JP6880614B2 - 非水溶性物の回収方法 - Google Patents

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本発明は、水溶液中の非水溶性物を回収する方法に関し、より詳しくは水溶液中の微生物、特に微細藻類を回収する方法に関するものである。
バイオマスを用いた液体燃料、健康食品、医薬品、香粧品または動物性飼料等の製造は、持続的な経済発展に不可欠な技術である。例えば、光合成により炭化水素を生産する微生物の一種である微細藻類は潜在的生産能力の高さから期待が大きく、微細藻類を培養することで、炭化水素化合物などのバイオマスを産生させる様々な研究が既に行われている。
微細藻類を用いてのバイオマスの生産には、効率的な微細藻類の培養方法、微細藻類の回収方法、更には産生するオイル等のバイオマスの抽出方法が開発されておらず、コストが高いという問題点がある。その最大の原因の一つが、微細藻類の効率的な回収方法がないことである。
具体的には、微細藻類は通常、液中に浮遊しながら生育するため、微細藻類をバイオマスとして利用するためには、非常に希薄な濃度の微細藻類を大量の液中から回収しなければならない。加えて、微細藻類の生育のためには光エネルギーが必要であるため、十分な光の照射を確保するためには液中に存在する微細藻類の濃度を過度に高くすることが出来ない。
結果として、液中に浮遊する微細藻類を回収するには、多量の水をろ過する必要があった。また、微細藻類のサイズは一般的に小さく、ろ過も容易ではなかった。このような問題を解決するための回収方法の検討として、沈殿剤を用いる方法、遠心分離機を用いる方法、微細藻類をより大型の生物の餌とした後に、該大型の生物を回収する方法などが試みられたものの、いずれの方法も根本的な解決には至っていない。
また、生活排水等による水域内への栄養塩の供給と蓄積が要因として起こる富栄養化により、湖沼等の閉鎖性水域では、アオコ等の藻類の異常増殖が発生する。このような藻類の異常増殖により、水道の取水、水産、農業または観光の場としての水環境の利用への障害が生じる。このため、異常増殖した微細藻類を効率的に回収する浄化技術が必要とされている。
これまでに、水中の微細藻類等の非磁性物質に対し磁性を付し、磁性フロックを形成させ、その後に、磁気分離装置で水中から微細藻類を分離回収する磁気分離方法が開発されている(非特許文献1)。この磁気分離方法は、高磁場を利用することで高速分離処理が可能で、装置もコンパクトになること、物理的に処理するために化学薬剤を要しないこと等の利点がある。
渡部恒雄、「新しい磁気分離工学の創成を目指して」、分離技術、Vol.32、No.5、pp.274−279(2002)
非特許文献1の技術では、非磁性物質に対し磁性を付し、磁性フロックを形成させるための工程において時間および手間を要し、さらにはマグネタイトと磁性フロックの形成しやすさが藻類の形態によって異なり、微細藻類の種類によって回収率が変化するため、実用化しにくいという問題点がある。
本発明は、微細藻類等の非水溶性物を水溶液中から効率的、簡便かつ低コストで回収する方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記の目的を達成するため、鋭意検討した結果、水溶液中の非水溶性物を効率的に回収する方法を見出した。すなわち、本発明は下記の構成により達成されるものである。
[1]以下の工程(1)〜(3)を含む、水溶液中に存在する非水溶性物を回収する方法。
(1)非水溶性物を含有する水溶液に、刺激に応答して親水性と疎水性の相転移をする刺激応答性磁性微粒子を含有させ、刺激を与えて刺激応答性磁性微粒子を疎水性として非水溶性物と結合させ、非水溶性物と刺激応答性磁性微粒子との凝集物を生成させる工程
(2)工程(1)で生成させた凝集物を磁力により水溶液中から分離する工程
(3)工程(2)で分離した凝集物に工程(1)と反対の刺激を与えて刺激応答性磁性微粒子を親水性とし、非水溶性物を刺激応答性磁性微粒子からリリースする工程
[2]以下の工程(1’)〜(3’)を含む、水溶液中に存在する非水溶性物を回収する方法。
(1’)非水溶性物を含有する水溶液に、刺激に応答して親水性と疎水性の相転移をする刺激応答性ポリマーと磁性微粒子を含有させ、刺激を与えて刺激応答性ポリマーを疎水性として非水溶性物と結合させ、非水溶性物と刺激応答性ポリマーと磁性微粒子との凝集物を生成させる工程
(2’)工程(1’)で生成させた凝集物を磁力により水溶液中から分離する工程
(3’)工程(2’)で分離した凝集物に工程(1’)と反対の刺激を与えて刺激応答性ポリマーを親水性とし、非水溶性物を刺激応答性ポリマーと磁性微粒子からリリースする工程
[3]前記刺激応答性磁性微粒子が、温度変化、pH変化、光変化およびイオン強度変化から選ばれる少なくとも1つに応答して、親水性と疎水性との相転移を生じる高分子が表面修飾された磁性微粒子である、[1]に記載の方法。
[4]前記刺激応答性ポリマーが、温度変化、pH変化、光変化およびイオン強度変化から選ばれる少なくとも1つに応答して、親水性と疎水性との相転移を生じる高分子である[2]に記載の方法。
[5]前記親水性と疎水性との相転移を生じる高分子が下限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーまたは上限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーである[3]または[4]に記載の方法。
[6]前記下限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーがN−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−1−メチル−2−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−モルホリノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−1−メトキシメチルプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジ(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチル(メタ)アクリルアミド、N−ピロリジノメチル(メタ)アクリルアミド、N−ピペリジノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート((メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル)、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−2−モルホリノエチル(メタ)アクリレート、N−2−モルホリノエトキシエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドおよび8−(メタ)アクリロイル−1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4,5]デカンからなる群から選ばれる少なくとも1種類の単重合体又は共重合体である、[5]に記載の方法。
[7]前記上限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーがアクリロイルグリシンアミド、メタクリロイルグリシンアミド、アクリロイルアスパラギンアミド、メタクリロイルアスパラギンアミド、アクリロイルグルタミンアミドおよびメタクリロイルグルタミンアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種類の単重合体又は共重合体である、[5]に記載の方法。
[8]前記非水溶性物が微生物である[1]〜[7]のいずれか1に記載の方法。
[9]前記微生物が、高度不飽和脂肪酸、天然色素、ビタミン、アミノ酸、ミネラル、アルコール類、水素、糖質、脂質、タンパク質、脂肪酸、有機酸および炭化水素から選ばれる少なくとも1の物質を生産する微細藻類である、[8]に記載の方法。
[10]前記微生物が炭化水素を生産する微細藻類であって、該微細藻類がオーランチオキトリウム、ボトリオコッカス・ブラウニー、シュードコリシスチス・エリプソイディアおよびシキゾリウムから選ばれる少なくとも1の藻類またはこれら藻類の変異株もしくは遺伝子組み換え株である、[9]に記載の方法。
[11]前記工程(3)または前記工程(3’)において、さらに超音波処理を行う、[1]〜[10]のいずれか1に記載の方法。
[12]刺激応答性磁性微粒子を含む、水溶液中に存在する非水溶性物を回収するためのキット。
[13]刺激応答性ポリマーと磁性微粒子を含む、水溶液中に存在する非水溶性物を回収するためのキット。
本発明の方法では、非水溶性物を含有する水溶液中に、刺激に応答して親水性と疎水性の相転移をする刺激応答性磁性微粒子を含有させるか、または刺激応答性ポリマーと磁性微粒子を含有させて、刺激応答性磁性微粒子に刺激を与えるか、または刺激応答性ポリマーと磁性微粒子に刺激を与えることにより、迅速且つ効率的に非水溶性物と刺激応答性磁性微粒子との凝集物、または非水溶性物と刺激応答性ポリマーと磁性微粒子との凝集物を調製することができる。
このようにして得られた凝集物を磁力により水溶液中から分離した後、前記刺激とは反対の刺激を該凝集物に与えて刺激応答性磁性微粒子または刺激応答性ポリマーを親水性とし、非水溶性物を刺激応答性磁性微粒子からリリースするか、または非水溶性物を刺激応答性ポリマーと磁性微粒子からリリースすることで、簡便且つ効率的に水溶液中から非水溶性物を分離、回収することができる。
図1は回収前の試料を示す図である。 図2は回収後の試料を示す図である。(実施例1) 図3は回収後の試料を示す図である。(実施例2) 図4AおよびBは回収後の試料を示す図である。(実施例3) 図5AおよびBは回収後の試料を示す図である。(実施例4) 図6AおよびBは回収後の試料を示す図である。(実施例5) 図7は回収後の試料を示す図である。(比較例1) 図8は回収後の試料を示す図である。(比較例2) 図9は回収後の試料を示す図である。(比較例3)
本発明の水溶液中の微細藻類の回収方法は、以下の工程(1)〜(3)を含む、水溶液中に存在する非水溶性物を回収する方法である。
(1)非水溶性物を含有する水溶液に、刺激に応答して親水性と疎水性の相転移をする刺激応答性磁性微粒子を含有させ、刺激を与えて刺激応答性磁性微粒子を疎水性として非水溶性物と結合させ、非水溶性物と磁性微粒子との凝集物を生成させる工程
(2)工程(1)で生成させた凝集物を磁力により水溶液中から分離する工程
(3)工程(2)で分離した凝集物に工程(1)と反対の刺激を与えて刺激応答性磁性微粒子を親水性とし、非水溶性物を刺激応答性磁性微粒子からリリースする工程
また、本発明の水溶液中の微細藻類の回収方法は、以下の工程(1’)〜(3’)を含む、水溶液中に存在する非水溶性物を回収する方法である。
(1’)非水溶性物を含有する水溶液に、刺激に応答して親水性と疎水性の相転移をする刺激応答性ポリマーと磁性微粒子を含有させ、刺激を与えて刺激応答性ポリマーを疎水性として非水溶性物と結合させ、非水溶性物と刺激応答性ポリマーと磁性微粒子との凝集物を生成させる工程
(2’)工程(1’)で生成させた凝集物を磁力により水溶液中から分離する工程
(3’)工程(2’)で分離した凝集物に工程(1’)と反対の刺激を与えて刺激応答性ポリマーを親水性とし、非水溶性物を刺激応答性ポリマーと磁性微粒子からリリースする工程
以下、各工程について説明する。
工程(1)および工程(1’)
工程(1)は、非水溶性物を含有する水溶液に、刺激に応答して親水性と疎水性の相転移をする刺激応答性磁性微粒子を含有させ、刺激を与えて該刺激応答性磁性微粒子を疎水性とすることにより、非水溶性物と刺激応答性磁性微粒子とを疎水性相互作用により結合させて、非水溶性物と刺激応答性磁性微粒子との凝集物を生成させる工程である。
また、工程(1’)は、非水溶性物を含有する水溶液に、刺激応答性ポリマーと磁性微粒子を含有させ、刺激を与えて刺激応答性ポリマーと磁性微粒子を疎水性とすることにより、非水溶性物と刺激応答性ポリマーと磁性微粒子とを疎水性相互作用により結合させて、非水溶性物と刺激応答性ポリマーと磁性微粒子との凝集物を生成させる工程である。
非水溶性物としては、微生物および動物細胞が好ましい。微生物としては、高度不飽和脂肪酸、天然色素、ビタミン、アミノ酸、ミネラル、アルコール類、水素、糖質、脂質、タンパク質、脂肪酸、有機酸および炭化水素から選ばれる1つ以上の物質を生産する微細藻類、細菌または菌類が挙げられ、該物質を生産する微細藻類が好ましい。また、動物細胞としては、幹細胞が挙げられ、人工多能性幹細胞(iPS細胞)または胚性幹細胞(ES細胞)が好ましい。
具体的には、天然物の色素の一種であるアスタキサンチン生産能を有する微細藻類[例えば、ヘマトコッカス藻(Haematococus pluvialis)、クロレラ・ゾフィンギエンシス(Chlorella zofingiensis)、クロロコックム属(Chlorococcum sp.)、ファフィア・ロドチーマ(Phaffia rhodozyma)、モノラフィディウム属(Monoraphidium sp.)など]、高度不飽和脂肪酸の一種であるDHA(ドコサヘキサエン酸)またはEPA(エイコサペンタエン酸)の生産能を有する微細藻類[例えば、ピンギオクリシス属(Pinguiochrysis sp.)、パブロバ属(Pavlova sp.)、フェオダクチラム・トリコヌタム(Phaeodactylum tricornutum)、ナンノクロロプシス・オーシャニカ(Nannochloropsis oceanica)など]が挙げられ、特に、炭化水素の生産能を有する微細藻類[例えば、オーランチオキトリウム属(Aurantiochytrium sp.)、ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)、クロレラ属(Chlorella sp.)、シリンドロテカ属(Cylindrotheca sp.)、ドナリエラ・プリモレクタ(Dunaliella primolecta)、イソクリシス属(Isochrysis sp.)、ナンノクロリス属(Nannochloris sp.)、ナンノクロロプシス属(Nannochloropsis sp.)、ネオクロリス・オレオアブンダンス(Neochloris oleoabundans)、ニッチア属(Nitzschia sp.)、フェオダクチラム・トリコルヌタム(Phaeodactylum tricornutum)、シゾキトリウム属(Schizochytrium sp.)、テトラセルミス・スエシカ(Tetraselmis suecica)、シュードコリシスチス・エリプソイディア(Pseudochoricystis ellipsoidea)およびマイクロシスティス属(Microcystis sp.)など]が好ましく、より好ましくは該微細藻類がオーランチオキトリウム、ボトリオコッカス・ブラウニー、シュードコリシスティス・エリプソイディアおよびシゾキトリウムから選ばれる微細藻類またはこれら微細藻類の変異株もしくは遺伝子組み換え株である。
非水溶性物を含有する水溶液としては、例えば、河川水、湖沼水、井戸水、水道原水、地下水、下水、廃水および公園の水等の環境中に存在する水試料、並びに動物細胞、微細藻類、細菌または菌類の培養液等が挙げられる。なお、水溶性物を含有する水溶液は必要に応じて、油水分離、濾過またはpH調整等の前処理を行ってもよい。
後述する実施例においては、非水溶性物として微細藻類であるオーランチオキトリウムを用いた結果を示したが、本発明の方法はiPS細胞またはES細胞等の動物細胞の回収にも好適である。
刺激応答性磁性微粒子とは、刺激応答性の機能を有する磁性微粒子をいう。刺激応答性磁性微粒子は、例えば、温度変化、pH変化、光変化およびイオン強度変化から選ばれる少なくとも1つに応答して、親水性と疎水性との相転移を生じる高分子が表面修飾された磁性微粒子であることが好ましい。
刺激応答性ポリマーとは、刺激応答性の機能を有するポリマーをいう。刺激応答性ポリマーは、例えば、例えば、温度変化、pH変化、光変化およびイオン強度変化から選ばれる少なくとも1つに応答して、親水性と疎水性との相転移を生じる高分子であることが好ましい。
磁性微粒子は、酸化鉄、またはフェライトからなる粒子でもよく、例えば多価アルコールとマグネタイトから製造した粒子のように、酸化鉄、フェライト、またはマグネタイトとその他の無機物、有機物とからなる粒子でもよい。
磁性微粒子は、例えば、特表2002−517085号公報等に開示された方法によって製造することができる。すなわち、鉄(II)塩、または鉄(II)塩及び金属(II)塩を含有する水溶液を、磁性酸化物の形成のために必要な酸化状態下に置き、水溶液のpHを7以上に維持して、酸化鉄、またはフェライト磁性体粒子を形成する方法である。また、金属(II)塩を含有する水溶液と鉄(III)塩を含有する水溶液をアルカリ性条件下で混合することによっても製造することができる。
あるいは、磁性微粒子は、多価アルコールおよびマグネタイトから製造することもできる。この多価アルコールは、構成単位に水酸基を少なくとも2個有し、鉄イオンと結合可能なアルコール構造体であれば、特に制限なく使用することができる。例えば、デキストラン、ポリビニルアルコール、マンニトール、ソルビトールまたはシクロデキストリンなどが挙げられる。例えば、特開2005−082538号公報に、デキストランを用いた磁性微粒子の製造方法が開示されており、この方法によって製造することもできる。また、グリシジルメタクリレート重合体のように、エポキシ基を有し、開環後多価アルコール構造体を形成する化合物も使用できる。
磁性微粒子の磁気分離が可能であれば特に限定されないが、回収効率の観点から、磁性微粒子の粒径は1〜10μmに調製することが好ましく、3〜7μmであることがより好ましい。
磁性微粒子の粒子径測定を行える機器としては、粒子径・粒度分布測定装置(Zetasizer Nano ZS、Malvern社製)、および透過型電子顕微鏡(日立透過電子顕微鏡 HT7700、日立ハイテクノロジーズ社製)が挙げられる。
本発明において使用できる磁性微粒子の市販品としては、例えば、Dynabeads(登録商標)、nanomag(登録商標)、deStarsおよびMACS(登録商標)などが挙げられる。
親水性と疎水性との相転移を生じる高分子としては、溶液中で可逆的に凝集状態と溶解状態とに変化する温度応答性ポリマーが挙げられる。温度応答性ポリマーとしては、ポリマーの重合度により溶解・析出する温度(下限臨界共溶温度または上限臨界共溶温度)を制御することができる、下限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーまたは上限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーであることが好ましく、下限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーであることがより好ましい。
下限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーは、下限臨界共溶温度が好ましくは10〜50℃であるポリマーであれば、特に制限はなく、公知の温度応答性ポリマーを用いることができる。下限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーとしては、アクリルアミド系ポリマーおよびコポリマー、窒素含有アクリレート系ポリマーおよびコポリマー、並びに、オキシアルキレン鎖を有するビニルエーテル系ポリマー及びコポリマーが好ましく挙げられ、アクリルアミド系ポリマー及びコポリマー、並びに、窒素含有アクリレート系モノマー及びコポリマーがより好ましく挙げられる。
下限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーとしては、具体的には、例えば、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−1−メチル−2−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−モルホリノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−1−メトキシメチルプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジ(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチル(メタ)アクリルアミド、N−ピロリジノメチル(メタ)アクリルアミド、N−ピペリジノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート((メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル)、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−2−モルホリノエチル(メタ)アクリレート、N−2−モルホリノエトキシエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドおよび8−(メタ)アクリロイル−1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4,5]デカンよりなる群から選ばれる単量体を用いた単重合体並びに共重合体(コポリマー)が挙げられる。
下限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーが表面修飾された磁性微粒子としては、具体的には、例えば、JNC社製「Therma−Max(登録商標)」(以下、「サーママックス」という場合がある。)[例えば、JNC社製「Therma−Max(登録商標)LC Carboxylic acid」(以下、「TM−LC」という場合がある。)]等が挙げられる。
JNC社製「Therma−Max(登録商標)」は、酸化鉄磁性微粒子表面にN−イソプロピルアクリルアミド(以下、「NIPAM」という場合がある。)のポリマーが修飾されている。本明細書において、単に「サーママックス」という場合は、温度応答性磁性微粒子を示しており、「サーママックス溶液」、「サーママックス原液」という場合は、温度応答性磁性微粒子にバッファー等を含んでいることを示している。
NIPAMのポリマー水溶液はポリマーの重合度により下限臨界共溶温度を制御することができ、32℃前後に下限臨界共溶温度を有し、この温度未満では水に分散するが、これ以上の温度では凝集し容易に磁気で回収できるようになる。
したがって、サーママックスは、その粒子表面を被覆しているNIPAMにより、溶液温度32℃を境として凝集と分散の両状態の間で可逆的に変化する。そのため、粒子が均一に溶液中に分散している32℃未満の分散状態では、磁気分離は容易ではないが、溶液温度を32℃以上にすると磁性微粒子は凝集塊を形成し始め、磁気分離が容易に可能となる。
上限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーは、分散状態では回収困難な磁性微粒子に前記温度応答性ポリマーを表面修飾することで、上限臨界共溶温度未満に温度を低下させることにより、回収可能な大きさの塊に刺激応答性磁性微粒子を凝集させる能力を有していることが必要である。逆に、上限臨界共溶温度以上に温度を上昇させることにより、凝集した刺激応答性磁性微粒子を分散させることができる。本発明の方法に好適に用いることができる温度応答性ポリマーの重合度は、通常50〜10000である。
上限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーとしては、具体的には、例えば、アクリロイルグリシンアミド、メタクリロイルグリシンアミド、アクリロイルアスパラギンアミド、メタクリロイルアスパラギンアミド、アクリロイルグルタミンアミドおよびメタクリロイルグルタミンアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種類の単重合体又は共重合体(コポリマー)が挙げられる。
下限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーおよび上限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーは、例えば、上記モノマーを有機溶媒又は水に溶解し、不活性ガスで系中を置換した後、重合温度まで昇温し、有機溶媒中であればアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、過酸化ベンゾイル等の過酸化物、水系であれば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等の重合開始剤を添加し、攪拌下加熱を続けることにより得ることができる。その後、貧溶媒中で再沈殿を行い、析出したポリマーをろ取することで、製造したポリマーを精製することができる。
刺激に応答して親水性と疎水性との相転移を生じる高分子を磁性微粒子の表面に固定する方法としては、例えば、反応性の官能基を介して該高分子を磁性微粒子に結合させる方法等の当技術分野で周知の方法が挙げられる(ADV.Polym.Sci.,Vol.4、p111、1965や、J.Polymer Sci.,Part−A,3,p1031,1965に記載されている)。
非水溶性物を含有する水溶液中への刺激応答性磁性微粒子の添加量は、水溶液中の非水溶性物と等量以上を添加することが好ましい。短時間で非水溶性物を吸着するためには、非水溶性物の濃度が低い場合でも高い回収率とするように刺激応答性磁性微粒子の添加量を大きくすることが好ましい。回収対象の非水溶性物を含有する水溶液の非水溶性物の濃度の範囲と、目標とする回収率に対応する刺激応答性磁性微粒子の必要量は予備試験により確認した後、添加量を設定することが好ましい。
前記刺激応答性磁性微粒子に付与する刺激としては、例えば、温度変化、pH変化、光変化およびイオン強度変化等が挙げられ、各刺激の条件は適宜調整すればよい。非水溶性物と磁性微粒子との凝集物が生成したことは、目視、吸光度の測定、透過率の測定または磁石による磁気回収等の手段により確認することができる。
工程(1)または(1’)においては、非水溶性物と刺激応答性磁性微粒子との凝集を促進、または非水溶性物と刺激応答性ポリマーと磁性微粒子との凝集を促進する凝集促進剤を含有する水溶液(以下、凝集促進剤溶液ともいう)を、非水溶性物と刺激応答性磁性微粒子、または非水溶性物と刺激応答性ポリマーと磁性微粒子を含有する水溶液に添加してもよい。凝集促進剤としては、例えば、NaSOが挙げられる。
凝集剤促進剤溶液の添加量としては特に限定されないが、非水溶性物と刺激応答性磁性微粒子、または非水溶性物と刺激応答性ポリマーと磁性微粒子が所望の温度で容易に凝集する程度まで、非水溶性物と刺激応答性磁性微粒子、または非水溶性物と刺激応答性ポリマーと磁性微粒子を含有する水溶液中に凝集剤促進剤溶液を添加すればよい。
工程(2)および工程(2’)
工程(2)は、工程(1)で生成させた凝集物を磁力により磁気分離する工程である。また、工程(2’)は、工程(1’)で生成させた凝集物を磁力により磁気分離する工程である。
磁気分離は、永久磁石、電磁石、超電導磁石または磁気カラムなどの従来公知の方法を用いることができる。凝集物の分離に用いる磁石等の磁力は、用いる磁性微粒子の有する磁力の大きさによって異なる。磁力は、目的の刺激応答性磁性微粒子を磁集可能な程度の磁力を適宜使用できる。磁石の素材としては、例えば、上述した磁性微粒子の素材で構成されたものを使用することができる。例えば、マグネ社製ネオジム磁石等が利用できる。
凝集物を磁気分離するには、凝集物の入った反応容器の外側から磁石を接触することによって、凝集物が磁石に吸着する。この状態で、上澄み液を排出することにより凝集物を分離することができる。なお、回収効率の観点から、非水溶性物に適した水等の溶媒を反応容器に添加し、工程(3)または工程(3’)に供することが好ましい。
工程(3)および工程(3’)
工程(3)は、工程(2)で分離した凝集物に工程(1)と反対の刺激を与えて刺激応答性磁性微粒子を親水性とすることによる刺激応答性磁性微粒子の表面における力学的な変化を利用して非水溶性物を刺激応答性磁性微粒子からリリースする工程である。
また、工程(3’)は、工程(2’)で分離した凝集物に工程(1’)と反対の刺激を与えて刺激応答性ポリマーを親水性とすることによる刺激応答性ポリマーの力学的な変化を利用して、非水溶性物を刺激応答性ポリマーと磁性微粒子からリリースする工程である。
ここで、特開2000−140632号公報には、刺激応答性高分子と標的物質に対して特異的に相互作用する物質を含み、刺激応答材料高分子が物理的刺激により構造変化を起こすことで、標的物質に対して特異的に相互作用する物質の相互作用が化学的もしくは物理的環境の変化を受け、標的物質とその相互作用力が温度等の物理的刺激により可逆的に変化する複合化材料を有する充填剤を用いる、標的物質の分離方法が記載されている。
本発明の方法と特開2000−140632号公報に記載の分離方法との異なる点は、標的物質に対する特異的なリガンドまたは特異的な官能基を利用せず、刺激応答性磁性微粒子の表面、または凝集時の刺激応答性ポリマーの表面と標的物質の表面の疎水性相互作用により結合する点である。また、分離方法もカラムではなく磁気分離を使用する点においても異なる。
前記工程(1)または工程(1’)と反対の刺激を与えるとは、具体的には、例えば、工程(1)または工程(1’)における刺激が、水溶液の温度を上昇させる刺激であった場合、工程(3)または工程(3’)における刺激は水溶液の温度を低下させる刺激を与えることを意味する。また、例えば、工程(1)または工程(1’)における刺激が、水溶液のpHを上昇させる刺激であった場合、工程(3)または工程(3’)における刺激は、水溶液のpHを低下させる刺激を与えることを意味する。
水溶液の温度を上昇させる刺激を与える方法としては、例えば、温水を添加する方法および反応容器を加温する方法が挙げられる。また、水溶液の温度を低下させる刺激を与える方法としては、例えば、冷水を添加する方法および反応容器を冷却する方法が挙げられる。
工程(3)または工程(3’)においては、さらに超音波処理または撹拌等を行うことにより、非水溶性物の回収効率を向上することができる。非水溶性物を磁性微粒子からリリースしたことは、目視、吸光度の測定、透過率の測定または磁石による磁気回収等の手段により確認することができる。
本発明の水溶液中に存在する非水溶性物を回収するためのキットは、例えば、以下の試薬から構成される。
試薬A:刺激応答性磁性微粒子の分散液、または刺激応答性ポリマーと磁性微粒子との分散液
試薬B:凝集促進剤溶液(一例として、1MのNaSO水溶液が挙げられる)
試薬C:希釈用バッファー(上記試薬A及びBの希釈、並びに非水溶性物を含有する水溶液の希釈に使用可能な緩衝液である。一例として、トリス塩酸緩衝液、リン酸緩衝液等が挙げられる。)
試薬D:回収対象物質(非水溶性物)の標準品(一例として、精製した微細藻類が挙げられる。)。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されることはない。
オーランチオキトリウムの濃度の測定は、株式会社島津製作所社製UV−1700 PharmaSpecを用いて、測定波長403nmで測定した。また、本実施例で使用した水は、ミリポア社製純水製造装置「Elix UV 35」によって精製された導電率14.7MΩcmの精製水(池田理化社製、品番1−4704−01、型番W−20)である。
[実施例1]
60mlのサンプル瓶にオーランチオキトリウム藻類培養液(0.03質量%、pH:9.97、高砂熱学工業社より入手)を3.0mlと熱応答性ポリマー(PNIPAM、シグマ−アルドリッチ社製)を固定化した磁性微粒子(粒径2.8μm、ダイナビーズ:M−270、ベリタス社製)を2.0ml(10mg/ml)添加し、液温が50℃のウォーターバス中で、2分間、回転数300rpmにて攪拌した。
その後、攪拌を停止し、磁性微粒子と一緒にオーランチオキトリウムを4,000Gのネオジウム磁石にて回収した。回収前のオーランチオキトリウム藻類培養液を図1に、回収後の試料を図2に示す。この結果から、磁性微粒子と一緒にオーランチオキトリウムを一部回収できることがわかった。
[実施例2]
60mlのサンプル瓶にオーランチオキトリウム藻類培養液(0.03質量%、pH:9.97、高砂熱学工業社より入手)を3.0mlと熱応答性ポリマー(PNIPAM、シグマ−アルドリッチ社製)を固定化した磁性微粒子(粒径1.0μm、ダイナビーズ:MyOne、ベリタス社製)を2.0ml(10mg/ml)添加し、液温が50℃のウォーターバス中で、2分間、回転数300rpmにて攪拌した。
その後、攪拌を停止し、磁性微粒子と一緒にオーランチオキトリウムを4,000Gのネオジウム磁石にて回収した。回収前のオーランチオキトリウム藻類培養液を図1に、回収後の試料を図3に示す。この結果から、磁性微粒子と一緒にオーランチオキトリウムを一部回収できることがわかった。
[実施例3]
60mlのサンプル瓶にオーランチオキトリウム藻類培養液(0.03質量%、pH:9.97、高砂熱学工業社より入手)を3.0mlと熱応答性ポリマー(PNIPAM、シグマ−アルドリッチ社製)の水溶液を0.3ml(濃度1.0質量%)、磁性微粒子(粒径4.0μm、森下弁柄工業社製:MTB−30)を0.022g添加し、液温が50℃のウォーターバス中で、2分間、回転数300rpmにて攪拌した。なお、PNIPAMはポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)の略号である。
その後、攪拌を停止し、磁性微粒子と一緒にオーランチオキトリウムを4,000Gのネオジウム磁石で回収した。回収前のオーランチオキトリウム藻類培養液を図1に、回収後の試料を図4Aに示す。図4Aに示すように、磁性微粒子回収後の上清は、透明であった。
磁気分離後の磁性微粒子に3.0mlの蒸留水を添加し、氷浴下、超音波洗浄器で10分間、回転数300rpmにて攪拌した。その後、攪拌を停止し、磁性微粒子だけを4,000Gのネオジウム磁石にて回収した。磁性微粒子回収後の試料を図4Bに示す。図4Bに示すように、磁性微粒子回収後の上清から、オーランチオキトリウムが溶出したことが確認された。
[実施例4]
60mlのサンプル瓶にオーランチオキトリウム藻類培養液(0.03質量%、pH:9.97、高砂熱学工業社より入手)を3.0mlと熱応答性ポリマー(PNIPAM、シグマ−アルドリッチ社製)を固定化した磁性微粒子(粒径2.8μm、ダイナビーズ:M270、ベリタス社製)を2.0ml(10mg/ml)および、熱応答性ポリマー(PNIPAM、シグマ−アルドリッチ社製)を0.1ml(0.5mg/ml)添加し、液温が50℃のウォーターバス中で、2分間、回転数300rpmにて攪拌した。
その後、攪拌を停止し、生成した磁性微粒子と一緒にオーランチオキトリウムを4,000Gのネオジウム磁石にて回収した。回収前のオーランチオキトリウム藻類培養液を図1に、回収後の試料を図5Aに示す。図5Aに示すように、磁性微粒子回収後の上清は、透明であった。
磁気分離後の磁性微粒子に3.0mlの蒸留水を添加し、氷浴下で2分間、回転数300rpmにて攪拌した。その後、攪拌を停止し、磁性微粒子を4,000Gのネオジウム磁石にて回収した。磁性微粒子回収後の試料を図5Bに示す。図5Bに示すように、磁性微粒子回収後の上清から、オーランチオキトリウムが溶出したことが確認された。
[実施例5]
60mlのサンプル瓶にオーランチオキトリウム藻類培養液(0.03質量%、pH:9.97、高砂熱学工業社より入手)を3.0mlと熱応答性ポリマー(PNIPAM、シグマ−アルドリッチ社製)を固定化した磁性微粒子(粒径1.0μm、ダイナビーズ:MyOne、ベリタス社製)を2.0ml(10mg/ml)および、熱応答性ポリマー(PNIPAM、シグマ−アルドリッチ社製)を0.1ml(0.5mg/ml)添加し、液温が50℃のウォーターバス中で、2分間、回転数300rpmにて攪拌した。
その後、攪拌を停止し、生成した磁性微粒子と一緒にオーランチオキトリウムを4,000Gのネオジウム磁石にて回収した。回収前のオーランチオキトリウム藻類培養液を図1に、回収後の試料を図6Aに示す。図6Aに示すように、磁性微粒子回収後の上清は、透明であった。
磁気分離後の磁性微粒子に3.0mlの蒸留水を添加し、氷浴下で2分間、回転数300rpmにて攪拌した。その後、攪拌を停止し、磁性微粒子だけを4,000Gのネオジウム磁石にて回収した。磁性微粒子回収後の試料を図6Bに示す。図6Bに示すように、磁性微粒子回収後の上清から、オーランチオキトリウムが溶出したことが確認された。
[比較例1]
60mlのサンプル瓶にオーランチオキトリウム藻類培養液(0.03質量%、pH:9.97、高砂熱学工業社より入手)を3.0mlと磁性微粒子(粒径2.8μm、ダイナビーズ:M−270、ベリタス社製)を2.0ml(10mg/ml)添加し、室温で2分間、回転数300rpmにて攪拌した。
その後、攪拌を停止し、4,000Gのネオジウム磁石にて、生成した磁性微粒子と一緒にオーランチオキトリウムの回収を試みた。回収前のオーランチオキトリウム藻類培養液を図1に、回収後の試料を図7に示す。図7に示すように、4,000Gのネオジウム磁石にて磁性微粒子と一緒にオーランチオキトリウムを回収できないことがわかった。
[比較例2]
60mlのサンプル瓶にオーランチオキトリウム藻類培養液(0.03質量%、pH:9.97、高砂熱学工業社より入手)を3.0mlと磁性微粒子(粒径1.0μm、ダイナビーズ:MyOne、ベリタス社製)を2.0ml(10mg/ml)添加し、室温で2分間攪拌した。
その後、攪拌を停止し、4,000Gのネオジウム磁石にて磁性微粒子と一緒にオーランチオキトリウムの回収を試みた。回収前のオーランチオキトリウム藻類培養液を図1に、回収後の試料を図8に示す。図8に示すように、4,000Gのネオジウム磁石にて磁性微粒子と一緒にオーランチオキトリウムを回収できないことがわかった。
[比較例3]
60mlのサンプル瓶にオーランチオキトリウム藻類培養液(濃度0.03質量%、pH:9.97、高砂熱学工業社より入手)を3.0mlと磁性微粒子(粒径4.0μm、森下弁柄工業社製:MTB−30)を0.022g添加し、液温が50℃のウォーターバス中で、2分間、回転数300rpmにて攪拌した。
その後、攪拌を停止し、4,000Gのネオジウム磁石にて磁性微粒子と一緒にオーランチオキトリウムの回収を試みた。回収前のオーランチオキトリウム藻類培養液を図1に、回収後の試料を図9に示す。図9に示すように、4,000Gのネオジウム磁石にて磁性微粒子と一緒にオーランチオキトリウムを回収できないことがわかった。

Claims (10)

  1. (1’)非水溶性物を含有する水溶液に、刺激に応答して親水性と疎水性の相転移をする刺激応答性ポリマーと磁性微粒子とを別々に含有させ、刺激を与えて刺激応答性ポリマーを疎水性として非水溶性物と結合させ、非水溶性物と刺激応答性ポリマーと磁性微粒子との凝集物を生成させる工程と、
    (2’)工程(1’)で生成させた凝集物を磁力により水溶液中から分離する工程と、
    (3’)溶媒中で、工程(2’)で分離した凝集物に工程(1’)と反対の刺激を与えて刺激応答性ポリマーを親水性とし、非水溶性物を刺激応答性ポリマーと磁性微粒子からリリースする工程と、を有し、
    前記工程(1’)において前記非水溶性物に対する特異的なリガンドまたは特異的な官能基を利用せず、凝集時の刺激応答性ポリマーの表面と前記非水溶性物の表面とを、疎水性相互作用により結合させる、水溶液中に存在する非水溶性物を回収する方法。
  2. 前記刺激応答性ポリマーが、温度変化、pH変化、光変化およびイオン強度変化から選ばれる少なくとも1つに応答して、親水性と疎水性との相転移を生じる高分子である請求項1に記載の方法。
  3. 前記親水性と疎水性との相転移を生じる高分子が下限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーまたは上限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーである請求項2に記載の方法。
  4. 前記下限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーがN−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−1−メチル−2−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−モルホリノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−(メタ)アクリロイルピロリジン、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(2,2−ジメトキシエチル)−N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−1−メトキシメチルプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ジ(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−2−メトキシエチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシエトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチル(メタ)アクリルアミド、N−ピロリジノメチル(メタ)アクリルアミド、N−ピペリジノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート((メタ)アクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル)、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N−2−モルホリノエチル(メタ)アクリレート、N−2−モルホリノエトキシエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドおよび8−(メタ)アクリロイル−1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4,5]デカンからなる群から選ばれる少なくとも1種類の単重合体又は共重合体である、請求項3に記載の方法。
  5. 前記上限臨界共溶温度を有する温度応答性ポリマーがアクリロイルグリシンアミド、メタクリロイルグリシンアミド、アクリロイルアスパラギンアミド、メタクリロイルアスパラギンアミド、アクリロイルグルタミンアミド及びメタクリロイルグルタミンアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種類の単重合体又は共重合体である、請求項3に記載の方法。
  6. 前記非水溶性物が微生物である請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 前記微生物が、高度不飽和脂肪酸、天然色素、ビタミン、アミノ酸、ミネラル、アルコール類、水素、糖質、脂質、タンパク質、脂肪酸、有機酸および炭化水素から選ばれる少なくとも1の物質を生産する微細藻類である、請求項6に記載の方法。
  8. 前記微生物が炭化水素を生産する微細藻類であって、該微細藻類がオーランチオキトリウム、ボトリオコッカス・ブラウニー、シュードコリシスチス・エリプソイディアおよびシキゾリウムから選ばれる少なくとも1の藻類またはこれら藻類の変異株もしくは遺伝子組み換え株である、請求項7に記載の方法。
  9. 前記工程(3’)において、さらに超音波処理を行う、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
  10. 刺激応答性ポリマーと磁性微粒子を含む、水溶液中に存在する非水溶性物を回収するためのキットであって、
    前記刺激応答性ポリマーは、前記非水溶性物に対する特異的なリガンドまたは特異的な官能基を含まず、前記刺激応答性ポリマーの表面と前記非水溶性物の表面とを、疎水性相互作用により結合させ得る、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を実施するための、キット。
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