲線の周期に等しく、第1側壁面41が沿う正弦曲線の振幅は、複数の第1側流路壁面52と複数の第2側流路壁面53とが沿う正弦曲線の振幅に等しい。
このような隔壁式熱交換器1は、複数の第1流路壁48−1〜48−nに挟まれる流路を流れる第1流体と同様に、第1流路壁48−1と第1側壁面41との間に形成される流路を流れる第1流体を局所的に常時攪乱することができる。その結果、隔壁式熱交換器1は、第1流体が局所的に常時攪乱されることにより、第1流体と第2流体との間で熱交換を行うときの伝熱性能をさらに向上させることができる。
また、実施例1の隔壁式熱交換器1の複数の第1流路壁48−1〜48−nの間隔の最小値である最小第1流路幅Wc1を、第1隔壁45と第2隔壁61との間隔である第1流路壁高さH1で除算した値Wc1/H1は、2.5より大きく、かつ、6より小さい。このような隔壁式熱交換器1は、Wc1/H1が6より小さいことにより、第1隔壁45と第2隔壁61との強度を確保し、複数の第1流路65に第1流体が流れるときに、第1隔壁45と第2隔壁61とが流体の圧力により撓むことが防止される。隔壁式熱交換器1は、Wc1/H1が2.5より大きく、かつ、6より小さいことにより、第1流体と第1隔壁45および第2隔壁61との間の伝熱性能の低下を抑制し、かつ、耐圧性能の低下を抑制することができる。なお、第2流路壁62−1〜62−nに関しても、複数の第1流路壁48−1〜48−n同様に形成されることにより、隔壁式熱交換器1は、第2流体と第1隔壁45および第2隔壁61との間の伝熱性能の低下を抑制し、かつ、第1隔壁45と第2隔壁61との強度を確保することができる。
実施例2の隔壁式熱交換器は、図8に示されているように、既述の実施例1の隔壁式熱交換器1の複数の第1流路壁48−1〜48−nが複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1(n1は正の整数。以下、他の実施例でもn1は任意の正の整数を表す)と複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2(n2は正の整数。以下、他の実施例でもn2は任意の正の整数を表す)とに置換されている。図8は、実施例2の隔壁式熱交換器に形成される複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1と複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2とを示す平面図である。複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1のうちの1つの奇数番流路壁71−1は、既述の第1流路壁48−1と同様に、正弦曲線51に沿うように形成されている。複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1のうちの奇数番流路壁71−1と異なる他の奇数番流路壁も、奇数番流路壁71−1と同様に、正弦曲線51に沿うように形成されている。複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2のうちの1つの偶数番流路壁72−1は、既述の第1流路壁48−2と同様に、正弦曲線51に沿うように形成されている。複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2のうちの偶数番流路壁72−1と異なる他の偶数番流路壁も、偶数番流路壁72−1と同様に、正弦曲線51に沿うように形成されている。複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1のうちの隣り合う2つの奇数番流路壁の間には、複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2のうちの1つの偶数番流路壁が配置されている。複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2のうちの隣り合う2つの偶数番流路壁の間には、複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1のうちの1つの奇数番流路壁が配置されている。すなわち、複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1と複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2とは、スパン方向(「正弦曲線51の振幅方向」に対応)44に交互に並んでいる。
奇数番流路壁71−1は、第1流路壁48−1に流路壁のない複数の奇数番切欠き部73が形成され、奇数番流路壁71−1は、この複数の奇数番切欠き部73により複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m1(m1は正の整数。以下、他の実施例でもm1は任意の正の整数を表す)に分割されている。複数の奇数番切欠き部73は、奇数番流路壁71−1に周期Tごとに周期的に形成されている。複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1のうちの奇数番流路壁71−1と異なる他の奇数番流路壁に関しても、奇数番流路壁71−1と同様に、複数の奇数番切欠き部73が形成され、複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m1に分割されている。偶数番流路壁72−1は、第1流路壁48−2に流路壁のない複数の偶数番切欠き部75が形成され、偶数番流路壁72−1は、この複数の偶数数番切欠き部75により複数の偶数番流路壁要素76−1〜76−m2(m2は正の整数。以下、他の実施例でもm2は任意の正の整数を表す)に分割されている。「切欠き部」は、複数の奇数番切欠き部73と複数の偶数番切欠き部75との両方を示している。複数の偶数番切欠き部75は、偶数番流路壁72−1に周期Tごとに周期的に形成されている。複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2のうちの偶数番流路壁72−1と異なる他の偶数番流路壁に関しても、偶数番流路壁72−1と同様に、複数の偶数番切欠き部75が形成され、複数の偶数番流路壁要素76−1〜76−m2に分割されている。
図9は、実施例2の隔壁式熱交換器に形成される複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1と複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2とを概略的に示す説明図である。奇数番流路壁71−1の複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m1のうちの1つの奇数番流路壁要素74−1は、図9に示されているように、奇数番流路壁71−1が沿う正弦曲線51のうちの位相がπ/3から5π/3までの240°分の範囲に対応する部分に重なるように形成されている。すなわち、奇数番流路壁要素74−1は、正弦曲線51のうちの位相がπ/2である部分と3π/2である部分に重なるように形成され、正弦曲線51の極大点と極小点のそれぞれに対応する部分に重なるように形成されている。複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m1のうちの奇数番流路壁要素74−1と異なる他の奇数番流路壁要素に関しても、奇数番流路壁要素74−1と同様に、整数iを用いて、奇数番流路壁71−1が沿う正弦曲線51のうちの位相がπ/3+2πiから5π/3+2πiまでの240°分の範囲に対応する部分に重なるように、形成されている。
複数の奇数番切欠き部73のうちの1つの奇数番切欠き部は、正弦曲線51のうちの位相が5π/3から7π/3までの120°分の範囲に対応する部分を除去した形状に形成される。このように形成される奇数番切欠き部73は、正弦曲線51のうちの位相が2πである部分を含み、すなわち、正弦曲線51のうちの変曲点を含んでいる。複数の奇数番切欠き部73うちの他の切欠き部に関しても、同様に、正弦曲線51のうちの位相が2πiである部分を含み、正弦曲線51のうちの変曲点に重なるように、形成されている。すなわち、複数の奇数番流路壁71−1は、複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m1が正弦曲線51のうちの位相が2πiである変曲点に重ならないように、複数の奇数番切欠き部73が形成されている。複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1のうちの奇数番流路壁71−1と異なる他の奇数番流路壁も、奇数番流路壁71−1と同様に、形成されている。
偶数番流路壁72−1の複数の偶数番流路壁要素76−1〜76−m2のうちの1つの偶数番流路壁要素76−1は、正弦曲線51のうちの位相が4π/3から8π/3までの240°分の範囲に対応する部分に重なるように形成されている。すなわち、偶数番流路壁要素76−1は、正弦曲線51のうちの位相が3π/2である部分と5π/2である部分に重なるように形成され、正弦曲線51の極大点と極小点のそれぞれに対応する部分に重なるように形成されている。複数の偶数番流路壁要素76−1〜76−m2のうちの偶数番流路壁要素76−1と異なる他の偶数番流路壁要素に関しても、偶数番流路壁要素76−1と同様に、偶数番流路壁72−1が沿う正弦曲線51のうちの位相が4π/3+2πiから8π/3+2πiまでの240°分の範囲に対応する部分に重なるように、形成されている。
複数の偶数番切欠き部75のうちの1つの切欠き部は、正弦曲線51のうちの位相が2π/3から4π/3までの120°分の範囲に対応する部分を除去した形状に形成される。このように形成される切欠き部は、正弦曲線51のうちの位相がπである部分を含むように形成され、すなわち、正弦曲線51のうちの変曲点を含んでいる。複数の偶数番切欠き部75のうちの他の切欠き部に関しても、同様に、正弦曲線51のうちの位相が2π/3+2πiから4π/3+2πiまでの120°分の範囲に対応する部分を含み、正弦曲線51のうちの変曲点に重なるように、形成されている。すなわち、複数の偶数番流路壁72−1は、複数の偶数番流路壁要素76−1〜76−m2が正弦曲線51のうちの位相がπ+2πiである変曲点に重ならないように、複数の偶数番切欠き部75が形成されている。複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2のうちの偶数番流路壁72−1と異なる他の偶数番流路壁も、偶数番流路壁72−1と同様に、形成されている。
図10は、奇数番流路壁要素74−1の一例を示す平面図である。奇数番流路壁要素74−1は、図10に示されているように、頭部77と尾部78とを備えている。頭部77は、奇数番流路壁要素74−1のうちの流れ方向29の一端79(「切欠き部に隣接する端」に対応)を形成し、1つの奇数番切欠き部73に隣接している。頭部77は、奇数番流路壁要素74−1の一端79に向かって細くなるように形成され、すなわち、奇数番流路壁要素74−1の一端79に近付くにつれ、幅がなだらかに小さくなるように形成されている。尾部78は、奇数番流路壁要素74−1のうちの頭部77が形成される一端79の反対側の他端80(「切欠き部に隣接する端」に対応)を形成し、1つの奇数番切欠き部73に隣接している。尾部78は、奇数番流路壁要素74−1の流れ方向29の他端80に向かって細くなるように形成され、すなわち、奇数番流路壁要素74−1の他端80に近付くにつれ、幅がなだらかに小さくなるように形成されている。複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m1のうちの奇数番流路壁要素74−1と異なる他の流路壁要素も、奇数番流路壁要素74−1と同様に形成されている。
複数の偶数番流路壁要素76−1〜76−m2は、複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m1と同様に形成され、複数の偶数番流路壁要素76−1〜76−m2の各々は、奇数番流路壁要素74−1と鏡像対称であるものから形成されている。これにより、たとえば、スパン方向44に隣り合う奇数番流路壁要素と偶数番流路壁要素の端部どうしがスパン方向に重なる部分が形成される。図9では、この重なる部分は、偶数番流路壁要素、奇数番流路壁要素それぞれの端部の位相が60°の範囲の部分である。さらに、実施例2の隔壁式熱交換器の第2熱交換器板は、実施例1の隔壁式熱交換器1の第2熱交換器板31のうちの複数の第2流路壁62−1〜62−nが、複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1と複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2と同様のものに置換されたものから形成されている。
実施例2の隔壁式熱交換器は、既述の実施例1の隔壁式熱交換器1と同様に、第1流体を複数の第1流路に流し、第2流体を複数の第2流路に流し、第1流体と第2流体との間で熱交換を行う。実施例2の隔壁式熱交換器は、既述の実施例1の隔壁式熱交換器1と同様に、第1流体と第2流体とを局所的に常時攪乱することができ、第1流体と第2流体との間の熱交換の伝熱性能を向上させることができる。実施例2の隔壁式熱交換器は、複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1と複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2との壁面が正弦曲線に沿うことにより、既述の実施例1の隔壁式熱交換器1と同様に、複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1と複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2との形状を最適化する作業を容易化することができる。
実施例2の隔壁式熱交換器は、複数の奇数番切欠き部73と複数の偶数番切欠き部75とが形成されていることにより、既述の実施例1の隔壁式熱交換器に比較して、第1流体が複数の第1流路を流れるときの摩擦抵抗が低減され、その結果、圧力損失が低減される。隔壁式熱交換器は、複数の奇数番切欠き部73と複数の偶数番切欠き部75とが形成されていることにより、いわゆる前縁効果を発生させ、既述の実施例1の隔壁式熱交換器に比較して、第1流体と第1隔壁45および第2隔壁61との間の熱伝達率を向上させることができる。流体の正弦波状の流れは、流路壁の正弦曲線51の極大点、または、極小点に重なる部分の前後で、流れる流体に働く遠心力の大きい部分である複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m1、および、複数の偶数番流路壁要素76−1〜76−m2で、主に形成される。従って、正弦曲線51の変曲点に重なり、流れる流体に働く遠心力の小さい部分を除去した形状として複数の奇数番切欠き部73と複数の偶数番切欠き部75を形成しても正弦波状の流れは乱されない。このような切欠き部を設けることにより、正弦波状の流れを維持しながら、流体が流路を流れるときの流路壁による摩擦抵抗を低減させることができる。
[実施例2の隔壁式熱交換器の効果]
実施例2の隔壁式熱交換器の複数の流路壁の各々は、複数の切欠き部が正弦曲線の周期ごとに形成されることにより、複数の流路壁要素に分割されている。この複数の切欠き部は、複数の奇数番切欠き部73と複数の偶数番切欠き部75との両方を示している。すなわち、複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1の各々は、複数の奇数番切欠き部73が正弦曲線の周期ごとに形成されることにより、複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m1に分割されている。このとき、複数の奇数番切欠き部73は、正弦曲線51の変曲点に重なっている。正弦曲線51の極大点と極小点はそれぞれ、複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m1に形成される壁面に重なっている。複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2の各々は、複数の偶数番切欠き部75が正弦曲線の周期ごとに形成されることにより、複数の偶数番流路壁要素76−1〜76−m2に分割されている。このとき、複数の偶数番切欠き部75は、正弦曲線51の変曲点に重なっている。正弦曲線51の極大点と極小点はそれぞれ、複数の偶数番流路壁要素76−1〜76−m2に形成される壁面に重なっている。
このような隔壁式熱交換器は、複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1に複数の奇数番切欠き部73が形成されていることにより、第1流体が流れるときに複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1から受ける摩擦力を低減することができる。実施例2の隔壁式熱交換器は、複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1と第1流体との間に作用する摩擦力を低減することにより、複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1の間に形成される複数の第1流路の流動抵抗を低減することができる。実施例2の隔壁式熱交換器1は、複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m1が形成されていることにより、作動流体が流路壁要素のエッジ(切欠き部に隣接する端)となる頭部77、尾部78に接触する機会を与えて、いわゆる前縁効果を発生させ、第1流体と第1隔壁45および第2隔壁61との間の熱伝達率を向上させることができる。
また、実施例2の隔壁式熱交換器の複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m1は、端に近付くにつれてなだらかに幅が小さくなるように、形成されている。このような隔壁式熱交換器は、複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m1の頭部77と尾部78とが端に近付くにつれなだらかに幅が小さくなっていることにより、第1流体が流れるときの複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m1による形状損失を低減することができる。ここでいう形状損失とは、流路壁面の形状によって作動流体が受ける損失である。流路壁面の形状がなだらかでない場合、流路壁面との摩擦や衝突によって作動流体が受ける形状損失は大きくなる。
また、実施例2の隔壁式熱交換器の複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m1と複数の偶数番流路壁要素76−1〜76−m2とは、スパン方向44に隣り合うものどうしの端部がスパン方向44に重なる部分が形成される。これにより、重なる部分がない流路の幅は広く、重なる部分のある流路の幅は狭くなり、流路の幅の変化は周期的に繰り返される。この流路の幅の周期的な変化(流路の幅の拡縮)は流路を流れる流体に周期的な攪乱を与えて、既述の実施例1の隔壁式熱交換器に比較して、第1流体と第1隔壁45および第2隔壁61との間の熱伝達率を向上させることができる。この結果、流路壁71−1〜71−n1、72−1〜72−n2の幅の周期的な変化による流体の局所的な常時攪乱と、切欠き部73、75を設けることにより形成される流路壁流路壁要素74−1〜74−m1、76−1〜76−m2による前縁効果と合わせて、既述の実施例1の隔壁式熱交換器に比較して、さらなる伝熱性能の向上を図ることができる。
実施例3の隔壁式熱交換器は、図11に示されているように、既述の実施例2の隔壁式熱交換器の複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1が他の複数の奇数番流路壁81−1〜81−n1に置換され、複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2が他の複数の偶数番流路壁82−1〜82−n2に置換されている。図11は、実施例3の隔壁式熱交換器に形成される複数の奇数番流路壁81−1〜81−n1と複数の偶数番流路壁82−1〜82−n2とを示す平面図である。複数の奇数番流路壁81−1〜81−n1と複数の偶数番流路壁82−1〜82−n2とは、既述の複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1と複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2と同様に、第1熱交換流路用凹部26に形成され、それぞれの一つが、スパン方向(「正弦曲線51の振幅方向」に対応)44に所定のピッチPで配置された複数の正弦曲線51の一つに重なるように形成されている。すなわち、複数の奇数番流路壁81−1〜81−n1と複数の偶数番流路壁82−1〜82−n2とは、スパン方向44に交互に並んでいる。複数の奇数番流路壁81−1〜81−n1のうちの1つの奇数番流路壁81−1は、既述の奇数番流路壁71−1と同様に、流路壁のない複数の奇数番切欠き部73が形成され、複数の奇数番流路壁要素83−1〜83−m1に分割されている。複数の偶数番流路壁82−1〜82−n2のうちの1つの偶数番流路壁82−1は、既述の偶数番流路壁72−1と同様に、流路壁のない複数の偶数番切欠き部75が形成され、複数の偶数番流路壁要素84−1〜84−m2に分割されている。
図12は、実施例3の隔壁式熱交換器に形成される複数の奇数番流路壁81−1〜81−n1と複数の偶数番流路壁82−1〜82−n2とを概略的に示す説明図である。複数の奇数番流路壁要素83−1〜83−m1のうちの1つの奇数番流路壁要素83−1は、図12に示されているように、奇数番流路壁要素83−1に流路壁のない部分、つまり奇数番流路壁要素83−1の一部が除去された形状を有する要素内切欠き部89(「要素内切欠き部」に対応)が形成され、2つに分割されている。複数の奇数番流路壁要素83−1〜83−m1のうちの奇数番流路壁要素83−1と異なる他の奇数番流路壁要素も、奇数番流路壁要素83−1と同様にして、各々の一部を除去することで要素内切欠き部89が形成され、2つに分割されている。要素内切欠き部89は、正弦曲線51のうちの位相がπ+2πiである変曲点に重なるように奇数番流路壁要素83−1に形成され、たとえば、正弦曲線51のうちの位相が5π/6+2πiから7π/6+2πiまでの60°分の範囲に対応する部分に重なるように形成されている。また、複数の奇数番流路壁要素83−1〜83−m1は、正弦曲線51の極大点と極小点のそれぞれに対応する部分に重なるように形成されている。
複数の偶数番流路壁要素84−1〜84−m2のうちの1つの偶数番流路壁要素84−1は、奇数番流路壁要素83−1と同様にして、偶数番流路壁要素84−1に流路壁のない部分、つまり偶数番流路壁要素84−1の一部が除去された形状を有する要素内切欠き部90(「要素内切欠き部」に対応)が形成され、2つに分割されている。複数の偶数番流路壁要素84−1〜84−m2のうちの偶数番流路壁要素84−1と異なる他の偶数番流路壁要素も、偶数番流路壁要素84−1と同様にして、各々の一部を除去することで要素内切欠き部90が形成され、2つに分割されている。要素内切欠き部90は、正弦曲線51のうちの位相が2πiである変曲点に重なるように偶数番流路壁要素84−1に形成され、たとえば、正弦曲線51のうちの位相が−π/6+2πiからπ/6+2πiまでの60°分の範囲に対応する部分に重なるように形成されている。また、複数の偶数番流路壁要素84−1〜84−m2は、正弦曲線51の極大点と極小点のそれぞれに対応する部分に重なるように形成されている。
図13は、奇数番流路壁要素83−1を示す平面図である。奇数番流路壁要素83−1は、図13に示されているように、既述の奇数番流路壁要素74−1と同様に、正弦曲線51に沿うように形成され、頭部77と尾部78とを備えている。奇数番流路壁要素83−1は、頭部側エッジ部85と尾部側エッジ部86とを備えている。頭部側エッジ部85は、要素内切欠き部89に隣接し、要素内切欠き部89より頭部77の側に配置されている。頭部側エッジ部85は、要素内切欠き部89に面する頭部側端面87が形成されている。頭部側端面87は、正弦曲線51に直交する平面に沿うように形成されている。尾部側エッジ部86は、要素内切欠き部89より尾部78の側に配置され、要素内切欠き部89に面する尾部側端面88が形成されている。尾部側端面88は、正弦曲線51に直交する平面に沿うように形成されている。ここで、頭部側端面87および尾部側端面88の形状は正弦曲線51に直交する平面に沿うように形成される形状だけでなく、要素内切欠き部89に対して凸または凹となるU字形状など、奇数番流路壁要素83−1をエッチング等で形成する際に生じる形状を含む。
複数の奇数番流路壁要素83−1〜83−m1のうちの奇数番流路壁要素83−1と異なる奇数番流路壁要素に関しても、奇数番流路壁要素83−1と同様に、奇数番流路壁要素が沿う正弦曲線の変曲点に重なる要素内切欠き部89が形成されている。複数の偶数番流路壁要素84−1〜84−m2は、複数の奇数番流路壁要素83−1〜83−m1と同様に形成され、複数の偶数番流路壁要素84−1〜84−m2の各々は、奇数番流路壁要素83−1と鏡像対称であるものから形成されている。実施例3の隔壁式熱交換器の第2熱交換器板に関しても、第2熱交換流路用凹部36に複数の奇数番流路壁81−1〜81−n1と複数の偶数番流路壁82−1〜82−n2と同様のものが形成されている。
実施例3の隔壁式熱交換器は、既述の実施例2の隔壁式熱交換器と同様に、第1流体を複数の第1流路に流し、第2流体を複数の第2流路に流し、第1流体と第2流体とを熱交換する。実施例3の隔壁式熱交換器は、既述の実施例2の隔壁式熱交換器と同様に、第1流体と第2流体とを局所的に常時攪乱することができ、第1流体と第2流体とを熱交換する伝熱性能を向上させることができる。実施例3の隔壁式熱交換器は、複数の奇数番流路壁81−1〜81−n1と複数の偶数番流路壁82−1〜82−n2との壁面が正弦曲線に沿うことにより、既述の実施例2の隔壁式熱交換器と同様に、複数の奇数番流路壁81−1〜81−n1と複数の偶数番流路壁82−1〜82−n2との形状を最適化する作業を容易化することができる。
実施例3の隔壁式熱交換器は、複数の要素内切欠き部89が形成されていることにより、既述の実施例2の隔壁式熱交換器に比較して、第1流体が複数の第1流路を流れるときの摩擦抵抗が低減され、圧力損失が低減される。実施例3の隔壁式熱交換器は、頭部側エッジ部85と尾部側エッジ部86とにより、既述の実施例2の隔壁式熱交換器に比較して、いわゆる前縁効果を発生させる機会を増やして、第1流体と第1隔壁45および第2隔壁61との間の熱伝達率を向上させることができる。実施例3の隔壁式熱交換器は、同様に、第2流体と第1隔壁45および第2隔壁61との間の熱伝達率を向上させることができる。
実施例4の隔壁式熱交換器は、図14に示されているように、既述の実施例2の隔壁式熱交換器の複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1が他の複数の奇数番流路壁121−1〜121−n1に置換され、複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2が他の複数の偶数番流路壁122−1〜122−n2に置換されている。図14は、実施例4の隔壁式熱交換器に形成される複数の奇数番流路壁121−1〜121−n1と複数の偶数番流路壁122−1〜122−n2とを示す平面図である。複数の奇数番流路壁121−1〜121−n1と複数の偶数番流路壁122−1〜122−n2とは、既述の複数の奇数番流路壁71−1〜71−n1と複数の偶数番流路壁72−1〜72−n2と同様に、第1熱交換流路用凹部26に形成され、それぞれの一つが、スパン方向(「正弦曲線51の振幅方向」に対応)44に所定のピッチPで配置された複数の正弦曲線51の一つに重なるように形成されている。すなわち、複数の奇数番流路壁121−1〜121−n1と複数の偶数番流路壁122−1〜122−n2とは、スパン方向(「正弦曲線51の振幅方向」に対応)44に交互に並んでいる。つまり複数の奇数番流路壁121−1〜121−n1のうちの1つと複数の偶数番流路壁122−1〜122−n2のうちの1つはスパン方向に隣り合って配置されており、スパン方向に隣り合って配置された奇数番流路壁と偶数番流路壁のいずれか一方を一方の流路壁、他方を他方の流路壁と呼ぶことがある。なお、以下の説明では一方の流路壁を偶数番流路壁、他方の流路壁を奇数番流路壁とする場合があるが、一方の流路壁を奇数番流路壁、他方の流路壁を奇数番流路壁としても実質的に同じものである。複数の奇数番流路壁121−1〜121−n1のうちの1つの奇数番流路壁121−1は、既述の奇数番流路壁71−1と同様に、奇数番流路壁48−1に流路壁のない複数の奇数番切欠き部73が形成され、奇数番流路壁121−1は、この複数の奇数番切欠き部73により複数の奇数番主流路壁要素123−1〜123−m1に分割されている。複数の偶数番流路壁122−1〜122−n2のうちの1つの偶数番流路壁122−1は、既述の偶数番流路壁72−1と同様に、偶数番流路壁48−2に流路壁のない複数の偶数番切欠き部75が形成され、偶数番流路壁122−1は、この複数の偶数番切欠き部75により複数の偶数番主流路壁要素124−1〜124−m2に分割されている。
図15は、実施例4の隔壁式熱交換器に形成される複数の奇数番流路壁121−1〜121−n1と複数の偶数番流路壁122−1〜122−n2とを概略的に示す説明図である。複数の奇数番主流路壁要素123−1〜123−m1のうちの1つの奇数番主流路壁要素123−1は、図15に示されているように、奇数番主流路壁要素123−1に流路壁のない部分、つまり奇数番主流路壁要素123−1の一部が除去された形状を有する要素内切欠き部89(「要素内切欠き部」に対応、本実施例では奇数番要素内切欠き部89とも呼ぶ)が形成され、第1奇数番副流路壁要素123−1Aと第2奇数番副流路壁要素123−1Bの2つに分割されている。図15では第1奇数番副流路壁要素123−1Aは上に凸の形状、第2奇数番副流路壁要素123−1Bは下に凸の形状にそれぞれ形成されている。複数の奇数番主流路壁要素123−1〜123−m1のうちの奇数番主流路壁要素123−1と異なる他の奇数番主流路壁要素123−2も、奇数番主流路壁要素123−1と同様にして、各々に流路壁のない部分、つまり各々の一部が除去された形状を有する奇数番要素内切欠き部89が形成され、第1奇数番副流路壁要素123−2Aと第2奇数番副流路壁要素123−2Bの2つに分割されている。
奇数番要素内切欠き部89は、正弦曲線51のうちの位相が(2i+1)πである変曲点(正弦波が上に凸から下に凸に変わる点)に重なるように複数の奇数番主流路壁要素123−1〜123−m1に形成されている。また、複数の奇数番主流路壁要素123−1〜123−m1は、正弦曲線51の極大点と極小点のそれぞれに重なるように形成されている。
複数の偶数番主流路壁要素124−1〜124−m2のうちの1つの偶数番主流路壁要素124−1は、奇数番主流路壁要素123−1と同様にして、偶数番主流路壁要素124−1に流路壁のない部分、つまり奇数番主流路壁要素124−1の一部が除去された形状を有する要素内切欠き部90(「要素内切欠き部」に対応、本実施例では偶数番要素内切欠き部90とも呼ぶ)が形成され、第1偶数番副流路壁要素124−1Aと第2偶数番副流路壁要素124−1Bの2つに分割されている。図15では第1偶数番副流路壁要素124−1Aは上に凸の形状、第2偶数番副流路壁要素124−1Bは下に凸の形状にそれぞれ形成されている。複数の偶数番主流路壁要素124−1〜124−m2のうちの偶数番主流路壁要素124−1と異なる他の偶数番主流路壁要素124−2も、偶数番主流路壁要素124−1と同様にして、各々に流路壁のない部分、つまり各々の一部が除去された形状を有する偶数番要素内切欠き部90が形成され、第1偶数番副流路壁要素124−2Aと第2偶数番副流路壁要素124−2Bの2つに分割されている。
偶数番要素内切欠き部90は、正弦曲線51のうちの位相が2πiである変曲点(正弦波が下に凸から上に凸に変わる点)に重なるように偶数番主流路壁要素124−1に形成されている。また、複数の偶数番主流路壁要素124−1〜124−m2は、正弦曲線51の極大点と極小点のそれぞれに重なるように形成されている。
図16は、他方の流路壁である奇数番流路壁121−1〜121−n1及び一方の流路壁である偶数番流路壁122−1〜122−n2の正弦曲線51の位相範囲毎の副流路壁要素の有無の一例を示す説明図である。すでに説明したように、一方の流路壁である偶数番流路壁122−1〜122−n2の1つと他方の流路壁である奇数番流路壁121−1〜121−n1の1つは、正弦曲線51のスパン方向(振幅方向)44に並んだ複数の正弦波状の流路壁のうち、隣り合う二つの流路壁を形成している。ここで、奇数番主流路壁要素123−1について、奇数番主流路壁要素123−1が重なる正弦曲線51のうちの位相が2iπである変曲点(正弦波が下に凸から上に凸に変わる点)の位相をθ0とした場合、θ0から60°進んだ位相をθ2、θ2から90°進んだ位相をθ4、θ4から60°進んだ位相をθ5、θ5から90°進んだ位相をθ7とする。θ7から60°進んだ位相は一周期後の変曲点θ0となる。この位相関係は周期的に繰り返される。
この場合、奇数番主流路壁要素123−1が重なる正弦曲線51のθ0〜θ2の位相θの範囲は奇数番切欠き部73の一部、正弦曲線51のθ2〜θ4の位相θの範囲は第1奇数番副流路壁要素123−1A、正弦曲線51のθ4〜θ5の位相θの範囲は奇数番要素内切欠き部89、正弦曲線51のθ5〜θ7の位相θの範囲は第2奇数番副流路壁要素123−1B、正弦曲線51のθ7〜θ0の位相θの範囲は奇数番切欠き部73の一部と重なるように形成されている。
また、偶数番主流路壁要素124−1について、偶数番主流路壁要素124−1が重なる正弦曲線51の変曲点をθ0とした場合、θ0から30°進んだ位相をθ1、θ1から90°進んだ位相をθ3、θ3から120°進んだ位相をθ6、θ6から90°進んだ位相をθ8とする。θ8から30°進んだ位相を変曲点となるθ0となる。この位相関係は周期的に繰り返される。
この場合、図16に示すように、偶数番主流路壁要素124−1が重なる正弦曲線51のθ0〜θ1の位相θの範囲は偶数番要素内切欠き部90の一部、正弦曲線51のθ1〜θ3の位相θの範囲は第1偶数番副流路壁要素124−1A、正弦曲線51のθ3〜θ6の位相θの範囲は偶数番切欠き部75、正弦曲線51のθ6〜θ8の位相θの範囲は第2奇数番副流路壁要素124−1B、正弦曲線51のθ8〜θ0の位相θの範囲は偶数番要素内切欠き部90の一部と重なるように形成されている。
複数の奇数番主流路壁要素123−1〜123−m1のうちの奇数番主流路壁要素123−1と異なる奇数番主流路壁要素に関しても、奇数番主流路壁要素123−1と同様に、奇数番主流路壁要素が沿う正弦曲線51のうちの位相が(2i+1)πである変曲点(正弦波が上に凸から下に凸に変わる点)に重なる奇数番要素内切欠き部89が形成されている。複数の偶数番主流路壁要素124−1〜124−m2も、複数の奇数番主流路壁要素123−1〜123−m1と同様に形成され、複数の偶数番主流路壁要素124−1〜124−m2の各々は、奇数番主流路壁要素123−1と鏡像対称であるものから形成され、偶数番主流路壁要素が沿う正弦曲線51のうちの位相が2iπである変曲点(正弦波が下に凸から上に凸に変わる点)に重なる偶数番要素内切欠き部90が形成されている。実施例4の隔壁式熱交換器の第2熱交換器板に関しても、第2熱交換流路用凹部36に複数の奇数番流路壁121−1〜121−n1と複数の偶数番流路壁122−1〜122−n2と同様のものが形成されている。なお、奇数番流路壁121−1〜121−n1及び偶数番流路壁122−1〜122−n2は、上記で説明した形状に加えて、上記で説明した形状に対して幾何学的に対称な形状のもの、または相似な形状のものを含む。
実施例4の隔壁式熱交換器は、既述の実施例2の隔壁式熱交換器と同様に、第1流体を複数の第1流路に流し、第2流体を複数の第2流路に流し、第1流体と第2流体とを熱交換する。実施例4の隔壁式熱交換器は、既述の実施例2の隔壁式熱交換器と同様に、第1流体と第2流体とを局所的に常時攪乱することができ、第1流体と第2流体とを熱交換する際の伝熱性能を向上させることができる。実施例4の隔壁式熱交換器は、複数の奇数番流路壁121−1〜121−n1と複数の偶数番流路壁122−1〜122−n2のそれぞれの壁面が正弦曲線に沿うことにより、既述の実施例2の隔壁式熱交換器と同様に、複数の奇数番流路壁121−1〜121−n1と複数の偶数番流路壁122−1〜122−n2のそれぞれの形状を最適化する作業を容易化することができる。
実施例4の隔壁式熱交換器は、既述の実施例3と同様に、複数の奇数番要素内切欠き部89が形成されていることにより、既述の実施例2の隔壁式熱交換器に比較して、第1流体が複数の第1流路を流れるときの摩擦抵抗が低減され、圧力損失が低減される。実施例4の隔壁式熱交換器は、既述の実施例3と同様に、図13に示す頭部側エッジ部85と尾部側エッジ部86とにより、既述の実施例2の隔壁式熱交換器に比較して、いわゆる前縁効果を発生させる機会を増やして、第1流体と第1隔壁45および第2隔壁61との間の熱伝達率を向上させることができる。実施例4の隔壁式熱交換器は、既述の実施例3と同様に、第2流体と第1隔壁45および第2隔壁61との間の熱伝達率を向上させることができる。
上下を隔壁で挟まれた流路壁の間を流れる作動流体の流れには、流路壁に形成された奇数番切欠き部73、偶数番切欠き部75、奇数番要素内切欠き部89及び偶数番要素内切欠き部90により流路の断面積が変化することで、速度変化と圧力変化が生じる。速度はベクトル量で大きさと方向を持つため、作動流体の速度変化は大きさ(流速)の変化と方向(流れの向き)の変化を含む。ベルヌーイの定理、例えば「密度ρ[kg/m3]×(速度v[m/s])2/2+圧力p[Pa]=一定」の式が示すように作動流体の速度が速くなると圧力は低くなり、速度が遅くなると圧力は高くなる。従って、断面積が小さい狭い流路と断面積が大きい広い流路を流れる作動流体の流速と圧力を比べると、狭い流路を流れる作動流体の流速が速く圧力が低いのに対して、広い流路を流れる作動流体の流速は遅く圧力は高くなる。また、狭い流路から広い流路に、流路の断面積が急激に変化すると渦が発生する。
ここで、図17と図18をもとに奇数番要素内切欠き部89、偶数番要素内切欠き部90が形成されない場合と形成された場合の流路の断面積の変化の違いを考える。例えば、奇数番流路壁71−1、71−2、71−3と偶数番流路壁72−1、72−2に注目する。図17において奇数番流路壁71−1、71−2、71−3は、それぞれに奇数番切欠き部73が形成されることで、複数の奇数番流路壁要素74−1〜74−m2を有する。偶数番流路壁72−1、72−2も、それぞれに偶数番切欠き部75が形成されることで、複数の偶数番流路壁要素76−1〜76−m2を有する。尚、図17に示す例では、奇数番流路壁71−1、71−2、71−3のそれぞれに奇数番要素内切欠き部89はなく、偶数番流路壁72−1、72−2のそれぞれに偶数番要素内切欠き部90が形成されていない。この場合、各々の流路壁が沿う正弦曲線51に直交する方向に見た流路幅は、例えば、隣り合う奇数番流路壁71−2の奇数番流路壁要素74−1と偶数番流路壁72−2の偶数番流路壁要素76−1との間隔W11と、偶数番流路壁72−2に形成された偶数番切欠き部75を介して隣り合う奇数番流路壁71−2の奇数番流路壁要素74−1と奇数番流路壁71−3の奇数番流路壁要素74−1との間隔W12との間で変化する。
これに対して、図18に示すように奇数番要素内切欠き部89、偶数番要素内切欠き部90が形成された場合は、上記の隣り合う奇数番流路壁121−1の第2奇数番副流路壁要素123−1Bと偶数番流路壁122−1の第2偶数番流路壁要素124−1Bとの間隔W21と、偶数番流路壁122−1、122−2のそれぞれに形成された偶数番切欠き部75及び、奇数番流路壁121−2に形成された奇数番要素内切欠き部89を介して隣り合う奇数番流路壁121−1の第2奇数番副流路要素123−1Bと奇数番流路壁121−3の第1奇数番副流路要素123−1Aとの間隔W22との間で変化する。つまり、奇数番要素内切欠き部89、偶数番要素内切欠き部90が形成された場合の流路幅の変化(W22−W21)は、これら奇数番要素内切欠き部89,偶数番要素内切欠き部90が形成されない場合の流路幅(図17参照)の変化(W12−W11)に比べて2倍変化することがわかる。
流路幅の変化、つまり流路の断面積の変化は、上記のベルヌーイの定理より流れる作動流体の流速と圧力の変化を生じさせ、流路幅の変化が大きいほど流れる作動流体の流速と圧力の変化が大きいことになる。流れる作動流体の流速と圧力の変化が大きいと作動流体が受ける攪乱も大きくなり、第1流体と第1隔壁45および第2隔壁61との間の熱伝達率が前縁効果の寄与により大きく向上し、隔壁式熱交換器の伝熱性能を向上させることができる。
また、図19にハッチングを付けて示す奇数番流路壁121−1及び121−2、偶数番流路壁122−1に着目すると、上下を二つの奇数番流路壁121−1の第1奇数番副流路壁要素123−1A及び奇数番流路壁121−2の第1奇数番副流路壁要素123−1Aで挟まれた偶数番流路壁122−1の第1偶数番副流路壁要素124−1A及び上下を奇数番流路壁121−1の第2奇数番副流路壁要素123−1Bと奇数番流路壁121−2の第2奇数番副流路壁要素123−1Bで挟まれた偶数番流路壁122−1の第2偶数番副流路壁要素124−1Bは、流れの中に置かれた物体、たとえば川の中によくみられる“中州”と同じ働きをする。図19の左側を上流側としたとき、この第1偶数番副流路壁要素124−1Aと第2偶数番副流路壁要素124−1Bは、流れの力を受け、第1偶数番副流路壁要素124−1Aの頭部78と第2偶数番副流路壁要素124−1Bのエッジ部86で前縁効果を発生する。また、作動流体の流れは、偶数番流路壁122−1の第1偶数番流路壁要素124−1Aとその両側の奇数番流路壁121−1の第1奇数番副流路壁要素123−1Aと奇数番流路壁121−2の第1奇数番副流路壁要素123−1Aとの間で流路幅が縮小する縮流を形成し、偶数番流路壁122−1の第1偶数番流路壁要素124−1Aを通過した後に流路幅が拡大する拡流を形成し、奇数番流路壁121−1の第2奇数番副流路壁要素123−1Bと奇数番流路壁121−2の第2奇数番副流路壁要素123−1Bとの間に流入して偶数番流路壁122−1の第2偶数番流路壁要素124−1Bにより流路幅が縮小する縮流を形成する。このように作動流体の流れが縮流と拡流を繰り返すことにより流れへの攪乱効果を得ることができる。
正弦波状の流路壁の分割により得られる前縁効果について、流体の振る舞いに基づいて説明する。ベルヌーイの定理について上記で説明したように、広い流路を流れる作動流体の圧力は狭い流路を流れる作動流体の圧力より大きい。このため、図19において点X1の圧力をP1、点X2の圧力をP2とすると、P2>P1となり、奇数番流路壁121−1と121−2との間を流れる作動流体には、奇数番流路壁121−1から奇数番流路壁121−2に向かう方向に力F1が加わる。この力F1により、奇数番流路壁121−1の第2奇数番副流路壁要素123−1Bのエッジ点Y1、奇数番流路壁121−2の第1奇数番副流路壁要素123−1Aのエッジ点Y2において剥離流れが生じる。さらに作動流体が前に進むと力F1と同じ原理で発生する力F2により、偶数番流路壁122−1の第2偶数番副流路壁要素124−1Bのエッジ点Y3、奇数番流路壁121−2の第2奇数番副流路壁要素123−1Bのエッジ点Y4において剥離流れが生じる。このように流路壁要素のエッジ点で剥離流れが生じることでさらに前縁効果が得られ、伝熱促進に大きく寄与することができる。
実施例5の隔壁式熱交換器は、既述の実施例3の隔壁式熱交換器の複数の奇数番流路壁要素83−1〜83−m1が他の複数の奇数番流路壁要素に置換され、複数の偶数番流路壁要素84−1〜84−m2が他の複数の偶数番流路壁要素に置換されている。また、実施例5の隔壁式熱交換器は、既述の実施例4の隔壁式熱交換器の複数の奇数番主流路壁要素123−1〜123−m1が他の複数の奇数番主流路壁要素に置換され、複数の偶数番主流路壁要素124−1〜124−m2が他の複数の偶数番流路壁要素に置換されている。図20は、実施例5の隔壁式熱交換器に形成される複数の奇数番流路壁要素のうちの1つの奇数番流路壁要素91および1つの奇数番主流路壁要素91を示す平面図である。図20に示されているように、奇数番流路壁要素91は、既述の奇数番流路壁要素83−1と同様に形成され、頭部77と尾部78とを備え、頭部側エッジ部85と尾部側エッジ部86とを備えている。また、奇数番主流路壁要素91は既述の奇数番主流路壁要素123−1と同様に形成され、頭部77と尾部78とを備え、頭部側エッジ部85と尾部側エッジ部86とを備えている。奇数番流路壁要素91および奇数番主流路壁要素91は、それぞれ中間流路壁要素92(「中間流路壁要素」に対応)をさらに備えている。中間流路壁要素92は、円柱状に形成されている。中間流路壁要素92は、要素内切欠き部89が形成されている領域に配置され、奇数番流路壁要素91および奇数番主流路壁要素91が沿う正弦曲線51の変曲点に重なるように配置されている。なお、奇数番流路壁要素91および奇数番主流路壁要素91の各々は、中間流路壁要素92を設けることにより、図13に示す既述の実施例3および実施例4の隔壁式熱交換器に比較して、頭部側エッジ部85と尾部側エッジ部86との間の距離である要素内切欠き部89の長さDを大きくすることができる。複数の流路壁要素のうちの奇数番流路壁要素91および奇数番主流路壁要素91と異なる他の流路壁要素も、奇数番流路壁要素91および奇数番主流路壁要素91と同様に、中間流路壁要素92を備えている。すなわち、中間流路壁要素92は、既述の実施例3および実施例4の隔壁式熱交換器の複数の流路壁の各々に周期Tごとに周期的に形成されている。複数の偶数番流路壁要素は、複数の奇数番流路壁要素と同様に形成され、既述の実施例3の複数の偶数番流路壁要素および既述の実施例4の複数の偶数番主流路壁要素の各々は、奇数番流路壁要素91および奇数番主流路壁要素91と鏡像対称であるものから形成されている。
実施例5の隔壁式熱交換器は、既述の実施例3および実施例4の隔壁式熱交換器と同様に、第1流体と第2流体とを熱交換する。実施例5の隔壁式熱交換器は、既述の実施例3および実施例4の隔壁式熱交換器と同様に、第1流体と第2流体とを局所的に常時攪乱することができ、第1流体と第2流体とを熱交換する伝熱性能を向上させることができる。
実施例5の隔壁式熱交換器は、中間流路壁要素92を形成し要素内切欠き部89の長さDを大きくすることにより、実施例3および実施例4の隔壁式熱交換器に比較して、流体が流路を流れるときの流路壁による摩擦抵抗を低減させることができる。また、中間流路壁要素92は奇数番流路壁要素91および奇数番主流路壁要素91に沿って流れる流体の流れをガイドするとともに、要素内切欠き部89の長さDを大きくしたことにより奇数番流路壁要素および偶数番流路壁要素と第1隔壁45および第2隔壁61、または、奇数番主流路壁要素および偶数番主流路壁要素と第1隔壁45および第2隔壁61が接合される部分が減少し、第1隔壁45および第2隔壁61が積層方向に変形しやすくなることで生じる、第1隔壁45および第2隔壁61の強度の低下を補強する。また、頭部側エッジ部85と尾部側エッジ部86とが第1流体から受ける衝撃を低減することができる。
ところで、中間流路壁要素92は、奇数番流路壁要素91および奇数番主流路壁要素91が沿う正弦曲線51の変曲点に重なるように配置されているが、変曲点に重ならないように、形成されてもよい。中間流路壁要素92は、変曲点に重ならないように形成された場合でも、要素内切欠き部89が形成されている領域に配置されることにより、上記と同様の作用・効果を得ることができる。また、中間流路壁要素92は、円柱状に形成されているが、円柱状以外の形状に形成されてもよい。中間流路壁要素92は、円柱状以外の形状に形成された場合でも、上記と同様の作用・効果を得ることができる。
図21は、実施例5の隔壁式熱交換器と比較例の隔壁式熱交換器とにおける、熱通過率Kと、熱通過率Kと伝熱面積との積KAとを示すグラフである。比較例の隔壁式熱交換器は、いわゆるプレート式熱交換器である。図21のグラフは、実施例5の隔壁式熱交換器における積KAと、比較例の隔壁式熱交換器における積KAとが同程度であることを示し、比較例の隔壁式熱交換器が実施例5の隔壁式熱交換器と同等の熱交換能力を有するものであることを示している。図21のグラフは、実施例5の隔壁式熱交換器の熱通過率Kが、比較例の隔壁式熱交換器の熱通過率Kの概ね10倍であることを示し、実施例5の隔壁式熱交換器の熱通過率Kが、比較例の隔壁式熱交換器の熱通過率Kより大きいことを示している。すなわち、図21のグラフは、実施例5の隔壁式熱交換器が、実施例5の隔壁式熱交換器と同等の熱交換能力を有するプレート式熱交換器に比較して、熱交換する伝熱性能が高いことを示している。
図22は、実施例5の隔壁式熱交換器の圧力損失と比較例の隔壁式熱交換器の圧力損失とを示すグラフである。図22のグラフは、実施例5の隔壁式熱交換器の圧力損失が、比較例の隔壁式熱交換器の圧力損失の44%であることを示し、実施例5の隔壁式熱交換器が、比較例の隔壁式熱交換器に比較して、圧力損失を低減することができることを示している。実施例5の隔壁式熱交換器の圧力損失が低減する理由としては、実施例5の隔壁式熱交換器の流路の水力直径が1.0mmより小さく、比較例の隔壁式熱交換器の流路の水力直径より小さいことが挙げられる。実施例5の隔壁式熱交換器の圧力損失が低減する理由としては、さらに、複数の奇数番流路壁および複数の奇数番主流路壁要素に複数の奇数番切欠き部73と複数の要素内切欠き部89とが形成されていること、複数の偶数番流路壁および複数の偶数番主流路壁要素に複数の偶数番切欠き部75と複数の要素内切欠き部90とが形成されていることが挙げられる。
ところで、実施例の隔壁式熱交換器の複数の第1流路壁48−1〜48−n(奇数番流路壁71−n1、偶数番流路壁72−n2、奇数番流路壁81−n1、偶数番流路壁82−n2、奇数番主流路壁121−n1、偶数番主流路壁122−n2を含む。以下の説明では第1流路壁48−1〜48−nを代表として用いる)は、第1側流路壁面52と第2側流路壁面53が、複数の第1流路壁48−1〜48−nが重なる正弦曲線51をオフセットした二つの正弦曲線にそれぞれ沿って形成されているが、正弦曲線51の振幅を変えた二つの正弦曲線に沿うように形成されてもよい。図23は、変形例の隔壁式熱交換器が備える1つの流路壁の一部を示す平面図である。その流路壁101は、図23に示されているように、正弦曲線51に沿うように形成され、複数の第1側部分103と複数の第2側部分104とから形成されている。複数の第1側部分103は、正弦曲線51のうちの上に凸である部分に重なっている。複数の第2側部分104は、正弦曲線51のうちの下に凸である部分に重なっている。複数の第1側部分103は、第1凸面流路壁面105と第1凹面流路壁面106とが形成されている。第1凸面流路壁面105は、複数の第1側部分103の第1側壁46の側に形成されている。第1凹面流路壁面106は、複数の第1側部分103の第2側壁47の側に形成されている。
複数の第2側部分104は、第2凸面流路壁面107と第2凹面流路壁面108とが形成されている。第2凸面流路壁面107は、複数の第2側部分104の第2側壁47の側に形成されている。第2凹面流路壁面108は、複数の第2側部分104の第1側壁46の側に形成されている。
第1凸面流路壁面105と第2凸面流路壁面107と(「第1壁面」に対応)は、1つの正弦曲線111(「第1正弦曲線」に対応)に沿うように、形成されている。正弦曲線111は、正弦曲線111の周期が正弦曲線51の周期と等しくなるように形成されている。さらに、正弦曲線111は、正弦曲線111の振幅が正弦曲線51の振幅より大きくなるように、たとえば、正弦曲線111の振幅が正弦曲線51の振幅Aを、1を超える数値倍(たとえば、1.2倍)に等しくなるように、形成されている。正弦曲線111は、さらに、正弦曲線111の複数の変曲点が正弦曲線51の複数の変曲点に重なるように、かつ、正弦曲線111の複数の変曲点で正弦曲線51に交差するように、形成されている。
第1凹面流路壁面106と第2凹面流路壁面108と(「第2壁面」に対応)は、1つの正弦曲線112(「第2正弦曲線」に対応)に沿うように、形成されている。正弦曲線112は、正弦曲線112の周期が正弦曲線51の周期と等しくなるように形成されている。正弦曲線112は、さらに、正弦曲線112の振幅が正弦曲線51の振幅より小さくなるように、たとえば、正弦曲線112の振幅が正弦曲線51の振幅Aを、1未満の正の数値倍(たとえば、0.8倍)に等しくなるように、形成されている。すなわち、正弦曲線112は、正弦曲線112の周期が正弦曲線111の周期と等しくなるように、かつ、正弦曲線112の振幅が正弦曲線111の振幅より小さくなるように、形成されている。正弦曲線112は、さらに、正弦曲線112の複数の変曲点が正弦曲線51の複数の変曲点に重なるように、かつ、正弦曲線112の複数の変曲点で正弦曲線51に交差するように、形成されている。すなわち、正弦曲線112は、正弦曲線112の複数の変曲点が正弦曲線111の複数の変曲点に重なるように、かつ、正弦曲線112の複数の変曲点で正弦曲線111に交差するように、形成されている。
隔壁式熱交換器は、複数の第1流路壁が流路壁101に置換された場合でも、複数の第1流路で第1流体が流れる方向を変化させることができる。このような隔壁式熱交換器は、さらに、複数の第1流路が位置により断面積が異なり、複数の第1流路を流れる第1流体の速さを変化させることができる。隔壁式熱交換器は、さらに、複数の第2流路壁が流路壁101に置換された場合でも、複数の第2流路で第2流体が流れる方向を変化させることができる。このような隔壁式熱交換器は、さらに、複数の第2流路が位置により断面積が異なり、複数の第2流路を流れる第2流体の速さを変化させることができる。この結果、このような隔壁式熱交換器は、既述の実施例の隔壁式熱交換器と同様に、複数の第1流路と複数の第2流路とをそれぞれ流れる第1流体と第2流体とを局所的に常時攪乱し、第1流体と第2流体とを熱交換する伝熱性能を向上させることができる。このような隔壁式熱交換器は、既述の実施例の隔壁式熱交換器と同様に、流路壁101に複数の切欠き部や中間流路壁要素を設けることで、摩擦抵抗の低減、前縁効果の発揮、形状損失の低減を実現し、第1流体と第2流体とを熱交換する伝熱性能を向上させることができる。このような隔壁式熱交換器は、さらに、流路壁101の壁面が正弦曲線に沿っていることにより、既述の実施例の隔壁式熱交換器と同様に、複数の第1流路と複数の第2流路との形状の入力・変更作業を容易化し、コンピュータシミュレーションによる形状の最適化を容易化することができる。
このような複数の第1流路壁と複数の第2流路壁とは、さらに、正弦曲線の変曲点に近付くにつれ幅が小さくなり、正弦曲線の変曲点に重なる部分で尖っている。このため、実施例2〜実施例5の隔壁式熱交換器の流路壁要素の頭部77と尾部78とは、このような複数の第1流路壁と複数の第2流路壁とが設けられたときに、流路壁要素の端に近付くにつれて幅がよりなだらかに小さくなるように形成されることができる。このような隔壁式熱交換器は、流路壁要素の壁面がよりなだらかに形成されることにより、既述の実施例2〜実施例5の隔壁式熱交換器に比較して、第1流路と第2流路において、流体力学における圧力損失の一つである形状損失係数で表現される形状損失を低減することができ、第1流路と第2流路との圧力損失を低減することができる。
ところで、既述の実施例2〜実施例5の隔壁式熱交換器は、頭部77と尾部78とが尖るように形成されているが、頭部77と尾部78とが尖らないように形成されてもよい。また、既述の実施例の隔壁式熱交換器は、第1側壁面41と第2側壁面42とがともに正弦曲線に沿っているが、正弦曲線に沿わなくてもよく、たとえば、第1側壁面41と第2側壁面42とは概ね平坦に形成されてもよい。これらのような場合も、隔壁式熱交換器は、複数の流路壁の壁面が正弦曲線に沿っていることにより、流体を局所的に常時攪乱して伝熱性能を向上させることができ、複数の流路壁の形状の最適化する作業を容易にすることができる。
以上のように奇数番切欠き部73、偶数番切欠き部75、奇数番要素内切欠き部(要素内切欠き部)89および偶数番要素内切欠き部(要素内切欠き部)90が形成された正弦波状の流路壁で形成された流路によれば、流路壁高さの制限により温度境界層の薄さが物理的に確保され、そのもとで作動流体の流れの変化と、エッジ構造による前縁効果と、渦の発生による乱流効果が得られ、伝熱促進可能な手段を温度境界層の薄さ、前縁効果の多く発生および流れへの攪乱をフル活用でき、これまでに類のない微細構造の伝熱促進効果を得ることができる。
なお、本実施例では奇数番要素内切欠き部(要素内切欠き部)89は複数の奇数番流路壁要素83−1〜83−m1、および、複数の奇数番流路壁要素123−1〜123−m1のそれぞれに1つ形成され、偶数番要素内切欠き部(要素内切欠き部)90は複数の偶数番流路壁要素84−1〜84−m2、および、複数の偶数番流路壁要素124−1〜124−m2のそれぞれに1つ形成されるものとして説明したが、奇数番要素内切欠き部(要素内切欠き部)89、偶数番要素内切欠き部(要素内切欠き部)90が形成される数は、それぞれ2つ以上であってもよい。
以上、実施例を説明したが、前述した内容により実施例が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。