JP6874925B1 - 機械構造部品用電縫鋼管及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、特許文献1には、機械構造部品の一種である自動車足回り部品用鋼材が開示されている。詳細には、特許文献1には、疲労特性が高く、熱処理に多くのコストを必要とせず、しかも成形加工性にも優れた自動車足回り部品用鋼材として、Nb、Moが複合添加された鋼材であり、板外面の曲げRが板厚の2〜5倍となる曲げ成形後の板厚中心のビッカース硬さと、表面から0.5mm以内のビッカース硬さの最高値との差が、50〜150ポイントであることを特徴とする疲労特性に優れた自動車足回り部品用鋼材が開示されている。
機械構造部品を軽量化するためには、機械構造部品における、引き抜き加工部及び鋼管曲げ加工部の少なくとも一方に該当する加工部Xに対し、優れた引張強度が求められ、更に、優れた疲労限度も求められる。
本開示において、「鋼管曲げ加工部」とは、鋼管曲げ加工が施された部分を意味し、「鋼管曲げ加工」とは、鋼管の管軸方向の少なくとも一部分に対する曲げ加工であって、かつ、鋼管の管軸(即ち、中心軸)が曲げられる曲げ加工を意味する。
これに対し、特許文献1における「板外面の曲げRが板厚の2〜5倍となる曲げ成形」は、鋼管の管周方向の一部分である鋼板を強く(即ち、板外面の曲げRが板厚の5倍以下となる条件で)曲げる曲げ加工であり、鋼管の中心軸が曲げられる曲げ加工ではないので(同文献の図2参照)、本開示における「鋼管曲げ加工」には該当しない。特許文献1における上記曲げ成形は、自動車足回り部品であるアクスルビームの耳部を形成するための強い曲げ成形(即ち、曲げRが小さい曲げ成形)である(以上、特許文献1の図1〜図6参照)。特許文献1では、この強い曲げ成形を行った際に、鋼板の肉厚中央部の硬度に対して表面層の硬度が大幅に高くなることを利用している(同文献段落0022及び0023参照)。特に、段落0022には、板外面の曲げRが板厚の5倍を超えると加工硬化による硬度上昇が不十分となるので、板外面の曲げRが板厚の2〜5倍となる強い曲げ成形を必須としたことが記載されている。
一方、特許文献1では、引き抜き加工部及び鋼管曲げ加工部については一切考慮していない。
<1> 引き抜き加工部及び鋼管曲げ加工部の少なくとも一方に該当する加工部Xを含む機械構造部品用電縫鋼管であって、
前記加工部Xが、母材部及び電縫溶接部を含み、
前記母材部の化学組成が、質量%で、
C:0.150〜0.230%、
Si:0〜0.50%、
Mn:0.50〜1.65%、
P:0〜0.030%、
S:0〜0.010%、
Nb:0.010〜0.050%、
Mo:0.10〜0.60%、
Al:0.005〜0.060%、
N:0〜0.0060%、
Ti:0〜0.030%、
V:0〜0.100%、
Cr:0〜0.5%、
Cu:0〜0.500%、
Ni:0〜0.500%、
B:0〜0.0030%、
Ca:0〜0.0030%、
Mg:0〜0.0040%、並びに、
残部:Fe及び不純物からなり、
前記母材部のミクロ組織の全体に対する焼戻しベイナイトの面積率が80%以上であり、
前記母材部の引張強度が850〜1000MPaであり、
前記母材部の引張試験において、0.2%以上の降伏伸びが観測され、
前記母材部の肉厚中央部におけるビッカース硬さに対する前記母材部の外表面から深さ50μmの位置におけるビッカース硬さの比が、95%以上である、
機械構造部品用電縫鋼管。
<2> 自動車の足回り部品用電縫鋼管である、<1>に記載の機械構造部品用電縫鋼管。
<3> 前記加工部Xの外周長が50〜500mmであり、前記加工部Xの最大肉厚が1.0〜5.0mmである、<1>又は<2>に記載の機械構造部品用電縫鋼管。
<4> <1>〜<3>のいずれか1つに記載の機械構造部品用電縫鋼管を製造する方法であって、
母材部A及び電縫溶接部Aを含み、前記母材部Aの化学組成が、質量%で、
C:0.150〜0.230%、
Si:0〜0.50%、
Mn:0.50〜1.65%、
P:0〜0.030%、
S:0〜0.010%、
Nb:0.010〜0.050%、
Mo:0.10〜0.60%、
Al:0.005〜0.060%、
N:0〜0.0060%、
Ti:0〜0.030%、
V:0〜0.100%、
Cr:0〜0.5%、
Cu:0〜0.500%、
Ni:0〜0.500%、
B:0〜0.0030%、
Ca:0〜0.0030%、
Mg:0〜0.0040%、並びに、
残部:Fe及び不純物からなり、
前記母材部Aのミクロ組織の全体に対するベイナイトの面積率が80%以上であり、
前記母材部Aの引張強度が600〜800MPaであり、
前記母材部Aの引張試験において、13.0%以上の全伸びが観測されるアズロール電縫鋼管を準備する工程と、
前記アズロール電縫鋼管の管軸方向の少なくとも一部分に対し、冷間引き抜き加工及び冷間鋼管曲げ加工の少なくとも一方であって、最大減面率が10〜40%である条件の冷間加工を施す冷間加工工程と、
前記冷間加工が施された前記アズロール電縫鋼管に対し、焼戻し温度450〜650℃の焼戻しを施して前記機械構造部品用電縫鋼管を得る焼戻し工程と、
を含む、
機械構造部品用電縫鋼管の製造方法。
<5> 前記アズロール電縫鋼管の外径が50〜150mmであり、前記アズロール電縫鋼管の肉厚が2.0〜4.0mmである、<4>に記載の機械構造部品用電縫鋼管の製造方法。
本開示において、成分(元素)の含有量を示す「%」は、「質量%」を意味する。
本開示において、C(炭素)の含有量を、「C含有量」と表記することがある。他の元素の含有量についても同様に表記することがある。
本開示において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
「造管」とは、ホットコイルから巻き出された熱延鋼板をロール成形することによりオープン管とし、得られたオープン管の突合せ部を電縫溶接して電縫溶接部を形成するまでの過程を指す。
「ホットコイル」とは、ホットストリップミルを用いて製造され、コイル状に巻き取られた熱延鋼板を意味する。
「ロール成形」とは、ホットコイルから巻き出された熱延鋼板を、連続的に曲げ加工してオープン管状に成形することを指す。
厚鋼板(steel plate)は、長尺の鋼板(continuous steel sheet)ではないため、連続的な曲げ加工である、ロール成形に使用することはできない。
電縫鋼管は、以上の点で、厚鋼板を用いて製造される溶接鋼管(例えば、UOE鋼管)とは明確に区別される。
ここで、熱影響部(heat affected zone;以下、「HAZ」とも称する)とは、電縫溶接による熱の影響(電縫溶接後にシーム熱処理を行う場合には、電縫溶接及びシーム熱処理による熱の影響)を受けた部分を指す。
本開示の機械構造部品用電縫鋼管(以下、単に「電縫鋼管」ともいう)は、引き抜き加工部及び鋼管曲げ加工部の少なくとも一方に該当する加工部Xを含む機械構造部品用電縫鋼管であって、
加工部Xが、母材部及び電縫溶接部を含み、
母材部の化学組成が、質量%で、
C:0.150〜0.230%、
Si:0〜0.50%、
Mn:0.50〜1.65%、
P:0〜0.030%、
S:0〜0.010%、
Nb:0.010〜0.050%、
Mo:0.10〜0.60%、
Al:0.005〜0.060%、
N:0〜0.0060%、
Ti:0〜0.030%、
V:0〜0.100%、
Cr:0〜0.5%、
Cu:0〜0.500%、
Ni:0〜0.500%、
B:0〜0.0030%、
Ca:0〜0.0030%、
Mg:0〜0.0040%、並びに、
残部:Fe及び不純物からなり、
母材部のミクロ組織の全体に対する焼戻しベイナイトの面積率が80%以上であり、
母材部の引張強度が850〜1000MPaであり、
母材部の引張試験において、0.2%以上の降伏伸びが観測され、
母材部の肉厚中央部におけるビッカース硬さに対する前記母材部の外表面から深さ50μmの位置におけるビッカース硬さの比が、95%以上である、
機械構造部品用電縫鋼管である。
かかる効果は、
加工部Xにおける母材部の化学組成と、
焼戻しベイナイトを主体とする母材部の上記ミクロ組織と、
母材部の引張試験において上記降伏伸びが観測されることと、
上記ビッカース硬さの比が95%以上であることと、
の組み合わせによって達成される。
以下、本開示の電縫鋼管について、詳細に説明する。
ここで、「鋼管曲げ加工部」における「鋼管曲げ加工」とは、前述したとおり、鋼管の管軸方向の少なくとも一部分に対する曲げ加工であって、かつ、鋼管の管軸(即ち、中心軸)が曲げられる曲げ加工である。
即ち、引き抜き加工部及び鋼管曲げ加工部の少なくとも一方に該当する加工部Xは、電縫鋼管の管軸方向の少なくとも一部分である。
加工部Xは、母材部及び電縫溶接部を含む。
加工部Xは、母材部A及び電縫溶接部Aを含むアズロール電縫鋼管(即ち、造管後、シーム熱処理以外の熱処理が施されていない電縫鋼管)の管軸方向の少なくとも一部分に対し、加工及び焼戻しがこの順に施された部分である。
ここで、母材部A及び電縫溶接部Aは、それぞれ、アズロール電縫鋼管における母材部及び電縫溶接部を意味する。
また、加工は、引き抜き加工及び鋼管曲げ加工の少なくとも一方である。加工部Xは、アズロール電縫鋼管の同一部分に対し、引き抜き加工及び鋼管曲げ加工の両方が施された部分であってもよい。
また、焼戻しは、Ac1点以下の温度に加熱する熱処理を意味する。焼戻しの条件の一例については、後述の製法Xを参照できる。
全体が加工部Xである態様の電縫鋼管としては、アズロール電縫鋼管に対し、全長に渡って引き抜き加工が施され、次いで焼戻しが施されて製造された電縫鋼管が挙げられる。
管軸方向の一部分が加工部Xである態様の電縫鋼管としては、アズロール電縫鋼管の管軸方向の一部分に対して鋼管曲げ加工(即ち、管軸を曲げる加工)が施され、次いで鋼管全体に対して焼戻しが施されて製造された電縫鋼管が挙げられる。
この特徴も、後述する析出強化に寄与する。
この特徴は、本開示の電縫鋼管が、母材部Aのミクロ組織の全体に対するベイナイトの面積率が80%以上であるアズロール電縫鋼管に対し、加工及び焼戻しを施して製造されたものであることを示している。
本開示の電縫鋼管は、前述のとおり、アズロール電縫鋼管に対し、加工(即ち、引き抜き加工及び鋼管曲げ加工の少なくとも一方)及び焼戻しがこの順に施されてなる電縫鋼管である。
一般的に、焼戻しが施された電縫鋼管では、焼戻し前の電縫鋼管(即ち、アズロール電縫鋼管)と比較して、強度が低下する場合がある。この理由は、鋼組織中に導入されたひずみが、焼戻しによって減少するためと考えられる。
しかし、本開示の電縫鋼管では、焼戻しが施された電縫鋼管であるにもかかわらず、加工部Xの母材部の引張強度として、優れた引張強度(即ち、850〜1000MPa)が確保される。優れた引張強度(即ち、850〜1000MPa)が達成される理由として、以下の理由1及び理由2が考えられる。
要因1.引き抜き加工及び鋼管曲げ加工の少なくとも一方である加工により鋼組織中に塑性ひずみが導入され、加工硬化が発現するため。
要因2.塑性ひずみの導入によって鋼組織中に生じた転位上に、焼戻し時、Nb及びMoを含有する複合炭化物が析出し、析出強化が発現するため。
加工部Xにおける母材部の引張試験において0.2%以上の降伏伸びが観測されることは、残留ひずみが低減されていることを意味する。従って、この特徴を満足することにより、繰返し応力によるひずみ導入が抑制され、ひいては加工部Xの疲労特性が向上する。
また、上記特徴は、本開示の電縫鋼管が、アズロール電縫鋼管に対し、加工及び焼戻しを施して製造されたものであることを意味している。
本開示の電縫鋼管に対し、アズロール電縫鋼管(即ち、造管後、シーム熱処理以外の熱処理が施されていない電縫鋼管)では、実質的な降伏伸び(即ち、0.2%以上の降伏伸び)が観測されない。
本開示の電縫鋼管では、前述した引張強度及び降伏伸びを満足する前提の下で、硬さ比〔深さ50μm/肉厚中央〕95%以上を満足することにより、外表面側からの疲労亀裂の発生が抑制される。従って、この特徴は、加工部Xの疲労強度に寄与する。
上記特徴は、アズロール電縫鋼管に対し、焼入れ(Ac1点超の温度にまで加熱する熱処理)ではなく、焼戻し(Ac1点以下の温度にまで加熱する熱処理)を施して電縫鋼管を製造することによって実現される。
自動車の足回り部品、ベアリング、又はモーターカバーが好ましく、
自動車の足回り部品がより好ましい。
自動車の足回り部品としては、アクスルビーム、トレーディングアーム、サスペンションメンバー、リンク材、トーションビーム等が挙げられる。
以下、本開示の電縫鋼管の加工部Xにおける母材部の化学組成(即ち、本開示における化学組成)について説明する。
Cは、Nb及びMoを結合してNb及びMoの微細な複合炭化物を形成し、加工部Xの引張強度及び疲労限度を高める元素である。C含有量が0.150%未満であると、この効果が得られない場合がある。C含有量が0.150%未満であると、更に、引張強度を高めるために熱間圧延にて熱延鋼板を製造する工程において、低温巻取を実施しなければならない場合がある。低温巻取は、引張強度のばらつきを大きくする場合がある。従って、C含有量は0.150%以上である。C含有量の下限は、好ましくは0.160%であり、より好ましくは0.170%である。
一方、C含有量が0.230%を超えると、ミクロ組織にパーライトやマルテンサイトが顕著に生成及び成長して、冷間加工性が低下する場合があるだけでなく、疲労限度も低下する場合がある。従って、C含有量は0.230%以下である。C含有量の上限は、好ましくは0.220%であり、より好ましくは0.210%である。
Siは、任意元素である。つまり、Si含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。
Siは、鋼の脱酸に寄与する元素である。かかる効果をより効果的に得る観点から、Si含有量の下限は、好ましくは0.01%であり、より好ましくは0.05%である。
一方、Si含有量が0.50%を超えると、母材の靱性が低下するとともに、電縫溶接時にSi酸化物が過剰に生成してしまい、加工部Xの機械特性が低下する場合がある。従って、Si含有量は0.50%以下である。Si含有量の上限は、好ましくは0.48%であり、より好ましくは0.40%である。
一方、Si含有量を過剰に低減しようとすれば、製造コストが高くなる。従って、工業生産性を考慮した場合、Si含有量の下限は、好ましくは0.01%であり、より好ましくは0.05%である。
Mnは、電縫鋼管の引張強度及び疲労限度を高める元素である。Mn含有量が0.50%未満であると、この効果が得られない場合がある。従って、Mn含有量は0.50%以上である。Mn含有量の下限は、好ましくは0.60%であり、より好ましくは0.70%である。
一方、Mn含有量が1.65%を超えると、電縫溶接時にMn酸化物が過剰に生成してしまい、加工部Xの機械特性が低下する場合がある。従って、Mn含有量は1.65%以下である。Mn含有量の上限は、好ましくは1.60%であり、より好ましくは1.50%である。
Pは、不純物として含まれ得る元素である。P含有量が0.030%を超えると、電縫溶接性が低下する場合及び/又は靱性が低下する場合がある。従って、P含有量は0.030%以下である。P含有量の上限は、好ましくは0.015%であり、より好ましくは0.010%である。
P含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。
P含有量を過剰に低減しようとすると、製造コストが高くなる。従って、工業生産性を考慮した場合、P含有量の下限は、好ましくは0.001%であり、より好ましくは0.005%である。
Sは、不純物として含まれ得る元素である。S含有量が0.010%を超えると、電縫溶接性が低下する場合及び/又は靱性が低下する場合がある。従って、S含有量は0.010%以下である。S含有量の上限は、好ましくは0.005%であり、より好ましくは0.003%である。
S含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。
S含有量を過剰に低減しようとすると、製造コストが高くなる。従って、工業生産性を考慮した場合、S含有量の下限は、好ましくは0.0001%であり、より好ましくは0.0005%である。
Nbは、Moと共に含有され、かつ、後述の焼戻しにより、Cと結合してNb及びMoを含有する微細な複合炭化物を生成する元素である。これにより、加工部Xの引張強度を高く維持しつつ、加工部Xの疲労限度を顕著に高めることができる。Nb含有量が0.010%未満であると、この効果が得られない場合がある。従って、Nb含有量は0.010%以上である。Nb含有量の好ましい下限は0.015%であり、更に好ましい下限は0.020%である。
一方、Nb含有量が0.050%を超えると、母材の靱性、及び、電縫溶接後の溶接部の靱性が低下する。従って、Nb含有量は0.050%以下である。Nb含有量の好ましい上限は0.045%であり、更に好ましい上限は0.040%である。
Moは、Nbと共に含有され、かつ、後述の焼戻しにより、Cと結合してNb及びMoを含有する微細な複合炭化物を生成する。これにより、加工部Xの引張強度を高く維持しつつ、加工部Xの疲労限度を顕著に高めることができる。Mo含有量が0.10%未満であると、この効果が得られない場合がある。従って、Mo含有量は0.10%以上である。Mo含有量の下限は、好ましくは0.15%であり、より好ましくは0.20%である。
一方、Mo含有量が0.60%を超えると、加工性が低下するとともに靱性も低下する。従って、Mo含有量は0.60%以下である。
Mo含有量の上限は、好ましくは0.55%であり、より好ましくは0.50%である。
Alは、鋼の脱酸に寄与する元素である。Al含有量が0.005%未満であると、その効果が得られない場合がある。従って、Al含有量は0.005%以上である。Al含有量の下限は、好ましくは0.010%であり、より好ましくは0.020%である。
一方、Al含有量が0.060%を超えると、加工部X中にアルミナ系酸化物が過剰に残存してしまい、加工部Xの機械特性が低下する。従って、Al含有量は0.060%以下である。Al含有量の上限は、好ましくは0.045%であり、より好ましくは0.040%である。
Nは、不純物として含まれ得る元素である。N含有量が0.0060%を超えると、Nが鋼材中に固溶して、加工性を低下させる場合がある。従って、N含有量は0.0060%以下である。N含有量の上限は、好ましくは0.0055%であり、より好ましくは0.0050%である。
N含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。
N含有量を過剰に低減すると、製造コストが高くなる。従って、工業生産性を考慮した場合、N含有量の下限は、好ましくは0.0001%であり、より好ましくは0.0005%である。
Tiは、任意元素である。つまり、Ti含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。
Tiは、鋼中のC及び/又はNと結合して窒化物又は炭窒化物を生成し、組織の微細化作用を通じて鋼材の靭性を高め得る元素である。かかる効果をより効果的に発揮させる観点から、Ti含有量の下限は、好ましくは0%超であり、より好ましくは0.005%であり、更に好ましくは0.007%である。
一方、Ti含有量が0.030%超であると、粗大なTi窒化物及び/又は粗大なTi炭窒化物が生成して加工部Xの疲労限度及び靱性が低下する場合がある。従って、Ti含有量は0.030%以下である。Ti含有量の上限は、好ましくは0.025%であり、より好ましくは0.020%である。
Vは、任意元素である。つまり、V含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。
Vは、鋼中のC及び/又はNと結合し、V炭化物、V窒化物、及びV炭窒化物からなる群から選択される少なくとも1種を形成し、鋼材の靭性を高め得る元素である。かかる効果をより効果的に発揮させる観点から、V含有量の下限は、好ましくは0%超であり、より好ましくは0.005%であり、更に好ましくは0.010%である。
一方、V含有量が0.100%超であると、粗大なV炭化物、粗大なV窒化物、及び粗大なV炭窒化物からなる群から選択される少なくとも1種が生成し、加工部Xの疲労限度及び靱性が低下する場合がある。従って、V含有量は0.100%以下である。V含有量の上限は、好ましくは0.090%であり、より好ましくは0.080%である。
Crは、任意元素である。つまり、Cr含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。
Crは、鋼材の焼入れ性を高め、鋼材の強度を高める元素である。かかる効果をより効果的に発揮させる観点から、Cr含有量の下限は、好ましくは0%超であり、より好ましくは0.1%であり、更に好ましくは0.15%である。
一方、Cr含有量が0.5%超であると、電縫溶接部にCr酸化物が生成して、電縫溶接部の靭性が低下する場合がある。従って、Cr含有量は0.5%以下である。Cr含有量の上限は、好ましくは0.4%であり、より好ましくは0.3%である。
Cuは、任意元素である。つまり、Cu含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。
Cuは、鋼材の強度を高め得る元素である。かかる効果をより効果的に発揮させる観点から、Cu含有量の下限は、好ましくは0%超であり、より好ましくは0.001%であり、更に好ましくは0.010%である。
一方、Cu含有量が0.500%超であると、過度な強化により鋼材の靭性が低下するだけでなく、Cuの液体金属脆化作用により、スラブ鋳造時にスラブ表面に割れが発生しやすくなる。従って、Cu含有量は、0.500%以下である。Cu含有量の上限は、好ましくは0.400%であり、より好ましくは0.300%である。
Niは、任意元素である。つまり、Ni含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。
Niは、鋼材中に固溶して鋼材の強度を高め得る元素であり、鋼材の靭性も高め得る元素である。Niは、更に、Cu含有鋼におけるCuの液体金属脆化作用を抑制し得る元素でもある。かかる効果をより効果的に発揮させる観点から、Ni含有量の下限は、好ましくは0%超であり、より好ましくは0.001%であり、更に好ましくは0.010%である。
一方、Ni含有量が0.500%超であると、鋼材の溶接性が低下する場合がある。従って、Ni含有量は、0.500%以下である。Ni含有量の上限は、好ましくは0.450%であり、より好ましくは0.400%である。
Bは、任意元素である。つまり、B含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。
Bは、鋼材中に固溶して鋼材の焼き入れ性を高め、鋼材の強度を高め得る元素である。かかる効果をより効果的に発揮させる観点から、B含有量の下限は、好ましくは0%超であり、より好ましくは0.0001%であり、更に好ましくは0.0005%である。
一方、B含有量が0.0030%超であると、粗大な窒化物が生成して鋼材の疲労限度が低下する場合がある。従って、B含有量は0.0030%以下である。B含有量の上限は、好ましくは0.0025%であり、より好ましくは0.0020%である。
Caは、任意元素である。つまり、Ca含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。
Caは、硫化物系介在物の形態を制御して、鋼材の靭性を高め得る元素である。かかる効果をより効果的に発揮させる観点から、Ca含有量の下限は、好ましくは0%超であり、より好ましくは0.0001%であり、更に好ましくは0.0010%である。
一方、Ca含有量が0.0030%超であると、粗大なCa酸化物が生成して鋼材の靱性が低下する場合がある。従って、Ca含有量は0.0030%以下である。Ca含有量の上限は、好ましくは0.0025%であり、より好ましくは0.0020%である。
Mgは、任意元素である。つまり、Mg含有量は、0%であってもよいし、0%超であってもよい。
Mgは、微細な酸化物を生成して、溶接熱影響部(HAZ)の靭性を高め得る元素である。かかる効果をより効果的に発揮させる観点から、Mg含有量の下限は、好ましくは0%超であり、より好ましくは0.0001%であり、更に好ましくは0.0010%である。
一方、Mg含有量が0.0040%超であると、粗大な酸化物が生成して鋼材の靱性が低下する場合がある。従って、Mg含有量は0.0040%以下である。Mg含有量の上限は、好ましくは0.0035%であり、より好ましくは0.0030%である。
加工部Xにおける母材部の化学組成において、上述した各元素を除いた残部は、Fe及び不純物である。
ここで、不純物とは、原材料(例えば、鉱石、スクラップ、等)に含まれる成分、または、製造の工程で混入する成分であって、意図的に鋼に含有させたものではない成分を指す。
不純物としては、上述した元素以外のあらゆる元素が挙げられる。不純物としての元素は、1種のみであっても2種以上であってもよい。
不純物として、例えば、O、Sb、Sn、W、Co、As、Pb、Bi、H、REMが挙げられる。ここで、「REM」は希土類元素、即ち、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuからなる群から選択される少なくとも1種の元素を指す。
上述した元素のうち、Oは、含有量0.006%以下となるように制御することが好ましい。
通常、Sb、Sn、Co、及びAsについては、例えば含有量0.1%以下の混入が、Pb及びBiについては、例えば含有量0.005%以下の混入が、Hについては、例えば含有量0.0004%以下の混入が、それぞれあり得る。
その他の元素の含有量については、通常の範囲であれば、特に制御する必要はない。
本開示の電縫鋼管の加工部Xにおける母材部のミクロ組織について説明する。
母材部のミクロ組織は、概略的に言えば、焼戻しベイナイト主体のミクロ組織である。
詳細には、母材部のミクロ組織の全体に対する焼戻しベイナイトの面積率は、80%以上である。
前述のとおり、上記ミクロ組織は、焼戻し時のMo及びNbによる析出強化の発現に効果的に寄与し、ひいては、引張強度向上及び疲労強度向上に寄与する。
焼戻しベイナイトの面積率は、加工部Xの引張強さ及び疲労強度をより向上させる観点から、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上である。
これらの組織は、いずれも、本開示における焼戻しによる組織形態の変化が小さい。このため、本開示においては、ベイナイトと焼戻しベイナイトとを厳密に区別する必要はない。
焼戻しベイナイトの面積率が100%未満である場合における残部は、好ましくは、フェライト(例えば、ポリゴナルフェライト、アシキュラーフェライト、等)及びパーライトからなる群から選択される少なくとも1種を含む。
ここで、パーライトの概念には、疑似パーライトも包含される。
加工部XのC断面(即ち、加工部Xの管軸方向に対して垂直な断面。)中、母材部の肉厚中央位置から、ミクロ組織観察用のサンプルを採取する。サンプルにおける観察面のサイズは、3mm×3mmとする。次に、サンプルの観察面を鏡面研磨する。その後、サンプルの観察面を3%硝酸アルコール(ナイタール腐食液)にてエッチングする。エッチングされた観察面を500倍の光学顕微鏡にて観察する。観察面のうち、任意の5視野を特定して、特定された各視野の写真画像を生成する。各視野領域は200μm×200μmとする。
5視野分の写真画像において、焼戻しベイナイトの面積を求め、得られた面積を、5視野全体の総面積で除して100を乗じることにより、母材部のミクロ組織の全体に対する焼戻しベイナイトの面積率(%)を求める。
加工部Xにおける母材部の引張強度は、850〜1000MPaである。
加工部Xにおける母材部の引張強度が850MPa以上であることは、機械構造部品用電縫鋼管としての強度確保に寄与する。上記引張強度は好ましくは900MPa以上である。
加工部Xにおける母材部の引張強度が1000MPa以下であることは、機械構造部品用電縫鋼管の製造し易さ(例えば、素材である熱延鋼板の製造し易さ、熱延鋼板をロール成形して造管する際のロール成形のし易さ、等)に寄与する。上記引張強度は好ましくは950MPa以下である。
加工部Xにおける母材部から、肉厚中央部を中心とする、全厚に対して70%の厚さ領域の中から引張試験片を採取する。採取する引張試験片の種類は、JIS Z 2241(2011)に規定される丸棒試験片の中から、母材部の厚さに応じて選択する。JIS Z 2241(2011)中に適当な寸法の試験片が規定されていない場合は、規定された試験片を比例的に縮小した試験片(比例試験片)を用いてもよい。
採取された引張試験片を用いて、JIS Z 2241(2011)に準拠して、常温(20±15℃)、大気中にて、引張試験を実施する。得られた応力−ひずみ曲線から、引張強度(TS)を求める。
本開示の電縫鋼管は、母材部の引張試験において、0.2%以上の降伏伸びが観測される。
ここでいう母材部の引張試験は、母材部の引張強度を測定するための引張試験を意味する。試験方法については母材部の引張強度の項で説明したとおりである。
この特徴(即ち、母材部の引張試験において、0.2%以上の降伏伸びが観測されること)は、前述したとおり、繰返し応力によるひずみ導入の抑制に寄与し、ひいては加工部Xの疲労強度向上に寄与する。
本開示の電縫鋼管は、硬さ比〔深さ50μm/肉厚中央〕(即ち、母材部の肉厚中央部におけるビッカース硬さに対する前記母材部の外表面から深さ50μmの位置におけるビッカース硬さの比)が、95%以上である。
この特徴(即ち、硬さ比〔深さ50μm/肉厚中央〕が95%以上であること)は、前述したとおり、外表面側からの疲労亀裂の発生抑制に寄与し、ひいては加工部Xの疲労強度向上に寄与する。
一方、硬さ比〔深さ50μm位置/肉厚中央部〕は、好ましくは120%以下であり、より好ましくは115%以下である。硬さ比〔深さ50μm位置/肉厚中央部〕が120%以下である場合には、応力を肉厚全体で負担でき(特に、肉厚中央部への応力の集中を抑制でき)、その結果、加工部Xの疲労強度がより向上する。
母材部の肉厚中央部におけるビッカース硬さは、以下のようにして求める。加工部XのC断面中、母材部の肉厚中央部に相当する線上に位置する0.5mmピッチの5点を、測定点として特定する。5点の測定点の各々において、荷重100gfの条件にて、JIS Z 2244(2009)に準拠し、ビッカース硬さを測定する。5点の測定点における測定値の算術平均値を、「肉厚中央部のビッカース硬さ」とする。
硬さ比〔深さ50μm/肉厚中央〕は、上記「深さ50μm位置のビッカース硬さ」を上記「肉厚中央部のビッカース硬さ」で除して100を乗じることにより、求める。
加工部Xの外周長は、好ましくは50〜500mmである。
50〜500mmの範囲の外周長は、概ね、外径16〜160mmの鋼管の外周長に相当する長さである。
加工部Xの外周長は、より好ましくは50〜400mmであり、更に好ましくは100〜300mmである。
加工部Xの最大肉厚(即ち、加工部Xの肉厚の最大値)は、好ましくは1.0〜5.0mmであり、より好ましくは1.5〜4.5mmであり、更に好ましくは2.0〜4.0mmである。
以下、本開示の電縫鋼管を製造するための製造方法の一例(以下、「製法X」とする)について説明する。
以下の製法Xは、後述する実施例の電縫鋼管の製造方法である。
母材部A及び電縫溶接部Aを含み、母材部Aの化学組成が、質量%で、
C:0.150〜0.230%、
Si:0〜0.50%、
Mn:0.50〜1.65%、
P:0〜0.030%、
S:0〜0.010%、
Nb:0.010〜0.050%、
Mo:0.10〜0.60%、
Al:0.005〜0.060%、
N:0〜0.0060%、
Ti:0〜0.030%、
V:0〜0.100%、
Cr:0〜0.5%、
Cu:0〜0.500%、
Ni:0〜0.500%、
B:0〜0.0030%、
Ca:0〜0.0030%、
Mg:0〜0.0040%、並びに、
残部:Fe及び不純物からなり、
母材部Aのミクロ組織の全体に対するベイナイトの面積率が80%以上であり、
母材部Aの引張強度が600〜800MPaであり、
母材部Aの引張試験において、13.0%以上の全伸びが観測されるアズロール電縫鋼管を準備する工程(以下、「アズロール電縫鋼管準備工程」ともいう)と、
アズロール電縫鋼管の管軸方向の少なくとも一部分に対し、冷間引き抜き加工及び冷間鋼管曲げ加工の少なくとも一方であって、最大減面率が10〜40%である条件の冷間加工を施す冷間加工工程と、
冷間加工が施された前記アズロール電縫鋼管に対し、焼戻し温度450〜650℃の焼戻しを施して機械構造部品用電縫鋼管を得る焼戻し工程と、
を含む。
以下、製法Xにおける各工程について説明する。
アズロール電縫鋼管準備工程は、上記アズロール電縫鋼管を準備する工程である。
本工程は、予め製造してあった上記アズロール電縫鋼管を単に準備するだけの工程であってもよいし、上記アズロール電縫鋼管を製造する工程であってもよい。
製法Xでは、上記アズロール電縫鋼管の管軸方向の少なくとも一部分に対し、所定の冷間加工(具体的には、冷間引き抜き加工及び冷間鋼管曲げ加工の少なくとも一方)及び所定の焼戻しがこの順に施され、機械構造部品用電縫鋼管が得られる。この際、アズロール電縫鋼管の母材部Aの少なくとも一部分及び電縫溶接部Aの少なくとも一部分が、それぞれ、機械構造部品用電縫鋼管における加工部Xの母材部及び電縫溶接部に転化する。
製法Xの各工程は、鋼の化学組成に影響を及ぼさない。従って、製法Xによって製造される電縫鋼管の加工部Xにおける母材部の化学組成は、原料である上記アズロール電縫鋼管の母材部Aの化学組成と同様であるとみなせる。
製法Xでは、アズロール電縫鋼管におけるベイナイトが、冷間加工工程及び焼戻し工程を経て、機械構造部品用電縫鋼管の加工部Xにおける焼戻しベイナイトに転化する。
アズロール電縫鋼管における母材部Aのベイナイトの面積率は、加工部Xにおける母材部の焼戻しベイナイトの面積率と同様にして測定する。
ベイナイトの面積率は、100%であってもよいし、100%未満であってもよい。
ベイナイトの面積率が100%未満である場合における残部は、好ましくは、ポリゴナルフェライトを含む。
かかる引張強度を有する母材部Aの少なくとも一部分が、冷間加工工程及び焼戻し工程を経て、加工部Xにおける母材部に転化する。この際、前述のとおり、600〜800MPaである母材部Aの引張強度が、冷間加工における加工硬化及び焼戻しによる析出強化の作用によって上昇し、その結果、850〜1000MPaの引張強度が実現されると考えられる。
アズロール電縫鋼管における母材部Aの引張強度は、機械部品用電縫鋼管の加工部Xにおける母材部の引張強度と同様にして測定する。
ここでいう母材部Aの引張試験は、母材部Aの引張強度を測定するための引張試験を意味する。
母材部Aの引張試験において、13.0%以上の全伸びが観測されることにより、アズロール電縫鋼管を加工して機械構造部品用電縫鋼管を得る際の加工性が確保される。全伸びの下限は、好ましくは14.0%であり、より好ましくは15.0%である。
全伸びの上限は、好ましくは25.0%であり、より好ましくは23.0%である。
冷間加工工程は、アズロール電縫鋼管の管軸方向の少なくとも一部分に対し、冷間引き抜き加工及び冷間鋼管曲げ加工の少なくとも一方であって、最大減面率が10〜40%である条件の冷間加工を施す工程である。
かかる態様の冷間加工により、鋼組織に対し塑性ひずみが効果的に導入され、転位が効果的に導入される。
ここで、最大減面率とは、冷間加工が施された領域において減面率が最大となる場所での減面率を意味する。
冷間引き抜き加工によって得られる冷間引き抜き加工部は、鋼管のC断面(即ち、管軸方向に対して垂直な断面)内での硬さの均一性に優れるという利点を有する。
冷間鋼管曲げ加工によって得られる冷間鋼管曲げ加工部は、例えば特許文献1における板外面の曲げRが板厚の2〜5倍となる曲げ成形が施された加工部と比較して、肉厚方向の硬さの均一性に優れるという利点を有する。これにより、その後の部品加工の工程数を少なくできる場合がある。
以上のように、冷間引き抜き加工部及び冷間鋼管曲げ加工部の各々は、例えば特許文献1における上記加工部と比較して、硬さの均一性に優れる。このため、応力を加工部全体で受けることができるので(言い換えれば、硬さが低い部分への応力の集中を抑制できるので)、疲労強度の点で有利である。
冷間鋼管曲げ加工の方法としては、例えば、回転引き曲げ、ベンディングマシンによる曲げ、プレス曲げ、ハイドロフォーム、等を適用できる。
焼戻し工程は、冷間加工が施されたアズロール電縫鋼管に対し、焼戻し温度450〜650℃の焼戻しを施して機械構造部品用電縫鋼管を得る工程である。
焼戻しは、例えば、熱処理炉中で行う。
更に、本工程における焼戻しでは、焼戻し温度が450℃以上であることにより、鋼組織中の残留ひずみが低減され、その結果、本開示の電縫鋼管の加工部Xの引張試験において、0.2%以上の降伏伸びが実現される。
焼戻し温度は、好ましくは500℃以上である。
焼戻し温度は、好ましくは600℃以下である。
アズロール電縫鋼管の外径は、好ましくは50〜150mmであり、より好ましくは50〜130mmであり、更に好ましくは50〜100mmである。
アズロール電縫鋼管の肉厚は、好ましくは2.0〜4.0mmであり、より好ましくは2.5〜3.5mmである。
前述した製法X(即ち、本開示の機械構造部品用電縫鋼管の製造方法の一例)におけるアズロール電縫鋼管準備工程は、アズロール電縫鋼管を製造する工程であってもよい。
以下、アズロール電縫鋼管の製造方法の一例を、製法Aとして示す。
アズロール電縫鋼管の母材部Aの化学組成と同様の化学組成を有するスラブを準備するスラブ準備工程と、
準備したスラブを1070〜1300℃のスラブ加熱温度にまで加熱し、加熱されたスラブに対し、仕上圧延温度FTが850〜950℃である条件の熱間圧延を施すことにより、熱延鋼板を得る熱延工程と、
熱延工程で得られた熱延鋼板を、仕上げ圧延温度FTから580℃に至るまでの間の平均冷却速度CR580が20〜90℃/秒である条件で、480〜580℃である巻取温度CTまで冷却する冷却工程と、
冷却後の熱延鋼板を上記巻取温度CTにて巻取ることにより、熱延鋼板からなるホットコイルを得る巻取工程と、
ホットコイルから熱延鋼板を巻き出し、巻き出された熱延鋼板をロール成形することによりオープン管とし、得られたオープン管の突合せ部を電縫溶接して電縫溶接部を形成することにより、電縫鋼管を得る造管工程と、
を含む。
以上の、熱延工程、冷却工程、及び巻取工程は、ホットストリップミルを用いて実施する。
以下、製法Aにおける各工程について説明する。
スラブ準備工程は、スラブを準備する工程である。
本工程は、予め製造してあったスラブを単に準備するだけの工程であってもよいし、スラブを製造する工程であってもよい。
準備するスラブの化学組成は、製法Aによって得られるアズロール電縫鋼管の母材部Aの化学組成と同様であり、好ましい範囲も同様である。
製法Aの各工程は、鋼の化学組成に影響を及ぼさない。従って、製法Aによって製造されるアズロール電縫鋼管の母材部Aの化学組成は、原料であるスラブの化学組成と同様であるとみなせる。
この際、連続鋳造法によってスラブを製造してもよいし、溶鋼を用いてインゴットを製造し、インゴットを分塊圧延してスラブを製造してもよい。
熱延工程は、スラブを1070〜1300℃のスラブ加熱温度にまで加熱し、加熱されたスラブに対し、仕上圧延温度FTが850〜950℃である条件の熱間圧延を施すことにより、熱延鋼板を得る工程である。
スラブ加熱温度が1070℃以上であると、溶鋼凝固過程で析出した、炭化物、窒化合物及び炭窒化合物を、鋼中に十分に固溶させることができる。スラブ加熱温度は、好ましくは1100℃以上である。
スラブ加熱温度が1300℃以下であると、オーステナイト粒の粗大化が抑制される。
熱間圧延は、例えば、粗圧延機と、粗圧延機の下流側に配置された仕上げ圧延機と、を用いて行う。
熱粗圧延機は、1つの圧延スタンド、又は、一列に並んだ複数の圧延スタンドを備え、各圧延スタンドは少なくとも一対のロールを有する。粗圧延機はリバース式であってもよいし、タンデム式であってもよい。
仕上げ圧延機は、粗圧延機の下流に配置されている。仕上げ圧延機は、圧延ラインの上流から下流に沿って一列に並んだ複数の圧延スタンドを備える。各圧延スタンドは少なくとも一対のロールを備える。仕上げ圧延機はリバース式であってもよいし、タンデム式であってもよい。
ここで、仕上圧延温度FTは、仕上げ圧延機の最終圧延スタンドの出側での鋼板の表面温度を指す。
仕上げ圧延温度FTが850℃未満である場合には、鋼板の圧延抵抗が増加して生産性が低下する。更に、フェライト及びオーステナイトの二相域で鋼板が圧延される。この場合、鋼板のミクロ組織において、ベイナイトの面積率が80%未満となる。従って、製法Aにおける仕上圧延温度FTの下限は、850℃である。仕上圧延温度FTの下限は、好ましくは860℃であり、より好ましくは870℃である。
一方、仕上げ圧延温度FTが950℃超である場合、後述の冷却を実施しても鋼板の温度が低下しにくくなる。その結果、鋼板のミクロ組織において、ベイナイトの面積率が80%未満となる。従って、製法Aにおける仕上圧延温度FTの上限は、950℃である。仕上げ圧延温度FTの上限は、好ましくは930℃であり、より好ましくは900℃である。
冷却工程は、熱延工程で得られた熱延鋼板を、仕上げ圧延温度FTから580℃に至るまでの間の平均冷却速度CR580が20〜90℃/秒である条件で、480〜580℃である巻取温度CTまで冷却する工程である。
上記条件により、熱延工程で得られた熱延鋼板を、CCT線図(Continuous Cooling Transformation diagram)におけるフェライトノーズの通過を抑制しつつ、巻取温度CTまで冷却することができる。これにより、得られるアズロール電縫鋼管において、母材部Aのミクロ組織の全体に対するベイナイトの面積率が80%以上であることが達成される。
平均冷却速度CR580が20℃/秒未満である場合には、熱延鋼板がCCT線図におけるフェライトノーズを通過しやすく、フェライトが過剰に生成され易くなる。その結果、ベイナイトの面積率が80%未満となる場合、及び/又は、アズロール電縫鋼管の母材部Aの引張強度が600MPa未満となる場合がある。従って、平均冷却速度CR580の下限は20℃/秒である。平均冷却速度CR580の下限は、好ましくは30℃/秒であり、より好ましくは40℃/秒であり、更に好ましくは50℃/秒である。
一方、平均冷却速度CR580が90℃/秒超である場合、マルテンサイトが過剰に生成され易くなり、その結果、ベイナイトの面積率が80%未満となる場合、及び/又は、アズロール電縫鋼管の母材部Aの引張強度が800MPa超となる場合がある。従って、平均冷却速度CR580の上限は、90℃/秒である。
この場合、平均冷却速度CR580は次の方法で測定することができる。
搬送路上の上流から下流に沿って複数箇所に測温計を配置し、熱延鋼板の表面温度を測定する。熱延鋼板の送り速度を、仕上げ圧延機の最終圧延スタンドのロール回転速度から算出する。測温計での測温結果と熱延鋼板の送り速度に基づいて、仕上げ圧延温度FTから580℃に至るまでの間の平均冷却速度CR580を算出する。
巻き取り工程は、冷却後の熱延鋼板を巻取温度CTにて巻取ることにより、熱延鋼板からなるホットコイルを得る工程である。
巻取温度CTは、480〜580℃である。
巻取温度CTが480℃未満である場合には、マルテンサイトが過剰に生成され易くなり、その結果、ベイナイトの面積率が80%未満となる場合、及び/又は、アズロール電縫鋼管の母材部Aの引張強度が800MPa超となる場合がある。従って、巻取温度CTの下限は480℃である。
一方、巻取温度CTが580℃超である場合、フェライト及び/又はパーライトが過剰に生成され易くなる。その結果、ベイナイトの面積率が80%未満となる場合、及び/又は、アズロール電縫鋼管の母材部Aの引張強度が600MPa未満となる場合がある。従って、巻取温度CTの上限は580℃である。
造管工程は、ホットコイルから熱延鋼板を巻き出し、巻き出された熱延鋼板をロール成形することによりオープン管とし、得られたオープン管の突合せ部を電縫溶接して電縫溶接部を形成することにより、電縫鋼管を得る工程である。
造管工程は、公知の方法に従って行うことができる。
その他の工程としては、造管工程後に電縫溶接部をシーム熱処理する工程;造管工程後(前述のシーム熱処理する工程を含む場合には、シーム熱処理する工程の後)において、電縫鋼管の外径をサイザーによって縮径する工程;等が挙げられる。
従って、製法Aによって製造されるアズロール電縫鋼管の母材部Aの化学組成は、原料(溶鋼又はスラブ)の化学組成と同様とみなせる。
<アズロール電縫鋼管の製造>
前述の製法Aに従い、実施例1〜12におけるアズロール電縫鋼管をそれぞれ得た。
また、各実施例の電縫鋼管における化学組成又は製造条件を変更し、比較例1〜20におけるアズロール電縫鋼管をそれぞれ得た。
以下、詳細を示す。
表1に示した元素を除いた残部は、Fe及び不純物である。
表1〜表3中の下線は、本開示の範囲外であることを示す。
熱延工程で得られた熱延鋼板を、表2に示す巻取温度CTとなるまで冷却した(冷却工程)。この際、仕上げ圧延温度FTから580℃に至るまでの間の平均冷却速度CR580が、表2に示す値となるように冷却条件を調整した。
冷却後の熱延鋼板を表2に示す巻取温度CTにて巻取ることにより、板厚3.0mmの熱延鋼板からなるホットコイルを得た(巻取工程)。
以上の、熱延工程、冷却工程、及び巻取工程は、ホットストリップミルを用いて実施した。
母材部Aのミクロ組織の全体に対するベイナイトの面積率(以下、「ベイナイト面積率」ともいう)の測定、
残部(即ち、ベイナイト以外の組織)の種類の確認、
母材部Aの引張強度(TS)の測定、及び
引張試験における全伸び(%)の測定
を、前述した方法によって行った。
結果を表2に示す。
上記アズロール電縫鋼管を用い、製法Xに従い、機械構造部品用電縫鋼管を得た。
本実施例の機械構造部品用電縫鋼管は、特に、自動車部品用電縫鋼管を想定したものである。
実施例10〜12では、冷間加工として冷間鋼管曲げ加工を、回転引き曲げにより、アズロール電縫鋼管の管軸方向の一部分に対して施した。
比較例19においては、冷間加工後であって焼戻しの前に、950℃にまで加熱し、その温度で20分保持し、その後水冷する条件の「焼入れ」を実施した。
表2中、「焼入れ」欄において、「Y」は、上記「焼入れ」を実施したことを意味し、「N」は、上記「焼入れ」を実施しなかったことを意味する。
加工部Xにおける母材部のミクロ組織の全体に対する焼戻しベイナイトの面積率(以下、「焼戻しベイナイト面積率」ともいう)の測定、
残部(即ち、焼戻しベイナイト以外の組織)の種類の確認、
加工部Xにおける母材部の引張強度(TS)の測定、
引張試験における降伏伸び(即ち、0.2%以上の降伏伸び)の有無の確認、及び、
硬さ比〔深さ50μm/肉厚中央〕(即ち、母材部の肉厚中央部におけるビッカース硬さに対する母材部の外表面から深さ50μmの位置におけるビッカース硬さの比)の測定
を、それぞれ、前述した方法によって行った。
結果を表2に示す。
表2中、「降伏伸び」欄において、「Y」は、0.2%以上の降伏伸びが観測されたことを意味し、「N」は、0.2%以上の降伏伸びが観測されなかったことを意味する。
実施例1〜12の機械構造部品用電縫鋼管は、
加工部Xにおける母材部の化学組成が本開示における化学組成であり、
加工部Xにおける母材部のミクロ組織の全体に対する焼戻しベイナイトの面積率が80%以上であり、
加工部Xにおける母材部の引張強度が850〜1000MPaであり、
母材部の引張試験において0.2%以上の降伏伸びが観測され、
硬さ比〔深さ50μm/肉厚中央〕が95%以上であった。
即ち、実施例1〜12では、引張強度及び疲労強度に優れた機械構造部品用電縫鋼管が得られた。
母材部Aの化学組成が本開示における化学組成であり、母材部Aのミクロ組織の全体に対するベイナイトの面積率が80%以上であり、母材部Aの引張強度が600〜800MPaであり、母材部Aの引張試験において、13.0%以上の全伸びが観測されるアズロール電縫鋼管に対し、
最大減面率が10〜40%である条件の冷間加工と、焼戻し温度450〜650℃の焼戻しと、をこの順に施すことによって製造された。
比較例17では、焼戻しベイナイト面積率の測定は省略した(表2及び表3における「焼戻しベイナイト面積率(%)」欄の表記は、「−」とした)。
実際の電縫鋼管では、疲労試験片の作製が困難であるため、実施例1〜3及び比較例17〜20における熱延鋼板(ホットコイル)を用い、疲労強度の検証を行った。
比較例17においては、冷間加工後の熱処理を省略した。
比較例19においては、冷間加工後であって焼戻しの前に、950℃にまで加熱し、その温度で20分保持し、その後水冷する条件の焼戻しを実施した。
具体的には、冷間圧延鋼板の全厚疲労試験片を採取した。疲労試験片の長手方向は、冷間圧延の圧延方向と平行とした。図1中の数値は、対応する位置の寸法(単位はmm)を示す。
ここで、
比較例17及び20は、0.2%以上の降伏伸びが確認されない熱延鋼板であり、
比較例18は、焼戻しベイナイトの面積率が80%未満である熱延鋼板であり、
比較例19は、硬さ比〔深さ50μm/肉厚中央〕が95%未満である熱延鋼板である。
以上の結果から、前述した実施例1〜12の機械構造部品用電縫鋼管は、疲労強度に優れることが期待される。
Claims (5)
- 引き抜き加工部及び鋼管曲げ加工部の少なくとも一方に該当する加工部Xを含む機械構造部品用電縫鋼管であって、
前記加工部Xが、母材部及び電縫溶接部を含み、
前記母材部の化学組成が、質量%で、
C:0.150〜0.230%、
Si:0〜0.50%、
Mn:0.50〜1.65%、
P:0〜0.030%、
S:0〜0.010%、
Nb:0.010〜0.050%、
Mo:0.10〜0.60%、
Al:0.005〜0.060%、
N:0〜0.0060%、
Ti:0〜0.030%、
V:0〜0.100%、
Cr:0〜0.5%、
Cu:0〜0.500%、
Ni:0〜0.500%、
B:0〜0.0030%、
Ca:0〜0.0030%、
Mg:0〜0.0040%、並びに、
残部:Fe及び不純物からなり、
前記母材部のミクロ組織の全体に対する焼戻しベイナイトの面積率が80%以上であり、
前記母材部の引張強度が850〜1000MPaであり、
前記母材部の引張試験において、0.2%以上の降伏伸びが観測され、
前記母材部の肉厚中央部におけるビッカース硬さに対する前記母材部の外表面から深さ50μmの位置におけるビッカース硬さの比が、95%以上である、
機械構造部品用電縫鋼管。 - 自動車の足回り部品用電縫鋼管である、請求項1に記載の機械構造部品用電縫鋼管。
- 前記加工部Xの外周長が50〜500mmであり、前記加工部Xの最大肉厚が1.0〜5.0mmである、請求項1又は請求項2に記載の機械構造部品用電縫鋼管。
- 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の機械構造部品用電縫鋼管を製造する方法であって、
母材部A及び電縫溶接部Aを含み、前記母材部Aの化学組成が、質量%で、
C:0.150〜0.230%、
Si:0〜0.50%、
Mn:0.50〜1.65%、
P:0〜0.030%、
S:0〜0.010%、
Nb:0.010〜0.050%、
Mo:0.10〜0.60%、
Al:0.005〜0.060%、
N:0〜0.0060%、
Ti:0〜0.030%、
V:0〜0.100%、
Cr:0〜0.5%、
Cu:0〜0.500%、
Ni:0〜0.500%、
B:0〜0.0030%、
Ca:0〜0.0030%、
Mg:0〜0.0040%、並びに、
残部:Fe及び不純物からなり、
前記母材部Aのミクロ組織の全体に対するベイナイトの面積率が80%以上であり、
前記母材部Aの引張強度が600〜800MPaであり、
前記母材部Aの引張試験において、13.0%以上の全伸びが観測されるアズロール電縫鋼管を準備する工程と、
前記アズロール電縫鋼管の管軸方向の少なくとも一部分に対し、冷間引き抜き加工及び冷間鋼管曲げ加工の少なくとも一方であって、最大減面率が10〜40%である条件の冷間加工を施す冷間加工工程と、
前記冷間加工が施された前記アズロール電縫鋼管に対し、焼戻し温度450〜650℃の焼戻しを施して前記機械構造部品用電縫鋼管を得る焼戻し工程と、
を含む、
機械構造部品用電縫鋼管の製造方法。 - 前記アズロール電縫鋼管の外径が50〜150mmであり、前記アズロール電縫鋼管の肉厚が2.0〜4.0mmである、請求項4に記載の機械構造部品用電縫鋼管の製造方法。
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