〈実施形態1〉
図2は、本実施形態に係る直流送電設備の概略図である。
直流送電設備1は、二回線の直流送電線10と、第1交直変換器20と、第2交直変換器30と、交流電源21と、交流系統31と、断路器40と、交流遮断器60と、変圧器61とを備えている。
直流送電線10は、正極線と負極線の一対からなる電線である。図では、一本の実線で、正極線と負極線の一対からなる直流送電線10の一回線を表している。本実施形態では二回線の直流送電線10を用いているが、二回線以上であれば本数は問わない。二回線のうちの一方を直流送電線10A、他方を直流送電線10Bとも称し、これらを区別しない時は直流送電線10と総称する。
第1交直変換器20は交流電源21側の交直変換器であり、第2交直変換器30は交流系統31側の交直変換器である。第1交直変換器20及び第2交直変換器30は、何れも、交流電力と直流電力とを相互に変換可能な装置である。
第1交直変換器20には、本実施形態では、一つの交流電源21が接続されているが、複数の交流電源21が一つの第1交直変換器20に接続されていてもよい。第1交直変換器20は、交流遮断器80及び変圧器81を介して交流電源21に接続している。
直流送電線10の交流電源21側には、二回線の直流送電線10のそれぞれに断路器40が設けられている。二個のうちの一方を断路器40A、他方を断路器40Bとも称し、これらを区別しない時は断路器40と総称する。
断路器40は、無負荷状態で開路を行う開閉装置であり、第1交直変換器20と、複数の直流送電線10のそれぞれとをオン又はオフにすることが可能となっている。すなわち、断路器40Aの開閉により、第1交直変換器20は直流送電線10Aに対してオン又はオフとなり、断路器40Bの開閉により、第1交直変換器20は直流送電線10Bに対してオン又はオフとなる。断路器40の開閉動作についての詳細は後述する。
第2交直変換器30は、直流送電線10のそれぞれに接続されている。ここでは直流送電線10が二回線あるので、2個の第2交直変換器30がそれぞれの直流送電線10に接続されている。2個の第2交直変換器30のうちの一方を第2交直変換器30A、他方を第2交直変換器30Bとも称し、これらを区別しない時は第2交直変換器30と総称する。
第2交直変換器30は、交流遮断器60及び変圧器61を介して共通の直流母線51に接続されている。直流母線51に接続された2個の交流遮断器のうちの一方を交流遮断器60A、他方を交流遮断器60Bとも称し、これらを区別しない時は交流遮断器60と総称する。
交流遮断器80及び交流遮断器60は、何れも事故電流を遮断する能力を持つ開閉装置である。交流遮断器80は、第1交直変換器20と交流電源21との間の交流送電線における事故電流を遮断する。交流遮断器60は、第2交直変換器30と直流母線51との間の交流送電線における事故電流を遮断する。交流遮断器60の開閉動作についての詳細は後述する。
上述した断路器40、交流遮断器80、及び交流遮断器60は、図示しない制御装置により開閉動作が制御される。制御装置は、直流送電線10に事故が発生したことを検知可能である。制御装置は、事故が発生した時に、それらの断路器40等の開閉動作を制御することで、事故が発生した直流送電線10を切り離す。このような断路器40等の開閉動作の制御について詳細に説明する。
図3は、本実施形態に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図3(a)は、事故が発生する前、すなわち通常時の状態を示している。通常時では、制御装置は、断路器40の一つである断路器40Aをオン(図では「閉」)、その他の断路器40Bをオフ(図では「開」)とする。また、交流遮断器80及び交流遮断器60は何れもオンとする。
このような通常時では、交流電源21で発電された交流電力は、第1交直変換器20によって直流電力に変換され、直流送電線10Aを経由して第2交直変換器30Aに送電される。そして、第2交直変換器30Aでは直流電力は交流電力に変換され、交流系統31に送電される。
図3(b)は、事故が発生したときの状態を示している。ここでは、直流送電線10Aに事故が生じたとする。制御装置は、事故発生時では、事故が生じた直流送電線10Aに接続された交流遮断器60Aをオフとし、また、交流電源21側の交流遮断器80をオフとする。これにより、事故が発生した直流送電線10Aは切り離され、事故電流は遮断される。
図3(c)は、事故発生後から送電再開までの状態を示している。制御装置は、事故発生後に事故電流を遮断した後、事故が生じた直流送電線10Aに接続された断路器40Aをオフとし、事故が生じていない直流送電線10Bに接続された断路器40Bをオンにし、交流電源21側の交流遮断器60をオンにする。これにより、交流電源21から直流送電線10Bや第2交直変換器30Bを介して交流系統31へ送電が再開される。
本実施形態に係る直流送電設備1によれば、交流遮断器60Aがオフになってから(図3(b)参照)、断路器40Bがオンとなって健全な直流送電線10Bに切り替わるまでの間(図3(c)参照)、送電は一時的に停止する。しかしながら、停止時間は、数分程度の短時間に抑えることができるので、事故による停電の影響は軽減され、従来と同等の信頼性が実現される。
本実施形態に係る直流送電設備1は、一個の第1交直変換器20が断路器40を介して選択的に複数回線(本実施形態では二回線)の直流送電線10の何れか一回線に接続される構成である。つまり、一個の交流電源21は、一個の第1交直変換器20と複数の断路器40を用いて直流送電線10に接続すればよい構成となっている。
図1(b)に示した従来例では、一個の交流電源102は、二回線の直流送電線101に対してその回線数と同数である2個の交直変換器106を必要とする。しかしながら、本実施形態に係る直流送電設備1は、冗長化のために2回線以上の直流送電線10を備えていても、一個の交流電源21につき一個の第1交直変換器20で済む。したがって、第1交直変換器20の増設数を抑えることができ、高価な交直変換器を低減して低コスト化を図ることができる。
さらに、本実施形態に係る直流送電設備1は、事故が生じた直流送電線10を遮断する構成として交流遮断器60を用い、交流遮断器60をオフにすることで、第2交直変換器30とともに、事故が生じた直流送電線10を遮断する。すなわち、事故が生じた直流送電線10を遮断する構成として直流遮断器を用いていない。
図1(c)に示した従来例では、一回線の直流送電線10に対して二つの直流遮断器が必要となってしまう。しかしながら、本実施形態に係る直流送電設備1は、冗長化のために2回線以上の直流送電線10を備えていても、直流遮断器を設置する必要がない。したがって、高価な直流遮断器を用いることによるコスト増を回避することができる。
〈実施形態2〉
実施形態1では、直流送電線10に一つの交流電源21と第1交直変換器20とが接続されていたが、このような態様に限定されない。複数の交流電源21と第1交直変換器20とが直流送電線10に接続されていてもよい。
図4は、本実施形態に係る直流送電設備の概略図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態に係る直流送電設備1Aは、二回線の直流送電線10に、複数の交流電源21が第1交直変換器20を介して接続されている構成が実施形態1と異なる。
本実施形態では、第1交直変換器20は3つあり、それらを第1交直変換器20−1、第1交直変換器20−2、第1交直変換器20−3と称し、それらを区別しない場合は、第1交直変換器20と総称する。また、交流電源21は3つあり、それらを交流電源21−1、交流電源21−2、交流電源21−3と称し、それらを区別しない場合は、交流電源21と総称する。
また、複数の第1交直変換器20のそれぞれに対応して、複数の断路器40が設けられている。具体的には、第1交直変換器20−1と直流送電線10Aとをオン又はオフにする断路器40A−1、第1交直変換器20−1と直流送電線10Bとをオン又はオフにする断路器40B−1が設けられている。第1交直変換器20−2についても同様に、断路器40A−2及び断路器40B−2が設けられ、第1交直変換器20−3についても同様に、断路器40A−3及び断路器40B−3が設けられている。
第2交直変換器30及び交流遮断器60については、実施形態1と同様であるので詳細な説明は省略する。
図5及び図6は、本実施形態に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図5は、通常時の状態を示している。通常時においては、3つの交流電源21は、二回線の直流送電線10に分散して電力を送電するように、断路器40の開閉制御がされている。具体的には、制御装置は、断路器40A−1、断路器40B−2及び断路器40A−3をオンとし、その他の断路器をオフとしている。
このような通常時においては、交流電源21−1及び交流電源21−3は、直流送電線10Aを介して第2交直変換器30Aに送電し、交流電源21−2は、直流送電線10Bを介して第2交直変換器30Bに送電している。
図6(a)は、事故が発生したときの状態を示している。ここでは、直流送電線10Aに事故が生じたとする。制御装置は、事故発生時では、事故が生じた直流送電線10Aに接続された交流遮断器60Aをオフとし、また、直流送電線10Aに接続していた交流電源21−1及び交流電源21−3の交流遮断器80をオフとする。これにより、事故が発生した直流送電線10Aは切り離され、事故電流は遮断される。
図6(b)は、事故発生後から送電再開までの状態を示している。制御装置は、事故発生後に事故電流を遮断した後、事故が生じた直流送電線10Aに接続された断路器40A−1及び断路器40A−3をオフとし、事故が生じていない直流送電線10Bに接続された断路器40B−1及び断路器40B−3をオンにする。さらに、交流電源21−1及び交流電源21−3の交流遮断器80をオンにする。これにより、交流電源21−1及び交流電源21−3から直流送電線10B、第2交直変換器30Bを介して交流系統31へ送電が再開される。
本実施形態に係る直流送電設備1Aによれば、交流遮断器60Aがオフになってから(図6(a)参照)、断路器40B−1及び断路器40B−3がオンとなって健全な直流送電線10Bに切り替わるまでの間(図6(b)参照)においても、交流電源21−2から直流送電線10Bへの送電は続いている。このため、交流系統31にとっては、送電される電力の一時的な変動はあるものの、送電は停止しない。このように事故による停電の影響を回避するとともに、従来と同等の信頼性が実現される。
本実施形態に係る直流送電設備1Aは、実施形態1と同様に、一個の交流電源21は、一個の第1交直変換器20と複数の断路器40を用いて直流送電線10に接続する構成となっている。したがって、複数の交流電源21を直流送電線10に接続する場合、一個の交流電源21につき一個の第1交直変換器20で済む。
図1(b)に示した従来例では、一個の交流電源102は、二回線の直流送電線101に対してその回線数と同数である2個の交直変換器106を必要とする。3個の交流電源102を接続する場合では、6個の交直変換器を必要とする。しかしながら、本実施形態に係る直流送電設備1は、冗長化のために2回線以上の直流送電線10を備えていても、1個の交流電源21につき1個の第1交直変換器20で済む。したがって、第1交直変換器20の増設数を抑えることができ、高価な交直変換器を低減して低コスト化を図ることができる。
さらに、本実施形態に係る直流送電設備1は、事故が生じた直流送電線10を遮断する構成として交流遮断器60を用い、交流遮断器60をオフにすることで、第2交直変換器30とともに、事故が生じた直流送電線10を遮断する。すなわち、事故が生じた直流送電線10を遮断する構成として直流遮断器を用いていない。
図1(d)に示した従来例では、直流送電区間における一回線の直流送電線101につき二つの直流遮断器107が必要となってしまう。しかしながら、本実施形態に係る直流送電設備1Aは、冗長化のために2回線以上の直流送電線10を備えていても、直流遮断器を設置する必要がない。したがって、高価な直流遮断器を用いることによるコスト増を回避することができる。
〈実施形態3〉
実施形態1及び実施形態2では、二回線の直流送電線10を備えていたが、3回線以上であってもよい。
図7は、本実施形態に係る直流送電設備の概略図である。なお、実施形態1と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。本実施形態に係る直流送電設備1Bは、三回線の直流送電線10に、複数の交流電源21が第1交直変換器20を介して接続されている構成が実施形態1と異なる。
本実施形態では、直流送電線10は三回線あり、それらを直流送電線10A、直流送電線10B、直流送電線10Cと称し、それらを区別しない場合は、直流送電線10と総称する。
本実施形態では、第1交直変換器20は4個あり、それらを第1交直変換器20−1、第1交直変換器20−2、第1交直変換器20−3、第1交直変換器20−4と称し、それらを区別しない場合は、第1交直変換器20と総称する。また、交流電源21は4個あり、それらを交流電源21−1、交流電源21−2、交流電源21−3、交流電源21−4と称し、それらを区別しない場合は、交流電源21と総称する。
複数の第1交直変換器20のそれぞれに対応して、複数の断路器40が設けられている。具体的には、第1交直変換器20−1と直流送電線10Bとをオン又はオフにする断路器40B−1、第1交直変換器20−1と直流送電線10Cとをオン又はオフにする断路器40C−1が設けられている。第1交直変換器20−2についても同様に、断路器40B−2及び断路器40C−2が設けられている。
第1交直変換器20−3と直流送電線10Aとをオン又はオフにする断路器40A−3、第1交直変換器20−3と直流送電線10Bとをオン又はオフにする断路器40B−3が設けられている。第1交直変換器20−4についても同様に、断路器40A−4及び断路器40B−4が設けられている。
第2交直変換器30は、直流送電線10のそれぞれに接続されている。ここでは、三回線の直流送電線10A、10B、10Cのそれぞれに、第2交直変換器30A、30B、30Cがそれぞれ接続されており、これらを区別しない時は第2交直変換器30と総称する。第2交直変換器30は、交流遮断器60及び変圧器61を介して共通の直流母線51に接続されている。各交流遮断器を交流遮断器60A、60B、60Cとも称し、これらを区別しない時は交流遮断器60と総称する。
図8及び図9は、本実施形態に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図8は、通常時の状態を示している。通常時においては、4個の交流電源21は、三回線の直流送電線10に分散して電力を送電するように、断路器40の開閉制御がされている。具体的には、制御装置は、断路器40B−1、断路器40C−2、断路器40A−3、及び断路器40B−4をオンとし、その他の断路器をオフとしている。
このような通常時においては、交流電源21−1及び交流電源21−4は、直流送電線10Bを介して第2交直変換器30Bに送電し、交流電源21−2は、直流送電線10Cを介して第2交直変換器30Cに送電し、交流電源21−3は、直流送電線10Aを介して第2交直変換器30Aに送電している。
図9(a)は、事故が発生したときの状態を示している。ここでは、直流送電線10Bに事故が生じたとする。制御装置は、事故発生時では、事故が生じた直流送電線10Bに接続された交流遮断器60Bをオフとし、また、直流送電線10Bに接続していた交流電源21−1及び交流電源21−4の交流遮断器80をオフとする。これにより、事故が発生した直流送電線10Bは切り離され、事故電流は遮断される。
図9(b)は、事故発生後から送電再開までの状態を示している。制御装置は、事故発生後に事故電流を遮断した後、事故が生じた直流送電線10Bに接続された断路器40B−1及び断路器40B−4をオフとする。また、制御装置は、事故が生じていない直流送電線10Aに接続された断路器40A−4、事故が生じていない直流送電線10Cに接続された断路器40C−1をオンにする。さらに、交流電源21−1及び交流電源21−4の交流遮断器60をオンにする。これにより、交流電源21−1から直流送電線10Cを介して交流系統31へ送電が再開され、交流電源21−4から直流送電線10Aを介して交流系統31へ送電が再開される。
本実施形態に係る直流送電設備1Bによれば、交流遮断器60Bがオフになってから(図9(a)参照)、断路器40C−1及び断路器40A−4がオンとなって健全な直流送電線10A及び直流送電線10Cに切り替わるまでの間(図9(b)参照)においても、交流電源21−2及び交流電源21−3から直流送電線10A及び直流送電線10Cへの送電は続いている。このため、交流系統31にとっては、送電される電力の一時的な変動はあるものの、送電は停止しない。このように事故による停電の影響を回避するとともに、従来と同等の信頼性が実現される。
本実施形態に係る直流送電設備1Bは、実施形態1と同様に、一個の交流電源21は、一個の第1交直変換器20と複数の断路器40を用いて直流送電線10に接続する構成となっている。したがって、複数の交流電源21を直流送電線10に接続する場合、一個の交流電源21につき一個の第1交直変換器20で済む。したがって、第1交直変換器20の増設数を抑えることができ、高価な交直変換器を低減して低コスト化を図ることができる。
また、本実施形態に係る直流送電設備1Bは、事故が生じた直流送電線10を遮断する構成として交流遮断器60を用い、交流遮断器60をオフにすることで、第2交直変換器30とともに、事故が生じた直流送電線10を遮断する。すなわち、事故が生じた直流送電線10を遮断する構成として直流遮断器を用いていない。したがって、高価な直流遮断器を用いることによるコスト増を回避することができる。
さらに、本実施形態に係る直流送電設備1Bによれば、三回線のうち一回線の直流送電線10Bに事故が発生した際に、切り替える先を直流送電線10A及び直流送電線10Cに分散させた。すなわち、交流電源21−1及び交流電源21−4からの変換された直流電力が、事故のない直流送電線10A及び直流送電線10Cの何れかの一回線に集中しないように、断路器40は制御される。これにより、停電から送電を再開した後に、電流容量を超える直流電力が直流送電線10に送電されることを抑制することができる。
〈実施形態4〉
実施形態2では、直流送電線10に交流電源21と第1交直変換器20とが接続されていたが、それらの間に直流母線が設けられていてもよい。
図10は、本実施形態に係る直流送電設備の概略図である。なお、実施形態2と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態の直流送電設備1Cでは、直流送電線10は二回線あり、それぞれは直流母線で2区間に分けられている。それらを直流送電線10A−1、直流送電線10A−2、直流送電線10B−1、直流送電線10B−2と称し、それらを区別しない場合は、直流送電線10と総称する。
直流送電線10A−1は、直流遮断器70A−1を介して直流母線52に接続され、直流送電線10B−1は、直流遮断器70B−1を介して直流母線52に接続されている。
直流送電線10A−2は、一端側が直流遮断器70A−2を介して直流母線52に接続し、反対の一端側が第2交直変換器30Aに接続している。
直流送電線10B−2は、一端側が直流遮断器70B−2を介して直流母線52に接続し、反対の一端側が第2交直変換器30Bに接続している。
直流遮断器は、直流送電線10の事故時に、事故電流を遮断する能力を持つ開閉装置である。上述した直流遮断器70A−1、直流遮断器70A−2、直流遮断器70B−1、直流遮断器70B−2を直流遮断器70とも総称する。
本実施形態では、第1交直変換器20は3つあり、それらを第1交直変換器20−1、第1交直変換器20−2、第1交直変換器20−3と称し、それらを区別しない場合は、第1交直変換器20と総称する。また、交流電源21は3つあり、それらを交流電源21−1、交流電源21−2、交流電源21−3と称し、それらを区別しない場合は、交流電源21と総称する。
また、複数の第1交直変換器20のそれぞれに対応して、複数の断路器40が設けられている。具体的には、第1交直変換器20−1と直流送電線10A−1とをオン又はオフにする断路器40A−1、第1交直変換器20−1と直流送電線10B−1とをオン又はオフにする断路器40B−1が設けられている。第1交直変換器20−2についても同様に、断路器40A−2及び断路器40B−2が設けられている。第1交直変換器20−3と直流送電線10A−2とをオン又はオフにする断路器40A−3、第1交直変換器20−3と直流送電線10B−2とをオン又はオフにする断路器40B−3が設けられている。
図11及び図12は、本実施形態に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図11は、通常時の状態を示している。通常時においては、3つの交流電源21は、二回線の直流送電線10に分散して電力を送電するように、断路器40の開閉制御がされている。具体的には、制御装置は、断路器40A−1及び断路器40A−3をオンとし、断路器40B−2をオンとし、その他の断路器をオフとしている。
このような通常時においては、交流電源21−1及び交流電源21−3は、直流送電線10Aを介して第2交直変換器30に送電し、交流電源21−2は、直流送電線10Bを介して第2交直変換器30に送電している。
図12(a)は、事故が発生したときの状態を示している。ここでは、直流送電線10A−2に事故が生じたとする。制御装置は、事故発生時では、事故が生じた直流送電線10A−2に接続された直流遮断器70A−2及び交流遮断器60Aをオフとし、また、直流送電線10A−2に接続していた交流電源21−3の交流遮断器80をオフとする。これにより、事故が発生した直流送電線10Aは切り離され、事故電流は遮断される。このとき、直流遮断器70A−2が遮断されているので、それ以外の直流送電線10A−1、10A−2、10B−2には事故電流が及ばない。
図12(b)は、事故発生後から送電再開までの状態を示している。制御装置は、事故発生後に事故電流を遮断した後、事故が生じた直流送電線10A−2に接続された断路器40A−3をオフとし、事故が生じていない直流送電線10B−2に接続された断路器40B−3をオンにする。さらに、交流電源21−3の交流遮断器80をオンにする。これにより、交流電源21−3から直流送電線10B−2を介して交流系統31へ送電が再開される。
本実施形態に係る直流送電設備1Cによれば、直流送電線10A−2は、直流遮断器70A−2を介して直流母線52に接続され、交流遮断器80Aを介して直流母線51に接続されているので、直流送電線10A−2に事故が生じたときの影響範囲を直流母線51及び直流母線52を越えて波及させない。これにより、事故を除去するまでの間に停止させる交流電源の台数を低減することができる。このように事故による停電の影響を低減し、従来と同等の信頼性が実現される。
本実施形態に係る直流送電設備1Cは、実施形態1と同様に、一個の交流電源21は、一個の第1交直変換器20と複数の断路器40を用いて直流送電線10に接続する構成となっている。したがって、複数の交流電源21を直流送電線10に接続する場合、一個の交流電源21につき一個の第1交直変換器20で済む。したがって、第1交直変換器20の増設数を抑えることができ、高価な交直変換器を低減して低コスト化を図ることができる。
また、本実施形態に係る直流送電設備1Cによれば、直流送電線10A−1、10A−2、10B−1、10B−2のそれぞれは、一個の直流遮断器70を介して直流母線51又は直流母線52に接続されている。
図1(d)に示した従来例では、各区間の直流送電線は2個の直流遮断器107を介して直流母線108に接続されている。すなわち、直流送電線10には、一つの区間に2つの直流遮断器が必要となってしまう。
一方、本実施形態に係る直流送電設備1Cは、冗長化のために2回線以上の直流送電線10を備えていても、直流遮断器70の増設数を抑えることができ、高価な直流遮断器を低減して低コスト化を図ることができる。
〈実施形態5〉
実施形態3では、三回線の直流送電線10を備えていたが、これに直流母線をさらに設けてもよい。
図13は、本実施形態に係る直流送電設備の概略図である。なお、実施形態3と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
直流送電線10Aは、直流遮断器70A−1を介して直流母線52に接続し、第2交直変換器30A及び交流遮断器60Aを介して直流母線51に接続している。
直流送電線10B−1は、直流遮断器70B−1を介して直流母線52に接続している。直流送電線10B−2は、直流遮断器70B−2を介して直流母線52に接続し、第2交直変換器30B及び交流遮断器60Bを介して直流母線51に接続している。
直流送電線10Cは、第2交直変換器30Cを介して直流母線51に接続している。
図14及び図15は、本実施形態に係る直流送電設備の動作を示す概略図である。
図14は、通常時の状態を示している。通常時においては、4つの交流電源21は、三回線の直流送電線10に分散して電力を送電するように、断路器40の開閉制御がされている。具体的には、制御装置は、断路器40B−1、断路器40C−2、断路器40A−3、及び断路器40B−4をオンとし、その他の断路器をオフとしている。
このような通常時においては、交流電源21−1は直流送電線10B−1を介して第2交直変換器30Bに送電し、交流電源21−4は直流送電線10B−2を介して第2交直変換器30Bに送電している。交流電源21−2は、直流送電線10C−1を介して第2交直変換器30Cに送電し、交流電源21−3は、直流送電線10Aを介して第2交直変換器30Aに送電している。
図15(a)は、事故が発生したときの状態を示している。ここでは、直流送電線10B−2に事故が生じたとする。制御装置は、事故発生時では、事故が生じた直流送電線10B−2に接続された直流遮断器70B−2及び交流遮断器60Bをオフとし、また、直流送電線10B−2に接続していた交流電源21−4の交流遮断器60をオフとする。これにより、事故が発生した直流送電線10B−2は切り離され、事故電流は遮断される。直流遮断器70B−2及び交流遮断器60Bが遮断されているので、直流送電線10B−2以外の直流送電線10には事故電流が及ばない。
図15(b)は、事故発生後から送電再開までの状態を示している。制御装置は、事故発生後に事故電流を遮断した後、事故が生じた直流送電線10B−2に接続された断路器40B−4をオフとする。また、制御装置は、事故が生じていない直流送電線10Aに接続された断路器40A−4オンにする。さらに、交流電源21−4の交流遮断器80をオンにする。これにより、交流電源21−4から直流送電線10Aを介して交流系統31へ送電が再開される。
本実施形態に係る直流送電設備1Dによれば、直流送電線10B−2は、直流遮断器70B−2及び交流遮断器60Bを介して直流母線51及び直流母線52に接続されているので、直流送電線10B−2に事故が生じたときの影響範囲を直流母線51及び直流母線52を越えて波及させない。これにより、事故を除去するまでの間に停止させる交流電源の台数を低減することができる。このように事故による停電の影響を低減し、従来と同等の信頼性が実現される。
本実施形態に係る直流送電設備1Dによれば、直流遮断器70B−2及び交流遮断器60Bがオフになってから(図15(a)参照)、断路器40A−4がオンとなって健全な直流送電線10Aに切り替わるまでの間(図15(b)参照)においても、交流電源21−1、交流電源21−2及び交流電源21−3から直流送電線10A、直流送電線10B−1、直流送電線10C−1及び直流送電線10C−2への送電は続いている。このため、交流系統31にとっては、送電される電力の一時的な変動はあるものの、送電は停止しない。このように事故による停電の影響を回避するとともに、従来と同等の信頼性が実現される。
本実施形態に係る直流送電設備1Dは、実施形態1と同様に、一個の交流電源21は、一個の第1交直変換器20と複数の断路器40を用いて直流送電線10に接続する構成となっている。したがって、複数の交流電源21を直流送電線10に接続する場合、一個の交流電源21につき一個の第1交直変換器20で済む。したがって、第1交直変換器20の増設数を抑えることができ、高価な交直変換器を低減して低コスト化を図ることができる。
本実施形態に係る直流送電設備1Dによれば、実施形態4と同様に、直流送電線10A、10B−1、10B−2のそれぞれは、一個の直流遮断器70を介して直流母線52に接続されている。したがって、本実施形態に係る直流送電設備1Dは、冗長化のために2回線以上の直流送電線10を備えていても、直流遮断器70の増設数を抑えることができ、高価な直流遮断器を低減して低コスト化を図ることができる。
〈実施形態6〉
実施形態5では、直流送電線10の間に一本の直流母線52を設けたが、複数本の直流母線を設けてもよい。
図16は、本実施形態に係る直流送電設備の概略図である。なお、実施形態5と同一のものには同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
本実施形態の直流送電設備1Eでは、交流系統31側の直流母線51の他に、2本の直流母線52、53を備えている。直流送電設備1Eは、直流送電線10A、直流送電線10B、直流送電線10C、直流送電線10Dを備え、これらを区別しないで直流送電線10とも称する。
直流送電線10Aは、直流遮断器70A−1を介して直流母線52に接続し、第2交直変換器30Aを介して直流母線51に接続している。
直流送電線10B−1は、直流遮断器70B−1、70B−2を介して直流母線53、直流母線52に接続している。直流送電線10B−2は、直流遮断器70B−3を介して直流母線52に接続し、第2交直変換器30Bを介して直流母線51に接続している。
直流送電線10C−1は、直流遮断器70C−1を介して直流母線53に接続している。直流送電線10C−2は、直流遮断器70C−2を介して直流母線53に接続し、第2交直変換器30Cを介して直流母線51に接続している。
直流送電線10Dは、第3交直変換器30Dを介して直流母線51に接続している。
本実施形態では、複数の第1交直変換器20があり、第1交直変換器20−1、第1交直変換器20−2、第1交直変換器20−3、第1交直変換器20−4と称し、それらを区別しない場合は、第1交直変換器20と総称する。他にも第1交直変換器20が図16に記載するように設けられている。また、複数の交流電源21があり、交流電源21−1、交流電源21−2、交流電源21−3、交流電源21−4と称し、それらを区別しない場合は、交流電源21と総称する。他にも交流電源21が図16に記載するように設けられている。
また、複数の第1交直変換器20のそれぞれに対応して、複数の断路器40が設けられている。具体的には、第1交直変換器20−1と直流送電線10Aとをオン又はオフにする断路器40A−1、第1交直変換器20−1と直流送電線10Bとをオン又はオフにする断路器40B−1が設けられている。
第1交直変換器20−2についても同様に、断路器40A−2及び断路器40B−2が設けられている。
第1交直変換器20−3についても同様に、断路器40A−3及び断路器40B−3が設けられている。
第1交直変換器20−4についても同様に、断路器40A−3及び断路器40B−4が設けられている。
また、他にも断路器40が図16に記載するように設けられている。
図16は、通常時の状態を示している。通常時においては、複数の交流電源21は、複数回線の直流送電線10に分散して電力を送電するように、断路器40の開閉制御がされている。例えば、制御装置は、断路器40B−1、断路器40A−2、断路器40B−3、及び断路器40A−4をオンとし、断路器40A−1、断路器40B−2、断路器40A−3、及び断路器40B−4をオフとしている。その他の断路器40についても図16に示すようにオン又はオフとする。
このような通常時においては、交流電源21−1及び交流電源21−3は直流送電線10Bを介して第2交直変換器30Bに送電し、交流電源21−2及び交流電源21−4は直流送電線10Aを介して第2交直変換器30Aに送電している。その他の交流電源21についても同様に直流送電線10を介して第2交直変換器30に送電している。
図17は、事故が発生したときの状態を示している。ここでは、直流送電線10B−2に事故が生じたとする。制御装置は、事故発生時では、事故が生じた直流送電線10B−2に接続された直流遮断器70B及び交流遮断器60Bをオフとし、また、直流送電線10B−2に接続していた交流電源21−1及び交流電源21−3の交流遮断器80をオフとする。これにより、事故が発生した直流送電線10B−2は切り離され、事故電流は遮断される。直流遮断器70B及び交流遮断器60Bが遮断されているので、直流送電線10B−2以外の直流送電線10には事故電流が及ばない。
図18は、事故発生後から送電再開までの状態を示している。制御装置は、事故発生後に事故電流を遮断した後、事故が生じた直流送電線10B−2に接続された断路器40B−1及び断路器40B−3をオフとする。また、制御装置は、事故が生じていない直流送電線10Aに接続された断路器40A−1及び断路器40A−3をオンにする。さらに、交流電源21−1及び交流電源21−3の交流遮断器80をオンにする。これにより、交流電源21−3及び交流電源21−4から直流送電線10Aを介して交流系統31へ送電が再開される。
本実施形態に係る直流送電設備1Eによれば、直流送電線10B−2は、直流遮断器70B−2及び交流遮断器60Bを介して直流母線51及び直流母線52に接続されているので、直流送電線10B−2に事故が生じたときの影響範囲を直流母線51及び直流母線52を越えて波及させない。これにより、事故を除去するまでの間に停止させる交流電源の台数を低減することができる。このように事故による停電の影響を低減し、従来と同等の信頼性が実現される。
本実施形態に係る直流送電設備1Eによれば、直流遮断器70B−2及び交流遮断器60Bがオフになってから(図17参照)、断路器40A−1及び断路器40A−3がオンとなって健全な直流送電線10Aに切り替わるまでの間(図18参照)においても、交流電源21−1や交流電源21−3以外の交流電源21から直流送電線10A、直流送電線10C、及び直流送電線10Dを介して第2交直変換器30への送電は続いている。このため、交流系統31にとっては、送電される電力の一時的な変動はあるものの、送電は停止しない。このように事故による停電の影響を回避するとともに、従来と同等の信頼性が実現される。
本実施形態に係る直流送電設備1Eは、実施形態1と同様に、一個の交流電源21は、一個の第1交直変換器20と複数の断路器40を用いて直流送電線10に接続する構成となっている。したがって、複数の交流電源21を直流送電線10に接続する場合、一個の交流電源21につき一個の第1交直変換器20で済む。したがって、第1交直変換器20の増設数を抑えることができ、高価な交直変換器を低減して低コスト化を図ることができる。
本実施形態に係る直流送電設備1Eによれば、実施形態4と同様に、直流送電線10A、10B−2、10C−1、10C−2のそれぞれは、一個の直流遮断器70を介して直流母線52や直流母線53に接続されている。したがって、本実施形態に係る直流送電設備1Eは、冗長化のために2回線以上の直流送電線10を備えていても、直流遮断器70の増設数を抑えることができ、高価な直流遮断器を低減して低コスト化を図ることができる。