以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
<金属化合物濃縮装置の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る金属化合物濃縮装置の構成を概略的に示す図である。図1の装置構成はその一例を示すものであり、本発明に係る金属化合物濃縮装置が適用される構成は、図1のものに限られない。
図1の金属化合物濃縮装置1は、レアメタルを含有する金属酸化物を乾式法で濃縮する装置であり、反応炉10を基準として、該反応炉の上流側に、酸素含有ガス供給手段40、ガス加熱手段50及び還元ガス生成手段30が配置され、反応炉10の下流側に、ガス排出手段60、回収手段80及び浄化手段90が配設されている。
具体的には、金属化合物濃縮装置1は、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、テルル(Te)、及びセシウム(Cs)からなる群から選択された金属(以下、単に「レアメタル」ともいう)を第1金属含有率で含有する第1固体金属化合物の混合物M中の上記第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とすると共に、上記気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を上記第1金属含有率より高い第2金属含有率で捕集する反応炉10と、上記第1固体金属化合物を還元する還元ガスG2を生成して反応炉10に供給する還元ガス生成手段30と、還元ガスG2を生成するための酸素含有ガスG1を還元ガス生成手段30に供給する酸素含有ガス供給手段40と、酸素含有ガスG1を加熱するガス加熱手段50と、反応炉10内で生成された副成ガスG3を排出するガス排出手段60と、ガス排出手段60の下流に配置され、上記第2固体金属化合物を回収する回収手段80と、回収手段80の下流に配置され、上記副成ガスG3を浄化する浄化手段90とを備える。
反応炉10は、図2に示すように、第1固体金属化合物を内部空間で反応させるための反応管11と、反応管11を加熱する加熱部12と、反応管11内の下部に設けられ、第1固体金属化合物を保持する保持部13と、保持部13の下部に設けられ、還元ガス生成手段30から供給される還元ガスG2を、反応管11の下部から保持部13に導入するための導入口14と、保持部13の上方に設けられ、還元ガスG2を保持部13に供給する圧力によって上記第1固体金属化合物を流動させる流動床部15と、流動床部15の上部に位置し、上記第2固体金属化合物を捕集する捕集部16−1と、捕集部16−1の上方に設けられ、副成ガスG3を反応管11内から外部に排出するための排出口17とを有する。
反応管11は、内管11aと、内管11aを支持する支持管11bと、内管11a及び支持管11bの双方を内部に収容する外管11cと、外管11cの下端開口を閉塞する閉塞部11dと、外管11cの上端開口を閉塞する閉塞部11eと、外管11cに設けられ、混合物Mを内管11a内に供給するための供給部11fとを有している。混合物Mとは、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムからなる群から選択された金属を第1金属含有率で含有する第1固体金属化合物を含む材料である。
内管11aは、一端が閉塞された管状体からなり、管状部11a−1と、管状部11a−1の内周面11a−2と、管状部11a−1と一体で設けられた底部11a−3と、底部11a−3に設けられた貫通孔11a−4とを有する。内管11aは、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニア、石英などの酸化物を主成分とするセラミックからなる。管状部11a−1及び底部11a−3で画定される内部空間のうち、底部11a−3側の内部空間が保持部13をなし、保持部13の直上に位置する内部空間が流動床部15をなす。
支持管11bは、内管11aと閉塞部11dとの間に介設されており、内管11aを外管11c内で高さ方向に位置決めすると共に、導入部14と内管11aとを連通する。支持管11bは、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニア、石英などの酸化物を主成分とするセラミックからなる。外管11cは、上下両端が開口した管状体からなり、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニア、石英などの酸化物を主成分とするセラミックからなる。
閉塞部11dは、上下方向に貫通した貫通孔11d−1を有しており、貫通孔11d−1が、ガス生成手段30のガス導入管30aに接続されている。この貫通孔11d−1の上端が、上述した導入口14をなしている。
閉塞部11eは、上下方向に貫通した貫通孔11e−1を有しており、貫通孔11e−1は、還元ガス排出手段60のガス排出管60aに接続されている。この貫通孔11e−1の下端が、上述した排出口17をなしている。
供給部11fは、例えば外部から内管11b内に混合物Mを供給するための供給管であり、該供給管の端部には、外管11c内を密閉するための蓋部11gが取り付けられている。供給部11fは、混合物Mを搬送する搬送手段と、炉内の密閉状態を維持するためのゲート部とを有していてもよい。
加熱部12は、炉体12aと、炉体12a内に取り付けられたヒータ12bとを有する。炉体12aは、セラミックを主成分とする断熱材を有し、炉体12aの内部空間と外部とを断熱する。ヒータ12bは、例えば、鉄−クロム系(Fe−Cr)やニッケル−クロム系(Ni−Cr)等の合金発熱体や、モリブデン(Mo)やタングステン(W)等の単体金属発熱体、あるいは炭化珪素(SiC)等の非金属発熱体からなる。加熱部12は、熱電対などの温度検出部と、該温度検出部の検出温度に基づいてヒータ12bの発熱量を制御する制御部とを有してもよく、この場合、炉体12a内の温度制御を行うことで反応管11内の温度を調整する。
保持部13は、レアメタルを第1金属含有率で含有する第1固体金属化合物の混合物Mを保持する。混合物Mとは、例えば、使用済み電気・電子機器を分解して得られたレアメタル含有廃材や、鉱石である。ガス導入前あるいは加熱初期段階では、底部11a−3に設けられた貫通孔11a−4にパラフィルムからなる栓部材を嵌入してもよい。これにより、保持部13内の混合物Mが貫通孔11a−4から落下するのを防止することができる。
流動床部15は、還元ガスG2を保持部13に供給する圧力によって、上記混合物Mに含有される第1固体金属化合物からなる粒子が流動する空間である。このとき、流動床部15内には図2に示すようなループ状の流動経路Lが形成される。また、流動床部15では、流動粒子を構成する第1固体金属化合物が還元反応によって気体金属化合物に変化し、更に、該気体金属化合物が酸化反応によって第2固体金属化合物に変化する。
捕集部16−1は、反応管11の内部空間を画定する側壁の一部である。具体的には、捕集部16−1は、反応管11における管状部11a−1の内周面11a−2のうち、流動床部15の上部に位置する領域である。捕集部16−1は、上記気体金属化合物が酸化することで得られる第2固体金属化合物を、第1金属含有率よりも高い第2金属含有率で捕集する。流動床部15では、上述のようにレアメタルの気体金属化合物が酸化反応によって第2固体金属化合物に変化し、この酸化反応により、内管11aの内周面11a−2に第2固体金属化合物が付着し、第2固体金属化合物が捕集される。
酸素含有ガス供給手段40は(図1)、例えば酸素含有ガスG1を所定流量でガス加熱手段50に供給する。酸素含有ガス供給手段40によって供給される酸素含有ガスG1は、例えば空気などの酸素含有窒素ガスである。酸素含有ガス供給手段40は、空気を供給するブロアであってもよいし、あるいは、窒素ガス発生手段とファンとを有し、窒素と空気の混合ガス、或いは1ppm〜1%程度の不純物酸素を含む窒素ガスをガス加熱手段50に供給してもよい。
ガス加熱手段50は、本実施形態では、酸素含有ガス供給手段40に接続された第1流路50−1a及びガス排出手段60に接続された第2流路50−1bを有する熱交換器50−1と、第1流路50−1aから供給される酸素含有ガスG1を所定温度まで加熱して、還元ガス生成手段30に供給する予備加熱部50−2とを有する。
熱交換器50−1において、第1流路50−1aには酸素含有ガスG1が流れ、第2流路50−1bには酸素含有ガスG1よりも高温の副成ガスG3が流れる。このとき、第1流路50−1a内の酸素含有ガスG1と第2流路50−1b内の副成ガスG3との間で熱エネルギーの交換がなされ、第1流路50−1a内の酸素含有ガスG1が第2流路50−1b内の副成ガスG3によって加熱されると共に、副成ガスG3が酸素含有ガスG1によって冷却される。
予備加熱部50−2は、第1流路50−1aと接続されたステンレス管50−2aと、ステンレス管50−2aを加熱する加熱部50−2bとを有しており、第1流路50−1aから供給された酸素含有ガスG1をステンレス管50−2a内で加熱して、加熱した酸素含有ガスG1をガス導入管50aを介して還元ガス生成手段30に供給する。予備加熱部50−2は、熱電対などの温度検出部と、該温度検出部の検出温度に基づいて加熱部50−2bの発熱量を制御する制御部とを有してもよい。この場合、制御部は、ステンレス管50−2a内の温度制御を行うことで、反応炉10に供給する酸素含有ガスG1の温度を調整する。
還元ガス生成手段30は、炭素源含有材料Wを後述の生成部に供給するための材料供給部31と、炭素源含有材料Wを酸化して還元ガスG2を生成する生成部32とを有する。材料供給部31は、例えば外部から生成部32に炭素源含有材料Wを供給可能な供給路である。
生成部32は、例えば予備加熱部50−2と接続された石英管32aと、石英管32aを加熱するヒータ32bとを有する。還元ガス生成手段30と反応炉10とを接続するガス導入管30aには、リボンヒータなどの加熱部が取り付けられている。生成部32は、予備加熱部50−2から供給された酸素含有ガスG1及び材料供給部31から供給された炭素源含有材料Wをヒータ32bで加熱し、炭素の酸化反応によって一酸化炭素を含む還元ガスG2を生成し、ガス導入管30aを介して反応炉10に供給する。
還元ガス生成手段30に供給される炭素源含有材料Wは、例えば石油系液体燃料、廃棄材木あるいは廃棄樹脂、又はこれらの混合物である。リサイクルの観点から、炭素源含有材料Wは、使用済みの電気・電子機器を分解して得られた廃棄樹脂が好ましい。
また、還元ガス生成手段30で生成される還元ガスG2は、例えば石油系液体燃料の燃焼ガス、廃棄材木の燃焼ガス、あるいは廃棄樹脂の燃焼ガスであり、具体的には、例えば一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)及び窒素(N2)を含む混合ガスである。
炭素源含有材料Wは、酸化触媒を含んでいてもよい。炭素源含有材料Wに含有される酸化触媒は、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Rd)、ロジウム(Rh)、銀(Ag)などの貴金属触媒である。この貴金属触媒は、アルミナ(Al2O3)などの多孔質酸化物からなる担体に担持された状態で用いられてもよいし、CeO2−ZrO2固溶体などの酸化セリウム−酸化ジルコニウム系複合酸化物からなる担体に担持された状態で用いられてもよい。これにより、炭素源含有材料W中の炭素を低温で酸化させることができる。
ガス排出手段60は、上流側が反応炉10に接続され且つ下流側が浄化手段90に接続されたガス排出管60aを有しており、反応炉10から排出される副成ガスG3を排出し、熱交換器50−1を通って浄化手段90に供給する。
回収手段80は、反応炉10と熱交換器50−1とを接続するガス排出管60aの経路内に取り付けられている。回収手段80は、例えば集塵機である。回収手段80は、遠心力によって副成ガスG3内の第2固体金属化合物を分離する遠心分離式の分離部81と、分離部81の下方に接続され、分離部81で分離された第2固体金属化合物を回収する回収部82とを有する。
浄化手段90は、ガス排出手段60の下流であって且つ熱交換器50−1の下流に配置されており、回収手段80から供給された副成ガスG3を浄化して、浄化ガスG4を装置外に排出する。浄化手段90は、例えば活性炭であり、副成ガスG3中の一酸化炭素を活性炭に吸着させることにより、副成ガスG3中の一酸化炭素を除去する。浄化手段90は、副成ガスG3中の一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOX)等を無害な物質に変換する1又は複数種の触媒を有していてもよい。例えば、副成ガスG3中の一酸化炭素は二酸化炭素に、炭化水素は水と二酸化炭素に、窒素酸化物は窒素にそれぞれ変換される。副成ガスG3が一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOX)等を含まない場合には、浄化手段90を設けなくてもよい。
<金属化合物の濃縮方法>
上記構成の金属化合物濃縮装置1では、以下の方法で金属化合物を濃縮する。
(1−1)第1固体金属化合物が第1固体ガリウム化合物(固体窒化ガリウム)、第2固体金属化合物が第2固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)である場合
図2において、先ず、反応炉10の供給部11fから、第1固体金属化合物である窒化ガリウムを第1金属含有率で含有する混合物Mを投入し、この混合物Mを保持部13に収容する。混合物Mがレアメタル含有廃材である場合、例えば窒化ガリウム(GaN)及び酸化アルミニウム(Al2O3)の混合物であり、必要に応じて、更に活性炭(C)を添加した混合物である。混合物Mが鉱石である場合、第1固体ガリウム化合物に加え、二酸化珪素(SiO2)、酸化アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化鉄(Fe2O3)等を含む混合物である。その後、還元ガス生成手段30の材料供給部31に炭素源含有材料W、例えばエポキシ樹脂を投入し、石英管32a内に炭素源含有材料Wを収容する。
次に、酸素含有ガス供給手段40から所定流量で酸素含有ガスG1を導入し、熱交換器50−1の第1流路50−1aを介して予備加熱部50−2に供給する。副成ガスG3が第2流路50−1bに供給されている場合、第1流路50−1aを流れる酸素含有ガスG1は、第2流路50−1bを流れる副成ガスG3によって加熱される。その後、予備加熱部50−2において、ステンレス管50−2aを加熱し、該ステンレス管に供給された酸素含有ガスG1を所定温度、例えば600℃に加熱する。そして、所定温度に加熱された酸素含有ガスG1をガス導入管50aを介して還元ガス生成手段30に供給する。
次いで、還元ガス生成手段30における石英管32aの管内温度を500〜700℃に加熱し、石英管32a内に収容された炭素源含有材料Wと石英管32aに供給された空気とを酸化反応させて、還元ガスG2(一酸化炭素及び二酸化炭素からなる混合気体を含む)を生成する。そして、還元ガス生成手段30で生成された還元ガスG2をガス導入管30aを介して反応炉10に供給する。反応炉10に供給される還元ガスG2は、必要に応じて所定量の酸素を含有するように調整される。反応炉10に供給された還元ガスG2は、導入口14から反応管11に導入され、貫通孔11a−4を通って反応管11内の保持部13に供給される。反応管11内に供給される還元ガスG2の流量は、例えば、貫通孔11a−4の孔径1.5mmの場合、0.1L/min〜1.0L/minである。貫通孔11a−4孔径が1.5mmよりも大きい場合には、還元ガスG2の流量を1.0L/minよりも大きい値にすることができる。
次に、図3に示すように、反応炉10において、例えば400℃/hで反応炉10内を加熱し、1100〜1300℃で2時間保持した後、還元ガス生成手段30から供給された還元ガスG2を貫通孔11a−4から内管11aに導入し、還元ガスG2を内管11a内で上方に噴き出させる。これにより、内管11a内において、貫通11a−4近傍の混合物Mが還元ガスG2によって上方に吹き上げられると共に、貫通孔11a−4から離れた位置の混合物Mが落下し、混合物Mの上昇と落下が繰り返されることで、保持部13の直上に流動床部15が形成される。このとき、内管11aの長さは、還元ガスG2の高流量に対応可能とするため、30cm以上であるのが好ましい。また、貫通孔11a−4の内径は、還元ガスG2の吹き出し量を考慮して、例えば1mm〜9mmであるのが好ましい。
そして、反応管11内を所定温度に加熱し、内管11a内で、混合物M中の第1固体ガリウム化合物と還元ガスG2とを反応させる。
第1固体ガリウム化合物が固体窒化ガリウムであり、還元ガスG2が、一酸化炭素及び二酸化炭素からなる混合気体(以下、「CO/CO2混合気体」という)を含む場合、流動床部15では以下の化学式(1),(2)によってガリウムの還元反応及び酸化反応が起こり、捕集部16−1において、第1固体ガリウム化合物におけるガリウムの第1含金属有率よりも高い第2金属含有率で、第2固体金属化合物S1である第2固体ガリウム化合物(酸化ガリウム)が捕集される。
2GaN(solid)+CO2(gas)→Ga2O(gas)+N2(gas)+CO(gas)・・
・(1)
Ga2O(gas)+O2(gas)→Ga2O3(solid)・・・(2)
第1固体ガリウム化合物が還元されて気体ガリウム化合物が生成される反応では、化学式(1)に示すように、第1固体ガリウム化合物であるGaN、還元剤であるCO/CO2混合気体に含まれる二酸化炭素が反応して、気体ガリウム化合物であるGa2O、窒素、及び一酸化炭素が生成される。
また、気体ガリウム化合物が酸化されて第2固体ガリウム化合物が生成される反応では、化学式(2)に示すように、気体ガリウム化合物であるGa2Oと酸化剤である酸素とが反応して、第2固体ガリウム化合物であるGa2O3が生成される。
混合物Mに活性炭(C)を添加した場合、GaN(solid)と、活性炭(C)と、二酸化炭素(CO2)及び酸素(O2)のいずれかとの反応が上記反応と並行して進行し、気体ガリウム化合物であるGa2Oが生成される。しかし、固体である活性炭がGaNと接触する確率は低いことから、内管11a内で生じるガリウムの還元反応は、主としてCO/CO2混合気体によるものと推察される。
第1固体ガリウム化合物が固体窒化ガリウムである場合、第1固体ガリウム化合物から気体ガリウム化合物を経て第2固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)を得る工程では、第1固体ガリウム化合物の混合物Mを1000〜1300℃の範囲で加熱するのが好ましい。また、ガリウム混合物における気体ガリウム化合物(Ga2O)の蒸気圧が最大値となるように、反応管11内温度及び酸素分圧、特に捕集部16−1の温度及び酸素分圧を調整するのが好ましい。すなわち、反応炉10は、加熱部12に加えて、反応管11内の酸素分圧を制御する酸素分圧制御部を更に有していてもよい。
図4は、1150℃において、図1の金属化合物濃縮装置で濃縮されるガリウム種蒸気圧の酸素分圧依存性を説明するグラフである。同グラフにおいて、ガリウム種蒸気圧のうちGa2O(g)の蒸気圧が約1×104Paで最大値となり、このときの酸素分圧は1×10−11Pa(図中のa位置)であることが分かる。そこで本実施形態では、Ga2O(g)の蒸気圧を用い、気体ガリウム化合物であるGa2Oの蒸気圧が大きくなるように、反応管11内の酸素分圧を1Pa(1×100Pa)以下に制御するのが好ましく、1×10−19Pa以上1×10−7Pa以下がより好ましい。また、1150℃においては、気体ガリウム化合物であるGa2Oの蒸気圧が最大値となるように、反応管11内の酸素分圧を1×10−11Paに調整するのが特に好ましい。なお、この酸素分圧の範囲は、温度によって異なり、熱化学データを用いた熱力学計算によって算出される。また、この場合、反応炉10は、反応管11内の酸素分圧を計測するための酸素検出部と、酸素検出部の検出結果に基づいて酸素含有ガス供給手段40における酸素含有ガスG1の流量を制御する制御部とを有していてもよい。このように、Ga2O(g)の蒸気圧の最大値に対応した酸素分圧を設定し、反応管11内の酸素分圧が上記酸素分圧となるように、反応炉11内の酸素分圧を制御するか或いは反応炉10内に当該酸素分圧を有する還元ガスG2を導入することにより、捕集部16−1で第2固体ガリウム化合物であるGa2O(s)をより多く捕集することが可能となる。
本実施形態では、第1固体ガリウム化合物を含有する混合物Mの質量に対する、当該第1固体ガリウム化合物中のガリウム元素の質量の比を第1金属含有率α1、第2固体ガリウム化合物の質量に対する、当該第2固体ガリウム化合物中のガリウム元素の質量の比を第2金属含有率α2としたとき、第2金属含有率α2が第1金属含有率α1より高い。また、混合物Mに含まれる第1固体ガリウム化合物中のガリウムの質量をm1、捕集部16−1で捕集された第2固体ガリウム化合物中のガリウムの質量をm2としたとき、収率β(=m2/m1*100)は0.5%以上、好ましくは10%以上である。例えば、0.10gのGaN(s)を含む混合物から、0.0012gのGa2O3(s)が捕集され、収率βは1.1%を達成している。
次いで、反応管11内での還元・酸化反応によって生じた副成ガスG3を、排出口17から貫通孔11e−1を通ってガス排出管60aに排出する。副成ガスG3は、上記反応式(1)で生成された窒素及び一酸化炭素に加え、上記反応式(2)で生成された第2固体ガリウム化合物であるGa2O3(s)、並びに二酸化炭素を含んでいる。このGa2O3(s)含有副成ガスG3が、ガス排出管60aを介して回収手段80に供給される。
そして、回収手段80において(図3)、副成ガスG3は分離部81の内壁81aに沿って螺旋状に降下し、分離部81の下端81bに到達した後、分離部81の中心部を通って該分離部の上端81cに設けられた排出口81dから排出される。このとき、副成ガスG3に含まれるGa2O3(s)を分離部81で遠心分離して、第2固体金属化合物S2として回収部82で回収する。また、回収手段80の排出口81dから排出された副成ガスG3を、ガス排出管80aを介して熱交換器50−1に供給する。
熱交換器50−1では(図1)、副成ガスG3を第2流路50−1bに導入し、第2流路50−1bを流れる副成ガスG3と、第1流路50−1aを流れる酸素含有ガスG1との熱エネルギー交換によって、当該副成ガスG3を冷却する。その後、熱交換器50−1で冷却された副成ガスG3を浄化手段90に供給し、副成ガスG3を浄化して浄化ガスG4とし、該浄化ガスG4を外部に排出する。
上述のように、上記(1−1)における金属化合物濃縮方法では、第1固体ガリウム化合物(固体窒化ガリウム)を含有する混合物Mを、一酸化炭素を含む還元ガスG2を用いて所定温度且つ所定酸素分圧下で還元させることで、気体金属化合物であるGa2Oを分離し、これを酸化させて第2固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)を捕集する。
(1−2)第1固体金属化合物が第1固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)、第2固体金属化合物が第2固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)である場合
この場合にも、上記(1−1)と同様の方法で固体酸化ガリウムを濃縮することができる。流動床部15では、以下の化学式(3),(4)によってガリウムの還元反応及び酸化反応が起こり、捕集部16−1で、第1固体ガリウム化合物におけるガリウムの第1含金属有率よりも高い第2金属含有率で第2固体ガリウム化合物が捕集される。
Ga2O3(solid)+2CO(gas)→Ga2O(gas)+2CO2(gas)・・・(3)
Ga2O(gas)+O2(gas)→Ga2O3(solid)・・・(4)
第1固体ガリウム化合物が還元されて気体ガリウム化合物が生成される反応では、化学式(3)に示すように、第1固体ガリウム化合物であるGa2O3、及び還元剤である一酸化炭素が反応して、気体ガリウム化合物であるGa2O、及び二酸化炭素が生成される。
また、気体ガリウム化合物が還元されて、第2固体ガリウム酸化物である固体酸化ガリウムが生成される反応では、化学式(4)に示すように、気体ガリウム化合物であるGa2Oと酸素が反応して、第2固体ガリウム化合物であるGa2O3が生成される。
第1固体ガリウム化合物が上記の固体酸化ガリウムである場合、第1固体ガリウム化合物から気体ガリウム化合物を経て第2固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)を得る工程では、第1固体ガリウム化合物の混合物を900℃以上に加熱するのが好ましい。また、ガリウム混合物における気体ガリウム化合物の蒸気圧が最大値となるように、捕集部16−1の温度及び酸素分圧を調整するのが好ましい。
このように、上記(1−2)における金属化合物濃縮方法では、第1固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)を含有する混合物を、一酸化炭素を含む還元ガスG2を用いて所定温度且つ所定酸素分圧下で還元させることで、気体金属化合物であるGa2Oを分離し、これを酸化させて第2固体ガリウム化合物(固体酸化ガリウム)を捕集する。
(1−3)第1固体金属化合物が第1固体インジウム化合物(固体酸化インジウム)、第2固体金属化合物が第2固体インジウム化合物(固体酸化インジウム)である場合
この場合にも、上記(1−1)と同様の方法で固体酸化インジウムを濃縮することができる。流動床部15では、以下の化学式(5),(6)によってインジウムの還元反応及び酸化反応が起こり、捕集部16−1で、第1固体インジウム化合物におけるインジウムの第1含金属有率よりも高い第2金属含有率で第2固体インジウム化合物が捕集される。
In2O3(solid)+2CO(gas)→In2O(gas)+2CO2(gas)・・・(5)
In2O(gas)+O2(gas)→In2O3(solid)・・・(6)
第1固体インジウム化合物が還元されて気体ガリウム化合物が生成される反応では、化学式(5)に示すように、第1固体インジウム化合物であるIn2O3、及び還元剤である一酸化炭素が反応して、気体インジウム化合物であるIn2O、及び二酸化炭素が生成される。
また、気体インジウム化合物が還元されて、第2固体インジウム酸化物である固体酸化インジウムが生成される反応では、化学式(6)に示すように、気体インジウム化合物であるIn2Oと酸素が反応して、第2固体インジウム化合物であるIn2O3が生成される。
第1固体インジウム化合物が固体酸化インジウムである場合、第1固体インジウム化合物から気体インジウム化合物を経て第2固体インジウム化合物(固体酸化ガリウム)を得る工程では、第1固体インジウム化合物の混合物を700℃以上に加熱するのが好ましい。また、インジウム混合物における気体インジウム化合物の蒸気圧が最大値となるように、捕集部16−1の温度及び酸素分圧を調整するのが好ましい。
このように、上記(1−3)における金属化合物濃縮方法では、第1固体インジウム化合物(固体酸化インジウム)を含有する混合物を、一酸化炭素を含む還元ガスG2を用いて所定温度且つ所定酸素分圧下で還元させることで、気体金属化合物であるIn2Oを分離し、これを酸化させて第2固体インジウム化合物(固体酸化インジウム)を捕集する。
(1−4)第1固体金属化合物が第1固体ゲルマニウム化合物(固体酸化ゲルマニウム)、第2固体金属化合物が第2固体ゲルマニウム化合物(固体酸化ゲルマニウム)である場合
この場合にも、上記(1−1)と同様の方法で固体酸化ゲルマニウムを濃縮することができる。流動床部15では、以下の化学式(7),(8)によってゲルマニウムの還元反応及び酸化反応が起こり、捕集部16−1で、第1固体ゲルマニウム化合物におけるゲルマニウムの第1含金属有率よりも高い第2金属含有率で第2固体ゲルマニウム化合物が捕集される。
GeO2(solid)+CO(gas)→GeO(gas)+CO2(gas)・・・(7)
GeO(gas)+1/2*O2(gas)→GeO2(solid)・・・(8)
第1固体ゲルマニウム化合物が還元されて気体ゲルマニウム化合物が生成される反応では、化学式(7)に示すように、第1固体ゲルマニウム化合物であるGe2O3、及び還元剤である一酸化炭素が反応して、気体ゲルマニウム化合物であるGe2O、及び二酸化炭素が生成される。
また、気体ゲルマニウム化合物が還元されて、第2固体ゲルマニウム酸化物である固体酸化ゲルマニウムが生成される反応では、化学式(8)に示すように、気体ゲルマニウム化合物であるGe2Oと酸素が反応して、第2固体ゲルマニウム化合物であるGe2O3が生成される。
第1固体ゲルマニウム化合物が固体酸化ゲルマニウムである場合、第1固体ゲルマニウム化合物から気体ゲルマニウム化合物を経て第2固体ゲルマニウム化合物(固体酸化ゲルマニウム)を得る工程では、第1固体ゲルマニウム化合物の混合物を700℃以上に加熱するのが好ましい。また、ゲルマニウム混合物における気体ゲルマニウム化合物の蒸気圧が最大値となるように、捕集部16−1の温度及び酸素分圧を調整するのが好ましい。
このように、上記(1−4)における金属化合物濃縮方法では、第1固体ゲルマニウム化合物(固体酸化ゲルマニウム)を含有する混合物を、一酸化炭素を含む還元ガスG2を用いて所定温度且つ所定酸素分圧下で還元させることで、気体金属化合物であるGe2Oを分離し、これを酸化させて第2固体ゲルマニウム化合物(固体酸化ゲルマニウム)を捕集する。
(1−5)第1固体金属化合物が第1固体テルル化合物(固体酸化テルル)、第2固体金属化合物が第2固体テルル化合物(固体酸化テルル)である場合
この場合にも、上記(1−1)と同様の方法で固体酸化テルルを濃縮することができる。流動床部15では、以下の化学式(9),(10)によってテルルの還元反応及び酸化反応が起こり、捕集部16−1で、第1固体テルル化合物におけるテルルの第1含金属有率よりも高い第2金属含有率で第2固体テルル化合物が捕集される。
2TeO2(solid)+2CO(gas)→Te2O2(gas)+2CO2(gas)・・・(9)
Te2O2(gas)+O2(gas)→Te2O3(solid)・・・(10)
第1固体テルル化合物が還元されて気体テルル化合物が生成される反応では、化学式(9)に示すように、第1固体テルル化合物であるTeO2、及び還元剤である一酸化炭素が反応して、気体テルル化合物であるTe2O2、及び二酸化炭素が生成される。
また、気体テルル化合物が還元されて、第2固体テルル酸化物である固体酸化テルルが生成される反応では、化学式(10)に示すように、気体テルル化合物であるTe2O2と酸素が反応して、第2固体テルル化合物であるTe2O3が生成される。
第1固体テルル化合物が固体酸化テルルである場合、第1固体テルル化合物から気体テルル化合物を経て第2固体テルル化合物(固体酸化テルル)を得る工程では、第1固体テルル化合物の混合物を200℃以上に加熱するのが好ましい。また、混合物における気体テルル化合物の蒸気圧が最大値となるように、捕集部16−1の温度及び酸素分圧を調整するのが好ましい。
このように、上記(1−5)における金属化合物濃縮方法では、第1固体テルル化合物(固体酸化テルル)を含有する混合物を、一酸化炭素を含む還元ガスG2を用いて所定温度且つ所定酸素分圧下で還元させることで、気体金属化合物であるTe2O2を分離し、これを酸化させて第2固体テルル化合物(固体酸化ガリウム)を捕集する。
(1−6)第1固体金属化合物が第1固体セシウム化合物(固体酸化セシウム)、第2固体金属化合物が第2固体セシウム化合物(固体酸化セシウム)である場合
この場合にも、上記(1−1)と同様の方法で固体酸化セシウムを濃縮することができる。流動床部15では、以下の化学式(3),(4)によってセシウムの還元反応及び酸化反応が起こり、捕集部16−1で、第1固体セシウム化合物におけるセシウムの第1含金属有率よりも高い第2金属含有率で第2固体セシウム化合物が捕集される。
Cs2O3(solid)+2CO(gas)→Cs2O(gas)+2CO2(gas)・・・(11)
Cs2O(gas)+O2(gas)→Cs2O3(solid)・・・(12)
第1固体セシウム化合物が還元されて気体セシウム化合物が生成される反応では、化学式(11)に示すように、第1固体セシウム化合物であるCs2O3、及び還元剤である一酸化炭素が反応して、気体セシウム化合物であるCs2O、及び二酸化炭素が生成される。
また、気体セシウム化合物が還元されて、第2固体セシウム酸化物である固体酸化セシウムが生成される反応では、化学式(12)に示すように、気体セシウム化合物であるCs2Oと酸素が反応して、第2固体セシウム化合物であるCs2O3が生成される。
第1固体セシウム化合物が固体酸化セシウムである場合、第1固体セシウム化合物から気体セシウム化合物を経て第2固体セシウム化合物(固体酸化セシウム)を得る工程では、第1固体セシウム化合物の混合物を室温以上に加熱するのが好ましい。また、セシウム混合物における気体セシウム化合物の蒸気圧が最大値となるように、捕集部16−1の温度及び酸素分圧を調整するのが好ましい。
このように、上記(1−6)における金属化合物濃縮方法では、第1固体セシウム化合物(固体酸化セシウム)を含有する混合物を、一酸化炭素を含む還元ガスG2を用いて所定温度且つ所定酸素分圧下で還元させることで、気体金属化合物であるCs2Oを分離し、これを酸化させて第2固体セシウム化合物(固体酸化セシウム)を捕集する。
<反応炉における各種パラメータと収率との関係>
次に、反応炉における各種パラメータと第2固体化合物の収率との関係を、図5〜図10を用いて説明する。図5〜図8では、第1固体化合物が固体窒化ガリウム、第2固体化合物が固体酸化ガリウム(上記(1−1))である場合を例に挙げて説明する。
上記反応炉の保持部に窒化ガリウム(GaN)25mg及び酸化アルミニウム(Al2O3)25mgを投入し、図5に示すように、巻回されたPt線からなる捕集部を反応炉の上方から挿入し、反応炉の上方から当該反応炉の高さ方向中心位置付近に亘ってφ0.3mmのPt線を設置した。そして、予備加熱炉の温度600℃、還元ガス生成手段の温度700℃、反応炉の還元・酸化反応時における炉内温度(本実施形態では、噴出部温度)1125℃〜1200℃、予備加熱炉及び還元ガス生成手段に通じる窒素ガス(50ppm以下の不純物酸素を含む)の流量を0.2L/min〜0.25L/minとし、Pt線に捕集された固体酸化ガリウム(Ga2O3)を採取し、その収率を上記式で算出した。このとき、反応炉の貫通孔上端部を基準として、高さ12.0cm〜15.0cmの範囲内で上記捕集部の位置を変え、各高さhの位置で捕集された固体酸化ガリウムの収率を算出した。なお、本発明における窒素ガスは、本濃縮装置への供給前では還元ガスではなくむしろ酸化ガスであり、濃縮装置への導入後に還元ガス生成手段において還元ガスに変わる。
この結果、図6に示すように、GaN−Al2O3系での固体酸化ガリウムの収率は、捕集部の高さによって異なり、特に、高さhが12.5cm〜13.4cmであるときに収率が19%以上となり、高さhが13.0cmであるときに、固体酸化ガリウムの収率がピーク値である27%となることが分かる。よって、GaN−Al2O3系では、捕集部の高さを最適化することで、固体酸化ガリウムの収率を向上することができると推察される。
また、炉内温度(噴出部温度)を一定としたときの反応管内の高さ方向に沿う温度分布を図7に示す。図7に示すように、噴出部、すなわち貫通孔上端部の温度が1250℃である場合、高さ2〜3cmの領域での管内温度は、噴出部の温度よりも若干高いものの、高さ3cmを超え10cm以下の領域での管内温度は高さに伴って徐々に下がり、高さ10cm以上の領域での管内温度はほぼリニアに下がっている。そして、図6において収率のピーク値である27%である高さ(h=13.0cm)での管内温度は、およそ850℃であることが分かる。よって、反応管内の温度分布と高さhには相関関係があり、捕集部の温度の最適化によって固体酸化ガリウムの収率を向上することができると推察される。
次に、反応炉の炉内温度1150℃で一定とし、窒素ガス流量を0.18L/min〜0.23L/minの範囲内で変化させたこと以外は図6の場合と同様とし、各窒素ガス流量における固体酸化ガリウムの収率を算出した。
この結果、図8に示すように、窒素ガス流量の増加に伴って収率が向上し、特に窒素ガス流量が0.2L/min以上であるときに収率が20%以上となることが分かる。尚、窒素ガス流量が0.23L/min以上であると窒化ガリウムが飛散してしまうことから、0.23L/minが本金属化合物濃縮装置における限界流量である。よって、炉内温度(反応温度)を一定とした場合、窒素ガス流量を限界流量以下の範囲で増加させることで、固体酸化ガリウムの収率を向上することができる。
次いで、反応炉の炉内温度を1125℃〜1200℃の範囲内で変化させ、窒素ガス流量を0.23L/minとしたこと以外は図6の場合と同様とし、各炉内温度における固体酸化ガリウムの収率を算出した。
この結果、図9に示すように、GaN−Al2O3系での固体酸化ガリウムの収率は、反応炉の炉内温度によって異なり、特に、炉内温度が1125℃〜1200℃であるときに収率が20%以上、炉内温度が1140℃〜1184℃であるときに収率が35%以上となり、炉内温度が1150℃であるときに、収率がピーク値である38%となることが分かる。炉内温度が1150℃を超えると収率が下がったのは、捕集部近傍の温度が、固体酸化ガリウムの析出温度よりも高く、固体酸化ガリウム析出に適した温度範囲外であったためと推察される。よって、窒素ガス流量を一定とした場合、還元・酸化反応時における炉内温度を最適化することで固体酸化ガリウムの収率を向上することができると推察される。
そこで、炉内温度(噴出部温度)を一定としたときの捕集部の温度と固体酸化ガリウムの収率との関係を求めた。この結果、図10に示すように、炉内温度を1150℃で一定としたとき、捕集部の温度が850℃付近で固体酸化ガリウムの収率がピーク値である27%を示した。捕集部の温度が850℃未満の範囲で収率が温度上昇に伴って増大しているのは、温度上昇と共に捕集部近傍でより良好な気流が形成されるためと推察される。また、捕集部の温度が850℃を超える範囲で収率が温度上昇に伴って低下しているのは、(1)捕集部近傍で生じる上昇気流が温度上昇と共に増大することから、捕集部近傍の温度が固体酸化ガリウムの析出適正温度まで下がっておらず、また、(2)捕集部近傍で生じる上昇気流が当該捕集部の螺旋構造の下面に衝突することによって乱れ、捕集部に析出した固体酸化ガリウムの剥離、飛散等が生じて、析出量が減少するためと推察される。
したがって、捕集部の温度、炉内温度分布及び収率には相関関係があり、捕集部の温度を最適化することで固体酸化ガリウムの収率を向上することが確認された。本実施形態での捕集部の温度は、好ましくは940℃以下(収率10%以上27%以下)であり、より好ましくは740℃〜925℃(収率15%以上27%以下)、更に好ましくは825℃〜900℃(収率20%以上27%以下)である。
上述したように、本第1実施形態によれば、酸素含有ガス供給手段40が、還元ガスG2を生成するための酸素含有ガスG1を還元ガス生成手段30に供給し、還元ガス生成手段30が、第1固体金属化合物を還元する還元ガスG2を生成して反応炉10に供給する。また、反応炉10が、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムからなる群から選択された金属を第1金属含有率で含有する第1固体金属化合物の混合物中の第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とすると共に、上記気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を上記第1金属含有率より高い第2金属含有率で捕集する。そして、ガス排出手段60が、反応炉10から排出される副成ガスG3を排出する。このように、上記群から選択された金属を乾式法で濃縮して捕集することができるため、廃液が生じず、環境負荷が小さく、煩雑な廃液処理を要しない。また、廃液処理用の構成を有さない簡単な装置構成で上記金属を濃縮することができ、実用化に適した金属化合物濃縮装置1を提供することができる。
更に、混合物中における第1固体金属化合物の含有率が5質量%以下程度である低含有率の混合物を原料として、当該混合物に含有されるガリウムなどのレアメタルを濃縮することができるため、原料の選択肢が格段に広がり、鉱石のみならず、様々な分野で使用されるレアメタル含有廃材などを原料として使用することができる。また、金属化合物濃縮装置1で得られた第2固体金属化合物に含まれるレアメタルをリサイクルすることにより、レアメタルの国内採掘量や輸入量の影響を小さくして、国内需要に対してレアメタルを安定的に供給することが可能となる。
また、反応炉10は、流動床部15の上部に位置し且つ上記第2固体金属化合物S1を捕集する捕集部16−1を有しており、捕集部16−1は、反応管11の内部空間を画定する側壁の一部で構成される。そして、捕集部16−1にて、気体金属化合物が酸化することで得られる第2固体金属化合物S1が、第1金属含有率よりも高い第2金属含有率で捕集される。これにより、従来よりも格段に高い金属含有率で第2固体金属化合物S1を回収することができる。
また、還元ガス生成手段30は、炭素源含有材料Wを供給するための材料供給部31と、炭素源含有材料Wを酸化して還元ガスG2を生成する生成部32とを有するので、還元ガスG2を連続的に反応炉10に供給することができ、実用性の高い金属化合物濃縮装置を提供することができる。また、炭素源含有材料Wとして廃棄樹脂を使用することにより、廃棄樹脂をリサイクルすることができ、廃棄樹脂の増大を抑制して環境負荷を低減できる。特に、使用済み電気・電子機器からレアメタル含有廃材と廃棄樹脂をそれぞれ取り出し、レアメタル含有廃材を混合物Mとして使用すると共に、廃棄樹脂を炭素場含有廃材Wとして使用することにより、使用済み電気・電子機器に含まれるレアメタル及び樹脂の双方をリサイクルすることが可能となる。
また、金属化合物濃縮装置1は、ガス排出手段60に設けられ且つ第2固体金属化合物S2を回収する回収手段80を備えるので、捕集部16−1で捕集されなかった第2固体金属化合物S2が副成ガスG3中に残存する場合、副成ガスG3中に含まれる第2固体金属化合物S2を回収することができ、第2固体金属化合物をより多く捕集することができる。
更に、熱交換器50−1は、酸素含有ガス供給手段40に接続された第1流路50−1a及びガス排出管80aに接続された第2流路50−1bを有し、第1流路50−1a内の酸素含有ガスG1が、第2流路50−1b内の副成ガスG3によって加熱されるので、熱エネルギーを有効利用して省エネルギー化を実現することができる。
図11は、図2の反応炉の第1変形例を示す断面図である。図11の反応炉は図2の反応炉と基本的に同じであるので、重複する説明を省略し、以下に異なる部分を説明する。図11の反応炉は、捕集部16−1に加えて、他の捕集部を有している点で図2の反応炉10と異なる。
同図において、反応炉10Aは、流動床部15の上部に配置され且つ内管11aの上部に載置された蓋部21を備えている。蓋部21は、すり鉢形状を有するセラミック製の部材であり、底部21aと、側壁部21bと、底部21aに設けられた貫通孔21cとを有している。蓋部21は、アルミニウム、マグネシウム、ジルコニアなどの酸化物を主成分とするセラミックからなる。
反応炉10Aは、流動床部15に位置し且つ第2固体金属化合物を捕集する捕集部16−2を有する。本変形例では、捕集部16−2は、蓋部21で構成される天井壁である。具体的には、捕集部16−2は、蓋部21における底部21aの下面21d又は上面21eである。捕集部16−2は、上記気体金属化合物が酸化することで得られる第2固体金属化合物S3,S4を、第1金属含有率よりも高い第2金属含有率で捕集する。流動床部15では、上述のようにレアメタルの気体金属化合物が酸化反応によって第2固体金属化合物に変化し、この酸化反応により、底部21aの下面21dに第2固体金属化合物S3が付着する。また、流動床部15から貫通孔21cを通って底部21aの上面21e近傍に供給された気体金属化合物が第2固体金属化合物S4に変化し、上面21eに第2固体金属化合物S4が付着する。これにより、捕集部16−2で第2固体金属化合物S3,S4が捕集される。
混合物Mに含まれる第1固体ガリウム化合物中のガリウムの質量をm1、捕集部16−1で捕集された第2固体金属化合物S1中のガリウムの質量をm2、捕集部16−2で捕集された第2固体金属化合物S3,S4中のガリウムの合計質量をm3としたとき、収率γ{=(m2+m3)/m1*100}は、1.0%を超え、好ましくは1.5%を超える。したがって、流動床部15において、隔壁となる捕集部16−2を更に設けることにより、捕集部16−1,16−2の双方で第2固体金属化合物をより多く捕集することが可能となる。
図11は、図2の反応炉の第2変形例を示す断面図である。図11の反応炉は図2の反応炉と基本的に同じであるので、重複する説明を省略し、異なる部分を以下に説明する。図11の反応炉は、捕集部16−1に加えて、他の捕集部を有している点で図2の反応炉10と異なる。
同図において、反応炉10Bは、流動床部15に位置し、第2固体金属化合物を捕集する捕集部16−3を有する。本変形例では、捕集部16−3は、反応管11の内部空間内に保持され且つ第2固体金属化合物からなる種結晶材料22である。種結晶材料22は、閉塞部11eに取り付けられた線材23によって流動床部15内に吊り下げた状態で保持されている。
捕集部16−3は、上記気体金属化合物が酸化することで得られる第2固体金属化合物S5を、第1金属含有率よりも高い第2金属含有率で捕集する。流動床部15では、上述のようにレアメタルの気体金属化合物が酸化反応によって第2固体金属化合物に変化し、この酸化反応により、種結晶材料22に第2固体金属化合物S5が付着する。これにより、捕集部16−3で第2固体金属化合物S5が捕集される。
混合物Mに含まれる第1固体ガリウム化合物中のガリウムの質量をm1、捕集部16−1で捕集された第2固体金属化合物S1中のガリウムの質量をm2、捕集部16−3で捕集された第2固体金属化合物S5中のガリウムの質量をm4としたとき、収率δ{=(m2+m4)/m1*100}は、2.1%以上である。したがって、流動床部15において、種結晶からなる捕集部16−3を更に設けることにより、捕集部16−1,16−3の双方で第2固体金属化合物をより多く捕集することが可能となる。
<金属化合物濃縮装置の他の実施形態>
図12は、本発明の第2実施形態に係る金属化合物濃縮装置の構成を概略的に示す図である。
図12の金属化合物濃縮装置1Aは、図1の金属化合物濃縮装置1と基本的に同じであり、予備加熱炉50−2を有していない点で図1の金属化合物濃縮装置と異なる。すなわち、図1の予備加熱炉50−2は、熱交換器50−1から供給された酸素含有ガスG1を所定温度まで加熱するが、酸素含有ガスG1を熱交換器50−1によって所定温度まで加熱することが可能な場合には、予備加熱炉50−2を備えなくてもよい。これにより、更に簡単な装置構成とすることができ、実用化により適した金属化合物濃縮装置を提供することができる。
また、金属化合物濃縮装置1Aは、ガス排出手段60に設けられ、反応炉10内を減圧する減圧手段91を更に備えてもよい。減圧手段91は、例えばガス排出管60aに取り付けられるファンであり、反応炉10よりも下流であって回収手段80の上流に配置される。副成ガスG3が高温である場合、反応炉10の下流であって減圧手段91の上流に副成ガスG3を冷却する冷却手段を設けてもよい。これにより、反応管11の管内圧力が通常時の管内圧力よりも低くなり、流動床部15におけるレアメタルの還元反応を通常時よりも低い温度で行うことができ、省エネルギー化を図ることができる。
図13は、本発明の第3実施形態に係る金属化合物濃縮装置の構成を概略的に示す図である。図13の金属化合物濃縮装置は、図1の金属化合物濃縮装置1と基本的に同じであり、予備加熱炉50−2を有さず、且つ還元ガス生成手段30に代えて他の還元ガス生成手段を備える点で図1の金属化合物濃縮装置と異なる。
図14の金属化合物濃縮装置1Bは、レアメタルを含有する第1固体金属化合物を還元する還元ガスG2’を生成して反応炉10に供給する還元ガス生成手段92を備える。この還元ガス生成手段92は、例えばロータリーキルンであって、回転可能に設けられた炉体92aと、熱交換器50−1に接続され且つ該熱交換器からの酸素含有ガスG1を炉体92aに供給するためのガス供給部92bと、炭素源含有材料Wを炉体92aに供給するための材料供給部92cと、炉体92aに取り付けられたバーナ92dと、炉体92a内で生成された還元ガスG2’をガス導入管30aに供給するためのガス排出部92eと、還元ガス生成時に副成される炭化固体物を排出するための炭化固体物排出部92fとを備える。
還元ガス生成手段92は、予備加熱部50−2から供給された酸素含有ガスG1及び材料供給部92cから供給された炭素源含有材料Wをバーナ92dで加熱し、炭素の酸化反応によって一酸化炭素を含む還元ガスG2’を生成し、ガス導入管30aを介して反応炉10に供給する。このように、還元ガス生成手段92の構成によれば、炭素源含有材料Wの供給、還元ガスG2’の生成、及び炭化固体物の排出を連続的に行うことができ、更に実用性の高い金属化合物濃縮装置を提供することができる。
図15は、本発明の第4実施形態に係る金属化合物濃縮装置の構成を概略的に示す図である。
図15に示すように、金属化合物濃縮装置2は、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムからなる群から選択された金属を第1金属含有率で含有する第1固体金属化合物の混合物中の上記第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とすると共に、上記気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を上記第1金属含有率より高い第2金属含有率で捕集する反応炉100と、上記第1固体金属化合物を還元する還元ガスG2を反応炉100に供給する還元ガス供給手段110とを備える。
反応炉100は、第1固体金属化合物を内部空間で反応させるための反応管101と、反応管101を加熱する加熱部102と、反応管101内の下部に設けられ、第1固体金属化合物を保持する保持部103と、還元ガス生成手段30から供給される還元ガスG2を、反応管101の上部から保持部103に導入する導入管104と、保持部103の上方に設けられ、還元ガスG2を保持部103に供給する圧力によって上記第1固体金属化合物を流動させる流動床部105と、反応管101の上部に設けられ、副成ガスG3を反応管101内から外部に排出するための排出口107と、反応管101内の温度を制御する反応管内温度制御部108とを有する。
反応管101は、下端が閉塞していると共に上端が開放された内管101aと、内管101aの下端を支持する支持台101bと、内管101a及び支持台101bの双方を内部に収容すると外管101cと、外管101cの上部に設けられ、混合物Mを内管101a内に供給するための供給部101dとを有している。導入管104は、反応管101の上部から内管101a内を通って当該内管101aの下端近傍まで延出している。
還元ガス供給手段110は、酸素含有量の少ない還元ガスG2が導入されるステンレス管111と、ステンレス管111内の還元ガスG2”を加熱する加熱部112と、還元ガスG2”の温度を制御する還元ガス温度制御部113と、還元ガスG2”に含有される酸素分圧を制御する酸素分圧制御部114とを有している。
還元ガス温度制御部113は、熱電対などの温度検出部(不図示)によって検出された還元ガスG2”の温度に基づいて、還元ガスG2”の温度が所定温度となるように加熱部112の発熱量を制御する。
酸素分圧制御部114は、酸素分圧検知部で検出された酸素分圧或いは酸素濃度検出部に基づいて算出された酸素分圧に基づいて、還元ガスG2”の酸素分圧を所定値となるように調整し、所定酸素分圧を有する還元ガスG2を生成する。これにより、所定温度及び所定酸素分圧を有する還元ガスG2が、還元ガス供給手段110から反応炉100に供給される。
上記のように構成される金属化合物濃縮装置2では、先ず、反応炉100の供給部101dから、第1固体金属化合物である窒化ガリウムを第1金属含有率で含有する混合物Mを投入し、この混合物Mを保持部103に収容する。
次に、還元ガス供給手段110に希薄酸素ガスである還元ガスG2”、例えば窒素ガスを導入してステンレス管111に還元ガスG2”を供給する。そして還元ガス供給手段110にて、ステンレス管111を加熱し、該ステンレス管に供給された還元ガスG2”を所定温度、例えば400℃〜700℃に加熱すると共に、第1固体金属化合物を還元して得られる気体金属化合物の蒸気圧が大きくなるように、好ましくは当該気体金属化合物の蒸気圧が最大値となるように、上記還元ガスG2”の酸素分圧を調整し、所定温度及び所定酸素分圧を有する還元ガスG2を生成する。その後、所定温度及び所定酸素分圧を有する還元ガスG2を反応炉100に供給する。反応管101内に供給される還元ガスG2の流量は、例えば内径4mmの導入管104と内径17mmの内管101aを用いた場合に、0.1L/min〜1.0L/minである。
次に、反応炉100内を1100〜1300℃で2時間保持した後、還元ガス供給手段110から供給された還元ガスG2を上方から内管101a内に導入し、保持部103内の混合物Mに吹き付ける。そして、反応管101内が所定温度となるように加熱部102を制御し、内管101a内で、混合物M中の第1固体金属化合物と還元ガスG2とを反応させる。希薄酸素ガス中では、含有する不純物によって、2CO(g)+O2→2CO2(g)の平衡反応が起こるため、上記の化学式(1),(2)によるガリウムの酸化反応及び還元反応が起きる。
次いで、反応管101内での還元・酸化反応によって生じた副成ガスG3を、排出口107から回収手段80に排出する。副成ガスG3は、第1固体金属化合物の還元によって生じる気体金属化合物が酸化されることによって得られる第2固体金属化合物を含有しており、この第2固体金属化合物を含有する副成ガスG3が、ガス排出管60aを介して回収手段80に供給される。尚、導入管104の外周面及び内管101aの内周面のいずれか又は双方を捕集部とし、当該捕集部で第2固体金属化合物を捕集してもよい。
その後、回収手段80において、副成ガスG3に含まれる第2固体金属化合物を分離部81で遠心分離して回収し、次いで副成ガスG3を浄化手段90に供給し、副成ガスG3を浄化して浄化ガスG4とし、該浄化ガスG4を外部に排出する。
図16は、図15の金属化合物凝縮装置2の変形例を示す図である。図15の金属化合物濃縮装置2では、反応炉100が反応管内温度制御部108を有し、還元ガス供給手段110が還元ガス温度制御部113及び酸素分圧制御部114を有しているが、これら制御部が統合されて1つのシステムを構成してもよい。すなわち、金属化合物制御装置2Aがシステム制御部120を備え、該システム制御部120が、還元ガスG2”の温度を制御する還元ガス温度制御部121と、還元ガスG2”に含有される酸素分圧を制御する酸素分圧制御部122と、反応管101内の温度を制御する反応管内温度制御部123とを有していてもよい。
上述したように、第4実施形態によれば、酸素含有量の少ない還元ガスG2”を還元ガス供給手段110に導入し、還元ガス供給手段110が、還元ガスG2”の温度を制御すると共に還元ガスG2”に含有される酸素分圧を制御し、所定温度及び所定酸素分圧を有する還元ガスG2を反応炉100に供給する。そして、反応炉100が、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム、テルル、及びセシウムからなる群から選択された金属を第1金属含有率で含有する第1固体金属化合物の混合物中の第1固体金属化合物を還元して気体金属化合物とすると共に、上記気体金属化合物を酸化して第2固体金属化合物として該第2固体金属化合物を上記第1金属含有率より高い第2金属含有率で捕集する。よって、第1実施形態よりも簡単な装置構成で第1実施形態と同様の効果を奏することができると共に、第2固体金属化合物の第2金属含有率を高めることができ、第2固体金属化合物の収率を向上することができる。
図17は、図1の金属化合物濃縮装置1を使用して実現されるレアメタルのリサイクルモデルを説明する図である。
従来、レアメタルであるガリウムが使用された電気・電子機器の製造工程では、先ず鉱石などから採掘されたガリウムP1を使用して、素子製造工場131にてLED素子P2が製造され、その後、機器メーカ132にて、LED素子P2を搭載するLED電球などの電気・電子機器P3が製造される。そして、消費者の建物133などで電気・電子機器P3が照明として使用されている。
これまで、LED素子を搭載する使用済み電気・電子機器のリサイクルモデルは具体的に検討されていなかった。また、LED素子を搭載する民生用の電気・電子機器の製造販売は2011年頃に開始されており、一般的なLED素子の設計寿命は約10年間と長期間であることから、その製造販売の開始から10年経過した後は、設計寿命が過ぎた電気・電子機器が大量に余ることが想定され、LED素子を搭載する電気・電子機器のリサイクルモデルの早期実現が求められている。
そこで、本発明者が提案するリサイクルモデルでは、上記実施形態に係る金属化合物濃縮装置1を回収工場134に導入し、回収工場134にて、消費者の建物133で使用された使用済み電気・電子機器P4を回収し、使用済み電気・電子機器P4を分解して使用済みLED素子を得る。そして金属化合物濃縮装置1を用いて、使用済みLED素子を混合物Mとして金属化合物濃縮装置1に供給すると共に、混合物Mに含有される窒化ガリウムを乾式法で濃縮し、固体酸化ガリウムP5を回収する。また、使用済み電気・電子機器P4を分解して得られた廃棄樹脂を炭素源含有材料Wとして還元ガス生成手段30に供給し、還元ガスG2を生成する。
これにより、使用済み電気・電子機器P4の大量処理が可能となると共に、濃縮された固体酸化ガリウムP5を回収することができる。よって、固体酸化ガリウムP5或いはこれから回収されたガリウムを回収工場134から素子製造工場131に供給することにより、素子製造工場131にて使用済み電気・電子機器P4に含まれるガリウムを効率的にリサイクルすることができ、使用済み電気・電子機器P4のリサイクルモデルを早期に実現することが可能となる。
以上、上記実施形態に係る金属化合物濃縮装置について述べたが、本発明は記述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
例えば、前記反応炉は、熱処理システムとして周知である各種の高温炉をベースにして本発明の機能を有する反応炉とすることができる。廃棄物の熱処理システムとしては、ストーカ炉、流動床炉、ロータリーキルン、液中燃焼炉、溶融炉、ガス化燃焼炉、ガス化改質炉、油化施設、乾留炉(炭化炉)等が挙げられる(出典:中央環境審議会廃棄物・リサイクル協会、廃棄物処理基準等専門委員会(第6回)議事次第・資料より抜粋)。対象廃棄物としては、汚泥、廃プラスチック類、紙くず、木くず、繊維くず、動植物系残渣、廃油、廃溶剤、焼却残渣、無機物等が挙げられ、上記熱処理システムは、これら廃棄物の処理のために最適化されている。よって上記のような熱処理システムを本発明の上記必須の機能を有するように最適化することにより、本発明の反応炉を構成することができる。本発明を産業として実施する際には、不要な構成を省いて簡略化し、また、用途或いは仕様に応じて装置スケールや処理能力を増減することができる。
また、本発明の金属化合物濃縮装置は、比較的小規模で実施する場合に適しており、特に研究用装置或いは検証用の小型ユニットとして有用である。また、このような小型ユニットは、教育機関、研究機関等で使用される言わば「卓上リサイクル工場」として用いることができる。
以下、本発明の実施例を説明する。なお本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図15に示すような金属化合物濃縮装置を用い、GaN2gと不純物としてのCu2gとの混合物4gを反応炉内に投入した。次いで、50ppm以下の不純物O2を含むN2ガス(O2ガスの分圧5Pa以下)を流量0.2L/minで還元ガス供給手段に供給し、上記N2ガスを700℃に加熱すると共に、N2ガス中のO2ガスの分圧を5Pa以下に制御し、還元ガス供給手段にて還元ガスを生成して、該還元ガスを反応炉に供給した。そして、反応炉の炉内温度1150℃、加熱時間5hとし、反応管内で上記混合物と還元ガスとを反応させ、その後、導入管の外周面に付着した析出物を採取し、収率を求めた。
(実施例2)
混合ガス中のO2ガスの分圧を空気相当の4×10−12Paに変えたこと以外は、実施例1と同様にして固体Ga2O3を採取し、収率を求めた。
(比較例1)
混合ガス中のO2ガスの分圧を空気相当の2×104Paに変えたこと以外は、実施例1と同様にして固体Ga2O3を採取し、収率を求めた。
上記実施例1〜2及び比較例1の算出結果を、表1に示す。
実施例1では、導入管の外周面に付着した析出物をSEM−EDX(日立ハイテクノロジー社製、装置名「SU8020」)で分析したところ、当該析出物が粉末或いは針状の固体Ga2O3であることが分かった。また、N2ガス中のO2ガスの分圧が5Pa以下であると、固体Ga2O3の収率が28%となり、良好な収率が得られることが分かった。実施例2では、混合ガス中のO2ガスの分圧が実施例1よりも低い4×10−12Paであると、固体Ga2O3の収率が31%となり、実施例1と比較して更に良好な収率が得られることが分かった。
一方、比較例1では、混合ガス中のO2ガスの分圧が2.0×104Paであると、導入管の外周面に固体Ga2O3が析出せず、内管101aの内周面に極微量の固体Ga2O3の析出が確認された程度であり、収率の算出が不可であった。