(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、図1乃至図4を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称で特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によって説明され得る。
図1は、第1の実施形態に係るタービン設備10を概略的に示す例示的な系統図である。本実施形態のタービン設備10は、例えば発電プラントに設けられ、CO2タービンを用いる。なお、タービン設備10は、他のタービンを用いても良い。
図1に示すように、タービン設備10は、燃焼器ノズル11と、燃焼器12と、タービン13と、発電機14と、第1の熱交換器21と、第2の熱交換器22と、湿分分離器23と、圧縮機24と、酸化剤供給源25と、燃料供給源26とを有する。燃焼器ノズル11は、例えば、燃料噴射ノズルとも称され得る。
燃焼器ノズル11は、燃焼器12に接続され、酸化剤Fo、燃料Ff、及び作動流体Fwを燃焼器12に供給する。酸化剤Foは、例えば超臨界の酸素である。燃料Ffは、例えば、天然ガス及び二酸化炭素を含む超臨界の混合気である。作動流体Fwは、例えば超臨界の二酸化炭素である。なお、酸化剤Fo、燃料Ff、及び作動流体Fwは、上記の例に限定されず、他の流体であっても良い。例えば、燃料Ffは、メタンのような他の炭化水素や、石炭ガス化ガスであっても良い。
燃焼器12は、燃焼器ノズル11により供給された酸化剤Fo及び燃料Ffを燃焼させる。酸化剤Fo及び燃料Ffの流量は、例えば、それぞれが完全に混合した状態において量論混合比(理論混合比)となるように調整されている。
燃焼器12は、燃焼ガスFcを排出する。燃焼ガスFcは、燃焼によって生成された二酸化炭素及び水蒸気と、作動流体Fwである二酸化炭素と、を含む。燃焼ガスFcは、タービン13に導入され、タービン13を回転させる。発電機14は、タービン13に接続され、タービン13の回転により発電する。
タービン13において膨張仕事をした燃焼ガスFcは、第1の熱交換器21及び第2の熱交換器22を通る。第2の熱交換器22において、燃焼ガスFcに含まれる水蒸気が凝集して水となる。水は、湿分分離器23により燃焼ガスFcから分離され、配管28を通って外部に排出される。
湿分分離器23を通過した燃焼ガスFcは、圧縮機24で昇圧され、超臨界の作動流体Fwとなる。すなわち、作動流体Fwは、燃焼器12から排出され、ドライにされた燃焼ガスFcを含む。圧縮機24の出口において、作動流体Fwの圧力は、例えば、約30MPaである。なお、作動流体Fwの圧力は、この例に限られない。本実施形態では、作動流体Fwは、7.38MPaより高い圧力を有し、超臨界流体にされる。
圧縮機24で昇圧された作動流体Fwの一部は、第1の熱交換器21において加熱され、燃焼器ノズル11に供給される。燃焼器ノズル11は、当該作動流体Fwを、燃焼器12に供給する。燃焼器ノズル11に供給される作動流体Fwの温度は、例えば、約670℃である。なお、作動流体Fwの温度は、この例に限られない。本実施形態では、作動流体Fwは、31.1℃より高い温度を有し、超臨界流体にされる。
圧縮機24で昇圧された作動流体Fwの残りは、配管29を通って外部に排出される。外部に排出された作動流体Fwは、例えば、回収装置に回収される。また、外部に排出された作動流体Fw(二酸化炭素)は、例えば、石油採掘現場で用いられているEOR(Enhanced Oil Recovery)に利用することができる。本実施形態では、例えば、外部に排出される二酸化炭素の量は、燃焼器12における燃焼で生成された二酸化炭素の生成量に略等しい。
酸化剤供給源25は、例えば、空気分離機と圧縮機とを有する。酸化剤供給源25は、空気分離機により空気から分離した酸素(酸化剤Fo)を、圧縮機により昇圧する。酸化剤供給源25は、昇圧により超臨界流体となった酸化剤Foを、燃焼器ノズル11に供給する。燃焼器ノズル11に供給される酸化剤Foの温度は、例えば、約670℃である。なお、酸化剤Foの温度は、この例に限られない。
燃料供給源26は、例えば、タンクと、バルブと、圧縮機とを有する。圧縮機は、バルブを介してタンクから供給された燃料Ffを昇圧する。燃料供給源26は、昇圧により超臨界流体となった燃料Ffを、燃焼器ノズル11に供給する。燃焼器ノズル11に供給される燃料Ffの温度は、例えば、約400℃である。なお、燃料Ffの温度は、この例に限られない。
図2は、第1の実施形態の燃焼器ノズル11及び燃焼器12を模式的に示す例示的な断面図である。図2に示すように、燃焼器ノズル11は、ノズル部材40を有する。ノズル部材40は、ノズルの一例である。燃焼器ノズル11は、他の部品をさらに有しても良い。
ノズル部材40は、第1の壁41と、第2の壁42と、第3の壁43と、凸壁44と、外壁45と、端壁46と、接続部51と、中間層52と、複数のスワラー(旋回羽根)53と、酸化剤供給管54と、流体供給管55と、を有する。接続部51は、例えば、壁とも称され得る。
ノズル部材40は、例えば、3Dプリンタにより積層造形される。このため、第1の壁41、第2の壁42、第3の壁43、凸壁44、外壁45、端壁46、接続部51、中間層52、スワラー53、酸化剤供給管54、及び流体供給管55は、一体に作られる。なお、ノズル部材40は、この例に限られない。
例えば、複数の部材が互いに溶接されることで、第1の壁41、第2の壁42、第3の壁43、凸壁44、外壁45、端壁46、接続部51、中間層52、スワラー53、酸化剤供給管54、及び流体供給管55が一体に作られても良い。第1の壁41、第2の壁42、第3の壁43、凸壁44、外壁45、端壁46、接続部51、中間層52、スワラー53、酸化剤供給管54、及び流体供給管55は、互いに異なる材料により作られても良いが、互いに連続する。
第1の壁41、第2の壁42、第3の壁43、及び外壁45はそれぞれ、中心軸Axに沿って延びる略円筒状に形成される。すなわち、第1の壁41、第2の壁42、第3の壁43、及び外壁45は、同心に配置される。
以下、中心軸Axに沿う方向を軸方向、中心軸Axと直交する方向を径方向、中心軸Axまわりに回転する方向を周方向と称する。すなわち、径方向は、軸方向と直交する。さらに、軸方向のうち一方向を、噴射方向Dと称する。図2において、軸方向は左右方向であり、噴射方向Dは右方向である。
第2の壁42は、径方向において第1の壁41の外側に位置し、間隔を介して第1の壁41を囲む。第3の壁43は、径方向において第2の壁42の外側に位置し、間隔を介して第2の壁42を囲む。また、第3の壁43の直径は、噴射方向Dに向かうにつれて略段階的に縮小する。
第1の壁41、第2の壁42、及び第3の壁43の噴射方向Dにおける端は、軸方向において略同一位置に配置される。第1の壁41、第2の壁42、及び第3の壁43の噴射方向Dにおける端は、噴射方向Dに向くノズル部材40の端面40aを形成する。なお、ノズル部材40は、ノズルスカート40bのように、端面40aよりも噴射方向Dに張り出した部分を有しても良い。
凸壁44は、周部44aと、二つの端部44bと、を有する。周部44aは、中心軸Axに沿って延びる略円筒状に形成される。すなわち、周部44aは、第1の壁41、第2の壁42、第3の壁43、及び外壁45と、同心に配置される。周部44aは、径方向において第3の壁43の外側に位置し、間隔を介して第3の壁43を囲む。軸方向において、周部44aは、第3の壁43よりも短い。端部44bは、軸方向における周部44aの両端と、第3の壁43と、に接続される。
外壁45は、径方向において第3の壁43及び凸壁44の外側に位置し、間隔を介して第3の壁43及び凸壁44を囲む。端面40aは、外壁45の噴射方向Dにおける端から噴射方向Dに離間する。外壁45の噴射方向Dにおける端は、燃焼器12に接続される。例えば、外壁45は、燃焼器12のケーシング12aに接続される。外壁45は、燃焼器ライナに接続されても良い。
端壁46は、径方向に広がる略円盤状に形成される。第1の壁41、第2の壁42、第3の壁43、及び外壁45は、端壁46から噴射方向Dに延びる。凸壁44は、端壁46から噴射方向Dに離間する。端壁46は、第1の壁41、第2の壁42、第3の壁43、及び凸壁44のそれぞれよりも厚い。
接続部51は、第2の壁42、第3の壁43、及び端壁46に接続される。本実施形態において、接続部51は、多孔質51aと、隔壁51bとを有する。なお、接続部51は、例えば、多孔質51aを有さず、第2の壁42及び第3の壁43に接続される管であっても良い。
多孔質51aは、流体が通過可能な流路、孔、又は空間を形成する多孔性の部分である。本実施形態では、多孔質51aは、ジャイロイドの周期極小曲面に沿う壁である。なお、多孔質51aは、この例に限らず、例えば、ラティス構造、略平行に延びる孔が設けられた部分、又はスポンジ状の部分であっても良い。隔壁51bは、径方向に広がる略円盤状に形成され、多孔質51aに接続される。多孔質51aは、端壁46と隔壁51bとの間に位置する。
中間層52は、第1の壁41と第2の壁42との間に位置し、第1の壁41及び第2の壁42に接続される。中間層52は、端壁46から端面40aまで設けられる。なお、中間層52は、端壁46と端面40aとの間の一部に設けられても良い。
中間層52は、流体が通過可能な流路、孔、又は空間を形成する多孔性の部分である。本実施形態では、中間層52は、略平行に延びるとともに格子状に組み合わされた複数の延部を有するラティス構造である。なお、中間層52は、この例に限らず、例えば、ジャイロイドの周期極小曲面に沿う壁、略平行に延びる孔が設けられた部分、又はスポンジ状の部分であっても良い。
スワラー53は、第2の壁42と第3の壁43との間に位置し、第2の壁42及び第3の壁43のうち少なくとも一方に接続される。本実施形態では、スワラー53は、第2の壁42及び第3の壁43の両方に接続される。
複数のスワラー53は、周方向に間隔を介して配置される。スワラー53は、軸方向に向かうに従って周方向に捩れる螺旋状に形成される。スワラー53は、端壁46から噴射方向Dに離間する。軸方向において、中間層52の長さは、スワラー53の長さよりも長い。
図3は、第1の実施形態の燃焼器ノズル11を図2のF3−F3線に沿って模式的に示す例示的な断面図である。図3に示すように、酸化剤供給管54は、外壁45を貫通し、凸壁44の周部44aに接続される。流体供給管55は、外壁45に接続される。
図2に示すように、ノズル部材40に、第1の流路61と、第2の流路62と、第3の流路63と、第4の流路64と、第5の流路65と、第6の流路66と、拡散室67と、複数の孔68と、が設けられる。
第1の流路61は、第1の壁41により形成され、略円形の断面を有し、軸方向に延びる。燃料出口61aが、第1の流路61の一方の端に連通され、端面40aで開口する。さらに、燃料入口61bが、第1の流路61の他方の端に連通され、端壁46で開口する。燃料入口61bは、図1の燃料供給源26に接続される。
第2の流路62は、第1の壁41と第2の壁42との間に設けられ、略円環状の断面を有し、軸方向に延びる。このため、第2の流路62は、径方向において第1の流路61の外側に設けられる。第1の壁41が、第1の流路61と第2の流路62とを隔てる。
第2の流路62は、第1の壁41、第2の壁42、及び中間層52によって形成される。なお、第2の流路62は、第1の壁41及び第2の壁42によって形成されるとともに中間層52が設けられない部分を有しても良い。流体出口62aが、第2の流路62の一方の端に連通され、端面40aで開口する。流体出口62aは、第2の流体出口の一例である。
第3の流路63は、第2の壁42と第3の壁43との間に設けられ、略円環状の断面を有し、軸方向に延びる。このため、第3の流路63は、径方向において第2の流路62の外側に設けられる。第2の壁42が、第2の流路62と第3の流路63とを隔てる。
第3の流路63の断面積は、噴射方向Dに向かうにつれて略段階的に縮小する。スワラー53は、第3の流路63に配置される。酸化剤出口63aが、第3の流路63の一方の端に連通され、端面40aで開口する。
第4の流路64は、第3の壁43及び凸壁44と、外壁45と、の間に設けられ、略円環状の断面を有し、軸方向に延びる。このため、第4の流路64は、径方向において第3の流路63の外側に設けられる。第3の壁43が、第3の流路63と第4の流路64とを隔てる。第4の流路64の断面積は、第2の流路62の断面積よりも大きい。
流体出口64aが、第4の流路64の一方の端に連通され、外壁45の噴射方向Dにおける端で開口する。流体出口64aは、第1の流体出口の一例である。さらに、流体入口64bが、第4の流路64に連通される。流体入口64bは、流体供給管55を介して、図1の第1の熱交換器21に接続される。
第5の流路65は、接続部51の多孔質51aにより形成される。第5の流路65は、第2の流路62及び第4の流路64に連通される。また、第5の流路65は、隔壁51bによって第3の流路63から隔てられる。流体入口64bは、軸方向において、第5の流路65と流体出口64aとの間に位置する。
第6の流路66は、スワラー53の内部に設けられる。すなわち、本実施形態のスワラー53は中空である。第6の流路66は、第2の流路62及び第4の流路64に連通される。第6の流路66は、第5の流路65から噴射方向Dに離間する。スワラー53が、第6の流路66と第3の流路63とを隔てる。
拡散室67は、第3の壁43と凸壁44との間に設けられ、略円環状の断面を有し、軸方向に延びる空間である。このため、拡散室67は、径方向において第3の流路63の外側に設けられる。凸壁44が、拡散室67と第4の流路64との間を隔てる。酸化剤入口67aが、拡散室67に連通する。酸化剤入口67aは、酸化剤供給管54を介して、図1の酸化剤供給源25に接続される。
複数の孔68は、第3の壁43に設けられ、周方向及び軸方向に並べられる。図3に示すように、孔68は、酸化剤入口67aに面する部分から外れた位置で、第3の壁43に設けられる。孔68は、第3の流路63及び拡散室67に連通される。孔68が設けられた第3の壁43の一部は、ストレイナ(分散板)Sを形成する。図2に示すように、スワラー53は、軸方向において、孔68と酸化剤出口63aとの間に位置する。
燃料Ffは、燃料入口61bから第1の流路61に供給される。燃料Ffは、第1の流路61を流れ、燃料出口61aから燃焼器12の内部に噴射される。これにより、ノズル部材40の燃料出口61aは、燃料Ffを燃焼器12に供給する。
図3に示すように、酸化剤入口67aは、酸化剤供給管54を流れる酸化剤Foを、拡散室67に供給する。酸化剤Foは、第3の壁43に衝突し、拡散室67で拡散する。拡散室67を流れる酸化剤Foは、複数の孔68を通って、第3の流路63に供給される。ストレイナSは、複数の孔68により酸化剤Foの流量を均一化し、酸化剤Fo及び燃料Ffの燃焼効率を向上させる。
図4は、第1の実施形態のノズル部材40の一部を模式的に示す例示的な断面図である。図4に示すように、酸化剤Foは、第3の流路63を流れ、スワラー53によって中心軸Axまわりに旋回する旋回流になる。スワラー53は、酸化剤Foを旋回流にすることで、酸化剤Fo及び燃料Ffの燃焼効率を向上させる。さらに、第3の流路63の断面積の縮小により、酸化剤Foの流速が増加する。図2に示すように、酸化剤Foは、酸化剤出口63aから燃焼器12の内部に噴射される。これにより、ノズル部材40の酸化剤出口63aは、酸化剤Foを燃焼器12に供給する。
図3に示すように、流体入口64bは、流体供給管55を流れる作動流体Fwを、第4の流路64に供給する。図2に示すように、作動流体Fwの一部は、第4の流路64を流れ、流体出口64aから燃焼器12の内部に噴射される。これにより、ノズル部材40の流体出口64aは、作動流体Fwを燃焼器12に供給する。
図4に示すように、ノズル部材40は、作動流体Fwの他の一部を、第5の流路65を通じて第2の流路62に供給する。図2に示すように、作動流体Fwは、第2の流路62を流れ、流体出口62aから燃焼器12の内部に噴射される。これにより、ノズル部材40の流体出口62aは、作動流体Fwを燃焼器12に供給する。図4に示すように、第2の流路62を流れる作動流体Fwの一部は、第6の流路66を通じて第4の流路64に戻される。
図2に示すように、燃料出口61aが燃料Ffを噴射し、酸化剤出口63aが燃料出口61aの周囲から酸化剤Foを噴射する。噴射された燃料Ffと酸化剤Foとが、燃焼器12で燃焼反応を生じ、燃焼ガスFcを生成する。流体出口62aから噴射された作動流体Fwは、燃料Ff、酸化剤Fo、及び燃焼ガスFcに混合される。
流体出口64aは、径方向における酸化剤出口63aの外側から作動流体Fwを噴射する。作動流体Fwは、例えば、燃焼領域とケーシング12aとの間に供給され、ケーシング12aが燃焼に曝されることを抑制するとともに、ケーシング12aやトランジションピース(尾筒)のような燃焼器ノズル11以降の部品を冷却する。作動流体Fwは、例えば、燃焼器ライナとケーシング12aとの間に供給され、燃焼器ライナを冷却しても良い。この場合、作動流体Fwは、希釈孔から燃焼器ライナ内の燃焼領域の下流側に流入する。
ノズル部材40において、酸化剤Fo及び作動流体Fwはそれぞれ、燃料Ffよりも高温である。このため、一体に作られたノズル部材40において、温度が不均一となり、熱移動が生じる。
例えば、燃料Ffが流れる第1の流路61に接する第1の壁41は、第2の壁42及び第3の壁43よりも低温になる。第2の流路62を流れる作動流体Fwは、第1の壁41との熱伝導により、第4の流路64を流れる作動流体Fwよりも低温になる。しかし、第2の流路62を流れる作動流体Fwは、燃料Ffよりも高温であり、超臨界に保たれる。
第2の流路62に接する第2の壁42は、第3の壁43よりも低温になる。しかし、第2の壁42と第3の壁43との温度差は、第1の壁41と第3の壁43との温度差よりも小さい。
接続部51は、例えば第2の壁42と熱伝導する。このため、第5の流路65を流れる作動流体Fwの温度は、作動流体Fwと接続部51との熱伝導により低下し、第2の流路62を流れる作動流体Fwの温度に近づく。
ノズル部材40における温度の不均一は、熱膨張の不均一を生じる。熱膨張量が異なる部分どうしを接続する部分には、熱応力が生じる虞がある。しかし、例えば、第2の壁42と第3の壁43との温度差が小さいため、第2の壁42及び第3の壁43に接続されるスワラー53の熱応力は小さくなる。従って、熱応力によるスワラー53の損傷は抑制される。
第1の壁41、第2の壁42、及び中間層52は、一つの厚肉壁Wを形成する。すなわち、厚肉壁Wは、第2の流路62を形成する中間層52を内部に有する。厚肉壁Wは、第3の壁43よりも厚く、高い剛性を有する。また、中間層52と第1の壁41及び第2の壁42との接続部分の断面積の合計は、スワラー53と第2の壁42及び第3の壁43との接続部分の断面積の合計よりも大きい。加えて、第2の流路62を流れる作動流体Fwの温度は、第1の流路61を流れる燃料Ffの温度より高く、且つ第3の流路63を流れる酸化剤Foの温度よりも低い。このため、中間層52の熱応力は小さくなり、熱応力による中間層52の損傷が抑制される。
以上説明された第1の実施形態に係るタービン設備10において、ノズル部材40の第1の壁41、第2の壁42、第3の壁43、及びスワラー53は一体に作られる。スワラー53は、第2の壁42及び第3の壁43のうち少なくとも一方に接続されるとともに第3の流路63に配置される。燃料Ffが、第1の流路61を流れる。燃料Ffより高温の酸化剤Foが、第3の流路63を流れる。燃料Ffより高温の作動流体Fwが、第4の流路64を流れるとともに、第5の流路65を介して通じて第2の流路62に供給される。これにより、第2の壁42が、高温の作動流体Fwが供給される第2の流路62と、高温の酸化剤Foが流れる第3の流路63と、の間に配置される。また、第3の壁43が、高温の酸化剤Foが流れる第3の流路63と、高温の作動流体Fwが流れる第4の流路64と、の間に配置される。これにより、第2の壁42と第3の壁43との熱膨張の差が低減される。
スワラー53が第2の壁42及び第3の壁43に接続されると、第2の壁42と第3の壁43との熱膨張の差によりスワラー53に熱応力が生じることがある。しかし、上述の熱膨張差の低減により、スワラー53に生じる熱応力が低減される。従って、スワラー53を第2の壁42及び第3の壁43に接続することができ、スワラー53による旋回流の発生効率が低下することが抑制される。
第2の流路62が第1の流路61と第3の流路63との間に設けられることで、ノズル部材40における温度勾配が緩やかになり、ノズル部材40が均熱化される。このため、スワラー53に限らず、ノズル部材40に生じる熱応力が低減される。
スワラー53が、第2の壁42及び第3の壁43に接続される。これにより、酸化剤Foが、スワラー53と、第2の壁42又は第3の壁43との間の隙間を通過することが抑制される。従って、スワラー53による旋回流の発生効率が低下することが抑制される。
第6の流路66は、スワラー53の内部に設けられるとともに、第2の流路62及び第4の流路64に連通される。このため、第2の流路62に供給された作動流体Fwは、第6の流路66を通って第4の流路64に戻ることができる。従って、第4の流路64から燃焼器12に供給される作動流体Fwの流量が低減することが抑制される。
接続部51が、第2の壁42及び第3の壁43に接続されるとともに、第5の流路65の少なくとも一部を形成する。接続部51と、第2の流路62を流れる作動流体Fwに接する第2の壁42とは、互いに熱伝導を行う。このため、第5の流路65を流れる作動流体Fwの温度は、接続部51を介した熱伝導により、第2の流路62を流れる作動流体Fwの温度に近づく。接続部51は多孔性であるため表面積が大きく、第5の流路65を流れる作動流体Fwと、第2の流路62を流れる作動流体Fwとが、熱伝導しやすい。これにより、ノズル部材40における温度勾配が緩やかになり、温度差によってノズル部材40に熱応力が生じることが抑制される。
多孔性の中間層52が、第1の壁41及び第2の壁42に接続されるとともに、第2の流路62の少なくとも一部を形成する。軸方向において、中間層52の長さは、スワラー53の長さよりも長い。これにより、中間層52が設けられた区間において、第1の壁41、第2の壁42、及び中間層52が一体の厚肉壁Wとなる。従って、ノズル部材40の剛性が向上するとともに、中間層52が熱応力により損傷することが抑制される。また、多孔性の中間層52により、第2の流路62を流れる作動流体Fwは、第1の壁41を介して燃料Ffと熱伝導しやすくなるとともに、第2の壁42を介して酸化剤Foと熱伝導しやすくなる。これにより、ノズル部材40における温度勾配が緩やかになり、温度差によってノズル部材40に熱応力が生じることが抑制される。
流体入口64bは、軸方向において、第5の流路65と流体出口64aとの間に位置する。すなわち、第5の流路65は、流体入口64bよりも上流側で、第2の流路62に作動流体Fwを供給する。第5の流路65を流れる作動流体Fwは、流体出口62aから燃焼器12に供給される。これにより、第2の流路62が第1の流路61の上流から下流まで、当該第1の流路61に沿って設けられる。従って、第1の壁41と第2の壁42との間でより長い区間に第2の流路62を設けることができ、第2の壁42と第3の壁43との熱膨張の差が低減される。
作動流体Fwは、燃焼器12から排出される燃焼ガスFcを有する。このため、タービン設備10は、燃焼器12における燃焼に伴って発生する燃焼ガスFcを、作動流体Fwとして再利用することができる。
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について、図5を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
図5は、第2の実施形態に係るノズル部材40の一部を模式的に示す例示的な断面図である。図5は、図2のF5−F5線の位置におけるノズル部材40の断面を示すとともに、外壁45を省略する。
図5に示すように、第2の実施形態のノズル部材40は、スワラー53の代わりに、複数の第1のスワラー71、複数の第2のスワラー72、複数の第3のスワラー73、複数の第4のスワラー74を有する。
第1のスワラー71、第2のスワラー72、第3のスワラー73、及び第4のスワラー74はそれぞれ、スワラーの一例である。第1のスワラー71、第2のスワラー72、第3のスワラー73、及び第4のスワラー74は、第1の壁41、第2の壁42、第3の壁43、凸壁44、外壁45、端壁46、接続部51、中間層52、酸化剤供給管54、及び流体供給管55と一体に作られる。
第1のスワラー71、第2のスワラー72、第3のスワラー73、及び第4のスワラー74はそれぞれ、第2の壁42と第3の壁43との間に位置し、軸方向に向かうに従って周方向に捩れる螺旋状に形成される。第1のスワラー71、第2のスワラー72、第3のスワラー73、及び第4のスワラー74は、端壁46から噴射方向Dに離間する。軸方向において、中間層52の長さは、第1のスワラー71、第2のスワラー72、第3のスワラー73、及び第4のスワラー74のそれぞれの長さよりも長い。
第1のスワラー71及び第2のスワラー72は、第2の壁42に接続され、第3の壁43から僅かな隙間Gを介して離間する。第1のスワラー71及び第2のスワラー72は、周方向に間隔を介して交互に配置される。
第3のスワラー73及び第4のスワラー74は、第3の壁43に接続され、第2の壁42から僅かな隙間Gを介して離間する。第3のスワラー73及び第4のスワラー74は、周方向に間隔を介して交互に配置される。
第1のスワラー71と第4のスワラー74とは、周方向に僅かな隙間を介して隣接する。第1のスワラー71と第4のスワラー74との間の距離は、第1のスワラー71と第2のスワラー72との間の距離よりも短い。また、第1のスワラー71と第4のスワラー74との間の距離は、第1のスワラー71と第3のスワラー73との間の距離よりも短い。
第2のスワラー72と第3のスワラー73とは、周方向に僅かな隙間を介して隣接する。第3のスワラー73と第2のスワラー72との間の距離は、第3のスワラー73と第4のスワラー74との間の距離よりも短い。また、第3のスワラー73と第2のスワラー72との間の距離は、第3のスワラー73と第1のスワラー71との間の距離よりも短い。
第3の壁43の内周面43aに、複数の第1の凹部76が設けられる。第1の凹部76は、凹部の一例である。内周面43aは、径方向の内側に向く第3の壁43の表面であり、第3の流路63の一部を形成する。
第1の凹部76にそれぞれ、対応する第1のスワラー71の一部が収容される。第1の凹部76は、対応する第1のスワラー71に応じて、周方向に間隔を介して配置され、軸方向に向かうに従って周方向に捩れる螺旋状に形成される。
第3の壁43は、第1の凹部76を形成する第1の凹面76aを有する。第1の凹面76aは、僅かな隙間Gを介して第1のスワラー71に面する。第1の凹面76aと第1のスワラー71との間の距離は、第4のスワラー74と第1のスワラー71との間の距離に略等しい。
第2の壁42の外周面42aに、複数の第2の凹部77が設けられる。第2の凹部77は、凹部の一例である。外周面42aは、径方向の外側に向く第2の壁42の表面であり、第3の流路63の一部を形成する。
第2の凹部77にそれぞれ、対応する第3のスワラー73の一部が収容される。第2の凹部77は、対応する第3のスワラー73に応じて、周方向に間隔を介して配置され、軸方向に向かうに従って周方向に捩れる螺旋状に形成される。
第2の壁42は、第2の凹部77を形成する第2の凹面77aを有する。第2の凹面77aは、僅かな隙間Gを介して第3のスワラー73に面する。第2の凹面77aと第3のスワラー73との間の距離は、第2のスワラー72と第3のスワラー73との間の距離に略等しい。
第1のスワラー71と第1の凹面76aとの間の隙間G、第1のスワラー71と第4のスワラー74との間の隙間、及び第4のスワラー74と第2の壁42との間の隙間Gは、ラビリンスシールのように酸化剤Foの通過を抑制する。また、第3のスワラー73と第2の凹面77aとの間の隙間G、第2のスワラー72と第3のスワラー73との間の隙間、及び第2のスワラー72と第3の壁43との間の隙間Gは、ラビリンスシールのように酸化剤Foの通過を抑制する。
以上説明された第2の実施形態のタービン設備10において、第1のスワラー71が第2の壁42に接続され、第3の壁43から離間する。第1の実施形態と同じく熱膨張差が低減されることにより、第1のスワラー71と、第3の壁43と、の間の距離が熱膨張により変化することが抑制される。このため、第1のスワラー71と第3の壁43との間の隙間を低減させても、第1のスワラー71が第3の壁43に干渉したり、第1のスワラー71が第3の壁43からさらに離間したりすることが抑制される。従って、第1のスワラー71と第3の壁43との間の隙間を通過する酸化剤Foの量を低減でき、第1のスワラー71による旋回流の発生効率が低下することが抑制される。
第1のスワラー71は、第2の壁42に接続され、第3の壁43から隙間Gを介して離間する。第3の壁43は、第1の凹部76を形成する第1の凹面76aを有する。第1の凹面76aは、隙間Gを介して第1のスワラー71に面する。これにより、第1のスワラー71と第3の壁43との間の隙間Gを通過する酸化剤Foの量を低減でき、第1のスワラー71による旋回流の発生効率が低下することが抑制される。
第4のスワラー74は、第1のスワラー71に隙間を介して隣接する。これにより、第1のスワラー71と第3の壁43との間の隙間G、第1のスワラー71と第4のスワラー74との間の隙間、及び第4のスワラー74と第2の壁42との間の隙間Gを通過する酸化剤Foの量を低減でき、第1のスワラー71による旋回流の発生効率が低下することが抑制される。
以上説明された少なくとも一つの実施形態によれば、ノズルの第1の壁、第2の壁、第3の壁、及びスワラーは一体に作られる。スワラーは、第2の壁及び第3の壁のうち少なくとも一方に接続されるとともに第3の流路に配置される。燃料が、第1の流路を流れる。燃料より高温の酸化剤が、第3の流路を流れる。燃料より高温の流体が、第4の流路を流れるとともに、第5の流路を介して通じて第2の流路に供給される。これにより、第2の壁が、高温の流体が供給される第2の流路と、高温の酸化剤が流れる第3の流路と、の間に配置される。また、第3の壁が、高温の酸化剤が流れる第3の流路と、高温の流体が流れる第4の流路と、の間に配置される。これにより、第2の壁と第3の壁との熱膨張の差が低減される。
スワラーが第2の壁及び第3の壁のうち一方の壁に接続された場合、上述の熱膨張差の低減により、スワラーと、第2の壁及び第3の壁のうち他方の壁と、の間の距離が熱膨張により変化することが抑制される。このため、スワラーと他方の壁との間の隙間を低減させても、スワラーが他方の壁に干渉したり、スワラーが他方の壁からさらに離間したりすることが抑制される。従って、スワラーと他方の壁との間の隙間を通過する酸化剤の量を低減でき、スワラーによる旋回流の発生効率が低下することが抑制される。
一方で、スワラーが第2の壁及び第3の壁に接続された場合、第2の壁と第3の壁との熱膨張の差によりスワラーに熱応力が生じることがある。しかし、上述の熱膨張差の低減により、スワラーに生じる熱応力が低減される。従って、スワラーを第2の壁及び第3の壁に接続することができ、スワラーによる旋回流の発生効率が低下することが抑制される。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。