<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る経路案内装置100(特許請求の範囲の「車線変更情報提供装置」に相当)の機能構成例を示すブロック図である。経路案内装置100は、車両に設けられた、いわゆるナビゲーション装置であり、車両の現在位置(以下、「自車位置」という)を検出する機能や、自車位置からユーザにより設定された目的地までの経路(以下、「誘導経路」という)を探索し、案内する機能等を備える。
なお、本実施形態では、経路案内装置100を、車両に設けられたナビゲーション装置として説明するが、経路案内装置100は、車両に設けられた装置である必要はなく、例えば、携帯端末(スマートフォンや、タブレット型PC、ノート型PC等)であってもよい。すなわち、以下で説明する実施形態は、誘導経路の案内を行う装置に広く適用可能である。
図1に示すように、本実施形態に係る経路案内装置100には、タッチパネル200および音声処理装置300が接続されている。タッチパネル200は、液晶表示パネルや有機ELパネル等の画像を表示する機能を有する表示パネルと、表示パネルに重ねて配置され、タッチパネル200に対するユーザのタッチ操作を検出するタッチセンサとを備える。音声処理装置300は、D/Aコンバータや、アンプ回路、車両の車内に設けられたスピーカ等を備え、入力した音声信号にD/A変換や、増幅等の信号処理を行って、スピーカから音声信号に基づく音声を出力する。
図1に示すように、経路案内装置100は、その機能構成として、自車位置検出部10、経路探索部11(特許請求の範囲の「経路取得部」に相当)、制限速度取得部12および経路案内部13(特許請求の範囲の「車線変更情報提供部」に相当)を備えている。また、経路案内装置100は、地図データ記憶部20および誘導経路情報記憶部21を備えている。
上記各機能ブロック10〜13は、ハードウェア、DSP(Digital Signal Processor)、ソフトウェアの何れによっても構成することが可能である。例えばソフトウェアによって構成する場合、上記各機能ブロック10〜13は、実際にはコンピュータのCPU、RAM、ROMなどを備えて構成され、RAMやROM、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記録媒体に記憶されたプログラムが動作することによって実現される。以上のことは、後述する各機能ブロックについても同様である。
地図データ記憶部20は、地図データ20aを記憶する。地図データ20aは、背景の描画に用いられるデータや、道路の描画に用いられるデータ、道路名や、交差点名、地名等の文字列の描画に用いられるデータ等の地図の描画に用いられる各種データを含んでいる。また、地図データ20aは、地図上の施設に関する施設情報を含んでいる。また、地図データ20aは、誘導経路の探索に用いられる道路データを含んでいる。道路データは、ノードに関するノードテーブルTB1、および、リンクに関するリンクテーブルTB2を含んでいる。ノードは、交差点、その他の道路網における結節点ごとに定義された点であり、リンクは、ノードとノードとの間の道路区間ごとに定義された線である。
ノードテーブルTB1は、地図上のノードごとにノードデータを有するテーブルである。図2(A)は、ノードデータが有する情報の一部を示す図である。図2(A)に示すように、ノードデータは、ノード番号と、ノード位置情報と、接続進入リンク情報と、接続退出リンク情報とを含む。
ノード番号は、ノードを識別する識別情報である。ノード位置情報は、ノードの地図上の位置を示す情報である。接続進入リンク情報は、ノードに接続するリンクであって、ノードに進入する方向を進行方向とするリンクのそれぞれのリンク番号(後述)を示す情報である。接続退出リンク情報は、ノードに接続するリンクであって、ノードから退出する方向を進行方向とするリンクのそれぞれのリンク番号を示す情報である。なお、ノードデータに含まれる情報として例示した情報は、一部の情報であり、ノードデータには、例示した情報の他に、ノードが交差点である場合にその交差点に設けられたレーンに関するレーン情報や、ノード属性等のノードに関する他の情報が含まれている。
リンクテーブルTB2は、地図上のリンクごとにリンクデータを有するテーブルである。図2(B)は、リンクデータが有する情報の一部を示す図である。図2(B)に示すように、リンクテーブルTB2の1件のレコードは、リンク番号と、制限速度情報と、車線数情報と、第1ノード番号と、第2ノード番号と、を有する。リンク番号は、リンクを識別する識別情報である。制限速度情報は、リンクに対応する道路に設定された制限速度を示す情報である。
第1ノード番号は、リンクの一方の端に接続されたノードのノード番号を示す情報である。第2ノード番号は、リンクの他方の端に接続されたノードのノード番号を示す情報である。車線数情報は、リンクに対応する道路に設けられた車線の車線数(車線の個数)を示す情報である。ここで、リンクは、1つの片側道路について1つ定義される場合がある。片側道路とは、1つの道路において、1又は複数の車線を有し、一の方向への通行が許可された部分を便宜的に表現したものである。例えば、国道や高速道路において、上り線、下り線がそれぞれ、片側道路である。リンクに対応する道路が片側道路である場合、そのリンクのリンクデータが有する車線数情報は、その片側道路に設けられた車線の車線数を示している。
なお、リンクデータに含まれる情報として例示した情報は、一部の情報であり、リンクデータには、例示した情報の他に、リンク属性や、リンクコスト、リンク長等のリンクに関する他の情報が含まれている。
さて、図1に示す自車位置検出部10は、図示しないGPSや、ジャイロセンサ、加速度センサ、車速センサ等からの入力、および、地図データ20aに含まれる情報に基づいて、自車位置を検出する。自車位置を検出する方法はどのような方法であってもよい。
経路探索部11は、タッチパネル200を用いたユーザの指示等に応じて、誘導経路(上述した通り、自車位置からユーザにより設定された目的地に至るまでの経路)を探索する。経路探索部11は、自車位置検出部10により検出された自車位置や、地図データ20aに含まれる道路データ等に基づいて、誘導経路を探索する。経路を探索する方法はどのような方法であってもよい。経路探索部11は、探索した誘導経路を示す誘導経路情報を、誘導経路情報記憶部21に記憶する。
図3は、誘導経路情報の内容の一例を単純化して示す図である。図3に示すように、誘導経路情報は、誘導経路を、リンク番号とノード番号との組み合わせによって表した誘導経路対応情報を有する。また、誘導経路対応情報のノード番号のそれぞれには、案内地点フラグが対応付けられている。案内地点フラグは、対応するノード番号のノードが、案内地点(後述)であるか否かを示すフラグである。また、誘導経路情報は、案内地点ごとに(=案内地点フラグがオンの地点ごとに)、設定制限速度情報を有する。設定制限速度情報は、案内地点に至る道路(=誘導経路に沿って走行する車両が案内地点に進入するときに走行する道路)に設定された制限速度を示す情報である。後述するように、制限速度取得部12は、案内地点に至る道路に設定された制限速度情報を取得し、取得した制限速度情報を、設定制限速度情報として、案内地点のノード番号と対応付けて記憶させる。以下、案内地点について説明する。
本実施形態において、「案内地点」とは、誘導経路上の地点(ノードが定義された結節点)であって、当該地点に至る道路において、当該地点に進入する際に走行することが推奨される車線が存在するような地点を意味する。
図4(A)は案内地点である分岐点B1の一例を示す図であり、(B)は案内地点である交差点X1の一例を示す図である。図4の各図において、方角は図中で示す方角に従うものとする。本実施形態において、「分岐点」とは、1つの道路が複数の方向に分かれた地点(結線点)を意味する。また、本実施形態において、「交差点」とは、複数の道路が交わる地点(結線点)を意味する。
図4(A)では、南北に延びる片側道路DA1が、北東に延びる片側道路DA2および北西に延びる片側道路DA3に分かれる地点に分岐点B1が形成されている。また、道路DA1には、北に向かって左から順番に車線DA1a、DA1bの2つの車線が形成されている。例えば、都市高速道路や、高規格幹線道路において、道路が向かう方面に応じて分岐する地点に、図4(A)で示す分岐点B1のような分岐点が形成される。
図4(A)に示す地図において、車両が位置PA1に位置すると共に、誘導経路が、位置PA1から北へ進んだ後、分岐点B1を進行方向に向かって右側に分岐して片側道路DA2に進入し、片側道路DA2を走行する経路であるものとする。この場合、分岐点B1を右側に向かって分岐するためには、分岐点B1に進入する際に、車線DA1bを走行することが推奨される。また、図4(A)に示す地図において、車両が位置PA1に位置すると共に、誘導経路が、位置PA1から北へ進んだ後、分岐点B1を進行方向に向かって左側に分岐して片側道路DA3に進入し、片側道路DA3を走行する経路であるものとする。この場合、分岐点B1を左側に向かって分岐するためには、分岐点B1に進入する際に、車線DA1aを走行することが推奨される。
このように、分岐点B1は、誘導経路上の地点であって、当該地点に至る道路(片側道路DA1)において、当該地点に進入する際に走行することが推奨される車線が存在する地点であり、「案内地点」に相当する。
また、図4(B)では、南北に延びる道路DB1と、東西に延びる道路DB2とが交わる地点に交差点X1が形成されている。道路DB1において、交差点X1に北へ向かって進入する部分には、片側道路DB11が形成されている。片側道路DB11には、北に向かって左から順番に車線DB11a、DB11b、DB11cの3つの車線が形成されている。交差点X1には、左折専用レーン、直進専用レーンおよび右折専用レーンが設けられており、車線DB11aは左折専用レーンに連結し、車線DB11bは直進専用レーンに連結し、車線DB11cは右折専用レーンに連結している。
図4(B)に示す地図において、車両が位置PA1に位置すると共に、誘導経路が、位置PA1から北へ進んだ後、交差点X1を左折して道路DB2に進入し、道路DB2を走行する経路であるものとする。この場合、交差点X1を左折するためには、交差点X1に進入する際に、車線DB11aを走行することが推奨される。また、図4(B)に示す地図において、車両が位置PA1に位置すると共に、誘導経路が、位置PA1から北へ進んだ後、交差点X1を直進する経路であるものとする。この場合、交差点X1を直進するためには、交差点X1に進入する際に、車線DB11bを走行することが推奨される。また、図4(B)に示す地図において、車両が位置PA1に位置すると共に、誘導経路が、位置PA1から北へ進んだ後、交差点X1を右折して道路DB2に進入し、道路DB2を走行する経路であるものとする。この場合、交差点X1を右折するためには、交差点X1に進入する際に、車線DB11cを走行することが推奨される。
このように、交差点X1は、誘導経路上の地点であって、当該地点に至る道路(片側道路DB11)において、当該地点に進入する際に走行することが推奨される車線が存在する地点であり、「案内地点」に相当する。
経路探索部11は、誘導経路に含まれる各地点について、案内地点に相当するか否かを判定する。本実施形態では、経路探索部11は、誘導経路上の一の地点について、地図データ20aから、当該一の地点のノードデータと、当該一の地点に進入する道路のリンクデータとを取得する。そして、経路探索部11は、当該一の地点から退出する道路が複数あると共に、当該一の地点に進入する道路に複数の車線が設けられているか否かを判定し、退出する道路が複数あり、かつ、進入する道路に複数の車線が設けられている場合は、当該一の地点が案内地点に相当すると判定する。なお、上述した誘導経路上の地点が案内地点か否か判定は、一例であり、他の方法で当該判定を行う構成でもよい。
経路探索部11は、誘導経路情報の案内地点フラグについて、対応するノードが案内地点の場合はフラグをオンし、対応するノードが案内地点でない場合はフラグをオフする。
制限速度取得部12は、経路探索部11により探索された誘導経路に含まれる案内地点(=誘導経路上に存在する地点であって、案内地点フラグがオンの地点)のそれぞれについて、案内地点に至る道路に設定された制限速度情報をリンクテーブルTB2から取得する。制限速度取得部12は、取得した制限速度情報を、設定制限速度情報として、誘導経路情報の案内地点のノード番号と対応付けて誘導経路情報記憶部21に記憶させる。
詳述すると、制限速度取得部12は、誘導経路情報の案内地点フラグによって、誘導経路に含まれる地点のうち、案内地点を特定する。次いで、制限速度取得部12は、誘導経路情報に基づいて、案内地点に進入する道路のリンクIDを特定し、リンクテーブルTB2を参照して、特定したリンクIDに対応するリンクデータを取得し、リンクデータに含まれる制限速度情報を取得する。次いで、制限速度取得部12は、取得した制限速度情報を、設定制限速度情報として、誘導経路情報に含まれる案内地点のノード番号と対応付けて誘導経路情報記憶部21に記憶させる。以上の処理が行われる結果、誘導経路情報では、案内地点のノード番号のそれぞれに、案内地点に至る道路に設定された制限速度を示す設定制限速度情報が対応付けられた状態となる。
経路案内部13は、タッチパネル200を用いたユーザの指示等に応じて、誘導経路を案内する。経路案内部13は、地図データ20aに含まれる情報に基づいて、タッチパネル200に地図を表示すると共に、自車位置検出部10により検出された自車位置、および、誘導経路情報記憶部21に記憶された誘導経路情報に基づいて、地図上に自車位置を示すマークおよび誘導経路を示す画像を表示することによって、誘導経路を案内する。また、経路案内部13は、適宜、音声処理装置300を制御して、所定の内容の音声を出力し、誘導経路を案内する。
特に、本実施形態に係る経路案内部13は、誘導経路の案内中、案内地点の手前で、案内地点に至る前に行うことを推奨する車線変更の案内(以下、単に「車線変更案内」という)を行う。経路案内部13による車線変更案内は、車線変更情報提供部による「車線変更に関する情報の提供」に相当する。以下、車線変更案内を行うときの経路案内部13の処理について詳述する。なお、本実施形態において、「車線変更案内」は、実際に車線変更が行われるか否かにかかわらず、案内地点の手前で走行することを推奨する車線の案内を広く含む概念である。従って、既に右側の車線を走行している車両の運転手に、右側の車線への車線変更を案内すること(右側の車線が推奨されることを案内すること)も「車線変更案内」に含まれる。
ここで、道路の形状の複雑さ(カーブの多さや、カーブの曲率の大きさ、勾配の大きさ等)や、道路の通行状態の良否(交通量の多寡等)によって、その道路で車両の運転が行われる場合の運転の難易度は変化する。例えば、カーブの多い複雑な形状の道路は、カーブの少ない単純な形状の道路と比較して、運転の難易度が高い。そして、運転の難易度が高い道路ほど、車線変更を行うのときの運転の難易度は高い。従って、車線変更案内は、車線変更が行われる道路における運転の難易度を反映したタイミングで行われるべきである。上述したように、運転の難易度が高い道路ほど、車線変更を行うのが難しく、案内地点の前で確実に車線変更が完了した状態とするために、早いタイミングで車線変更案内を行う必要があるからである。
また、運転の難易度に応じて車線変更を案内するタイミングを変更するために、道路ごとに、地図データの情報等を用いて道路の形状を算出し、道路の形状の複雑さを推定し、また、道路の通行状態に関する情報を収集し、収集した情報を分析して道路の通行状態の良否を推定し、推定結果に基づいて、車線変更を案内するタイミングを変更することが可能である。しかしながら、この場合、処理が複雑であり、処理負荷が大きく、また、処理に要する時間が長時間化してしまう。以上を踏まえ、本実施形態に係る経路案内部13は、車線変更案内について、以下の処理を実行する。
経路案内部13は、誘導経路の案内中、誘導経路上で次に車両が経由する案内地点(以下、「次案内地点」という)と、自車位置との距離が判定開始距離となったか否かを監視する。判定開始距離は、後述する案内開始距離の最大値よりも十分に長い距離とされている。なお、本実施形態において、自車位置と、誘導経路上の所定の位置との距離は、自車位置から当該所定の位置まで誘導経路に沿って車両が走行した場合の走行距離を意味する。経路案内部13は、地図データ20aが有する情報、その他の情報に基づいて、既存の技術により、自車位置と、当該所定の位置との距離を算出する。
次案内地点と自車位置との距離が判定開始距離となった場合、経路案内部13は、誘導経路情報記憶部21が記憶する誘導経路情報を参照し、当該情報において、次案内地点のノード番号と対応付けられた設定制限速度情報を取得する。ここで取得した設定制限速度情報は、誘導経路上で次案内地点に至る道路に設定された制限速度を示す情報である。
次いで、経路案内部13は、取得した設定制限速度情報に基づいて、案内開始距離(特許請求の範囲の「所定距離」に相当)の値を決定する。案内開始距離は、車線変更案内を実行するタイミングを規定する距離であり、経路案内部13は、次案内地点と自車位置との距離が案内開始距離となったタイミングで、車線変更案内を実行する。なお、案内地点と自車位置との距離が案内開始距離となったときにおける自車位置が、特許請求の範囲の「車線変更案内地点」に相当する。
案内開始距離の値を決定する処理について詳述すると、経路案内部13は、取得した設定制限速度情報が示す制限速度が小さいほど、案内開始距離の値を大きくし、当該制限速度が大きいほど、案内開始距離の値を小さくする。この結果、誘導経路上で次案内地点に進入する道路に設定された制限速度が小さいほど、車線変更案内が行われるタイミングが早くなり、当該制限速度が大きいほど、車線変更案内が行われるタイミングが遅くなる。
具体的には、本実施形態に係る経路案内部13は、設定制限速度情報が示す制限速度が「80km/h」以上であるか否かを判定する。「80km/h」以上の場合、経路案内部13は、案内開始距離の値を「1km」に決定する。一方、「80km/h」を下回る場合、経路案内部13は、案内開始距離の値を「5km」に決定する。本実施形態の場合、案内開始距離の最大値は「5km」であり、上述した判定開始距離は、「5km」よりも十分に大きい値とされる。
案内開始距離の値を決定した後、経路案内部13は、自車位置と案内地点との距離が、案内開始距離となったか否かを監視する。自車位置と案内地点との距離が案内開始距離となった場合、経路案内部13は、車線変更案内を行う。車線変更案内において、経路案内部13は、走行することを推奨する車線を明示した上で、その車線へ車線変更することを促す報知を行う。経路案内部13は、走行することを推奨する車線を、案内地点が車両が走行する方向等を踏まえて、既存の技術により適切に決定する。なお、車線変更案内は、どのような態様で行われてもよい。例えば、タッチパネル200に表示された地図に重畳して車線変更に関する画像を表示してもよく、地図上にポップアップにより、車線変更を行う道路の周辺の拡大地図を表示して、当該拡大地図に車線変更に必要な情報を付加してもよく、音声により車線変更を案内してもよい。
以上のように、本実施形態に係る経路案内部13は、誘導経路上で次案内地点に進入する道路に設定された制限速度が小さいほど、早いタイミングで車線変更案内を行い、当該制限速度が大きいほど、遅いタイミングで車線変更案内を行う。この構成のため、以下の効果を奏する。すなわち、道路に設定された制限速度は、その道路の道路形状(道路線形)の複雑さや、道路の通行状態の良否が反映されて定められる。すなわち、道路に設定された制限速度の値は、道路形状が複雑なほど小さく、道路形状が単純なほど大きい傾向がある。また、道路に設定された制限速度の値は、道路の通行状態が悪いほど小さく、道路の通行状態が良いほど大きい傾向がある。従って、道路に設定された制限速度とその道路における運転の難易度とには、制限速度が小さいほど運転の難易度が高く、制限速度が大きいほど運転の難易度が低いという関係がある。このため、制限速度は、その道路における運転の難易度の指標として用いることができる。
以上のことを踏まえ、上記構成によれば、経路案内部13は、車線変更案内を、制限速度が遅いほど早いタイミングで実行するため、道路に設定された制限速度が、その道路における運転の難易度の指標として用いることが可能であることを好適に利用して、運転の難易度を反映した適切なタイミングで、車線変更案内を行える。より具体的には、経路案内部13は、運転の難易度が高い場合は、早いタイミングで車線変更案内を行うことができ、逆に、運転の難易度が低い場合は、遅いタイミングで車線変更案内を行うことができる。これにより、運転の難易度が高い道路で車線変更を行う必要がある場合は、運転手は、早いタイミングで車線変更の案内を得ることができ、余裕をもって車線変更を行うできる。
さらに、上記構成によれば、経路案内部13は、地図データ20aの情報等を用いて道路の形状を算出するといった複雑な処理を実行することなく、道路ごとに予め設定されている制限速度を用いた単純な処理を実行するだけで、運転の難易度を反映した適切なタイミングで、車線変更案内を行うことができる。このため、処理負荷を低減でき、処理に要する時間の長時間化を防止できる。
なお、本実施形態では、経路案内部13は、案内地点と自車位置との距離が判定開始距離となったことをトリガとして、案内開始距離の値を決定する。この点に関し、案内開始距離の値を決定するトリガは、本実施形態で例示したものに限らない。すなわち、案内開始距離の値は、案内地点から、案内開始距離の最大値だけ離間した位置に車両が至る前に、決定されればよい。
図5は、本実施形態に係る経路案内装置100の処理の一例を示すフローチャートである。図5のフローチャートが示す処理は、ユーザにより目的地が設定された後、経路案内の開始が指示された場合に実行される。
図5に示すように、経路探索部11は、誘導経路を探索する(ステップSA1)。上述したように、経路探索部11は、探索した誘導経路を示す誘導経路情報を、誘導経路情報記憶部21に記憶させる。次いで、制限速度取得部12は、誘導経路上の案内地点のそれぞれについて、制限速度情報を取得する(ステップSA2)。上述したように、制限速度取得部12は、取得した制限速度情報を、設定制限速度情報として、案内地点のノードIDと対応付けて記憶させる。次いで、経路案内部13は、誘導経路の案内を行う(ステップSA3)。上述したように、経路案内部13は、誘導経路の案内中、案内地点の手前で、車線変更案内を実行する。
図6は、車線変更案内を実行するときの経路案内部13の処理の一例を示すフローチャートである。経路案内部13は、図6のフローチャートが示す処理を、誘導経路の案内中、随時、実行する。
図6に示すように、経路案内部13は、誘導経路の案内中、次案内地点と自車位置との距離が判定開始距離となったか否かを監視する(ステップSB1)。経路案内部13は、ステップSB1の処理を、次案内地点と自車位置との距離が判定開始距離となるまでの間、繰り返し実行する。
次案内地点と自車位置との距離が判定開始距離となった場合(ステップSB1:YES)、経路案内部13は、誘導経路情報記憶部21に記憶された誘導経路情報を参照し、次案内地点のノード番号と対応付けられた設定制限速度情報を取得する(ステップSB2)。次いで、経路案内部13は、ステップSB2で取得した設定制限速度情報が示す制限速度が、「80km/h」以上か否かを判定する(ステップSB3)。制限速度が「80km/h」以上の場合(ステップSB3:YES)、経路案内部13は、案内開始距離の値を「1km」に決定する。ステップSB3の処理後、経路案内部13は、処理手順をステップSB6へ移行する。一方、制限速度が「80km/h」以上ではない場合(ステップSB3:NO)、経路案内部13は、案内開始距離の値を「5km」に決定する(ステップSB5)。ステップSB5の処理後、経路案内部13は、処理手順をステップSB6へ移行する。
ステップSB6において、経路案内部13は、案内地点と自車位置との距離が、ステップSB4またはステップSB5で値を決定した案内開始距離となったか否かを監視する(ステップSB6)。案内地点と自車位置との距離が、案内開始距離となった場合(ステップSB6:YES)、経路案内部13は、車線変更案内を実行する(ステップSB7)。車線変更案内は、適切な期間実行される。次いで、経路案内部13は、誘導経路の案内が完了したか否かを判定する(ステップSB8)。目的地に到着した場合や、誘導経路の案内を終了することの指示がユーザからあった場合、経路案内部13は、ステップSB8において誘導経路の案内が完了したと判定する。誘導経路の案内が完了していない場合(ステップSB8:NO)、経路案内部13は、処理手順をステップSB1へ移行する。誘導経路の案内が完了した場合(ステップSB8:YES)、経路案内部13は、処理を終了する。
なお、図6のフローチャートでは、説明の便宜のため、経路案内部13が、ステップSB8で、誘導経路の案内が完了したか否かを判定する構成としているが、経路案内部13は、フローチャートの処理が実行されている間、誘導経路の案内が完了したか否かを監視し、完了した場合は、必要な終了処理を実行した上で、処理を終了する。
以上詳しく説明したように、本実施形態に係る経路案内装置100は、誘導経路の案内中、誘導経路上の案内地点に至る道路の制限速度を取得し、案内地点に至る前に行うことを推奨する車線変更の案内を、取得した制限速度が小さいほど早いタイミングで実行する。この構成のため、上述したように、運転の難易度が高い道路を走行中でも適切に車線変更を行えるようにすることができる。
<第1実施形態の変形例>
次に、変形例について説明する。上述した第1実施形態では、経路案内部13は、自車位置と案内地点との距離が案内開始距離となった場合に、車線変更案内を行っていた。これに対し、変形例では、経路案内部13は、車線変更案内に関し、自車位置と案内地点との距離が案内開始距離となった場合に車線変更案内を行うことを前提として、さらに以下の処理を実行する。
図7は、変形例の説明に用いる地図を示す図である。図7において、方角は図中で示す方角に従うものとする。図7の地図では、南北に延びる片側道路D71が存在し、この片側道路D71が分岐点B71において、北東に延びる片側道路D72と、北西に延びる片側道路D73とに分岐している。片側道路D71には、北に向かって左から順番に車線D71a、D71bの2つの車線が形成されている。
図7に示すように、片側道路D71には、片側道路D71に対して、片側道路D74が右側から合流する合流点G71が形成されており、この合流点G71に北西に延びる片側道路D74が接続されている。片側道路D74は、片側道路D71に合流するための専用の道路である。片側道路D74を利用して片側道路D71に合流する車両は、片側道路D74を北西に向かって進み、合流点G71を介して片側道路D71に合流する。
道路の態様が図7に示す態様の場合において、車両が片側道路D74上の位置P71に位置しているものとする。さらに、誘導経路が、図中で矢印Y71で示すように、位置P71に位置する車両が片側道路D74を北西に向かって走行して合流点G71で片側道路D71に合流し、片側道路D71を北へ向かって進んだ後、分岐点B71で右側に分岐して片側道路D72に進入し、片側道路D72を北東に向かって進む経路であるものとする。この場合、合流点G71は、案内地点の一つであり、特許請求の範囲の「案内合流点」に相当する。
この場合、経路案内部13は、車両が合流点G71で合流したときに、原則として、片側道路D71の車線のうち、左側の車線D71aを走行することを案内する。右側の車線D71bは、追い越し車線であり、キープレフトの原則に基づいて、道路G71の走行中、不必要に車線D71bを走行しないようにすることが求められるからである。
一方で、経路案内部13は、合流点G71と車線変更案内地点Q71との離間距離L71が相当に短い場合は、車両が合流点G71で合流したときに、片側道路D71の車線のうち、右側の車線D71bを走行することを案内する。これは、誘導経路が矢印Y71で示す経路の場合、車線変更案内地点Q71において、右側の車線D71bへの車線変更が案内される。従って、合流点G71と車線変更案内地点Q71との離間距離L71とが相当に短い場合に、車両が合流点G71で合流したときに、左側の車線D71aを走行することを案内した場合、運転手は、短期間の間に、車線変更を繰り返し行うことになり、運転手の負担が増大するからである。
変形例では、経路案内部13は、離間距離L71が閾値T1以上の場合は、車両が合流点G71で合流したときに、片側道路D71において、一旦、左側の車線D71aの走行を案内する。一方、経路案内部13は、離間距離L71が閾値T1よりも小さい場合は、車両が合流点G71で合流したときに、片側道路D71において、右側の車線D71bの走行を案内する。この場合、経路案内部13よる案内に従って車両が走行した場合、車両は、合流点G71で片側道路D71に合流した後、短期間で車線変更を繰り返し行うことなく、継続して、車線D71bを走行することになる。
そして、経路案内部13は、閾値T1の値を、案内地点たる分岐点B71に至る片側道路D71の制限速度(制限速度取得部12により取得された制限速度)が小さいほど、大きくする。これは、以下の理由による。すなわち、上述したように、制限速度が小さいほど、運転の難易度は高い。また、合流点G71と車線変更案内地点Q71との間で、左側の車線D71aへの車線変更を車線変更案内地点Q71に至る前に余裕をもって完了させるためには、運転の難易度が高いほど、合流点G71と車線変更案内地点Q71との間の距離を大きく確保する必要がある。以上を踏まえ、経路案内部13は、閾値T1の値を、片側道路D71の制限速度が小さいほど、換言すれば、運転の難易度が大きいほど、大きくし、運転の難易度に応じて、合流点G71と車線変更案内地点Q71との間の距離が十分に確保できる場合にのみ、合流点G71で合流したときに左側の車線D71aへの車線変更を案内する。
本変形例では、具体的には、経路案内部13は、以下の処理を実行する。すなわち、経路案内部13は、誘導経路上で、次に経由する地点が、道路に対して右側から合流する合流点であり、かつ、当該合流点で合流した道路において次案内地点に関して行う車線変更案内が、右側の車線への車線変更を推奨する案内であるか否かを判定する。経路案内部13は、次に経由する地点が、道路に対して右側から合流する合流点であり、かつ、当該合流点で合流した道路において行う車線変更案内が、右側の車線への車線変更を推奨する案内である場合は、当該道路の制限速度が「80km/h」以上であるか否かを判定する。
当該道路の制限速度が「80km/h」以上の場合、経路案内部13は、合流点の前方「2km」以内に、案内地点が存在するか否かを判定する。上述した第1実施形態で説明したとおり、制限速度が「80km/h」以上の場合、案内開始距離は「1km」である。このことを踏まえ、経路案内部13は、合流点の前方「2km」以内に、案内地点が存在するか否かを判定することによって、合流点と案内開始距離との離間距離(図7の離間距離L1に相当する距離)が、「1km」(閾値に相当する距離)以内か否かを判定している。
合流点の前方「2km」以内に、案内地点が存在する場合(=合流点と案内開始距離との離間距離が閾値「1km」以内の場合)、運転の難易度が低いとはいえ、合流点と案内開始距離との離間距離が相当に短いため、経路案内部13は、車両が合流点で合流したときに走行する車線として右側の車線を案内する。一方、合流点の前方「2km」以内に、案内地点が存在しない場合(=合流点と案内開始距離との離間距離が閾値「1km」以内ではない場合)、運転の難易度を踏まえ、合流点と案内開始距離との離間距離を十分に確保できるため、経路案内部13は、車両が合流点で合流したときに走行する車両として左側の車両を案内する。
一方、車両が合流点を介して合流する道路の制限速度が「80km/h」より小さい場合、経路案内部13は、合流点の前方「10km」以内に案内地点が存在するか否かを判定する。上述した第1実施形態で説明したとおり、制限速度が「80km/h」より小さい場合、案内開始距離は「5km」である。このことを踏まえ、経路案内部13は、合流点の前方「10km」以内に、案内地点が存在するか否かを判定することによって、合流点と案内開始距離との離間距離(図7の離間距離L1に相当する距離)が、「5km」(閾値に相当する距離)以内か否かを判定している。
合流点の前方「10km」以内に、案内地点が存在する場合(=合流点と案内開始距離との離間距離が閾値「5km」以内の場合)、運転の難易度を踏まえ、合流点と案内開始距離との離間距離が相当に短いため、経路案内部13は、車両が合流点で合流したときに走行する車線として右側の車線を案内する。一方、合流点の前方「10km」以内に、案内地点が存在しない場合(=合流点と案内開始距離との離間距離が閾値「5km」以内ではない場合)、運転の難易度を踏まえ、合流点と案内開始距離との離間距離を十分に確保できるため、経路案内部13は、車両が合流点で合流したときに走行する車両として左側の車両を案内する。
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態では、車線変更情報提供装置として機能する経路案内装置100は、道路の制限速度を利用して、道路の運転の難易度を反映した適切なタイミングで車線変更案内を行った。そして、この車線変更案内が、「車線変更に関する情報の提供」に相当した。一方で、第2実施形態では、車線変更情報提供装置100Aは、自動運転を制御する自動運転制御装置400(後述)に対して、道路の制限速度を利用して、道路の運転の難易度を反映した適切なタイミングで、案内地点に至る前に行うことを推奨する車線変更を示す情報を出力する。「案内地点に至る前に行うことを推奨する車線変更を示す情報を出力」が、「車線変更に関する情報の提供」に相当する。
図8は、本実施形態に係る車線変更情報提供装置100Aの機能構成例を示すブロック図である。図8に示すように、本実施形態に係る車線変更情報提供装置100Aには、自動運転制御装置400が接続されている。
自動運転制御装置400は、自動運転を制御する装置であり、車両の環境(車両の位置や、車両が走行する周囲の状況、車車間距離等)を検出する各種センサや、車両の状態(車速や、相対方位、ギアの状態等)を検出する各種センサ、車両の推進に関する各種機構(エンジンや、トランスミッション、ブレーキ、ステアリング等)を制御する各種ECU等に接続され、車両の環境および車両の状態に応じて各種ECUを制御して自動運転を実行する。
図8と図1との比較で明らかなとおり、本実施形態に係る車線変更情報提供装置100Aは、経路探索部11に代えて経路取得部11Aを備え、経路案内部13に代えて車線変更情報提供部13Aを備えている。
上述した第1実施形態では、 経路探索部11は、誘導経路を自ら探索した。一方、本実施形態では、経路取得部11Aは、自動運転制御装置400と通信し、自動運転制御装置400から誘導経路を取得する。本実施形態において、誘導経路とは、自動運転制御装置400による自動運転によって車両が走行する経路として予め算出されたものを意味する。自動運転において、車両は、基本的に誘導経路に沿って、道路を走行する。経路取得部11Aは、第1実施形態と同様、取得した誘導経路を示す情報を、誘導経路情報記憶部21に記憶する。
さて、本実施形態に係る車線変更情報提供部13Aは、設定制限速度情報に基づいて案内開始距離の値を変動させる一方、案内地点と自車位置との距離が、案内開始距離となったか否かを監視する。そして、車線変更情報提供部13Aは、案内地点と自車位置との距離が、案内開始距離となった場合、案内地点に至る前に行うことを推奨する車線変更を示す情報を自動運転制御装置400に出力する。
自動運転制御装置は、当該情報を入力し、自動運転において、車両が走行する車線を決定する際に、有益な情報として活用する。例えば、自動運転制御装置は、車線変更を安全に実行できる場合には、自動運転により、車線変更を行う。
以上の構成によれば、車両が運転の難易度の高い道路を走行中の場合は、早いタイミングで自動運転制御装置に対して車線変更に関する情報の出力が行われる。このため、自動運転制御装置は、的確に、車線変更を行うことができる。すなわち、以上の構成によれば、自動運転において、運転の難易度が高い道路を走行中でも適切に車線変更を行えるようにすることができる。
なお、上述した第1実施形態では、経路案内部13は、案内地点に至る道路の制限速度が「80km/h」以上か否かによって、案内開始距離の値を決定した。この点に関し、案内開始距離の値を決定するときに用いる閾値の値は「80km/h」に限らない。また、制限速度と比較する閾値を複数用意し、制限速度が小さいほど、段階的に案内開始距離の大きさを大きくする構成でもよい。また、案内開始距離について、制限速度が小さいほど、案内開始距離の値が大きくなるような数式を用いて決定する構成でもよい。以上のことは第2実施形態についても同様である。
また、上述した第1実施形態では、経路案内部13は、タッチパネル200に案内に関する情報を表示し、また、音声を出力することによって各種案内を行った。この点に関し、例示した案内は一例であり、他の方法で案内を行う構成でもよい。例えば、ヘッドアップディスプレイによりフロントガラスに情報が表示されることによって案内が行われる構成でもよく、また例えば、タッチパネル200以外の表示装置に情報が表示されることによって案内が行われる構成でもよい。
その他、上記各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。