以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
〈空調システムの全体構成〉
本実施形態の空調システム(10)は、複数の空気調和機(20,40)を備えている。複数の空気調和機(20,40)は、同一の室内空間(11)を空調の対象としている。本実施形態の空調システム(10)には、2台の空気調和機(第1空気調和機(20)と第2空気調和機(40))が設けられる。空調システム(10)は、3台以上の空気調和機を備えてもよい。第1空気調和機(20)と第2空気調和機(40)とは、基本的な構成は同じである。また、空調システム(10)は、各空気調和機(20,40)を制御するための制御装置(60)を備えている。
〈第1空気調和機〉
図1及び図2に示すように、第1空気調和機(20)は、室外に設置される第1室外ユニット(21)と、室内に設置される複数の第1室内ユニット(30)とを備えている。複数の第1室内ユニット(30)は、2本の連絡配管を介して第1室外ユニット(21)に並列に接続される。なお、第1室内ユニット(30)は、1台、2台、又は3台以上であってもよい。
第1空気調和機(20)は、冷媒が充填される第1冷媒回路(22)を備える。第1冷媒回路(22)では、冷媒が循環することで冷凍サイクルが行われる。第1冷媒回路(22)には、第1圧縮機(23)、第1室外熱交換器(24)、第1室外膨張弁(25)、第1四方切換弁(26)、及び複数の第1室内熱交換器(32)が接続される。
第1圧縮機(23)、第1室外熱交換器(24)、第1室外膨張弁(25)、及び第1四方切換弁(26)は、第1室外ユニット(21)に設けられる。第1圧縮機(23)は、容量が可変なインバータ式の圧縮機で構成される。第1圧縮機(23)は、インバータ装置の出力が制御されることで運転周波数(電動機の回転数)が調節可能に構成される。第1室外熱交換器(24)は、例えばフィンアンドチューブ式の熱交換器である。第1室外熱交換器(24)の近傍には、第1室外ファン(27)が設けられる。第1室外熱交換器(24)では、第1室外ファン(27)が送風する室外空気と冷媒とが熱交換する。第1室外膨張弁(25)は、開度が可変な電子膨張弁で構成される。第1四方切換弁(26)は、第1〜第4のポートを有する。第1ポートは、第1圧縮機(23)の吐出側に連通し、第2ポートは第1圧縮機(23)の吸入側に連通する。第3ポートは、第1室外熱交換器(24)のガス側端に連通し、第4ポートは第1室内熱交換器(32)の液側端に連通する。第1四方切換弁(26)は、第1ポートと第3ポートが連通し且つ第2ポートと第4ポートが連通する第1状態(図2の実線で示す状態)と、第1ポートと第4ポートが連通し且つ第2ポートと第3ポートが連通する第2状態(図2の破線で示す状態)とに切り換えられる。
各第1室内熱交換器(32)は、各第1室内ユニット(30)に1つずつ設けられる。第1室内熱交換器(32)は、第1室内ユニット(30)内の空気通路に配置される。第1室内熱交換器(32)の近傍(下流側)には、第1室内ファン(33)が設けられる。第1室内熱交換器(32)では、室内空間(11)から吸い込んだ室内空気(吸込空気)と冷媒とが熱交換する。第1室内熱交換器(32)で熱交換した空気は、吹出空気として室内空間(11)へ供給される。
第1室内ファン(33)は、例えば遠心ファンで構成され、ファンの風量が調節可能に構成される。本実施形態の第1室内ファン(33)の風量は、Lタップ(小風量)、Mタップ(中風量)、及びHタップ(大風量)の3段階に切換可能である。
各第1室内ユニット(30)には、第1吸込温度センサ(34)及び第1吸込湿度センサ(35)がそれぞれ1つずつ設けられる。第1吸込温度センサ(34)は、吸込空気の温度を検出する。第1吸込湿度センサ(35)は、吸込空気の湿度(絶対湿度)を検出する。
第1冷媒回路(22)では、第1冷凍サイクル(冷房サイクル)と、第2冷凍サイクル(暖房サイクル)とが切り換えて行われる。第1冷凍サイクルでは、第1四方切換弁(26)が第1状態となり、第1圧縮機(23)、第1室外ファン(27)、及び第1室内ファン(33)が運転される。これにより、第1冷凍サイクルでは、冷媒が第1室外熱交換器(24)で放熱(凝縮)し、第1室内膨張弁(31)で減圧され、第1室内熱交換器(32)で蒸発する。第2冷凍サイクルでは、第1四方切換弁(26)が第2状態となり、第1圧縮機(23)、第1室外ファン(27)、及び第1室内ファン(33)が運転される。これにより、第2冷凍サイクルでは、冷媒が第1室内熱交換器(32)で放熱(凝縮)し、第1室外膨張弁(25)で減圧され、第1室外熱交換器(24)で蒸発する。
〈第2空気調和機〉
図2に示すように、第2空気調和機(40)は、第1空気調和機(20)と同様の構成機器を備えている。つまり、第2空気調和機(40)は、第2室外ユニット(41)と複数の第2室内ユニット(50)とが接続され、冷媒が循環する第2冷媒回路(42)が構成される。
第2室外ユニット(41)には、第2圧縮機(43)、第2室外熱交換器(44)、第2室外膨張弁(45)、第2四方切換弁(46)、及び第2室外ファン(47)が設けられる。第2室内ユニット(50)には、第2室内熱交換器(52)、第2室内ファン(53)、第2吸込温度センサ(54)、第2吸込湿度センサ(55)が設けられる。第2冷媒回路(42)では、第1冷媒回路(22)と同様にして、第1冷凍サイクル(冷房サイクル)と第2冷凍サイクル(暖房サイクル)とが切り換えて行われる。第2空気調和機(40)の各機器の構成は、第1空気調和機(20)と同様であるので詳細な説明は省略する。
〈リモコン〉
図1に示すように、第1空気調和機(20)には、第1リモコン(36)が設けられる。第2空気調和機(40)には、第2リモコン(56)が設けられる。各リモコン(36,56)は、例えば室内の壁に設けられ、ユーザが操作可能に構成される。各リモコン(36,56)には、対応する空気調和機(20,40)の電源のON/OFF、運転モードの切り換え、吹出空気の風向の切り換え等を行うための操作部が設けられる。また、各リモコン(36,56)には、対応する空気調和機(20,40)の現在の運転モード、設定温度、設定湿度等を表示する表示部が設けられる。
〈制御装置〉
図1及び図3に示すように、空調システム(10)は、各空気調和機(20,40)を制御するための制御装置(60)(制御システム)を備えている。本実施形態の制御装置(60)は、第1ローカルコントローラ(61)、第2ローカルコントローラ(71)、通信端末(80)、ルータ(85)、及びクラウドサーバ(90)を含んでいる。
第1ローカルコントローラ(61)は、第1空気調和機(20)に対応して設けられる。第1ローカルコントローラ(61)は、第1冷媒回路(22)の各構成機器、第1室内ファン(33)等を制御可能に構成される。第1ローカルコントローラ(61)は、マイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリディバイス(具体的には半導体メモリ)とを用いて構成されている。
第1ローカルコントローラ(61)は、第1能力決定部(62)、第1能力制御部(63)、及び第1通信部(64)を備えている。第1能力決定部(62)は、第1空気調和機(20)の能力を決定するための演算部である。第1能力制御部(63)は、第1空気調和機(20)の能力を制御するための制御部である。
第1通信部(64)は、ルータ(85)を介してインターネット(86)に接続され、該インターネット(86)を経由してクラウドサーバ(90)と通信可能に構成される。第1通信部(64)とルータ(85)との間の通信は、有線方式で実現してもよいし、無線方式で実現してもよい。このような構成により、第1ローカルコントローラ(61)とクラウドサーバ(90)との間では、運転指令や制御パラメータ等の信号のやりとりが双方向に可能となっている。
第1ローカルコントローラ(61)は、第1空気調和機(20)の各第1室内ユニット(30)のサーモオフに係る判定、及び制御を行う第1サーモオフ制御部(65)を備えている。
第2ローカルコントローラ(71)は、第2空気調和機(40)に対応して設けられる。第2ローカルコントローラ(71)は、第2冷媒回路(42)の各構成機器、第2室内ファン(53)等を制御可能に構成される。第2ローカルコントローラ(71)は、マイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリディバイス(具体的には半導体メモリ)とを用いて構成されている。
第2ローカルコントローラ(71)は、第2能力決定部(72)、第2能力制御部(73)、及び第2通信部(74)を備えている。第2能力決定部(72)は、第2空気調和機(40)の能力を決定するための演算部である。第2能力制御部(73)は、第2空気調和機(40)の能力を制御するための制御部である。
第2通信部(74)は、ルータ(85)を介してインターネット(86)に接続され、該インターネット(86)を経由してクラウドサーバ(90)と通信可能に構成される。第2通信部(74)とルータ(85)との間の通信は、有線方式で実現してもよいし、無線方式で実現してもよい。
第2ローカルコントローラ(71)は、第2空気調和機(40)の各第2室内ユニット(50)のサーモオフに係る判定、及び制御を行う第2サーモオフ制御部(75)を備えている。
通信端末(80)は、ユーザが、詳細は後述する温湿度制御モードの運転を指令するための通信機器である。通信端末(80)は、例えばスマートフォンやタブレットPC等で構成される。通信端末(80)は、マイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリディバイス(具体的には半導体メモリ)とを有する。また、通信端末(80)は、表示部及び操作部を兼用するタッチパネル(81)と、インターネット(86)を経由してクラウドサーバ(90)と接続する通信部(82)とを有する。
通信端末(80)には、温湿度制御モードを実行するためのプログラム(制御用アプリケーション)が記憶されている。ユーザは、通信端末(80)のタッチパネル(81)を操作することにより、温湿度制御モードのON/OFFの切り換え、温湿度制御モードの室内の目標温度(Ts)の設定、温湿度制御モードの室内の目標湿度(Rs)の設定を行うことができる。
クラウドサーバ(90)は、インターネット(86)を経由して、第1ローカルコントローラ(61)、第2ローカルコントローラ(71)、及び通信端末(80)と双方向に通信可能に構成されている。クラウドサーバ(90)は、マイクロコンピュータと、該マイクロコンピュータを動作させるためのソフトウエアを格納するメモリディバイス(具体的には半導体メモリ)とを有する。
クラウドサーバ(90)は、運転判定部(91)及び能力決定部(92)を備えている。運転判定部(91)は、温湿度制御モードでの各種の運転(詳細は後述する)を切り換えるための判定動作を行う。能力決定部(92)は、温湿度制御モードの各運転において、各空気調和機(20,40)の目標蒸発温度、及び室内ファンの速度(ファンタップ)をそれぞれ決定する。クラウドサーバ(90)は、このようにして求めた運転パラメータを、インターネット(86)を経由して、各ローカルコントローラ(61,71)へ所定時間(例えば20秒)毎に送信する。
クラウドサーバ(90)は、潜顕分離運転において、各室内ユニット(30,50)の個別でのサーモオフを禁止させるための処理を行うように構成される。本実施形態のクラウドサーバ(90)は、サーモオフ判定温度(Toff)を置換するための置換判定部(93)を備える(詳細は後述する)。
−運転動作−
空調システム(10)の運転動作について詳細に説明する。
空調システム(10)では、温度制御モードと温湿度制御モードとが選択可能となっている。温度制御モードは、室内空間(11)の室内空気の温度のみを調節するための運転モードであり、冷房運転及び暖房運転を含んでいる。温度制御モードでは、室内空気の温度を目標値に近づける制御が行われる。温湿度制御モードは、室内空間(11)の室内空気の温度と湿度とを調節するための運転モードである。温湿度制御モードでは、1)除湿運転、2)非分離運転、3)潜顕分離運転、4)顕熱運転、及び5)潜熱運転を含んでいる。温湿度制御モードでは、室内の空気状態(温度及び湿度)に応じて、1)〜5)の運転が自動的に切り換えて実行される。これらの運転の詳細は後述する。
−温度制御モードの冷房運転−
温度制御モードの冷房運転について説明する。冷房運転では、各空気調和機(20,40)で上述した第1冷凍サイクルが行われる。つまり、圧縮機(23,43)で圧縮された冷媒は、各室外熱交換器(24,44)で凝縮し、室外空気へ放熱する。凝縮した冷媒は、各室外膨張弁(25,45)で減圧された後、各室内熱交換器(32,52)を流れる。各室内熱交換器(32,52)では、冷媒が室内空気から吸熱して蒸発する。これにより、各室内ユニット(30,50)では、吸込空気が冷却される。蒸発した冷媒は、各圧縮機(23,43)に吸入され、再び圧縮される。各室内熱交換器(32,52)で冷却された空気は、室内空間(11)へ吹出空気として供給される。
冷房運転では、各室内ユニット(30,50)の吸込空気の温度と設定温度との差ΔTに応じて、各空気調和機(20,40)の能力が制御される。このΔTが大きくなると、各空気調和機(20,40)の目標蒸発温度が小さくなり、ひいては各圧縮機(23,43)の運転周波数が増大する。逆にΔTが小さくなると、各空気調和機(20,40)の目標蒸発温度が大きくなり、ひいては各圧縮機(23,43)の運転周波数が減少する。
−温湿度制御モード−
温湿度制御モードの運転は、室内の温度を目標温度(Ts)に近づけるともに、室内の湿度を目標湿度(Rs)に近づける運転である。温湿度制御モードでは、現在の室内の温湿度を目標点(S)(図6を参照)に近づけるように、現在の空気の状態点(C)に応じて、各種の運転を切り換える。温湿度制御モードは、各ローカルコントローラ(61,71)、クラウドサーバ(90)、及び通信端末(80)間の相互の信号の授受によって実現される。これらの端末間の信号の送受信は所定時間(例えば20秒)毎に行われる。
〈温湿度制御モードへの移行まで制御〉
温湿度制御モードへ移行するまでの制御について、図4を参照しながら説明する。ユーザが通信端末(80)のアプリケーションを起動させ、タッチパネル(81)上において「温湿度制御モード」の「ON」を選択すると、この信号がクラウドサーバ(90)へ出力される。同時に、クラウドサーバ(90)には、通信端末(80)に設定された目標温度(Ts)及び目標湿度(Rs)が入力される。以上のようにして、温湿度制御モードの開始の指示があると、ステップSt1からステップSt2へ移行する。
次いで、クラウドサーバ(90)は、受信した目標温度(Ts)及び目標湿度(Rs)を、各空気調和機(20,40)の各ローカルコントローラ(61,71)、又は各リモコン(36,56)へ送信する。各ローカルコントローラ(61,71)では、各空気調和機(20,40)で検出した吸込空気温度と目標温度(Ts)とを用いて各空気調和機(20,40)の起動(サーモON)の判定を行う。なお、各ローカルコントローラ(61,71)は、各空気調和機(20,40)で検出した吸込空気湿度と目標湿度(Rs)とを用いて各空気調和機(20,40)の起動の判定を行うようにしてもよい。
以上のようにして、サーモON条件が成立すると、ステップSt2からステップSt3へ移行し、温湿度制御モードへ移行する。
〈初回の判定動作〉
図5に示すように、温湿度制御モードへ移行すると、初回の判定動作が行われる(ステップSt51)。初回の判定動作では、運転判定部(91)が、1)除湿運転、3)顕熱運転、4)顕熱運転、5)潜熱運転のいずれを実行するかの判定を行う。つまり、初回の判定動作では、2)非分離運転が選択されることはない。判定動作では、通信端末(80)に設定された目標温度(Ts)と、通信端末(80)に設定された目標湿度(Rs)と、室内空間(11)の現在の空気状態とが用いられる。ここで、現在の空気状態を示す指標としては、室内空間(11)の現在の空気温度(T)と、室内空間(11)の現在の空気湿度(R)と、室内空間(11)の現在の不快指数(DI)とが用いられる。
空気温度(T)は、複数の第1吸込温度センサ(34)の各検出温度と、複数の第2吸込温度センサ(54)の各検出温度のうち、最も高い空気温度(Tmax)が用いられる。空気湿度(R)は、複数の第1吸込湿度センサ(35)の各検出湿度と、複数の第2吸込湿度センサ(55)の各検出湿度のうち、最も高い空気温度(Tmax)に対応する検出湿度である。つまり、空気温度(T)と空気湿度(R)は、同じ室内ユニット(30,50)の対となる吸込温度センサ(34,54)及び吸込湿度センサ(35,55)に対応している。
不快指数(DI)は、空気温度(T)及び空気湿度(R)とから求められる。ここで、不快指数(discomfort index)は、人体の温熱感覚を表すための温熱指標の一つであり、温度と湿度とを含む関係式により求めることができる。
判定動作では、各運転の移行の判定を行うための複数の閾値が用いられる。これらの閾値は、室内の空気状態の目標値(即ち、目標温度(Ts)及び目標湿度(Rs))に基づいて決定される。
具体的には、図6の空気線図を用いて概念的に説明すると、運転判定部(91)は、目標温度(Ts)に基づいて、第1温度閾値(Ts1)、第2温度閾値(Ts2)、第3温度閾値(Ts3)、第4温度閾値(Ts4)、及びサーモオフ判定温度(Toff)を算出する。第1温度閾値(Ts1)は、目標温度(Ts)に所定温度Δt1(例えば0.5℃)を加えた値である。第2温度閾値(Ts2)は、目標温度(Ts)に所定温度Δt2(例えば1.5℃)を加えた値である。第3温度閾値(Ts3)は、目標温度(Ts)に所定温度Δt3(例えば2.0℃)を加えた値である。第4温度閾値(Ts4)は、目標温度(Ts)から所定温度Δt4(例えば0.5℃)を引いた値である。サーモオフ判定温度(Toff)は、目標温度に所定温度ΔTxd(例えば2℃)を引いた値である。本実施形態では、Δt1とΔt4とが等しい。
運転判定部(91)は、目標湿度(Rs)に基づいて、第1湿度閾値(Rs1)、第2湿度閾値(Rs2)、第3湿度閾値(Rs3)、及び第4湿度閾値(Rs4)を算出する。ここで、第1湿度閾値(Rs1)は、目標湿度(Rs)に所定湿度Δr1(例えば1.0g/kg(dry-air))を加えた値である。第2湿度閾値(Rs2)は、目標湿度(Rs)に所定湿度Δr2(例えば2.0g/kg(dry-air))を加えた値である。第3湿度閾値(Rs3)は、目標湿度(Rs)から所定湿度Δr3(例えば1.0g/kg(dry-air))を引いた値である。第4湿度閾値(Rs4)は、目標湿度(Rs)から所定湿度Δr4(例えば2.0g/kg(dry-air))を引いた値である。本実施形態では、Δr1とΔr3とが等しくΔr2とΔr4とが等しい。
運転判定部(91)は、目標温度(Ts)及び目標湿度(Rs)とから、室内空間(11)の目標とする不快指数(目標不快指数(DIs1))を算出する。図6の空気線図では、右上にいくほど(温度及び湿度が高くなるほど)不快指数が大きくなり、左下(温度及び湿度が低くなる)ほど不快指数は小さくなる。従って、空気線図において、目標不快指数(Ds1)は左上に延びる線となり、この目標不快指数(DIs1)が第1の不快指数閾値となる。更に、運転判定部(91)は、目標不快指数(DIs1)に所定値(例えば0.5)を加えた値を第2不快指数閾値(DIs2)とする。
運転判定部(91)は、以上のような各閾値と、現在の空気の状態点(C)(即ち、空気温度(T)及び空気湿度(R))とを比較し、いずれの運転に移行するかを判定する。
具体的には、運転判定部(91)は、現在の空気の状態点(C)が、太線で囲んだE1の領域内にある場合、潜顕分離運転への移行を決定する。つまり、空気温度(T)が第2温度閾値(Ts2)より低く、且つ空気湿度(R)が第3湿度閾値(Rs3)以上であり、且つ空気湿度(R)が第1湿度閾値(Rs1)より低い場合には、潜顕分離運転への移行を決定する。また、運転判定部(91)は、現在の空気の不快指数(DI)が目標不快指数(DIs1)よりも低く、且つ空気湿度(R)が第3湿度閾値(Rs3)以上である場合にも、潜顕分離運転への移行を決定する。
運転判定部(91)は、現在の空気の状態点(C)が、太線で囲んだE2の領域内にある場合、顕熱運転への移行を決定する。つまり、空気温度(T)が第2温度閾値(Ts2)以上であり、且つ空気湿度(R)が第1湿度閾値(Rs1)より小さい場合には、顕熱運転への移行を決定する。また、運転判定部(91)は、空気温度(T)が第2温度閾値(Ts2)より低く、且つ空気湿度(R)が第3湿度閾値(Rs3)より低い場合にも、顕熱運転への移行を決定する。
運転判定部(91)は、現在の空気の状態点(C)が、太線で囲んだE3の領域内にある場合、潜熱運転への移行を決定する。つまり、空気温度(T)が第1温度閾値(Ts1)より低く、且つ空気湿度(R)が第1湿度閾値(Rs1)以上であり、且つ不快指数(DI)が目標不快指数(DIs1)以上である場合には、潜熱運転への移行を決定する。
運転判定部(91)は、現在の空気の状態点(C)が、E4の領域内にある場合、除湿運転への移行を決定する。つまり、空気温度(T)が第1温度閾値(Ts1)以上であり、空気湿度(R)が第1湿度閾値(Rs1)以上である場合、除湿運転への移行を決定する。
なお、図5に示すように、本実施形態では、ステップSt56で除湿運転が開始された後、所定時間(例えば120秒)が経過すると、ステップSt57へ移行し、除湿運転から非分離運転へ切り換えられる。
〈2回目以降の判定動作の概要〉
温湿度制御モードに移行した後の2回目以降の判定動作(ステップSt58)では、運転判定部(91)が、除湿運転を除く他の運転( 2)非分離運転、3)顕熱運転、4)顕熱運転、5)潜熱運転)のいずれを実行するかの判定を行う。つまり、温湿度制御モードでは、該温湿度制御モードの開始直後の初回の判定動作において、現在の空気がE4の領域内にある場合のみ、除湿運転が実行される。
2回目以降の判定動作は、各運転中において、所定時間(例えば20秒毎)に行われる。2回目以降の判定動作の基本的な判断基準は、上述した初回の判定動作と同じである。ただし、2回目以降の判定動作では、現在の運転の種類に応じて、次の運転を決定するための閾値が初回の判定動作とは異なる。
〈除湿運転/非分離運転中の判定動作〉
除湿運転及び非分離運転中の判定動作の閾値は、図7のようになる。詳細の説明は省略するが、これらの運転では、潜顕分離運転に対応する領域E1の湿度の範囲が、他の判定動作よりも下側(低湿側)に拡大されている。また、これらの運転では、潜顕分離運転に対応する領域E1において、第1湿度閾値(Rs1)以上の範囲での不快指数の閾値が存在しない。
〈潜顕分離運転中の判定動作〉
潜顕分離運転中の判定動作の閾値は、図8のようになる。詳細の説明は省略するが、潜顕分離運転では、顕熱運転に対応する領域E2、及び潜熱運転に対応する領域E3が、初回の判定動作よりも小さくなっている。また、潜顕分離運転において、現在の空気の状態点(C)が領域E5内にある場合、非分離運転への移行が決定される。潜顕分離運転における領域E5の範囲は、初回の判定動作の領域E4(除湿運転への移行範囲)よりも小さい。このように、潜顕分離運転中の判定動作では、継続して潜顕分離運転を行うための領域E1が、初回の判定動作の領域E1よりも大きくなっている。従って、ある運転から潜顕分離運転に移行した後、空気温度(T)や空気湿度(R)が僅かに高くなることで、他の運転が再び戻ること(いわゆるハンチング)を回避できる。
〈顕熱運転の判定動作〉
顕熱運転中の判定動作の閾値は、図9のようになる。詳細の説明は省略するが、顕熱運転では、他の判定動作にはない領域E6(ハッチングを付した領域)が存在する。領域E6は、領域E5と同様、非分離運転への移行を決定するための領域である。ただし、顕熱運転中の判定動作において、空気の状態点(C)が領域E5にある場合、速やかに非分離運転へ移行するのに対し、空気の状態点(C)が領域E6にある場合、この状態が所定時間(例えば180秒)継続することで、非分離運転に移行する。このように、顕熱運転から非分離運転への境界付近の領域において、時間の制約を加えることで、顕熱運転と非分離運転との間のハンチングを回避できる。
〈潜熱運転の判定動作〉
潜熱運転中の判定動作の閾値は、図10のようになる。詳細の説明は省略するが、潜熱運転では、潜顕分離運転に対応する領域E1の湿度の範囲が、初回の判定動作よりも下側(低湿側)に拡大されている。
〈各運転の概要〉
次いで、温湿度制御モードで実行される各運転について説明する。温湿度制御モードの運転は、複数の空気調和機(20,40)の全てが潜熱機となる第1運転と、複数の空気調和機のうちの一部(本例では第1空気調和機(20))が潜熱機となり、他の空気調和機(本例では第2空気調和機(40))が顕熱機となる第2運転と、複数の空気調和機(20,40)(本例では第1空気調和機(20)及び第2空気調和機(40))の全てが顕熱機となる第3運転とに大別される。除湿運転、非分離運転、及び潜熱運転は第1運転に含まれる。潜顕分離運転は、第2運転に該当し、顕熱運転は、第3運転に該当する。
「潜熱機」は、室内ユニット(30,50)の室内熱交換器(32,52)が空気を露点温度以下まで冷却するように制御される空気調和機である。従って、潜熱機の室内ユニット(30,50)で空気が冷却されると、空気中の水分が結露し、結露水がドレンパン等に回収される。これにより、潜熱機の室内ユニット(30,50)では、空気の温度及び湿度の双方が低下する。
「顕熱機」は、室内ユニット(30,50)の室内熱交換器(32,52)が空気を露点温度より高い温度で冷却するように制御される空気調和機である。従って、顕熱機の室内ユニット(30,50)で空気が冷却されると、空気中の水分は結露せず、空気の温度のみが低下する。
〈除湿運転〉
除湿運転は、室内の湿度及び温度が高い条件下において、室内の絶対湿度を急激に低下させる運転である。除湿運転では、第1空気調和機(20)と第2空気調和機(40)との双方が潜熱機となる。
除湿運転に移行すると、クラウドサーバ(90)は、各空気調和機(20,40)の室内ファン(33,53)の風量を制御するための信号を各ローカルコントローラ(61,71)に送信する。除湿運転では、室内ファン(33,53)の風量をLタップに制御する信号が送信される。これにより、除湿運転では、全ての室内ファン(33,53)の風量が小風量となり、各室内ユニット(30,50)の除湿性能が向上する。
クラウドサーバ(90)は、各空気調和機(20,40)の目標蒸発温度(TeS)を適宜求め、求めた目標蒸発温度(TeS)を各ローカルコントローラ(61,71)に送信する。ここで、除湿運転では、次のような処理(目標蒸発温度決定処理)により、現在の空気状態に基づいて目標蒸発温度(TeS)を算出する。具体的には、能力決定部(92)は、メモリに記憶された関数式を用いて目標蒸発温度(TeS)を算出する。ここで、この関数式は、図11の空気線図上で示す飽和曲線と、現在の空気温度(T)と、現在の空気湿度(R)とを含む関数である。具体的に、この関数式は、図11に示すように、空気線図上における飽和曲線と、現在の空気の状態点を通過する直線Mとの接点(P)に対応する温度(Tp)を求めるものである。ここで、現在の空気の状態点(C)は、現在の空気温度(T)と現在の空気湿度(R)に対応する。この関数式により、接点(P)に対応する温度(Tp)が算出され、この温度(Tp)を目標蒸発温度(TeS)とする。除湿運転では、このような目標蒸発温度決定処理が、原則として、所定時間(20秒)毎に実行される。
このようにして得た目標蒸発温度(TeS)は、インターネット(86)を経由して、各ローカルコントローラ(61,71)に適宜送信される。この結果、各空気調和機(20,40)は、現在の蒸発温度(Te)が、所定時間毎に受信される目標蒸発温度(TeS)に近づくように圧縮機(23,43)の運転周波数を制御する。
除湿運転では、このように目標蒸発温度(T)を求めることで、目標蒸発温度(TeS)が過剰に高くなる、あるいは過剰に低くなることを防止できる。目標蒸発温度(TeS)が高すぎると、空気を冷却可能な温度が高くなり、空気から凝縮可能な水分量も少なくなってしまう。このため、室内空気を速やかに除湿できず、室内の温湿度を速やかに目標点(S)に近づけることができない。この結果、室内空間(11)の快適性が損なわれてしまう。
一方、目標蒸発温度(TeS)が低すぎると、空気の顕熱比が大きい領域(図11のaの矢印の傾きが小さい領域)で空気を除湿しようとする。この領域では、処理される全熱量に対して処理される潜熱の割合が小さくなるため、除湿に不利な条件となる。このため、この領域で空気を冷却すると、除湿の効率が低下し、ひいては省エネ性が損なわれてしまう。
これに対し、図11に示すように、接点(P)に対応する温度(Tp)を目標蒸発温度(TeS)とすることで、目標蒸発温度(TeS)が過剰に高くなる、あるいは過剰に低くなることがない。この結果、室内の快適性と、空調システム(10)の省エネ性を両立できる。
なお、除湿運転で求められる目標蒸発温度(TeS)には、各潜熱機で空気を確実に露点温度以下で冷却できるよう、上限値が設定されている。従って、除湿運転では、各潜熱機の冷却される空気が、露点温度より高くなってしまうことはない。
除湿運転では、上述したように目標蒸発温度決定処理が、原則として所定時間(20秒)毎に実行される。ただし、圧縮機(23,43)の保護や蒸発温度(Te)のハンチングの防止を目的として、各目標蒸発温度決定処理の実行前に次の更新判定が行われる。
更新判定では、目標蒸発温度処理を再び実行するか否かを判定する。更新判定において、条件1−A及び条件1−Bのいずれか一方又は両方が成立する場合、目標蒸発温度決定処理が行われ、目標蒸発温度(TeS)は更新される。
1−A:現在|Te−TeS|≦E1
1−B:|(現在|Te−TeS|−前回|Te−TeS|)|≦E2
ここで、現在|Te−TeS|は、現在の蒸発温度(Te)と現在の目標蒸発温度(TeS)との差分の絶対値である。前回|Te−TeS|は、今回の更新判定より1つ前の更新判定で算出された|Te−TeS|に相当する。E1及びE2は、予め設定された判定閾値である。
条件1−Aが成立する場合、実際の蒸発温度(Te)が目標蒸発温度(TeS)に収束していると判断できる。従って、条件1−Aが成立する場合、再び目標蒸発温度決定処理を行い、目標蒸発温度(TeS)を再計算する。
条件1−Bが成立する場合、蒸発温度(Te)と目標蒸発温度(TeS)の差分の減少変化量が小さくなっており、蒸発温度(Te)が目標蒸発温度(TeS)に収束する傾向にあると判断できる。従って、条件1−Bが成立する場合にも、再び目標蒸発温度決定処理を行い、目標蒸発温度(TeS)を再計算する。
条件1−A及び条件1−Bのいずれも成立しない場合、蒸発温度(Te)が目標蒸発温度(TeS)に収束しておらず、蒸発温度(Te)が大きく変化していると判断できる。従って、これらの条件が成立しない場合、目標蒸発温度決定処理を禁止し、目標蒸発温度(TeS)を再計算しない。これにより、蒸発温度(Te)が比較的大きく変化しているときに、目標蒸発温度(TeS)が再び変更されることを制限できる。従って、圧縮機(23,43)の運転周波数が大きく変化したり、蒸発温度(Te)がハンチングしたりすることを回避できる。
〈非分離運転〉
非分離運転は、除湿運転と同様、室内の湿度及び温度が高い条件下において、室内の絶対湿度を低下させる運転である。非分離運転では、第1空気調和機(20)と第2空気調和機(40)との双方が潜熱機となる。ただし、上述したように、非分離運転は、初回の判定動作においては実行されない(図5を参照)。非分離運転では、第1空気調和機(20)と第2空気調和機(40)との双方が潜熱機となる。
非分離運転に移行すると、クラウドサーバ(90)は、各空気調和機(20,40)の室内ファン(33,53)の風量を制御するための信号を各ローカルコントローラ(61,71)に送信する。非分離運転では、室内ファン(33,53)の風量をMタップに制御する信号が送信される。これにより、非分離運転では、全ての室内ファン(33,53)の風量が中風量となる。
クラウドサーバ(90)は、各空気調和機(20,40)の目標蒸発温度(TeS)を適宜求め、求めた目標蒸発温度(TeS)を各ローカルコントローラ(61,71)に送信する。ここで、非分離運転の目標蒸発温度(TeS)は、温度制御モードの冷房運転と類似の方法で求められる。
つまり、非分離運転の蒸発温度決定処理では、現在の空気温度(T)と、通信端末(80)に設定した目標温度(Ts)との差ΔTrsに応じて、目標蒸発温度(TeS)を算出する。ΔTrsが大きくなると、各空気調和機(20,40)の能力を増大させるために目標蒸発温度(TeS)が低下する。逆に、ΔTrsが小さくなると、各空気調和機(20,40)の能力を低下させるために目標蒸発温度(TeS)が高くなる。
なお、非分離運転で求められる目標蒸発温度(TeS)には、各潜熱機で空気を確実に露点温度以下で冷却できるよう、上限値が設定されている。従って、非分離運転では、各潜熱機で冷却される空気が、露点温度より高くなってしまうことはない。
非分離運転においても、除湿運転と同様にして、目標蒸発温度(TeS)を更新するか否かの更新判定が行われる。これにより、圧縮機(23,43)を保護するとともに、蒸発温度(Te)のハンチングを回避できる。
〈潜熱運転〉
潜熱運転は、特に室内の湿度が高い条件下において、室内の絶対湿度を低下させる運転である。潜熱運転では、第1空気調和機(20)と第2空気調和機(40)との双方が潜熱機となる。潜熱運転は、基本的には除湿運転と同じ制御が行われる。
潜熱運転では、室内ファン(33,53)の風量をMタップに制御する信号が送信される。これにより、潜熱運転では、全ての室内ファン(33,53)の風量が中風量となる。
潜熱運転の蒸発温度決定処理では、除湿運転と同様、上記接点(P)に応じた温度(Tp)から目標蒸発温度(TeS)が決定される。ただし、潜熱運転では、除湿運転と異なり、目標蒸発温度(TeS)の更新判定が行われない。従って、潜熱運転では、所定時間(例えば20秒)毎に目標蒸発温度(TeS)が必ず再計算されることになる。
潜熱運転が実行されるのは、上記のように空気の状態点(C)が領域E3にある場合であり、この領域E3は、サーモオフ領域に近い位置にある。仮に、潜熱運転において、除湿運転と同様にして目標蒸発温度(TeS)の再計算が禁止されると、この間に空気が過剰に冷却されてしまい、空気温度(T)が目標蒸発温度(TeS)を大きく下回ってしまう可能性がある。この場合、空気温度(T)がサーモオフ領域に至ってしまう可能性もある。
これに対し、本実施形態では、潜熱運転において目標蒸発温度(TeS)を必ず更新するため、空気温度(T)が過剰に冷却される前に目標蒸発温度(TeS)を調整できる。これにより、空気温度(T)がサーモオフ領域に至ってしまうことも回避できる。また、潜熱運転では、除湿運転と比べると、蒸発温度(Te)が目標蒸発温度(TeS)に収束しやすい傾向にあるため、更新判定による制限をかけずとも、圧縮機(23,43)の運転周波数や蒸発温度(Te)が大きく変動することはない。
〈潜顕分離運転の概要〉
潜顕分離運転(同時運転)は、室内の温度及び湿度が目標点(S)に近い範囲にあるときに、各空気調和機(20,40)で室内の潜熱と顕熱とを個別に処理する運転である。本実施形態の潜顕分離運転では、第1空気調和機(20)が潜熱機となり、第2空気調和機(40)が顕熱機となる。従って、潜顕分離運転では、第1空気調和機(20)の室内ユニット(30,50)によって空気が冷却及び除湿されると同時に、第2空気調和機(40)の室内ユニット(30,50)によって空気の冷却のみが行われる。このように、潜熱機と顕熱機とを同時に運転することで、室内の温度が過剰に低下することを回避しつつ、室内の温湿度を目標の範囲に近づけることができる。
潜顕分離運転では、クラウドサーバ(90)から、潜熱機に対応するローカルコントローラ(本例では、第1ローカルコントローラ(61))と、顕熱機に対応するローカルコントローラ(本例では、第2ローカルコントローラ(71))とにそれぞれ異なる制御信号を送る必要がある。顕熱機と潜熱機とでは、それぞれ異なる制御が行われるからである。このため、クラウドサーバ(90)には、潜顕分離運転を行う際、どの空気調和機(20,40)が潜熱機となり、どの空気調和機(20,40)が顕熱機となるかを示す機器情報が登録される。本例では、潜顕分離運転において、第1空気調和機(20)が潜熱機となることを示す機器情報と、第2空気調和機(40)が顕熱機となることを示す機器情報とが、クラウドサーバ(90)に登録される。例えば、このような情報は、通信端末(80)や各ローカルコントローラ(61,71)から、インターネット(86)を経由して、クラウドサーバ(90)に送信される。
〈潜顕分離運転の潜熱機の制御〉
潜顕分離運転において、クラウドサーバ(90)は、潜熱機である第1空気調和機(20)に対応する第1ローカルコントローラ(61)に、第1室内ファン(33)の風量を制御するための信号を送信する。潜顕分離運転では、第1空気調和機(20)の第1室内ファン(33)の風量が2段階(例えばLタップとMタップの2段階)の間で切り換えられる。なお、第1室内ファン(33)は、MタップとHタップの2段階の間で切り換えられてもよい。
また、クラウドサーバ(90)は、第1ローカルコントローラ(61)に第1空気調和機(20)の蒸発温度(Te)を制御するための目標蒸発温度(第1目標蒸発温度(TeS1)を送信する。
潜顕分離運転の潜熱機の蒸発温度決定処理は、除湿運転と類似の方法で求められる。具体的には、能力決定部(92)は、空気線図上における飽和曲線と、目標点(S)を通過する直線の接点に対応する温度を第1目標蒸発温度(TeS1)とする。つまり、除湿運転では、飽和曲線との接点を求める際、現在の空気の状態点(C)(即ち、空気温度(T)及び空気湿度(R))を用いるのに対し、潜顕分離運転では、目標点(S)(即ち、目標温度(Ts)及び目標湿度(Rs))を用いる点で両者は異なる。目標点(S)は、通信端末(80)の設定値で決まるため、基本的には状態点(C)のように変化しない。従って、目標点(S)に基づいて接点を求めることで、第1目標蒸発温度(TeS1)が大きく変動することがない。従って、このような第1目標蒸発温度(TeS1)の変動に起因して、現在の空気の状態点(C)が図8の領域E1から外れてしまうことを回避でき、潜顕分離運転から他の運転へ切り換わることを抑制できる。
潜顕分離運転の潜熱機の蒸発温度決定処理においては、除湿運転と同様にして、更新判定が行われる。これにより、圧縮機(23,43)を保護するとともに、蒸発温度(Te)のハンチングを防止できる。
詳細の説明は省略するが、潜顕分離運転では、現在の空気の状態点(C)、目標点(S)、及び空気の状態点(C)(空気温度(T)及び空気湿度(R))の直前の変化に基づいて、潜熱機の第1目標蒸発温度(TeS1)が段階的に調節される。
〈潜顕分離運転の顕熱機の制御〉
潜顕分離運転において、クラウドサーバ(90)は、顕熱機である第2空気調和機(40)に対応する第2ローカルコントローラ(71)に、第2室内ファン(53)の風量を制御するための信号を送信する。潜顕分離運転では、第2空気調和機(40)の第2室内ファン(53)の風量が、例えばMタップ、あるいはHタップに制御される。
クラウドサーバ(90)は、第2ローカルコントローラ(71)に第2空気調和機(40)の蒸発温度(Te)を制御するための目標蒸発温度(TeS)(第2目標蒸発温度(TeS2))を送信する。
潜顕分離運転の顕熱機の蒸発温度決定処理では、顕熱機で処理される空気が露点温度より高くなるように、第2目標蒸発温度(TeS2)が決定される。具体的には、現在の目標点(S)に対応する空気の状態点(目標温度(Ts)及び目標湿度(Rs))から、この空気に対応する露点温度(Tdew-s)を算出する。つまり、この露点温度(Tdew-s)は、目標点(S)にある空気を冷却した場合に、この空気中から結露が生じる温度である。そして、蒸発温度決定処理では、この露点温度(Tdew-s)を第2目標蒸発温度(TeS2)とする。
潜顕分離運転は、現在の空気の状態点(C)が、目標点(S)を含む領域E1にあるときに実行される。従って、現在の空気の状態点(C)と目標点(S)とでは、空気の温湿度の大きな差が生じない。また、顕熱機の第2室内熱交換器(52)で冷却される空気が、蒸発温度以下の温度まで冷却されることは実質的にあり得ない。このため、目標点(S)に対応する露点温度(Tdew-s)を第2目標蒸発温度(TeS2)とすることで、顕熱機では、実質的に、空気が実際の露点温度より高い温度で冷却される。
ここで、目標点(S)は、通信端末(80)の設定値で決まるため、基本的には状態点(C)のように変化しない。従って、目標点(S)に基づいて露点温度を求めることで、第2目標蒸発温度(TeS2)が大きく変動することがない。これにより、このような第2目標蒸発温度(TeS2)の変動に起因して、現在の空気の状態点(C)が図8の領域E1から外れてしまうことを回避でき、潜顕分離運転から他の運転へ切り換わることを抑制できる。
〈顕熱運転〉
顕熱運転は、特に室内の温度が高い条件下において、室内の温度を低下させる運転である。顕熱運転では、第1空気調和機(20)と第2空気調和機(40)との双方が顕熱機となる。
顕熱運転に移行すると、クラウドサーバ(90)は、各空気調和機(20,40)の室内ファン(33,53)の風量を制御するための信号を各ローカルコントローラ(61,71)に送信する。顕熱運転では、室内ファン(33,53)の風量をMタップに制御する信号が送信される。これにより、顕熱運転では、全ての室内ファン(33,53)の風量が中風量となる。
また、クラウドサーバ(90)は、各ローカルコントローラ(61,71)に各空気調和機(20,40)の蒸発温度(Te)を制御するための目標蒸発温度(TeS)を送信する。
潜顕運転の蒸発温度決定処理では、顕熱機で処理される空気が露点温度より高くなるように、目標蒸発温度(TeS)が決定される。具体的には、現在の空気の状態点(C)(空気温度(T)及び空気湿度(R)))から、この空気に対応する露点温度(Tdew-c)を算出する。つまり、この露点温度(Tdew-c)は、現在の状態点にある空気を冷却した場合に、この空気中から結露が生じる温度である。そして、蒸発温度決定処理では、この露点温度(Tdew-c)を第2目標蒸発温度(TeS2)とする。
顕熱運転は、現在の空気の状態点(C)が目標点(S)から離れた領域E2にあるときに実行される。従って、現在の空気の状態点(C)は、目標点(S)よりも比較的高い温度となる。このため、顕熱運転では、上記潜顕分離運転の潜熱機の制御と異なり、目標点(S)ではなく、現在の空気の状態点(C)に対応する露点温度(Tdew-c)を目標蒸発温度(TeS)としている。つまり、顕熱運転において、目標点(S)に対応する露点温度(Tdew-s)を目標蒸発温度とすると、目標蒸発温度(TeS)が過剰に低くなってしまい、空気が実際の露点温度以下まで冷却される可能性がある。これに対し、顕熱運転では、現在の空気の状態点(C)に対応する露点温度(Tdew-c)を目標蒸発温度(TeS)としているため、顕熱運転で空気が除湿されてしまうことを確実に防止できる。
〈潜顕分離運転のサーモオフ動作〉
上述した各運転では、第1ローカルコントローラ(61)の第1サーモオフ制御部(65)と、第2ローカルコントローラ(71)の第2サーモオフ制御部(75)とで、それぞれサーモオフ判定処理が行われる。つまり、第1サーモオフ制御部(65)は、各第1吸込温度センサ(34)の検出温度と、サーモオフ判定温度(Toff)とを比較し、第1吸込温度センサ(34)の検出温度がサーモオフ判定温度(Toff)以下になると、対応する第1室内ユニット(30)を停止させる(サーモオフさせる)。同様に、第2サーモオフ制御部(75)は、各第2吸込温度センサ(54)の検出温度と、サーモオフ判定温度(Toff)とを比較し、第2吸込温度センサ(54)の検出温度がサーモオフ判定温度(Toff)以下になると、対応する第2室内ユニット(50)を停止させる(サーモオフさせる)。つまり、空調システム(10)では、原則として、サーモオフの温度条件を満たした室内ユニット(30,50)を個別にサーモオフさせる。
一方、潜熱分離運転では、以下の理由から、動作中の全ての室内ユニット(30,50)に対応する各吸込温度センサ(34,54)の検出温度が、サーモオフ判定温度(Toff)以下になるまで、全ての室内ユニット(30,50)のサーモオフが禁止される。
潜顕分離運転では、上述したように、第1空気調和機(20)が潜熱機となり、第2空気調和機(40)が顕熱機となる。そして、第1空気調和機(20)では、空気が露点温度以下まで冷却される一方、第2空気調和機(40)では、空気が露点温度より高い温度で冷却される。この結果、基本的には、第1空気調和機(20)の吹出空気の温度は、第2空気調和機(40)の吹出空気の温度よりも低くなる。このことに起因して、室内空間(11)では、室内空気の温度にバラツキが生じ、第1空気調和機(20)や第2空気調和機(40)が、比較的低い温度の空気を吸い込んでしまう可能性がある。従って、仮に第1空気調和機(20)の室内ユニット(30,50)の吸込温度だけが低くなり、該吸込温度がサーモオフ判定温度(Toff)以下になると、第1空気調和機(20)のみが停止し、第2空気調和機(40)だけが運転状態となる。この場合、室内の潜熱と顕熱とを分離した処理ができなくなり、省エネ性が損なわれてしまう。また、室内空間(11)の全体の平均的な空気温度はあまり低くないにも拘わらず第2空気調和機(40)だけが運転を行うため、室内の快適性が損なわれてしまう。そこで、本実施形態の潜顕分離運転では、一部の空気調和機(20,40)の室内ユニット(30,50)だけが停止するのを防止するために、制御装置(60)が以下のような処理を行う。
図12に示すように、ステップS21において、潜顕分離運転中であると判定されると、ステップSt22に移行し、潜顕分離運転以外の運転である場合、ステップSt24へ移行する。ステップSt24に移行した場合、クラウドサーバ(90)からは、ユーザが通信端末(80)から設定した目標温度(Ts)が、各ローカルコントローラ(61,71)へ送られる。各ローカルコントローラ(61,71)は、目標温度(Ts)から所定温度(ΔTxd)を引いた値をサーモオフ判定温度(Toff)とする。第1サーモオフ制御部(65)は、各第1吸込温度センサ(34)の検出温度と、サーモオフ判定温度(Toff)とをそれぞれ比較し、該検出温度がサーモオフ判定温度(Toff)以下であると、対応する第1室内ユニット(30)をサーモオフさせる。同様に、第2サーモオフ制御部(75)は、各第2吸込温度センサ(54)の検出温度と、サーモオフ判定温度(Toff)とをそれぞれ比較し、該検出温度がサーモオフ判定温度(Toff)以下であると、対応する第2室内ユニット(50)をサーモオフさせる。このように、潜顕分離運転以外の運転では、各室内ユニット(30,50)がそれぞれ個別にサーモオフする。
ステップSt22では、室内ユニット(30,50)の個別でのサーモオフを禁止するための設定が確認される。つまり、クラウドサーバ(90)では、室内ユニット(30,50)の個別のサーモオフを禁止するか否かの設定を、通信端末(80)等を経由して切り換えることができる。ステップSt22において“同時サーモオフモード(個別サーモオフを禁止するモード)”がONになっている場合、ステップSt23へ移行する。一方、同時サーモオフモードがONでない場合、ステップSt24に移行し、各室内ユニット(30,50)のサーモオフが個別に行われる。
ステップSt23では、置換判定部(93)により、各吸込温度センサ(34,35)の検出温度とサーモオフ判定温度との大小関係の比較が行われる。具体的には、置換判定部(93)は、全ての吸込温度センサ(34,35)の検出温度のうち最も高い検出温度(最大検出温度(Thmax))と、全ての吸込温度センサ(34,35)の検出温度のうち最も低い検出温度(最小検出温度(Thmin))とを求める。そして、最大検出温度(Tmax)がサーモオフ判定温度(Toff)以上であり、且つ最小検出温度(Tmin)がサーモオフ判定温度以下である場合、ステップSt25へ移行し、そうでない場合ステップSt24へ移行する。
ステップSt23において、例えば全ての検出温度がサーモオフ判定温度(Toff)よりも高い場合、ステップSt24へ移行する。この場合、各サーモオフ制御部(65,75)のサーモオフ判定処理において、全ての検出温度がサーモオフ判定温度よりも高くなるため、いずれの室内ユニット(30,50)もサーモオフしない。
ステップSt23において、一部の検出温度がサーモオフ判定温度(Toff)より低く、他の
検出温度がサーモオフ判定温度(Toff)より高い場合、ステップSt25へ移行する。ステップSt25へ移行すると、各サーモオフ制御部(65,75)で用いられるサーモオフ判定温度(Toff)を変更するための置換処理が行われる。
具体的には、ステップSt25へ移行した場合、クラウドサーバ(90)は、ユーザが設定した目標温度(Ts)を各ローカルコントローラ(61,71)へ送信せず、個別のサーモオフを禁止するための偽の目標温度(Ts’)を各ローカルコントローラ(61,71)へ送信する。この偽の目標湿度(Ts’)としては、上述した最小検出温度(Tmin)よりも所定温度α(例えば1℃)低い値が用いられる。
各ローカルコントローラ(61,71)では、受信された偽の目標湿度(Ts’)に基づいてサーモオフ判定温度(Toff)が算出される。つまり、サーモオフ判定温度(Toff)は、偽の目標湿度(Ts’)から所定温度ΔTxdを引いた値となる。換言すると、ステップSt25へ経た場合、サーモオフ判定温度(Toff)は、最小検出温度(Tmin)−α−ΔTxdとなる。
各サーモオフ制御部(65,75)は、各吸込温度センサ(34,35)の検出温度と、通常と異なる値に置換されたサーモオフ判定温度(Toff)とをそれぞれ比較する。ここで、置換されたサーモオフ判定温度(Toff)は、最小検出温度(Tmin)よりも低くなるため、全ての検出温度がサーモオフ判定温度よりも高くなる。このため、ステップSt25を経てからサーモオフ判定処理がなされると、全ての室内ユニット(30,50)のサーモオフが禁止されることになる。
ステップSt23において、例えば全ての検出温度がサーモオフ判定温度(Toff)よりも低い場合、ステップSt24へ移行する。この場合、各サーモオフ制御部(65,75)のサーモオフ判定処理において、全ての検出温度がサーモオフ判定温度よりも低くなる。この結果、全ての室内ユニット(30,50)がサーモオフされる。
以上のような処理を行うことで、潜顕分離運転では、全ての室内ユニット(30,50)の検出温度がサーモオフ判定温度(Toff)以下になるまで、各室内ユニット(30,50)のサーモオフが禁止される。
−実施形態の効果−
本実施形態では、潜顕分離運転において、全ての室内ユニット(30,50)の検出温度がサーモオフ判定温度(Toff)以下になる条件が成立するまで、各室内ユニット(30,50)のサーモオフを禁止している。このため、室内空気の温度のバラツキ等の影響により、潜熱機である第1空気調和機(20)のみ、あるいは顕熱機である第2空気調和機(40)のみが停止してしまうことを確実に回避できる。従って、潜顕分離運転の継続時間を長期化でき、空調システム(10)の省エネ性を向上できる。
上記実施形態では、ローカルコントローラ(61,71)側に送られる目標温度(Ts)を最小検出温度(Tmin)より低い所定値とするだけで、全ての室内ユニット(30,50)のサーモオフを禁止できる。従って、比較的単純な制御動作により、各室内ユニット(30,50)のサーモオフを確実に禁止できる。
上記実施形態では、単にクラウドサーバ(90)側からローカルコントローラ(61,71)側へ偽の指令値を送っているだけであり、各空気調和機(20,40)のローカルコントローラ(61,71)側のサーモオフ判定処理は、通常のものと何ら変わりない。従って各空気調和機(20,40)の仕様を何ら変更することなく、各室内ユニット(30,50)のサーモオフに禁止させることができる。つまり、既存の空気調和機(20,40)に対して、本発明に係る制御装置(60)を付加することで、潜顕分離運転での各室内ユニット(30,50)の個別のサーモオフを禁止できる。
《その他の実施形態》
上記実施形態では、ステップSt23の条件が成立した場合に、サーモオフ判定温度(Toff)を変更するように、偽の目標温度(Ts’)を送る置換処理を行っている。しかし、置換処理では、各吸込温度センサ(34,35)の全ての検出温度がサーモオフ判定温度(Toff)よりも高くなるように、各検出温度をそれぞれ置換するようにしてもよい。
上記実施形態では、全ての吸込温度センサ(34,54)の検出温度がサーモオフ判定温度(Toff)以下になるまで全ての室内ユニット(30,50)のサーモオフを禁止している。しかし、全ての検出温度がサーモオフ判定温度(Toff)以下であったとしても、吸込湿度センサ(35,55)の検出湿度が所定値よりも高い場合には、全ての室内ユニット(30,50)のサーモオフを禁止してもよい。このようにすると、室内の湿度が高い条件下であるにも拘わらず、全ての室内ユニット(30,50)が一斉に停止してしまいことを回避でき、室内の快適性を確保できる。
上記実施形態の制御装置(60)は、クラウドサーバ(90)、通信端末(80)等を備え、インターネット(86)を経由して、温湿度制御モードを実現している。しかし、制御装置(60)は、インターネットを介さず、ローカル側のコントローラのみで空気調和機(20,40)を制御するものであってもよい。
また、上記実施形態の空調システム(10)は、同一の室内空間(11)を対象とする2台の空気調和機(20,40)で構成されているが、空気調和機(20,40)は3台以上であってもよい。この場合にも、潜顕分離運転において、どの空気調和機が潜熱機となり、どの空気調和機が顕熱機となるかを予め登録する。そして、潜顕分離運転では、この登録された情報に基づいて、潜熱機と顕熱機の割合が決定される。
上記実施形態の空調システム(10)において、空気調和機は、3台以上の室内ユニットを有し、室内ユニット内の冷媒回路に室内膨張弁が設けられる、いわゆるビル用マルチ型であってもよい。